希「十五夜やで」海未「そうですね」 (44)


海未「なんで希が私の家にいるんですか?」

希「今日は十五夜やから」

海未「理由になってません」

希「じゃあ、月が綺麗だから?」

海未「訂正になってません」

希「だからこのススキをそこに飾ってね海未ちゃん」

海未「会話になってません」


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希「うん、海未ちゃん家のお庭は広いから月が綺麗に見えそうやね」

海未「なんでそんなに堂々とセッティングしているのですか」

希「お月見をする時のセッティングは大事よ?」

海未「それはそうですが私が言っているのはそういうことではないんです」

希「あ、お団子作ってきました」

海未「ああ、どうもご丁寧に」


希「ところでなんでススキを飾るか知ってる?」

海未「そういえば知りません」

希「そっか」

海未「答えは」

希「さあ」

海未「知らないのに聞いたのですか」

希「知らないから聞いたんです」

海未「もやもやするんですが」


希「確かにもやもやするね」

海未「どうしてくれるんです」

希「じゃあ考えてみよか」

海未「考える?」

希「例えばウチは、ススキと団子が実はとっても相性がいいからじゃないかと思うんよ」

海未「食べる気ですか」

希「何事も挑戦や」

海未「やめましょう?」


希「じゃあ海未ちゃんはどう思う?」

海未「むむ、難しいですね」

海未「...」

希「チッチッチッチッ...」

海未「制限時間があるんですか?」

希「ないけど」

海未「何の音ですか」

希「ウチの音。ウチは暇で寂しくなるとこういう音がなるんや」

海未「寂しいんですか」

希「今は平気」

海未「音がなっていませんもんね」

希「せやね」


希「答えはススキが稲穂に似ているので豊穣の願いを込めていた...でした」

海未「答え知ってるじゃないですか」

希「と見せかけてこれはただの嘘だったら」

海未「怒ります」

希「じゃあ本当です」

海未「じゃあってなんですか」

希「じゃあはじゃあや」

海未「じゃあですか...」


希「海未ちゃんは月にうさぎいると思う?」

海未「いないと思います」

希「どうして?」

海未「まずうさぎの餌がありませんから」

希「だからお餅ついてるやん」

海未「うさぎってお餅食べますか」

希「喉に詰まるかもしれんね」

海未「そうですね」

希「心配やね」


海未「希はいると思ってるんですか」

希「っていうかおるやん」

海未「証拠は?」

希「ほら、影が見える」

海未「影が見えると言うことは月の中にいるということですが」

希「そうなるね」

海未「いると思いますか?」

希「おったら可愛いやろ」

海未「確かに」

希「やろ?」


希「かぐや姫ってなんで竹の中におったんやろね」

海未「さあ、狭いところが好きだったのでは?」

希「じゃあ本人は楽しかったんかな」

海未「かもしれませんね」

希「だから光ってたんやね」

海未「希は楽しいと光るんですか」

希「光るよ?知らなかった?」

海未「つまり今は楽しくないんですね」

希「やっぱり嘘」

海未「よろしい」


希「海未ちゃんはなんかかぐや姫に似とるね」

海未「そうでしょうか」

希「長くて黒い髪に、綺麗なお顔。
毎日毎日求婚されて...」

海未「最後は天に帰ってしまうわけですか」

希「それはウチが嫌や」

海未「私だって嫌です」

希「かぐや姫やなくてよかったね」

海未「そうですね」


海未「にこもかぐや姫に似ていませんか?」

希「確かに」

海未「小さいですし」

希「竹にも入れそうやね」

海未「にこはこれから成長するんでしょうか」

希「成長しなければ天に帰らなくてもええかもね」

海未「にこはかぐや姫でも大丈夫ですね」

希「せやね」


希「月が綺麗やね」

海未「十五夜ですからね」

希「海未ちゃん、月が綺麗ですねって"I love you"って意味にもなるらしいよ」

海未「では好きじゃない人に月が綺麗だと言いたい時はどう言えばいいんですか?」

希「さあ、月が綺麗ですねって言えばいいんやない?」

海未「なるほど、月が綺麗ですね」

希「うん、月が綺麗やね」


希「お団子食べる?」

