クリボー「俺が1-1で最初に出てくるクリボーだ」(28)

クリボー「……ん?」

クリボー「ああ、お前さんが記者さんかい。俺に取材したいっていう」

クリボー「そうだ」

クリボー「俺がスーパーマリオブラザーズ1-1で最初に出てくるクリボーだ」

クリボー「よろしくな」

クリボー「んで、何を聞きたいんだ?」

クリボー「なに? 俺が他のクリボーと違うところはどこか?」

クリボー「んなもんねえよ。いやホントだって」

クリボー「あの場所に配置されたのも、ほとんどなりゆきだしよ」

クリボー「話し合いもなにもないよ」

クリボー「ノコノコどもがお前ここなっていうから、はい分かりましたってなもんよ」

クリボー「なんたって俺らはキノコ王国を裏切ったクッパ軍団の新入りだったからな」

クリボー「裏切った理由? そりゃ、クッパが怖かったからだよ」

クリボー「デカイし、ツノあるし、カメっていうか怪獣じゃん」

クリボー「クッパが攻めてきた時、クリボー一族で緊急会議開いてさ」

クリボー「七割ぐらいの奴がクッパにつくってことになってさ」

クリボー「俺も……ついてったってわけ」

クリボー「罪悪感? あんまりなかったなぁ、正直いって」

クリボー「強い奴が来たからそいつにつく、それのどこが悪い? ってなもんよ」

クリボー「元々俺はキノコの城やピーチ姫と接点なかったしさ」

クリボー「初陣の時の心境、か……」

クリボー「アンタはドラマチックな回答を期待してるかもしれないけど」

クリボー「はっきりいってどんな奴が姫救出にやってくるのかも分からなかったし」

クリボー「とにかくやるしかない! みたいな感じだったよ」

クリボー「緊張とか不安とか、感じようがなかったな」

クリボー「──でも、マリオを初めて見た時にはさすがにビックリしたけどな」

クリボー「ピーチ姫を助けに行くってぐらいだから」

クリボー「姫と同年代ぐらいの奴かな~と思ったらあんなオッサンなんだもん」

クリボー「え、マリオって20代なの!?」

クリボー「ウッソォ~、俺、30……下手すりゃ40ぐらいだと思ってたわ」

クリボー「でもたしかに、あのジャンプ力は若い人間のもんだわな」

クリボー「声も若々しいし、そんなもんか。ヒゲで老けて見えるだけなんだな」

クリボー「いやぁ~、こんなにビックリしたのは久々だわ」

クリボー「取材される側が驚くことになっちゃった。すまんね」

クリボー「で、そこからマリオと……ええともう一人、誰だっけ……」

クリボー「あ~っと、誰だっけ……ここまで出かかってるんだけど……」

クリボー「ほら弟の、えぇと……ハ、ハ……ハ……」

クリボー「あ、ルイージ!? そう、ルイージだ! ありがとう!」

クリボー「いやぁ~、全然ちがうでやんの」

クリボー「ちなみに、ハっていうと誰かな?」

クリボー「あ、ハンマーブロスね。ハハ、クッパ軍団の奴だった」

クリボー「話を戻そう。そこからマリオ、ルイジと俺の戦いが始まったってわけ」

クリボー「どうやって向かってくるマリオを倒そうと思ったか?」

クリボー「アンタも人が悪いね。知ってんだろ? 俺が歩くしかできないってこと」

クリボー「だからまっすぐマリオに向かっていくことしか頭になかったよ」

クリボー「ただし、マリオに近づいたら噛みついてやる! とも思ってたけどね」

クリボー「そうだよ? 俺ってちゃんと噛みついてんだから!」

クリボー「触れるだけでマリオを倒せるわけないじゃん。毒もないのに」

クリボー「ぶつかってるだけのように見えるけど、ちゃ~んとガブッてやってんだよ」

クリボー「俺の噛む力がどのぐらい……か」

クリボー「お、ちょうどここにアルミ缶があるな。ちょっとやってみせようか」

クリボー「……」ガブッ

クリボー「こんなもんか。これぐらいなら簡単に穴あけられるぜ」

