女 「私で何人目の彼女?」 男 「知りたいかね?」(361)

男 「昨日までの時点で99822人目」

女 「格好つけてるけど最低ね」

男 「不死身だとね、先立たれるのさ、女性に」

女 「本当にそれだけなの?」

男 「無論、最期を看取る前に離別した女性も、この中に含まれている」

女 「それって別れたってことよね?」

男 「なぜ世の中の女性たちは」

男 「俺が複数の女性と関係をもつと愛想を尽かすのだろうね?」

女 「あなたって最低のクズね」

なんかよさげなスレタイだったから 乗っ取らせてくれ。
>>1の続きから書く
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男「そうはいっても仕方ないだろう」

男「男女とはそういうものなのだから」

女「同時に複数の女性と関係を持つのは、一般的じゃないけれどね」

男「長い人生いろいろあるさ」

女「99822人とイロイロしてると思うと、嫌になるわ」

男「いや、安心してくれ」

女「何を安心すればいいのかしら」

男「もうすぐ、99823人になるから」

女「本当に最悪のゲスね」

男「記念すべき99823人目なのに、何がそんなに不満なんだろうね?」

女「その数字になにかこだわりでもあったの?」

男「いや。すべての女性との関係が、俺にとっての記念だから」

女「最低」

男「そうはいっても、君はきっと俺のことを好きになるよ」

女「そこまで自信にあふれていると、本気で抵抗したくなるわね」

男「本気で抵抗してくれても構わない、むしろ抵抗してほしい」

女「変態だった」

男「伊達にあの世は見てねぇぜ!」キリッ

女「あの世を、みてきたの?」

男「今のは某マンガの決め台詞だよ」

女「しってるわ。アニメ好きだったもの」

男「意外だね」

女「ヒエ×クラとかいってた自分が懐かしすぎるわ」

男「予想外だ」

女「そんなのはどうでもいいのよ。あなたはあの世を知ってるの?」

男「もちろんだよ。だって俺は不死身だからね」

女「不死身っていうのは、一番あの世から遠い存在だと思ったわ」

男「死なないだけで、生きてもいないから」

女「不思議ね。つまりあなたは幽霊なの?」

男「幽霊じゃないよ。触れなかったら女性と関係がもてないじゃないか」

女「じゃあ、神様?」

男「神様だったら、きっと俺はこの世界に…人間に、男なんかを作らなかった」

女「子孫繁栄ができなければ、人類は滅亡するわ」

男「俺がすべての女性に子種を残すから問題ない」

女「そこまで言い切るならばアッパレだわ。頭の中まで」

男「褒め言葉としてうけとっておこう」

女「あの世を知ってるなら、聞かせてほしいことがあるの」

男「その前に俺の願いをかなえてくれたらね」

女「私の教えてほしいことに、十分に応えられるなら」

男「……今は答えないけど、質問だけ先に聞いておいてもいいかい?」

女「いいわ。『あの世は、すばらしいところなの?』が質問よ」

男「ああ。なんだ、そんなことか」

女「……そんな、こと?」

男「言うまでもなく、素晴らしいところだよ」

男「華は年中咲き乱れ」

男「どこからか鳥が歌い、空に飛び立ち」

男「水面には美しい水紋を放ち」

男「人々は笑顔をたたえ」

男「争いはなく、憎しみもなく、すべてが皆平等で」

男「皆穏やかで、精を尽くして」

女「もういいわ」

男「満足してくれたならよかった。これで俺の願いは聞いてくれるんだね?」

女「その前に、どんな質問をされると思ったのかも聞いていい?」

男「あの世では、変態行為や性犯罪に関してなにか取り決めがないのか、とか」

女「それを答えるのに躊躇するということは、取り決めがあるのね。そして貴方はそれに抵触している」

男「いやいや。まさか。だからこうして現世におりているわけで」

女「あの世であなたがそれをやったら、何かしらの罰があるのね」

男「そんなの関係ねぇ!」

女「はい、おっぱっぴー」ポロン

男「なんと。ふたつの双丘が目の前に」

女「女性と関係を持つのが、あなたの願いなのでしょう」

男「話が早くて助かるよ」

女「面倒くさいのは好きじゃないの」

男「そう。そうだろうね。でもいいのかい? …本当に」

女「いいの。あなたの話が本当なのなら」

男「嘘は言わない。いつだって本当のことしか答えられない」

女「不死身の代償、っていうところかしら」

男「少し、違う。でも、惜しい」

女「あなたの瞳には嘘がない。だから、いいわ」


女「私を、あげる」

 
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


男「ごちそうさま」

女「ん…」

男「とても、おいしかった」

女「…そう」

男「君は記念すべき99823人目の俺の彼女だね。あれだけ人を馬鹿にしておいて、呆気ない」

女「最低のクズに抱かれたつもりはないわ」

男「確かに、今現在 俺は他の女性との関係を持っていないけれど」

女「そうじゃなくて」

男「なに?」

女「最期を看取る前に、別れるようなことにはならないってことよ」

男「……俺に生涯をささげてくれるつもりかい?」

女「ええ」

男「君はまだ若いね。20歳くらいかな」

女「15よ」

男「しまった。未成年も未成年、結婚もできないような年だったか」

女「どうせあなたはこの世では裁かれないのでしょう?」

男「モラルの問題さ」

女「モラル、モラルね」

女「最低」

男「どうしたのかな」

女「モラルなんて、最低」

男「ふふ。おもしろいことを言うね。人間はモラルだのルールだの、観念だの倫理だの」

男「そういうことに縛られていないと、自分を律する事すらできないのに」

女「それが、最低だといったの」

男「君は、そうあることが嫌なのかな」

女「そのとおりよ」

男「それで、あんなに呆気なく、俺に身体を許したの? …モラルを破るために」

女「話が早くて助かるわ」ゴソゴソ

男「そうか。それで、君は何をしているの?」

女「薬を出しているの」ジャラジャラ…ゴクン、ゴク、

男「随分たくさんの薬を飲むんだね」

女「苦しいのは嫌なのよ」

男「苦しい?」

女「そう。苦しくない様に、たくさんの薬を飲んでおくの」

男「何がそんなに苦しいの」

女「今から言うことを、目を閉じて、想像してみて」

男「うん…はい。いいよ、目を閉じた」

女「包丁が一本」カツン

男「包丁が一本」


女「それが、白い首筋に添えられる」ツツ…

男「首に、添える」


女「ゆっくりと線を引くように、なぞられて」グッ、プチ・・・プチ

男「なぞられて」


女「赤い血が、にじんで湧く」プチプチ…グジュ

男「綺麗なコントラストを描く」

女「それでもまだ、深くは刺さらずに」ググ…ブチュ

男「何度も、線をなぞるように」


女「ゆっくりとゆっくりと、頸動脈に近づいていく」ピッ…プチュ

男「死に、近づいていく」


女「痛みは、麻痺して」プチチ…ブシュ

男「感覚は、鈍くなり」


女「少しづつ… 意識が、遠のいて…いく…」クラ…

男「…………」



ガシ、

女「…あ。まだ、切れていないのに」

男「誤解をしていたようだったから」ニッコリ

女「……誤解…?」

男「あの世は、すばらしいところだ。君は ”ソコ”に行きたいんだよね?」

女「…いきたく、ない。だから、最低なことをして、最低なやり方で、最低のまま終わりたい…」

男「……君が想像するのは、報われない人や、よい生きざまを描いた人のいく、『天国』だよね?」

女「……そう、よ」

男「行きたくない、だって?」

女「……」

男「わからなくなった。おしえてくれ」

女「あなたの言った、あの世の話をきいて…」

女「そこにだけは、行きたくないと、思ったの…。そこは、天国でしょう…?」

男「嘘は、つけない。だから答えよう」


男「…俺の知っているあの世は、『天国』じゃない」

女「…え? だって…」

男「俺の知っている、語った場所の名前は『地獄』というんだ」

女「…う、そ…?」

男「嘘なんて、言わない」

男「淫らな『華』は、年中、場所も弁えずに 咲き、乱れ」

男「どこからか、どこからでも、鳥の歌声に心惑わされ、空に飛び立つ狂人が後を絶たない」

男「水面には、常に美しい水紋を放ち、美しき泣き女が入水によって身を落としている」

男「人々は笑顔をたたえ、常にその瞳は虚無。緩んだ口元から垂れ流される涎も気にせず」

男「争いはなく、憎しみもなく、すべてが皆平等に、自分の世界に閉じこもり塞いでいる」

男「皆穏やかで、誰に関与しようともせず。精を尽くして、情欲すらも貪り尽くして」


女「もう…いい、わ…」

男「このままだと、君が逝くのは、そんなところだよ」

女「…最高ね。よかった…」

男「最高?」

女「ええ… 私、もう、疲れたの…」

男「……」


女「誰かの為に犠牲になるのも。誰かの為にと動き続けるのも」

女「誰かの為に、誰かの為に。そんな自分を演じ続けるのも」

女「よかった… これからは… 自分の、好きなように………」


男「………」

女「あり…が、とう…」


パタン

男「……困ったな」

男「精神に闇を抱えたくだらない女を一人、相応しい『救いの世界』に案内しようとしただけなのに」



男「地獄に落ちたいという人間に、地獄に落とさせるようなことをさせて、感謝されるとは」

男「…『天国に行って自分だけは救われたい』という愚かな願いを、打ち破らなければ意味がないのに」



男「どうやら俺は、この世で唯一の処罰対象の罪に…」

男「『対象の望みを叶える』罪に、抵触してしまったようだ」

男「まさか…地獄に落ちたかったとは、ね」


女「……」

男「地獄への案内人。不死の人生で、最大の罪を抱えてしまった」

男「償わなくては、ならないのかな」



女「………」



男「……この仕事。好きだったのに」

男「君のせいで…転職しなくちゃいけないようだね」



女「………」

男「悔しいから、君の生涯だけは俺が貰っていく」

男「好きなものを奪った君を、俺はまるごと好きになってしまおう」


女「………」



男「いつか、君を殺しに来るまで…この世界で いつまでも待っていてくれ」

男「かならず、会いに来るから」


女「………」


男「次は、処罰されないやり方で… 君を救って見せよう」

男「さようなら。記念すべき、99823人目の彼女」

男「いつかまた。記念すべき、俺が初めて愛することになったヒト」スッ… パァァ…



女「………」


女「…スー…スー…」コロン



男「それまでは、苦しみの中で。俺の救いを待っていてくれ」




おわり

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初乗っ取り終了
表現注意と書くのを忘れていました、ごめんなさい
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ええと。勢いで乗っ取ったせいで、微妙な終わりだったので
おわりとかいておきながら 続けます。
ここまできたら好き勝手にやっちゃおうとおもっているw

読んでくれる人いたらありがとうございます。
妄想・爆走・命掛けです。投下スピード遅いのは勘弁してください。
↓からはじめます。


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・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・

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・・・・・・・・・

< ??? >

男「……う……ここ…は…?」


気がつくと、そこは見渡す限り一面の黒。何もない。
壁だとか人だとか、そういうレベルの話ではない。

自分の足場すらもなく、ただぽっかりとした黒に浮かんでいた。


男「…ああ。どうやら本当に、罰せられてしまったみたいだね」


身を起こす。
上下左右の感覚すらも危ういその場所で、「起こす」という表現が正しいのかはわからない。


男「人の望みを叶えそうになった挙句、救いを宣言して」

男「さらにその魂に、俺だけにしか解けない、永久の呪いをかけて生き長らえさせた」

男「まぁ、厳罰どころじゃ済まないのも当然か。一体どうされたんだろうね、俺は」


地獄への案内人。
その辞職程度では済まないほどに その罪は重かったのか。
少し頭をひねってみても、結局は答え合わせをしてくれる人など居ないと気がつく。

何もない。誰も居ない。
これまでずっと、意識しなくとも感じていられたほどの
『俺を罰した雇い主』の気配すら、皆無だった。


男「…『永久の呪い』っていうのが、気に障ったのかな。心が狭くて嫌になるね」

男「優秀だったのは認めるけど。だからって、こんな風に見せ付けなくてもいいのに」


深淵。
浮かんでいるようにも、沈んでいるようにも感じられるだけで
自分の身体が融けていくような気がした。
時間だとか、距離だとか、そういった概念すらも奪われていくようだった。


男「ふむ。さすがにこの感覚は気持ち悪いね? …何かあればいいのだけど」

スッ…

男「……」


瞳を閉じて、自らの気配を空間に伸ばす。
案内人をしていたときに覚えた能力の、ひとつだ。
周辺を知覚して、さまざまなものを察知できる。


男「…本当に、”物”といえるようなものはなさそうだね。完全に閉じ込められたようだ」ハァ…


男「ん…違うか。まだ、あるにはあるな」


暗闇に手を伸ばし、拳を強く握る。
掌に刺さる自分の爪で、皮膚が傷ついて血が滲んだ。


男「……どう、なるのかな」


血が、暗闇に落ちる。
深淵に吸い込まれて、掌から零れ落ちた。


男「よし、落ちた。ここが地だね。もう少し、たくさん垂らしておこう」ブシュ、グス、ビシャ

男「…痛い」ズクズク…


傷口を押し広げ、少しの圧迫を加えてやれば血は噴出し始めた。
その気になれば、包丁などよりよほど簡単に血を流せるものだ。

(まあ、人間ならば、耐え兼ねるほどの精神状態でないと出来ない荒業かもしれないけれど)
そんなことを思いながら、しばらくの間流れ落ちる血を見つめていた。


男「う…やばいな。血を流しすぎて、倒れそう…てか、倒れる…」

男「血、血を止めるものを用意し忘れた…ッ! 止血できないじゃないか!」


男「はっ! 気がつけば、もはや血が広がりすぎて…まって、まってまって!」

男「うわ」ガタン

男「……あ。駄目だ。これは… おち、る…」クラ



男「」バタン

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・

< ??? >

男「……はっ!」

周りを見渡してみる。
何もなかったはずの暗闇に、大量に零れた血液が、薄く伸びて広がり、固まっていた。

男「よかった。この歪んだ世界にとって初めてのモノだ。 言うなれば”大地”だね」スッ…


男「…よいしょっと」


固まった血の上に、足をつけて立つ。
それだけで天地を意識することが出来て、この混沌の世界は治まりを見せたようだった。


男「……うーん。自ら倒れるだけの量の血を流さなくては、救いも得られないなんて」

男「ここは、なんて歪んだ世界だったんだろう。趣味が悪すぎるだろう」


地に足が着くというのはよいものだ。
それだけで、心は安寧を取り戻す。思考回路も前向きに電気信号を流している。


それに、目の前に広がる真っ赤な大地は 気分を高揚させてくれた。
掌に残る、グズグズとした痛みが、心音を意識させる。

男「…よし。じゃあ、ここはまあ俺が」

男「俺の暮らしやすいように、いじらせてもらうとしようか?」フフ


そうして俺は、さまざまな作業に取り掛かることにした。
「創世」の、始まりだ。

中断します。ゆっくり、不定期更新になるとおもいます

なんか面白いことになってる
期待

立て逃げのスレをどう処理するのだろうか
期待

>>44 ありがと。面白いことになるかどうか見ててくれたら喜ぶw
>>45 ハ、ハードルあげられたよw でもありがとう、がんばる。

途中でアレだけど前置きと注意を書いておく。

・内容に、一部グロテスクな表現や鬱描写、性的表現が含まれます
・なんかもう、史実とか関係ないです。
・何かに似ていたとしても、それは たまたま偶然です。何かの間違いです。

↓から投下を再開します


それから俺は、しばらく歩き回ることにした。
血の上を、地の上を。

思った以上に広い範囲に広がっている。
その端についにたどり着いた。


男「うーん… 一体どれだけ歩いたのだろう?」

男「時間の感覚も、距離も。よくわからないんだよな」

男「もしかしてだいぶ大量に血を流して倒れてたのかね」


実際のところ、数千キロは堅いと思うのだけど。
もしかしたら、数万キロだったかもしれない。
不死身で、時間の感覚もなければ、そんなものだ。


男「・・・・さて。ここが、『世界の果て』といったところかな」

意識する。
その先、自分の一歩前を。

何も、ないのではないかという恐怖が生まれた。
一度、地を意識してしまうと 地のない場所が怖くて、その先には踏み出せなかった。


男「予想以上に、自分がヘタれで嫌だ。なんのためにここまで来たんだろう」ハァ…


赤い大地の上に寝そべる。
流石に疲労感が半端ない。つかれきっていた。

地に転がる。見上げると、黒。 またそこには黒だけがある。
闇がある。


男「そうか、闇があるんだ。気づかなかったけど、闇だって立派な存在だよね」

男「ああ、まるで夜だな。いつだって眠れそうだ…」


目を閉じる。

この世に概念が生まれた。そう、夜と、闇。
意識するだけで多くのものが生まれるんだと気がついた。


男「…夜の暗闇…」

男「あ、なんか興奮してきた」ウズウズ

男「こんな完全なシチュエーションってある? 誰もいない世界、夜の帳だけが落ちる世界」

脳内で、卑猥な妄想が走り出す。
素敵な女性と、時間を忘れてただ夜に身を任せるようなそんな妄想が心を躍らせた。

だが、すぐにその妄想は粉々に砕け散る。


男「む、むなしい…」

男「………この世界には、その相手も居ないんだよな…」ガックリ


男「くそ、これはどうしたらいいんだろう?」


さすがに、この孤独には耐えられそうにない。
思わず、自らの能力である気配を伸ばす。

自分以外には何もない、と諦めかけたときだった。
急にひとつのことに気がついて、気配を戻す。身震いがとまらない。

違う。何もないんじゃない。
『大地』がそこにはあった。生臭いほどの血の匂いが鼻をついた。
自分の匂い。生と死の狭間を流れる、そのあまりにも強烈な匂いにいまさら気がついた。

