ライナー「俺たちは他人だ。いいな」 アニ「・・・わかったよ」(111)


注意書き
*同郷3人は幼馴染
*n番煎じネタ
*過去捏造
*ライアニ


幼いころからいつも一緒だった。
私の右隣りにはライナーがいて、左隣にはベルトルトがいて。
最初は3人とも同じような背丈だったのに、二人は私を置いてどんどん成長していった。
今じゃ見上げなければ視線が合わせられない。

当然と言えば当然、二人は男で私は女。体格差だってしょうがないことはわかってる。
私がどちらかといえば、すこーし、ほんの少し、小柄な部類に入ることも分かってる。
だけど、いつでも3人一緒に過ごしてきたのに、二人が私の一歩先を行ってしまう気がして、それが嫌でお父さんから格闘術を習う事にした。どうやら私の格闘センスは良いらしく、自分より大柄な男も簡単にひっくりかえせるようになった。

そうやってはじめて、二人と同じ位置に立てた気がした。
そのころは、男だ女だなんて関係なくて、二人とただ対等でいたかった。

使命を与えられ、訓練兵団に入団したのはそれから数年後のことだった。
入団前日、最終確認との名目で人気のない場所を選び3人で集まった。

ライナー「いいか、俺たちの使命を遂行する為には、怪しまれないように兵士として紛れ込まなきゃならない。
ただ、俺たちだれかがもし、巨人である事がばれたら、芋づる式に他の2人の正体もばれてしまう」

アニ「私は絶対口割らないよ」

ベルトルト「ぼ、ぼくだって」

ライナーの言葉に少し眉間にしわを寄せた。
私が、いや私達がお互いを売るようなことは絶対しないだろう。
ライナーだってそれは分かってるはずだ。

ライナー「だが、誰か1人が巨人だとばれた時、俺たち3人が親しくしてれば、まして同郷なんて事知られれば、
他の2人が怪しまれるのは間違いない。
3人そろってつかまっちまえばもう使命を遂行することは難しい。いや不可能になるだろう」

アニ「誰か一人でも残れば、ってこと」

ライナー「そういうことだ。で、実際にはどうするかだが。
俺とベルトルトは男で同じ寮での生活になるだろうから、二人でいる機会も多くなる。
そうなると他人を装っていてもついボロが出やすくなるだろう。
だから俺たちは同郷という事は隠さないでおく」

ベルトルト「わかった」

アニ「まってよ。それじゃさっき言ってた芋づるになるんじゃないの?」

ベルトルト「確かにそれもあるけど、同郷である事を隠そうとして、つい故郷の話とか、
二人だけの共通の話題とかが出ちゃったり、他人なのに同じ思い出話したとかってなったら
かえって周りに猜疑心を植え付けることになっちゃうかも。
なんでこいつら他人のふりしてるんだろうって」

アニ「…まあ、そうだね」

ライナー「だったらはじめから同郷ということにしておけば
まず俺たちが巨人なんて疑いがかけられない限り、怪しまれることはない」

ライナーの説明を聞いて、少し胸にもやもやが掛かる。その先の言葉が容易に想像できてしまう。

アニ「…話しの流れから分かるけど、もしかして」

ライナー「お前の考えてる通りだ」

ライナー「お前は明日から俺たちとは他人だ。
同じ男子寮で生活する俺たちとは違ってお前は女子寮。
訓練や座学、あとは食事の席以外で側に居ようとしなければ、まず関わる機会なんてそんなにないだろう。
そうなると、一番他人のふりがしやすくボロが出にくい」

アニ「…」

ベルトルト「ちょっとさみしいと思うけど、これが最善の策だと思うよ」

アニ「他人て、まったくの他人?あかの他人?」

ライナー「まあ、同じ訓練兵団の一員ではあるわけだから、
挨拶だとか、軽い世間話程度なら問題ないだろう。
ただ、あんまり一緒に居るといつ失敗するか分からないからな。
出来るなら接触は極力避けた方がいいだろう」

アニ「…何それ、あんたたちは今まで通り友達として接してて、私だけ仲間はずれ?」

ベルトルト「アニ、これはアニの為でもあるんだ」

ベルトルトが眉を下げてこらえるように言う。分かってる。言いたいことは分かる。
二人の正体がばれても、二人と同郷、幼馴染という接点が無い私には疑いの目がかけられることはまずない。
私自身が巨人だとばれない限り。

同郷である事を隠さない二人の方がリスクははるかに高い。
分かっているけど、二人と今までどおりに話せない、側に居られないことに、私ははたして3年間も耐えられるのだろうか。

ライナー「さみしいとは思う。だけど、やらなきゃならない。お前だって約束したんだろ?おやじさんと、絶対帰るって」

アニ「…」

お父さんの事を挙げられれば、否なんてわがまま言えなかった。
そうだ、私の一番の目的は使命を果たし無事故郷に帰る事。
お父さんのもとへ帰る事。

私は地面を見つめたまま小さくわかったよと答えた。


それから私達は、ごくたまにこうして三人で人目に付かない場所で近況報告し合う事を約束し、その場を離れた。

今まで3人一緒に過ごしてきた時間が今日終わった。

私は明日から一人になるのだ。

布団に入ると知らず涙がこぼれた。
不安で不安でしょうがないけど、今は耐えるしかないのだ。

かならず故郷に帰る為に。


*********************************

ミーナ「よろしく!私ミーナ・カロライナ。同じ部屋仲間だから仲良くしてね」

そう言って挨拶をしてくる子は、何も後ろ暗いところが無く屈託なく笑う。
差し出された手を見つめるけど、私は握り返さずそっけなく返事をし顔をそむけた。

アニ「アニ・レオンハート」

自分の名前だけ告げるとそのままその場を後にした。
少し戸惑った表情の彼女には申し訳なかったけど、私はここで親しい人間を作るわけにはいかないのだ。

ライナー(今 トイレを求めて全力疾走している俺は 104期の、ごく一般的な訓練兵)

ライナー(強いて違うところをあげるとすれば、特に理 由のない暴力に襲われるってとこかナ・・・)

ライナー「名前はライナー・ブラウン」キリッ

ライナー(そんなわけで、ミカサに吹っ飛ばされた ショックで尿意を催したため)

ライナー(訓練所の脇にある、屋外トイレにやって来たのだ)

ここは巨人を倒すべくその能力を身につける為の場所。

いわば私達の敵がいるところなのだ。
いつ、敵になるか分からない相手に心を許してはダメだ。

そう考えると、無愛想にふるまうようになり、私の周りにはほとんど人は寄りつかなかった。

同じ部屋のミーナは懲りずに何度も話しかけて来てくれるけど、私は相変わらずそっけない態度のまま。

もともと無表情ってわけではないので、感情を表に出さないようにするのは大変だった。

気張ってないとすぐ顔に感情が表れそうで、自然と眉間にしわを寄せる事が多くなった。

そのせいで、周りからは怖い顔だのなんだの言われた。

いつの間にやら私は無口で怖くて無愛想な暴力女、と周りから認識されるようになった。

最後の暴力女というのは、お父さんから習った格闘術で、組む相手を次から次へと倒していった為、そう呼ばれるようになった。

>>11
続きが気になるw


アニ「不本意」

ミーナ「何が?」

自分の中の世界に入り込んでいて、思わず口に出した言葉に、いつのまに隣に座って食事を取っているミーナが尋ねてきた。
もちろん答えるわけはないけど、周りの目も気にせず私の隣で食事をするミーナを思わず見つめてしまった。
私は訓練兵団の中では浮いている存在だ。
特別親しい間柄の仲間もいないし、暴力女というレッテルも貼られているわけで、
皆近寄りたくないし、近寄れば周りからの目も痛いだろう。

