ハルヒ「謎のおっさんに違いないわ!」 (175)

小学生の、六年生の時。普通の日常に気が付いたあたしは、面白いことを求めた。

中学に入ってから、あたしは面白いことを求めて活動してきたつもり。

でも、結局は何もなかった。

そして、今日あたしは高校生になった。

少しは何かが変わる。そう思って、高校に至る坂道を登った。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1406310004

面白くもない普通の入学式が終わり、教室に移動。

どうせ教室に着いたら、自己紹介に決まってる。

ワンパターンで飽き飽きするわ。あたしは教室に人が揃うまでそう思ってた。

教室に人が揃った。でも、あたしの興味は只一人に注がれていた。

あたしの後ろに座った人物は制服を着ていても解るほどに筋骨隆々とした大男だった。

なにあの二の腕?あたしの胴回りよりも太いんじゃないかしら?

しかもどう見てもおっさん。二十歳過ぎの子供がいてもおかしくないくらいの。

顔は怖い感じがするけど、ダンディな男前。

それが詰襟をきっちりとホックまで閉じて、その上にカラーをつけてるんだから笑っちゃう。

だけど、なんで詰襟なの?うちの学校はブレザーなんだけど。

そんな謎のおっさんが気になっているうちに、予想通りの自己紹介が始まった。

つまらない自己紹介を聞き流しながら、あたしの番がやってきた。

「東中学出身、涼宮ハルヒ」

後ろのおっさんも気になるけど、一応、要求だけは伝えておこう。

「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」

たぶん、クラスの連中も後ろのおっさんが気になってるんだろう。

あたしの紹介も聞き流された感じだ。

そしてついにその瞬間がきた。

あたしの後ろのおっさんが立ち上がり、自己紹介を始める。

>>4
最終行

×あたしの後ろのおっさんが立ち上がり、自己紹介を始める。

○おっさんは座ったまま自己紹介を始めた。


と思ってください。

「シルバ・ゾルディック。オレの名を呼ぶのは自由だが指図は受けない」

おっさんはそれだけ言うと沈黙した。

自己紹介は終わりらしい。

なによあれ!名前しか言ってないじゃない。

謎だわ!謎!謎のおっさんに違いないわ!


こうしてあたしの高校生活は何かが少し変わって始まった。

シルバかよwwwwwwww

やべぇ、開幕3行でハルヒの首が飛ぶ

またお前か....

何故……何故シルバなんだ……

すげーチョイスだ

これスレタイから察するの無理やろ……

なんだなんだ
酔えば酔うほど書く人か
どんだけのペースで飲んでんだ
心配になるわ

燃料切れたら言えよ。
御中元で贈るから。

>>13
ワインを開けた日なら、一日に一本+αくらい

>>14
ビール!哀しいけど今って夏なのよね。

あたしはこのおっさんを観察した。

普段は大人しく授業を受けている。

ほとんど喋らない。

尾行しようとしたけど、教室を出た時には見失った。

なんなのこのおっさん!謎だわ!

おっさんは馬鹿みたいに大きい。

たぶん二mは越えてると思う。

しかもムキムキで横幅もあるもんだから、おっさん列の後ろから苦情がでた。

その所為で席替えになった。クジ引きだって。本当に平凡な方法で嫌になるわ。

ここはおっさんと接触できるいい場所なのに余計なことをって、あたしは思った。

おっさんは窓際最後尾で固定。あたしとしては真横か真ん前に行きたいところ。

そう思っていたら、見事におっさんの前を引き当てた。

あたしは思わず立ち上がって、

「やったわ!」

なんてガッツポーズをとってしまったわ。

あたしが新しい席に向かうと、おっさんは既に自分の席に座ってた。

おっさんはここでも無表情。

あたしは席に座り、振り返っておっさんに言ってやったわ。

「どう?またあたしの後ろになれて光栄でしょ?」

「………」

おっさんは無表情のままで無視をした。

なんなのよ、あいつは!

あたしは見てるだけの女じゃないのよ。

ある朝、HRの前に直接聞いてみた。

「ねぇ!あんたなにもんなのよ!」

あたしみたいな美少女が孤独なおっさんにわざわざ振り返って声をかけてあげたんだから、
普通なら感謝の一つもして答えるのが筋でしょうに、このおっさんときたら、

「学生だ」

表情一つ変えずにそう答えただけ。

本当に頭にくる。

もう、このおっさんを部活で囲って調べるしか無いわ!

あたしはそう思った。

部の名前も決まっている。

S涼宮ハルヒが Oおっさんを S調べる為の団。

これね。そう決めた日から、あたしは活動を開始した。

まず部室。

文芸部の部室に目を付けた。

今年の春に三年生が卒業して部員ゼロ、新たに誰かが入部しないと休部が決定していた唯一のクラブ。

一年生の新入部員が入ったらしいけど、一人しかいないし休部になったようなものに違いがないわ。

そういうことで、下調べで、お昼休みに部室棟の文芸部にまで足を運ぶ。

部室には誰も居ないと思ってドアを開けたら、窓辺に本を読む一人の少女がいた。

文芸部員だろう。都合がいいので交渉を試みる。

「ねぇ、部室貸してくれない?」

窓辺の少女は無表情に答える。

「どうぞ」

「ありがとう」

「本を読めればいい」

少女は無表情に応じた。

部室の問題は解決した。

次はあのおっさんの入団のさせ方。

ここはやっぱり強硬策ね。

部室に連れ込んで強引に団員にしてしまおう。

放課後が待ち遠しいわ。

待ちに待った終業のベル。

あたしはおっさんの腕を掴み強引に部室に連行しようとした。

無理だった。ビクともしない。

何こいつ?石像か何かで、足は地面にくっついてるんじゃないかと思った。

地団太を踏んで悔しがってるあたしにおっさんが声をかけてきた。

「何か用か?」

ついにおっさんから声をかけてきたわ!

あたしにかかればこんなもの。チョロイものね!

あかん、ハルヒが可愛く見えてきた....

いつ殺されるかとヒヤヒヤするな

「部室っ」

あたしはおっさんに目的を教えてあげた。

「何のだ?」

おっさんはまた質問してきた。

「あたしが作ったSOS団のよ!」

「何だそれは?」

おっさんは表情一つ変えずに質問攻め。

でも、あたしは考えた。

S涼宮ハルヒが Oおっさんを S調べる為の団。

なんて言ったら警戒されちゃうんじゃないかしら?

「……う~~ん」

あたしが声を出して悩んでいると、おっさんが、

「用がないなら帰るぞ」

なんて言い始めた。

あたしは咄嗟に言う。

「ちょ、ちょっと待ちなさい!そ、そう!」

あたしはここで一息おいて、

「SOS団……世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団!これに決めたわ」

咄嗟に出たのに、素晴らしいネーミングセンスだわ。流石はあたしね。

おっさんは体をこっちに向けて聞いてきた。

「そのSOS団の部室とオレがどう関係あるんだ?」

初めておっさんと会話が成立したと思いながら、

「あたしの後ろの席だから、特別に団員その一にしてあげるわ!光栄に思いなさい!」

おっさんは無表情のままで立ち上がる。

二m以上の身長。分厚い胸板。太い腕。その上、表情からは感情が窺えないから迫力がある。

べ、別に怖がってなんかないんだからね!

