海未「ずっと傍に、いますからね」 (52)

ラブライブSSです。


ここでは初めての投稿になります。

※アニメ基準ですがところどころSIDやらオリジナルやらです
※書きためです
※百合です

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1402056440

私が作詞をして、真姫が作曲をする。
それが始まりで、それが日常で今。

音楽室で一緒に新曲の打ち合わせをしながら、ふと考えていました。
真姫の細くしなやかな指が鍵盤をたたく。
その力は美しい音となって室内にこだまします。

その動作のひとつひとつに、つい見魅ってしまいます。

真姫「~♪」

可愛らしく微笑みながら口ずさむその姿に、私の胸は高鳴ります。

そう、私は――

私は真姫が好きなのです。

真姫「…ふぅ、こんなイメージでどうかしら?」

海未「ええ、とてもいいと思いますよ。さすが真姫です」

真姫「と、当然でしょ!///」

真姫は顔を赤くして目を背ける。

海未「真姫はすごいですね。私の詩を、言葉の集まりを、形ある美しい
   歌にしてしまうんですから」

真姫「もう、褒めたって何も出ないわよ///」

そのまま俯いてしまう。
こんなところも彼女のかわいさだと思うのです。

真姫「でも、私には海未の方がすごいと思うわよ」

海未「私が、ですか?」

真姫「そうよ。こんなにキラキラしてて、なんていうのかしら、言葉が
   生きているっていう感じがするものなんて、そうそう書けるもの
   じゃないわよ」

カタン、とピアノを片づける音が室内にこだまする。

真姫「海未の詩ってとても素直だから、作曲もイメージがわきやすいのよ。」

海未「…そうストレートに褒められると照れますね」

真姫「さっきのお返しよ」

そういって二人でクスクス、と笑いあいました。
この暖かい時間がとても好きです。
穂乃果やことりといる時間も好きですが、それとは違う、
もっと胸の内側を暖かく、くすぐるような時間。