だけどこの子だけはそんなの気にせず、普通に話しかけてくる。
図太いのか、それとも器が大きいのか。

ミーナ「で、不本意って何が?」

アニ「別にあんたに話す事じゃないし」

ミーナ「えー、気になるよ」

アニ「黙って食べて」

ミーナ「えー、私アニのこと何にも知らないんだもん。もっと知りたいし、話したいんだよー」

黙々と黙って食べる私になおも話しかけてくるけど、私は無視を決め込み何も返さないでいた。
さすがにあきらめるだろうと高をくくっていたら思いもよらない爆弾を落とされた。

ミーナ「私、アニの事分からないけど、アニの事、よく見てるんだよ。アニって、好きな人いるでしょ?」

アニ「・・・」

まさに典型的な女の子。恋愛話が大好きな普通の女の子だ。思わずため息が出そうになった。

ミーナ「当てちゃうよ。いい?」

アニ「・・・(無視。無視)」

ミーナ「アニの好きな人はー、ライナーでしょ!」

最後の名前のところだけは私の耳元で、小声でそれでもはっきりと告げてきた。

思いもよらないその言葉に私は無関心を装うのも忘れ、思わずミーナに振り返った。
そんな私の反応や表情をみて、逆に驚いているのはミーナだ。

ミーナ「まさかそんな反応が返ってくるとは…、ちょっとからかってみただけなんだけど。
アニなら絶対、絶対零度のまなざしで『何言ってんの?馬鹿らしい』くらいの返しが来ると思ったんだけど」

やられた。まずい、何か勘ぐられるかも。
私は眉間にしわを寄せ、横目でちらりとミーナを見ると、ミーナは頬を赤く染まらせ嬉しそうに口角を挙げてこちらを見ている。

ミーナ「アニ、そうだったのね、やっぱり私の目に狂いはなかった。
で、いつから好きなの?どんなとこが?あれかな、やっぱり性格?
確かにライナーって頼りになる兄貴って感じだもんねー、
あとは体格?あの筋肉隆々なとことかかな」

まるで自分のことのように楽しそうに話すミーナに私は少し呆れながら、それでも一つ気になった事を尋ねた。

アニ「なんで私がライナーの事好きって思ったの?」

ミーナ「・・・・・・・・・・・・・」

アニ「ちょっと、何で黙るの」

自分の事は棚に上げてそれでもせかす。彼女の方を揺らしながら答えを催促する。

私の行動のどこかにライナーと私を結ぶ何かがあったとしたら、他人のふりをしている意味が無くなってしまう。
私達の関係を周りに気づかれないうちに、自分の行動を改めなければならない。

ミーナ「・・・・あ、ごめん。アニが私に質問してくるなんて初めてだったから」

しばらくフリーズしていた彼女は、そう言ってこれまた嬉しそうに答えた。

ミーナ「あ、そうそう。なんでライナーが好きって思ったかって話ね。
だあってそんなのアニを見てれば分かるよー。
アニってば気が付いたらいっつもライナー見てるし」

アニ「え」

ミーナ「いっつもこう、眉間にしわ寄せて怖い顔してるアニが、ライナー見てる時だけ優しい顔になってるんだもん。
こりゃあ好きと言わずなんと…もがっ…ひょっ…」

まずい。そんなに顔に出てたのか。
ミーナの口にパンを押し込みこれ以上の発言はやめさせた。

自分ではひたすら隠してるつもりだったけど、無意識に私は同郷仲間を求めている。
このままじゃ、もしかしたら私達の関係がばれちゃうかも知れない。
それは絶対に避けなければならない。

だったら、今私がしなければならないことは一つだ。


一切ライナーとベルトルトは見ない。


視界の端にも入れない!

いや、実際無理な話だけど、それくらいの意気込みでいかないと私はきっとまた見つめてるだろう。

だって今まで見つめてたなんて気付かなかったんだ。

無意識だったから気付かなくて、だからこそ見ないように意識しなきゃならないのだ。

とりあえず今日はここまで。書きだめてまた投下します。

モノローグばっか。
SSの書き方がいまいちわかってないです。

そしてこれは本当にライアニになるのか…?

支援ありがとうございます。

あんまり内容は進んでないですけど、続き投下してきます


それからは、出来る限りライナーとベルトルトのそばに寄らないようにした。
ただでさえ距離を置いているところを、視界にすら入れないようにするのはかなり気を張っていなければ出来ない。
それも数週間すぎると徐々に慣れてはくるもものの、精神的な疲れは増していった。
まあ、他にも疲れる要素は多いにあるんだけど。

いつのまにやらミーナは私と行動を共にする事が多くなった。

というより、勝手に隣に居るというわけだけど。

今日もまた、夕食の席で当たり前のように隣に居たミーナが話しかけてきた。

ミーナ「アニ、最近元気ないね」

アニ「・・・」

ミーナ「私の言った事気にしてる?」

アニ「何の事」

ミーナ「ライナーが好きってこと」

アニ「その話・・・やめてくれる?」

ミーナ「だって、アニ、最近無理してライナーを見ないようにしてるでしょ。
目が合いそうになったら慌てて逸らしたりしてるし」

アニ(・・・・・・・・・どんだけ私のこと見てるのこの子)

ミーナ「あれは別に、からかおうと思って言ったわけじゃないから、気にしないで、ね!」

アニ「・・・あんたに言われたことなんてこれっぽっちも気にしてないし」

ミーナ「もう、素直じゃないんだから。あ、ほら、ライナーだよ」

アニ「え」

話の流れでうっかり素直に指差された方向に振り向いてしまった。
しまったと思った時には遅い、そこにはライナーとベルトルトが楽しそうに話をしていた。

胸の奥がぎゅっと苦しくなる。

本当なら、私だってあそこで笑ってるのに。

ミーナ「アニって人と距離を置きたいオーラすごく出してるけど、本当はライナーとおしゃべりしたいんでしょ?」

アニ「何言ってるの。馬鹿らしい。どうでもいい」

ミーナ「だって今だって、そう言う顔してる」

アニ「…っ」

ミーナ「話しにくいなら私から話しかけるからさ、ちょっと側に行かない?」

そう言ってミーナが私の手を取り、ライナーの側へ連れて行こうとした。
慌てて私はその手を振り払った。

いよいよまずい。

このままミーナに勘違いされたままだと、余計なおせっかいでライナーとの接触の機会が増える恐れがある。
わざわざそれを避ける為に、こんな他人のフリなんてしてるのに、今までの苦労が水の泡だ。

アニ「ほっといて。余計なお世話」

ミーナ「もう!ほんっと素直じゃないんだから。ま、いいや。アニがそう言うなら。
でも、何か手伝ってほしい事があったら言ってね!私、恋のキューピッドとか得意だから!
フランツとハンナっているでしょ。あの二人って付き合ってるの知ってる?何を隠そうあたしが…」