海未「希が持ってきたやつですか。食べます」

希「なんか変なスーパーで300円くらいのやつを積み上げただけやけど」

海未「なるほど、少し形が歪ですが300円なら仕方ありませんね」

希「味もイマイチかも」

海未「味に関しては300円ではもったいないくらいですよ」

希「そっか」

海未「そうです」

希「月が綺麗やね」

海未「ですね」


希「...」

海未「...」

希「静かやね」

海未「喋っていませんからね」

希「そっか」

海未「綺麗な虫の音色も聞こえますし、沈黙もまた粋なものだと思いますが」

希「せやね」

海未「...」

希「...」

海未「...」

希「...チッチッチッチッ」

海未「寂しいんですか」


希「どれがどの虫の音だかわかる?」

海未「コロコロ鳴くのはコオロギです」

希「リンリン言ってるのは?」

海未「スズムシですね」

希「なんか凛ちゃんみたいやね」

海未「そうですね」

希「こんな大勢で喋って、お互い話分かってるんかな?」

海未「分かってなくてもいいんじゃないですか?楽しければ」

希「それもそうやね」


希「虫はどうやって音を鳴らしてるか知っとる?」

海未「どうやってるんですか?」

希「考えて考えて」

海未「...触角をですね」

希「うん」

海未「...やっぱり今のナシで」

希「気になるんやけど」

海未「ごめんなさい、忘れてください」

希「気になる」



希「羽と羽を擦り合わせてるんやって」

海未「よくあんなに綺麗な音がなるものですね」

希「ウチらにも羽があればいいのにね」

海未「邪魔になりませんか?」

希「取り外し可能で」

海未「ほとんど使わなそうですが」

希「確かにね」

海未「いりませんね」

希「いらないね」


希「海未ちゃんはどの月が一番すき?」

海未「うーん...あまり知りませんが、三日月ですかね」

希「へぇ、ウチも好きやで三日月」

海未「奇遇ですね」

希「あの、ほそーくなってもう無くなりそうになってる三日月とかええよね」

海未「わかります」

希「切った後の爪みたいな」

海未「台無しです」


海未「希は月に似ていますよね」

希「おっ、詩人やね」

海未「なんとなくですが」

希「丸いってこと?」

海未「確かに希には角がありませんね」

希「海未ちゃんはカクカクやね」

海未「どういう意味です」

希「豆腐っぽい」

海未「何故かしっくり来ます」


海未「月明かりの控えめな明るさみたいな物を、希から感じるんです」

希「そうなると太陽はμ'sのみんなやね」

海未「ほう」

希「μ'sのみんながみんな光ってるからウチも光れるんや」

海未「なんだか私より詩人ですね」

希「うん、ウチ今すごく良いこと言った気がする」

海未「でもそれだと地球はどうなるんです?」

希「...もっかい考え直す」

海未「グダグダですね」


希「はい、ここで一句」

海未「突然ですね」

希「"海未ちゃんが" 」

希「はい」

海未「ええっ」

海未「えーと..."希と一緒に"」

希「"楽しいね"」

海未「無理やりですね」

希「楽しくないん?」

海未「そうは言ってないでしょう」


希「楽しいんや」

海未「どうでしょうね」

希「どうして楽しいん?」

海未「さあ、十五夜だからじゃないですか?」

希「答えになってへんよー」

海未「じゃあ月が綺麗だからですかね」

希「会話になってへんよー」


海未「もういいでしょうこの話は」

希「どの話?」

海未「さあ、分かりません」

希「ウチもー」

海未「もう何が何だか分かりませんよ」

希「まあええやん楽しければ」

海未「それもそうですね」


希「ああ、月が綺麗やね」

海未「そうですね」



ーおしまいー

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年09月09日 (火) 01:27:27   ID: rK2mWjh6

どストライク

2 :  SS好きの774さん   2014年09月09日 (火) 03:03:05   ID: 6yjdGJPD

うむ、最高だ

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