クリボー「お、ちょっと見直しました、みたいなツラしてんな」

クリボー「さすがにこれぐらいはできなきゃな。クッパだって手下にしないだろ」

クリボー「お、いよいよ本題ってカオしてんな。どんな質問でも答えてやるよ」

クリボー「ふむ……」

クリボー「自分が一番マリオを殺害したクリボーであろうことについてどう思ってるか?」

クリボー「う~ん……そうだなぁ」

クリボー「たしかにかなりの数を噛み殺したと思うけど」

クリボー「でも、俺だってだいぶ踏まれたし、おあいこみたいなもんだな」

クリボー「トータルじゃ絶対俺のが死んでるはずだし」

クリボー「だから誇りにしてる、とかそういうのはさほどないよ」

クリボー「それと……ちょっと外の世界の話になっちゃうけど……」

クリボー「外の世界じゃ、スタートダッシュしたマリオが勢い余って俺に殺されるのが」

クリボー「一種のあるあるネタになってるみたいだが──」

クリボー「実際、あるあるネタになるほど、外の世界の奴らは体験したのかね?」

クリボー「中には初回プレイから俺を華麗に踏みつぶしておきながら」

クリボー「記憶を捏造してるような奴もいるんじゃねえかな……と思うよ」

クリボー「ま、それでも俺がクリボーの中でマリオ殺害数ナンバーワンなのは」

クリボー「揺るがないと思うがね」

クリボー「さっきは誇りにしてない、っていったけどなんだかんだ譲れないのよ」

クリボー「あと、もし今のガキどもがスーパーマリオブラザーズをプレイしたら」

クリボー「多分、不用意にダッシュして俺にぶつかるなんてことはないんだろ?」

クリボー「昔のガキより今のガキの方が遥かにゲーム慣れしてるんだろうしさ」

クリボー「ま、今のガキが今さらファミコンをやるとも思えんが……」

クリボー「今の流行りは……ニンテンドウ64とか、そういうやつだろ?」

クリボー「え、ちがうの?」

クリボー「WiiU? ニンテンドー3DS? いやぁ~全然分からん」

クリボー「ゲームの進歩ってのは早いもんだねぇ。日進月歩ってやつだ」

クリボー「今、俺が何をしてるかって?」

クリボー「今は引退して、このとおり悠々自適の生活を送らせてもらってるよ」

クリボー「クッパ軍団からの年金でな」

クリボー「なにせ、あの頃は散々マリオを殺しマリオに殺されまくったからな」

クリボー「あ、あとついでにルイジもな」

クリボー「今は俺、キノコ王国にいるのに、毎月5コインずつきっちり送られてくるよ」

クリボー「律儀なとこあるんだよなぁ~、あの軍団も」

クリボー「だけど、俺もヒマしてるわけじゃないぜ」

クリボー「今、凝ってるのは……スーパーキノコ栽培だ」

クリボー「いいのができたら、ピーチ姫の城下町に持ってったりしてる」

クリボー「平和的でいいもんだろ?」

クリボー「つっても、こういうのがキノコ王国住民の本来の生き方なわけだけどな」

クリボー「俺はキノコ王国を裏切っちまったわけだけど──」

クリボー「紆余曲折を経て、結局キノコ王国の住民になっちまったわけだ」

クリボー「俺がまた住むことを許してくれたキノピオたちにも感謝してるよ」

クリボー「おっと……もうこんな時間か」

クリボー「こちらこそありがとよ」

クリボー「こんな風に自分のことを話す機会なんて、なかなかなかったからさ」

クリボー「記事ができたら送ってくれよ。俺も読むから」

クリボー「できればかっこよく書いてくれ……なぁ~んてな」

クリボー「俺はもう引退しちまったけど……」

クリボー「これからも、この世界と外の世界が楽しくやっていけるよう願ってるぜ!」

クリボー「じゃあな!」







おわり

おしまい

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