瞬間、恐怖に支配される。


男「とても、正気の沙汰じゃない」

男「自分の血の上で、何を呑気なことを言ってるんだ、俺は…」


男「こんな気分ははじめてだ。気が狂いそうだ。夥しい血。それに囲まれて生きていく?」

男「生きているのか? 最初から生きてなんかいないじゃないか、何をいってるんだ」


混乱する。思考回路が突然に乱れ、理屈が何も出てこない。
この世界にあった、混沌。
それを抑えたのは、それ以上の狂気であったのだと気がついてしまった。


男「…欝だ、死のう。いや、冗談じゃなく」

男「というか、死ぬってどうすればいいのかすらわからない」

男「うーん。そうか、身体を捨てればいいんだ。人間は亡者になることを死ぬというしね」


身体と霊体にわかれる。

何をしたかといえば、簡単なことだった。
自らの首を自分で絞めて、無理やりに自己の霊体を絞り出しただけ。
雑巾の水を絞るように、身体から霊体が滴り落ちていくのは妙な気分だった。


男「いや、まあ。この感覚を誰かに説明しようって言うのが無理だろうけど。普通できないよね」

男「しかし、予想外だ。不死身のせいか。こうして死んでもまだ生きているなんて」

男「……うん? なんだか何を言ってるのか、滅茶苦茶すぎるな」

霊体になった自分と、それまでの自分の入れ物であった肉体。
しばらく感傷にふけっていると、恐ろしいことに俺を絞り出した肉体が勝手に歩き出しはじめた。


男「うわ、気持ち悪い!」


それを見つめる。 この世に大地に続いて 2つ目の『モノ』ができた。
初めての、人類。それは間違いなく、俺自身だった。


男「う…これは、ヒくな。ドン引きだ。なんだろう、ショックがあまりにでかいんだ」


勝手に動き回る肉体。ふらふらふらふら。
生気のない顔、緩みきった表情。

地獄に居た亡者共と何も変わらない俺の姿。


男「失敗! 捨てたいよ、こんな黒歴史!? 黒歴史とかで笑えない、完全にダメなやつだよ!?」

男「こんなものを見るために俺は死んだんじゃない、いや死んでないけど!」


肉体は、こちらの叫びなど意に介さない様子で歩きまわる。
時々、躓いてみじめったらしく転んでは立ち上がる。
そのあまりにむごたらしい様子には、自らの容姿でありながらも嗜虐心が湧きあがるのを感じた。


男「…そういえば、今の俺自身である、魂というか意識というか…霊体はやはり不死身なんだろうけれど」

男「本体ともいえる『俺』が居なくなった身体は、どうなんだろうね?」


……わくわくしてくる。
きっともう、どこかが、すべてが狂ってしまっているんだと思う。


男「よし。さすがにちょっと、いやかなりの抵抗があるけれど。それはやむをえない」

男「俺を、もう一度殺してみよう」


案内人をしていたころに身に着けた能力のひとつ、拘束の術。
暴れる亡者どもを抑えるために使った能力で、自分の肉体を縛る。

肉体は、縛られたことすら意に介さず、そのまま歩こうとしてまたすっ転んだ。
特に抵抗する様子がないのは、精神的に幸いなことだろう。


縛って、絞める。
引き締めて、さらに絞めて、ついにその身が二つに裂けるほどに、引き締めた。


男「………さ、さすがに…これはキツい…。いや、本当に。ほんとに悪趣味すぎる…」


吐くこともかなわない身でありながらも、嘔吐感を催す。
ふたつに避けた肉塊をそのままに、気が遠のいていくのを感じた。

こんなもの。
いくら俺だって、気が狂っていたからって、耐えられるような精神は持ち合わせていない。
それを自覚できたことは、ものすごく歪みきっているけれど 間違いなく、救いだった。

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・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・

<???>


目覚めたら、肉の塊がふたつ、動いていた。


男「…肉体も不死身なのか。二つに裂いたのに」

男「さすがにサイズダウンは仕方ないにしても、元の『人の形』に近づいてる気がする…再生してる?」


二つの肉の塊の、断裂面に目を向ける。
傷口であった部分がふさがり、丸く肉が覆いかぶさった状態。

しばらく見ていたけれど、目に見えてすぐに変化するようなものは何もなかった。


男「いや…なんだ。俺はまた、どれだけの時間、気を失ってたというのか。傷が癒えるほどの時間?」

男「それにしても、まあ気持ち悪いことだ」

男「とくに、こっち。上半身のほうの肉塊は、俺によく似てて本当に気持ち悪い」

男「いや、まあ似てるも何も、当たり前か。顔が…頭部がそのまま残っているのだから」


思わず、近づいて手に触れる。
魂が肉体に引き寄せられて、吸い込まれた。
せっかく抜け出したというのに、また肉体の中に収まってしまった。


男「うわ!?」

男「ちょ、まて! 最悪だ! 動けない! 足とかないし!」

男「なんかずっと動かないでいた肉体のせいか、全身が硬直したように動かないし!」

男「っていうか下半身が『ねじきれている』肉体なんて、さすがにごめんだよ!?」


かろうじて動く目線で、周囲になにか使えそうなものがないか探す。
下半身の肉体が目に入る。


男「oh...」

男「下半身が… なんだろう、すごく活発に動いてる気がする」

男「いや、なんていうか。気がするとかじゃなくて。明らかに動いてるよね、アレ」

男「主に、下半身の、下半身たる部分だけれど…」ガックリ


衣類の中で、ビクリと何かが動いているのが見てわかった。
上半身がないのに、何をそんなに興奮しているのだろうか、俺の肉体は。


男「……男は下半身でモノを考えるっていうけれど…」

男「下半身は、本当にモノをかんがえるのか…?」


どうしようもない虚脱が全身を覆った。
どこか静かなところで、ひとりでゆっくりとしていたいところだったけれど。

あまりにも動けないので、しばらくその『下半身』を見ていることになった。


男「あー… サイテー。なんかわかんないけど、俺っていま絶賛サイテー中だよ…」ハァ…


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・

中断します。
単発投下で申し訳ないですが、前置きどおり ゆっくりいきます


どれだけの時がたったのか、身体はずいぶん復活した。
ちゃんと 腰や足もできている。


男「うーん。気が遠くなる速度だたけど、足の造形がはじまってからは早かったなあ」


どういうわけか、下半身が作られるにつれて上半身は縮小したようだった。
肉を分けたのだろうか、と推測してみるが答えは出ない。


男「子供のような大きさになってしまったけれど、これだけ成形されてれば動けるな」


何年も見続けてきた下半身も、俺と同様に人の姿になっている。
足が無事だった分、ずいぶん前からウロウロとしていたが
最近になって頭部が出来てきたが、眼球などがいまだに揃っていない。


男「ええい、その真っ黒の双眸でこっちみんな!」


目や髪がないのを除いても、それは俺の容姿とは似ても似つかなかった。
やはりこちらも下半身は縮小し、その分だけ上半身ができている。


男「うん…なんだろうね、少年の容姿なのに…不完全な表情とか動きとかが…」


男「なんというか、すごくいやらしい!」キッパリ!

男「はぁ…まあ当たり前か」

男「オトコの象徴たるものが脳の代わりとなって、1生物として存在するようになったのならそうなるだろうよ」

男「…ましてや、俺のオレなんだし。エロいのは仕方ない、うん」


納得してしまった。
が、これは後日ものすごく安易な思考だったことに後悔することになる。


その下半身だった少年もまた、頭部が完成するとそれまでより早い速度で細部を成形していった。
最初、聴覚や嗅覚、そして視覚というものにかなり驚いたようだった。
その様子はとても少年らしく、なんだか愛嬌すら感じたので声をかけてみることにした。


男「やあ。はじめまして。どう? 俺が見えるかな」

少年「…?」

男「見えてない? ああ、聞こえてないのかな」

少年「……!」ジロジロ

男「え、まって。 なに? その反応」ビク

少年「…ハァ…ハァ…」

男「ひっ!?」ゾクッ


予想外だったのは、元俺の下半身である少年は性的欲求が強すぎたということ。
どうしてそれがわかったかって?
襲われそうになったからだ。


男「やめて?! 俺もオトコだよ!!??」


少年「ハァ…ハァ…」ヒタ…ヒタ…

男「来るなっていってるのに!? 聞こえてないの?! 知性がないの!?」

叫ぶと余計にむなしくなる。
なにしろこの少年、知性とかよりもまず理性がないんじゃないのかとしか思えないのだから。


男「さ…さすが、俺のオレだ…っ!」


この世界には、生物と呼べるようなモノは 俺とコレしかない。
最低最悪。

とりあえず、拘束の術で捕まえておいたので、貞操は守られた。
この少年の処遇については、ゆっくり考えようと思う。


男「とりあえず、なるべく遠い場所にいってから寝よう… なんだこの最悪の世界」ガックリ


・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・

-------------------
<少年の居る場所>


少年「ああああ! うあああ!」ジタバタ

男「おはよう。どれだけ暴れても絶対にその拘束は解かないよ?」

少年「あああああああ!」ダンダンッ

男「俺の貞操を男から守るためならば、俺は鬼でも悪魔でもなんにでもなるさ」


男「さて…そろそろどうするか決めなくてはね」

男「一度、情報をまとめてみよう」


今、この世界にあるものは

・血で作られた大地
・もとの身の、上半身である俺
・もとの身の、下半身である少年


それから、これは概念だけれど

・闇
・夜

それに、以前の世界で俺が使っていた能力は、どうやらここでも健在らしい
いろいろな力を試しに使ってみるが、不自由は感じない
俺についてわかったことと、その能力も再確認してみる

・霊体も肉体も、不死身であるということ
・細分化されてもその能力を失わないということ
・空を飛ぶ能力
・場所を移動する能力
・気配を操る能力
・妄想力

この6つが、俺に与えられている道具。これが生きていくための知恵になる


男「妄想だって能力のひとつだよね。思考の柔軟性というのは十分に武器になると思うし」

少年「あうあうあー」ビンビン

男「せ、生殖能力はいまはとりあえず要らないんだ!」


不死身の肉体は、まあ裂くことで増えることがわかった
でもどういう生物になるか読めないし、質量が増加したとは思えない
下手に増やすのはさすがに怖すぎる


男「っていうかこれ以上あれ繰り返すとかほんとに病むよね。どれだけ自虐的になればいいんだ…?」

男「いや、ネガティブなことを考えるのはやめよう。創世なんだから、建設的思考が大事」

男「と、なると… 使えそうなのは…」


気配を操る能力が便利そうだった
邪魔のものが一切ないこの場所では、集中さえすればどこまでも気が伸ばせる気がした


男「あれ、そういえば 伸ばせるってことは縮めることもできるのかな」


試してみる

ぐぐぐ、と よじれながら密度を上げる気
深海とかに持ち込まれた発泡スチロールによく似ていると思った
密度を限界まで上げて、そのまま収縮する

可能なかぎりまとめると、紐状になった


男「ああ、なるほど。拘束するときのあの変な紐って、これだったんだね」


手にとって見ると、シリコンに似ていた。弾力はあるけど伸びない
見た目には「気」であることなど信じられそうになかったほど、完全に固形化していた


男「うーん。これはうまくつかえたら便利そう」

男「もしかして、小物とか、いろんな道具とかも作れるんじゃないかな?」


いろいろ作ってみた。
最初に作ったのは、ヘビだった。紐だし、形も似ていたから

でも、動かなかった。ただのゴム人形みたいになってしまった


男「うーん、素材感ってのがよくないよね。もうちょっと、表面の感じとかいじれないかなあ」


その次に、作ったのは、杯だった
紐をなるべく細くして、グルグルと積み重ねるようにして円柱形の輪にして、まとめる


男「意外と楽しい。こうなると陶芸だな、もう」

男「うん。これはなかなかうまくいったんじゃないかな」

男「よし、ちょうどいいから少しティータイムにしよう!」


ふと思いつく
そしてすぐに膝を突いてガックリと落ち込んだ


男「何を飲むんだ・・・水もないのに」

少年「あうあああああああ」

男「飲まないよ!! 何飲ませるつもりだ、このくされ変態下半身脳みそ男め!!」

少年「・・・あうあうあ?」

男「侮辱でもなんでもなく事実だよね、うん。なんかごめん」


仕方ないし悔しいので、少しだけ血を絞り出して、入れてみた。飲んでみた
吸血鬼になった気分がした


男「これは…!」

男「ぜんぜん楽しくないし、とても気が安まるどころじゃない」

男「…それどころか、精神的に不安定になりそう…何してるんだろうね、俺…」

男「うあああああああああ!!!」


思わず、発狂してしまう
思いついて発狂するようなことはそうそうないだろうけれど


そうしたら予想外の事が起きた
俺の叫びに呼応するように、大地が煮立ち始めたのだ


男「えっ ちょ、まって!?」

少年「あうあうあうあうあうあう!!」ガンガンガンガン


大地震のように、大地が起伏を始めた
さすがに少年も、身の危険を察したのか必死の抵抗をみせている


男「な、なるほど。俺の霊体やその肉体が不死身だったのだから、血も不死身でもおかしくないね」

男「血が滾るって、実際にこれだけの量を目の前にしてみると結構怖いものだよ…って」

男「納得してる場合じゃないよね!? 熱い!! 俺の血が燃えている!! って違う!」

男「ああもうなんか、熱血ヒーローっぽい言い方になっちゃったけど俺のキャラじゃないよ!!」


男「こ、これは・・・・かなりやばいっ!!!! にげろおおおおおおおお!」

---------------------------

今日はここで中断します。


男「……」フワフワ

男「飛んで逃げたからよかったけど…これはひどい」


熱気に追われて、ずいぶん高いところまできた。
地表を見ると、大地は煮え立ち、隆起しては固まり、また溶けていく。


男「おお…。これは、なんていうか…」

男「まさに、創世の始まりを感じるね」ウンウン


男「しまった! せっかく作ったヘビも杯も置いててしまった」

男「…あと、少年も置いてきた」

男「不死身とはいえ…さすがに悪いことをしたね」


それから、かなりの長い時間を飛んで過ごすことになった。
さすがにそのままでは困るので、仮の家を空中に作ることにした。

空中に浮かせておかなくては大地に落ちて溶けてしまう
苦心しながら家を作るという作業をしているうちに、ずいぶんと気の使い方がうまくなった。

できあがった家はとても小さなものだった。
ただの四角い部屋と、出入り口と窓を兼ねた穴があるだけの家だった。


男「気の使い方が、すこし分かった気がするね」

男「出来上がりのイメージを、しっかり想像しながら気を練るのがコツなんだ」

男「それさえしっかりできれば、割となんでもできそうな気がする」


独り言をポツポツつぶやきながら
空中に浮かぶ部屋の中に、次々いろいろなものを創り出した。


男「ベッド」モワモワ・・・バシュ!

男「布団」モワモワ…バシュ!

男「机」モワモワ…バシュ!

男「筆記具」モワモワ…バシュ!


男「うん。完璧だね、さすが俺だ」ニッコリ

男「せっかくだから、日記でもつけていくことにしようか」

男「タイトルは…創世記、なんてもっともらしいかな」カキカキ

男「…………」カキカキ

男「…………」カキカキ

男「…………」カキカキ

男「…………」カキカキ

男「…………」カキカキ


・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・


男「ハッ!」


男「集中しすぎた。どれだけの時間がたっていたのだろう?」ノビー

男「昼も夜もないから、外を見ても分からないのが難点だな」


男「ああ、でもこれはいいな。文字を書いていると、気が休まる」


男「この世界は、あまりにも孤独すぎるから」

男「誰かのために書き残そうとするのは、気持ちをおちつかせてくれるね」


男「さて…大地はそろそろ落ち着いただろうか? 窓から見てみよう」


テクテク… ヒョイ 

男「え?」

キョロキョロ

男「……すごいね。一体どれだけの時間、俺はこうしていたのかな」

男「地表に、降りてみるか」

--------------------------


<地表>


男「真っ赤だった大地が、まるで土のようになっている」

男「血液が、酸化と炭化と溶解を繰り返したのか」

スッ… ザラ、サラサラサラ…

男「手触りも、良質の砂のよう。独特の鉄のにおいも無くなっている…」

男「はは。これは、すごいね」

シャク…シャク・・ シャク・・・

男「! ・・・足音? あっちからか」

男「…この…起伏の向こうから…


?「」フラフラ


男「……え…もしかして、少年?」

少年?「……」フラ・・・


少年?「………う、ぁ」フラフラ


男「なんてことだ。体が、さらに小さくなっているじゃないか」

少年?「あぁ…う、ぁ」

男「溶けて、崩れ落ちて、それぞれに再生したのか」


少年「………」ヨロ

男「危ない!」ガシッ

少年「………う、あ?」


男「……悪かったね」ギュ…

少年?「……」

男「放っておいて、悪かった。君が居たのに、一人で逃げ出した」

少年?「……」ギュー


男「火傷の傷が、ケロイドになっている。引きつって、うまく身体が動かないだろう?」

少年?「……?」

男「癒してあげよう」

男「どんな姿がいいかな。”気”を使うのがうまくなったんだ」

男「うまく皮膚や筋肉を…君の体を、創ってあげられると思う」

少年?「……?」

男「わからないか。じゃぁ、まあ適当で」


男「創生。彼の、新しい身体を」

モワモワ…バシュ!
少年?「うあ!?」


男「…どうかな。俺の子供のころの姿をイメージしてみたのだけれど」

少年「」フルフル

男「初めてのはっきりとした意思表示が、”嫌”ってどういうことだ!」

少年「」グイグイ

男「え? やりなおせって?」

少年「」コクコク

男「難しいんだよ、具体的なヒトの姿のイメージって…」

少年「」ギュー

男「わかった! わかったから離れて、自分に抱きつかれているようで嫌だ!」

少年「」スリスリ

男「やめろ!男にスリスリおねだりされたってうれしくない! そういうのは女の子だけでいい! 再・創生!」


モワモワ…バシュ!
?「……」キョトン


男「…っ、これは」

?「……?」キョロキョロ


男「うーん。つい、願望が思考にでたな。可愛い女の子にしてしまった」

少女「……ぁぅ?」クビカシゲー


男「可愛いから、これはこれで良しだね!」グッ


少女「……」

男「…っていうか、この姿… あの子だな」

男「99823人目の、彼女の姿。それをすこし幼くしたような感じだね」

男「まあ、最後に関係を持ったのが彼女なのだから、イメージが強く出るのは仕方ないか」


少女「……ぅーぁー」

男「幸い、かな。好きになろうと決意した女性が、偽者とはいえ傍に居るのは」

少女「」ジー


男「……おいで」

少女「?」

男「おいで、っていわれたら こうして…」グイ

少女「!」

ギュ

男「俺のところに、くればいいんだ」ギュー

少女「……」ギュー

男「よかった。もう、永遠に孤独だったような気がしていた」ギュ…


少女「……」ペロ

男「はは。慰めてくれているのかな?」

男「うん、うれしいよ。ありがとう」ナデナデ


少女「♪」ペロペロ

男「あはは。うん、ありがとう、もういいよ。大丈夫だ」ナデナデ

男「大丈夫だから…ちょ、あの。頬とかはわかるけど、口はどうかとおも…」ウプ


少女「♪♪」ペロペロペロ

男「い、犬か猫みたいだね。理性がないから動物的なのかな」ナデ…

男「ちょ、まって。舐め尽くそうとしないでくれないかな。ヨダレが…」


少女「♪♪♪」ペロペロペロペロペロペロペロ

男「とまれとまれとまれって! 何、なんか舌使いおかしいよね!?」

男「そんな場合じゃないのわかってるけど、俺の理性が無くなりそうだからやめて!」


少女「♪♪♪♪♪♪」ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ

男「忘れてた! もともとは君、俺の下半身だったね!」

男「少女になっても本能的な性的欲求はそのままか!!」


少女「………♪」ニコー

男(あ。だめだこれ。完全に狙われてる目だ!)


男(ああ。混沌と悪趣味の世界が一転、ピンクな世界になりそうだ…極端すぎる)ガックリ

少女「♪」


・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・

今日はここで中断します

あらお気の毒に
気長に待ってるよ

更新停滞してて すみませんでした
>>90 ありがとうですー

そろそろ落ち着きそうなので、ゆっくりめですが更新していきます
↓から投下していきます

<地上>

少女「あうあうあう!」ジタバタ

男「結局、拘束するはめになるのは変わらないようです」

少女「うー…」ジー

男「そんな目でみられてもね。見た目が10歳の少女を相手にどうこうする気はさすがにないよ」

少女「……?」

男「いや、まあ確かにこういう場合。産んで増やしてって言いたいところだけどさ!」

男「この世界に、女性が居るのは将来的には助かるけど…そういえば生殖能力もうまく再現できているのかな」チラ


少女「……?」ミル?

男「拘束された状態で足を開こうとするな! 俺にその手の趣味はないよ!!」

少女「……」ショボーン

男「ああ……いや、別に怒ったわけじゃないから気にしなくていいよ…」ハァ


男「とにかく、君の将来には期待するとして。それまでに、知性とか理性とかを教えなくてはね」

少女「?」クビカシゲー

男「わからないか。何から教えるべきか…やはり、発声練習かな。それから、言葉と常識」ナデナデ

少女「♪」スリスリ

男(可愛いらしい)

男「…法律も、常識も、この世界ではまだ無いんだよね…これってどうなのかな。俺を堕とす為の罠かな」

少女「?」スル?

男「なぜ、そういう時だけ意味を理解できるのだね、君は」ハァ…ガックリ


男「とりあえず、身近なものから教えることにしよう…」

男「案内しよう。俺の家につれてってあげる、ついておいで」ニッコリ

少女「」

男「へ、変態発言じゃないから ヒクのやめてくれないかな!?」


少女「」←10歩後ろ

男「……なんかもう、泣きたい。誘うくせに、ドンビキもするってどうなの…」

--------------------------------


<空中の部屋>

少女「」ソワソワ

男「落ち着いて」

少女「」ジー  

【ベッド】

男「いきなりそこに興味を持つのはやめてくれたまえ」

少女「~♪」

ペタペタ 
男「それ? コップだよ。飲み物を入れて飲むんだけどね、本来は」

男(血をいれて飲むくらいにしか使ったことが無いとか、情操教育的に言えない)


少女「♪♪」

男「? 気に入ったの? ああ、手に持てるサイズの“モノ”って初めてなのか」

少女「ぁははは♪」

男「あ・・・笑った? そんなにすきなら、いいよ。それ、君にあげよう」

少女「!」パァァ

男「意味はなんとなくわかるんだね。よかった、それほど苦労しなくてすみそう…って」

少女「♪♪」ゴロゴロ、ポーン ポーン

男「あ。まって、コップは そんな風に乱暴にしたら・・・」

ガチャーン!!

少女「」ビクッ


男「……落とした時とかに、衝撃で割れるから。気をつけて」

少女「」ジー

男「ほら、危ないよ。掃いて捨てなくちゃね」

少女「…?」ジー

男「…どうしたの?」

少女「ぅあ?」ブルブル

男「? 怯えてる? 大丈夫、怒ってないよ。いくらでも創れるから…」

少女「」ギュー

男「っと。あー…そうか。物が壊れるっていうのが解らないのか…」

少女「うあー? うー? うーー」ブルブル


男「このコップはね、壊れたんだよ」

少女「……?」

男「不死身の自分と、俺しか知らないわけだしね。壊れるとか…死ぬとかっていうのは解らないか」

男「うん…この世界のものは、弱いものばかりだから。優しくしなくちゃいけないよ」

少女「……」ソッ… ナデナデ

男「っ、危ない! 優しくしろとは言ったけど、そんな風に 割れた物を撫でたりしたら…!」

ザクッ

少女「!」ズキッ

男「あ…」

少女「……?」ドキ…ドキ…

男「……痛かったね。それが、痛みだよ」

少女「……ぃ、ぁぃ」

男「うん。痛い。それが、『痛み』だよ」


少女「……」ギュウ

男「うん? どうしたの、身体を抱えたりして…」

少女「……」フルフル

男「ああ…… 悲しい、のかな。興味を持ったものが壊れるのは、悲しいし辛いよね」

男「愛でようとして手を触れたものに、傷をつけられることも……残念ながらよくあることだよ」

少女「……」


男「おいで」

少女「」タタタッ

ギュ

男「うん。きっと君も、こういうことをたくさん経験すると思うから」

男「その時は、俺のそばにおいで。悲しい時には俺といるといいよ」

男「俺は、君だから。それに、君も俺だから。他の誰よりも、一番信じられるはずだよ」 

少女「……」ギュー

男「……」ナデナデ


男「……やっぱり、この世界はどこまでいっても 趣味がわるいな」ボソ


男(自分で、自分に。自分しか頼れないことを、納得させなきゃいけない世界か…)

――――――――――――


・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・

男「さて、基本的なコミュニケーションがとれるようになってきたので、外に出てみました」

少女「みましたー」

男「おすわり」

少女「おすわりー」ペタン

男「よしよし」ナデナデ

少女「えへへ♪」


男「……って。さすがに、このしつけかたはまずい。わかってる」

少女「わかってるー」

男「わかってないね、君。ええと…まあ ここは外だね。君も長く暮らしてた場所だよね」

少女「そと!」キョロキョロ

男「そう。まあ、いろいろ歩きながら今日はものを覚えていこうと思って」

男「意外と広いから、そばを離れないでね。ちゃんと呼んだら返事をするように…って」

男「あ。名前…うん。そうだね、そろそろ名前をつけてあげなくちゃな・・・」

少女「そとー!!」

タタタッ

男「って! ちょっとまって! 言ってるそばから一体どこへ…!」

男「って、足はやいね 君!?」ガーン!

・・・・・・・
・・・・

男「ハァ、ハァ……」

男「ああ、くそ。ろくな障害物があるわけでもないのに、隆起した地形のせいで足場が…」タッタッタ

男「ハァ…海岸ダッシュとか、こんな感じかな…」ハァ ハァ・・・

少女「そと♪ そと♪」スタタタッ

男「」イラ

男「…っおい! もういい加減に止まるんだ!!」

少女「」ビクッ!!

男「っと。いや、そんなに驚かなくても…」ハァ・・・


少女「」プルプル

男「・・・怒ってないよ 大丈夫。ほら、だから、ね? もう逃げるんじゃない…」ソー

少女「う…?」クビカシゲー

男(もうちょっと…じっとしてろよ…今度は散歩紐でもつけてやろう・・・)ソロー

少女「!」スタタタタッ

男「ちょっ!? だからなんで逃げるんだねおまえは!?」

スタタタタタタタタッ

男「早っ・・・ あああああもう! 」


男「…ハァ…疲れた…」バッタリ

男「なんなんだろうね、一体… なつっこいように見えたけれど、あんなに警戒心がつよいとは」

男「……警戒心、なのかな?」

男「…なんだろうね、この違和感。あれはきっと警戒じゃないんだな、うん」

男「…では なんだと言うんだろうね」

男「ううむ…」

男「それにしても…つかれ、た…な」

男「ねむ………」

……バタン…


――――――――――――

おかー

うむ、これは可愛いものだ
(元が自分の下半身とか考えたら負けるよね…!)

>>106 107
ただいまー! 
ええと できるとこまでは しばらくテンポよく投下していきます
あまり長く間をあけることもないかな、と… 多分ですがw

↓から投下します


<?>

…ここは、どこだ?

揺れる…
身体が、空中に抜け落ちる

そうか。夢だね、これは
…久しぶりに夢なんて見たな

ろくな夢を見た記憶がないから、夢なんてあまりみたくないんだけれどね

……不思議な場所だな
一体 なんだというんだろうね
俺の脳は 俺に何を見せようというのだろう

深い森
厳しい砂漠
広大すぎる海
高く抜ける青空

それに…


ザワザワ…

街…?
…あの街。気になるな…行ってみよう

ヒュッ…

パッ

……なんだか今の…
いつもの移動と違う"翔び"方だったような…?

まったく。夢なんていい加減だな

…って

ザワザワ…
アハハ…

これはすごいね… 俺の知る世界によく似ているけど…
よく見てみると 見たことの無い文明だ


む?
人が集まっている… なんだろうね?

フワ・・・

あ 飛べた…?
ああ そう これだよ、いつもの飛ぶ感覚は…
それにしても…


フム、ナカナカ ゴウシャナ…
  …カイチクシテ、ゲキジョウニ…
…クニデノ シンライハ…


はは… 人ですらないモノまでいるじゃないか
なんだろう 悪魔の類かね、これは 
角の生えたヒト? 冗談じゃない


まったく
俺の脳内は随分病んでいるのだろうか?
こんな夢を見るだなんて

それとも… 
元の世界にいた“あの雇い主”が… 見せているのかね?

……しかし 妙なリアルさがあるね、これは
身体も 空には浮いているが、まるで実体のようじゃないか?


ザワザワ…
イラッシャイ! オウコクメイブツ、ドラゴンマンジュウダヨ!


文化もかなり進んでいるようだ
建築物のデザインも、聞こえてくる会話も
人々の行き交う姿も、何もかもが…

ああ、なんというか
……幸福に、満ちているようだ……


……残酷だな

今の俺には…
俺の居る本当の世界には ないもので溢れているなんてね

やはり あの世界は
あの、雇い主は…

残酷で 無慈悲だ


アハハハ…
フフ、アハハ


……羨んでいても、仕方がない。他の場所も、みてみよう


ヒュッ

パッ

……また、“翔び方“がおかしいな
今までのような 空を泳ぐような “飛び方”じゃない…?

はじめての経験
まさか 夢の中でこんなにも気持ちいい思いをするとはね?
永く、生きてみるものだね


オーイ!コッチニキテ…ツイテアゲテ
…オレハツカレマシタ…
ゴメン…!


……ああ、でも結局 ここも、か
ここにも 幸せそうな笑顔と空気は 漂っているのか

俺の世界には ないものが、ね


ヒュッ

パッ


シンパイシテクレルノ?…
…オマエハホントウニ…
アハハ…

……っ

どこに、いっても…っ

………そういえば。

聞いたことがある…人が想像できるようなものは、大抵は人が実現可能なことらしいね
…地獄の案内人で… 不死である俺ならば…

これも“実現可能”なのだろうか…?

……創り、たい…な


だけど、これは
本当に こんな世界を作ったとして… 俺は…


俺は… どうやって…


彼女を…
 救いに 導くというのだ?


『あり…が、とう…』


~~っ!?

――――――――――――


<地上>

男「はっ!」パチッ

男「しまった、寝てた!?」ガバッ

男「今度は一体、どれだけの期間を俺は……って」


少女「」スピー… クゥ

男「おお ……居るね」


少女「」クー、クー

男「……よしよし。ちゃんと戻ってきてたんだね?」ナデナデ


少女「んぅー…」クルン

男「ま、丸まりかたが尋常じゃない… 人ってこんなに丸まれるものなのか…」

男「って。人でもないのだったね…」ナデナデ

少女「……」クテン、コロ

男「ああ」ピタ


スッ…

男「……泣いて、いたのか」

フキフキ

男「……心配をかけたのかね。そりゃあそうか。大体このパターン、数百年単位とかで寝てたのだろうし」


男「大丈夫だよ。俺は 死なないし壊れないのだから。ああ、死ぬとかもわからないのだったね」

男「ゆっくり、教えてあげよう。たくさんのものを見せてあげたいね… "君"には」

男「………君は…彼女では ないけど、ね」


男「……ああ、まったく。変な夢を見た。この子がそばにいたせいだったのだろうね、きっと」

男「それにしてもずいぶんとリアルに 思い出してしまった」


~~~~~~~~~~
『あり…が、とう…』
~~~~~~~~~~

男「……」


男「あの時… 彼女が、死を選んだときの… 最後の言葉」

男「清々しすぎて嫌になるほどの、諦念が込められた言葉…」

男「それでも、ただそれが安らぎであると信じきった あの笑顔…」

男「絶望することを、心から期待していたのだと言うのかね? 違うだろう?」


男「……君は どこまでもどこまでも 救いを求めていたはずだ」

男「もう、その救いさえ見えないところに 堕ちていただけだというのに」

男「……君は、嘘で創られてるんだね。よく、わかったよ」ニッコリ

男「…でもまあ、俺の彼女だからね。あんな忌々しい笑わせ方のままにしておけない」

男「救って、あげなくてはね」


少女「うむにゅぅー… んんー」


男「くす…。 いつのまにか、君も少し成長したんだね。彼女の面影が強くなってきた。体格なんて、もはや彼女と変わらないじゃないか?」

男「成長速度が遅いのかな…? 容貌が、まだまだ子供のようだけれど…?」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
男「君はまだ若いね。20歳くらいかな」

