絵里「ウツライブ」 (82)

絵里「ふぅ、これで生徒会の仕事もかたづいたわね……」

絵里「後は、持ってきた参考資料をしまえば……皆の練習に参加しに行かなくちゃ」

ポトッ

絵里「……あら、何かしらこれ? 手紙?」

『いつかμ'sを終わらせる 必ず誰かを殺してやる』

絵里「……なに、これ……こんなの嘘に決まってるじゃない……」

絵里「はぁ、あきれたわ」

ポイッ

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―屋上―

絵里「ふぅ、今日の練習はこの辺にしておきましょうか」

花陽「うあ~、疲れたぁ……」

凛「そう? 凛はとってもたのしかったにゃ!」

にこ「まあ、今日はずっと体動かしてたからね……無理もないわ」

穂乃果「ここで、腰をグイッとひねって……」

海未「うーん、角度が浅いですね」

ことり「確かに……もうちょっと、おもいっきりやってみたら?」

真姫「まだ練習を続けたい人もいるみたいね」

希「真面目さんもいいけど、体調崩したらあかんよ? 終わりって言われたら終わるようにしないとね」

穂乃果「はーい! じゃあ、自主トレするために音楽室かりよっと!」

希「あちゃあ……あんまりわかってくれなかったみたいね」

凛「あ、鍵凛が持ってるにゃ! 穂乃果ちゃんまってぇー!」

絵里「ふふ、皆元気ね」

にこ「にこはもうへとへとよ~。途中でクレープ買いましょ?」

真姫「そうやってにこちゃんはどんどん太っていくのね」

にこ「ちょ、真姫ちゃん!」

花陽「間接的に花陽も傷ついてます……!」

ことり「あはは……まあ、これで練習は終わりだしね。今は穂乃果ちゃん、1人にしておいた方がいいだろうし、ことりたちは先に帰ろ?」

海未「そうですね……」

希「心配せんでも、あの子は大丈夫や」

海未「分かってます……わかってますが……」

凛「穂乃果ちゃん速かったにゃ~。鍵を渡すのでも結構疲れたにゃ」

(殺してやる)

絵里「…………!」

絵里「……今、穂乃果は1人なの?」

凛「え? うん、そうだけど……」

絵里「…………」

ダッ

海未「ちょ、え、絵里!?」

―音楽室―

絵里「穂乃果!?」

穂乃果「うわぁ!? びっくりした。どうしたの絵里ちゃん?」

絵里「あ……練習、上手くいってないのかなーって……不安で」

穂乃果「?」

絵里「あ、いや、気にしないで……いいの、気にしないで」

絵里(嘘か本当かわからない情報を広げて、皆に混乱されても困るわ……もしかしたらそれが、あの愉快犯のやりたいことなのかもしれない)

穂乃果「あ、そうだ! 穂乃果のダンス見てよー。自分で見てても、いまいちできてるかどうかが分からなくて」

絵里「ええ、いいわよ」

絵里(…………)

絵里「……何も起きないわよね?」


今日はスレ立て含め、ここまでで切る

これからよろしくお願いします

絵里(私のそんな心配事をよそに、気が付けば何日かの月日が流れた……)

絵里(何だ。別に心配する必要はなかったのね)

穂乃果「皆、準備はいい?」

ことり「ついに私達が……野外でライブをする日が来たんだね……」

にこ「地域の皆に認めてもらえるように、全力でやるわよ!」

花陽「うん……目指すは、スクールアイドルとしての頂点!」

凛「よーっし、がんばるにゃ!」

海未「行きましょう! みんなで!」

真姫「まあ、いつも通りにね」

希「絵里ち」

絵里「……へ? ああ、うん」

穂乃果「よーっし! 行くよー! えいえいおー!!」

―ライブ会場―

穂乃果「皆! 今日は穂乃果たちのライブに来てくれてありがとう! 精一杯練習して頑張ったから、皆、盛り上がってね!!」

ワアアアアアアア

絵里(…………まあ、あの手紙の事なんて、もう気にする必要ないわ)

絵里「それじゃあ最初の曲は……」

~♪

―舞台袖―

海未「ふぅ……かなり盛り上がってきてますね。ステージリストはどうですか?」

ことり「えっと、次はススメ→トゥモロウかな?」

海未「なるほど、それでは私達が前に出ないとですね……」

穂乃果「うぅ~、なんかもううずうずしてきた!」

ことり「にこちゃんも希ちゃんも、ダンスすっごくうまいもんね」

にこ『みんな~! あっりがと~! 大好きだよ!』

ウオオオオオオ!

