啓太郎「たっくんがアイドルのプロデューサー!?」 (154)

アイドルマスター×仮面ライダー555のssです。

内容はスレタイの通りです。駄文ではありますが、お付き合い下さい。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1403930343

巧「ああ」

啓太郎「ああ、って……。そんな簡単に言わないでよ!」

真理「はい巧ご飯」

巧「おう」

啓太郎「って真理ちゃんも!さらっと流さないでよ!」

巧「別にお前が迷惑ならやめてもいいけどよ」

啓太郎「別に迷惑な訳じゃないけど……。でもプロデューサーなんて、たっくんに出来るのかなぁ」

巧「随分な言い草だなおい」

啓太郎「だって、アイドルのプロデューサーだよ?アイドルのスケジュール管理とか、頭下げてお仕事とか取ってきたりするらしいよ?大変そうだし、心配なんだよ」

啓太郎「それにうちだって仕事量多いのに……。僕と真理ちゃんとたっくん、それに草……、ご、ごめん!」

真理「……もう、大丈夫だから。で、巧に質問なんだけど、なんて言うプロダクションに声を掛けられたの?」

巧「っと、何だったっけか…、数字の名前でよ」

啓太郎&真理「数字?」

巧「そうだ、ナナロクゴって書いて、765(ナムコ)プロって読む会社だ」

啓太郎「な、なむこ?」

真理「そんな感じのゲーム会社はあったとは思うけど……。私が知らないってことは一般の人にはあまり知られてない、有名じゃない会社ってことね」

啓太郎「うーん、なーんか聞いたことあるような気がするんだけどなぁ」

真理「所属してるアイドルってどれくらいいるの?」

巧「確か……、13人、だった」

啓太郎「わ、たっくんがメモしてる!気合入ってるね」

真理「少しは成長したってとこかしらね」

巧「怒るぞ」

真理「はいはい。で、名前もメモしたんでしょうね?」

巧「それは……」

啓太郎「え、メモしなかったの!?」

巧「社長のおっさんが早口でまくし立ててきたから、書き留めきれなかったんだよ!」

真理「ふーん、本当に?」

巧「だからそう言ってんじゃねえか!」

啓太郎「あ、でも数人の名前は書いてあるよ。えーと、キクチマコト、ハギワラユキホ、フタミアミ・マミ、ミナセイオリ、タカツキヤヨイ。……ん?タカツキ、タカツキ、タカツキヤヨイ、高槻やよい?」

啓太郎「や、やややややよいちゃん!?」

あんな薄汚いオルフェノクにプロデュースなんて出来るはずがないよ

千早がオルフェノクとかはありそう

真理「何よ啓太郎、知り合いなの?」

啓太郎「いや、まあそんなところかな……。でも高槻やよいちゃんって言ったら、最近人気急上昇中のCランクアイドルだよ!」

真理「しーらんく?」

啓太郎「うん!家が貧乏なんだけど、5人兄弟の長女というしっかりさと持ち前の溌剌さで何事にも一所懸命取り組む姿に人気が出てるんだ!可愛いんだよぉ……」

巧「……お前、そういう奴だったのか」

啓太郎「ち、違うよ!元々やよいちゃんはうちのお客様なんだよ!」

真理「うちの、って、クリーニングの?」

啓太郎「そう。小さい頃からよくご両親と来てくれたんだ。小学生になった頃からは1人で服を預けに来て、1人で服を引き取りにきたりとかもあったなぁ……」

啓太郎「小学生にしては言葉遣いも対応もしっかりしてるし、行動の端々から良い子っていうのが滲みでてたよ」

啓太郎「でもここ最近は来なくなっちゃって、何してるのかなぁ、とか考えてたんだけど、ある日テレビ見てたらフリフリのドレスを着たやよいちゃんが歌って踊ってるわけ」

啓太郎「もうホント、びっくりしちゃったよ……」

真理「…………へえ」








ーーーー私、765プロってとこでアイドルやってるの。まだまだ、見習いだけどね。







真理「765プロ、か」

啓太郎「真理ちゃん?」

真理「うん、いいんじゃない?良いと思うよ、私は。巧がプロデューサーやるの」

巧「本当にいいのか?」

真理「巧もずっと大変だったし、色々な事をやってみるのも良いんじゃないかと思って。社会経験って奴?」

真理「取り敢えず人間関係の大変さや仕事の辛さを味わって、私の日々の苦労を理解するのもアリよ」

真理「ま、精々頑張るのね」

啓太郎「僕の方が真理ちゃんとたっくんの間を取り持つのに苦労してるはずなんだけど……」

真理「店は私と啓太郎で頑張って回す。新しい人を雇うっていう手もあるしね」

啓太郎「僕達のことは心配しないでお仕事に集中してね!」

真理「何処までやれるか挑戦ね!」

巧「……おう。有難うな」

いつの間にか、プロデューサーをすることになっている。

仕事が続いた試しはない。

だが、この2人が応援してくれている限り何処までも頑張れるような気がした。

巧「……おう、やってやるよ」






>>9
草加ァ!お前はこのssの時間軸ではもう死んでるんだよ!
>>13
ふふふ、どうなるでしょうね。

皆さんのコメで色々と妄想が膨らみますね…
話の骨組みは一応あるんですが、こまごまとした所はまだまだなので参考にさせて下さい!