女「15よ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


男「そうだった。彼女は元々、子供だった…」

男「なるほど、ね。…年相応の表情なら、彼女もこんな感じだったのかもしれないね」

男「………そう。彼女は、本当は… こんな、愛らしい子供だったはずなんだ」


少女「……」ポロ…

男「…? 夢でも見ているのかい?」

男「……あまり泣かないでくれたまえ。記憶の中の、彼女の笑顔まで… ことさらに泣き顔に見えてしまうじゃないか」


男「…」ナデナデ

ザザーン…


男「……?」ナデナデ

ザザーン…


男「………ん?」ナデナデ

ザザーン…


男「………"ザザーン"?」 クルッ


男「うおっ」ビクッ


ザザーン… ザバーン、ザザーン… バシャーン


男「……う、海…? なんで、一体こんなものが… いつの間に…?」


男「はっ!」クルッ

少女「クー… スピー…」グスッ…ポロポロ


男「お、おお……さすが俺の半身。俺が血で大地を作ったように 君は涙で海を作ったのか…?」

少女「くぅー…」ポロポロ

男「……俺… 一体、何百年くらい寝てたんだろうね…?」ハァ…

・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・

―――――――――――

女の子を泣かせちゃダメじゃないかー!
よし甘やかせ、盛大に甘やかせ

乙~

>>125 ありがとw 

投下タイミングが安定しません、細切れになりそうなので
今回は前後のレス省きますw


・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・

<しばらく後 空中の『屋敷』>

少女「ん…」タジッ

男「……ほら…どう? 食べてみたいだろう?」

少女「やだよぉ、そんなの…」

男「きっとおいしいよ? 大丈夫、慣れれば 苦くないから」

少女「でも… やっぱりちょっとにがいの、知ってるもん…」

男「じゃぁ、コッチ…に、しちゃうよ…? こっちのほうがいいの?」

少女「そんなぁっ… そっちは痛そうだもんっ、どっちも、無理だよぉ…」


男「ええい! 無理じゃない! ピーマン炒めか、赤魚の姿焼き、さあどっち!」ググイッ

少女「ピーマンにがい! お魚さんが痛そうでやだ!」フルフルッ


男「まったく…ちゃんと見えてるんだろう? ちゃんと美味そうに想像できてるはずだよ」

少女「えー? 美味しそうじゃないよぉ…」

男「まったく。ほら、答えて。それとも 俺の質問が読めてないの?」

少女「質問はねー 『今夜の夕飯は、どれがいい?』だよー♪ あたしね お菓子がいい☆」

男「正解、だけどそれは駄目だね。ちゃんとした食事を摂るべきだ。ちゃんと選んで」

少女「えええっ! ひどいよー ちゃんと当たってるのにぃ!」

男「クイズじゃないのでね。これは、勉強。俺の思考イメージを読み取って、好感の持てるほうを選択して。人生は選択の連続だよ」


少女「えー…。ねー男ぉ… ほんとに、だめ?」スリッ…ムギュ

男「子供の癖に、色仕掛けなんて…………」

少女「『子供ならではの きめこまやかな肌質がまた絶妙』? きゃは☆」

男「お願いだから、勝手に思考を読んで言語化しないでくれないかな!?」

少女「男の頭の中見てれば いっぱいいろんなことわかるもんっ♪ お勉強なんて、いらないよーっだ☆」フワッ… ヒューン

男「あ こら。待ちたまえ。どこへ…」

少女「えへへ☆ 『はやくー ワタシをつかまえてーっ』♪」スタッ

男「どこで覚えたそんなもん!?」


少女「え? もちろん 男の頭の中だよー! 5日前の夢の中!」

男「俺 そんな夢見てたっけ!?」

少女「見てたー! ニヤニヤしてたー☆」アハハ ヒョイ…

男「あ、こら! 待…」

少女「まったなっいもーん♪」・・・ヒューン

男「……まったく… 飛び方覚えて、なおさら逃げ足が速くなったな」


男「…はぁ。しかし思考を読ませて、意思疎通を教える事になるとはね…」


男「まあ、元の肉体が同じなんだ…脳の波長がまったく同じだから、思考を読むのに 気配や知覚を察知する能力を応用すれば容易だなんてね」

男「……俺が寝ているあの永い間に、それを自分で見つけ出して…数百年の間、そうして俺の夢を読んで 孤独を耐えすごした」

男「海が出来るほど、俺のために泣きながら。それでも思考を読むのをやめなかった…それゆえの成果」

男「俺ですら、まだ言語のような難解な思考は読めないのにね。末恐ろしいよ、まったく」

男「…まあ、言語習得も知識も 随分と勝手に俺の思考から学んでくれたみたいで助かるけど」

男「……あきらかに 情操教育では失敗しているよな…。なんでああなった…」ガックリ


?「おつかれでございますか、男様」フワ・・・

男「え?」


男「あ… なんだ。 “ひかり”か」

ひかり「はい。 お姿が見えましたので、寄ってみましたがお邪魔でしたか?」フヨフヨ

男「ああ。眩しいから近づかないでくれたまえ。光源は目で見るべきじゃない」

ひかり「ひどいですね。私だって好きで発光してるわけじゃないですよ。誰が創ったんですか、私を」フヨフヨ

男「だってまさか 明かりを作ろうと思ったら擬人化するとおもわなかったのでね」

ひかり「…私、最初はどんなものにされるところだったんですか?」フヨ…

男「言っただろう?」

ひかり「伺ってないですよ?」

男「おかしいな…まあいいか。では改めて…」

男「知りたいかね?」

ひかり「もったいぶらないでください」フワー


男「……どうしてこう女性は、俺がこうやって話すと不機嫌な顔をするのだろう」

ひかり「それで、どういう経緯で私をお創りになられたのです?」チョコン

男「肩に乗るんじゃない、本当に眩しくてかなわないから」

ひかり「では、目をつぶっていて下さいませ。それに早く話してくださいな」クスクス

男「あー…。 闇の世界で、俺自身もそうだけど 周囲にあるものをはっきりと視認できる。その違和感に気づいたのが、君を作ったきっかけ」

ひかり「違和感ですか?」

男「そう。見えるっていうことは、少なからずそれ自体か何かが 視認できる程度に発光してるからだと思ってね」

ひかり「発光していたものというのは?」

男「この世界にあるものは、すべて俺の肉体や能力で作ったものだから…まあ、結局は『気』だったんだけどね」


男「そういう『気』の、発光要素を抽出しようとして最終的に固まったのが君だ。太陽のような無生物にするつもりだったよ 最初は」

ひかり「タイヨウ? ええと、では、男様の気を固めたのが、私なのですか?」

男「いや、割と莫大な量の能力をグググーっと、カプセルに詰め込むように詰めてね。そしたら詰めすぎて、ポーンっ!!と弾けてね」

男「そうしたら、勢い任せに霧散した能力がこの世界中に散らばって… こうして、日中のような“光度”が維持できるようになった」

男「だからむしろ、そっちのが本体だよね。今の小さい君はなんていうか、絞りカスだね」

ひかり「…し、絞りカス…ですか?」

男「うん、そんなに小さく ギュギュギュギュギュっとなっちゃってるし。実際、君は電球程度の光度しかないし」

ひかり「デンキュウ? ああ、まあ 小さいのはそのせいでしたか…17cm弱しかないとか不便なんですよ、いろいろ。しかも絞りカスだからだなんて。ふて寝していいですか?」

男「君が休むと、吸収能力が活性化して 光源あつめちゃうから夜時間までがんばってくれ」


ひかり「……」

男「何か問題あるかね?」

ひかり「……そういえば私、夜は 身体が大きいらしいですね」

男「何をいまさら。夜間は光源を吸収するんだ、吸収素材のビフォアフターのようなもので、吸収時はそれはもう立派でナイスな肉体をお持ちじゃないか」

ひかり「……男様は、何故それを知っているのですか? 最初から自室をいただいたので、私は毎夜そこでちゃんと寝てるのですが」

男「え?」

ひかり「……少女様が、私の…『すりーさいず』っていうんですか? 教えてくれました」

男「…どうしてあの子がそんなこと知ってるんだろうね、きつく叱っておかないとね?」

ひかり「…誰かは存じ上げませんが…夜間の姿は ニア『ミネ・フジコ』らしいですね?」

男「ああ、それは本当に残念だったよね、あと4cmだったのに」ハァ


ひかり「……」ニッコリ

男「はっ 誘導尋問!? まってくれ、これは違うんだ。決してやましい思いでスリーサイズを計ったわけでは…っ!」

ひかり「言いたいことはそれだけですか!?」

男「まだこの世界にはヒト型は3人しかいないんだ、しかも一人は子供! 大人ボディーがあったら、そういうお持ち帰りの仕方をするくらい いまさらかまわないだろ!?」

ひかり「お持ち帰りとか、いまさらってなんですか! 私が夜間姿の際、男様は何してるんですか!?」

男「えっ あの姿のときの記憶ないの!? どうりで日中姿と別人格だと! 話かみ合わないしね!」

ひかり「えっ なんのことです!?」

男「え だからほら。夜の君は、いつも俺のベッ」

ひかり「……『ベ』?」ゴクリ


男「……べ、別人格らしいから 身体の大きいときは別の名前で呼ぶことにしよう」

ひかり「…急接近ッ! 開け瞳孔! 私の拳も光って唸る!」キュインッ!

男「2重の意味の目潰しはやめてっ!!」ガシッ

ひかり「無駄ですっ! 私は光、そして人体は透過性のある素体ですッ! 手の平など!」パシュッ

ザクシュッ!!

男「ぎゃあああああああああああああ!!!??」

ひかり「今夜から、部屋には鍵をかけますからね! 中を見ないでください!」フワッ…ヒューン

男「う、ううう… 見たくても見えない… 一寸先すら物理的に見えないっつの…」ドクドク

・・・・・・・
・・・・・
・・・

―――――――――――

<?>

…ああ、また夢か…
最近、よくこの夢を見るな…

ん…?

気の、せいか 
何か…前よりも、感覚が薄い…?

まあ 夢だから その方が自然といえば自然だけど

さて。今日はどこをみようかな… 
なにか、世界を作る参考になればいいのだけど…

ヒュ…

パッ

ふむ。なかなかこの翔び方も慣れてきたな


それにしてもここは…?

…小さな森だな ああ、動物がいるのか。
野生だろうね、きっと…

そうか、動物も…つくろう…かな

……あれ、おかしい、な…
夢の中なのに… まだ、眠いなんて…

なんだかこれでは本当に…
俺、が… どこか 別の…場所、に 居る、みたいだ…

あ… だめだ 落ち…

―――――――――――――


<空中の館 男の部屋>

男「お」ムムム…ウウン

?「……『お』?」

男「お、お… 落ちるうううううううううううう!!!!!!!」ガバァッ!!!

?「……」

男「ハァ・・・ハァ・・・ ・・・ああ。 …夢でよかった…」フゥ

男「……ん?」クル

?「……はぁい。お目覚め? それにしても派手な寝言ね、男」ギシ…


男「……ひかり」

ひかり(大)「どうかした?」


男「お前は…」プルプル

ひかり(大)「私は?」

男「どうしてわざわざ自分から 俺のベッドに来るんだよ! 昼間の事忘れてないからね?!」

ひかり(大)「あら、仕方ないでしょ? 私の記憶も 日中は霧散する光源の一部。 日中は覚えていられないのよ」

男「それならそうと、早く言ってくれればよかったじゃないか… ヒドイ目にあったんだよ! 小さい時の君に!」

ひかり(大)「知ってるわ。体感すらリアルよ。ねえ、それより私に新しい名前をつけてくれるんでしょ?」

男「え? ああ… 昼間の話?」

ひかり(大)「そう。身体が大きいとき、別人格だから違う名前で呼ぶって言ったじゃない?」スリッ…


男「……『ニア・ミネフジコ』なんてどう?」

ひかり(大)「最低ね」

男「あ、ちょっとデジャブを感じたよ」

ひかり(大)「なんの話?」

男「いや、アチラの話。あー、じゃぁ…『ひるま』ってのはどう?」

ひるま「夜しか私は私として出てこれないのに、『昼間』? 皮肉のつもり?」

男「いや。君は間違いなくこの世界の光。光の集合体で、昼間という現象の正体だからね」

男「それに何かこう、君を抱いていると、この世界から“昼間”を奪って独占している気になれるのがいいんだ。だから君は“昼間”であるべき」スッ…

ギシ…

ひるま「……あなたって、どっか変態よねえ…」

男「いまさら?」クス

ひるま「…そうね。いまさらだったわ。ふふ」


スッ… ギシ、コロン…

ひるま「……寝起きで、いきなり?」

男「いい?」チュ…

ひるま「それこそ、いまさら。断らせる気もないでしょ?」クスクス

男「確かに。それじゃあ、まあ……」


男「いただきます」ニッコリ

ひるま「…おいしくめしあがれ」クスクス

・・・・・・・・
・・・・・
・・・

このあと”最中”でいくか”事後”でいくかで悩みつつ書き換え中
どっちにするか未定 明日までには決めたい
なのでとりあえず微妙なトコで中断

――――――――――――

ひるま「…どうしたの?」

細い腕をしならせながら、首に巻きつけてくる
すこし傾けた顔と覗き込むような瞳を見ないように
その首元に顔を埋めるようにキスをする

男「別に、なにもないよ」

集中しない様子の彼女のために、脇腹のあたりから胸下までを撫でる
手の動きのせいか、あるいは首元に分け入るような俺の頭がこそばゆいのか
笑いを忍ばせつつ身をよじって逃れようとする彼女
その隙を突いて、彼女の脚の間に身体を割り込ませ、彼女の真上を位置取る

顔を上げると、相変わらずの余裕の表情
苦笑を抑えることもできないまま、口元にキスをして、そのまま胸元へ…

ひるま「ねえ 言えばいいのに。最近、寝てるときのあなたの様子は変よ」


男「変?」

予想外のことを言われ、思わず動きを止めて聞き返す
だが鎖骨のあたりを舐めようとしていたので、舌が出ていたらしい
それをからかって笑うので、悔し紛れに
腰骨の下側から足の付け根の内側までを揉み込むようになぞってやった

ひるま「やぅっ」

優位性の逆転を試みる一手目は、どうやら成功
つづけて、その周囲を進んでいくと、少し慌てたように脚を閉じようとする
が、俺の身体を挟んでいるので閉じられない


男「で? …何が変で、何を言えって?」

ひるま「ん…だから。眉をひそめて、そのまま微笑んでいたり、泣きそうになっていたり」

男「それは確かに変だね。夢見があまりよくないもので」


下着の上から、焦らすように撫でるように、優しく刺激する
その度に言葉を詰まらせる気配だけ見せる彼女が可愛らしくて、会話を続けるのも悪くないと思えた

男「それで、なにを言えって?」

ひるま「だから… 悩んでるのでしょう、何かに。ん… あるいは、惑っている…。私に、相談してみる気には…、ならないのかしら、と思って…」

男「…………」


少し、言葉に悩む

悩んでいるのを悟られたくなくて 彼女の胸元を舐めにかかる
なんの脈絡もなく、突然に頂点を舐めると 予想以上に跳ねてくれた

体重を支えるために肘をついている左手で、耳たぶをいじりながら
しばらく行為に集中するようなポーズをとってみせる


男(確かに、最近はあの夢を見るたびに何かモヤモヤする)

男(・・・理想の世界。人も動物も人外も文化も教養も、バランスの整った世界)

男(あの世界を夢に見て、あの世界を創りたく感じるのは仕方がないとしよう)

男(しかし・・・何故、あんな世界を夢に見るようになった? 創りたいと思ってからこそ、夢に見るものなのではないか?)

男(それに。俺があの世界を創ったところで…どうなるっていうんだ)

男(たとえばあんな世界を創れたとして、どうにか彼女を連れてこれたとしても。彼女は…)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「そこにだけは、行きたくないと、思ったの…。そこは、天国でしょう…?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

男(彼女は…そんな世界じゃ、救えない。そんなまやかしを望んでいない)


ひるま「んぅ、ね、もうっ。話、聞いてるのっ? 二度と聞いてあげな、い…わよっ」

呼びかけられて、飛びかけていた意識を目の前に戻す
しばらくの間ぼんやりはしていたようだが
熱を帯び始めた彼女の身体と、下方から聞こえてくる水音をかんがみるに
きちんと愛撫を続けていられたようだ

触り方を変えようと、一度身を起こす
舐めやすいように彼女の腰を持ち上げて 軽く立てた膝と腕を支柱に、キープ
目の前に滴る蜜を、指で軽く掬って舐めてから、直接味わう
晒けだすその体勢が不満なのか、あるいは本能的な抵抗なのか、彼女の腰が逃げる

思わず彼女の顔を見ると、なんとも表現しがたい表情を浮かべていた

怒っているようにも、恥らっているようにも
堪えているようにも、呆れているようにすら見える

とりあえず、状況にふさわしいような… 
蕩けた顔をしていないのは、確かだ


男「動かないでよ、やりづらい」

ひるま「少しは会話をする余裕くらいもってもいいでしょう!?」

男「……悩み、ねえ…。そうだな。今は、ひるまが集中してくれないことに悩んでいるよ」


それだけ言って、続行する
おしゃべりは好きだけれど、人の中に踏み入ってくるような面倒な会話は好きじゃない
少しペースをあげて、無理にでも話を切り抜けたい


ひるま「ぁうっ! やっ、もう…せっかく、心配してあげてるのにっ、んぅ、こんなこと、ばっ…んんっ」

男「ありがとう。少し集中できてきたみたいで、俺の悩みは解決しそう」

ひるま「へ、へんたいっ」


男「はぁ……。なにをいまさら…」

男「…じゃ、ないな。うん」

ひるま「んんっ な、何、よ、や、あぅっ」


男「いや、だって。 いまさら、じゃなくて。『これから』って感じだと気がついた」

ひるま「!?」


男「おいしく食べる客というより、料理人だったね、俺」ゴソゴソ

ひるま「調理しないでっ、や、ちょっ、まってまって 何するつもり!?」

男「……………………『へんたい』?」ニッコリ

ひるま「」

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・

――――――――――――

<まだ薄暗いほどの、早朝  “ひかり”の部屋の前>

ギィ… パタン…

コソコソ…

男「ふぅ…。よし、“ひかり”は部屋に戻したし。鍵は…、まあいいか」

男「…というか、今夜は俺の部屋に鍵をかけておかねば。…報復されそうだし」


男「……そういえば、“ひるま”って、生殖能力もちゃんとあるのか…?」

男「これで繁殖して、生物が増やせたらラッキー…だよね?」

男「産んで増やす、うむ。これぞ生物の営みだ! 生殖能力あるといいな!」

男「今はほら。もう、俺が生きてくために、世界創るしかないよね! どうせなら楽しい世界で生きたいよね!」


男「目指せハーレム、創れ楽園! 誰かの救いはその後で! よし、本当に悩み解決!」

・・・・・・
・・・

くっ、へんたいめ、美味しくいただきおって……
おつー


――――――――――――
<朝 地上>

少女「むぅ」プクー


男「…どうしたんだい? どうも不機嫌だね」

少女「……へんたい」ボソッ

男「ちょっ… だから! 勝手に記憶を読まないでくれないか!?」

少女「ぷーいっ。 あたしには何もしないくせにー!!」

男「子供に手を出さないようにしなくちゃという理性があったからこそ、きっと光源を擬人化させたんだな、うん」ウンウン

少女「あたし、子供なの? あと何百年生きれば、大人なのー?」

男「……いや、なんていうか…。その容姿が問題なのだよ」


少女「絶対 成長なんかもう止まってるよっ!」

男「合法ロリ…いやいや、まずここに法がないからこそ、いつまでも違法性を感じてしまうのか…」ウーム

少女「あたしも大人の階段のぼりたいな☆」

男「そのセリフ回しは 確かに子供のものではないのだけれどね?」

少女「だめ・・・?」ウルルン

男「駄目」

少女「ぶーーーー!」プンプン!

