獣の巨人「鳴かぬなら……」(15)


獣の巨人「鳴かせてみようホトトギス。なんちって」

信長「猿っ!」

獣の巨人「ははッ!」


信長「壁内攻めにいつまでかかっておるのだ! もう5年も経っているではないか。光秀はすでに丹波の国を制圧したというのに貴様は何をやっておる!」

獣の巨人「申し訳ござりませぬ、三の丸はたやすく落ちたのですが、二の丸の守りが思いのほか固く、手こずっておる次第にて」

信長「言い訳は無用。もしひと月以内に落とせなければ、貴様はもう用済みだ」

獣の巨人「……」

信長「あいわかったか。肝に銘じておくがよい」

獣の巨人「ははッ!」

小姓「上様が退出なさいます」

ドスドス





ヒュウウウウ………


獣の巨人「お前たち聞いたろ?」

ライナー「はい」

ベルトルト「はい」

獣の巨人「俺たちもう後がないよ? 総攻撃しよっか」

ライナー「それはどうでしょう。例の作戦を使う手もありますが」

獣の巨人「えー? あれはまた別の機会にと思ってたんだけどなあ」

ライナー「俺はいけると思います。それに、耳寄りな情報があります」


ベルトルト「大将、ユミルが我々のところに来てますよね」

獣の巨人「うん知ってるよ。それで」

ベルトルト「そのユミルが、『女神様もそんなに悪い気分じゃない』と言ってるんです」

獣の巨人「何ッ!?」

ライナー「間違いありません。俺たちは確かにそう聞きました」

獣の巨人「あのユミルが…… そうか。これは面白くなってきたね」


(カラネス区のウォール・ローゼ壁上)


駐屯兵1「おい何だあれは?」

駐屯兵2「巨人どもが?」

駐屯兵3「酒盛りを始めてるぞ! 踊ってる奴もいる!」


獣の巨人「どうだお前たち。この酒うまいだろ」

鎧の巨人「いやー、たまりませんな。一つ裸踊りでもお目にかけましょうか」

獣「……それは頼むからやめてくれ。つうか、巨人は最初から服着てないって」

超大型(上半身だけ)「これで桜が満開だったら言うことないんですがね大将!」

獣「いい加減にしろよ。今作戦中だよ」

超大型「すんません」


雑魚巨人伝令「ピクシスが現れました」

獣「そうか。じゃユミル、頼んだよ」

ユミル「はいよ」


ピカ

ドドーン



獣「おお! 何と美しい……」

超大型「まさに女神……」

鎧「(結婚したい)」

女神の巨人「ハッハー! これが私の最終形態。お前らこんなにも美しい私を殺したいと思う?」

獣「いいえ思いません。じゃよろしくお願いします」


(一方、壁上)


駐屯兵4「司令、あれを!」

ピクシス「何? むう! あの巨人は……まぎれもない超絶美女!」

アンカ「司令落ち着いてください!」

ピクシス「これが落ち着いておれるかバカ者、あの巨人こそ、わが若かりし日に胸を熱くした超絶美女! その人が今ワシの目の前に! 美しい人よ、ワシもその、宴会に混ぜてくださらんか!」


駐屯兵4「あの巨人、何か言ってますよ」

アンカ「歌ってるみたいです」

女神「ぼうや」

ピクシス「はい!」

女神「久し振りね。少しは大人になったの?」

ピクシス「……こんなにも老いぼれてしまいました。でも僕の心はあの日の少年のままです」

女神「嘘おっしゃい」

ピクシス「嘘ではありません!」

アンカ「司令やめてくださ…… 誰か司令を止めて!」


ピクシス「うるさいワシに構うな! 僕の美しい人、あなたになら僕は食べられたって構わない!」

女神「食べたりなんかしない。私はあなたのそばへ行きたいだけ」

ピクシス「! 本当ですか?」

アンカ「駄目です司令!」

ピクシス「うるさいぞ。貴様を反逆罪で逮捕する。おい、この女を拘束しろ」

駐屯兵たち「はっ!」

ピクシス「僕の美しい人! 早くここへ来てください!」

女神「でも門が閉まってるもの。それでは入れないわ……」

ピクシス「…… そんなことしなくても、僕があなたのところへ行きます!」


女神「それじゃ嫌。ねえ、私を愛してるんでしょ?」

ピクシス「当然です! あなたへの愛は永遠です!」

女神「じゃあ、門を開けて」

ピクシス「……分かりました」

駐屯兵たち「司令!」

ピクシス「お前ら何やっとる。さっさと門を開けんか」

駐屯兵たち「」

ピクシス「ワシの命令に従えんのか。ならワシが自分で開けるわ」

駐屯兵たち「やめてください……」


ゴゴゴ

獣「門が開いたね。じゃ突撃」

ドドドドド

ユミル「ちょろいもんだ」



アルミン「こうして壁の中は壁外勢力によって蹂躙され、100年の歴史に幕を下ろした。そして超絶美女に惑わされて壁内世界を売り渡した駐屯兵団司令の名も長く記憶されることになったのである」


このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom