横島「ス…スピラ?」 (116)

やあ、俺の名前は横島忠夫。日本屈指のゴーストスイーパー(GS)美神玲子が所長の美神除霊事務所でGSをやっている(自称)超優秀な(自称)爽やかイケメンだ。

そして、そんな俺は今…。

「ここは一体どこじゃぁぁぁぁ!!」
道路の中心で横島は頭を抱え絶叫する。
現在、横島が立っている場所…そこは、現代日本…。いや、現代世界と、かけ離れたSFチックの街だった。

「おかしい…。俺は確かにカオスのじーさんのアパートにいたはずだったのに…。待てよ、スフィア盤とかいうのが光った気が…。まさかあれが原因で」
叫んだ後、ブツブツと独り言を始める横島に、道行く人々が冷ややかな視線を送る。
然し、そんな横島に1人の男が声をかけてきた。

「どうしたッスか?困り事でもあるんスか?」
日焼けをした如何にもスポーツマン風な感じの青年である。
「うおっ!?」
(あん?何だコイツ?チャラそうな野郎だな。おまけにモテそうな面しやがって……じゃねぇ!どうしよう!英語わかんねぇけど、これ英語じゃねぇぞ!)
横島は耳慣れない言語に慌てふためく。

「だ、大丈夫ッスか?」

(くっ…!英語は万国共通のはず…!俺の渾身の英語通じてくれよ!)
横島「ああ…あいあむじゃぱにぃーず!まいねぇいむぅいじゅ!ただお・よこしま!あいきゃんなっとすぴーくいんぐりっしゅ!おーけー?」
(どうだ!)

「…?な、なんスか?」
青年は横島の英語に首を傾げた。

横島「くそったれぇ!!日本人なら日本語だけ喋れてりゃええんや!英語なんぞより、日本語の方が難しいんや!」
横島は号泣し地面を叩き付ける。そんな姿に青年は声をかけた事を内心後悔しはじめていた。


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「言葉も通じんし、どうやって帰りゃええんや……待てよ。俺には文殊があるじゃねぇか!」
横島は懐から小さな珠を取り出した。

「決まってくれよ…翻訳の「翻」!」
横島の持つ文殊に浮かぶ「翻」の文字。そして文殊は輝きを放ち消えていった。

「なな、なんッスか!?今のは!?」
青年は目の前の出来事に驚愕する。

「わ…わかる。よっしゃああ!成功じゃあああ!!」
横島はガッツポーズをとる。

「なんか知らないけど良かったッスね」

「ん?ああ…」
(言葉も分かったし、取りあえず場所の確認だけでもしとくか)
文殊の力で言葉を理解する事に成功した横島は青年に場所を訪ねた。

「何だよそれ!なんのギャグ!?」
横島の質問に青年は腹を抱え笑い出す。

「ギャグじゃねぇよ!さっさと言わんかい!」

「あ~…はいはい。ここは眠らぬ街ザナルカンドだよ」
青年は腹を抱えつつ、街の名前を横島に教えた。

「ザナルカンド?」

「何だよ?本当に知らないの?じゃあさ…、もしかして俺の事も知らない?結構有名人なんだけど?」

「てめぇみたいなチャラ男なんぞ、知るわけねぇだろ!」
横島が怒鳴りつける

「チャラ男ってなんッスか~…酷いッスねぇ。なら自己紹介ッスね!俺の名前はティーダ。ザナルカンドエイブスってチームでブリッツボールの選手やってるッス」

「へ~そうかい。俺の名前は横島忠夫。美神除霊事務所でゴーストスイーパーやってる。」
両者は自己紹介を済ませた後に、ほぼ同時に両者が質問した。
「「ところでさ」」
「ブリッツボールってなんだよ?」
「ゴーストスイーパーってなに?」

「……」
2人の間に沈黙が流れる。

「日本か~…。聞いたことないな。横島は日本から来たってこと?」
ティーダが横島に話しかける。2人は道すがら互いについて話していた。

「ああ…っていうか、お前信じてねぇだろ!」

「ははは、信じてるって。ただ、ザナルカンドの外から来た人って珍しくってさ…。それより俺、今からブリッツの試合なんだよ。良かったら見に来いよ!」

「例の水球か。ヤローの試合なんかどうでもいいが…アテもねぇし仕方ねぇな。」
2人はスタジアムへと向かった。

「おい!ティーダ!選手におねーさんが混じってるぞ!どういうことだ!?」
スタジアムに着いた横島が別の意味で興奮しだす。

「え?それがどうかしたんスか」

「どうもこうもあるかい!言ったよな!タックルありの…は、激しいスポーツだと!おねーさん相手にも構わんとゆーのか!」
横島の鼻息が荒くなっていく。

「当たり前だろ?女だからって手抜いたら負けちゃうッスよ」
ティーダは爽やかに答える。

「ティーダ…。選手交代だ…俺をだせ。腕前なら安心しな。サッカーで鳴らしてるからよ」
横島は得意気な表情を浮かべる。

「んじゃ横島は席で俺の活躍を観ててくれよな!」
ティーダは受け流し控え室を後にする。

「羨ましい野郎だぜ…ゴリラみたいな女じゃなく別嬪さんだもんなぁ…然も格好もエロい」
横島は邪な笑みを浮かべ観客席から、女性選手を眺めていた。
「ん?」
横島が目をやると、フィールドにティーダに入場してきた。
すると黄色い声援がティーダに向かって上げられた。

「あ…あの野郎!公然とおねーさんに抱き付けれて更にモテモテやとぉぉ…!負けちまえ!ボロ負けしろ」
横島は血の涙を流し無力な念を飛ばす。

「あっ!いたいた横島…なに睨んでんだ?」
ティーダが横島の様子を不思議がってる内に試合の時間が訪れた。

そして…運命の試合が開始される。

「う…結構ハードなんだな。」
横島は単純にきれいなねーちゃんに抱き付きける、美味しいスポーツと思ってたが、予想外の肉弾戦に青ざめていた。

「おおっ!!」
横島が思わず声を上げる。ティーダが大回転をし宙を舞ったからである…。


だがその時、悲劇が起こった。

突如として、現れた無数の巨大な弾がフィールドを貫き、スタジアムを半壊させる。
そして巨大な弾はスタジアムに止まらず、ザナルカンド全体を襲っていた。

「ひぃぃぃ~!なっ…なんだよこれ!せ、戦争かぁ!?」
横島は崩落するスタジアムの中を必死に逃げ出し、何とか出口にたどり着く。

「横島っ!無事だったか!?」
そこへ無事だったティーダが駆け寄る。

「戦争中なら戦争中って言わんかい!死ぬところだったぞ!」
滝の涙を流しつつ横島が文句を垂れた。

「わかんねえよ!俺だって…何がどうなってんだか…」
ティーダは声を荒げた後。大きく息を吐いた。

「ティーダ…。ま、まあ、あれだ。とりあえず安全な場所に移動しようぜ」
空気を察した横島は、ティーダを諭しスタジアムを後にする。

2人は崩壊する街を駆けていく最中、ある男が声をかけてきた。

「ティーダ…無事だったか」
巨大な刀剣を背負った無精髭にサングラスの厳つい隻眼中年男だった。

「お、おい?あの胡散臭いオッサン知り合いか?」
横島が小声でティーダに話しかける。

「ああ…。アーロンも無事だったんだな」
ティーダがアーロンに歩み寄った時、上空から人間大の物体が降り注いできた。

「今度はなんだ!?」
横島が驚いてると、その物体はみるみるうちに醜悪な生命体へと変わっていった。

「なんッスかこれ!?」

「…『シン』だ」
アーロンがポツリと答える

「『シン』?オッサンはこいつが何か知ってんのか!?」

「そんな事、今はいい。お前にこれだ。」
アーロンはティーダに一本の剣を渡す。アーロン曰わくティーダの父、ジェクトの土産と言う事らしい。

「あの~…俺に武器は?」
横島は何気なくアーロンに催促する。

「こいつは?」
面倒くさそうにティーダに振る。

「横島ってんだ。今日知り合ったんだよ。ザナルカンドの外から来たんだってさ」

「何だと?」
微かにアーロンの眉が動いた。

「化物がくるぞ!早よ俺の武器くれ!」
横島がせっつく。

「悪いな、横島。お前の武器はない。だが、俺たちが守ってやる。ついて来い」

「俺たちって、俺もッスかぁ~」

アーロンとティーダが怪物の群れへ切りかかっていった。

「あのオヤジ守ってやる。とか…大事抜かしといて…守りきれてねぇじゃねぇか!栄光の手!」
栄光の手…文殊とは別の横島の霊能力。
右手に霊力を集め籠手を形成。刃など変幻自在に出来る優れもの。

「横島スゴいッスね…」

「ふっ…まあな。俺は超一流のGSだからな。わけないさ」
横島は気取りつつ髪をかき上げる。

「はは、それよりアーロンどこいったんスかねぇ」

「…!そうだ!あのオヤジバックレやがって!なにが守ってやるだ…あの野郎!」

「いいじゃないッスか。何とかな…」
会話をする2人を突如巨大な影が覆い隠す。
2人の目の前に現れた影の持ち主…
鯨を遥かに上回る巨大な怪物だった。

「まさか…こいつが『シン』?」
横島は冷や汗を大量に垂らしながら見上げる

「た、多分…。横島、超一流なんだろ?何とかしてくれよ」

「馬鹿いえ!デカさ見て言わんかい!お前こそエースやろ!何とかせんかい!」

「ブリッツは関係ないだろ!」
2人が言い争ってると、突如として周囲の物が宙へと浮かび始めていった。
それは、横島とティーダも例外ではなかった。

「なんだ!?なんだ!?どうなってやがる!」

「知らないッスよ!」

「上空の穴にドンドン吸い込まれてってやがる…。やべぇぞ…!文殊使うしか…」
横島が懐から文殊を取り出そうとしたとき…2つの文殊は地へと落ちていった。

「嫌あああああああ…!!」
横島は号泣し大地に手を伸ばす。

「横島!!掴まれ!」
崩壊した道路端にしがみついていたティーダが、片方の手を差しのばして横島をキャッチする。

「有難うな!助かったぞ!離すなよ!離すなよ!」

「片手ッスから…ちょっと…ってアーロン!?」
ティーダが見上げた先にアーロンが立っていた。アーロンはティーダに手を差し伸べたが、アーロンが掴んだのは、ティーダの襟元だった。
2人分の体重をものともせず片腕で持ち上げる。

