【艦これ】多摩「こんな鎮守府すぐに出ていくにゃ!」 (1000)

・超亀更新です

・完結させたスレの設定をそのまま使ってます

・細かい部分は結構適当です

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1402048723






 ――男は、一人の艦娘に恋をした。




 艦娘、それは人類の希望であり、怨念と絶望から生まれた深海棲艦とは対となる存在。軍艦の魂が人々の矛と盾となる為、人であって人でない存在となったモノ。

 終わりの見えぬ戦いに、再び海へと還っていく無数の仲間達。彼女達の心は日々摩耗していき、彼女達を従える提督達もまた、憔悴しきっていた。

 ――だが、そんな日々に遂に終止符が打たれる。




提督「え? 終わったの?」

漣「はい、終わっちゃいやがりました」

提督「そうかぁ……終わったかぁ……って漣君解体されちゃうよ? 寂しくなるなぁ……」

漣「クソご主人様、不本意ながらこの数日間お世話になりました」

提督「うん、三日だけだったけど秘書艦ありがと。そもそもうちの鎮守府、君しか居ないけど」

漣「近日中には私を鎮魂の儀により解体する為に、大本営から解体者が派遣されます。それまで私は部屋に籠るので、一切近付かないでください」

提督「そっか、分かったよ」

漣「では、さようなら」

提督「うん、本当にありがとうね」

提督(提督になって三日で終わり、漣君ともお別れかぁ……何だかなぁ……)




 ――その後、一週間が経過するも、結局解体者が来ることは無かった。

?「……何時まで待たせるにゃ」

?「……お腹減ったクマ」

漣「解体の話が急に消えやがるとか、どうなってんですか大本営」

提督「何かマスコミが騒ぐからしないとかなんとか」

漣「説明も大本営も適当にも程がありやがります」

提督(……んー、何かを忘れているような気がするんだよなぁ……)

漣「それで、私はどうなるんですかクソご主人様」

提督「とりあえず待機だってさ、深海棲艦がまた現れたらよろしくって言われちゃった。ついでに鎮守府の運営資金と支払う給料はほとんどカットするから、維持費は各自で何とかしてくれーだって」

漣「はぁ!? どうしろってんですかそんなの! クソご主人様と二人で畑でも耕せってんですか!?」

提督「あはは、困ったね。たった二人で……二人?」

提督(――――あっ、思い出した)

提督「漣君、二人じゃなくて四人だったよ」

漣「頭でも打ちやがりましたか?」

提督「建造、妖精さんに頼んだんだった」

漣「一週間以上も放置とか何考えてんですか!?」

提督「ごめん、ちょっと迎えに行ってくる」

漣「とっとと行きやがって下さい!」

 ――工廠。

提督「妖精さん、この前頼んだ建造のことなん――」

?「ローリングクマサンダーアタック!」

提督「ぐほぁっ!?」

?「フシャァァァァァ!」

提督「痛い痛い痛い爪痛い噛むと痛いパンチ痛い!」

?「魚釣って焼いて飢えを凌いで意地になって待ってたら一週間も来ないとか何考えてんだクマ!」

?「あり得ないにゃ! マジで何考えてるにゃ!」

提督「ごめん、忘れて――」

?「クマソバット!」

?「タマアッパー!」

提督「へぶっ!?」

?「海に捨てるクマ」

?「そうするにゃ」

提督「待った待った、ちゃんと謝るから許してくれない?」

?「……荒巻鮭」

?「……本マグロ」

提督「いや、その、うちの鎮守府って今財政難――」

?「やっぱり捨てるクマ」

?「海に還るがいいにゃ」

提督「よし、分かった、なけなしの貯金叩いて買うから、ね?」

球磨「交渉成立クマ、球磨だクマ」

多摩「多摩にゃ」

提督「よろしくね。ところで多摩君」

多摩「にゃ?」




提督「僕と付き合ってくれないかな?」

漣「――で、結局海に投げ込まれて、どうにかこうにか戻って来たって訳ですか」

提督「いやはや面目ない。告白したけど断られちゃったよ」

漣「一週間放置からの告白とか、クソご主人様のルックスじゃ万に一つも可能性なんてあるわけないじゃないですか。そもそも私達は軍艦ですよ軍艦、告白するなら普通の人間にしてください、超大迷惑です」

提督「一目惚れしちゃったんだから仕方無いと思わない? それに、こうしてちゃんと会話して意志疎通出来てる訳だし、艦娘がどういう存在かとかは正直どうでもいいかな」

漣「正真正銘のクソご主人様ですね、そもそも形式的には部下である私達に告白するとか、パワハラアンドセクハラです。今すぐに捕まってきて下さい」

提督「やっぱり段階を踏んでいかないとダメなのかなぁ……」

漣「ちょっとは人の話を聞きやがりなさい!」

提督「え? 聞いてるよ? だから多摩君から好かれて、セクハラとパワハラにならなくする為にはどうすればいいか、真剣に考えてるんだ」

漣「そんなこと考える暇があったら私達が餓死しない為の方法を考えやがりなさい!」

提督「あっ忘れてた」

球磨「物凄く変な奴クマ」

多摩「しかも戦い終わってるらしいにゃ」

球磨「これからどうなっちゃうんだクマー……」

多摩「なるようになるにゃ、海で魚釣ったり捕ったりしながら生きていくにゃ」

球磨「いっそ違う鎮守府行きたいクマ、あんな提督は嫌だクマ」

多摩「荒巻鮭と本マグロ貰うまでの辛抱にゃ」

球磨「貰ったらとっととおさらばクマー」

多摩「提督なのをいいことに多摩にセクハラしてきたら、今度こそ簀巻きにして海に放り込んでやるにゃ」




 ――提督の第一印象は三人共から最低最悪。提督の多摩への恋は実るのか、鎮守府はどうなってしまうのか、漣の口調は普通に戻るのか、球磨は荒巻鮭を食べられるのか、ドタバタ鎮守府物語、始まります。

~キャラ設定~

提督→可もなく不可もなく、ルックスもスペックも中の中。提督になって三日で終戦を迎える。現在多摩に好かれる方法を考える片手間に、鎮守府をどう維持していくか悩んでいる。

漣→姉妹艦である曙以上に口が悪い。提督の事を好きではないが、一応一緒に鎮守府を維持していこうとあれこれ考えている。出撃はしたことないので練度はほぼゼロ。

球磨→建造されて多摩と共に一週間放置された。荒巻鮭を貰ったらさっさと出ていこうと考えている。得意技はローリングクマサンダーアタック。

多摩→建造されて球磨と共に一週間放置された。本マグロを貰ったら球磨と出ていこうと考えている。提督が近付くと威嚇する。得意技は乱れ引っ掻き。

~世界観設定~

・深海棲艦との戦いが終わった後の世界

・艦娘は人の姿を得た軍艦の魂

・建造は艦の魂を呼び起こし、資源で肉体を構成し定着させるというもの

・戦いが終われば艦娘達は全員解体(鎮魂の儀による消滅)されるはずだったが、それを望まない提督達の行動により阻止された

・艦娘は解体されずに済んだが、監視と行動制限という名目付きで、鎮守府での待機と運営維持費の大幅カットが各鎮守府に言い渡された(実際は全鎮守府を監視は出来ない為、街を艦娘がフラフラ出歩いている)

・基本的に街の人々から艦娘達は愛されている

後はその都度必要そうなら説明していきます

書き溜め投下は以上なので、次の更新はまた書き溜めが出来たらになります

浦風大好きな大鳳を書いてる人です、あっちはのんびり書きながらこっちも書きます

※多摩と球磨は鎮守府の宿舎に住むのを嫌がり、工廠前にテントを張って生活してます

~多摩へのアプローチ~

提督「多摩君、猫じゃらしは好き――」

多摩「フシャァァァァァ!」

提督「うーん……猫じゃらしは嫌いみたいだね」

多摩「多摩は猫じゃないにゃ」

提督「なら、このツナ缶はいらなかったかな」

多摩「ツナ缶食べたい……はっ!? その手には乗らないにゃ!」

提督「警戒されてるみたいだし、ここに置いとくから後で食べてね」

多摩「変な薬が入っている可能性があるにゃ」

提督「流石にそこまで信用されてないと、ちょっと泣きたくなるよ……」

~多摩へのアプローチ2~

提督「今日はお刺身だよ」

多摩「本マグロはどうしたんだにゃ」

提督「……もう少し待ってもらえないかな?」

多摩「待たないにゃ」

提督「じゃあこのお刺身は無駄になっちゃうね」

多摩「一週間だけ待ってやるからそれを置いて消えるにゃ」

提督「うん、ありがとう。じゃあまた」

多摩「――よし、球磨に毒味してもらうにゃ」

球磨「聞こえてるクマよー」

~多摩へのアプローチ3~

提督「今日はマタタビの枝で編んだボールを持ってきたよ」

多摩「猫じゃないって言ってるにゃ」

提督「それっ!」

多摩「にゃっ!――はっ!? 思わず飛び付いてしまったにゃ……」

球磨「球磨みたいに自分がクマって認めれば、多少のことには動じない――」

提督「今日は鮭の切り身も持ってきたんだ」

球磨「今すぐにそれを寄越すクマ! しゃーけ! しゃーけ!」

多摩「球磨も人の事言えないにゃ……多摩にもその鮭寄越すにゃ」

提督「人間用だから塩分多いけど、多摩君が食べて大丈夫なのかな……」

多摩「だから猫じゃないって言ってるにゃ!」

球磨「鮭はやっぱり美味いクマー」

~働きやがりなさい!~

提督「さて今日も多摩君のところに――」

漣「クソご主人様、ちょっとこっちを向きやがりなさい」

提督「何かな漣君、鯛を手に入れたから早く持っていきたいんだけど」

漣「鎮守府、財政難、お金、無い、OK?」

提督「うん、漣君の言いたいことは分かったよ。だからその単装砲を向けるのはやめてもらえない?」

漣「私が鎮守府を維持するにはどうすればいいか考えてる時に、惚れた相手のところに手土産持参で呑気に通うとか、本当に良いご身分ですねぇクソご主人様……さっさと何か打開策考えやがりなさい! っていうか働きやがりなさい!」

提督「そうだねぇ……魚を釣ったり捕ったりして売る?」

漣「早速活動を再開した漁業組合から文句言われますよ」

提督「そっかー……じゃあ案を一つ出した事だし、行ってくるね」

漣「何仕事しました感出してやがんですか、具体案が固まるまでこの部屋から逃がしませんよ」

提督「お手洗いはどうすればいいかな?」

漣「漏らしやがったら撃ちます」

提督「漣君もお手洗い――分かった、冗談だからその握った拳下ろそう、ね?」

漣「ぶっ飛ばす!」

提督「ぐほぁっ!?」

~来なかった~

多摩(今日は来なかったにゃ……)

球磨「多摩、魚焼けたクマ」

多摩「ちょっと冷ましてから食べる、このままじゃ熱いにゃ」

球磨「本当に猫舌クマねー」

多摩「猫じゃないにゃ」

球磨「マタタビボールで遊んでるのみたクマ」

多摩「……暇だっただけにゃ」

球磨「アイツの事、少し好きになったクマか?」

多摩「それは無いにゃ」

球磨「やっぱりそうクマよなー」

多摩「本マグロ貰ったらおさらばにゃ」

球磨「そろそろ一週間になるクマ、早く用意して欲しいもんだクマ」

多摩「……もういいかにゃ?」

球磨「多分冷めてるクマ」

多摩「はふっ……まだ熱かったにゃ、舌痛いにゃ……」

球磨「猫舌にも程があるクマよ」

~具体案~

提督「じゃあ当面は最初で最後の大本営から配給された食料と、魚と、近くの山から採れる山菜で食事は何とかする。鎮守府の一角に畑を耕して、出来たら食べる分を確保して販売。……後は街に出てアルバイト、かな」

漣「食べられる山菜なんて見分けられんですか?」

提督「うん、田舎育ちだから」

漣「畑も本当に作れんですか?」

提督「実家が農家だからね」

漣「アルバイトしてる事がバレたら、ヤバいなんてもんじゃないですよ?」

提督「生きる為には仕方無いよ、野菜がちゃんと育たなかったら一巻の終わりだし」

漣「一蓮托生で処罰は御免ですからね」

提督「何かあれば僕が責任を取るから大丈夫、漣君達には何も起きやしないさ」

漣「……一応具体案まとまりましたし、行っていいですよ」

提督「ホント? じゃあ早速行ってくるよ」

漣「はいはい、どうぞ好きにしやがって下さいよクソご主人様」

提督「今日は何を持っていこうかな……貝は耳が落ちるって聞くし、イカは腰が砕けるとかも聞くな……」

漣(抜けてはいるけど悪い人じゃあないんですよね……だから余計に始末に負えないんですが)

投下終了、今回はここまでです

少し投下します

~意外な才能~

提督「漣君、コレ今日のおかずね。多摩君達にも後で調理して持って行ってあげて」

漣「結構な量の山菜ですね……コレ、本当に全部食べられんですか? 適当に摘んで来てやがりませんか?」

提督「いらないならいいけど、ワラビとかゼンマイとか結構豊富にある山だったから、食べないと勿体無いよ? 山を所有してる人も良い人で、うちで食べる分ぐらいなら好きに取っていいって言ってくれたし」

漣「そういう交渉能力と行動力だけは凄いですね」

提督「出来ないことはやらないし、やれることはやるし、お願いしたいことはお願いする。普通じゃないかな?」

漣「……ちょっと見直しました。ほんのちょっとだけ」

提督「? 僕、見直されるようなこと、何かしたかな?」

漣「気にしやがらないで下さい、マイナス評価が少し減っただけの話ですから」

提督「そもそもの評価がゼロですらないんだね……」

~球磨多摩の夕食と就寝~

球磨「山菜の天ぷらに山菜ご飯、漣が持ってきてくれたクマ」

多摩「美味そうにゃ、たまには魚以外も食べたかったのにゃ」

球磨「冷めない内に食べるクマー」

多摩「冷ましてから食べるにゃ」

球磨「……冷めた天ぷらって美味しいクマか?」

多摩「ヒタヒタに天つゆ付けて食べたらきっと美味しいにゃ」

球磨「球磨は熱々を塩で食べるクマ」

多摩「ご飯はそこまで熱くないからこっちを先に食べるにゃ」

球磨「んー、魚以外も美味しいもんクマねー」

多摩「山菜ご飯も美味しいにゃ、漣は料理上手みたいにゃ」

球磨「あっ言い忘れてたクマ。この山菜はあの提督が採ってきたらしいクマ」

多摩「んにゃ!? 何でそれを先に言わないにゃ!」

球磨「言ったら食べないと思ったクマ」

多摩「変な薬でもかけられてたらどうしてくれるんだにゃ!」

球磨「大丈夫クマよ。あの提督バカだけど、そういう卑怯な方法を考えるようなタイプじゃなさそうクマ」

多摩「……それもそうにゃね」

球磨「ごちそうさまクマー」

多摩「多摩も食べ終わったにゃ」

球磨「さて、食べたらさっさと寝るクマ」

多摩「お休みなさいにゃ」




球磨「クー……マー……

多摩「すー……にゃー……」

」提督(デザート持ってきたけど、寝てるみたいだね。明日の朝にご飯持ってきてあげようかな)

~球磨多摩、起床~

球磨「んー?……朝クマか……多摩ー起きるクマよー」

多摩「多摩はまだ眠いにゃ……昼まで寝かせて欲しいにゃ……」

提督「――寝顔も可愛いんだね、多摩君は」

多摩「寝顔なんて褒められても嬉しく・・・・・・何で居るにゃ!?」

球磨「乙女二人の寝起きを襲うとかやっぱり変態だったクマか! 海まで蹴り飛ばしてやるクマ!」

提督「その爪と蹴り待った、朝食持ってきただけ、すぐに消えるからテントに顔突っ込んだのは許して。そもそも襲ったら嫌われるし、僕じゃ二人に勝てないよ」

球磨「この匂い……おかかのおにぎりと、魚のアラ汁クマね?」

多摩「良い匂いにゃ……」

提督「多摩君のは冷ましてあるから、すぐに食べられるよ。じゃあまたね」

球磨「――本当にご飯だけ置いて行ったクマ」

多摩「ちゃんと適温に冷ましてあるにゃ……」

球磨「とりあえず、食べるクマ」

多摩「いただきますにゃ」

球磨「おにぎり、美味いクマ」

多摩「アラ汁、美味しいにゃ」

球磨「……ここにいれば、食うには困らなそうだクマ」

多摩「そうにゃね」

球磨「出ていくの、ちょっと惜しい気もしてきたクマ」

多摩「……にゃ」

~荒巻鮭&本マグロ到着~

提督「ようやく届いたね。コレを手に入れる為に、コツコツ貯めてた昔のバイト代が全部無くなっちゃったよ……」

漣「本当にクソご主人様はバカですね。これから生活に困った時、どう切り抜けやがるつもりですか」

提督「なるようにしかならないさ。彼女達との約束の方が大事だしね」

漣「行き当たりばったりに巻き込まれる身にもなってくれませんかねぇ……」

提督「あーそうそう漣君、はいコレあげる」

漣「ちょっ、何なんですか、このバカみたいにデカい段ボール」

提督「好きそうだったから、それあげる。二人だけにあげるの不公平だし」

漣「――ウサギの巨大ぬいぐるみ……?」

提督「もうワンサイズ上があったんだけど、お金足りなくなっちゃってね……。良ければ受け取って、いらないなら捨てていいから。じゃあ僕は多摩君と球磨君にコレを渡してくるよ」

漣「あっ、コレ――行っちやがりました……」

漣(しっかしこのウサギ、ブサイクで可愛いげの欠片も無いですね。……でも、せっかくだから貰っといてあげます)

漣「――ありがとうございます、クソご主人様」

~念願の荒巻鮭と本マグロを手に入れたぞ!~

球磨「早く! 早くそれを寄越すクマ!」

多摩「でなきゃぶん殴ってでも奪い取るにゃ!」

提督「別に取り引きじゃないんだから、心配しなくてもあげるよ。でも、調理器具ないからここじゃ食べれないんじゃない?」

球磨「それなら漣に早速調理して貰うクマ!」

多摩「善は急げにゃ!」

提督「コレで最初に放置しちゃったのは少しでも――って行っちゃったか……まぁ喜んでくれたみたいだし、良かった良かった」




 ――漣、私室。

漣(どこに置くか迷いますね、コレ。ベッドが一番でしょうか)

球磨「漣! 漣!」

多摩「開けるにゃ! 居るのは分かってるにゃ!」

漣「球磨と多摩? ちょっと待ってください、すぐに開けますから――っ!?」

漣(鮭と鮪のドアップって強烈ですね……)

球磨「食べたいクマ!」

多摩「調理して欲しいにゃ!」

漣「コレを丸々ですか!?……仕方ありません、全部捌いて調理しまくりますから、ちゃんとキレイに食べて下さいよ?」

球磨「ノープロブレムクマ」

多摩「大丈夫にゃ、問題にゃい」

漣「じゃあ早速、徹底的にやっちまうのね!」




 ――結局、本当に丸々一匹を平らげた二人のお腹は、はち切れんばかりにパンパンに膨らんでいたそうな……。何はともあれ、約束はこうして果たされ、球磨と多摩が出ていくかどうかを決める瞬間が訪れるのだった。

投下終了、今回はここまでです

一区切りの部分まで書けたので投下します

~球磨&多摩、決断する~

球磨「多摩、どうするクマ?」

多摩「――やっぱり、出ていくにゃ」

球磨「……そうクマか、付き合うクマよ」

多摩「球磨はここを気に入ったなら残ってもいいにゃよ?」

球磨「球磨はコレでも多摩のお姉ちゃんだクマ、一緒に行くに決まってるクマよ」

多摩「うん、ありがとにゃ、球磨」

球磨「じゃあ漣と、一応あの提督にも挨拶して行くクマ」

多摩「……そうするにゃ」




 ――提督執務室。

漣「――そうですか、ここを出ていくんですね。でも、終戦を境に、鎮守府間の艦娘の異動は一切認められなくなっちまってますよ?」

球磨「そんなの初耳クマよ!?」

多摩「良く考えたら、戦いが終わったってことしか聞いてなかったにゃ……」

漣「月に一度、軍司令部から監査役が艦娘の数をチェックしに来ちゃいますし、居ないのバレたら捜索されて、絶対にここへ連れ戻されちまいます。――って訳で、大人しく諦めちまって下さい」

球磨「球磨達の決意は何だったんだクマー……」

多摩「……それなら、仕方にゃいにゃね」

球磨「何か意地張ってたのがバカらしくなるクマよ……」

多摩「――んにゃ? そういえば、アイツはどこ行ったにゃ?」

漣「あぁ、クソご主人様なら今頃は――」

~実は細マッチョ?~

 ――鎮守府のとある一画。

球磨「物凄く意外な光景クマ……」

多摩「タンクトップに短パンって提督としてどうなのにゃ……」

提督「――ん? 二人共どうかしたの? 畑なら今ちゃんと土を用意して耕してるから、心配ないよ」

球磨「コレ、一人で全部耕したクマか?」

提督「ははは、流石に協力してもらわなきゃ1アールも一気に耕せないよ。山菜のお礼に魚届けたら、山の所有者さんが畑耕すのも協力してくれたんだ」

多摩「ちゃっかりしてるにゃ……」

提督「ただお礼して、畑を今から耕すんですって世間話しただけだよ? 協力してくれるって言うなら断る理由もないし」

球磨「――って球磨達も世間話しに来たんじゃないクマ。球磨達はここから出ていけないって漣に聞いたクマ」

多摩「物凄く不本意にゃけど、これからもここで世話になるにゃ」

提督「えぇっ!? 出ていくつもりだったの!? 言ってくれれば旅の資金ぐらいは残しといたのに……」

球磨「何を言ってるクマか?」

多摩「多摩達はこの鎮守府から出られないって聞いたにゃ」




提督「何で? 普通に出られるよ?」

~うっかりの結果~

提督「漣君から何を言われたかは知らないけど、書類提出忘れてて、君達まだ軍の保有艦娘リストに登録されてないからね?」

球磨「……どういう意味クマ?」

提督「艤装外して普通にしてれば人間と変わんないし、何か犯罪を起こすか、艦娘に詳しい軍関係者にでも見付からない限り、どこ行っても大丈夫ってこと」

多摩「……それ、マジにゃ?」

提督「うん、本当なら君達をちゃんと登録しておかないと物資供給が減っちゃうから困るはずだったんだけど、終戦しちゃったからね」

球磨「じゃあ、球磨達は基本的に何しても自由クマか?」

提督「働いたり、部屋を借りたりするのはちょっと無理かな。でも、お金さえあれば野宿しながら旅ぐらいは出来るよ? だからちゃんと前もって言ってくれれば、お金残しといたのに……」

多摩「多摩達、そのまま違う鎮守府に転がり込んで帰って来ないつもりだったにゃよ?」

提督「それはちょっと寂しいから嫌だなぁ……でも、うちよりはよっぽど他の鎮守府の方が多摩君も幸せだろうし……うーん……」




多摩「――にゃふっ」

~スタートライン~

多摩「にゃはっ! にゃはははは!」

球磨「多摩、急に笑いだしてどうしたクマ?」

多摩「コイツ見てる分にはバカで面白いにゃ、ここに居たらきっと退屈はしないにゃ」

球磨「それは同意するクマ」

提督「えっと、これからも一緒に居てくれるって意味でいいのかな?」

多摩「三食昼寝付きが条件にゃ、それは絶対にゃ」

球磨「お金出来たらまた荒巻鮭も寄越すクマ」

提督「うん、分かった。それで君達がここに居てくれるなら、頑張るよ」

多摩「でも、多摩に触れたら簀巻きにして海に放り込むのは変わらないにゃ」

提督「うん、好かれる努力も怠らないから大丈夫」

球磨「諦めるって選択は無いクマか?」

提督「無いよ? だって出会った瞬間一目惚れしちゃったし、今はもっと好きになってるから」

多摩「……フシャァァァァァ!」

提督「痛い痛い痛い!?」

多摩「黙るにゃ! 口閉じるにゃ! さっさと畑耕すにゃ!」

提督「何にもしてないのに引っ掻くのは酷いよ多摩君――でも、爪とはいえ多摩君から触れてくれるのはちょっと嬉しいかも……」

球磨「お前やっぱり変態の素質もあるクマ」

多摩「変態は絶対にごめんにゃ! やっぱりこんな鎮守府、いつかは出ていってやるにゃあぁぁぁぁぁっ!」




 ようやく始まった、四人による鎮守府での共同生活。しかし、まだまだ提督と他の三人との関係は良好とは言い難いもの。――全ては、これからの彼次第である。

投下終了

ようやく好感度ゼロ、畑耕しながら多摩と距離縮めていきます

~球磨&多摩、部屋を宛がわれる~

提督「多摩君、球磨君、部屋の用意が出来たよ」

多摩「猫用グッズが何でこんなに大量にあるにゃ……」

球磨「木彫りのクマ、カッコイイクマー」

提督「近所の人に色々貰ってきたんだ。貰い物ばっかりでごめんね?」

多摩「ゴミ袋はどこにゃ、いらない物は全部捨てるにゃ」

球磨「クリスタルサーモン、キラキラでコレもいいクマねー」

提督「球磨君は気に入ったみたいだよ?」

多摩「優秀だと思ってた姉がちょっとバカにゃのが判明して、多摩は悲しいにゃ……」

球磨「バランスボール楽しいクマー」

~漣、私室でダラダラ中~

漣「最新刊キタコレ!」

漣(続きが気になってたんですよねー、前回は主人公が海から現れたリヴァイアサンに連装砲一本で立ち向かっていくところで終わっちゃいましたし)

漣「このakiって漫画家、私達の艤装とかにもかなり詳しいんですよねー。軍関係者だったりする――」

提督「漣君、ちょっと聞きたいことがあるんだけ……ど?」

漣「はにゃ?」

提督「えっ?」

 ――現在の漣の服装、キャミソール一枚。現在の漣の姿勢、ドアに足を向け片足を立てた状態で床にごろ寝。ここから導き出される答えは一つ。

提督「――漣君、可愛らしい下着で良く似合ってげぶはっ!?」

漣「ノックはどうしやがりましたかクソご主人様ー? メイド口調で冥土に送られたいなら、お望み通りにしてやりますよ?」

提督「あいたたた……ゴム弾でも撃たれたら痛いんだよ、漣君。急いでたとはいえ、ノックせずに開けちゃったのはごめんね?」

漣「全くこれだからクソご主人様はクソご主人様なんですよ……で、急ぎの用事ってのは何なんです?」

提督「うん、実は塩が見付からないんだ」

漣「そうですか。とりあえずぶっ飛ばしますから、歯食いしばりやがりなさい」

提督「えっ、調味料が見当たらないって結構切実じゃない?」

漣「人のパンツを塩ごときで見られた乙女の怒りを受けやがりなさい!」

提督「だからちゃんとごめんって言ってるのにぃぃぃぃぃっ!」

~犯人は身内~

提督「よいしょ、よいしょっと」

多摩(あぁやって畑を弄ってる分には人畜無害にゃね)

提督「多摩君、ちゃんと出来たら食べてくれるかな?」

多摩(……暑そうにゃし、水ぐらいは持ってきてやろうかにゃ)

提督「ジャガイモって丸いし、きっと喜んでくれるよね」

多摩(アイツやっぱり正真正銘のバカにゃ)

提督「猫じゃないって言うけど、丸まって寝てるし、日向ぼっこ大好きだし、ボール転がすと目で追うし、お風呂上がりに身体を震わせて乾かし――」

多摩「そこの変態ストップにゃ。それを何で知ってるのか詳しく聞かせてもらうにゃ。事と次第によっては畑の肥料にしてやるにゃ」

提督「え? 多摩君居たの?」

多摩「居たのじゃないにゃ! とにかく答えるにゃ!」

提督「あぁうん。球磨君に鮭おにぎりあげたらね、お礼にって色々聞かせてくれた」

多摩「フシャー!」

提督「痛い痛い痛いっ!? ちゃんと答えたのに何で!?」

多摩「今日はこれでお前のことは勘弁してやるにゃ! バカ球磨はどこにゃあぁぁぁぁぁっ!」

提督(怒ると髪の毛が逆立つのも可愛いなぁ)

~球磨、捕獲~

球磨「待つクマ! 話せば分かるクマ!」

多摩「鮭おにぎり貰ったぐらいで多摩を売る奴の話なんか聞きたくないにゃ」

球磨「あのときはお腹が空いてたクマ、あんな奴でも救いの天使に見えたクマ」

多摩「だからって何で風呂上がりの多摩の行動なんかしゃべったのにゃ!」

球磨「つ、つい口が滑ったんだクマ……」

多摩「――クマの手って、高級食材らしいにゃよ?」

球磨「球磨の手は食べられないクマよっ!?」

多摩「大丈夫にゃ、きっとあの変態なら食べてくれるにゃ」

球磨「いくらアイツでもそれは絶対に無いクマー!」

多摩「反省、したかにゃ?」

球磨「したクマ、すっごい反省したクマ。だから縄をほどいて欲しいクマー」

多摩「もう少しそのまま待ってるにゃ。アイツに球磨が全裸でクリスタルサーモン抱きながら寝てるの教えてくるにゃ」

球磨「どうせ言っても無反応クマ、無意味に球磨を辱しめるのはやめるクマ」

多摩「冷静を装ってるけど汗が凄いにゃよ?」

球磨「恥ーずーかーしーいーかーらーやーめーるークーマー!」

多摩「もう遅いにゃ」

球磨「――クマ?」

提督「……ごめん、聞いちゃった」

球磨「いっそこのまま海に沈めて欲しいクマァァァァ!」

本日の投下終了

~憲兵、来訪~

?「ここが今回のバイト――いやいや、監査対象の鎮守府でありますか。早速ここの提督殿に挨拶をするであります」

多摩「待つにゃー!」

提督「僕は好きな相手の物だとしても、下着は盗まないってばー!」

?「いきなり何やら不穏な単語が……」

漣「クソご主人様、今日は監査役の方が来られる日だから早めに球磨と多摩――を?」

あきつ丸「貴女が秘書艦でありますか? 此度の監査役を仰せつかったあきつ丸であります。――とりあえず、あそこの提督殿の素行について、詳しくお聞かせ頂きたい」

漣(……オワタ)

とりあえず投下、続きはまた明日

また少しだけ投下します

~提督への尋問開始~

提督(へー、監査役って艦娘も来るんだね)

あきつ丸「提督殿、早速聞かせて欲しいであります。艦娘の下着を盗んだのは事実でありますか?」

提督「違います。僕は意中の相手の下着を盗むような行為はしていません」

あきつ丸「本当で、ありますか?」

提督「はい」

あきつ丸(……この目は、嘘を吐いていないでありますね)

あきつ丸「提督殿、その恋、実ると良いでありますな」

提督「ありがとうございます、あきつ丸さん」

あきつ丸「さて、それでは本題に移るであります。――軽巡洋艦球磨、軽巡洋艦多摩。この二名が、この鎮守府の保有艦娘として登録されていない事について、お聞かせ願うでありますよ」

提督「……ぼ、じゃなくて、私が書類の提出を怠っていました。軍に登録されていない艦娘を保有するという行為が、反乱の疑いありと捉えられてもおかしくないのは、重々承知しています」

あきつ丸「それを危惧しての様々な制限なのでありますからな、疑わしきは罰せよという意見も多く聞くであります」

提督「でも、私にそんな意思は無いし、彼女達もここで暮らしていれさえすれば満足なんです。私が処分されるのは構いませんが、彼女達を処分するようなことだけは許して頂けないでしょうか?」

~それでいいのか憲兵~

あきつ丸「少し勘違いをしているでありますよ、提督殿」

提督「え?」

あきつ丸「まず、二人程度の申告漏れで処罰など、聞いたことがない。次に、練度がほぼ皆無の艦娘に出来ることなど、たかが知れていましょう。――そして最後に、自分は提督殿の恋を、応援しているのであります」

提督「それじゃあ、球磨君と多摩君と一緒に居て、いいの?」

あきつ丸「一応、今から保有艦娘には登録してもらうでありますよ?」

提督「うん、自由にさせてあげられないのはちょっと残念だけど、それで二人と一緒に居られるなら土下座してでも説得するよ」

あきつ丸「彼女達を大事にしてあげるのであります」

提督「ありがとう、あきつ丸さん」

あきつ丸「自分は自分の考えに則って、監査をしたまででありますよ」

提督「後であきつ丸さんが何か言われたり処分されたりとか、しないよね?」

あきつ丸「どうせ報告書なんてまともに読まれないであります」

提督(適当だなぁ)

あきつ丸「第一、これは押し付けられたバイトなのであります。適当で問題ないのであります」

提督「あはは、どんな人が来るかと思ってたけど、貴女みたいな人が来てくれて本当に良かったよ」

あきつ丸「昔はよく真面目過ぎると言われ、今はよくだらけ過ぎだと言われているであります」

提督「次も貴女みたいな人がいいな」

あきつ丸「流石に連続という訳には……でも、また来るであります」

提督「そっか、色々とありがとう、また来てね」

あきつ丸「頑張るでありますよ、恋する提督殿。では、失礼するであります」

提督「――ふぅ、気さくな人だったけど、ただ者じゃ無さそうだったな……。登録書類、書こ」



あきつ丸(良い土産話を仕入れたであります。――きっと、その恋は実るでありますよ、新米提督殿)

~土下座~

提督「僕の艦娘になって下さい!」

球磨「コイツいきなり何を言ってるんだクマ?」

多摩「きっと頭でも打ったにゃ」

提督「僕の下っていうのは嫌だとは思うけど、二人の為なんだ」

球磨「だから、何を言ってるクマ」

多摩「何でまだ登録してなかったのにゃ、さっさとしてくるにゃ」

提督「……え?」

球磨「球磨達はここに住むって言ったクマ」

多摩「それぐらいの屈辱は甘んじて受けてやるにゃ」

提督「屈辱ってのは酷くないかな」

多摩「いいから、さっさと、してくるにゃ!」

提督「蹴らないで、痛い、触れてくれるのは嬉しいけど痛い!」

球磨「さっさと変態は行くクマ」

提督「変態も地味に傷付くからやめてくれない!?」

多摩「多摩は足を消毒してくるにゃ」

提督「日に日に扱いが酷くなってるような気がする……。分かったよ、すぐに登録してくるよ……」

球磨「――いきなり土下座するとか、アイツ何考えてるクマ」

多摩「……どうせ、多摩達と仲良くなることしか考えてないにゃ」

球磨「多摩のことだけじゃないクマか?」

多摩「球磨にも漣にもアイツ優しいにゃ。多摩が好きとか言ってるけど、怪しいもんにゃ」

球磨「ヤキモチ妬いてるクマ?」

多摩「質の悪い冗談はやめるにゃ、あんな奴全然これっぽっちも好きじゃにゃいにゃ」

球磨「ホントにクマかー? 何だかんだ気になってきてるんじゃないクマかー?」

多摩「……そういえば、洗濯に出すの忘れてて下着の替えどうしよう、とか昨日言ってなかったかにゃ?」

球磨「クマッ!? は、話を急に変えるのはいけないって思うクマ」

多摩「球ぅぅぅぅ磨ぁぁぁぁ?」

球磨「サ、サイズが一緒だからちょっと借りただけだクマ。明日ちゃんと洗って返すつもりだったクマ」

多摩「そういう問題じゃないにゃ! 今すぐ脱ぐにゃ!」

球磨「やめるクマ! 球磨に八つ当たりしないで欲しいクマ! 下着無しで1日過ごすのだけは嫌クマ!」

多摩「問答無用にゃ!」

球磨「コラ、どこ触ってるクマか!? 服捲り上げちゃダーメークーマー!」




提督(書類に記入して欲しいけど、今行ったら確実にまた変態って言われちゃうよなぁ……よし、後にしよ)

球磨「も、もうお嫁にいけないクマ……」

多摩(……後で下着泥棒と疑ったのだけは、謝ってやるとするにゃ)

投下終了、次はまた明日にでも

あきつ丸「ここは穏便に宮刑にするであります」

ほんの少しですが、投下開始

~お金がない~

漣「汗で書類が上手く書けない……」

球磨「あーつーいークーマー……」

多摩「服パタパタするのやめるにゃ、変態が見てるにゃ」

提督(多摩君と一緒の部屋で仕事、やる気出ちゃうね、うん)

漣「クソご主人様、扇風機一台で夏は無理です。死にます。だからどうにかしやがって下さい」

提督「そう言われても、エアコン買うお金無いよ?」

球磨「何で無いクマ!」

多摩「そうにゃそうにゃ!」

漣「荒巻鮭と本マグロ……」

球磨「扇風機涼しいクマー」

多摩「エアコンなんて贅沢にゃ」

提督「皆が執務室に居てくれるから、僕としてはこれで満足なんだけど、確かに、暑い……か、も……?」

漣「ちょっと、仕事まだまだあるんですから机で寝る暇なんて――クソご主人様?」

提督「はぁ……はぁ……」

漣(っ!? 体温の上昇と脈拍の乱れ、この暑い中でこんな暑そうな格好してるからですよっ!)

