メイマスモゴリア「さあさ寄ってらっさい見てらっさい、レアげなSSここにござい!」 (115)


リンカ:魔法技術によって他の生物と魂をリンクさせた者。
    その生き物の能力を自分のものとして使うことができる。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1407416602


メイ「――と、いうわけで! とうとう始まったわけだけど、どう? 少年。わくわくしちゃってる?」

カズト「いきなりなんだよ。何が始まったって?」

メイ「なんだと思う? 当ててみ当ててみ」

カズト「それでわかるわけないだろ普通」

メイ「ヒントはね、高次元観測存在とか近似世界鏡面絵巻とか。あとカタティカライティンガー」

カズト「……余計わからないんだけど。特に最後」

メイ「分かりなさいよービビッと。触覚的なあれこれをフル活用してさ。せっかく生えてるんだし使わないと錆びちゃうって」

カズト「生えてねえ」

メイ「なら生やす?」

カズト「遠慮しとく」


メイマスモゴリア(メイ):カズトのリンク相手。魔法使い。霊魂体でありカズトにしか感知できない。

高城航斗(カズト):メイにリンクされ現代日本(おそらく)から異世界に引っ張りこまれた少年。


メイ「なにようあると便利なのに。砂糖探すときとかさ。あの時生やしとけばよかったと思うこと請け合いよ?」

カズト「こっちはそんな日来ないと請け合っとくよ」

テイカ「カズト? どうかしたの?」

カズト「いや、メイがまたわけわかんないこと言ってて」

テイカ「なんて?」

カズト「さあ。何か始まったとかなんとか」

テイカ「ふうん?」

アズラ「相手しちゃ駄目ですテイカさん……どうせまたくだらないこと……」

メイ「なんだとチビガキーうりうりうり」

カズト「よせって。どうせ触れらんないけどさ」


火曜テイカ:ドラゴンリンカ。固定化能力を持ち、本人が意識している限り動かすことや傷つけることはできない。

銀河アズラ:アイボールリンカ。遠隔透視感覚を持つ。


カズト「で? 何が始まったって?」

メイ「だめだめ自分で考えない子にはおねいさん教えなーい。せいぜい苦しみ悶えて転がりぬくがよいぞ」

カズト「そこまでして知りたいことでもないかな正直」

メイ「あ、そう? ならいいや」

カズト「なんだよ軽いな」

メイ「まあ別に大したことじゃないし? 適当に流しといてくれればいいよ」

カズト「そう言われると逆に気になるっていうか」

メイ「でしょでしょ? これぞ押して駄目ならドン引き作戦。失って気づくそのけったいさ。あ、やっぱアレすげウゼかったなとかなんとか」

カズト「なんか知らないけどマジでウザったいなー」

テイカ「ええと、カズト? そろそろ教室だけど。大丈夫?」

カズト「ああうんごめん適当に流しといて」


教室

テイカ「おはよー」

ハナ「はいほーい」

エコ「おはよ」

カズト「なんだあれ」

テイカ「……なんだろ」

メイ「なんかあるね」

ハナ「ふんふんふーん、ハナちゃん今日もぜっこーちょーう。あまりに調子がいいもんだからーテンション汁がだーらだら」

アズラ「……テンション汁……」

ハナ「あまりに噴き出てあふれるしー、よしこれ売って金にしよーう」

テイカ「買う人いるのかな……?」

カズト「俺に聞かれても」

エコ「わたしもらおかなー」

カズト「なんで」

エコ「玄関脇のタンポポ元気ないから」

カズト「やめといた方がいいよ多分」


遠藤エコ:キャットリンカ。ツインテールドキャットの身体能力と感情毒を持つ。

鋼俣ハナ:レプラコーンリンカ。手先が器用。特異な発明品を産出する。大きな音に弱い。


カズト「何してるの?」

ハナ「お、カズっぴハナちゃんがいじくりまくりのコレ気になりーのだったりするん?」

カズト「そりゃそれだけ大きいのが真ん中に鎮座してれば嫌でも気になるよ」

メイ「やったらでかいわねー。いろいろ飛び出てるし。なんだろ。魔界とかによく似たようなのがいた気もするけど」

アズラ「……邪魔くさい……」

エコ「でもいいものらしいよ」

カズト「知ってるの?」

エコ「ん。全然」

ハナ「あんまり噂話しちゃめーよ噂料とるよ。でもあれそしたら噂させた方が儲かるか。よしじゃんじゃん噂しなー! 札束の海を見たくはないかー! イエー!」


テイカ「で。なんなの?」

ハナ「途端に噂話やめる奴ハナちゃん嫌いだなー朽ちればいいのに。まいっか。これね、ハナちゃん自信の大発明品。絶賛特許申請中だからパクったら枯らすよ」

カズト「発明品?」

ハナ「そ。ハナちゃんワークオブアートその二千百九十二くらい。これから動かしてみるんだけど、どう? 見る?」

カズト「ちゃんと動くかもわからないのに特許申請?」

ハナ「細かいとこ気にする奴もハナちゃん嫌いだから枯らそうと思います。これ飲んで。おいしいおいしいテンション汁」

カズト「枯らす言われて飲む奴いないだろ」


ハナ「ちぇー、せっかくかき集めたのに。採算取れんよ損したよ」

テイカ「それで、なんなのこれ。動くの?」

ハナ「うん。すっげ動くよ。黒いツルテカカサコソもかくやのレベルで」

テイカ「それは……嫌かな……」

ハナ「だーいじょうびだいじょうび。安全面は保障するよ。虫退治用戦闘瓶にも絶対負けんよ」

テイカ「その方向の安全性は心配してないけど」

ハナ「マジで? あーあまた損した。安全性にかけるコストも馬鹿にならないのに。まあいいけど。それじゃ動かそか」

テイカ「なんで耳栓するの?」

カズト(嫌な予感しかしないなあ……)