アニ「ちょっと待って」

ミーナの長くなりそうな話を一度止め、一つ気になっていた事を尋ねた。

アニ「・・・・・・・・ひとつ聞きたいんだけど」

ミーナ「なになに?何でも聞いて」

アニ「私、そんなにライナーの事見てた?」

ミーナ「そりゃあもう」

アニ「・・・・・・そう。ならさ、他の人のことも見てる?」

ミーナ「アニが?ライナー以外の人を?
うーん、あとはベルトルトのことも良く見てるよね。
まあ、あの二人はいつも一緒だから当然と言えば当然だけど」

ミーナの言葉に頭が痛くなった。

私は墓穴を掘っていたわけだ。
見る人が見れば、私がライナーとベルトルトを特別視していることが分かってしまう。
そうなれば隠した嘘もどこか些細な綻びから、全てが公になってしまう恐れもある。

自分の情けなさに溜息が出た。

それとともに、ある疑問がふと頭に浮かんだ。
この際だからそれもミーナに尋ねてみる。

アニ「ついでだからもう一個聞きたいんだけど」

ミーナ「うん」

アニ「私はライナーとベルトルトを見てたって言ったけど、なんで“ライナーが好き”って思ったの?
ベルトルトのことは好きなんじゃないかって思わないの?」

ミーナ「最初はそう思ったけど、でもライナー見てる時のアニは顔が違うから」

アニ「顔?変な顔してるってこと?」

ミーナ「そうじゃなくって…、うーん、難しいなあ。
なんていうか、こう、切なそうな、だけど幸せそうな。
ほら、前に言ったでしょ、ライナー見てる時だけ優しい顔になってるって。
ようはあれよ!恋する乙女って感じの顔してるってこと!」

アニ「!?」

まさか、私がそんな顔してるって!?ありえない。

自分とは縁遠いその言葉に一瞬頭が真っ白になった。

確かにライナーの事は好きだ。
ベルトルトも好きだ。
同郷の仲間だから、ただそれだけ。

前にもミーナからライナーのこと好きでしょと言われたけど、その時は確かにそういう意味で好きだからと、それで自分では納得してた。

だけど、ミーナが言うには恋する乙女の顔(よく分かんないけど)をしているらしい。

アニ「あんたの勘違いでしょ、私そんな顔した覚えない(ていうかよく分かんない)」

ミーナ「自覚してないだけじゃないかな。あれは間違いなく恋してる顔だったよ」

アニ「・・・・ないないない!はい、もうこの話は終わりだよ」

ミーナ「えー、せっかくアニが乗ってきてくれたのに」

アニ「じゃあね」

ミーナ「あ~!待って待って、私からも一個だけ質問。
アニだけ質問しといて帰るなんてずるいからね」

アニ「・・・・・・・・手短にして」

ミーナ「よっしゃ!無自覚なアニちゃんでも、きっと覚えがあると思うんだけど。
ライナーが他の女子と話してるの見て、イライラしたり胸がぎゅーって苦しくなったりしたでしょ?」

アニ「そんなこと・・・」

当たり前だ。
女子に限らず、ライナーと親しげにしてるやつを見ると、男だろうが女だろうがむかつくさ。
私は世間話さえたいして出来ないのに、当たり前のようにそばに居て、楽しそうに話しているのだから。

ミーナ「ベルトルトが他の女の事話してる時はどう?ライナーの時とおんなじ気持ちになる?」

アニ「え?」

私に答えさせる暇もなく、次いで出たミーナからの質問に、思わず聞き返してしまった。

*他の女の事*
他の女の子と◎

すいません

あれ?

何故か頭に疑問符が浮かぶ。

確かにベルトルトが他の訓練生と仲良く話してるのを見るとイライラする。
だけど、何か違う。
よく分からないけど、ライナーの時とは何か違う。

言われて初めて気がついたけど、でもそれが何故かという理由にはいくら考えても行きつかなかった。

私が一人で考えを巡らせ、答えが返らない事を察したミーナはほらね、と自慢げに笑って見せた。
なにが“ほらね”なのか全く分からない私は、胸に新たに加わったモヤモヤをつくってくれた原因を、ひと睨みして自室に戻った。

睨まれたミーナは、なんで睨むのよー、と背を向けて去る私に不満気に叫んだ。

とりあえず今日はここまで。
全然進んでないw

アニちゃんはまだ自覚なしで、ミーナに諭され徐々に自覚していく予定。
自覚してからのアニちゃん書くのが楽しみ。
ベルトルトは出来るだけ不憫にしないようにしたい。・・・多分。

ありがとうございます。
読んでくれている人がいると思うと頑張れるものですね。
とはいっても話は全く進んでいないです。
とりあえずある程度書いたので投下してきます。

あの後、ミーナを置いて部屋に戻る途中でさっきまでライナーと話していたはずのベルトルトが私の前に現れた。

ベルトルト「やあアニ、おやすみ」

廊下ですれ違いざま、その言葉とともに肩を軽く叩かれた。
それと同時に耳元でカサッと何か乾いた音がしたのが分かった。

私はベルトルトのあいさつに軽く答えると、そのまま一度部屋に戻った。
自分以外に部屋には誰もいない事を確認すると、パーカーのフードの中を確認した。
すると、思った通り、小さな紙切れが出てきた。

中に書かれた言葉を確認する。

”集合 場所は・・・・・・”

紙切れに書かれた内容に、ここに来る前に3人で話したことを思い出す。

『三人で人目に付かない場所で近況報告し合う』

ここに入団する前に決めた約束、その日がいよいよやってきたわけだ。
書かれた時間と場所を確認した後、紙切れは細かくちぎって捨てた。

入団以来、初めての集まりだ。
日時は急な事に今日の夜更けだと言う事だった。
場所は兵舎裏の林の奥。そんな夜更けにそんな場所に行く様な人間はまずいないだろう。
おそらく誰かに見つかる心配はないが、部屋から出るときは注意を払わなければならない。

とりあえず夜が更けるまで時間はまだある為、ベッドにもぐってひと眠りすることにした。
ようやくライナーとベルトルトとまともに話せると思うと、わくわくして、嬉しくてたまらないはずなのに、どうしても胸に何かがつかえてる気がして気分が悪かった。

それから私はいつの間にか眠ってしまったらしい。
気がついた時には部屋は暗くなっており、それぞれのベッドで同室者達が小さな寝息を立てていた。
月が高く昇っていて、ほんのりと室内を照らしている。
物音を立てないようそっとベッドから抜け出すと、各ベッドを覗き込み、しっかり寝入っているか確認した。
問題ないことを確認し、静かにドアへと向かった。

ミーナ「ん~、アニぃー・・・・」

アニ「!?」

名前を呼ばれて慌てて振り向いた。
すぐさま頭には”トイレに行ってくるだけだから”とあらかじめ考えて置いた台詞が思い浮かんだ。

ミーナ「んふふ~、照れちゃって可愛いなぁ・・・・・むにゃ・・・」

続けざまのミーナの言葉を聞いて、考えていた言葉は発する必要はないと判断した。

アニ(紛らわしい寝言吐くな)