漣「球磨! 多摩! 今すぐ冷やすものと塩を少し入れた水を用意して下さい!」

球磨「きゅ、急にどうしたクマ?」

多摩「多摩は暑いから動きたくないにゃー……」

漣「いいから早く! クソご主人様が熱中症になりやがりました!」

多摩「――球磨は水をお願いにゃ、多摩は冷やすもの取ってくるにゃ!」

球磨「わ、分かったクマ」

漣「えっと、確か服を緩めて冷やして、救急車に電話して、涼しい場所……が無いからこんなことになってるんですよねーって言ってる場合じゃないっ!」

多摩「氷あるだけ袋に詰めて持ってきたにゃ!」

漣「服を緩めて冷やしてやって下さい! 私は電話して救急車呼びます!」

多摩「分かったにゃ」

漣「――もしもし、救急車をお願いします。……十一時三十七分? 時報に用は無い! 救急車って何番でしたっけー!?」

提督「はぁ、はぁ……」

多摩「多摩に手間かけさせるにゃんて、絶対に後で文句言ってやるにゃ」

提督「畑……行かなきゃ……多摩君に……ご飯を……」

多摩「……やっぱり、お前バカにゃ」

球磨「バケツに塩と水入れてきたクマ!」

多摩「何でバケツなのにゃ! コップに入れて来るにゃ!」

漣「えっ? 救急車なんて出前はやってない? いいから救急車を出しやがりなさい!」

多摩「漣も一回落ち着くにゃ! 救急車は119番にゃ!」




 ――結局、全部多摩が手配して処置も済ませ、提督は無事に事なきを得たのだった。

~完治、後、罵倒~

漣「本当に役立たずですね」

提督「ごめん」

球磨「人騒がせにも程があるクマ」

提督「反省してるよ」

多摩「熱中症に栄養失調でぶっ倒れるとか何考えてるにゃ」

提督「多摩君達にちゃんと食べて欲しかったから、ちょっと自分の食べる量を控えてたのがまずかったみたいだね、あはは」

多摩「笑い事じゃないにゃ! お前が働かないとご飯食べられないにゃ!」

提督「……本当に、ごめんね」

漣「何しょぼくれてやがりますか、さっさと仕事して下さい」

提督「そういえば、治療費どうしたの? そんなお金、無かったはずだけど……」

球磨「それは――」

多摩「前に言ってた山の持ち主に借りただけにゃ。後でお金出来たらちゃんと返してくるにゃよ?」

提督「えっ!? あの人に借りたの!? うわぁ……後でちゃんとお礼言いに行かないと……」

球磨「礼なら多摩にも――」

多摩「フシャー!」

球磨「クマッ!? 何するクマかっ!」

多摩「余計な事は言わなくていいにゃ!」

提督「漣君、何か知ってる?」

漣「さぁ? 多摩本人に直接聞いてみやがったらどうです?」

提督「多摩君、何かあったの?」

多摩「お前は黙って畑耕して書類書いてりゃいいにゃ!」

提督「聞いただけなのに冷たい……」

球磨「冷たいといえば献身的に氷を――」

多摩「フシャー!」

球磨「だから爪はやめるクマ! 球磨のスベスベお肌が傷だらけになるクマ!」

提督「何だか良く分からないままだけど、とりあえず仕事しようかな」

漣「じゃあコレ、首に巻いといて下さい」

提督「濡れタオル?」

漣「また暑さで倒れられたら困りますからね。温くなってきたらそこの多摩が取り替えます」

提督「そうなの?」

多摩「――気が向いたらにゃ」

提督「気が向いてくれなそうな返事だなぁ……」

球磨「猫は気紛れだから案外すぐに気が向くかもしれないクマよ?」

多摩「多摩は猫じゃにゃいって何度言えば分かるにゃ」




 その日、水を飲むついでだと言いながら何度もタオルを取り替える多摩の姿に、球磨と漣はニヤニヤしっぱなしだったそうな……。

投下終了、多分また明日

~接近禁止継続中~

「多摩君、一緒に夏蜜柑を――」

「フシャー!」

「待った、これ以上近付かないから威嚇と爪攻撃はやめて」

「……もらうにゃ」

「はい、どうぞ」

「ありがとにゃ」

(受け取って貰えて、お礼を言われるだけで嬉しいってどうなんだろう……)

「はむ――酸っぱいにゃ」

「そういえば猫って柑橘類ダメだって聞いてたけど、平気?」

「何度も言うように多摩は猫じゃないにゃ」

「そっか――うん、ちょっと酸っぱい」

「球磨と漣にも持っていってやったらどうにゃ?」

「あっ、いや、その……貰ったの、二つだけなんだ」

「二人が聞いたら絶対に怒るにゃよ?」

「あはは、内緒にしといてくれない?」

「多摩も食べたし、今回は大目にみてやるにゃ」

「うん、ありがと」

「……」

「……」

「もうどっか行っていいにゃよ?」

「相変わらず然り気無くじゃなくストレートだね」

「さっさと消えるにゃ」

「うん、結構傷付くから更に豪速球で投げてくるのやめて」

「何でまだ居るにゃ」

「僕、今日何にも悪いことしてないのになぁ……じゃあそろそろ行くよ、また後でね」




(……ここは、日射しがちょっとキツいのにゃ)

~漣の巨大ウサギ~

「何ていうか思っていた以上に……邪魔ですね」

 ――ぬいぐるみの全長、縦1m50cm×横40cm。胴回り70cm。

(抱き心地はいいんですが、暑いんですよねー抱いてると)

「漣ーそろそろご飯作って欲しいクマー」

「クソご主人様じゃないにしても入る時はノックぐらいして下さい!」

「細かい事を気にしちゃダメクマ。それより、その不細工なぬいぐるみは何だクマ?」

「クソご主人様がくれたんですよ。邪魔で仕方無いんですけどね」

「それなら売ったらどうクマか? その大きさなら、鮭の切り身が数日分買える程度にはなりそうだクマ」

「……コレは、ダメです」

「邪魔なら売ってご飯の足しにすーるークーマー」

「そんなに欲しいなら海で捕ってきて下さいよ。そしたら捌いてあげますから」

「漣はケチだクマ」

「へー今晩の焼き魚はいらないんですね?」

「漣は可愛くてキュートなこの鎮守府の天使クマ。だからそれだけは勘弁して欲しいクマ」

「分かりゃいいです」

「でも、何でアイツから貰った邪魔なぬいぐるみを売るの嫌がるクマ? ひょっとして……」

「変な誤解はやめて下さいよ。クソご主人様に恋愛感情なんて、これっぽっちもありませんから」

「ふっふー、ホントにホントクマかー?」

「人様から貰った物を売るのが嫌なだけです。そんなことより、さっさとご飯作っちゃいますから二人を呼んできて下さいな」

「了解クマー」

(口の悪い私を初期艦に選んで、今まで文句一つ言わずにいてくれたのを感謝してるだけですよ……ほんのちょっと、ね)




「今日の僕のご飯多くない?」

「また倒れられたら迷惑なんで、お腹がはち切れない程度に食いやがって下さい」

名前省略、早かったら今日中にもう一度、無理そうならまた明日

~球磨のクマ~

「何してるにゃ?」

「鎮守府の倉庫に木材があったから、暇潰しに木彫りの熊を彫るクマ」

「指をケガしないように気を付けるにゃよ」

「優秀な球磨ちゃんはそんなヘマしないクマ」

 ――1日後。

「出来たクマ! 力作だクマ!」

「どうせそんなに上手く出来てるわけないにゃ」

「ふっふっふー、コレを見るクマ!」

「にゃっ!? 部屋にあったのとそっくりにゃ!」

「だから優秀って言ったクマ」

(ちゃんと加工とか色付けされてないだけで、形は本当に似てるにゃ……)

「どんどん色々彫ってみるクマ」

「試しに売ってみたらどうにゃ?」

「それもいいかもしれないクマ」




 ――翌日、夕方。

「木彫り五体で樋口になったクマ」

「どんどん彫るにゃ! 貴重な収入源にゃ!」

「飽きたクマ、もう彫らないクマ」

「三日で飽きるとか早すぎるにゃ」

「また違う暇潰し考えるクマー」

~徐々に育つ畑~

「どうしようかなぁ……」

「どうしたのにゃ?」

「作物が育ってくるとね、山から動物が食べに来たりするんだ」

「罠でも仕掛けりゃいいにゃ」

「あんまり傷付けたりはしたくないんだよ。何か良い手は無いものか……」

「球磨にマーキングでもさせりゃいいにゃ」

「最近、球磨君に対してキツくないかい?」

「そんなことないにゃ、仲良し姉妹にゃ。この前多摩のおかず盗ったのなんて、これっぽっちも恨んでないにゃ」

(相当恨んでるね、コレは)

~謎の来訪者~

(――アレ? 畑の前に人影? クソご主人様は執務室ですし、球磨と多摩も昼寝してましたし……一体誰なんでしょうかね?)

「――あの、うちの鎮守府に何か御用ですか?」

「あっいえ、そういう訳では……ただ、遠くからこの畑が見えたもので」

「野菜の買い付けか何かですか?」

「いえ、そういうのとは違うんです。畑を耕しているような鎮守府が他にもあるとは思っていなくて、つい気になってしまったものですから。――それでは、収穫時期にでもまた来ます」

「あっはい、こんな何もない所で良ければ……」

(――ん? “他にも”? ひょっとしてあの人も、艦娘だったり?)

「でも、一人でこんなことフラフラしてる艦娘なんて居るわけありませんし……ただの旅行者ですよね、きっと」




(味見ぐらいはさせてもらえそうな雰囲気でした。時期を見計らってまた来ないといけませんね)

今回はここまで、多分また明日

~提督、猫と戯れる~

 ――鎮守府、資材庫横。

「ほーらほらほら、猫じゃらしだよ」

 ――にゃーん。

「魚の切り身、良かったら食べる?」

 ――うにゃあん。

「分かった。残り物だけど、新鮮だからきっと美味しいよ」

 ――にゃー。

「あはは、いい子だね、キミは」

 ――んにゃあ。

「お腹いっぱいになった? じゃあまた魚余ったらあげるね、バイバイ」

 ――にゃーお。

「――よし、そろそろ仕事に戻らない……と?」

「漣から頼まれて探しに来てみたら、猫と遊んでるとはいい御身分にゃね」

「多摩君!? いや、あの、前からたまに見かけててね、ちょっと餌あげてたらなつかれちゃって、それで――」

「フシャー!」

「痛い痛い痛いっ! ごめん、すぐに仕事戻るから許してっ!」

「さっさと、行くにゃ!」

「分かった、分かったから蹴らないでよ多摩君。見付けに来てくれてありがとね、じゃあまた後で」

「全く、手間のかかる奴にゃ」

(……あの様子だと猫好きみたいにゃし、きっと猫に似てたら誰でもいいんだにゃ。――どっちにしても、多摩には関係無いにゃ)

~着ぐるみ~

「――クソご主人様、こりゃ一体どういうことですかねー?」

「裏山の人が商店街の会長さんでね、頼まれちゃったんだ」

「暑いクマ……」

「ひ、干からびるにゃ」

「ウサギとクマとネコの着ぐるみで福引きの受付やれって、私達を蒸し焼きにして殺す気ですか!?」

「ちゃんと水分は補給してもらうし、終わったらかき氷も振る舞ってもらえるらしいから、頑張って、貰えないかな……?」

「ジュースとアイスとサーモン付けるクマー……」

「冷凍みかんも要求するにゃ……」

「新しい包丁が欲しかったんですよねー」

「交渉はしてみるけど、期待しないでね……?」

「無理だったら」

「その時は」

「簀巻きで海ですね」

(うん、三人とも目が本気だ。何とか交渉材料用意しないとなぁ……)




 結局、地域の子供達や一部の層から人気だった事もあり、謝礼が出て無事に提督は事なきを得るのだった。

「好評だったから次もお願いします、だって」

「幾ら謝礼が出ても、夏場は二度とやんねーって伝えといて下さい」

「冬なら着てもいいクマ、アレ可愛かったクマ」

「多摩は猫じゃないにゃ」

~夏風邪~

「ダルいクマー……」

「全裸であんなもの抱えて寝てるからにゃ」

「薬飲みたいクマー……」

「そんなお金あるわけないじゃないですか」

 ――僕だけど、入っていいかな?

「いいですよー素っ裸じゃないんで」

「じゃあ失礼するね、球磨君の様子はどうだい?」

「しんどいクマー……」

「見ての通りにゃ」

「身体の構造が人間とほぼ一緒とはいえ、クソご主人様が常備してたような薬では効果がほとんど出ませんからねー」

「艦娘用の薬は高いし、我慢してもらうしかないかな」

「死ぬクマー……」

「その程度で死なないにゃ」

「黙って寝てりゃ治りますよ」

「皆薄情だクマ……」

~良薬口に苦し~

 ――三十分後。

「球磨君球磨君」

「弱った球磨が一人で居るところを襲いに来るとは卑怯クマ……」

「人聞き悪いこと言わないでよ、せっかく薬持ってきたのに」

「謝るクマ、今なら握手ぐらいはしてやるクマ、だから飲ませて欲しいクマー……」

「無理して起きないでいいよ。寝てていいから、口開けて」

「クマァー」

「じゃあちょっと身体と口抑えるけど、許してね」

「ふがっ!?」

「コレ、艦娘にも効くって話なんだけど、物凄く苦いんだ」

「ふがぁー!」

「弱ってる球磨君の力じゃ振りほどけっこないから大人しくしてて、いくよー」

「ふがっ! んぐっ、んぐっ……ふがあぁぁぁぁぁっ!?」

「はいはい、気持ちは分かるけど暴れないで全部飲んでね」

「ふがぁ……んぐ、んぐ、んぐ」

「――よし、おしまい。お疲れ様、球磨君」

「ク……マァ……」

(あっ気絶してる……)

「――球磨に、何してるにゃ?」

「あぁ多摩君お帰り。ちょうど今、薬を飲ませたところだから」

「へー、馬乗りで、両手を抑えながら、涙目で気絶してる球磨に、薬を飲ませてたんだにゃ?」

「あまりの苦さに暴れちゃうから仕方無かったんだ」

「暴れるような事を、してたんにゃね?」

「た、多摩君? 何か勘違いしてない? 僕は本当に薬を飲ませてただけだからね?」

「いいから、さっさと、球磨から、退くにゃっ!」

「ちょっ、多摩君!? 病人居るから暴れちゃダメだってば!」

「フシャー!」

「僕はただ薬を飲ませただけなのにぃぃぃぃっ!」




 ――提督執務室。

「――で、顔中傷だらけって訳ですね」

「うん……痛っ! 消毒液塗るのも一苦労だよ」

「多摩にその薬を渡して、飲ませてもらえばよかったんじゃないですか?」

「・・・・・・あっ」

(やっぱりどっか抜けてやがりますねこの人は)

~漣の書類作成~

(コレは上層部宛だから硬めの文章で書いて)

(コレは商店街とか街の人向けだから柔らかく)

「――クソご主人様、書類作成面倒なんで、私の報告書を私風に書いて自分でチェックしやがって下さい」

「ごめん、そんな虚しい作業したくないから漣君が自分で書いてくれないかな? この貰い物のよく分からない人形あげるから」

「マジでいりません。気持ち悪いんで早く捨てやがって下さい」

「貰い物だから捨てるに捨てられなくてね……」

「そんな釘刺さってるような人形、貰う方も貰う方なら、あげる方もあげる方ですよ」

~純情球磨ちゃん~

「あっ球磨君、もう風邪は――ってアレ?」

「お前の顔見た瞬間に全速力で逃げたにゃ。やっぱりこの前、何かしたんだにゃ?」

「だからそれは誤解だってば、あの後ちゃんと球磨君から聞いたんでしょ?」

「無理矢理押さえ付けられて、口に苦いものを押し込まれたって聞いたにゃ」

「前半は否定しないけど後半待った。正確には流し込んだ、だから」

「やっぱり変態にゃ。半径3メートル以内に近付いたら撃つにゃ」

(2メートル距離が延びてるし、爪が触れる事すら拒否されちゃったか……)




「球磨くーん! 焼き鮭あげるから出ておいでー!」

「――焼き鮭、寄越すクマ」

「物陰から手だけ出さないでくれない? 何もしないからこっちおいでよ」

「……分かったクマ」

(良かった。出てき――何で頭にクマの被り物?)

「さっさと寄越すクマ」

「あ、うん、はい。ねぇ球磨君、何で被り物してるの?」

「お前があんなことするから恥ずかしくて顔見れないんだクマ!」

「僕は薬飲ませただけだよ?」

「女の子にしていい飲ませ方じゃなかったクマ!」

「あー……うん、それは反省してる、ごめん」

「思い出す度に顔から火が出そうになるクマ」

「配慮が足りなかったのは本当に申し訳無いと思ってるよ。以後気を付けるし、この焼き鮭がお詫びって事で許してもらえないかな?」

「……分かったクマ」

「許してくれてありがとう、本当にごめんね」

「もういいクマ。風邪引いて薬欲しがった球磨もいけなかったんだクマ」

「皆心配するし、今度からはちゃんと服着て寝るように」

「そうするクマ」

「じゃあ僕は畑行くから、またね」

(……ふぅ、平常心、平常心クマ)

「さて、被り物を……ん? ふーーーんっ!――抜けなくなったクマ……」




「全く、風邪といいコレといい、手間かけさせるんじゃないにゃ!」

「好きで手間かけさせてる訳じゃ無いクマ」

「包丁で叩き割っちまいましょうか?」

「桃太郎の桃じゃないからやめるクマ! 頭かち割られるのは嫌クマ!」

投下終了、続きはまた明日

~女三人寄れば奪い合い~

「そのケーキは球磨が欲しいクマ!」

「フルーツタルトは譲れないにゃ!」

「ザッハトルテキタコレ!」

「モンブラン! モンブランだクマ!」

「フォンダンショコラにゃ!」

「徹底的に食べちまうのね!」




(貰ってきたの、僕なんだけどなぁ……まぁいいか、皆嬉しそうだし)

~U70・T82~

「多摩、クソご主人様から落とし物預かって来ましたよ」

「何にゃ?」

「洗濯したのが落ちてたみたいです」

(――にゃっ!?)

「何でアイツはコレが多摩のだって分かったのにゃ!?」

「さぁ、顔真っ赤にしながら私に託した後すぐに逃げていったので、詳しいことは聞かなきゃ分かんないですね」

(着替えを覗く様な奴じゃないのはもう分かってるにゃ。でも、それなら何で分かったのにゃ……?)




(漣君ならもっと小さいし、球磨君の好きそうな柄じゃ無かったんだよなぁ……)

~ゴミ捨て場のニャウリンガル~

「にゃ」

『ご飯』

「にゃー」

『遊びたい』

「にゃっ」

『邪魔』

「多摩君、一人で何してるの?」

「にゃ、にゃんでもにゃいにゃ」




『ご主人様』

投下終了、また明日

~スイカ割り~

「右にゃ」

「真っ直ぐクマ」

「違うよ、左だよ漣君」

「逃げたにゃ、もっと右にゃ」

「そこで横にフルスイングだクマ」

「うわっ!?」

「――チッ、外しちまいましたね」

「スイカはあっちなのに、何で僕の方に誘導したのさ」

「割ったら散らばって勿体無いクマ」

「そうにゃそうにゃ」

「じゃあ切り分けちまいますね」

「何の為に目隠しして棒持ったの!?」

~見た目は子供~

「アレ? 漣君、その風船どうしたの?」

「クソご主人様、下らない事気にしてないで書類さっさと書きやがってください」

「聞いただけなのになぁ……」

「商店街で今、子供に風船配ってるクマ」

「ウサギのがあったから混じって貰って来たみたいにゃ」

「そこの二人! わざわざ言わなくていいです! 一品おかず減らしちまいますよ!」

「照れてるクマ」

「顔赤いにゃ」

「可愛いね」

「クソご主人様は今日ご飯だけです」

「可愛いって言っただけだよ!?」

「セクハラだクマ」

「ロリコンにゃ」

「ドン引きです」

(仲良くなれてきたって思ってたのは気のせいだったんだね……ちょっと本気で凹んできた)




 ――この日の提督の夕飯、親子丼の大盛り。

~緑に染まる畑~

「うん、順調順調」

「本当に普通の畑って感じですね」

「もうそろそろ収穫出来そうクマ」

「楽しみだにゃ」

「来週には収穫だね、商店街とかの人達と今から交渉してくるよ」

「最低限の生活費の足しにはなるよう、値段つり上げて来やがって下さい」

「球磨はとにかく食べたいクマ」

「多摩もにゃ」

「後は山から猪とかが荒らしに来ないように祈るだけだね」

「網かけてるし大丈夫じゃないですか?」

「中には突き破る奴いるから……」

「来たら追い返すクマ」

「貴重なご飯にゃ」

「危ないからやめてね、皆にケガさせるぐらいなら食べられた方がマシ」

「大丈夫クマ、連装砲でイチコロ――」

「弾はとっくにゴム弾以外尽きちまってます」

「い、威嚇ぐらいにはなるにゃ」

「余計に怒って突進してくるからダメ、絶対にダメ」

「うっ……わ、分かったにゃ……」

(多摩が珍しく言うこと聞きましたね)

(あそこまで真剣な目で見つめられたら、嫌とは言えないクマ)

今回はここまで、また明日

~嫌な予感は当たるもの~

「な、何か畑に居るクマ!」

「うわー本当に来ちゃったのか……とりあえず見てくるから、皆はここに居て」

「クソご主人様一人でどうしやがるつもりですか」

「街に行ったら困るし、山に誘導するよ。任せて、コレでも山育ちだから――ん? そういえば球磨君、多摩君は? 一緒じゃないの?」

「クマ? 一緒に逃げて……居ないクマ!?」

(まさか本当に追い払おうとしてる!?)

「あれ程ダメだって言ったのに、言うこと聞いてくれないなホントにもうっ!」

「あっ、待つクマ!」

「私達も行きますって!」

(お願いだから、無茶はしないで多摩君!)

~大事な畑だから~

(で、デカイにゃ……)

 ――フゴッ! フゴッ!

「っ!? 本当に網が破られそうにゃ……」

(ゴム弾で注意をこっちに引いて、海に逃げ込めばなんとか出来るはずにゃ!)

「こっちにゃ猪!」

 ――フゴッ!? フガァー!

「にゃっ!? 何であの図体でこんなに速いのにゃ!?」

 ――フガァッ!

(ジグザグに逃げればちょっとはスピードが――って全然落ちてにゃい!?)

 ――フゴォォォ!

(ダメにゃ、追い付かれ――)

「多摩君! 触るけど今回は許して!」

「うにゃっ!?」

 ――フゴッ?

「あいたたたた、頬を擦りむいちゃったかな……多摩君、大丈夫?」

「何してるにゃこのバカ! あんなヤツにぶつかられたらお前死ぬにゃ!」

「バカは多摩君でしょ? 人があれ程ダメだって言ってたのに、こんなことして」

「いいからとっとと逃げるにゃ! またアイツが突っ込んで来るにゃ!」

「あー……うん、さっきので足挫いたから無理かな」

「ホントに何してるにゃこのバカ!」

「大丈夫大丈夫、後一回ぐらいは気合いで避けるから、さっさと多摩君は逃げて」

「いいから立ってこっち来るにゃ!」

 ――多摩、無事クマかっ!?

 ――どこ行きやがりましたかクソご主人様!

「二人ともここにゃ! 助けて欲しいにゃ!」

 ――フガァッ!

「あっ、ちょっとマズイかな。先に謝っとくよ、突き飛ばしてごめんね?」

「――にゃ?」

「じゃがいも、食べてみてね。きっと美味しいから」

(嫌、にゃ。こんな終わり方、嫌にゃ!)

「多摩はお前の艦娘にゃ! 居なくなるのは許さないにゃ!」

「うん、ありがと――バイバイ」

 ――フガァァァァァッ!




「――感動のシーンを邪魔して本当に申し訳無いのですが、この猪頂いてもいいですか?」

~シリアス……?いえ、知らない子ですね~

「収穫時期なので来てみたのですが、思わぬお土産が出来ましたね」

(素手で猪倒しちまうとかこの人何者ですか……)

(猪が震えて怯えてたクマ……)

(にゃー……)

「どこのどなたか知りませんが、本当にありがとうございました。お陰で死なずに済んじゃいました」

「あまり無理をしてはいけませんよ? そこの艦娘達も貴方を大事に思っているのですから、貴方が傷付けば、彼女達も傷付きます」

「あはは、面目無い。でも、僕は多摩君が無事ならそれで良かったし、彼女達には嫌われてますから」

「……はぁ、あの方みたいに聡過ぎるのもどうかと思いますが、貴方みたいに鈍感なのも罪ですね」

「鈍感?」

「貴方の行動は、ちゃんと彼女達の心に響いているはずです。――ですよね?」

「クソご主人様はクソご主人様です」

「く、球磨は別に嫌いじゃないってだけクマ」

「にゃー……」

「ん? 多摩君、さっきからどうしたの?」

「――にゃ?」

「顔、赤いよ? 熱でもあるの?」

「だ、大丈夫にゃ、問題にゃい。お前こそ怪我はもういいのかにゃ?」

「僕は足挫いただけだから」

「頬、擦りむいてるにゃ」

「コレ? こんなの唾でも付けとけば――」

 ――ペロッ。

「……へ? いや、え? 今、多摩君、舐め、舐めっ!?」

「消毒にゃ」

「……絆創膏、貼っちまいますか」

「足もギプスはめてやるクマ」

「あら、一気に火が付いたみたいですね」

「何? どういうこと? 夢? それとも僕は実は死んでるとか?」

「勝手に死んだら許さないにゃ」

「まだアレよりデカイぬいぐるみ買って貰ってねーです」

「荒巻鮭を一生食べさせて貰う約束したはずだクマ」

「優しくされるのってこんなに嬉しいことだったんだなぁ……あっ、涙出てきた」

(まぁ大変なのはこれからでしょうが、この調子なら大丈夫そうですね)

「では、私はこの猪を持って帰らないといけないので失礼しますね」

「あっ、本当にありがとうございました。また立ち寄って下さい、その時は色々ご馳走しますから」

「必ず来ます。それでは」

「――結局あの人、何者だったんですかね?」

「さぁ? まぁ何はともあれ――」

「収穫クマ!」

「食べるにゃ!」

 ――さぁ、本当のラブコメはこれからだ。

投下終了、また夜にでも

~さぁ、ラブコメを始めよう~

「えっと、何してるの?」

「肩、貸すにゃ」

「いや、挫いただけだし固定もしてるから歩けるよ?」

「貸・す・にゃ」

「多摩君に迷惑――」

「いいから黙って肩を借りればいいんだにゃ!」

「ハイ、オカリシマス」

(何か斬新な脅し文句で押しきられちゃったよ……それにしても、多摩君の身体柔らかいなぁ)

「変なとこ触ったら殴るにゃ」

「大丈夫、せっかく好かれたのに嫌われたくないから」

「……もうそんな心配いらないにゃ」

「え? 何か言った?」

「何でもないにゃ、さっさと執務室行くにゃ」

「うん、お願い」

~別に全然これっぽっちも~

「気になるに決まってんでしょうが! イチャイチャしたけりゃ他所でやりやがって下さい!」

「多摩は肩貸して連れて来ただけにゃ」

「肩貸されて連れて来られただけだよ」

「朝っぱらから頬を染めながら入って来る二人を見せ付けられるこっちの身にもなりやがれってんですよ!」

「今日は暑いからにゃ」

「あーもうメシマズ展開過ぎてやる気無くなって来ました。ついでなんで秘書艦も多摩にしてもらったらどうですか?」

「えっ、漣君が秘書艦してくれなきゃ困るからダメだよ?」

「な、何でですか」

「書類は文句言いながらでもきっちり書いてくれるし、今まで一緒にやってきた仕事もあるし、何だかんだ言いながら僕達の事支えてくれてるのは漣君だからね」

「……ホント、クソご主人様はクソご主人様ですね。分かりましたよ、やりゃーいいんでしょやりゃー」

「別に多摩にだって出来るにゃ」

「すっこんでて下さいよ猫モドキ」

「引っ込んでるにゃ暴言メイド」

「ふ、二人とも何で喧嘩腰なの? 皆仲良くしよ、ね?」

「クソご主人様は黙りやがってて下さい」

「コレは女の勝負なのにゃ」

「じゃあ間を取ってこの優秀な球磨ちゃんが秘書艦やるクマ」

「うわっ!? 球磨君、いつから居たの?」

「実は二人の後ろをずっと尾行してたクマ。部屋に入って来たのは今クマ」

「何しに来たにゃ全裸クマ」

「引っ込んでて下さいクマパン」

「さらっと人の下着バラすんじゃないクマ!」

(あーあー僕は何も聞いてない僕は何も聞こえない)

「で、どうするんですか? クソご主人様は私をご指名ですよ」

「球磨だって秘書艦したいクマー」

「――じゃあ、こういうのはどうにゃ?」




 ――三人全員秘書艦になりました。

~机とテーブルと段ボール~

「机キタコレ!」

「書けなくは無いにゃ」

「段ボールって何だクマ!」

「三人分の机無いし、じゃんけんで決めたんだから恨みっこ無し、仲良くしなきゃダメだよ?」

「私が机なのは順当ですね、何の問題もないです」

「せめて椅子が欲しいクマ……」

「もう一つ段ボールあるにゃ、それに座ればいいにゃ」

「そもそもテーブルのスペース余ってるクマ! 何で段ボール使う必要あるんだクマ!」

「――確かに、余ってるにゃ」

「? 多摩君、どうかした?」

「ちょっと横にズレるにゃ」

「横? こうかな」

「にゃ、これでいいにゃ」

「……あの、多摩君? 椅子半分だけって座りにくくない?」

「大丈夫にゃ、問題にゃい」

「問題に決まってんでしょうが! 何さらっと密着しやがってんですか!」

「仕事の効率の為にゃ」

「多摩がそこに居るとクソご主人様が使い物にならなくなるんで退きやがりなさい」

(多摩君近いし良い匂いだし肩に頭が当たってるし動くと色々当たるし……)

「面白い顔になってるにゃ」

「書類書くクマー」

「ほら、さっさと退きやがりなさい」

「じゃあ漣がその机譲るにゃら、ここと代わってやってもいいにゃ」

「根本的な解決になってねーですよ」

「漣ならコイツも意識しないにゃ」

「そ、そんなの座ってみなきゃ分かんねーです。変に発情でもされて襲って来やがったらどうするんですか」

「じゃあこっち来て座ってみればいいにゃ」

「――こ、コレでいいんですか?」

「んっ? 次は漣君座るの? 机あるでしょ?」

(普通の反応……ちょっとムカついちまいました。こうなったらもうやっちまうのね!)

「クソご主人様、こうすれば狭くないですよねー」

「膝に乗るなんて許した覚えないにゃ!」

「効率の為だから問題ねーです」

「あの、この体勢だと、僕が書類書けない……」

「あっ……」

「さっさと退くにゃ、やっぱり多摩が横に座るにゃ」

「それじゃ仕事になんねーってさっきから言ってるんですがー?」

「提督、書類出来たクマー」

「――二人とも、仕事しない?」

 大人しく机に一人、テーブルに二人のローテーションになりました。

一人が動くと全員動く

投下終了、また明日

~猫になってみるにゃ~

「にゃー」

「・・・・・・僕はきっと疲れてるんだね、多摩君に猫耳が生えてるはずがない」

「幻覚じゃないにゃ、猫好きみたいだから着けてみたにゃ」

「ホントに最近どうしたの? 嬉しいんだけど急に変わりすぎて、どう対応していいか分からないんだけど……」

「――可愛く、ないにゃ?」

「可愛いとても可愛い凄く可愛い!」

「なら良かったにゃ。今日1日着けとくにゃ」

(猫耳バンドなら身体の一部じゃないから触れてもいい、かな……?)

~マネしてみた~

「――で、二人は何してるの?」

「クマの着ぐるみ着てみたクマ」

「ウサ耳が着けてみたかっただけですよ、何か文句ありやがりますか?」

「いや、うん、良いんだけど……球磨君は脱がなきゃ書類書きにくくない?」

「も、盲点だったクマ!」

(やっぱりうちの姉はバカだったにゃ……)

「っていうか、コレを他の人に見られたら僕がそういう趣味を持っていると誤解――」

「遊びに来たであります」

(今度こそ僕、捕まるかなぁ……)

「楽しそうでありますな、自分も混ぜて欲しいであります」

「えっ?」

「ネズミとかあるにゃ」

「牛の着ぐるみもあるクマ」

「確か商店街の人が、誰も着ないバニーガールの衣装があるとかなんとか言ってましたね」

「とりあえずネズミの耳着けてみるであります」

(この人本当に気楽でノリがいいね)

~水着で海水浴~

「漣君」

「何ですか」

「その水着――」

「それ以上口にしたらロリコンご主人様って呼びますよー?」

「スク水、やっぱり恥ずかしかったの?」

「恥ずかしいに決まってんじゃないですか! しかもご丁寧に名前“さざなみ”って入れやがってますし!」

「お金無いからサイズ伝えて街の人にタダで貰ったんだし、好意でしてくれた行為に対して細かい事は言いっこ無しだよ」

「分かっちゃいますが、せめてもう少し可愛いのが良かったですよ……」

「漣は可愛いにゃー」

「可愛いクマー」

「あのー嫌みにしか聞こえねぇんですがー?」

「多摩は白のワンピースで満足にゃ」

「球磨も白のビキニで満足だクマ」

(多摩君の水着姿可愛いなぁ……)

「あ、あまりジロジロ見ないで欲しいにゃ……」

「あっごめん」

「イチャラブしたけりゃ後にしやがって下さいねー」

「今は四人で遊ぶクマー」

「イチャラブなんてしてないにゃ」

「何して遊ぶんだい?」

「ふっふっふー、鬼ごっこクマ!」

「把握」

「やってやるにゃ」

「アレ? 何で三人とも僕を見るの……?」

~鬼が三人、追われた一人~

「おーい、生きてるにゃ?」

「艦娘の皆と海で鬼ごっこって勝ち目あるわけないよ……」

「でも結構速かったクマ、見直したクマ」

「クソご主人様にしてはなかなかでしたね」

「あー……もう動けないし、ちょっと休ませて」

「じゃあここ使うといいにゃ」

「えっと、そこって多摩君の――」

「膝にゃ」

「明日一歩も動けないとか言われたら鬱陶しいんで、足マッサージしてやります」

「球磨は腕クマ」

(僕、明日死んじゃうのかもしれない……)

投下終了、また明日

~気付けば寝てた~

「――ん? 僕、寝てた……?」

「あっ起きたにゃ」

「やっとですか、一時間は寝やがってましたよ」

「ちょうど出来たクマ」

「ねぇ、何か起き上がれないんだけど、誰か押さえてるの?」

「押さえてないにゃ」

「押さえてるんじゃなくて、上に被さってんですよ」

「力作だクマー」

「あの、何で僕の身体は砂の城に埋まってるのかな?」

「多摩はお前に膝枕してて動けなかったにゃ」

「で、退屈なんで私は砂でクソご主人様を埋めて」

「球磨がお城を作ったんだクマ」

「えと、コレは動いちゃダメってこと?」

「ダメにゃ」

「ダメに決まってます」

「ダメだクマ」

「ダメかー……多摩君、重くなふぃっ?」

「重くないにゃ」

「ひゃまひゅん?」

「お前結構ほっぺた伸びるにゃ」

「多摩、私にも触らせやがりなさい」

「球磨も引っ張るクマ」

「ひゃんにんひょみょ、あひょばにゃいでくれはひ?」

「何言ってるか分からないにゃ」

「確かに結構伸びますね」

「変な顔になって面白いクマー」

(コレって、役得と思っていいのかな……?)

~帰りの電車~

(今日は楽しんでもらえたみたいだね)

「くー……すー……」

「うーん……何も言えねぇ……」

「サーモン捕ったクマー……」

(見事に全滅しちゃったなぁ……それにしても、視線が痛いね、うん)

 ――膝に小さい女の子乗せてるわあの人。

 ――両肩にもたれかかってる子も居るし、どういう関係なのかしら……。

(あはははは……。でも、こんな皆の幸せな寝顔見れるなら、いいかな)

「にゃー……」

「ご主人……様……」

「クマー……」

「お休み、皆」

~日焼け~

「いーたーいーにゃー!」

「日焼け止めの事すっかり忘れちまってました……」

「お風呂入りたくないクマ……」

「見事に皆真っ黒だね」

「何でお前一人だけ平気なのにゃ」

「僕、昔から何故か日焼けしにくいんだよ」

「ずりぃですよそんなの、クソご主人様も焼けやがって下さいよ」

「パンダみたいに焼けたら面白そうだクマ」

「無理矢理焼いたりしないでね?」

「こんがり焼けたら食べてやるにゃ」

「僕は魚じゃないからやめて多摩君」

「日焼けオイル貰ってきますねー」

「狙った部分が焼けるように布用意してくるクマ」

「いや、あの、二人とも? 遊んだ分仕事が溜まっててね?」

「多摩も“タマ”って形に布を切り抜いてくるにゃ」

「“漣”も作っといて下さいねー」

「球磨はクマの形で作るクマ」

「多摩君まで参加しちゃってるし……皆仕事しようよー……」




 この後めちゃくちゃこんがり焼かれてかじられた。

投下終了、また夜か明日

~現状説明~

提督→三人から好かれてきたとは思っているが、猪事件前と後のギャップが凄すぎて、どうにも自信が持てないでいる。最近は瞑想しないと夜寝れない。

多摩→恋愛感情隠す気ゼロ。とりあえず提督から何か行動を起こさせようとしている。しかし、来た時とは逆で提督に近付くと何故か警戒されるようになり、最近ちょっとイライラ気味。

漣→提督への好意はあるが、彼が多摩まっしぐらなので一歩引いて見ている。ただ、無意識の内に邪魔したり牽制していたケースが多々あり、どうしていいか分からず困惑気味。部屋でぬいぐるみ相手にご主人様と呼ぶ練習中。

球磨→多摩みたいに積極的なアプローチは難しく、漣みたいな行動も出来ず、控え目な好意持ってますよアピールをしている。ただ、恥ずかしさから好意に気付かれる寸前に後ずさってしまう毎日。提督から一番警戒されていないからか、多摩から少し羨ましがられている。

つまり、早く爆発しろよお前等が続きます。ハーレム夜戦ルートか純愛多摩ルートか(略奪漣or球磨ルートか、良い船エンドか)は見てのお楽しみということで。

~次の収入源~

「次は何を作るのにゃ?」

「ナスと、またジャガイモかな」

「くれぐれも失敗だけはしやがらないで下さいよ?」

「ご飯食べれなくなったら頭から食べてやるクマ」

「あはは、食べられたくないから頑張らないと。あーそれと多摩君、次また猪が来ても行っちゃダメだからね?」

「分かってるにゃ、あんなのはもう懲り懲りにゃ」

「デレ過ぎてつまんねーです……」

「漣も猪に襲われてみればいいクマ」

「誰得ですよそれ。危ない目にわざわざ遭ってどうするってんですか」

「提督が助けてくれるかもしれないクマ」

「……そんなのお断りですよ、テメェの身はテメェで守ります」

「今の間は何だクマ?」

「うるせぇクマですねぇ、畑に埋めちまいますよ?」

「漣君、やめてあげて」

「そうにゃ、埋めて生えてきたら困るからやめるにゃ」

「それは一理ありますね」

「球磨を何だと思ってるんだクマ!」




(全く、私の為にクソご主人様を危険に晒すとか、そんな事させられるわけねぇに決まってんじゃねーですか……)

~優秀な球磨ちゃん、アルバイトをするの巻~

「いらっしゃいクマ」

「780円だクマ」

「ありがとうございましたクマー」

「――球磨君? 何してるの?」

「クマ!? ひ、人違いクマ!」

「ポニーテールにサングラスって、変装でもしてるの?」

「何でこんなあっさりバレたんだクマ……」

「いや、どこからどう見ても球磨君だし」

「やはりお前はただ者じゃないクマ」

「エプロンに“KUMA”って書いてあるし」

「そうだったクマー!?」

「でも、何で魚屋でバイトを?」

「お、お前が買ってくれるのを待ってたら荒巻鮭がいつまで経っても食べれそうに無いからだクマ!」

「……ごめん、次に買えるのは本当にいつになるか分かんないや」

「あっ……ち、違うんだクマ……」

「最悪実家からお金を借りてでも、また食べさせてあげるね」

「罪悪感で死にたくなるからやめるクマー!」

「えっ? いや、でも――」

 ――おいおい、察してやんなよ。球磨ちゃんはアンタの為に、ここで内緒で働きたいって言って来たんだぜ?

「こんにちは店主さん、それどういう意味ですか?」

「聞かなくていいし言っちゃダメクマ!」

 ――がははははっ! こんな可愛い子に好かれてアンタも幸せもんだな!

「僕の為? 荒巻鮭食べるのが? どういうこと?」

「さっさとお前は鎮守府に帰るクマー!」




 この月からオカズが一品増えるようになりました。

~中身の確認は大事~

「にゃーにゃー」

「あの、多摩君、腕かじるのやめない? 美味しくないでしょ?」

「爆発しろ! 爆発しろ!」

「漣君はお腹殴らないで、流石に鳩尾は痛い」

「グーアー」

「僕は鮭じゃないし、鮭も頭から丸かじりするものじゃないと思うなぁ……」

「かじれにゃいにゃらにゃめればいいのにゃ!」

「かじるのもダメだけど舐めるのはもっとダメだからね!?」

「うぅ……クソご主人様って言ってごめんなさい……漣は解体された方が良かったんです……」

「さ、漣君? えっと、あの、謝らなくていいから泣かないで、ね?」

「グゥアァ!」

「球磨君そろそろ本当に痛いから頭かじるのやめて!?」




 商店街の人から頂いた洋風菓子の詰め合わせ。中にはウィスキーボンボン、リキュール入りチョコ、ラムレーズンクッキー、洋酒ケーキが入っていたそうな。

~歯形と涙の跡とボロボロの服~

「あ、頭痛いにゃ……」

「何かダルいです……」

「ク……マァ……」

「あっ、起きてくれた?」

「んにゃー……? 何で多摩はお前の腕を抱き締めて寝てたにゃ……?」

「何で私はクソご主人様に抱き着いて寝てたんですかね……」

「お、重いし頭痛いクマ……」

 提督の現状、提督執務室の床にゴロ寝。右腕は多摩がガッチリロック。お腹の上に漣。球磨を下敷き。

「流石に体勢がそろそろ辛いし、まずは漣君が起きてくれない? 球磨君が辛そうだし」

「今起きますので待ちやがって下さい。身体ダルいんですよ……」

(――球磨の胸に提督の頭、乗ってる、クマ……?)