取り敢えず考えてみて、働いてくれるというのなら、いつでも良いから会社まで来てくれーーーー、と言われたので早速次の日に765プロの入るビルまでやって来た。

巧「(しっかし、ボロいな、このビル)」

巧「(いつ建てられたか気になるな……って何でだよ!)」

階下にたるき亭という食堂があり、その脇の階段から上がって事務所に辿り着くという寸法である。

巧「(エレベータは故障中って書いてあったけど、紙が薄く黄ばんでたからもうずっとそうなんだろうな)」

今いる応接室に案内される時に見えた奥のエアコンも故障中という貼り紙がしてあるのがちらりと見えた。
生き残ったエアコンは、この部屋のものだけだろうか。

巧「(真理と啓太郎が張り切って着せてくれたスーツなんだが夏だしあっついな)」

巧「(社長のおっさんがまだなのもいきなり来たから仕方ねえか)」

と、ドアが開いた。
社長かと思い身構えたが、姿を現したのは制服に身を包んだ女性だった。

女性は手際良くお茶とお菓子を置くとこちらを向いて微笑んだ。

???「こんにちは。新しくいらっしゃったプロデューサーさんですか?」

巧「……はあ、まあ」

???「社長は打ち合わせが長引いており、帰社が遅れてしまっていて……。申し訳ありません。」

巧「……いえ、別にこちらこそ」

???「直ぐに帰ってきますので、それまでお待ち下さいね」

女性は頭をさげると出て行った。

巧「(なんか、スマートブレインのあいつに似てるように感じたな……。全然似てないが)」

巧は茶を啜った。

巧「熱っ!」

巧「なんだよこのお茶、夏なのに熱いじゃねえか……」

熱いお茶をふーふー、とこれでもかというくらい冷ましてゆっくりと飲み込んでいると、廊下からバタバタという足音が聞こえてきた。

音からすると、女性ではない。
しかし軽いので、社長ではないはずだ。

その足は止まることなくこちらに向かい、ドアを開けた。

???「まことぉー!真、仕事だぞー!……あれ、すいません、人違いでしたぁ」

その人物はてへろん、と頭を掻きながらこちらに頭を下げると、通りかかったさっきの女性に話し掛けた。少し声が大きい。

???「あ、小鳥さん、真どこにいるか知りませんか?」

先程の女性は小鳥、という名前らしい。
よもや名字ではあるまいし、下の名前か。

小鳥「あれ、真ちゃんいませんか?じゃあ先に下に降りてるのかもしれませんね」

???「そうですか、すみません。じゃ、仕事行って来ます!」

小鳥「オーディション一発目、頑張って来て下さい!吉報待ってます!」

はい、と元気に応えた男性に、小鳥は城戸さんならやれますから、とさらに言葉を重ね、さらに眩しくなった笑顔は玄関の向こうに消えた。

手を振っていた小鳥が、ぼうと眺めていた巧を振り返り、ふふと笑った。

小鳥「今のはキクチマコトちゃんーー菊の花の菊に地面の地、真実の真と書くんですが、その子の新しいプロデューサーさんの、城戸真司さんという方です」

巧「……はあ。……あの、俺以外にも新しく来たプロデューサーっているんですか?」

小鳥「……ええ。今所属しているアイドル全員のプロデューサーを新しい方にお願いしています」

巧「……全員?」

と、そこに小鳥の後ろから帰社した社長が現れた。

社長「只今、外は暑いね…。……おお、確か君は…、乾君だったね。よく来てくれた!早速中で話をしよう!」

巧「……あ、はい」

巧は社長と一緒に応接室に入っていったが、小鳥の哀しそうなその表情が、何故か心に留まった。

応接室に入りこちら側のソファを勧める社長に巧は一礼し、社長が向かい側のソファに腰掛けるのを見て腰を降ろした。

社長「……さて、乾君。我が765プロは、設立以来の大きな危機に晒されている。それは、プロデューサーが事故にあった所為で、アイドル達をプロデュースする人間、即ちプロデューサーがいなくなってしまったことだ」

巧「……大変ですね。でもそれって、怪我をされたプロデューサーさんが13人全てのプロデュースをしていたってことですか?」

他にプロデューサーを務めている人間が数人でもいれば、その他の人間がカバーする事も不可能ではないはずではないのか。

そういう人間がいないということは、そういうことだろう。

社長「まあ、そうだ。彼は1人で13人ものプロデュースを手掛けていた。もう1人、アイドルをやりながらマネージャーをしている子もいるんだが、まだ経験も浅くてね、その子1人に任せる事は出来ない、という訳だ」

社長「そこで新しい人材を雇おうという話になった。元々プロデューサーは数人雇おうということになっていたから、彼が復帰してもそのまま残ってくれる人がいるかもしれないな、なんていう下心もあるのだがね」

社長「また、新人君には数人のプロデュースを一気に手掛けることは無理だと考えたしね、アイドルの人数分のプロデューサーを雇う事になったのだよ」

そういうことだったのか。

巧「……本当に、大変だったんですね」

それまでその仕事をやっていた人間が何らかの事情で出来なくなり、仕事に穴が開く。

常識としても知っているし、自身でも感じた事だ。

それにアイドル達はプロデュースされなくなり活動を停止する事を余儀無くされる。

人の夢が、人から遠ざかっていくのだ。

巧「……俺に、プロデューサー、やらせて下さい。これから宜しくお願いします!」

普通なら可哀想、で終わる話が可哀想では終わらなかった。
巧にとってはそういうことである。

社長「……乾君。本当に有難う。 では、早速、君がプロデュースするアイドルの事を紹介しようか」

あれじゃね?ぴよちゃんは某千川みたく甲斐甲斐しく新人Pの世話をしているうちにたっくんが尊敬して自発的に敬語で話す様になったとか

>>47
小鳥「乾さん、こうやるんですよ」

巧「……おう」

小鳥「乾さん、こうすればいいんですよ」

巧「……あぁ」

小鳥「乾さん、もう少しです」

巧「……はい」

小鳥「乾さん、出来ましたね!」

巧「……あ、有難うございます!」

巧「(小鳥さんすげえ)」

こうですか、分かりません><

巧が社長のゆったりとした話を聞き、ゆっくりと自分の考えを纏めている間、小鳥は給湯室に戻りアイドル達とガールズトークを始めた。

小鳥「新しいプロデューサーさんが来たわよ!」

美希「あれ、小鳥今日も元気だね」

やよい「毎日はしゃいでると疲れちゃいますよー」

小鳥「だってだって、新しいプロデューサーさんも、すっごく格好良いんだもの!イケメンよ、イケメン!」

伊織「春香みたいな言い方しないでよ…」

美希「まあ最近来てる人達、みーんなカッコイイよね。でも一番はうちのハニーなんだけどね」

やよい「最近は格好良い男の人の事を『いけめん』って言うんですか?勉強になりますー!」

伊織「美希、なにさりげなく惚気てるのよ…。あーあ、早くこの私にも、プロデューサーが付かないかしら?」

美希「でこちゃんのデコが髪の毛に覆われるまで来ないんじゃない?」

伊織「でこちゃん言うな!それにね、前髪なんてちゃちゃっと作れちゃうじゃないの!舐めてんじゃないわよー!」

やよい「美希さんと伊織ちゃん、仲良しさんでいいなぁ」

小鳥「お茶美味しいわねー」

やよい「今日も平和で嬉しいですー!」

小鳥はずずっと茶を啜る。煎餅をつまみ、ぽこっと口に入れた瞬間、小鳥の後方のついたてから男性がひょこっと顔を出した。

美希「あ、ハニー!」

小鳥「……げほっ、ごほっ!」

美希の突然の大声に、小鳥はむせた。

???「美希ちゃん、今日も元気だね!」

美希「ハニーに会えたから元気なんだよ!」

???「そう言ってもらえて嬉しいよ」

美希「むー。ミキはいつだって本気なのにー。ハニーに対してでもなんででも」

男性は美希の膨れっ面をするりと躱し、やよいに話しかけた。

???「今日のオーディション、やよいちゃんも同じの受けるんだよね。一緒に頑張ろうね!」

美希「定員が2人のだから……、ミキとやよいでツートップなの!でも一番はミキだけどね!」

やよい「私も、負けないですよー!」

伊織「良いわねぇ、これぞ青春よ……」

小鳥「伊織ちゃんは、黄昏るにはまだ早いわよー」

【青春】の陰で2人が漫才をしていると、また男性がやって来た。

?????「やよいちゃんお待たせ」

やよい「あ、プロデューサー!待ってたんですよ!」

?????「ごめんね、道が混んでて。あ、美希ちゃんのプロデューサーさんと美希ちゃんまで!これから向かうところなんですか?」

???「ええ。今さっき美希ちゃんを迎えに来たところなんです。……皆揃ってる事だし、折角ですから4人で行きませんか?」

美希「あ、それ賛成なの!」

やよい「私も!……プロデューサー、良いですよね?」

?????「うん!じゃあ、行きましょうか!」

小鳥と伊織の頑張って、の声を溶かして彼らは出て行った。

伊織「……受かるといいわね」

小鳥「そうねぇ」

文字数だと
???=渡(わたる) ヒビキ 五代(ごだい) 士(つかさ) 映司(えいじ) 晴人(はると) 紘太(こうた)
?????=弦太朗(げんたろう) 翔一(しょういち) フィリップ
ぐらいかな