そうして部屋を後にした。

薄暗い林の中を進んでいくと、少し開けたところに出た。
月明かりに照らされて、大柄な男が二人、茂みの奥に座りこんでいた。

アニ「おまたせ」

ライナー「おう、遅かったな。迷子にならなかったか」

茂みに入り声をかけると、こちらを向いたライナーと目があった。
久しぶりだ。こうして目を見て話すのは。
だけど、開口一番の言葉に少し眉間にしわを寄せた。
睨みつけてやろうかとライナーに向かい合うが、夕食時のミーナの言葉を思い出し、顔をライナーから逸らした。

なんでか目を合わせられない。
ライナーの言葉にイライラしてるはずなのに、少し嬉しさを感じてる自分がいる。
自分の感情なのによく分からず、そのモヤモヤがさらにイライラを増長させ、可愛げのない言葉で返事をする。

アニ「蹴られたいの?」

ライナー「はっはっはっ、冗談だって。久しぶりにまともに話したんだから少しくらい相手してくれよ」

ベルトルト「ほんと、こうして普通に話すの1ヵ月ぶりくらいじゃないかな。アニ、さみしかったでしょ。ごめんね」

ベルトルトが眉を下げ申し訳なさそうな表情をして言った。

190cmを超える大男が体育座りで小さくなってる姿はなんだかおもしろい。
なんだろう、普段見上げているからか、こうして見下ろせる位置に居る事で、ちょっとした優越感を味わえる。
そんな気分が後押ししてか、思ってもみない言葉がスラスラと出てきた。

アニ「別にさみしくなんてないし。けっこう楽なもんだよ」

さみしかったに決まってる。
周りの人と極力深く関わらないようにするのは骨が折れるよ。
そう言いたいのに、まったく反対の言葉が出てしまう。

きっと昔から、二人と対等でありたいと考えていたせいか、弱音を吐く事に抵抗を感じてしまっているからかもしれない。
せっかく気兼ねなく話せる相手を前にしてるのに。
我ながら厄介な性格をしている。

ライナー「で、まあせっかく会えたわけだが、あんまり長いは出来ないからな。俺たちは同じ部屋で二人で抜け出て来てるから。それで、近況報告だがまずなにか変った事とか、自分たちの事がばれそうになったとかそう言った事はないか?」

アニ「ないよ。報告するべき事も特には無いね。強いて言うなら、同室の子がやたらと絡んでくるってことかな。他者との接触はなるべく避けたいところだけど」

ベルトルト「そっか、でもまあ、あえてその同室者の子と仲良くしておけば、逆に一匹狼でいるより何かあった時に怪しまれないかもね」

アニ「ちょっと、だって他者との接触機会が多いと、その分正体がばれるリスクがたかくなるんじゃ」

ベルトルト「あんまり一人でいるってのも、何かあった時にかばってくれる人がいないし、真っ先に疑いをかけられる対象になりやすいと思うけどな」

アニ「・・・じゃあどうすればいいの」

ベルトルトの言っている事は確かに理解できる。

ベルトルト「みんなと仲良くなれってわけじゃないけど、一人か二人くらい親しくする人がいてもいいと思うよ」

アニ「・・・・そうかな」

ベルトルトはそう言う。確かに、私はかたくなに他者との接触を避けてるわけだけど、この二人は、特にライナーなんか、他の訓練兵と当たり前のように普通に話している。
楽しそうに笑っているところも良く見る。

だけど私は他に考えてしまう事があった。

私達の使命、それを考えれば、仲間だと偽って接している者たちの事を必ず裏切ることになる。
少しでも心を許せば、きっと使命を果たす上で支障をきたす。
お父さんとの約束を守る為には、必ず使命を果たさなければならない。情が湧いて、出来なかったなんてあってはならないことだ。

ライナー「お前、ほんとは辛いんだろう」

ベルトルトの言葉を理解しつつも、納得できないで考え込んでいた私にライナーが言葉をかける。

アニ「なんのこと」

ライナー「さみしくないってことだよ。ほんとはさみしいんだろ?
ちょいちょいお前の事見てると、結構しんどそうな顔してるからなー」

ライナーの言葉に無意識に頬が熱くなるのが分かる。

アニ「ちょっ・・・何ヒトの事ジロジロ見てんの。キモいんだけど」

思わぬライナーの言葉に戸惑い、自分の事を差し置いて酷い言葉を投げかけた。

ライナー「だってお前昔っから意地っ張りなとこあったよな。
俺たち男に負けたくないからみたいな理由で親父さんから格闘術習ったし。
お前が天の邪鬼だってことは昔っから分かってんだ。今くらい素直に甘えてみろよ」

そう言ってライナーは私の頭をぐしゃぐしゃと撫でてきた。
まるで子供扱いだ。
悔しいと感じつつも、その撫でられる感触が気持ちよくて、黙ってされるがままにする事にした。

ベルトルト「ずるいよライナー!一人だけカッコつけて。
アニ、僕だってアニがさみしがってることには気づいてたよ。
でも、こういう時くらいじゃないと、あんまり話しかけられないからさ。本当にごめんね、辛い思いさせて」

アニ「別に・・・、大丈夫だから」

ベルトルトの言葉に、また意地っ張りな返答をする。
ベルトルトはそんな私に、そっか、そうだよねと言ってにっこり笑って見せた。
ライナーも少し意地悪な感じでニヤニヤしている。

どうやら二人には私が何を言ってもばれているらしい。

もうこの際だから、諦めて素直に甘えてみようか。

そう考えるとどこか気持ちも楽になり、行動が大胆になった。
胡坐をかいて座っているライナーの上に座り、そのままライナーに背を預ける。
正面に座っているベルトルトを手招きし、呼び寄せるとその大きな手を握り自分の頭に持っていく。

この間、私は一言も発していない。
というより恥ずかしくて何も言えなかった。
でも、二人とも私の意図するところは分かっている様で、ライナーはそのまま私を抱え込み、ベルトルトは優しく私の頭を撫でてくれた。

心地よい。

なんだか自分が特別になった気分。
とくん、とくんと背中から聞こえてくる音がとても心地よくて、それと同時に、広い胸に触れている自分の背中が、じんわりと熱くなっている気がした。
そして、後ろにいる男より、少し速くリズムを刻む自分の鼓動が、触れているところを通して、その男に伝わってしまうんじゃないかと、そんな考えがさらに鼓動を速くさせた。

