伊織「碧い世界へあなたと」 (46)


伊織×美希のSSとなっています。

多少の百合要素含みますので、苦手な方はご注意ください。

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「伊織、どうだ綺麗だろう」

「ええ、お父様。澄み渡った空みたいですごく綺麗ね」

「気に入ったか!よし、また連れてきてやろう」

「・・・・・・ううん、いいわ」

「おや、どうしてだ?」

「理由?それはね・・・・・・」

私はここではっと目を覚ます。

白い部屋に、大きな鏡台、そして大きな窓が一つ。

鏡に映し出された自分の姿を見て、今の状況を思い出す。

純白のドレスに覆われた自分の姿、それは女の子ならいつかは憧れるはずのもの。

でも今の私には永遠の牢獄へ収監される為に着た囚人服にしか見えなかった。

顔は泣きはらした目と化粧で隠したつもりのひどい隈。

ああ、そうだ私はここで泣き疲れて寝てしまったのだと理解する。

ふふっ、と自嘲気味に笑う。

無様なものね、水瀬伊織。

こんな風に弱い人間になってしまったのね。

それにしても、懐かしい夢を見たものね。

昔々、幼いころお父様とイタリアに行って訪れたあの場所。

えーと、なんて名前だったかしら。

まぁ昔のことだし、もう、叶わないから。

2階の窓から差し込む日が部屋を暖めてくれるのに、私の体は冷え切っていた。

晴れの舞台なのに、私を見た親族は私が虚ろな目をしてるのに驚くだろうか。

・・・・・・少しは、同情してくれるかしら。

どうして、こうなったか。

いや、答えは至極簡単で、結局は水瀬の人間である以上、ビジネスの道具として使われるのはやっぱり覚悟しておくべきだったのだろう。

事の発端は、私が20歳になった日。

「・・・・・・お父様、それはどういうことかしら」

私はお父様の執務室で信じられない言葉を聞く。

「どうもこうもない。お前は水瀬の人間だ。つまりそういうことだ」

「なんでアイドルをやめてお見合いしなければいけないのよ!」

「水瀬を継ぐと言うことは跡取りを考えなければならない」

確かに水瀬の跡を継ぐとしたら、いつかは家庭を持つ必要があるのはわかってる。

それが名家に生まれた運命で、それ自体は仕方ないと思っている。

でも、それにしてもまだ早すぎる。

アイドルになって5年、やっとトップアイドルに手が届きそうな位置にいるのに・・・・・・!

「だからってまだ」

「否定はさせない」

「っ・・・・・・!」

反論を告げようとする前に、強烈な否定をしてくる。

昔、怒られた時の、あの恐怖を感じる目をお父様はしていた。

でも、なんでなのかしら?

こんな早急に私に後を継がせようと?

意味がわからないわ。

「これは水瀬のためなのだ。それとだ、もし拒否するのなら」

「拒否するなら・・・?」

「765プロへの出資金を全部回収する」

「そ、そんなことしたら・・・・・・!」

間違いなく765プロは破産、解散となるのは見えている。

いくらお父様でも、私の夢と仲間との居場所を天秤にかけさせるなんて・・・・・・!

「お父様の卑怯者・・・・・・」

「卑怯だろうがなんだろうが、これは水瀬のためであり、伊織のためなのだよ」

「私のためですって・・・・・・?ふざけないでちょうだい!私なんかどうでもいいんでしょ!?」

「それがどうした?」

「っ・・・・・・!!」

「簡単なことだ、伊織が見合い相手と結婚すればいい。それだけだ」

「・・・・・・」

「そうでなければ、伊織と765のアイドルは終わりってわけだ」

私は・・・・・・私は・・・・・

「もう決まったことだ、諦めろ。挨拶回りを済ませておきなさい」

そう言って、お父様は立ち尽くす私を置いて執務室から立ち去って行った。

そんなことをぼんやり思い出しながら私は指先を虚空に舞わす。

水瀬財閥は日本でも有数な大きな組織。

それを維持するためには強固な経営形態と運営能力が必要とされる。

簡単なのが上役を身内で固めてしまうことが一番簡単。

水瀬一族で徹底的に固めてしまうのが色々とやり易いのもあるのでしょうね。

ゆえに、私の役回りは優秀な外部の血を繋ぎ止めて、迎え入れること、ですって。

実際、私の相手は超がつくエリートと言っていいらしい。

顔合わせの時も何回か電話で離籍した事があったけど、それも全てビジネスってことらしいわ。

仕事はできる、将来有望、顔も・・・・・・まぁ、アイツほどじゃないけどまぁまぁってところね。

周りから見ればお似合いの美男美女カップルに見えるでしょうね。

・・・・・・バカバカしいわ、こんな猿芝居。

私はただのお父様の道具、あの男への供物そのものよ。

・・・・・・こんなところで怒ったところでなにも変わらないんだけどね。

そう言えばちょっとだけ気になることが、1つだけ。

式が身内だけなのよね、後は765プロのみんなが参加する位かしら。

余計なマスコミは完全シャットアウト、実際報告は漏らさないように口止めされてたし。

ここでマスコミに喚いたらまだ何とかなったかもしれない、水瀬財閥の社長が娘を道具にしようとしてるって。

それでも私はできなかったわね、ここで動いて765プロが無くなるのは絶対に、いやだ。

あそこは初めて伊織って1人の人間として私を見てくれたところ。

私を私でいさせてくれた場所を、みんなの居場所を守るためだったら。

・・・・・・うん、美希のいる場所を守れるならいいじゃない、私くらい、どうなっても。

話はお見合い話が出る前に遡るわ。

私は美希と付き合ってた。

知ってるのは765のみんなくらいかしらね。

「えへへー、伊織ー」

・・・・・・今となってはあの子の隣が懐かしい、私に恋を教えてくれたあの場所が。

でも、もう私の隣に美希はいない。

「あーもう!なんなのなの!あのディレクターは!」

美希が事務所に入った瞬間、大きな声で爆発する。

「落ち着きなさいよ美希、あれは確かに酷いけど」

昔の自分なら一緒に美希と怒っていただろうな、と内心苦笑する。

美希はあれから身長も伸びてすらりとしたモデル体型の体に金髪が似合う素敵な人になった。

でも、中身はであった頃の美希とあまり変わらない。

純心爛漫、悪く言えばまだまだ子供っぽいかしら。

事務所のソファーにぼすんと腰掛け、クッションを抱く美希。

そんな姿を見て少しふふっっと笑いながらお茶の用意を始める。

薬缶に水をはり、コンロに火をかける。

美希の反対側のソファーに腰掛けると、まだふくれっ面の美希を見つめる。

まぁ、簡単に言うと私がセクハラ紛いのことをされただけなんだけど。

お父様通じて制裁加えておくことにして、不機嫌な美希をなだめにかかるとしましょうか。

「私は大丈夫だから、そこまで怒らなくても・・・・・・」

「伊織はミキのものなの!」

「うー、正面切って恥ずかしいこといってくれるわね・・・・・・。」

まぁ、美希はこうして私をからかっていつもは機嫌直すんだけど、今日はなにか違ったの。

「でこちゃんはミキのなの!誰にも渡さないの!」

「ちょ、ちょっとなんでそんなに熱くなってるのよ」

不機嫌だった美希の目が急に険しくなる。

美希になにかあったのかしら・・・・・・

組んでみてわかったのだけど、美希はちょっと不安定な時がある。

こう言うとなんか美希があれみたいだけど、要するにちゃんと私に思ってることをぶつけてくれるようになったの。

美希は結構自分のこと言わないから、ここまで打ち解けるのには時間がかかったわ。

「でこちゃん、勝手に男の人と結婚しないでなの!」

「な、なにいきなり言い出すのよ」

「ほら、伊織のおうちって大きな会社でしょ?いつかそういうことがあるんじゃないかなって」

あー、最近美希の演じてるドラマがそれだからね。

確か、政略結婚させられそうなヒロインと主人公が結婚式当日逃げ出して逃避行をするって話だったかしら。

「・・・・・・正直無いとは言えないわ、でもそれまでは一緒にいられるから」

「や!なの。ハニーを諦めて伊織を選んだ意味がないの!」

それは初耳なことね。

うん・・・・・・?

