スタナシもぎ (38)

昔々あるところに、志希、菜々、幸子という3人の姉妹が、お父さんと一緒に暮らしていました。

 4人は幸せに暮らしていましたが、ある時、お父さんが病気になって寝込んでしまいました。

あれこれ薬を飲ませてもさっぱり効き目がありません。

「にゃぁ…、どの薬もさっぱり効かないよ…」

「そんな、お姉ちゃんの薬が効かないなんて!」

「何言ってるんですか?あなたが長女じゃないですか!」

「違います!ナナは17歳でだから次女ですよ!」

「まあ、どっちでも良いですけどね。でも、薬が効かないんじゃボク達に出来ることなんて…」


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姉妹が困っていると、お父さんが

「スタナシが食べたい…」

とか細い声で言いました。

 そこで次女の志希が…

「違います!菜々が次女です!」

そこで長女の志希が、

「にゃは、わたしが取りに行って来るね♪」

と言いました。しかし、それを制して三女の幸子が

「こういう話は、一番下が成功すると決まっています!なのでボクが行って来ます!」フフーン

と言って山へ出かけて行きました。

幸子がズンズンと山の中へ入っていくと、岩の上にクラリスが立っていて、

「どちらへ行かれるのですか?」

と聞いて来ました。

「スタナシをもぎに行く所です!」

幸子が元気良く答えると、

「それならば、道を教えてあげましょう。しばらく行くと分かれ道のところに笹が立っていて…」

とクラリスが教えてくれようとしたのですが幸子は。

「残念ですが、急いでいるので必要ありません。大丈夫ですよ、なにしろボクはカワイイので!」

と言ってタッタと行ってしまいました。

幸子がズンズンと歩いていくとクラリスの言うとおり、分かれ道がありました。

そこに3本の笹が立っていて、それぞれ、

『いけちゃ、ガサガサ』

『いくなちゃ、ガサガサ』

と鳴っていました。

幸子はクラリスの言うことを聞いていませんでしたので、

「何を言っているか分かりませんが、まあこっちで良いでしょう!」

と言って『いくなちゃ、ガサガサ』と鳴っているほうの道に入っていきました。

なおもズンズンと歩いていくと、今度は木の上で鳥が

『いくなっちゃ、トントン。いくなっちゃ、トントン』

と鳴いていました。

 それでもかまわずにズンズン歩いていくと、今度は、大きな木の上にヒョウタンがぶら下がっていて、

『いくなっちゃ、カンカン。いくなっちゃ、カンカン』

と鳴っていました。

それでも構わずにズンズン歩いていくと、沼のそばにスタナシの木があって、

スタナシがざらんざらんなっていました。

「やった、見つけましたよ!」

 幸子はスタナシをとろうと木に登りました。

すると、影が水に映って[沼の主]ちひろに見つかってしまったのです。

「私の宝のスタナシをとろうとするとは!」

「これには訳があって!ボクのお父さんが!」

「ええい、問答無用!レアメダルにしてあげます!」ヤァー

 哀れ幸子は、ちひろの魔法で一枚のメダルにされてしまいました………。

れだけ待っても幸子が帰ってこないので、今度は志希が

「にゃは、あたし行って来るね♪」

と言って出かけようとしました。しかし、それを制して菜々が

「年齢順に行くと次は菜々です!」

と言いました。

志希が

「でも、あたしが次女だし…」

と反論しましたが、

「違います!ナナは17歳だけどお姉ちゃんは18です。だから!ナナが次女です!」

といって譲りません。そして、とうとう志希が折れて

「じゃあ、頑張ってきてね♪」

と言って送り出しました。そして、菜々が見えなくなったところで、

「にゃは、お姉ちゃんに飲ませる薬でも作ってよ♪」

と言って調剤を始めました。

菜々がズンズンと行くと、岩の上にクラリスが居ました。クラリスが尋ねると、菜々も

「お父さんのためにスタナシをとり行くところです!」

と答えました。そうすると、クラリスは