ハナ「と、いうわけで! レディースエーンジェントゥメーン! 準備できたか金あるかー! あるなら前売り券がお安いよ! 今ならS席0.2%引き!」

アズラ「安くない……」

ハナ「ちびっこがなんか言ったっぽいけど耳栓してるし聞こえなーい! 文句は相談窓口までお願いね。適切に聞きつつ金取るよ!」

発明品「ガショーン」

ハナ「と、言ってる間に始まりゃー! ハナちゃんワークオブアートその二千……なんだっけ。まあいいや! 目ぇかっぽじってよく見てなー!」

発明品「……」

カズト「……?」

テイカ「あれ?」

発明品「…………」

メイ「故障?」


発明品「カリ……」

テイカ「?」

発明品「カリカリカリカリ……」

エコ「ツナ缶!」

メイ「えー……まさかのゲムグクリ・ムンジャラフゴルキャーと同能力?」

発明品「カリカリカリキャリキャリキャリ……キュララララ! ギョラララララララ!」

カズト「うるさっ!」

発明品「ギョン、ギョーン!」ガタン!

カズト(動き出した?)


発明品「ガガガッガガガッ!」バキ! ドゴ!

テイカ「暴れだした!? なんで!」

ハナ「なんでとか! 言わないーでー絶対ー」

カズト「いやなんなんだよあれ!」

ハナ「ハナちゃん読唇術で聞き取るけどうーんよくわかんない。超絶丈夫ってことぐらいしか。あと根気強いっぽい。それでいて大胆」

発明品「ガッキーン!」

テイカ「なんか誇らしそう……」


発明品「キュラキュラキュラキュラ!」ガスガス!

アズラ「机が……」

発明品「キュイーン」

アズラ「!」

テイカ「危ない!」


 ガッ!


発明品「キュ……」ギギギ

テイカ「この……!」ギギギ


カズト「メイ!」

メイ「あーはいはい。やっぱりこういうシチュなわけねー。おねいさんちょっぴし悟ってきた。えらい?」

カズト「いいから!」

メイ「ほいさ、混声螺旋の破壊唱!」


 ゴウッ!


発明品「っ……」ズン……


ハナ「あら」

テイカ「はあ……」

ハナ「超絶丈夫っていってもこの程度かー。めっちゃ硬太郎とか付けようと思ってたのに。残念」

テイカ「ちょっと、ハナ!?」

ハナ「うえいハナちゃんへの尖った非難警報を感じちゃう。まあまあまずはハナちゃんの話を聞くがよいよ」

テイカ「話?」

ハナ「うん。被害補償はちゃんとするよーて。大丈夫、ハナちゃんちゃんと保険かけてあっから。じゃ、あとは任せたよ支払国のアズランド」

アズラ「え」

トアコ「何を盛り上がっている」


八鹿トアコ:リンカ訓練校トアコ班教師。ムーンウルフリンカ。


カズト「先生」

トアコ「うちの班がうるさいからと呼ばれた。仕事を増やすな。ねじるぞ」

テイカ「ええと、先生……これはですね」

ハナ「何でもないよー。だって何にも起こってないし。ほらほら平和な空気」

アズラ「……さすがに無理がある……」

トアコ「そうか何もなかったか」

カズト「え?」

トアコ「確かに変わった様子はない」

カズト「いや、でも。苦情が来てたんでしょう?」

トアコ「来た。だが教室に変わった様子がなく何もなかったならば気のせいだったのだろう。仕事に戻る」

カズト「いいんですかそれで」

トアコ「いやよくない。気のせいでわたしを呼び出した馬鹿者の奥歯は折っておこう。以上だ」

カズト「……そですか」


テイカ「なんか朝から疲れた……」

ハナ「同感ー」

アズラ「……どんなメンタル……」

ハナ「お、なに? 喧嘩売ってる? 絶賛発売中? ハナちゃん差し置いて儲けようったってそうはいかないぜよ?」

エコ「……」

カズト「? どうかした?」

エコ「んー? えとね。窓の外にね」

カズト「何もないけど」

エコ「うん。やぱなんでもない」

カズト「そう?」

エコ「~♪」

つづく
秋田の個性は尖りすぎだと書いてて改めて思いましたまる

ごめんありがとう
とりあえず泣き言だけはもうやめとくよ


……

テイカ「片付け終わったー……」

カズト「とりあえず壊れた机はどけといたけど」

アズラ「……減りすぎ……」

ハナ「いやーすっきりしたね! 土地が広いよビジネスチャンス! これ転がして大枚稼ぐ、いやーハナちゃんベリベリスマート! 笑いがノンストップレボリューショーン!」

テイカ「はあ……」

カズト「どうする?」

アズラ「沈めましょう……池に深ーめに……」


テイカ「じゃなくて。壊れた机を捨てるのと減った分の補充を何とかしないと」

カズト「いつもはどうしてるの?」

テイカ「そんないつもこういうことあるわけじゃないから……壊れたのはまあゴミに出すとして、でも学校の備品だから届けないと。補充もそこでできるかも」

カズト「じゃあさっそく行こうか」

ハナ「お? ハナちゃんの出番?」

テイカ「……ハナは待ってて。またややこしくなりそうだし」

ハナ「マジで? 今から超高機能モードになろうとしてたのに。ハナちゃんお役立ちタイムを邪魔する奴はやっぱり枯れるべきだと思うなー」

カズト「あれ?」

アズラ「……?」

カズト「あ、いや、エコがいないなって」

テイカ「え、ほんと?」


ハナ「サボりだね。エコっちどうしようもない不良だから」

テイカ「ハナが言う……?」

カズト「まあいいか。行こう。急ぐことはないけど遅くなるとよくないよ」

テイカ「そうだね、わかった」

ハナ「うーんやっぱ改良が必要だよねー。ハナちゃんエキスを究極まで注ぎ込んでぎっとんとんになったような奴じゃないと。うーん」

アズラ「やっぱり今のうちに始末しておいた方が……」

テイカ「……」

カズト「……迷うの?」


……

テイカ「ええ、まあ。いえ、ですから特に悪意があったわけではなくて。本当にただの事故で……」

カズト(結局テイカに任せる形になっちゃうんだよな……テイカがそういうのが好きっていうのもあるけど)