「クソオヤジ!なにしとるんや!さっさと引き上げんかい!ボケ!」
襟元が締まり声が出せないティーダの横から、横島がアーロンに罵詈雑言を浴びせる。

「…お前もいたんだったな」

「お前が来いゆうたんやろ!」

「そうだったな。なら、これは…お前たちの物語だ。」
アーロンは掴んだ手を離し2人宙に投げる。

「うわぁぁぁ!」

「な…なにさらしとんじゃあああ!!?」
2人は穴に呑み込まれていった。

「み…美神さん!い、いいんスか?」

「勿論よ。私を滅茶苦茶にして…」

「ぼかーもう!美神だはぁぁ…いてぇぇぇぇ!!」

「…痛っううう!?なんだ?」
横島が目を覚ますと、目の前にティーダがいた。

「やった起きたッスか?揺すっても全然起きないんだもんな~」

「なんだ?この世界遺産風な場所は?つか、夢かよ…。後もうちょいやったのに……!!起こすなら、もう少し待たんかい!って、そうじゃねぇ!なんで俺達こんな殺風景な場所にいるんだよ!?」

横島が目覚めた場所は古びた遺跡であった。

「知らねぇよ…。良いよな呑気に寝れてて、俺なんか大変だったんだぜ?」
ティーダは横島とは別に海中に落ちた事、怪物に襲われ命からがら逃れた事。逃れた遺跡で、呑気に眠っていた横島を発見した事を話した。

「はぁ…。一体ここ何処だよ。ザナルカンドはどうなったんだ…俺たちザナルカンドに帰れるのか?訳わかんねえよ」
集めた道具で起こした焚き火にあたりながら、ティーダが横島に語りかける。

「グチグチ五月蝿いやっちゃのぉ…。俺はザナルカンドじゃなく日本に帰りたい…なんだっ!?」
2人の目の前に怪物が躍り出た。

「コイツか怪物って?」

「違うって!こんなちっこいのじゃないッスよ!」
2人が戦闘態勢に入ったと同時に、何処からともなく怪物めがけ手榴弾が投げつけられる。
手榴弾の爆発は呆気なく怪物を葬り去った。

「なんじゃあああ!?」
驚く2人の前に、手榴弾を投げつけた持ち主が現れる。ダイバースーツと暗視ゴーグルを身に着けた女性であった。

(だっさい格好やな…然し、エロいな~)
横島の鼻息が荒くなったのであった…

「おい!横島!人間だぞ!人間!」
ティーダが興奮気味に話しかける。

「見りゃわかるっちゅうねん」

「何だよぉ!嬉しくないのかよ?おーい!さっきは有難うな!助かったよ!」
ティーダが女に駆け寄り感謝の意を伝える。
「ゾレン(ごめん)」
女がそう呟くと、女はティーダの腹部に衝撃を与えティーダの意識を奪った。

「あわわ……あの女…やっちまったのか!?」
遠目で見ていた横島が後ずさる。

「フゾルハ!!(動くな)」
横島の後ろから、女と似た格好をした数人の男たちが、銃を構えて現れた。

「ひぃぃぃ!!止めてくれぇ!俺はそいつとは一切関係無いんじゃ!殺さんといてぇぇぇ!!」
横島は命乞いをするも、女たちは無視して話し始めてしまう。

「リュック、ヨミユナゴフヌウ?(こいつらどうする?)」

「ユエセル。(連れてく)」
横島の前で、女たちの理解不能な言語が飛び交い始めていた。

(全然分かんねぇ!妙な言語喋りやがって!!でもこれだけは解るぞ…。こいつら、間違いなく俺を殺す気だ…!クソったれー!こんな所で死ぬんかー!まだ綺麗なねーちゃんと一発してねぇのに…!美神さーん!おキヌちゃーん!)
横島の体が見る見る内に灰色になっていった。
そんな異常に落ち込んだ横島の姿を見かねてか、女が近寄り話しかけてきた。

「メェ、チイ…(ねぇ、君)」

(女…?そうだ!どうせ死ぬならいっそ!!)
「しりー!チチー!フトモモー!!」
横島は理性を捨てて女に襲いかかった。

「いやぁぁぁぁぁ!!」
女の悲鳴と共に放たれた右ストレート…。

横島は意識を失った。

意識を奪われた2人は、奇妙な集団に連れ去られていった。
そして、2人は集団の所有する船内で目を覚ます。
「なぁ…、俺たち、どうなるんだ?つか、アイツ等なんなんだ?訳わかんねー言葉喋ってるけど」

「知るか!!アイツ等に聞け!」
ティーダの問いかけに、顔を腫らした横島が答える。

「ピリピリすんなよな。殴られたからか?なにがあったんだよ」

「…ふっ。なに、お前を助ける為にな…。ちょっと無理をしすぎちまったんだよ」

「本当ッスか~?見捨てようとしたんじゃないの~?」

「う゛っ…鋭い…。のわぁぁ!いつの間に…!?」
2人の背後に横島たちの意識を奪った少女が立っていた。

「ねぇ、ちょっといい?キミたちに手伝って貰いたい事があるんだけど?」
少女は2人のわかる言葉で話しかけてきた。
横島とティーダは顔を見合わせる。
少女の頼みとは、海中のサルベージ作業を手伝って欲しいとの事だった。2人は飯と引き換えに了承することにした。

「ちゃんと泳げんのかよ?待っててもいいんだぜ」
ティーダは準備運動をしながら、横島に話しかける。

「誰に言ってんだよ?俺は小学生時代に海猿の忠夫って呼ばれた男だぜ?潜水なんか目じゃねぇよ」

「おっ、よくわかんないけど頼もしいッスねぇ~。頼りにさせてもらうッスよ」

「ふっ…任せとけ」
(銃持った世紀末野郎のいる船上より、ブリッツのエースと一緒な海中の方が安全に決まってら!離れてたまるか!!)
「変態くん。早くしなよ。先行っちゃっうよ」
少女とティーダが海へ飛び込む。

「誰が変態や!…って、待って!置いてかんてくれぇぇ!」
続けて横島も飛び込んでいった…。
三人は海底遺跡を探索し、目的の物を発見。
途中、蛸の怪物と交戦するも、これを撃破し、三人は無事船へと帰還した。

「はぁはぁ…どこが安全なんじゃぁぁぁ!!」
仕事を終え、船に上がった横島が叫び声を上げる。

「どうしたんだよ?確かに、飯だけの仕事にしちゃ危険だったけどさ…。安全だなんて言ってなかったろ?」
ティーダが答える

「うっ…、そうだな」
(俺の読み違いなんて言えねー)

「お疲れさん!どうかしたの?食事持ってきたよ?」

「うぉーっ!飯!何でもねぇよ!飯だ!飯!」
横島とティーダは少女が持ってきた食事を夢中で貪り始める。その姿を横で見ていた少女が口を開いた。

「あのさぁ…。君たち変わってるよね。アルベド族に偏見持ってないの?」

「アルベド族…って何?」
ティーダと横島が互いに顔を見合わせ、同じ反応を見せる。

「えぇ!アルベド族を知らないのぉ!?」
少女が驚愕の声を上げる。

「んなマイナー族なんか普通知らんわ!どこの珍走団じゃ!」

「マ…マイナー族って、なによぉぉ!」
「まあまあ。俺も横島もアルベド族?知らないんだよ」
ティーダが間に入る。

「ふ~ん。キミたち、どっから来たの?」

「名前も教えねえ、顔も見せねえ奴に教えられっかよ。」
横島が毒付く。

「あっ!そう言えば、そうだったね。…私、リュック。よろしくね!」
リュックは暗視ゴーグルを外し、自己紹介をした。

「俺は…うぇ!」

「僕の名前は、横島忠夫。日本の東京都にある美神除霊事務所で、超一流ゴーストスイーパーをやっています。」
横島はティーダを押しのけ、顔を輝かせ自己紹介する。

「う、うん。よろしくね」
(ニホン?トーキョー?)

「ったく、横島の奴…。俺はティーダ。ザナルカンドから来たんだ。ブリッツの選手やってんだ。ザナルカンドエイブスってチーム」

「え!?」
リュックが妙な反応を示す。

「何?どうかした?」

「君たち『シン』の毒気にやられちゃったんだね」

「『シン』!?リュックは『シン』を知ってるのか!」
ティーダがリュックに訪ねた。

「『シン』の事は覚えてるんだね…」

「おいおい、さっきからなんだよ。毒気がどーのこーのって。妙にシリアスな空気漂わせて…」

リュックは『シン』の毒気にあたると、人は気が触れてしまう事。そして…、ザナルカンドは聖地として崇められる遺跡だと言う事を2人に語った。

「嘘だろ…?冗談よせよ…?だって俺は…」
ティーダは力無く座り込む。

「本当だよ。だから、『ザナルカンドから来た』なんて、あんまり言わない方がいいよ。アルベドは兎も角、エボンの人達は敏感だからさ」

「あ~…この流れはヤバい…。ドンドン帰還の可能性が途絶えていく予感…。美神さはぁぁぁん!!」
一方、横島は大量の涙を流し天に叫ぶ。

「ま、まぁ…2人共さ、元気だしなよ。ティーダはブリッツの選手なんでしょ?ルカまで送ってあげるよ。人が沢山いるから、多分知り合いに会えるって!」
リュックが2人を励ます。

「うん…そうだな」
ティーダが力無く答えた、その時。

「『シン』ダベサボー!(シンがでたぞー)」
『シン』が再び姿を現したのであった…。近くに現れた事によって船体が大きく揺れる。

「やべっ!?うわぁぁぁ!落ちる!落ちっ…!?」
横島が海へと落ちていった。

「横島っ!!くそっ!」
ティーダは横島を助ける為、海へ飛び込んだ。然し、激しい海流が体の自由を奪われ、思うように動かず。その内に、ティーダは意識を失ってしまった…。

「はぁはぁ…大丈夫無か!?横島?」

「なんとかな…。」
横島が力無く返事をする。2人が流されたのは、目の前に浜辺が見える海であった。

「流され流され、こんなんばっか!いつになっ…ぐふっ!」
横島が愚痴をこぼしてる最中に、浜辺から飛んできた飛来物が横島の顔に直撃する。

「横島!?これは…ブリッツボール?何で…」

「おーい!」
ティーダが声の方を向くと、浜辺で数人の男たちが、手をふっていた。このボールは彼らが蹴ったボールらしい。

「横島!人がいるッスよ!」

「わかっとるわい!」
顔の腫れた横島が返事する。

「ボール取って来て貰っていいか~!?」
浜辺の男がティーダの持つボールを取ってくるよう頼む

「…よし!」
ティーダは手に持つボールを得意のシュートで浜辺へと蹴り返す。

「すげぇ…!!」
浜辺の男たちは、ティーダのシュートを見て唖然としていた。

「横島!あの島に行ってみようぜ!」

「ああ…」
(ちっきしょお~!誰がぶつけやがった~!)
そして、2人は泳ぎ浜辺に上陸をする。すると…

「さっき俺にボールぶつけ…どわっ!」

「すげぇな!お前!ブリッツの選手だろ?どこのチームなんだ!?」
男たちが横島をはねのけて、一斉にティーダへと群がってきた。

「はは、まあね。ザナルカンドでブリッツの選手やってるッス。ザナルカンドエイブス!知らないッスか?」
ティーダが得意気に答えた。

「ザナルカンド…?」

「おい、お前?今なんて言った。」
リーダー格の男が険しい顔で詰め寄る。一変して空気が険しいものへと変わった。

(やべっ!)
「あ~!違うの!違うの!俺とコイツ『シン』の毒気?ってのにやられちゃってさ~。何がなんだかわかんないのよ!今コイツが言ったのも、そう言う事よ!…なっ!」
横島がティーダに目で合図する。

