提督「家族と信頼」 (20)

艦これのSSです。

加賀を旗艦として赤城、金剛四姉妹を含んだ六隻で編成された第一艦隊と若き提督のお話。

筆者的に好きな展開を盛り込んだ短いお話になっております。ご了承ください。

台詞は声のイメージで考えていますので
「ここ、喋り方変じゃね?」と言う部分を指摘していただけたら幸いです。

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「うーん……」
机に向かいながら伸びをする。
今日も今日とて、大した任務も無く適当な出撃をして艦隊の練度を高めるだけ。

「提督、艦隊が帰投しました。作戦結果の報告ですが――」
加賀の結果報告を適当に聞きながら、我が第一艦隊の事を思う。

「なぁ、加賀。赤城と金剛四姉妹達はどうした?」
「全員食事中です。作戦が終了したので当然の事でしょう」
確かにそう言われてみればそうだな。

我が第一艦隊は加賀を旗艦として赤城、金剛四姉妹を加えた六隻で編成された機動艦隊。
俺はこの第一艦隊の皆を家族のように考え、大切に扱ってきた。

「それなら俺も食事にしようか……加賀は何か食うか?」
「お言葉に甘えさせていただきます。私も少し空腹感がありますので」

と言っても大した食事は用意できないのでおにぎりを合計六個、用意してきた。

「食べようか。 いただきます」
「……いただきます」

何時もと変わらない無表情の加賀。
それだけに、この食事では不満なのかどうか不安にすらなってきてしまう。

「おにぎりじゃ不満だったか?」
「いえ、十分です。三個も食べれるのならばこれで構いません」

何というか妥協をされているような気がする。
しかし、どうこう言っても俺が良い食事を用意できる訳ではないのでささっとおにぎりを全て食べ終える。

「ご馳走様! さて、これから何をしようかな……」
「作戦司令部から伝達が届いています。それと、ご馳走様でした」

一応律儀に挨拶だけはするんだな。
それにしても作戦司令部から伝達だなんて……珍しい事もある物だ。

「内容は? 確認しよう」
「明日、沖ノ島海域にて捕捉中の敵艦隊を撃沈せよとの事です。いかがしますか?」

沖ノ島海域……?
毎度毎度、捕捉される敵艦隊がとても強力だと有名な海域じゃないか。

「いかがするも何も……出撃するしか無いだろう。作戦司令に背く訳にはいかないし」
「わかりました。他の方々にもそう伝えておきます」

加賀はそう言って部屋を出て行ってしまった。
恐らく、皆に明日作戦があると言う事を伝えに行っただけだと思うのでそっとしておく事にする。

窓から母港を眺めて一息。
夕焼けが海に反射して、光が眩しい。

――明日、沖ノ島海域での戦闘が行われる。
敵がどれだけ強くても、俺が愛情を込めて育て上げた第一艦隊が負ける筈無いよな。
いや、逆にそうでないと困る。

ただ……全員無事に帰って来てくれるのならそれでも良しとしようか。

「戻りました」
突然ドアが開き加賀が戻って来た。

「おかえり、赤城と金剛達に伝えて来てくれたか?」
「はい。それなら食事を普段よりもしっかり取らないと、と言っていましたね」

あいつら……適当な理由を付けて資源を食いつぶすつもりだな。

「提督、何を眺めているんですか?」
「……いや、ちょっと外を眺めてただけさ。たまには風にでも当たりに行かないか?」

部屋の中でずっと過ごしているのも何だか窮屈に感じたので、加賀を連れて母港に出ようかと思い提案してみると

「提督がそれをお望みならば従うまでです」
「何だか悪いな。なら、行こうか」

加賀を連れて母港に出る。
潮風に吹かれ、潮の香りが鼻を突く。

「夕焼け、綺麗だよな。加賀はこういう景色は好きな方か?」

部屋から海にうつる夕焼けを眺めているよりも、やはりこうして直に眺めた方が綺麗と言う物だ。

「私は必要無い時は外に出ませんので、良くわかりません」
「……そうか。俺はこういう景色好きだけどな」

夕焼けに照らされて輝く海も綺麗だ。
加賀と一緒に母港を歩くのは……何回目だろう?