絵里(……大丈夫、大丈夫なはずよ……でも……)

必ず誰かを殺してやる

絵里(この……胸騒ぎは……)

誰かを殺してやる

殺してやる

殺す殺す殺す殺す殺す

絵里「殺す……殺す……」

凛「絵里ちゃん?」

絵里「へ?」

花陽「どうしたの? 何かさっき、ぶつぶつ言ってたけど……」

絵里「え? ……ああ……ごめんなさい。ちょっとボーっとしてただけよ……」

真姫「エリー、平気なの? さっきもボケっとしてたし」

絵里「え、ええ……平気なはず……」

ことり「まあ、絵里ちゃんはもう少し出番が先だし、落ち着いてて大丈夫だよ」

絵里「ええ……何だか、ごめんなさい」

穂乃果「絵里ちゃん!」

絵里「な、なあに?」

穂乃果「えへへ、行ってきます!」

海未「それでは」

絵里「……ええ、行ってらっしゃい」

―ステージ―

穂乃果「皆! またまた穂乃果だよ~!」

穂乃果「この調子で、次の曲もどんどん盛り上がっちゃおうね~!!」

ワアアアアアアア

ことり「それじゃあ行きます! 4曲目は……」


























???「……………………」

スチャッ

穂乃果「皆! ありがとう!!」

ワアアアアアアア

穂乃果(よし、いい感じに盛り上がったね!)

ことり(よかった! 大成功だね)

海未「……?」

海未(あれは……いったい……)

海未「…………!」

海未「穂乃果!!」

穂乃果「え? 海未ちゃん?」

海未「くっ……!」

ドンッ

穂乃果「きゃあ!?」

ズガンッ

海未「うっ……ぐう……!!」

ことり「え……? 海未ちゃん……?」

海未「あ……ああ……」

絵里「……嘘」

絵里(……嘘でしょ? なにこれ?)

絵里「海未!!」

真姫「ちょっと! 救急車!!」

花陽「さっきすごい音聞こえたけど……あ……」

凛「どうしたのかにゃ?」

希「凛ちゃん、来ない方がええ」

凛「……へ?」

にこ「…………え? う、海未……」

ザワザワ

絵里(……あの手紙……本当だった……って事?)

―病院―

にこ「……ライブは当然だけど中止……ファンも怖がらせちゃったわね……」

花陽「どうしてこんなことになっちゃったの?」

凛「う、海未ちゃんが撃たれたって……どういうことなの?」

希「ウチらにもよくわからんよ……ただ、言えるのは」

希「誰かウチらμ'sに、よくないことをしようとしとる人がおるっちゅう事やな」

ことり「……ことり達……に?」

穂乃果「……………………」

ガチャッ

絵里「……はぁ。話を聞いてきたわ」

真姫「安心して。海未ちゃんは命に別状はないから」

ことり「わぁ……よかったぁ……」

真姫「ただ……妙だと思わないの?」

希「妙? 何が?」

真姫「タイミングよ」

絵里(タイミング……確かにそうね……どうして、あのタイミングで……? 誰かを殺すだけなら、全員がいるときにやった方がいいはず……)

真姫「……何かあの時にやったのには、狙いがあるはずよ。ソイツは脅迫なんかじゃなくて、確実にμ'sの誰かを殺すつもりだった……」

凛「誰かを……殺す? 真姫ちゃん、何の話をしてるの……?」

穂乃果「……穂乃果だ」

ことり「え? 穂乃果ちゃん?」

穂乃果「穂乃果だよ……その人が殺そうとしてたのは……でも、それを海未ちゃんが守ってくれて……穂乃果は……」

希「少し落ち着き」

にこ「このタイミングで落ち着けって言う方が無理な話でしょ? というか、そいつがやる目的なんて、μ'sを壊すことに決まってるじゃない。誰かを殺すことじゃないわ」

花陽「え……?」

にこ「どこの世界にだって批判は付き物よ。私達がどんなに有名になったところで、そういう私達をよく思わない人はたくさんいるわ」

にこ「用はそいつによる犯行だった……誰を殺そうとしてるとか、個人的なものじゃないわよ」

絵里(確かに……それもそうなのよね……μ'sを恨んでる人間の犯行みたいだし……)