「それならば、道を教えてあげましょう。分かれ道のところに笹が立っていてそれが

『いけちゃ、ガサガサ』『いくなちゃ、ガサガサ』と言いますから、『いけちゃ、ガサガサ』と言うほうにお行きなさい。

そして、その先にはスタナシの他にエナナシの木もあります。黄色の星型のナシがスタナシで、赤い丸型のナシがエナナシ

です。エナナシには決して近づいてはいけませんよ。」

と教えてくれました。

菜々は途中から、腰が痛くてちゃんと聞いていませんでしたが、

「ありがとうございます。ナナはちゃんとスタナシをとって来ます!」

と言い、先に進みました。

ナナがズンズンと歩いていくと、三本の笹がそれぞれ

『いくなっちゃ、ガサガサ』

『いくっちゃ、がさがさ』

と鳴っていました。良く聞くと、真ん中の笹が『いけっちゃ、ガサガサ』と鳴っていたので、

「なるほど、この道へ行けば良いんですね!」

と言って菜々はその道へ入っていきました。

しばらく行くと、木の上で鳥が

『いけっちゃ、トントン。いけっちゃトントン』

とないていたので、なおも行くと、今度はヒョウタンがぶら下がっていて、

『いけっちゃ、カラカラ。いけっちゃカラカラ』

と鳴っていました。

菜々が、ズンズンいくと沢があり、大きなおわんがどんぶらっこ、どんぶらこと流れてきました。

それに乗ってズンズン行くと、分かれ道の先に大きな沼があり、そのそばにスタナシの木とエナナシの木がありました。

菜々はクラリスの言うことを聞き漏らしており、どちらがスタナシがわかりません。

そのため

「どっちがスタナシでしょうか。よし、こっちの丸いのがスタナシですね!」

と言ってエナナシの方に行ってしまいました。

菜々はエナナシの木に登りもぎ取ろうとしました。

すると、影が水に映ってちひろに見つかってしまったのです。

「私の宝のエナナシをとろうとするなんて!」

「ま、待ってください!菜々はお父さんのために!」

「ええい、問答無用!レアメダルにしてあげます!」ヤァー

哀れ菜々は、ちひろの魔法で一枚のメダルにされてしまいました…

幸子も菜々も帰ってこないので、さすがの志希も心配になって来ました。

「にゃう、何時までたっても帰ってこない…」

「こうなったら、あたしも行こう♪」

 そう思い立ち、志希は出かけて行きました。

志希がズンズン行くと、やっぱり岩の上にクラリスがいて、

「あなたはどちらへ行かれるのですか?」

と尋ねました。志希が

「お父さんのためにスタナシをとりに行く所♪でも、2人が帰ってこない…」

と答えると、クラリスは

「私の言うことをちゃんと聞かないからです。貴方はちゃんと聞いてくださいね」

と言い、スタナシのとり方を教えてくれたばかりか、

「それから、これももっていくと良いでしょう。」

と言って一つのロザリオをくれました。

志希がロザリオを持って、ズンズン行くと、分かれ道に出ました。三本の笹がそれぞれ

『いくなっちゃ、ガサガサ』

『いくっちゃ、がさがさ』

と鳴っていました。良く聞くと、真ん中の笹が『いけっちゃ、ガサガサ』と鳴っていたので、

「にゃは、こっちの道へ行けば良いんだ♪」

と言って『いけっちゃ、ガサガサ』となる道へ入っていった。

しばらく行くと、木の上で鳥が

『いけっちゃ、トントン。いけっちゃトントン』

とないていたので、なおも行くと、今度はヒョウタンがぶら下がっていて、

『いけっちゃ、カラカラ。いけっちゃカラカラ』

と鳴っていました。

志希が、ズンズン行くと、大きな笹で出来た船がツー、ツー、と流れてきました。

それに乗ってズンズン行くと分かれ道の先に大きな沼があり、そのそばにスタナシの木とエナナシの木がありました。

志希はクラリスの話を思い出し、

「あっちの星型がスタナシだね♪」

と言ってスタナシの木に近づきました。

スタナシは、風が吹くたびに


 東のがわは おっかねえぞ

 北のがわは かげぁうつる

 南のがわから のぼればいい

 ざらん ざらん


と歌っていました。