「ふぅん?つまりアイツの変わりってわけ?」

この時のこの発言はうかつだったと思う、そんなわけないのに。

さっと青ざめる美希の顔を見て血の気が引く。

俯いたままの美希がふらふらと事務所の出口に向かう。

「待って!ごめんなさい、私が・・・・・・」

「ううん、さっきのはミキが悪いの。ちょっと頭冷やしてくるね」

じゃあね、伊織。

しゅーと、薬缶がお湯が沸く合図を鳴らす。

パタリと閉められたドア、その先に佇んでる背中を追いかける資格は、私には無かった。

これが美希と交わした最後の会話、それ以来美希とは会ってないの。

この日の夜、美希から別れようってメールがきたわ。

急いで電話かけたけれども、美希は電話に出なかった。

次の日に、美希はしばらく休むって律子から聞いたわ。

この時のことは、未だに誰にも話せていない。

このまま、美希と会えないままお別れなのかしら。

せめて、あの日のことを誤りたい1、せめて最後は笑顔でお別れしたい・・・・・・

刻々と迫る式の時間に、顔が青ざめている私を鏡が映し出す。

それと同時に、後悔と諦め、運命を受け入れざるを得ない自分の情けなさを嘲笑う私がいる。

着替える前に出て行った新堂も戻ってこないし、私は1人処刑の時を待っているかのようだった。

伊織。

ふと思い出す美希の声、それと同時に懐かしさと悔しさから涙が顔を伝う。

ねぇ、美希。

私たちが恋したのは間違いだったのかな。

一緒に歩いたこと、一緒に過ごしたこと・・・・・・キスしたこと。

過ごしてきた時間が・・・・・・間違い・・・・・・なわけないじゃない。

どうして水瀬伊織と言う人間はこんなにも弱くなってしまったのだろうか。

ううん、弱くなったんじゃないわ。

美希と恋して、優しくなれたの。

「美希・・・・・・」

久方にぶりに呼ぶ名前、憎らしい、愛しい名前。

綺麗に化粧された顔は先ほどからの涙でもう見れる顔じゃないと思う。

「相変わらずでこちゃんは泣き虫なの」

全く、誰のせいよ。

私を泣き虫にしたのはアンタだからね、あとでこちゃんいうなっての。
・・・・・・?

え・・・・・・?美希の声?そんなバカな。

疑問に思って、ふと顔を上げると後ろから涼しい風が入ってくるのに気づく。

あれ、いつのまに私は窓を開けたのかしら。

「ふー、裏口から入ってくるのは大変だったの」

久々に聞くその声に、私は少し火照るのを感じる。

やっぱり私はまだ美希のことが好きで諦められないんだ。

だからこんな幻聴を・・・・・・

「やーと、見つけたよ。伊織」

背中に感じるほのかに暖かい感触に安堵をする。

顔の横に焦がれた金色を纏った彼女の顔が現れる。

「待たせたなの、私のお姫様」

「美・・・・・・希・・・・・・」

もう一度、美希を呼ぶ。

今度は虚ろじゃなく、美希に向けて。

「伊織」

美希は私を抱きしめながら、私の名前をまた呼んでくれた。

「さてと、時間もないの」

「そうね、もうすぐで式が・・・・・・」

「何を言ってるの伊織?」

首をかしげる美希に困惑する私。

「え、ちょっと聞いて無いの!?私は」

「それはゴメン被るってばよなの」

美希が私をお姫様抱っこの形で抱き上げる。

え、ちょっと、え? どういうこと!?

「さーて、行くのなの!しっかり捕まっててなの」

助走をつける、美希いや待ってその先2階・・・・・・

「いやあああああああああああああああ!!!!!」

美希に抱かれたまま空中に飛び出す。

ぎゅっと美希の首に手を回すけどそういう問題じゃないでしょ!