希「……やめよ。誰が犯人とか、そんなんどうでもええやん」

絵里「……希の言う通りよ。私達はこういう時こそ、いつも通りにしておかないと」

ストッ

花陽「きゃあっ!?」

ことり「何!? 何、今の!?」

真姫「……窓の隙間から……この矢を飛ばしたっていうの?」

絵里(随分と古典的ね……やってくれるじゃない)

絵里「……矢に手紙がくくりつけられてる」

希「ふうん……おしゃれなことをしてくるのね」

絵里「…………」

『お前たちμ'sはこれで終わりだ。殺さなくてもいずれ自滅する』

絵里「……これ、どういうことよ……」

凛「……じ、自滅?」

穂乃果「…………だ、誰? 私達にこんな酷い事するのは、誰なの!?」

にこ「そんなのわかるわけないじゃない。あの野外に来た不特定多数のファンから見つけろっていうの?」

絵里(いや、ちがう……生徒会長である私の元に、もう少し前に手紙は届いてる……ということは、この手紙は……)

絵里「音ノ木坂の誰か……」

凛「ど、どうしてそう思うの?」

絵里「……生徒会長の勘よ」

希「…………」






絵里(それから、どんよりとした空気をどうしようも出来ず、ただ立ち尽くした皆に……)

にこ「はい、今日は解散」

絵里(……という、にこの気の利いた言葉に助けられて、その場は解散した)

絵里(こういう時には、私が皆をまとめるべきなのに、私は何をしてるのかしら……?)

絵里「怯えてる? 怖がってるの? でも……違う」

絵里(ただ、狙われたのが私じゃなくてよかった……そう思ってしまって……怖くて)

絵里(そんな自分が嫌で……)



1週間くらい書き溜めてから来ます

書き溜めをほんの少し投下します

―翌日―

絵里(皆練習に身が入ってない……当たり前と言えば当たり前よね)

穂乃果「…………はぁ、はぁ」

ことり「穂乃果ちゃん、大丈夫?」

穂乃果「え? あ、ああ、ごめんごめん……もう一回同じところをやろ!」

絵里(……少し、海未の様子を見に行きましょうか……)

絵里「……ごめん、ちょっと私抜けるわね」

にこ「はぁ? どこ行くのよ?」

絵里「……海未の様子、見に行ってくるわ」

穂乃果「そ、それなら私も!」

絵里「だめ」

穂乃果「な、なんで?」

希「まあまあ、ここは絵里ちに任せとき? たぶん絵里ちも意地悪で言ってるわけじゃないと思うし」

穂乃果「そりゃあ、そうだろうけど……」

凛「り、凛もダメ?」

絵里「当たり前でしょ?」

真姫「それでも納得いかないわよ。どうしてだめなのか、きちんと理由がないと……」

絵里(言えるわけないじゃない……犯人をつきとめるために、事情聴取に行こうだなんて……そんなことを言えば、また皆の空気を悪くしてしまう)

絵里「だめなものはだめよ」

花陽「そ、そんなの理由になってないよ!」

希「絵里ちな、海未ちゃんにサプライズを用意しとるんよ」

絵里「……へ?」

ことり「サプライズ?」

希「そうやで。それなんやけど、ちょっと恥ずかしいから、皆には内緒にしたいんやって。この前生徒会活動しとる時に言うてたわ」

絵里(……希、あなたは……)

にこ「ふーん、どんなサプライズかは知らないけど、そんな隠すことないんじゃない?」

絵里「ご、ごめんなさい……」

にこ「まあいいわ。行ってらっしゃい。残りは戻ってくるまで休憩ね。今のままじゃ練習なんてできないわよ」

凛「……うん」

絵里「……じゃあ、行ってくるわ。皆の事も伝えておくわね」

―病院―

絵里「海未、来たわよ」

海未「…………ああ、絵里ですか」

絵里「どうなの? 具合は?」

海未「……あまりよくないです」

絵里「……そりゃそうよね……」

海未「絵里は突然どうしたんですか? しかも一人で来るなんて……よくあの中から抜けて来れましたね」

絵里「ええ……ちょっと助けてもらってね」

海未「……さしずめ、私に犯人の顔を見たかとか、そういうのを聞きに来たんですよね?」

絵里「……ええ、そうよ」

海未「……アイツが狙っていたのは穂乃果でした」

絵里「……やっぱりそうだったのね」

海未「観客席とは少し離れたところにいて……黒いニット帽をかぶった男性……でしたね」

絵里(男性……ということは、音ノ木坂の生徒じゃない?)