「私を連れて外に出る度に言ってますよね。ただ、提督と一緒に母港を歩くのも悪くない物です」
「ははっ、嬉しい事言ってくれるじゃないか。潮風に吹かれながら海と夕焼けを眺めるのも良い物だろ?」

……ただ、今だけはこの海が怖く感じる。

「加賀、明日の作戦……勝てると思うか?」
「勝たなければ作戦に背く事になります。 それとも、提督は私達が負けるとでも言いたいのですか?」
「そんな訳無い。ただ、どうなるのかと思ってさ……」

俺はただ、加賀達がどうなってしまうのかが不安で仕方無いだけだ。
断じて信頼していない訳では無いのだ。

「ならば信じてください。赤城さんも、金剛さん達も頑張ってくれる筈です」
「……そうだな。家族を信じないで何を信じるんだって話だよ……全く」

すると、加賀は突然俺の方に向き直り

「私には今まで家族と呼べるのは赤城さんだけでした。 提督、そして金剛さん達と一緒になってからそれこそ賑やかになりましたが」
「加賀? ……確かに、お前が最初この艦隊に来た時はあまり口を開いてくれなかったもんな」

加賀は最初の頃は全く俺とコミュニケーションを取ろうとせず、苦労した。

しかし出撃や日常生活を共にする中で少しずつ赤城だけでなく俺にも心を開いてきてくれたのだ。

「仕方ありません。私にも色々な事があったのですから」
「誰にでも知られたくない過去はあるだろうし、そこは聞かない事にしておくよ」

俺もずっと海を眺めているのでは申し訳無いと思い、加賀の方を向き直し

「でも……俺を、金剛達を家族として受け入れてくれたならそれで良い」
「……それなら、提督も家族を信頼してください。私達が明日、負ける筈がありませんから」

そうだな、確かに加賀の言う通りだ。
……信頼されているのだから、信頼してやらないでどうする。

「わかった。明日は激戦が予想される、作戦に備えてそろそろ帰ろうか」

加賀を連れて部屋に戻り、明日の作戦に備えて休息を取る事にした。

――そして、作戦当日。
加賀を旗艦とした第一艦隊の出撃を見送り、司令室で通信を取る。

「加賀、状況はどうだ?」
「良好です。ただ、沖ノ島海域に到達していると言うのに未だ敵艦隊を捕捉できていません」

妙だな……そろそろ捕捉できても良い頃なのだが。

「提督ゥ、加賀さんとばっかり通信してないで私達の事も見ててくださいネ?」
「金剛か……わかってるよ、頑張ってくれ」

俺が緊張していると言うのに全く、金剛は……

「お姉さまも少しぐらい緊張感持ってくださいよ! あ、提督は気にしないでください!」
「今度は比叡か。榛名と霧島は?」

「お呼びですか? 榛名は問題ありませんよ?」
「私も問題ありません! 情報もバッチリです!」

金剛四姉妹は特に問題無さそうだな。
ただ、もう少し緊張感を持って欲しい所ではあるが……

「提督、敵艦隊を捕捉しました」
「了解だ、そのまま交戦を開始してくれ! 輪形陣を取れ!」

交戦開始の合図と共に砲撃音が聞こえ始める。

「赤城、敵艦隊の偵察情報は?」
「戦艦三隻、重巡洋艦一隻、駆逐艦二隻を捕捉しています!」

この構成……敵主力艦隊か?

「戦況は睨み合いが続いています。金剛さん達の砲撃により敵駆逐艦二隻は撃沈しましたが、敵戦艦が厄介です」
「ふむ……加賀、爆撃は仕掛けられそうか?」

戦艦に戦艦をぶつけてダメならば空爆を仕掛けてみるしかあるまい。

「既に一度行っていますが、状況はあまり変わりません。それどころか敵の砲撃によって少しずつ金剛さん達が被害を被り始めています」
「空爆をやってそれか……くっ、どうする……」

戦況は拮抗。更に敵の砲撃によって金剛達が被害を被り始めている……一度後退すべきか?