「そ、そ~うなんスよ~。頭グルグルでさぁ!」
ティーダは合図を理解し、話に乗る。

「『シン』の毒気だと…。そうだったのか、それは大変だったな。だが、『シン』に出会って運が良い。これもエボンの賜物だな」
男たちが、妙なポーズを取ると、空気が穏やかな物へと変わっていった。

この島の名前はビサイド島。リーダー格の男ワッカの好意により、この島にあるたった一つの集落ビサイド村で面倒を見て貰う事になった。

「どうやら上手くいったみたいだな」
ワッカの家で寛ぐ横島がティーダに話しかける。

「そうだな…」
ティーダは力無く返事をする。

「どうしたんだよ?元気ないな?村は、むさ苦しい野郎ばっかで、元気ないのは分かるが…焦っても仕方ないだろ」

「違うよ。……ワッカたちが、やってたポーズあったろ?」

「なんちゃらの賜物ってやつか?そう言や、お前ワッカにポーズの事を聞いてたな。なんか知ってんのか?」

「あれさ…。ザナルカンドでは、ブリッツの必勝祈願のポーズなんだよ。」

「何だって!?とゆう事は…」

「なんか分かったのか!?」
横島の反応にティーダは身を乗り出す。

「いや、さっぱり分からん。」

「あ、あのなぁ…真剣に悩んでんのに」

「分からん事を考えたってしょうがないだろ?焦らずいこうぜ。それより、ワッカの野郎遅ぇな。飯食わしてやるとか、言ってた癖によ」

「そう言えばそうッスね。寺院にいくって行ってたけど…迎えにいくッスか?」

「…そうだな。黙って待ってても仕方ねーしな。行ってやるか。」
2人は村の中央にある寺院へと向かった。

「おっ、ワッカ!何やってんだよ!待たせやがって、腹減ったぞ!」
横島が院内にいたワッカに文句をつける。

「お前らっ!?待たせてたんだったな。悪りぃ、召喚師が帰ってくるまで、もうちょいかかりそうだ。少し、待っててくれ」

「ワッカ、ショーカンシって、なんッスか?」
ティーダがワッカに話しかける。

「それも忘れちまったのか?召喚師ってのは、試練の間の先にある、祈り子様の居られる間で、祈りを捧げて、召喚獣を与えられる者…。そして、各地の寺院を巡り、召喚獣を集め、力を磨き、最終的に究極召喚獣の力を得て『シン』を倒す。それが召喚師だ。」

「究極召喚獣…『シン』を倒せるのか!?」

「そうだ。だから俺たちはこうして召喚師を待っているんだ。」

「普通より遅いみたいだけど…、様子見しなくていいのか?」
横島がワッカに質問する。

「…一度入ったら誰も入れない。掟だ。」

「その召喚師は何時入ったんッスか?」

「……昨日だ」

「き、昨日ぉ!?」

「1日も経ってんのか!?それって、ヤバくねぇのか!?助けにいかなくていいのかよ!?」
横島が慌ててワッカに聞く。

「掟だ…」

「掟だって…それで、死んだらどうすんだよ!!」
ワッカの答えを聞いたティーダは声を荒げる。

「…それでもだ」

「何が掟だ!ふざけんなっ!いくぞっ!横島!」

「えっ?」

ティーダは横島の腕を掴み、強引に試練の間へと乗り込んだ。

「何すんじゃ!俺を巻き込みおって!!」

「横島はそれでいいのかよ!!」

「いや…まぁ…そういう訳じゃないが…」

「だろ?グダグダ言ってないで、先進もうぜ」

「はぁ~…」
(崇められとる召喚師なんて、爺か婆って相場が決まってるのによ…)

「なあ…、横島…」

「何だよ?」

「ここどうやって進むんだ?」

「は?」
2人は四苦八苦しながら、試練の間の仕掛けを解除し、先へ進む事に成功する。

「どこのRPGじゃ!召喚師が『シン』倒すゆーなら、無駄な頭使わすな!一本道にしとかんかい!」
横島が文句を垂れる。

「とりあえず着いたからいいじゃないッスか」
2人は祈り子の間の前に辿り着く。
そして、そこには…

「ななな…なんじゃ!コイツは!」
横島の前に青色の巨大な獣人が立ちふさがる。

「ちょっと!あんたたち、一体何なの!?」
その後ろには…

(ななな…なんだ!!あのけしからん格好の美人なねーちゃんは!!美神さんバリの乳に美神さん以上の露出!!)
横島は既に獣人を忘れ、後方のねーちゃんに釘付けになっていた。

「僕、横島忠夫!17歳!絶賛『シン』の毒気にやられてます!その乳に顔をうずめれば記憶が戻る可能性がーっ!!」
横島は目にも止まらぬスピードで獣人をすり抜け、後方のねーちゃんに飛びかかった。

「なにすんのよっ!」
然し、抱き付く前に地面に叩き付けられ踏みつけられてしまった。

「あっ…あー!何か懐かしい!踏まれてるのに幸せ!」
横島は血を流しながらも恍惚としていた。

「何やってんだよ!横島!あんた、召喚師は無事なのか!?」
ティーダは横島を踏みつける女性に召喚師の安否を聞いた。

「あんたたち一体…」

「ったく…お前ら勝手な事しやがってよ」
その時、その場へワッカがやって来た。

「ワッカ!この子達は一体なんなの!?」

「まあ、ちょっとな。それよりユウナは?」

「はぁ…。無事よ。多分、もうじき…」
その時、奥の扉が開いた。そこから現れたのは、横島やティーダたちと同世代と思しき可憐な少女であった…。

「可愛い…僕横島忠夫!じゅっ…!」

「止めなさい!!」
横島が立ち上がろうとしたが、ねーちゃんによる追加の踏みつけが入り、阻止されてしまった。

その後、披露で意識を失った召喚師の少女を獣人が、ボロボロになった横島をティーダがそれぞれ抱えて、一行は試練の間を後にした。
村では、正式な召喚師の誕生を祝った、宴席が開かれる事となった。

「ルールーさんか…あのカラダに色気…たまらんのぉ。それにユウナちゃん、清純そうな顔して大胆な格好して…えへっえへへ」
横島が邪な視線で2人を見つめる。

「お前、そればっかだな…。」
ティーダが呆れ顔をみせる。

「お前にはやらんぞ!2人共俺んじゃ!!」

「わかった、わかった」

「何の話してるの?」
2人が話をしていると、そこに召喚師の少女ユウナがやって来た。

「君たち、祈り子の間であったよね?名前は…」

「僕!横島忠夫17歳!東京でゴーストスイーパーやってます!宜しく!」
横島はユウナの手を握る

「あ、は…はい。ユウナです。こちらこそ」
(トーキョー?ゴーストスイーパー?)

「そうだ!君は確か…、ザナルカンドから来たんだよね?」
ユウナは話を変え、体の向きをティーダに向ける。

「そうだけど…。信じてないんだろ?」

「ううん、私、信じるよ。昔、ザナルカンドから来た人に会った事あるもの。」
「えっ?」

「ジェクトって人なんだけどね。父さんのガードをやってくれた人なの」

「オレの親父も…ジェクトって名前だ…」

「そうなの!?じゃあ君…」

「はは、違うよ。俺の親父は十年前に死んでるから、海に出たきり帰って来ないんだよ」

「そうなんだ…待って、それ、ジェクトさんだよ!スピラに来たの十年前だもん。死んでなかったんだよ!」

「そんな馬鹿な…偶然だよ」

「ううん、きっとそう。君はジェクトさんの息子。これもエボンの賜物ね。」
ユウナは笑顔で答える。

(なんだこの蚊帳の外な感じは)
そう隣で横島は感じていた

一夜明け、横島とティーダの2人は、ユウナの召喚師の旅にルカまで同行することになった。
ビサイドに留まるより、ルカで何か2人の情報が得られるかるかも知れないとの判断でだった。

出発の日、ビサイド発の船に向かう道中…。

「ひぃぃ!!お、お前、試練の間に居た奴だろ!?何のつもりや!止めんか!」
横島が怒鳴った相手は…ルールーと共にユウナを待っていた、青色の獣人だった。

「なんで俺と横島を襲うんだよ!?敵じゃないッスよ!?」
2人が話し掛けるも獣人は何も答えず、手に持つ槍で襲いかかってきた。

「ちきしょー!問答無用かよー!なるようになれ!栄光の手!!」
横島が涙ながらに放った栄光の手は…呆気なく獣人を倒してしまった。

「あ…あれ?コイツ見た目の割に…弱いぞ?」

「ザナルカンドでもそうだったけど、横島強いッスからね~」

「だ、大丈夫?キマリ?」
ユウナが獣人に駆け寄る。

「キマリ?あいつ一体なんなんッスか?」

「彼の名前はキマリ。ロンゾ族の青年。ユウナのガードよ」
ルールーが答える。

「ガードって?」

「召喚師を守る人間の事よ。今のはあなた達の腕試しを…したかったんでしょうね」

「ガードって…アイツが守って貰う方がええんちゃうか?」
ビビらされた事を根に持った横島が毒づいた。

「そんな事ないよ、横島さん。キマリは優しいから手加減してくれたのよ。ね?」

「………」
だがキマリは何も言わなかった。

キマリの試練?を無事終えた横島とティーダ。そして、一行は連絡船リキ号へ乗船した。

船内で寛ぐ一行…。そこに、1人の男が近寄ってきた。

「兄ちゃんたち、もしかして噂の召喚師様御一行かい?」

「ん?あんた誰?」
横島が答える。

「俺かい?俺は…オオアカ屋!23代目オオアカ屋だ。召喚師様御一行なら旅するんだろ?これから入り用になると思ってな。召喚師様だからな特別料金で売るぜ」
男はオオアカ屋という商人で、横島たちに商品を売りつけてきた。

