モバP「妖怪のしわざ!?」 (28)


市原仁奈「そ、そうでごぜーます!」

妖怪とは!?

モバP「そうか……俺が上手くみんなの仕事を取ってこられないのも、昼に食べた定食のおかずが俺のだけ異様に少なかったのも、帰りに自転車に跳ねられたのも、全部奴らのしわざだったのか!!」

日常の経験や理解を超えた不思議な存在や現象を、過去の日本人が具現化させたものである!!

和久井留美「P君、それは違うと思うわ」


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P「留美さん、あなたまさか『この科学の時代に妖怪なんて』だとか思ってるんじゃあないでしょうね……」フフフ...

留美「ど、どうしたの不敵な笑みなんて浮かべて……」

P「日本における妖怪の歴史は遡ること奈良時代! そんな昔から存在する奴らからすれば科学などこの前発売された安っぽいおもちゃに過ぎない! つまり!」

留美「つまり……?」

P「俺たち十代二十代そこらの小娘小童のおもちゃ遊びを、奴らは今もどこかからほくそ笑んで見ているのです!!」

仁奈「予想以上に妖怪が恐ろしい連中でやがりました……」ブルブル

留美「……確かにその通りかも知れないわね」

P「留美さん!」

留美(って言っておかないと全然仕事が手に付かなくなるのよね、この人)ハァ...


P「善は急げだ、妖怪対策メンバーを集めよう。俺はオフのアイドルたちに声をかけてみる。仁奈はレッスン帰りのみんなに声をかけておいてくれ!」ダッ

仁奈「了解でごぜーます! えっと、留美おねーさんは……」

留美「ほ、ほら、私はみんなが妖怪対策に集中できるように事務仕事を片付けておくわ」

仁奈「さすが留美おねーさんでごぜーます!」

ガチャ

留美「……」






留美「……こういうパターンもあるのね」ガクッ


P「ではこれより妖怪対策会議を行う!」

二宮飛鳥「……待ってくれP、いきなり呼び出されて妖怪だなんだと言われても理解ができないんだが」

P「フ、フフフ……墜ちたな飛鳥! お前がそんな普通な事を言うようになったとは!!」フフフ...

飛鳥「ふ、普通!! 『痛いヤツ』を自称する14歳のこのボクを今、君は普通と言ったのか!?」ピシャアアアアンッ

P「ああ言ったともさ! 聞きたければ何度でも言ってやる!!」

飛鳥「さすがに何度もは言わないでくれ!」

伊集院惠「えっと……妖怪の話よね? 早く本題に入りましょう?」


P「……なあ、みんなは最近自分がツイてないって思ったことはないか?」

南条光「うーん……アタシは特にないかなぁ」

P「本当か!?」ズズイ

光「ほ、本当だ!」






P「何もないところで躓いたり、ふと気付くと寝坊していたり、そういう自分に都合の悪いことは全部妖怪のしわざなんだぞ!」

惠「いや、さすがにそこまでは……」

飛鳥「妖怪もたまったもんじゃないね」


光「じゃ、じゃあ近所の玩具屋でドライブドライバーが発売日なのに売り切れてて買えなかったのも……」

P「そうだ、妖怪のしわざだ!! しかもそれ特に悪いやつだ!!」

光「そうだったのか!!」ピシャアアアアンッ

光「フ、フフフ……」ユラァ






光「妖怪許すまじ!!」

惠「ひ、光ちゃんが燃えている!」

飛鳥「空回りしている時のPにそっくりだ!」


惠「でもPさん、なんでも妖怪のせいにするのはいいけど、どうして急にそんなことを?」

P「仁奈から聞いた!」

仁奈「テレビで言ってやがりました!」

飛鳥「て、テレビ!!」

P「ああ、昨今のテレビは適当なことを言うとすぐ苦情が殺到するからな……奴らも迂闊なことは言えまい! つまりこの情報、信用できる!!」






惠「……一理あるわ」

留美(私がおかしいのかしら……一理の欠片も感じなかった……)カタカタ


光「そういえば!」

P「どうした光!」

光「ほたるが不幸体質って言ってた……」

P「そ、そうだった! あいつ……独りでとんでもないものと戦っていたのか!! 留美さん、ほたるのスケジュールは!?」

留美「今日はレッスンだけね。明日のオーディションに向けて心を落ち着かせたいから直帰するって連絡があったわ」

P「今から行ってほたるの心を乱すわけにはいかないか……ならば!!」


――――翌朝・駅――――


白菊ほたる(今日はオーディション……今日だけは、せめて今日だけは電車が止まりませんように……)