真姫「さ、みんなのところへ戻りましょ。打ち合わせもあるんだし」
海未「…ええ、行きましょうか」

ガチャン

鍵の音とともに音楽室の扉が閉ざされる。
その音で何かが閉ざされたようになり、少しだけ表情が曇る。

音楽室は、真姫を独占できる唯一の場所。
接点の少ないな私が、理由なく真姫と過ごせる場所。

またそこが閉ざされてしまう、と考えるとやはりさびしいものです。

真姫「…海未?」

表情の曇りを察したのか、声のトーンが下がったのを感じたからでしょうか、
真姫が心配そうに顔を覗き込んできます。


海未「あ…すみません。少し考え事をしていました。」

真姫「歌詞のこと?それなら大丈夫よ」

自信を持ちなさいと言わんばかりに肩をたたく。

真姫「私、海未の歌詞、好きだもの」

海未「…!」

どくん、と心臓が高鳴った。
わかっています、わかっているのです。
真姫は私の「詩」を好きだと言ってくれたのに過ぎません。

そうわかっているのに、真姫の「好き」という言葉が頭から離れない。
どうしようもないくらい舞い上がってしまいます。

海未「ふふ…ありがとうございます」

とにかく冷静を装い、いつもの私を装い、自然に返事をします。

真姫「それに、あんまり貯め込むんじゃないわよ?
   相談だっていつでも聞いてあげるんだから」

海未「真姫は優しいですね、きっといいお嫁さんになれますよ」

真姫「な、何いってんのよ!もう!///」

真姫はまた顔を真っ赤にして廊下をスタスタと歩いて行ってしまった

もしかしたら、今のタイミングは告白の絶好のチャンスだったのでは…?
いや、告白などという大それたこと、私にはできませんね。

無粋な考えは捨て、私も真姫の後に続いた。


「真姫は…私のこと、どう思っているのでしょうか…?」

ぽつりと、床に濁って映る自分の影に問いかけてみました。

~~~~~~~~~

初めて歌詞を読んだときから、理由は分からないけど
胸が熱くなった気がした。

どこまでもまっすぐで、直接胸の中に飛び込んでくるようなー
それでいてさわやかで気持ちがいい。

だからμ'sに惹かれて、入ることにした。

そしてそんな歌詞を書く彼女のことが気になった。
園田海未――

それが彼女の名前。

凛としていて、まっすぐで真剣で。
先輩後輩というものを語れるほどではないが、理想の先輩像があるのなら、
それは間違いなく海未だろう

はじまりはそんな憧憬だったのかもしれない。
気がつくとそれは、その先にあるまた別の感情へとすり替わった。


いつも眺めていたい思いは、話をしてみたいという思いになり、
話をすれば、もっと一緒にいたいという思いになり、そしていつの間にか、

愛しているという思いに置き換わっていた。

海未「真姫、今回の歌詞はこんな感じなのですが…」

真姫「ふうん、今回はこういう路線なのね」

海未「ええ…いけなかったでしょうか…?」

真姫「そんなこと言ってないでしょ?いいと思うわ」

こうして音楽室で二人で作業をするのもお決まりだ。
海未が作ってきた歌詞を、私のイメージでふくらませた曲に乗せていく。
一つ一つ気になるところがあれば二人で手直しを加えていく。

海未「ここのフレーズはやっぱり…」
真姫「それならここで強弱をつけて…」

二人で何かをするという時間が、こんなにも暖かく愛おしいものだと、
最近になるまで知らなかった。
できることなら、このまま時が止まって欲しいとさえ思う。

海未「…っと、そろそろいい時間ですね」

時計に目をやると、だいぶ時間も経っていた。

真姫「そうね、今日は結構いい感じに進んだわね」

名残惜しさを振り払うように、悟られぬように目をつむり伸びをする。


海未「…真姫はすごいですね。私の詩を、言葉の集まりを、
   形ある美しい歌にしてしまうんですから」

海未はいつも恥ずかしいくらいまっすぐに人を褒めるときがある。

真姫「もう、褒めたって何も出ないわよ///」

真姫「でも、私には海未の方がすごいと思うわよ」

海未「私が…ですか?」

真姫「そうよ。こんなにキラキラしてて、なんていうのかしら…
   言葉が生きているっていう感じがするものなんて、そうそう書ける
   ものじゃないわよ」

私にはないその素直さ。それがとても羨ましくて、眩しい。

真姫「海未の詩ってとても素直だから、作曲もイメージがわきやすいのよ。」

海未「…そうストレートに褒められると照れますね///」

他人を褒めるときはなんとも思っていないのに、いざ自分が褒められると
照れて真っ赤になってしまう。
海未はとてもかわいらしい女の子だ。

真姫「ふふ、さっきのお返しよ」

いたずらっぽく笑って部屋を後にする。

真姫「さ、みんなのところへ戻りましょ。打ち合わせもあるんだし」
海未「ええ、行きましょうか」

ガチャン

音楽室の扉を締める。
きっと次に海未とふたりきりになれるのはこの扉が開かれるとき。
それまでは、また海未と、この温かい時間とも離れ離れだ。
そんな悲しい思いを振り払い振り返る。

真姫「海未?」

夕日に照らされた横顔は、物憂げで儚げで、グランドに落ちていく夕日とともに
沈んでいってしまいそうだった。

海未「あ…すみません。少し考え事をしていました。」

とても深刻そうな顔をしていたことくらい、鈍感な私だってわかる。
でもきっと、強情な海未のことだ、答えてはくれないだろう。

真姫「…歌詞のこと?それなら大丈夫よ」

あえて話題を反らすことにした。見当違いであることくらいわかっているが、
その領域にあえて踏み込むことが、今の私には出来なかった。

真姫「私、海未の歌詞、好きだもの」

海未「…!」

刹那、海未の顔が強張った。
しかし、次のまばたきが終わる頃にはいつもの海未の顔がそこにはあった。

海未「ふふ…ありがとうございます」

なにかまずいことを言ってしまっただろうか…。
言い終えてから、自分の口からこぼれた「好き」という言葉に後悔した。

もしかして…悟られてしまったの…?

しかしそれも考え過ぎだろう、と思い、忘れることにした。

真姫「そ、それに、あんまり貯め込むんじゃないわよ?
   相談だっていつでも聞いてあげるんだから」

海未「…真姫はやさしいですね、きっといいお嫁さんになれますよ」

真姫「な、何いってんのよ!もう!///」

突然の海未の予想外の言葉に困惑してしまった。

「お嫁さん」

それなら、海未のお嫁さんがいいかな、なんてチラリと考えてしまい、また顔が
熱くなる。

真姫「さ、先に行くわよ!」

こんな顔、恥ずかしくて海未になんて見せられない!
というか、海未の顔を見られない。

海未「ま、待ってください真姫!」


私は海未のことが好き。どうしようもないくらい好き。
でも臆病な私は、それを言えずに、胸の中に仕舞いこむことしかできない。