海未「穂乃果に向けられていた銃を見て、とっさに穂乃果を押し倒して、銃弾を喰らいました、あたったのがお腹で幸いです」

絵里(いや……むしろそれが狙いだったのかもしれないわね。穂乃果の精神状態を壊し、そこから全員に恐怖の感染を狙う……そうすると、『勝手に自滅』の言葉にも合点がいくし)

絵里(となると、やはり犯人は、最初に穂乃果を狙うあたり、私達μ’sをよく知ってる人……)

海未「その男の人は、私は見たことない人でしたし、これ以上は何とも……すみません、あまり力になれなくて」

絵里「ううん、ありがとう。大丈夫よ。少しでも情報が欲しかったからね」

絵里(……とは言っても、解決策なんて……あの弓矢くらいしか……ん? 弓矢?)

絵里「ねえ、海未」

海未「どうしました?」

絵里「弓道部で、狙ったところに弓をほぼ確実に打つ人って、海未以外に誰かいる?」

海未「…………そうですね……3年生の先輩に……」

絵里(3年生……)

―弓道場―

絵里「……それで、あなたはどうなの?」

女子「……え?」

絵里「病院に弓矢が飛んできた……それはあなたが放った弓……違う?」

女子「ちょ、ちょっと絵里、それは考えすぎだって。大体ライブ中、ずっと私達は弓道場で練習してて……海未ちゃんが怪我したのがライブ中なんていうのも……今初めて知ったし」

絵里「そうなのね……わかったわ、ありがとう」

女子「う、うん……」

絵里(……何か隠してる……そんな気がしてならないわ)

―屋上―

絵里「ただいま」

にこ「おっそい」

絵里「これでも急いだ方よ」

ことり「どうだったの? サプライズ、喜んでくれた?」

絵里「へ? あ、ああ……まあ、ね」

真姫「そりゃあ、そんなことされたら誰だって驚くわよね……」

絵里「まあ、そうよね……」

絵里(希……あなた何を言ったのよ……)

