提督「思ふこと」 (9)

眠い、自然と落ちていく目を擦りながら私は六法全書と見間違えるぐらい、積み重なった書類にペンを走らせる。目の端には私と同じく深い隈をつけた部下が冷めたコーヒを一気に飲み、その勢いのまま私のミスの粗捜しをしている。なんと酷い奴だ。

しばらく休憩がてら若い部下の黒く包まれた足を凝視していると、部下はこちらの手が止まってるのに気づいたのか、先ほどから紙を穴が開くほど睨み付けていた目をそのまま私に向ける。いつしか見たレーザービームの如く細くこちらを見る赤い瞳、隈が合いなって酷い顔である。はて、どこかで見た顔だと少し頭を傾けるがとくに思い浮かばないので誤魔化すためにこちらも冷めたコーヒを飲み尽くし、また厚く積み重なった紙を睨み付けるのだ。

どうも私と言う者は仕事と言うものが嫌いらしく書類の書という文字を見るだけで目眩が起きてしまうのだ。この事を先程から部下に申しているのだか彼女はこちらを見向きもせずただ紙を見るだけで一向に私の話を聞かん、ついに陰気な私も尾が切れコーヒを入れてくると言いつつ逃げる算段を頭の中で思いつく。

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やっちまった。

酉替えました。

咳をたて、いざ言うぞと意気込むが、私の矮小の頭なぞお見通しの如く、彼女はコーヒを入れくると言い放った、疑り深い女である。

長時間洗ってもいないカップを2つ持って部屋を出て行く彼女の背を見送り一息つけ、ふと、チャンスじゃないか? 思いつく。

そう思ったら先んずるが吉、抜き足差し足忍び足、後で聞いたのだが誰も居ないのに猫背で歩く私はさぞ滑稽であったと機械いじり好きの娘は言っていた。

電「司令官さん、すっかり回復しましたね」

提督「あぁ、アレはまじめにやばかった、今はコーヒが飲めてホッとしてるよ」

電「良かったのです」

提督「電ちゃん……ありがとね」

電「できれば助けたいのです、なんて」

提督「ふふ、大変だったけど、また電ちゃんと二人きりになりたいね」

電「司令官さん……」

提督「ねぇ、電ちゃん……最後に飲ましてくれたモノ何だったの?」

電「知らないのです」

提督「そっか……やっぱり夢だったのかな」

電「そうじゃないですか?」

提督「んー……でもなんだかすごく飲みたいんだよあの甘い味が忘れられなくて……って電ちゃん顔赤いよ風邪かな?」

電「……なんでもないのです」

電(ふふふ、成功なのです)

ミスった

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