律子「……小鳥さん、何やってるんですか」

律子が肩を怒らせてやって来た。

小鳥「ピヨ!?え、えっと、それは」

律子「休憩時間はとっくに終わってるんですよ!早く仕事に戻って下さい!」

小鳥「うう、ぐぉめんなさーい!」

伊織「いい大人が何やってんだか……」

小鳥「じゃ、じゃあ伊織ちゃん、また後でね!」

伊織「はいはい」

小鳥「あと、さっき来た人、多分伊織ちゃんのプロデューサーさんだから!」

伊織「はいはい………って、えぇっ!?律子、それ本当なの!?」

律子「ええ、多分ね……、って小鳥さん、お煎餅掴まない!」

小鳥「えへへ……」

小鳥は律子に引きずられるようにして出て行った。

伊織「全く、人の事だからって、いい加減なんだから!……でも、私のプロデューサーって事は、ついに伊織ちゃんもアイドルデビューね!やったわ!」

伊織は一人はしゃいでいる。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

社長「この子が君の担当するアイドル候補生、『水瀬伊織』君だ」

社長は写真をファイルから取り出した。
写真には、可愛らしくポーズを取った、おでこを出し、リボンのカチューシャをしたロングの少女が写っていた。

巧「……水瀬って、あの有名な会社の」

社長「そう、かの水瀬グループ、水瀬財閥の娘さんなのだよ」

巧「……なんでそんな所の娘さんが?」

社長「いやまあ、ちょっとした知り合いでね。伊織君がアイドルになると言った時に預けられたのだよ」

巧「……そうなんですか」

社長「伊織君は確か給湯室にいたはずだ。伊織君と話が出来たと思ったら、オフィスに来てくれ。仕事についての話をしたいからね」

巧「……分かりました。給湯室ですね」

社長「伊織君を、宜しく頼むよ」

社長の表情には、知り合いの娘を任せる緊張感ではなく、1人のアイドル候補生をこれから育てていく巧へのエールがこもっているように感じられた。

巧「……頑張ります」

巧は一礼し、応接室を出て給湯室に向かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

春香「あれ、伊織1人?」

亜美「いおりん一人ぼっちじゃーん!」

真美「ぼっちぼっちー!」

伊織「そうよ、悪かったわねー!」

あれから伊織は自分のプロデューサーを待っていたが、なかなか来ないので茶をもう1度入れた。
既に出涸らしであったのだが。

春香「そういえば、伊織のプロデューサー、来たんだよね!おめでとう」

伊織「ありがとう。でもまだ会えてないんだけどねー」

真美「え、まだ?」

伊織「ええ。社長との話が長引いてるのかしら。……そっちはどうしたの?」

亜美「うーん、なんかはるるんのプロデューサーが兄ちゃんに話があるみたいで待っててくれって」

伊織「そうなの。あ、お茶でも飲む?出涸らしだけど」

春香「じゃあ一杯貰おうかな」

春香の返事を受けて、伊織はポットから湯を急須に注ぐ。頃合いを見て、春香、亜美、真美のマグカップに茶を注いだ。

春香「……うん、美味しい。雪歩は言わずもがなだけど、伊織もお茶入れるの上手だよね」

伊織「そりゃどうも。レッスンの合間はいつもここにいるから」

亜美「いおりんも暇人だったんだねぇ……」

真美「でもこれから忙しくなりますぞ……」

春香「伊織の体調が心配ですな……」

春香&亜美&真美「よよよ……」

伊織「こら春香!バカにしてるんじゃないわよー!」

春香「ええっ!私だけぇ……?」

春香が狼狽えている間に、亜美と真美は冷蔵庫のケーキを発見した。

亜美「真美!ケーキだよ、ケーキ!」

真美「やったぁ!ね、ね、幾つ入ってる!?」

亜美「ひいふうみい……30個だ!」

真美「あれ?一個多いね?」

亜美「何でだろ?もしかして、おかわり用とか!」

真美「じゃあ真美、ぜーったいおかわりしちゃうもんね!」

春香と伊織も箱を覗きこむ。

春香「色々な種類のが沢山あるね!本当美味しそう!」

真美「それにこのケーキの箱に、『シャルモン』って書いてあるよ!」

亜美「それに風都の風車チョコが乗っかったケーキもあるし……、詰め合わせかな?」

伊織「全く贅沢になったもんだわ……。あ、このピンクの美味しそうね!」

???「ピンクじゃない、マゼンタだ」

春香「つ、じゃなくてプロデューサーさん!」

???「慣れないなら名前で呼んでもいいんだぞ?」

春香「確かに名前の方が慣れてますけど……、でも今は私のプロデューサーさんなわけですし!」

???「……そうか、なら良いんだがな」

亜美「ねえねえもやし!兄ちゃんは?」

???「もやしじゃない!……書類を取りにオフィスに戻った。すぐに来るぞ」

真美「兄ちゃんにトランプ返してあげた?なんかすっごく大切なモノっぽかったけど……」

???「ああ。確かにあれは重要なモノだ」

伊織「なんでトランプ?」

???「いや、ちょっと調べたい事があってな」

亜美「でもあのトランプちょっと不気味だよね……」

真美「ねー……。なんかね、虫みたいなのがあって、その下に英語かな、ずらずらっと書いてあるんだよ!」

亜美「マガマガしいって感じでねー。あんなの見たことないよ!」

???「まあゲームをするのには不向きだろうな」

春香「それトランプって言えるのかなぁ……」

真美「でもマークと数字は書いてあるからトランプかなあって」

亜美「ね!」

????「あ、亜美!真美!お待たせ!」

亜美「兄ちゃん遅いよう!」

真美「何か怪人にでも襲われたんじゃ無いかって心配したよう!」

????「……心配させて悪かった。今度パフェでも奢るか!」

亜美&真美「わーい!」

伊織「あまり甘やかすと付け上がるわよー」

春香「それにしても二人とも背高いなぁ……。牛乳沢山飲んでましたか?」

???「俺はそこまで飲んでなかったな」

????「俺もだな。睡眠とかも重要なのかもね」

伊織「180あるんでしょ?そんなにいないわよね」

???「そろそろ行くか」

????「俺達もだな。亜美、真美行くぞー」

亜美&真美「いえっさー!」

伊織「今日の仕事は?」

春香「私はローカルの歌番組だよ!」

亜美「亜美と真美は雑誌の撮影!」

真美「せくちーな魅力でめろめろにしちゃうよ!」

伊織「せくちーねぇ……。健闘を祈るわ」

春香「頑張るぞー……、」

春香&亜美&真美「おー!」

????「亜美と真美の魅力なら撮影もバッチリだからな!」

????「それを言うなら春香だって歌も上手いから大丈夫だ。……どんがらなければな」

春香「もう、プロデューサーさんっ!」

顔を顰めた春香は、ふっと頬を綻ばせて微笑み、そんな春香を一同のあたたかな笑いが包んだ。

社長の言っていた給湯室に向かう。

道すがらーーーと言っても廊下なのだがーーー幾人もの女の子達と幾人もの男性達とすれ違う。

皆それぞれ楽しそうに笑っていた。
こんな風に、“水瀬伊織”と笑いあう事が出来るのだろうか。

乾巧という人間はぶっきらぼうで誤解されやすい。自分でも分かり切っているから不安なのである。

でもきっと、いや絶対、親しみを込めてお互いを呼び合えると思った。確証は無かったが。





いた。

給湯室とは名ばかりで、奥まったガス器具のあるスペースをついたてで区切った部屋だった。

長い髪を垂らし、国語だろうか、ドリルに向かって鉛筆を動かしている。

覚悟を決めて、声を掛けた。

???「……あの」

5人が行ってしまい、暇なので取り組んでいたドリルに影が出来たので顔を上げると、見知らぬ男性が立っていた。

伊織「……アンタ、誰?」

???「水瀬伊織……ちゃんだよな」

名前の後に僅かな間を開けてちゃん付けされる。
失礼な。

伊織「そうですけど、何か?」

???「……お前のプロデュースを担当する事になった乾巧だ」

いきなり呼び方が変わってもっと失礼になったが、何だかこっちの方がしっくりくる。

伊織「アンタが私のプロデューサー……」

巧「……宜しくな、伊織」



こうして“プロデューサー”乾巧と、“アイドル”水瀬伊織の怒濤の快進撃が始まったのである。……多分。

|M0)