~~~~~~~~~~

絵里「あら、海未じゃない」

海未「絵里、ごきげんよう」

ある日の放課後、私は生徒会室へ用足しに行く途中、絵里に声を掛けられました。
今日はμ'sの練習もお休みです。

絵里「一人だなんて珍しいわね、穂乃果とことりは?」

海未「二人でクレープを食べに行きましたよ。今日は久々のお休みですし」

絵里「海未は一緒に行かなかったの?」

海未「すこし生徒会のことで片付けておきたいことが有りましたし…その…」

海未「二人の時間を邪魔してしまうのも気が引けて…」ハハ

絵里「…ああ、なるほどね…」ハラショー

穂乃果とことりはどうやら付き合っているようなのだ。
本人から直接聞いたわけではないですが、当人たち以外は皆感づいています。

海未「あれだけ一緒にいればバレバレでしょうに…。二人とも鈍感なんですから」ハァ

絵里「そうね…でもまぁ微笑ましいじゃない」

絵里「それに」

海未「?」

絵里「こっちも相当鈍感だと思うけどね」クスッ

海未「何のことでしょうか?」

絵里「いえ、こっちの話よ。それなら、私もせっかくだから手伝うわよ?
   二人でやれば早く終わるし!」

海未「え?それは悪いですよ!絵里にも予定があるでしょうし…」

絵里「予定なんか無いわよ。それに、海未とおしゃべりもしたいなって思ってね?」

海未「はあ…。それなら好意を無下にするのも失礼ですし、お願いしてもよろしい
   ですか?」

絵里「ええ、もちろんよ。さ、行きましょ!」

海未「ちょ、え、絵里!腕を引っ張らないでください!」

タッタッタ...

海未「ふう、絵里のおかげでずいぶん早く終わりました」

絵里「そう言ってくれるとうれしいわ。まだ生徒会になって日も浅いのに、
   慣れたものね」

海未「いえ、まだまだですよ。すみません、放課後を使わせてしまって…」

デコピン

海未「いたっ!?何をするのですか、絵里?!」ウルウル

絵里「そういうことは言わないの。私が好きでやってるんだから」

海未「ですがやはり…」

絵里「あなたのまじめなところはいいところでもあるけれど、もう少し仲間を、
   私たちを頼ってもいいんじゃないかしら?」

海未「絵里…」

絵里「それに…その…好きなんだから…」ゴニョゴニョ

海未「え?なんですか?」

絵里「…なんでもないわ。さ、私たちも帰りましょ」

最後になんと言ったのかは聞き取れませんでしたが、絵里も楽しんでくれたみたい
で、ホッとしました。
絵里は頼れる先輩ですね。

~~~~~~~~~~~~

真姫「ふぅ…久々に疲れたわね…」

特にすることもなかった放課後、私は図書館で自習をしていた。
今のところ勉強で詰まっているところはなくても、この前みたいに
ひどい点数を取ってしまうことは避けたい。


真紀(あの時の海未…かっこよかったな…)

いつぞやの、自宅に8人が押し掛けてきた時のことを思い出して、
じんわりと温かい気持ちになる。

放課後の喧騒も落ち着きを取り戻し、いくつかの部活が帰宅用意をする時間帯。
赤く夕日に照らされるグラウンドの中を、ゆっくりと歩く。


「でも、本当に助かりました。私ひとりでは悩んでしまうところも…」
「そうかしら?私の手助けなんかなくても大丈夫そうだったわよ?」


真姫(ん?この声は海未…?)


逆光の校門へ目を向けると、そこには海未の姿があった。
そしてその隣には、見間違うことのない金髪にポニーテール。

真姫(絵里と一緒なのね。…なんの話をしているのかしら?)

何の気なしに聞き耳を立てる自分がいた。

海未「穂乃果もことりもまだまだ慣れていませんし、私も完壁ではないので、
生徒会経験者の絵里がいてくれて本当に助かっています」

絵里「海未にそう言ってもらえると嬉しいわ♪」

海未「この件に関しては相談できる相手が限られていますからね。頼りになります。」

絵里「生徒会のことだけじゃなく、頼ってくれていいのよ?」


真姫「……」

あんなに嬉しそうな海未の姿なんて初めて見た。
頼りになる、なんて海未に言われたこともない。


絵里「ねぇ、せっかくだから少し寄り道していきましょ?」

海未「仮にも元生徒会長の言う言葉ではないですよ?」

絵里「細かいことはいいの。今日のお礼だと思って付き合いなさい」ギュッ

海未「あ、もう…。わかりましたから引っ張らないでください」

真姫「あ…」

ズキン

絵里と海未が手をつないでいるのを見て、どこかが痛くなった。
私はまだ…手をつないだことなんてないのに…。

「まだ」?

じゃあそれはいつかつなぐの?どうやって…?

真姫「…何バカなこと考えてるのかしら。別に海未が誰と一緒にいようが…
   関係ないじゃない」

どれくらいの間そこに立ちつくしていたのか、あたりは夜の色に変わりつつあった。

真姫「帰ろ…」


勝手に嫉妬して勝手にイライラして、結局自己嫌悪に陥る私の悪い癖。
そんな自分が大嫌い…

~~~~~~~~~~~~

翌日は、なんだか頭が重かった。
あの後帰宅して、ご飯も食べずに布団に倒れ込み、そのまま寝てしまった。

とりあえずシャワーを浴びて、学校に行かなくちゃ。



凛「おっはよー!まきちゃーん!」

花陽「おはよう、真姫ちゃん」

真姫「…おはよう」

凛「まきちゃん、どうかしたにゃ?なんだか顔色悪いよ?」

凛がタタタツと近寄ってきておでこに手を当てる。

凛「なんだか熱っぽいよ?保健室行く?」

真姫「大丈夫、少し寝不足なだけよ。」

心配そうな凛ちゃんの手を軽くどける

花陽「でも、無理はしちゃダメだよ?」

真姫「ええ、ありがとう、花陽、凛」


これでも大病院の娘なのだ。自分の体調くらいは管理できている。
…はずだ。

とはいえその日の練習はやはりというか、想像通りというか、全然うまくいか
なかった。

海未「真姫、今日は全体的に動きが鈍かったですよ?
   もしかして体調でも悪いのですか…?」

海未がそっと手を伸ばしてくる。

真紀「…っ!大丈夫よ!」

パシン
乾いた音が屋上にこだました。


真姫「あ…」

しまった、と思った時には遅く、思わず強く、海未の手を、愛しいはずの手を
払いのけてしまった。

海未「…真姫…」

真姫「……今日は先に帰るわ」

海未や他のメンバーの声が聞こえたが、そのまま扉を閉めた。
今はその、海未の優しさに触れる資格なんて、私にはない。

~~~~~~~~~~

絵里「海未、真姫と何かあったの?」

海未「いえ…まったく身に覚えが…」

真姫にはじかれた手の熱さをじっと眺めながらため息をついた。


凛「まきちゃん、朝からなんだか様子がおかしかったにゃ」

海未「そうですか…」

じわりと涙が出そうになる…。真姫の心配もあるが、なによりも、真姫に拒絶
されたという事実が、胸を締め付ける。

穂乃果「だ、大丈夫だよ、海未ちゃん。ちょっと体調が悪くて
    きつくあたっちゃっただけだよ」

ことり「そうだよ、二人とも普段は仲良しなんだもん」

幼馴染二人が駆け寄ってきて慰めてくれる。

海未「穂乃果、ことり…。そうだといいのですが…」


その日はとりあえず解散になった。
本当なら真姫に会いに行きたいが、今はそっとしておいた方がいいと皆が言うのと、
私自身、また拒絶されてしまうことが怖かったのでおとなしく帰ることにした。


ことり「海未ちゃん…あんまり落ち込まないで、ね?」

海未「ありがとうございます…ことり」


海未「では、私はここで。」

穂乃果「ばいばい、海未ちゃん」

ことり「また明日ー」

穂乃果たちと別れ、家に向かう途中、もやもやを抱えたまま家の敷居をまたぐのは
どうも気がひけたので、近辺を散歩しようと思いました。

~~~~~~~~~~~~~~~

学校を出たはいいが、なんだかまっすぐ帰る気にもなれず、近くの公園でボーっと
空を眺めていた。

真姫「はぁ…なにやってんだろ…」

あんなに強く手を払う気なんてなかった。自分が落ち込んでイライラしてて…
それだけなのに。それだけのことで、海未を傷つけてしまった。その事実が憎くて、
そんなことをしてしまった自分自身がもっと憎くて…

ピト

真姫「ひゃぁっ!」

突然ほっぺたに冷たい感触。

あわてて振り向くと、両手に缶ジュースを持っていたずらっぽい顔を浮かべた…

にこ「真姫ちゃん、偶然にこー」

真姫「にこちゃん…」

真姫「…両手に缶ジュースもってて偶然だなんて不思議ね。一人で
飲むつもりだったの?」

にこ「な!?こ、こ、これはその…妹たちにあげる分だったの!」

きっと学校から心配してついてきてくれたのだろう。

真姫「それならこんなとこで油売ってちゃいけないじゃない?」

にこ「なんだかお悩みの真姫ちゃんを見つけたスーパーアイドルにこにーはぁ、
   特別に悩み相談をしてあげようと思ったの♪」

よいしょ、と私の隣に座る。

にこ「で、海未となんかあったの?」

ジュースを渡しながらまじめな顔で聞いてくる。

真姫「ありがと…。別に海未とは何もないわよ」

にこ「嘘。真姫ちゃんは嘘つくとすぐわかるもの」

全部、にこちゃんにはお見通しってわけね…


真姫「…見ちゃったのよ。」

にこ「見た?」

真姫「海未ちゃんと絵里が楽しそうに話をしてて、手をつないで歩い
   てるのを」

にこ「お、女の子同士なら別によくあることでしょ?それに見間違い
   かもしれないし…」

にこ(絵里…なにやってんのよアンタ…)