テイカ「事故で十三も机は壊れないのは確かにそうですけど……でも仕方ないじゃないですか」

カズト(本当はよくないんだろうけど)

テイカ「わたしだって頑張ってるんです……ホントです」

カズト「……テイカ?」

テイカ「好きで例のゴキ……うう……軟膏を使ってたわけじゃないし好きでワサビ塗れになったわけでもないし」

カズト「テイカ」

アズラ「テイカさん」

テイカ「う……」

カズト「う?」

テイカ「うあああああん! ヨゴレなんかじゃないのにー!」

カズト「アズラちょっとテイカをお願い。後は俺が説明しとくから」

アズラ「……分かった……」


カズト「よし戻るか」

メイ「あの子も相当メンタル弱めよねー」

カズト「真面目な分苦労も多いんだよきっと」

メイ「わたし真面目だけどストレスないし」

カズト「説得力ないなー」

メイ「ホントだって。マジでストレスないんだから。コツ聞きたい?」

カズト「いや。……?」

メイ「こう、ゆるだらびろんの……ってどうかした?」

カズト「え? あ、いや」

メイ「思春期特有のあれ? 青春爆発ズルヌル妄想タイム」

カズト「違うかな。なんていうか、視線? みたいのが」

メイ「ふーん? わたしは気づかなかったなー」

カズト「ん……まあいいか」

つづく


教室

テイカ「ううう……ヨゴレじゃないもん空気じゃないもん……」

アズラ「よしよし……」

カズト「……大丈夫?」

テイカ「あ、カズト……おかえり」

カズト「うん。なんていうか、お疲れ」

テイカ「おつかれ、かあ……わたし何かに憑かれてるのかなあ……」

メイ「まあリンカだし? 憑かれてるといえば憑かれてるのかもね」

カズト「ええと……。あれ? エコはまだ戻ってないんだな」

ハナ「とことん猫っぽいからねー、エコぴょんいつ戻ってくるかなんて誰にも予想できないよ」

カズト「そっか。……ところで何やってるんだ?」

ハナ「めっちゃ硬太郎改めトテツモ硬太郎の設計図作成」

カズト「そ、そう」


テイカ「? エコに何か用?」

カズト「用といえば用……かな?」

テイカ「どんな?」

カズト「大したことじゃないんだけど……視線がね」

テイカ「視線?」

カズト「さっきなんだか見られてるような感じがしてさ」

テイカ「それをエコに探ってもらおうってこと?」

カズト「ああ」

メイ「神経質すぎない? やーねー自意識過剰な年頃って」

カズト「違う」


カズト「確かに見られてるのが俺じゃなければただの過敏なんだろうけど」

メイ「ほほーう、自分が特別だと思うわけね。大丈夫、おねいさんそういう思い上がった少年も受け入れ可能よ。心の広い超聖女様に懐くがよいよ」

カズト「いちいちうるさいなー」

テイカ「そっか。ハンドレッドス」

カズト「そういうこと。ただでさえ興味を持たれたりぶつかったりしてるから。用心してしすぎることはないだろ?」

テイカ「うん、それは確かに」

カズト「何もないなら何もないでよし。あるのならそれもよし。まあエコの力が借りられないとどうしようもないけど」

テイカ「どうかなあ。エコ結構、っていうかすごく気まぐれだし」

カズト「まあ頼むだけ頼んでみるよ」


「うんおっけ。引き受けたよ」


カズト「え?」


エコ「よっと」スタ

カズト「エコ?」

エコ「任務かんりょー。これあげる」

カズト「これ……って」

少女「きゅう……」

カズト「誰?」


エコ「んとね、カズトを見張ってたやつ。朝も窓から覗いてた」

カズト「え? じゃあこの子が……」

テイカ「ハンドレッドス?」

アズラ「……幼すぎ……」

ハナ「ちびっこ王国アズランド、人のこと言えてないね」

アズラ「……うるさい」

少女「ううん……」

カズト「だいぶ深く気を失ってるっぽいけど何したの」

エコ「聞きたい?」

カズト「気にはなるかな」

エコ「口で説明するのは難しいかなー。体験してみる? こう、ぐるぐるどぎゃーって感じだけど」

カズト「……やめとく」

エコ「残念」


テイカ「とりあえず……先生呼んでこようか? ハンドレッドスだったら報告しないわけにはいかないし」

カズト「どうかな。まだあいつらと決まったわけじゃないから」

エコ「話聞けば早いよ」

カズト「でも気絶してるし」

エコ「起きろー」ブンブン

少女「っ……」

カズト「!?」

エコ「起きないとどんどん加速するよー」ブンブンブンブン!

少女「っ……っ……!」

テイカ「ちょっと、エコ!?」

エコ「ほいっと」ポイ

少女「……! わあああ!?」

カズト(危な……床にぶつかる!)

少女「ひいいい!?」トン

カズト「え?」


少女「うわーんパパぁ天国のお婆ちゃんが手招きしてたよぅ……っ」

カズト(着地した?)

メイ「器用だねー」

少女「なんでか知らないけどお婆ちゃんぐるぐる回ってるし『地平の彼方に行きたくないか』しか言わないしやたら渋い声だったし……怖かったよぅ……っ」

カズト「ええと」

エコ「あとお願いね」

カズト「えー……」

テイカ「あの、大丈夫?」

少女「はっ……トアコ班の、確か、ヨゴレさん……!」

テイカ「なんなの。ホントなんなの」

アズラ「テイカさん……しっかり……」


カズト「君は?」

少女「あ。ええと、その……」

テイカ「ハンドレッドス?」

少女「え?」

カズト「朝から俺を見張ってたよね?」

少女「それはその……はい」

カズト「ハンドレッドスの命令?」

少女「? 違います」

カズト(違う、か。まあ嘘をついている可能性もあるけど)

カズト「じゃあ一体なんでそんなことを?」

少女「それはその……あの」

カズト「うん」

少女「カズトさんにお願いがあって……来ました」

カズト「……うん?」

つづく

そういえば微妙にオリキャラ注意かもです……今更申し訳ない

ブルスぺさんの活躍というか出番は雰囲気的に確定してるっぽげ
でもそれが本人?の満足いくものかは誰も保障できないんだろうなと思ったり


少女「どこから話したものか……カズトさんの話は前々から聞いていて。なんだか不思議というか妙なリンカだって」

カズト「妙、ね」

少女「はい。いえ、妙というかけったい、けったいというか胡散臭い、胡散臭いというか――」

カズト「いや……そこはいいから先に進まない? 微妙に傷つくし」

少女「すみません……とにかく怪しいけれど力のあるリンカだと。ハンドレッドスと真正面からやりあっても負けないぐらいの」

カズト「……」

少女「噂だと魔法使いとリンクしてるとか。本当かどうかは知りませんが超聖女メイマスモゴリアがリンク相手だという人もいるそうですね」

メイ「いう人もいるってかその通りだしねー」

少女「わたし、それを聞いたらいてもたってもいられなくなって……どうしてもカズトさんに会いたくなって……」

カズト「え」

少女「でも、いざ会いに来たらどう気持ちを伝えればいいか分からなくて……覗きみたいな失礼なことしちゃって……」

テイカ「……!」

少女「でも、今度こそ正々堂々とお願いしようと思います。わたし、キリネ班のミカノといいます。わたしの――」

テイカ「ちょ……ちょっと待」

少女「わたしのリンクを解除してください!」


カズト「……ん?」

テイカ「……え?」

メイ「あれ?」

少女「? どうかしました?」

カズト「あ、いや」

テイカ「別に……」

メイ「せっかくクサそげ顔スタンバってたのにー」


カズト「ええと、気を取り直して。今、リンクの解除って言った?」

少女「はい」

カズト「それはまたどうして」

少女「その……わたし、才能なくて……」

カズト「才能」

テイカ「……さっきの身のこなしを見るにあなたキャットリンカ?」

少女「はい。でもその割に運動能力は低いし毒の制御も全然だしで、その、落ちこぼれです……」

カズト「だからリンクを解除したいと」

少女「はい……カズトさんが本当にリンクの創始者メイマスモゴリアとリンクしてるなら可能じゃないかと思って」


アズラ「……軟弱……」

ハナ「お? 手厳しいねアズにゃ」

アズラ「だってそう……覚悟してリンカになったのにあっさり投げ出すなんて……」

ハナ「んー。ま、確かにそかもね」

少女「……。パパが」

アズラ「……?」

少女「わたし、パパのお手伝いがしたくてリンカになったんです」

テイカ「お父さん?」

少女「はい。パパは守備隊の人間です」

テイカ「え……」


少女「いつも街のために頑張ってて。でもいつも大変そうで……少しでも助けになりたいなって。あとなによりパパみたいな立派な人になりたくて」

テイカ「……」

少女「でも……でもわたし才能ないから」

アズラ「……。やっぱり軟弱……」

テイカ「アズラ」

アズラ「……だって、自分を鍛えることを怠って泣き言だけ……」

テイカ「それは……」

少女「いえ、その通りだと思います。でも……」

カズト「……?」

少女「学校の外に出るのには制限がかかってたり守備隊との接触にはもっと制限がかかってたりで……」

カズト「もしかして、お父さんと会えてない?」

少女「はい……もうずっとです」


少女「確かにリンカになるときには覚悟していたつもりでした。落ちこぼれてることも仕方ないです。班のみんなも優しいです。でも……パパに会えないのはつらいです……」

カズト「……そっか」

テイカ「……」

少女「カズトさん、わたしのリンクの解除をお願いできませんか……?」

カズト「……」チラ

メイ「……」フルフル

カズト「……」

少女「無理なんですか……?」

カズト「……」

少女「……そっか。そうですよね。ごめんなさい、失礼しました」

カズト「ごめん」

少女「いえ、わたしの方こそ無理言ってすみませんでした……それでは」


カズト「うーん……」

テイカ「……」

アズラ「……気に入らない……」

ハナ「やけに不機嫌だねースパルタ王国アズランド」

アズラ「……別に厳しくない……自分を鍛えて守備隊に入ればいくらでも会える……」

ハナ「そかな。まあそかも。でもマジにキッツい落ちこぼれだったら逆に一生離れ離れかもねー」

アズラ「それは……じゃあ本当にリンクを解除してやる……?」

ハナ「うーんそれもキッツそうかな。カズきち無理そうなんしょ?」

カズト「メイは、できないって」

ハナ「仮にできたところで後が大変じゃんね。カッコも管理局も黙ってないよー。
   勝手にリンカやめるなんて各方面に喧嘩の売り抜けボロ儲け。あ、すんげ魅力的な響き」

