爽「嫉妬」 (173)

咲-saki-のssです。
誓子と爽は同じ大学の二年生という設定
口調や性格が違う部分がある(特に誓子)
※百合あり(NLも含む)
辻褄が合わないところは脳内補完でお願いします。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1401622254

とある大学 食堂

モブ「あんたらってさ」

爽、誓子「ん?」モグモグ

モブ「変よね」

誓子「そんなことないと思うけど」モグモグ

爽「なー」モグモグ

モブ「いや、変よ。ぜっっったい変」

誓子「何がそんなに変なの?」

モブ「だって、付き合ってる訳じゃないのよね?」

誓子「というか元カノ?」

爽「高校のときに破局したな」

モブ「なのに今一緒に住んでて、大学でもいつも一緒よね?」

爽「そうだよ」

モブ「それがおかしいって言ってるのよ!!」バンッ

誓子「? 何がよ」

モブ「何がよじゃないわよ。なんで別れたくせにそんないちゃいちゃしてるの?」

爽「いちゃいちゃなんてしてる?」

モブ「あんたら……自分たちの手見てみなさいよ」ハァ

誓子「?」テツナギ

爽「?」ペアリング

モブ「別れたのにペアリングしてるし、手繋ぎながらご飯食べてるし……っていうか普通のカップルでもご飯食べながら手繋がないわよ」

爽「そんなに変かな」

モブ「変よ、意味わかんないわ」

誓子「まぁ愛の形は人それぞれって言うし」

モブ「……お互い好き合ってるの?」

爽「どうだろう、嫌いではないことは確かだな」

誓子「そうね」

モブ「……ますます意味がわからなくなってきた。あたし午後の講義があるから先に失礼するわ」

爽「じゃあな~」モグモグ

誓子「ばいばい」フリフリ

爽「私らって変なの?」

誓子「さぁ、どうなんだろ」

爽「まぁいいか」

誓子「うん」

休日 朝 ベッドの上

爽「ふぁぁ……ねみ」

爽(昨日は……誓子とやって、そのまま寝ちゃったんだっけか……体がだるい)

爽「あれ、誓子がいない」

爽「誓子ーー??」

ナニー?

爽「あぁ、下か」


キッチン

爽「おはよ」

誓子「おはようって、なんて格好で降りてきてんのよ」

爽「別にいいだろ、お互い一晩中見てたんだから」

誓子「それとこれとは話が違うの」

爽「そういうもんかね……あ、今日のメニューは何?」

誓子「フレンチトースト」

爽「おっ、いいねぇ」

誓子「シャワー浴びて来なさいよ、作っとくから」

爽「おっけー、ん?」

誓子「なに?」

爽「首……痕ついちゃったな」

誓子「別に珍しいことじゃないでしょ」

爽「そうだけど、結構目立つなーと思って」

誓子「まぁ、髪で隠れるから平気でしょ」

爽「それもそうか」

誓子「でもちゃんとつける位置は考えてよね」

爽「はいはーい」

誓子「はいは一回」

爽「はーい」

大学 廊下

後輩「あっあのっ」

爽「ん?」

後輩「獅子原爽先輩ですよね?」

爽「そうだよ、初めましてかな?」

後輩「そうです!一年の□□って言います!あの、私前に廊下で獅子原先輩を見かけて、すごくかっこいいなって思って……」

爽「お、それは光栄だな」

後輩「もしよろしければ連絡先を……あっでも、いつも一緒にいる方って、もしかして彼女さんですか……?」

爽「いや、違うよ。ちょっと待ってね……はい、これ連絡先」

後輩「彼女さんじゃないんですね……良かった……」ボソッ

爽「ん?」

後輩「あっ、何でもないんです!ありがとうございました!!連絡しますね!」

爽「うん、待ってるよ」

後輩「失礼しますっ」ペコリ

爽「グッバーイ」フリフリ

自宅 リビング

爽「ということで、さっきその後輩から連絡が来てさ」

誓子「……」

爽「来週の日曜日、二人で遊びに行くことになった」

誓子「ふーん」

爽「さっきからなんか冷たくない?」

誓子「別に」

爽「エ○カ様?」

誓子「……」

爽「チカコ様のほうが良かったか」アチャー

誓子「ご飯は向こうで食べるの?」

爽「時間によるかも。決まり次第伝える」

誓子「そ、じゃあお風呂入ってくるわ」

爽「あれ、今日は一緒に入らないの?」

誓子「そういう日もあるの」

爽「ふーん、変なやつだな」

入浴後 リビング

誓子「爽ー?出たよー?」

爽「わっはっはっは!!なんだそれー!!あ、ちょっと待ってて」ツウワチュウ

爽「りょーかい」

誓子「……誰と電話してるの?」

爽「ん、さっきの後輩。いやー、超面白くてさ。聞いてくれよ。このあいd 誓子「早く入ってきて……」

爽「ん?別にいいだろ。もうちょっと話したいし……」

誓子「早く入れって言ってるの!!!」

爽「おわっ!な、なんだよもう……あ、もしもし?ごめんな、そろそろ風呂入らないと。気が向いたらいつでも電話して!というか私からもするわ。うん、はい、うんうん。じゃーね!」

誓子「……」

爽「今から入るからそんな怖い顔すんなよ」

爽「って、もしかしてあれ?嫉妬ってやつ?いやぁ、モテる女は辛いねー」

誓子「……」ギロッ

爽「……分かったってば。先寝てろよ」

誓子「おやすみ」

爽「はいはい、おやすみ」

就寝前 ベッドの上

爽「誓子ー?」チラッ

誓子「すぅ、すぅ……」

爽「まぁ普通は寝てるか」

爽「可愛い寝顔だな……」ナデナデ

爽「さ、私も寝るか……っと!なんだよ誓子、いきなり抱きつかれたらびっくりするだろ。ってか起きてたのかよ」

誓子「寝てる」ギュッ

爽「あーはいはいそうですか」ナデナデ

誓子「……おやすみ」

爽「おやすみ」

大学 講義中

教授「つまり~だから~~」

爽(退屈だな……これなら私の方が面白くできるっての)

コツン

爽(いって……誰だよ今時後頭部に丸めた紙投げつけるやつ)ヒョイ

爽(今日は外食でもしない? 誓子 って誓子かよ)チラッ

誓子「」ジーッ

爽『りょーかい』クチパク

爽(別に講義中に言う必要ないと思うんだけどなぁ)

講義後 教室

誓子「爽はこの後まだ授業あるの?」

爽「あと一コマだけね。心理学」

誓子「そっか。じゃあどこかで時間つぶして待ってようかな」

爽「終わったら電話する」

誓子「分かった」

後輩「あ、獅子原先輩!ここにいたんですね!」

爽「おー、後輩ちゃん。私にわざわざ会いに来てくれたのか、照れちゃうな」

後輩「えへへ、良かったらこの後一緒にご飯でもどうかと……あっ、桧森先輩ですよね、初めまして」ペコリ

誓子「……初めまして」

後輩「私、てっきり獅子原先輩と桧森先輩ってお付き合いしているのかと思ってたんですけど、違ったんですね」

爽「今は付き合ってないよ」

後輩「今は?」

爽「高校生の頃に付き合ってたんだ。いわゆる元カノってやつ」

後輩「そうなんですか……でも、高校生の頃はってことは、今はただの友達なんですよね?」

爽「そうなるね」ハハハ

後輩「じゃあ私にもチャンスはありますね、ふふ。あ、それでお昼、一緒にどうですか?」

爽「あーごめん今日は 誓子「私と一緒に食べる予定だから」

後輩「っそ、そうなんですか。それじゃあまたの機会に……」

爽「いやー申し訳ない」

後輩「いえいえ!お気になさらないでください。日曜日楽しみにしてます!」

爽「うんうん、楽しもうじゃないか」

後輩「はい!では、失礼します」タタッ

爽「さーて、そろそろ移動しないとなー」

誓子「ねぇ」

爽「んー?」

誓子「あんな子の何がいいの?」

爽「普通に礼儀正しくていい子じゃん。何より面白いし。揺杏に見習わせたいよ」

誓子「なんか嫌な感じ。私、あの子嫌い」

爽「初対面の人を悪く言うなんて誓子らしくないな、どうしたんだよ」

誓子「別にどうもしてない」

爽「まぁ嫌いなら関わらなければいい話だよ。後輩だし、向こうから来ない限り会うこともない。さて、私は行くわ。また会おう」

誓子「……っ」ギリッ

講義中

教授「今日は『嫉妬』という感情について触れていこうと思う」

教授「一括りに嫉妬と言っても、いろいろ種類があるよな。恋愛、友情、才能、美貌……誰もが一度は何か、あるいは誰かに嫉妬をしたことがあるはずだ」

教授「小説やドラマなんかでは歪んだ感情として描かれがちだが、人間誰もがそういう感情を持ち合わせてる。嫉妬って、ある意味すごく人間的だよな」

教授「その中でも恋愛における嫉妬っていうのは特に厄介であり、一番身近でもある」

教授「あの人に一番相応しいのは私なのに……私の方があの人を愛しているのに……そういうのは、ときに重大な犯罪に繋がる。例えばストーカー、DVだってそうだな」

教授「だけど人間ってのは面白いもんで、嫉妬されたいという人も少なからずいる」

教授「この中にも恋人に嫉妬されたい!と思ってる人もいるんじゃないか?まぁそれは自分が必要とされているっていう欲求を満たしてくれるってことだから、何らおかしなことではない」

教授「何事にも言えることだけど、やりすぎは良くない。嫉妬のしすぎって言うのはおかしな話だが、ずっと嫉妬してると疲れてきて、他の人に心の安泰を求めてしまう。よくあることだ。まぁカップルを例に挙げると、浮気、からの破局だな」

教授「恋愛にこだわらず、うまく生きていくためには嫉妬という感情をコントロールするのが大切だ。ま、俺には嫉妬してくれる人なんていないけどな」

アハハハ

爽「……」

講義後 廊下

爽「もしもし」

誓子『あ、終わった?』

爽「うん、どこで待ち合わせようか」

誓子『正門の前で待ってる』

爽「了解」ピッ

正門前

誓子(爽遅い……)

?「君、桧森誓子ちゃん?」

誓子「そうですけど」

先輩「俺、4年の○○。よろしく」

誓子「先輩でしたか。初めまして。どうして私の名前を?」

先輩「いやー、去年の一年生で超可愛い子がいるって噂になっててさ、何度か見たことはあったんだけど、いつも隣に友達がいるからなかなか話しかけづらくて」

誓子「はぁ、そうですか」

先輩「良かったら今度、お茶でもどうかな。俺の連絡先渡しておくから。じゃ、また!」

誓子(随分無理矢理なナンパだなぁ……あ、爽来た)