とりあえず今日はここまで。
眠くて文章変かも。

乙おつ

続き期待


>>58
>>59
ありがとうございます
投下してきます


翌日、何故だかいつもより寝覚めが良かった。

ミーナ「あれ、なんだか今日のアニすっきりした顔してる。
いつもはムスッてすごく不機嫌そうなのに」

なんてことを言われるくらいに。

その発言にはいらっときたがあえて流すことにした。確かにそうだからだ。

間違いなく理由は昨夜の密会だ。

どれだけ今までストレスがたまっていたのか、そしてあの会がどれだけ私の癒しになったかが良く分かる。

恥ずかしくてとても二人にそんなことは言えないけど。

ミーナ「もしかして、夕食の後ライナーとなんかあった?」

アニ「・・・もご・・・」


洗面所で並んで歯磨きをしていると、どこまで勘がいいのか、ミーナがそう尋ねてきた。
もちろん答えるわけない。
だけど、ミーナは私の反応をみて満足そうな顔をした。

お見通しってわけ。

侮れないな、この子。

ミーナ「ほら、アニ。早く朝ご飯食べに行こう」

アニ「・・・・・・・・・(もういいや、どうでも)」

私がどんなにそっけなくしても、あきらめず話しかけてくる。
こうしてミーナのペースにいつの間にか毎回乗せられ、いつからか彼女が私の隣に居るのが当たり前になった。


それから数カ月が過ぎた。

同郷3人で集まるペースは相変わらず月1回くらいだ。

はじめは私はこんなストレスのかかる生活に耐えられるかと考えていたが、いつの間にか側にいたミーナは、そんな私のストレスを和らげてくれる存在になりつつあった。
対応としては、最初のころと変わらないけど、はじめのころよりミーナと話す機会は増えて、どこか心を許し始めていた。

そんな私の態度に、ミーナも何か感じ取っていてくれてるようで、私が本心とは逆に冷たい言葉を放ってもはいはいとあしらったり、にこにこ笑って、私の本当に痛いことを感じ取っているようだった。

駄目だとわかってはいるのだけど、戦士としての使命を果たすという重圧から、少しだけでも逃げたいと、そう思う時にミーナが側に居てくれる事が私にとって小さな救いだった。

こんなこと考えるなんて、出会ったころは考えてもみなかった。

私以外にも沢山友達のいるミーナ。

他人の心にするっと入り込んでしまう、そんな彼女が少し羨ましく感じた。


この頃になると、ミーナにいくつか相談することも増えた。

相談といってもそんなに大っぴらに聞くわけではない。

さりげない会話の中から聞きたい事を引き出せるように誘導するのだ。

これが結構大変でもあるわけだけど。
内容はと言えば…。

アニ「そういえば、今日、クリスタだっけ?あの子、すごかったね」

ミーナ「ん?」

アニ「馬術の時間。あんなに小さい体でさ、馬を上手く操ってた」

ミーナ「そうだねー。でも、動物とか好きそうだし、好かれそうな感じの子だよね。
優しいし、可愛いし、訓練兵の中でも特に男子に大人気だよね」

アニ「・・・・・・・・・・ふーん。そんなに人気なんだ」

ミーナ「そうだよー。女神とか言われてるしね。私ももし男だったらクリスタ好きになってるかも」

アニ「そう。・・・・・・その、話は戻るけど。男子なら誰でも好きになるわけ?」


ミーナ「・・・クリスタ?全員が全員てわけじゃないと思うけど。
ほら、フランツとハンナだっているし・・・って、アニなんかそわそわしてる」

アニ「はっ!?べべ、べつ、別にそわそわなんてしてないしっ!」

ミーナ「アハハ!テンパリ過ぎだって、可愛いなあアニは」

そう言ってミーナは満面の笑みで私を見ている。
おかしい。こんなはずじゃなくて、もっとうまく聞き出す予定が。

ミーナ「ライナーが心配?」

アニ「・・・っ」

ミーナ「分かりやすぅー!」

熱い。
顔が熱い。

なんでミーナにはなんでも分かってしまうのか。

そうだ、彼女から聞きだしたい事はライナーの事なのだ。
前にミーナに“ライナーの事好きでしょ”なんてこと言われて、最初は自分の気持ちが分からなかったけど、その言葉を意識し始めてから気持ちに気付くのにそう時間はかからなかった。

気持ちに気付いてからの毎日は、苦しいのに楽しい、そんなわけのわからない初めての感覚ばかりだった。

その日一度でも顔を見れると嬉しいけど、話しかけられない事が苦しい。
側に居られない事が苦しい。
それでも一度でも目が合えば、さりげなく笑いかけてくれればそれだけで気持が高揚した。

そんな恋だのなんだの言ってる状況ではないのは分かってる。
だから結ばれたいとか、自分の事を好きになってほしいなんて思ってるわけじゃない。

だいたいアイツが私の事を好きになるなんて事ありえないだろうし。

私のこと女として見てないだろうし。

(あ、なんか考えたら悲しく・・・なんてないし、考えるの止めよ)


だけど気になるのはしょうがない。
何も望まないなら、ただ好きでいるだけならそれでいいんじゃないか。

使命はしっかり果たす。約束の為にも。

だから、この小さな幸せくらい見逃してほしい。


アニ「・・・・アイツ、最近よくしゃべってるよね」

ミーナに聞きたい事がばれてるのなら、もうこの際、恥は忍んで聞いてしまおう。

ミーナ「クリスタと?」

アニ「・・・・仲よさそうだね」

ミーナ「そうだね、ライナーもなんだか鼻の下が伸ばしてるし」

アニ「・・・っ、そ、それって、え、え、」

ミーナ「ちょ、ちょっと冗談だよ。落ち着いてアニ、ごめんごめん。
そんなに切羽詰まった顔するなんて。
ほんとに好きなんだね」

アニ「・・・っ」

ミーナ「顔真っ赤!」

アニ「う、うるさい!」

ミーナ「アニかわいすぎ!私はアニの味方だからね!」

アニ「もう、いい!」


ミーナ「ああ、待って待って。
ちょっと作戦会議はまだ始まったばっかりじゃん。
それとも本当にクリスタにライナー取られてもいいの?」

アニ「・・・・」

ミーナ(動きが止まった)

ミーナ「ほら、座って。
正直にいえば、クリスタがライナーのことどう思ってるかは分からないけど、
ライナーはクリスタの事まんざらでもなさそうな感じだと思う」

アニ「・・・・・」

ミーナ(今度は青くなった)

アニ「どうしてそう思うの」

ミーナ「んー、ほら、前に言ったでしょ。恋してる乙女の顔。
まあライナーが乙女の顔をしてるわけないけど、恋してるに近い顔をしてる気はするなあ」

アニ「・・・・・そう」


ミーナの言葉に、自分で聞いておいてなんだけど、もうこれ以上続きを聞く気にはなれなかった。

望んでない。
自分の事を好きになってほしいなんて思ってない。

だけど、自分の好きな人が他の人を好きな事がこれほどショックだなんて、初めて知った。

ミーナ「アニ、まだ決めつけるのは速いよ。
あくまで私の想像なんだから。もしかしたらそんなことライナーは思ってないかもしれないし」

ミーナは勘が鋭い。
というよりよく周りを観察してると思う。

私の事も然り、他人の感情の機微によく気付く子だ。
そんな彼女が言うのだから、おそらく間違ってないだろう。

確信に近い。

だからこそ余計ショックなのだ。


アニ「別に、ライナーとどうにかなりたいと思ってないから。
むしろ、ライナーが私のこと好きになるとかありえないし」

ミーナ「それはアニがライナーにあんまり話しかけないから。
もっとそばに居る時間を増やしたら、アニの事気にかけてくれるんじゃない?」

アニ(違うんだよ。今までずっとそばで過ごしてきて、それで何もなかったんだ。
いまさらどうあがいたところで、アイツにとって私はただの同郷、幼馴染なんだ)