自由落下を初めて刹那、ぼふっと言う音と共にマットのようなものに着地する。

「さぁ、逃げるよ。伊織!」

現実感が無くぼーっとしてる私に美希が手を差し伸べる。

「ちょっと!こんなことしたらアイドルどころか日本にいられなくなるかもしれないわよ!」

水瀬財閥のネットワークでは、国内は当然逃げ場は無く、海外でも危ういかもしれない。

「・・・・・・時間無いから詳しくは車の中でなの」

美希が強引に手を引っ張り、なすがままに連れて行かれ車に乗り込む。

美希はエンジンを吹かすと猛然とスタートを切る。

「あのね、みんなに言われたの。伊織と逃げてって」

少し車を走らせたところで美希が呟く。

「ふふっ、本当にお人よしばっかなの、うちの事務所は。自分たちよりミキたちを優先しちゃうんだから。」

大丈夫だよ、美希は伊織と幸せになってほしいから、迎えにいってあげて。

事務所はなんとかする、バラバラになってもまたいつか会えるから。

だって、私たち仲間だもんね。

「・・・・・・これがみんなからの伝言なの、伊織」

「ばっかじゃないの・・・・・・」

ドレスが塗れてぐっしょりなのがわかる。

本当にバカじゃないの、私たちの事情優先してあの場所を失うことになるのよ?

「それが、ミキたちの765プロでしょ?」

・・・・・・まったくね、本当。大バカの集まりよ・・・・・・でも、とっても大切な仲間なの。

「みんな、ありがとうね」

さっきから止まらなかった涙を拭いて、美希を見る。

「で?これはどこに向かってるの?国内は無理よ?」

ふふーん、と美希が亜美たちみたいななにかを企んでる目をする。

「空港に向かってるですよお姫様。どこか逃亡先はご希望ありで?」

「高飛びね、海外ならすぐには・・・・・・ってパスポートとかはどうするのよ」

「そこらへんは抜かり無いなの。伊織のうちの執事さんにも協力してもらったの」

「新堂・・・・・・!?」

美希は執事さんからなの、と私の前に封筒を差し出す。

私は封筒を開けて、便箋を取り出して読み始める。

拝啓 伊織お嬢様

この手紙を受け取られているということは、もう式場から離れられていることだろうと思います。
幼い頃から伊織お嬢様のお目付け役として過ごしてきた日々でしたが、大変楽しい日々でございました。
今回の件で旦那様から任を解かれることになるでしょうが、気に病まれないようにお願いしいたします。
それでは、体にお気をつけください。
伊織お嬢様、星井様と過ごされる先行く未来に幸多いことをお祈りしております。