「さーざーなーみーはーやーくーしーんーじゃーうークーマー」

「分かってますから待ちやがって下さい。――よい、しょっと。水、入れて来ますねー……」

「ふぅ……じゃあ僕も退くよ。ごめんね球磨君、重かったでしょ」

「いいから頭を早く退けるクマ! 今すぐクマ!」

「う、うん。多摩君もそろそろ腕を離してくれないかな? もう片方の腕でずっと身体を支えてたから、こっちの腕の力だけじゃもう立てそうになくて……」

「嫌にゃ」

「いや、あの、色々柔らかかったり当たったりでそろそろ本当に僕も限界かなーなんて」

「じゃあスリスリしてみるにゃ」

「本当にやめて泣きそうな程嬉しいからやめて僕も男だからやめて」

「球磨の上でもぞもぞ動いちゃダメクマー!」

「球磨うるさいにゃ、頭に響くから黙るにゃ」

「む、胸の上に提督の頭があるから早く退いて欲しいんだクマ……」

(頭も何か気持ち良いなと思ったら球磨君の胸かー余計に動きにくくなっちゃったなーあはははは……。早く戻ってきて漣君!)




(お茶漬けでもついでに作って持って行きますかね)

投下終了、明日は用事があるのでお休み、次は明後日更新

()内は冗談ですのでご安心を

~とある何処かの鎮守府で~

「商店街で面白い物見つけたクマ」

「“忍者艦娘なりきりセット”? 何ですかコレ」

「艦娘アイドルグッズから派生した、バックダンサーのなりきりセットって表には書いてあるクマ」

「えーっと何々、“鎮守府アイドル那珂ちゃんのバックダンサー川内。衣装替え中のパフォーマンスとして探照灯の明かりの中を縦横無尽に跳び回り、忍者のように夜のステージをアクロバットに駆け回る彼女になりきってみよう!”……どうなってんですかこの鎮守府とここの艦娘……」

「後、神通のバージョンもあるみたいだクマ」

「人気なんですか?」

「それぞれに相当な数のファンが居て、熾烈なチケット獲得戦争が勃発してるらしいクマ」

「マジですか……」

「関係者から直接聞いたから間違いないクマ。たまに手が足りないと警備員として駆り出されてるって言ってたクマ」

「へー……試しに揃えて三人で着てみちゃいますか?」

「じゃあ多摩も呼んで来るクマ。店のオッチャンに頼めばきっとくれるクマ」




 ――この後、商店街の出し物として三人でアイドルをやらされました。暫く恥ずかしさから商店街に三人が寄り付かなかったのは、言うまでもない。

「可愛かったし、またやってくれないかなぁ……」

(コイツ一人に見られるなら問題にゃい)

(まぁ……たまになら着てもいいですかね、勿体無いですし)

(他のも着てみたいし、オッチャンに全サイズあるか聞かなきゃいけないクマ)

なんとなく書いただけです

~来て欲しい時には来ない~

「多摩君」

「何にゃ?」

「漣君から借りた漫画、面白い?」

「面白いにゃ」

「そっか」

「にゃ」

「……多摩君」

「何にゃ、今良いところなのにゃ」

「僕の膝の上で読む必要は無いんじゃないかな?」

「お構い無くにゃ」

「いや、構うよ?」

「構ってくれるなら後で構って欲しいにゃ」

「うーん……えいっ」

「捕まったにゃ」

「ほら、逃げないと何かされちゃうかもよ?」

「今コレ読むのに忙しいにゃ」

「えー……」




(執務室で何イチャラブしやがってんですかあの二人……)

(仕事の邪魔されてるのに、迷惑してるように全く見えないクマ)

~とても簡単で、凄く難しい~

「ご主人様、ご主人様、ご主人様!」

(ウサギ相手なら言えるんですがねぇ……)

「クソご主人様! 朴念仁!」

(あー言いやすい)

「多摩も球磨もデレまくってますし、きっと今のままだと私は口の悪いクソガキにしか見えないですよねー」

(別に好かれたいとか思ってませんし、せめて感謝の気持ちを素直に言えるようになれたらいいんですが、こんなに難しいとは……)

「私を初期艦に選んでくれて」

「解体と聞いて“寂しい”と言ってくれて」

「頼りになると言ってくれて」

「こんな私に多摩や球磨と分け隔てなく接してくれて」




(――たった五文字が、何で言えないんですかね……)

~裸足で駆けてく必死な提督~

「待つにゃー!」

「いくら多摩君のお願いでもそれだけは無理、僕は絶対に着ないからね!」

「早めに観念しやがって下さい――球磨、ゴー!」

「対猪用トリモチ爆弾、発射クマ!」

「うわっ!? どこでそんなもの入手したのさ!? ふ、服にピッタリくっついて取れない……」

「とある人に頼んだクマ」

「効果は抜群でしたねー。さぁさぁあっちでコレに着替えちまって下さい」

「楽しみだにゃ」

「多摩君、鮪のお寿司で――」

「早く着て来るにゃ」

「鮪より優先度高いの!?」




「――着たよ、コレで満足してくれる? 見たならもう着替えていいよね?」

「写真撮ってからにゃ」

「後、“お帰りなさいませお嬢様”って言いやがって下さい」

「その格好でお茶持ってきて欲しいクマ」

「何でこんな似合わない服着せて楽しそうなの三人とも……」




 ――1日執事服を着せられて遊ばれましたとさ。

~お祭り~

「リンゴ飴美味しいにゃ」

「綿あめって最初はいいんですけど、段々食べるのしんどくなりますよねー……」

「焼きもろこし美味いクマー」

「三人ともはぐれないでね」

「子供じゃないにゃ。でも、どうしてもって言うなら手を繋いでやるにゃ」

「そんなことよりクソご主人様、残り食べやがって下さい」

「フランクフルト美味いクマー」

「両手がたこ焼きとお好み焼きで埋まってる状況で、手を繋いだり綿あめ受け取るのは厳しいかなー……」

「たこ焼きとお好み焼きは球磨に持たせりゃいいにゃ」

「口開けりゃ突っ込んでやりますよ?」

「たこ焼きもお好み焼きも美味いクマー」

「あっそろそろ花火始まっちゃうよ、ちょっと急ごうか」

「待つにゃ、はぐれるなって言いながら離れるんじゃないにゃ」

「さっさと邪魔だから食いやがって下さいませんかねー!」

「提督、手に提げてるベビーカステラ食べたいクマー」

「多摩君も球磨君も引っ張ったら――むぐ?」

「捕まえたにゃ。はぐれないように拘束にゃ」

「財布持ってるの提督クマ。逃げられたら困るクマ」

「ほら、ちゃんと処理しやがって下さい。残すと勿体無いですし」

(両手に花は凄く光栄だけど、違う方向に引っ張られると困っちゃうかなー……あっ、久しぶりに食べたけど綿あめ美味しい)

投下終了、また明日

~猫vs猫~

「フシャー!」

 ――フシャー!

「ここは多摩のベストスポットにゃ。お前は別の場所に行くにゃ」

 ――フーッ!

「威嚇したってダメにゃ」

 ――……っ! うにゃーお!。

「アレ? 多摩君といつもの猫ちゃんだ。何してるの?」

「そこの猫に昼寝場所を取られそうだったにゃ」

 ――にゃーん……。

「ちゃんとこの子とも仲良くしなきゃダメだよ多摩君。ほら、よしよし」

 ――うにゃー。

(……多摩もあんな風に頭撫でて欲しいにゃ)

「昼寝だったら一緒にすればいいんじゃないかな?」

「そんなヤツと一緒に寝たくないにゃ」

「うーん……じゃあ僕とこの子と一緒ならどうかなーなんて」

「こっちにさっさと来るにゃ、抱き枕にしてやるにゃ。ハリーハリーにゃ」

(冗談のつもりだったんだけどなぁ……)

 ――にゃー。

「お前は別にどうでもいいにゃ、すり寄るんじゃないにゃ」

「仲良くだよ、仲良く、ね?」

「……お前も早くこっち来るにゃ」

「うん、昼寝なんてバレたら怒られそうだけど、たまにはいいかな」

「多摩の前に寝転がるにゃ」

「こういう感じ?」

「それでいいにゃ」

「――ねぇ多摩君、抱き枕って僕のことだったの?」

「当たり前にゃ」

(しっかり抱き締められてるし、背中に柔らかい感触が……)

 ――にゃん。

「君は僕にもたれて寝るの? 猫と猫に挟まれて寝るって、何か凄いね」

「多摩は猫じゃないにゃ。そういうこと言うとこうにゃ」

「やめて、それ以上強く抱き締めないで、昼寝どころじゃなくなるから」

 ――スー……スー……。

「んー……多摩はもう眠いし寝るにゃ。寝てる間は動くんじゃないにゃ」

「うん、お休み、多摩君」

(……今日はいつもより、良い夢が見られそうにゃ)




「鮪いっぱい食べる夢見たにゃ」

「うん、美味しそうにかじってたよ……」

~言葉以外で~

「ごっ、ごごごごご」

「漣君、どうしたの?」

「ご――ご飯何食べたいか言いやがって下さい。毎日献立考えるの面倒なんですよ」

「そうだねー……かしわとじゃがいもを炒めたヤツが食べたいかな」

「じゃあ夕飯はそれで……ごっ」

「ご?」

「ご――ゴーヤチャンプルーとかもたまには食べやがりませんか?」

「うん、漣君が作ってくれるご飯は美味しいから、作ってくれるなら何だって食べるよ」

「そ、そうですか……」

「いつも美味しいご飯をありがとね、漣君」

「……褒めたって何も出やしませんよ? 買い物と下拵えしてきます」

「買い物、ついて行こうか?」

「仕事しやがってて下さい」

「コレも立派な仕事じゃない?」

「多摩と行きますから大丈夫です」

「そっか、行ってらっしゃい」

「行ってきます」




 その日の提督の夕飯に、大根おろしと焼き椎茸が追加されました。

~続・優秀な球磨ちゃん、アルバイトをするの巻~

「クマ饅頭美味しいクマー」

「試食もやってるクマー」

「今なら球磨とツーショット撮影出来るクマー」

「――球磨君、またバイトしてるの?」

「人違いクマ、だから今すぐ買うクマ」

「いや、着ぐるみから顔見えてるし間違えないからね?」

「他人の空似クマ、早く買ってツーショットを要求するクマ」

「ごめん、今財布持ってないんだ……」

「店長ー! 給料から天引きで1つ売って欲しいクマー!」

 ――――いいよ、サービスしたげるからあんちゃんにあげな!

「ありがとうだクマー! さぁ撮るからこっち来るクマ」

「いや、僕が買ったわけじゃないし、サービスしちゃダメじゃない?」

「細けぇことはいいんだクマ! どっかの落語家もそう言ってたクマ!」

(何でそこで落語家が出てくるんだろう……)




 後日、ツーショット写真が多摩と漣に見付かり、提督がカメラを持った二人に追いかけられたのは言うまでもない。

投下終了、夜かまた明日

~ザラザラ?~

「多摩は猫じゃないにゃ。舌は普通にゃ」

「うん、傷口舐められた時普通に気持ちよ――ううん、何でもない」

「変態は嫌いにゃ」

「変態じゃないから嫌わないでね?」

「じゃあ舐めて変態かどうか確かめるにゃ」

「そ、それは確認方法としてどうかと思うなー」

 ――ペロッ。

「だから舐めちゃダメだってば!?」

「まだまだ分からないにゃ」

「絶対に違うからもう確認終わり! これ以上は男として色々大変だからダメ! じゃあまたね!」

(……逃げたにゃ。キスぐらいいい加減してくりゃいいにゃ……)

~日に日に増えるレパートリー~

「酢豚作りました、どうぞ食いやがって下さい」

 ――翌日。

「ポトフってのを作ってみました」

 ――翌々日。

「ロールキャベツ作りました」

 ――三日後。

「サーモンのカルパッチョです」

 ――四日後。

「豆腐ハンバーグです」




(毎日違うの作ってくれるけど、しんどくないのかな?)

(明日は何作ったら喜んでくれますかねー)

~器用な球磨ちゃん~

「出来たクマー」

「何が出来たのにゃ?」

「皆のぬいぐるみクマ」

「へー上手いもんですね。コレ私ですか?」

「アイツのもあるにゃ」

「提督にあげるクマ」

「――何かアイツに自分そっくりのぬいぐるみ持たれてると思うと、ちょっと恥ずかしいにゃ」

「……クソご主人様に抱き締められたりとかですか?」

「そういうこと言うのやめるクマ、あげにくくなるクマ」

「そもそも、アイツのぬいぐるみはどうするにゃ」

「球磨が抱いて寝るクマ」

「……球磨、夕飯に鮭出しますからそれを寄越しやがりなさい」

「冷蔵庫のアイスやるから多摩に寄越すにゃ」

「嫌だクマ、これは球磨が作ったんだクマ」

「くっ……そっち方面は苦手なんですよねー……」

「――いいにゃ、多摩は本物の布団に潜り込むにゃ」

「絶対に阻止するクマ」

「流石にそれは許す気にゃなりませんよ」

「多摩はもう既に一緒に寝たことあるにゃ」

(アレは昼寝だったけどにゃ……)

「――今のは聞き捨てならないクマ」

「球磨、今日は私が寝ぼけたフリして潜り込みますから、多摩お願いします」

「ダメにゃ! アイツは変態にゃ! 襲われるにゃ!」

「でも多摩は襲われてないクマ」

「こっちから行くとアイツ逃げやがるのにゃ……」

「なら問題ないですねーちょっと寝ぼけるだけなんで」

「球磨も明日寝ぼけるクマ」

「わざと寝ぼけるってなんにゃ、二人ともやめるにゃ」

「散々最初は嫌いやがってたじゃないですか」

「変態連呼してたのは多摩だクマ」

「うるさいにゃ、今は好きなんだから問題ないにゃ」

「私も嫌いじゃないんで」

「球磨も気に入ってるクマ」

「……地味にハーレム化してるにゃ」

「クソご主人様は全く自覚ありやがりませんがね」

「嫌われたくないが口癖になってるクマ」

「アイツはあげないにゃ」

「漣はしつこいんで諦めませんよ」

「球磨だって譲らないクマ」

 ――争奪戦加速中。

~乙女提督~

「結局三人で来てどうするんだにゃ」

「いっそ全員で潜り込んだ方がお互い安心だクマ」

「じゃあ開けちまいますよ?――ん?」

「どうしたのにゃ?」

「クソご主人様の部屋……内側からチェーンかかってやがります……」

「何で個室にチェーンがあるクマ!?」

「そういえば、立て付けが悪いからドアを替えたとかなんとか聞いた記憶が……」

「何でアイツが鉄壁のガードしてるんだにゃ!」

「普通こういうのは女の子側の役目クマー!」

「流石クソご主人様はクソご主人様ってことですね……はぁ」




「おはよう皆――ん? どうかした?」

「乙女にゃ」

「乙女だクマ」

「クソ乙女様ですね」

「乙女って何!?」

~乗られないなら乗ればいいじゃない~

「あっ多摩君、ホタテはダメだよ。耳が落ちちゃう」

「それアワビにゃ。それに猫じゃないって何度言わせりゃ気が済むにゃ。多摩は可愛い女の子にゃ」

「正確には船ですがねー」

「それ言ったら色々台無しだクマ」

「三人とも可愛いからついつい忘れちゃうよね、あまり気にしてないってのもあるけど」

「船だからって乗ったら怒るにゃ」

「女の子に乗るようなマネしないよ」

(肩車……)

(背負われてみたいクマ)

(お姫様抱っこされたいにゃ)

「クソご主人様、後でちょっと棚の整理付き合いやがって下さい」

「うん、分かったよ」

「球磨も後でちょっと用が出来――あるから部屋に来て欲しいクマ」

「いいよ」

「外の壁がちょっと壊れてる(ようにする)にゃ。お前補修しとくにゃ」

「分かった、後でやっとくね」




 壊(さ)れた脚立が使えず、棚の整理の為に漣に肩車。足首を(無理矢理)挫いた球磨を背負い工廠へ移動。壊(さ)れた壁の修理中に、空から降ってきた多摩をキャッチ。提督が大活躍した1日になりましたとさ。

~猫のフリで気を引いている疑惑~

「多摩は無実にゃ」

「じゃあ何で無駄に猫の生態について詳しいんですか」

「偶々にゃ」

「多摩だけに偶々クマ?」

「とりあえず球磨は黙ってて下さい」

「鮭でもかじって大人しくしてるにゃ」

「球磨を仲間外れにするんじゃないクマー!」

「部屋から猫の飼い方とか猫に関する本が出てきやがりましたが?」

「元からあったのにゃ、多摩は知らないにゃ」

「無視するんじゃないクマー」

「じゃあさっさと多摩の証言が事実かどうか答えやがりなさい」

「そんな前のこと覚えてないクマ」

「……カレーを作った時に玉葱を多くよそってたのは何でですかね?」

「好きだからにゃ」

「聞いといて無視するんじゃないクマ」

「オニオンスープかコーンスープならどっち飲みます?」

「コーンスープにゃ」

「玉葱かさつま芋、味噌汁に入れるなら?」

「さつま芋が良いクマ」

「多摩もさつま芋が良いにゃ」

「――多摩、玉葱そんなに好きじゃねぇですよね?」

「……そんなことはないにゃ」

「わざと玉葱が見えるようによそって、クソご主人様の気を引こうとか考えてやがりませんか?」

「球磨はじゃがいもたっぷりが嬉しいクマ」

「だったら何にゃ、別に悪いことしてないにゃ」

「とりあえず球磨うるせーです。猫扱いが嫌なら猫アピールやめりゃいいでしょうが」

「だってアイツ猫好きにゃ。でも、猫として好かれるのは嫌なのにゃ」

「めんどくせーですねぇ……」

(パンダは猫って漢字入るクマ。白黒に塗れば……流石にちょっと無理があるクマ)

~屋根~

(少し肌寒い時にはここが一番にゃ)

 ――にゃー。

「また来たにゃ……」

 ――にゃあん。

「こら、上に乗るんじゃないにゃ」

 ――ふみゃー。

「……多摩に潰されないように気を付けるにゃよ?」

 ――にゃーおぅ。

「そこで寝たら多摩が寝転べないにゃ。ちょっと移動するにゃ」

 ――ふみぃ?

「多摩のお腹の上を提供してやるにゃ、不満なら退くにゃ」

 ――にゃうーん。

「じゃあ寝るにゃ」

 ――にゃ。




(居ないから探しに来てみたけど……本当に仲良くなったんだね、良かった良かった)

「鮪……食べたい……にゃ……」

 ――すー……くー……。

~四人で~

「多摩、錦糸玉子出来ましたか?」

「ちょっと失敗しかけたけど出来たにゃ」

「球磨は椎茸と高野豆腐と人参刻めましたか?」

「優秀な球磨ちゃんにかかればこのぐらいお茶の子さいさいだクマ」

「クソご主人様はもう少しですからうちわ頑張りやがって下さい」

「腕がもうかなりしんどいけど頑張るよ」

「――よし、もう良さそうですね」

「後は混ぜればいいのかにゃ?」

「先に高野豆腐と椎茸、人参を入れやがって下さい。」

「投入クマー」

「クソご主人様ーもう一頑張りしやがって下さい」

「明日腕が筋肉痛になりそうだよ……」

「後は具が混ざったら錦糸玉子を上から散らして、紅しょうがを食べる時に乗せりゃ完成です」




 仲良く四人で作ったちらし寿司。何時もより多めに作ったものの、キレイに完食しましたとさ。

「次は一緒に手捏ねハンバーグでも作りますかねー」

~続々・優秀な球磨ちゃん、アルバイトをするの巻~

「あっ、提督クマ」

「――え? 球磨君、なの……?」

「酷いクマ、いつもはすぐに分かってくれたクマ……」

「だって、え? その化粧と髪と服どうしたの……?」

「美容院のポスター用にって頼まれたクマ。今撮影のスタンバイ中だクマ」

「そ、そうなんだ」

「クマ? 提督、何で顔赤いクマ? 熱は……無さそうだクマ」

「っ!? いや、あの、その、撮影頑張ってね!」

「――逃げたクマ。変な提督クマ」




(お、女の子ってあそこまで可愛さ増すものなんだ……)

「どうしたのにゃ?」

「ねぇ、多摩君は化粧とか、する?」

「高いからしないにゃ。化粧品買うぐらいなら鮪買うにゃ」

「そ、そっか」

(安心したような、残念なような……)

(化粧……漣にちょっと後で相談してみるにゃ)

~1日の始まり~

『多摩は猫じゃないにゃ』

「……んー?」

『さっさと起きるにゃ』

「多摩君の……声?」

『起きなきゃイタズラするにゃ』

「何で、目覚ましが多摩君の声に……?」

『起きてください、ご主人様』

「っ!? 今の漣君!?」

『――なーんて、言うわけないでしょ? さっさと起きやがりなさい、クソご主人様』

「どうしてかな、こう呼ばれた方が落ち着く」

『起きないなら鮭寄越すクマ』

「あはは、球磨君は何時も通り――」

『鮭が無いなら提督でもいいクマ』

「じゃないなぁ……。何かに酔ってるのを録音でもしたのかな?」

『コラバカ球磨! 何さらっと爆弾発言しやがってんですか!』

『録音止めるにゃ!』

「――うーん、どういう意図でこの目覚まし作ったんだろ?」



 目覚まし音声の編集ミスが後日発覚。説得(物理)の後、録音データは破棄されました。

(あの目覚まし、起きやすかったんだけどなぁ)

~引き出し二番目の右奥~

「ふぅ、今日も疲れ――多摩君、部屋間違えてるよ? っていうか鍵かかってたはずだよね?」

「にゃー?」

「首傾げるの可愛いけど、引き出し漁るのは流石にダメだよ。第一、面白い物は入って――」

「にゃー!」

「えっ、ちょっ、うわっ!?」

「ふにゃー」

「急に飛び付いてきたら危ないよ多摩君、頭打っちゃうかもしれないし。それに、さっきからにゃーしか言ってないけど大丈夫?」

「らいじょぶにゃ、もんらいにゃい」

「うん、大丈夫じゃないね。またお酒入りのチョコでも食べちゃったのかなぁ……」

「これ、らめたにゃ」

「ん? それって……前に買ったマタタビの粉?」

「とってもいー気分にゃ」

「前にマタタビでは酔わないって言ってなかった?」

「……お前、おいしそーに見えてきたにゃ」

「何度も言ってるけど、舐めるのもかじるのも禁止だからね」

「ケチにゃやつにはこうにゃ」

「あははははっ! 脇、やめ、それ、弱いからっ!」

「――もう、我慢出来にゃいにゃ」

「えっ? あの、多摩君? かっ、顔が近いよ?」

「いたらきますにゃ」

「き、キスとかはお互いもっと親密な関係になってからが僕は望ましいと――」

 ――はむ、ちゅうぅぅぅぅ。

「首!? 多摩君キツく吸い付きすぎ痛い痛い痛いっ! 歯で噛むのはもっと痛いってば!?」

「――ぷはっ、あんまり美味しくはにゃかったにゃ」

「いたたたた……そりゃ魚じゃないから僕は美味しくないよ……」

「満足したにゃ、今日は部屋戻るにゃ」

「結局何しに来たのさ多摩君……まだ酔ってるんでしょ? 部屋まで送ろうか?」

「大丈夫にゃ、問題にゃい」

「そっか、じゃあまた明日ね」




(今日のはマタタビのせいってシラを切り通すにゃ、アイツは多摩のにゃ)

 翌日、鍵の無断使用と提督の首に付けたキスマークの代償として、多摩の夕飯は魚の骨だけとなった。

~一言で終わった過去、一言を伝えたい今~

「漣はどうして口悪いのにゃ?」

「それ、球磨もちょっと気になってたクマ」

「……つまんねー話ですから、言いたくねーです」

「漣だってアイツに好かれたいと思ってるはずにゃ、その気持ちはよく分かるにゃ」

「話してくれたら、力になれるかもしれないクマ」

「私がクソご主人様に好かれたら、困るんじゃねぇですか?」

「それはそれにゃ」

「これはこれクマ」

「はぁ……多摩といい、球磨といい、クソご主人様といい、ここにはお人好ししか居ないんですかねぇ」

「アイツ程お人好しじゃないにゃ」

「普通なら三人ともとっくにお払い箱だと思うクマ」

「――お払い箱にされたから、私はこの口調になったんですよ」

「……漣、他の鎮守府に居たのにゃ?」

「居ましたよ。初期艦で配属されてその日のうちに、“ふざける艦娘など使いたくない”って見限られて、一度も出撃や遠征すらさせてもらえないまま、再度軍司令部に預けられるハメになりましたがね……」

「漣は良い奴クマ! 料理美味しいクマ! 仕事もきっちりやるクマ!」

「まぁ初日にふざけた私も悪かったんですよ。――ただ、それだけの理由で捨てられたってのが無性にイラついて、とことん悪態吐くようになっちまったんです。結局、半年ぐらい拒否られ続けて、もういっそ解体されないかなーって思ってた矢先、ここのクソご主人様に初期艦に選ばれたんです」

「アイツ、何で漣を選んだのにゃ?」

「“吹雪君は元気が良すぎて無理。電君は怯えらそうだから無理。叢雲君は睨まれそうだから無理。五月雨君はドジっ娘にトラウマがあるから無理”、消去法で私を選びやがったそうです」

「提督、情けないクマ……」

「――でも、着任早々クソご主人様って呼んでも、罵声を浴びせても、困って笑うか向こうが謝りやがったんです。書類のミスを指摘したら、“ありがとう”って言いやがったんです。私が解体されるのを、たった三日一緒に居ただけで“寂しい”って言いやがったんです」

「アイツ、プライドとかそういうの皆無にゃ」

「畑耕してる方が似合ってるクマ」

「正直、解体されずに済んだ時、ちょっと嬉しく思っちまったんですよね……」

「その時から惚れてたなら多摩達より先にゃ」

「ビックリクマ」

「――ってことなんで、大人しく譲ってくれませんかねー?」

「断るにゃ」

「断固拒否クマ」

次回更新より、季節は秋がメインとなります

多摩と球磨を堕落させる魔の兵器が、近々執務室に追加されます

~三人からのお・ね・が・い~

「お前の言うことなら何でも聞いてやるにゃ」

「クソご主人様の食べたい料理何でも作ります」

「もっとアルバイトして楽させてやるクマ」

「だから」

「絶対に」

「「「艦娘を増やしたいなんて二度と言わないと誓えっ!」」」

「わ、分かったから、言わないから、海に簀巻きで投げ込むのだけはやめて!?」




 仲間が増えたら楽しいよねと言っただけでこんなことになった為、提督は二度とこの話題には触れなくなったとさ。

(そもそも野良艦娘でも居ない限り増やしようが無いんだけどなぁ今って……)

~焼き芋~

「落ち葉とアルミホイルと新聞紙っと」

「何してるにゃ?」

「さつま芋貰ったから、焼き芋しよ――」

「漣と球磨呼んでくるにゃ!」

「反応早いなー……」

 ――数十分後。

「焼けたよー」

「早く、早く食べたいにゃ!」

「アッチィクマァァァ!」

「そりゃ直に触りゃそうなりますよ……」

「はい、軍手と新聞紙」

「あ、ありがとだクマ」

「焼き芋好きなんですよねー」

「……熱々は無理にゃ、冷まして欲しいにゃ」

「多摩君のは僕が冷ましてあげるから、ちょっと待ってね」

「ホクホクで美味いクマー」

「うーん、コレなら幾らでも食べれちまいますよ。……クソご主人様は多摩のを冷ますのに大変そうですね。ほら、口開けやがって下さい」

「いいの? じゃあちょっと貰うね――うん、甘くて美味しい」

「ずるいクマー……」

「早いもん勝ちです」

「……そろそろ多摩にも食べさせて欲しいにゃ」

「もう大丈夫かな? はい、多摩君どうぞ」

「ありがとにゃ――んにゃーとっても甘いにゃ」

(多摩もあーんしてもらうとかずるいクマ……)

(便利ですねぇ猫舌……)

「じゃあ僕も食べようかな」

「球磨が食べさせてやるクマ」

「え? いや、自分で食べられるから大丈夫――」

「食ーべーるークーマー!」

「ちょっと球磨君!? 冷まさずに口に入れられたら――あっふぅぅぅっ!? みず、水はっ!?」

「今全部多摩が飲みやがってます」

(キスしたら飲ませてやるにゃ)

「ちょっろ一番近い水道まで行っれくる」

「ごめんクマー次はちゃんとふーふーするクマーだから食べるクマー」

「残念でしたねぇ多摩」

「分かってたにゃ、アイツにそんな度胸無いにゃ……」




 芋を食べて溜まったモノは、各自部屋で放出してから、執務室へと戻りました。

~冷えてきた~

「さ、寒いにゃ……」

「海目の前だし余計に寒いクマ……」

「秋になったばかりでこれは厳しいですね……」

「あはは、皆寒いの苦手なんだね」

「何でお前平気なのにゃ」

「きっとあの服だクマ。脱がせるクマ!」

「クソご主人様脱がすとか誰得ですか……」

「そう言いながら漣も席を立ってるにゃ」

「確かに一人だけ平気そうなのはムカつきますんでね」

「別に服は関係無いよ。元々寒い場所に住んでたから、このぐらいは平気ってだけ。――でも、皆がそんなに寒いって思うなら、ちょっと何か対策を考えないといけないかもね」

~新聞紙と段ボールとプチプチ~

「これで寒さはある程度凌げるかな?」

「暖かいけどカッコ悪いにゃ」

「新聞紙温いクマ」

「奇抜なファッションでなかなか素敵――な訳ねぇでしょうが!」

「痛っ!? 漣君、消しゴム投げないでよ」

「もうちょっと他に何か対策を考えやがりなさい! 新聞紙にくるまったままじゃ買い物にも行けやしませんよ!」

「そう言われても、お金無いし……」

「何とかするにゃ」

「何とかするクマ」

「うーん……じゃあちょっとまた商店街の人とかに頼んでみるよ」

 ――翌日。

「暖かいにゃ、でもコレでどうしろって言うにゃ」

「球磨はコレ好きだクマ」

「クーソーごー主ー人ー様ー?」

「あ、暖かいでしょ……?」

「えぇ暖かいですよ、暖かいですとも――着ぐるみじゃ仕事も何も出来ませんがねぇ!」

「それ着て一週間生活してくれたら服屋の主人が服をくれるそうだから我慢してー!」




 一週間後、ちゃんと秋冬物の古着をゲットし、三人は寒さから解放されました。

(中にメイド服とブルマとナース服なんかが混じってやがるのは何でですかねぇ……?)

~大雨~

 ――畑。

「雨も風もキツ過ぎるにゃ!」

「飛ばされるクマー!」

「何とか二人ともそのまま抑えてて!」

「クソご主人様ー! ちょっと私も限界です!」

「もう少しだから待って――よし! 皆、中に戻るよ!」

 ――執務室。

「ず、ずぶ濡れにゃ……くしゅん!」

「ハックション! うぅ、冷えたクマ……」

「な、何も言えねぇ……」

「ごめんね三人とも、あのままだと畑がダメになりそうだったから……」

「ご飯の為にゃ、仕方ないにゃ」

「でも、流石に服は着替えたいクマ」

「意義無しです」

「うん、ついでにお風呂入ってきなよ」

「覗いちゃダメにゃ」

「来たらローリングクマサンダーアタックを久しぶりにお見舞いするクマ」

「変態ご主人様って呼んでやります」

「僕は覗きなんてしないし、冷えたままは身体に悪いから早く行きなよ。僕はここで待ってるから」

 ――1時間後。

「ヘタレにゃ」

「ヘタレクマ」

「ヘタレご主人様」

「何で僕怒られてるの!?」

~給料一月分~

「提督、コレ使うクマ」

「封筒?――お金!? いやいや球磨君、必死に働いて貯めたんなら、自分で使うべきだよ」

「いいんだクマ。使って欲しいんだクマ」

「うーん……でもねぇ……あっそうだ、何かして欲しい事はある? やっぱりただ貰うわけにはいかないし、出来ることなら何でもするよ?」

「……欲しいクマ」

「?」

「頭、撫でて欲しいクマ」

「へ? もっと何か他に無いの?」

「球磨は頭が撫でて欲しいんだクマ、早くするクマ」

「う、うん。コレでいい?」

「クマァ……」

(幸せクマ……)

「えっと、どのぐらいしてればいいのかな?」

「一時間クマ」

「一時間か……うん、分かったよ」

(頑張った甲斐あったクマ。来月も頑張って頭撫でさせるクマ!)




 球磨がキラキラ状態になりました。

(あれ、出撃しないから意味なくね?)

>>231
アルバイトの作業効率がアップします

~多摩を構うにゃ~

「――あの、多摩君?」

「何にゃ」

「そこ、執務机だよ?」

「それがどうしたにゃ」

「えっと、仕事がしたいんだけど」

「後にするにゃ」

「後じゃちょっとダメかなぁ……じゃあ、そっちの机使うことにするよ」

「――にゃ」

「……多摩君?」

「だから何にゃ」

「何でこっちに来たの?」

「そういう気分になったにゃ」

「そういう気分になっちゃったかぁ……どうしたら、仕事させてくれるの?」

「頭撫でるにゃ」

「球磨君にも撫でてって言われたんだけど、頭を撫でられたら何か良いことでもあるの?」

「いいからさっさと撫でるにゃ」

「先に聞くけど、どのぐらい?」

「二時間にゃ」

(これ、今日中に書かなきゃいけないんだけどなぁ……でも、多摩君の頭を撫でられるなら頑張ろっかな)

「髪、ふわふわだね多摩君」

「にゃー……ふにゃー……」

(コレ何か凄く良いにゃ、気持ち良いにゃ)

(可愛いなぁ多摩君)




(爆発しろ爆発しろ爆発しろ爆発しろ爆発しろ爆発しろ爆発しろ爆発しろ!)

~言えない、言えた~

「クソご主人様!」

「な、何かな?」

「ん!」

「下向いてどうしたの? 床に何か落としたの?」

「んっ!」

「漣君? ちゃんと言ってくれなきゃ分からな――痛っ!?」

「察しやがりなさい! このニブチン! 朴念仁! 柔順! 唐変木! 物好き! バカ!」

「脛蹴るのはやめて! 痛いっ! 痛いってば!?」

「私だけしてくれないとか何でですか! 嫌がらせですか! 口悪いクソガキはやっぱり嫌いってことですか!?」

「お、落ち着いて漣君。何で泣いてるの? 僕また何かしちゃった?」

「何もしてくれやがらないから言ってんですよ!」

「えぇー……」

「嫌いなら……嫌いならそう言いやがればいいじゃないですかぁ……」

「――ごめん、嫌だったら殴り飛ばしてね?」

「・・・・・・?」

(抱き締められてる? クソご主人様に? えっ? ここ天国ですか?)

「僕が昔泣いてた時は、こうやってよく親に抱き締めらたんだよ。僕は漣君の親とかじゃないし、全然頼り無いかもだけど、今はコレで泣き止んでくれないかな」





「――ありがとうございます、ご主人様」

~キラ付けか、なら問題ない~

「提督殿、また来たでありま――異常無し、馬に蹴られる前に帰るであります」

「ちょっと待ったあきつ丸さん! コレは違うよ!?」

「ならば強要しているのでありますか? それなら詳しく話を聞くであります」

「いや、彼女達からお願いされてこの状況なんだけどね?」

「頭撫でさせてるにゃ、コレで作業効率アップにゃ」

「アルバイトで仕事がはかどるクマー」

「仲間外れにされんのは癪なんで、抱き着いてます」

「ふむ、いわゆるキラ付けというヤツでありますか。やはり異常無しであります」

「無いには無いんですけど……こんなの報告書には書きません、よね?」

「心配御無用であります。こういう話は大好きな方なので、今回は気合いを入れてありのままを書くであります」

「心配しか無いんですが!?」

「手が止まってるにゃ、罰として十分延長にゃ」

「早くなでなでするクマー」

「動きやがらないで下さい、この位置が一番落ち着くんです」

「やはりお邪魔のようであります。それではまた」

「あきつ丸さん!? さっきの冗談ですよね!? あきつ丸さぁーん!?」

「うるさいにゃ、いいからはやく撫でるにゃ」

「バイトに遅れるクマー」

(コレはもっとギュッとしがみついてもいいってことですね)




 後日、何故か元帥から“これからも精進するように”という一文と共に、金一封が鎮守府に贈られてきました。

>>246
詳しく

~ちょっと豪華に~

「秋刀魚にゃ!」

「栗ご飯だクマ!」

「極めつけは松茸ですよ、松茸!」

「元帥にお礼の手紙を書かないとね。そもそも金一封が贈られてきた理由が不明だし、何て書けばいいのか分からないけど……」

「あのあきつ丸さんを憲兵のアルバイトとして雇うぐらいですから、相当な変わり者なんじゃないですかねー松茸ウマー」

「適当に感謝の気持ちでも書いて出しときゃいいにゃ。漣、大根おろしとポン酢欲しいにゃ」

「コレでちょっと暫くは生活楽になるクマ、甘くて美味いクマー」

「冬に向けての準備もコレで出来そうだね」

「新しい苗木とかも買うにゃ」

「インナーの数が心許ないんで、それの補充もちょっとしたいですねぇ……」

「漣は別に小さいから気にしなくてもぉっ!? ヴォーッ!」

「ご飯食べてる時に床を転げ回るんじゃないにゃ」

(漣君のローキック、痛いんだよなぁ……)

(私だって少しは膨らんで来たんですよ!)

後数人あっちから出たり出なかったり……

~出張?~

「クソご主人様居ないとやる気出ねーです……」

「多摩はどうしたクマ?」

「クソご主人様のベッドで丸くなりやがってますよー……」

「球磨も夜はお邪魔するクマ」

「私もそうします」

「球磨! 漣!」

「どうしやがりましたー?」

「提督の秘密でも見付けたクマ?」

「こっ、コレ見るにゃ!」

「? 女の人の写真ですね、コレがどうかしやがりましたか?」

「手紙が横に置いてあったにゃ! それお見合い写真にゃ!」

「……多摩、今なんて言ったクマ?」

「だ・か・ら、お見合い写真にゃ!」

「――球磨、多摩、鎮守府全体の施錠をしてきやがって下さい。私は商店街の方と、念のためにあきつ丸さんに事情を説明しておきます」

「了解にゃ」

「分かったクマ」

「出張と偽って実家で見合い……へーそういうことしやがりますか……」




(((何がなんでも邪魔してやる!)))

~四人で~

「いい加減許してくれないかな? 僕だって見合いなんてしたくなかったんだよ?」

「何で黙って行きやがったんですかねー?」

「いくら断るだけとはいえ、多摩君に見合いに行くなんて知られるのはちょっと申し訳なくて……」

「球磨達にも申し訳ないと思うクマ! 見合いなんか電話で断りゃ良かったんだクマ!」

「そういう訳にもいかなかったんだよ、既に見合いの席がセッティングされちゃってたし……」

「二度と見合いが来ないよう丁寧にご両親には挨拶したにゃ。コレでもう問題にゃい」

「うん、アレだけ見合いの席で派手に暴れられたら、流石にもう実家も見合い話は持って来ないかなー……」

(孫の顔を見せろって今度は言われたけど……)

「それじゃあ簀巻きで吊るすのはコレぐらいにして」

「嘘を吐いていた分の埋め合わせをしてもらうクマ」

「今日は四人で寝るにゃ」

「えっ!? あの、それはいくら何でもいろいろとまずくないかな?」

「断るなら憲兵に突き出すにゃ」

「斬新な脅しだねー……」

「いいから一緒に寝るクマ」

「まだ嫌だとかぬかしやがるなら脛蹴りますよ?」

「僕も一応男なんだけど?」

「どうせ何もして来ないにゃ」

「それに、四人で寝れば暖かいクマ」

「暖房いらずです」

「……はぁ、分かったよ。その代わり、手が身体に触れたりしても怒らないでね?」

「大丈夫にゃ、問題にゃい」

「オッケーだクマ」

「今更何言いやがってんですか」

(……今日から僕、夜寝れるかなぁ……)




 お腹に漣、向かい合わせで多摩、背中に球磨という形に落ち着きました。

(僕は落ち着けないんだけど!?)

~毎夜~

「――痛っ!?」

「鮪……美味いにゃ……」

(また多摩君は鮪食べる夢見てるんだね、寝顔可愛いなぁ)

「んー……逃がさないクマー……」

(球磨君は背中に擦りついてるし、夢で鮭でも捕まえてるのかな?)