もやしもこの世界に来たときは流石に戸惑ったんかね?

おやっさんの遺志を受け継いだ二人が探偵辞めるとは思えんな
俺が頭固いだけかもしれんけどさ

>>95
潜入捜査

伊織「私のプロデューサーが来るって話は本当だったのね。ってことは、やーっとデビュー!」

伊織「アンタみたいな……、じゃなくて、こーんなに素敵な人にプロデュースしてもらえるだなんて、伊織感激!一所懸命頑張るので、たっぷり甘やかして下さいね♪」

巧「……お、おう」

少女の眩しい笑顔に巧は圧倒された。

ーーーーーーーーーーーーーミーティング室


巧「……会ってすぐに親しくしろってのも無理だし、リラックスして行こうな」

伊織「あら、アンタみたいな人間に、私が緊張するわけないじゃない!」

巧「……はあ?」

さっきまで可愛らしく話し掛けてきた少女の様子が一変する。

巧「……ってことは、さっきまでの伊織は」

伊織「そう、全部お芝居よ?それにいつもあんな甘ったるい話し方だなんてキモいだけじゃなーい!」

巧「まあそれはそうだけどよ……」

いかにもお嬢様、という物腰が正反対になる、というのは衝撃的である。

巧「……写真はお嬢様っぽかったんだがな」

伊織「嫌ね、私はどこからどう見てもお嬢様タイプじゃない。バランス取ってるのよ」

巧「……そういうものか?」

伊織「そういうモノよ」

伊織は澄ました顔をする。

伊織「考えてみたら、媚び売るのはファンだけで良いのよね。ほらっ、飲み物でも持ってくる!」

巧「何でだよ」

伊織「それもプロデューサーの仕事の内よ。ほら、早く」

巧「誰が持ってくっか!それが人に物頼む態度かよ!」

伊織「あら、そんな事言っちゃって良いのかしら」

伊織「私のパパ、ここの社長と友達なの。私がお願いすれば減給だって出来るのよ?」

巧「ああ、それでも良い!」

伊織「辞めさせちゃう事も出来るけど?」

巧「……汚ねえ事言うな、お前」

伊織「ぜーんぜん汚くないわよ!」

巧「……分かった、持ってきてやるよ」

伊織「もっと丁寧に言わないと減給」

巧は思い切り息を吸い込み、覚悟を決めた。

巧「持ってこさせていただきます!」

伊織「あら、いーいお返事!良いプロデューサーになってくれそうね、にひひっ!」

巧「くっそぉ……」

巧は椅子から思いきり立ち上がり、ドアは慎重に閉めて出て行った。

……と思ったら戻ってきた。

巧「……何を飲みたいんだ?」

伊織はぽかんとしていたが、にっこり笑って答えた。

伊織「100%オレンジジュースをお願いするわ」

巧「……分かった」

今度こそ出て行った巧を見送ると、伊織は1人ごちた。

伊織「……ホントに良いプロデューサーになりそう」

にひひっ、とも笑った。

>>90
橘さん!あなたはギャグキャラにもシリアスキャラにもなれるss向きの人ですね!(個人の感想です)

>>93
意外と張り切ってそうではありますねw

>>95
職についてるライダー達を辞職させようとは思ってませんよ。安心ちて下さい

>>96
潜入捜査……素晴らしいネタ戴きました!

たっくんが生きてるssは何か売れ行きなるな
頑張れー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


2人は壮絶なバトルを幾度となく繰り返していた。

伊織「何よ、夏のあの暑さの中で辛めな熱々カレーを食べるのが良いんじゃない!」

巧「ただでさえ殺人的な暑さの中でよくそんな事出来るな、おい!」

伊織「はふはふするのが醍醐味なのに分かって無いわねぇ……。あ、分かった、プロデューサー辛いの駄目なんでしょ、お子様ね!」

巧「お子様じゃねえよ!」

伊織「じゃ、熱いのが苦手なの?見かけによらず、猫舌?」

巧「……そうだよ、どうせ俺はスープすらふーふーしてもらわなくちゃ飲めない猫舌だよ!悪かったな!」

伊織「べ、別に悪いだなんて言ってないじゃない!」


小鳥「あ、乾さんここにいらしたんですね!」

巧「あ、音無さん」

ようやく巧が勝利すると思われたバトルは、外的要因によって中断された。

伊織「どうかしたの?」

小鳥「来て下さったばかりで申し訳無いんですけど、早速仕事に関して軽い打ち合わせをしたいと思ったものだから。……乾さん、今大丈夫ですか?」

巧「はい。……じゃあ伊織、また後でな」

伊織「ま、頑張んなさいよ」

巧「……おう」

小鳥「じゃ、行きましょうか」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


小鳥「どうですか、乾さん。伊織ちゃんとは上手く打ち解けられましたか?」

巧「……ええ、まあそれなりに」

小鳥「……って言っても、廊下まで乾さんと伊織ちゃんの楽しそうな声、聞こえてましたよ?」

巧「ま、マジですか」

小鳥「ええ、大マジです」

巧「……うるさかったですよね、すみません」

小鳥「いえいえ。ますます伊織ちゃんのプロデューサーが乾さんで良かったなぁ、って思いました」

巧「……それは、どうして」

小鳥「伊織ちゃんって、一見自分に甘そうに見えるでしょう?
でもそんな事無いんです。本当は自分に凄く厳しい。悔しさを溜め込んじゃう時もある。
だから伊織ちゃんと本音からああやってぶつかって言い合ってくれるプロデューサーさんで良かった、って」

巧「……でも、さっきのは」

小鳥「ええ、さっきのは好みの食い違いの言い合いかも知れなくても、それでもそう思いました。
きっと伊織ちゃんを良く分かってくれる、良いプロデューサーさんだって。ここで働いてたら分かります」