男「あはは。ほら、機嫌を直して。今日からは動物を作ろうと思うから」

少女「どうぶつっ!?」ピクッ


男「そう。今のこの世界でも、海や大地からは、自然に生物が増えているだろ?」

男「まあ、俺の血液や 君の涙のなかの細胞などの様々な体組織…それらがそれぞれに 生物として生きるようになったのだとおもうのだけれど」

少女「うん きっとそうだねー☆」

男「そういう風に、体液や体細胞を採取して小さな生き物…そうだな、虫とかから作っていこうと思う。できるかどうかわからないけれどね」

少女「それって、つまり??」クビカシゲー

男「うん、つまり……」


男「涙、血液のほか 汗、唾、尿など なんでもいいから出してみろ」キリリ


少女「……男は本格的に、へんたいさんだねっ☆」

男「何故!?」


少女「大丈夫だよっ! ハジメテが、そーゆープレイなのも悪くないよ?」ヌギヌギ

男「……はっ! いや、違う! まって、ぱんつ履いて!?」

少女「えー? どっちなのっ 出すの、出さないの!?」

男「出す! でも向こうで… 一人でやってくれ!!」

少女「ヒトリで、スルの…?// ぁ、でも…それは//」

男「待って。明らかになんか誤解があるけど、今から俺たちは動物を作るんだからね?」

少女「わかってるよ♪ ちゃんと考えてること読んでるから、やり方もわかるよー☆」

男「~~~~っ俺で遊ぶのやめてくれないかな!?」

少女「遊ぶ相手が居ないんだもーん!」

男「…はぁ。やっぱり、子供じゃないか…」


男「情報ばかり脳に溜めていても、精神的に発達が未熟。体験というのが足りないんだね」

少女「ううっ」

男「仕方ないな。いいよ、少し相手をしてあげよう」

少女「え?」

男「君は向こうで、俺はこっちで。1年でどれだけ動物を作れるか、勝負しようか」

少女「しょうぶ! やる! 負けないよー☆」

男「さて、それはどうだろうね?」クス…

・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


<1年後 同 地上>

チチチッ
ピィ…ピィピィ!
キュキュッ! シュルルルル… 

男「完敗でした」

少女「どやー♪」

男「…しかし、すごいな…。まさか、理論を俺から読んだだけでここまで生物を生み出すとは」

ピョンピョン… 
 キィッ
グアーッ、グアーッ

少女「簡単だよ☆ 鳥さんにー、うさぎさんっ、おさるさんに、リスさん!」

チチッ… スタタタッ

少女「あはは☆ やーんっ♪ リスさん、やーめてっ☆」


男「はは。すっかり動物たちと馴染んでいるんだね」

少女「うんっ☆ みんな、とってもかわいい!」

男「俺は、いくら試してみてもまともな生物は作り出せなかったからな。本当に完敗だ」

少女「え? 1年で、創ったどうぶつはいないの?」

男「いや、創るには創っていたよ。生物を作るための実験をかねて、植物の進化の方向性から攻めていた」

少女「お花を創ってたの?」

男「…見る?」

少女「見たいっ♪」

男「はい、どうぞ」 

 つ【食虫植物・ウツボカズラ…的な何か】
つ【鞭毛虫・ミドリムシ…的な何か】
つ【細胞性粘菌・タマホコリカビ…的な何か】


少女「………男ー? これ、なにー?」

男「俺の創った、原生生物をはじめとする、『生物』」

少女「動物つくるっていわなかった?」

男「あー… ミドリムシは駄目かな? 動くよ」

少女「さすがにフォローできないよっ!」


男「まあ、一応 他にも大量に作ることのできた『生物』はいるんだけどね」

少女「ほんとっ!? 何かな☆ 大量ってゆーと、ねずみとか? 増えるもんね♪」

男「いや、アレ」

 ムゾゾゾゾ… グニュニュン… ムゾゾゾゾ…

少女「うぇっ?! な、なに、なんか動いてるよっ」


男「分類としてはやっぱり原生生物。一応『足を持って運動する』から、動物だね」

少女「…えっと、これ… あれ? げーむに出てくるっていう、『スライム』?」

男「そんな情報まで持っているのか… 夢でゲームでもしていたのかな、俺」ガックリ

少女「うわー… ぷにゅぷにゅ…そしてグニョグニョ…」ツンツン

グチョッ ベシャッ

少女「ひゃ、ちぎれて落ちたっ! 死んじゃう!?」


男「はは。心配はいらない。それはちぎれたんじゃない、そういう生き物だよ」

少女「…え? 身体のちぎれる動物がいるの?」

男「あぁ。まあトカゲの尻尾とかはちぎれるけど、そういう意味じゃなくてね」

少女「?」


男「それは、アメーバの群れだ。一体あたりは、1mm以下のサイズでしかない」

 ムゾゾゾ… ニュロロロ…

少女「……てのひらに乗せられるサイズだよ?」

男「大量に創ってみたといったろう? 向こうにもまだあるんだけど、だいたい、30億匹以上はいるかな」

少女「……」ジー

男「ん? どうかしたかい?」

少女「……10回分☆」

男「な、なにが?」

少女「アメーバじゃなくても、同じようなものだよね? これの、元♪」

男「」


少女「…『これは使える。形状も便利だけど、元が何かを内緒にしておけばいろいろ精神的に楽しめる』…って思っちゃったかぁ…☆」

男「お願いだからやめて!? 過去を読まないで!? いろいろ反省もしてるから!!」

少女「…男?」

男「な、なにかな」


少女「へんたい…だね☆ さすがにひるまに同情するよ?」

男「ごめんなさいっ!!!!」

・・・・・・・・
・・・・・
・・・


――――――――――――――
<夜 空中の『洋館』>

ペロペロ… ペロ、
ひるま「ん…。 ふふ。それで… ん、勝負は、負けたまま終わり?」クスクス

男「そうだね。勝てっこないさ」ナデナデ

ペロ… ペロ、ベロリ
ひるま「ぇいぶつ… ん、生物を作るのが、そんなに難しいなんてね」

男「いろいろな手法を考えてみたんだけれど、どうにも机上の空論に終わっているよ」

ひるま「少女は、容易につくっていたけれどね? ん…むぐ」
グチュ、ジュル、ジュル、

男「それが謎なんだよね。何度やっても、生物としての…ああ、なんていうのかな」

男「『意思』? …『魂』のようなものが創れない。植物や無機物ならば創れるんだけれど」

ひるま「ん… ひりふほーろーおひゃひぇゆ…」ムググ

男「何いってるか、わからないけど…続ける?」クス


ひるま「…ん。話しながら舐めるのとか、やっぱり無理ね」クスクス

男「そんなこと、しなくていいのだよ?」

ひるま「久しぶりに実体で男と会うのだもの。少し、サービスしてあげたかったの」

男「なかなかに嬉しい気遣いではあるけどね。…おいで」

ギシ… ギュ

ひるま「ふふ。まさか、膝上に抱かれるなんて。可愛らしいことをするのね」

男「話をするなら、このほうがいい。 それで、何を言っていたの?」


ひるま「ああ… ええと。創ったものに、自立行動をさせることができない、ってことね?」

男「そのとおりだよ。一体、何故なのだろうね? あの子は頑なに、生物の創り方を教えてくれないんだ」ハァ


ひるま「ふふ。それはきっと、男が答えを知ったらガッカリするからよ」チュ…

男「ん… がっかり?」

ひるま「あの子はあの子なりに、気を遣って教えないのだわ」クスクス

男「……ひるまは知っているのか? 生物の創り方を」

ひるま「知っているわ。毎日、見ていたもの」

男「見ていた… ああ。光源として、大気の中に融けている間の話?」

ひるま「そう。私はこの世界中、光の届く場所で起きる出来事のすべてを見ているわ」

男「…おしえてくれないか? どうやってあの子が生物を作るのか」

ひるま「いいわ。答えは、卵をつかって作るのよ」

男「…卵?」


ひるま「そう。卵子を使って、直接胎内で創生したのよ、あの子」

男「まさか。本当に産んだと?」

ひるま「その通り…だから正確に言えば、創ったのは12匹だけ。あとは繁殖の結果よ」

男「繁殖…そんなにうまく、つがいで産まれるものだろうか」

ひるま「いいえ。あの子は1種類の動物を、胎内にいる内に、つがいに分けたの」

男「な・・・っ!」

ひるま「細胞が分裂して増殖するタイミング。そこで『能力』をつかい細胞を分けて、2匹のつがいとして産んでいるわ」

男「そんな。あの子はそれほどの知識をもっているというのか!?」

ひるま「いいえ。あれは、本能的な行動よ。だからわかっていないはず。自分がどれだけのことをしていたのか」


男「そんなことが、ありえるのか。…いや、まずそこまで器用に気を操れるのか…?」

ひるま「本能的な行動だといったでしょう? 操ったのではないの。ただ、守ったのよ。『自分の仔』を」

男「…守った? どのような手法で?」

ひるま「あなたを納得させるように言うならば、『仔を生物として生かしつづけるための進化』・・・というところかしら?」クスクス

男「・・・・・・君らしく言うならば?」

ひるま「母性本能。ただ、それだけ。それに包まれて産まれたものが、あの動物たちよ」

男「……なるほど」

ひるま「あら。納得できたのかしら?」

男「ああ。まったく、女性ほど謎な生物を見たことがないからね」

男「結論も謎であることに納得してしまうよ。俺には動物が創れない理由は、きっとその謎にあるんだ」ハァ


ひるま「あの子、どうやって産んだのかわからなくて、あなたに教えられないことを悩んでいたわ」クスクス

男「悩まずに、相談してくれたらよいのに」

ひるま「少し、大人ぶりたいのよ。あなたの役に立ちたくて必死なの、あの子。あれで、いろいろ努力もしているのよ?」

男「…はは。恐ろしいね、君には本当にプライバシーってものが成立しないのか」

ひるま「ふふ。全てのものを見届けるというのは、とても楽しいわよ」

男「まあ、生物の進化というのはなかなかに見ごたえがあるとは思うけれどね」

ひるま「そうじゃなくて…。気づかない? 私、あなたのしていたことも見ていたわ」

男「」


ひるま「アメーバ、使わないの?」クスクス

男「……やめておこう。あの群れは解散させる。何かしら進化するかもしれないし」ハァ

ひるま「残念… 男に食べさせようと思っていたのに」

男「やめてくれ。想像するだけで5年くらい食事したくない気分だ」

ひるま「そういうと思った」クスクス

男「まあでも、アメーバにする前のものでよければ、あげるよ?」クスクス

チュ・・・ サワッ

ひるま「あ。そうだわ、言わなければならないことがあるの」

男「え。何? このタイミングで?」

ひるま「子供が出来たわ」

男「え゛」


ひるま「……?」

男「いや。すまない、もちろん責任は…うん、つまりだね、えーと」シドロモドロ

ひるま「? あなたにとって、生物が生まれるのは喜ばしいことじゃないの?」

男「はっ。そうだった。 セリフのインパクトに、これまでと状況が変化していることを忘れていた!」

ひるま「男の子と、女の子よ。双子だったわ」

男「もう産まれてるの!?」

ひるま「あなた、自分が1年間留守だったことを忘れているの?」

男「おお…いや、何かこう。反応に対してとても違和感が」

ひるま「おかしな人」クスクス


ひるま「ねぇ…もっと、つくりたくない?」

ギシ… ドサ


男「……はは。まさか本当に、産んで増やすことになるとはね。いいのかい?」

ひるま「ふふ。私だって、あの子とおなじ。あなたの役に立ちたいのよ?」

男「女性とは本当に、謎な生き物だ」クス

ひるま「ん… そうね。私も、どうしてこんなにあなたを求めるのか、少し不思議に思うわ・・・」

・・・・・・・・
・・・・・
・・・

中断します
アメーバのくだりで、自分が本当にヘンタイ発想してるのがショックだったんだorz

>>154 乙ありー! どんなヘンタイだったかはご想像にお任せしますww

保守っとこ

>>177 保守thxー!

変な時間ですが、↓から投下していきます



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・・・・・・

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・・・・・・・

<百年後 夜 男の部屋>

男「少女の力でたくさんの生物を増やすことが出来たよ。人も動物達も、自然繁殖によってその数を増やしてる…感謝するよ」ニッコリ

少女「男も、たくさんの文化や物を創ってくれたから、あたしも楽しいよっ☆」

男「よしよし」ナデナデ

少女「えへへ☆」


ひるま「あら? …私には何か言葉はないのかしら。たくさん産んだのよ?」

少女「…ひるまとエッチして生まれる子って、ヒトじゃないもん…」

男「ちょ、少女。いろいろな方面で言葉を濁してくれないかな!?」

ひるま「そうね。男に直接の精気をもらって生まれた子たちは、ヒトじゃない。やはり、男によって直接に創り出された…私と同じような感じね」

男「精気とかいうな!」

ひるま「精子?」

男「そのまんま言っちゃう!?」

ひるま「……ああ、なにかこう、もっと濁したような卑猥な表現がお好み?」

男「冗談にしてもキツイよ…」


ひるま「でもまさか、精子を直接アメーバにしたものが、あんなおかしなものになるなんてね」

男「…まあ、形状は元々似てるからね…アメーバと、スライムって…」

リリス「リリスねえ、スライムちゃん大好きだよ! 食べてもおいしいし!」

男「ゲホッ、ゴホッ」ブハッ

ひるま「あら。元々、食べさせるつもりだったのに何を慌てているのかしら?」クスクス

男「あ、えーと。 リリス、あれを食べるのはやめておらえるかな…」ガックリ

リリス「あれ食べると、元気になれる気がするよ?」

ひるま「あら。 そうなの… 今度私も試してみようかしら?」

リリス「地上で、今度 スライム料理のお店ができるらしいよー☆ 一緒に行こうよ♪」

ひるま「……まあ。 なんておおっぴらな… アレの正体を知ったらパニックね、男」


男「うあああああああ!! どうして俺がこんな恥辱を味わわなければならないんだ!! 大後悔だよ!!」

リリス「だいじょーぶだよ☆ 創らなければ、そのうちに食べ尽くしちゃうって☆」

ひるま「……そのうち、希少価値がでたりして 愛玩されたりしかねないわね」

男「……なにもかもが嫌だよ… へんなもの創らずに、素直にひるまに出しておけばよかった…」

ひるま「あら。まだ 子供の数が足りないかしら」
男「まあ…ここでの生活も、賑やかなほうが楽しそうじゃないか。役割を与えれば生活も便利だしね」

ひるま「ふふ。 でも、あの子達はあなたに似ているわ。この空中の建物の中で、すこし物足りなそうにしているもの…落ち着きってものが、ないみたい」

男「そこは言い聞かせるしかないね。あの子たちは、俺や少女のような不老不死でもないのに、明らかに長寿だ。あれでは生命の循環を壊しかねないし、地上には降ろせないのだから」


ひるま「少女を創りだした時のように、あなた一人の力で生み出さない限り…私のような半端な生き物になってしまうのかもしれないわね」

男「半端な生き物?」

ひるま「ヒトでも動物でも、ましてや創生者でもないってことよ」

男「君は、自分のことをそんな風におもっていたのかね?」

ひるま「大丈夫、私は私よ。この世界において重要な位置を占めていることは自覚しているわ」

男「……ひるま」

ひるま「ふふ。なにかしら、心配をしてくれているの? でも、せっかくあなたの精気を用いても、私という存在が介入することによって、半端なものしか作り出せないのは事実よ」

男「……」


少女「う~~。ちょっと~!! あたしを無視しないでよ~っ」

男「はっ」

ひるま「あら。この世界を創る上で、少女は間違いなく必要な創生者だもの。無視なんてしていないわ」

少女「ううう…でも、いまだに少女扱い! ひるまはちゃんと男に名前もらったのに!」

男「あ、そういえば忘れていたね・・・すっかり、スッポリと」

少女「ひ、ひどいよぉ」

ひるま「ふふ。男、いいじゃない。この機会に、名をつけてあげたら?」

男「……そう、だね。じゃぁ…」

少女「なになにっ☆ どんな名前つけてくれるのかなっ♪」ワクワク

男「……『リリス』っていうのはどうだい?」


少女「リス? ええ~やだよっ! そりゃぁリスさんとは仲良しだけど~」

ひるま「そうね。ちょっと紛らわしいわね、動物の名は」

男「リスじゃなくて、リリス。神話で、ヒトを産み出したとされる女性の名だよ。少女にぴったりじゃないかな」

少女「そうなの? …りりす、かぁ… うんっ☆」

男「気に入ってくれたかい?」

リリス「あたしは今から、リリス! えへへ、ありがとー男っ☆」

男「どういたしまして」ニッコリ

ひるま「神話、ね。 確か、あなたの持ち込んだ文化の中にあったものね?」

リリス「リリスもきいたことあるよっ! あだむといぶのお話とか、星座っていうキラキラのお話とか!」

男「…あれ? 一人称をかえた?」

リリス「リリスの名前、他のヒトにもちゃんと覚えてほしいし♪ それに可愛いから、こうするー☆」 

ひるま「あざといわね」

男(思っても言わないでくれ)


男「…まあ、確かに可愛いけれど…、それをアピールされても困るから、ほどほどにね」

リリス「ええっ!? 誘惑されてよぉ、男ぉ~☆」

ひるま「…そうね、困ったわね」

男「うんうん、実に困ったことだね。というわけで俺にちょっかいを掛けようとするのは…」

ひるま「男が、リリスを抱かないつもりなら、困ったことになるわ」キパッ

男「え」

少女「ひるまっ☆ うんうん、困るよ~♪ だから…ね…☆」

男「まってくれ、どうしてそうなる?!」

ひるま「私は、かなり多くの男の能力を詰め込んで創られているのに…男との間に生んだ子は、ああいう半端なヒトモドキになるのよ?」

男「うん、そうだね! それでどうしてそんな話になるのかな!?」

ひるま「あら。つまり、少女の相手を、するヒトがいないってことじゃない」

男「え」


ひるま「少女と男はほぼ同じなのよ? …その少女が、私の『子』を相手に身篭ったりしたら・・・さらに粗悪なものが生まれてしまうのは明白。だから、させてあげられないわ」

男「…なるほどね」

リリス「えええっ! じゃあリリス、一生誰ともえっちできないのっ!?」

男「俺やリリスと同等の存在を創るか、あるいはひるまと同じくらい高密度の存在を創らなければ難しいかもね」

リリス「あ☆ そーいえば、ヒトがいるじゃんっ♪」

男「ヒトって、自分で産んだ子だよね!? 倫理的に問題かなっ!」

リリス「リリス、えっちできるなら、気にしないよっ☆」ニパーv

男「もう、言葉にならないよ…? 何故そこまでして…」ハァ

リリス「…なんかね。最近…すごーく、したいの。もう我慢できないんだよ…?」ションボリ

ひるま「あら。なかなか魅惑的なセリフね」クス

男「ま、まあ…リリスの性欲の高さは、間違いなく俺に起因しているから責任を感じないでもないけれど」


ひるま「…そうね。そう思うなら、一度くらい相手をしてあげたらどうかしら?」

男「ハイ!?」

ひるま「もうすぐ朝だもの。私も部屋に帰るし、このまま安心して営んで頂戴」

男「ひ、ひるま。君は何てことを言うんだね!?」

ひるま「あら。あなたとリリスの子なら、同等の存在が生まれるかもしれないわよ?」

男「そ、そりゃそうだけど!」

ひるま「もう私、光に霧散しそうだからいくわ。しっかりと励んであげてね」ヒラヒラ

男「ちょ」

スタスタ・・・ パタン

リリス「………お・と・こっ♪」ニコッ

男(………ああああああ……)


リリス「男ぉ♪」スリスリ

男「ほ…本当に、困ったことになった…っ!?」

リリス「でも~、リリスは~、男としかできないんだよねっ☆ 仕方ないよっ♪」

男「……」

男「………」

リリス「どしたの~??」

男「……いや。そうだとしても、やはり無理だね」フイッ

リリス「うー… そんなに、リリスは魅力ない…? どうしても子供にしか見てくれないの?」

男「…………」ジ-

リリス「……?」

男(まあ…容姿が子供っぽい…というのは、誤魔化すための言い訳なので問題はないのだけれどね)


リリス「……」ジッ

男(…リリス、か。元が自分の下半身だということを除けば、その容姿は彼女の…“女”のものなわけだし。正直、魅力的であることには違いは無い。…だけれど)

リリス「おとこ……」ギュ

男(俺はリリスを抱いたとして…その間、彼女を一度も思わずにいられるのだろうか?)

リリス「いい、よね」モゾ・・・

男(この子は彼女じゃない。わかってる、嫌と言うほどにね。…でも、自分ではそうだと言い切れたとしても…)

リリス「おとこ…」ゴソゴソ

男(自分ではわかっていても。やはり、彼女の代替品にしていると…)

男(リリスにひどいことをしていると思われてしまうのではないか…そんな恐怖が抜けきらない)


男(やはり、無理だ)ハァ


リリス「えへへ☆ いただきまーす☆」

…パックン・・・ガブッ

男「~~~あwせdrッ!?!?」

リリス「んー」モニュー

男「あ゛あ゛あ゛!?」グイッ

リリス「ぷはっ…。う? どうしたの?」キョトン

男「~~~~~っ」プルプル…ガクガク…

リリス「お、おとこ?」

男「い」

リリス「い…?」

男「痛ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!」

リリス「ふえっ!?」ビクッ


男「ふぇ、じゃないだろう!? 人が考え事してる隙に、何を咬みちぎろうとしてたのかね!?」

リリス「ひ、ひるまがしてたことをしたんだよ?」

男「噛まないで!? 本気で痛いから! 普通なら4日は立ち直れないレベルだったから!」

リリス「違うの? ひるまは食べてたよね?」

男「あれは舐めてたの! 吸ってたの! 刺激してたの!」

リリス「そっかぁ☆」ニパァ

男「はっ 何を俺は解説して…」

リリス「はむっ☆」 モニュモニュモニュ

男「って! まったまった! やっぱりよく考えた結果、駄目だって事になったんだよ!」

リリス「ひもひよふはい? ほーはは?(きもちよくない? こうかな?)」


ペロッ、チュゥ・・・モゴモゴ・・・

男(…ッ、あ、やばいな)

リリス「むぅ?」 …ベロ、ペロペロ・・・

男(これ以上はさせられない。思った以上に反応してきてしまって…)グイ

リリス「ぷは、あははは☆ これ、おもしろーいっ!」ツンツン

男「面白くありません。しまいます」ゴソ…

リリス「だ・め・☆」ギュ… 

男「ちょっと…。だから、本当にそういう気分にはなれなくてだね…」ハァ

リリス「えー? おっきくなったよー?」

男「…生理現象みたいなものだよ」ゴソゴソ


リリス「ね、男♪」

男「よっと。ん、何かな?」ゴソゴソ

リリス「……へんな顔、してる。 ほんとは、したいよね?」

男「…そんなことはないよ?」

リリス「もしかして、忘れちゃった?」

男「何をだね?」

リリス「おとこの考えてることなら…リリス、わかるんだよ?」

男「っ!」

リリス「…大丈夫だよ。リリスのことを、そのオンナとかいうカノジョじゃないって 本気で思ってくれてるのわかるよ?」…ギュゥ

男「………ああ、くそ。迂闊だったな、読まれていたとは…」


リリス「我慢して、つらくなってるよね? リリスが、そのカノジョに似てるから、いっぱい我慢させてるんだよね?」

男「君は…そんなことまで読むのか?」

リリス「誰もそんなふーに…代わりにされてるとか、思わないよ? 我慢しなくていいんだよ?」

男「リリス……」

リリス「リリス…すごく、男のこと大好きだよ? 」

男「リリス…」

リリス「だから…、ううん。でも…」

男「……っ。そうだとしても、俺は…」


リリス「でも、まあとりあえず今の一番は目先のエッチかなっ☆」ケロッ

男「え」

リリス「ここまできたんだし、もう気にする理由もなくなったし、オッケーだからそろそろ始めようよっ☆」

男「シリアス台無しだよね!? 何を言っているのかな!」

リリス「よーっし、やり方もわかったし、がんばるぞっ☆」ガシッ、ゴソゴソ

男「いやいやいや、しまったものを取り出そうとするんじゃない!」

リリス「しない理由が、もうないも~ん☆」

男「~~~っああ、もう! わかった、わかったから! するから!」

リリス「ほんとっ!?やったぁ☆」モゾモゾ…アーン

男「待った! わかったから、舐めようとしないでくれたまえ!?」


リリス「え~☆ コレ、きらい? もう噛まないよー?」

男「経産婦とはいえ、初めてなんだよね!? ってそんなのは俺も初めてだけど! どうしたらいいのか2,3日考えさせて!」

リリス「ううんっ!もういつでもOK、ばっちり万端っ♪ 触れて濡れて××をかけてっ☆」

男「~~~過去の記憶から変な歌詞を引用するのはやめようねっ! なんかもうヤケクソだよ!? いいのかね!? 恨むなら自分の見た目を恨みたまえよ!?」

リリス「きゃぁん☆ 男の好みどまんなかの見た目でよかったよっ♪ いいからはやくか・け・てっ☆」

男「POM!」バシュッ!!!

リリス「きゃあっ!?!?」ビクッ
シュワワワ…

リリス「…ふ、ふぇ?」シュワシュワシュワ…


男「…よかった。成功したみたいだね」

リリス「な、なんで、見た目かえちゃうのぉ? 好みだったんだよね?」

男「さすがにあの見た目で、今のはっちゃけっぷりはキツいからかな?」

リリス「…リリス、いまどんな風になってるの?」

男「あー・・・。超絶美少女だよ。もうね、人形でも造形が不可能なくらいに完璧なラインだね。フェチならまばたき惜しさに目をくりぬきたくなるレベルだ」

リリス「え☆ ほんとっ?」キャルン♪

男「おお、目がくりっくりしてる。これは可愛いね。何故こんなにも至高の一品に出来たんだろうか」

リリス「……お、男? なんかビミョーに抑揚がきえてるよ? どうかしたの?」

男(うーむ…本当にまばたきも惜しいな。好きな2次元のキャラクターを目の前に持ち出せたとか本気で夢だとしか思えないね)ジー


リリス「…なるほどっ☆」

男「はっ!?」ビクッ

リリス「えへへー… 天才双子美少女と、手乗りサイズのゲームの子をモデルに、とか…男ってほんとはロリコンなんだね☆」

男「やめてやめてやめてやめて!!!?」

リリス「とびっきりタフな妄想だね☆ いっぱい我慢してきたからだね♪ わかるよ☆ ダイジョブ、あんしんしたまえー!」

男「な、なにがだね!?」

リリス「知りたいかね?」フフン

男「とりあえず、真似はしないでね?!」


リリス「」チョイチョイ

男「……?」ビクビク 

リリス「…男のキモチイイの、ずっと読みながらできるよ…最高にしてあげる…☆」コソ

男「」カキン

リリス「隠しても無駄だよぉ~☆ 全性感帯はリリスが包囲したぁっ☆」

男「…しょ…っ」

リリス「んー…っ♪」サワ… モゾ、モニュ

男「処女な幼女に犯される! ごめん、ちょっとほんと勘弁してほしいんだ!! それはニッチすぎるよね!?」

リリス「じゃぁねえ、まずはぁ男の準備を手伝ってあげる~♪」モゾモゾ~

男「…って、ちょ、いきなり触るのは無………」


男「…ひっ!?」

リリス「~♪」

男「は、何これ、ちょ! ~~っ、リリス、俺に何かした!?」

リリス「んー…よく、わかんない! でもそうみたい♪」モニョニョニョ

男「どういうこと!? …う、うわっ、へ!? お、俺のが…!」

リリス「ひるまが教えてくれたの☆」

男「ひるま!? ひるまがなんと言ったんだ!?」

リリス「えっと…むずかしいから、よくわかんないけど…」ムー?


~~~~~~~~~~~~~
<回想 4日ほど前の夜>

少女「あれぇ。お猿さん、ハンショク中?」

猿つがい「「きっきゃ!きっきゃきっきゃ!」」

少女「大変そうだね! リリスが手伝ってあげる!」ニコッ

モゾモゾ…
キッキャ!? キキキキキッ! キャッキィ!?!

ひるま「……あら、少女じゃない。なにをしているの? 猿の交尾の邪魔をしたらだめよ?」

少女「こうしてあげるとね、みんな上手に赤ちゃんが出来るんだよー☆」

ひるま「……手を差し入れて、撫でているだけのようだけれど…あら?」

キキャキキキ! キキキィッ! キャッキャー!キャキャキャ!! 

ひるま「……猿って、『あそこまで立派なモノ』を持つ動物だったかしら…?」


少女「お手伝いしたからね!」エヘン!

ひるま「…あなたがしたことなの……? ああ、そう。 そういうことね」フフ

リリス「なに~?」キョトンッ

ひるま「あなた。無意識とはいえ、染色体や生殖器の操作や…より繁殖にすぐれた固体を求めて動物を創りだすうちに…」

少女「なにー?」

ひるま「性行動における必要な反応…おそらくは排卵や射精すらをも、自由に促す事が出来るようになったのね?」

少女「??」

~~~~~~~~~~~~~~~~


リリス「…だって☆」

男「なっ…。それで、あんな風にひるまはリリスをけしかけたのか…!」

リリス「なが~いおしゃべりは もうお・わ・り♪ ほらほら、いっくよ~☆」パクンッ

男「うぁ、っつ、え!? ~~~~~っ!!」ゾクゾクゾクゾク

リリス「…いっぱいだしてね☆」ニコッ


男「――――!!!」


・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・

―――――――――――――――――――――――


<数日後 昼>

ひかり「これはこれは男様…。……ご健勝でいらっしゃられますか?」フワ…

男「君には俺がどう見えるかね」ゲッソリ

リリス「えへへ☆ ちょ~っと、がんばってもらいすぎちゃった☆」

ひかり「いけませんよ、リリスお嬢様。男様は多忙なお方、その邪魔になるようですと…その、慎んでいただかないと」メッ

リリス(…自分も夜中にはひるまになって、男とシてるの知らないのかぁー)

男「……なんだかいろいろと頭が痛い。 俺は部屋で寝ているよ。 リリスは…」

リリス「リリス、元気いっぱいだよっ! もっともっと、動物さん作れるようにがんばってくる☆」

男「そ、そうか。 あー…」


リリス「どうしたの、男っ? リリスが元気だと嬉しくない??」

男「リリス」

リリス「うん?」

男「しばらくの間、禁欲してくれ」キリッ

ひかり「男様の口から出たとは思えない言葉ですね。もう一度お聞きしてもよろしいでしょうか?」フヨフヨ

男「禁欲しよう」キリッ

リリス「な、なんでえええ!?」

男「もたない! 無理! リリスとするのは10回分以上の負担があるからだね!」

ひかり「まぁ。それほどに濃密な夜をお過ごしでしたか…仲のよいことは素晴らしいですね。ですが、これだけ日の高い時間でございます。お二方とも、その辺りにしてお慎みくださいませ」

リリス「だ、だって 男があんなふうに言うんだよぉっ!?」

ひかり「お・つ・つ・し・み・く・だ・さ・い・ま・せ!」ニッコリ 

リリス「ひゃぅっ!」ビクッ

男「あー…。ほら、眼球ダイブされるまえに 諦て、遊びにいくといいよ、リリス」

リリス「目は嫌ーー!! ひかりは怖いからきらいだよぉぉっ!」フワッ、ヒュー―――ン!!

・・・・・・・・・


男「…はぁ。助かったよ、ひかり」

ひかり「いえ、男様の御為ですから」ニッコリ

男(どうして、ひるまの肉体で ひかりの性格にならなかったのか…悔やまれる)

ひかり「??」

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・


――――――――――――――――――――


<?>

・・・また、この夢か・・・

アハハ…

相変わらず、この世界は豊かで幸福に満ちているね

そして、段々と…
この夢の世界と 俺の居る世界が似てきたのがわかるよ
いや、意識的に、忠実に模倣しているといってもいいな

はは…
俺の知る世界は、地獄と それまでに居た…彼女の居る世界だけだというのに

ここはまるで、天国だ

見たことも無いけれど…
想像していた天国とは違うけれど…

きっと 本当の天国っていうのはこういうところなんだと思える


ようやく、わかってきたよ
俺は、天国を創ろうとしている

元・地獄の番人が、天国を創るだなんて笑えるね

……この世界にあるのは
…俺の世界に創っているのは…

安穏とした幸福に飲まれることもなく、適度な刺激を受け、活性化する魂
人々が、それぞれの魂を満たすように、絶望を受け入れて乗り越えていく、輪廻

幸福と、期待と、夢に満ち溢れていながら
不幸も絶望も そのすべてを受け入れて…
それぞれの持つ本当の価値を、人々に与え続ける世界


人だけじゃなく、木々も動物も、すべての自然に帰依するものが
何者かの恩恵をひたすらに浴びている

AGAPE…神の、無償の愛…とでも言うつもりなのかね?
気色悪い。余計なおせっかいもいいところじゃないか

そんなものに、満たされた世界なんて…

………こんな世界なんて…

本当は、くそくらえだ


――――――――――――――――――


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・

<夜 男の寝室>

男「…くそ、くらえ・・・」ムニャムニャ…

ゴソ

男「ん…う、あ…。 なんだ…?」ボー

ゴソゴソ

男「んー・・・・?」ゴシゴシ


モゾモゾ…

男「…?」バサ

リリス「!」ビクッ

男「………そ、そこで何をしているんだね、リリス」

リリス「…え、えへへ?」

男「なんと大胆な夜這い。もはやこれは夜這いではなく奇襲だよ?」

リリス「だ、だって… どうしても、ほしくて…」

男「禁欲しようっていったの、昼の話だよね?」

リリス「なんか…その、つかれちゃって…」

男「疲れてヤリたくなるとか、なんという男らしい本能だろうね」ハァ


リリス「男・・・」モゾ…

男「待ちたまえ、いきなり人の上に乗ろうとしてくるんじゃ………え?」

リリス「……」クッタリ

男「…リリス?」

リリス「男。おねがい、ちょーだい…?」

男「なんで、そんな… 弱っているんだい?」

リリス「えへへ…ちょっと頑張りすぎたら、なんか すごく疲れちゃって…」

男「それにしたって…… ちょっと待ってて」ゴソ

スタタ・・・

カシュッ、 ボッ!

リリス「ひゃ… いきなり 明かりをつけたらまぶしいよぉ・・・」

男「いいから、ちょっと顔をよく見せて」


スタタッ

男「な…!」

リリス「?」

男「リリス! どうしたんだ、その顔色は!?」

リリス「…え?」

男「真っ青だぞ!? 血の気が無くて、まるで死人みたいじゃないか!」

リリス「そ、そんなことないよぉ? 灯りのせいじゃないかなぁ…」

男「~~~っ、火の明かりだ、紅潮して見えてもおかしくない!」

リリス「だ、だいじょうぶだよぉ」

男「大丈夫じゃない! 今、誰か呼ぶから ちゃんとそこで休んで…」


リリス「男!」グイッ

男「!」

リリス「大丈夫だから… ね、しよう…?」

男「何を、言って……とてもそんな場合じゃ…」

リリス「お願い… して?」

男「………本気、なのかな…?」

リリス「……いっぱい して。 男が、ほしいの…」

男「………はは。まさか、それでよくなるとでも…言うつもりなのかい?」

リリス「……うん」

男「…………」


リリス「おねがい…」

男「…………」



男「………途中で、死んだりするなよ」

リリス「絶対 だいじょぶ…」エヘヘ

男「くそ…… 信じるからな」

リリス「えへへ。ありがと、男…」 

ギュ…

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・

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<翌日 昼>

ひかり「男様…今日は、お部屋から出ていらっしゃいませんね。何か知りませんか、リリスお嬢様」

リリス「う、うーん… 昨日、すごくいっぱいしてもらったからかも…」

ひかり「また…! 自重してくださいと申し上げたばかりじゃないですか!」

リリス「だ、だってぇ!!」

ひかり「リリスお嬢様は、今日は謹慎なさってください!」

リリス「えええっ!?」

ひかり「お部屋から一歩も出しませんよ! 久しぶりにお勉強でもしてくださいませ!!」

リリス「そ、そんなぁっ!!」

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・

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<夜 男の部屋>

男「………」


ひるま「いつまで、そうしているつもり?」

男「!」ビクッ

ひるま「あら、気づいていなかったの? 無視されているのかと思っていたわ」クス

男「ひるま… いつから見ていた?」

ひるま「いつからって… そうね。 朝、日の光が部屋に差し込む時刻からよ」フフ

男「……そうだったね。君にはすべてが見えているのだった」ハァ

ひるま「夜のうちに終わらせておけば、私が見ることも無かったのに」クス

男「あー……そっちも見てたってことか。まあ仕方ないかな。衰弱しきっていたから、どうしても最初、ペースをあげられなかったのでね」


ひるま「……それで、あなたの出した結論は?」

男「……なんのことかな?」

ひるま「とぼけても無駄だと、わかっているでしょうに…悪あがき?」クスクス

男「あがきたくなるものなのだよ、こういうときにはね」

ひるま「そうね。リリスが、男の精を受けるたびに活き返るようなあの様子には、私もさすがに驚いたもの」

男「……ひるまは どう思う?」

ひるま「きっと あなたと同じことに気がついていると思うわ」

男「……自分では言いたくない。君の言葉で聞かせてくれ」

ひるま「あらあら。今度はあなたが弱っているのね」

男「頭が痛くてね。言葉を口にするのも億劫なだけだよ」

ひるま「……そうね。結論は… 『あなたたちは、不死身ではなかった』ってことかしら」

男「---っ」


ひるま「あなたと同等、と思っていたけれど、やはりリリスはあなたより劣等だということも…言うべきかしら?」

男「いや、もういい」

ひるま「男。 何を考えているの?」

男「……」

ひるま「リリスを、どうするつもり?」

男「……君ならばどうする?」

ひるま「……私にとって、あの子はどこか娘のように可愛い存在だわ。殺したくは無いわね」

男「俺もだよ」

ひるま「でも、このままあの子を 創世につき合わせていたら…いつか、死ぬでしょうね」

男「はは。さすが、すべてをお見通しだね。どうやら俺の意見と完全に一致しているようじゃないか?」

ひるま「男…無理をしないで」


男「……何故、今まで気づかなかったのだろうね」ハァ…

ひるま「……大きすぎるものというのは、全貌が見えないものよ」

男「俺は、いつ死ぬのかな」

ひるま「……あなたのその、力を… 『魂』を、使い切ればね」

男「…くそ」

ひるま「怯えないで、男… それはすべての生き物に定められているものよ。あなたのそれが、永すぎて気がつかなかっただけ…」

男「……何か誤解をしていないか? 俺は死ぬのは、恐ろしくないのだよ」

ひるま「……では…?」

男「……俺は… この世界を『完全な天国』にするまで…生きていられるだろうか」

ひるま「……っ」


男「………俺自身の力をつかいきれば。きっと、俺もリリスのように衰弱して…動けなくなるだろう」

ひるま「…そうなる前に、世界を創るなんてやめればいいのよ」

男「まだ、不完全なんだ。完全な天国にしなければ、この世界を創った意味が無い」

ひるま「男…この世界は充分に豊かよ。もう充分なのではないの?」

男「いや… こんな世界じゃダメだろうね。もっと、すべてを…隙無く満たさなくては」

ひるま「男…あなた……。 …それで、いいの…?」

男「……最初から それだけが目的だよ」

ひるま「……ようやく、私にもあなたの口癖の意味がわかったわ」

男「……」

ひるま「ここは 『なんて、悪趣味な世界』… なのかしらね」

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・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
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今日はここで中断します