「ご主人様ー……ふへへ……」

(漣君も何か幸せそうな顔してるね。僕なんかに抱き着いて落ち着いてくれるのは嬉しいなぁ)

「――ただ、こんな可愛い子達に囲まれて寝ろって無茶じゃないかなぁ……そもそも、警戒心ゼロって女の子としてダメだよね、うん」

「すにゃー……」

「クー……」

「すー……」

(……やっぱり可愛いなぁ)




 寝顔を見るだけで幸福感を得られる提督。彼を警戒しろという方が、無理な話である。

~ラッキースケベ?~

(……? 何か柔らかいモノが手の中に――っ!?)

「んにゃー……」

(どうしよう多摩君の胸触ってる柔らかい幸せいやそうじゃなくて早く手を離さないといやでも多摩君に腕が掴まれてて無理に引き剥がそうとしたら起きちゃうだろうしだからといってこのままはダメだよねどうしようどうしようどうしよう!)

「――にゃ?」

「あっ」

(起きた、終わった、色々終わった……)

「……何でお前、多摩の胸触ってるのにゃ?」

「あの、聞いて? わざとじゃなくて起きたらこうなっててね? 決して触ろうと思って触ったわけじゃ――」

「多摩はまだ眠いにゃ、触りたいなら起きない程度にするにゃ……」

「へ? いや、あの、多摩君?」

「何にゃ……眠いって言ってるにゃ……」

「僕を簀巻きで海に放り込まないの?」

「下らない事聞くんじゃないにゃ、もう寝るにゃ」

「あっ、うん、お休み」

(――っていやいやいやいや胸触ったままなんだけど!? 僕どうすればいいの!?)

「すー……にゃー……」

(よし、意識を違う方向に逸らそう。背中には球磨君の柔らかい胸が当たってて漣君はこっちを冷ややかな視線で――ん?)

「お、おはよう、漣君……」

「――覚悟は、いいですかねぇ?」

「あっ、はい」




 漣の一発により提督が絶叫し、四人共しっかりと目が覚めました。

(触るだけで揉まれなかったにゃ)

(まだ寝たかったクマ)

(そのうち私だって二人ぐらいには大きく……)

(やっぱり四人で寝るの無理があるんじゃないかなぁ……)

~髪が伸びてきた~

「そういえば多摩君、髪伸びてきてない?」

「秋と冬は寒いにゃ、少し長い方が暖かいにゃ」

「そっか、冬毛に生え変わるわけじゃないもんね」

「猫じゃないから当然にゃ」

「でも前髪はちょっと鬱陶しくない?」

「……確かに、ちょっと鬱陶しいにゃ」

「散髪行きたいならお金出すよ」

「他人に髪触られるの好きじゃないにゃ」

「アレ? 僕、頭撫でる時に結構触ってた気がするんだけど……」

「他人って言ったにゃ、お前は特別だからいいんだにゃ」

「特別なの? そう言われるとちょっと嬉しいなぁ」

(こう言ってもコイツはどうせ多摩に自分からは触らないんだろうにゃ……)

「ふっふっふー、妹が困っているようだからお姉ちゃんが助けてあげるクマ!」

「お引き取り願うにゃ」

「遠慮しなくていいクマ。球磨が多摩の髪切ってあげるクマー」

「球磨君、話聞いてたの?」

「廊下歩いてたら聞こえてきたクマ。だからノープロブレムクマ」

「じゃあ切ってあげてくれるかな。球磨君器用だし、多摩君も安心でしょ?」

「全く安心出来ないにゃ」

「えぇー……」

「いいから多摩はこっち来るクマー」

「ちょっ、離すにゃ! 球磨に切られるぐらいなら自分で切るにゃ!」

「遠慮しなくていいクマ、可愛く切ってあげるクマ」

「やーめーるーにゃー!」

(……大丈夫、だよね?)




 無事に切り揃えてもらえたものの、“あっ”とか“ぐげっ”とか聞こえてきたこともあり、多摩は二度と球磨には髪を触らせなくなりました。

「漣ー髪切らせて欲しいクマー」

「ストップ、近付きやがったら撃ちます」

(球磨君が飽きるまで僕も逃げようかな……)

~中古ゲーム(SFCのいた〇ト2)を皆でプレイ~

「多摩がこのエリアは独占にゃ」

「そう簡単にはさせませんよ、五倍で買います」

「あっ、漣やめるにゃ!」

「球磨はのんびり便乗しながら株で儲けるクマー」

「僕は目の中からいつになったら出られるのかなぁ……」

「よし、79番引いたにゃ。コレでまた買い戻すにゃ」

「くっ……こうなったら増資で一気に株の値段上げて対抗してやります」

「77番引いたクマ、5株ずつもらえるクマー」

「1・2・3・4・5。また目から出られなかったかぁ……でも、独占出来ちゃったし良かったかな」

「地味にあそこ危ないにゃ……」

「今飛んだらかなりヤバいですね……」

「ってそんなこと言ってたら球磨が飛ばされたクマー!」

「あっ、球磨君いらっしゃい」

「帰るクマ、次で絶対に帰るクマー!」




 ――ゲームは楽しく、仲良くやりましょう。

「さぁご主人様、取り引きです」

「単装砲突き付けながらは取り引きって言わないよ!?」

(球磨がジュース飲みに行ってる間に代わりに操作してやるにゃ)

「あっ、コラ多摩! 球磨の順番だクマ! 勝手にやっちゃダメクマー!」

~勝者と敗者~

「一位は多摩にゃ」

「二位は私ですね」

「三位は球磨だクマ」

「三人とも、リアル交渉は無しだよ……」

「言い訳は聞きたくないにゃ、負けたんだから素直に言うこと聞くにゃ」

「さーてと、何をしてもらいましょうかねぇ」

「悩むクマ」

「で、出来れば簡単な罰ゲームがいいかなぁ……」

「分かったにゃ」

「簡単な、ですね?」

「シンプルなやつにするクマ」

(え、笑みが怖い……)

~多摩からの罰ゲーム~

「一分間多摩を抱っこするにゃ」

「抱っこすればいいの? 良かった……何されるのかとビクビクしてたよ」

「ほら、早くするにゃ」

「うん、分かったよ」

(――ってスムーズに受け入れちゃったけど、身体密着するんだよなぁ……感触とか意識しないように気をつけないと……)

「――落としたらもう一分追加にするから気をつけるにゃよ?」

「へっ? それどういうこぉっ!?」

 ――れろれろ。

「ちょっ、多摩君、耳舐めるのは、流石にぃっ!?」

「気合い入れるにゃ、落ちそうにゃ」

「今耳にフーッてしなかった!?」

「したにゃ、罰ゲームなんだから当然にゃ」

(予想以上にキツいよこの罰ゲーム!)

「因みに今ブラ着けてないにゃ」

「あー! あー! 聞ーこーえーなーいー!」

 ――れろ。

「ひぅっ!?」

(コレ、結構クセになりそうにゃ)




 一分後、力尽きて使い物にならない提督が出来上がりました。

「こりゃ私達は明日ですね」

「楽しみにしとくクマ」

~漣からの罰ゲーム~

「お……お手柔らかに……」

(何かプルプル震えて小動物みたいですねぇ……)

「安心しやがって下さい。私は多摩みたいな事はしませんから」

「ほ、ホントに?」

「えぇ、簡単なものを考えました」

「どういう罰ゲームなのかな?」

「四十秒間、私に好きって言い続けて下さい」

「……えっと、罰ゲームだよね?」

「はい、拒否権はありやがりませんからね?」

「あー、うん。分かってるよ」

「じゃあ始めやがって下さい」

「料理上手な漣君が好き。憎まれ口叩きながら真面目な漣君が好き。ウサギのぬいぐるみ抱き締めて幸せそうな漣君が好き。それから――」

「ストップストップストー―――ップ! 何ですかその前半部分! 私を悶死させやがる気ですか!?」

「いや、ただ好きって言うのも失礼かなって思って」

「こんなん四十秒も続けられたらこっちの身が持ちませんよ! 二十秒にしやがって下さい!」

「漣君がそれでいいならいいけど……じゃあ、続けるね? たまに見せてくれる笑顔が好き、僕なんかと一緒に安心してくれるところが好き――」

(何ですかコレ何ですかコレ! 私のが罰ゲームみたいな感じになってやがんですけどぉぉぉぉっ!?)




 二十秒後、あまりの恥ずかしさに脛に強烈な一撃を喰らわせて逃げる漣の姿があった。

(た、立てない……コレが罰ゲームだよ絶対……)

~球磨からの罰ゲーム~

「立てないし、球磨君のはまた明日にしてくれない?」

「立たなくていいクマ」

「立たなくていいって、今度は何をやらされるの……?」

「髪、梳いて欲しいクマ」

「本当に、それだけ?」

「二十秒じゃあんまり何もしてもらえないクマ。それに、誰かに梳いてもらうのちょっと憧れてたクマ」

「……うん、分かった。櫛を貸してもらえるかな?」

「お願いするクマ」

「――多摩君もだけど、球磨君も綺麗な髪だよね」

「そう言ってもらえると嬉しいクマ。結構手入れ大変なんだクマ」

「いつまでも触ってたくなるね、二十秒じゃちょっと名残惜しくなりそうだよ」

「別に球磨は二十秒でやめてもらわなくてもいいクマ。むしろ続けて――」

「フシャー!」

「痛ったぁぁぁぁ!?」

「さっさと離れるにゃ二人とも」

「何するクマ! 邪魔するなんて酷いクマ!」

「二十秒って約束にゃ、それ以上は許さないにゃ」

「少しは融通利かすクマッ!」

「約束は約束にゃ!」

「あの、二人とも喧嘩しないで、ね? 喧嘩やめてくれたら二人とも髪梳いてあげ痛っ!?」

「二人? 今二人って言いやがりませんでした?」

「も、戻ってきたんだね漣君……」

「私も梳いて下さいませんかねー? ご・主・人・様?」

「あはははは……はい」

(罰ゲーム関係無くなってるよね、とか言い出せそうにないなぁ……)




 この後腱鞘炎になりそうな程髪を梳くハメになり、提督は書類が二日ほど書けなくなりましたとさ。

(う、腕が……)

(次も一位目指すにゃ)

(気持ち良かったですねー……)

(また髪梳いてもらいたいクマ)

提供されたネタは明日にでも、ネタ不足になる心配は無いのでその辺はご心配無く

~皆が冷たい?~

「漣君、この書類なんだけど」

「……」

「あの、漣君?」

「……」

「ごめん、忙しいんだね。後にするよ」

(……すっごく胸が痛みやがるんですけど、コレ)




「多摩君、一緒に柿食べない?」

「いらないにゃ」

「柿、嫌い?」

「……」

「うん、分かった。次からは違うものにするね」

(……柿食べたいにゃ)




「球磨君、一緒にゲームでも――」

「忙しいクマ、後にして欲しいクマ」

「……うん、邪魔してごめん。じゃあね」

(……ゲーム一緒にしたかったクマ)




「――で、アイツの様子はどうにゃ?」

「ちょっと冷たくして更に気を引こう作戦、うまくいったクマ?」

「いや、それがですねぇ……」
(嫌われた嫌われた嫌われた嫌われた嫌われた嫌われた嫌われた嫌われた嫌われた……)

「何にゃ、あの負のオーラの塊みたいにゃの……」

「目が死んでるクマ……」

「ご主人様の豆腐メンタルじゃ耐えきれないみたいなんで、この作戦は失敗ですねー……」

「とりあえずアレどうにかするにゃ」

「見るに堪えないクマ」




 この後提督が元に戻るまで、一週間かかりました。

すいません、明日はちょっと無理になりました……

次の更新は多分明後日になります……

~二度目の~

「ご馳走になりに来ました」

「いらっしゃい、赤城さん」

「ようこそにゃ」

「茄子とじゃがいもで作れる料理ありったけ作りました。召し上がって下さい」

「飲み物もバイト先からいっぱいもらってきたクマ」

「おもてなし、ありがとうございます。あの時の猪も大変美味しかったです」

(本当に食べたんだ、アレ……)

「お味の方はどうです?」

「間宮さん達とはまた違った独特な味付けで、美味しいですよ。コレはご飯が進みますね」

「お代わりよそうクマー」

「はい、ありがとうございます。――ところで、一つお聞きしたいことがあるのですが」

「何にゃ?」




「猪、まだ山に居ますか?」

~猫~

「うぅ……今日も外は寒いにゃ――にゃ?」

 ――……みぃ。

「っ!?」




 ――執務室。

「獣医! 獣医ってこの近くだとどこにあるにゃ!?」

「ど、どうしたの多摩君、血相変えて」

「いつものあの猫が怪我で弱ってるのにゃ! すぐに獣医に連れて行くにゃ!」

「いつものって、あの白猫が……? 分かった、僕も準備して一緒に行くよ」

「急ぐにゃっ! 多摩は毛布でアイツくるんで外で待ってるにゃ!」




 ――1週間後。

「全く、世話かけさせるんじゃないにゃ」

 ――にゃーお!

「予防接種とかもついでに済ませたし、コレで大丈夫だと思うよ」

(暫くはまた僕達が貧乏生活になりかねないけど……)

「最初は嫌ってやがったクセに、仲良さそうですね」

「まるで誰かさんと誰かさんみたいクマ」

「それ思いっきりブーメランじゃねーですか?」

「球磨には何の事かさっぱり分からないクマー。……でも、多摩が嬉しそうで良かったクマ」

「ですね。まぁ金欠はいつもの事ですし、もやしと茄子とじゃがいもで何とか今月は食い繋ぎましょうか」

「僕も、畑の手入れしてこようかな」

「多摩も畑行くにゃ。お前も一緒に来て、畑見ながら日向ぼっこするにゃ」

 ――にゃーん。




 多摩に完全になついた猫。鎮守府の仲間に正式に加わることになりました。

 ――にゃー。

「ごっ、ゴキブリをくわえてこっち来るんじゃないにゃー!?」

~もうその二文字は必要ないから~

「クソご主人様ーちょっと買い物付き合いやがって下さい」

「うん、いい……よ?」

「? どうしやがりました?」

「えっと、いや、うん、行こうか」

(三人ともたまにこうやって雰囲気ガラッと変えた服とか来てくるから、思わずドキッとしちゃうんだよなぁ……)

「早く行きますよークソご主人様ー」

「あっごめんごめん、ちょっと待って、すぐ行くよ」




 ――商店街。

「で、どうして僕は漣君と手を繋いでいるのかな?」

「……慣れない靴履いたんで、歩きにくいんですよ」

「買い物行くのに何でそんな靴履いたのさ」

「私だって女の子なんです。察しやがって下さい」

「商店街にカッコいい店員さんが居る店でも――って痛い!?」

「踵が凶器になってますんで気を付けやがって下さいねー?」

「僕何か気に障るようなこと言った……?」

「的はずれなこと言いやがった罰です」

「うーん……僕と一緒に歩くから、とか?」

「正解したので、これからはずっとご主人様って呼んであげます」

「ははは、そんなはずな――え?」

「ほら、ちゃっちゃと買い物済ませて帰りますよ、ご主人様」

「漣君? どういうことかちゃんと説明してくれない? 後引っ張ったら危ないよ!?」

「手繋いでりゃ平気ですよ」

「質問にも答えてよ漣君!」

「言葉通りの意味ですよー」

今回はここまで、また多分夜に

出張→基本的にほぼ無し。書類のやり取りが主で、むしろ鎮守府からは出るな離れるなという感じ

他鎮守府→事前に知らされていたり、知っていたりが多い。ここの提督は新米で全く事前情報が無かったからこんなことに

元帥があきつ丸を派遣している理由の一つが、こういった鎮守府へのフォローだったりする

一応、あきつ丸や赤城を通じて大鳳鎮守府とは若干交流あり

~賭け~

「チェックメイトだクマ」

「また負けた……」

「次オセロやるクマ」

「そこの二人、いい加減仕事しやがって下さいねー」

「後でやるクマ」

「ちょっと待ってね漣君。晩御飯のオカズ全部賭けちゃったから、このままだと白ご飯だけになっちゃうんだよ……」

(はぁ……何やってんだか……)

「次球磨が勝ったら、提督のシャツ一枚寄越すクマ」

「シャツなら自分のあるでしょ? 何で僕のを?」

「細かいことはいいんだクマ、さっさと始めるクマ」

(私も後でやりましょうかね)

「角もらったクマ」

「うーん……本当にこのままだと晩御飯が……」




(アイツのシャツ着心地良いにゃ。もう一着もらっとくにゃ)

~一石二鳥~

「冬用の植え付けも終わったし、ちょっと一息つけるかな」

「ほうれん草早く食べたいにゃ」

「多摩君、ほうれん草好きなの?」

「ご飯に鰹節とほうれん草乗せて、醤油かけて食べたら美味しいのにゃ」

「猫まんまのちょっとした改良版だね」

「別に猫まんまが好きな訳じゃないにゃ」

「あはは、でも僕もそれちょっと食べたいな」

「収穫したら作って食べるにゃ、超お手軽にゃ」

「うん、一緒に食べようか」

「……ちょっと、眠くなってきたにゃ」

「寝るなら部屋に戻って寝てね」

「そうするにゃ」

「……あの、多摩君? 何で引っ張ってるのかな?」

「お前もちょっと休むにゃ。多摩も抱き枕が出来て一石二鳥にゃ」

「僕はこれから書類書かなきゃいけないし、離してくれない?」

「来ないなら暫く口聞いてやらないにゃ」

「それだけはやめて」

「じゃあ来るにゃ」

「はぁ……また後で絶対漣君に怒られる……」

「はーやーくーすーるーにゃー」

「分かったから襟首掴んで引っ張るのやめてくれない? 僕は猫じゃないんだけど」

「いつも猫扱いする罰にゃ」




(ご主人様はいつまで多摩と二人で畑弄りがってんですかねー……)

(提督早く戻るクマ……漣がめっちゃ不機嫌で怖いクマ……)

~奥さんは誰?~

「今日はお一人様二点までの商品が結構ありやがるんで、頼みますよ」

「ご飯の為にゃ」

「球磨に任せるクマ」

「お店の人には悪いけど、経済的に厳しいからなぁ……」

 ――あらあら、仲の良い家族ね。

 ――旦那さんも優しそうだし、奥さんが羨ましいわ。

「……照れるにゃ」

「奥さんですか、いい響きですねー」

「優秀な奥さんクマ」

「ん? アレ、僕達のことなの?」

「多摩とお前にゃ」

「私とご主人様です」

「球磨と提督だクマ」

「家族だから皆でしょ?」

(コイツ、奥さんの部分聞いてないにゃ……)

(難聴属性とかいりませんよご主人様)

(家族って思ってくれてるのが地味に嬉しいクマ)

「手、繋ぐにゃ」

「私も繋ぎます」

「じゃあ球磨は多摩と繋ぐクマ。たまには妹ともいいもんだクマ」

「あはは、何かいいね、こういうの」




 四人で出掛ける時は皆で手を繋ぐようになりました。

~月見~

「丸いにゃ」

「晴れて良かったですねー」

「団子美味しいクマ」

「球磨君は月よりお団子みたいだね」

「全部食べちゃダメにゃ。多摩のも残しとくにゃ」

「あまり急いで食べやがると喉に――」

「ぐぅっ!?」

「球磨君!?」

「言わんこっちゃないですね全くもう! ほら、お茶飲みやがりなさい!」

「んぐっ、んぐっ、ぷはぁ……助かったクマ」

「食い意地が張ってるからそんなことになるにゃ」

「無事で良かったよ、ちゃんとゆっくり食べようね?」

「そうするクマ。提督、あーんクマ」

「いや、自分で食べれるから大丈――むぐっ」

「いつぞやの仕返しクマ。大人しく食べるクマ」

「ズルいにゃ、多摩も食べさせるにゃ」

「ほいさっさー」

「ちょっ、三人ともやめ――むぐっもがっ!?」

「どんどん食べるクマ」

(一口かじって間接キスするにゃ)

「まだまだありますから召し上がって下さいねー?」

(団子地獄!?)




 その後、わんこ団子状態で百個程食べさせられ続けました。

(し、暫く団子見たくないなぁ……)

~虫の合唱~

「あっ、虫が鳴いてる」

「本当ですね」

「実家の近くでもよく鳴いててね、田んぼもあったから時期になると蛙なんかも鳴いてたよ」

「結構うるさいんですよねぇ……」

「あはは、慣れれば気にならなくなるよ――ん?」

 ――クマー。

 ――にゃー。

「……何で虫の合唱に混じって、聞き覚えのある声が聞こえてきやがってるんでしょうかね?」

「うーん……そういう気分だったんじゃない?」

 ――クーマー。

 ――にゃー。

~来客~

「失礼します」

「あの、どちら様でしょうか……?」

「申し遅れました。一航戦、加賀です。こちらに“赤城”という艦娘が立ち寄りませんでしたか?」

「赤城さんなら二日前に来ましたけど、彼女がどうかしたんですか?」

「七桁の飲食代の請求書が鎮守府に届いたので、一度捕まえてお灸を据えようかと」

(な、七桁!?)

「アレ程食べ放題のお店にして下さいとお願いしたのに……。では、また見かけましたら連絡をお願いします」

「はい、分かりました」

「それでは失礼します」

(……凄く厳しそうな人だったなぁ)




「赤城さん、帰りますよ」

「ずんだ餅、加賀も食べますか?」

「艦載機を操りながら物を食べるのはやめて下さい」

次回はお風呂、また明日

~銭湯~

「……やっぱり、私よりはデカイですね」

「勝手に触らないで欲しいにゃ」

「どっちか髪洗うの手伝って欲しいクマ」

「――大きさは同じぐらいですけど、多摩のは柔らかくて球磨のは弾力がありやがりますねぇ……」

「っ……漣、胸揉まないで欲しいクマ」

「そんなに気にしなくても、そのうち漣も大きくなるにゃ」

「そりゃそうなんですが、やっぱり気になるもんは気になるんですよ」

「話しながら揉むんじゃないクマー!」

「……好きな人に揉まれると、大きくなるってよく言いますよね?」

「アイツには荷が重いにゃ」

「んぅ……もう、揉んじゃダメクマァ……」




(壁が薄いから聞こえてるってこと、分かってるのかなぁ……)

~湯上がり~

「ホカホカにゃ」

「たまには銭湯ってのもいいもんですねー」

「提督ー牛乳飲みたいクマー」

 ――そこのお兄さん、呼ばれてるよ?

(はぁ……球磨君ってばもう……)

「すいません、コレで彼女達に牛乳をお願いします」

 ――はいよ。

「ありがとだクマー」

「球磨、せめて前隠すにゃ」

「また風邪ひきやがっても知りませんよ?」

(だから、全部筒抜けなんだけどなぁ……)

~帰り道~

「また来たいにゃ」

「球磨も来たいけど、漣とはもう嫌だクマ」

「もうしませんって、そうむくれないで下さいよ」

「喧嘩しないで仲良くね?」

「仲良く揉み合えばいいにゃ。それかお前が揉むにゃ」

「何の話か分からないし、僕は今回内容的に巻き込まれたくないかなぁ」

「前も触るだけで揉まなかったにゃ、ちょっと女としての自信無くすにゃ……」

「クマ? 何の話だクマ?」

「胸好きエロご主人様」

「あの、せめて続きは鎮守府に帰ってからにしてくれない? 夜だし人通りは少ないけど、僕への視線が突き刺さるように痛いよ……」

~星に願いを~

「織姫と彦星、一年に一回しか会えないって辛いね」

「気合いで泳げばいいにゃ」

「溺れちゃうよ?」

「その時はその時にゃ。お前は多摩と一年に一回しか会えなくてもいいのにゃ?」

「うーん……僕も泳ぐかも」

「男見せるにゃ」

「――多摩君。手、握ってもいいかな?」

「お前の男の部分は半分死んでるみたいにゃ」

「そこまで言われちゃうの!?」

「多摩を好きって言いながら、最近は球磨と漣にも優しいにゃ。ちょっとは多摩を優先しやがるにゃ」

「もう男とか関係無くなってるよ、それ……でも、まぁ、うん。僕は今でも、多摩君が好きだよ」

(今なら、あの時のやり直しが出来そうにゃ)

「多摩も、多摩もお前の事が――」

 ――多摩ー! どこ行きやがりましたー!

 ――提督どこだクマー!

「あっ、二人が探してるみたいだね。行かないと」

「……二人とも、タイミング悪すぎにゃ」

「行こう、多摩君」

「言われなくても分かってるにゃ」

(――もう少し、もう少しだけ今のままで我慢してやるにゃ。どうせ時間はまだまだあるにゃ)




 ――『提督とずっと一緒に居たいにゃ 多摩』

~招き猫・招き熊~

「買い食い最高だクマ」

「奢りなら何でもいいにゃ」

「お姉ちゃんらしさをたまにはアピールしないといけないクマ」

「あの真鯛買って欲しいにゃ」

「買い食いの範疇越えてるからダメだクマ」

「球磨はケチにゃ」

「そういうのは相応しい相手にねだるクマ」

「最近漣に財布の紐握られてるらしいにゃ。世知辛い世の中にゃ」

(やっぱり主婦力では漣が一番だクマ……球磨も料理勉強するクマ)




 ――あの子達が食べてるコロッケとハムカツ、美味そうだな。

 ――俺ちょっと小腹空いたし買うわ。

 ――すいませーん、コロッケ三つー!

 ――こっちはハムカツ二つちょうだい。

 ――持ち帰りでチキンカツよろしく。

 ――唐揚げ百個お願いします。

 ――いい加減に懲りてください、早く帰りますよ。

~主婦~

「ご主人様ー」

「何かな、漣君」

「はいコレ、今週のスーパーのチラシです。丸してあるので欲しいのあったら言ってください」

「えっと、因みに丸してある以外のを欲しいって言った場合は?」

「ぶっ飛ばしますよ?」

「あっやっぱり? じゃあ玉葱と薄揚げかな、最近冷えてきたからお味噌汁飲みたいし」

「後は何かあります?」

「特に無いよ、基本的に漣君に任せるのが一番いいしね」

「了解です。お味噌汁……なら後は玉子焼き、しょうが焼き、それに漬物って感じにしましょうかねぇ……」

(本当に漣君が居てくれて助かるなぁ……でも、任せっきりは悪いよね)




 キッチンに四人で立つ機会が徐々に増え始めました。

~手縫いエプロン~

「多摩は猫じゃないにゃ。この猫っ気満載なエプロンは何なのにゃ」

「その方がきっと提督喜ぶクマ」

「多摩はまだマシですよ。私のコレは何なんですかねぇ? この“漣”ってバカでかい刺繍!」

「漣って漢字覚えにくいクマ。コレを機会に覚えるクマ」

「刺繍したならもう覚えたんじゃねぇですか? っていうか今まで覚えやがってなかった事についてじっくり聞かせてもらえませんかねー……」

「冗談だクマ、ちゃんと覚えてたクマ」

(今まで連って書いてたにゃ……)

「そういう球磨はど真ん中にデフォルメ熊ですか」

「球磨は熊好きだクマ」

「多摩は猫なんて――」

 ――にゃ?

「……まぁ、嫌いじゃないにゃ」

「もう素直に好きって言えばいいじゃねぇですか」




「――で、肝心のご主人様ーいい加減に部屋から出てきてくれませんかー?」

「無理! 裸エプロンとかホントに無理!」

「出てこないとドアぶっ壊すにゃ」

「出ーてーくーるークーマー」

「下に服着たらちゃんと出るよ。だから着てって言ってるじゃない」




 騙して引きずり出したものの、刺激が強すぎて即気絶しました。

今日は更新出来そうにありません

明日また書きます

~裏山~

「三人とも大丈夫?」

「大丈夫じゃないにゃ……」

「何で提督はそんなにスイスイ登れるクマ……」

「冗談抜きでキツイです……」

「だから僕一人で大丈夫って言ったのに」

「ひ、一人は危ないにゃ」

「多摩だけに任せられないクマ」

「二人だけじゃ不安です」

(気持ちは有り難いけど、息切れしてる君達の方が危ない気がするなぁ……)

「とりあえず、皆はちょっと休憩してて。僕はその辺で食べられそうなの採ってくるから」

「あんまり遠くに行くんじゃないにゃ」

「何かあったらすぐに呼ぶクマー」

「くれぐれも気を付けやがって下さい」

「うん、じゃあちょっと行ってくるね」

「――アイツ、普段はどんくさそうなのに、何で山だとあんなに速いのにゃ」

「一瞬で視界から消えたクマ」

(こういうのもギャップ萌えっていうんですかねぇ……)




 この後、提督はヘビを使って三人を驚かせようとして、漣のグーパンを鳩尾に喰らいました。

~スポーツの秋?~

「僕はちょっと執務室で書類を――」

「逃がさないにゃ」

「離して多摩君。この前の裸エプロンもだけど、僕はそういうのに耐性一切無いから勘弁して」

「ちゃんとアレは下に水着を着てたにゃ。それに今回は普通に運動用の服にゃ」

「そうですよご主人様。コレはちゃんとした運動用の服ですって」

(まぁ今はハーフパンツが主流で、陸上部の人以外は滅多に履かないって聞きましたがねー)

「こんなの短パンと変わらないクマ」

「変わるよ、だいぶ変わるよ、主に僕の精神衛生に与える影響とか」

「露出してるの足だけだにゃ」

「男子校だったからそもそも女の子のそういう姿を生で見たことないし、僕には十分刺激が強いんだってば!」

「抱き着いたり舐めたりよりはマシだと思うにゃ」

「舐めるのはやり過ぎですし、今後は禁止ですからねー?」

「抱き着くのは禁止じゃないなら、別に球磨はいいクマ」

「三人とも女の子なんだから、気軽にそういうことし過ぎるのはいけないよ。もう少し、自分を大事にしようね?」

(多摩を庇って死にかけた奴には言われたくないにゃ)

(何されても笑って許しちゃいやがりますよねぇ……)

(一番大事にしてないのはきっと提督だクマ)

「あの、心底呆れたって視線を感じるのは何で……?」

~読書の秋~

「漣ー『提督への愛は素手で龍をも殺す』の最新刊、早く読みたいクマ」

「ちょっと待ちやがって下さいよ、まだ読んでる途中なんですから」

(『みかん絵日記』に出てくるこの猫、なかなか可愛いにゃ)

 ――にゃー。

「お前も立って歩いて人語喋れたらきっと面白いのににゃー……」

 ――にゃ?

「うー……球磨も何か読みたいクマ。提督、何か貸して欲しいクマ」

「えっと、『御伽草子』に『罪と罰』、『こころ』、『破戒』に――」

「もういいクマ。提督からは借りないクマ」

「後、『こげぱん』」

「何でそのラインナップからそれが出てくるクマ!?」

「何か好きなんだよね、コレ」

~続・読書の秋~

「提督、もっと本欲しいクマ」

「うーん……今はちょっと買うのは難しいかなぁ」

「買うのはダメですが、貰う当てならありますよ?」

「そうなの?」

「何でも本を部屋に持ち込みすぎて、同室の子達から怒られた艦娘がいるみたいです。ほら、例の赤城さんの居る鎮守府です」

「あぁ、あそこの……それならちょうどいいかもね」

「何でもいいから欲しいクマー」

「じゃあ引き取るって連絡しときますねー」




「――コレ、どうしたらいいクマ……?」

「あはは、こりゃ参ったね……」

「読めないにゃ」

「こっちに勉強出来そうな本もありますから、この際勉強しちまいやがったらどうです?」

「じゃあ、ちょっとだけ勉強してみるクマ」




 優秀な球磨ちゃんにドイツ語スキルが備わりました。

みかん絵日記知ってる人が居てちょっとびっくり……

自〇うさぎは流石に……

次の更新は明日です

クマ「バームクーヘン?」

はっちゃんの持つ本全てから魚雷が出たら楽しそうですけど、流石に市販品からは出ないです

胸部装甲は球磨・多摩でアレをお互いに貸し借り出来る点からお察し下さい

(女としての)戦闘力は好みの問題なんで、お好きな子を一位と思って頂ければいいかと

更新は夜に

主婦力の高い漣
多才の球磨
可愛さ(提督からの視点で見て)の多摩

うむ、戦闘力はどれも甲乙つけがたいな

~腹~

「よしよし、いい子いい子」

 ――にゃー。

「……にゃ」

「ん? 多摩君、どうかしたの?」

「にゃー」

「おへそが可愛い……ってそうじゃなくて、何してるのかな?」

「見たら分かるはずにゃ。お腹見せてるにゃ」

「うん、それは見たら――っていうか見せないで、見ちゃうから」

「別に見られても恥ずかしくもなんともないにゃ」

「来た頃みたいに完全に拒絶されるのも困るけど、ここまで無警戒なのも困るかなぁ……」

「そいつばっかり構うからにゃ。多摩も構うにゃ」

「僕にはそれとお腹見せるのと、どう繋がるのかが分からないんだけど」

「服従のポーズにゃ」

「服従って基本的に犬じゃない? 猫だと無警戒――って無警戒なんだったね今は……」

「早く撫でるにゃ」

「あの、多摩君? 撫でるってどこをかな?」

「寝ぼけたこと言うんじゃないにゃ、お腹に決まってるにゃ」

 ――にゃーん。

「コラ、お前は多摩のお腹をペチペチするんじゃないにゃ」

(じゃれてる今のうちに――)

「うわっ!?」

「逃がさないにゃ」

「逃げさせて、毎日毎日僕の理性をサンドバッグみたいに殴るのやめて」

「……多摩のこと、嫌いになったのにゃ?」

「好きだから困ってるんだってば!」

「じゃあ撫でれば解決にゃ」

「何が解決するのか僕にはさっぱり分からないよ……」

「理性が吹っ飛べば悩まなくて済むにゃ」

「それは解決どころか悪化してるからね!?」




(ヘソ出しは流石に厳しいですね……)

(また風邪引いちゃうクマ)

~大事な物~

「おはようございます……」

「うん、おはよう漣君。何だか顔色悪いみたいだけど、大丈夫……?」

「平気ですよ、ちょっと寝不足ってだけですから」

「そっか……今日は早めに寝るんだよ? いいね?」

「はい、そうします」

(……隠してるけど、泣いた跡が見えるクマ)




「漣、ちょっと話があるクマ」

「何ですか球磨。今から夕飯の準備で忙しいんですがねぇ……」

「泣いてた事バラされたくなかったら、大人しく理由を話すクマ」

「っ!?……バラしやがったら、タダじゃおきませんよ?」

「いいから、何で泣いてたか話すクマ。漣が元気無いと、皆も元気出ないクマ」

「……耳」

「耳がどうしたんだクマ?」

「ぬいぐるみの耳が、取れちまったんですよ……」

「ぬいぐるみって、あの提督に貰ったやつクマ?」

「あの不細工なアレです。持って動いてたら、尖った部分に引っ掛けちまったんですよ……」

(耳が取れて泣くほど大事にしてるとは思わなかったクマ……)

「自分で直そうにも裁縫は苦手ですし、せっかく初めて貰ったプレゼントをあんな風にしたと思うと、ちょっと涙が出て来ちゃいましてね……」

「――事情は分かったクマ。球磨に任せるクマ」




 ――二日後。

「直ったクマ。完璧クマ」

(本当に元通りになってる……直した部分が少し分かる程度で、ちゃんと元通り……)

「ありがとうございます、球磨。ほんっっっとうにありがとうございます!」

「お礼はいいから美味しいご飯作って欲しいクマ」

「じゃあ今日の夕飯は焼き鮭にしますかねー」

「夕飯が今から楽しみだクマ! 漣大好きだクマ!」




 二人が前より更に仲良くなりました。

「通報はここからでありますか?」

今日は機種変更の為、更新が出来ないかもしれません

出来そうならします

操作に慣れるまで更新が少し遅くなるかもしれません

パソコンで更新出来そうな時はそちらで更新します

~首輪~

「首輪が欲しいにゃ」

「首輪が欲しいクマ」

「……二人とも、何か悪い物でも食べた?」

「体調はすこぶる健康にゃ、問題にゃい」

「むしろ元気有り余ってるクマ」

「一応念のために確認するけど、多磨君と球磨君が着けるの?」

「それ以外に無いにゃ」

「確認するまでもないクマ」

「確認するまでもなく倫理的にアウトだよ……」

「ごちゃごちゃ言わずに買うにゃ」

「そんで首に着けるクマ」

「そもそも何で首輪なの? チョーカーとかじゃダメなの?」

「別にチョーカーでもいいにゃ」

「とにかく首輪っぽいのが欲しいクマ」

「うーん……チョーカーなら、買ってあげてもいいよ」

(今月のお小遣いを全部使えば、多分買えるはず……)

「じゃあ今から買いに行くにゃ」

「多磨と色違いがいいクマ」

「じゃあ漣君にも声をかけようね、仲間外れはよくないし」

「置いていったらご飯作ってくれなくなりそうにゃ……」

「呼んでくるクマー」




 三人の首に色違いのチョーカーがつけられました。

~日頃の行い~

「提督ー、お菓子もらったクマ、一緒に食べるクマ」

「そ、そんなにいっぱいどうしたの?」

「商店街歩いてたら、おっちゃんとかおばちゃんがくれたクマ」

「皆に好かれてるんだね、球磨君は」

「多摩もよく魚屋で鯵とか鰯とか貰ってるクマ」

「ジーって魚見てたらくれたにゃ」

「多摩君可愛いからね」

「球磨も可愛いクマ……」

「あはは、ごめんごめん。三人とも皆可愛いよ――そういえば、漣君はどうなの?」

「私ですか? あまり物は貰ったことないですねー」

「そうなの? 球磨君も多摩君も貰ってるなら、漣君も何か貰いそうなものだけど……」

「私の場合は値引きしてもらってるんで」

「……何かごめん」

~タダより高いモノは~

「――三人とも、今から話すことをよく聞いてね?」

「急に改まってどうしたのにゃ」

「まさか、ご飯が食べられなくなったクマ……?」

「それはねぇです。で、何があったんですか、ご主人様」

「実はね、元帥から演習の申請が、来ちゃったんだ」

「……にゃ?」

「演習って、あの演習クマか?」

「私達、自慢じゃねぇですが出撃回数ゼロですよ?」

「うん、だからどうしよう。断るべきかな?」

「断ったら流石に失礼って気がしますねー」

「多摩達は別にやっても大丈夫にゃ」

「球磨も頑張るクマ」

「……分かった、じゃあ受けるね」




 元帥との演習が決定しました。

~建前~

「ボロボロにゃ……」

「駆逐艦一隻に負けたクマ……」

「何なんですかあのぴょんぴょん娘、いくら何でも強すぎですよ……」

「ごめんね、指揮も全然ダメダメで……」

「お前は悪くないにゃ」

「そうだクマ、指揮云々以前の問題だったクマ」

「でも何で今更演習なんて申し込まれたんでしょうかねぇ?」

「練度ゼロの艦娘と戦場未経験の提督では、いざとなった時に戦えないから、だってさ」

「……確かに困るにゃ」

「球磨もそう思うクマ」

「まぁ弾や燃料も用意してくれるって事ですし、今後も継続で申し込まれても問題はねーです」

「このままずっと平和なのが一番なんだけどねぇ……」




 定期的に元帥と赤城達が居る鎮守府との演習が行われることになりました。

~本音~

「元帥、ただいま帰戻りました」

「ご苦労卯月。どうだった、あの新米提督の艦娘達は」

「本当に一度も戦った事が無いのが丸分かりでした」

「うむ、だろうな」

「ですが、連携は一度も戦場に出たことが無いにしては上出来でした」

「もう後三年早く生まれておれば、それなりの成果を挙げていただろうにな、惜しい男だ」

「私もそう思います」

「――さて、もう真面目な話はこれぐらいでいいだろう。楽にしてよいぞ」

「了解っぴょん、あの喋り方は肩が凝るぴょん」

「それはいかんな、揉んでやろう」

「昼間っからセクハラとかあきつ丸に引き渡すぴょん」

「ケッコンカッコカリしておるんだから問題ない!」

「ケッコンカッコカリ制度を権力フル活用で継続させる、その執念が怖いぴょん」

「意中の艦娘の練度が足りず悩む提督達の為にも、ケッコンカッコカリ制度は廃止になどさせんよ」

「逆にあの鎮守府はそれで揉めそうだぴょん」

「それも一興、青春でいいじゃないか」

「……元帥、疲れたからお昼寝したいぴょん」

「じゃあ一緒にベッドに――」

「加齢臭するから近づかないで下さい」

「ファ○リーズをかけられようが一緒に寝るぞ、儂は」

(こんなんでどうやって元帥になれたのか本当に不思議っぴょん……)




 セクハラ発言はするものの、一切触れないので(多分)セーフです。

続きはまた明日

~多摩はベッドで丸くなる~

「多摩君、そろそろ起きて」

「いーやーにゃー……」

「二人は起きて朝御飯の仕度してるよ、多摩君も一緒に、ね?」

「朝は寒いから動きたくないにゃ」

「大丈夫だよ、動いてればそのうち暖かくなるから」

「にゃー……分かったにゃ、起きるから手を貸して欲しいにゃ」

「うん。はい、どうぞおっ!?」

「暖かい抱き枕ゲットにゃ」

「ねぇ多摩君お腹空かない? 早く起きて朝御飯食べよ?」

「食欲より今は睡眠欲にゃ、抵抗するんじゃないにゃ」

「このまま抵抗しなかったらダメな場所に顔を埋めちゃうってば!?」

「大丈夫にゃ、問題にゃい」

「――問題ならあるんじゃねぇですかねー?」

「うちの妹には慎みが足りないクマ」

「チッ……朝御飯にするにゃ、お腹空いたにゃ」

(た、助かった……)

「続きは朝御飯の後にゃ」

「朝御飯食べたら仕事頑張るぞー!」

(コイツ、多摩に何かしようって気は微塵も起きないのにゃ……?)