巧「音無さん……」

小鳥は巧に笑いかけた。

小鳥「事務員の勘、です」

ーーーーーーーーーーーーーーーオフィス


小鳥「ここが我が765プロの中枢です!」

巧「……コンピュータやデスクも多いですね」

小鳥「ええ。プロデューサーさんを多く雇おうという話になった時、社長が張り切っちゃいまして」

巧「……ここにいらっしゃる方達は皆さんプロデューサーさんですか?」

小鳥「ええ。こうして見ると随分賑やかですよね。壮観です」

巧「……ええ。個性豊か、というか」

皆スーツを着ているとはいえ、なんだかカオスだった。

小鳥「他のプロデューサーさんとは後々挨拶して頂く事にして、先に私と同じ事務員さんを紹介しますね!」

小鳥が男性1人、女性1人を呼び寄せた。

???「光夏海と言います!小鳥さんと同じく事務作業を担当しています。これから先お仕事の打ち合わせなどでお世話になると思いますが、どうぞ宜しくお願いします」

巧「……宜しくお願いします」

????「えっと、小野寺ユウスケです。俺は2人の事務作業の手伝いや、プロデューサーさんがアイドルの子の送り迎えが出来ない時の代打やなんやらをするマネージャーをしてます。これから宜しくお願いします」

巧「……こちらこそ、宜しくお願いします」

小鳥「律子さんは今レッスンだから後でとして……、じゃ、打ち合わせしましょう!」

巧「……はい!」

と、4人のところに1人の男性が転がってきた。

ユウスケ「だ、大丈夫ですか!?」

??????「あ、はい、大丈夫です……」

とても大丈夫そうには見えない。

???「うう、プロデューサー怪我し過ぎですよ……。やっぱり不運なんでしょうか……」

??????「ううん、今までもっと色んな事あったからこれくらい何とも無いよ、大丈夫。……不運かどうかは否定できないけど」

??????「小野寺さん、有難うございました」

ユウスケ「大した怪我じゃ無くて良かったです……」

夏海「……雪歩ちゃん、オーディション頑張ってね!」

雪歩「が、頑張ります!」

気弱そうな2人組が出て行くのを見送り、打ち合わせは始まった。

ーーーーーーーーーーーーーレッスンスタジオ

巧「ステップが遅れてるぞ」

伊織「も、もう一回!」

♪そう簡単には抜けない ある意味出来レースなの

巧「……」

♪八百長ではなく正々堂々…… もちろん

伊織「きゃっ!?」

巧「伊織!?」ダッ

伊織「……ありがとう」

巧「……ちょっと休憩するか?」

伊織「嫌よ、これを直してからじゃなきゃ!」

巧「そんな調子じゃ倒れちまうぞ」

伊織「だ、大丈夫、伊織ちゃんがこんなミス位で……」クラッ

巧「……ったく!休憩ったら休憩だ!気分転換に行くぞ!」

伊織「……はーい」

ーーーーーーーーーーーーーーーー公園

鴨「」グワッ グワッ

伊織「ぐわーっ!くわくわっ!ぴよぴよー」

巧「……何してるんだ?」

伊織「あ、ちゃんと100%のヤツだわ。ごちそうさま」

巧「いや、別に缶ジュースくらいどうってことはねえけど、今のって」

伊織「か、鴨の真似よ! どう、似てた?」

巧「ま、まあまあ上手かった」

伊織「顔と台詞がぜんっぜん釣り合ってないわよ」

巧「うっ」

伊織「はぁあ、どうせ私は歌も踊りもモノマネもイマイチなアイドルよ……」

巧「別にそんなことは言ってねえよ。伊織の歌や踊り、俺は好きだけどな」

伊織「……ありがとう」

巧「何だよその顔。納得してないみたいだな」

伊織「……別に? ただちょっと昔のこと思い出してただけ」

巧「昔のこと?」

伊織「……ええ」

伊織「私の家知ってるでしょ? 水瀬グループっていうんだけど」

巧「まあ一応な」

伊織「私はそこの家族の長女、と言っても兄とか弟がいるから一番の跡取り娘って訳じゃないんだけどね」

巧「うん」

伊織「ある日パーティをやったんだけどね、そこで陰口叩かれて。『何の苦労もしてないお姫様ぶった高慢ちき』って」

巧「酷い言われようだな」

伊織「そうでしょ? 文武両道な兄弟に挟まれて私だってこの人たちに追い付きたいって頑張ってるのに、知らない人たちにそんなこと言われたくなくってついキレそうになっちゃったわけ」

巧「俺もそうしそうだ」

伊織「でもたまたまパーティに呼ばれてた社長に止められたの。だけどそのままじゃ本当に私が『お姫様ぶった高慢ちき』みたいじゃない」

巧「ふむ」

伊織「そこで『本物のお姫様になってあの人たちを見返してやりたい』と社長に相談したら、別の事務所のアイドルのドームライブチケットを渡されてね、ライブを見に行ったの」

巧「どうだったんだ?」

伊織「……すごく、すごく輝いてた。歌って踊って笑顔を振りまいて。そしてたくさんのファンから声援をもらえる」

伊織「ひとめでなりたい!って思ったわ。『なりたい、アイドルになりたい!』って。そしていつか私を侮辱したヤツらや兄弟や親を見返してやりたい!って思ったの」

巧「良いじゃねえか。伊織らしくて」

伊織「でしょ? ……でも、さっきあんなに簡単なステップが踏めなかった」

伊織「私はやれば絶対出来る子なの。努力すれば絶対自分に帰ってくるって私知ってるわ。でも……」ググッ

ーーーーー器量と才能だけで軽くこなせる仕事じゃないの

伊織「……プロデューサー?」

巧「いいから見てろ」

巧が歌いながらステップを踏み始める。
それと同時に公園の人々の視線もこちらに集まってきた。

伊織「ちょ、ちょっとプロデューサー! 恥ずかしいからやめなさいよ!」

巧「いいから見てろってば!」

ーーーーーだから人に見えない努力なんて

腕を振り、そして顔の中心から上と下に垂直にして動かす。

ーーーーー白鳥並以上

ぐっと丸くなって思いっきりジャンプ。

ーーーーーきっと私が一番!そりゃあなたもソコソコかも

お嬢様ポーズで右に左に移動し、観客側に腕を突き出してまた右左。

キレのあるダンスと意外と上手な歌に乗せられた人々が手拍子を打ち始める。

ーーーーーそりゃ私と比べるから ちょっと分悪いのよ

伊織「……やるわ、私もやる!」

「「だってスタートラインが もう遥か遠くにあって」」

伊織も観客の輪から抜け出し、負けじと歌い、踊り出す。

「「そう簡単には抜けない ある意味出来レースなの」」

伊織が輪の中心に躍り出て、巧と共に歌い出すと観客の歓声も一際高まる。

「「八百長ではなく正々堂々…… もちろん」」

歌い切った2人が息を切らしながら頭を下げると観客たちが一斉に拍手をしてくれる。

観客1「君たちアイドル? かくいう私もアイドルファンでね。でも見たことない子たちだ」
観客2「もしかしたらこれからデビュー? 俺たち応援するよ!」
観客3「君たちのパフォーマンスには痺れるものがあったよ! いやあ、ありがとうね!」