テイカ「……」


カズト「テイカ?」

テイカ「あ……え? 何?」

カズト「いや。どうかした?」

テイカ「ええと、ううん。何でもない」

エコ「さてと」

ハナ「おんや。猫娘はどこぞへ行くのん?」

エコ「うーん? ひみつー」

カズト「あの子の見張り?」

エコ「あれ、バレバレ?」

カズト「一応ハンドレッドスの可能性も抜けてないからだろ? 頼んでいいか?」

エコ「いいよー任せといて。んじゃ」


カズト「あとは……先生への報告は必要かな?」

ハナ「カズひょん結構お堅いね、頭カッチンだね」

テイカ「……ハンドレッドスかどうかは確定してないし、リンカをやめたいっていうのも報告するようなことじゃないと思う」

ハナ「だねー、別にリンカやめられるわけでもなし報告すれば無駄にあの子の立場が悪くなるしね」

カズト「優しいな。珍しく」

ハナ「カズちん冗談キッツいーハナちゃんいつも優しいよーこのネタでゆすって稼ごうなんて全然考えてないよー」

カズト「……まあいいか」

テイカ「……」

アズラ「……テイカさん……?」

テイカ「ごめん、ちょっと外出てくる」

カズト「テイカ?」

テイカ「大丈夫。何でもないから。それじゃ」


メイ「なんだろねー、何か感じるところでもあったのかなあの子」

カズト「……屋上かな」

メイ「ん?」

カズト「ごめん、俺もちょっと外出るよ」

アズラ「……テイカさんを……?」

カズト「違……いや嘘ついてもどうせ見えるか。うん、俺はテイカを追うよ。なんか心配だし」

アズラ「……わたしも行きます……」

カズト「いや。アズラはそれより例のあの子の監視を続けてくれないかな。今も見てるんだろ?」

アズラ「……」

カズト「ありがとう。それじゃ」


屋上

テイカ「……」

カズト「テイカ」

テイカ「ん……」

カズト「隣、いい?」

テイカ「……うん」

カズト「……」

テイカ「……」


カズト「やっぱり気になる? あの子」

テイカ「うん、まあね。こんな性格だし」

カズト「テイカのいいところだと思うよ」

テイカ「『価値なんてあるか分からないのに助けてくれた』だっけ。あれ嬉しかった。わたしを丸ごと肯定してもらえたみたいで」

カズト「うん」

テイカ「でもね、あの子についてはそれだけじゃないの」

カズト「お父さんのこと?」

テイカ「……そう。どうしても自分と重ねずにはいられなくて。わたしと同じなのかなって」

カズト「……」

テイカ「どうにかしてあげられないかなあ……」

カズト「…………」


カズト「そうだな」

テイカ「え?」

カズト「何ができるかは分からないけど。やる前に全部わかってることの方が少ないか」

テイカ「カズト?」

カズト「やってみて、可能性がゼロだったら諦める。あの子にもそう言う。できそうなことならそれをやる」

テイカ「……」

カズト「とりあえず、やってみよう。テイカも協力してくれる? テイカの力が必要になると思う。多分」

テイカ「……うん!」


……

メイ「簡単に言ってくれるじゃない。自分がカッコつけたいからってさー。結局おねいさんにしわしわしわーっと寄って来るんだから」

カズト「悪い。でもこれはメイが一番詳しいから。頼むよ」

メイ「そうは言ってもねえ、リンクの技ってそんな簡単なもんじゃないの。繋いで切ってが簡単ならこの超天才なわたしがわざわざ創りだす必要もなかったってーの」

カズト「確かにそうだけどさ」

メイ「おまけに二百年前とは微妙に技の形が変わってるっぽいしさー。あのなんとかいうジジイも言ってたじゃない、水と油がごっちゃになったような状態って」

カズト「権堂先生か」

メイ「そんなふうに混ざっちゃったものを今更分けられる? あんたやってみなさいよチマチマやって発狂するわよ」

カズト「うーん……」

メイ「でも、まあ全くできないとも言えない、かな?」

カズト「え?」


カズト「可能なのか?」

メイ「揺らぎ落とし。リンクしてる魂だけを狙って破壊すれば、まあ理論上はできなくはない。はず」

カズト「いや……でもそれって」

メイ「問題が二つ。霊魂体に効くような揺らぎ落としを仕組む方法はまだわたしの知識にはない。仮にできたとしても」

カズト「人間側の霊魂体も傷つく恐れがある……」

メイ「そゆこと」

カズト「……」

メイ「まあもう一つ方法があるとすれば覚醒夢の箱。あれがあれば多分可能よね。何しろ傷ついた霊魂体を回復できるくらいだもの」

カズト「あれはもうない……」

メイ「もう一回あの婆ちゃんに呼び出させればいいんだけど、まあ普通に無理よねー」


カズト「どうしたもんかな」

メイ「少しでも可能性を上げるならまずは知識を入れる必要があると思うなおねいさんは」

カズト「知識?」

メイ「この時代のリンク技術についてもうちょっと知ればまだ目はあるんじゃない?」

カズト「……管理局」

メイ「そ。儀術式を一手に扱ってるのはあそこだからね。詳細が分かれば逆算することもできるかも」

カズト「……でも」

メイ「ま、そうよね。資料やらなんやらくださいって言ってはいどうぞなら苦労はないし当然面倒事は起きるでしょ」

カズト「……」

メイ「――果たして少年にその覚悟はあるや否や。衝撃の結末はこの後すぐ……!」

カズト「うるさい黙れ駄目聖女」

メイ「え! ひどくない!?」

つづく


翌日

カズト「――ってことらしいんだけど」

テイカ「……そっか」

カズト「とりあえずできることはリンク技術の情報集め」

テイカ「それは……難しいね」

カズト「そう。メイの言う通り面倒な事になる可能性はすごく高い」

テイカ「ううん……」

カズト「相当の覚悟がないとできないことだと思う。俺たちにそれだけの理由はあるかどうかがかなり重要になるんじゃないかな」

テイカ「……」

カズト「くどいかもだけど俺はこの世界の人間じゃないから正直言ってちょっと躊躇してる」

テイカ「……カズトにはどうでもいいってこと?」

カズト「いや、外様の人間が勝手して迷惑かけてもいいのかなって、そういう感じの」


テイカ「カズトはよその人間なんかじゃないよ」

カズト「……」

テイカ「カズトはトアコ班の一員。これからはちゃんとそう思うこと。いい?」

カズト「ああ。分かった。……ありがとう」

テイカ「お礼なんかいらないよ。うん、わたし決めた」

カズト「決めた?」

テイカ「そう。わたしは面倒事に巻き込まれることになっても人の役に立ちたいから。だからやる」

カズト「……なるほど。そっか」

テイカ「頑張ろう?」

カズト「了解」

メイ「……」

カズト「クサそーな顔やめろよ駄目聖女」

テイカ「?」


カズト「コホン。とにかく。決心したとはいえ俺たちがミスして面倒が起きたら大勢に迷惑がかかるから。当然慎重に行動しないと」

テイカ「とりあえずわたしは管理局のつてを頼ってみる」

カズト「つて?」

テイカ「前のテストの時に知り合いになった人もいるにはいるし、その……守備隊関係でも少しは顔もきくから」

カズト「なるほど」

テイカ「できる範囲だけのことでも、やらないよりはマシかなって」

カズト「いや。今可能な行動の中では一番いいと思う。俺もなにかできることを考えるよ」

テイカ「うん!」


教室

アズラ「……ぐぐぐぐぐ……」

ハナ「アズランドアズランドー不思議の王国アズランドーなぜなぜどうして勝てないのー」

アズラ「……くっ……」

ハナ「アズちー全部見えるはずなのにーハナちゃん今回ズルなしなのにー……ねえホントなんで勝てないのよ。ん? ん?」

アズラ「……それは……それはっ……」

カズト(今回はカードゲーム的なやつか)