「提督、現状の戦況から判断するに夜戦へと持ち込んだ方が宜しいかと」
「夜戦だと……? 加賀、お前は正気か?」

夜戦となれば加賀と赤城は行動が取れない上に敵戦艦の砲撃がとてつもない脅威と化す。

「はい。拮抗している状況を打開するには夜戦で一気に畳み掛けるしかありません」
「しかし……加賀、お前はどうするんだ? 夜戦となっては行動も限られるだろう」

一番厄介なのはそれだ。
艦載機を飛ばす事も出来なければ、砲を積んでいる訳でも無い。
それこそ良い標的になるだけではないか……

「夜戦中は通信を続けます。私は夜戦突入が最善だと判断したまでですので」
「……しかし、それでもし被弾したらどうするんだ?」

家族を失う事になんてなってみろ。
……それこそ後悔しか出来なくなってしまう。

「それはその時です。私達を信じてください」
「信じろと言われても……」

どうするべきか……しかし加賀の言う通りでもある。
夜戦を持ちかけて一気に戦況をひっくり返すしか打開策もあるまい……

「提督、ご決断をお願いします」
「……仕方無い、夜戦を持ちかける。全艦、一度後退して夜戦に備えろ」


一度後退を呼びかけ、夜戦へと突入した。

「状況は? 偵察機も役に立たん、周囲の警戒を怠るな」
「敵艦隊を捕捉出来ていません。 ですが、金剛さん達は既に砲撃準備を完了しています」

迎え撃つ事はできそうだな……しかし、先制を取られれば厄介な事になる。

「そうか……しかし夜となっては視界も悪い、先制攻撃を許さないように前進を続けるんだ。良いな?」
「了解。第一艦隊、前進します」

加賀との連絡を取り続けるも、砲撃音は未だ聞こえて来ない。
いつ、何処から仕掛けられるかわからない以上……油断はできないな。

静けさが不安を煽る。

「加賀、陣形はどうなってる?」
「現在は単横陣です。 金剛さん達の砲撃を邪魔しない為にそうしていますが、組み直しますか?」

……確かに、夜戦も輪形陣では無理があるか。

「いや、そのままで良い。 前進を続けてくれ」

やはり通信機からは未だ加賀の声しか聞こえて来ない……

「敵は捕捉出来たか? もう少し詮索して確認出来なければ撤退しよう」
「未だ捕捉できず。 警戒を続けながら前進を続けていま――」

突然加賀の声が途切れた。

「加賀? おい、加賀!?」

その時だった。
突然通信機から激しい砲撃音が聞こえだしたのだ。

「応答しろ! おい!」
「提督、加賀が敵戦艦の連続砲撃を被弾しました!」

連続砲撃を被弾しただと……?

「赤城、加賀の状態は!? 被害は!?」
「三連砲撃により大破、被害は深刻です……!」

大破……そんな馬鹿な……

「あれだけ警戒を怠るなと言っておきながら……くそっ!」

俺は悔しさのあまり拳を机に叩きつける。

「後退、後退だ! 今すぐ後退し――」

加賀の被害を聞き、俺が後退指令を出そうとした時だった。

「全砲門、ファイヤー!」
「金剛か!? 戦況はどうなってる!?」
「提督、私頑張るから……だから、諦めないで!」

金剛に続き比叡の声。
そして激しい砲撃音が鳴り響く。

「比叡!?」
「榛名だって……負けません! 加賀さんの為にも行きます!」
「加賀さんの分までバックアップします、情報は任せて!」

榛名、霧島……こいつら被弾した加賀の分まで……?

「敵戦艦一隻、敵重巡洋艦一隻が撃沈! 戦況は優勢です!」
「赤城、加賀の代わりに戦況報告を続けろ!」

一気に戦況がひっくり返った……!
このままならやれるか!?