爽「誓子ー、お待たせ」

誓子「おそーい」

爽「ヒーローは遅れてくるものだろ?」

誓子「ヒーローねぇ」

爽「ってか、誰あの男」

誓子「4年の先輩だって」

爽「連絡先貰ったんだ」

誓子「というより、押し付けられたって感じ」

爽「ふーん、するの?連絡」

誓子「まぁ、万が一気が向いたら」

爽「へー」

誓子「何食べる?」

爽「おしゃれにパスタなんてどう?」テツナギ

誓子「たまにはいいんじゃない?」ギュッ

爽「じゃ、レッツゴー」

誓子「おー」

昼食後 帰り道

爽「結構美味しかったな」

誓子「また来ようね」

爽「今度はイカスミパスタに挑戦しよう」

誓子「普通に美味しいと思うけど。あ、明日って部活だよね?」

爽「うん。久々にたくさん打つぞー!」

誓子「今年のインカレは誰が活躍するんだろうね」

爽「宮永姉妹はもちろん、注目選手は多いな」

誓子「爽はどうして出ないの?」

爽「私なんかの実力じゃ到底無理だよ」

誓子「っそんなことない!!」

爽「……誓子?」

誓子「爽は誰よりも強いよ。私達を引っ張ってきてくれたもん。誰にも負けないよ」

爽「……ありがとう、誓子」

爽「だけど、私の中の麻雀はもう完結しちゃってるんだ。高校最後のあのインターハイで」

爽「有珠山の、獅子原爽、桧森誓子、岩館揺杏、本内成香、真屋由暉子のメンバーじゃない限り、私はもう本気で勝とうと思えないんだ」

爽「ま、今も楽しいけどな。麻雀自体は好きだし、趣味でやるのも悪くない」

誓子「そっか……いいと思う、爽がそう決めたなら」ニコ

爽「我が道を行くのが私だからな」

誓子「爽らしい」フフ

後日 大学内

爽「はー!午前の授業終わり!今日は午後もあるのかー……」

誓子「仕方ないよ。今のうちに単位とっておけば来年と再来年は楽だし」

爽「それもそうだなー」

?「おっふたっりさん!」

爽「お前……!」

誓子「揺杏!?」

揺杏「やっほー!元気してました?」

爽「久しぶりだなー揺杏」

誓子「学校サボってきたの?」

揺杏「ぴんぽーん、さすが誓子先輩!いやー専門学校って大変ですね、高校と違ってサボるとすぐついていけなくなっちゃうし」

爽「高校のときもついていけてなかったじゃんか」

揺杏「それを言っちゃおしまいだよ」

揺杏「学校サボってまで会いに来たんだから、ご飯くらい奢れよ爽ー」

爽「じゃあ学食行っちゃう?」

揺杏「おーいいね、行く行くー!誓子先輩!行きましょう」

誓子「あ、待ってよ二人ともー」

大学内 学食

揺杏「おー!色々ある!」

爽「私がおすすめを紹介してやろうじゃないか、まずは」

後輩「獅子原先輩!」

爽「お、後輩ちゃん」

誓子「……」

揺杏「だれ?だれ??」

後輩「桧森先輩こんにちは!えっと……」チラッ

揺杏「岩館揺杏でーす」

後輩「岩館……先輩?」

揺杏「いや、タメだね」

後輩「じゃあ岩館さんかな?背、大きいね」

揺杏「よく言われるー」

爽「昔から私よりでかいもんな」

揺杏「そうだったなぁ」

後輩「みなさんこれからお昼ですか?」

爽「そうだよ、後輩ちゃんも?」

後輩「はい、誰も都合の合う友達がいなくて、意を決して一人で学食に来ちゃいました!」

爽「じゃあ一緒に食べない?」

後輩「いいんですか?」

爽「大勢で食べたほうが楽しいし。な、二人とも」

揺杏「もちのろん~」

誓子「……どうぞご勝手に」

爽「誓子ー、なんだよそれー」

先輩「あれ、誓子ちゃん?」

誓子「あ、先輩。どうも」

揺杏「また知らない人きた」

先輩「あー、友達と食べる感じか。良かったらどうかなと思ったんだけど」

誓子「いえ、ご一緒させてもらってもいいですか?」

揺杏「えっ、誓子先輩?」

爽「まぁいいじゃん揺杏。先輩とのコネクトがあると色々と便利だからな」

先輩「ということで、誓子ちゃんちょっと借りてくね!」

爽「はい、不束者ですが」

揺杏「いいのかよ爽」

爽「……」

爽「さ、二人とも、行くぞー」

後輩「はーい」

揺杏「ったく……」

昼食後

爽「いやー食った食った」

後輩「あの、私までごちそうになってしまって良かったんですか?」

爽「後輩は可愛がるのが先輩の役目だからね」

揺杏「わかってんじゃん爽ー」

爽「感謝しろよー揺杏ー」

揺杏「おうよー、誓子先輩は?」

爽「さぁ、まださっきの先輩と一緒にいるんじゃないか?」

揺杏「ふーん……ってうおっ!爽……手の平どうしたんだよ」

爽「何が?」

揺杏「爪の痕つきすぎて大変なことになってるぞ」

後輩「真っ赤になってますよ……大丈夫ですか?」

爽「わお、まぁ大丈夫だろ。ノープロブレム」

揺杏「プロブレムありすぎだろ……」

爽「そんなことより揺杏、そろそろ帰らないとやばいんじゃないか?」

揺杏「えっ、あ、マジじゃん。授業始まっちゃう。誓子先輩にもよろしく言っといて!」

爽「了解、気をつけて帰れよー」

後輩「ばいばい」

揺杏「じゃねー!」

爽「嵐のようなやつだな」

後輩「面白い人ですね」

爽「まぁね」

麻雀部 部活中

爽「よっしゃ」

先輩1「うわまた負けたよー」

先輩2「爽強すぎー」

先輩3「後輩に負けるとか面子丸潰れじゃん私達!」

爽「まぁ一応インハイ出場したことあるんで」ヘヘ

先輩2「すごいよね」

先輩3「桧森さんもチームメイトだったんだっけ」

爽「そうです、切磋琢磨してきましたよ」

先輩1「獅子原の口からそんな言葉が出てくるとは……」

爽「窮鼠猫を噛む」ハハハ

先輩2「使い方合ってんのかそれ」

先輩3「桧森さんといえばさー、最近○○と一緒にいるとこよく見る気がする」コゴエ

先輩1「あー、私も見た。今日一緒にご飯食べてたし」コゴエ

爽「○○って、あぁあの男の」

先輩2「そうそう、あまりいい噂聞かないよね」コゴエ

先輩3「女とっかえひっかえしてるとか」コゴエ

先輩1「背後に不良グループがいるとか」コゴエ

爽「ほう……」

先輩2「まぁ今のところは何もないみたいだけど……」

先輩3「桧森さん可愛いし、狙われてるかもね」コゴエ

爽「……」

帰り道

爽「今日は結構勝ったな」

誓子「私も調子良かったかも。爽には負けたけど」

爽「まだまだ修行が足りんな」

誓子「そうね……明日は後輩さんと遊びに行くんだっけ?」

爽「あぁうん」

誓子「私も遊びに行くことになったの」

爽「誰と?」

誓子「先輩」

爽「そっか、お互い楽しもうな」

誓子「うん」

待ち合わせ場所 爽

待ち合わせ場所 爽

待ち合わせ場所 爽

宮永姉妹インカレ出てるって爽たちが大学2年だと咲さん今高3じゃね?

>>27
あーごめんなさい。照だけってことにしておいてください。

待ち合わせ場所 爽、後輩

後輩「獅子原先輩!遅れてすみませんでした!」

爽「私も今来たところだし、気にしないでいいよ」

後輩「服がなかなか決まらなくて……」

爽「いいじゃんワンピース。すごく似合ってると思うよ」

後輩「あ、ありがとうございます//」

爽(改造したらユキに似合いそうだな)

爽「じゃ、行こっか」

後輩「はい!あ、あの」

爽「ん?」

後輩「手、繋いでもいいですか……?」

爽「……いいよ」

後輩「ありがとうございますっ」ギュッ

爽(手、小さいな……繋ぎ心地は誓子の方が……)

後輩「……獅子原先輩?」

爽「ん、あぁ。何でもないよ、行こ」

待ち合わせ場所 誓子、先輩

誓子「先輩」

先輩「お、誓子ちゃん」

誓子「こんにちは。すみません、遅れてしまって」

先輩「いや、俺も今来たとこだから。今日の服、可愛いね」

誓子「ありがとうございます」

先輩「すげー俺好み」

誓子「良かったです」

誓子(結構前に爽に選んでもらったやつだけど)

先輩「最初は映画見ようと思うんだけどどうかな」

誓子「はい、大丈夫です」

先輩「良かった、じゃあ行こうか」ギュッ

誓子「え」

先輩「ダメだった?」

誓子「いえ、少し驚いてしまって」

先輩「可愛いね、行こっか」

誓子「はい」

誓子(指、太いなぁ。爽の指は細くて綺麗なのに。まぁ男の人だから当たり前か)

某テーマパーク 爽、後輩

後輩「獅子原先輩!何から乗りましょうか!」

爽「ジェットコースター以外の選択肢はないな」

後輩「はい!行きましょう!!」

ジェットコースター
後輩「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

爽「いやーいい風だな」

フリーフォール
後輩「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

爽「臓器が~浮~く~」

お化け屋敷
後輩「怖いです……っ」ギュッ

爽「お化けだって元を辿れば人間さ」ハハハ

お化け「ヴォォォ……」

後輩「きゃぁ!!」

爽「ハロー、マイネームイズ獅子原」

後輩「先輩っ!握手を求めないでください!」

お昼

後輩「たくさん叫んじゃいました……」

爽「アトラクションのスリルは中の下くらいだな~。もっと命をなくす直前までいってくれると楽しいんだけど。私がアトラクションを考えれば客足が伸びる、絶対伸びる」

後輩「嫌ですよそんなテーマパーク……」

爽(誓子だったら一緒に考えてくれるのになぁ)

後輩「獅子原先輩、お弁当作ってきたんですけど……食べてくれますか?」

爽「嬉しいな、もちろん頂くよ」

後輩「美味しくなかったら、無理せず残してくださいね!どうぞ」

爽「いただきまーす」パクッ

爽「うん、美味い」モグモグ

爽(普通に美味しいんだけど、誓子の料理を食べ慣れてるとどうしても心から美味しいと思えない)

後輩「良かったです……まだまだあるのでいっぱい食べてくださいね」

爽「ありがとう」モグモグ

後輩「あ……その指輪、桧森先輩と同じやつですか?」

爽「これ?そうだよ」

後輩「別れたのにペアリングしてるんですか?」

爽「うん、というかこれ別れたあと買ったやつだし」

後輩「……一つだけ、わがまま聞いてもらえませんか?」

爽「いいよ」

後輩「私といる間だけでいいので、外してほしいんです」

爽「指輪を?」

後輩「はい」

爽「別にいいよ」

後輩「本当ですか!?」パァッ

爽「外すくらいなら別に」

後輩「ありがとうございます……!」

爽「うん」

後輩「このあともたくさん遊びましょう!」

爽「もちろん」

某映画館 誓子、先輩

先輩「お待たせ、はいこれチケット」

誓子(恋愛映画か……爽だったら絶対見ないだろうな)

誓子「ありがとうございます。私、ポップコーンと飲み物買ってきますね」

先輩「あ、ごめん。金渡すよ」

誓子「いえ、映画代を出していただくのでこれくらいは私が出します」

先輩「あ、そう?サンキュー」


誓子「すみません、キャラメルと塩バター二つ。どっちもレギュラーサイズで、飲み物はオレンジジュースとコーラ」

店員「かしこまりました」

誓子「あ」

誓子(いつもの癖で爽の好みのもの頼んじゃった)

誓子「先輩、塩バターとコーラでよかったですか?」

先輩「ん、あぁ全然いいよ。俺持つから貸して」

誓子「すみません」

先輩「女の子に持たせるわけにはいかないからね」

誓子(露骨……)

先輩「じゃ、そろそろ始まるし行こうか」

誓子「はい」

映画視聴中

誓子(うーん、微妙かも)

先輩「」ギュッ

誓子「!?」

誓子(いきなり手握ってくるし)

映画終了後

先輩「感動したね、俺泣きそうになっちゃったよ」

誓子「そうですね」

先輩「夜はどこで食べる?」

誓子「先輩の食べたいもので」

先輩「んー、この辺に新しくできたカフェがあるらしいんだけど、そこでどうかな」

誓子「じゃあそこに行きましょう」

先輩「おう」

カフェ

先輩「誓子ちゃん、それうまい?」

誓子「結構美味しいです」

先輩「一口もらってもいい?」

誓子「いいですよ、どうぞ」

先輩「食べさせてくれないの?」

誓子「」イラッ

先輩「折角だし、ね!」

誓子「わかりました……」ドーゾ

先輩「あーん……うん、うまい!」モグモグ

誓子「それは何よりです」

先輩「誓子ちゃんに食べさせてもらったからかな」

誓子「先輩、ソースついてますよ」

先輩「うお、マジか。はっず!」フキフキ

誓子(こういうとき、爽だったらなんて言うかな。『ソースのついでにそのサムいセリフの尻も拭ってください』とか?言いそう、下品だけど)クスッ

先輩「笑うなよー」

誓子「ごめんなさい」

誓子(想像して笑っちゃった)

帰り道 爽、後輩

後輩「獅子原先輩、今日は本当にありがとうございました」

爽「こちらこそありがとう」

後輩「すごく楽しかったです!わがまままで聞いてもらえて……」

爽「私も楽しかったからいいんだよ」

後輩「獅子原先輩と二人で一日過ごせるなんて……夢みたいです……!」

爽「そんな大層な人間じゃないんだけどなぁ」アハハ

後輩「私にとってはすごいことなんです。……でも、桧森先輩は毎日獅子原先輩と一緒なんですよね……一緒にご飯を食べて、一緒に大学に来て、一緒に帰って、一緒に寝て……羨ましいです。付き合ってる訳じゃないのに」

爽「……」

後輩「私、獅子原先輩のこと好きです。恋愛対象として」

爽「……ありがとう」

後輩「だから、また私と出かけてくれませんか?そしていつかちゃんと告白して、それで返事を聞きたいです」

爽「うん、わかった」

後輩「また、連絡しますね。大学でも会いに行きますから」

爽「待ってるよ」

後輩「今日は一日、ありがとうございました。さようなら」

爽「じゃあね、おやすみ」

後輩「おやすみなさい」

爽(……誓子、もう帰ってるかな)

帰り道 誓子、先輩

誓子「今日はありがとうございました。楽しかったです」

先輩「こっちこそありがとな。楽しんでもらえてよかったよ。ほんとに家まで送らなくて大丈夫?」

誓子「はい、ここからすぐなので」

先輩「そっか。でな、最後に渡したいものがあるんだ」

誓子「? はい」

先輩「これ」

誓子「……ネックレス、ですか?」

先輩「誓子ちゃんが来る前に買ってきた。似合うと思って。つけるよ」

誓子「ありがとうございます」

先輩「……すっげぇ似合ってる。可愛いよ」

誓子「ほんとですか?」

先輩「うん。あのさ、俺、誓子ちゃんのことが好きなんだ」

誓子「はい」

先輩「気が早いとは思うけど、良かったら俺と付き合ってくれないかな」

誓子「……」

先輩「無理にとは言わないし、今すぐ返事しろなんて言わないから。少し考えてみてくれると嬉しい」

誓子「分かりました。少し時間をください」

先輩「おっしゃ。えっと、良かったらまた遊ばない?」

誓子「予定が合えば是非」

先輩「おう、じゃあまた連絡するわ」

誓子「はい」

先輩「またなー」

誓子「おやすみなさい」

誓子(爽、帰ってきてるかな……)

爽、誓子の家の前

爽「うお、誓子」

誓子「あ、爽。丁度会ったね」

爽「そうだな、おかえり」

誓子「ただいま。家入ろ?」

爽「うん」

リビング

誓子「どうだった?」

爽「楽しかったよ、そっちは?」

爽(微妙だったなー)

誓子「楽しかった。先輩優しかったし」

誓子(微妙だったわ)

爽「そか、ん?それどうしたの?」

誓子「ネックレス?」

爽「そーそー」

誓子「先輩からもらった」

爽「ふーん、趣味の悪いネックレスだな」

誓子「……やっぱりそう思う?」

爽「中学生の初めてのプレゼントみたいな」ハハハ

誓子「あはは、なんとなく分かるかも……あれ、爽、ペアリングは?もしかしてどこかに落としてきた?」

爽「まさか、外したんだ」

誓子「……なんで?」

爽「落としたら困るから。ってなんでそんな怖い顔するんだよ」

誓子「そう」

爽「確かここに……あった。ほら、これでいつもどおり。つーかお前もそのだっさいネックレス外せよ」

誓子「そうだね」ジャラ

爽「はー疲れた疲れた。はやく風呂入ろうよ」

誓子「あのね、爽」

爽「ん、なに?」

誓子「私、先輩に告白された」

爽「……そうかー」

誓子「……どうしたらいい?」

誓子(断れって、言ってほしい)

爽「んー、別に、好きなら付き合えばいいんじゃない?私の許可なんて必要ないんだからさ」

誓子(……っ)

誓子「そう、だよね。少し考えてみようかな」

爽「付き合うことになったら全力支援するよ」

誓子「私、まだやることあるから先にお風呂入って」

爽「りょーかいした」

誓子「じゃあね」スタスタ

爽「おーう」

爽「……」

就寝前 寝室

爽「よっ、と。あー明日も学校か……」

誓子「……爽」

爽「んー?」

誓子「先輩と付き合うことにした」

爽「おー、誓子もついにリア充の仲間入りかよー。おめでとう」

誓子「ありがと」

爽「お幸せにな。でもここに連れ込むのはやめてくれよー?」

誓子「大丈夫、その辺はちゃんとするから」

爽「ま、良かったな。何かあれば相談乗るよ。参考になるかは分からないけど」

誓子「……うん」

爽「ペアリングも、外さなきゃなぁ」

誓子「……そうだね」

爽「明日から外していこう。間違ってつけて行ったら彼氏さんが悲しむぞ。じゃ、そろそろ寝るか」

誓子「分かってる。おやすみ」

爽「おやすみー」

爽「……っ」

後日 昼食時

先輩「誓子ー、迎えに来たぞー」

誓子「あ、はーい。じゃあ爽、後でね」

爽「うん、じゃあなー」

爽「……あ、もしもし後輩ちゃん?良かったら一緒にご飯食べない?うん、うん。わかった。じゃあ学食でね、はい」ピッ

学食

後輩「獅子原せんぱーい!!」

爽「よっ、突然呼び出してごめん」

後輩「先輩から誘ってくれることは少ないので嬉しいです」

爽「そう?」

後輩「はい!何食べましょうか?」

爽「私は本日のランチをチョイスする!」

後輩「今日はしょうが焼き定食らしいですよ。私はどうしようかな……」

爽「激辛カレーライスなんてどう?」

後輩「激辛はハードル高いです……うん、チャーハンでも食べよう」

爽「おっ、いいねぇ中華」

後輩「ふふ、獅子原先輩にも分けてあげます」

爽「やったぜ」

爽「しょうが焼きうめぇ」モグモグ

後輩「チャーハンも美味しいです」

爽「どれどれ」

後輩「お口開けてください」

爽「あーん……うん、なかなかやるじゃないか」フッ

後輩「誰に言ってるんですか」クスッ

爽「でもやっぱり誓子の料理には……あ」

後輩「獅子原先輩?」

爽「いや、何でもない。うん」

後輩「? そう言えば、桧森先輩は今日は一緒じゃないんですね」

爽「えーと、誓子はな、彼氏ができたんだ」

後輩「えっ、そうなんですか!?」

爽「うん、まだ付き合いたてだけど」

後輩「そうだったんですか……!だからペアリングしてないんですね」ニコニコ

爽「なんか嬉しそうだね」

後輩「え!?いや、その、えっと、私はてっきり桧森先輩はその……やっぱり何でもないです」

爽「んー?」

後輩「いえ、気にしないでください!ってことは、桧森先輩とは前みたいに一緒にいられなくなっちゃうってことですか?」

爽「そうなるね」

後輩「だったら今日みたいに私のこと、どんどん誘ってください!桧森先輩の代わりにはなれないかもしれませんけど……」

爽「ありがとう、後輩ちゃん」

後輩「いえ……//」

爽「で、突然なんだけど」

後輩「はい」

爽「学校が終わったら体動かしに行かない?」

後輩「へっ?」

講義終了後 校舎付近

後輩「爽先輩、どこに行くんですか?」

爽「ま、ついてからのお楽しみってやつ」

後輩「あ、桧森先輩……横にいるのは彼氏さんですかね?」

爽「!?」バッ

誓子「あ、爽……と、後輩さん」

後輩「こんにちは」ペコリ

先輩「あー、獅子原さん、だっけ?」

爽「そうです、こんにちは。これからデートですか?」

先輩「そうだよ。そっちは?」

爽「こっちもデートです」ハハハ

後輩「……//」

先輩「ほー、じゃあ俺らは行くわ。またね」

爽「はい、また。誓子ー、彼氏さんに失礼のないようにな」

先輩「彼女のわがままなんて可愛いもんだよ。な、誓子」

誓子「……」

先輩「誓子?」

誓子「なんでもありません。行きましょう。爽、またね」

爽「楽しんでこいよー……さ、私達も行くか」

後輩「はいっ」ギュッ

バッティング中

爽「よっ」カキーン

後輩「……えいっ」ポスン

爽「ほっ」カキーン

後輩「……っ」ポコン

爽「とうっ!」カキーン

後輩「それっ」スカッ

爽「おりゃっ」カキーン

爽「いやぁ、麻雀部じゃなくてソフトボール部に入っておけば良かったかな」ハハハ

後輩「難しいです……」

爽「ん、どれどれ……まずはフォームだな。腰を入れて……こう」

後輩「こ、こうですか?」

爽「んーにゃ、もっと……こうして……うんうん、いい感じ」

後輩「なるほど……」

爽「あとはバットをもっと短く持って……そう、この辺だ」

後輩「て、手が……//」

爽「あ、ごめん嫌だった?汗かいてるしなー」

後輩「いえっ!全然嫌じゃないです!むしろ嬉しいくらい……」ボソッ

爽「ん、そっか。よし、あとはボールをよく見て、ここだと思った瞬間に振る!」

後輩「が、頑張ります!」

後輩「えいっ」コツン

後輩「とうっ」カキンッ

爽「おっ、うまくなってきてる」

後輩「……っ!」カキーン

爽「おー!今のはツーベースヒットくらいだな!」

後輩「ほんとですか!?」

爽「うんうん、上達も早い。期待の新人だな」

後輩「ありがとうございます!」

爽「おっしゃ、私はホームラン狙ってくぞー」

後輩「獅子原先輩、頑張って!」

バッティングマシーン「あらよっと」

爽(……ここだ!)ブォン

カキーーン テレッテレーン

爽「おー、マジで打っちゃったよ」

後輩「先輩!すごいです!ホームランですよホームラン!!」

スゲー アノオネーサンガ? カッコイー

店主「おー、ホームランを打ったのは君か」

爽「どーもどーも」

店主「おめでとう。これ景品ね」

大きいぬいぐるみ「やっほー」

爽「なんだこれ……」

後輩「超可愛いじゃないですか!!」

爽「これが……?うーん、あげるよ」

後輩「いいんですか!?」

爽「うんうん、プレゼントフォーユー。家にあっても邪魔なだけだし」

後輩「やったぁ……!ありがとうございます!大事にしますね」ギュッ

爽「喜んでもらえてよかった。さーて、飲み物でも飲んで出るか」

後輩「はい!」

バッティングセンター前 ベンチ

後輩「先輩、すごくかっこよかったです」

爽「だろー?」

後輩「はいっ……前にもここに来たことがあるんですか?」

爽「高校生の頃はよく来てたよ、部活帰りとかに」

後輩「ということは、桧森先輩も?」

爽「……うん」

~~

揺杏『くそっ、また爽に負けた!!』

爽『実力の差だな~』

由暉子『どうして麻雀部なのにバッティングで勝負してるんでしょうね、この人たち』

成香『私もあんな風に打てるようになりたいです……!』

誓子『元気だね~』

揺杏『もう一回勝負しろー爽!!』

爽『何度やっても結果は同じだぞ』

揺杏『そんなことねーし!次は私が勝つ!!ですよね誓子先輩!』

誓子『んー……爽はやり込んでるからね』

揺杏『あー!恋人だからってえこひいきするのは良くないと思います!!』

誓子『べ、別にそういう訳じゃ』

成香『チカちゃんは獅子原先輩のことが大好きなんです』ドヤッ

誓子『もー、なるかまで……』

爽『ははは、流石は私の嫁……むっ、ひらめいた!』

由暉子『何をです?』

爽『ユキに露出度の高い服を着せてバッティングをさせれば……はやりんにだって勝てるんじゃないか!?』

由暉子『なんですかそれ』

爽『そうとなれば早速衣装を……』

揺杏『バッティングなんてしてる場合じゃねぇ!!』

誓子『……色々とアウトなんじゃないの?』

成香『チカちゃん、嫉妬ですか?』

誓子『そんなわけないでしょっ!』

~~

爽「いやー、懐かしいな」

後輩「あの、すごく嫌な質問なんですけど」

爽「ん?」

後輩「どうして桧森先輩と別れてしまったんですか?」

爽「あー、別になんてことはないよ。受験が近くなって、どうせ大学に入っても一緒だし、少し勉強に集中しようってことになってな」

後輩「それで破局ですか?」

爽「うん、まぁそういうこと。それでめでたく二人ともこの大学に合格して、一緒に住んで、流れでペアリングとか買っちゃったりね。復縁したわけではないからお互い恋人ができても浮気とかにはならないんだけど」

後輩「そういうことだったんですね……」

爽「でも今は誓子に彼氏がいるからね、一人の友達として成り行きを見守るだけさ」

後輩「……先輩には私がいますよ」ギュッ

爽「……私、結構汗かいてるぞ」

後輩「関係ないです……獅子原先輩」

爽「……」

後輩「私……先輩のこと大好きなんです」

後輩「それこそ桧森先輩に負けないくらい」

後輩「先輩……私じゃ、ダメですか?」

爽「私はーー」

ゲームセンター

先輩「俺、このゲームめっちゃ得意なんだよね」

誓子「そうなんですか」

誓子(あ、これ爽もよくやってたやつだ)

先輩「おっし、ハイスコア更新してやろ」

誓子「頑張ってくださいね」

先輩「誓子にいいとこ見せるわ」


先輩「うっわ、二位かよ!一位のやつすげぇな、誰だよライオンフィールドって。だせぇニックネームだな」

誓子「!」

誓子(ライオンフィールド……獅子原……爽だ)

~~

高校三年 同ゲームセンター

爽『こういうゲー厶は、コツを掴めば案外簡単にできるもんなんだ。あとは何度も通い詰めること』

誓子『へぇ』

爽『よく見てろよ……』

誓子『わ、ほんとに上手い』

爽『このままハイスコア更新だー』


爽『どや?』

誓子『すごいすごい』パチパチ

爽『ふっふーん、ニックネームは……ライオンフィールド、と』

誓子『なにそれ、ダサい』

爽『少しダサいくらいが印象に残るんだよ』

誓子『ふーん……』

爽『ふぃー疲れた。アイスでも食いに行くか』

誓子『うん、食べよ』

~~

誓子(まだあのまま更新されてないんだ……)

先輩「あー、なんか萎えたわ」

誓子「かっこよかったですよ」

先輩「おっ、嬉しいこと言ってくれるね。よし、結構遊んだし、なんか食って出るか」

誓子「はい」

ファミレス

誓子「先輩、たまには私が出します」

先輩「いやいや、彼女の飯くらい出さなくてどうすんだよ」

誓子「でも……」

先輩「いいからいいから。あ、代わりと言っちゃあれだけど、食べ終わったら俺んちこない?今日誰もいなくてさ」

誓子「……私、まだそういうのはちょっと」

先輩「大丈夫だって、別に何するわけでもないしさ」

誓子「……まぁそれなら」

先輩「じゃ、決まりだな」

先輩宅

誓子「お邪魔します」

先輩「おう、俺の部屋二階の奥だから先行ってて。飲み物持ってくから」

誓子「私も手伝います」

先輩「客はおとなしくしとけー」

誓子「すみません……」

先輩「いやいや」

誓子(ここが、先輩の部屋……)

誓子(意外と綺麗かも)

誓子(爽だったら、ベッドの下覗いたりするんだろうな、絶対)

先輩「おまたせ」

誓子「ありがとうございます」

先輩「おう」

誓子「意外と綺麗なんですね」

先輩「もっと汚いと思った?」

誓子「……正直」

先輩「ははは、素直でよろしい。まぁ実を言うと昨日までは汚かったんだよ」

誓子「え?」

先輩「誓子を呼ぶ予定だったから綺麗にしたってこと」

誓子「そうだったんですか」

先輩「ここまで頑張ったんだから、キスくらいさせてくれてもいいよな」

誓子「キス、ですか。すみません、私まだそういうのしたことなくて」

誓子(嘘だけど)

先輩「あ、じゃあ俺が初めて?嬉しいな」

誓子「あの、やっぱり私そろそろ……んっ」

誓子(無理矢理!?)

先輩「……ぷは、どう?意外となんてことないでしょ?」

誓子「……はい」

誓子(爽の方がうまいし)

先輩「誓子」

誓子「何ですか?」

先輩「俺、誓子のこともっと知りたいんだよ」

誓子「……」

先輩「だからさ、ヤろ?」

誓子「そういうのはまだ嫌だって言ったはずですけど」

先輩「だからさ、無理にとは言わない。だけど俺ら、付き合ってんだよ?ごく普通のカップルじゃん。俺は誓子こと好きだから、もっと深い関係になりたい。それって変なことか?」

誓子「……私はーー」

明け方 爽、誓子の家

誓子「……ただいま」ガチャ

誓子(流石に起きてないよね)

爽「なんだ誓子ー、朝帰りか?」

誓子「……っ!起きてたの?」

爽「……というよりは」チラッ

誓子(机の上に荷物……しかもまだ私服を着てる)

誓子「そっちもさっき帰ってきたばっかってことね」

爽「そういうことだ」

誓子「後輩さんの家?」

爽「まぁね」

誓子「……」

爽「なんだよ、お前だって先輩の家に行ってたんじゃないのか」

誓子「どうだか」

爽「なんだよそれー」

誓子「お風呂は?」

爽「入ってきた」

誓子「あっそ……」

爽「何怒ってんだよ」

誓子「怒ってない」

爽「明日も早いし先に寝るわ」

誓子「おやすみ」

爽「おやす~」

朝 ベッドの上

誓子「んん……」

誓子(爽は……一限からだからもういないか)

誓子「ご飯食べないと……」

食卓

誓子「ん?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

誓子へ

たまには私が作ってみました。味は保証しないけどな。
今日はなるべく早く帰る予定だから、都合が合えば久しぶりに一緒にご飯食べようぜ。
連絡待ってる。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

誓子「……バカ爽」クスッ

誓子「ん、美味しい」

大学 廊下

爽「でさでさー、~~だったんだよ!」

モブ1「マジで!?」

爽「マジマジ。しかもそれだけじゃなくて~~が~~で」

モブ2「それほんと~?」

爽「大マジだよ」

誓子(あ、爽だ)

誓子「さわy」

後輩「爽先輩っ!」

誓子(……)

爽「おー!後輩ちゃん、おっはー」ナデナデ

後輩「おはようございます!」ギュッ

モブ1「獅子原、最近その子と仲いいよねー」

モブ2「気をつけなよ、私も爽には食われかけたから」

爽「こら、デタラメを言うんじゃないよ」

後輩「爽先輩になら食べられてもいいですよ?」

モブ1「うお、ベタ惚れ」

誓子(ちゃっかり爽先輩呼びになってるし。……まぁいいや、今日は一緒にご飯食べる予定だもん)スタスタ

爽「いやぁ照れるなー」

モブ2「元カノの桧森さんは今彼氏いるしね」

モブ1「確か先輩と付き合ってるんだよね?美男美女でお似合いって感じ」

爽「……」

後輩「さ、爽先輩?少し痛いかなって……」

爽「あっ、ごめん」パッ

モブ1「優しくしてやんなよ、獅子原」ニヤニヤ

爽「私の愛は重いんだよ」アハハ

講義中

爽(あー、退屈だな)

爽(……あの雲、成香みたいだ)

爽(隣のは……誓子の睫毛)プッ

爽(ん……本物の誓子発見。ついでに彼氏も)

誓子「」ニコニコ

爽(あいつ、なんであんなニコニコしてんだろ)

モブ1「……ちょっと、獅子原」コソッ

爽「ん、なに?」

モブ1「机蹴るのやめてよ」

爽「あ、ごめんつい」

モブ1「気をつけてよね」

爽「ごめんごめん」

授業終了後

先輩「誓子ー」

誓子「あの、すみません。今日は少し用事があって……」

先輩「なんの?」

誓子「久々に高校の友達と食事をしようという話になって」

先輩「へぇ」

誓子「すみません。でもこっちの方が早く約束してしまったので」

先輩「……いや、別にいいよ。じゃあな」

誓子「さようなら」

誓子(爽に連絡しないと)

誓子「もしもし、今どこ?」

爽『帰ろうと思ってたんだけどさ、教授に捕まっちった。悪いけど先帰っててくれる?なるべく早く帰るから』

誓子「わかった」

爽『ごめんな』

誓子「ううん、気にしないで」

誓子(まだ帰ってこないなら、少し張り切って作っちゃおうかな)

誓子、爽宅 キッチン

誓子「……よし、できた」

誓子(うん、味も上出来。爽、喜んでくれるかな)

ガチャ タダイマー

誓子(丁度帰ってきた)

誓子「おかえりー」

誓子「おつかれさ……ま」

後輩「桧森先輩、お邪魔します!」

誓子「は?」

爽「ただいま。いやー、参った参った。教授ったら話しが長くてさ」

誓子「……なんでこいつがいるのよ」

爽「後輩のこと?帰るときにたまたま会ってさ。あ、もしかしてご飯の量足りない?」

後輩「すみません、突然押しかけてしまって……」

誓子「っざけんじゃないわよ……」

爽「誓子?」

誓子「爽の……バカ!!!!」ドンッ

爽「いって、おい!どこ行くんだよ!」ヨロッ

誓子「……っ」バタン

後輩「えっと……やっぱりお邪魔でした……よね」

爽「……」

自宅付近 公園

誓子「……」ピッポッパッ

prrrr prrrr

成香『もしもし、チカちゃん?どうしたの?』

誓子「なるかぁぁぁぁぁぁ……」グスッ

成香『わわっ、どうしたの?』

誓子「うぇ、ひっく……ぐすっ」

成香『泣いてる……?今どこにいるの?』

誓子「家の近くの公園……」

成香『わかった。待ってて、ちかちゃん』

成香の家

誓子「……ごめんね」

成香「ちかちゃんにはいつも助けられてるもん。これくらい何てことはないです。……それで、どうしたの?」

誓子「実は……」

事情説明中

成香「ちかちゃんは、獅子原先輩がその人を家に連れてきたことに対して怒ってるの?」

誓子「……うん」

成香「彼氏がいるのに?」

誓子「……」

成香「正直、今のちかちゃんは幸せそうに見えないです。それどころか、無理をしてるように見えます」

誓子「そんなことないよ」

成香「嘘です。幼馴染だから分かるよ。……ねぇちかちゃん、ちかちゃんの本当の気持ち、私に教えて?」

成香「私は責めたりしないよ」

誓子「……あのね、なるか。私」

誓子「……爽のことが、好き」

成香「うん」

誓子「高校生のとき、受験のために別れようって言って、嫌だとも何も言われなくて、爽にとって私ってそれだけの存在だったんだって思って、寂しかった」

成香「うん」

誓子「すごく後悔して……爽と同じ大学に入れるように頑張って勉強して、合格して、一緒に住もうって言ったら受け入れてくれて、嬉しかったの」

成香「……」

誓子「ペアリングが欲しいって言ったときも黙って買ってくれて、これで爽とまた一緒にいられるんだって、独占できるんだって、そう思って……っ」

成香「……うん」

誓子「だけど、爽は人気者だから……いつも色んな人に囲まれてて」

誓子「そんなときに後輩さんが突然現れて、すごく積極的で、いつか爽を取られちゃうんじゃないかって、焦ってた。だけど、私は爽の恋人じゃないの、仲良くしないでほしいなんて言う権利はない」

誓子「どんどん仲良くなっていく爽と後輩を見てたら私……悔しくて……!本当ならそこは私がいるはずなのに、どうしていないんだろう、って……」

成香「そっか……」

誓子「後輩さんといるときの爽はすごく楽しそうで、私の入り込む隙なんてなかった……だからもうこの生活に……爽に甘えるのはやめようと思って、先輩と付き合い始めたの」

誓子「だけど爽を忘れるなんてできなかった……先輩といても何をしていても爽のことが頭から離れない、いつの間にか考えちゃってる……」

誓子「結局私……爽のことがまだ好きなんだって……気づいたの」

成香「ちかちゃん……」ナデナデ

成香「自分の思った通りに行動すればいいんだよ。獅子原先輩にも、ちかちゃんの気持ち聞かせてあげよ?」

誓子「無理だよ……私にも、多分爽にも恋人がいるもん……」グスッ

成香「ちかちゃん、諦めちゃって本当にいいの?自分の気持ちに嘘をついたままでいいの?」

誓子「私が悪いってことはよく分かってるから……そもそも私が別れようなんて言ったことが始まり……私の醜い嫉妬がこうなる原因を作ったの。だから私は……何もしない。このままで……っ」

誓子「……ごめんねなるか。今日は泊めてくれたら嬉しいな、迷惑なら今すぐ出て行くから」

成香「ううん、迷惑なんかじゃないよ。空いてる部屋があるから、そこ使って」

誓子「ごめんね」

成香「ちかちゃんのためだから」

誓子「ありがとう。おやすみ」

成香「おやすみなさい」

成香「もしもし、獅子原先輩ですか?成香です」

成香「ちかちゃんは私の家で預かってます。今日は泊めるので……はい、大丈夫です。はい、はい。おやすみなさい」ピッ

成香「……もしもし、成香です。ある程度の事情は聞いてる?そっか、よかった。それでね、頼みたいことがあるのーー」

後日 成香宅

誓子「ほんとにごめんね、なるかも忙しいのに」

成香「泣いてるちかちゃんを放ってなんかおけないよ」

誓子「なるかは相変わらず優しいんだね……でも、すごく強くなった」

成香「麻雀もうまくなりました」ドヤッ

誓子「あはは、私も負けちゃうかも」

成香「……またみんなでやろうね、麻雀」

誓子「……うん」

成香「約束ですよ」

誓子「わかった、約束」

成香「破ったら針千本のーます、です」ニコッ

誓子「怖いなぁ、破らないようにしないと。……じゃあ、そろそろ帰るね。学校行かなきゃだし」

成香「うん、また遊びに来てね」ギュッ

誓子「近いうちに行くよ。じゃあね」ナデナデ

爽、誓子宅

誓子「ただいま」ガチャ

誓子(電気が消えてる……爽はもう行ったのかな)

食卓

誓子(また置き手紙がおいてある)

誓子(『先行く』ね……うん、私も行く準備しないと)

大学 講義中

教師「よって、ここはこうなり~~」

誓子「」カリカリ

誓子「……」チラッ

爽「……」ボーッ

誓子(ノートくらい取れっての……)

爽「」シュッシュッ

誓子(スマホいじってるし)ハァ

誓子(……後輩さんとLINEしてるのかな)

爽「」チラッ

誓子(あ、こっち見た)ジーッ

爽「」チョイチョイ

誓子(スマホを指差してる……見ろってこと?)

誓子(……爽からLINEがきてる)

爽『昨日はごめんな』

誓子『いいよ別に。こっちそごめん』

爽『なんで怒ってんのかよく分からないけど、ご飯美味しかったよ』

誓子『そっか、良かった』

爽『後輩も美味しかったってさ』

誓子『後輩?』

爽『ああ、呼び捨てで言いって言われたから』

誓子『そう』

爽『昨日は成香のとこ泊まってたんだって?』

誓子『うん』

爽『何話したの?』

誓子『別に。世間話とか』

爽『私も会いたいなぁ』

誓子『成香も会いたがってたよ。またみんなで麻雀やろうって』

爽『そうだな、近いうちにみんなで集まろう』

誓子『うん』

爽『今日はどうする?』

誓子『授業終わったら先輩が迎えに来ると思う』

爽『そっか、じゃあ夕飯はいらないな』

誓子『うん。爽は?』

爽『今日は普通に食べるわ』

誓子『後輩さんは一緒じゃないの?』

爽『今日は違うよ』

誓子『そうなんだ。まぁ今日はご飯だけ食べて帰ってくる予定だから』

爽『わかった』

講義終了後

モブ1「獅子原、さっき後輩ちゃんが探してたよ」

爽「おっけー」

モブ2「相変わらずラブラブじゃん」

爽「まぁね」ハハハ

誓子「……」

先輩「誓子ー、いるー?」

誓子「先輩、こんにちは」

先輩「おう、昨日は会えなくて寂しかったよ」ギュッ

誓子「……やめてください、こんなところで」サッ

先輩「いいだろ、彼氏なんだから」

誓子「それとこれとは話が違います」

先輩「相変わらずガード堅いなー。あ、今日は行けるよね?」

誓子「はい、大丈夫です」

先輩「じゃあ終わったら迎えに行く」

誓子「わかりました」

先輩「俺がいないからって寂しがって浮気すんなよ?」ナデナデ

誓子「しませんよ」

爽「……」

後輩「爽先輩!?ゴミ箱蹴飛ばしちゃダメです!」

爽「ん?あぁ、躓いちゃった」アハハ

後輩「へ、へこんでます」

爽「あっちゃー」

夕方 教室

先輩「誓子、行くぞー」

誓子「はーい。じゃあね、爽」

爽「じゃあなー」

爽「さて、私も……」

prrrr prrrr

爽「おっと……ユキ?」

爽「もしもーし」

由暉子『もしもし、真屋です』

爽「ユキ、久しぶりだなー!どうした?」

由暉子『一緒にご飯でもと思いまして』

爽「いいねぇ」

由暉子『桧森先輩は?』

爽『彼氏とデートだよ』

由暉子『そうですか。丁度良かったです』

爽『どういうことだ?』

由暉子『二人で話したいことがあったので』

爽『なんだなんだ、告白か?』

由暉子『何言ってるんですか。駅前のレストランで6時に待ち合わせでどうです?』

爽『了解』

由暉子『では後ほど』

爽『あーい』ピッ

駅前 とあるレストラン

店員「いらっしゃいませ。何名様でいらっしゃいますか?」

爽「多分一人先に来てると思うんですけど……」

由暉子「先輩、ここです」

爽「よっ!」

店員「ごゆっくりどうぞ」

爽「どうも」

由暉子「お久しぶりです」

爽「うん、私に会えなくて寂しかった?」

由暉子「寂しかったです」

爽「そっかそっか、私は嬉しいよ。麻雀部はどう?」

由暉子「今年はインターハイに出るのは難しいと思います」

爽「うーん、まぁ仕方ないな」

由暉子「すみません」

爽「謝ることはないって」

由暉子「インハイの活躍によって入部希望者は増えたのですが、実力的にはまだまだです。それこそ先輩に敵う人はいません」

爽「ま、いけるとこまでいければいいさ。今の部長はユキなんだから」

由暉子「はい」

爽「とりあえず何か頼もう。お腹すいちゃってさ」

由暉子「そう、ですね」

注文後

由暉子「それで本題なんですけど」

爽「うん」

由暉子「なんの話か分かってますよね?」

爽「好きな人ができたとか?」

由暉子「とぼけないでください。桧森先輩のことです」

爽「誓子がどうかしたか?」

由暉子「先輩、このままでいいんですか?」

爽「? いまいち話の意図が読めないんだけど……」

由暉子「いい加減にしてください。あなたのわざとらしい演技を見に来た訳じゃないんです」

店員「お待たせいたしました」

由暉子「っ……」

爽「どーもどーも」

由暉子「……」

爽「……」

爽「わかったわかった。謝るからそう怒るなよ。で、ユキはどこまで知ってるんだ?」

由暉子「先輩と桧森先輩が一緒に住んでいて、桧森先輩には彼氏がいるというところまでです」

爽「なるほどな、まぁ私は言った覚えがないし、揺杏か成香あたりに聞いたんだろ。それで、一緒に住んでてペアリングまで持ってる誓子を彼氏に取られてもいいのかって話か?」

由暉子「そうです。やっぱり分かってるじゃないですか」

爽「と言ってもなぁ……私達、一応別れたし」

由暉子「一緒に住んでいてペアリングまで持っているのにですか?」

爽「ペアリングはともかく、同居くらいはするだろ。ムールシェアってやつだ」

由暉子「先輩は、桧森先輩のことが好きじゃないんですか?」

爽「いや、好きだよ。付き合い始めた頃からずっと」

由暉子「……」

爽「ならどうして、か?それは簡単だ。誓子が自分で決めたから」

爽「誓子と付き合い始めて、受験のために別れて、二人で同じ大学に受かって、一緒に住み始めて、ペアリングを買って、身体を重ねた。そして、誓子に彼氏ができた。これらは全部誓子が決めたことだ。最後に関しては私にも原因があるけど」

由暉子「原因?」

爽「私と仲のいい後輩のことは知ってる?」

由暉子「はい。それでその後輩さんがどうしたんですか?」

爽「うん。その子が私のことを好いてくれてるらしくてさ、誓子がいるときでも電話してきたり、大学でもわざわざ会いに来てくれるんだ」

爽「で、私と後輩が話してるときの誓子がさ、超可愛いんだよ。イライラしてんの。どんな誓子ももちろん好きだけど、嫉妬してるときはほんっとうに可愛いんだ。いつもニヤニヤするのをこらえるのが大変だよ」

由暉子「わざと嫉妬させているということですか?」

爽「そうなるな。例えば二人で遊びに行くって言ったり、目の前で仲良さげに話してみたり、誓子と二人で食べようって約束した夕飯に後輩を連れて行ったりとか。どつかれて家を出て行かれたときは流石に冷や汗かいたけど」

由暉子「最低ですね」

爽「それは自分が一番よくわかってるさ。その罰が誓子の彼氏」

由暉子「どういうことですか?」

爽「いやー、最初は嫉妬してる誓子を見て可愛いなーって思うだけだったんだけど、誓子に彼氏ができてから私まで嫉妬するようになっちゃったんだよ。自分がここまで嫉妬深いとは思ってなかったんだけどなー」

爽「それに、今のところ交際は順調らしい。だからどんなに二人がいちゃいちゃしてて私が先輩に殺したくなるくらいむかついても、できることはない。自分が悪いんだからな。因果応報自業自得ってわけだ」

由暉子「このまま何もしないつもりですか?」

爽「するもしないも、そんな権利なんてないだろ。私達は付き合ってる訳じゃない。ただの友達なんだ」

由暉子「自分の気持ちを殺すということですか」

爽「ああ、誓子が幸せなら私は自分の気持ちを殺すことなんて何ともない」

由暉子「自分勝手です」

爽「そうかもしれないなー」

由暉子「弱くなりましたね。……昔はもっと強かったのに」

爽「確かに昔だったら取り返してやるくらいは思ってたかもな。だけど今告白したとしても、誓子は困るだけじゃないのか?彼氏がいるのに元カノに告白された。じゃあ彼氏をふって元カノとよりを戻そう。そんなこと誓子にはしてほしくないし、できないと思うけどな」

爽「さっきも言ったように、私はただの友達だ。交際がうまくいってる以上、口出しすることは何もない。言い換えれば、何があっても関係ない」

由暉子「~~っ!」バシッ

爽「いって……突然何すんだよ。まさか後輩に頬を引っ叩かれるとは思ってなかったぞ」ヒリヒリ

由暉子「先輩は、言い訳ばかりのただの臆病者です。桧森先輩に拒絶されるのが怖い、そんな自分を正当化しようとしているだけです」

爽「……好きな人に拒絶されるのが怖いって、人間誰でもそうだろ」

由暉子「それでも、私は昔の先輩が好きでした。自分の意志を持って、目的のためになりふり構わず進んでいく、そんな先輩に憧れていましたし、そんな先輩だったからこそインターハイに出られたと思っています」

由暉子「だけど今は誓子のため誓子のためって言い訳ばかり。その癖人を利用して嫉妬させてプライドだけは一丁前に高い。あなたに意志はないんですか?」

爽「……」

由暉子「……先輩、もっと自分に素直になってください。じゃないと本当に大切なときに手遅れになりますよ」

由暉子「お金、置いておきますね。さようなら」スタスタ

爽「……」

爽「あいつ、あんなに熱い奴だったっけ……」

同時刻 イタリアンレストラン

先輩「ここ、一回来てみたかったんだよね」

誓子「そうなんですか」

誓子(前に爽と来たところだ……)

先輩「誓子は何食べる?好きなの食べていいよ」

誓子「んー……ミートソースですかね」

先輩「無難だな。俺は……カルボナーラ」

先輩「よし、頼むか」ピンポーン

誓子「先輩も無難ですね」

先輩「好きなんだよね、カルボナーラ」

誓子(爽はイカスミパスタに挑戦するとか言ってたっけ)クスッ

先輩「そんなおかしいこと言ったかな、俺」

誓子「あ、ごめんなさい。違うんです、ちょっと思い出しちゃって」

先輩「何を?」

誓子「この店、前に爽と来たことがあるんですけど、そのときのことです」

先輩「爽……?あぁ、獅子原さん」

誓子「そうです」

先輩「昔から仲いいの?」

誓子「高校からずっと一緒です」

先輩「ルームシェアしてるんだっけ」

誓子「そうです」

先輩「まぁ今は俺のほうが大事だよね?」

誓子「……」

先輩「誓子?」

誓子「爽も大事な……友達ですから」

先輩「ふーん、俺はなんで誓子と獅子原さんが仲いいのかよく分かんないけどな」

誓子「え?」

先輩「だって気が合いそうに見えねぇし」

先輩「美人だけど、何考えてんのか分かんなくてちょっと怖いっていうか」

先輩「あ、もちろん誓子のほうが可愛いよ。ま、俺から見れば丁度いい引き立て役かな」

誓子「……」イラッ

店員「お待たせいたしました。こちらがミートソースパスタと、こちらがカルボナーラになります」

先輩「あぁ、どうも」

店員「ごゆっくりどうぞ」

先輩「うまそう……誓子、食べようよ」

先輩「どれどれ……うん、うまい。まぁ獅子原さんも彼氏でもできれば変わるのかな」

誓子「……爽を悪く言わないでください」

先輩「悪くというか、事実だし」モグモグ

誓子「私、今日はもう帰ります」ガタッ

先輩「は?まだ一口も食ってねぇじゃん」

誓子「失礼します」

先輩「おい誓子!……ちっ」

誓子、爽宅

誓子「ただいま」ガチャ

爽「おかえり。早かったじゃん」

誓子「うん、ちょっとね……って、ほっぺたどうしたの?真っ赤だけど」

爽「これか?友達に蚊が止まってるって言われてぶったたかれたんだ」ハハハ

誓子「……大丈夫?ちょっと見せて」

爽「大丈夫大丈夫……」ヒリヒリ

誓子「結構強くやられたね」ナデナデ

爽「まぁな」アハハ

誓子「さて、ご飯食ーべよ」

爽「あれ、食べてきたんじゃないの?」

誓子「んー、ちょっと色々あってね。帰ってきちゃった」

爽「なんだ、喧嘩でもしたのか?」

誓子「まぁそんな感じ」

爽「相談ならいつでも乗るぞ」

誓子「そんな大層なものじゃないから」

爽「そっか。まだ食べてないなら、私がご飯作るよ」

誓子「いいの?」

爽「もちのろんだ」

誓子「ありがと」

爽「ご飯が余ってるから……ピラフでも作るか。できたら呼ぶからくつろいどいてくれ」

誓子「わかった」

爽「誓子、できたよ」

誓子「はーい。いただきます」

爽「どうぞどうぞ」

誓子「……おいしい」モグモグ

爽「それは良かった」

誓子「こんなに料理上手だったっけ?」

爽「私だって全く作れないってわけじゃあない。誓子が作ってくれることが多いからね」

誓子「なるほど……」

爽「たくさんあるから好きなだけ食べてくれ」

誓子「うん」モグモグ

誓子「……ねぇ、爽」

爽「ん?」

誓子「私達って、変なのかな」

爽「変じゃないだろ。ただのルームシェアしてる友達じゃん」

誓子「そう……だよね」

爽「前にもそんな話になったよな。あの頃とはだいぶ変わったけど」

誓子「……そうだね」

爽「誓子、はやく彼氏と仲直りしろよ」

誓子「うん」モグモグ

爽「普通にいい人だし、このまま結婚とかしちゃったりしてな」ハハハ

誓子「……」モグモグ

爽「大学でも噂だぞ。美男美女のお似合いカップルだって」

誓子「……さい」

爽「ん?」

誓子「うるさい」ギロッ

爽「え」

誓子「馬鹿」モグモグ

爽「えっと、私、何か気に触ること言ったか?」

誓子「知らない」モグモグ

爽「なっ……」

誓子(どうして先輩の話ばっかり……っ)

就寝前 ベッドの上

爽「こうして二人で寝るのは久々かもね」

誓子「……」

爽「なんだ、まだ怒ってんのか?」

誓子「……」

爽「誓子、最近怒りっぽくなったな。更年期?」ププッ

誓子「……」ゲシッ

爽「どわっ、蹴るなよー、冗談だろ」イテテ

誓子「……」

爽「ごめんってば」

誓子「……」

爽「誓子ー」

誓子「……」ガシッ

爽「ん?……なんだ、腕枕して欲しかったのか。彼氏にしてもらってるもんかと思ったけど」

誓子「……先輩の話は、 し な い で 」

爽「……ごめん」

誓子「おやすみ」

爽「おやすみ」

翌日 大学内

後輩「爽せーんぱいっ」

爽「おわ、後輩」

後輩「今日は桧森先輩も一緒なんですね、おはようございます」

誓子「……おはよう」

後輩「爽先輩、最近構ってくれなくて寂しかったんですよ?今日は遊びに行きましょうね!」

爽「ん、いいよ。どこ行こうか」

誓子「私も行ってもいい?」

爽「私は構わないけど……誓子はいいのか?」

誓子「いいの」

爽「そうか……そう言えば、三人で遊ぶのは初めてだな」

後輩「……そうですね~」

爽「私と誓子は3限までだけど、後輩は?」

後輩「私も3限までです!一緒ですね」

爽「じゃあ終わったら正門の前で待ち合わせしよう」

後輩「了解です!では失礼します」

爽「またねー……誓子、後輩苦手なんじゃなかったっけ?」

誓子「……ごめんね」

爽「えっと、何が?」

誓子「邪魔しちゃって」

爽「?」

授業後 正門前

爽「……誓子」

誓子「なに?」

爽「さっきからスマホ鳴りまくってるけど大丈夫?」

prrr ピコン! ピコン! prrrr prrrr

誓子「……電源切るから」

爽「先輩からじゃないのか?返事したほうが……」

誓子「いいの」

爽「そっかー……」

後輩「お待たせしてすみませんでした!」

爽「おー、やっと来たか」

誓子「こんにちは、後輩さん」

後輩「どうも」ニコッ

爽「じゃ、行くか」

誓子「どこに?」

爽「映画館」

某映画館

誓子「なにか見たいものでもあるの?」

爽「ああ、ずばりこれだ!」ビシッ

後輩「『宇宙人対地底人2』……?」

爽「うん。去年これの1を見たとき、私は全身に衝撃が走ったんだ。ここまで素晴らしいものはないよ。超B級だけど」

誓子「爽らしい」フフ

後輩「……」

爽「あ、誓子はともかく、後輩はこういうの好きじゃないか……まぁ普通そうだよな」シュン

後輩「いえいえ!すごく面白そうです。私もこういうの大好きですよ」

爽「あ、マジで?じゃあチケット……の前に、ちょっとお花摘んでくるわ」

後輩「はーい」

誓子「いってらっしゃい」

誓子「……」

後輩「……あの」

誓子「なに?」

後輩「桧森先輩って、彼氏さんがいらっしゃるんですよね?」

誓子「そうだけど」

後輩「彼氏さんと遊びに行ったりしないんですか?」

誓子「してる」

後輩「桧森先輩なら分かっているかもしれませんが、私爽先輩のこと好きなんです。真剣に」

誓子「うん」

後輩「今日だって折角のデートだったのに、元カノである桧森先輩がついてくるなんて」

誓子「……」

後輩「正直言って、邪魔なんですよね。桧森先輩には彼氏がいるんでしょ?色仕掛けで落としたんだかなんだか知りませんけど。だったら私に爽先輩をくださいよ。どうして別れた後も爽先輩を縛ろうとするんですか?いい加減解放してあげてください」

誓子「っ私だって……!」

後輩「私だって、何ですか?爽先輩のことが好きとでも言うつもりじゃないでしょうね。それは酷いですよ、彼氏がいるのに」

誓子「……っ」

爽「ただいまー」

後輩「……おかえりなさい、爽先輩っ」

誓子「……おかえり」

爽「ついでにチケットも買ってきたし、あとはポップコーンでも……って、誓子?どうかしたか?」

誓子「何でもない」

爽「……何もないならいいんだ、ポップコーン買いに行こうぜ」

後輩「はーい」


映画視聴中

爽(宇宙人つえー!!!!でも演出がなぁ……もっとここをこうすれば……)キラキラ

誓子(……)

後輩(正直何が面白いのか分からないけど、爽先輩が嬉しそうだからいいや)ギュッ

映画終了後

爽「いやー、面白かった!次回作は私が作りたいくらいだ」

後輩「宇宙人、強かったですね~」

爽「でもやっぱ地底人は終盤でもっと攻めるべきだったと思うんだよなー、誓子もそう思わない?」

誓子「……」

爽「誓子?」

誓子「……あ、うん。そうだね。でもあれくらいが丁度いいんじゃない?」

爽「……」

後輩「これからどうしますか?ご飯でも食べます?」

爽「あー、ごめん後輩。実はこの後高校の麻雀部に顔出さなくちゃいけなくてさ」

後輩「えー!そうなんですか?」

爽「そうそう。ってことで申し訳ないけど今日はお開きだ。ほら、行くぞ誓子」グイッ

誓子「え?」

爽「今度埋め合わせはするから~!じゃあな」

後輩「約束ですよー!」フリフリ

帰り道

爽「……」スタスタ

誓子「……」

爽「……」クルッ

誓子「なに……?」

爽「後輩に何を言われた?」

誓子「……っ」

誓子「何も」

爽「本当に?」ジーッ

誓子「本当に」

爽「だったら私と目を合わせてそう言ってみろ」

誓子「何も言われてない」

爽「……」ハァ

爽「わかったよ。今日は帰ってゆっくりしよう」スタスタ

誓子(……これ以上、爽に甘えるわけにはいかない)

誓子、爽宅

爽「ただいまー……お、留守電」ピッ

『誓子、これ聞いたら絶対電話しろよ』ピッ

ツー…ツー…ツー…

爽「……だそうだけど」

誓子「……ちょっと電話してくる」ガチャ

爽「なんかあったら呼べよ」

誓子「うん」バタン

爽「……」

~~~!! ーー! …… ~~~~~!?

爽(揉めてんなー)

数分後

誓子「……」ガチャ

爽「だいぶ揉めたな」

誓子「LINEも電話も全部無視してたから」

爽「先輩、なんだって?」

誓子「明日会って話そうって言われた」

爽「どうするんだ?」

誓子「会って、別れる」

爽「うお、マジで?」

誓子「うん」

爽「まぁ誓子が決めたなら私は何も言わないけど」

誓子「爽」

爽「んー?」

誓子「爽にも話があるの」

爽「なんだ?」

誓子「私が先輩と別れたら、聞いてくれる?」

爽「私は今すぐにでも聞きたいけど……わかった」

誓子「ありがとね」

爽「うん」

誓子(爽と一緒に住んでると、どうしても甘えちゃう)

誓子(だから、ルームシェアはもうおしまいにする)

誓子(爽を自由にしてあげよう)

翌日 玄関

誓子「じゃあ、行ってくるね」

爽「頑張ってこいよ」

誓子「ありがと」


先輩宅

先輩「おう、元気そうだな。入れ」

誓子「お邪魔します」

先輩「部屋で待ってて」

誓子「はい」

先輩の部屋

先輩「……で」

誓子「はい」

先輩「昨日、何してた?」

誓子「友達と遊びに行っていました」

先輩「俺からの連絡を無視したのは?」

誓子「気づきませんでした」

先輩「それ、本気で言ってんのか?」

誓子「……先輩」

先輩「なに?」

誓子「私達、別れましょう」

先輩「は?」

誓子「別れてください」

先輩「……ざけんじゃねぇぞ!!」ガンッ

誓子「……」

先輩「この間は飯の途中で帰るし、昨日もシカトされて、挙句の果てには別れようだ?お前自分が言ってること分かってんのか?」

誓子「はい」

先輩「ふざけんな!!!俺は今まで女に振られたことないんだぞ!?俺の面子潰す気か?」

誓子「先輩から振ったということにしてください」

先輩「てめぇ、舐めたこと言ってんじゃねぇぞ!!」ドンッ

誓子「った……」

先輩「あれか、他に好きな奴でもできたか?」

誓子「違います」

先輩「顔と身体でどうにでもなるもんな、よし、俺がもう二度と男たぶらかせなくしてやるよ」グイッ

誓子「やめてくだ……きゃっ」ドサッ

先輩「優しくしてやったのに振られるんだから、これぐらいされても文句言えねぇよな」ガシッ

誓子「離して……っ」ググッ

誓子「!」

誓子(スマホ……足で触ってる……!)

誓子(しかも鏡で見える……頑張れば助けを呼べるかも)

先輩「よいしょっと」ブチブチッ

先輩「服って意外と簡単に千切れるよな~」モミッ

誓子「やめてっ!!」

誓子(爽……は、ダメ。これ以上甘えられない……そうだ、揺杏!揺杏なら……!)

先輩「いい身体してるよなぁお前。もっと時間があればゆっくりヤれるのに……」

先輩「さて、そろそろ入れるか」

誓子(お願い……繋がって……!)

prrrr prrrr

揺杏『もしもーし、揺杏です。誓子先輩、どうしたんです?』

誓子(きた……!)スゥ

誓子「助けて!!!!!!!!!!!!!!」

揺杏『誓子先輩!?今どk』ピッ

先輩「姑息な手使ってんじゃねぇぞ」

バキッ パリン

誓子「今更壊してももう遅いわよ」ニヤ

先輩「どこまでも馬鹿にしやがって……!」

先輩「……気が変わった。犯すのはボコボコにしてからだ」

同時刻 誓子、爽宅

爽(大丈夫かな、誓子)

prrr prrr

爽(揺杏……?)ピッ

爽「もしもs 揺杏『爽!!!!』

爽「うわ、なんだよ揺杏」

揺杏『今、誓子先輩から助けてって電話があったんだ。すぐ切れたけど、なんかやばそうな雰囲気だった!!』

爽「」ダッ

揺杏『誓子先輩どこにいるんだよ!爽なら知ってんだろ!?』

爽「今から向かう」

揺杏『私も行く!』

爽「いや、揺杏はある奴に連絡をして欲しい」

揺杏『……誰だよ?』

爽「今から番号言うから覚えろよ。ーーーだ」

揺杏『わかった。なんて言えばいい?』

爽「後始末は頼んだって伝えてくれ」

揺杏『なんのことだかわかんねぇけど……了解。誓子先輩のこと頼んだぞ。助けられなかったらぶん殴るからマジ』

爽「任せとけ」ピッ

爽「……間に合ってくれよ」

先輩の部屋

先輩「顔は腫れるとヤる気なくすからな……」ドガッ

誓子「かはっ……!」

先輩「獅子原さんだっけ?お前見たらどういう顔するかなぁ」バキッ

誓子「さわ……や……」

先輩「まぁ来る頃にはお前は中古だけどな」

誓子「爽は……来ない……っ」

先輩「そうなの?つまんねぇなー」

先輩「それにしてもお前もやってくれるよな。前に誘ったときにオッケーしてれば今痛い目に遭わなくて済んだのに……さっ!」ゲシッ

誓子「っは……!」

~~

先輩『だからさ、ヤろ?』

誓子『そういうのはまだ嫌だって言ったはずですけど』

先輩『無理にとは言わない。だけど俺ら、付き合ってんだよ?ごく普通のカップルじゃん。俺は誓子こと好きだから、もっと深い関係になりたい。それって変なことか?』

誓子『……私はーー』

誓子『私は、まだ先輩のことをよく知りません。それにこういうことをしてお互いのことを深く知ることができるとも思えません。もっとたくさん話して、長い時間をかけて、それでようやくお互いのことが分かるようになると思うんです』

誓子『だから、できません。ごめんなさい』

先輩『そ、か。まぁ仕方ないなー。誓子の言うことも一理あるし』

誓子『……今日は帰りますね』

先輩『あ、送ってくよ』

誓子『大丈夫です。ありがとうございます。さようなら』

先輩『そうか。じゃーなー』

先輩『……』

~~

先輩「ま、今となってはとうでもいいけどな」

先輩「カメラも準備したし、そろそろ本番いっとく?」

誓子「や、め……」

先輩「抵抗するだめ無駄だぜ。大丈夫大丈夫、すぐ気持ちよくなるから」

誓子(助けて……爽……)

ガシャーン

先輩「あ?」

誓子「……?」

先輩「なんだよ、折角いいとこだったのに……」

先輩「ってか何、なんかガラスが割れたみたいな音したけど」

先輩「んー、さっさとヤッちまうか」

誓子「いや、いや……っ助けて、助けてっっ!!」

ガンッ

先輩「」バタッ

誓子「え……?」

誓子(目の前で鈍い音が響いて、先輩は倒れた。頭から血がとめどなく流れ続けている)

爽「やっほー」

誓子(私の前に現れた爽の服には、ところどころ赤黒いシミがついている)

誓子(血だらけの手には、拳より一回り大きな石)

誓子(ここで私は気づいた。気づいてしまった)

誓子(爽がなんの躊躇もなく、その石で先輩の頭を打ちぬいたことを)

爽「誓子、帰ろう」

誓子「え……これ」

爽「心配すんな。あ、腰が抜けて立てないか。ほら捕まれ」

誓子(爽は私に持っていた上着をかけておぶると、その場に石を捨てて何事もなかったかのように先輩の家を去った)

誓子、爽宅

爽「……あいつにやられたのか、これ」

誓子「……うん」

爽「痣、いっぱいできてるな。骨は折れてないみたいだけど」

誓子「爽だって血だらけじゃん」

爽「これは私の血じゃないから」アハハ

誓子「……何で来たの?私は揺杏に電話したのに」

爽「どこにいるか知らないのに揺杏が来られるわけないだろ」ヤレヤレ

誓子「先輩、どうなったの?」

爽「さぁ、運が良ければ生きてるんじゃないかな」

爽「何にせよ、このままじゃ傷の手当もできやしないな。手洗ってくる」

誓子「……」

誓子(結局、また爽に助けられちゃった)

爽「いやー、なかなか落ちないんだな。頑張って落としたけど」

誓子「何でそんな冷静なの?人を殺したかもしれないっていうのに」

爽「あれくらいじゃ死なないだろ、多分」ハハハ

誓子「全部そのままで出てきちゃったし……見つかったら爽は……」

誓子(……考えたくない)

爽「いや、見つかることはないよ」

誓子「え?」

爽「だから心配しなくても大丈夫。今は自分のことだけ心配しろ」

誓子「……」

爽「分かったら傷の手当するぞー」

誓子「爽」

爽「なんだ?」

誓子「……先輩と別れたら話したいことがあるって言ったよね」

爽「ああ、言ってたな」

誓子「あのね」

爽「うん」

誓子「一緒に住むの、もうやめにしよ?」

爽「……なんで?」

誓子「私ね、後輩さんに、爽を解放してあげてって言われたの。元カノのくせにいつまでも一緒にいるのはおかしいって」

誓子「私、何も言い返せなかった。確かにって自分でも思っちゃった。だっていつも爽に助けてもらって、甘えてるんだもん」

爽「……」

誓子「一緒に住んでたらね、いつまでもこうして爽に甘えちゃうと思うの。爽の時間を、私が奪っちゃう」

誓子「だからね、爽はもっと後輩さんを大切にしてあげて。もう嫉妬したりしないから。私じゃなくて、新しい彼女を守ってあげて」

爽「え?」

誓子「え?」

爽「彼女?」

誓子「あれ、爽って後輩さんと付き合ってるんじゃ……」

爽「誰が言ったんだ、そんなこと」

誓子「だ、だってこの間後輩さんの家に泊まりに行って、朝帰ってきたじゃない」

爽「それだけでなんで付き合ってることになるんだよ。あれは……」

~~

後輩『……先輩には私がいますよ』ギュッ

爽『……私、結構汗かいてるぞ』

後輩『関係ないです……獅子原先輩』

爽『……』

後輩『私……先輩のこと大好きなんです』

後輩『それこそ桧森先輩に負けないくらい』

後輩『先輩……私じゃ、ダメですか?』

爽『私はーー』

爽『後輩ちゃんの気持ちには応えることができない』

後輩『……』

爽『ごめんな。私、好きな人がいるから』

後輩『……桧森先輩ですか?』

爽『それは言えない。けど、昔も今も、きっとこれからも好きな人だ。今は片想いだけど』

後輩『私、諦めません』

爽『ん』

後輩『その人よりも私のことを好きにさせます』

爽『その心意気やよし』ハハハ

後輩『だから、先輩のこと好きでいてもいいですか?』

爽『もちろんだ。人を好きでいるのは自由だからな』

後輩『じゃあ今から私の家に行きましょう!』

爽『え』

後輩『大丈夫です。恋人になるまでは手を出したりしないって決めてますから。先輩がやりたがってた新作のゲーム、ありますよ』

爽『よし、行こう』

~~

爽「それで朝までずっとゲームやってて、始発で帰ってきたんだよ」

誓子「……何よそれ」

爽「でもそれを言うならあの日は誓子だって朝帰りだったじゃんか」

誓子「私は……確かに先輩の家には行ったけど、泊まってはないわよ」

爽「じゃあ何で朝帰り……?」

誓子「漫喫」

爽「え」

誓子「漫喫で漫画読んでたの」

爽「」

爽「そんなに漫画好きだったっけ」

誓子「だって……」

爽「?」

誓子「そうでもしないと意識してくれないじゃない」

爽「……っ」

爽(可愛すぎるだろ)

誓子「で?」

爽「ん」

誓子「好きな人って誰なのよ」

爽「あー、誓子だよ」シレッ

誓子「……ずるい」

爽「え」

誓子「ずるい!馬鹿!」バシッ

爽「いた、痛いって。ってかそんなに身体動かしたら……」

誓子「ったぁー……」

爽「ほら、言わんこっちゃない。自分が怪我人だってこと忘れんなよ」

誓子「……私も、ずっと好きだったのに。別れようって言ったこともたくさん後悔したし」

爽「そうだったのか……」

誓子「なのに爽が後輩さんとばかり一緒にいるから」

爽(わざとってのは黙っておくか……うん)

爽「私だって誓子があいつと付き合いだしたときはむかついたよ」

爽「あまりいい噂は聞いてなかったけど、本当にロクでもない奴だったし」

爽「何で付き合いだしたのかは知らんけど」

誓子(爽から離れるためなんて言えない……)

誓子「正直、すごく嫉妬した。爽が他の人と一緒にいるのを見てると、辛かった」

爽「私だってそうだよ。好きな人が他の奴と付き合ってんだもんな。嫌に決まってる」

誓子「……」

爽「……」

誓子「二人とも、同じようなこと考えてたんだね」

爽「どっちも不満を口に出さずにいた結果がこれってわけだな」

誓子「嫉妬のし合いをしてたなんて……馬鹿みたい」

爽「そうだな」

誓子「あのね、爽。私、これからもずっと爽と一緒にいたい。離れたくない。」

爽「両想いだってわかった今、わざわざ離れることないだろ」

誓子「そっか、ふふ」

爽「……あのさー誓子」

誓子「何?」

爽「私達、もう一回付き合わない?」

誓子「……」ジワッ

爽「なんで泣くんだよ。そんなに嫌か?」

誓子「こういうときの涙がどういう意味かくらい……っ察してよ……」ポロポロ

爽「ごめんごめん、ふざけた」

誓子「バカ爽……っ!」

爽「返す言葉もないなー」

誓子「爽からは絶対に言ってくれないと思ってた……今までも全部私からだったし」

爽「……そうだな」

誓子「嬉しい」

爽「うん」

誓子「好き」ギュッ

爽「私も好きだよ」ナデナデ

誓子「……怖かった」

爽「遅くなってごめん」

誓子「爽には甘えないって決めたから揺杏に電話して助けを呼んでもらおうと思ったの。だけど本当は爽に助けに来てほしかった。わがままでごめんなさい」

爽「……」ギュッ

誓子「あのまま助けに来てくれなかったら……私っ」

爽「スマホと揺杏に感謝だな」ヨシヨシ

誓子「スマホ……壊されちゃった」

爽「また新しいのを買えばいいさ」

誓子「お揃いで?」

爽「うーん、私のも機種変時かもなー」

誓子「じゃあ今週の休みに一緒に買いに行こ」

爽「うん、わかった」

誓子「爽」

爽「ん?」

誓子「……キス」

爽「なんだ、したいのか?」ニヤニヤ

誓子「したい」

爽「今までに比べてやけに素直だなー」

誓子「くっつけなかった反動だから我慢して」

爽「嫌じゃないから、我慢はできないな」ハハハ

誓子「……好き、大好きだよ。爽」

爽「私も大好きだ……誓子」

ガチャ

揺杏「誓子先輩!!」

成香「ちかちゃん!!!」

由暉子「桧森先輩っ!」

爽「……」

誓子「……」

揺杏「……」

成香「……」

由暉子「……」

揺杏「お邪魔しましたー」

成香「ちかちゃん……」

由暉子「先輩……」

爽「いらっしゃい、なんてな」

誓子「ちちち違うのこれはっ!ちょっと揺杏!どこ行くの!?」

揺杏「まぁ何がともあれ、誓子先輩が無事でよかった」

成香「ちかちゃぁぁぁぁん」ダキッ

誓子「ご迷惑おかけしました……」ナデナデ

由暉子「傷がこんなに……」

誓子「爽が手当してくれたし、大丈夫だよ」

爽「あくまで応急措置だから無理は禁物だけどな」


由暉子「……それで、どうやってその男から逃げてきたんです?」

爽「気絶させた」

揺杏「気絶!?じゃあ追ってくるかもしれないじゃん!!」

爽「いや、その心配はないよ」

揺杏「どういうことだ?」

爽「『後始末』を頼んだからな」ハハハ

揺杏「……あれってそういうことだったのかよ」ゾクッ

爽「そこはもう私達には関係のない話だよ」

由暉子「……」

成香「ど、どういうことですか?」

誓子「なるかは知らなくていいの」

成香「子ども扱いしないでくださいっ」

爽「あはは。そんなことより、お前らに言っておきたいことがあるんだ」

成香「何ですか?」

爽「私と誓子、寄り戻した」

揺杏「ええええええええええええええ!!!!!」

由暉子「ようやくですか」

成香「ちかちゃん、良かったね」

誓子「ありがとう、成香」ニコッ

揺杏「知らなかったの私だけかよ!……まぁ、ちゃんと幸せにしろよ、爽」

爽「任せとけー」

由暉子「お幸せに」

爽「サンキュー」

誓子「浮気したら許さないから」

爽「私はまだ死にたくないからしないよ」

誓子「ちょっと、どういう意味よそれ」

揺杏「仲がよろしいことで」ニヤニヤ

成香「ちかちゃんすごく楽しそうです」ニコニコ

由暉子「今度は惚気話を聞かされることになるんですね」

爽「好きなだけ聞かせてやろう」フフン

揺杏「うわ!聞きたくねー!」ゲラゲラ

誓子「それにしても、まさかこの状況で全員揃うとはね」

由暉子「岩館先輩から一大事だと聞いたので」

揺杏「まぁ駆けつけた瞬間にとんでもないもんを見せられたけどね」

誓子「うぐ……」

成香「複雑です……」

爽「よし!いい事考えた。折角全員揃ったんだし、久々にやるか。麻雀」

由暉子「雀卓あるんですか?」

誓子「あるよ。二人だけだとできないからしまってるけど」

揺杏「いいねぇ、よっしゃ爽!成長した私の力見せてやる!そして復縁したばかりの誓子先輩に無様な負け姿を晒すがいい!!」

成香「私も上手になりました!」

爽「ほう、いい度胸だな。アイスを賭けていざ勝負だ!」

由暉子「精神年齢は変わりませんね」

誓子「あはは、だね」

同日 就寝前

誓子「今日は楽しかったね」

爽「久しぶりに賑やかだったな」

誓子「みんな強くなってた」

爽「だな、まぁ一回も負けなかったけど」

誓子「由暉子には負けそうになってたじゃない」

爽「ははは、たまたまだ」

誓子「……ねぇ」

爽「ん?」

誓子「後輩さんには言うの?私達のこと」

爽「ああ、ちゃんと言うよ」

誓子「そっか」

爽「うん」

誓子「……」

爽「……」

爽「あ」

誓子「?」

爽「昼間、結局できなかったな」

誓子「何が?」

爽「キス」

誓子「そうだね……したい?」

爽「嫌じゃなければ」

誓子「なにそれ」

爽「いやだ?」

誓子「……いいよ」

爽「じゃあ遠慮無く」チュッ

誓子「ん……それだけ?」

爽「……明日一限からだぞ」

誓子「いいじゃんそんなの」

爽「怪我してるし」

誓子「最後に触られたのがあの男なんて嫌なの。お願い……きて」

爽「悪化しても知らないからな」ドサッ

誓子「ん……爽ぁ……っ」


?「キンクリじゃ」

後日 大学内

誓子「遅刻しちゃったね」

爽「昼間までぐっすりだったな」

誓子「これからどうする?まだお昼まで時間あるけど」

爽「後輩と話してくる」

誓子「……私も行こうか?」

爽「いや、私だけで」

誓子「そっか。じゃあ待ってるね」

爽「うん、ありがとな」

大学内 空き教室

後輩「あ、爽先輩!」

爽「ごめん、待たせちゃって」

後輩「いえいえ。それでお話ってなんですか?」

爽「うん、実はさ。私と誓子、復縁したんだ」

後輩「……そうなんですか」

爽「だからもう一緒には遊びに行けない。後輩が私のことを好きでも、私が後輩を好きになることは絶対にない」

後輩「……」

爽「散々振り回しておいて本当にごめん。それで気が済むならいくらでも殴って罵ってくれ」

後輩「……そんなこと言われたら何もできなくなっちゃうじゃないですか」

爽「ごめん」

後輩「でも、いいです。桧森先輩に勝てなかったのは私ですから。爽先輩よりももっといい人捕まえますし」

爽「……そっか」

後輩「あ、その代わり、桧森先輩に謝っておいてください。この間酷いことを言ってしまったので」

爽「分かった」

後輩「では、お幸せに。“獅子原”先輩」ニコッ

爽「ありがとう。後輩“ちゃん”」

後輩「……っ」ダッ

爽(……あいつにもお礼言っておかなきゃだな)ピッ

爽「もしもし。今回は助かったよ、ありがとな」

爽「辻垣内」

智葉『気にするな。北海道の奴らもあの男のバックについてたチンピラ共が芋づる式に釣れて喜んでたからな』

爽「北海道にも傘下の組があるなんて、流石天下の辻垣内組だ」

智葉『よしてくれ。にしても……結構派手にやったな。危うく死ぬところだったぞ』

爽「お、意識戻った?」

智葉『ああ、今は大分回復した。身柄はこっちが預かるが、構わないか?』

爽「煮るなり焼くなり好きにしてくれ。誓子の前に二度と現れないならどうでもいい」

智葉『分かった。家の方も取り壊しが始まって、もうお前が奴を殴ったという証拠は全て消えたぞ』

爽「何から何までありがとな」

智葉『構わん。あいつはうちのシマでも好き勝手やっくれたからな。遅かれ早かれ同じ結果になってたさ』

爽「やっぱり常習犯か」

智葉『ああ、今までにも何件か被害が挙がっている。行為を録画してちらつかせることで黙らせてきたらしい』

爽「救いようがないな……」

智葉『全くだ』

爽「まさかインハイで広げた人脈がこんなところで役に立つとは……人生って分からないもんだな」

智葉『役に立てたなら何よりだ。まぁあまり褒められた職業ではないが』

爽「いやいや、本当に助かったよ」

智葉『……一つ聞いてもいいか?』

爽「なんだ?」

智葉『お前が殴った痕を見るに、手加減も躊躇もなかった。ただ急所から僅かにずれていただけだ。急所に当たっていたら間違いなく死んでいただろう。何故ここまで簡単に、人を殴ることができた?』

爽「んー、蚊が自分の身体にとまったら潰すだろ」

智葉『? ああ』

爽「それに対して罪悪感を感じたことはあるか?」

智葉『ないな』

爽「つまりそういうことだ。私にとってあいつは、誓子に嫌な思いをさせた瞬間から蚊と同じ」

爽「蚊を潰すのに手加減や躊躇をする方がおかしいだろ。今回は誓子が側にいたから殺しはしなかったけど」アハハ

智葉『お前にとって当然のことをしたまでということか』

爽「そうだよ。誓子を悲しませていいのも嫉妬させていいのも喜ばせていいのも笑わせていいのも私だけだ」

智葉『随分と歪んだ愛だな』

爽「そうかな、そのへんの奴より余程誠実だと思うけど」

智葉『……まぁ、人の恋愛に口を出すのは野暮というものだ。これからも仲良くやれよ』

爽「うん、そのつもりだよ」

智葉『今度は麻雀でもやるか』

爽「いいねいいね。いつでも待ってるから暇なときに連絡くれよ」

智葉『ああ、じゃあな』ピッ

爽「……さて、と。戻るか」

誓子「爽!」

爽「ただいま」

誓子「結構時間かかったね」

爽「うん、まぁわかってもらえたよ」

誓子「そっか、良かった」ホッ

爽「桧森先輩に酷いことを言ってしまったので謝っておいてくださいってさ」

誓子「そっか……」

爽「ということで、改めてよろしく、ちかちゃん」

誓子「……その呼び方はやめて」

爽「何照れてんだよ。昨日のデレデレちかちゃんはどこにいったんだ」

誓子「もー!やめてったら!!」//

爽「ははは、ごめんごめん」

誓子「ねぇ」

爽「ん?」

誓子「これからは、あまり他の子と仲良くしないで」

爽「……」

誓子「別に全く話すなっていうんじゃなくて、二人で遊びに行くとかはなしってことで……」チラッ

爽「」ギュッ

誓子「ちょ、ちょっと!みんな見てるから!爽っ!」ググッ

爽「約束する。だから誓子も同じことを約束してほしい」

誓子「……うん」

爽「さ、ちょうどいい時間だし、学食行くか」パッ

誓子「そうだね」

学食

「ねぇ、あれって獅子原さんと桧森さんだよね?」

「久しぶりに二人でいるとこ見たかも」

「だって桧森さんって彼氏いたんじゃないの?」

「聞いた話だと、彼氏が大学辞めちゃったらしいよ」

「えー?なんで?」

「噂によるとね……」

誓子(丸聞こえだっての……)

爽「どーれーにーしーよーうーかーなー」

誓子「私はこれ」

爽「美味しそうだな。私は……よし、君に決めた」

爽「食券出してくるよ。先座ってて」

誓子「ありがと」

爽「」ドンッ

「きゃっ!」ドサッ

爽「おっと、ごめん」

「もう、気をつけてよね」

誓子(あ、さっき私の話してた人……)

誓子(っていうか爽のあのぶつかり方不自然すぎるでしょ、わざとやったみたい)

爽「お待たせ」

誓子「ありがと。いただきます」

爽「いただきまーす」

誓子「うん、美味しい」

爽「どれどれ」アーン

誓子「はい」ヒョイ

爽「こっちのほうが良かったかなー」モグモグ

誓子「交換する?」

爽「いや、今度はそれにする」

誓子「そっか」モグモグ

モブ「ここ、空いてる?」

爽「おー、久しぶり」

誓子「空いてるよ」

モブ「お邪魔するわ」

爽「どうぞどうぞ」

モブ「やっと仲直りしたのね」

誓子「喧嘩してたわけじゃないけど」

モブ「それにしては競ってるみたいだったわ」

爽「競う?」

モブ「二人ともわざとらしく他の人と一緒にいたじゃない」

爽「わざとらしかったか」ハハハ

モブ「すごくね。他から見たら、やっぱり二人でいるのが一番自然なんじゃない?付き合ってるわけじゃないみたいだけど」

爽「あー、その話なんだけど」

誓子「私達、付き合い始めたの」

モブ「」ブーッ

爽「きったねー」ゲラゲラ

誓子「大丈夫?」

モブ「……おめでとう」フキフキ

爽「ありがとう」

モブ「またカップルが私を置いて一つ、また一つとできていくのね……」

誓子「悲壮感漂ってるね」

モブ「うるさいわよ」

爽「たくさん惚気話聞かせてやるから覚悟しとけー」

モブ「嫌よ。っていうか今まさに目の前で惚気られてるし」

誓子「?」アーン

爽「?」パクッ

モブ「バカップルだわ……」ハァ

モブ「だけど、どうして今更付き合い始めたのよ。前だって付き合ってても全然不思議じゃないくらいだったのに」

爽「そりゃあ、なぁ……?」

誓子「ねぇ……?」

モブ「なによ?」

爽「やっぱりこっちの方がお互い安心できるし」

誓子「もうあんなことにはなりたくないしね」

爽「それに何より、誓子はな」

誓子「爽はね」

「「嫉妬深いから」」


終わり

以上で全て終了です。
読んでいただいた方、ありがとうございました。
有珠山ss増えろ~

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