~リサイクル~

「――荷物? 何処から?」

「アイテム屋って書いてありますねぇ」

「アイテム屋って何にゃ……」

「アバウト過ぎるクマ」

「手紙が付いてるね、“家具でお困りの際は是非こちらまで、明石アイテム屋”?」

「あー住所に見覚えあると思ったら、また赤城さんとこですねー」

(あそこ、一体どういう鎮守府なんだろう……)

「それで、中身は何なのにゃ?」

「ちょっと待つクマ――クマッ!?」




「あのー……仕事、しない?」

「無理にゃ」

「無理クマ」

「私も今日はちょっと無理ですねぇ……」

(漣君までダメかぁ……)

 炬燵が鎮守府にやって来ました。

むしろちょっとでも「セクハラ」っぽいことしたら「責任を取(るニャ、るクマ、りやがるです)」でケッコンカッコカリ待ったなし

農家の人「提督の嫁さん?あの語尾に『にゃー』ってつけてる嬢ちゃんだろ?」

魚屋の人「うん?あの人の嫁さんは語尾に『クマー』じゃなかったかい?」

八百屋の人「いやいや、あの二人は姉妹であの鎮守府にお世話になってるだけだよ。」
       「魚屋にも来るだろ?あのちょっと口が悪いが優しいあの子が嫁ちゃんだよ」

~諦めが肝心~

「多摩君、みかん剥けたよ」

「ありがとにゃ」

「提督ー球磨のも剥いて欲しいクマー」

「はいはい、ちょっと待ってね」

「ご主人様のは私が剥いときますね」

「ありがとう漣君」

「炬燵でみかんは最高にゃ」

「お茶も用意してあるから動かなくていいクマ」

「買い物以外では出たくないですねぇ……」

「そうだね」




「――仕事、どうしようか?」

 次の日にまとめて頑張りました。

~ご利用は計画的に~

「今日は多摩君が朝から昼で、球磨君が昼から夜、漣君が夜から寝るまでね」

「分かったにゃ」

「お昼までバイト行ってくるクマ」

「書類片付けて先に夕飯の仕込みでもしましょうか」

「じゃあ僕は畑行ってくるから」

「……背に腹は変えられないにゃ」

「多摩君?」

「コタツに居たいけど、お前が行くなら多摩も行くにゃ」

「休んでていいよ? 寒いでしょ?」

「お前が居ないのにぬくぬくしてても、全然気分良くならないにゃ」

「ご主人様、出来ればそれ連れてって下さい。ご主人様が居ないとにゃーにゃー鳴いてうるさそうなんで」

「多摩は鳴いたりしないにゃ」

 ――にゃー。

「お前は寝てていいにゃ」

「多摩君と一緒がいいんじゃないかな?」

「似てますねぇ、多摩に」

「似てないにゃ、全然似てないにゃ」




 結局、二人と一匹で畑に行きました。

~球磨ちゃん、ナンパされる~

「ありがとうございましたクマー」

 ――ねぇねぇ、ちょっといいかな?

「クマ? 何か商品をお探しクマか?」

 ――キミ、可愛いね、仕事終わったら一緒にご飯でも行こうよ。

「そういうのはコンビニのサービスに含まれてないクマ」

 ――いいじゃんご飯くらい、ね? 終わるまで待つからさ。

(コイツ今すぐ殴りたいクマ。でも、揉めたら店長に迷惑かけちゃうから我慢クマ)

「――あの、すいません」

 ――ん? 何か用?

「そこ、退いてもらえますか? 買い物が出来ないので」

(何で提督がここに居るクマ……?)

 ――チッ、良いところで邪魔すんなよな……。

「すいません、急いでいるものですからー」

「いらっしゃいませだクマ」

「買い置きのおやつが切れたから顔を見るついでに来たんだけど、タイミングが良かったみたいだね」

「すっごく助かったクマ」

「とりあえず、帰る時にあの人は居ないと思うから安心して」

「何でだクマ?」

「内緒、強いて言うなら球磨君がいつも頑張ってるからかな? はい、ちょうど」

「何だかよく分からないクマ……ありがとうございましたクマー」




 十分後、ムキムキな商店街のおっちゃん達の襲来により、ナンパ野郎はすごすごと退散しました。

(平和に解決が一番だよね、うん)

~イン・アウト・オン~

「ご主人様、商店街の方達が見回りをするって言い始めたんですが、何か知りませんかねぇ?」

「さぁ、何でだろう?」

「まぁ自分達で守ろうって意識を持ってくれるのはいいことですし、問題はありませんがねー」

「うんうん、地域で結束を固めるのはいいことだよね」

「……じゃあ、私もご主人様と結束をより強く固めちまいましょうか」

「漣君、コタツに潜るのは流石にやめた方がいいよ」

「大丈夫ですよ、すぐに出ますから――ね?」

「……何で僕の膝の上に出てきたの?」

「そりゃー乗る為ですよ」

「座り心地、悪くない?」

「快適そのものです」

「そっか、まぁ休憩中だしいいかな」





「漣ー晩御飯――クマ?」

「どうしたのにゃ?」

「今日は二人で作るクマ」

「……そうするにゃ」

「すー……すー……」

「うーん……ご主人様ー……」

~艦“娘”~

「ご主人様、重たくねぇですか?」

「大丈夫だよ漣君、お米十キロぐらいならまだ軽いから」

(やっぱりそこそこ筋力はあるんですよねー……あっ)

 ――お父さん、肩車してー。

 ――しょうがないなぁ、ちょっとだけだぞ?

「……私達の親は、誰になるんでしょうかねぇ」

「漣君の親? 設計図描いた人になるのかなぁ……それとも建造した人……うーん」

「そんなに悩まないで下さいよ、ちょっと気になっちまっただけですから」

「実の親とかそういう感じの人は分からないけど、今の漣君の保護者は僕だよ」

「保護された覚えはねぇです」

「えぇー……」

「ご主人様は、ご主人様です」

「そもそも僕もご主人様になった覚えは無いよ? それに、お小遣いもらうご主人様は居ないんじゃない?」

「つべこべ言うと来月カットしちまいますよー?」

「ごめん、ご主人様でいいからそれは許して漣君……」




 帰ってから肩車で許してもらえました。

~季節の変わり目~

「へっくしゅん! うぅ、鼻水が……」

(どうしよう、風邪ひいちゃった……バレないように治せばいっか)




「あの、えっと、コレは何かな?」

「球磨が前に飲まされたやつを再現してみたにゃ」

「何でそれが必要なのかな? 後、アレはこんな色はしてなかったはずなんだけど……?」

「さぁ、何ででしょうかねー? ご主人様用の風邪薬が減ってるのも何ででしょうねー?」

(バレてる!?)

「球磨はあの時、提督にすっごぉぉぉぉぉくお世話になったクマ。だから、その恩返しを今ここでするクマ」

「いや、まずは話を聞いて? 多分そんなもの飲まなくても大丈夫――」

「多摩、漣、口開けさせるクマ」

「任せるにゃ」

「観念しやがって下さいねー」

「ひゃめひぇ、ほふはひゃいひょうふひゃはら」

「何言ってるかさっぱり分からないから飲ませるクマ」

「ひゃめひぇぇぇぇぇ!?」




 一日のたうちまわり、一日寝込み、三日目に元気になりました。

「これに懲りたら隠すんじゃないにゃ」

「うん、もう飲みたくない……三途の川が見えそうだったし……」

~夢~

(ダメにゃ、多摩は大丈夫にゃ……だから――)

「よけるにゃ!……夢、にゃ……?」

(嫌な夢だったにゃ……にゃ?)

「――提督、どこにゃ?」




(ちょっと寝る前にお茶飲みすぎちゃったかなぁ、早く部屋に戻ろっと)

「みぃつぅけぇたぁにゃぁ……」

「ひぃっ!? お化け!?」

「誰がお化けにゃ」

「あぁ、何だ多摩君か、驚かさないでよ……どうしたの? 喉でも渇いたの?」

「――夢を、見たんだにゃ」

「夢?」

「お前が……居なくなる、夢にゃ」

「僕はここに居るよ?」

「起きたら居なかったにゃ」

「トイレの度に起こす訳にもいかないでしょ」

「……さっさと戻るにゃ、寝覚めも悪かったし早く寝直したいにゃ」

「嫌な夢を見たから探しに来るなんて、可愛いね多摩く――痛いっ!?」

「何か言ったにゃ?」

「久しぶりだと物凄く痛いよ、多摩君の爪……」

(……やっぱり、コイツの傍に居ると落ち着くにゃ)

「ねぇ多摩君、痛くて眠いの吹き飛んじゃったんだけど」

「知らないにゃ、多摩は寝るから早く抱き枕になるにゃ」

「余計に寝れなくなるから勘弁してくれないかなぁ……」




 翌日からは多摩がしがみついて寝るようになり、起こさないとトイレにも行けなくなりました。

「眠いにゃ……」

「ならしがみついて寝るのやめない?」

「お断りにゃ」

「えぇー……」

~季節は冬へ~

「ねぇ、三人とも辛くない?」

「辛くないにゃ」

「辛くないクマ」

「辛くねぇです」

「うーん……狭くない?」

「狭くないにゃ」

「狭くないクマ」

「狭くねぇです」

(……どうしよう、コタツから一歩も動けない)

「みかん剥いて欲しいにゃ」

「球磨のもお願いするクマ」

「今日は私のもお願いしますねー」

「うん、じゃあまずは腕を解放してくれない?」

「気合いで頑張るにゃ」

「頑張るクマー」

「口があるじゃねぇですか」

「流石に口でみかんが剥ける程、器用じゃないかなぁ……」




 左に多摩、右に球磨、膝に漣。四人寄り添えば冬も大丈夫です。

~やっぱり優秀~

「――出来たクマ」

「今度は何を作ったのにゃ?」

「これからもっと寒くなるから、全員分のマフラーだクマ」

「また手の込んだ編み方で、漣って漢字で入れたりしてやがりませんよね?」

「今回はシンプルにしたクマ」

「多摩のはチェック柄――何で肉球マークがあるにゃ……?」

「私のは青と水色の波みたいな感じ――何で兎が波乗りしてんですかねぇ……?」

「球磨のは黄色とオレンジ色だクマ。提督のはシンプルに黒一色だクマ」

「多摩のもそのぐらいシンプルで良かったにゃ」

「球磨のシンプルの基準範囲、広すぎやしませんか?」

「シンプルに二、三色で作ったクマ。虹色は目が疲れそうだからやめたクマ」

「虹色はそもそも巻きたくないにゃ」

「私も遠慮したいですね」

「球磨も嫌だクマ」




 マフラーで外出時も少し寒さをしのげるようになりました。

~鍋~

「冬になったらやっぱり鍋だよね」

「猫舌には食べづらいにゃ……」

「多摩のは別に作りましたから、すぐに食べれますよ」

「漣大好きにゃ」

「ポン酢と大根おろしで食べるクマー」

「僕は紅葉おろしにしようかな」

「多摩はポン酢だけでいいにゃ」

「私もポン酢だけで食べますかね」

「――うん、この白菜甘くて美味しい」

「椎茸も美味しいにゃ」

「ネギ美味いクマー」

「えのきのこの食感、好きなんですよねー」

「豆腐も温かくて、身体の芯から暖まるよ」

「明日は余りに色々ぶちこんで、寄せ鍋にしようかと思ってます」

「カマボコ欲しいにゃ」

「がんもどき欲しいクマ」

「ご主人様は何かありますか?」

「最後はうどん入れたいかな」

「了解です」




 ヘルシー湯豆腐で心も体もほっこりしました。

~劇~

「また頼まれ事ですか?」

「うん、劇をやってくれないかって」

「……私達の仕事って何でしたっけねぇ?」

「その辺は気にしなくていいんじゃない? 平和って事だし」

「平和なのは結構なんですが、タダ働きなら断りますよ」

「商店街で使える百円券五十枚くれるって」

「二週間後ならさっさと準備に取りかかっちまいましょうか」

(お金が絡むと凄いなぁ漣君……)

「ご主人様もボサッとしてないで、何やるか決めてくれませんかねぇ?」

「えっ? 僕が決めるの? うーん……三人で出来る劇って何だろう」

「何言ってんですか、四人ですよ四人」

「僕は劇とかお芝居は苦手なんでパスしたいんだけど、ダメ?」

「出ないなら三人で“嫌い”って連呼してやります」

「四人じゃ限界があるから商店街の人に大道具は任せて、電話で頼んで出演者も増やそうか。劇は一風変わった桃太郎とかどうかな?」

「最初っからそのやる気出して下さいよ。じゃあその方向で多摩と球磨にも話しときますね」

(村人Aとかにしてもらえば出演はしてることになるし、それで切り抜けよう……)




 桃太郎役に提督が決定しました。

「何で僕なのさ!?」

~桃太郎っぽい?~

 ――むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが居ました。

 ――おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。

「あっ、大きな美味しそうな桃が!」

 ――洗濯しているおばあさんの前に、上流から桃が流れてきました。

 ――早速食べようと手刀で割ります。

「ていっ!」

「痛っ!?」

 ――何と割れた桃の中から、青年が出てきたではありませんか!

 ――おばあさんはその青年を家へと連れ帰り、おじいさんに会わせることにしました。

「おじいさん、貴重な労働力ですよ」

「やりました。これで前より作業が捗ります」

「あ、あの……僕は鬼退治に行きたいんですけど……」

「鬼よりご飯です!」

「今日は肉じゃがにして下さい」

 ――桃から出てきた青年は、このままではダメだと手近にあったキビダンゴの入った袋を掴み、家を出ます。

 ――後ろから猛追するおじいさんとおばあさんを振り切り、桃青年は鬼退治へと旅立ちました。

~桃太郎っぽい?part2~

 ――桃青年はキビダンゴだけで鬼を倒せるわけが無いと思い、仲間を探すことにしました。

「ねぇ猫さん、このキビダンゴをあげるから仲間になってくれないかな?」

「猫ってことに今回はしてやるにゃ、仲間になってやるにゃ」

「ありがとう、はいキビダンゴ」

「いただきますにゃ」

「痛い痛い痛い!? 指ごと食べちゃダメだよ!?」

 ――ガブリ、猫はキビダンゴを摘まむ指ごと口に含みました。

 ――桃青年が指を引き抜こうとしますが、猫は一向に離しません。

 ――そこへ、一匹の動物が現れました。

「うーさーぎードロップキーック!」

「うにゃ!?」

 ――突如現れた兎が猫を蹴飛ばし、桃青年の指はようやく解放されました。

 ――兎はハンカチを取り出し、桃青年の指を拭きます。

「全く、躾のなってない猫ですねぇ」

「何するにゃ兎!」

「ご主人様、お腰のキビダンゴもらいますね」

「あっ、うん、どうぞ」

 ――腰から勝手に一つキビダンゴを取り、兎は食べました。

 ――これでお供は二匹です。

「後一匹お供が欲しいね」

「もうそこに居るにゃ」

「えっ!?」

「むぐむぐ……クマ?」

 ――桃青年が振り向くと、茶色く大きな熊がキビダンゴを貪っていました。

 ――どうやら腰にあった袋を、巨体に見合わぬ素早さで抜き取ったようです。

「えっと、仲間になってくれるの?」

「仲間になるクマ、その代わりお前を冬眠中の抱き枕にするクマ」

「だ、抱き枕!?」

「ダメにゃ、コイツは猫の喉を一生撫でる重要な使命があるのにゃ」

「兎は寂しいと死んじまうとか死んじまわないとか言われてるんで、連れて帰って一緒に居てもらいます」

「なら、鬼を一番多く倒した奴が、この男を貰うってことでどうだクマ?」

「望むところにゃ」

「徹底的に根絶やしにしちまうのね!」

 ――闘志を燃やしたお供に連れられ、桃青年は鬼退治に向かいます。

 ――目指すのは、鬼ヶ島。

「お供に連れられてって、コレ桃太郎だよね……?」

~桃太郎っぽい?part3~

 ――そんなこんなで鬼ヶ島。

「鬼はどこに居るんだろうね」

「探せばすぐに見付かるにゃ」

「そんな必要無さそうだクマ」

 ――“ようこそ鬼ヶ島へ、鬼の里はこちら”。

 ――ご丁寧な事に立て札があり、綺麗な文字でそう書かれてありました。

「探す手間が省けちまいましたね」

「よし、行こうか」

「いざ、鬼退治にゃ」

「頑張るクマ」

 ――三匹と一人は道を進みます。

 ――そのまま五分程歩くと、民家のようなものが見えてきました。

「鬼ヶ島に普通の家なんてあるんだね」

「っていうかアレが多分鬼の里にゃ」

「気を付けるクマ」

「普通の民家に住んでるとか、生活感溢れる鬼ですねー」

 ――慎重に近付く三匹と一人。すると、近くの草むらから何かが飛び出しました。

「久しぶりのお客様っぽい!」

「道には迷いませんでしたかー?」

 ――現れたのは頭に角のある二匹の子鬼。赤い目の女の子と、頬っぺたがもちもちしていそうな女の子です。

「……ねぇ、この子達退治するの?」

「めっちゃ友好的にゃ」

「鬼ってもっと狂暴なイメージだったクマ」

「こっちを油断させといて、頭からガブッといかれるかもしれませんよ?」

 ――兎だけは警戒を緩めず慎重です。でも、なんとなく敵意が一切無いのは兎にも分かっていました。

 ――子鬼二匹に促され、三匹と一人は里の少し奥まで足を踏み入れます。

「神通さーん、お客様が来たっぽい!」

「案内してきましたー」

「二人とも、御苦労様でした」

 ――出てきたのは、綺麗で凛々しい女性の一角鬼。どうやら彼女がこの村で一番偉い鬼のようです。

「本日はこの村にどのようなご用件で来られたのですか?」

「えっと、鬼さんは村を襲ったりはして……ませんよね?」

「人里を、ですか? いえ、そんなことはしていません。村の女は家事と育児、村の男は畑を耕すのに忙しいですから」

「目を盗んでとかは無理なのにゃ?」

「そんなことをしていたら、この金棒でお仕置きされると皆分かっています」

 ――五尺ほどある金棒を手に持ち、村長はにこやかに怖いことを口走ります。

 ――流石にこれにはお供達も怯みました。

「――そういえば、何で鬼退治に来たクマ?」

「理由を聞くのすっかり忘れちまってましたね」

「それは――」

~桃太郎っぽい?part4~

「神様に頼まれたのにゃ?」

「うん、何か急に桃に突っ込まれて町が荒らされたから鬼倒してこいって言われたんだよ」

「でも、鬼さんは荒らしてないクマ?」

「はい、お疑いでしたら里の全員を集めます」

「一体全体どうなってやがんですかねぇ……」

 ――三匹と桃青年と鬼は悩みます。

 ――するとそこへ、天から声が降り注ぎました。

『行かせる世界を間違えました』

「まっ、間違えた!?」

「どういうことなのにゃ!」

「説明するクマ!」

「手違いで巻き込まれた身にもなりやがれってんですよ!」

『神に、何か落ち度でも?』

 ――落ち度だらけですね。

「鬼さんごめんなさい、疑ってしまって……」

「いえ、誤解と分かればいいんです」

「それで、これからどうするにゃ?」

「とりあえず、コイツを抱き枕にするクマ」

「連れて帰るって言ってんじゃねぇですか」

「何言ってるにゃ、喉を撫でさせるにゃ」

「僕は鬼に苦しめられてる人達のところへ行かないといけないから……」

 ――桃青年は、最初の目的を全うしたいと口にします。

 ――ですが、天からの声は無情でした。

『一度そちらに行けば帰って来れませんし、違う世界にも行けませんが?』

「えっ!?」

『既に問題の世界には違う者をハイしました。――派遺じゃなくて派遣? 神に何か落ち度でも?』

 ――落ち度しか無かった天からの声は、それが最後となりました。

 ――使命を失いやることが無くなった桃青年は、途方に暮れます。

「これからどうしようかなぁ……」

「良ければ、この里で暮らしませんか?」

「えっ、いいんですか?」

「はい、使っていない家もかなりありますので」

「猫も住むにゃ、喉撫でさせるにゃ」

「熊も住むクマ、冬もコレで安心クマ」

「一人じゃないなら寂しくはなりませんねー」

 ――こうして、桃青年は鬼の里で畑を耕しながら末永く暮らしましたとさ。

 ――めでたし、めでたし。

「見付けました」

「畑から良い野菜の匂いがします」

 ――めでたし?

~打ち上げ~

「頭に来ました、何故おじいさんでオチ担当なんですか」

「私は畑なんて襲いませんよ?」

「出番少なかったっぽい?」

「綾波どこ行ったか知らない? 明日秘書艦日だから迎えに来たんだけど……」

「何でうーちゃん呼ばなかったぴょん」

「落ち度なんて……不知火には……」

「金棒なんて、私振り回しません……」

「この劇、脚本は誰なのにゃ?」

「提督じゃないクマ?」

「ご主人様が書いたにしては、ご主人様自身が驚いてましたよねえ?」

(この台本、あっちの提督さんから送られてきたんだけど……言っても大丈夫なのかな……?)

~犯人は~

(ふっふーん、やっぱりアタシの書いた脚本は最高だったねぇ)

「見付けましたー」

「綾波!?」

「秋雲、打ち上げに一緒に参加しましょー」

「いやいやいやいや、アタシ関係無いし」

「私、秋雲の脚本だって知ってますよ?」

「何で知って――あっ」

「ほら、一緒に行きましょー」

「ちょ、ちょっと待って、アタシが書いたなんてバレたらヤバいって!? 誰か助けてー!」



 この後、大鳳鎮守府に簀巻きにされた秋雲が運ばれて行きました。

次回は温泉旅行

~慰安旅行~

「って名目で、元帥から温泉旅行の招待券が四人分贈られて来たんだけど」

「やっぱりあの卯月は元帥のところのだったんですねービデオカメラ回してましたし」

「あのとんでもない劇の観賞代がコレって、おかしくないかなぁ」

「とりあえず、貰ったんなら行くっきゃないにゃ」

「レッツゴー温泉だクマ!」

「鎮守府を無人にしちゃうのは、提督としてどうなんだろう……」

「元帥が行けって言ってんですから、いいんですよ」

「温泉玉子食べたいにゃ」

「温泉饅頭食べたいクマ」

「留守番は任せて欲しいであります」

「うん、ありが――あきつ丸さん!?」

「元帥のところの卯月から頼まれたであります。日給一万円であります」

(大変みたいだなぁ、元帥の秘書艦さん)

「お願いしますねー」

「畑もちょっと気にしておいて欲しいにゃ」

「バイト先に休むって連絡入れてくるクマ」




 いざ、温泉旅行へ。

~温泉宿到着~

 ――新米提督様ですね、こちらへどうぞ。

「よろしくお願いします」

「温泉早く入りたいですねー」

「浴衣着たいにゃ」

「卓球するクマ」

 ――ふふふ、仲がよろしいんですね。

「あはは、温泉に一緒に来てくれる程度には」

 ――布団はお一つでよろしいですか?

「あの、普通に四つ準備して――って同じ部屋なんですか!?」

「当たり前じゃねぇですか」

「当然にゃ」

「何の問題もないクマ」

(今日もまた寝れないのかー……)

 ――若いって良いですねぇ。

「良くありません。色々良くありません」

「ほら、さっさと荷物置いて温泉入っちまいましょう」

「三つ大浴場があるらしいにゃ」

「球磨達は部屋のでいいクマ。温泉備え付けの部屋とは元帥も太っ腹だクマ」

「――え?」




 ラッキースケベ等無い、何故なら提督は攻略される側である。

「僕は大浴場に入るってば!」

「はいはーい、観念しましょうねーご主人様ー」

「ちゃんとタオル巻くにゃ、何慌ててるのにゃ」

「寒いから早く入りたいクマ」

「はーなーしーてー!」

~入浴中~

(僕は一人で入ってる僕は一人で入ってる僕は一人で入ってる……)

「良いお湯にゃ」

「極楽極楽だクマー」

「疲れが取れますねー」

(何も見えない何も聞こえない何も見えない何も聞こえない……)

「お前、何してるのにゃ?」

「コレは幻聴コレは幻聴コレは幻聴……」

「水着より見えてる面積少ないのに、変な提督だクマ」

「ご主人様ー目を瞑ったままじゃ頭も洗えませんよー」

「――ねぇ、何で君達平然としてるの? タオル巻いてても下は裸なんだよ? 恥ずかしくない?」

「見られて困るようなことはないにゃ」

「太ってないクマ、球磨はスリムだクマ」

「見られても興奮されるような身体じゃねぇって理解してますよ」

「三人とも、僕は男ってこと理解してるよね?」

「男でヘタレにゃ」

「押されたらダッシュで後退りするヘタレだクマ」

「結局多摩にすらキスも出来ないご主人様が、どう危険だってんですか?」

「前もそうだったけど、そこまで言わなくてもいいと思わない?」

「今タオル巻いてないにゃ」

「出る!」

「そんなに急ぐと転ぶ――転んだクマ」

「うちのご主人様は本当にダメですねぇ……」

~一人と三人~

「――アレ? ここは……?」

「多摩達が泊まってる部屋にゃ」

「えっと、確か温泉に入って、それで……」

「転けて頭打って気絶したのにゃ」

「多摩君がタオル巻いてないとか言うから」

「何で逃げたにゃ」

「逃げるよ、見ちゃダメだし」

「多摩は気にしないにゃ」

「……気持ちは凄く嬉しいよ。でも、やっぱり見ちゃいけないと思うから」

「何でにゃ、多摩はお前のことが――」

「うん、だからダメ」

「……球磨と漣のことを、多摩より好きになったのにゃ?」

「違うよ、そうじゃないんだ」

「だったら何なのにゃ」

「球磨君と漣君のことも好きだか――うわっ!?」

「三股を目指す様な奴は引き裂くにゃ」

「多摩君目が怖いホントに怖いまずは落ち着いて最後まで話聞いて!?」

「……聞くだけ聞いてやるにゃ」

「うん、ありがとう。僕はね、球磨君のことも漣君のことも好きで、大事だと思ってる」

「もちろん多摩君のことはずっと好きだし、告白した時の気持ちは変わってないよ」

「――だから、二人としっかり向き合ってちゃんと答えてから、多摩君にも改めて告白したい」

「それは、心変わりすることもあるってことなのにゃ?」

「無い、って胸を張って言いたいから、今は待ってくれない?」

「――分かったにゃ。もし心変わりしたらお前殺して多摩も死ぬにゃ」

「ちょっとそれは勘弁して欲しいかなぁ……」

「冗談にゃ。多摩も球磨と漣の事好きだにゃ。二人のどっちかに心変わりしても、多摩は責めないにゃ」

「……幻滅、しないの?」

「三股選んだらしてたにゃ。でも、ちゃんと悩んでるならモヤモヤはするけど許してやるにゃ」

「僕にはとてもじゃないけど三股は無理」

「なら、いいにゃ」

「……言ったら、簀巻きで海に投げ込まれるかと思ってたんだけどなぁ……」

「前より好きにさせればいいだけの話だにゃ」

「あの、待ってくれるんだよね?」

「ガンガン押しながら待つにゃ、押しきれば多摩のにゃ」

「それは待つって言わないんじゃ……」

「うるさいにゃ、告白された側なのに待てって言われたんだから多少は強引にいっても罰は当たらないはずにゃ」

「――コレで、我慢してくれない?」

「……キスぐらいして欲しいにゃ」

「抱き締めるだけでいっぱいっぱい」

「……やっぱりヘタレにゃ」

~聞き耳~

「……事実上、フラれてやしませんか私達」

「元々多摩に提督は告白してたクマ、それは仕方無いクマ」

「諦めんですか? っていうか、諦められんですか?」

「球磨は提督も多摩も好きだクマ。だから――諦める気なんてこれっぽっちも無いクマ」

「前後で言ってること違い過ぎやしませんかねぇ……」

「そういう漣はどうなんだクマ」

「私も諦める気なんてさらさら無いに決まってんじゃねぇですか。例え面と向かってフラれても、どこまでもついていきますよ?」

「漣、それはストーカーっていうクマ」

「人聞き悪いこと言いやがらないで下さい。多摩選ぼうが球磨選ぼうが、今まで通りに家事はしてやるって言ってんですよ。どのみち鎮守府からは出られませんし」

「フラれても一緒に居なきゃいけないって、酷な話だクマ」

「仕方ねぇですよ、そんなの最初から分かってた事なんですから」

「――そろそろ二人とも離れてもいいはずだクマ」

「ちょっと長いですかねー?」

「突入するクマ」

「ラジャー」




「いつまで抱き合ってるクマ!」

「はいはい速やかに離れやがって下さいねー」

「覗き見とか趣味悪いにゃ二人とも」

「まさか、全部聞かれてた、とか……?」

「心変わりを希望するクマ」

「可能性があるって言われちゃー諦められねぇですよねー」

「コイツは多摩のにゃ」

「早く離れるクマ」

「引き剥がしちまいましょう」

「痛い痛い痛い痛い痛いっ!? 多摩君爪立ててしがみつかないでっ!?」

「いーやーにゃー!」




 恋は戦争。

~一方その頃、鎮守府では~

「提督殿、暇であります」

『知るか、そんな理由で電話をかけてくるな』

「酷いであります、電話ぐらい付き合って欲しいであります」

『俺は今忙し――コラ千歳! 昼間から勝手にここで酒飲むな! 千代田は部屋に帰れ!』

「楽しそうでありますな……」

『と、とにかくしっかり留守番してこい! じゃあな!』

「切られたであります……仕方無い、畑の様子でも見てくるであります」




「ふむ、良く手入れされているじゃないか」

「うーちゃんはほうれん草あんまり好きじゃないぴょん」

「好き嫌いしてると大きくなれんぞ」

「大きくなったら合法になるから今のままがいいんだぴょん」

「――元帥、何やってるでありますか?」

「あきつ丸か。いや何、畑の栽培をしていると聞いたから視察にな」

「卯月、本当は何しに来たでありますか?」

「未だに艦娘は危険とか言ってる奴等の顔に嫌気が差して、脱走してきたぴょん」

「そこは息抜きと言って欲しいものだ」

「提督殿が知ったらまた呆れるでありますよ?」

「終戦してから連絡も寄越さんガキなど知ったことではないわ」

「連絡くれないから拗ねてるだけだぴょん」

「わざわざこっちから電話で飲みに誘ってやった時には、忙しいと切りよったのだぞアイツは!」

(確か夏休みで客でごった返してた時でありますな)

「元帥、そろそろ戻るぴょん。置いてきた潮が多分そろそろテンパってフリーズする頃だぴょん」

「何故潮に任せたのだ」

「そうしておかないと、元帥が帰ろうとしないぴょん」

「ぬぅ……仕方あるまい、では帰るとするか」

「あきつ丸、また会おうっぴょん」

「さよならであります。――何だかんだと世話焼く卯月も大変でありますな、自分も聞いた通り畑の手入れに取りかからねば」

 ――にゃー。

「ご飯はもう少し待って欲しいであります」




 鎮守府は今日も平穏無事でした。

~仕切り直して~

「ねぇ、僕の話聞いてたんだよね?」

「直接聞いたにゃ」

「聞き耳立ててたクマ」

「そりゃもうしっかりと」

「それなら何でまたお風呂に四人で入ってるのかな?」

「さっきお前のせいで途中で出たからにゃ」

「せっかくあるんだから入らないと損クマ」

「こんなところにまた来れる可能性なんてほぼゼロですからねー」

「……タオル巻いといてね、流石に二回も倒れたくないから」

「分かったにゃ」

「巻いとくから髪洗って欲しいクマ」

「じゃあ球磨の次にお願いします」

「多摩は背中洗って欲しいにゃ」

「人の髪とか洗ったこと無いんだけど」

「洗って泡立ててわしゃわしゃするだけだクマ」

「目に入らないようにしやがって下さいねー」

「多摩は背中にゃ」

「自分でやった方がいいと思うんだけどなぁ……後多摩君、腕引っ張らなくてもちゃんと洗ってあげるから順番ね」

「一分だけ待ってやるにゃ」

「二人で一分とか不可能だから、もうちょっと待ってもらえない?」

「断るにゃ」

「えぇー……」

「じゃあ仕方無いから待ってやるにゃ。その代わり、コイツの背中は多摩が洗うにゃ」

「洗ってくれるの? じゃあお願いしようかな」

「多摩ズルいクマ!」

「コレを最初から狙ってやがりましたね……」

「言ったもん勝ちにゃ」

「球磨君、とりあえずあそこに座ってくれない? 洗えないから」

「うぅ……分かったクマ」

「多摩、今のうちに頭洗ってやりますよ」

「お願いするにゃ」

「本当に球磨君の髪って凄いボリュームだよね」

「髪の手入れに一時間はかかるクマ」

「コラ多摩、動くんじゃねぇです」

「何かくすぐったいのにゃ」

「球磨君、こんな感じ?」

「気持ち良いクマー」

「頭振るんじゃねぇですよ! 目に泡入るじゃねぇですか!」

「だからくすぐったいのにゃ」

 普通に仲良く入れました。

~食事~

「うわー豪華だねー」

「鮪! 鮪があるにゃ!」

「焼き鮭だクマ!」

「普通に買ったら万はいきますねぇ……」

「早速食べよっか――ってもう食べてるし」

「魚の造り美味いにゃ」

「牛肉のタタキも美味いクマー」

「……」

「漣君、蟹剥くのな夢中だね」

「――はい、ご主人様どうぞ」

「あぁ、僕のを剥いてくれてたんだ。ありがとう」

「いただきにゃ!」

「いただきクマ!」

「あっ……」

「蟹も美味いにゃ」

「剥くのは面倒だクマ」

「……そこの二匹、覚悟はいいですかねぇ?」

「にゃ!?」

「クマ!?」

「そんなに蟹食いたきゃ殻ごと食わせてやりますよ!」

「待つにゃ、殻は流石に食べられないにゃ!」

「そんなに強靭な歯は持ち合わせむがぁ!?」

(サザエの壷焼き美味しいなぁ)

「口の中切るにゃ、危ないにゃ!」

「球磨は殻は食べないクマー!」

「いいから食いやがりなさい!」

「三人とも、食事中は大人しくしようね」




 食べ物で遊んではいけません。

~浴衣~

「そういえば感想聞いてなかったにゃ」

「聞かせるクマー」

「一応聞いときます」

「言うまでもなく可愛いよ、浴衣姿見られただけでも来た甲斐があったかな」

「ストレートに言われると、ちょっと照れるにゃ……」

「嬉しいクマー」

「……ちょっと夜風に当たってきますね」

「あっ漣君、外に出るなら僕もついて行くよ」

「ほっといてやるクマ、多分今顔真っ赤だクマ」

「そういう球磨も顔赤いにゃ」

「気のせいだクマ、赤くなんかないクマ」

「うーん……やっぱり心配だからついて行こうかな」

「お前が行くなら多摩も行くにゃ」

「じゃあ球磨も行くクマ」

「うん、なら一緒に行こっか」




 全員冷えて温泉にまた入り直すことになりました。

~帰宅~

「あーやっぱりここが一番落ち着くかも」

「元気してたにゃ?」

 ――にゃーん。

「球磨は一眠りしてくるクマ」

「あきつ丸さん、コレお土産ですんでどうぞ」

「頂くであります。早速帰って食べるであります」

「何か問題はなかったですか?」

「特に無いであります。強いて言うならば、暇なのが問題だったでありますな」

「あはは、それじゃあまた遊びに来てくださいね、お待ちしてます」

「了解であります、それでは」

「――さて、仕事しようかな」




 溜まった書類の山の処理に丸二日かかりました。

~収穫~

「ご飯にゃ、ご飯が欲しいにゃ!」

「多摩君待って、まず収穫しよう」

「収穫にゃー!」

(そんなに食べたかったんだ……凄い勢いで収穫してる……)

「ご主人様ーこっち手伝ってくれませんかー?」

「結構腰にくるクマー」

「うん、ちょっと待ってね」

 ――1時間後。

「皆、収穫お疲れ様」

「漣、早くご飯にゃ!」

「はいはい、すぐに用意しますんで待ちやがりなさい」

「球磨もお腹空いたクマ」

「ほうれん草と鰹節と醤油にゃ!」

「ははは、多摩君本当に嬉しそうだね」

「多摩もいっぱい手入れしたにゃ。だから食べるの楽しみだったのにゃ」

「はい、存分に食べやがって下さい」

「――うん、ちゃんと今回も出来たね」

「美味いにゃ! これならご飯何杯でもいけるにゃ!」

「多摩がここまでほうれん草好きとは知らなかったクマ」

「ご飯多めに炊きましたから、お代わりなら勝手によそって下さい」

「了解にゃ」

「あっ、その前に多摩君ちょっと」

「何にゃ?」

「――ほら、頬にご飯粒付いてたよ?」

「……逆が良かったにゃ」

(逆?)




 協力や助言もあり、今回も上手に出来ました。

~着ぐるみ、再び~

「またですか……」

「あはは、好評だからどうしてもって言われちゃうと断りきれなくて……あっ、もちろんバイト代は出るよ?」

「猫以外を着たいにゃ」

「あー……ごめん多摩君」

「何で謝るのにゃ」

「新しく買うって言ってたから、可愛い兎と猫と熊のにして下さいって言っちゃった」

「……可愛くなかったら久しぶりに爪の餌食にしてやるにゃ」

「だからごめんってば」

「新しい着ぐるみ楽しみだクマ」

「球磨は楽しそうでいいですねー」

「球磨は着ぐるみ好きだクマ、商店街の役に立つのも嬉しいクマ」

「何だかんだ良い人達ばっかですからねー囲まれると暑苦しいですが……」

「それ言っちゃダメクマ」

「多摩君怒らないでよー」

「怒ってないにゃ」

 ――ふにゃー。

「おとなしく肉球ぷにぷにさせるにゃ」

(猫好きになってくれたみたいだし、喜んでくれるとおもったんだけどなぁ……)




 結構ノリノリで着ぐるみを着る多摩の姿が確認されました。

~こたつむり~

「漣君、球磨君どこ行ったか知らない?」

「球磨ならそこですよ」

「そこ?……球磨君、何してるの?」

「寒いクマ、冬眠したいクマ」

「コタツから頭だけ出して冬眠は、やめた方がいいと思うよ」

「部屋の布団は多摩と猫が占領してるんだクマ」

「それ僕のだよね? 自室の布団あるでしょ」

「ここの方が落ち着くクマ」

「まぁ電源は切ってるし、熱すぎる心配は無いだろうけど……」

「提督も一緒に入るクマ」

「いや、僕は仕事あるし」

「仕事なら漣がいるクマ」

「今コタツに入ったらぶっ飛ばされるよ、絶対」

「ご理解戴けてるようで何よりですねー球磨は寒いなら穴でも掘って埋まりやがりなさい」

「そんなの嫌だクマ」

「だったら着ぐるみでも着てりゃいいじゃねぇですか。アレなら保温性抜群ですよ」

「……普段着にしたら大変な時があるクマ」

「……すぐに脱げませんからね、着ぐるみ」

(深くは触れないでおこう)




 お手洗いが大変です。

~布団つむり~

「多摩君、また布団にくるまってるの?」

「暖かいにゃ」

 ――にゃー。

「猫ちゃんも暖かそうだね」

「デカくなってきたからちょっと重いにゃ」

「健康な証拠だよ」

「お前もこっち来るにゃ、一緒にぬくぬくするにゃ」

「今からご飯だからダメ。猫ちゃんごめんね――よい、しょっと」

「にゃ!?」

 ――にゃー?

