時報「22時丁度をお知らせします」 (115)

モニターには大きな時計が映し出されている

大きな針が12時を指し

小さな針が10時を指した

時計は午後22時ぴったしに

そしてステージ中央から

暗闇を裂いて現れる


司「レディースアンジェントルメーェン」

司「今夜も生放送でお送りします」

相変わらず割れんばかりの拍手

観客席からは黄色い声援


司「ほらほら、もっと拍手してよ」

司「盛り上がってくれた分だけ僕のマネーになるんだから」

カメラは笑う観客を何人か映し出す


スポットライトは相変わらず中央にある

礼儀正しくお辞儀を繰り返す司会者

拍手が鳴り止むや否やトークが始まる

司「それにしても驚いたね」

先ほど放送されていた10分間のニュース番組

それに取り上げられた事件について話し出した


司「世の中物騒だよね」

司「まっ、金があれば安全は買えるんだけど」

観客席からはブーイング

司会者は宥めながら一言

司「だって僕売れっ子だもん」

過激な発言が人気を博している

いーよいーよー見てるよー

すいません
書いていっていいですか?
需要ないかもですけど
お願いします

>>6
ありがとうございます
励みになります


スタッフが大きく腕を回して観客を煽る

司「さあさあ、盛り上がってまいりました」


司「今週も始まりまーす」

いつもと同じように大きな横断幕がステージに落とされる

カメラは司会者でなくタイトルを映し出す


【世界の○○者に密着】


いつの間にか用意されている赤いソファー

足を組み座る司会者

手には紙が一枚

司「さて、今日の○○者は……」

ここから暫く黙る司会者


観客からは早く紹介してと催促が

いつもと変わらない流れである

司「ちょっとがっつき過ぎじゃなーい?」

そしてお決まりのジョークを一つや二つ交える

これもお決まりである

カメラは尚も司会者を捉えている


司「今回の方は【仮屋町たかし(仮名)】さん」

司「年齢は17歳の高校二年生です」

司「いやー、若いね」

またもや観客席から声をかけられる

カメラはその声の先を映し出す


司「25歳はもうおじいちゃんだって」

司「僕より年上の人どうなるんだって?」

司「それは生きた化石じゃん」

爆発音のよつな笑い声がスタジオを包む

司会者は満更でもない顔で微笑む


司「通称【かくれんぼ男】だそうです」

子供の頃一度はした遊び

かくれんぼ

鬼が一人

隠れる子は数人


司「かくれんぼは楽しいよね、自由だし」

司「だって飽きて帰ってもバレないじゃない」

また笑い声が起きる


司「さあ、そんな彼の1日を見てみましょう」

スタジオは徐々に暗くなり

モニターにぼんやりと映し出された

黒い背景に白い文字




【かくれんぼ男】





━━━━私たちスタッフはある部屋にいる

男「いやぁ、緊張っすね」

━━━━彼が今日の主役である

男「そんな改めて言わなくてもいいじゃないっすか」
 


━━━━改めてここは?

男「また言うんっすか?ここは俺の部屋です」

━━━━随分と何というか………

男「狭いっしょ」

━━━━えぇ、正直狭すぎます

男「ですよね、でもだから良いんっすよ」


━━━━と、言いますと?

男「安心するんっすよね、なんか守られてる感っつうか」

━━━━まだ若いので外に出たりは?

男「いやー、しないっすね」

男「だいたい高校すら随分行ってないっすね」


━━━━いつから行ってないんですか?

男「んー、一年の二学期辺りだったかな?」

男「まあ、それ以来ずっと一人ですね」

みてるよ


━━━━ご両親は心配されてないんですか?

男「ご両親っても隣の部屋にいてるんで」

男「朝起きたら挨拶するし、ご飯も一緒に食べてるんでね」

男「まあ、ずっと部屋に籠もってるわけでもないんっすよ」

男「だかや親もそんな心配してないんじゃないかな?」

>>22
ありがとうございます
救いとなります
すいません


━━━━しかし、学校に行かないというのは……

男「ダメなんっすかね?」


━━━━ダメだと世間的にはなってますが?

男「どんな理由があっても?」 

男「辞めずに在籍だけはしてるんで行きたいって意志はあるんっすよ」

男「まあ、最近はそう考える事も無くなってきましたけど」 


━━━━何故この狭い部屋にいてるんですか?

━━━━そして、何故学校に行かないんですか?