ハナ「まあハナちゃん的には? 儲かりまくって助かるし? アズアズにはそのままの君でいてもらって構わないけど? でも張り合いはないよねー」

アズラ「……潰す……いつか潰す……」

テイカ「ええと。おはよ」

ハナ「おは」

アズラ「おはよう……ございます……」

カズト「何それ。重り?」

ハナ「そ。アズひょん負けがこみこみで。ハナちゃん特製ビルドアップギブスを試着させてやってます背筋ビキビキです」

カズト「……特製も何もただ重りつけまくってるだけじゃない?」

ハナ「重りが特製。重心が一定しないからすごく不安定」

カズト「それでなんかユラユラしてるんだ」

アズラ「……くうぅっ……」


ハナ「ところでところでカズテイカ。結局やることにしたんどうなん?」

カズト「え? 何が」

ハナ「しらばっくれるのよくないよーハナちゃんにも教えるがよい。儲けに情報は必須だし」

テイカ「……昨日のこと?」

ハナ「そそ。どうせほっとけないんでしょ、面白味皆無の真面目カッチン心優しい性根ドストレート共は」

カズト「言い方が引っかかるけど。まあそうかな」

アズラ「テイカさん……? まさか……」

テイカ「うん、そう。あの子のためにできることを探すの」

アズラ「……」

テイカ「……反対?」

アズラ「……当然です……」

テイカ「確かに簡単にはいかないだろうし面倒なことにもなることも考えられるけど、でも放っておけないじゃない」

アズラ「……理解できない。そのために立場が悪くなる可能性もあるのに……?」

テイカ「もうその辺は覚悟済み。後はやれることを探すだけよ」


アズラ「……駄目です」

テイカ「……」

アズラ「わたしはテイカさんにそんな危ないことさせられません……」

テイカ「どうするっていうの?」

アズラ「……止めます……どんな手を使っても……」

テイカ「アズラに何の権利があるの」

アズラ「わたしたちは同じ班のメンバーです!」

テイカ「っ……」

アズラ「心配する権利くらいあるはずです……! それも否定されたら……わたしは……っ」

テイカ「アズラ……」


アズラ「だから……だから……」

テイカ「ごめん。ごめんアズラ」

カズト「……。きっとさ」

アズラ「……?」

カズト「きっとだけどね。テイカも君と同じなんだと思う」

アズラ「同じ……?」

カズト「テイカはこんな性格だからさ、アズラがテイカを心配するのと同じくらいあの子のことが心配なんだよ。多分」

アズラ「……」

カズト「だからさ、黙ってみてろとは言わないからさ。テイカが無茶しないように手伝ってやってくれないかな」

アズラ「……。でも」

カズト「でも?」

アズラ「でも、わたしにはあの子の気持ちは分かりません……」


カズト「……」

アズラ「わたしにはやっぱり……軟弱なことを言ってるようにしか思えない……それでテイカさんに迷惑かけるなんて許せない……」

テイカ「迷惑なんて……」

カズト「テイカ」

アズラ「……それに、父親に会いたいという気持ちも分からない。わたしには、もういないから。理解できない……」

カズト「……。それは逆じゃない?」

アズラ「え?」

カズト「だからこそ会いたいってこともあるんじゃないか?」

アズラ「……」

カズト「勝手な想像だけど。この中で一番あの子の気持ちがわかるのはアズラじゃないかと俺は思ってる」


アズラ「…………」

メイ「語るねー、少年語るねー。青春? 青春ど真ん中? ろくろフル回転?」

カズト「言うなよ。俺もかなり恥ずかしいんだから」

エコ「よっと」スタ

テイカ「あれ、エコ?」

エコ「うんおはよー。なんか話してたの?」

テイカ「あ、うん。まあ」

エコ「そか。ところでカズト、耳より情報あるよ」

カズト「耳より?」

エコ「うん。ちょっと耳貸して」

カズト「?」

つづく

助言もらったのに諸事情によりあまり投稿間隔空けられなかったふがいない


エコ「――とまあ以上」

カズト「……そうか」

テイカ「カズト?」

カズト「うん……よし。分かった」

テイカ「何が? 何が分かったの、カズト」

カズト「テイカ。みんな。ちょっと聞いてほしい」

アズラ「……?」

カズト「とりあえず、今できることが見つかった。と思う」

     ・
     ・
     ・


数日後 夜 校門付近

カズト「……」

メイ「暗いねー暗いーよー夜は暗いし将来も暗いーやっぱり才能ーてー大事よーねー」

カズト「……」

メイ「でーもー、ドンクライ! いつだあってードンクライ! コネさえあれーばー余裕のー」

カズト「いい加減うるさいかな」