「多摩君は軽いね」

「……お前からこういうことしてくれるの、珍しいにゃ」

「この前全部洗いざらい言っちゃったし、僕からも少しは何か行動しないといけないかなって」

「このまま球磨と漣に見せ付けるにゃ」

「布団にくるまったまま行くの?」

「一回下ろすにゃ、布団から出るにゃ」

「はい――じゃあ、行こうか」

「もう一回お姫様抱っこするにゃ!」

「また今度ね」

「すーるーにゃー!」




 廊下で追いかけっこして漣にぶつかってしこたま怒られました。

~コートつむり~

「へっくちゅん!」

「漣君、大丈夫?」

「うぅ……中にもう一枚着込んでくりゃ良かったですね……」

「ミニスカも寒い原因だと思うよ」

「可愛さは寒さより大事です」

「そんなの着なくても可愛いんだから、ちゃんと着て風邪引かないようにしようね」

「……ミニスカ、可愛くねぇですか?」

「可愛いよ、でも身体の方が大事でしょ?」

「……そこまで言うなら、次からは気を付けます」

(可愛いって二回も言ってもらえた、えへへ)

「じゃあ今はとりあえず、コートで暖めてあげようか?」

「――はへ?」

「結構コレ大きめだし、漣君ぐらいなら前を開ければすっぽり入るよ」

「いいん、ですか……?」

「寒いんでしょ、ほら」

「じゃ、じゃあお言葉に甘えます」

「はい、どうぞ」

(――暖かいですねぇ、コレ……)




 たまに提督のコートが消えるようになりました。

~バイト代でお買い物~

「おっちゃん、アレ入荷したクマ?」

 ――あぁ球磨ちゃん、入荷してるよ。

「ありがとだクマ」

 ――また欲しいものがあったら言ってね、取り寄せるから。

「よろしくだクマ、早速帰って遊んでみるクマ」




「――で、コレを買って来たの?」

「四人でやるクマ」

「コレ、何なのにゃ?」

「本で遊べるんですか?」

「ちゃんと遊べるように道具そろえてあるクマ」

「筆記用具とメモとダイス、揃ってるね」

「どうやって遊ぶのにゃ?」

「話と自分たちの操るキャラを作って、技能やロールプレイによって事件なんかを解決していくゲームだクマ」

「簡単に言えば、自分達が物語の登場人物になって話を進めていくんだけど、ダイスの出目とお芝居によってはハッピーエンドだったりバッドエンドになっちゃったりするゲームだよ」

「ご主人様はやったことあるんですか?」

「うん、知り合いがこういうの好きでね」

「じゃあ早速説明しながらキャラを作っていくクマ」

「多摩君には僕が作り方教えてあげるね」

「漣には球磨が教えてあげるクマ」

「コツとかあるのにゃ?」

「なるべく探索や戦闘に必要そうなのは抑えておきたいけど、初めてなら好きに職業選んで適当に決めてもいいと思うよ。ダイスの出目で職業決めてもいいしね」

「ならまずはダイス振ってみるにゃ」

「コレってどれが何を表してんですかね?」

「STRが筋力、EDUが教養とかだクマ」

「ふむふむ、じゃあコレは何なんですか?」

「あぁ、それはね―ー」





 ――正気度だよ。

~楽しく愉快なTRPG~

「とりあえず逃げるにゃ」

「ダイス振るクマ」

「――96にゃ」

「あっ」

「もう一回こっち振ってほしいクマ」

「――2にゃ」

「こけて提督のキャラと一緒に倒れたクマ」

「にゃ!?」

「やっちゃったかぁ……」

「ど、どうすりゃいいんですか?」

「漣君、確かライター持ってたよね?」

「はい、持ってますけど」

「僕の持ってる新聞紙に火をつけて、通路燃やしちゃおう」

「ちょ、提督何考えてるクマ!?」

「木造建築って言ってたし、燃えるよね?」

「も、燃えるクマ……でも、逃げ切るには幸運で二回成功してもらうクマ!」

「うん、こけちゃったしそれは仕方ないかな。――5と、3だね」

「何でそこでクリティカルが出るクマ!?」

「燃え移ったの確認した後、多摩とご主人様を起こして逃げちまいましょう」

「脱出にゃ」

「ぐぬぬ……シナリオクリアだクマ、提督に仕掛けたトラップ全部見透かされたクマー」

「初めてにしては作りこまれててよかったと思うよ、僕はだいぶ昔やってたから慣れてただけだし」

「一時的発狂した時はどうなるかと思っちまいましたよ……」

「最後は危なかったにゃ」

「またリベンジするクマー」

「僕も久しぶりにシナリオ考えてみようかな」

「ちょっとルールブック読んで勉強しますかねー」

「多摩も一緒に読むにゃ」





 テケリ・リ、テケリ・リ。

~クリスマス~

「チキンはもう少しで出来ますし、シチューも煮込みはバッチリ、オムライスも準備は済んでますから、球磨が帰ってきたらすぐに始められますね」

「今日は豪華だね」

「おいしそうにゃ」

「クリスマスプレゼント代わりってことで、商店街の方々が大特価にしてくれたんですよ」

「今度また何かお礼しないといけないね」

「また着ぐるみ着てやってもいいにゃ」

「ただいまだクマー」

「お帰り球磨く――ん?」

「何でサンタのコスプレしてんですか?」

「バイトで着てて、着替えるの面倒でそのまま急いで帰ってきたクマ」

「ケーキはちゃんと持って帰ってきたにゃ?」

「ちゃんとここにあるクマ」

「じゃあ球磨も帰って来ましたし、料理作りますね。球磨はさっさと着替えてきやがりなさい」

「了解だクマ―ーその前に提督、コレ似合ってるクマ?」

「うん、可愛いよ」

「良かったクマ」

「球磨、さっさと着替えてくるにゃ」

「わかってるクマー」

「多摩君、僕たちは漣君手伝おうか」

「早く食べたいにゃ」

 ――にゃー。

「お前の分もちゃんとあるから安心するにゃ」




 “家族”と過ごす、楽しいクリスマス。

~大掃除~

「別にやらなくていいにゃ」

「同感だクマ、っていうか四人じゃしんどいクマ」

「大丈夫ですよ、そこまで大々的にはやりゃしませんから」

「最低限度、普段生活で使う空間だけって感じかな?」

「それならまぁなんとかなるにゃ」

「年越し前に重労働クマー……」

「終わったらぜんざい作ってあげますよ」

「頑張るクマ!」

「あはは、漣君は球磨君の扱いが上手いね」

「そりゃ四六時中一緒に居りゃ扱いも上手くなるってもんです」

「お前は多摩とあっちで窓拭きするにゃ」

「うん、そうす――ぐぇっ!?」

「ご主人様ー、くれぐれも“掃除”をして下さいね?」

「わが、わがっでるがら、ぐびじばっでるよ、ざざなびぐん……」

「分かってるならいいんです。じゃあしっかり掃除よろしくお願いします」

「はぁ……はぁ……死ぬかと思ったよ……」

「何やってるにゃ、早く終わらせてぜんざい食べるにゃ」

「ごめんごめん、今行くよ」

「球磨は廊下を掃除するクマー」

「なら私は執務室の掃除から始めますかね」




 ピカピカの廊下、滑る、突っ込む、押し倒す、見られるのコンボを提督がやってのけました。

~見られた&見られた~

「後はここら辺の窓だけかな」

「早く拭くにゃ」

「じゃあ早速拭こ――うおっ!?」

「にゃっ!?」

「あいたたたた、球磨君が磨いた後だったみたいだね。思いっきり滑っちゃっ……た?」

「せめて押し倒すなら下が柔らかいところにして欲しいにゃ」

「ご、ごめん! 直ぐに退くから!」

「焦るとまた転ぶにゃ、だからもう少しこのままで居るにゃ」

「いや、あの、多摩君?」

「いいからギュッてするにゃ」

「今はとにかく起きよ、ね?」

「つれないこと言うんじゃないにゃ」

「多摩君顔近い、間近で見るとやっぱり可愛い、ってそうじゃなくて今はマズイってば!」

「――何がマズイってんですかねぇ……」

「あっ……」

「もう少しでキス出来たのに、漣は気が利かないにゃ」

「私はキスじゃなくて掃除しろって言ったはずなんですがー?」

「あのね、コレは不慮の事故であって意図してこうなったわけじゃ……」

「とりあえず、ぶっ飛ばします」

「ちょっと落ち着こう!?」

「問答無よ――ひゃわっ!?」

「漣君!?」

「そりゃ走って踏み込んだら転ぶにゃ」

「球磨の奴、床磨き過ぎですよ全く……」

「えっと、その、漣君?」

「何です――か?」

「漣はウサギプリントばっかりにゃ」

「……ご主人様」

「な、何かな?」

「ウサギプリントの何が悪いってんですかー!」

「僕何も言ってなぐはぁっ!?」

「さて、掃除に戻るにゃ」

「私だってウサギ以外の可愛いパンツぐらい持ってんですよ! 縞パンとかリボン付きとか!」

「わか、分かった、から、揺らさ、ないで。頭が、クラクラ、してきた……」

「漣、それ以上は自爆するだけだからやめるにゃ」

「私だって身体がもう少し成長すりゃ球磨と多摩の勝負下着みたいなのを買う予定なんですよ!」

「多摩を巻き込むのはやめるにゃー!」




 球磨の勝負下着が本人の知らないところで暴露されました。

~年越しそば~

「あんまりもたもたしてたら年越しちゃうにゃ、早く食べるにゃ」

「多摩君だけざるそばなんだね」

「冷ます暇が無かったんですよ」

「球磨は天ぷらそばにしてもらったクマ」

「ご主人様と私のはたぬきそばにしました」

「じゃあ早速食べようか、いただきます」

「何かあっという間に年越しにゃ」

「ばひほはんまいはっはふは」

「海老フライくわえながらしゃべんじゃねぇですよ」

「皆とここで一緒に過ごし始めてから、もうすぐ一年になるんだね」

「最初は酷い扱いを受けたにゃ」

「全くだクマ」

「もうそれについては許してくれないかなぁ……」

「許さないにゃ、一生面倒見てもらうにゃ」

「永久就職クマ」

「そういうセリフは私に家事スキルで勝ってから言いやがって下さいませんかー?」

「あっ、後三十分で新年だよ」

「呑気に話してる場合じゃなかったにゃ」

「急いで食べるクマ」

「汁跳ねないようにして下さいよ、染み抜き大変なんですから」




 新年最初の行動は――。

~明けまして~

「明けまして好きにゃ」

「明けまして好きだクマ」

「明けまして……す、好き、です……」

「明けまして――え?」

「新年の挨拶にゃ」

「何もおかしくないクマ」

「勢いって大事ですよねー」

「さっきのは挨拶じゃないんじゃないかな……」

「細かい事は気にしちゃダメにゃ」

「それよりも提督、お年玉欲しいクマ」

「お年玉なら商店街で要求した方がもらえんじゃねぇですか? ご主人様の財布には野口さんがあるかすら怪しいはずですし」

「一人五百円が限界かなぁ……」

「お金はいらないから多摩と初詣行くにゃ」

「球磨も初詣行くクマ!」

「そういえば、商店街の会長さんが晴れ着貸してくれるとか言ってませんでしかたねぇ……」

「じゃあ四人で行こうか」




 初詣に行くことになりました。

~手水~

「動きにくいにゃ……」

「着物は初めて着たクマ」

「髪までしてくれるとは思ってませんでしたよ」

「本当に着る服で三人とも雰囲気変わるよね、凄く良いと思うよ」

「思う存分見るといいにゃ」

「球磨も見ていいクマ、目に焼き付けるクマ」

「石段で足下見なかったら転げ落ちちまいますよ、見るなら後にしやがって下さい」

「要するに漣も見て欲しいって事だクマ」

「素直じゃないにゃ」

「うるせぇですよ! さっさと上りやがりなさい!」

「あはは、でも本当に危ないから足下気を付けてね」

「分かってるにゃ」

「問題ないクマ」




「――着いたね」

「手水冷たいにゃ……」

「提督暖めて欲しいクマ」

「うわっ!? 冷たっ!?」

「何やってんですか全く……」

「多摩も暖めて欲しいにゃ」

「カイロ持って来て無かったっけ?」

「あーたーたーめーてーほーしーいーにゃー」

「分かった、分かったから新年早々爪はやめて……」

「……」

「漣、手は見てるだけじゃ暖かくならないクマ」

「分かってますよ、そんなことは……ご主人様ー私も当然暖めてくれんですよねー?」




 提督の手はカイロで暖めました。
 

~参拝~

「二礼二拍手一礼でしたっけ?」

「うん、確かそうじゃないかな」

「五円出すにゃ」

「球磨が持ってるクマ」

「――順番来たね、僕は後でいいよ」

「多摩も後でいいにゃ」

「じゃあお先に」

「鳴らすクマー」

(ずっと鎮守府で一緒に居られますように……)

(皆で明るく楽しく過ごしたいクマ)

「――ご主人様、多摩、交代です」

「先におみくじ買ってくるクマ」

「うん、すぐに行くよ」

「お賽銭入れるにゃ」

(皆が元気で居てくれますように)

(提督の願いを叶えて欲しいにゃ)

「――さて、行こっか」

「大吉引きたいにゃ」




 形は違えど、考える事は同じです。

~お雑煮~

「すましにしますか? 赤味噌で作ります? それとも白味噌で?」

「多摩はとにかく冷まして欲しいにゃ、餅は三つでお願いするにゃ」

「球磨は赤味噌がいいクマ、餅は五つ欲しいクマ」

「僕も赤味噌でいいよ、餅は五つで」

「儂は餅を四つ頼む」

「うーちゃんは二つでいいぴょん」

「わ、私は一つで……」

「了解です。具は小芋と雑煮大根にしとき――ん?」

「あぁ、儂の事は気にせんでくれ。年の始めに固いのは抜きだ」

「元帥、来られるならば事前に連絡を下さらないでしょうか……?」

「ごめんだぴょん、驚かせるって言って聞かなかったんだぴょん」

「卯月ちゃん、私帰っちゃダメ……?」

「ダメぴょん。潮も今回は諦めて付き合うぴょん」

「急に賑やかになったにゃ」

「元帥のじいちゃん、お年玉欲しいクマ」

「く、球磨君!?」

「安心せい、全員分用意しとる」

「やったクマ」

「良いじいちゃんにゃ」

「暫くはまた生活に困らなくて良さそうですね」

「三人とも、ちょっとは遠慮したりしようよ……」




 七人と一匹で賑やかな昼食を楽しみました。(提督を除く)

~嫌です~

「良い艦娘達だな、生き生きとしている」

「とても良い子達ですよ、僕には勿体無いぐらいに」

「――どうだ、一人うちにくれんか?」

「お断りします」

「儂からの命令だとしても、か?」

「絶対に、嫌です」

「ここに居られなくしてやることなど容易い。それでも、儂の命令を聞き入れんのだな?」

「元帥、あちらで卯月さんがゴミでも見るような目を向けてますよ?」

「卯月? コレは違うぞ? 彼の度胸を試そうと思っただけでだな……潮も静かに後退りするのはやめてくれんか?」

「――お前が一番遠慮が無かった気がするにゃ」

「だって元帥はあんなこと言う人じゃ無いし、後ろで卯月さんが頭抱えてたから」

「本気だったらどうする気だったクマ?」

「その時は赤城さんとこの鎮守府にでも転がり込んだかな。元帥とも顔見知りって聞いたし、あそこは軍内部でも治外法権みたいになってるとも言ってたから」

「こういう時には動じねぇですよね、ご主人様」

「焦ってどうにかなるものじゃないでしょ?」

「あっちはだいぶ焦ってるにゃ」

「卯月、だから誤解だと言っているじゃないか」

「潮、元帥置いて帰るぴょん」

「儂が悪かった、もうこういうことはせんから許してくれんか?」

「聞こえないぴょん」

「卯月ちゃん、謝ってるし許してあげない……?」

「潮、やはりお前は優しいなぁ……」

「元帥置いて帰ったらここの方達に迷惑かけちゃうし……」

「それ多分一番辛辣だぴょん」

「儂の艦娘は儂に冷たいのぅ……」

「見てて憐れになってきたクマ」

「自業自得じゃねぇですか?」

「何だかんだあぁして気軽に話すの許してくれる人だから、好かれるんだろうね」

「でも、アレが元帥って大丈夫なのにゃ?」

「軍人としては凄く優秀ってことだと思うよ……多分」

「良い歳して拗ねるんじゃないぴょん」

「儂も頑張っておるのに、何が駄目だというのだ……」

「仕事以外は全部……?」

「潮、止めを刺すのはやめてやるぴょん」




 元帥はきちんと卯月と潮が連れて帰りました。

~新年の挨拶~

「おっちゃん、明けましておめでとうだクマ」

 ――おぉ球磨ちゃん。今年もよろしくな!

「またバイトしに来るクマ」

 ――球磨ちゃんが居るとこれでもかってぐらい売れるから、また頼むぜ!

「任せるクマ」

 ――球磨ちゃん、うちにもまた来てくれよー?

「分かってるクマ、また行くクマ」

「球磨君、大人気だね」

「商店街のほとんどの店で球磨はバイトしてたにゃ」

「おば様方にも受けがいいんで、売り上げ貢献率が半端じゃねぇらしいですよ」

「それもあるんだろうけど、本当に好かれてるっていうのが一番なんじゃないかな」

 ――あら多摩ちゃん。蒲鉾食べない?

「貰うにゃ、ありがとにゃ」

 ――漣ちゃん、ちょっと買いすぎちゃったからコレあげるわ。

「ありがとうございます。今度また白菜お裾分けしますね」

(多摩君と漣君も人気だなぁ……)

 ――おい兄ちゃん、三人も可愛い子と居たんじゃ身が持たねぇだろ。コレでも食って精付けな!

「えっ? あ、ありがとうございます……」




 すっぽんを貰いました。

~夕飯はすっぽん鍋~

「魚屋の店主に調理の仕方は聞いてきましたが、まさかすっぽん捌くことになるとは思いませんでしたよ」

「急にくれたからびっくりしたよ」

「すっぽん食べると元気が出るって聞いたクマ」

「美味しいなら何でもいいにゃ」

「そろそろいいんじゃねぇですか?」

「そうだね、いいんじゃないかな」

「――案外いけるクマ」

「スープ美味いにゃ」

「それにしても何で急にくれたんでしょうかね?」

「うーん、もっとしっかり食べてあんな風に筋肉をつけろってことなのかな」

「提督ムキムキとか勘弁して欲しいクマ」

「だからって太ったら削ぐにゃ」

「削がれるのは嫌だなぁ……」

「大丈夫ですよ、太る様な献立にしませんから」




 後日、魚屋のバイトから帰ってきた球磨の顔は真っ赤でした。

~多摩は炬燵で?~

「提督起きるクマ、雪降ってるクマ」

「んー?……雪? 初雪だね、積りそう?」

「もう積もってるクマ」

「じゃあ二人とも起こしてちょっと遊ぼうか」

「私はもう起きてますよ」

「あっ漣君起きてたんだ、おはよう」

「寝顔見てたクマ?」

「見てちゃ悪いですか?」

「僕の寝顔がどうかしたの? 何か変な顔してた?」

「別に見てただけですから気にしやがらないで下さい」

「んぅ……うるさいにゃ、朝っぱらからどうしたにゃ……」

「多摩君、雪降ってるみたいだよ。外行ってみない?」

「寒いし眠いにゃ……」

「そっか、じゃあ残念だけど三人で――って痛い!?」

「多摩を置いて行くとか良い度胸にゃ」

「だ、だって今寒いし眠いって……」

「お前が行くなら行くにゃ、雪玉ぶつけまくってやるにゃ」

「じゃあ三人で提督にぶつけるクマ」

「何で僕を集中攻撃する流れになってるんだろう……」

「ご主人様、安心しやがってください」

「漣君は味方してくれるの?」

「雪なら死にゃしませんから」

(そっちの安心かぁ……)




 二対二だと不公平になるから三対一になりました。

~気の弛み~

(出掛けてたら突然雨降るなんてついてないなぁ……)

「使用中の札は……無いね。よし、軽くシャワーでも浴びて暖ま――え?」

「っ!? ご、ごごごごご主人様!?」

(アレ? え? 漣君? 何で居るの? 札は? え?)

「あのその何と言いますか確かに温泉には一緒に入りゃしましたが堂々と脱衣場に不意に入って来られると心の準備ってやつがありまして見られるのはやぶさかじゃねぇんですがそれならきちんと段取りを踏まえてですね――」

「ご、ごめん! 漣君が居るとは知らなかったんだよ! すぐに出ていくからごゆっくり!」

「待って!」

「――あの、漣君? 自分の状況理解してる?」

「……理解してるに決まってんじゃねぇですか」

「うん、なら離れて、服を着ないと」

「……私じゃやっぱり、魅力無いってことなんですね」

「魅力が無いなんてことはないよ、今も凄くドキドキはしてるし」

「なら、何で逃げんですか」

「前に聞いたんでしょ? ズルいけど、今はまだ答えが出てないから」

「多摩はご主人様が好きで、元々ご主人様は多摩が好き。入り込む隙ぐらいくださいよ……」

「……ごめんね」

「謝らねぇで下さい、終わったみたいじゃねぇですか」

「うん……ごめん」

「……出てって下さい」

「うん」

「――ご主人様」

「何か――!?」

「絶対に諦めませんよ、漣はしつこいのがウリなんで」




 頬に感じた柔らかい感触に、暫く脱衣場の扉の前で放心することになりました。

終盤に入ったことをお知らせします

完結後もスレが埋まるまでは更新します

次スレは以下のどれかから選ぶ予定

・女提督と長門と叢雲

・潜水艦's

・青葉と古鷹と吹雪による提督争奪牽制だらけのギスギス鎮守府

~節分~

「鬼役は誰がするクマ?」

「漣がいいにゃ」

「堂々と面と向かって言うとは良い度胸ですねぇ多摩……」

「僕がやろうか?」

「そんな鬼が居てたまるかクマ」

「それだけは無いにゃ」

「ご主人様は鬼って柄じゃねぇです」

「そ、そう?」

「じゃあ商店街のおっちゃんにやってもらうクマ」

「似合いすぎてて怖い気がするにゃ」

「適役っちゃ適役ですね」

「お店忙しいだろうし、やってくれるかなぁ……」




 ノリノリで赤ペイントしてやってくれました。(但し子供はガチで泣き苦情に)

~2月14日~

(いいですね? 全員同時ですよ?)

(分かってるクマ)

(大丈夫にゃ、問題にゃい)

「――アレ、皆今日は早いね」

「ご主人様! 受け取って下さい!」

「提督、食べて欲しいクマ」

「コレ、やるにゃ」

「えっと、コレは、何?」

「チョコレートに決まってんじゃねぇですか」

「とぼけるんじゃないクマ」

「いらないとか言ったら爪で八つ裂きにゃ」

「チョコ……?――あっ、今日バレンタインか。縁遠かったから忘れてたよ」

「どんな青春時代送ってたか丸分かりですね……」

「コレからは確定で三個もらえるから安心するクマ」

「四個以上貰ったら多摩が処理するにゃ」

「猫にチョコレートは――って痛い!? 冗談だってば!?」

「猫扱いはいい加減やめるにゃ!」

「そんなお決まりのコントやってねぇで早く食べちまって下さい」

「そうだクマ、早く食べるクマ」

「ちゃんと食べるから急かさないでくれない? 漣君のは――トリュフ?」

「力作ですよ」

「……うん、外がほんのり苦くて、中のトロトロのチョコの甘さが引き立ってて美味しいよ」

「欲しくなったらまた言ってくれりゃ作りますんで」

「球磨のも食べるクマ!」

「球磨君のは――ハート型のナッツ入りチョコなんだね」

「頑張って文字も書いたクマ」

「コレ、よく書けたね……」

「大好きクマは簡単だったクマ、提督はちょっとだけ苦戦したクマ」

「食べるの勿体無い気もするね――うん、ナッツとチョコはやっぱり相性良いね」

「球磨はそのタイプが一番好きクマ!」

「多摩のも早く食べるにゃ」

「うん、ちょっと待ってね。多摩君のは――チョコケーキだね」

「ガトーショコラにゃ」

「じゃあ早速頂きます。――うん、ほろ苦くて、すっごく美味しい」

「当然にゃ」

「失敗作で球磨のお腹ははち切れそうクマ……」

「うるさいにゃ! 余計なことは言わなくていいにゃ!」

「三人ともありがとう、とっても美味しかったよ。――ところで、朝御飯はどうするの?」



 チョコが朝食になりました。

ご意見ご感想数多くありがとうございます

とりあえず、完結したら3つとも1レスだけサンプル程度に書こうと思います

今のところオリョクらない潜水艦達か苦労人叢雲のどっちかにしようかと思ってます

出来そうなら全部いずれやります

~答えは同じ、でも違う~

「提督、ちょっと話があるクマ」

「何かな球磨君」

「コンビニのバイト仲間の兄ちゃんに告白されたクマ」

「へーそうなん……へ?」

「だから、告白されたクマ」

「返事は、したの?」

「まだしてないクマ。提督はどうしたらいいと思うクマ?」

「それは球磨君が考えること、なんじゃないかな?」

「じゃあもう一つ聞きたいクマ」

「何?」

「――多摩が同じ事を言ってきたら、どうするクマ?」




「ただいまだクマ」

「お帰りにゃ」

「お土産に肉まん買ってきたクマ」

「ありがとにゃ」

「……多摩」

「何にゃ?」

「少しの間だけ、抱き着いてもいいクマ?」

「……コレでいいにゃ?」

「うん、ありがとだクマ」

「何があったか知らにゃいけど、元気出すにゃ」

「大、丈夫だグマ……明日には……元気出すクマ……」




 優秀だからこそ、気付きたくない事に気付けてしまうこともあります。

~桃の節句~

「ひなあられ美味いにゃ」

 ――にゃー。

「ちょっと待つにゃ、このままだと塩分キツいにゃ」

「桃食べたいクマ」

「缶詰でよけりゃありますよ」

「それでもいいクマ」

「何か写真が届いたよ」

「どっからですか?」

「えっと――赤城さんところからだね」

「とりあえず見てみるにゃ」

「うん、ちょっと待って」

「――相変わらず向こうの鎮守府は手抜きって言葉を知らないクマ」

「コレ、幾らかかってんですかね……」

「赤城さん、菱餅食べてるにゃ」

「豪勢な雛壇だなぁ……」

「うちだと三人官女で打ち止めですからね」

「それ意味無いクマ」

「コイツ入れれば何とか二段は作れるにゃ」

 ――にゃ?




 一応雌です。

~ホワイトデー~

「はい、三人ともどうぞ」

「何でまたこの不細工なウサギなんですかねぇ……」

「髪留めだクマ、大事に使うクマ」

「ブレスレット……まぁ使ってやるにゃ」

「気に入って貰えた……かな?」

「コレをご主人様だと思って、サンドバッグ代わりにしてやります」

「だ、大事にしてね?」

「毎日するクマ」

「うん、似合うと思うよ」

(指輪が良かったにゃ……)

「多摩君は気に入ってくれた?」

「今はコレで満足してやるにゃ」

「そっか、良かった」




 巨大なウサギと超巨大なウサギに抱き着いてにやける艦娘と、鏡の前でずっと髪を弄る艦娘と、右手にはめるか左手にはめるか延々悩む艦娘が目撃されました。

~秘密~

「ただいまにゃ……」

「疲れたクマ……」

「しばらく動きたくねぇです……」

「お帰り三人とも、どこ行ってたの?」

「秘密にゃ」

「秘密クマ」

「何か危ないこと、してないよね?」

「その辺は大丈夫ですよ、そのうちご主人様にも教えてあげますから」

「そうなの? まぁ危ないことしてないならいいけど……ちゃんと後で教えてね?」

「ちゃんと教えてやるにゃ」

「きっとビックリするクマ」

(気になるなぁ……)




 密かに秋辺りから計画は進行していました。

~そして、春が来る~

「桜、綺麗だね」

「花より団子にゃ」

「同じくクマ」

「多摩も球磨も色気より食い気ですか」

「ははは、健康的でいいんじゃない?」

「コイツもこう言ってるにゃ、だから問題ないにゃ」

「むぐむがむががグマ」

「食いながらしゃべんなって何度言わせんですか球磨」

「んぐっ――漣の料理が美味しいのがいけないんだクマ」

「お世辞言ったって何も出やしませんよ」

「そう言いながらデザートのタッパー取り出す漣はツンデレにゃ」

「うっせぇですよ!」

「あはは、本当に仲良しだね三人とも」

 ――にゃー!

「忘れるなって怒ってるにゃ」

「ごめんごめん、君もだね」

「球磨は多摩も漣も提督も猫も大好きだクマ」

「多摩も嫌いじゃないにゃ」

「多摩も素直じゃねぇですねー」

「うるさいにゃ、多摩も好きに決まってるにゃ!」




 顔真っ赤なのが三人、球磨だけはニコニコしてました。

~元帥からの贈り物~

(元帥から僕宛て? 何だろう、ギフトか何かかな? またお返し考えないと……)

「――え? コレが何でうちに……?」




 ――元帥、執務室。

「今頃ビックリしとるだろうな」

「多分、終戦してからアレが発行されたの初だぴょん」

「相当頑張っておったからな、あのバカも協力しておったし」

「あの提督さん、どうなさるんでしょうか……」

「心配しなくてもきっと大丈夫だぴょん。今の三人なら苦しまずに一撃でヤれるぴょん」

「それ大丈夫じゃないよ、卯月ちゃん」

「あのバカのところの二人も、艦娘が過ごしやすい環境作りに尽力してくれておる。コレが更に良い方向へ向かうきっかけになってくれるといいんだがな」

「元帥が真面目ぴょん。明日きっと槍が降るぴょん」

「槍は降らないよ……雪ぐらいじゃない?」

「普段から儂は真面目だぞ」

「寝言は寝てからにして欲しいぴょん」

「寝言はうるさいから嫌かなぁ……」




 届いたのは、書類と――。

こちらの更新は恐らく明日になります

もう少々お待ちください

~伝えきる、それだけで~

「――ご主人様」

「あっ漣君、コレなんだけど」

「知ってます、元帥から直接聞いたんで」

「じゃあ何でコレがうちに来たか教えてくれない? 三人とも、練度が足りないと思うんだけど……」

「足りちまってんですよね、コレが」

「どういうこと?」

「ご主人様には内緒で演習を繰り返してたんですよ、バレないようにすんのかなり苦労しました」

「アレって演習してたんだ……でも、何で?」

「そんなの、仮でも結婚出来るからに決まってんじゃねぇですか」

「……そっか」

「球磨も、私も、そして多摩も、全員練度は十分です。――ご主人様、今日この日が、一番答えをくれるにゃ良い日だと思いますよ」

(そういえば、今日で四人で暮らすようになって一年になるんだっけ……)

「……正直、答えはもう分かってんですよ。だから、先に言いたいこと全部言わせてもらいます」

「ありがとうございます」

「拾ってくれて」

「優しく接してくれて」

「料理を美味しいと言ってくれて」

「私を必要だと言ってくれて」

「幸せな時間と思い出をいっぱいくれて」

「ありがとう、ございます……」

「っ……僕の方こそ、漣君にはいっぱい助けてもらったよ。――だから、これからも、鎮守府の“家族”としてよろしくね」

「……よろしく、お願いします」

「――行くね」

「……はい」

「明日からは……ううん、何でもない」

「心配しないで下さいよ、明日にはきっと、元通りですから」

「……うん、じゃあ」

「――球磨は、部屋に居ます」

「うん、ありがとう」




(分かってましたよ、こうなるって。そりゃそうですよ)

「――だから、早く涙止まりやがれってんですよ……」

~変わらぬ想い、変わる立ち位置~

「――球磨君」

「いらっしゃいクマ」

「今、漣君と話してきた」

「……漣、泣いてたクマ?」

「うん、僕が泣かせた」

「酷い男だクマ」

「そう、だね……」

「でも、球磨は好きだクマ」

「……あのね、球磨く――」

「聞きたくないクマ!……言わなくて、いいクマ」

「……うん」

「優秀な球磨ちゃんには言い寄る男も多いクマ、モテモテだクマ。提督より良い男も選り取りみどりだクマ」

「あはは、ちょっと複雑な心境かな」

「後で後悔して枕を濡らすがいいクマ」

「そうだね、泣いちゃうかもしれない」

「――多摩を一度でも泣かせたら、許さないクマ」

「それだけは絶対に大丈夫。約束するよ」

「……なら、いいクマ。さっさと行ってやるクマ」

「あそこに、居るの?」

「当然クマ」

「分かったよ、ありがとう球磨君」

「――提督」

「?」

「一緒に過ごした一年、凄く楽しかったクマ。これからもきっと、毎日が楽しいと思うクマ。――だから、球磨はずっとここに居るクマ」

「……うん、これからも四人で一緒に居ようね」

「じゃあ球磨の話は終わりクマ、今から昼寝するからさっさと行くクマ」

「あまり寝過ぎないようにね、じゃあまた後で」

「しっかりやるクマー」




(提督はバカだクマ、今更他の奴なんか好きになれないクマ……)

「――二人とも、ずっと幸せじゃなかったら承知しないクマ」

~いつもの~

「――多摩君」

「遅いにゃ、肉球プニプニして暇潰すにも限度があるにゃ」

 ――うにゃぁ……。

「今度は一週間も待たせなかったんだから許してよ」

「一年と一週間の遅刻にゃ」

「あの時から全部カウントするのは流石におかしくない?」

「言い訳無用にゃ」

「えー……」

「そういえば本鮪、アレから一度も食べてないにゃ」

「僕の今のお小遣いじゃ無理」

「――じゃあ、指輪で我慢してやるにゃ」

「コレ、多摩君にとっては鮪と同価値なの……?」

「バカな事言うんじゃないにゃ、いいからさっさと填めるにゃ」

「まずはこっちが先でしょ。――僕と、付き合ってくれないかな?」

「お断りにゃ」

「うん、やっとコレで……えっ? いや、多摩く――」

 ――チュ。

「冗談にゃ。多摩は、お前が大好きにゃ」

「」

「何突っ立って固まってるにゃ、早く填めるにゃ」

「……へっ? あぁ、うん、指輪だね指輪――あっ」

「何やってるのにゃ!? 早く拾うにゃ!」

「うわわわっ!? そっちに転がるのはマズイって!」

「海に落ちちゃダメにゃあぁぁぁっ!?」

「――落ち、ちゃった……」

「なっ、なっ、なっ、何やってるにゃー!」

「痛い痛い痛いごめん痛い許して痛い!?」

「許す訳無いにゃ! 今すぐ潜って取りに行くにゃー!」

「流石に痛い無茶痛い爪やめて多摩君!?」

「取りに行くのが無理なら今すぐ新しいの用意するにゃ!」

「そんなお金無いってば……」

「多摩の……多摩の指輪が……」

「ねぇ、多摩君」

「なん――ん……」

「ふぅ……指輪はいつかまた渡すから、今はコレで許してくれないかな?」

「……こんなんじゃ許さないにゃ。許して欲しかったら、もっとするにゃ」

「うん、もっとしよ――ん?」

 ――ちょっ、球磨、あんまり押さないで下さいよ!

 ――もう少し寄らないと見えないんだクマ。

「……後にしよっか」

「……そうするにゃ」




――――二人とも、盗み聞きは良くないよ?

 ――――白昼堂々キスなんてしてやがるからですよ。

――――そうだクマそうだクマ!

 ――――ちょっとは空気読むにゃ、多摩はもっとコイツとキスとか色々したいのにゃ!

――――見るぐらいいいじゃねぇですか、減るもんじゃなし。
 ――――そうだクマそうだクマ!

――――……そっちがその気なら、多摩にも考えがあるにゃ。




「こんな鎮守府、今すぐ二人で出ていってやるにゃ!」

全員を選ぶ鎮守府もあれば、たった一人を選ぶ鎮守府もあります

球磨と漣を選ぶルートはありません

二人と二人ではなく、あくまで四人でこの鎮守府はこれからも生活していきます

変わらない生活は残酷ですが、それが救いでもあります

例え隣に立てなくても、後ろから見守るだけで幸せってこともあります

さて、何はともあれ、本編はこれにて終了です

これ以降はスレが埋まるまで後日談+次スレのお試し版を投下していきます

最後まで読んでいただきありがとうございました

それでは、また

「叢雲」

「何? 今書類で忙しいんだけど」

「昼」

「そうね、昼ね」

「空腹」

「アンタが自分で作りなさい」

「……?」

「意味が分からないって顔すんじゃないわよ」

「叢雲のご飯、美味しい」

「……はぁ、後二十分待ちなさい」

「ん」

「――そういえば、長門は?」

「庭」

「庭で何してるのよ」

「鳩にパン、投げてる」

(アイツ、隠居した老人みたいな事してんのね……)

「――叢雲」

「何よ、もう少し待ちなさい」

「眠い……」

「アンタねぇ……いいわ、出来たら起こしてあげるわよ」

「ん」




「長門だ、入るぞ。叢雲、食パンを買うのに千円出してくれないか?」

「アンタ買い置きの食パン全部使ったの!?」

「んぅ……? 出来た?」




 ダメ女提督と、戦闘してないとダメな長門と、胃に穴が開きそうな優秀な叢雲の居る鎮守府。

「てーとく、流石に無理があるでち」

「無理を通せば道理が引っ込む! 行くぞー!」

「ちょっと司令官、凄くコレだと泳ぎにくいんだけど」

「慣れろ!」

「はっちゃん、皐月じゃないよ?」

「今だけはっちゃんは皐月だ!」

「胸がキツいのね……」

「帰るまで我慢しろ!」

「アタシのは逆に胸ブカブカー」

「大将んとこの浜風から借りた、サイズはとにかく我慢だ!」

「隊長ー……泳げぼがばごぼ……」

「まるゆー!?」




「うーん、やっぱり服変えたぐらいじゃダメだな……」

「当たり前でち!」

「全くもう、バカな作戦に付き合わせないでよね」

「はっちゃん、ボクっ娘じゃありません」

「服、伸びちゃったのね……」

「疲れたから先にお風呂にどぼーんしてきます」

「ま、まるゆも一緒に行きます……」

「よーし、明日は違う駆逐艦の服着てスク水は脱いで行ってみるか!」

『絶対に嫌!』




 初期艦は手違いでイムヤ、建造すれば潜水艦ラッシュで戦艦はおろか駆逐艦すら居ない鎮守府の話。

 吹雪は、無言で書類を書いている。

 青葉は、無言でカメラのレンズを磨いている。

 古鷹は、無言で棚のファイルを整理している。

 そして、提督は――。

(コレ絶対に嫌われてるよ俺何かしたっけ吹雪の肩に触れたのがまずかったのか青葉のカメラに勝手に触ったのがいけなかったのか古鷹の目を綺麗って言ったのがまずかったのか!?)