巧「……ありがとうございます。この子はこれからデビューで」

観客4「へえ、いや、これからデビューする、それもこんな期待の星の歌が聞けて良かった!」
観客5「名前は? なんて言うの?」

伊織「……水瀬伊織です!」

観客6「伊織ちゃんだね! 応援するからね!」
観客7「色々厳しいこともあるだろうけど、この人となら大丈夫そうだね」

伊織「ありがとうございます!これから宜しくお願いします!」

ーーーーーーーーーーーーーーーー帰り道

伊織「全く、急に歌い出すから肝を潰したわよ!」

巧「俺なりになんか掴めたような気がしたから……、これは俺が悪い。済まなかった」

伊織「ううん、それより……、何だか楽しかった」

巧「そうだろ? ……俺は、あれが伊織がなりたいって思ってる『アイドル』なんだと思う」

伊織「……あ」

巧「自分なりに歌って踊って、ファンから声援を貰えるからまた頑張れる。そうなりたいんだろ?」

巧「それに……、さっきまであんなに苦労してたステップも、歌と合わせても楽勝だったじゃねえか。きっと、そういうことなんだよ」

伊織「……そうだったわ。何だか自分を見失ってたみたい」

巧「俺が言いたいのはだな……、そんなに背負い込み過ぎないでくれ」

伊織「え?」

巧「細かいゴチャゴチャしたことはよく分かんねえけど、伊織お前、あまり表に出さないけど、陰でけっこう頑張ってるだろ。絶対負けたくない、絶対諦めたくない、って」

伊織「……」

巧「でもあまりにも自分で多くを背負い込み過ぎると周りが見えなくなって、下手したら自分のことだって見失っちまう」

巧「別にさっきまでの伊織が駄目だとは言わないが……、少しは俺に頼ってくれよ。そうじゃないと、安心出来ないんだ、俺は」

伊織「……確かにそうかもしれない。皆デビューしてくのに1人だけ取り残されてるって感じがして、アイドルになりたい理由、忘れてたのかもしれない」

伊織「でも私はこれからも肩肘はってやってくわ。だから」

巧「……だから?」

伊織「アンタが私をしっかりサポートしなさい! 良いわね?」

巧「ああ、伊織のためなら何でもやってやるよ!」

伊織「……あら、何でもって言ったわね? じゃあ、ジュース買い出し! 行ってきなさい!」

巧「パシられたいだなんて言ってねえよ! 俺はお前の奴隷にでも下僕にでもなった訳じゃないんだからな!」

伊織「あら、こんなに可愛い伊織ちゃんの下僕が嫌だって言うの?」

巧「下僕は誰だって嫌だろ!」

下僕さんこちら、と手を叩いて走り出す伊織と、俺は下僕じゃねえ!と言い返しながら走る巧の背中に、夕陽の影がほんのりと映っていた。

>>102
ありがとうございます!gdgd進行ですが今後もひとつ宜しく頼みます

乙ー
士以外に写真館の二人もいるとは珍しいなww
この世界での役割がPってかww

トリップで大恥かきましたが戻って来ました。
やっぱりちゃんと何でも確認してやらなきゃ駄目だね、大人なんだもの。

というわけで投下です。

ーーーーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


伊織「はー、髪切るとやっぱりスッキリするわね」

??「そう言ってもらえて嬉しいよ」

伊織「だって手際良くてそれにその後何週間かくらいは髪がさらさらな状態なままなのよ? それに私の思う通りに切ってくれるし、ホント助かってるわ」

??「私の腕も伊織ちゃんに気に入ってもらえるくらいに上達してるのかな」

伊織「……ねえ、アンタの夢ってなに?」

??「突然だね!……私の夢は、腕の良い、それもとびっきりの美容師になる事かな」

伊織「その夢叶って良かったわね」

??「ううん、まだ叶ってないよ」

伊織「叶ってないの?」

??「そりゃ一流って言われるお店ではたらいて、伊織ちゃんに喜んでもらえて、随分上達してきたと思う。でも、まだかな」

伊織「まだなの?」

??「もっと、もっと上手くなれる。きっとまだ私の限界は来てない。それに店長さんや他の皆でも私より上手い人はいるしね」

??「それでもこれからもっともっと頑張っていつかは……、そうだな、いつかは自分のお店が持てるようになりたいかな」

伊織「それが、真理の夢……」

真理「伊織ちゃんの夢は? やっぱりアイドルに関係あること?」

伊織「私は、最初はトップアイドルになって自分をバカにしてた奴らを見返してやりたいって思って事務所に入ったの」

伊織「毎日レッスンして、ミスしたらもう絶対ミスしない! って出来るまでやって……。すごく頑張ってる気になってた」

真理「頑張ってる気?」

伊織「ええ、ダンスや歌の技術は上手くなったとは思ったけど、何か足りないって思ったの。一番私が頑張ってるはずなのにどうしてプロデューサーがこないんだろうって焦ってたのかもしれない」

真理「どう、巧は。ちゃんと役に立ってる?」

伊織「すごく助かってる。私から見えない視点、ていうか思いもしなかった事を見つけてくれたりして。……でも何より、楽しい」

真理「無愛想だけど?」

伊織「確かに無愛想でちょっとイラってくることも無いわけじゃないけど、私にアイドルになって『本当にしたい事』を分からせてくれたような気がするわ」

真理「本当にしたい事かー」

伊織「やっぱり私が楽しんでやらなきゃダメよね」

真理「それはあるかも。その人が楽しんでるとこっちまで楽しくなってくるというか。逆に楽しそうじゃないと乗れないわね」

伊織「あと、自分で全部背負い込もうとするなって。見てるこっちが辛くなってくるからやめろって言ってたわ」

真理「巧が言えないことね」

伊織「え?」

真理「巧が全部背負い込もうとしてた事があってね。その時、私と啓太郎で言ってやったの。『何でもかんでも全部1人で背負い込もうとしないでよ!』『私たちがいるでしょ!』ってね」

伊織「そんな事があったのね、だから……」

真理「そう、だから多分伊織ちゃんにはそうなってほしくなかったんだと思う」

伊織「アイツ、本当は優しいのに」

真理「色々と損してるわよね」

伊織と真理の笑いが重なった。

伊織「でも、真理たちのとこ、クリーニング屋なんでしょ?」

真理「そうだけど、どうかしたの?」

伊織「ううん、何だか最近アイツのワイシャツが煤けてる気がしてね」

真理「……煤けてる?」

伊織「ええ。この前オーディションの帰りに……」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーー

ーーーーーー



伊織「オーディション合格やったわね!」

巧「おう、伊織らしい完璧な演技だったぞ」

伊織「何よ、もうちょっとパーっと喜びなさいよね」

巧「これでも喜んでるぞ? お前のやりたがってた役だし、上手くいけばもっと仕事も来る。伊織の事をもっと知ってもらえるチャンスなんだからな」

伊織「私の事を知らない人なんていないようなアイドルになってやるんだからね、にひひっ!」

巧「頑張るぞ」

伊織「ええ!」

赤信号。ラジオから流れるギターのメロディ。

伊織「……あら、プロデューサー、ここ煤けてるわよ」

巧が袖を見て、押し黙る。

伊織「なに? 公園で砂遊びでもしたわけ?」

巧「……別に、何でもない」

伊織「何よ、ちゃんと教えなさいよ。 隠し事は無しでしょ!」

巧「……ちょっと灰になっただけだ」

伊織「……なに? 聞こえないわよ!」

ーーーーーーーーーーーー『次の曲は、『夢のかけら』です。演奏者はーーーーーー』


ーーーーーー

ーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



伊織「自分で背負い込むな、なんて言った癖に妙に隠し事するんだから。真理、どうかした?」

真理「……ううん、ちょっと考え事」

伊織「真理まで? もう、何かあるなら教えなさいよね……、全くもう!」

真理「ごめんね」

真理のごめんねが切なく聞こえたような気がして、伊織は黙ってしまった。

>>119
正直夏みかんの小鳥さんルックを想像したかっただけなんです、ハイ。
ユウスケは……、事務所での戦闘要員ですよ、戦闘要員!