ミーナ(そんなに悲しげな表情で意地張っても。
最初の頃の何も興味ありませんって感じの無表情はどこへやら。
これが本来のアニなのかな)

それからミーナがあれやこれや手を考えてくれたけど、私はあっさり断ってベッドにもぐりこんだ。

他の同室者も自室に戻ってきたため、それきりその話は打ち切りになった。

今日はここまで。
波がない。
一波乱早く書きたいけど眠い


ライナー「おう、前いいか」

アニ「・・・・・・・いいけど」

食堂でぼんやりと朝ご飯を食べていると、珍しくも今一番顔を合わせたくないやつがやってきた。
どうやら他の席が空いていないようだ。
ベルトルトも今は他の訓練兵と楽しそうにご飯を食べている。
さすがに二人はいつも一緒ってわけじゃないか。

コイツと顔を合わせられるのは嬉しいし、ほんの少しとはいえ話せるのも嬉しい。
けど、昨日のミーナの話を聞けば、ライナーはきっとクリスタに気がある。
そう考えるだけで自然と顔はテーブルに向けられてしまう。

目の前で笑いながら話しかけるコイツの、その笑顔は私の為じゃなくてクリスタの為に向けられるのかと思うと、どうしても見ていられなかった。
確かに今それは私に向けられているのだろう。

でも、彼の一番は私ではない。

私に与えられた付加価値は彼と同郷で幼馴染だと言う事だけ。
そうでなければ、きっと私は彼の目に留まるような存在ではなかったろう。

自分で考えていてあれだけど、卑屈すぎるよ、わたし。


ライナー「・・・おい、アニ?お前元気ないな。調子悪いのか?」

そう言って向かいに座っていたライナーはその体を少し前に乗り出して、俯いていた私の額に大きな掌をあてがった。

ライナー「熱はなさそうだけど」

アニ「・・・・!」

アニ(え、え!何してんのコイツ!)

一気に体が熱くなる。
大きな掌は熱が無い事を確認すると、あっという間に離れていった。
そして声をひそめて続けて言う。

ライナー「あんまり一緒に居てやれないからな。あんまり周りの奴らと関わらないようにしてるみたいだけど、ばれなきゃいいんだから、少しは同室の奴とかに頼れよ」

アニ「・・・なんのこと」


ライナー「俺たちは一訓練兵としてここに紛れ込んでる。
      だからといって、無理に一匹狼になることはないって言ってるんだ」

アニ「確かにあんたの言う事も一理あるよ。
   でも、それであとあと後悔するのは自分じゃないの?」

ライナー「?」

どういうことか分からないと言った表情で、私の次の言葉を待つライナー。

アニ「あんまり深くかかわると、いざという時、使命を果たせなくなる」

ライナー「・・・・それは、ちゃんと分かってる」

アニ「本当に?」

私の言葉に少し戸惑った表情でライナーが答えた。
自分でも気がついてるはずだ。

いくら兵士として演じると言っても、ベルトルトやライナーは他者と深く関わり過ぎている。


ミーナと話す機会の増えている私が言える事じゃないけど、それでも二人は、特にライナーは馴染み過ぎていると感じる。

たまに、それは本当に演技なのかと目を疑うこともある。

彼の元々の性格から、頼れる兄貴として自然と他者を引きつけてしまうところもあるのだろうけど、それでもたまに心配になる事がある。

だって、今はそれでもいいけど、あまり親しくなって情が湧いたら、後で深く傷つくのは彼なのだ。

そんな彼を見たくない。
だから、私はあえて厳しい事を言う。

アニ「あんまりここの奴らと関わり過ぎちゃだめだよ。
   ちゃんと一線を引くんだ。それが自分の為だから」

ライナー「・・・・っ、分かってる」

私のその言葉は、もちろんそれが彼の為だと思ってのことだ。
だけど、そこに余計な感情が加わっている事も否定できない。


こう言っておけば、これ以上クリスタに心を寄せても、結ばれるなんてこと出来やしない。

彼が使命を忘れて、彼女の為に私達を裏切る…なんてことにならない限り。

だけど絶対そんなことにはならない。

ライナーは私達を裏切らない。

それだけは間違いないと言える。
それだけ私達の過ごしてきた時間は濃密だったし、それだけの絆があると言えるからだ。

アニ「じゃあ、私は先に戻るよ」

そのまま黙ってしまったライナーを後にして、私は午前中の座学の為に講義室へと向かった。


その途中で、ベルトルトに話しかけられた。

今日はよく同郷が絡んでくるな。

ベルトルト「さっき、ライナーと何話してたの?」

アニ「べつに、世間話さ」


どこかそわそわした表情で尋ねてくる。

その大きな体のわりに、どこか自信なさげなところがベルトルトなのだけど、どこかいつもと違って焦っているような感じだった。

ベルトルト「最近のライナー、変だと思わない?」

アニ「は?」

ベルトルト「なんだか、本来の目的を忘れてるような」

アニ「私は普段ほとんど喋らないからわかんないけど、あんたの方がそれはよく一番分かるはずなんじゃない?」

ベルトルト「確かに、そうなんだけど…。最近ライナーが…っ」

声をひそめて歩きながら会話をしている私達の横を、他の訓練兵達が通りすぎていった。

ベルトルトはその間口を閉じ、自分たちの話し声が聞こえないところまで彼らが離れたことを確認して言葉を続けた。


ベルトルト「時々、本当に兵士になりきってる時があるんだ」

アニ「何それ」

ベルトルト「…上手く言えないんだけど」

アニ「ハハッ、アイツが役者だったなんて知らなかったけど」

ベルトルト「冗談じゃないんだっ」

声をひそめながらも、それでも語尾を強くして言うベルトルト。
その表情はどこか危機迫ったものを感じる。

その様子にこれはただ事ではないのだと感じ、言い知れぬ不安を感じた。

ベルトルトの言う事が気にはなるが、このままここで話を続けるわけにもいかず、とりあえず今夜二人だけで集まることを約束しその場を後にした。


――――――――――――――――
アニ「ベルトルト、いる?」

いつもの茂みの奥に向かうと、そこにはすでに大きな体を小さく畳んで座っている男がいた。

ベルトルト「とりあえず、今の僕たちの状態から話すね」

アニ「うん」

ベルトルト「はじめはなんでもなかったんだ。
       ライナーも僕もあんまり怪しまれないように、普通に他の訓練兵の子と話をしたり冗談を言い合ったりして、なるべく普通にそこに溶け込むようにしてたんだ。

       ライナーってほら、あんな性格だから自然と人が寄ってきて、いつの間にか大勢の中の中心に居るから、僕、心配だったんだ。

       よくライナーに少し距離を置くようにって声をかけてた。
       ライナーはわかったって答えるんだけど、結局はいつも周りに人がいて、その中にライナーがいるんだ。
 
       そんなある日、他に誰もいないところで、ライナーに次にいつ密会を開くかを尋ねたら、ライナーは何も答えなかったんだ」

アニ「それってどういうこと?」

ベルトルト「ライナーは全く同じことを僕に聞いてきたよ。
       密会の事、アニと僕と三人で集まる会のことだよって言ったら、少し間を空けて何か思い出したように“ああ、それか”って答えたんだ」