花陽「ほら、全員そろったんだし、もう一回やり直そうよ」

穂乃果「……全員じゃ、ないよ……」

花陽「あ……え、えっと……」

穂乃果「私のせいだ……海未ちゃんがあんな風になったのは……私が……」

希「穂乃果ちゃん」

穂乃果「だって……えぐっ、だってぇ……海未ちゃん、あんなことになって……もう……海未ちゃんがステージに立てなくなっちゃったりとかしたら」

絵里「それは心配ないわ。大丈夫」

穂乃果「……本当?」

絵里「ええ。もう少し休養をとったら、確実に治る。だから安心して」

穂乃果「……そっか……それでも、何だか申し訳ないよ……」

絵里「気付いてるのね、海未が守ってくれたこと」

ことり「……海未ちゃんが?」

絵里「……ええ」

穂乃果「……でも、海未ちゃんが私を助けてくれたんだもんね……きっと海未ちゃんは次の公演も、ちゃんとやってほしいと思ってるはずだもん」

穂乃果「……穂乃果はやる。穂乃果ならできる」

凛「穂乃果ちゃん……すごいにゃあ」

にこ「それでこそ穂乃果よ。続き、やりましょ?」

ピンポンパンポーン

『午後5時になりました。下校時間です。部活動をやっている生徒は……』

にこ「…………」

真姫「残念ね。花陽、凛、帰ろ?」

花陽「あ、う、うん」

凛「はーい」

にこ「もー! 明日こそ皆でちゃんと練習するわよ!!」

ことり「はーい」

穂乃果「うん!」

にこ「……むっ!」

絵里「え? あ、あはは……わるかったわよ」

希「絵里ち」

絵里「……?」

希「……ちょっといい?」

―生徒会室―

希「……なるほどね、そういうことやったんか」

絵里「脅迫文の事、黙っていたのは悪かったわ。でも、犯人は絶対に許しちゃいけないの……海未を傷つけたんだから……」

希「でも、不特定多数の人から犯人を見つけ出すのは、難しい事だと思うけどな……」

絵里「それでも私はやるわ。海未がこのままだと、あまりにも報われないもの」

希「別に海未ちゃんは死んだわけやないんやろ? それならいいやん」

絵里「……まあ、確かにそうかもしれないけど……それでも犯人には罪を償ってもらうべきよ。立派な傷害罪じゃない」

希「……確かにね。でも、絵里ち……1つ言わせて」

絵里「……何?」

希「やめたほうがいい」

絵里「……どうしてよ?」

希「カードがウチにそう告げるんや……この奥に待ってるのは……知らない方がいい真実……」

希「真実を知れば知るほど、悪い方に動くことだってあるんよ」

絵里「……ねぇ、希」

希「……?」

絵里「悔しくないの?」

希「……え?」

絵里「私は、あなたの言ってることは大体当たると思ってるわ。実際μ'sは9人になって、色々なところからオファーがかかるようになって、最近じゃ外でも活躍するようになったし、μ'sファンクラブっていう掲示板までできて、盛り上がってる……それはあなたのカードの助言もあってこそ……でもね?」

絵里「運命とかそんなことより、私が、私自身の気持ちが許してくれないのよ。これを見過ごすのを」

希「……絵里ち」

絵里「学園の生徒が傷つけられた。それなら学園の生徒が立ち上がるしかないわ。言ってしまえば、生徒会長の意地よ」

希「……ふふっ」

絵里「……何よ?」

希「なんか、絵里ちらしいなあ思っただけよ」

絵里「……私らしい?」

希「うん」

希「自分の決めたことは、まっすぐ貫きたい……でも、他の人の事を考えると動けない、そんなだった絵里ちが、自分の気持ちで動いてる……」

希「絵里ちらしいというか、絵里ちが成長したなって」

絵里「な、何よ……急にそう言われると、小恥ずかしいわね」

希「でも、絵里ちのそういうところが好きで、ウチは生徒会副会長になったんや。会長さんがそういうんなら、ウチも協力しないわけにはいかんなぁ」

絵里「……そ、そう?」

希「というわけで、ウチも協力するで!」

絵里「……どうやって協力するつもりよ?」

希「まあ、明日は練習を優先するとして……いろいろと調べさせてよ。まずその最初に絵里ちがもらった手紙を見せて?」

絵里「ゴミ箱の中に入れたから、入ってるはずよ」

希「んー、どれどれ。あ、割と原型を留めて入ってるんね」

絵里「あー、そういえばあの時……」

(『いつかμ'sを終わらせる 必ず誰かを殺してやる』

絵里「……なに、これ……こんなの嘘に決まってるじゃない……」

絵里「はぁ、あきれたわ」

ポイッ)

絵里「……って、丸めもせずに投げ捨てたからね」

希「そうなんや。うん、一回パタンと半分に折られただけ。なるほどな」

絵里「それが何になるっていうの?」

希「まあ、何にもならんやろうけど」

絵里「……真面目に考えてる? ひとが一人殺されかけてるのよ?」

希「分かってる。だから真面目にやりすぎんようにしなくちゃダメでしょ?」

絵里「……え?」

希「んー、『いつかμ'sを終わらせる 必ず誰かを殺してやる』……ねぇ。筆跡とかで誰か分かったりしないかなって思ったけど、だめかぁ……」

絵里「…………その手紙の文はコンピューターの文書を印刷したみたいだからね。誰だってできることだと思うわ」

絵里「それに、こんなことをするくらいだから、犯人は当然キレモノだろうし……油断ならないわよ」

希「……そうみたいね。それで絵里ち」

絵里「……何よ?」

希「2枚目の手紙は?」

ここまで

絵里「これよ。矢にくくりつけられてて、でもやっぱり文字はコンピューターで打った文字。特定はできずじまいだし、弓道部は海未以外全員ちゃんといたってアリバイがあるしね」

希「うーん……気になるなぁ」

絵里「気になる? 何がよ?」

希「ここやここ。この下のとこ、切られてる」

絵里「……あ、本当だ。半分に折ると、角を合わせてもきれいに合わないものね……全然気づかなかったわ」

希「その形状も考慮しての弓矢なのかもね」

絵里「犯人は相当ずる賢い男ね……」

希「男? それはないやろ絵里ち」

絵里「どうしてよ?」

希「だって、1番最初に絵里ちが手紙を生徒会室で拾ったのが、嘘じゃないならその人は生徒会室に入ってきたんやろ? 誰か来る前に、怪しいひとやったら気付くだろうし、ましてや男だったら尚更校舎に入れるわけにはいかないんじゃない?」