「ルールーさん…値段の相場が今一分からんのですが、どうっすか?」
横島が耳打ちする

「高いわね…二倍以上かしら?確かに特別料金ね」

「成る程…じゃあ」
横島は何かを閃いたのか、オオアカ屋の下へ近寄る。そして…

「おい、オッサン!どういうこった!あぁん!?大召喚師様の娘を相手にボるとはええ度胸しとるやんけ!!ハイポが1000ギルぅ?田舎もんやと思って舐めとんのか!!おうっコラッ!?」
横島はオオアカ屋の胸ぐらを掴み、首もとに霊波刀を当て恫喝する。

「いや…これはだな…分かった!分かった!ちゃんと特別料金にする!だから刀おろしてくれ!」
横島の機転?によりハイポーション50ギルの大幅値下げに成功。一同は格安でハイポ99個仕入れる事となった。

「良いのかなあ…」
ユウナが申し訳なさそうに呟く

「良いって良いって!あっちが騙そうとしてきたんだぜ?自業自得ッスよ。一応買ってるしな」
それを聞いたティーダが笑顔で諭す

「…そうだね!」
ユウナも笑顔で応える

「あの野郎~…なんもしとらん癖に、俺のユウナちゃんといい感じになりおってからぁぁ!?」
横島が嫉妬に駆られている時、突如、船が大きく揺れた。

「『シン』だーっ!!『シン』がでたぞーっ!」


「『シン』だって!!?」
船内に緊張が走った

「『シン』!ん…『シン』の鰭から何か出て来たッスよ?」
『シン』の背鰭から無数の玉が、船に向かって放たれた。

「『シン』のコケラよ!気をつけて!」

「コケラ?うわっ!こいつら…ザナルカンドにいた奴らじゃねぇか!」
横島が動揺する。

「……ティーダ!キマリ!お前らはユウナを頼む!俺とルー…それと横島は背鰭にダメージを与えてみる!」
ワッカが指示を出す

「お…俺たちも?」

「お前ら案外腕良いしな、それにお前の腕伸びるだろ?」

「ま…マジかよ」

「良いじゃない。頼りにしてるわよ。横島クン」

「はい!任せて下さい!ルールーさん!不肖横島!命懸けでルールーさんを守ってみせます!」
格チームに分かれて対応し、何とかコケラ排出は止める事に成功したが、『シン』は一向に止まらなかった。

「おい、ワッカ!どうすんだよ!アカンやないか!全然止まらんぞ!」

「どうするっつたって…て、おい!お前、アンカーなんか、どうするつもりだよ!まさか撃つつもりか!?」
ワッカは『シン』にアンカーを打ち込む準備する船員を見つけ、制止する。

「スイマセン!キーリカには家族が…少しでも注意を逸らしたいのです!お許し下さい!召喚師様!」
船員の頼みに、ユウナは黙って頷く。
そして、アンカーが『シン』の体に打ち込まれると、船が大きく揺れ動いた。

「どわぁぁ!きっ…気持ちは分かるが…効果あんのか?」

「わかんねぇよ!それより掴まっとけ!振り落とされるぞ!」
ティーダは横島に、しっかりと船体の一部にしがみついておくよう促した。

「衝突する!!ぎゃああああ!!」
『シン』と船はキーリカに直撃…。津波と『シン』がキーリカの街を大勢の住民と一緒に呑み込んでいった…。

「ひでぇ…」
ティーダは目の前の惨状に言葉を失った。

「これが『シン』だ。何もかも奪っちまう…。だが仕方ねぇ。元はと言えば人間が悪いからな…」

「ワッカ…人間が悪いって、どういうことだよ?」

「遥か昔、機械の文明が栄えた時代があってな、その時代の人間は人生を謳歌していたそうだ。だが…ある時、大国が戦争を始めた。星を滅ぼしかねない機械兵器を使ってな…。自分の住む場所でだぜ?そして何より、他の生き物の事も考えなかった。」

「それで、どうしたんだ?」

「戦争中に『シン』が現れた。んで、滅ぼした。自分たちが星の支配者だなんて思い上がった人間に対する罰としてな…」

「でもさ、それが俺たちになんの関係があるんだ?」

「『シン』が現れるのは、ご先祖様の罪が消えてないって事だ。大昔の馬鹿な奴らのせいで、今の人間が苦しむなんて納得いかねぇが罪は罪だ。償わなきゃならねぇ。償いが終われば『シン』は消える。それまでの辛抱だ」

「罪を償えば『シン』が消えるなんて、誰が言ったッスか?」

「エボンの教えだ。だから俺たちはエボンの教えを守り機械を使わねえ。繰り返さない為にな。」

「機械使ってるじゃないッスか?」

「エボンが認めた機械は良いんだ。」

「それおかしくないか?」

「おかしくねぇ。エボンの教えだ」

「絶対変だよ!エボンが言ったら、何でも正しいのかよ!」

「おい!いい加減に…」

「悪い!悪い!混乱してっから!」
横島が現れ、ティーダを連れて行く。

「何すんだよ!」

「いいか、よく聞け。お前の言いたい事は、よーく分かる。だが、あれは俗にゆー原理主義者と言う奴や。今は何を言っても無駄じゃ。諦めろ。」

「わかったよ…」

横島がティーダを宥め終えた所でルールーがやって来た。

「あんた達、なにやってんの?異界送りが始まるわよ」


「異界送り?」

横島たちが、ルールーに連れられ奥へ行くと…、そこには、水の上に立つユウナの姿があった。

「ユウナ…?なぁ、ルールー、これ一体何なんだ?」

「異界送りの儀式よ。始まるわ。」
ルールーがティーダに説明をした所で、ユウナが舞いを踊り出した。すると、無数の光が水面から浮かび上がってきた…。

「ルールーさん、あの光ってんのなんですか?」
横島がルールーに訪ねる

「幻光虫。虫じゃないわよ。人や生き物…万物に宿るエネルギーのような物ね」

「へぇ。それって、異界送りと関係あるんですか?」

「…非業の死を迎えた死者はね、嫉妬するのよ。何故自分が死んだのか?もっと生きたかった。生きてる人間が羨ましい。そんな生者への妬みの気持ちが、何時しか憎しみに変わり、その思いは幻光虫と結びつき、放っておくと魔物になってしまうの…」

「そ、そうなんすか…」

「ええ、だから彼らの思いを解き放ち、本来死者が行く異界へ迷わぬように送る。そして、それは召喚師にしか出来ない仕事なのよ」

「そうなのか…なんだか、悲しいな」
ティーダがポツリと呟いた。

そして、ユウナによる異界送りの儀式が無事終わり。一夜明けると、一行はキーリカ寺院へと出発した。

「ねぇ…ティーダくん、横島さん。2人にお願いがあるんだけど…」
寺院に向かう途中、キーリカの森でユウナが2人に話しかける。

「あのね…2人共…私のガードになってくれないかな?」

「な、なに言ってるのユウナ!?本気なの!?」
ルールーは動揺しながらも、改めてユウナに確認する。

「うん…。ダメ…かな?」

「勿論!この横島!一生ユウナちゃんのガー…ぐふっ!」
横島が顔を輝かせ返答しようとした途中、ティーダが横島の口を塞ぎ返事をする。

「悪いけどさ…俺たちも、ユウナの力になりたいけどさ…直ぐには返事出来ないよ」

「うん…。そうだよね。ごめんね。でも、考えてくれると嬉しいな」

「わかった…よく考えるよ」
ユウナはそう伝えると、先に進んだ。

「離さんかい!アホか!ユウナちゃんの愛の告白を勝手に断りやがって…」

「あのなぁ…俺たち帰るんだろ?目的忘れんなよ。」
そんな話をしてる内に、遂に一行は寺院へと辿り着いたのだった。

「なんじゃこの気の遠くなるよーな階段は…」
横島は目の前にある、長い石段を見て唖然とする。

「キーリカ名物の石段だ。オハランド様も此処で足腰を鍛えたんだぞ。」
ワッカが得意気に説明する。

「歴史があるんッスねぇ…ん?人が沢山降りてくる…。何かあったんッスか?」

「ま、魔物です!『シン』のコケラが現れたんです!」

「なんだってっ!おいっ!お前ら急ぐぞ!ルーはユウナを頼む!」

「分かったわ!気をつけて!」
ワッカの指示で、横島、ティーダ、キマリは石段を駆け上がり魔物の下へ向かった。

「はぁはぁ…こんな場所に出おって…。これがコケラ?普段よりデカいな…」
横島は首を傾げる。

「コケラにも種類があるんだよ。大した事はねぇが、コイツは硬いからな、気をつけろよ。」
ワッカが注意を促した。

「関係ねぇッスよ!どりゃ…!かてぇぇ!」
ティーダが斬りかかるも、剣は硬い皮膚にはねのけられてしまった。

「言ったろ!ここは一先ずキマリの槍に任せ…」
ワッカが作戦を指示した最中…

「俺に任せろ!俺の霊波刀なら、硬さなんか関係ねぇ!くらえっ!!栄光の手っ!!」
横島の繰り出した霊波刀は、コケラの急所を貫き葬り去った。

「おお!やるじゃねぇか!横島!」

「さすがッスね!」ティーダとワッカが横島に駆け寄る。

「………」
キマリは静かに槍を下ろした。

「あら?もう終わったの?凄いじゃない」
遅れてルールー達が到着する。

「はいっ!はいっ!俺が倒しました!ルールーさん!ほめて下さいっ!」
横島はルールーの太ももに顔をすり寄せる。

「あんたね…」
横島は全身にファイアを浴びせられてしまった。

「だ、大丈夫?横島さん」

「あ、熱い…でも幸せ」
焼け焦げた横島だったが、その顔は恍惚としていた。

「ったく、俺ら一応シロートッスよ?」

「悪りぃ!悪りぃ!腕がいいから、ついな。でも、お前は兎も角、横島はプロなんだろ?GSだったか?」

「ったく、信じてない癖に都合がいいッスね。」
無事魔物を退治した横島たちは、新たな召喚獣の力を得る為、寺院の中へと入っていった。

一行が寺院内に入ると、そこへ一組の男女が近寄ってきた。
「あ~らあらあらあら、誰かと思ったら大召喚師ブラスカ様の娘じゃなぁい」

(おおっ!あの日焼け具合にセクシーな衣装…なんちゅうねぇーちゃんや!!)
横島の視線が目前の女性に釘付けとなる。

「はい!僕の名前は横っ…ぐっ!」

「止めなさい」
横島が近寄ろうとしたが、即座にルールーに阻止されてしまった。

「あなたは?」

「あ~ら、大召喚師様の娘となると、他の召喚師の事なんか目もくれないって事かしら」

「す、すいません」

「別にいいわ。私はドナ。で、こっちの彼はガードのバルテロ」
細目の筋肉質な男がポーズをとる

「バルテロは優秀なガード。そしてガードは量より質!どっかの誰かさんと違って、みっともなく大勢のガードを引き連れてるのは恥!未熟者の証だものねぇ」
ドナはユウナを小馬鹿にし、高笑いをする。

(性格悪い女やなぁ~…。性格きっつい日焼け美女と変人筋肉男のセットは、異世界共通なんか?)