そこで志希は、南のがわから木に登って、スタナシをもぎました。

「やった!スタナシみっけ、イイ匂い♪」

 ところが木を降りるとき、うっかり沼の方の枝にのっかてしまい、

水に影が映り、ちひろに見つかってしまったのです。

「私の宝のスタナシをとろうとするなんて!」

「待って!あたしはお父さんのために!」

「ええい、問答無用!レアメダルにしてあげます!」ヤァー

「助けて、お姉ちゃん、幸子!」ピカァー

 志希がロザリオに祈ると、まばゆい光があたりを照らし、メダルにされていた幸子と菜々が元に戻りました。

そして2人は怯んだちひろを沼に沈め、志希の下に近づいてきました。

「フフーン、カワイイボクをメダルになんかにするからです!」

「た、助かりました…、お姉ちゃん、ありがとう!」

「だから、あなたの方が姉だと…」

「にゃは、2人が無事で良かった♪」ギュー

 志希は2人を抱きしめ再会を喜びました。

「さあ、スタナシを持って帰りましょう!」

「そうですね、お父さんもボクたちの帰りを待ってるはずです!」

「うん♪」

3人はスタナシをもぎ取ると船に乗せ、帰ろうとしました。

ところが、突如として沼が荒れ始め、ちひろが現れたのです。

「逃がしはしませんよ!貴方達の魂はわたしのものになるのです!」グオォ

「ボクたちの魂を手に入れて、一体何をするつもりなんです!」

「貴方達の魂の中にある、人間の欲望をメダルとして取り込み、わたしは神として蘇るのよ!!」

「ナニソレスゴい、でも、キミのような悪魔に、あたし達の魂は渡さないよ!」

 志希がそう言うと、ちひろは緑の雷撃を放ち3人を転倒させ、叫んだのです。

「愚かな人間め。その悪魔に、魂を奪われなさい!!」ババリバリッシュ

3人は雷撃を避けながら、一箇所に集まりました。そして、志希がロザリオを取りだし、

「確かに、人間は愚かかもしれないね。でも、あたし達の中にあるのは欲望だけじゃないよ。

あたし達姉妹の絆の化学反応、見せてあげる♪」

と言いました。

「2人とも、このロザリオに思いを!」

「はい!」

「わかりました!」

 3人が手をかざすと、ロザリオが七色に輝き始めます。

「ふっふっふ~♪ちょっとだけ刺激の強いあたし達、投与してあげる♪」パアァァ

ロザリオの放つ光の雨に包まれると、ちひろはたまらず

「きゃあぁぁ」

と叫び、大量のメダルになって消えてしまった。

 光が消えてくると、一際輝く緑のメダルを握ったクラリスが立っていた。

「人間も、なかなかやりますね。」

「あなたは…」

呆然とする3人に対し、クラリスはちひろのことを語り始めました。

「彼女は元々、私達と同じ女神でございました。しかし、長い間宝のナシを狙う人間達の欲望を受けてしまい、悪神になってしまったのです。」

「そうだったんですか…」

「はい、私達は彼女をこの沼に封じましたが、彼女はナシをとろうとする人間の欲望を取り込み復活しようとしていたようです。」

「でも、ボク達がそれを阻止したんですね!」

「お陰で彼女に取り付いた欲望も払われました。時が経てば元の清い女神に戻るでしょう」

「にゃは、それは良かった♪」
 
クラリスは話を終えるとどこかへと消えてしました。

そして、気が付くと3人は家の前に立っていました。

「ボク達帰って来れたんですね!」

「ナシも取って来れましたしね!」

「じゃあ、早くお父さんにあげないとね♪」

 3人はそろってスタナシを持って帰って、お父さんに食べさせてあげました。

そのとたん、お父さんの病気はけろけろと治ってしまったのです。

 それから、親子楽しく暮らしたと言うことだ。


 どっとはれ。

志希にゃん昔話シリーズ第2弾!今回はちゃんと、志希にゃんが主役です。

元にした話は、岩手県の民話『ヤマナシもぎ』です。沼の主が元は神様って言う設定は私の地元の似た話の物です。

総選挙では、とても可愛い志希にゃんを応援してあげてください!

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