真姫「そうよね…女の子同士なら普通のことだし、そういうのじゃないかもって
   わかってるのに…なんだか胸が苦しくて…」

気がつくと、ぼろぼろと目から熱いものがこぼれていた。

真姫「自分でもどうしようもないくらい好きなの!最近までこんな気持ち、
   知らなかった…。」

にこ「……」

真姫「絵里は生徒会長だったから…頼れるのもわかる。それに私なんかよりも
   ずっとスタイルもいいし美人だし…海未とのつながりも近いし…
   仕方ないのかなって思っちゃうじゃない…!」

にこ「…そんなに海未のこと好きだったのね」

ぎゅっ

真姫「!?にこちゃん…?」

にこちゃんが私を抱きしめた。小さい体でもいっぱいに。

にこ「そんなに想われてる海未は幸せ者ね」

真姫「…きっと迷惑なだけよ」

にこ「にこだったら…嬉しいな」

真姫「え?」

きゅっと少し抱きしめる力が強くなる。

にこ「…私ね、真姫ちゃんのこと、好きだよ?」

真姫「…私だって…」

にこ「1人の女の子として、だよ?」

真姫「え…?」

にこ「真姫ちゃんが海未ちゃんを好きだってこと、ずっと知ってた。
   それを応援したいって気持ちもあるよ。でもね、やっぱり好きなの。」

ふるふるとにこちゃんが震えている。
がさがさと木々が揺れる音がする。
風が強いのだろうか…。私の心を感じ取ったみたいに。

にこ「こんなときに言うのはルール違反だってわかってた…でも」

にこ「言わないで後悔するなら、全部言ってしまったほうがいいから」

真姫「にこちゃん…」

にこ「真姫ちゃん…大好きです。私と付き合ってくれませんか…?」

思いもよらないことだった。にこちゃんにこんなに想われていて、
こんな風に思いを告げられるなんて…
そしてこんなにも、もしかしたら私以上に苦しい思いをしてきたのかもしれない…


にこちゃんはとても大切な人。
見栄っ張りで元気良くて、誰よりもアイドルに本気で…。

にこちゃんだけじゃない、μ'sのみんながかけがえのない大切な人
だけど…

真姫「…………ごめん、なさい」

真姫「にこちゃんのことも好きだけど…私にはその思いにこたえられないよ…」

にこ「……うん、そっか。そうだよね」

一瞬、翳りを見せた表情も、ギュッと目をつぶるとすぐに明るくなって

にこ「わかってたわよ。真姫ちゃんが海未ちゃんのことしか見てないって
   ことくらい」

私から離れてくるっと反対を向く

にこ「これでにこも、真姫ちゃんのこと応援できる」

真姫「…にこちゃん」

嘘だ。空元気に決まっている。

にこ「さ、私は言ったんだから、今度は真姫ちゃんの番よ!」

再びこちらを向いたにこちゃんの目はとても力強かった。

にこ「真姫ちゃん!海未ちゃんに告白してきなさい」

真姫「うぇぇ!?なんんでそうなるのよ!」

にこ「だってそんなことで抱え込んで苦しくなるんなら、打ち明けちゃった方が
   いいじゃない。…にこみたいにさ」

真姫「でも…やっぱり…」

にこ「あぁもう!明日にでも海未のとこ行ってらっしゃい!」

ばん!と背中をたたかれる。

にこ「応援、してるからね?スーパーアイドルにこにーをフッた分まで頑張りなさいよ!」

そういってほほ笑むと、にこちゃんは駈け出して行った。

ほんとは追いかけて行きたかったけど、それはおそらく優しさじゃない。
その意味を知っていたから、私は言葉を詰まらせ手を伸ばし、にこちゃんが
走って行った方を眺めることしかできなかった。