絵里「……じゃあ、音ノ木坂の誰かだっていうの?」

希「……そうとしか考えられへんよ」

絵里「……確かにそうよね……だとすると、その男に穂乃果を狙うように連絡し、何らかの方法で矢を放ち、そして……これから何をしようとしているの?」

希「……その手紙の内容から、『自滅』を待ってるみたいだけど?」

絵里「そもそもこの手紙って、もっと前から用意されたものとかじゃないでしょうね?」

希「……その可能性も、あり得なくはないな……全員を誘導するための手紙ってこと?」

絵里「……ええ」

希「……だとしたら、どうして?」

絵里「……わからない、わね……」

希「……もう6時やね。そろそろ帰らないと」

絵里「え、ええ……行きましょうか」

絵里(どちらにせよ、今の私達にできることは、来週の講堂での定例ライブに向けての練習だけだからね……海未のけがは治るのに3週間はかかるって話だから……難しそうよね)

―学校前―

希「それでな、その猫ちゃんったら……」

絵里(希はあえて、まったく事件の事に関して触れようとはしなかった)

絵里(そんな気遣いに、申し訳なさとありがたみを感じたわね)

絵里(そして、校門を出たところで、私達を待っていたのは……)

絵里「……あ」

希「に……にこっち?」

にこ「もう、遅いわよ……暗くなっていく中こんなかわいい子を待たせて……」

希「どうしてまっとったん? 無理しなくてもよかったのに……」

にこ「そんなの……怖いからに決まってるでしょ? 一人で歩くのとか、今は怖くて……嫌なのよ」

絵里「にこ……」

にこ「それなのに……にこを1時間も待たせるってどういうこと!? 本当に……本当にさみしくて怖かったんだからね?」

絵里(……にこは、あの時は強がっていただけだったのね。本当は練習なんて気分じゃなかったのよね)

絵里(ごめんね。私がそう言い終わる前に、彼女はにこを抱き寄せた)

ぎゅっ

希「にこっち……ありがとう……それとごめんな」

にこ「う……うぅ~……ばかっ、ばかっ……希と絵里のばかっ……あんぽんたん……うっ、ぐすっ……」

絵里(しばらくにこの泣き声を聞いてから、私達はゆっくりと歩きだした)

絵里(お互いがお互いを気遣い、ただどうでもいい世間話をしながら……)

―病院―

海未「くっ……うぅ……あああああああっ!!」

海未(どうして……どうして私が……ここにいるんですか?)

海未「こんなところに居ていい場合じゃない……公演を皆が待ってくれてるんです……皆が……μ'sの皆が、私を待っててくれてるんです……だから……だから……ああ……うぐっ、うああああああ……」

海未「この程度の傷で、死にかけてる場合じゃない、この程度の傷で、ベッドで寝てる場合じゃないんです!!」

海未「動け……動け、私の腕……」

海未(体を持ち上げれば、腹部に強烈な痛みがまだ走る。鉛を受けた感覚が残っている……)

海未(体を動かさなくちゃ、皆のところにはいけないのに……)

海未「なんで……」

海未(私の体が動くことを拒む)

海未「どうして腕が動かないんです!!」

海未(私の体が動くことで、あの痛みを受けることを拒絶している……動きたくても、動けないんじゃない……動かない……動きたくない……)

海未(受けた銃弾の傷とかじゃなく、本当に痛いのは、この……)

海未「うっ……ぐっ……ううっ……私は……私は……」

海未(心だ)

ここまで。

ゆっくりだけど地味に更新

―翌日、病院―

ことり「海未ちゃん、お見舞い来たよぉ、大丈夫?」

海未「…………ことり、ですか?」

ことり「うん」

海未「……ごめんなさい、心配をかけてしまって」

ことり「ううん。私が海未ちゃんでも、きっと同じようにしてたと思うから……」

海未「…………」

ことり(……海未ちゃん、すごく辛そう……なんていうか、気持ちがどんよりしてる感じ……)