「お言葉ですが、ドナ先輩。私は確かに未熟者です。ですが、私はガードの数を恥た事などありません。召喚師とガードは絆で結ばれてる…。私は沢山の絆に恵まれた…。そして、そんな彼らと旅を出来て幸せだと思っています。」

「うっ…ふん!行くわよ!バルテロ!」
ドナは言い返さず、その場を後にした。

「あの嫌み年増言い負かすなんて、ユウナちゃん、格好良かったぜ!!」

「そうかな。」
横島の言葉にユウナは照れ笑いを浮かべる。

「とっと祈り子の間に行こうぜっ…っつ!何すんだよ!キマリ!?」
先に進もうとしたティーダの前に、キマリが立ちふさがった。

「こっからはガードの仕事だ」

「あんたたちはお留守番ね」

「ごめんね。早く戻ってくるから。」
横島とティーダを残し一行は試練の間へと進んでいった。
そして、留守番する2人が暇を持て余していると、そこにドナとバルテロがやってくる。

「あらぁ?どうしたのあなた達?大召喚師様の娘と一緒じゃないの?」

「留守番。俺たちガードじゃないからな」
ドナの問いかけに、ティーダはぶっきらぼうに答える。

「ふぅん…。そうなんだ。バルテロ!」
笑みを浮かべると、バルテロに何やら指示を出す。

「うわっ!何するんだよ!お前っ!」
バルテロは横島とティーダを抱えあげる。

「何する気だよ!?」

「うふふ。仕返し」

「離せ!離さんかいっ!野郎に抱かれる趣味はないんじゃ!…離せゆーとるじゃろ!!」
横島はバルテロの顔面を栄光の手で殴りつけた。 そして、意識を失ったバルテロを足蹴にし続ける。

「バ…バルテロ!?」

「よくもやってくれたなぁ~覚悟は出来とるんやろうなぁ」
横島は鼻息を荒くながら、ドナに近寄ってゆく。

「お前…嬉しそうだな」

「ちょ…ちょっと何する気よ!」

「わかっとる癖に、うひひ」

「あんた!ここ寺院よ!?止めなさい!」

「境内で巫女さんとイチャつくのが燃えるのと同じで問題ないわ!…これは仕返しや!横島いきまーす!」
横島がドナに賭けていくと…

「止めなさいって言ってるでしょ!!」
ドナの背後から巨大な炎を纏った獣が現れた。

「ななな…なんやこの化物はー!!」

「あっ…寺院内で召喚獣だしちゃったわ。」

「これ召喚獣!?どうすんだよ!横島!?」

「逃げる!!」

「何処にだよ!?」

「試練の間に決まっとろーが!」

「良いのかよ!?」

「なら、お前は残って死ね!」

「あ~っ…クソっ!」
横島とティーダは試練の間の道に続く穴へと飛び込んだ。

「成功…かしら?…それより…バルテロ!起きなさい!ったく、恥かかせてくれて…置いてくわよ!」

「待ってくれ……ドナぁぁぁぁぁぁ」
ドナとバルテロは寺院を去っていった。

「痛つつつ…どうすんだよ?横島…勝手に来ちまったぜ?」

「大丈夫だ。俺に考えがある」

「考え?どんなんだよ」

「俺たちは…無理やりバルテロに落とされた。いいな!俺たちはバルテロの奴に落とされたんだ!」

「あ、ああ…。横島…、お前、冴えてんな!」

「だろ!」
難易度が上がった試練の間の仕掛けだったが、2人は突破して、無事祈り子の間へと到着する。

「お前らっ!?待ってろって言ったろ!」

「バルテロに無理矢理落とされたんだよ!なっ」

「そっ、そうッスよ!ドナが命令して…」

「理由はどうでも良いの!責任を取るのはユウナなのよ?」
バルテロ責任転嫁作戦も虚しく結局2人は絞られてしまった。召喚獣の授与を終えたユウナの許しを得て、一行は試練の間を後にする。

「次は…連絡船ウイノ号に乗って、いよいよルカだな」

「そう言えばルカって、俺と横島の目的地…あ」
ティーダはある事に気付き、ユウナの顔を見つめる。

「そうだね…君とは、そこでお別れ…なのかな?」

「俺も居るっちゅうねん!って、そうそう!それより、ワッカ!確かブリッツの大会あんだよな?」
横島は強引に話題を変える

「お?おぉ!そうだ、そうだ!スピラ最大の大会でな。当然、俺たちビサイド・オーラカも出場する。何より…俺の引退試合だ。」

「え!?ワッカ引退するッスか?」

「ああ。何度か辞めようって思ってたんだけどな、グダグダ未練たらしく伸ばしちまってよ…。だが!今はユウナのガードに集中したなきゃだしな!ここいらでケジメをつける。だが最後の試合だ…。結果を残したいのも人情だ。そこで、お前に相談がある」
ワッカは笑いながら、ティーダの顔を見た。

「わぁってるって!助っ人すればいいんだろ?」

「すまねぇな!この借りは必ず返すからよ!期待してるぜ!」
そして、一行は連絡船ウイノ号に乗船。ルカへと向かうのであった。

夜のウイノ号のデッキにて、ワッカとルールーの会話が聞こえ、横島は聞き耳を立てる。

「なんでユウナは、あいつらをガードにしたがるんだ?」

「簡単よ。ティーダがジェクト様の息子だからよ。」

「え!?その話、本当かよ?」

「少なくともユウナは信じてるわ」

「そっか…。んじゃ横島は?」

(むむむ!)

「横島クンは…まあ、賑やかし要員?ついでじゃない?あの子たち、2人でセットみたいだし…。横島クンも一緒じゃなきゃ、ついて来ないでしょ?」

「はは、ひでぇな。横島の戦闘技術は確かだぜ?」

(そうや!そうや!それをあの年増…!乳揉んだるぞ!)
横島は毒づきながらも、ルールーの谷間をひたすら凝視していた。

その頃、船頭ではティーダが幼い頃の回想し、1人佇んでいた。

「クソっ!」
幼いティーダが1人ブリッツの練習をしているが、なかなか上手くいかない時…

「これは、これは、ジェクトさんちの、お坊っちゃまではございませんか。なになに?シュートの練習をしている?宜しければ、御指導してあげましょうか?」
そこに、ティーダの父親であるジェクトがやって来て嫌味を言い始める。

「普段はお見せしないんですがね。特別にお見せして差し上げましょう。」
ジェクトはそう言うと、ボールを拳で殴り、前方の柱に叩き付ける。跳ね返ったボールを同様に拳で叩きつけ、最後に跳ね返ったボールを自身が上空に大回転飛翔して、華麗にシュートを決めた。

「このシュートが出来ないからって、落ち込む必要はねぇぞ?このシュートは誰も出来ねぇからよ…。俺様以外はな」

「クソ親父…ん?」
現実に戻ったティーダの足下に、ブリッツボールが転がってきた。

「やってやるよ!」
そして、ティーダは過去の苦い思い出を振り払い、父ジェクトのシュートを再現した。

「へっ、簡単じゃねぇか!」

「なんだ今の!もう一回見せてくれ!」

「すっげぇな~さっきのシュート。キャプツバみてぇじゃん!これ優勝余裕だな」
横島とワッカ含むビサイドオーラカの面々が集まってきた。

「キャプツバはわかんねえけど、こんなの簡単だよ。練習すれば誰でも出来るさ」
そして、場の賑やかさが落ち着いた頃、ユウナがティーダに話しかけてきた。

「ね、今の…ジェクトシュートだよね?」

「…なんで知ってるッスか?」

「うふふ、やっぱり。昔ね、ジェクトさんに見せて貰った事があるの。確か、ジェクト様シュート3号…だっけ?」

「はぁ、あのバカ親父…。知ってる?本当はな、1号も2号も無いんだぜ?ただ3号って言っとけば、客は何時か1号や2号が見れるかもって、期待して足を運ぶんだってさ」

「ジェクトさんらしいね」

「親父の言う通り客は来た。腹立つよ」

「お父さん、嫌いなの?」

「大嫌いだ。…親父死んだのか?」

「わからない。ただ、ジェクトさん有名人だから、死んでるなら、何か情報が入ると思う」

「親父…こっちでも有名人なのか」

(な、なんや!あの空気は!爆死しろ!)
影で生者の横島が嫉妬していた

夜が明けて、横島たちが乗る船は、無事ルカの港へ到着する。そして、一行が船から降りると…

「うわっ!?何だ!?もしかして…、取材?あっ、どもども」
横島たちは、ビサイドオーラカとして、今大会を取材する記者たちから、一斉にカメラやマイクを向けられた。

「結構有名なチームなんッスねぇ…。やるじゃんか!」
ティーダはワッカを褒めるも、ワッカは浮かない表情を見せる。

「ビサイドオーラカは、何と!23年間一度も大会で勝利した事がない今大会最弱チーム!ある意味、奇跡のチームです!それ故なのか、毎年負け試合を楽しみにしている不思議なファンも多いそうです!」

「23年間無勝利…や、やるじゃねぇか…ワッカ」
ティーダの顔が引きつる。 取材の最中、続々と各チームを乗せた船が到着。大会参加のチームが現れ、港が一層騒がしくなった。

「見て下さい!我らが英雄ルカ・ゴワーズです!大会最多の優勝経験を誇る、優勝候補筆頭です!」

「あいつらが優勝候補のチームッスか…こっち来るぞ?」
取材を受けてる最中のルカゴワーズが、横島たち一行へと近寄ってくる。

「よお、ワッカ!また恥かきにきたのか?全く懲りねぇ野郎だな!はっはっは」
ルカゴワーズの主将ビクスンが嘲笑する。それに対して、ワッカは動じる事なく毅然と応じていたが、堪忍袋の尾が切れたティーダは、マイクを使い、ルカゴワーズに宣戦布告…記者やその他のチームがいる中で、優勝宣言をぶちかました。

控え室内。
「はぁ~なにやってんだよ…優勝って…」
ワッカが溜め息を漏らす。

「なに言ってんだよ!始める前から諦めて、どうすんだよ!狙うなら優勝!当然だろ!」
ティーダが熱く語る。

「…だな。おっし!目標変更だ!良い試合をしよう。じゃねぇ!俺たちの目標は…優勝だ!」
ワッカの新たな所信表明で、ビサイドオーラカに活気が湧く。

「まぁ、そう畏まるな。そもそも俺たちの優勝は決まってるからな」
横島が得意気に語る。

「へぇ、もしかして横島クンってブリッツ得意なの?」
ルールーが問い掛ける。

「いや、横島はブリッツやった事ないッスよ。ん?じゃあ、どうするつもりッスか?」

「ふふ、ブリッツの技術なんて必要ねぇよ。勝つのは簡単さ、この…オオアカ屋から仕入れた…、下剤入りポーションを、あのいけ好かねぇ連中に飲ませりゃ一発優勝間違いなしや!はぁはぁ」
横島の邪な笑みと作戦に、一同は引いてしまう。