アニ「それのどこがおかしいの?ただ端に聞こえなかっただけじゃないの?」

ベルトルト「そうじゃない、聞こえなかったわけじゃなくて、彼は僕が言った事が何のことだったか分からなかったんだ」

アニ「・・・・」

ベルトルト「ライナーは、兵士を演じているんじゃなくて、なりきってるんじゃなくて、使命を忘れて本当に兵士だと思い込んでるんじゃないかって…、そう感じる時があるんだ」

アニ「まさか、アイツに限ってそんな…」

そう言っておきながら、自分でも感じていた違和感はベルトルトの言葉で確信となりつつあった。

たまに本当に演技なのかと思う事がある。
確かに私もそう感じていた。
だけどそれはただの気のせいだと、ライナーが私達を裏切るなんてことない、そう思っていた。

アニ「ライナーは、戦士じゃなくて兵士になりたいって言ってるの?」

ベルトルト「そうじゃないんだ。ライナーは自分が兵士だと思い込んでることが分かってないみたいなんだ」

アニ「よく分かんないんだけど」

ベルトルト「さっき言った様に、僕たちの使命を忘れて兵士だと思い込んでることもあるけど、戦士としてのキーワードを言えば、すぐに理解するんだ。
そして自分がおかしなことを言っていたなんて忘れたように話しだす」

アニ「自覚してないってこと?」

ベルトルト「たぶん、そうだと思う」


暑くもないのに汗が止まらない。
心臓の音がやけにうるさい。

ライナーが、ライナーでなくなろうとしてるの?
どういうこと。分からない。

ベルトルト「アニ、まだ決まったわけなじゃないけど、それでもライナーの様子がおかしいのは確かだ。
僕は僕でライナーのこと気にかけるけど、アニも今より少しライナーと話す機会を増やしてくれないかな。
たぶん僕たちが側に居れば、ライナーが兵士に染まることも抑えられると思うんだ」

アニ「・・・わかった」

それからそれぞれ寮に戻り、私はベッドへと潜り込んだ。
しばらく心臓がドキドキしてなかなか眠りに就く事が出来なかった。

アニ(ライナーは、兵士になりきってる?というより自分が兵士だと思い込んでることがある…。

そしてその時は使命の事も忘れている。

だけど、戦士としての話をすれば直ぐに思いだし我にかえる。

どういうこと?なんでライナーは兵士だと思い込んじゃうの。

やっぱりあまりにも他者との接触が多いから錯覚してるだけなのかな)

それから意識が遠のいてくるまでひたすらそのことを考えていた。



アニ『ベルトルト、ライナー、あーそぼ』

ベルトルト『アニ!いいよ、あそぼ』

ライナー『おまえいっつも俺たちと遊んでるけど、たまには女の子同士で遊んだ方がいいんじゃないか?』

(あれ、なにこれ。
夢?
なつかしい。

私とライナーとベルトルト。みんなちっちゃい。

私と二人とそれほど身長が変わらなかったころだ。)


アニ『何よ、いいじゃんそんなの。ライナーには関係ないでしょ』

ライナー『俺はお前のことを思ってだな』

アニ『おままごととかお花つみとか興味ないもん』

ライナー『お前だって女なんだから、少しは女の子らしいことした方がいいぞ』

ベルトルト『ちょっとライナー…』

アニ『おんなおんなって、ライナーうるさい!
ライナーだって男の子のくせに私と身長変わらないくせに!
だったらライナーもお花つみしてくれば!』


ライナー『おまっ、なんだと!』

アニ『いーだ!もうライナーなんて知らない。一人で遊ぶからいいもん!』

ベルトルト『あ、アニ!ちょっと…』

ライナー『勝手にしろ!』

ベルトルト『ライナーも、もう…。もうちょっと優しくいってあげればいいのに』

ライナー『アイツがわからずやなのが悪い。
いつまでも俺たちと遊んでばっかりいるから、同じ女から敬遠されるんだ。
アイツが大きくなればきっと同性の友達が必要になる時が来る。
それは俺たちにはどうする事も出来ない。だから自分から作りに行かないと』

ベルトルト『アニの為ってのは分かるけど、あんな言い方じゃアニは反発するよ』

ライナー『…はぁ、へそ曲げてるからな。一度ああなったらしばらく口きいてくれないだろうな』

ベルトルト『そうだね…、はぁ』


この時私は草むらに隠れて二人の様子をうかがっていた。

ライナーが私のことを思って言ってくれたことが嬉しかった。
だけどあんなこと言った手前、私の性格上、二人の前に出て行って謝る事が出来ず、結局その場を後にした。

このあと、どうしたんだっけ。

結局一人で森の中で遊んでて、山へ入って、それから…。


それから…。




ミーナ「アニ、アニ!起きて、早く起きてご飯食べないと午前中の立体起動訓練間に合わないよ」

アニ「・・・・・んぅ」


大きな声と体を揺さぶられる感覚に、重たい瞼を開けると窓から差し込む光がまぶしかった。

のそのそと起き上がると、同室のミーナはすでに着替えがすんでいて、私が起きたことを確認すると先に朝食に言っていると言って部屋を出て行ってしまった。
他の同室者も既に出て言っている様で部屋には私一人だった。

懐かしい夢を見た。

昨夜ベルトルトにあんな話をされたからだろうか。

現実から逃げたくて、過去のことを思い出してしまったのかもしれない。
結局あの喧嘩別れした後、どうなったのか思い出せない。

たぶん仲直りはしたのだろうけど、はっきり思い出せずむずがゆかった。

今日はここまで


アニ「ふぁああ・・・・」

クリスタ「昨日眠れなかったの?」

懐かしい夢でも見たせいか、まだ半分頭が夢の世界に入っていると横から可愛らしい声がした。
見るとその声の持ち主、104期生の女神がそこにいた。

アニ「別に」

クリスタ「立体起動装置の訓練だから、気を引き締めなきゃ。
怪我しちゃうかもしれないからね」

可愛い顔で正しいことを言う。
華奢で可愛くて性格も良くて動物にも好かれる。
男共からちやほやされるのも納得だ。

アニ「あんたより操作は上手いから大丈夫さ」

クリスタ「…っ、あはは、そうだよね」

嫌みで言った私の言葉に少し戸惑いながらもにっこりと笑顔で返してくる。
どんだけいい子ちゃんなの。
これじゃ私がどんどん嫌な女になる。


キース「それでは、今日は森の中で実際に立体起動を使って移動する練習を行う。
操作法は座学でやったとおりだ。
それぞれ点検が済んだら、立体起動を身に付け森へ集合すること」

一通り点検を終わらせるとさっさと身につける。

立体起動装置自体はそこまでの重量は無いからあっさり身につけられる。
だけどこの替え刃がやっかいだ。

これを入れる鞘がついてるわけだけど、結構な大きさでまあまあな重さがある。
身につけると腰回りが重く感じた。

周りを軽く見渡すと、先程の女神が装備を付けるのに悪戦苦闘していた。
機械類にもともと弱いのか、あらぬ方向にベルトを通している。

わたわた慌てている姿もどこか愛らしい。

眺めているとそこに大柄の男が近寄っていく。
困っている彼女に声をかけ、優しく付け方を説明し装着を手伝っている。
全てを身に着け終わった彼女は彼に向ってにっこり笑って礼を言った。