                                敬具 新堂

手紙を読み終わり、静かに封を閉じる。

ありがとう新堂、今ままで私のワガママを聞いてくれてありがとう。

さようなら。

「伊織、読み終わったら後ろ下がって着替えるといいの。シャルルもそこに用意してあるの」

シャルルまで持って来てくれたんだ。

久しぶりね、私の最初の友達。

手早く後ろで着替える途中、ふと思い出したことがある。

そうだ、叶わなかった夢を叶えに行こう

「美希、行き先が決まったわ」

どこなの?って美希が聞いてくる。

「イタリアよ、夢を叶えにいく」

席に押し付けられる感覚の後、飛行機が離陸していく。

ここまで追っ手が来ないのにちょっと不安を感じてたけど、今のところ問題なしかしら。

「はー、どうするのでこちゃん。日本帰れなくなったよ?」

「あんたのせいでしょーがっ!」

にへらと笑う美希にツッコミをいれる。

久々にやるこのやりとりに、ああ、美希の隣に帰ってこれたんだなと安心する。

「やっぱりね、ミキは伊織と一緒にいたいの。2人だけになってもさ」

美希の言葉に少し顔が熱くなるのを感じる。

「・・・・・・ずいぶん大胆なこと言ってくれるわね」

いたずらっぽい笑みを浮かべながら美希ははにかむ。

「でもこんなミキに惚れたのはでこちゃんでしょ?」

「まったく、なんでこんなバカに惚れたのかしら」

「むー、でこちゃんひどいの」

まったくよ、なんでこんな金色毛虫に惚れて、2人だけになっても一緒にいたいと思ったのかしら。

ふふっ、まぁわかってるけどね、私が美希に魅かれた理由は。

「ところで、伊織なんでイタリア?」

「・・・・・・昔ね、家族である場所を訪れたことがあってね」

「へぇー、どんなところ?」

「カプリ島の、青の洞窟」

「青の・・・・・・洞窟?」

美希はどういうのか想像できないみたいね、仕方ないことだけど。

「ま、行って見たらわかるから待ってなさいよ」

さぁ、残された時間はどれだけかわからないけど、夢を叶えにいこう。

ボートを借りて、あの懐かしい洞窟まで近づく。

「伊織ー、あーづーいーのー」

片側で漕いで美希がだれかけてる。

「はいはい、もう少しだから。あの洞窟の入り口までがんばんなさい」

今日は運よく波も穏やかで、無事に到達できそうだった。

「さて、美希。着いたわよ。ここが青の洞窟の入り口よ」

「伊織ー、どこが青なの?」

「この洞窟の中よ、さて美希、潜るわよ」

困惑する美希を他所に持ってきたた耳詮を手早くつける。

残りの耳詮とゴーグルを渡し、海に飛び込む。

「・・・・・・潜るって聞いて無いの・・・・・・」

そんな声が聞こえたけど気にしない気にしない。

潜って洞窟を抜け、ボートの上に這い上がる。
美希は一足先に上がっていたようで、目の前の光景に目を奪われていた。
「・・・・・・すごいなの」
吸い込まれた光が海を輝かせ、洞窟自体が青く輝いている。
「すごいすごい!・・・・・・でも、なんでミキをここに?」
「ここは、私がこの世で一番美しい景色だと思ったの」
あの幼い時、ここで味わった感動は今でも忘れられない。
夢は諦めかけていたけどね。

「それでね、私が世界で1番大好きな人とここに訪れるのを夢持ってたの」

そう語って美希を見ると、目を落としたまま少しおちつかない感じだった。

「・・・・・・それがミキで良かったの?・・・・・・」

・・・・・・・ああ、あんな強気なこといってたけどやっぱ不安だったのね、だったら。

「当たり前よ、じゃなきゃここに来てないわ。ねぇ、美希」

不安げな美希の手をとり、目線がこっちを向いた美希と向かい合う。

「この風景は素晴らしいけど、一つだけ足りないものがあるの」

「美希、アンタの笑顔よ。大好きな人の笑顔が加わってこの景色は完璧になるの」

私の夢は、この私の1番の場所を1番大好きな人と見て、1番大好きな笑顔を見ること。

「伊織・・・・・・」

少し泣き出しそうな美希に、微笑む私。

1番好きな人と一緒にいられる幸福、これ以上に幸せなことあるのかしら。

「ねぇ、美希。私とずっと一緒でいましょう。この先なにがあるかわからないけど。2人なら、大丈夫」

言っちゃったわね、でも美希となら一生一緒にいられるわ。

喧嘩もしちゃうかもだけど、それが幸せなんだってことだと思う。

・・・・・・あれ、なんで美希が苦虫噛み潰した顔してるのかしら。

「・・・・・・おっかしいなー、伊織が囚われのお姫様でミキが助ける王子様のつもりだったのに。先にプロポーズされちゃったの」

あーあー、やっちゃったわね私。

一瞬の沈黙の後こらえ切れず噴出し、美希も釣られて笑い出す。

ああ、こんな些細なことで笑いあえる私は果報ものね。

笑い過ぎて出てきた涙を拭って美希に微笑む。

「ふふっ。なら、美希。貴女の言葉を聞かせて?」

美希は少しもじもじしてたけど、意を決したように私の目を見る。

「・・・・・・うん。伊織、ミキと、私とこれからずっと一緒に生きてください」

「・・・・・・もちろんよ、美希。私とずっと一緒に、どこまでも歩いて行こうね?」

私の返事を受け取ると、美希は私に抱き付き嗚咽を漏らし始めた。

そんな美希の背中を優しくさすりながら、私は美希の暖かい重みに幸せを感じる。

あと幾月こんな風に美希と愛を囁き合って、抱きしめることができるのだろうか。

心配しても仕方の無いことだろけど、今は貴女と過ごせる時間を大切に。

以上で終了になります。
初投稿でお見苦しい点もあったでしょうが、楽しめていただけたら幸いです。
番外編的なものを書こうと思っています、このままじゃ伊織パパン酷いままですし。
その時はまたよろしくお願いたします。

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