鷲沢文香「夏と前髪の向こう側」 (36)


文香「……見せるんですか?」

文香「……いえ、その……慣れていないものですから」

文香「恥ずかしい……」

文香「やっぱり……パーカーは着たままで」

文香「あっ……剥ぐのは……」

文香「Pさん……じ、実は私……太陽を浴びると溶けてしまうので……」

文香「……ああっ」


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文香「Pさんは……強引です」

文香「……でも、それが……」

文香「いえ……なんでも……」

文香「あの……どうでしょうか」

文香「……何分、水着など着ないものですから……」

文香「……前の休みに、美嘉さんと……志希さんに誘われて……」

文香「おふたりに……選んでもらったんです」

文香「……美嘉さんの見立ては、大人すぎて……私には……」

文香「それに、そういうのは……美嘉さん自身が着てみては、と……」

文香「そう言うと……真っ赤になって。逃げられてしまいました……」

文香「……美嘉さんなら似合うと。そう……思ったのですが……」

立て直し

いやいいな
続行


文香「志希さんの見立ては……布地の面積が……狭すぎて」

文香「水着というべきか……迷いました」

文香「志希さんが言うには……それぐらいの方が……」

文香「……Pさんが。喜ぶと」

文香「…………」

文香「……流石に……Pさんの前で着るのはまだ……」

文香「今の私には……無難なもので。それで、よかったですから……」

文香「……それで、どうでしょうか」

文香「……喜んで……もらえますか」


文香「……あの……あんまり……見つめるのは……」

文香「……困ります」

文香「でも……喜んでもらえたのなら……着た甲斐が……あります」

文香「…………」

文香「……たとえ、いくら変われても……恥ずかしい時は……恥ずかしい」

文香「やっぱり……パーカーは着ておきます」

文香「……なんだか暑いです」

文香「……散歩……してきますね」


美嘉「文香さーん★ ボールで遊ぼうよー♪」

文香「……ですが……私は」

志希「せっかくのビーチ遊ばなきゃー♪」

美嘉「そーれっ」

文香(……私の元へ……まっすぐ来ます)

文香(まるで……突然、私の元に現れた……Pさんのような……)

文香(あっ……ああっ)

志希「あはは♪ 文香ちゃん、ナイスヘディングー♪」

美嘉「後ろ行ったよー♪」


文香(転がっていく……)

文香(待って……)

文香(……取っ……これは)

文香(まるで……近くて遠い……Pさんを追いかけているような……)

文香(あっ)

美嘉「こけた!?」

志希「文香ちゃーん!?」


文香(ぼ、ボールが……沖に……)

文香(……助けなくては)

文香(少し……水に入るぐらいなら……)

文香(……あっ……いきなり深く)

文香(まるで……Pさんの心のような……)

文香「あぁ~~~」

美嘉「文香ちゃーーーん!?」

志希「今助けるにゃー!」


文香「ハァ……ハァ……」

文香「……すみません」

文香「私……こういう運動に疎いものでして……」

美嘉「ア……アハハ。ごめん……」

志希「でも翻弄されてる文香ちゃんの姿、かわいかったー♪」


美嘉「そだ! プロデューサーも呼ぼうよ!」

文香「でしたら私、呼んできますね」

志希「おっけーおっけー♪」

美嘉「じゃあお願いね、文香さん!」

文香「はい……行ってきます」

志希「……」

美嘉「……」

志希「美嘉隊員、用意はいいかにゃー?」

美嘉「勿論であります、志希たいちょー★」


文香「Pさん、おふたりが……ぜひ一緒に、と」

文香「私……? はい……楽しいです」

文香「ええ……少しボールで……転げたり、流れたり」

文香「……海とはそういうところです」

文香「……私が悪いということは……」

文香「あんまり……8割……くらいです」

文香「……あの……何か?」

文香「……無言で見ているような気がしましたので」


文香「……Pさんを連れてきました」

志希「うむうむ。ご苦労、文香クンっ」

文香「……はい」

美嘉「じゃあ早速、目隠しするねー★」

文香「えっ……えっ」

美嘉「ぎゅっぎゅーっと★」

文香「……これは、一体?」

志希「にゃーっはっは! よくぞ聞いてくれましたー!」

志希「実はだね、文香クンにスイカ割りをしてもらおうと思ってね!」

美嘉「アタシたちが誘導してあげるから、ご心配なく!」

文香「は、はあ……」


美嘉「じゃあいくよー? まず前進!」

文香「はい……」

志希「甘いよ甘いよ、そんなんじゃ! スイカは甘くても、あたしの誘導は甘くないよ!」

文香「す……すみません……」

美嘉「さらに前進前進★」

文香「……はい」

志希「一歩一歩、噛み締めて! これまでのことを思い出して!」

文香「はい……はい……?」

美嘉「そこで左に一歩! 笑顔も忘れず★」

文香「笑顔、ですか……」


志希「ハイ、そこでパーカー脱ぎ捨ててっ!」

文香「棒を持っているのですが……」

志希「んなもんポイだポーイ!」

文香「でもスイカが……」

志希「棒じゃない! ハートで割るのだっ!」

文香「……まさかの……無茶振り」

美嘉「大丈夫大丈夫♪ そのままゴーゴー!」

文香「わかりました……手探りですが……」

文香(この感じ……Pさんに……いろんなはじめてを教えてもらったときのような……)

文香「あっ……」

志希「お、おお!?」

文香「あ……すみません。Pさん……支えてもらって」


文香「……Pさん」

文香「あの……もう……離れても……」

志希「こらー! まだいちゃつくなぁー!」

文香「そういう……つもりでは……」

美嘉「ま、まあまあ」

志希「むぐぐ……よーし、もうちょい……そこでストップ、文香隊員!」

文香「……はい」

美嘉「そこで左に回転!」

文香「……ぐるぐる」

志希「よし、そこでおっけー!」

文香「……着きましたか?」


美嘉「そこで思いっきり前に一歩★」

文香「思いっきり……前に……」

文香「……あっ」

志希「よっしゃ!」

文香「……す、すみません」

文香「……まさか……Pさんの胸に飛び込んでしまうなんて……」

文香「でも……おふたりがそう指示を……」

文香「美嘉さん……? 志希さん……?」

文香「……走って逃げた?」

文香「……そうですか……私も、そうしたいのですが……」

文香「でも……もう少し」

文香「もう少しだけ……このままで」


文香「あの……避けても……よかったのですが……どうして」

文香「……私のことを、支えるため……」

文香「そうですか……」

文香「……ありがとうございます」

文香「それでは……あと少しだけ、支えてもらいます……」

文香「……我侭でしょうか」


志希「どれどれ、上手くいったかなー?」

美嘉「うひゃー……文香さんって意外と大胆なんだ……」

志希「普段大人しいぶん、ワガママ言うとすごいタイプなんだねぇ♪」

美嘉「うわーうわー……なんだかこっちまで熱くなるって……!」

志希「美嘉ちゃんテンション高いなー」

美嘉「だってだって……ああっ、あれ絶対、恋人同士の空気じゃん!?」

志希「いやー、女の子が男の子の胸に飛び込んじゃっただけだしー?」

美嘉「って、それ恋人じゃん! あんな密着するとか、恥ずかしくて……で、できないってばぁ!」

志希「初々しいにゃー♪」

おしまい

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