と、自分を勇気づける。

「………」

おっさんは黙ってあたしを見る。あんた何とか言いなさいよ。

おっさんはあたしの頭にポンと手を乗せ、

「いいだろう。案内しろ」

って言った。

正直なんだか安心した。

……

今のは言葉の綾よ。誰に言い訳をするという訳でもなく思ってしまった。

何だか子ども扱いされたようで気に入らないけど、勧誘には成功した。

あたしの後ろをツカツカとついてくるおっさんを部室に案内した。

「ここ」

そう言って、あたしは部室のドアを遠慮なしに開ける。

窓際には例の少女が座ってた。

少女を気にせず、あたしは部室の中ほどにまで進む。

おっさんもついてくる。

「これからこの部室が我々の部室よ!」

両手を広げて宣言した。

おっさんは、

「そうか」

とだけ言った。本当は感動してるだろうに不器用なおっさんだこと。

「長門有希」

突然、窓際の少女が自己紹介をした。

暫しの沈黙が流れる。

「これから放課後、この部室に集合ね。絶対来なさいよ。来なかったら死刑だから」

あたしがその沈黙を破った。

おっさんを確保できたんだし、あたしとしては大満足だわ!

次は色々そろえて、おっさんの様子を見てみるつもり。

おっさんを確保したまでは良かったもののおっさんの様子に変化なし。

部室でも教室と同じく無言、無表情で座っているだけ。

本のページをめくってる分だけ、有希の方が動いているくらい。

そしてある程度時間が経つと、

「今日は終わりだな」

と、さっさと出ていく。

二人とも無言なもんだから、部室は静か、有希の本をめくる音が目立つくらい。

有希がページをめくる為に指を動かすものだから辛うじて静止画じゃないと解る。

現状を打開するためにおっさんを刺激してみることにした。

おっさんといえばスケベに決まってるわ。

あたしはそう考えた。

数日の間、昼休みごとに校内を物色する。

物色の結果、二年生に良い感じの子を見つけた。

その日の放課後、その子が廊下でぼんやりしてたから、あたしは部室に連れて行った。

おっさんの反応を楽しみにしながら、部室のドアを開ける。

「やあごめんごめん! 遅れちゃった! 捕まえるのに手間取っちゃって!」

明るく挨拶をしたのに二人とも無視。

反応したのは二年生。

「なんなんですかー?」

「黙りなさい」

紹介するために黙らせた。

「紹介するわ。朝比奈みくるちゃんよ」

おっさんがこちらを見る。有希は読書を続けてるが、この際いいでしょう。

「めちゃくちゃ可愛いでしょ」

反応がない。

「それだけじゃないのよ」

あたしはそう言うと、みくるちゃんの背後に回り、服の上から胸を鷲掴みにした。

「どひぇええ!」

と言うみくるちゃんを無視して、アピールを続ける。

「ちっこいくせに、ほら、あたしより胸でかいのよ。ロリ顔で巨乳なのよ!」

おっさんの反応を見ながら続ける。

「あー、本当におっきいなー」

アピールを強めるために服の下から胸を揉んでみる。

「たたたす助けてえ!」

耳まで赤くして手足をバタつかせるみくるちゃんを無視して、スカートを捲り上げてみる。

おっさんは呆れたように鼻で一笑い。挙句には興味をなくしたのかこちらを見なくなった。


なんでこんな可愛い子が、あたしみたいな美少女に胸を揉まれてるのに興味抱かないの?

なんでみくるちゃんのスカートを捲りあげてるのに何事もなかったかの様な顔をしてるの?

腹が立ってきたけど、やっぱり謎のおっさんだわ!

その後も、おっさんの反応を見る為に色々な道具を集めてみたけど、全部空振りだった。

放課後の部室で、その残骸、移動式のハンガーラック、給湯ポットと急須、人数分の湯飲み、CDラジカセに冷蔵庫、カセットコンロ、土鍋、ヤカン、数々の食器を見ながらどうしようかと悩む。

そう言えば、おっさんはパソコンを使えるのかしら?少し興味が湧いた。

「パソコンが欲しいわ!あんたとみくるちゃんついてきなさい!」

あたしはそう言って、おっさんとみくるちゃんを指名する。

おっさんがついてくるか不安だったけど、無言で立ち上がった。ついてくる気みたいでちょっと嬉しかった。

ってバカ!嬉しいとかじゃなくって、団員だから当然じゃない!と、自分が思ったことに突込みを入れた。

あたしは二人を連れ立って、二件隣のコンピューター研究部に行った。

あたしの計画では、向こうの部長にみくるちゃんの胸を揉ませる。

おっさんにそれを撮影させる。

その写真をネタにコンピューターを分けてもらう。

我ながら完璧な計画だわ。

あたしはおっさんにインスタントカメラを渡し、

「あたしが指示したら撮影して」

と言って、コンピューター研究部のドアを開ける。

「こんちわー! パソコン一式、いただきに来ましたー!」

部室に居た部員は四人。誰が部長かわからないから聞いてみた。

「部長は誰?」

「僕だけど、何の用?」

部長が名乗り出た。要件を伝える。

「用ならさっき言ったでしょ。一台でいいから、パソコンちょうだい」

「ダメダメ。ここのパソコンはね----」

部長が全てを言い終る前に後ろでメキメキという音がする。部長はそれを見て慄然してた。

あたしも振り返る。

おっさんがインスタントカメラを片手で握りつぶしていた。

指をポキポキッと鳴らし、おっさんが一歩進む。

部長は歯をガタガタ鳴らしながら、

「ごめんなさい!ごめんなさい!パソコンでもなんでもあげるんで命だけ!!」

と命乞いを始めた。

流石のおっさんでも命までは取らないと思うけど、怖いのは認めるわ。

こうして無事にパソコンが手に入った。配線もやって貰った。

旧式のパソコンを渡されるかと思ったけど、普通のパソコンだった。

インスタントカメラの代わりにデジカメを貰った。

おっさんがパソコンを使えるのか試すために、朝のHR前にwebサイトの立ち上げを頼んでみた。

おっさんは、

「わかった」

と一言。そのまま教室を出ていき、暫くしたら携帯電話を片手に戻ってきた。

おっさんは席に着くなり、

「すぐ終わる」

と言った。

webサイトがなんなのか解ってるのかしら。

ところが、その日の放課後にはプロが作ったとした思えない完璧なサイトが立ち上がってた。

お昼休みで仕上げたのかしら?

おっさんってば何者なの!?あたしの謎は深まるばかり。

おっさんの謎は深まるばっかり。

あたしはこの事態の脱却を図るために、お色気作戦を再び実行することにした。

あたしは少し考える。

おっさんといえば、キャバレーよね。そしてキャバレーと言えばバニーちゃん。

思い立ったが吉日。

その夜、あたしはネットでバニースーツ探す。思ったよりも高かった。

仕方がなく有希の分は諦めて、あたしとみくるちゃんの分だけを注文する。

その日は悩殺されて鼻の下を伸ばしてるおっさんを想像しながら、布団の中で、

「にひひ」

と笑いながら眠りについた。

ワロタwwwwww

>>6で腹筋が崩壊した

二日後、それは届いた。

赤と黒。二着のバニースーツ一式。

週が明け、嬉々としてそれを持って行く。

朝のHR前、おっさんを見る。

おっさんは何故か眼鏡をしていた。

「なによそれ?老眼鏡?」

あたしの問いに、おっさんは一言、

「実験だ」

とだけ答えた。

あたしは考えた。

普通に考えれば、眼鏡か老眼鏡よね。

でもおっさんに限ってそんな普通なのはあり得ない。

なんて言ってもあたしが目を付けた、不思議な存在なんだもの。

それにおっさんは『実験』って言ってた。

『実験』って何?

あたしが出した結論は、通信機兼相手の力を数値化する眼鏡。

そうよ!きっとそうに違いない!