メイ「なーによう、これから一仕事だから気分上げてるのに」

カズト「その分こっちの気分が下がるんだよ」

メイ「お? じゃあプラマイゼロ?」

カズト「平然と俺を犠牲にしてるし」


メイ「ま、そんなことよりさ。本当にやるわけ?」

カズト「そりゃまあ。決めたことだし」

メイ「後悔するかもよー」

カズト「そこら辺は今から考えても仕方ないかなと思ってる」

メイ「今考えないでいつ考えるのとは思うけどね」

カズト「そりゃまあそうなんだけど」

テイカ「カズト。お待たせ」

カズト「ん。テイカ」

エコ「きたよー」

ハナ「ハナちゃんとうちゃーく」

少女「……こんばんは」


カズト「ああこんばんは。アズラは……来てないか」

ハナ「一応誘ったけどねー」

カズト「そっか。まあ仕方ないな」

少女「あの……カズトさん。呼ばれてきましたけど、一体何をするんです?」

カズト「ん、ああ。君の願いを叶えるために努力するってとこかな」

少女「え?」

カズト「君の望む方向に行くとは約束できないし百パーセント満足させることもできないと思う。それでも少しは助けになることを願ってる」

少女「……」

カズト「それでもいいかな?」

少女「わたしは…………わたしはやっぱり、パパに会いたいです」

カズト「分かった」


カズト「それじゃあ始めるか。ハナ、準備は?」

ハナ「ハナちゃんいつでもオッケーよ」

カズト「よし、ならさっそく――」


「何を始めるんだ?」


カズト「!」

トアコ「答えろ。何をするつもりだ」


カズト「先生」

トアコ「わたしに断りもせず部屋を抜け出して何を企んでいるのかと訊いている。返答次第ではただではすまん」

テイカ「先生……その、実は」

カズト「管理局に行きます」

テイカ「カズト?」

トアコ「管理局?」

カズト「はい。管理局に行きリンク技術について調べ、この子のリンクを解きます」

少女「……!」

テイカ「カズト、なんで?」

カズト「いいから」


トアコ「本気か?」

カズト「少なくとも正気ではあると思います」

トアコ「それがどういうことか分かっているんだろうな?」

カズト「先生よりは深く理解しているかと」

トアコ「成算は決して高くない。その上成功したらしたで面倒事ばかりだぞ」

カズト「そんな当たり前のことを俺たちが考えなかったとでも?」

トアコ「……」

カズト「何にしろ俺たちはやりますよ。止めますか?」

トアコ「それこそ当り前だろう。考えなかったのか?」

カズト「いいえ」


トアコ「……面倒だが。仕方ないか」

カズト「来るぞ」

少女「あの」

カズト「?」

少女「なんでわたしのためにこんな……」

カズト「多分俺とテイカは面白味皆無の中略性根ドストレートだからじゃないかな」

テイカ「やっぱりその言い方引っかかるなあ……」

ハナ「ハナちゃんは儲けられそげ話なら飛びつかざるを得ないし?」

エコ「おっきー猫はちっちゃ猫の面倒みるもんだよー」

カズト「だってさ」

少女「あ……ありがとうございます。……ごめんなさい」


トアコ「ふっ……」ズダン!

テイカ「はっ!」


 ガキンッ!


トアコ「邪魔するなテイカ!」

テイカ「先生ごめんなさい!」

カズト「ハナ!」

ハナ「はいほいはーい、ハナちゃんワークオブアートその二千……ええと……ハイグレードトテツモ硬太郎! 出番じゃー!」

発明品「ガッショイ!」

ハナ「特許取得のため! ここで見せつけるよん破壊力! 耳栓装着! ゴー! 硬太郎ゴー!」

発明品「ブロ、ブロロロロロロッ!」

カズト「相変わらずうるさいな……好都合だけど」


トアコ「シッ!」

テイカ「く……」

発明品「ギョルロイ!」


 キン! ガッ! ガガッ! ガガガッ!


少女「わわ……」

カズト「下がって」

メイ「めちゃごっつい戦いねー、音がおっも」

少女「あの、これじゃあ騒ぎが大きく……」

カズト「そうだね。まあうまくいくことを願うしかないな」

ハナ「ハナちゃんは全力退避させていただこー」


トアコ「くらえ!」

発明品「ガ……」ガツン!

トアコ「これで終わりだ――」


 バスッッ――!


トアコ「く!?」

カズト(狙撃……アズラ!)


アズラ「……」

『一番あの子の気持ちがわかるのはアズラじゃないかと俺は思ってる』

アズラ「……」

『パパに会えないのはつらいです……』

アズラ「……ふん……」ガショッ!


テイカ「えい!」

発明品「ギュラララララ!」

トアコ「ちッ、ウザったい……」


「焦るのよくないよー」


トアコ「しま――っ!」

エコ「捕まえた。それ!」


 ――ギャルゴシャ!