ことり「海未ちゃん、平気じゃなさそう」

海未「……そんなことないですよ? 体調は十分に回復してますし……」

ことり「お願い、海未ちゃん……自分を責めないで」

海未「……え?」

ことり「穂乃果ちゃんを助けた結果、自分が練習に遅れちゃうとか、すぐにでもこの怪我を治さないととか、そんなふうに自分を追い詰めちゃだめだよ」

海未「そ、そんなことしてないですよ……本当に、大丈夫です」

ことり「海未ちゃん、嘘ついてるってわかるよ?」

海未「…………」

ことり「ずっと一緒にいたんだもん。そのくらいならわかって当然だよ」

海未「……ごめんなさい」

ことり「もう謝らないで」

海未「……はい。……この体が、動くたびに痛むんです。その痛みに、いつも負けてしまう……私は本当に弱い……そう思うと、なんだか……」

ことり「……海未ちゃん……うっ、ぐすっ」

海未「こ、ことり? どうしてことりが泣くんですか?」

ことり「だってぇ……ぐすっ、海未ちゃんが辛そうなのに……私、何もできなくて……えぐっ」

海未「そ、そんな、ことり……泣かないでください」

ことり「…………うぅ……でも、でもぉ……ごめんね海未ちゃん……ごべんねぇ……ぐずっ、うぅ……」

海未「……ぐっ……ことり……」

ぎゅうっ

ことり「……海未ちゃん?」

海未「……はぁ……はぁ……痛い、苦しい……でも、それよりも、私のために涙を流す人を見る方が……私はつらいです……」

ことり「……海未ちゃん……」

海未「ことり、どうやら私は間違っていたようですね……私はもう大丈夫です。私自身の気持ちばかり先に行ってしまっていた……でも、それじゃあダメなんです。私達は、人を笑顔にさせるスクールアイドルですから……私達が皆に、笑顔を届けてあげないと……ね?」

ことり「……うん……うん」

海未「それで……穂乃果は?」

ことり「……行かない? って聞いたら、『海未ちゃんになんて謝ればいいのか、よくわかんない』って……」

海未「……随分と穂乃果らしくないですね……」

ことり「……だよね……」

―穂乃果の部屋―

穂乃果「……………………」

雪穂「……お姉ちゃーん、大丈夫?」

穂乃果「へ? あ、雪穂……大丈夫だよ、今はなんとも……」

雪穂「まあ、転んじゃった怪我くらいなら大丈夫でしょう……そうじゃなくてー、元気ない方! どうしたの?」

穂乃果「え、元気ないように見える?」

雪穂「見えるよー、普段バカみたいに元気だから」

穂乃果「ば、バカみたいなの?」

雪穂「あ、もしかして、男にフラれた?」

穂乃果「そ、そんなんじゃないよ!」

雪穂「ふーん、どうだか?」

穂乃果「ち、違うの! 海未ちゃんの事で……あ……えと」

雪穂「? 海未さんがどうかしたの?」

穂乃果「……これは、雪穂は知らない方がいいよ」

雪穂「えー? なにそれ、お姉ちゃんかっこつけてもぜんぜんかっこよくなーい」

穂乃果「別にかっこつけてるわけじゃないもん……」

雪穂「ふーん……? あ、そういえば、もうすぐライブらしいじゃん」

穂乃果「あ、うん、そうなの」

雪穂「私見に行くから。失敗すんなよ~?」

穂乃果「もー、大丈夫だよ!」

雪穂「えへへ、頑張って! お姉ちゃん」

穂乃果「あ、雪穂」

雪穂「ん?」

ぎゅっ

雪穂「……へ? お姉ちゃん?」

穂乃果「……ありがとう……ごめんね、心配かけて……」

雪穂「う、うん……お姉ちゃん……早く元気になってね」

穂乃果「……うん、ありがとう」

―生徒会室―

絵里「…………」カチカチッ

絵里「……情報は増えてない……か」

絵里「はぁ……」

絵里(来週のライブまでに、この問題を解決しておきたかったけど、難しそうね……それにしても、犯人はいったいどこで何をしているのかしら? 人一人を手にかけるところまで行ってるのよ? それなのに、平気でいられるの……?)

絵里「……また、アンチスレは更新されてるわね……」

絵里「気にするだけ無駄っと。明日も頑張らないと……」

絵里(……何を頑張るのかしら? 犯人探し? そんなもの頑張ってどうするのよ……)

絵里「……でも、やるしかないわよね……誰かがやるしかないのよね?」

絵里(犯人に近づけば近づくほど、真実を知れば知るほど、泥沼にハマったように苦しい答えが返ってくるかもしれなくても……だったら……)