ライダーの頃の面識はあるのかな?
翔太郎くんと映司が知り合いだったり

>>128
面識あるのって、

もやし⇔翔一(オールライダーvs大ショッカー)、たっくん(平成vs昭和)、剣崎(DCD本編・映画)、五代(小説)、天道(小説)、良太郎(小説)、渡(DCD本編)、翔太郎(映画何本か)、フィリップ(映画何本か)、晴人(ウィザード番外編)、紘汰(平成vs昭和)

翔太郎⇔映司(Movie大戦)、弦太朗(Movie大戦)

フィリップ⇔映司(Movie大戦)、弦太朗(Movie大戦)

映司⇔弦太朗(Movie大戦)

弦太朗⇔晴人(Movie大戦)

晴人⇔翔太郎(Movie大戦、フィリップ(Movie大戦)、映司(Movie大戦)、弦太朗(Movie大戦)、紘汰(ウィザード番外編)、たっくん(平成vs昭和)

紘汰⇔たっくん(平成vs昭和)

ですか?
平成vs昭和はまだ観れてないですし、他にも色々足りないとは思いますが……。
小説とか変身後だけとかも入れましたが多すぎィ!

アッー!酉の半角シャープ入れるの忘れてたー!
まあこんなの乗っ取る人いないと思うんでいいや。と思いつつ変えます……

啓太郎「……あれ、真理ちゃん!」

買い物帰りでレタスやらネギやらを入れたビニール袋をさげた啓太郎が、偶然2人のいた川原を通りかかった。とはいえ、帰り道が川原に沿っているだけなのだが。

真理「啓太郎じゃない。買い物お疲れ様」

啓太郎「なんか沢山買っちゃって……。へへ、すっごい重いんだ」

真理「全く、今月もギリギリなんだから気を付けてよね」

啓太郎「分かってるよぉ!……あれ、その子」

真理「アイドルの水瀬伊織ちゃん。私のお得意様」

伊織「水瀬伊織でーす♪ 啓太郎さん、ですかぁ? これから宜しくお願いしまーす!」

啓太郎「この子がたっくんの……。初めまして、菊池啓太郎です! どう、たっくん、ちゃんとプロデューサー出来てる?」

伊織「た、たっくん……?」

真理「巧の事。私と巧は啓太郎のところに居候させてもらってるから」

啓太郎「居候っていうより、もう家族だけどね!」

伊織「啓太郎、アンタプロデューサーの事、たっくんって呼んでるの……?」

啓太郎「う、うん。そうだよ、たっくんって」

伊織「……くくく」

啓太郎「え?」

あのガラから考えられない呼び名に笑い出し、伊織は吹き出してしまった。

伊織「たっくん! アイツたっくんって呼ばれてるの! 啓太郎、アンタ面白いわね!」

啓太郎「そ、そう? 伊織ちゃんにそう言ってもらえると嬉しいかなー」

えへへ、とはにかむ啓太郎に真理まで吹き出し、何さ!と膨れっ面になる啓太郎もまた笑い出していた。





啓太郎「……へえ、そんな事もあったんだ!」

伊織「出されたコーヒーが熱くてずっとふーふーしてて記者に笑われるプロデューサーなんてそんなにいないわよね!」

真理「巧らしいというか本当猫舌よね、あいつ」

啓太郎「この前なんかプロデューサー就任祝いに大枚はたいてすき焼きにしたんだけど、卵につけてもまだふーふーしてるから笑っちゃって!」

真理「そしたら何だよ! って睨んでくるからそれでまた笑っちゃって怒られたわよ」

伊織「私もそれで睨まれた事があったわね。全く、大人気ないわ」

巧を肴に話し続ける平和な時間。

だが、それは突然現れた。


……キャー


啓太郎「……ねえ、今何か聞こえなかった?」

真理「え?」

啓太郎「人の悲鳴、みたいな……」

伊織「やあね、縁起でも無いこと」

突然伊織の言葉が途切れる。
伊織の視線の先には、『何か』と『何か』に襲われる人々がいた。

通行人1「嫌、助けてぇ!」

通行人2「なんなんだよこれ、なんなんだよ……」

???「フンッ!」

通行人2「あ、が、はぁっ……」

通行人1「来ないで、来ないでよ!」

逃げようとした人の胸に、『何か』の出した腕のようなモノが突き刺さる。

伊織「何なの、アレ……」

人は倒れて動かなくなった。

伊織「何なのよ、アレ……」

啓太郎「まさか……、オルフェノク!?」

真理「啓太郎、巧に連絡して!」

啓太郎「う、うん!」ポパピプペー

伊織「……なに、アンタたち、アレが何なのか知ってるの!? 何なのよアレ!」

真理「……後で説明する。だから今は逃げなきゃ!」

啓太郎「こっち!」

真理「伊織ちゃん!」

伊織「……ええ」

真理と啓太郎に手を引かれながら、伊織は『何か』から目が離せなかった。

啓太郎「……たたたたっくん! オルフェノクが! ……うん、そう、そう!」

啓太郎の声が、どこか遠く聞こえた。

伊織「……どうして、プロデューサーを」

真理「それも後!」

倒れていた人は跡形も無く、そこにあったのは小さな砂の山だけだった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ユウスケ「なんと!」