「馬鹿野郎!そんな事して勝ってなんになる!正々堂々戦って勝つ事があるんだ!」
横島はワッカに絞られてしまった。

「ったく、勝てば官軍とゆー言葉を知らんのか」
横島はぶつくさ言いながら、手に持つ下剤ポーションを、机に置いた時…ユウナが勢い良く控え室の扉を開いた

「大変!大変!街にアーロンさんが来てるんだって!」

「アーロン!?」
横島とティーダが反応する。

「2人共、どうしたの?」

「いや、知り合いと同じ名前だったから…そのアーロンがどうしたんッスか?」
アーロンはユウナの父ブラスカのガードを務めた男であり、ティーダの父ジェクト同様、伝説のガードと崇められる存在であった。
横島とティーダは、ザナルカンドの男がアーロンなのだと内心で理解していた。

(アーロン…あんた一体なんなんだ?あんたのせいで…)

(絶対あのオッサンやな…。まさか、あの無責任オヤジが伝説とはねぇ~)

「アーロンさんだよ!ティーダくんたちの知り合いって、絶対アーロンさんだよ!!だから探しにいこっ!」
ユウナがアーロン探索を提案する。

「探しにったって…試合が…」
ティーダがワッカの顔を見る。

「うーん。大丈夫じゃねぇか?俺たちシードだから試合まで時間あるしよ。行ってこいよ」
こうして、ワッカの計らいにより、横島・ティーダ・ユウナ・キマリの四人で、アーロン探索に出かける事となった。

無人の控え室。
「ン?ヨオポーション、フヒオヒーツオア?(ん?このポーション、ウチのチームのか?)」
アルベドの男が横島の忘れた下剤ポーションを見つける。

「オゴアカミセウキ…ミサガルア!(喉渇いてるし…いただくか!)」
そう言うと、アルベドの男は下剤ポーションを豪快に飲み干した。

男の名前はルムニク…。
この誤飲が後に奇跡を起こす事となった。

「凄い人の数だね。ここで、はぐれたら大変だね」
ユウナは無邪気に笑う。

「それなら大丈夫ッスよ!」
ティーダはそう言って、ユウナに口笛を吹いて見せる。そしてユウナに口笛を教え、呼んだら直ぐに飛んでいく、と固く約束する。

「けっ!おいっ!脇ツルオヤジ探すんやなかったんか!!」

「そっ、そうッスね!あの店なんかどうッスか?人が集まってそうじゃん」
横島の妬み横槍が入り、一行はそそくさと店に入と…

「キマリではないか?こんな所で何をしている?」
横島たちは、キマリを知る、ビランとエンケ…2人組のロンゾ族の青年と出会った。

「でけぇ~…キマリとは比べもんにならんぞ!」
横島が後退りする。

「そうだ!キマリは小さきロンゾ!弱いロンゾ!キマリは御山を捨てた弱いロンゾ!」
ビランが叫ぶ。

「キマリは逃げていない。キマリは守るべき者の為に御山を降りただけだ。」
キマリが口を開いた。

「あいつ喋れたんやな…」
横島がポツリと言うと、ビランの弟分のエンケが笑い出した。

「キマリは嘘つき!キマリはビラン大兄に負けて角を折られた!その恥ずかしさで御山を降りただけ!角なし!角なし!」
エンケがキマリを罵倒する

「あの野郎…!」
ティーダがビランたちの態度に食ってかかろうとするが、横島が止めた。

「横島!何で止めるんだよ!?」

「バカ野郎!相手見て喧嘩売らんかいっ!見ろっ!あの強そうなガタイ…」
横島はヒソヒソ耳打ちする。

「悔しくないのかよっ!?」

「アホかっ!キマリが角なしなのも、弱いのも、一応事実やろうがっ!あの方々は何も間違っとらん!」

横島たちがヒソヒソと話してる最中、エンケが更にキマリを侮辱する。だが、それに耐えかねたキマリが、エンケを殴り飛ばした。

「うおっ!なんちゅーパンチ…。あんま下手な事言わんとこ…」

横島がキマリのパンチ力に青ざめてるのをよそ目に、ティーダが加勢…店内は乱闘騒ぎとなる。そして乱闘の最中…

「お、おい!ティーダ!ユウナちゃんがおらんぞ!?」

「え!?」
ティーダとキマリの動きが止まる。店内を見渡すが、そこにユウナの姿は見当たらなかった。

「あんた達!なにやってたの!?」
急いで店から出た一行の前にルールーが現れる。
「ユウナちゃんがアルベドに浚われた!?」

「何やってんだ!お前ら!」
控え室にてワッカにどやされる。

「いや~…。あのな…これには複雑な三角関係があってだな」
横島は、キマリのせいだ!と言いたかったが、キマリのパンチ力が脳裏に浮かび言い出せなかった。

「キマリのせいだ…。すまない」
キマリが前に出てワッカに謝罪する。

「お前がとちるなんて、珍しいな。まあ良い…。済んだ事だ。」

「そうだ!アルベドが犯人だってわかったんだよ?」
ティーダが質問する。

「アルベドから要求があったのよ。召喚師を返して欲しければ試合に負けろ…ってね。」
アルベドの要求は、アルベドサイクスを勝たせろとの事だった。

「ふ~ん。辞退じゃなく負けろか…。変な要求だな。最弱チームに負けてくれなんてさ」
ティーダが口を開く

「はなから返す気なんかなくて、試合に集中させてる隙にルカからトンズラしたりしてな」
横島が呟くと場が静まり返った。

「その可能性もあるわね。もしそうなら不味い事になるわ。港かしら…急ぎましょう!」

「でも試合はどうするんだ?負けんのか?」
ティーダがワッカに訪ねる。

「お前らがユウナを救出してくれるまで粘ってみるさ。」

「俺が居なくて大丈夫か?」

「大丈夫だよ!最弱チームに負けてくれなんて頼むチームだ。大したことねぇよ!それより早く行ってこい!」

ワッカに送り出され、横島たちは港を探索。ユウナを無事に保護。そして、拉致した実行犯を発見。アルベドの巨大な機械と戦う事となった。

「なんじゃ!!このドッキリメカは…。こんな面白メカでビビるかー!よくも俺のユウナちゃんを…がががががっ!!」
機械兵器の腹部から放たれた、マシンガンに似た連続豪速球が横島の全身を殴打する。

「な…なななんじゃ!?あの反則ピッチングマシーンは!?作ってええんか!?」

「本当にアンタって丈夫よね…」
血を吹き出しながらも元気な横島に、ルールーは呆れ顔を浮かべる。

「ふざけてないで、一先ず物陰に隠れるッスよ!」
一同は一先ずコンテナ裏に避難する。

「隠れたはいいけど、どうすんのよ?」

「う~ん、…あれって、どうッスか?」
ティーダがクレーンを指差した。クレーンを操作して、機械兵器を引き上げるという提案だった。

「成る程な…俺がクレーンを操作しよう!みんなは奴を引き付けといてくれ!」
横島は一目散にクレーンへと駆けていった。

「…よ、よしっ!兎も角、作戦決行ッス!」
横島を援護する為、ティーダたちは機械兵器と戦闘を始めたのだった。

「よし、クレーンに着いたぞ!後はこいつを…動かねーぞ?って、動力切れかいっ!!ぶほっ!」
頭を抱え、天を仰いだ横島をまたもや豪速球が襲った。

「横島!…は大丈夫ッスね。それよりルールー!動力切れらしいけど…どうすりゃいい!?」

「知らないわよ!待って…あんたちょっと操縦席に行きなさい。何とかなるかもしれないから」
ルールーはティーダに指示を出す。ティーダが操縦席に移動を始めたのを見計らい、サンダーを唱え、クレーンに直撃させる。

「動く!?動いたッス!よし!これなら!」
ティーダはクレーンを操縦し機械兵器を吊し上げ、地面に叩きつけた。

「いいわ!後もう一回!」

「ウッス!って…あれ?あれ?故障ッス!ごふっ!!」
不運な事にクレーンは一度の操作で故障してしまった。そして、慌てるティーダの顔を豪速球が直撃した。

「はぁ…はぁ…不味いわね」

(はぁ!はぁ…!!ルールーさんの息遣い!あの滴る汗!たっ、堪らん!…あれ…文珠!?今の煩悩で!?)

(これなら余裕で……うぉぉぉぉっ!!みみみ見える!見えとるがな!?マジかあの人!!…これは動けん!!動けんぞっ!!だが動かんとルールーさんが…!そうだ!)
横島は煩悩と道徳の銓に葛藤するも、即座に解決策を思いつく。

「キマリ…頼みがある」
横島はキマリに呼びかける。

「どうした?」

「俺は、この文珠に雷を刻んだ。これを使えば奴を倒せるだろう…。だが俺は動けん。お前が頼りだ…みんなを頼む!」

「横島…わかった。キマリに任せろ」

「頼んだぜ…」
(俺はその間、ルールーさんの秘境を堪能しているからな)

「うおおお!」
文珠を受け取ったキマリはジャンプし上空から機械兵器に向け文珠を投げつける。文珠の炸裂した機械兵器は巨大な稲光包まれた後に爆散していった。

「凄いッスね!キマリ!」

「キマリやるじゃない」

「みんなキマリのおかげで助かったね。有難う、キマリ。」
ユウナがお礼する。

「今回はようやったな」
(本当は俺のおかげなんだけどな)
皆が?キマリを讃える中キマリが口を開く

「違う。キマリのおかげじゃない。今回助かったのは横島のおかげだ。」
キマリの発言に横島を含む皆が目を丸くする。

「謙遜しなくていいッスよ。横島は今回文珠だしただけだろ?」

「それも違う。文珠を出すのは大変な事。その文珠を、横島はキマリを信じて預けてくれた。キマリはそれに応えただけだ。」

「横島くんでも人を信じる神経持ってるのね」
ルールーが毒を吐く

「そこまで堕ちとらんわっ!!」

「横島は優しい人間だ。キマリはわかってる。キマリのせいでユウナが浚われた時、横島はキマリを庇ってくれた。キマリは横島に感謝している」

「へぇ~、そうだったんですか…。横島さんって優しいんですね!」
キマリの言葉にユウナの横島に対する評価が上がる。

(こ、こいつ…メッチャええ奴やんけ!!それに引き換え俺って…な、泣けてくる)
横島は自らを卑下して涙する。

「誉められて泣いちゃうなんて、可愛いとこあるのね。それより、そろそろワッカに合図送らなきゃね。」

予期せぬキマリの発言で、仲間内の横島に対する評価が上がる事となったのであった。

「後半残りわずかとなりました、ビサイドオーラカ対アルベトサイクス戦。そろそろ一分を切りますが、0-0の硬直状態が続いてます。」

「意外ですねぇ。大方の予想はアルベトサイクス圧勝でしたからね。これはルムニク選手のパス処理ミスが原因ですね。」

「オーラカの選手に渡す場面も何度かありましたからね。体調不良ですかね?」
実況の2人が試合を解説している。

「俺たちの気迫に負けてるだけだっつうの!」
実況の解説を聞いたワッカが愚痴る。

「あれは…ルーの合図!あいつら成功したんだな!よし!お前ら反撃だ!」
残り二十秒。ワッカの合図でオーラカの面々が一斉に攻め立てる。

「いくぜ!」
ワッカの懇親のシュートが、ルムニクの守るゴールへと放たれた。

「パジッ!コ…コエウッ!(ぷぎっ!も…漏れるっ!)」
ルムニクは…限界だった。ダムの決壊を防ぐのに必死のルムニクにシュートを止めるだけの体力はなかった…。
後半終了直前。ワッカが決めた値千金の決勝点。ビサイドオーラカは奇跡の決勝進出を果たした。