絵里「……私が、皆のために……」

―翌日、屋上―

絵里「よし、今日はここまでにしましょ」

にこ「はひぃ、疲れたぁ……」

花陽「もう足が動きません……」

真姫「でも、だいぶ練習は形になってきてるし、いい流れがこっちに来てるわよ」

凛「こっち?」

真姫「……あんな脅迫してきたやつの思い通りになんてさせない……」

凛「……そっか、そうだよね。頑張らないとね!」

ことり「ねえ、皆で海未ちゃんの所に行かない?」

絵里「え?」

ことり「海未ちゃん、結構さみしがってるし、皆の事、心配してるし……元気な皆の姿を見たら、きっと海未ちゃん喜ぶと思うんだけどな」

希「ウチは別にいいけど……」

穂乃果「…………」





穂乃果「……行こう」



ことり「ほ、穂乃果ちゃん……」

穂乃果「私、まだ海未ちゃんに、何て言えばいいのかわかんない……でも……」

穂乃果「行かないと、きっと後悔するって思って……」

凛「凛も行くにゃ~!」

花陽「私も行きます!」

真姫「……仕方ないから、ついて行ってあげる」

にこ「海未ちゃんの様子も見ておきたいしね……にこは賛成だわ」

希「ウチも」

絵里「私はパス」

穂乃果「ええ!? 絵里ちゃん、どうして!?」

絵里「どうしても外せない用があるのよ」

穂乃果「むぅ~、それならしょうがないけど……」

絵里「……ごめんなさいね、穂乃」

穂乃果「じゃあ明日は絵里ちゃんも来てよね!」

絵里「……へ?」

穂乃果「海未ちゃんを皆で支えてあげようよ……ね?」

絵里「……ハラショーよ、穂乃果……分かったわ。明日は絶対に行く」

ことり「えへへ、じゃあ、今からいこっか♪」

にこ「よーし、急ぐわよ、皆!」






絵里「……さてと、行動開始よ」

―病院―

穂乃果「海未ちゃーん!」

ことり「海未ちゃーん!」

海未「穂乃果、ことり!」

花陽「う、海未ちゃーん」

凛「海未ちゃーん!」

真姫「海未……大丈夫?」

希「海未ちゃん」

にこ「海未ちゃん!」

海未「み、皆……どうして?」

穂乃果「心配だから来てくれたんだよ!」

海未「そうなんですか……あ、でも、絵里は?」

希「明日は来てくれるみたいよ」

海未「そうなんですか……って明日!?」

穂乃果「うん、明日も来るからね! 明後日も来るよ! 海未ちゃんが元気になるまで毎日来るよ!」

海未「ほ、穂乃果……」

真姫「そういうこと、だから早く元気になりなさいよね?」

花陽「つ、次来るときは、一緒においしいご飯も差し入れしておきますね!」

海未「……皆」

ことり「そういうこと。海未ちゃんは1人じゃないよ」

海未「ふふっ、そうみたいですね……今なら、この痛みにも耐えられる……そんな気さえしてきます」

凛「じゃあ、皆でトランプして遊ぶにゃー!」

にこ「あくまで病院なんだから、そんなアホみたいなことをしてる場合じゃないわよ!」

希「ぷっ、あははは……!」

海未(それから皆は、しばらく談笑した後、夕方に帰っていきました……元気そうでよかった……)

海未(そう思うと同時に、また孤独に耐え続ける長い夜が来ます……長い長い、夜が……)

―カエリミチ―

穂乃果「あー、楽しかった! 行ってよかったよ、今日のお見舞い!」

ことり「えへへ、そうだね。ほかの皆も楽しそうで、よかった♪」

穂乃果「ことりちゃんにぎゅー!」

ことり「きゃあ!? どうしたの?」

穂乃果「……ありがとう。ちょっと最近、私らしくなかったから、さ……心配かけちゃってごめんね?」

ことり「……本当だよ」

穂乃果「あ、やっぱり怒ってる?」

ことり「……おこです」

穂乃果「うえぇ……ごめんなさい……」

ことり「でも、元気が出てくれてよかったよ♪」

穂乃果「こ、ことりちゃん……」

ことり「行こっ♪ 穂乃果ちゃん♪」

穂乃果「うん!」

???「…………」

???「…………」チャッ

ことり「それでね、そしたら……」

穂乃果「ふふっ、なにそれぇ! あははっ!」

???(今はもとに戻るべきじゃない……)

???「……死ね、μ's」

バァンッ!!

穂乃果「…………え?」

穂乃果(穂乃果の目の前で……突然、ことりちゃんが動かなくなった……)

穂乃果(ことりちゃんの頭に、銃弾が突き刺さって……こ、こと、ことりちゃん……が……)

穂乃果「こ、ことりちゃん!!」

穂乃果「い、急いで……きゅ、救急車……救急車を……」

バァンッ!!

穂乃果「ぐっ……!? ……う……そ……」



今日はここまで

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