━━━━すいません、連続での質問になってしまいました

男「いや、いいんっすよ」

男「そこに疑問持つのは普通なんっすから」

男「せっかく楽しい番組に出てるのに暗い話になるんっすけどいいっすか?」

なぜか最初のほうはレス少なくて後半一気に増える
実際今すくなくても30人は見てるはず


━━━━ええ、構いません。お願いします

男「まあ、言わば引き籠もりだって事は結論的に出てるんっすよ」

男「だってね、学校にも行かないわけなんで」

男「そうなった理由も在り来たりなんっすよ」


男「なんっうか、人間恐怖症的な?」

男「まあ、自分でも笑っちゃうんっすけどね」 

>>28
増えるのは大歓迎です
メリットもデメリットもありますし 
ありがとうございます
すいません
本当に毎度毎度

みーてーるーだーけー


━━━━何かそうなる理由があったんですか?

男「いやっ、それがないんっすよ」

━━━━じゃあ、何故この様な生活を?

男「人間って怖くないっすか?」

男「何を考えてるかわかんないっつうか。」

男「それに……」


━━━━それに?

男「仲良かった連れがいるんっすよ」 

男「幼稚園が一緒で小学校の低学年まで一緒だったんっすけど」


━━━━高学年では仲良くなかった?

男「いやいや、仲良かったと思いますよ?」

男「まあ、連れが転校さえしなかればね」

男「一番仲良かった奴が急にいなくなるって辛かったんっすよ」

男「でも、高校入った時に奇跡が起きたんっすよ」


━━━━奇跡?

男「大した事じゃないんっすけど」

男「その連れも地元に帰ってきてて同じ高校に入学してたんっすよ」

男「それ知ったのも入学してから随分と経ってたんっすけどね」

面白い


━━━━なら学校に行くべきなのでは?

男「そうなっちゃいますよね」

男「でも、怖いんっすよ」


━━━━何が怖いんですか?

男「もし、覚えてなかったらとか考えるんっすよね」

━━━━なるほど、仲良かっただけ余計に考えるわけですね

男「そうっすね、そう考えるともうパニックすよ」


━━━━そう彼は笑っている

━━━━見た目は爽やかな青年であり

━━━━外を歩けば青春を謳歌しているようにも見える

━━━━だが誰しもがあるように彼にも闇がある


男「そうだ」

男「ちょっとスタッフさん足元失礼しますよ」

━━━━すいません、何かあるんですか?

男「その仲良かった奴との思い出の品をね」

男「今も大切にしてるんっすよ」


━━━━思い出ですか

男「なんだかね、捨てられないんっすよね」

男「あったあった、これっす」


━━━━サッカーボールのキーホルダーですか、ね?

男「正解っす、こんな汚れてたらわかんないって思ってたんっすけど」

男「これお揃いなんっすよ」


━━━━サッカー習ってたんですか?

男「いや、そんなことはないんっすよ」

男「なんかたまたまW杯の年で」

男「流行ってたから互いに少ないばかりのお小遣いを出し合って買ったんっすよ」


━━━━サッカー習ってたんですか?

男「いや、そんなことはないんっすよ」

男「なんかたまたまW杯の年で」

男「流行ってたから互いに少ないばかりのお小遣いを出し合って買ったんっすよ」


━━━━サッカー習ってたんですか?

男「いや、そんなことはないんっすよ」

男「なんかたまたまW杯の年で」

男「流行ってたから互いに少ないばかりのお小遣いを出し合って買ったんっすよ」

 
━━━━なるほど、それは思い出ですね

男「でしょ?」

男「でも、だから怖いんっすよね」

男「もし、とか考えるんっすよ」


━━━━あまり深く考える事はないのでは?

男「そうっすか?」

男「でも、だめっすねー」

男「考えないことを考えると」

男「何か違うイヤな考えが浮かんできて」

男「この部屋から益々でれなくなるんっすよね」


━━━━私たちスタッフは無理強いはしないませんので安心してください

男「まじっすか」

男「今まで来た人は無理矢理外に連れ出そうとしてたんっすよ」

男「まあ、別に外はでれるんっすけどね」


━━━━そうなんですか?

男「まあ、人に会わなきゃなんとでもなりますよ」

━━━━私たちスタッフは大丈夫なんですか?

男「ああ、なんつうか、同年代じゃなきゃ大丈夫っすね、多分」


━━━━ケラケラ笑う彼は本当に何も変わらない青年であった

【BGM】

映像は終わり再びスタジオへ

暗闇からフワッと灯りがつく


司会者が怖い面持ちで観客席を一周見渡し 
そしてカメラ目線となる

司「これ面白い?」

司「なんか、超在り来たりじゃね?」

観客席からはどよめきが


司「引き籠もりとかはいいんですよ」

司「そこはね寛大な心で対応するんで」

司「そもそも僕だって鬼じゃない」

司「まあ、悪魔かもしれないけど」

また笑い声が

スタッフのわざとらしい笑い声も混じっている


司「まあ、まだ後半も有るんでそっちに期待しましょ」

司「では、いったんCMでーす」

【BGM】

>>37
ありがとうございます
その一言で頑張っていけます
すいませんありがとうございます


【BGM】

司「さっ、後半に参りましょう」


再びスタジオは暗闇となり

救いとなる光は

またもあの部屋を映し出していた


━━━━寂しくはないんですか?