???「ほたるぅぅぅぅぅ!!!」

ほたる「!?」

P「何も心配するな!! 今日のお前は……いや、今日からのお前は絶好調だ!!」

光「なぜならアタシたちがついているから! ほたるさんは独りじゃないんだ!!」

惠「私たちはあなたを応援しているわ……いつもね」

ほたる「みなさん……」ウルッ


P「ここにいる俺たちだけじゃない、事務所のみんなもお前と一緒に妖怪と戦う!! もうお前は独りで戦い続ける必要はないんだ!!
!」

『ドアが閉まります。駆け込み乗車はご遠慮ください』プシュウゥゥゥ

ほたる「ちょ、ちょっと待ってください! なんですか妖怪って!? オーディションの話じゃなかったんですか!?」






惠「行ってしまったわね……」

P「ああ、でも大丈夫だ。あれだけ応援したら今日一日は妖怪が寄り付くこともないだろう」

光「じゃあ今日のオーディションは!」

P「ほたるが勝つ!!」


飛鳥「……で、朝六時頃から駅で叫んで来たのかい?」

光「ああ!」

P「お前も朝に弱くなければ呼んだんだけどな」

仁奈「仁奈はその頃ぐっすりでやがりました!」

P「それもよし! 寝る子は育つだ!!」

飛鳥「それよりボクは惠さんがそれに参加していたことに驚きを感じて仕方がないんだけど」

惠「飛鳥ちゃん、Pさんといると私……」






惠「どうもあの勢いに流されてしまうの!」

飛鳥「ボクもよく流されるからその気持ちはよく分かるよ」


ガチャ

ほたる「おはようございます……」

P「おはようほたる! 調子はどうだった?」

ほたる「電車に乗ってる途中、雨が降って……しかもかばんの中に折り畳み傘が入ってなくて……」

光「そんな……」

ほたる「でも駅で降りるときにはもう雨は止んでいました!」

仁奈「おお!」


ほたる「他にも色々危なかったんですけど、全部そんな感じでなんとかなって……」

飛鳥「なんとかなって……?」

ほたる「絶好調でした!」

惠「あの応援、本当に効果があったのね……」

P「当たり前だ……俺たちが応援したことによってあの時の、そして今のほたるは絶好調! そんじょそこらの妖怪など、近付いただけでドカーンだ!!」

光「ど、ドカーン!!」

P「そうだ、ドカーンだ!!」

ほたる「あの、朝からずっと気になってたんですけど妖怪って……?」


P「説明!」

ほたる「説明されました!」

留美「ねえ、今ので本当に伝わったの? 無理しなくてもいいのよほたるちゃん?」

ほたる「……つまり私の不幸体質も妖怪のせいだったんですね?」

P「その通りだ!」






留美「……なんであれで伝わるのかしら」

飛鳥「まあ、ほら、Pの勢いはなんかこう、色々無視してるから」


そして数日後!


P「みんな、この封筒を見てくれ!!」

ほたる「そ、その封筒は!?」

仁奈「もしやほたるおねーさんのオーディションの結果でごぜーますか!?」

P「そうだ! そしてこの封筒に入っている紙には『合格』の二文字が書かれている!!」

光「確認したのか!?」

P「いやまだだ! だがきっと書かれている!」


P「……開けるぞ!」ピリ

飛鳥「合格していたら、ボクたちが妖怪に打ち克ったという証明になるワケだ」

P「……」ピクッ

ほたる「でも、もし不合格だったら……」

P「…………」ピククッ

惠「……Pさん?」

P「……開ける寸前になってそういう不安になるようなことを言うから、怖くなって開けられなくなってしまったじゃあないか!!」


光「頑張れP、あと少しだ!」

P「うおおおおお……!」ピリリ...

ピタッ...

P「だ、駄目だ! これ以上指が動かん!!」

留美「開けなさいP君! 自分のプロデュースしたアイドルを信じているのなら!!」

P「信じていても怖いものは怖いんですよ! 柵があっても高いところって怖いでしょう!? 頼む留美さん、俺の代わりに開けてくれぇ!!」

留美「……私じゃなくて本人に開けさせた方がいいんじゃないかしら」

P「そ、そうか! ……ほたる、開けてくれるか?」

ほたる「……はい。私、封筒を開けます!」

P「頼む! 俺にはできなかった!!」






飛鳥「……これ、ただ封筒を開けるだけなんだよね?」

惠「そうよ。でもそのただ封筒を開けるだけというそれだけのことが……今の事務所の全てと言っても過言ではないの!」

飛鳥(また勢いに流されている!)


ピリ...

ほたる「『白菊ほたる』……」

P「……」

光「……」

仁奈「……」

飛鳥「……」

惠「……」

留美「……」







ほたる「ご、『合格』!」

P「……や」

「やったぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


P「やったな! 合格だぞほたる!!」

ほたる「は、はい! やりました!」

P「よし、今日はパーティーだ!!」

事務所から不幸という妖怪は去った!

だが他の妖怪たちはまだ君たちを狙っているぞ!!

負けるなプロデューサー! 頑張れアイドルたち!!

全ての妖怪に打ち克ち、トップアイドルへと登り詰めるその日まで!!!

これにて終了です。読んでくれた方に少しでもやる気のパルスが伝われば嬉しいです

>>9 に呼称ミスがあったので修正

×光「なぜならアタシたちがついているから! ほたるさんは独りじゃないんだ!!」
○光「なぜならアタシたちがついているから! ほたるは独りじゃないんだ!!」

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