>>181 訂正分です 
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ひるま「でもまさか、精子を直接アメーバにしたものが、あんなおかしなものになるなんてね」

男「…まあ、形状は元々似てるからね…アメーバと、スライムって…」

少女「私ねえ、スライムちゃん大好きだよ! 食べてもおいしいし!」

男「ゲホッ、ゴホッ」ブハッ

ひるま「あら。元々、食べさせるつもりだったのに何を慌てているのかしら?」クスクス

男「あ、えーと。 あれを食べるのはやめてもらえるかな…」ガックリ

少女「あれ食べると、元気になれる気がするよ?」

ひるま「あら。 そうなの… 今度私も試してみようかしら?」

少女「地上で、今度 スライム料理のお店ができるらしいよー☆ 一緒に行こうよ♪」

ひるま「……まあ。 なんておおっぴらな… アレの正体を知ったらパニックね、男」

>>182 訂正分です
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男「うあああああああ!! どうして俺がこんな恥辱を味わわなければならないんだ!! 大後悔だよ!!」

少女「だいじょーぶだよ☆ 創らなければ、そのうちに食べ尽くしちゃうって☆」

ひるま「……そのうち、希少価値がでたりして 愛玩されたりしかねないわね」

男「……なにもかもが嫌だよ… へんなもの創らずに、素直にひるまに出しておけばよかった…」

ひるま「あら。まだ 子供の数が足りないかしら」

男「まあ…ここでの生活も、賑やかなほうが楽しそうじゃないか。役割を与えれば生活も便利だしね」

ひるま「ふふ。 でも、あの子達はあなたに似ているわ。この空中の建物の中で、すこし物足りなそうにしているもの…落ち着きってものが、ないみたい」

男「そこは言い聞かせるしかないね。あの子たちは、俺や少女のような不老不死でもないのに、明らかに長寿だ」

男「あれでは生命の循環を壊しかねないし、地上には降ろせないのだから」

改めて、少しですが投下しておきます

<数日後 昼>

リリス「ねえ! どうして最近、リリスのことを外に出してくれないの!?」

男「君は部屋でおとなしくしているんだ、リリス」

リリス「いや!」

男「お願いだから聞き分けてくれ」

リリス「いや! いやいやいや!! 絶対にいや!!」

男「君のためなんだ!」


リリス「いや! リリスにも男のおてつだいをさせて!!」

男「出来ない!」

リリス「どうして!? せめてちゃんと理由を教えてよ!」

男「君のためだといっているだろう!?」

リリス「理由になってないよ!」


ひかり「…男様、リリスお嬢様… どうぞ一度、お静まりになってくださいませ」

男「~~~っ」

リリス「納得いかないよ!」

ひかり「リリスお嬢様。 男様をこまらせてはなりません」

リリス「だって!!」

男「とにかく! ……君は、おとなしくしているんだ」

リリス「~~~~~っ」

リリス「知らない! 部屋から出ちゃ行けないっていうなら、ここからお手伝いするよ!」

男「どうぞ。涙でも流すつもりかい? それともついに糞尿から生物でもつくるのかな」

リリス「う…」

ひかり「お嬢様、無理ですよ。お嬢様が生物を生み出す能力を使うには…」フヨフヨ

リリス「……っ」


男「涙や唾液をつかう程度の能力の行使は許しているよ。生物が作れないか試して、暇を潰したまえ」

ひかり「…排卵日まではまだ遠いはず。排卵日には、男様がじきじきに能力を行使しないように付き添ってくださるそうですから…」

リリス「……どうしてそんな、みんなして意地悪をするの…?」

ひかり「意地悪ではありませんよ。男様はリリスお嬢様のためだと仰られて…」
男「…『能力の一切を使わない』。それさえ守ってくれるのならば外出を許可してもいいだろう」

リリス「……男。リリスのこと、もういらないの?」
男「違うよ、リリス。本当に君の為なんだ」

リリス「……」

男「約束してくれるかね?」

リリス「……」コクン

男「…よかった」ホッ

――――――――――――――――――――


<夜 男の部屋>

ひるま「……あれで、いいの?」

男「なにがだい?」

ひるま「リリスのことよ。わかっているでしょう」

男「……多少、脅迫めいたとしても。能力を使わせてあの子の魂を摩耗させるわけにいかないだろう」

ひるま「それを教えてあげないのかってことよ」

男「教えられない」


ひるま「何故? 自らの生命が危ないとわかれば、さすがに無理に能力を行使しようともしないはずよ」

男「彼女は俺と同義の存在だ。そんな事を言っては、俺がこの世界を創りつづけることを止めに来る」

ひるま「……心配だからよ。私だって、本当はやめさせたい」

男「君はそう思っても俺を止めたりしない。でもリリスは……」

ひるま「……全力で、邪魔をしにくるでしょうね」

男「そんなことで無駄に能力を使いたくない。俺自身、この世界を創りあげるために魂が足りるかわからないのに」

ひるま「ねえ。そこまで完璧な世界を創る必要が、本当にあるの?」

ひるま「見せかけだっていいじゃない。貴方が望む幸福な世界なんて、ありえないわ」

男「中途半端に足りなかったら最悪なんだ。これは一度きりの挑戦だから」

ひるま「挑戦……?」


男「……神を納得させるだけの世界が、俺には必要なんだ……」

―――――――――――――――――――――――


<数ヵ月後 男の部屋>

男「リリスの様子は?」

ひるま「相変わらずよ。……あなた、少し痩せたんじゃない?」

男「気のせいだよ。創生に肉体は使ってない」

ひるま「……なら、痩せてみえるほどに、貴方の魂は…」

男「気にすることはないだろう? わかっていた事だからね」

ひるま「……心配もさせてくれないのね」

男「くそっ。時間も余裕もないんだ!いくら文化や環境を整えても、人口の発展が遅すぎる!」

ひるま「人を創れるのはリリスだけよ。そこまで悩むのなら、もう一度くらい…」

男「ひるま!!」

ひるま「っ」ビクッ


男「……済まない。でも、それはしたくないんだ。口に出されたら、それに誘惑されてしまいそうで嫌なんだ」

ひるま「……リリスのことは、大切にしてあげるのね」

男「何を…」

ひるま「こんなにそばにいて、あなたを理解して、誰よりも愛しているのに」


ひるま「あなたは私を見てくれない」


男「………そんなことは、ないよ」

ひるま「フォローはいらないわ。誰よりも貴方を理解していると自負しているの…だから否定しないで」

男「済まない」

ひるま「いいわ。それも、わかっているから」


男「……君を、嫁に迎えよう」

ひるま「ふふ。形だけは愛してくれるのね」

男「大切なパートナーであることに違いはないよ」

ひるま「…ありがとう」

男「この世界には絶対的な救いが必要なんだ。君は永遠にこの世界を見守ってくれるかい?」

ひるま「ええ。……例え、貴方がいなくなっても。私は光。永遠にこの世界を照らし続けると約束するわ」

男「ありがとう。やはり君が「必要」だ」

ひるま「…………」


ガタ

ひるま「!」

男「誰かね!」


リリス「……ひるまは必要なんだ。リリスのことは必要ないのに」

男「リリス…いつからそこに?」

リリス「……男。なんでいってくれないの? 人を創ってくれって」

男「そんなことまで聞いていたのか」

リリス「創るよ! リリス、男が創ってほしいなら創るから!」

男「違う!創ってなんか欲しくない!」

リリス「できるもん! リリスだって、男に必要っておもってほしいもん!!」

ひるま「! 男、リリスの排卵日は一昨日よ!まだ、卵が胎内に…!」

キィィィィ…ン…!

男「ちっ!!」

バシュッ!!

リリス「……!」

ひるま「男!? 」

リリス「」 

ドサッ、ゴロン…ゴロゴロ…


ひるま「男!! 何してるの!? どうしてリリスの頭を…!」

男「……」

ひるま「あ、ああっ…リリス、リリス!!」

男「再生する。大丈夫だ」

ひるま「だからって! 頭を斬り落とすなんて正気じゃないわ!!」

男「リリスの思考回路は、リリスにとってよくない。脳にあたる部分を斬り落としてしまえば、再生後には記憶も失なうだろう」

ひるま「っ!」

男「……もう、俺のために生きる必要もなくなる」


ひるま「貴方は…貴方ってひとは…!」

男「…恐ろしいかね?」

ひるま「………なんて。なんて悲しい人なの…」


男「…………頭部は俺が保管しよう。何かに使うこともあるかもしれない」

ひるま「………」

男「リリスを部屋に運んで…再生が終わるまで、見守ってやってくれるかい」

ひるま「…ええ」

男「ありがとう」


ひるま「………本当にもう、余裕は残されていないのね…」

―――――――――――――――――


<1年後…>

リリス「おーとーこー♪」

男「うわ」

リリス「えへへ☆ シよう!」

男「唐突だね!シないよ!」

ひるま「そうよ、リリス。男は私の旦那様なんだから…あまり堂々と浮気の誘いは困るわ」

リリス「じゃあ三人でする?」キョトン

ひるま「あら、それは楽しそうね」

男「ひるま!」

ひるま「ひるまだなんて。もう私は貴方の嫁になったのだから、ちゃんと正式によんでほしいわ」

男「……聖母」

ひるま改め聖母「はい、あなた」


リリス「いいなー☆ リリスもお嫁さんとかしたーいっ!」

男「へえ? そんな可愛らしい願望があるなんて意外だよ、リリス」

リリス「いーっぱいの旦那様をつくれば、毎日いっぱいデキるでしょ!」

男「それはハーレム願望っていうものだね!そんな嫁入りは許さないよ!」

リリス「じゃあ、やっぱり男が相手してくれるっ!?」

男「しません」

聖母「ふふふ。ほらほら、リリス。宮内の男の子たちと遊んでいらっしゃい」

リリス「んー…」

聖母「この時間ならきっと、入浴場にたくさん集まっているわ」

リリス「あっ☆ そっか! いってくる!!」

聖母「ちゃんと避妊しなさいねー! 性交中絶法なんか信用しちゃだめよー?」

リリス「だいじょぶだよっ♪ 排卵日とっくに終わってるし、気分的に今日は全部飲んじゃうつもりだからー!!」

男「とんでもない会話がきこえてくる!!」

聖母「精力的よねぇ」

男「そのまんまだね!」


タタタタタ… パタン


男「…はぁ」

聖母「リリス。本当にすっかり記憶をなくしているのね」

男「頭を失ったんだ。…まさかまともだった思考回路のほとんどの部分まで失うとは思わなかったけど」

聖母「元々の性的欲求の強さだけが際立ってるわ」

男「下半身にも多少の理性があったって事を証明してくれたよね」

聖母「いまはもう無いけれど」

男「……」


聖母「記憶をなくしても、性格や明るさはそのままに残ってくれてよかったわ」

男「うん。……あのままでは彼女は、魂を使いきるより先に心を壊しそうだったから」

聖母「この間、海が好きだといっていたわ。きれいだし、大きくて立派だと」

男「はは。自分が泣いて、その涙で作ったものだなんて思いもしないのだろうね」

聖母「ええ。自分の持つ能力にすら、気付いていないわ」

聖母「私とおなじ。男の能力によって産み出された存在だと、信じきっているみたい」

男「……」


聖母「それにしても、どうしてあなたとばかりしたがるのかしらね」

男「さてね。本能的に、同じ魂を嗅ぎ分けているのかもしれないね」

聖母「私の旦那様だから、と逃がし続けてあげてるけど…そろそろ許してくれなさそう」クスクス

男「そこは頑張って俺を守ってくれ。リリスとすると、魂を吸いとられてしまう」

聖母「ふふ。わかってるわ」

男「……残り少ないのが自分でもわかるんだ。この肉体を支えきるのもそろそろ限界かな」

聖母「…だから、日がな1日座っているの?」

男「まあ、もうすこし人口が増えないことには、やるべきことも少ないしね」

聖母「……お茶でもいれましょうか」

男「ああ。…そうだね。座っていてもおかしくないよう、いつでもいい茶葉を揃えておいてくれ」


男「茶を飲んでいれば、座ったまま動かない言い訳になる」

――――――――――――


<その日の 夜>

リリス「ふふふー☆」

男「…スー…」

リリス「よく寝てるっ☆ やっぱり夜這いはこうでなくちゃ!」

リリス「えへへ…いただきまぁー…」

男「」パチッ

リリス「………あ」

男「…何をしているのかね、リリス」

リリス「夜這いだよっ♪」

男「少しは悪びれようか。しないと言ってるじゃないか」

リリス「まぁまぁ☆ そんなこといわないでっ☆」ノシッ

男「ちょっ、乗るな!」

リリス「ふんふんふふーん♪」


男「待て、本当に…」

男(…しまった。充分に身体に力が入らない。本当にこの身体を満たすほどに魂が足りてないんだ…)

リリス「えへへ。いただきまぁーすっ☆」

男「やめろ!」

リリス「やめなぁい♪」

男「どけって!」

リリス「どっかないよーんっ♪」

男「うあっ」

リリス「えへへ…ペロペロ…」

男(こっちの意思とは無関係に生殖器官を扱うのは相変わらずなのか!! 脳じゃなくて身体にインプットさせてたな!!)

リリス「ん…おっきくなったぁ☆」

男(そしてかなり久しぶりなので普通に気持ちいい…って、違う!)


男「どきなさい! 上に乗るな!」

リリス「男が上?」

男「そういう意味じゃ…っ、うあ」ビクッ

リリス「もうちょっと、かな☆」

男(あ。ダメだこれ。魂が抜けそう…ってまさに文字通りになってしま…)

リリス「ん………」

男(あああああっ! こんな能力ってないだろう! イく! イかされるっつか、逝かされる!!)

男「――――――――っ!!」

リリス「ん…☆」

男「はぁ…はぁ…っ、くっそ…」クラクラ

リリス「すごい…♪ 男の、すごく美味しい…なんか、こう…満たされる感じがして、すごく気持ちいい…なにこれ…」

男(くそ…魂、吸いとられたな…)

リリス「ね…もっと…!」

男「いい加減にしないと、今度は頭だけじゃ済まな…っ」


ばたんっ!

男「!」

聖母「リリス!!」

リリス「あうっ」


聖母「あなたって子は!! 部屋にいないのに気付いてよかったわ!!」

リリス「えへへ☆ ごめんなさーいっ☆」

聖母「男、大丈夫!?」

男「大丈夫じゃない。抜かれたよ」

聖母「なっ」

リリス「ごちそうさまでした☆ すっごくおいしかったのー☆」

聖母「~~~~~っ! あなた、自分が何をしたか…っ!!」

男「聖母、やめたまえ」

聖母「男っ」


男「…君が熱くなってどうする。来てくれて助かった。…リリスを連れていって」

聖母「……ええ、わかったわ」


聖母「さあ、いらっしゃいリリス。はやく部屋に戻りなさい」

リリス「はぁいっ☆ またしようねっ、男!」

男「ははは…勘弁してくれたまえ」

聖母「リリス!!」

リリス「あうっ」


バタンッ!

男「……情けない」

男「いやまあホントにいろいろ情けないんだけど」



男「……この身体。気力で満たしておくには…もう、大きすぎるのかな…」

―――――――――――

中断します


翌日

コソッ

男「このままだといつリリスが襲いに来るかわからない…。はあ。昨日は結構、ヌカれちゃったからね。まさかあのまま、動けなくなるとはね…」

男「でもまあ、味をしめた以上、確実に来るだろうし…動けないまま、君に魂を吸いとられてしまうわけにはいかないんだよ」

男「…もう、そばには置いておけない。悪いとは思ってるけど…こうするしか、ないんだ」

ひかり「……? 男様…で、いらっしゃいますか?」


男「ん? ああ、ひかりか…」

ひかり「……なんだかずいぶんと…ああ、お若くおなりあそばしましたね? というか、その…」

男「うん。身体のサイズを1/3まで縮めたからね。若いもなにも、見た目は子供だね」

ひかり「能力で容姿をお変えになられたのですか?」

男「いや、物理的に斬り落として、無理やり再生させた」

ひかり「ひっ!?」

男「大丈夫だよ。なんかもう、ショッキングさに慣れてね。出血多量で意識さえ失わないようにすれば、能力を自分にかけて形状を整えられることに気が付いたんだ」

ひかり「あ、あの…どうしてそのようなことを…」

男「動けなくなっちゃって。胸に手をあてる姿勢が限界だったので、胸下をそのまま切り落としてね」

ひかり「そ、そうではなくて!! そのようなことをなさった理由です!」


男「え? ……ああ。 もうね、支えきれなくて。大きすぎる容器より、小さな容器に詰めていたほうが楽なんだ」

ひかり「……? あの、それはどういう…?」

男「あ、そうだ。それで…リリスをしらないかい?」

ひかり「え、あ、はい。…ええとリリスお嬢様でしたら、お庭で鬼ごっこをなさっておられるはずです」

男「鬼ごっこ? なんだ、意外と可愛らしい遊びをしているじゃないか」

ひかり「宮内の男性陣からは、通称「ハンティング」「通り魔」「無差別暴行」「天災」と呼ばれている鬼ごっこです」

男「そんな気はしてた! しかも追われるほうも諦め入ってるね!」

ひかり「おそれながら男様? リリスお嬢様を探して、一体何を?」

男「ん? ああ、これだよ」


ズルッ…ドサッ


ひかり「そんな大きな頭陀袋…いったい中に何がはいってらっしゃるのです?」

男「俺が入ってるよ」

ひかり「え?」

男「俺が、はいってるよ」

ひかり「……はい? なんと仰られましたか?」

男「3回聞きなおしても…そうだな、見たほうが早いかもしれないね」

ゴソッ ズルンッ!