真姫「…意味分かんない」

頭の中が少しぐるぐるする。
でもさっきみたいに重くはない。
にこちゃんの言うようにそうするのが一番わかりやすくて正しい道なのかもしれない。

真姫「……そうね。こんなに悩むくらいなら…」


しばらく風に当たった後、私も帰路につくことにした。

~~~~~~~~~~~~~~~

海未「夜のこのあたりは、ずいぶん静かですね…」

夜風にあたって、すこし自分の心を落ち着かせるのに散歩に出ることにしました。

そういえばこのあたりに、昔何度か来た公園がありましたっけ。
少し寄ってみましょうか。

海未「…あれは…真姫…とにこ?どうしてこんなところに…?」

思わず植え込みに身を隠してしまう。
隠れる必要はないのですが、なんとなく普通の空気ではなかったので…。

真姫「……から……じゃない…!」

何を話しているのでしょうか…。ここでは聞き取れないですが、
きっとにこが真姫の相談に乗っているのでしょう。
…となると、あまり盗み聞きは感心できないですね、このまま帰りましょう。

海未「…え!?」

最後に一度振り返った時、にこが真姫を抱きしめるのが見えた。

海未「そんな…どうして…?」

二人は…恋人なのでしょうか。
考えてみれば、いつも二人で仲良く話していましたっけ…。

はは…舞い上がっていた自分が馬鹿みたいですね。


思わず目をつむり走り出して公園から逃げ出してしまいました。
少し植え込みに当たってしまったのでしょう、制服に葉っぱがついて
しまっていました。


どうやって家路をたどり、部屋まで戻ったのか、よく覚えていません。
私のいつもと違った様子に、母も心配していました。


そのまま夕食も取らず、制服のまま眠ってしまいました。

~~~~~~~~

海未母「海未さん、顔色が優れませんけど大丈夫ですか…?」

昨日の様子からか、母が心配そうに顔色をうかがいます。

海未「ご心配おかけして申し訳ございません。今朝はもう大丈夫です」

海未母「そう…無理はなさらないでね?」

今日は少し早めに家を出ることにしました。
穂乃果とことりにはメールで先に行くことを伝えました。

少し頭を整理したいという思いですが、本当は昨日見た事実から逃げたかった
だけなのかもしれません。

今日は、あまり真姫に会いたくない気分です。
こんなの…初めての感情です。


海未「…!?」

真姫「あ…その…おはよう」

扉をあけると、一番愛しくて、一番今会いたくない、綺麗な女の子がそこにいました。

海未「おはよう…ございます…。早いのですね…?」

時間はまだ6時を少し過ぎたところ。

海未「いつから…ここに?」

真姫「ほんの3、40分前よ」

そんなに長いことここで待っていたと考えると申し訳ない気持ちでいっぱいに
なってしまいます。

海未「何か私に用があるのでしょう?少し、歩きながら話しましょうか」

無言で真姫はうなずくと、二人で歩き始めた。

海未「……」

真姫「……」

二人とも無言のまま、何とも言えない空気を纏い、気がつけば学校に、
いつもの部室へと来ていました。

まだ6時半。誰も来るはずもない。いつも活気があって賑やかな部室も、今はただ、
静かに眠っているだけです。


海未「…真姫」

沈黙を破ったのは私の方でした。


海未「真姫に聞きたいことが有ります」

真姫「聞きたいこと…?」

昨日から散々悩んで、頭がぐるぐるして重かったのですが、きっと私の頭では
どれだけ悩んでも答えは出ないでしょう。
それならば、いっそ全て白日の下に晒してしまった方がいいのではないか、と
歩きながら考えていたのです。

海未「真姫は…」

ゴクリ、と喉が鳴る。

海未「真姫はにことその…お付き合いしているのですか?」

真姫「うぇぇ?な、なんでよ!?」

海未「…実は…その…昨日の夜に公園で二人が抱き合っているのを見てしまいまして…」

真姫「見、見てたの!?」

海未「その…覗くつもりはなかったのですが、真希の姿が遠目に見えたので…つい…」

真姫(あれ見られてたの!?マズイ…非常にマズイわ…!告白も聞かれてたのかしら…)

真姫「あ…あれはその…にこちゃんに悩み相談してたら、にこちゃんが慰めてくれたのよ!」

真姫「別に私はにこちゃんと付き合ってもないし、そういうのじゃないから!」アセアセ

海未「そうだったのですか…。何を言っているかまでは聞き取れなかったもので…」

真姫「そ、そう…ならいいのだけれど…」

真姫(よかったぁぁぁぁ…聞かれてなかったのね)

海未「では今は真姫にはお付き合いをしている方はいないということですね?」

真姫「ええ、そうだけど」

海未「そうですか。それは安心しました。」

一呼吸置いて、真姫に向き合います。

海未「真姫、私と付き合っていただけませんか?」

真姫「」


真姫(…ん?今なんて言ったの…?聞き間違い??)

海未「私は真姫のことを好きです。愛しています。だからー」

海未「だから、私と付き合っていただけませんか?」

さっきよりもはっきりと、にその思いを告げました。

真姫「……」

真姫は俯いたまま何も言いません。

海未「あの…えっと…ダメ……でしたか?」

真姫「うわああああああああああああああああああああん!!」

海未「え、えぇ?」

突然真姫は泣き出してしまいました。泣くほど嫌だったのでしょうか…?

真姫「ばかばかばかばか!!!!」ポカポカ

海未「いたっ、いたいです、真姫!」

真姫「海未のばかああああああああああ!!!!うえええええええん!!!」

真姫はポカポカと私の胸を叩きながら大泣きしてしまいました…

海未「…落ち着きましたか?」

真姫「…うん」グズグズ

海未「ティッシュです。鼻を噛んだほうがよろしいかと…」

真姫「…ん」チーン

あれからしばらく泣きっぱなしで、なだめるのが大変でした。

真姫「私がね、昨日調子が悪かったのはね…」

そう言って真姫はぽつりぽつりと語り始めました。

真姫「一昨日の放課後に、海未が絵里と仲良く話しながら帰っているのを見てね…」

海未「見ていたのですね…」

真姫「おあいこでしょ」

フン、と鼻を鳴らし続けます。

真姫「それで、その…手をつないでるのを見て…」

真姫「絵里はスタイルもいいし、元生徒会長だから便りにもなるし、美人だし、
   私が勝てる所ひとつもなくて…」

真姫「お似合いだなぁ…って思っちゃって」

真姫「そしたらなんだか急に悲しくなってきて…」

海未「真姫…」

真姫「それでにこちゃんに相談したら、好きなんだって告白すればいいって言われ
   たのよ」

海未「…はい?」

真姫「だから一晩悩んだの。全然寝付けなかったわ。」

真姫「それで決心がついたから、海未に告白しようって家を出てきたの」

だからあんなに早く家の前にいたのですね。

真姫「それなのに、それなのに!!」

ブワッとまた真姫が涙目になってこちらを見ました。

真姫「なんで海未のほうが先に告白してくるのよ!!もう!!」

海未「えぇ!?なぜ私が怒られるのですか!一世一代の告白だったのですよ?」

真姫「こっちだってそのつもりで来たのよ!」

おたがい「むー」と言いたげな表情で対峙していると、真姫が俯いて言いました。

真姫「じゃあ…やり直しする」

真姫「私が言いたかったんだから、私からさせてよ」

海未「ですが、私の告白の返事をもらってからでは?」

真姫「それじゃやり直しにならないじゃないの!」

海未「はぁ…仕方ないですね。いいですよ」ハァ

こういう押しに私はとても弱いのです。

真姫「海未、私ね。」

すぅ、と息を大きく吸い込む。

真姫「海未のことが大好き」

真姫「独占欲が強くて、素直じゃないこんな私だけど…」

真姫「どうか、どうかそばに居てください」

私に思いのすべてを、等身大のまま、真姫らしく伝えてくれました。
顔が真っ赤で、小刻みに震えているのを見ると、本当に精一杯伝えてくれたみたい
です。

私だって、立っている足ががくがくして、胸が破裂しそうなくらいなのですから、
真姫はもっとすごい状態でしょう。

海未「真姫…ありがとうございます。すごく、すごく嬉しいです」

声が震えて、ほろりと涙が落ちました。

海未「はい…ずっと、傍に居させてください」


そのあとは二人で抱き合ってわんわん泣いてしまいました。
ふたりとも両思いだったのなら、もっと早くにいえばよかったなどと言い、
笑いあいました。

真姫「ねぇ、海未?」

海未「はい、何でしょう?」

真姫「私達、恋人なのよね?」

海未「ええ、そうですよ」

真姫「だったら、その…キ…」

海未「キ?」

真姫「キス…してもいいのよね?」

海未「き、き、き、キス???」

海未「破廉恥です!そんな、そういうことは高校を卒業するまで…」

真姫「ダメ…なの…?」

海未(う、上目遣いは卑怯です…)

海未「きょ、今日だけ特別ですよ///」

真姫「ん♪」

真姫が目を閉じて唇を突き出し、私がするのを待っています。

海未(か…可愛い…)

恐る恐る、真姫の唇に私の唇が近づいて…

チュッ

たった一回のキスに辿り着くまでにどれくらいの時間がかかって、唇が離れるまで
どれくらいかかったのか…
私にはとても長い時間に思えました。

真姫「///」

海未「///」


ふたりとも恥ずかしくてお互いの顔が見られません。



チョ、チョットオサナイデヨ
ホノカガウエカラノッテクルノヨ
エリチャンモットカガマナイトミエナイヨ


海未「ん?なんだか外が騒がしくないですか?」

真姫「そろそろ生徒も登校する時間だからじゃない?」


オ、オサナイデェ
バランスガクズレチャウ
ア、アブナイニコー

バァン!