男「んー、どうっすかね」

━━━━たまに誰かに会いたくはなりませんか?

男「さっきも言ったじゃないっすかー人間恐怖症だって」


━━━━それでも毎日一人だと何をしてるんですか?

男「何って聞かれたら困るんっすけど」 

男「まあ、学校行ってないんで勉強なんかは独学でしてるんっすよ」

男「こう見えて」


━━━━教科書か何か使用されてるんですか?

男「いや、基本なパソコンっすね」

男「本当に便利な世の中っすよね」

男「これあれば何でもわかるんっすもん」


━━━━要するにネットをしていると 

男「ストレートな言い方をすれば」

男「そうっすね、否定は出来ないっすわ」


━━━━ほかには何かしてるんですか?

男「まあ、俺もまだ取り敢えず若いんでね」

男「そこら辺の厨房と同じで溜まったら抜いたりはしますよね」

男「運動しないんで、それがちょっとした運動のかわりっす」


━━━━要するに性欲は溜まっていると

男「もう改めて言わなくてもいいじゃないっすかーハズいっすね」

男「これモザイクなかったら瀕死っすよね」


━━━━ご安心下さい。プライベートはきちんと守ります

男「まあ、部屋に閉じこもってる奴にプライベートもクソもないんっすけどね」

男「いや、久しぶりに他人と話しますわ」


━━━━もっと話したくなりませんか?

男「んー、当分はいいっすかね」

男「ちょっと顎も疲れてきましたし」


━━━━ずっと気になってたのですが天井のアレはなんですか?

男「あのフックですか?」

男「まあ、万が一の救済アイテムって奴ですかね」

男「深い意味はないっすよ」

プライバシー?プライベートでもいいのか?


━━━━その時「あの、すいません」と言って私たちスタッフの中の一人が急に話し出した

ス「すいません」

男「なんっすか」

ス「実は私も昔引きこもってたんですよ」

男「貴女がですか?」

━━━━私たちスタッフすら知らなかった

>>67
打ちミスしてしまいました
ご指摘ありがとうございます
プライベートでなく
プライバシーです
すいません
本当に


ス「でも、今この世界で生きてるのは」

ス「きっかけを与えてくれたのは」

ス「司会者さんなんです」

━━━━彼女は今にも泣きそうになっている

━━━━私たちは黙って聞いていた

>>69
そんなに謝らなくてもwwわざわざ返してもらわなくていいよ、揚げ足取りみたいになって申し訳ない


ス「この番組ってなんだかわかんないですけど」 

ス「楽しい気分でみれるじゃないですか」 

ス「私みたいな根暗な人間でもあの人の近くで働けば明るくなるかなって」

ス「そう思ったんです」


男「で、今働いてるんっすよね」 

男「どうなんっすか?」

ス「世界は変わりました」

ス「本当に素晴らしい世界です」 

ス「なのででしゃばった言い方になるかもですけど」

ス「どうかきっかけを見つけて下さい」

ス「貴方の話を聞いてると明るい方なのに勿体ないですよ」

>>71
いえいえ、私の目標としては全レスですから
ご指摘感謝致します
大変助かります


━━━━私たちは彼女の過去を少し触れた

━━━━初対面の彼が何より一番近くで触れていたのではないか

ス「すいません、話しすぎましたね」 

男「いやっ、ありがとうございます」 

男「くぁ、なんかちょっと久しぶりに外に出たくなりましたよ」 


━━━━彼は笑顔で言った

━━━━今までとは違った笑顔だった 

男「なんだか最後にしてやられちゃいましたね」


━━━━すいません。私たちスタッフが迷惑をお掛けしました

男「さっきも言いましたけど何だか気持ちが少し軽くなったんっすよね」   

男「久しぶりっすよ、こんな気持ち」 


━━━━━では、最後に一つ伺っていいでしょうか?

男「はい、大丈夫っすよ」


━━━━━孤独とは一体なんでしょうか

男「なかなか難しいっすね」


男「あくまで俺の気持ちだけなら」

男「かくれんぼっすね」

男「鬼があっちこちにいて隠れてるのは一人」

男「早く見つけて欲しいとも思い」

男「まだ見つかりたくない的な」

男「寂しいけど負けたくない的な」


━━━━なるほど、わかりました

男「すいません」

男「なんか、ちょっとかっこつけすぎましたかね?」


━━━━そんなことないですよ

男「最近本当にビビってたんっすけど」

男「なんか吹っ切れてきました」

男「部屋にいるのもちょっと勿体ないかなって思ってるんっすよ」


━━━━明日からでも遅くないんで一歩ずつ歩んでみますか

男「そっすね」 

男「いいっすね」


━━━━彼は笑っていた

━━━━明日もきっと笑うのだろう

━━━━例え孤独だったとて

━━━━誰も見つけてくれない木陰で一人

━━━━爽やかな笑みを見せる



モニターは徐々に薄れ

画面はスタジオに戻る

観客席からは拍手が鳴る


司「なるほど、だから【かくれんぼ男】なんっすね」  

司「あっ、うっかり若者言葉がうつっちゃいました」 

観客席からは笑い声

畳みかけるように司会者はくだらないジョークを挟む

司「さて、僕はこの話を聞いた時」

司「一つ名案が浮かびました」  

司「【 仮屋町たかし(仮名) 】さんの友達とアポイントメントを取って」

司「どうにか会ってもらおうと思いました」


観客席からは大きな拍手

司会者は満面の笑みで拍手を収める

カメラは観客席から司会者にかわる



司「彼と会った時の印象は凄くチャラかった」

司「この子と親友だったのかってくらいに真逆でした」

観客席からは何かしら納得する声がちらほらと

終わってからでいいけど
他にも書いてるならスレタイかなんか教えてほしい


スタッフが少しざわつきだした

司会者はそれに気付きながら会話を足早に進ませる

司「直接会って話すのはハズいとのこと」

司「なんでビデオレターにしてもらいました」

司「では、ご覧下さい」

スタジオは暗くなり

モニターには茶色い髪の青年が立っている

【BGM】


友「よっ、久しぶり」

会話はぎこちなく始まり

思い出話と今の話を織り交ぜている

そしてポケットからキーホルダー


友「これ覚えてるか?」

友「まあ、これのおかげで俺サッカーしてるんだ」

友「今度県大会あっから良かったら見にこないか?」


そう照れくさそうに笑っている

長きに渡るビデオレターが終わる

そしてそのまま珍しく二度目のCMへ

【BGM】


【BGM】

長いCMがやっと終わる

画面は切り替わりスタジオへ

先程とは違い暗い顔の司会者


司「生放送」

司「何が起きるかわかりません」

司「今スタッフに彼の母親から連絡が入りました」


観客席はイヤな緊張感が漂う

カメラもそれを賢明に映し出している

証明が少し暗くなる

スポットライトを一人浴びる司会者


司「 【 仮屋町たかし(仮名) 】さんが今し方亡くなったという連絡が入りました」

司「死因は自殺だと見られています」

司「スタッフと話し合った結果このような形で報告させて頂きます」

司「御冥福お祈り申し上げます」

司会者、スタッフ関係者が深々とお辞儀をする


━━━━そして時は遡る

━━━━否が応でも過去を見て今に繋げる

━━━━それはビデオレターが始まった時刻


男「えっ、ビデオレター?」

男「うわっ、まじか」

男「緊張するな」


━━━━パソコンの画面とテレビの画面を

━━━━交互に彼は見ている

男「まじかあ、まじなんだ」


━━━━彼は呟き頬を濡らしながらテレビを見ていた  

男「あれっ?そんな出来事あったけ?」

男「やっべ、全然覚えてねぇわ」

━━━━ふとビデオレターの途中で思い立ち

━━━━ネットで親友の名前を検索した


━━━━今はやりの呟くことだけが目的のサイトに飛んだ 

━━━━それが過ちだと気付くには時間が足りなかった


友「昔の親友にビデオレターの撮影なうwww」

友「なんか、ボロッボロッのサッカーボールのキーホルダー持たされたwww」

友「でも、俺これでスカウトとかされちゃっちりしてwwwうはwww俺さらにモテまくりwww」

友「ってかさ、ってかさ、誰だよ親友ってwww知らねーwww」






【世界の孤独者に密着】

おわり

>>1

>>90
スレタイですと
【ハサミは今もシンクの中】
【女「あっ21時50分だ」】
【ハッピーでラッキー日々】
恐らく上記がそうです


なんか悲しい

>>105
ありがとうございます 
誤字脱字もあり読みにくかったと思いますが最後までお付き合いありがとうございます

>>106
ありがとう
読んでみる

>>107
ありがとうございます
人の本来の悲しさは文字なんかで表せません
しかし
意識するということは出来ますんで
その悲しさを少しでも覚えていて下さい

>>109
ありがとうございます
何処かで私を見つけて下さった時は
感想も兼ねて声をかけて下さい
ありがとうございます

上手

>>112
お褒めの言葉大変うれしゅうございます
ありがとうございます


文章の発想力が羨ましい

>>114
ありがとうございます
仕事のストレス発散ですんで
雑さが目立ちますが
お褒めの言葉大変うれしゅうございます

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