「決勝だぜ!ワッカやるじゃないッスか!」
試合終了後の控え室。ユウナ奪還を果たした一行も集まり、ワッカを祝福する。

「へへ…まあな。楽勝だって言ったろ?」

「オッシャ!この勢いのまま優勝するッスよ!」
ティーダの喝入れに、控え室が俄かに沸き立った。

決勝直前の控え室。ワッカは決勝のメンバー発表をしていた。

「レッティは残念だが、アルベトサイクス戦での怪我が酷くて出れねえ…。」

「参ったな…。俺MFはイマイチなんッスけどねぇ」
ティーダが呟く

「いんや…。お前は当然FWだ。MFは…横島、お前だ。」
ワッカは隣にいた横島の肩を叩く。

「ななな、何を言うとるんじゃ!?俺のようなトーシロに務まる訳ないやろ!」

「いや、お前なら出来るさ。今まで一緒にいた俺が言うんだ間違いねぇ」

「言うほど長い間一緒におらんやろうがっ!!嫌じゃー!嫌じゃー!死にたくな…」
駄々をこねる横島をティーダが少し離れた場所まで連れて行く。

「なぁ、横島。実はMFって、言うほど危険じゃないんだぜ?」
ティーダは横島に耳打ちする

「嘘ぬかすな!乗せるつもりやろ!」
ボソボソと言い返す。

「本当だって。ルールブック見りゃ分かるけど、ボール持ってない相手への攻撃は禁止されてるからな…。俺らFWさ」

「だがな…。」

「けどよ、攻撃は禁止されてるけど、相手を怪我させない「接触プレイ」は「アリ」なんだぜ。」

「え?」

「そして、ブリッツには女性選手もいる。」

「えっ?えっ?」

「「選手」相手なら接触しても問題ないって事さ」

「……」
ティーダと横島がワッカたちの下へ戻る。

「俺の我が儘だ。無理強いはしねぇ。だが、出来たら…」

「なに言ってんだよ、ワッカ!俺とお前の仲じゃねぇか…ダチを見捨てる訳ねぇだろ?」
輝く笑みを浮かべた横島がワッカの肩を叩いた。

「横島…有難うな」

(チョロいッスね)ティーダはしたり顔で2人を見つめる。

「あの~。横島が出るという事は…俺…決勝補欠っすか?」
ダットはなんとも言えぬ表情を浮かべ、自身を指差した。

「いんや。今回補欠は…俺だ。」
ワッカが驚きの発言をする。

「どういう事だよ!?ワッカの引退試合だろ!?」
ティーダがワッカに詰め寄る。

「決勝進出が決まっった時から決めてた事だ。俺は引退するが、お前らはこれからだ…。だから、若い奴らに決勝戦を体験させてやりてぇってな…。レッティは残念だったがな」

「ワッカ…」

「その代わり負けんじゃねぇぞ!引退だからな、ここまで来たんだ。お前ら絶対優勝しろよ!」
ワッカが檄を飛ばす。

「おう!任せろッス!」
そして、遂にルカゴワーズとの決勝が開始されるのであった…。

「本当に決勝まで来るとはな…。ん?ワッカの姿が見えないが…怖じ気づいたのか?はっはっ」

「雑魚の相手は俺らで十分だってよ!」
ティーダはビクスンの挑発を返す。ティーダに難なくかわされるも、ビクスンがパンチを仕掛けるなど一触即発の状態で試合開始のホイッスルが吹かれた。

「ナイスキャッチ!横島!」
試合開始のボールを横島が捕まえる。

(ふむ。サッカーとは似てるようで、少々勝手が違うな…。一先ずボールの感覚掴むか)
横島はジャッシュとボッツに指示をだし、横パスを繰り返す。そして、横島がボールをキープしてる時…
ドーラム(女)・グラーブ(男)・アンバス(男)の三名が横島に接近してきた。

「おおっ!やっと来た!…つか三人も来て、がら空きやんか!アホめ!栄光の手パス!」
栄光の手を使った直接パス。ボールがティーダに渡った。

「しまった!?きゃっ!?なに…!?」
慌てたドーラムが戻ろうとしたが…横島の接触プレイが行く手を阻んだ。

「やらせはせぇん!やらせはせぇん!やらせはせんぞぉ~!ぐひひ」
横島は堂々とドーラムに抱き付いた。

「は、離してよ!」

「おい!お前!何してんだよ!」
アンバスやグラーブがドーラムの下に駆け寄る。

「接触や!接触!問題ないわ!」

ゴォォォル!なんと!オーラカが先制のゴールを決めました!ティーダ選手見事なシュートでした!

「なんだ今の!反則だろ!」
ビクスンたちが審判に抗議するも、相手にはされなかった。

「ふんっ!甘ったるい奴らめ、そんな認識で、よく恥ずかしげもなくプロを名乗ってられるな…」

「なんだとっ!?」

「反則ぅ?これは「通常の接触プレイ」だ!それを貴様らは、勝手に動揺して失点した!お遊び感覚でブリッツをやるから醜態を晒すのだ!そして女!貴様も接触プレイ如きでガタガタ抜かすなら辞めちまえ!貴様らは揃ってプロ失格なんだよ!」
横島は動じず自らの行為を棚に上げ、ルカゴワーズを批判する。

「くそっ…!」
横島に丸め込まれたルカゴワーズは何も言い返せず。抗議を取り止めた。

「ほんっと最低ね」
接触プレイは認められたが、ルールーの横島に対する評価は元に戻ってしまったのであった。

横島の繰り返される接触プレイによってリズムを崩されたルカゴワーズは、更に1点を失う事になった。そして、オーラカ2点リードのまま前半戦が終了した。

「すげぇな!横島!ティーダ!後半も頼むぜ!頼りにしてるからな!」
プレイ内容を気にしないオーラカなメンバーたちが横島を賞賛する。

「ふっ…大船に乗った気でいな」
気取る横島。

「リードしてっけど気抜くなよ!!んで、このまま優勝すんぞっ!!」
ティーダが気合いを入れる。

「優勝だ!優勝だ!優勝優勝優勝だ!オーッ!」
メンバーが目前の優勝を目指し改めて一致団結する。
そして、遂に後半戦が開始された。

「よっし!ナイス!横島!」
前半同様、再び横島がボールをキャッチする。

(駄目押しの1点欲しい所やな…。強引に攻めてみるか?)
横島がドリブルで中央突破を試みると、グラーブ・ドーラム・バルゲルダの三名が行く手を遮った。

「さっきのようにはいかねぇぞ!」
グラーブが横島にタックルを仕掛けるも…腹部に栄光の手のカウンターを受けあえなく撃沈する。そして、横島は残った2人を下衆な視線で見つめる。

「嫌っ…!」
前半戦のトラウマからか、2人は硬直してしまう。

「…!引っかかったなバカめっ!栄光の手パース!」
横島は前半同様、栄光の手を使いティーダにボールを届けた。

「ナイス!横島!」
ティーダがゴールへ向かうが、目の前にビクスンが立ちふさがった。

「これ以上やらせるかよ!」

「面白ぇ…!アンタには色々やられてたからな!今までの鬱憤纏めて返させて貰うぜ!」
ティーダはボールを殴り飛ばし、ビクスンの顔面に直撃させる。

「もう一発オマケだ!」
グロッキー状態のビクスンの顔面に追加の一発を浴びせる。
「いくぜ!」
ティーダは大回転をしながら上空へ飛翔…、ビクスンの顔面から跳ね返ったボールを蹴り飛ばした。

「ジェクトシュートだ!!」
ユウナの笑顔と同時に、ティーダ放ったシュートがゴールネットを揺らした。

ゴォォォル!!ティーダ選手!ハットトリック達成!!見たことのない強烈なシュートです!!
会場が大歓声に包まれた。

残り時間2分になると、会場全体からワッカコールが巻き起こった。

「ワッカワッカ言われてもなぁ…ティーダどこ行く…交代かい!?」
ワッカの出場に会場が沸き立ったが、残り時間2分…超主力のティーダが欠けた事に横島は内心冷や汗をかいていた。

「悪りぃな…、折角の決勝戦…俺の引退試合!やらせて貰うわ!」

「オッス!」
オーラカメンバーが声を出す。

「まだ時間はある!みんな頼むぜ!俺に点を…」
ワッカが方針を提示しようとしたが、それを横島の声が掻き消した。

「いいか!ヤツ等は、この交代をリズム変化のチャンスと思い攻めてくる!だから俺達は無理に攻めず守備に徹するんだ!俺達の目標は…優勝だ!」

「オーッッ!優勝だ!優勝だ!優勝優勝優勝だ!」
横島の言葉を聞きオーラカメンバーに気合いが入る。だが、ワッカの瞳は寂しげだった。
横島の指示通り、ビサイドオーラカはキッパの後ろに隠れたチキン戦法を展開する…。