「ねえ、あんた。それって遠くの相手と話したり、相手の力が解る道具よね?」

あたしはずばりと聞いてやった。

「元々は音声と映像を送るだけの眼鏡だったんだが……」

おっさんが珍しく言いよどむ。

「だったんだが?」

あたしの追及に対しておっさんは、

「今解析したところ、数値は錬に対応してないそうだ」

おっさんは意味不明なことを言ってあたしの頭を三回程優しく叩いた。

馴れ馴れしい。

待ちに待った放課後。

全員が揃ったのを見計らい、紙袋から掛け声とともにバニースーツ一式を取り出す。

「じゃあああん!」

バニースーツを見たみくるちゃんが何かを察したのか、

「あのあのあの、それはいったい……」

と慌てる。

「あたしとみくるちゃんが着るのよ!」

「い、いやですっ!」

あたしの命令に逆らうみくるちゃん。抗命は重罪なのに知らないみたい。

あたしはちらりとおっさんを見る。

かなり興味深そうに見てるわ。

流石のおっさんもバニースーツの魅力には勝てなかったみたい。

おっさんの反応を見る為に、みくるちゃんを目の前で着替えさせることにした。

何故か抵抗するみくるちゃん。

「おとなしくしなさい!」
「いやあああぁぁぁ!」

セーラー服を脱がせとスカートのホックに指をかける。

おっさんの様子を見る。

恥じることなくガン見してる。

みくるちゃんとおっさんの目があったのか、

「見ないでぇ!」

とみくるちゃんが泣き声で叫ぶ。いいわ!ナイスリアクションよ!

あたしの期待に反して、おっさんは恥ずかしがるみくるちゃんをじーっと見てるだけで無表情。

何を考えてるのかしら?なんて思いながら着替えさせてたら、一人のバニーガールが出来上がってた。

みくるちゃんは「うっうっ」と泣いていた。

そういえば、みくるちゃんにはファンが多くて泣かすと一部の男子生徒を敵に回すらしい。

まぁ、おっさんなら男子生徒の全部を敵に回しても瞬殺できそうだし問題ないでしょう。

二メートルの大男が男子生徒をちぎっては投げをしてるところを見てみたい気もしたけど、
今はそれどころじゃない。

なんで、恥じらうみくるちゃんの着替えを平然と見てるのよ!

これはあれね。みくるちゃんの魅力不足。

団長であるあたしが手本を見せようとおっさんの前で着替えてやった。

ところがやっぱり平然と見てるだけ。

……と思いきや、突然

「クックックッ」

と笑い出した。

あたしの魅力に陥落した。そう思ったのも束の間、おっさんが続ける。

「次は何をしてくれるんだい?お嬢ちゃん達」

おっさんが聞いてきた。

「その恰好で酌でもしてくれるのか?」

あたしとしたことがその後の展開を考えていなかった。

「え……えっと…」

こんなことなら親父の酒でも持ってきておくんだった。

「今日は終わりだな」

あたしの後悔を知ってか知らずかおっさんは出ていった。

その日、家に帰って反省をした。

次はお酒を持って行こうって。

でも、そこからちょっと考えた。

そして一つの疑問が浮かぶ。

みくるちゃんは兎に角、あたしみたいな美少女が目の前で着替えてるのに平然としていられるのかしら?

「もしかして、あのおっさんはホモかも知れない」

つい口に出る。

よく考えれば、部室には美少女が溢れてるけど、美少年が一人も居ない。

次は美少年をおっさんの前に出してみよう。

そう考えてその日は眠りについた。

なんだこれは…

>>46
奇遇だな、俺もだ

どこかに良い感じの美少年が落ちてないかしら?

朝のHR前に悩んでいたら、

「よう、涼宮。どうした?苦虫を噛み潰した様な顔をして」

あたしの悩みも知らずに前の席の男子生徒がのんきな声をかけてきた。

この馴れ馴れしい生徒は、席替えの前からあたしの席の前に陣取っている。

もしかして、ストーカーなのかもしれない。

そういえば、おっさんの反応を見る為に曜日ごとに髪型を変えていたら、

『曜日で髪型変えるのは宇宙人対策か?』

なんて意味不明な事を言って、声をかけてきたこともある。

おかげでおっさんの反応を見ることもなく髪を切るはめになった。

後ろを向いて声をかけてきているこいつをマジマジと観察する。

普通の見た目。個性のない顔立ち。つまらない髪型。中肉中背。全く持って個性の欠片も感じない。

もし個性があったとしたら、精々、キョンとかいう珍妙なあだ名くらいなもの。

その珍妙なあだ名がしっくりくるんだから、その点は評価できる。

そうそう、もう一つ特徴があった。

初めて会うはずなのに、どこかで会ったことがある気がする面持ちの持ち主であること。

たぶん無個性がなせる親近感なんだろうけど、これは重要な才能だと思う。

だから、あたしもたまに相手をしてしまう。

「な、なんだ?俺の顔に何かついてるのか?」

キョンはあたしの視線に耐えかねてオロオロし始めた。

「そうね。あんたみたいのでもいいかもね。楽しみにしてなさい」

こいつくらい親しみやすい方がおっさんの様子を見るには丁度いいかもしれない。

「なんのことだ?」

キョンは納得がいかない表情だった

期待はできないけど、美少年を見つけるまでの繋ぎにはなるでしょう。

終業のチャイムと同時にキョンの腕を掴み連れ出す。

「どこ行くんだよ」

キョンの質問に、

「部室っ」

と行き先を教えてあげる。

部室につき、ドアを開ける。

キョンもついてくる。

部室に一番乗りのつもりだったのに、既に有希が着ていた。

ここに住んでるんじゃないかしら?

あたしの疑問を他所にキョンがまた聞いてくる。

「ここはどこなんだよ」

「あたし達SOS団の部室よ。あんたも入れてあげるって言ってるの」

あたしの答えを聞いたキョンはやれやれとでも言いたげな口調で、

「おいおい。なんで俺がそんな訳が解らんも----」

この時みくるちゃんが部室にやってきた。

「こんにちはー 今日もよろしくお願いしますぅ。あれっ。新入部員の方ですか?」

キョンの口の動きが止まった。みくるちゃんを目で追ってる。

おっさんもこれくらい解りやすかったら楽なんだけれども、それだと謎じゃなくなるし仕方がないわね。

我に返ったキョンが咳払いを一つ。

「う、うむ。入ってやっても----」

キョンの了承とともにおっさんが入ってきた。

キョンの体がビクッっと跳ねた。

「や、やっぱり……」

キョンが何か言ってるけど、さっそく実験よ。

「それじゃあ、有希とみくるちゃんはついてきて。キョン達二人はここでお留守番」

「お、おいっ!」

恥ずかしいのかキョンが叫ぶ。

「二人とも部室から出たらダメよ!三十分もしたら戻ってくるから」

「お、俺も……」

そう言うキョンの肩をおっさんが掴む。

あたしは有希とみくるちゃんを連れ出して部室を出ていった。

廊下に出て暫くするとみくるちゃんが話しかけてきた。

「あの~何をするんですか?」

「なにもしないわ!食堂の外でコーヒーでも飲みながら時間を潰すわよ」

「はぁ?」

みくるちゃんは合点の行かない顔をした。

コーヒーを飲みながら暫し談笑。

有希は終始無言だったからみくるちゃんと二人で話してたんだけど。

「そろそろいい感じね。それじゃあ行くわよ」

「はぁ」

みくるちゃんが気の無い返事をしながら席を立つ。

一応キョンもいるのかw

キョン災難すぎる

果たして生き残れるのか

良かった。
キョンに出番があって本当に、良かった....のか?