夏海「なななんと!」

小鳥「伊織ちゃんのミニソロライブが決定しましたー!」

巧「ま、マジですか」

ユウスケ「マジです!」

巧「有難うございます!」

小鳥「これも伊織ちゃんとプロデューサーさんの頑張りの成果です!」

巧「ああ良かった……」

夏海「で、早速曲目なんですが、5曲歌う事になるので選ばなきゃいけないんですけど……」

巧「明日伊織が来てからでも良いですか?」

夏海「勿論です! 伊織ちゃんが歌いたい曲を歌ってもらいたいですもんね!」

巧「はい!」ピピピピピピ

巧「あ、すいません」

ユウスケ「いやー、でも遂に伊織ちゃんのソロライブかあ。生で見たいな、『私はアイドル・・』」

夏海「ユウスケは事務所の仕事があるから行けないでしょう? ……私も仕事ですけど」

小鳥「見たいわよね、羨ましいわよね!」


会議室を出た巧は携帯を取り出し通話ボタンを押す。

巧「何かあったのか?」

『たたたたっくん! オルフェノクが!』

巧「……なんだって?」

『オルフェノクが! 現れたんだよ!』

巧「どうしてオルフェノクが!」

『分かんないよ、でも早く来て! 場所はいつもの川の近く!」

巧「……ッ、すぐに行く!」

『お願い! あと伊織ちゃんもい』ツーツーツー

巧「……切れやがった!」


会議室に戻ってきた巧は慌てていた。

巧「……あの、すみません、急に家の奴がトラブって迎えに行かなくてはいけなくなってしまって」

小鳥「あ、そうなんですか? 早くお迎えに行ってあげて下さい!」

夏海「私たちは大丈夫ですから!」

巧「……本当にすみません!」

巧はバタバタと出ていった。

小鳥「……それじゃ、私は城戸さんと打ち合わせをしなきゃいけないので、後は宜しくお願いします」

夏海「はい!」

小鳥もまた会議室を出て行った。



夏海「どうしたんですか、ユウスケ。さっきから黙ったままですけど」

ユウスケ「……夏海ちゃん、乾さんの電話、聞こえなかった?」

夏海「え? 別に聞こえませんでしたけど」

ユウスケ「そっか、俺が一番ドアに近かったからかな……」

夏海「で、何です?」

ユウスケ「……彼、『オルフェノクが」って言ってた」

夏海「……オルフェノク? ……って!」

ユウスケ「……彼が、士の言ってた、もう1人のファイズなのかもしれない」

夏海「乾さんがファイズ……。確かに名前も『タクミ』ですね……」

ユウスケ「取り敢えず俺らも士に連絡しなきゃ!」

夏海「はい!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

スタッフ1「照明はこれで大丈夫ですかー?」

士「ああ。……じゃなくて大丈夫でーす!」

スタッフ2「如月さーん、音響はこれで良いですかー?」

千早「あーあー……、すみません、もう少しマイクの音量を上げて下さい」

ステージ上の千早がスタッフに指示をする。

スタッフ2「じゃあリハ行きまーす」

メロディが流れ出し、そこにそっと千早の歌声が乗る。
うねるように出される声がメロディと混じり合い、曲はクライマックスへと向かっていく。

春香「……プロデューサーさん、千早ちゃん張り切ってますね」

士「なにせ歌番組だしな。まあ、春香がいるのもあるとは思うが」

春香「それってどういう事ですか?」

士「春香と一緒だと頑張れるって事だ」

・・「千早の歌には春香という隠し味があるからな」

春香「えへへ、なんか照れちゃうなぁ……」

てへ、と頭をかく春香とそれを微笑ましく見ていた2人の元に千早が戻ってきた。

千早「お疲れ様です、プロデューサー」

・・「この調子なら行けるな。……本番も楽しみにしている」

千早「……有難うございます」

春香「千早ちゃん、とっても上手だったよ!」

千早「そう? ……ふふ、春香に褒められると照れるわ」

春香「えへへ、でも私も千早ちゃんに負けないぐらい頑張って歌うから見ててね!」

士「頑張れ」

春香「はいっ!」

そう言うと、春香は千早のいたステージに上がっていった。

士「うおっと」ライド ザ ウィンド カケヌケーロー

士「なんだ、ユウスケ。今リハ中だぞ」

『オルフェノクが現れたみたいで!』

士「……オルフェノクが?」

士は辺りを見回し、2人とスタッフ達、ステージから離れたところまで移動し、もう一度ユウスケに確認する。

士「オルフェノク、って言ったか?」

『ああそうなんだけど、乾さんが』

士「乾巧が?」

『乾さんがオルフェノクって電話で言ってて、それで自分がすぐ行くって言ったから』

士「大体分かった。……アイツがファイズか」

『そうみたいだ』

士「で、どこなんだ」

『乾さん家、っていうかあのクリーニング屋さんの近くの川だって』

士「……すぐ行く」

『宜しくな!』ツーツーツー

ユウスケとの通話が終わると、士は小走りで戻ってきた。

士「すまない、急な用事が出来たんで春香をお願い出来ないか?」

・・「……新しいライダーか?」

士「まあそんなところだな」

・・「分かった。行ってこい」

ーーーーーーーー熱い永遠の今 きっときっと 未来が始まる

春香「あ、プロデューサーさん!」タタタタタ

いつの間にかパフォーマンスを終え、ステージから戻ってきた春香が士に話しかける。

春香「……あれ、何か用事ですか?」

士「ああ。済まない、また春香の歌を聞けなくて」

春香「良いんですよぉ!……それより、ディケイドっていうのに関係することですか?」

士「……まあな」

春香「……そうですか、気を付けて行ってきて下さいね!」

・・「あまり周りに心配を掛けさせるな」

士「分かっている」

熱心にステージを見つめる千早の元に行く2人とは反対の方向の出口に士は向かっていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


真理と伊織と別れた啓太郎は、真理の自転車で家に戻っていた。現場が家の近くだったのが幸いか、すぐに家へ辿り着く事が出来た。
リビングに滑り込み、主な収納家具をあさっていく。

啓太郎「あ、あった! ……こんなところに置いてたんだ」

ファイズギアは、押し入れのごちゃごちゃの上に積まれていた。

啓太郎「……たっくん」

巧の戦いへの想いが詰まったアタッシュケース。

啓太郎「……よし、行かなきゃ!」

ケースを掴み、啓太郎はリビングを出て行った。


裏口から出て自転車の鍵を外し、ケースを前の籠に入れてサドルに跨る。
グリップを固く握り締めて走り出そうとして顔を上げた。

啓太郎「……うわっ!?」

オルフェノク「ふんッ!」

走り出そうとしていた啓太郎の顔を目掛けていたオルフェノクの腕が空振る。

啓太郎「どうしてこんな時に……、って1人だけじゃない!?」

現れるオルフェノク。2体だ。

オルフェノク「……」

啓太郎「……どうして、どうしてまた人を!」

オルフェノク「……」

オルフェノクは答えず、啓太郎の自転車を蹴り飛ばす。

啓太郎「うわぁっ!?」

なぎ倒され飛ばされる啓太郎。

オルフェノク「これがファイズギアか……」

啓太郎「触るな!」

オルフェノク「それは聞けない願いだ……。これは貰っていく」

啓太郎「待っ、て……」

飛ばされ地面に落ちた時に泣き所を打ったらしく、動く事が出来ない。
ケースを持ち去ろうとするのとは違うオルフェノクが啓太郎を見下ろす。

啓太郎「……え?」

オルフェノクの腕が啓太郎の胸に伸びる。

オルフェノク「……じゃあな、人間」

???「させるか!」

オルフェノク「……あ?」


『START UP』


聞き慣れた電子音声がしたと思うと、次の瞬間には攻撃されたオルフェノクが宙に舞う。


『FINAL ATTACKRIDE FA FA FA FAIZ』


そろりと目を開けると、丁度胸の上に来ていた腕と、その腕を伸ばしていたオルフェノクが青い炎と共に崩れ落ちる。


『3 2 1 ……TIME OUT』


恐る恐る自転車の方を振り向くと、そのオルフェノクも砂となって消えていた。


『REFORMATION』


???「間に合ったな」ポン

肩を叩かれまた振り向く。

啓太郎「たたたたっくん!?」

そこにはファイズがいた。

啓太郎「あれ、でもベルトはケースの中に……」

???「よく見ろ」

相手が腹部を指差す。

啓太郎「あ、違う……」

???「そういう事だ」

不意にその腹部のバックルからカードが飛び出してピンクの装甲が消え、長身の男性が現れる。

啓太郎「あなたは……?」

???「お前とは一度会った事はあるはずだが、まああれじゃ仕方ないか。……そんな事より、そのアタッシュケース、乾巧に届けたいんだろ?」

啓太郎「え、あ、はい、そうですけど」

???「持って行ってやる。ついて来い」

啓太郎「たっくんの居場所知ってるんですか!?」

???「ん、まあ大体な。後ろ乗れ」

啓太郎「……本当にたっくんの所に連れて行ってくれるんですよね?」

???「勿論だ。もし俺がそれを欲しいならお前を助けたりなんかしない」

啓太郎「……分かりました」

ヘルメットをかぶった啓太郎は男性の一風変わったバイクの後ろに跨る。

???「じゃ、行くぞ」

啓太郎「はい!」

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