トアコ「がっ……」


トアコ「っ…………」

カズト「勝った……?」

エコ「今のがぐるぐるどぎゃーだよ、一応」

カズト「……想像してたよりずっと凶悪だね」


「なんだ! 何の騒ぎだ!」


カズト「……!」

守備隊「これは一体……?」

少女「!」

守備隊「どういうことだ、説明を――」

少女「パパ!」

守備隊「……ミカノ?」


カズト「お騒がせしてすみません。うちの班のレプラコーンリンカが変なものを作ってしまって。それでちょっとゴタゴタが」

守備隊「ゴタゴタ?」

カズト「ええ。危険な発明品です。なのでその子を保護してやってほしいんですが」

守備隊「え? いやしかし」

カズト「学校のことに干渉するのは抵抗も問題もあるでしょうが今回は場合が場合です、朝までくらいはどうか」

少女「カズトさん……?」

守備隊「……分かった」

カズト「ありがとうございます。さあ」

少女「あ、えっと」

カズト「ごめん、嘘ついた。俺たちにできるのはここまで。お父さんとよい時間を」

少女「あ……」

カズト「さ、行って」

守備隊「君は例の男のリンカか?」

カズト「はい、高城航斗……あ、いえ。トアコ班の、高城航斗です」

守備隊「?」


トアコ「こ、の……」

テイカ「カズト!」

カズト「まだ動けるか」

メイ「今日は月の力も強めだからね。まだもうちょっと頑張らないとおとなしくなんないよ」

カズト「みんな、あともうひと頑張り!」

テイカ「うん分かった!」

エコ「おけーい、次はめきょめきょぐしゃりでいってみよー」

発明品「ガショショーン!」

トアコ「――ガアアアァッ!」

     ・
     ・
     ・


翌日 朝 教室

トアコ「でだ」

カズト「はい」

トアコ「結局こういうことか? すべては騒ぎを起こしてあのミカノとかいう少女の父親をおびき出すための狂言だったと。管理局に赴くというのは嘘だったと」

カズト「ええ。ミカノの父親があの晩校門前に詰めることになっていたのはエコから聞いて分かっていましたから」

トアコ「その狂言にわたしを利用したのか。知らなかったのはわたしだけか」

カズト「正直に説明していても協力は得られなかったでしょうから」

トアコ「当然だ」

カズト「でも放っておくという選択肢はありませんでした。とはいえ本当にあの子のリンクを解くのは技術的にも難しくそれ以外にも問題は多い。一応最適解を選んだつもりです」

トアコ「……」

カズト「気に入りませんか?」

トアコ「いや。筋は通っている」

テイカ「ええー……」

アズラ「どんだけ……」

トアコ「何か問題があるか?」


トアコ「まあとにかく、面倒は最小限に抑えられミカノの望みは一部叶えられた。最良の結果とも言い難いが最悪の事態とも言えない」

カズト「ですね」

トアコ「だが次からはわたしに相談しろ」

カズト「したら協力してくれるんですか?」

トアコ「場合による。筋が通っていれば手伝うし通っていないもしくは通っていても立場上仕方のないときは保障しない」

カズト「そうですか……」

トアコ「それでも相談はしろ。わたしの生徒である以上勝手な真似は許さん。なにより仲間外れは寂しいからな」

カズト「……」

トアコ「冗談だぞ」

カズト(分かりにくい……)

トアコ「以上だ。仕事に戻る」


テイカ「――ふはあ怖かった……」

ハナ「正直殺されてもだいぶ文句言えない状況だったよねー」

カズト「騙されていわれもない感じに生徒の反抗にあってその上発明品の管理責任も問われてるしな。普通の神経してたらあんな流し方はできないだろうなとは思う」

アズラ「……本当変人……」

メイ「なんつーか自覚がないって恐ろしいわよねー」

カズト「……」

メイ「なに? 自覚がない奴を見るような目して」

カズト「いや」


ハナ「それにしても本当にこれでよかったのカズちー? えらく中途半端な気がしないでもないけど」

カズト「とはいっても。何度も言った通り管理局に殴り込みしても本当にリンクの解除法が見つかるとも限らないし、うまくいってもそれはそれでまずいし」

ハナ「まあそだけどね。でも父親に会わせてやったから全部解決ーてのもどうなわけよ」

カズト「全部解決なんてそんなつもりはないよ。むしろこっちの都合で勝手に引っ掻き回したようなものだしあの子にとってはこれからだろ」

テイカ「これから?」

カズト「ああ。今回父親に会えたといっても一時的なものだから。会ったことでもっとつらくなることだってあるんじゃないかな。今後また会えるとも限らないわけだから」

テイカ「あ……」

カズト「だからここからはあの子の問題なんだよ。俺たちにできるのはここまで」


カズト「いや。というか俺たちはここまでしかしちゃいけない気がするんだ」

エコ「んー?」

カズト「リンカになったこともやめることも、あの子にとっては人生の重大事なはずなんだ。それを他人の俺たちが全部どうにかしてやるなんてちょっといびつかもしれない」

テイカ「そう、なのかな」

カズト「いや俺も断言はできないけど……」

メイ「ろくろ大回転小僧情けなーい」

カズト「うるさいな」

エコ「でもま、あれかもねー。リンカやめたいって理由も結構刹那的な感情ぽかたし。これからおっきくなってくれば変わるかも」

カズト「……」

エコ「うんだいじょぶ。班の友達は優しいって言ってたし問題ないよ。きっとだいじょーぶ」

カズト「だといいね」


テイカ「……さて、じゃあこっちも仕事片付けようか」

カズト「一応俺たちにも昨晩のペナルティかかってるしな」

アズラ「……面倒くさい」

エコ「関わっといてそれはないよー」

テイカ「でも庭の草むしりだけですんでよかったと――」


 ガション!


テイカ「え?」


新発明品「カリカリカリカリ!」

カズト「……」

テイカ「……」

ハナ「あー、うん。ごめんね。これトテツモ硬太郎の後継機、驚天動地硬太郎フォーエバーってんだけど。なんか動き出しちゃったみたい。耳栓装着」

テイカ「ハナ……」

新発明品「ギャルルルルルル!」

ハナ「ええと。その。ここまで来たらハナちゃんもう悪びれない。悪びれたことなんてないけど。ていうかそもそもハナちゃん悪いとこなんて一個もないけど」

アズラ「……殺す……」

ハナ「なんか物騒ワードがつぶやかれた気がするのでハナちゃん退避。まかり間違ってもハナちゃん始末してことを収めようなんて考えないように。ではドロン」

テイカ「またペナルティ増えちゃうじゃない!」

カズト「今更って気もするけどな……」

メイ「んーおねいさん準備おっけーよ。いつでもどんと頼るがよい。触角生やしからゴミ処理までお任せあーれ」

カズト「はあ……じゃあメイ、頼む」

メイ「ほいさー混声螺旋の破壊唱!」

おわり
付き合ってもらってありがとっした
あと巡ル結魂者もうちょっとばかし流行れください

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