彼、ライナーは少し頬を赤らめて答えている。


アニ(私も、付けられないフリしようかな…。
駄目だ。誰にも声をかけてもらえない可能性が高い)

考えて嫌になる。
もともと他者との関わりを避けてきた仇があり、ミーナと同郷組を除いてあまり積極的に私に話しかけてくれる同期生はほとんどいない。

まあキャラ的にも私が立体起動付けられないとか言ってたら、ライナーに馬鹿にされるのが関の山だ。

私もあんな風に生まれたかった。
女の子らしく、可愛らしく、愛想があって…。

アニ(ライナーの言う事を聞いて、小さいころから女の子らしい遊びをしておけばよかったのかな)



それから森の中に集合すると、各々座学で受けた通り、実際に立体起動を使い始めた。

やはり話しで聞くだけではうまく操作は出来ず、体で感覚を覚えるしかない。
その為、教官は一定時間森の中を自由に動き回る許可を与え、各々その感覚を体にしみこませ、細かい調整の仕方を確認していた。

これが自分の思うままに使いこなせないようであれば、すなわち死が待っている。

巨人と戦う上で立体起動装置は必要不可欠だ。
地面に降り立ったら最後、その者の生きる希望は断たれたも同然。

それが今の人類なのだ。

案外体はすぐに覚えるもので、指先の感覚や体のバランスでワイヤーの飛ばしたい方向、体の安定のさせ方はすぐに身についた。

後は素早く動き回る為にそれらの動作をいかに早く出来るかの練習になる。


ある程度感覚を把握したところで、途中の大木の枝に一度止まり、そこに座って少し休憩することにした。

大分森の端のほうまで来たらしい。

下を見ると、その大木のすぐ横が崖になっているのが見える。
結構高さがあるようで、その崖下にさらに森が広がっているようだ。

森といっても地震か何かで地層がこの場所だけ盛り上がっていて、一段高くなっている様な感じの地形のようだ。

教官の指示ではあと20分ほどの時間を設けてある。
なにもその時間内ぎりぎりまで練習する必要はないだろう。

すこし休憩時間として利用させてもらおう。

そう思って朝から入りかけていた夢の世界へ、重い瞼を閉じて片脚をつっこうもとしていた時、自分がうらやむ可愛らしい声の持ち主が表れた。


クリスタ「あ、アニ!休憩中?見てみて、私結構慣れて来て、ここまで使えるようになったよ」

そう言いながら木々の間を飛びぬけ、私のいる場所を追い越そうとしている。
私はそれをぼんやり見ながら次の瞬間慌てて眼を見開いた。

クリスタが向かうその方向、その先に森は無い。

途中で途切れてしまっている。
崖だ。

アニ「!ばか、そっちは・・・!」

クリスタ「え?あれ・・・?」

声をかけても間に合わない。ようやく気付いたクリスタがワイヤーを飛ばした方向には木々は無く、そこは開けていた。

下を見れば、さらに低く落ちたところに森の続きがある。
飛ばしたワイヤーが固定される場所は無い。

あとは、落ちるだけだ。


クリスタ「え、やだっ!お、落ちる!」

推進力を失い、重力に従い落ちていくクリスタ。
気がついたら体が動いていた。

アニ「・・・くっ!」

クリスタ「アニ!」

大木を飛び降りがけ下へと飛ぶ。
クリスタの落ちていくほうへ手を伸ばし、彼女の服を掴んだところで、一気にワイヤーを崖へと食い込ませた。

片手でワイヤーを支え、もう片方の手でクリスタを抱える。

間にあった。

クリスタ「アニ・・・、ありがとう」

アニ「今引き上げる」


クリスタを抱える腕に力を入れ、話さないようにしっかり抱えた後、一度ワイヤーを崖からに抜いて、多少落下しながらさらに壁の上方へワイヤーを差し込む。
そんなことを繰り返しながら少しずつ崖を上がっていく。

クリスタ「ごめんね、アニ、ごめんね」

アニ「黙って…」

そろそろクリスタを抱えている腕が限界だった。

崖を登り切るにはあと少し。
持ちこたえられる自信はある。

だけど、一つ不安な事があった。

ワイヤーの先、崖に食い込ませている部分が嫌な音をさせている。
二人分の体重が掛かっているといっても、大の男に比べたら全然軽いはず。

アニ(あと少し、持ってよ)

そう思い、ワイヤーを外し、再度崖に食い込ませようとする。

ガキン!!

最悪の予想がまさにその通りになった。

ワイヤーの先がかけ、崖にワイヤーが食い込むことなくそのまま重力従い落ちていく。

当然、私達の体も落ちようとしていた。


アニ「ぐっ!」

クリスタ「え!?きゃぁああああ」

疲れ切った腕を出来る限り前に突き出し、抱えた体を宙へ放り投げた。

アニ(届け!!!!)

宙に浮いたカリーナはなんとかぎりぎり崖の上まで放りあげられ、そのまま草の上に転がり落ちた。
私も結構な怪力だ。

落下していく感覚を感じながら、呑気にそんなことを考えていた。

クリスタ「あ、アニ、アニぃいいいい!!」

段々小さくなっていくクリスタが声を挙げて私を呼んでいた。

私は来る衝撃に耐える為、体の一部を硬化して、硬く目を閉じた。


・・・・。

痛い。

そこらじゅうが痛い。

重い瞼をこじ開けると、そこはどうやら木の上だった。

結構な高さから落ちたとは思ったけど、どうやら死ななかったようだ。

下が森で木々が広がっていた為か、それがクッションとなったおかげか、硬化したおかげか、わからにけどとりあえず助かった。
いや、ここで死ぬわけにはいかないんだけど。

自分がまさか他人の為にこんなことをするなんて、自分で驚いている。

とりあえず、起きて戻らなきゃ。

アニ「・・・・っ、つぅ・・・・」


身体を起こそうとまず腕を動かそうとしたが、激しい痛みが走る。

目を向ければ体中切り傷だらけ、白いパーカーにはいたるところで血がにじんでいた。

アニ(肋骨と、左肩、左脚も折れてるなこれ。)

怪しまれないように切り傷なんかはとりあえず残して、他の骨折は直しておこう。
そう思いまずは足に集中して折れた骨を再生させていく。
続いて左肩へと意識を向ける。

だけど体中が痛んで中々集中できず、疲労も強くなっていく。

なんとか左肩を修復し終えたけど、このまま続けて肋骨を再生するのは難しかった。

とりあえず良しとして、ゆっくりと体を起こす。
息を吸う、吐くだけでも結構響く。
だけどここは我慢だ。


アニ「どうやって戻ろう・・・」

あたりを見回しても当然木々が生い茂っているだけ、何もない。

戻るには取り敢えず落ちてきた崖の上にいかなければならないのだけど、今の立体起動ではこのがけは昇れない。
ワイヤーが固定出来ないのだから。

崖を迂回してどこか上に上がれるところを探すか、もしくは身一つでこの崖を登るか…。

後者は間違いなくないか。
自分で考えながらもすぐに自分で結論を出す。

迂回するのもそびえたつ崖が一続きにはるか彼方まで続くのを見ると、今の身体機能では現実的ではない。

ここまで

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