 執務机の前で怯えていた。

 艦娘に対してのセクハラは、厳罰に処される。

 揉み消すようなコネも、そんな考えに至ることも、この提督にはない。

 だが、心配する必要は最初から無かった。

 何故なら――。

(青葉さんと古鷹さん、早く出ていってくれないかなー)

(吹雪も古鷹も邪魔ですね……)

(二人とも、早く席外してくれるていいんだけど……)




 違う意味で、提督が危ない鎮守府。

とりあえず、お試しです

以降は後日談書いていきます

いずれは全部書くので、次スレ立てる時にコレにしようってその時思ったのにします

叢雲のもこことは全く毛色が違う感じになるので、一応その辺はご安心を

後、全部世界設定は一緒ですが時間軸的に多摩鎮守府は繋げるの無理です

挙げた三つは大鳳鎮守府1スレ目と同時
間軸です

~♂→♀→、←♂←♀、♂→♀→~

「多摩君お茶飲む?」

「多摩君お菓子食べる?」

「多摩君一緒に遊ぼ」

「多摩く――」

「フシャー!」

「うわっ!? きゅ、急にどうしたの?」

「どうしたのじゃないにゃ! 逃げ腰で多摩から逃げ回ってたお前はどこに消えたにゃ!」

「? 付き合ってるなら遠慮する必要は無いんじゃない?」

「遠慮し無さすぎるにゃ! 抱き着いたら離れにゃいしトイレの前で待つし昼寝しようとしたら寝顔を至近距離でずっと眺めてるし落ち着く暇が無いにゃ!」

「うーん……ダメ?」

「そ、そんな寂しそうな顔してもダメなものはダメにゃ。何事にも節度ってものがあるにゃ」

(本日のお前が言うなスレはここですか? 後、爆発しろ)

(贅沢な悩みだクマ。後、爆発しろクマ)

「でも、昼寝に関しては抱き枕って言って多摩君からくっついてきてるよね」

「ね、寝つけさえすれば安眠で寝心地快適なのにゃ、それは仕方無いのにゃ」

(やっぱり爆発しろ)

(速やかに爆発するクマ)




 今日も鎮守府は平和……うん、平和です。

~モテモテ球磨ちゃん~

「ごめんだクマ、球磨は誰とも付き合う気無いクマ」

 ――そっか……うん、分かった。

「すぐに良い人が見付かるように祈っとくクマ」

 ――ありがとう、じゃあまたね。

「バイバイだクマ」

(――ふぅ、コレで三人目だクマ……)




「また告白されたんですか?」

「モテる女は辛いクマ」

「ただし意中の相手には――」

「やめるクマ、お互いの傷を抉るのは良くないクマ」

「それもそうですね……」

「――でも、今は今で幸せだクマ」

「時折無性に爆発しろって思ったり邪魔したくもなりますが、まぁ私も概ね幸せです」

「提督と多摩、今どうしてるクマ?」

「畑行ってますよ、猫と一緒に」

「……ちょっとイタズラしに行ってくるクマ」

「つれねぇですねー私もやりますよ」




 ――痛いっ!? え? 何? 何か飛んできたよ……?

 ――今のは模擬弾にゃ……ってことは――球磨ー! 漣ー! 何やってるにゃー!

 ――チッ、すぐにバレましたね……。

 ――気にせず次弾いくクマ。




 ほんの些細なイタズラぐらい、許してあげましょう。

一般人と艦娘の恋愛は基本的に御法度です

程度によっては解体処分対象になります

~しかし まわりこまれて しまった!~

「――来たにゃ。準備はいいかにゃ?」

『いつでもオッケーだクマ』

『こっちもオッケーです』

「分かったにゃ。じゃあ行ってくるにゃ」

『皆、くれぐれも気を付けてね』

「安心するにゃ、怪我なんかして心配かけたりしないにゃ」

『前とは状況が違うクマ』

『あの演習に比べりゃ千倍マシです』

『君達、どんな演習してたの……?』

「内緒にゃ。さて――ここから先は通行止めにゃ」

 ――フゴオォォォォッ!

「フシャアァァァァァッ!!」

 ――フゴッ!?

「球磨! そっち行ったにゃ!」

「任せるクマ!」

 ――フゴオォォォォッ!

「ローリングクマサンダースペシャル!」

 ――フゴァッ!?

「漣、止めだクマ!」

 ――フゴアアァァァァッ!

「悪く思わねぇで下さいよ、コレも食費の為なんです――はっ!」

 ――フゴッ……ガ……。

「……ふぅ、コレでちょっとまた食費が浮きますね」

「牡丹鍋にゃ」

「近所にお裾分けするクマ」




 猪なんかより遥かに怖い艦娘達と演習した彼女達に、コレぐらいは簡単です。

~追跡にゃ~

「ごめん多摩君、球磨君と漣君と出掛けるね」

「多摩を置いて二人と出掛けるとはどういう了見にゃ」

「あー……えー……とにかくそういうことだから留守番お願い!」

「コラ、待つにゃ!――何で、多摩置いてくのにゃ……。いいにゃ、尾行して二人と何するつもりなのか確かめてやるにゃ」




(球磨の服を何でお前が選んでるのにゃ……)

(漣のアクセサリーを何でお前が選んでるのにゃ……)

(……何で、多摩じゃないのにゃ……)




「多摩君、ただいま」

「……」

「えっと、あの、多摩君?」

「うるさいにゃ、お前なんて知らないにゃ」

「置いていったのはごめんね、今度は二人で一緒に行こうよ」

「行きたくないにゃ」

「機嫌直してよ多摩君。ほら、こっち向いて」

「うるさいにゃ! お前の顔なんて見たく――」

「はい、プレゼント」

「……にゃ?」

「指輪無くしちゃったし、代わりって訳じゃないけど、貰ってくれる?」

「あの服とアクセサリー……球磨と漣に選んでたんじゃないのにゃ……?」

「? 二人に選ぶの協力して貰ったんだけど、何で知ってるの?」

「ま――紛らわしいことしてんじゃないにゃ! 涙で顔グチャグチャになったのどうしてくれるにゃ!」

「えっ!? 泣いてたの多摩君!? 何があったの!? ってか僕のせい!?」

「お前のせいにゃあぁぁぁぁぁっ!」

「ちょっ、噛まないで多摩君! 球磨君か漣君助けて!?」

「噛み千切られりゃいいじゃねぇですか」

「多摩に喰われるなら提督も本望クマ」

「本望じゃないよ!?」

「ふにゃあぁぁぁぁっ!」

「痛いぃぃぃぃぃっ!?」




 翌日、歯形まみれになった提督と多摩は二人で出掛けました。

~行き倒れ~

「ご主人様ー!」

「漣君、そんなに慌ててどうしたの?」

「あ、赤城さんが表で倒れてます!」

「えっ!?」

「とりあえず、運ぶの手伝って下さい」

「うん、すぐ行くよ」




「誠に申し訳ありません……」

「いえいえ、いいんですよ。赤城さんにはお世話になってますから」

「まさかカード使えなくされて空腹で倒れてたとは思いませんでしたよ……」

「まだ今月は五十万しか食べていないというのに、酷い話です……」

(それって僕らの一年分の食費ぐらい食べてるんじゃ……)

(赤城さんがうちに居たら破産しちまいますね)

「普段なら鎮守府までぐらいは食べなくても持つのですが、今回はちょっと派手に戦ってしまって、必要以上にエネルギーを消費してしまいました」

「た、戦う?」

「深海棲艦は居なくなったってのに、一体何と戦ってるってんですか」

「それは――まぁ、色々です」

(コレ、深く聞いちゃマズイパターンかな……)

(触らぬ神に祟り無しです)




 “昨夜未明、〇〇県の海沿いにある施設が爆発しました。今のところ、この施設が何の施設だったかや、何故爆発したかなどは分かっていません。”

~誤解です~

「多摩君多摩君」

「何にゃ?」

「今日はどうしよっか?」

「今日は前からがいいにゃ」

「うん、分かったよ」

「つけとくにゃ? つけないにゃ?」

「うーん……もうつけなくていいんじゃないかな」

(何の会話してんですかこの二人……)

(昼間から何て話してんだクマ……)




「じゃあ前からだね」

「さっさとギューってするにゃ、多磨はお前が居ないともう寝れないのにゃ」

「あはは、それは大変だ」

「電気、本当につけてなくていいのにゃ?」

「うん、最近は慣れたから夜中目が覚めた時、多摩君に頭突きしちゃわないように出来るようになったし」

「何か頭に当たったと思ったら横で悶えてるから、何事かと思ってビックリしたにゃ」

「だって多摩君石頭なんだもん……」

「石頭で悪かったにゃー」

「ごめん、絞めるのやめて多摩君、背骨ミシミシってなりかけてるから……」




 翌日、朝に二人と顔を合わせた球磨と漣の顔は赤かったそうな。

よ、読めば分かるから問題無いですよね…?

大鳳の方に投下する時に気付いた…

~明石印~

「ご主人様、ちょっと相談が……」

「何かな?」

「包丁が古くなっちまいまして、新しいの買ってもいいですか?」

「それは僕に聞くまでもないよ、漣君が必要だと思うなら買っていいからね」

「了解です。じゃあちょっと電話させてもらいますね」

「電話?」

「ちょうどチラシが届いたんで、試してみようかと」

「――“明石印の包丁、良く切れ長持ち! 今なら二本で何と一万円!”……あそこ、本当に鎮守府なのかな……」




 確かに良く切れました。まな板とシンクごと切れました。当然クーリングオフしました。

~幸せオーラ~

「――どうしても一線が越えられないにゃ」

「はい解散解散」

「相談だと思ったらノロケとかやめて欲しいクマ」

「多摩は真剣に悩んでるのにゃ……」

「冗談ですよ冗談」

「球磨も妹の悩みを無下にする程薄情じゃないクマ」

「どうしたらいいと思うにゃ?」

「具体的に何で一線が越えられねぇのかの理由を教えてもらわないと、何とも言えねぇですよ」

「キスしてギュッてするだけで満足して幸せそうに寝ちゃうのにゃ……」

「一緒に居るだけで満足しちゃってる様な節は確かにあるクマ。でも、キスはしてるだけまだマシかもしれないクマ」

「多摩からもっと押してみたらどうですか?」

「あの幸せそうな顔見てるとそういう気になれなくて、気付いたら多摩も抱き着いて寝ちゃってるのにゃ……」

「コレまた厄介な……」

「いっそチャイナドレスとか際どい下着姿とかで迫ってみたらどうクマ? いくら提督でもそういう気分になるはずだクマ」

「……気は乗らないけど、試してみるにゃ」




 翌日、多摩は提督の部屋から出てきませんでした。

~取り調べ~

「――それで? 昨日はご主人様が至福の顔してて、多摩がご主人様の部屋から出てこなかったのは、そういうことって認識でいいんですか?」

「さっさと白状して楽になるクマ」

「……黙秘するにゃ」

「今白状した方が身の為ですよ」

「何と言われようと黙秘するにゃ」

「――もしもし、球磨だクマ」

「ど、どこに電話してるのにゃ……?」

「元帥ですよ」

「話す、話すにゃ! だから今すぐ電話切るにゃ!」

「じゃあ早速話してもらうクマ」

「で、電話してたんじゃないのにゃ?」

「さっきのは嘘だクマ、でも話してくれないならホントにかけるクマ」

「……にゃ」

「?」

「アイツと夜戦したにゃ! コレでいいのにゃ!?」

「漣、急いで赤飯炊くクマ!」

「了解! 球磨は鯛買ってきて下さい!」

「分かったクマ!」

「……な、何なのにゃ?」




 頭上にハテナを浮かべた提督と、真っ赤な多摩と、ニヤニヤした二人と、ご馳走にご機嫌な猫で、その日は細やかなお祝い会となりました。

~新たな秘密~

「――何とかなりそうクマ?」

 ――うーん……材料費も相当かかるし、かなり難しいよ? 大丈夫?

「頑張るクマ、お金は足りなかったらバイト増やすだけだクマ」

 ――どうやら何言っても無駄みたいだね……。よし! オジサンも一肌脱ごうじゃないか!

「ありがとうだクマ」

 ――いいよ、他ならぬ球磨ちゃんの頼みだからね。




「――って訳だクマ、漣にも協力して欲しいクマ」

「予算、大丈夫なんですか?」

「コツコツ貯めたバイト代もあるし、なんとかするクマ」

「……分かりました、私もちょっと本気を出すとしましょうか」

「二人には絶対にバレないように注意して欲しいクマ」

「言われなくても分かってますよ、当日まで一切悟らせないようにします」

「じゃあ頼んだクマ」

「えぇ、絶対に成功させてやります」




 静かに、密かに、計画進行中。

~にゃー~

「にゃー」

 ――にゃー。

「うにゃー」

 ――にゃー?

「にゃー」

 ――にゃーお。

「にゃ」

「――お話中?」

「猫語なんか分からないにゃ」

「分かったら楽しいのにね」

「分からないから良いってこともあるにゃ」

「確かにそうかも」

「……ごめんにゃ」

「何? 急にどうしたの?」

「“艦娘”で、ごめんにゃ」

「あぁ、この前聞いた話のこと? “艦娘には子供は産めない”って」

「多摩じゃ、お前に子供を抱かせてあげられないにゃ」

「うん、そうだね。多摩君に似た可愛い子供が見られないのはちょっと残念かな」

「……ごめ――」

「でも、多摩君が居れば僕はそれで幸せだから、謝らないで。そんな風に悲しい顔される方が、僕としては辛いかな」

「……やっぱりお前はバカにゃ」

「多摩君と居れるならバカでも何でもいいよ。それに――」

 ――にゃー?

「“家族”ならこの子も含めて三人も居るし、ね?」

「……邪魔者が二人も居るにゃ」

「うーん……たまに気を利かせて二人っきりにしてくれるし、多少は大目に見てあげてくれない?」

「お前が言うなら大目に見てやるにゃ」

「――ところで多摩君、今日は二人とも遠出してるらしいよ」

「知ってるにゃ」

「それでね、仕事もさっき片付けてきちゃったんだ」

「っ!? ちょ、ちょっと待つにゃ、今から多摩は昼寝しようかと思って――」

「好きだよ、多摩君」

「……卑怯にゃ」




 提督と多摩が(ニャーーーーーーーーーー)猫の妨害によりここから先はお届け出来ません。

~前〇今×~

(あー……シャワーでちょっとスッキリしよ)

「……ご主人、様?」

「――え?」

「何入って来やがってんですかー! 出てけー!」

「ごめん! すぐ出てくから許してー!」

「はぁ……はぁ……また札かけ忘れてましたね、しっかり確認しないと」

 ――あの、多摩君、今のはわざとじゃ……。

 ――問答無用にゃ!

 ――痛い痛い痛い痛いぃぃぃ!?

「――バカップルはほっといて、さっさとお風呂入りますかね」

 ――何で漣なのにゃ!

 ――別に狙ってやってないからね!?

 ――入りたいなら入りたいって言えば一緒に入ってやるにゃ!

 ――流石に二人は狭くない?

 ――そういう問題じゃないにゃー!

(……一回マジで爆発してくれませんかね、あの二人)

~またまた引いちゃいました~

「球磨君、大丈夫?」

「大丈夫じゃないグマーじぬグマー」

「余裕ありそうですし、大丈夫じゃねぇですか?」

「またどうせ腹出して寝てたのにゃ」

「今はちゃんと服着て寝てるグマー……」

「どうしよう、今なら少しは余裕あるから風邪薬買う? それとも、また僕がアレ作ろうか?」

「アレはぜっっっったいに飲まないグマー……」

「軽くトラウマになってますね」

「あの後少し匂い嗅いでみたら、鼻曲がりそうだったにゃ……」

「うん、じゃあやっぱり風邪薬買おう。漣君、明石さんとこに電話してくれる?」

「了解です」

「多摩君はお水お願い、だいぶ減ってきたし」

「分かったにゃ」

「――さて、二人とも行ったみたいだし、今のうちに聞かせてくれない?」

「何の話グマー……?」

「バイト、増やしてるよね? それに最近は寝るのもかなり遅いんじゃない?」

「……提督には関係無いグマ」

「関係あるよ、あまり心配させないでね」

「提督は多摩に優しくしてりゃいいグマ、球磨の事なんてほっといていいんだグマ」

「――流石に僕も怒るよ、それ以上言うと」

「……ごめんグマ」

「言いたくないなら無理に言わなくていいけど、何か困ってるならちゃんと相談してね」

「困ってる訳じゃないから大丈夫だグマ、そこは安心して欲しいグマ」

「……そっか、でも今回みたいに風邪引いて倒れるようなら、バイト減らしてもらうからね」

「了解グマ」

「うん、約束だよ。――そういえば球磨君、僕に何かして欲しい事ある?」

「……頭」

「頭?」

「頭、撫でて欲しいグマ」

「うん、いいよ」

「――やっぱり提督に撫でられると落ち着くグマ」

「しっかり休んで、早く治そうね」

「了解グマ」

(……尚更、頑張らない訳にはいかなくなったクマ)




 この後戻ってきた二人も含めて、暫く撫でさせられました

~映画やるので~

「ただいまだクマー」

「お帰り球磨君」

「お帰り、にゃ」

「多摩は何してるクマ?」

「ホラーゲームだよ」

「にゃー! コイツしつこいにゃー!」

「多摩、フィルムを赤いのにしてみるクマ。そいつ自動回復するからケチったらじり貧だクマ」

「道理で体力減らないと思ったにゃ……」

「球磨君は当然やってるんだね」

「それ球磨が買ったんだから当然だクマ。無印と蝶と聲はやったクマ」

「あっ、球磨が穴に放り込まれたにゃ」

「その子球磨なんて名前じゃないクマ! 同じなのお姉ちゃんってとこだけだクマ!」

「あまり気持ちの良い終わり方じゃないね……」

「もう一つのエンディングは一応救いがあるクマ」

「じゃあもう一周頑張るにゃ」




「――ところで漣、何で部屋の隅で震えてるクマ?」

「何で三人とも平気なんですか怖くないんですか夜中にトイレ行けなくなったらどうしてくれんですか!?」

(意外な弱点発見だクマ……)

エラー怖い…スマホからだと大丈夫っぽい…?

~おや? 多摩のサイズが~

「キツいにゃ……」

「幸せ太りクマ」

「太るっていうより、単純に大きくなっただけじゃねぇですか?」

「困るにゃ、新しく買うお金なんか無いにゃ」

「流石に着けずに生活ってのは無理でしょうし、お金出しますから買ってきやがって下さい」

「助かるにゃ」

「く、球磨も実はサイズが……」

「妹に負けたからって見栄張るんじゃねぇですよ」

「姉としてそこは負けたくなかったクマー……」

「別に多摩は大きくなっても嬉しくないにゃ」

「それ、嫌みですか? ここ半年全然成長しない私への嫌みですか?」

「漣、怖いにゃ。目がマジにゃ……」

「はぁ……とりあえずさっさと買ってきて下さい。ご主人様の前でノーブラはマズイですし」

「了解にゃ」




(何でいつも僕はこう間が悪いんだろうなぁ、多摩君と顔が合わせづらくなるよ……)

 ついつい視線が胸に行き、目が合うと逸らすを暫く繰り返す提督でした。

~多摩と多摩~

「おはようにゃ」

「うん、おはよう。――ところで、君は誰?」

「多摩は多摩にゃ」

「僕の恋人の多摩君はどこなのかな?」

「……何でバレたのにゃ?」

「大事な人だからね、すぐに分かるよ」

「――ドッキリ、失敗クマ」

「ご主人様を少し舐めてましたね、ここまで早いのは想定外でしたよ」

「だから言ったのにゃ、こんなことしても無駄なのにゃ」

「なかなかこっちの提督も鋭いところあるのにゃ」

「あはは、多分球磨君と漣君が入れ替わっててもすぐに気付くよ」

「向こうの球磨もきっと優秀クマ、そう簡単にはいかないはずだクマ」

「私はすぐに口調でバレちまいますね」

「じゃあそろそろ戻るにゃ、バイバイにゃ」

(――四足歩行出来るんだ、向こうの多摩君……)




 百人居ても見付け出せます。

~スカート~

「そういえば多摩君って、スカート履かないの?」

「スースーして落ち着かないのにゃ」

「試しに一日履いてみない?」

「……見たいのにゃ?」

「うん、見たい」

「……分かったにゃ、ちょっと待ってるにゃ」




「――コレで満足かにゃ?」

「いつものも似合ってるけど、スカート姿も可愛いね、うん」

「褒めても何も出ないにゃ」

(デレ顔は出てますけどねー)

(コーヒー飲みたくなったクマ)

「そういえば球磨君も普段絶対にスカート履かないよね、姉妹で履いてみない?」

「クマ!? え、遠慮するクマ」

「――多摩、拘束」

「了解にゃ」

「ちょっ、やめるクマ! 離すクマ!」

「ご主人様が見たいって言ってんですから履きゃいいんですよ」

「その目は球磨で遊ぼうって目だクマー!」

「人聞きが悪いですねぇ、ちょっと化粧もついでにするだけです」

「上も着替えさせるにゃ」

「球磨は着せ替え人形じゃないクマーーー!」

「……悪いことしちゃったかな?」




 仕上がりが完璧すぎて微妙な顔をした二人と、恥ずかしそうにモジモジする球磨と、以前同様一瞬見惚れて言葉を失う提督でした。

~山菜採り~

「多摩君、そっちはどう?」

「バッチリにゃ」

「そっか、じゃあちょっと休憩してから戻ろ」

「分かったにゃ」

「多摩君もだいぶ慣れてきたね、山菜採り」

「まだまだお前には負けるにゃ」

「こればっかりは多摩君にも負けてられないかな」

「……あの時の山菜、美味しかったにゃ」

「あの時?」

「多摩が来た頃の話にゃ」

「あー、あの時か。とりあえず美味しい物を食べてもらおうと思って、山を走り回ったなぁ」

「ちゃんとお礼言わなくて、ごめんにゃ」

「そんなの謝らないでいいよ、食べてくれたってだけで嬉しかったから」

「……最初の三ヶ月、やり直したいにゃ」

「どうして?」

「いっぱい色々多摩の為にお前はしてくれてたにゃ。なのに、ずっと邪険に扱ってたにゃ……」

「――多摩君、こっち向いて」

「にゃ?」

「えいっ」

「にゃにひゅるにゃ」

「これからいくらでも時間はあるんだから、たった三ヶ月のことで悩む必要無いよ、ね?」

「……はにゃしゅにゃ」

「もうちょっと触ってちゃダメ?」

「はーにゃーしゅーにゃー」

「いひゃい、いひゃいよたみゃきゅん」

「――ずっと、ずっと一緒に居るにゃ」

「うん、ずっと一緒だよ」




 この後帰りが遅いと見に来た球磨と漣にキスシーンを目撃され、一日冷やかされることになりました。

~お礼~

 ――こんにちは、赤城です。先日のお礼に伺いました。

「赤城さん? どうぞ、入って下さい」

 ――ちょっと荷物が大きくて入れそうにないので、お手数ですが出てきて頂けますか?

(入れないって、何を持ってきてくれたんだろ……)




「ま――鮪にゃー!」

「コレ、どうしたんですか?」

「ちょっと海で捕ってきました。あっ、ちゃんと許可は得ていますからご心配無く」

(何で許可貰えてるんだクマ……)

(もう気にするだけ無駄な気がします……)

「ありがとにゃ、しっかり食べるにゃ」

「喜んでもらえて何よりです。それでは私はコレで」

「もう行っちゃうんですか? 今から夕飯作りますし、一緒にどうです?」

「お誘いは有りがたいのですが、鎮守府の皆にも早く食べさせてあげたいので」

(……アレ、全部持って帰るんだ……)

(十本は軽くあるにゃ……)

「では、また遊びに来ますね。失礼します」

「また来てにゃー」

「いつでも歓迎するクマー」

「あきつ丸さんによろしく伝えといて下さい」

「本当にありがとうございました、それじゃまた」




 夕飯は豪華に鮪尽くしになりました。

~全力阻止~

「主人公の名前どうしよっか」

「自分の名前付けときゃいいにゃ」

「龍は……皆の名前にしたら怒られちゃうよね、きっと」

「多分怒らないにゃ、大丈夫にゃ」

「うーん……じゃあ赤城さんを主人公の龍にしちゃおっか、赤いし」

「だったら青いのは加賀さんにゃ」

「ならピンクっぽいのは漣君にしよう」

「次は……お姫様かな?」

「お前が主人公なら多摩に決まって――」

「ストップ! ストップだクマー!」

「そんなに慌ててどうしたのにゃ」

「やめるクマ、姫はデフォルトにしないと恐ろしい事が起きるクマ……」

「恐ろしい事?」

「何だか良く分からにゃいけど、そうするにゃ」

(ふー……最悪の悲劇は回避されたクマ)




 ――アカギよりはやーい!

「……」

「……」

 ――上の部屋がうるさい。

「……」

「……」




 その後、そのカセットが二度と起動されることは無かった。

~蓋を開けてみれば~

「ご主人様、次はあっちのスーパーです」

「うん、分かったよ」

「――あの話は、本当だったようだな」

「っ!?」

「漣君、知り合い?」

「……私をいらないって言いやがった人ですよ」

「あぁ、漣君が最初に着任した鎮守府の提督さんなんだね」

「未だにご主人様などと呼んでいるのか、懲りない奴だ」

「アンタにゃ関係ねぇですよ、今買い物で忙しいんでお引き取り願えますか?」

「仲良く艦娘と買い物か、物好きな提督も居たものだ」

「――私の事はいいですが、ご主人様の事を悪く言うなら許しませんよ」

「……ふんっ、これで失礼する。精々仲良しごっこをしているといい」

「あっ、ちょっと待ってください」

「……何か用か?」

「貴方のお陰で漣君は僕のところに来てくれました、ありがとうございます」

「わざわざ嫌味を言うために引き留めたのか、貴様は」

「――心配なさらなくても、漣君は元気にやってますよ」

「っ……そうか……ではコレで本当に失礼する」

「はい、お気を付けて」

「ご主人様ー?」

「あっ、すぐ行くよ漣君!」




 後日、元帥を通じて退役した者からの感謝の印として、一年は優に暮らせるお金が送られてきました。

~呼び方~

「ご主人様」

「漣君、どうかした?」

「その“君”付け、そろそろやめませんか?」

「えっと、嫌だった……?」

「嫌とかじゃねぇですけど、よそよそしい気がします」

「うーん……じゃあ何て呼べばいいのかな」

「呼び捨てとかどうです?」

「無理」

「即答ですか……」

「いきなり呼び捨てはハードルが高過ぎるよ」

「じゃあご主人様的にはどの程度なら大丈夫なんですかね」

「――漣さん?」

「何か更に距離を感じるですが」

「えぇー……やっぱり僕には難しいよ」

「――だ、そうですよ。多摩」

「アレ、多摩君も居たの?」

「良く分かったにゃ。こうなったら最終手段にゃ」

「さ、最終手段って……?」

「呼び捨てするまで無視するにゃ」

「えっ!? ちょ、ちょっと待って、それはあんまりじゃないかな?」

「……」

「多摩君、多摩くーん?」

「……」

「漣君どうしよう、多摩君が口を利いてくれないよ……」

「……」

「ひょっとして漣君もなの!?」

「……」

「……た、た、たっ、たみゃっ!?」




 舌噛んでそれどころじゃなくなりました。

~やっぱり無理~

「コレは?」

「ビー玉」

「コレは?」

「けん玉」

「コレは?」

「多摩君」

「コレは?」

「三丁目のタマ」

「コレは?」

「三式弾、って何でうちにあるの?」

「コレは?」

「多摩川の写真……?」

「コレは?」

「多摩君」

「コレは?」

「多摩川のタマちゃん」

「コレは?」

「多摩君」

「呼び捨てになりませんね、流石にこの作戦は無理がありましたか……」

「無理がありすぎだクマ」

「フシャー! 何で出来ないのにゃ!」

「そう言われても出来ないものは出来ないってば。今まで一度も女の子を呼び捨てにした経験なんて無いんだから」

「多摩は恋人にゃー!」

「うん、でも無理」

(めんどくさい人ですね全く……)

(もういっそ“君”って呼んだら電流でも流して矯正すりゃいいクマー)

~努力虚しく~

「頑固にも程があるにゃ! いい加減“多摩”って呼ぶにゃ!」

「気長に待ってよ、そのうち呼べるようになるかもしれないから」

「い・ま・す・ぐ・にゃ!」

「多摩を猫だと思って呼べばいいんですよ」

「それだとタマちゃんになるよ?」

「ちゃんはいらないにゃ!」

「もういい加減諦めるクマ、何かの拍子に呼べるようになるのを待つ方が賢明だクマ」

「納得いかないにゃ……」

「ごめんね、多摩君。代わりに何かして欲しいことがあれば聞くよ?」

「――挨拶」

「?」

「お前の両親に改めて挨拶したいにゃ」

「……え?」




 次回、帰省。

~両親~

「うわー……着いちゃった……」

「何で多摩よりお前が緊張してるのにゃ」

「緊張というか、挨拶したら最後どうなるかが分かってるから頭が痛いというか……」

「? ほら、とにかく行くにゃ」

「あっ、引っ張らないで多摩君。まだ心の準備が……」

「珍しいですね、あそこまでご主人様が狼狽えるの」

「誰でも苦手なものはあるってことだクマ」




「改めまして、た、多摩ですにゃ」

「ふーん。アンタ、この子に決めたんだね」

「うん、そうだよ」

「お嬢さんは“かんむす”、だっけ? 結婚は出来るのかい?」

「……戸籍というものが、艦娘には存在しないのにゃ。それに、子供も――」

「母さん、法律としての結婚は出来ないけど、僕は多摩君以外と一緒になる気は無いよ」

「そうでなきゃ振られた私達の立場がありませんよ」

「球磨も姉として、提督には多摩を幸せにしてもらいたいクマ」

「――母さんや、最初からどんな相手でも認める気なのに意地悪するのはやめなさい」

「何よ、ちょっとぐらいいいじゃないのさ。一度はこういうのやってみたかったんだから」

「多摩さん、だったかな?」

「は、はいにゃ」

「頼り無いところもあるが、優しい子です。どうか、よろしくお願いします」

「……ずっと、多摩が支えていきますにゃ」

「――さて、それじゃあ話もまとまったところで、準備を始めるとするかね」

「あー……母さん、やっぱりなの?」

「何がやっぱりなのにゃ?」

「すまんね多摩さん。それに、そっちのお二人さんも」

「へ? 何がです?」

「どういうことだクマ?」




「何って、ここの土地売っぱらって、私達もそっちの鎮守府の近くに住むんだよ」




 Q、提督は何で肝が据わってるの?

 A、親の影響。

~来ちゃった♪~

「あのね、母さん。一応ここ機密情報とかあるから気軽に来られても困るんだけど……」

「何言ってんだい、何処だかに一般開放してる鎮守府もあるって話じゃないか」

「いや、アレは例外というか特例みたいなもので――」

「細かいことをごちゃごちゃとうっさいねぇ、そんなんだからその年まで彼女の一人も出来なかったんだよ」

「……はぁ、もう好きにしてよ」

「お、お茶ですにゃ」

「あら多摩ちゃん、悪いね気を遣わせちゃって」

「そ、そんなことないですにゃ」

「気軽にお母さんって呼んでくれていいんだよ?」

「それはちょっとまだ心の準備が出来てないのにゃ……」

「そっちの子も可愛いねぇ、孫ってことで家に連れて帰っちゃダメかい?」

「わ、私ですか!?」

「ダメに決まってるよ。居るのはいいにしても、あまり皆に迷惑かけないでくれないかな?」

「冗談の通じない子だね全く、じゃあこっちのデッカイぬいぐるみならいいね」

「球磨はぬいぐるみじゃないクマー!」

「最近のぬいぐるみは喋るんだねぇ」

「ちーがーうークーマー!」

「あっはっはっは! この子も本当に可愛いねぇ」

「――あっ、もしもし父さん? 猛獣が鎮守府で暴れてるから迎えに来てくれない?――無茶言うな? そこを何とか……」




 新居は鎮守府から徒歩十分、嵐は毎日のように訪れるようになりました。

~嫁(?)姑問題~

「何だいこの味噌汁は! あたしを塩分過多で殺す気かい!」

「えっ? あの、そんなに辛かったですか……?」

「大丈夫だよ漣君、言いたかっただけだから。っていうか、父さんの晩御飯はどうしたのさ母さん」

「何だい、知らなかったのかい? 料理が最近のあの人の趣味なのさね」

「単純に必要に迫られただけなんじゃないかな……」

「それにしても漣ちゃんの料理は美味しいねぇ」

「あ、ありがとうございます」

「多摩ちゃんは料理、しないのかい?」

「修行中ですにゃ」

「修行なんてしなくても、焼きすぎて焦げた魚だろうがこの子は食べるから大丈夫だよ」

「アレはそれしか残ってなかったから、食べざるを得なかっただけなんだけどなぁ……」

(ひょっとしてご主人様が野草とかに詳しかった本当の理由って……)

(絶対、生きる為だクマ)

「た、食べさせるなら美味しい物を作ってあげたいですにゃ」

「多摩君……」

「ベッドにスケスケの下着着て寝てりゃあ喜んで食べてくれるんじゃないかい?」

「にゃ!?」

「母さんお願いだからもう帰って」

~やりました~

「どうしたのにゃ? お前最近ちょっと元気無いにゃ」

 ――にゃーん……。

「――ん? 多摩君、ちょっといい?」

「病院連れて行った方がいいにゃ?」

「多分大丈夫なんじゃないかなぁ、ちょっと触るよー」

 ――ふーっ!

「うわっと、危ない危ない」

「どうなのにゃ? コイツ大丈夫なのにゃ?」

「うん、大丈夫。一応念のために病院に連れて行った方がいいかもしれないけど、病気とかじゃないから」

「どういう意味にゃ?」

「うん――おめでただよ、この子」




 ――みぃ、みぃ。

 ――みゃー。

「可愛いにゃ、ちっちゃいにゃ」

「産まれたばっかってこんなにちっちゃいんですね」

「ちゃっかり相手見付けてるなんてなかなかやるクマ」

「この辺結構猫多いから、相手も選び放題だったんじゃない?」

 ――にゃーお。

「お前も頑張ったにゃ、偉いにゃ」

 ――にゃん。




 家族が四匹程増えました。

~子供好き~

「全く、アイツどこほっつき歩いてるにゃ……にゃ?」

 ――わーい、ありがとー。

 ――次は人にぶつからないように気を付けてね?

(何で子供にアイス買ってるのにゃ……?)

「あっ、多摩君。どうしたの、買い物?」

「出掛けたっきり帰って来ないから迎えに来たのにゃ」

「わざわざ来てくれたんだ、ごめんね。ちょっとあの子に暫く付き合ってたから」

「知り合いなのにゃ?」

「ううん、知らない子」

「……多摩というものがありながらあんな小さい女の子に……」

「冗談でもやめて多摩君、洒落にならないから」

「じゃあ何で見ず知らずの子と一緒に居たのにゃ?」

「さっきの子、アイスに夢中で人にぶつかっちゃったみたいでね。アイスは食べられなくなるし、怒鳴られるしで泣いちゃってたから、放っておけなくて」

「――子供、好きなのにゃ?」

「うん、大好きだよ。田舎でもよく近所の子の遊び相手とかしてたし」

「……やっぱり、子供は欲しいにゃ?」

「欲しくないって事はないけど、何度も言うように多摩君が一緒に居てくれたら僕は幸せだよ」

「でも、奇跡が起きて多摩にだって子供が出来るかもしれないにゃ。もしかしたら艦娘が子供を産める様な技術が開発されるかもしれないにゃ」

「……多摩君は優しいね、ありがとう。僕もそんな日が来ることを願ってみることにするよ」

「た、多摩だって、その、お前の子供抱いてみたいのにゃ……」

「――よし、今日から頑張ろう」

「……にゃ?」




 翌日、また多摩は部屋から出てこなかったそうな。

~主婦力(物理)~

 ――さぁさぁ本日の目玉商品だよ! 豚バラ肉百グラム十八円! お一人様二パックまでで五十個限り! 早い者勝ちだ!

(キタコレ!)

「ぶぅぅぅたぁぁぁばぁぁぁらぁぁっ!!」

 ――貴女邪魔よっ!

「ふざけんじゃねぇですよ! こっちは食い扶持が増えててんやわんやなんです!」

 ――それは私の豚バラざます!

「自分の贅肉でも炒めやがってて下さい!」

 ――現れたわね“ピンクリトルデビル”!

「そんな恥ずかしい二つ名付けんじゃねぇですよ!」

 ――誰かその子を止めて!

「止まりません! 買うまでは!」

 ――もうダメよ、おしまいよ……。

「――豚バラ、取ったどー!」



「……漣君、いつもあんな感じなの?」

「スーパーは主婦にとっての戦場なんです。あの瞬間だけは仲の良いおばさん達とも恨みっこ無しのガチです」

「あはは……僕にはとてもじゃないけどあの中に入る勇気は無いや」




 最近、もう一人猛者がタイムセール争奪戦にエントリーした模様。

~逆鱗~

「定期視察、今回もまたあきつ丸さんが来るんですかね?」

「んー、どうだろう? たまには違う人が来るかもしれないよ?」

「多摩はあきつ丸さんがいいにゃ」

「球磨もだクマ」

 ――定期視察を命じられた者だ、入るぞ。

「違うっぽいですね……」

「みたいだね。どうぞ、お入り下さい」

「失礼する。――まずは問おう。本日ヒトヨンマルマルに定期視察の者が訪れることは通達してあったはずだ、何故出迎えが無い」

「これは失礼しました。いつも来られる方が出迎えとか不要だからと仰っていたので……」

「わざわざ来てやっているのだから、断られても毎回出迎えるぐらいの誠意を見せろ」

「以後、気を付けます」

(感じ悪いですね)

(感じ悪いにゃ)

(やっぱりあきつ丸さんがいいクマ)

「あー漣君、お茶を淹れてくれる?」

「ほいさっさー」

「何だそのふざけた態度は! それが上官に対する答え方か!」

「コレが私達の普通なもので、すいませんねー」

「全く、これだから化物は……」

「――誰が、“化物”なんですか?」

「人の形を模した兵器を、“化物”と言わずして何と呼ぶのだ」

「そうですか。御足労頂きありがとうございました。即刻お引き取りください」

「なっ!? 貴様、私がどういう理由でここへ来ているのか分かっているのか?」

「聞こえませんでしたか? じゃあもう少し分かりやすく――帰れ」

(コイツでも怒ることあるんだにゃ……)

(やっちゃったクマ)

(本当にあきつ丸さんところに転がり込む事になるかもしれませんねぇ……)

「――と、こういうのを期待されてたんですか?」

「……にゃ?」

「……ふぅ、いやはや参った。元帥から聞いてはおりましたが、肝がなかなか据わっておられる」

「悪趣味だから止めた方がいいですよ、コレ」

「どういうことクマ?」

「訳がわかんねぇですよ」

「定期視察に派遣されるのは元帥が選んだ人達だよ? あんなこと言う訳無いってば」

「一番提督の艦娘への接し方が分かるのはこういう形だという案が出たもので、実験的に試行してみたという訳です。不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳無かった」

「あっ、いえ、はい」

「本当に怒ったのかと思ったにゃ」

「あはは、驚かせてごめんね。じゃあ改めてお茶にしようか」



 演技か本気かは、本人のみぞ知る。

~アルバム~

「多摩ちゃん、今日は良いモノ持ってきてあげたよ」

「何ですにゃ?」

「コレさね」

「アルバムにゃ?」

「あの子の小さい頃のあんな姿やこんな姿が写ってるよ」

「見るクマ!」

「私も見てぇです!」

「二人ともどっから湧いたにゃ……」

「細かいことは気にしちゃダメクマ、早く見るクマ」

「そう焦んなくてもアルバムは逃げやしないよ」

「コレがご主人様の、子供の頃の写真ですか……」

「――草、食ってるにゃ」

「こっちは川で必死に魚捕まえてるクマ」

「こっちは焼き芋を宝物みたいに抱えて泣いてますね」

(((……微笑ましい写真は?)))