部室のドアを開けるとそこは薔薇の園だった。

キョンは息も絶え絶え、茫然自失としながら、

「か……返して…俺の貞操」

おっさんは顔色一つ変えずに一滴の血も流さずに抜き差しする。

流石に上手だ。仮に息子がいたとしてもまだあの域に達してないだろう。

苦悶の表情を浮かべるキョンに対して、おっさんは何の感情も浮かべず、業務の様に処理している。

ドアをそっと少しだけ開けて中を覗く。

つまらなそうにおっさんが座ってる。

キョンはその向いで恐縮したように体を小さくして座ってた。

なんだか期待外れな光景だった。

「なんで入らないんですか?」

みくるちゃんが声をかけてきた。

振り向き、みくるちゃんに対して、口に人差し指をあてて黙るように注意する。

が、それも無駄だったようで、おっさんはドアを開けた。

「今日は終わりだな」

おっさんは全てを知っているかのようにさっさっと立ち去った。

あたしは悔しくて地団太を踏んじゃったわ。

部室に入ると、キョンは迷子が母親を見つけたような顔であたしたちを出迎えた。

「なんで俺をおっさんと二人っきりにしたんだ?」

目をウルウルさせながら言ってきた。

キョンもおっさんと思ってたらしい。あたしの宝物に目をつけるなんてキョンの癖に生意気だ。

「あんたとおっさんを二人っきりにしたらなにかあると思ったのよ」

「なにかって……」

キョンが絶句する。

心臓じゃねーのかよ

「それでどう?少しは進展した?」

あたしの質問に対してキョンは、

「ふざけるな!俺がどれだけ怖かったと思ってるんだ!お前はあのおっさんを野生のゴリラか何かと思ってるようだが、そんなチャチなもんじゃあ、断じてねえ!もっと恐ろしいものだぞ!」

涙を浮かべながらキョンが続ける。

「お前らが出ていった後な、おっさんは俺の頭を掴んで強制的に回れ右させて、『どっかに座ったらどうだ』って無表情に俺の目を見て言ってきたんだぞ。そして暫しの沈黙。プレッシャーに耐えられなくなった俺が『今日はいい天気ですね』とか『なんで高校に?』とか『涼宮の相手は大変でしょ?』とか『なんで涼宮の部活なんかに?』とか話しかけても全部無視。挙句には一睨みして『少し黙ってろ』だぜ!下着を濡らさなかった俺を自分で自分を褒めたい。っておい!聞いてるのか!」

恐怖から解放され興奮してるかの様に一気にまくし立てるキョンの話を聞き流しながら、あたしは思った。

「やっぱりキョンじゃ駄目ね」

「駄目ってなんだ!おい!」

つい声に出てたみたい。キョンの抗議を無視してこの日の活動をお終い。

翌日知ったことなんだけれども、この日に偉い美形の転校生が九組来てたらしい。

翌日、ゲッソリしたキョンが、

「なぁ?俺もお前の部活に入らないとダメなのか?」

九組の転校生を知っていれば、元々こいつを誘わなかったんだけど、誘った以上は仕方がないわね。

「当り前よ!普通は入れないんだから感謝しなさい!毎日、放課後は部室に集合ね。来なかったら死刑だから」

話を聞いていたのか後ろのおっさんが指をポキポキ鳴らす。

安心したのかキョンは急いで前を向いた。

キョンがゲッソリしていた理由はあたしに追い払われると思ってたからに違いない。

見損わないで欲しいわ。あたしはどんな理由にせよ、団員にした以上は見捨てないわよ。

昼休み、噂の転校生を見に九組に行く。

教室に人だかりがあった。笑顔を絶やさない見慣れぬ男がその中心だった。

あれが転校生に違いない。あたしはそいつの所に行く。

「あんたが転校生ね!」

転校生は笑顔を絶やさぬままあたしを見る。

「はい。古泉一樹と言います。お見知りおきをお願いします。あなたは?」

「あたしはSOS団団長涼宮ハルヒ!団に加えてあげるから放課後を楽しみに待ってなさい!」

あたしはそれだけ言うと九組を後にした。

放課後、九組に行く。

古泉くんがあたしを見つけると笑顔で声をかけてきた。

「ああ。あなたはお昼休みの」

「行くわよ!」

あたしはそれだけ言うと古泉くんの袖を掴み部室に向かう。

「ところでSOS団って言うのはなんですか?」

「部活っ」

あたしは短く答え、部室に急いだ。

部室に到着。

「へい、お待ち!」

と、ドアを開ける

「一年九組に本日やってきた即戦力の転校生、その名も、」

おっさんの反応が楽しみだ。

「古泉一樹です。……よろしく」

古泉くんが自己紹介してる間におっさんをみる。

直感した。これはダメだと。

やる気がなくなったあたしは、古泉くんを適当に入団させ、その日は早々に解散した。

次の朝、おっさんは例の詰襟ではなく、道着みたいのを着て登校した。

道着は濃紺で白い縁取りがされた半袖みたいな感じ。

下は足の裾は布みたいなので頑丈に巻いてた。忍者みたいと思った。

それよりもおっさんが怪我をしてた。

左腕に五センチ程の切り傷があった。

見た感じ新しいけど、包帯も巻いてないから浅いのかな?

おっさんが席に着くのを見計らって声をかけた。

「どうしたのよ!」

「制服の袖が切られてな。明日には直る」

あの詰襟は冬物だから、今は着ない。っていうかうちの制服はブレザー。それはさておき、

「そうじゃなくてその傷よ!大丈夫なの?」

「問題ない」

問題ないっすか。本当に謎なおっさんだこと。あたしがそう思ってたら、おっさんが呟いた。

「良いベンズナイフだったが惜しかったな」

ボソッっと言った。あたしじゃなきゃ聞き逃してたところ。

でも、何だか聞いちゃいけない気がしたから我慢した。

だって、おっさんが呟くなんてことは、今までなかったんだから。

その日の朝のHRで朝倉涼子の転校が告げられてたけど、そんなことはどうでも良かった。

ヒェッ…

人知れず退場なさったか

まさかヂートゥのように頭を砕かれたとか…

朝倉ェ........

・゚・(ノД`)・゚・。

その日おっさんを観察していて気が付いたことがある。

その事について、終業時に声をかけた。

「そう言えば眼鏡は?」

「昨日、ちょっとな」

「そう……」

「眼鏡があった方がいいか?」

「べ、別にあたしは眼鏡属性はないし好きしたらいいわ」

「そうか。凝要らずで助かったぞ」

おっさんは意味の解らないことを言ってあたしの頭を撫でた。

馴れ馴れしいし、不思議なおっさんだわ。何時か謎を解明してやるんだから!

その日は、おっさんの傷に障るといけないので、SOS団は休みとした。


そして翌日金曜日。

朝のHR前。怪我をしてたおっさんに調子を聞く。

「問題ない」

いつもと全く変わらぬ様子。一安心した。

待ちに待った放課後。部室で皆を前にあたしは一大発表をした。

「次の土曜日! つまり明日! 朝九時に北口駅前に集合ね! 遅れないように。来なかった者は死刑だから!」

おっさんをじっくり観察するために屋外活動を展開することにしたの。

キョンが何の為にとか言ってたけど無視してやったわ。

そして土曜日。

あたしは三十分前に北口駅前に到着。当然一番乗り。

おっさんが最後に着いたなら、無理難題でも吹っかけようかと考えた。

でも、そもそもおっさんは着てくれるのかしら?ちょっと心配。

そんなことを考えているうちに、古泉くんが着て、続いてみくるちゃん、有希の順番で集まった。

バカキョンに至っては五分前といったギリギリにやってきた。

やっぱり、おっさんは着てくれないのかしら?不安になった。

そして九時丁度。諦めて振り返ったあたしの前におっさんがいた。

「あんた何時からいたのよ?」

嬉しさを隠しておっさんに聞いてみる。

「さぁな」

おっさんは平然と答える。

悔しい。最後って確定してたら、何らかの罰ゲームを与えられたのに。

とりあえず、喫茶店に移ることにした。

あたしを含めた三人は私服だ。古泉くんはスーツだった。
みくるちゃんはノースリーブワンピースに水色のカーディガン。

だけど、なんで有希とおっさんは制服なわけ?

有希はなんとなく理解できるわ。だけど、おっさんに至っては、例の詰襟。制服ですらない。

変な胴着は昨日見たけど、おっさんの私服はどんなのなのよ?

フラストレーションは貯まるばっかり。

喫茶店の奥にあたし達六人は案内された。

それぞれ注文する。おっさんは迷うことなく自然な形でアメリカン・コーヒー。

有希が注文を迷ってる間、なにその無難なチョイス!なんてイライラしてしまった。

喫茶店の中でクジ引きをした。

ゾロゾロと歩いてはおっさんを観察するどころではない。

爪楊枝に印を付けて二組に分ける。

その結果は信じられないものだった。

おっさんは、みくるちゃんとキョン。

あたしは有希と古泉くん。なに?この本末転倒。

仕方がないので、午後にもう一度組み分けしよう。そう思った。

古泉くんが、「何を探すのですか?」なんて言うものだから、

「あたしが喜びそうなもの」

って答えておいた。今のあたしを満足させるのはおっさんの秘密だけなんだけど。

頼んだわよ。みくるちゃん。あと、おまけにキョン。

喫茶店の料金はおっさんがいつの間にか払ってくれてた。

別に大人っぽくてカッコいいだなんて思わなかったんだからね。

喫茶店を出て、おっさん達と別れたあたしは、気もそぞろに街をブラブラ。

ぶらつきながら、あたしはふと思いついた。

残り時間十分とかでおっさんたちを駅前に呼び出したらどうだろう?

遅刻を名目におっさんに無理難題を押し付けられるわ!

ちょっと卑怯な気がしたけどこの際仕方がないわよね?

その為に、有希や古泉くんと時間を潰した。

十一時半に駅前に着いた。

そこで二十分程立ち話。

有希は聞いてるだけだから、実質は古泉くんとだけだけど。

古泉くんは、「こんなところで立ち話ですか?」

なんて言ってたけど無視。時間を潰したいんだもの。

そして十一時五十分。あたしはキョンに電話をかける。

「十二時にいったん集合。さっきの駅前のとこ」

「間に合うわけが----」

キョンの抗弁を無視して電話を切った。

さて、おっさんにどんな無理難題を押し付けようか?

あたしは自然と笑みがこぼれる。

「ああ、そういうことでしたか。言ってくだされば協力をしましたのに」

なんて古泉くんは言っていた。

ところが、それから五分後。

おっさんは両脇にみくるちゃんとキョンを抱えて駅前にやってきた。

もう!ほんとなんなの!いい加減秘密のベールを脱ぎなさいよ!

罰ゲームを与えるわけにもいかず、そのまま昼食。

ファーストフード店で軽く食べる。

おっさんはポテトとコーラのみ。

なに?ナゲットに腐った肉でも使ってるとでも思ってるのかしら?

あたしの視線に気が付いたのか、おっさんは、

「オレに毒は効かない」

なんて言ってけど。

もう一度クジ引き。今度はおっさんと一緒になれると楽観視していた。

ところが、おっさんはキョンと有希の組。

あたしは古泉くんとみくるちゃん。

なに?キョンは午前も午後も一緒とか不公平すぎる。

思いっきりキョンを睨みつけてシェーキを啜ってやったわ。

そのまま午後もダラダラと過ごして解散した。

休日を一日潰してもおっさんの謎は一個も明らかにならなかった。

それどころか謎が増える一方。周りの所為で順調に行かなかったのもある。

その夜、あたしはイライラ、モヤモヤしながら眠りについた。

何とも言えない違和感を感じて目を覚ました。

天井がない。ここはどこだろう?

布団が硬い?もしかして地面に眠ってるのかしらなんて思ってると、

「目が覚めたか?」

おっさんの声がした。

あたしが目を開けると、おっさんは例の詰襟姿で周りの気配を探るように突っ立てた。

「女の子が寝てるんだから、ちょっとは心配そうにこっちを見なさいよ!」

あたしはおっさんに文句を言う。

「………」

おっさんはチラリと見るだけで無視。

「それで、ここはどこなのよ!」

そう言いながら、あたしは周りを見渡す。

「知らんな」

おっさんはそう言ったけど、どう見ても学校だ。気が付けばあたしも制服姿だった。

「ちゃんと布団で寝てたのになんでこんな場所に居るの?」

「………」

「あんた、なんか知ってるんじゃないの?」

「………」

「ちょっと何か言いなさいよ!」

「………」

あたしが不安で色々聞いているのにおっさんは無視。

「もう、いいわ!学校の中を探検するわよ!」

あたしは精一杯の元気を出し、校舎に向かう。

おっさんは黙ってついてくる。

学校の中は真っ暗だった。

電気をつけようとしたらおっさんがあたしの手を押さえた。

「なに----」

あたしの発言は口を手で押さえられたことによって止められた。

おっさんはあたしの手を押さえていた手を離し、自分の口元に持っていった。

そして人差し指を立てる。静かにしろってことみたい。

あたしが首を縦に振ろうとしたら、おっさんは手を離した。

首を全く動かせないなんて、おっさんの力も謎だわ。

おっさんはあたしを小脇に抱えて移動した。

あたしを抱えてるにも関わらず、全く問題なく移動する。

そう言えば今日、キョンとみくるちゃんを両脇に抱えて移動してたな、

なんてことを思い出す。

おっさんは真っ暗なのにまるで見えてるかの様にスムーズに移動する。

しかも足音一つ立てない。足音一つない静かな校舎を抱えられて移動してる感覚は奇妙なものだ。

怪力で暗闇でも問題なく、足音一つ立てないおっさんの正体が益々気になる。

おっさんはあたしを連れて屋上に出た。

おっさんは暫く辺りの様子を窺うと、ようやくあたしを降ろした。

「いきなり----」

あたしが喋ろうとしたら再び口を押えられた。

静かにしろってことらしい。

仕方がないので、眼下を確認しようとフェンスに駆け寄ろうとしたら、今度は頭を押さえられた。

伏せろって言うことかしら?注文が多いおっさんだこと。

渋々屈んだような態勢でフェンスの下を見に行く。

見渡す限りダークグレーの世界が広がっていた。
山の中腹に建っている校舎の屋上からは遠くの海岸線までを目にすることが出来る。
左右百八十度、視界が届く範囲に、人間の生活を思わせる光はどこにもない。
すべての家々は闇に閉ざされ、カーテン越しにでも光を漏らす窓が一つもなかった。
この世から人間が残らず消えてしまったかのように。