海未真姫「「!!」」

部室の扉が勢い良く開いたと思ったら、μ'sのメンバー全員がなだれ込んできました


穂乃果「あいたたた~」

絵里「にこが押すからでしょう?」

にこ「だって見えないんだものしかたないじゃない!」

花陽「り、凛ちゃん…私潰れちゃうよぉ」

凛「あ、ごめんかよちーん」

希「欲張るからやで、にこっち」

ことり「穂乃果ちゃん大丈夫?」

真姫「あ、あ…あ…」

真っ赤になって固まる真姫

海未「あなたたち?」ギロッ

みんな「「あ」」

海未「どこから…見ていたのですか?」ゴゴゴ

穂乃果「え、えーと、『聞きたいことが有ります』あたり…?」エヘヘ…


海未「つまりはじめからということですね?」

ことり「う、海未ちゃん…?顔が怖いよ…?」

にこ「ほ、ほら、二人ともめでたく結ばれたわけなんだからよかったじゃない!」

にこ「私達はこれで」

ガシッ

海未「少し、お話しましょう、み・な・さ・ん?」ニッコリ

みんな「「いやあああああああ!!!」」


真姫「見…見られた…お嫁に行けない…」ブツブツ

そのあとみんなにたっぷりお説教をし、放課後の練習はいつもより厳しくしました。

でもまぁ、のぞき見はいけませんが、みんなが祝福してくれたわけですし。
真姫を普通の戻すのが大変でしたが、それでも今日はいい一日でした。


海未「真紀」

真姫「なに?」

海未「ずっと傍に、いますからね」



おわり

~~~~~~~~~~~~~~~~

おまけ

1ヶ月後――


あの騒動からはや一月、日常に戻り、いつもどおり私達は練習に励んでいました。

穂乃果「ふぅー、今日も練習疲れたぁ」

次のライブが近いこともあり、練習にも一層熱が入ります。

真姫「海未、はい、タオル」

海未「ありがとうございます、真姫」

にこ「見て下さいよ絢瀬さん、違和感なく夫婦のやりとりですよ」

絵里「お熱いですわねー」

真姫「もう、からかわないでよ」

などといつものようなやりとりをする毎日です。

にこ「でも海未ちゃんは奥手ではずかしがりやだもんねー。」

にこ「ちゃんと愛情表現してもらえてるのかなーって。にこ心配しちゃってー」

海未「に、にこ!」

真姫「そりゃあ最初の頃はそんなんだったけど、ちゃーんとしてもらってるわ」

にこ「なーんだ、何もないならにこにーに乗り換えても―って……へ?」

海未「真姫まで!何を言っているんですか!!」

穂乃果「あの恥ずかしがり屋の海未ちゃんがねぇ…」

ことり「成長だね♪」

絵里「で、二人はどこまで行ったのかしら?」ズイッ

真姫「どこまでってその…///」

穂乃果「絵里ちゃんそこ聞いちゃうの!?」ワクワク

にこ「なんか一気に雰囲気変わったわね」ハァ

真姫「い、一応…最後まで///」カァァ

みんな「……えええええええええええええええええ!!??」

穂乃果「さ、最後ってことは…その、セッ」

にこ「穂乃果!その先はスクールアイドルとして言ってはだめよ!」

海未「」カクン

ことり「海未ちゃんが倒れちゃった!」

絵里「恥ずかしさの限界を超えたのね…」ハラショー

希「スピリチュアルやね」

凛「す…すごいにゃ///」

花陽「真姫ちゃん…大人になっちゃったんだね…」

穂乃果「真姫ちゃん!そのあたりを詳しく!今後の参考に!」

真姫「な、なんなのよ…もう///」

ことり「なんか穂乃果ちゃんが壊れてる…」

キャーキャー

にこ「…そういえばあんたはこれでよかったの?」

絵里「何のことかしら?」

にこ「海未のことよ。好きだったのでしょう?」

絵里「あら、知ってたの?」

にこ「にこにーにはお見通しよ」

絵里「そうね、たぶんにこと一緒よ」

にこ「そっか」

絵里「それとも、あまりものどうし、仲良くする?」

にこ「にこはそんなに安い女じゃないわよ?」

にこ「まぁ…本気なら、考えてあげなくもないけどね」

希「ふぅん、うち抜きでなに面白そうな話しとるん?」

絵里にこ「「の、希!?」」

希「なにやら怪しげなふたりには…わしわしMAXやで~」ワシワシ

絵里にこ「いやあああああああ!!!」






穂乃果「やっと青春の始まり この快感をあげたい(意味深)」

ことり「ひどいオチだよぉ…」


\スナオニオーイカーケテー/

本当の終わり

最後までありがとうございました。


うみまきが好物なのですが案外SSが少ないので2年ぶりに筆をとりましたが…
やはり私にはSSの才は無いようでございました。

おとなしくロム専にもどります

もっとうみまきが増えることを祈っております(`・ω・)

html化ってどうやるんでしたっけ…?
依頼してきます。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom