ミカサ「行方」(25)

アルミン「エレン?……あ、たぶんあそこじゃないかな、最近よく行っているみたいだし」

ミカサ「せっかくの休日なのに……そう、ありがとう。じゃあ行ってみる」

アルミン「休日とは言え残念ながら雨だけどね。でもエレンからは何も聞いていないから違うかもしれないよ。僕も行こうか?」

ミカサ「一人で大丈夫。アルミンは部屋で待っていて」

アルミン「わかった。もし行き違ってしまったらミカサが探してたって伝えておくよ」

ミカサ「ありがとう。じゃあ行ってくる」タタッ

アルミン「雨が強いから足元に気をつけてね!……行っちゃった。もう聞いてないか」

──…

ザッザッザッザッ…

ミカサ「エレン!」

エレン「ミカサ?どうしてこんな所に?」

ミカサ「あなたの姿が見えなかったから。エレンこそ、なぜ最近頻繁にここに来るの?今日は雨も強いしもうびしょ濡れ……早く帰らないと」

エレン「……壁を見に来たんだ。この辺りじゃ高台なんてここぐらいだからな」

ミカサ「?……ウォール・ローゼを?」

エレン「ああ。壁なんて遠目に見たらどれも同じようなもんだからな」

ミカサ「エレン……?」

エレン「実際にはさ、今見ているあの壁はローゼだ。シガンシナ区は壁を越えて更に遥か遠く……」

エレン「でもこうして眺めていると、あの壁の向こう側にはシガンシナ区があるような……俺たちの家がすぐ近くにあるような気がしちまってな」

ミカサ「!」

エレン「ミカサ、この雨雲はあの壁を越えてきたんだよな?」

ミカサ「……そうだと思う」

エレン「じゃあこの雨雲はシガンシナ区にも雨を降らせたんだよな?」

ミカサ「……」

エレン「この雨雲がシガンシナ区に雨を降らせたのなら……」

エレン「あの日流れた街の人たちの血を……」

──母さんの血を洗い流してくれたよな?


ミカサ「……っ!エレン!」ギュッ

エレン「……お前の手、冷たいな。付き合わせて悪かった。もう帰ろう」

ミカサ「エレン、泣かないで」

エレン「……泣いてない、雨だろ」

ミカサ「嘘、目元が赤い。エレン、お願い。一人では……私のいない所では泣かないで」

エレン「なんだそれ。普通泣くなら一人で泣くだろ」

ミカサ「ダメ。泣きたいくらいの気持ちはちゃんと私に話して。心を落ち着けないと訓練に支障が出る」

エレン「ハァ……相変わらずだな、お前は。小さい頃から少しも変わらない。変わったのは伸びまくる身長と身体能力くらいか、羨ましい奴だな」ハハッ

ミカサ「エレン!私は冗談を言っている訳では……っ!」

エレン「俺だって冗談なんて言ってない。……俺はお前が羨ましいんだ」

ミカサ「……?」

エレン「俺は巨人を駆逐する。あいつらが踏みにじった俺たちの家を取り返して、そして外の世界を見て回るんだ」

エレン「もし俺にお前ほどの技術があったなら……すぐにでもあの壁の向こうへ行っちまうだろうな」

ミカサ「っ!そんな無謀なこと、考えてはダメ!」

エレン「そんな事言ったって考えちまうよ。俺の母さんはまだ……家で俺を待ってるんだから」

ミカサ「!」

エレン「あの日置き去りにしちまった母さんはきっと……」

ミカサ「エレン、おばさんを置き去りにしてしまったのは事実だけど……」

エレン「……?」

ミカサ「おばさんはあそこにはいないと思う」

エレン「!なんでそんな事を言うんだよ!?母さんが他に行くところなんてないだろ!?」

ミカサ「エレン、落ち着いて。月並みな言い方かもしれないけれど……おばさんは私たちの心の中に生きているの」

エレン「ミカサ……」

ミカサ「壁は、確かに人の命を守っていた。でもその壁が壊されて喪われた命は……壁に囚われたりしない」

ミカサ「きっと壁を越えて、空を越えて、大切な人の……エレンの心に寄り添っているはず」

ミカサ「だから私たちは“一緒に帰る”の──おばさんと一緒に、あの家に」

ミカサ「もし私が死んだら思い出して欲しい。私はどこでどのように死のうとも──」スッ

トンッ…


ミカサ「ここにいる。エレンの心に寄り添っている」

エレン「俺の心に……?」

ミカサ「そう、私だって巨人の脅威の前では死ぬことだってある。人知れず街の片隅で……あるいは巨人の腹の中で」

エレン「……っ!」

ミカサ「それでも私は、最後まであなたを守ると決めたから……」

ミカサ「だからきっと、私と同じ気持ちだったおばさんも今、エレンの心に寄り添っているの」

エレン「母さんは俺と一緒にいる……」

ミカサ「……」

エレン「なら、いつまでもこんな情けない姿は見せていられないな!」ニカッ

ミカサ「!ええ、元気を出さないと。エレン、もう帰ろう?しっかり休んで訓練に備えないと」

エレン「そうだな。えっと……ミカサ、ありがとな」

ミカサ「気にしないでいい。……家族なら当たり前のことだから」

エレン「そうだな、家族だもんな……一緒にいるのが当たり前だよな!……ってうおっ!?」ズルッ

ミカサ「エレン!」ガシッ

エレン「あっぶねー!滑った。支えてくれてありがとな」ハハッ

ミカサ「……あ、エレン、あの……」

エレン「ん?どうした?」

ミカサ「また転ぶかもしれないから……もう少し手を繋いでおいた方がいい」ボソッ

エレン「おいおい、いくら俺でもそんなに何回も転んだりはしないぞ?……たぶん」

ミカサ「そういう意味じゃなくて、私が、転ぶかもしれない、転びそうだから……」モゴモゴ

エレン「!お前なぁ……」ハァ…

ミカサ「!」ビクッ

エレン「手を繋ぎたいならそう言えよ。皆の前じゃないんだから断ったりしないって」ギュッ

ミカサ「あ……///」

エレン「自分で言うのも何だが、素直に言わないと俺には伝わらないぞ。遠まわしに言われてもわからない自信がある」フンッ

・・・・・

エレン「もうすぐ兵舎だ。そろそろ手を離すぞ?」スッ

ミカサ「あの、エレン、ありがとう」

エレン「俺も励ましてもらったからな。気にするなよ。じゃあ俺は一旦部屋に戻るから」スタスタ

ミカサ(昔繋いだ時よりも、少し大きくなった手)

ミカサ(どれほど言い合いをしようとも、私たちは家族)

ミカサ(エレンは私にとって大切な人)

ミカサ(きっと私も……エレンにとって大切な人)

ミカサ(……きっと)

──────
────
──

アルミン「ごめんミカサ、エレンは僕の身代わりに……僕は何も出来なかった……っ!」





ミカサ(私は何を、巨人の何を知っていたというの)

ミカサ(私がエレンに言った言葉に、何の意味があったというの)

ミカサ(おばさんの魂はエレンのそばに寄り添うなんて知ったような事を言っておきながら……)

ミカサ(私の目はあなたの亡骸を探すのをやめてくれない)

ミカサ(食べられてしまったの?)

ミカサ(どこにいるの?)

ミカサ(……私の考えが甘かったんだ)

ミカサ(兵団に所属する身ではエレンの側にずっといるなんてことは不可能)

ミカサ(わかっていたはずなのに……)

ミカサ(あなたを守って死ぬことは覚悟していても)

ミカサ(あなたが私を置いて逝く事なんて考えもしなかった)

ミカサ(聞いておけば良かった)

ミカサ(言ってもらえば良かったのに)

ミカサ(たった一言)

ミカサ(エレンが死んだら……私に寄り添うって)

ミカサ(“素直に言え”って言われたていたのに)

ミカサ(聞けなかった)

ミカサ(聞きたかった、本当は、エレンの口から)

ミカサ(“大切な人”だと)

ミカサ(言って欲しかったのに)

ミカサ(エレン……心に穴があいたようでとても寒い)

ミカサ(私の心には寄り添ってくれないの?)

ミカサ(ねぇ──)

ミカサ(どこにいるの……?)





お粗末様でした

ミカサがガスふかしまくってたあたりにつながる妄想でした。
短いですが進撃ss10作目です。
前作はアルミン「同じ時を過ごしてきたその手を」です

レスくださった方ありがとうございました!

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