「どこなの、ここ……」

あたしは誰に言うともなく呟いていた。

「気味が悪い」

おっさんはあたしの横に屈んだ。

三回ほど頭を撫でた。

セクハラも甚だしい大きな手だった。

撫でられたからという訳じゃないけど、なんとなく安心したあたしは異変に気が付いた。

突如校庭に青白い光が盛り上がったのだ。

「なにか出た!」

みるみる間に、それは巨大な人の形となった。

「なにアレ? やたらでかいけど、怪物? 蜃気楼じゃないわよね」

あたしの興奮を横におっさんは冷静だった。

「あれを退治したら出られるのだろう」

まるであたしにそう思い込ませるかのように言うと、おっさんは飛んだ。

跳んだというよりは、飛んだと言った方がいいくらいに飛んだ。

フェンスを越えて、校舎よりも遥かに背が高い巨人の遥か上にまで飛んだ。

昇り切ると両手を広げ、その後手を巨人に向けるような格好で落下した。

グシャッっとでも音が出そうな勢いで巨人が頭からひしゃげる。

おっさんはそのままひしゃげた巨人とともに地面に落ちた。

そして凄まじい爆音と共に爆風が起こる。

フェンス際で見ていたあたしは吹き飛ばされた。背中をしこたま打った。

背中の痛みも何のその、あたしは急いでフェンスに戻る。

砂埃が巻き上がり様子は窺えないが、青白い光が消滅していくのは解る。

おっさんが巨人を倒したみたい。

普通なら、あの高さから落ちたら無事では済まないだろうけど、おっさんは無傷な気がした。

砂埃から何かがこちらに飛んできた。

フェンスを飛び越え、あたしの横に静かに着地したのは、やっぱりおっさんだった。

「あんた、いったい何者なわけ?もしかして、宇宙人とか超能力者って言うんじゃないでしょうね?」

あたしはおっさんを見つけた時からの疑問を口にした。

「休業中の暗殺者だ」

おっさんは何事でも無い様に正体を明かした。

やった!ついに正体を突き止めたわ!!

あたしは歓喜した。

目が覚めた。ベッドから落ちてた。

「痛~い」

思わず声が出る。ベッドから落ちて背中を打ったみたいだ。

それにしても変な夢だった。

それにしても休業中の暗殺者とか笑っちゃう。なんで、暗殺者があんな戦いをするのよ。

夢とはいえ、我ながら荒唐無稽だったわ。

まぁ、結構面白かった。背中の痛みも忘れてたくらいなんだし。

目覚し時計を持ち上げて現時刻を確認、午前二時十三分。

……寝よう。

あたしは布団を頭まで被り、背中をさすりながら眠りについた。

おっさんの正体を考えてたから、なかなか眠れなかったんだけど。

小泉空気wwwwww

最近若干投下速度下がったけど燃料切れか?

古泉だったスマソ

日曜日は一日中、悶々として過ごした。

週明け、朝のHR前におっさんにはっきり聞いてやったの。

「シルバは暗殺者とか言うんじゃないでしょうね?」

「休職中だがな」

「はぁ?休職中ってなんなのよ!」

「学業に専念しないといけないからな」

おっさんが続ける。

「卒業したら元同級生として半額で請け負おう」

「何をよ?」

「暗殺の仕事だ。今すぐに殺したい奴が居るなら俺の家族を紹介しよう。一割くらいは安くするだろう」

「家族も暗殺者なの!?」

「ああ」

おっさんのホラ話を聞きながら、あたしは言ってやった。

「似合ってるわよ」









消失までは書く予定でしたが、ハルヒ視点だとヤマ場がなく思った以上にダラダラになりそうなので、
気が向いた時に書き足すレベルに落とします。

シルバ視点も書いて欲しい

謎のおっさんはああ見えて子煩悩なとこあるから、時折ハルヒに見せる優しさにも納得だ

ハルヒに念能力教えたらとんでもないことになりそうだな、ゾルディック家が囲い込みに走りたくなるくらいの

>>122
あそこってさ、全員男の子だから
女の子が欲しかったんだよ

男の娘なら……

六月に入り、退屈だった中間試験の予想通りで退屈過ぎる結果が返りつつあった。

初夏にもなったというのに特別に面白いことがない日々に退屈していたあたしは何気なく市のホームページを覗いてみた。

要するにそんな所をチェックするくらい退屈だったの。

ところが、市のイベント告知を見てあたしは驚いた。

『第九回市内アマチュア野球大会参加募集のお知らせ』

そう書いてあった。あたしは憤慨したわ!何をあたしに無断でイベントを開いてるのよ!ってね。

即日申し込んで、チラシもゲットしたわ。

そして翌日の放課後、あたしはSOS団の皆の前で発表したの。

「野球大会に出るわよ!」ってね。

みくるちゃんが「え……?」って感嘆の声をあげた。

みんなが感動の余りに声を出さないでいると、空気を読まないバカキョンが聞いてきたの。

「何に出るって?」

さっき野球って言ったのに聞いてなかったの?

あたしはキョンにも解るように「これ」と言ってチラシを渡してあげた。

「ふーん」

と、キョンは呟いて顔を上げた。物わかりの悪いキョンもようやく理解したみたい。

「で、誰が出るんだ、その野球大会に」

前言撤回。全然わかっていなかった。

「あたしたちに決まってるじゃない!」

「その『たち』というのは、俺と朝比奈さんと長門と古泉とシルバさんも入っているのか?」

「あたりまえじゃないの」

「俺たちの意思はどうなるんだろう」

「あと三人、メンツを揃える必要があるわね」

頓珍漢な事を言うキョンは無視して話を進めた。

「我々の存在を天下に知らしめるチャンスだわ」

本当はおっさんの身体能力のチェックが目的なんだけど、みんなの前だしもっともらしいこと言っておいた。

「いいでしょ野球。言っとくけど狙うのは優勝よ!
 一敗も許されないわ! あたしは負けることが大嫌いだから!」

あたしの考えに感動している様子だった一同に発破をかけて、あたしは野球部に行って道具を貰った。

野球部は物わかりが良かった。それほど揉めることもなく、グローブを九個、バットにボールをくれた。

ダンボールに道具を一式入れて部室に戻った。

喜ぶ団員を想像してたのに、キョンがケチをつけてきた。

「これは軟式野球の試合だぞ。硬式を持ってきてどうするんだ?」

意味不明でお馬鹿なキョンを無視してると、

「それで、その試合とやらはいつなんだ」

キョンは寂しくなったのか、また質問してきた。

「今度の日曜」

「明後日じゃねえか! いくらなんでも急すぎるだろ」

「でも、もう申し込んじゃったし。
 あ、安心して、チーム名はSOS団にしといたから。そのへんは抜かりないわ」

あたしの手際の良さに一同が唖然としていた。

団長様を見くびらないで欲しいわ。

「……他のメンツはどこからかき集めるつもりだ?」

キョンが呆れた事を聞いてきた。そんな事まであたしにさせる気なの?

「そこらを歩いているヒマそうなのを捕まえればいいじゃない」

なにも出来ないキョンに方法を教えてあげた。

「解った。お前はじっとしてろ。選手集めは俺がする。とりあえず……」

キョンはようやく理解したみたい。感謝しなさい。

それなのに、谷口と国木田に声をかけるとほざいてたわ。

今回は団員の自主性を尊重して人選には口を出さないことにした。

みくるちゃんも友達を連れてくると言ってた。

おっさんの友達なら見たかったけど、それは今度の楽しみにとっておきましょう。

ゾルディック家御一行様が来るわけか

メンツも決まったことだし、特訓をすることにした。

特訓と言えばもちろんあれよ。千本ノック。

ところが、みんな全然だらしなくて話にならない。

みくるちゃんは丸くなったまま動かないし、

キョンはみくるちゃんを連れてグランドの外にでちゃうし、

有希は手の届く範囲の球にしか反応しないし、

古泉くんは面白みもなく爽やかにさばいてたけど。

メインのおっさんに至っては、みんなの様子を確認した後に特訓も受けずにどこかに行っちゃった。

本番まで焦らす気なのかしら?頭にきたけど、楽しみにしておくことにしたわ。

うっぷんを晴らす為に野球部に千本ノックをしてあげた。感謝しなさい。

そして二日後。日曜日。午前八時ちょうど。

あたしたちは市営グランドに集合した。

みくるちゃんは二年生の鶴屋って人を連れてきた。なんとなく興味を引く人だ。

キョンは素直そうな妹を連れてきていた。見学させるらしい。

そしておっさんなんだけど、何故か黒いスーツを着た人達を五人程連れてきた。

「その人達は?」

あたしの質問におっさんは軽く口角を上げて、

「勝ちたいからな」

とだけ答えた。あの人達を参加させる気なのかしら?

メンツを考え直さないといけなくなったわ。

おっさんが連れてきた人の中で気になったのは大きな老婆ね。

すごく体格がいいの。

体格が体格だけにおっさんの親戚かと思ったけど、おっさんに対する態度がそうじゃなかった。

それとキョンの妹とあんまり年が変わらない感じの子もいた。

この子を見てあたしは思ったの。キョンの妹ってば幼稚すぎ。流石のあたしでも将来が不安になった。

キョンの妹は小学五年生なんだよね?つーか、これからっしょ。

キョンの妹に対する不安を振り払ったあたしはスタメンを考える。

おっさんの謎を解明する為に黒服の五人は入れるから、溢れるのは五人。

谷口と国木田は当然外れるとして、特訓をさぼったキョンとみくるちゃんも外しちゃおう。

みくるちゃん友達はいい味を出してたからちょっと勿体無い。

それでも枠がない以上は仕方がないので外れてもらうことにした。

ポジションと打順は考えるのが面倒だったし、公平を期するためにアミダクジで決めた。

一番、ピッチャー、あたし。二番、ライト、黒服おばば。三番、センター、有希。四番、セカンド、おっさん。五番、レフト、黒服少女。六番、キャッチャー、古泉一樹。七番、ファースト、黒服一号。八番、サード、黒服二号。九番、ショート、黒服三号。

だった。他の連中は補欠。マネージャーはみくるちゃん。応援もみくるちゃん。

黒服連中は自己紹介すらしないから不便で仕方が無いわ。

おっさんに名前とか関係を聞いても『頭数だ』としか言わないし!

試合が始まる前に皆に作戦を授けてあげた。

「いい、まず何としてでも塁に出るのよ。
 出たら、三球目まで盗塁ね。バッターはストライクならヒットを打ってボールなら見逃すの。簡単でしょ?」

キョンでも解る単純明快な作戦を考えてあげてた。もっともそのキョンは試合に出さないんだけど。

この作戦なら、あたしの計算では一回に最低三点は取れる。

完璧に整った状態で相手チームと整列して挨拶。いよいよ試合開始だわ。

あたしはキョンがどこからか調達してきた白いヘルメットを被りバッターボックスに向かった。

ピッチャーの一球目。全然大した球じゃなかった。

余裕で打ったあたしは二塁に進んだ。

「ピッチャー全然大した球じゃないわよっ! あたしに続きなさい!」

後続に発破をかけた。

次はおっさんが連れてきた黒服おばばね。

色んな意味で期待だわ!

黒服おばばは一球目を軽々とフェンスの遥か彼方に飛ばした。所謂ホームランって奴だった。

「なかなかやるじゃない!」

あたしはおばばを褒めてやったわ。

次はおっさんが連れてきた黒服おばばね。

色んな意味で期待だわ!

黒服おばばは一球目を軽々とフェンスの遥か彼方に飛ばした。所謂ホームランって奴だった。

「なかなかやるじゃない!」

あたしはおばばを褒めてやったわ。

三人目の有希は見逃しの三振。

有希だし仕方がないわね。

そしていよいよおっさんの出番だわ。

黒服おばばと同じくホームランなのかしら?

あたしがそう思っていたら、おっさんは明らかなボール球に手を出した。

バットに当たって浮き上がった球はグングン飛距離を伸ばした。

変な角度で飛んで行ったボールはファールにもならずホームランだった。

ベンチに戻ってきたおっさんに聞いてみた。

「あんた野球経験者なの?」

「違う」

「じゃあなにかコツがあるの?」

「周だ」

「周?」

「バットを自分の体の一部のつもりで使うってことだ」

おっさんが意味の解らないことを言ってる。

煙に巻かれたようだ。

おっさんを追及しようと思ったら、あたしの打順がきてしまった。

古泉くんはキャッチャーフライ。黒服少女とその他三人はやっぱりホームランであっという間に巡ってきていた。

おっさんの言っていた様にバットを体の一部だと思えばホームランを打てるのかしら?

黒服連中もそれでホームランみたいだし、あたしもやってみよう。

あたしなら出来るはずだわ!

そう思ってバットを振った。

バットに当たったボールはフェンスの向こう側に落ちた。

ホームランだわ!やっぱりあたしは凄いわね!

その後、おばばは敬遠された。

いくら老女だからって敬遠は酷いわよね!

続く有希は見逃しの三振。交代となった。

点差は八点。圧倒的じゃないの、我が団は!

あたしがピッチャーマウンドに行こうとしたら、おっさんが既にそこにいた。

「ちょっと!あんたはそこじゃないわよ!どきなさい!」

「勝ちたいんだろう?」

「そうよ!だからあたしが華麗に完封して勝つんだから!」

「そうか。なら、ピッチャー交代だ。代わりに投げてやろう」

「なに勝手な……」

そこまで言ってちょっと気が付いた。

おっさんが投げてくれるのなら観察できるじゃない!

「………いいわ!そこまで言うのなら代わってあげる!打たれたら承知しないわよ!」

キャッチャーも交代するみたいだ。

黒服おばばだと思っていたら、何故か有希だった。

「なんで有希なのよ!」

「その方が全力で投げられそうだったからな」

おっさんが口を歪めて笑った。

不思議に思いながらあたしはセカンド向かう。

おっさんは言うだけあってかなり速い球を投げていた。

まぁ、あたしほどじゃないだろうけど!

三者連続三振。九球で終わった。次はあたしたちの番だ。

いきなりおっさんが敬遠された。

いくらおっさんだからって敬遠は酷いわよね!

次の黒服少女も敬遠するつもりみたい。

少女でもダメって失礼よね!

敬遠の一球目、おっさんが走った。盗塁だ!

無茶苦茶速かった!っていうかいつの間に走ってたんだろう?

だって気が付いたら軽く三塁に走り込んでたんだから!

そう思っていたら、おっさんはそのまま止まらずにホームに走って行った。

流石はおっさんだわ!

待ち構えるキャッチャーに対しておっさんは分裂した。

分裂したように見えたって言った方がいいのかしら?

いきなりおっさんが複数いる様に見えたの。

分身の術って言えばいいのかな?

そういえば以前に忍者っぽい恰好で登校してたし、おっさんはもしかしたら忍者?

そんな馬鹿なことを考えていたら有希が、

「分身しているように錯覚させる歩き方」

って教えてくれた。有希は意外と物知りみたい。

歩き方ってことはウォーキングね。

おっさんはウォーキングの達人らしい。

そういえば中高年の間でウォーキングが流行った時期があったし、その時に憶えたのかしら?