「了解です! 加賀の分まで……やりきってみせます、だから提督も私達を信じて!」
「……ああ、了解だ! 全艦、被弾した加賀をカバーしつつ交戦を続行しろ!」

響き続ける砲撃音を聞きながら赤城、そして金剛達を信じて指示を出す。
「敵戦艦、被弾! これなら……勝てます!」

「よし! このまま敵艦隊を壊滅させ、全艦揃って帰投しろ! こいつは……命令だ!」

一度でも負けるのではないかと疑ってしまった俺が恥ずかしい……しかし、もう迷うものか!

「了解!」

通信機から聞こえてくる皆の応答。

「敵戦艦二隻の轟沈を確認! 敵艦隊、壊滅しました!」
「よし、良くやった!」

赤城の報告を聞き、立ち上がり歓喜する俺。

「全艦揃って帰投せよ、母港で待ってる……!」

司令室を飛び出し、俺は母港へ走り艦隊の帰投を待った。
母港へと飛び出してみると既に明け方で、朝焼けが眩しい。

「提督!」
「赤城、金剛!」

被弾し大破した加賀を支えながら赤城と金剛達が母港へと帰投した。

「加賀! しっかりしろ!」

赤城と金剛に支えられているも、立っているのすらままならない程に傷だらけになった加賀の姿。

「支え……ありがとうございました」

加賀は自ら赤城と金剛に離れてもらうように言ったものの、その場に倒れ込んでしまった。

「……馬鹿野郎、無茶しやがって」

加賀の傍に駆け寄り抱き起こすと力無く俺の方を向いて

「作戦……完了しました。 我が艦隊の勝利です」
「ああ、わかってる……わかってるよ……本当に良かった……!」

嬉しさと悲しさが入り混じり、気が付くと涙が滲み出て来ていた。

「……泣かないで、傷にしみます」

傷だらけの手で俺の涙を拭き取ってくれる加賀。

「こんなになって……もし死にでもしたらどうするんだよ……」
「死にません。家族として……提督や皆を残して逝く訳にはいきませんから」

必死に堪えようとしても涙は止まってはくれない。
それどころか力無く微笑む加賀の顔を見て更に涙が溢れ出てくる。

「……言ったでしょう? 信じてくださいって」
「ああ……俺が間違ってた……少しでも疑った俺を許してくれ……」
「フフン、提督の期待を裏切るような事はしませんからネ!」

泣き崩れる俺の周りに赤城と金剛達も集まってきて。

「でも、本当に良かったです! 加賀さんを守り抜く事が出来て!」
「榛名も頑張りましたよー? でも、特別な評価なんて要りません。 家族で居続けられるならそれで良いです!」

「私のバックアップ、どうでしたか?」
「比叡も、榛名も、霧島も……本当に良くやってくれた……!」

この皆が家族で、無事に作戦を帰って来てくれて本当に良かった。

「私も頑張りましたから、御飯はしっかりお願いしますね?」
「赤城は出撃前に恐ろしい程食っただろ!!」

赤城は出撃前、気がつけば普段の三倍近く飯を食っていたのだから……さすがに驚いた。

「……提督、私は……これからも家族で居れますか?」
「何を言っているんだ……加賀が居て、赤城も金剛達も皆揃って初めて家族になるんだろ?」

傷だらけのまま安心したように微笑む加賀の姿に俺は我慢の限界を感じた。

「本当に、良くやった……! 無事に作戦を終えて帰って来てくれて良かったよ……」

俺は強く加賀を抱きしめた。
すると、加賀も優しく俺の背中に手を回して抱きしめ返してくれて。

「……ずっと、一緒に居てください。私達の提督として……家族として」
「もちろんだ……ずっと一緒に居よう」

母港で綺麗な朝焼けに照らされながら加賀を抱きしめ泣き続ける。

……本当に、無事で居てくれてよかった。
信頼はもう揺らぐ事は無い。

ずっと……ずっと変わらない。
俺達が家族で居続ける為に。

かなり短いですが、これで終わり。

次書く時はもっと練ってから来ます、ありがとうございました。

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