そして遂に…ビサイドオーラカは奇跡の優勝を果たした。

「優勝じゃあああ…って…なんじゃありゃああ!?」
横島が目にした物は、スタジアムに侵入する無数の魔物の姿であった…。

横島・ワッカ・ティーダの活躍で、フィールド内に侵入してきた数匹の魔物は駆除される。街の様子が心配だと、横島たちは急ぎ会場を後にした。

「街にもいやがる…!何で急に…まさか!?俺たちが優勝した腹いせ?」

「それは流石にないんじゃねぇの?」
ティーダと横島が目前の魔物を前にして、気の抜けたやり取りをしていると、後ろから見覚えのある男がやってきた。

「何をふざけてる?さっさと片付けるぞ…」

「アーロン!?」

「アーロンさん!?」

「あれがアーロン様…」
突然のアーロンの登場に横島ら一行がざわついた。

「おい!おっさん!後で話あるからな!」
アーロンの登場…。横島とティーダはザナルカンド同様にアーロンと共闘し、目前の魔物を排除した。

「コイツ等どれだけ居るんだよ…」

「全部片付ければいいだけだ」
辟易とするティーダを尻目に、アーロンは魔物が群がる先へと進んでいく。

「おっさんに任せて休むか…ん?何じゃありゃあああ!?」
アーロンに任せ、戦いをサボろうとした横島が目にしたのは、禍々しい怪物の姿だった。

「あれが…シーモア老師の召喚獣…。」
怪物を見たユウナが呟く。

「シーモア老師?…つか召喚獣!?あれはどう見ても化物やろ」
現れたシーモアの召喚獣は、凄まじい外見同様の力を発揮した。目から光を放ち、瞬く間に魔物を全滅させる。そして、街に本来の平穏が戻った。

「アーロンさん!お久しぶりです!」
ユウナがアーロンに近寄る。

「ああ…。少し待ってろ。おい、お前らこっちへこい。」
アーロンが横島とティーダを連れて、その場を離れる。

「あの2人、アーロン様と知り合いなのね」
残されたメンバーの間に妙な空気が流れた

「おい!アーロン!あんた…」
ティーダがアーロンに詰め寄ろうとした時…

「おい!こらっ!おっさん!わかっとんのか!?誰のせいでこうなったと思っとるんや!?あぁ!脇ツルオヤジ!」
横島が真っ先に詰め寄った。

「お、おい横島。何もそこまで…」
霊波刀まで出した横島を、ティーダが制止した。

「ティーダ…お前に話がある。横島…2人だけで話がしたい」

「何の話だよ?ここで話せよ。」
ティーダがそう言うと、アーロンは少し間を置き口を開いた。

「…『シン』はジェクトだ」

ティーダの父親ジェクトが『シン』…。アーロンの衝撃の発言に場が凍り付く。

「な、なに言ってんだよ?意味わかんねーっつの…」
ティーダはアーロンの発言を受け止めれなかった。

(このおっさん頭大丈夫か?)
横島は違う意味で、アーロンの発言を受け止められなかった。

「お前の父親が『シン』…これは紛れもない事実だ」

「急に現れて親父が『シン』?意味わかんねーよ!」
ティーダがアーロンに向かって叫ぶ。

「…俺は今からユウナのガードを務める。お前たちもこい…。強制はしないがな」

「何だよ…全部わかったふりしちゃってさぁ!何が強制はしないだ!俺たちにはそうするしかねぇじゃねぇか!」

「そうだな…」
アーロンは一言呟くと、ユウナたちの下へ去っていた。

「ま、まあ、なんや…。親父さん『シン』の腹の中で生活してるだけかも知れんぞ?俺の世界にピノキオって話があってだな…アーロンの勘違いかも知れんし、気にすんなよ。」
ただならぬ空気から真実と察知。横島はティーダを励ました。

「ああ…、そうだな」
ティーダは内心では納得していた。父ジェクトが『シン』である事を…。幾度かの『シン』との接触時に、父ジェクトを感じていたからである。

「あっ…みんな戻ってきたよ。みんなで何の話をしてたんですか?」
ユウナがアーロンに訪ねる。

「ああ、ちょっとな…。それよりユウナ、今から俺はお前のガードを務めたい。大丈夫か?」

「アーロンさんが!?でもどうして?」
ユウナが訪ねる

「ああ、ブラスカとの約束だからな」

「でも、本当にいいんすか!?」
ワッカがアーロンに改めて確認する

「不服か?」

「滅相もありません!アーロン様にガードして貰えるなんて光栄っすよ!」

「そうか。ならコイツ等も連れていく。今日からお前のガードだ。」
アーロンは横島とティーダを引っ張り出す。

「ども…宜しくッス」

「本日付けで!ガードに任命された横島忠夫です!ユウナちゃんとルールーさんを命懸けでガードします!」

「うげっ…アーロン様っ!いいんですか!?」
ルールーがアーロンに問いただす。

「こいつ…ティーダはジェクトとの約束だ。横島は…こいつとの約束だ」
こうして横島とティーダ…2人のガードとしての旅が始まったのであった。

新たにアーロンを加えた一行はジョゼ寺院を目指し、現在ミヘン街道を歩いていた。

「あれは…もしや、あなたはユウナ様では?」
途中、チョコボに乗るグループと遭遇。引き連れる女性がユウナに話し掛けてきた。

「おぉ!これまた色っぽい日焼け美人やないか!礼儀正しく得点高いぞ!」
横島が1人興奮する。

「あの、どちら様でしょうか?」
横島を無視し、ユウナが話を進める

「私はルチルと申します。やはり、ユウナ様でしたか」

「私はエルマっす。討伐隊でルチル隊長の部下やってまーす!」

(色々軽そうなねーちゃんやな…)

「討伐隊って、ビサイドにも支部があったな…隊長って事は偉いんッスか?」

「そうですよ。何せ隊長は部隊を指揮する人ですからね。僕の名前はクラスコです」

「それよりユウナ様、もしやこれからキノコ岩街道に向かわれるのでは?」
ルチルがユウナに尋ねた。

「はい、ジョゼ寺院を目指していますから」

「それは困りましたね…。実は現在キノコ岩で、討伐隊の重要な作戦が展開されていまして…街道付近は封鎖されているんですよ。」

「え!?通れないんですか!?」

「ええ…掛け合ってみますが、最悪別ルートを迂回して頂くかも知れません」
ルチルが申し訳なさそうに答える。

「おいおい!召喚師の旅を邪魔するなんて、お前ら何やらかすつもりだ!?」
討伐隊の旅を妨げる行いに、ワッカが噛み付いた。

「すんません…。機密なんで答えられないんすよ…」
エルマも申し訳なさそうに答える。

「なんだよ…それ」

「申し訳ありません。それではユウナ様、失礼します。」
ルチルたちはユウナに一礼し、その場を後にする。

「まあいい…あいつらが何をしようと関係ない。俺たちは進むだけだ。ユウナ、先を急ぐぞ」
動揺する一行を後目にアーロンが先へと歩きだす。

「アーロンさん…」

「おっさんの言うとおり、気にしてもしょうがないって!ユウナちゃん」
横島がユウナに声をかける

「うん…でも気になるよね」

「今考えても仕方ないッスよ!とりあえず進もうぜ!なっ!」
ティーダが微笑みかける

「うん!そうだね!」
ユウナも同様、ティーダに微笑み返した。

(な…何故や!この扱いの違い!顔か!?やっぱり顔なんか!?ちきしょおお)

横島ら一行が、1日の披露を癒やす為、街道に設置してある旅行公司に立ち寄ると、1人の男が一行に声をかけてきた。

「マギレヤキセ(初めまして)」

「な、なんだ?もしかしてアルベド語?…喋れないッスよ」
ティーダが対応する。

「これは失礼しました。初めまして、私はリンと申します。この旅行公司のオーナーを勤めています」

「公用語…喋れるんッスか?」

「ええ、アルベドとスピラ社会の融和に公用語は必須ですから」

「へ~…、ところでよ、あんたさっき何て言ったんや?」
横島が興味本位で尋ねる。

「マギレヤキセですか?初めまして。ですよ。アルベド語に興味がおありですか?」

「え?まぁ、多少は…」
(アルベドのねーちゃん達に興味があるんだがな)

「ふむ…。なら、アナタにこれを差し上げましょう。」
リンは横島にアルベド語辞書を渡す。

「貰ってもええんか!?」

「構いませんよ。アルベドとの交流に繋がりますからね、頑張ってマスターして下さい」

「おおきに!任せてくれ!」
(これがあればアルベドのねーちゃん口説き放題や!)

「ミミトソヨ…。これが分かれば一人前です…。頑張って下さい」
リンは妖しい笑みを浮かべ、横島に耳打ちする。

「あ、ああ…。が、頑張るよ」
(な、なんや今の寒気は!?)

一夜明けて、出立の準備に入った時、突如、外から悲鳴が聞こえてくる。

「なんだ!?女の子の声ッス」
一行が急ぎ外に出ると、怪物がチョコボと幼い少女を襲っていた。

「なんや!?あの化物!?」

「チョコボイーターよ!気をつけて!」

「チョコボイーターって!…なんすかルールーさん」
横島はルールーに聞き返す。

「名前の通りチョコボを食べる怪物よ!さっさと退治するわよ!」

「待って!私に任せて!」
ユウナが横島らを制止し、自身が最初に得た召喚獣…。ヴァルファーレを召喚。その力は凄まじく、チョコボイーターを瞬く間に倒してしまった。

「ユウナ凄いな!驚いたッスよ」
ティーダが駆け寄る

「俺も驚いたぜ。見た目は頼りねーくせに、すげー技持ってんだもんな」
横島たちの賞賛の声に、ユウナは照れ笑いを浮かべる。

「ほう、お前召喚師か。なかなかやるではないか」

「ん?誰だこのオバハン?」
(なかなか乳でけーね)
中年女性がユウナに話しかけて来た。

「私はベルゲミーネ。お前と同じ召喚師だ」

「私はユウナです。宜しくお願いします。」

「うむ。ユウナ、お前は筋が良い。だが、まだまだだ。だから私が鍛えてやろう。」
ベルゲミーネはユウナとの召喚獣同士による戦いを提案してきた。

「偉そうなババアやなぁ~、ユウナちゃんの召喚獣、さっき戦ったばっかやぞ…」
(余裕勝ちだったけど)

「安心しろ。召喚獣なら回復してやる」
ベルゲミーネはそう言うと、ユウナの召喚獣が瞬く間に全開した。

「た、ただ者じゃないッスね。どうするユウナ?」

「やります。お願いします。ベルゲミーネさん」
ユウナは戦いを承諾した。

「うむ。良く言った。かかってこい。」
勝負が始まると、ベルゲミーネはユウナがキーリカ寺院で得た召喚獣イフリートを召喚。ユウナは先程の戦いで呼んだヴァルファーレを召喚する。戦いは拮抗するも、ユウナが勝利を収める事に成功した。

「見事だ!だが、まだまだ未熟。研鑽を怠るなよ。では、また会おう。さらばだ」
こうしてベルゲミーネは去っていった。ユウナの修行が終わり、横島ら一行はジョゼ寺院を目指して、旅行公司を後にする。

すまん。両指怪我して全く打てんかった。
今、何とか報告だけ
後ちょい待ってて

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