おっさんも健康には気を付けてるんだと思った。

ちなみにおっさんのホームスチールは無事に成功した。

相手チームはやる気をなくしたのか少女に普通に投げてまたホームランを打たれてた。

古泉くんは三振。その次の黒服の人はホームランだった。

ここでおっさんがもういいだろうって呟いた。

すると残りの黒服の二人は三振した。

その後おっさんは三人を三振に取りゲームセット。

十点差がついたからコールドゲームって奴になったらしい。

試合終了後にキョンがあたしに話しかけてきた。

「なぁ、二回戦も続ける気なのか?」

「当り前よ!あたしの目的は優勝なんだから!」

本当はおっさん観察なんだけどね。

「だが、さっきの相手は去年まで三年連続で優勝していたチームなんだぞ」

「そう、野球ってすごく簡単なスポーツだったのね。こんなにあっさり勝てるなんて思ってもなかったわ」

「ああ。だからこれ以上続けても時間の無駄だろ?」

「そうね。みくるちゃんを使った悩殺作戦も考えてたけど使うまでもなかったし」

おっさん観察も終わったからとは言えない。

というわけであたしたちは今、ファミレスでご飯を食べているところ。

黒服の人達は試合が終わるとそそくさとどこかに行ってしまった。

話を聞きたかったんだけど残念だわ。

おっさんもあたしに五万円ほど渡して、これで昼飯でも食べていけって言うと消えちゃった。

おっさんはお金持ちなのかなぁ?

ハンバーグを頬張りながら考えた。

今回、自称休職中の暗殺者のおっさんについて解ったことは、

①運動神経が抜群

②ウォーキングの達人

③ウォーキングをするくらい健康に気を付けている

一方で謎も増えてしまった。

①黒服の人達は何?

②黒服の人達との関係は?

③お金持ちなの?

一つ謎が解けると新たな謎が浮かぶおっさんを考えながら、

次はアメフト辺りでおっさんの体力を測ろうかしら?と考えるあたしであった。





『退屈』終わり。

黒服の中にゴトーさんはいたのだろうか

ゴトーはキルア専属だしいないんじゃね

ハルヒのポンコツ化が激しい

だが見様見真似で念の応用をマスターしとるのは流石というかチートというか

>>72>>73の間に


あり得ないそんな光景を想像してニヤニヤしてたらみくるちゃんが声をかけてきた。

「あの……どうかしましたか?」

「え!?何でもないわよ!まだみくるちゃんには早いわね!」

みくるちゃんがきょとんとしている。かわいいなぁ、もう!

そんなことを思って歩いていたら、部室に着いた。


が抜けていました。

夏休みに入って、八月も中頃になった。

そろそろ皆宿題も終わらせて居る頃でしょう。

ここからは、みんなも心置きなく遊べるはず!!

ここから皆と遊び倒して、おっさんの謎の一つや二つ明らかにするわよ!

残り少ない夏休みをどうやって過ごすかの予定表を書き上げたあたしは、
満を持してSOS団の招集をかけた。

喫茶店に集合したSOS団を前にあたしは予定を発表したの。

満場一致と思っていたら、珍しくおっさんの方から口を開いた。

「たまには何時もと違う夏休みもいいんじゃないか?」

何時もの夏休みって何よ!?
そりゃおっさんくらいになれば、夏休みを何回も経験してるだろうけど。

「そうだな……オレの家で残りの夏休みを過ごすって言うのはどうだ?」

心なしゲンナリした表情のおっさんが珍しい提案をしてきた。

おっさんの家が気になって、夏休みどころじゃなかったのも事実。

渡りに船とはこの事よね?

「あんたがどうしても家に招待したいっていうのなら、それでもいいわよ?」

二つ返事はしないわ。軽く見られたくないしね。

「ああ、是非きて貰いたい。ここよりも涼しくて過ごしやすいぞ」

「まぁ、そこまで言うのならいいわ!合宿を兼ねて出発しましょう!!」

あたしたちは半日で準備を終わらせて、おっさんが用意していた飛行船に乗って出発した。

家について驚いた!おっさんは山の頂上に住んでいたの。

バカみたいに大きな門をおっさんが手で開けた。

なんであんな仕組みにしてるんだろう?謎だわ。

門をくぐると森だった。

これまた馬鹿みたいに大きい犬が出迎えてくれた。

多分あれは洋犬。だって柴犬には見えなかったもの。

しかも狩猟犬だと思う。だって土佐犬にも見えなかったもの。

庭の奥に進むと黒い服を着た人達が整列してた。

例の野球大会に着ていた人達だ。

おっさんの出迎えみたい。この人達はおっさんの執事なんだって!

もしかして途方もないお金持ちなのかもしれない。

途中に立派な洋館があったけど、それは執事の人達が使ってる場所って話だ。

おっさんの住んでいる家はお城みたいだった。


おっさんは家族の一部を紹介してくれた。

一部って言うのは紹介できない人も居るみたい。

おっさんも色々と大変なんだと思った。

そのおっさんだけど結婚をしていたみたい。

奥さんを紹介されたけど顔を包帯で巻いていた。

佇まいからすると多分かなりの美人だったんだと思う。

無事に怪我が消えるといいなぁって思った。

長男は長髪の二十は超えてるだろうって人だった。

なんだろう?恰好が良いと言えば良いんだけど、何を考えているか解んなくて不気味な人だった。

あたしを見て、おっさんに

「刺しておこうか?」

なんて言って、釘みたいに太い針を服から抜いてたし、本当に不気味。

次男は太っちょで見るからにオタクだった。

みくるちゃんを見る目がとてもイヤらしかった。

あれはみくるちゃんの人形とかを作って部屋に飾るわよ!

絶対にそんなタイプなんだから。

三男は家出中だって。

日本人形みたいで可愛い子も居た。

なにも言わずに睨みつけてた。

おっさんは基本的に子供の教育に失敗してると思う。

そんな感じでおっさんの家で見たこともない御馳走を食べたり、
執事の人達の相手をして遊んであげていたら、八月が終わっていた。

帰り着くのは九月も暫く過ぎた頃になるって話だった。

あのゴトーとかいう執事さん達がやったコイン遊びは凄かったなぁ、
なんて飛行船の中で考えていたら、バカキョンが突然叫んでた。

「うわぁ~~~!!俺宿題を全くやってねぇ!!」

本当にバカね。どうする気なのかしらと思っていたら、

おっさんが、「問題ない」と一言声をかけて肩を叩いていた。

おっさんならなんとかしそうな気がする。

おっさんの家で見たこともない御馳走を食べたり、
執事の人達の相手をして遊んであげていたら、八月が終わっていた。

帰り着くのは九月も暫く過ぎた頃になるって話だった。

あのゴトーとかいう執事さん達がやったコイン遊びは凄かったなぁ、
なんて飛行船の中で考えていたら、バカキョンが突然叫んでた。

「うわぁ~~~!!俺宿題を全くやってねぇ!!」

本当にバカね。どうする気なのかしらと思っていたら、

おっさんが、「問題ない」と一言声をかけて肩を叩いていた。

おっさんならなんとかしそうな気がする。

九月に入ってようやくあたし達は帰り着いた。

普通よりも少し遅いけど、あたし達SOS団の新学期の始まりだ。

キョンの宿題だけど、おっさんの言う通り、何の問題も発生しなかった。

教師連中が忘れてるかの様だった。

あと、一部の教師の頭に釘みたいな針が刺さっていた。

おっさんの子供も勧めてたけど流行なのかしら?

おっさんもそうだけど、大人って言うのは謎だらけね。



チラ裏SS オチマイ

付き合って頂いた皆様においては、お疲れ様でした。

射手座の日でミルキ大活躍とかを考えていたんですけど、
全体的にヤマ場が作りにくいのでここら辺で打ち切りとさせていただきます。

イルミ何やってんだ
乙でした、すごく面白かった!


面白いクロスだった

おつー
ハルヒに教育失敗言われたくないだろうなww

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