「勝手にご飯は作って食べてるし、勉強も熱心にやってたから手がかからない子でねぇ」

「もうアルバムはいいですにゃ、見てたら何か悲しくなってきますにゃ……」

「漣、今日はちょっと奮発してあげるクマ」

「そうですね、ハンバーグとオムライスでも作りますか」

「どれ、じゃあ私も今日は手伝ってみるかねぇ」

「「「えっ」」」




 実はまともに料理は出来る人でした。

~ヤキモチ?~

 ――みぃ、みぃ。

「子猫もやっぱり可愛いね、ねぇ多摩君」

「……」

「多摩君? どうかした?」

「……何でもないにゃ」

「何か怒ってる? 僕また何かしちゃった?」

「何でもないって言ってるにゃ」

「うーん……あっ、多摩君もうちょっとこっち来て」

「何にゃ?」

「良い子良い子」

「……多摩は猫じゃないにゃ」

「撫でられるの、嫌?」

「嫌じゃないにゃ」

「うん、じゃあ暫くこうしてても問題ないね」

「……ついでに膝枕もするにゃ」

「いいよ、ほらおいで」

「だから猫扱いするんじゃないにゃ」

「あはは、ごめんごめん」

「――猫耳、また多摩が着けたらお前的には嬉しいのにゃ?」

「暫く抱き締めて離したくなくなるぐらいには」

「……考えとくにゃ」




 翌日、猫尻尾の購入を検討する多摩の姿がありましたとさ。

~はちみつクマさん~

「蜂蜜美味いクマー」

「そうしてると、どっかの森に住んでる黄色いクマみたいですね」

「それだと漣は――」

「その続きを口にしたらぶっ飛ばしますよー?」

「どうして言い切る前に分かったんだクマ……」

「バレバレですよ、どうせウサギの方じゃねぇでしょうし」

「漣も蜂蜜どうだクマ?」

「蜂蜜オンリーは遠慮しときます」

「じゃあホットケーキ焼いてほしいクマ」

「私は球磨の使用人じゃねぇんですが?」

「そう言いながら準備を始める漣が大好きだクマ」

「えーっと、三人分だと粉の量はーっと」

「三人分じゃ提督の分が足りないクマ」

「私、多摩、ご主人様。三人分で問題ない、大丈夫だ」

「問題あるクマ! さらっと球磨を省くんじゃないクマ!」

「居ないものとして扱えってクラスで決められてるから……」

「球磨は死者じゃないクマー!」

「はいはい分かりましたよ、ちゃんと焼きますからご主人様と多摩呼んできてください」

「了解だクマ」

「さてさて、私はこの前作った木苺のジャム試してみましょうかね」




 何でも了承する近所の奥様から頂いたジャムを塗った提督は、青白い顔をしながら完食しました。

~海、再び~

(また多摩君の水着見れるなんて幸せだなぁ……今年は自分で買ったって言ってたけど、どんなのだろ?)

 ――待つにゃ漣! 今回ばかりは流石にやり過ぎにゃ!

 ――球磨まで巻き込むとは良い度胸だクマー!

 ――私の苦い思い出を共有しやがって下さい!

「三人とも着替え――え?」

「さっさと多摩の買った水着返すにゃ!」

「それで問題ないじゃねぇですか」

「問題だらけだクマー!」

「多摩君多摩君」

「何にゃ! 今はそれどころじゃないのにゃ!」

「そういうのも似合うね、可愛いよ」

「……フシャー!」

「痛い痛い痛い!? 何で僕引っ掻かれたの!?」

「喜んでいいのか恥ずかしがればいいのか怒ればいいのか混乱した結果だと思うクマ」

「良かったですね多摩、ご主人様はスクール水着もお好きだそうですよ?」

「……るにゃ」

「?」

「漣もコレ着るにゃ! 三人で着ればもう何も怖くないにゃ!」

「いやースクール水着って本当に素敵ですよねーだが断る!」

「逃げられないクマ、球磨はしつこいから!」

「ちょっ、人のセリフパクんじゃ――」

「隙ありにゃ!」

「しまった!?」

「更衣室に連行だクマ」

「漣のスクール水着が何故か荷物に入ってて良かったにゃ」

「た、助けてご主人様ー!」

「あー……うん、僕は漣君のスクール水着も好きだよ」

「救いは無いんですか!?」

「無いにゃ」

「無いクマ」

「僕ジュースでも買って来とくね」

「もう名前入りのスクール水着は嫌ぁぁぁぁぁっ!」




 結局、冷静になって三人で普通の水着を着て遊びました。

~デートするにゃ~

「って言われたんだけど、どこ行けばいいかな……?」

「それを球磨達に聞いてどうするクマ」

「猫カフェにでも連れて行って多摩をほったらかしにして険悪なムードになるとかオススメですよ、ご主人様」

「むしろ多摩君が夢中で僕が放置される可能性があるね、それ」

「最近猫好き隠さなくなりましたしねぇ……」

「定番コースで映画とか遊園地とか行けばいいクマ」

「映画はほら、多摩君が気になって集中出来ないし、遊園地は乗り物に酔うし……」

「うわー、ご主人様ちょーめんどくさーい」

「漣君、そんな満面の笑みで言わないでくれないかな?」

「水族館とかどうクマ?」

「“見る”より“食べる”じゃないかな、多摩君の場合」

「もういっそあきつ丸さんところの鎮守府に行けばいいんじゃねぇですか? あそこ色々ありますし、食事も美味しいって評判ですし」

「あっ、それいいかもしれないね。ありがとう漣君」

「行くんならお土産にドイツのパン買ってきてくださいねー」

「球磨は間宮クッキーがいいクマ」

「うん、分かったよ」




 那珂ちゃんのステージに特別招待されたり、青葉の撮った写真を貰ってデートは大成功しました。

~追い付かれた~

「か、匿って欲しいであります!」

「あきつ丸さん? どうされたんですか?」

「説明は後であります!」

(あきつ丸さんがこれだけ焦ってるってことは……アレ、ひょっとしてこのままだと僕も巻き添えでヤバい?)

「――失礼します」

「えーっと、どちら様ですか?」

「申し遅れました、私は大淀といいます。赤城さんとあきつ丸がいつもお世話になっています」

「あっ、あきつ丸さんのところの方でしたか」

「はい、今日は彼女がバイトを放棄して逃げたので迎えに来ました」

「バイトって、いつもの視察ですか?」

「そうです。週六は多いので週五にしたんですが、それでも多いと……」

(あー……働きたく無いっていつも言ってたもんなぁ……)

「――あきつ丸、居るのは分かってますよ。発信器を服に縫い付けてありますから」

「普通そこまでするでありますか!?」

「あっやっぱりここでしたか。発信器は嘘ですから安心して下さい。さぁ、帰りますよ」

「もう暫く働きたくないであります! ゴロゴロしてたいであります!」

「秘書艦日リストから五年ぐらいあきつ丸を抜きましょうか?」

「それはもっと嫌であります! せ、せめて週四に……」

「いいでしょう。では、早速こちらに向かって下さい」

「やっぱり大淀は鬼であります……」

「それでは私達はコレで失礼します。またこちらの鎮守府にも気軽に遊びに来て下さいね」

「は、はい、そうさせてもらいます」

「提督殿、多摩としっかり仲良く過ごすでありますよ」

「言われなくてもそのつもりです」

 ――大淀も早くケッコンカッコカリしたらどうでありますか?

 ――異動拒否の理由に使われるのは嫌だと断られてしまいました。

 ――それは誰でも断ると思うであります……。

(あっちの提督さん、色々苦労してるんだろうなぁ……)




 多摩鎮守府提督と大鳳鎮守府提督の親密度が5上がった。

~畑仕事中~

「ねぇ」

「はい、苗にゃ」

「あの」

「肥料ならそこにゃ」

「えっと」

「水なら腰にぶら下げてるにゃ」

「……多摩く――」

「土で汚れるにゃ、抱きつきたいなら後にするにゃ」

「うん、分かったよ」




「見てて面白いですね、アレ」

「二人とも作業速度が上がったクマ」

「着替える前に我慢出来ずに抱きつくにコロッケ」

「じゃあ着替えて出てきた多摩に即抱きつくにメンチカツクマ」




 正解は二人でお風呂に入るでした。

~まだ早い~

「球磨、ちょっと入る――」

「目潰しクマ!」

「ふにゃぁぁぁぁぁっ!? 目が!? 目がぁぁぁぁっ!?」

「ふぅ……危ないところだったクマ」

「危ないのは球磨にゃ! 何するにゃ!」

「急に入ろうとするからだクマ」

「だからって目潰しはやり過ぎだにゃ」

「で、何の用だクマ?」

「アイツと出かけてくるにゃ。晩御飯いらないって漣に伝えといて欲しいにゃ」

「了解クマ、行ってらっしゃいクマ」

「お、押さなくても出ていくにゃ」

「ごゆっくりだクマー」

「何かおかしいにゃ……っていうか見えないから行きようがないにゃ!」

「しばらくそこで目が回復するまで待つクマ」

「帰ってきたら覚えてるにゃ……」




「――めっちゃ焦ったクマ。コレ見られたら計画がパーだクマ」

「気を付けてくださいよ、私もそこら中に協力頼んでんですから今更バレましたじゃ済みませんからね?」

「分かってるクマ。完成まであと少し、頑張るクマ」

「まさかコレ作ってるとは思いもしないでしょうねぇ……」

「球磨は多摩のお姉ちゃんだクマ、最高の贈り物を用意するのが姉としての義務だクマ」





 計画、着々と最終フェーズへと移行中。

~二人でお出かけ~

「多摩君、今日は何が食べたい?」

「そうだにゃー……魚」

(今、考える素振りだけだったような……まぁいいや)

「美味しい定食屋さんがあるから、そこで魚系の定食食べよっか」

「了解にゃ」





「塩鯖か鯖の味噌煮、どっちが多摩君は好き?」

「甲乙つけがたいにゃ……」

「じゃあ両方頼んで半分ずつ食べよう」

「そうするにゃ」

「その代わり、あーんってしてくれる?」

「して欲しいなら今すぐ腕にあーんってしてやるにゃ」

「それ、意味違うよ多摩君……」




「ふぅ……お腹いっぱいで満足にゃ」

「気に入ってもらえてよかったよ」

「次はどこに行くのにゃ?」

「そうだなぁ、ちょっと日用品でも見に行かない?」

「じゃあついでにチビ達のお皿とかも見たいにゃ」

「あーそのうちいるもんね。あの子たちの食費も結構かかるし、もっと頑張らないといけないかな」

「多摩も頑張るにゃ」




「大体必要なものは揃ったかな?」

「何か普通に買い物しちゃったにゃ……」

「あはは、流石にコレ持ってこれ以上はどこか行くのは厳しいね」

「そうと決まればとっとと戻るにゃ」

「――ねぇ、多摩君」

「何にゃ?」

「何か、幸せだね」

「こんな可愛い彼女が居て不幸せとか言ったら八つ裂きにするにゃ」

「じゃあ八つ裂きにされる心配は無さそうだから安心安心」

「……多摩も、お前とこうしてただ居るだけで、幸せにゃ」

「……うん、ならずっと二人とも幸せでいられるね」




 結んだ手は、固く、強く、ほどけることはない。

~漣のウサギ~

「いつ来ても漣の部屋は凄いクマ」

「また増えてる気がするにゃ」

「ご主人様が定期的に持って帰って来たり、買ってくるんですよ。流石にそろそろ置き場所に悩みますがねー……」

「じゃあ球磨が一つ――」

「持ってったらぶっ飛ばしますよ?」

「冗談だクマ、だからその握り拳下ろすクマ」

「……漣の方が、多摩より貰ったモノの数多い気がするにゃ」

「ご主人様自体を貰ってんですから、贅沢言うんじゃねぇですよ」

「今度、猫の縫いぐるみねだってみようかにゃ……」

「鎮守府が猫の縫いぐるみだらけになりかねないクマ」

「縫いぐるみなんて無くても、本物の猫が居るじゃねぇですか」

「それはそれ、これはこれにゃ」

「そういえば、提督は今何してるんだクマ?」

「アイツなら――」




「すぅ……すぅ……」

 ――くー……くー……。




 ソファーで居眠りする提督の上は、子猫の絶好の寝床でした。

~収入が安定してきたので~

「今まで連絡とか不便だったから、助かるね」

「使いすぎたらその分は馬車馬の様に働いて貰いますんで、ご利用は計画的にお願いしますねー」

「多摩はカメラぐらいしか使わないにゃ」

「球磨は無料アプリでゲームするだけクマ」

「僕達の使用用途だと、大体基本料金で済みそうかな」

「貧乏性が四人とも染み着いちゃってますんでね……」

「チビ達、そこに並ぶにゃ」

 ――にゃー。

「コラ、擦り寄ってきたら撮れないにゃ」

「多摩君、撮るなら何かで気を惹くか、寝てる時を狙わなきゃ難しいよ」

「鮭捕り名人にハニースティール、ハニー割りをインストールクマ」

「(あの不細工ウサギの待ち受け……一応コレにしときますか)」

「(――今が狙い目かな? よし)」

「……今、シャッター音が聞こえた気がするにゃ」

「奇遇クマ、球磨も聞こえたクマ」

「ご主人様ー? ちょーっとそのスマホ貸して頂けますかー?」

「暗証番号の設定とロック完了、っと。皆の写真、待ち受けにさせてもらうね」

「撮り直しを要求するにゃ!」

「髪の毛ちょっと跳ねてるクマー!」

「何で煎餅かじってるタイミングで撮ったんですかっ!」

「ほら、自然体が一番だと思わない?」

「思わないにゃ」

「思わないクマ」

「思いませんねー」

「えぇー……」




 消したように見せかけておいて、密かにコピーして保存しました。

忘れてた、子猫の名前は

アカミ、キミ、シロミ、アラ

です

○○○まで後、数話

~そういう気分~

「えっと、多摩君?」

「何にゃ?」

「座り心地悪くない?」

「お構い無くにゃ」

「うーん……これは僕はどうしたらいいのかな?」

「大人しく乗られてればいいにゃ」

「そっかぁ……お腹、撫でちゃダメ?」

「猫じゃないにゃ」

「じゃあアゴ?」

「だから猫じゃないって言ってるにゃ」

「子猫達が乗ってるの、羨ましかったの?」

「そ、そんなことないにゃふっ!? コラ、やめるにゃ!」

「お腹スベスベだね」

「だからダメだって言ってるにゃ!」

「だって、前に撫でて欲しいってお腹出してたし」

「あ、あの時とは色々状況が違うのにゃ……」

「あはは、じゃあイタズラはこのぐらいにして――おいで」

「……にゃ」




 ソファーで抱き合って寝ている二人を見付け、球磨は毛布を取りに行き、漣はスマホを取り出しましたとさ。

親猫はシロ

名付けたのは全部多摩

~完成~

「で……出来たクマー!」

(す、凄すぎて何も言えねー……)

「漣、他の準備はどうなってるクマ?」

「場所、日取り、招待状、オールオッケーです」

「赤城さんと加賀さんは何て言ってたクマ?」

「“三秒あれば十分です”、って言われました」

「やっぱりあの二人恐ろしいクマ……」

「元帥が何かやらかさないか不安でしたけど、今回ばかりは自重してくれたみたいですし」

「多分、何かやろうとして卯月に絞められただけだと思うクマ」

「そっちの方があり得そうですねー……」

「提督と多摩が気付いてる素振りも無いクマ。このまま任務を完遂するクマ」

「漣の本気は当日の準備まで温存ですね。間宮さん達と同じ厨房に立って作れるとか胸熱ですよ」

「セッティングは任せるクマー」

「――二人の為に」

「――家族の為に」

「「最高のサプライズを!」」




 始まる宴、終わる物語。

ちょっと書き溜めるので更新少し空きます

乙&感謝です。

元帥「儂は当然仲人じゃな」
卯月「そんな話来てないぴょん」
元帥「で、では来賓じゃろ」
卯月「そもそも、招待状がまだ来てないぴょん」 元帥「」


こんな感じで〆られた?

一週間になるので進捗報告

七割書けました、もう少しお待ちください

~仮面の女に艦娘が連れ去られる事案が発生~

(玉葱と玉蒟蒻と揚げ玉? 漣は一体何作るつもりなのにゃ……)

「――対象を確認、目標を捕獲します」

「やり過ぎないように注意しないといけませんね」

「っ!? 多摩に何の用にゃ……?」

「答える必要は」

「ありません」

(速っ――)

「て……いと……」

「少し動きが鈍っているようですね、また演習の相手をするべきでしょうか」

「この子達はそれでいいんですよ、じゃあ行きましょう」

「――こちらブルー、作戦第一段階成功です」

(意外にノリノリね)

~仮面の集団が提督の服を脱がせる事案が発生~

(地図で示されてたのはここのはずだけど……)

「――来たか」

「貴方達が誘拐犯ですね、多摩君を返してください」

「その前に、そこの目隠しを着けるんだ」

「……分かりました」

「――よし、着けたらこっちへ来てもらおう。くれぐれも変な気は起こすなよ?」

「多摩君は、無事なんですね?」

「丁重にもてなしているから安心しろ」

「そうですか」

(不気味なぐらいに落ち着いてるな、もう少し焦っているかと思ったんだが……)

「念のために武器などを隠し持っていないか、脱がして改めさせてもらう」

「どうぞ、好きにして下さい」



「確認出来た。服はこちらが用意した物に着替えてもらうぞ、いいな?」

「はい」

「――よし、ではまたこちらについて来い」

「多摩君はどこですか?」

「焦らなくてもすぐに会わせてやるよ」

「そうですか」

(以前に自分がやられたことを、まさか他人にするハメになるとはな……まぁいい、これで仕上げだ)

「そこに扉がある、中に入って目隠しを取れ」

「そこに、多摩君が居るんですね?」

「あぁ、居るぞ――変わり果てた姿でな」

やらかした…順番ミスった…

投下し直します

~仮面の女に艦娘が連れ去られる事案が発生~

(玉葱と玉蒟蒻と揚げ玉? 漣は一体何作るつもりなのにゃ……)

「――対象を確認、目標を捕獲します」

「やり過ぎないように注意しないといけませんね」

「っ!? 多摩に何の用にゃ……?」

「答える必要は」

「ありません」

(速っ――)

「て……いと……」

「少し動きが鈍っているようですね、また演習の相手をするべきでしょうか」

「この子達はそれでいいんですよ、じゃあ行きましょう」

「――こちらブルー、作戦第一段階成功です」

(意外にノリノリね)

~その報は陰謀~

「ご主人様ー!」

「大変だクマ! ヤバいクマ! 激ヤバだクマ!」

「ど、どうしたの?」

「多摩が誘拐されました!」

「あーゆうかい、ユウカイね……誘拐っ!?」

「そうだクマ! こんな脅迫状が送られてきたクマ!」

「――“提督に告ぐ、一人で指定の場所まで来い。警察や軍関係者に連絡したり、来ない場合は貴様の恋人の命は無いと思え”……漣君、球磨君、ちょっと行ってくるから留守番お願いしていい?」

「一人で行くんですか?」

「うん、そう書いてるし」

「大丈夫クマ?」

「うーん、大丈夫じゃないかな?」

「(意外に冷静ですね)」

「(落ち着きすぎな気がするクマ)」

「ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど」

「何です?」




「――二人とも、僕に何か隠してない?」

~仮面の集団が提督の服を脱がせる事案が発生~

(地図で示されてたのはここのはずだけど……)

「――来たか」

「貴方達が誘拐犯ですね、多摩君を返してください」

「その前に、そこの目隠しを着けるんだ」

「……分かりました」

「――よし、着けたらこっちへ来てもらおう。くれぐれも変な気は起こすなよ?」

「多摩君は、無事なんですね?」

「丁重にもてなしているから安心しろ」

「そうですか」

(不気味なぐらいに落ち着いてるな、もう少し焦っているかと思ったんだが……)

「念のために武器などを隠し持っていないか、脱がして改めさせてもらう」

「どうぞ、好きにして下さい」



「確認出来た。服はこちらが用意した物に着替えてもらうぞ、いいな?」

「はい」

「――よし、ではまたこちらについて来い」

「多摩君はどこですか?」

「焦らなくてもすぐに会わせてやるよ」

「そうですか」

(以前に自分がやられたことを、まさか他人にするハメになるとはな……まぁいい、これで仕上げだ)

「そこに扉がある、中に入って目隠しを取れ」

「そこに、多摩君が居るんですね?」

「あぁ、居るぞ――変わり果てた姿でな」

~バレバレ~

「多摩君! 大丈……夫?」

「大丈夫じゃないにゃ、もう散々にゃ。いきなり捕まるしメイクされるしヒラヒラの動きにくいドレス着せられるしニヤニヤされまくるし、ほんっっっとうに最悪にゃ……」

「えーっと、あー、うん、そっか。うん、そっかそっか……え?」

「――タキシード、ちょっとは様になってるにゃ」

「多摩君は……あー何にも良い言葉が出てこないや……うん、凄く綺麗だ。惚れ直しちゃった」

「……ありがとにゃ」

『――ごほん、あーあー、提督ー多摩ーそろそろこっちの世界にカムバックするクマー』

 ――熱々だぴょん。

 ――キーッス! キーッス!

 ――静かにしないと口を縫い付けるわよクソ爺。

 ――曙ちゃん、ダメだよ。後で大事なお仕事があるし、それ終わってからね。

 ――終わってからもダメだと思う、多分。

「あはは、やっぱりこういう事だったんだね」

「気付いてたならさっさと迎えに来るにゃ、遅いにゃ」

「球磨君と漣君の態度でほぼ分かってたんだけど、万が一ってこともあったし、多摩君の無事を確認するまでは気を抜かない様にしてたから遅くなっちゃった」

『壁ドン初体験したクマ、多摩が絡むと提督怖いクマ……』

「一切焦りを見せんから、ナイフでも隠し持ってて急に刺されんじゃないかとこっちも肝が冷えたぞ」

「やっぱり貴方だったんですね」

「あぁ、さっき俺と一緒に居たのは初霜とあきつ丸だし、加賀と赤城もそっちに居る」

「加賀さんと赤城さんに多摩を捕まえさせるとかやり過ぎもいいとこにゃ」

「下手に抵抗されたら困るんでな、怪我もさせずに捕まえるにはあの二人が最適だったんだよ」

 ――赤城さん、今日はドレスなんですから食事は控えめに。

 ――そうですね、今日は腹八分目ぐらいにします。

「多目に作らせてるから列席者のは足りるはずだし、安心してくれ」

「あ、あはは……」

『とりあえず、入り口に突っ立ってないでこっち来るクマー』

「うん、それじゃあ行こうか」

「結構コレ恥ずかしいにゃ……」




 手を繋ぎ、一歩ずつ、一歩ずつ、前へ。

~祝福~

 ――多摩ちゃん、とっても綺麗だよ。

「ありがとにゃ、おばちゃん」

 ――兄ちゃん、多摩ちゃん泣かせたら俺達が黙ってねぇからな!

「精一杯頑張ります」

 ――今度二人で店に寄りな、色々サービスしてやるよ。

「絶対に行かせてもらうにゃ」

 ――若者の成長というのは、何より嬉しいものですな。

「山や畑、他にもたくさん助けて下さってありがとうございました。これからも色々協力させてもらいますね」

「やっと、でありますな。末永くお幸せに」

「くわえた魚は絶対に逃がさないにゃ」

「おい、魚って言われてるぞ」

「いいんです、最高の誉め言葉ですから」

「演習、またしに来るといいわ」

「き、気が向いたらにさせてもらいますにゃ」

「その手を離してはいけませんよ?」

「今回の一件でちょっと過保護になっちゃうかもしれません」

「息子を、よろしく頼みます」

「……はいですにゃ」

「娘泣かしたらいつでもうちに連れて帰るからね」

「自分が構いたいから無理矢理連れて帰る気でしょ、やめてね絶対」

「式に足りないものは元帥が用意したから安心するぴょん」

「足りないものって何にゃ?」

「もう無くさんようにな、コレは二人を繋ぐ絆の証でもあるからの」

「元帥……ありがとうございます」

「――多摩、ご主人様。私達からのサプライズ、喜んでもらえました?」

「心臓に悪いサプライズをありがとうね」

「後で覚えてるにゃ」

「結構苦労したんですよ? 球磨がドレス縫って、商店街の人達に頭下げて回って式開く資金援助してもらって、二人に内緒で関係者全員に招待状準備して、当日の段取りも念入りに一ヶ月前からチェックしてたんですから」

「……本当に、ありがとう」

「やり過ぎだにゃ」

「やる時は徹底的にやるのが信条なもんで、ほら、あそこで半べその牧師様が待ってますから行きやがって下さい」

「うん、また帰ってから色々話聞かせてね」

「玉葱と玉蒟蒻と揚げ玉で料理作らせてやるにゃ」

(……これからも見守らせてもらいますよ、ずっと)

~誓い~

「何で涙目なのにゃ」

「うるさいグマ、目にゴミが入っただけだグマ」

「何で牧師が球磨君なの?」

「妹の結婚式だからだクマ」

「訳が分からないにゃ……」

「いいから球磨の言葉に答えるクマー提督は多摩のこと好きクマ?」

「ちょっと待って、僕の知ってるのと違う」

「気にしちゃダメクマ、さっさと答えるクマ」

「いいのかなぁ……? はい、好きです」

「多摩は魚より提督のこと好きクマ?」

「多分、好きにゃ」

「はっきり答えるクマー」

「……好きに決まってるにゃ」

「提督、何があっても多摩を幸せにすると誓えるクマ?」

「誓うよ、絶対に幸せにする」

「多摩、どんなに苦労しても提督を支えると誓うクマ?」

「誓うにゃ」

「じゃあ提督、指輪を多摩に填めるクマ、今度は失敗するんじゃないクマ」

「うん、多摩君手出して」

「き、緊張するにゃ」

「――はい、填めたよ」

「……嬉しいにゃ」

「じゃあ熱いの一発かますクマー」

「せめてそこは誓いのキスって言おうよ……」

「いいから早くするクマ、花嫁がお待ちクマ」

(顔赤いし恥ずかしいんだろうなぁ、やっぱり多摩君は可愛い)

「……いつまで見てるにゃ、早くするにゃ」

「いつまででもこうして見てたいんだけど、ダメ?」

「何時だって傍に居るにゃ。見たけりゃ後で好きなだけ見ればいいにゃ」

「……うん、それもそうだね。――多摩君、愛してるよ」

「多摩も、愛してるにゃ」




 拍手と歓声、祝福の嵐の中、二人は少し見せつけるかの様な長い長いキスをした。

~宴~

「た、多摩君が見えない……」

「取り囲まれてますからね」

「妹があんなに祝われてお姉ちゃん嬉しいクマ」

「二人とも、今日は本当にありがとう。結婚式出来るなんて思ってもみなかったから」

「――“家族”なら、これぐらい当然ですよ」

「名実共に球磨は提督と家族になったクマ、アゴでこき使うから覚悟するクマー」

「――そこのバカ姉、多摩の旦那にそんなことしたら縁切るにゃ」

「クマ!? じょ、冗談だからにらまないで欲しいクマ……」

「あはは、球磨君いじめちゃダメだよ多摩君、あそこから戻ってこれたんだね」

「何とか脱出してきたにゃ、おばちゃんパワー恐ろしいにゃ……」

「今さらっと流しましたけど旦那って言いましたよね? 早速お熱いですねー」

「何にゃ漣、旦那だから旦那って言っただけにゃ、別におかしくないにゃ」

「横でその旦那さんが幸せのあまり昇天しそうな顔してるクマ」

「旦那……旦那かぁ……」

「コラ、だらしない顔するんじゃないにゃ」

「痛っ!? 多摩君、今日ぐらいは爪封印してよ……」

「旦那の躾は妻の仕事にゃ」

「妻……奥さん……」

「だから顔が緩んでるにゃ」

「痛いっ!?」

「結局あんまり前と変わりませんね、こりゃ……」

「今更何言ってるクマ」

「まぁいざとなったら頼れるっぽいですし、普段は尻に敷かれてもらっときましょうか」

「喜んで敷かれてる様な気もするクマ」

「ねぇねぇ多摩君、ちょっとクルッと回ってよ。後ろからも見たいし」

「こ、こうにゃ?」

「うんうん、やっぱり多摩君可愛い」

「コラ、抱き着くんじゃないにゃ!……そ、そういうのは後でいくらでも……」

「……人目憚らなくなってバカップル度が増した気がするんですが」

「幸せな証拠だと思って諦めるクマ。度が過ぎたらストップかければいいクマ」

「私は見てらんねぇので球磨に任せます。ちょっとお世話になった方々に挨拶してきますねー」

「了解クマ」

「ねぇねぇ多摩君、“あなた”って言ってみて」

「あ、あなた?」

「やっぱり球磨も見てらんないクマ……漣一緒に行くクマー」




 そして 夜が 更けていった!

「夢みたいだったね」

「最初は悪夢かと思ったにゃ」

「いっぱい、色んな人に恩返ししなきゃいけないね」

「二人で、ゆっくりしていけばいいにゃ」

「――多摩」

「何……にゃ?」

「うーん、呼び慣れるまでついつい“君”付けちゃいそうで大変かも」

「今まで散々呼べないって言ってなかったかにゃ?」

「……実は呼べた、って言ったら怒る?」

「あ・た・り・ま・え・にゃ」

「いひゃい、ひっはらはいへたみゃ」

「……理由を聞かせるにゃ」

「ちゃんと指輪を自分で用意して、贈ってからにしようかなって思ってたから」

「それ、待ってたら何十年先になってたのにゃ?」

「じゅ、十年後?――待って、今こうして呼んでるんだから許して」

「簡単には許さないにゃ。……許して欲しかったら、これまでの分取り戻すぐらいに名前呼んで欲しいにゃ」

「うん、多摩」

「……起きたら、夢だったとか無いにゃ?」

「大丈夫だよ、夢じゃない」

「――なら、夢じゃない証が欲しいにゃ」

「……うん、分かった」

 ――そして、月日は流れて……。





「漣、お腹空いたクマ」

「ちょっと待って下さいよ、食べ盛りが増えて作るの大変なんですから」

 ――にゃー。

 ――みゃーお。

「アカミ達も餌って言ってるクマ」

「そこにキャットフード置いてありますからあげてやって下さいよ」

「やれやれ、仕方無いクマ……」

 ――にゃー。

 ――うにゃー。

「ちょっ、待つクマ、爪立てて登ってくるんじゃないクマ!?」

「何遊んでんですか……」

 ――コラ、待つにゃー!

 ――走ると転ぶよー?

 ――お前もちょっとは焦るにゃ!

「あっちも賑やかですねぇ。まぁ、今に始まったことじゃねぇですが」

「漣、ヘルプ、ヘルプクマー!?」

「それにしても、今日も良い天気ですねー」

「たーすーけーてークーマー!?」




「危ないから戻るにゃ!」

「そうだよ、一人で外に出るのはまだ早いから、散歩に行きたいならお父さん達と行こうね」




「いやにゃ! こんなはたけしかないちんじゅふ、すぐにでていくにゃ!」




~完~

読んで下さった皆様、本当にありがとうございました

数々の感想やネタ振り、励みになりました

これにて一応本編は終わりとさせて頂きますので、ご意見感想質問などがあればどうぞ

流石にやりつくしたので次スレはないです

ケッコンカッコカリ以降全部おまけのつもりだったので、最後のおまけを一応考えてます

過去の自スレとリンクってあんまり無かったのでやっちゃいました

球磨と漣と多摩が好きな提督を増やすのに貢献できたなら嬉しい限りです

次スレはハートフル(ぼっこ)ラブ(を奪い合う)ストーリーになります

~お・ま・け~

「――はい?」

「今、何て言ったクマ……?」

「だから、赤ちゃんが出来たのにゃ」

「多摩……想像妊娠するぐらい思い詰めてたんですね……」

「球磨はお姉ちゃん失格だクマ……」

「冗談じゃないにゃ、明石さんにもちゃんと診てもらったにゃ」

「――マジ、なんですか?」

「マジにゃ」

「た……た……大変だクマァァァァァァ!」

「ご、ご主人様はどうしてんですか?」

「アイツなら事態が呑み込めずにまだ固まってるにゃ」

「多摩、ゴートゥーベッド! ハリーハリーハリーだクマ!」

「大丈夫にゃ、まだ安静にしてなきゃいけないほどじゃないにゃ」

「妊娠……艦娘が妊娠……? ダメだ、深く考えたら負けってやつな気がします」

「奇跡だと思っとけばいいにゃ」

「何で多摩はそんなに冷静なんだクマ」

「良く分からないにゃ。でも、不思議と不安とかそういうの無いんだにゃ。――ただ、困ったことが一つだけあるにゃ」

「困ったこと?」




「艤装、装備出来ないっぽいにゃ」

「孫! 孫!」

「ゆ、ゆらさ、ゆら……」

「猛獣呼んだの誰!? 早く檻に入れなきゃ多摩がっ!」

「母さん、そのぐらいにせんと多摩さんの身体に悪い。初孫は元気に産んで欲しいだろ?」

「フシュー……フシュー……そうね、大事な身体だものね。仕方無いから産まれるまで漣ちゃん頂いていくわ」

「はぇ? い、いやちょっと!?」

「今晩はすき焼きを作ってちょうだいね?」

「ご、ご主人様助けて!」

「漣君……ごめんね?」

「この薄情者ぉぉぉぉ……」

「漣、尊い犠牲だったクマ……」

「多摩、大丈夫?」

「平気にゃ、ちょっと頭がグラグラしただけにゃ」

「……明石さんの診断だと、身体がほぼ人間になってるらしいね」

「みたいだにゃ」

「お願いだから、しんどかったり辛い時は絶対に言って。一人で動くのも出来るだけ控えて」

「大丈夫にゃ、無理はしないにゃ」

「球磨君、ちょっとロープ持ってきてくれる?」

「大人しくしてるからそれはやめるにゃ」

「球磨も安静にしてて欲しいクマ、本当に心配クマ」

「二人とも大袈裟にゃ。明石さんも艦娘じゃなくなった訳じゃないって言ってたし、そこまで大した問題じゃないにゃ」

「ダメ、絶対にダメ、多摩は今日から外出禁止、部屋から出るときは僕が絶対に付き添うから」

「まぁ待ちなさい。それじゃ多摩さんも息苦しくてかなわんだろ。ある程度は自由にさせてあげんと可哀想だ」

「でも、多摩に万が一何かあったら僕はっ!」

「ふぅ……親としてはそこまで想える相手に出会えたことを喜んでやりたいが、相手の気持ちを考えんような子供に育てた覚えはありゃせんぞ?」

「……ごめん、ちょっと頭冷やしてくる」

「んー、提督心配だから球磨もちょっと席外すクマ。ちゃんと多摩は大人しくしてるクマー」

「――すまんね多摩さん、この大事な時に」

「いいんですにゃ、多摩を大事に思ってくれてるからだって分かってますにゃ」

「あんな息子の姿を見ることになるとは、夢にも思っとりませんでした。我が息子ながら、難儀な奴です」

「正直めんどくさい部分はありますにゃ。でも、多摩の旦那はあの人以外に考えられないですにゃ」

「……幸せ者です、うちの息子は」

「幸せじゃなきゃ許されない身ですにゃ」

「そりゃ難儀だ、わっはっは」

「う……」

「う?」

「うま……」

「馬がどうかした?」

「産まれそうにゃ……」

「へーそっか、産まれるのかぁ……明石さん、明石さんに連絡! 球磨君と漣君すぐ来てー!」

「何かお腹の中で主砲撃たれてるみたいな気分にゃ……」

「お、おおおお落ち着いてね多摩」

「お前見てたら何か落ち着くにゃ、色んな意味で」

「どうしたんですそんなに騒いで」

「お腹蹴ったとかは聞き飽きたクマ」

「う、う、うま」

「馬?」

「桜肉はちょっとすぐには手に入らないクマ」

「う、うま、産まれそうなんだって!」

「馬礼装?」

「馬レース王クマ?」

「だから……産まれそうなのにゃ……出産にゃ、出産……」

「ほぅほぅ出産ですか、それは大変で、す……ね?」

「い、い、医者はどこだクマー!?」

「ボケてないで早く明石さん呼んで欲しいにゃ……」

「えーっと明石さんの携帯は119でしたっけ!?」

「違うよ、110だよ!」

「何言ってるクマ! 117に決まってるクマ!」

(コレは……ダメかもしれない……にゃ……)




 偶々来た母親の的確な指示により事なきを得ました。

「――子供も“多摩”、ですか?」

「えぇ、間違いないです」

「えっと、僕の奥さんはその場合どういうことに……?」

「どっちも多摩であることに変わりはありません。でも、“艦娘”としての能力はほとんど子供さんの多摩の方に受け継がれちゃってます」

「それについてどういった問題点があるか、聞かせて下さい」

「子供さんの方は成長速度が分からないのと、力の制御がどの程度出来るか不明です。奥さんの方は……正直、人間と大差無い身体になったと言って差し支えありません。艤装も装備出来ないようですし、恐らく修復材の効果も……」

「……戦えない、ということですね?」

「今は深海棲艦もおとなし――いえ、深海棲艦の脅威も無いので戦えなくても大丈夫だとは思います。ただ、こういったケースを軍がどう考えるかが気掛かりではありますけど……」

「それは何とかしてみせます」

「ふふ、もうすっかりお父さんの顔になってますね」

「守らなきゃいけないものが、増えましたから」

「ふしゃー」

「ねぇ多摩、何で僕は威嚇されてるの……?」

「多摩に抱き着いてるからだと思うにゃ」

「お母さんは仲良く半分こしようよ子多摩」

「おかーさん、たまのにゃ」

「お父さんのでもあるんだよ?」

「ふしゃー」

「威嚇されても可愛くて和むなぁ……」

「洗濯物畳めないからいい加減二人とも一度離れて欲しいにゃ……」

「孫よ孫! アンタ、お小遣いに財布あげな!」

「これこれ、怯えるからやめなさい」

「ばーちゃ、じーちゃ、ごまんえんでいいにゃ」

「ほら、五万円出しな!」

「ふむ、仕込んだのは漣さんかな?」

(ギクッ!?)

「さぁぁぁざぁぁぁなぁぁぁみぃぃぃ……?」

「ちょ、ちょっと生活費苦しいから子多摩に一役買ってもらおうかなーなんて思いまして……ダメ、でした?」

「人の娘に何仕込んでんだにゃー!」

「だってマジで今月苦しいんですってばー!」

「やれやれだクマ……球磨のヘソクリから少し生活費出しとくクマ」

「くまねーちゃ、コロッケたべたいにゃ」

「じゃあ一緒に買いに行くクマ。肩車してあげるクマ」

「わーい、ありがとにゃ」

「あっ、球磨君。子多摩連れていくならコレでついでにお菓子でも買ってあげて」

「了解だクマ」

「おとーさん、いってきますにゃ」

「うん、行ってらっしゃい。球磨君から離れちゃダメだよ?」

 ――次余計なこと吹き込んだらアカミ達を部屋に押し込めるにゃ!

 ――ウサギコレクションがあるんですからやめて下さいよ!? もうしませんから!

「結局あれから何にも起きないにゃ」

「そうだね」

「お前、何かしたのにゃ?」

「ううん、僕“は”何もしてないよ」

「……あれから頻繁に赤城さんが来てるのは、お前が呼んでるのにゃ?」

「子多摩見に来てるだけだよ、きっと」

「ここの近くで、たまに戦闘した痕跡があるのを見かけるにゃ」

「……気のせいじゃない?」

「……そういうことにしといてやるにゃ」

「すにゃー……すにゃー……」

「――赤城さんがね、言ってたんだ。“貴方達の幸せな姿を見るのは、私にとっての幸せの一つなんです”って」

「……ご馳走、また漣達と作ってあげるにゃ」

「うん、きっと喜んでくれると思うよ」

「――多摩達は幸せにゃ」

「うん、幸せだね」




――――これからも、ずっと、幸せ。






 ――これは、一人の男が艦娘に恋をした、小さな小さな幸せの物語。




おまけ終了、これで本当に投下は最後です

次スレも導入が書けたらスレ立てますので、良ければまた見てくださると幸いです

それでは

「埋めるにゃ」

「埋めるクマ」

「埋めましょう」

「うめるのにゃ」

「埋められた…」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年08月12日 (火) 11:37:13   ID: Cpg8e_Tg

ここは僕の桃源郷か?!球磨かわいいよ球磨!?

2 :  SS好きの774さん   2014年10月27日 (月) 13:01:16   ID: jNDFRrLl

こういう感じに提督を無能扱いするss主は死んだ方がいいと思う。だから死ね。

3 :  SS好きの774さん   2014年11月02日 (日) 19:30:24   ID: 4llfCIdH

↑こういう感じにss主に暴言をいう奴は死んだほうがいいと思う。だから死ね。

4 :  SS好きの774さん   2015年03月16日 (月) 10:53:30   ID: t3HT83TY

完結できたことがなにより素晴らしいと思う、批判もあるだろうけどそれは個人の感性だからしょうがない。 まぁ完結から7か月後のコメントなんだが…次回作とかないんですかね?
 漣バージョン、球磨バージョンも見たかったです

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom