【ミリマスSS】百合子「恋愛小説のプロローグ」 (10)

本の匂い。

私が物心ついた時から嗅いでるこの匂い。

その匂いを嗅ぐと、私はどんな時でも落ち着くことができた。

大好きな匂い。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1413191280

テストの前も。

体育大会の前も。

その匂いを嗅ぐだけで安心できた。


でも、今は違う。

その匂いを嗅ぐと、私の胸はまるで私の物では無いように早鐘を打つ。


あの人今日もいるのかな。
そう考えてしまうから。

最初はただ一言お礼が言いたくて。


『本取ってくれてありがとうございます』ってそれだけを言いたくて。

でもあなたが好きな本が私の好きな本で。
あなたのその本を読む仕草がたまらなく魅力的で。

だからかな。


私の恋愛小説にプロローグが書きこまれたのは。


予約してた本は返ってきてるかな。

新しい本はどんなのが入ってきてるかな。

そんなことしか考えてなかったのに。

遠目でその背中を見つける。
早鐘はいっそう早く打ちつける。

あっ、その本。私が前借りてたやつだ。

話しかけてみようかな、なんて。
出来もしない妄想話を頭の中で膨らます。

『ゆっくり、ゆっくりと私は彼に近づいていく。一歩踏み出すごとに…』

出来の悪いモノローグが頭に書かれる。

話しかける勇気なんて、これっぽっちも無いのに。

あぁ。

願わくばあなたがその貸し出しカードの『七尾百合子』の名前に気づいてくれますように。

私の恋愛小説がプロローグから一つでも章が移りますように。

今はただそれが私の精一杯だから。

短いのですいません。

大好きな『空想文学少女』で書いてみました。


百合子、ユニットCD入りおめでとう!

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