男もどき「……」グテン…

ひかり「あ、あわわわわわわ……し、死体!? 男様が男様の死体を運んでっ!?」ガクガク


男「はは。死体じゃない。これは…なんていうか、偽者だよ。刻んだ身体を再利用して作ったんだ。偽者、というのもおかしいね…分体?」

ひかり「そ、そんなものをお作りになってどうするおつもりなのですか!?」

男「……遠くへ、投げ飛ばすんだよ」

ひかり「え」



男「一人じゃ、寂しいから。偽者でもいいから、好きなヒトにはそばに居て欲しい」

男「そういう気持ちをよく知っているものでね」クス


――――――――――――




コソッ

リリス「♪~ つーぎに会うのはだーれっかなー♪」ヒョーイ

男(リリス…ここにいたか)

リリス「誰かいないかなー… アソんでくれる子…」キョロキョロ

男(ええと…なるべく、離れて。雲のふちギリギリに…)コソコソ

リリス「つまんない…だれもいないなんて…」ショボン

男(よし… はじめよう)


男「おーーーーい、リリスーーーー!!」


リリス「! 男の声だぁっ☆」パァッ

男(いまだっ、この偽者の俺を、雲から…)

ズルッ、ポーイッ

男(で、)

男「うわあーーーー、雲からおちるーーー!!!」

リリス「!? 男っ、大丈夫!?」ダダダダッ

男(よしっ、餌にくいついた!)

リリス「えっ、まって! なんで堕ちるの!? どうして、いかないで!」バッ!

男(リリス……ごめんっ うまく地上まで堕ちてくれ!)グッ



リリス「男ーっ まってー! 落ちて死んじゃう前に空中でもいいから“アレ”飲ませてー!」ヒューーーン

男(ひい! ちょっと感動しそうになった俺が悲しいくらい、リリスが怖い!!)


<マッテー、オトコ―!
<……


男「………さっ! いまのうちに引越だ! 見付からない場所まで逃げなくちゃ!!」


男「………あれ?」ポロッ

男「涙…?」

男「いやいや、泣くようなシーンじゃないだろう?」

男「……」ポロポロ

男「やっぱり、寂しいかな。ずっと…永すぎるほどに、ずっと君といたからなぁ」

男「……はは。涙をこぼす余力は、もうないんだけどな」


ひかり「……男様」フワッ…


男「ひかり…見てた?」

ひかり「ええ。見ておりました」

男「おかしなものだね。こんな風に泣くだなんて」

ひかり「男様?」


男「やらなければならない事があるんだ…守らなければならないものも、あるんだ」

ひかり「……?」

男「……」


わからない

約束だけは、守らなくちゃいけないという責任感だけで生きている
それが俺が生きる理由だから
この世界を、作り出した理由だから

そのために創った世界で君みたいな子に出会ってしまうと
後悔してしまいそうだ

どうしてもっと純粋に君を愛してあげられなかったのか
どうしてそんな責任に縛られ続けなければならないのか

そんな疑問を持ってしまう
俺が生きる意味は他にあるんじゃないかと思ってしまうよ

それがとても、心地よい
勝手で、利己的で、そう まるで…


男「人間みたいだ……」

ひかり「え?」

男「はは……怪物じみて、ようやく人間になったなんて。おかしいかね?」

ひかり「あの…男様は、人間になりたかったのですか?」

男「どうだろう。俺も昔は、人間だったよ」

ひかり「え?」

男「違う世界で、そのさらに遠い昔の話だけどね」

男「人間だったんだよ。死んで、地獄への案内人になったんだ」

男「誰よりも地獄を見てきた自分だったから。誰よりも地獄に詳しかったから」

男「地獄への案内人になった」


ひかり「……男様は、この世界の創生者でありますよね…? なぜ、この世界を?」

男「きまってるじゃないか」

ひかり「?」

男「地獄への案内人だった俺は、地獄に案内することしかできないから。地獄を追い出されたから、地獄を作ることにしたんだよ」

ひかり「この、世界が… 地獄だというのですか?」

男「そうだよ?」

ひかり「こんなに、笑顔に満ち溢れた世界が?」

男「うん。恐ろしい地獄だよ。残酷で、悪趣味で……反吐の出る世界」

ひかり「おっしゃってる、意味が…わからないです。ここは理想郷。とても美しく素晴らしい世界です」

男「そうおもう?」

ひかり「そうです! ですから地獄だなどとおっしゃらないでくださいまし!」


男「うん…ありがとう。じゃあ…ようやく、完成してきたのかな」

ひかり「やはり、理想郷をおつくりなんですね?」

男「え? ああ…うーん。どうなんだろう」

ひかり「男様は…何を考えているかわからない所がおありです。どうぞお話ください、私にも、理解できるように…」

男「あはは。それは無理かなあ」

ひかり「男様」

男「すまないね、でも悪気は無いのだよ?」


男「ただ…俺にも、理解できないんだよ。俺のことは」

ひかり「……男様…?」

男「……」


リリス。
自由に生きてくれ
もう余計な力など使わなくていいんだから
その魂は、君だけのために使えるのだから

君が追いかけたその偽者は、偽者だけど…間違いなく俺だから
…けして寂しくなんかないからね

偽者の俺。
いつまでもその子に寄り添ってあげてくれ
俺はもう、俺自身をその子のそばに残せないから


この世界で、俺がやり残す事を成してくれ
全てが終わったその時には、俺の欲望で創ってしまったこの哀れな世界の全てを…


全ての偽善を破壊できるように
その子の手助けをしてやってくれ


・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・

――――――――――――――


<数週間後>

男「」ウロウロ

聖母「男。そうやってうろついてると、本当にただの子供みたいよ」

男「うう…」

聖母「自分で遠ざけたくせに…。リリスなら、元気にしているわ」

男「君は俺のためなら平気で嘘でもつきそうで、信用ならないんだ」

聖母「あら。的確ね」

男「やっぱり、リリスは元気がないのかね!? 俺が居なくて寂しがったりしているんじゃないだろうね!?」

聖母「いえ? 貴方の偽者を相手に、毎日励んでいるわよ?」

男「嘘だ」

聖母「希望的見解で真実を否定されても困るわ」


男「……昔は、何千年も俺のそばにいて。『男が起きない』と泣いていたんだけどなぁ…」

聖母「そんな記憶は、頭ごとあなたが奪ったじゃない…思い出してもショッキングだったわ」

男「あ、そうだ! 頭!」

聖母「え?」

男「リリスの頭があるじゃないか。保管しておいたんだった」

聖母「男…いくら寂しいからって、頭部を相手に自分を慰めようだなんて。確かに頭部であれば口ぐらいはついているけれど…」

男「誤解もはなただしいよ!?」


聖母「あら。男ならそれくらいイケるとおもったのだけれど」

男「それくらいって…どんだけなんだ…」

聖母「ふふ、冗談よ。 それで、リリスの頭部をどうするつもりなの?」

男「うん。これで・・・」



男「スパイを、作る」ニヤリ

聖母「………」ハァ


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・

――――――――――――


数日後

少年「で。何のために俺を作ったのです」

男「すこし、お願いしたい事があってね」ソワソワ

少年「……あれですよね。宮殿内でずっと言われてる噂の件ですよね」

男「噂? 噂なんてあるのか」

少年「ええ。なんでも…」

『散々はべらせておいて、その後は拉致監禁して、派手に打ち抜いて傷つけた挙句に、最終的に屋敷を追い出して、自分は姿をくらませて、それなのにストーカー行為をしている』

少年「……とかなんとか」

男「情報操作とかじゃなく、否定すべき点がみつからないのがなんとも苦しいところだね」ウウム


少年「最低なんですね…。それで、俺にはなにをさせるつもりなのです?」

男「ぶっちゃけ リリスが気になるんだよ! スパイしてほしい!」

少年「好きなら手元に置いておけばいいものを…ハァ…」

男「うるさいよ! 生誕間もなく楯突くのやめてくれないかな!?」イライラ

少年「で。俺は具体的に、何をしたらよいのです?」

男「……リリスが…幸せかどうか見てきて、報告して」

少年「……それくらい、いくらでもご自分で出来るでs」

男「出来ない! 出来ないよ!? なんかもうあんまり見に行ったら間違いなく連れ帰っちゃうからね! 出来ないの!」

少年「変態発言ですね、神よ」

男「え?」


少年「…え? 神ではないのですか? 」

男「いや、俺は別に、神とかっていうわけじゃ…」

少年「…なんだよ、じゃあ敬語とかいらないじゃん。 あーあ なんか無駄なことした気がs」

男「いや、俺が神である。この世界の創生者である」キリッ


少年「これは失礼を致しました。では、神よ。先ほどの自分の発言についてはお忘れください」

男「……そもそも。どうして俺を神だと思ったのか聞いてもいいかね?」

少年「神は神ですが… え、本当はやはり違うと?」ジー

男「神です! 天の神様! 言うよね! なんでもほら 天の神様の言うとおりにしとこう、ね!」

少年「天の神、でしたか。それでは天神様、改めてご挨拶を致します」

少年「自分は…」

男「…」


少年「自分は………」

男「どうしたんだい?」

少年「自分は何でしょうか?」

男「は? ああ、まあ、ヒトかな」

少年「それはないと思います」

男「…なんでだい?」

少年「産まれてすぐに神に指令を頂くような奴が、ただのヒトって。最近そういう意外設定多いですけどね、もっと王道すすみましょうよ」

男「産まれてすぐに世の中の風潮を語るんじゃないよ」

少年「まあ、そういうわけですので… ヒトといわれましても納得できない次第です」


男「えー…じゃあ、何。あー…使徒?」

少年「何だよ! 俺はフィフスチルドレン的ポジションかよ!」

男「」ビクッ

少年「あ、失礼しました」

男「神の手下なら、あとは神使とか…」

少年「手下って…ちょっと、天神様。やめてくれないかな!? 」

男「お前なんかさっきからキャラがわからないよ! もう好きにしたらどうかね!」

少年「いいのっ!?」

男「…いいよ?」

少年「やったぁぁぁぁぁぁ! よし! じゃあ、俺、勇者になる!! 」

男「まさかの冒険ファンタジー展開!?」

少年「いまさら!?」


男「いや、俺的には割とシリアスな非現実系SFなノリだったんだけどね!!」

少年「えっ、SF!?」

男「惑星の誕生! みたいな! 未知の文明開化! みたいな!? 絶好調なタイミングで隕石落下とかの大波乱なパニック系とかもいいよね!」

少年「天神様… 神ってそんなノリで世界作ってるんですか…? てか隕石落とすんですか…?」

男「はっ」

少年「…この世界、俺の一言で、大暴動おきるかもしれませんね。よかったじゃないですか、大波乱のパニックものですよ」

男「…あー」


男「おまえは勇者である。この世の平和を維持し、全ての争いを平定させるべき存在だ。それを忘れることのなきように」キリッ

勇者「ははっ、天神様の御意向のままに。この勇者、かならずやお役に立って見せましょう」キリッ


男(こいつほんっっっっとに嫌いだわ…なんでリリスの頭部からこんなんが生まれるんだ…)

勇者「して、俺はどちらへ行けばよいのでしょうか?」

男「え? だからそれは、地上にある俺の・・・」

勇者「俺の?」

男(・・・・・・)ニヤリ

勇者「どうされました、神よ」

男「…ふ、ふふふ。それは! 地上にいる俺の宿敵、"魔王"の所だ!!」

勇者「な、なんと! 魔王ですか!?」


男(あー、いい気味!! 偽者の俺が"魔王"とか呼ばれてやんの! 超恥ずかしいね!)

男(若干ムカついてたんだよ! ポっと出のキャラのくせにおいしい役だけもらって生きてるとか!)

男(ひるま情報がもし本当なら、俺のリリスとよろしくやってんだからそれくらいの恥は被ってもらうよ! ふはははは!)

男(この勇者とかいうバカにやられるとは思わないけど! せいぜい邪魔されてろ!)

男(そうしてその人生に、勇者と魔王ごっこをやらされるという黒歴史を刻み込むがいいさ 偽モノの俺!!)


勇者「恥ずかしいですね、天神様」

男「え?」

勇者「なんですか魔王って… 厨二妄想を現実にして遊ぶのやめてもらえませんかね」ハァ ヤレヤレ

男「はああっ!?」

勇者「いやもう、痛々しくて…。 魔王って… 俺の宿敵って… っぷぷ」

男「ちょ、ふざけるんじゃない。なんで俺がそんな恥を自分でかぶらなきゃならないのかね」

勇者「いやいや、意図はわからないですけど。その発想がでるだけで十分に痛いですよ、神」

男「勇者とか自称する奴にいわれたくないのだけれど!? おまえのが痛いよね!」

勇者「勇気あるものを勇者と呼ぶ。歴史上の偉人にもその称号はついてるじゃないですか」

男「いやまあそうだけれど……って」


男「…おまえ、もしかして 俺の記憶を…? ここじゃない異世界の記憶を、継いでいるのか!?」

勇者「よくわかりませんけど… メンヘラ気味の未成年の彼女さんに天神さんがおもっきりハァハァして以来、天神さんがそりゃもうゾッコンなのとかも記憶の中に鮮明に残っ」

キンッ バシュァァァァァ

勇者「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」


男「ふざけんな! 脳みそを記憶ごと吹き飛ばしてほしくなきゃさっさと逝け!」ドガッ

勇者「」ヒューーーーーン


男「なんであんなのが生まれたのかわかった! リリスを創るときに下半身に残ってた俺の理性、それがリリスの理性として頭部にのこってた! そして今のアイツになった!!」

男「つまり俺の一番、邪魔臭くていやなものの凝縮体じゃないか!」

男「勇者だと!? 理性から生まれた勇者だと!?」

男「・・・・・・・・普通に、勇者として本当に素質ありそうじゃないか」イラ


男「はぁ・・・なんか・・・つかれた」

男「まあいい。あの勇者とか言う奴… 無駄にはりきってたし、仕事はするだろ」

男「うっかり 姫です!とかってリリスをつれかえってきそうでこわいけど…」


男「……いつか、用が済んだらココに戻ってこれないようにしてやる。あの勇者とかいう馬鹿…」

男「ついでだから 一生、報われない呪いとか研究して 散々ためしてやる…どうせ元自分だし…」

男(あれ 俺 いつからこんなに性格わるくなったんだっけ)

・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・

―――――――――――


<数年後>

聖母「男、ちょっと見てもらえるかしら」

?「……」オド

男「……彼女は?」

聖母「ひかりよ」

男「え…。 いやいや、妖精サイズだろう、ひかりは」

聖母「だって本当なんだもの」

ひかり「あの…男、様」

男「うん。可愛い」

聖母「……」


男「じゃ、なくって。ええと…一体なにがあった?」

聖母「ふふ。この世界に、あなたがたくさんの光を撒いているでしょう?」

男「うん。もう、完成にちかいから…この世界をより輝かせるために、残りの力を発散させている」

聖母「きっと、そのせい。私ももう、昼間でも霧散しなくてすむほどに、この世界には光が溢れているの」

男「え…それほどに?」

聖母「そうよ。私も霧散しない上に…それでもまだ溢れて。この子が生まれたわ」

男「そっか…」

ひかり「男様。ありがとうございます」

男「うん… はは。変な感じだね、ひるまとひかりと、並んでいるなんて」

聖母「ねえ、男。だからもういいの」

男「いいって……なにが?」

聖母「もう。力を使わないで。これ以上はもう、貴方が・・・」スッ

男「あ……」ヒョイ


聖母「こんなに軽くなってしまって。ふふ、どうするつもり? このまま消えるの?」

男「……ちょっと、完成に向けて力を使いすぎたみたいでね」

聖母「もういいわ。ねえ、撒きすぎた力を回収することはできないの?」

男「……どうだろう」

聖母「ね、お願いよ。試すだけでもいいから、試して頂戴」

男「しかし…」

聖母「このまま消えてなくなるあなたを見たくないのよ」

男「・・・・・・」


男「確かに、ね。このまま消えたら… 迎えにいけない。本末転倒だ」


男「俺も、人間らしく…… この世界に生かされてみようか」クス

―――――――――――――――――


男「……」

ヒュパァァァァァ・・・・


聖母「……綺麗ね。光が、集まって…」

ひかり「光というより…もっと純粋な。生気」

聖母「そう…生きる気力。それを取り戻そうと思ったのね」


男「……」ムムム

聖母「でも…これは、どういうことかしら」

ひかり「さ、さぁ… なにやら必死そうではあるのですが…」

男「……あああああああああああ! もう無理!」

シュパアアア!!!!


?「……」シュワァァ・・・

男「戻らなかった。……俺の中には」

聖母「また、小さな男ができてしまったわね」

ひかり「ふふ… すこし、こういう男様のお姿にも見慣れましたね」

男「この世界に3人目だな、俺の容姿をした生物は… 俺と、地上の偽者と、コイツ」

聖母「ふふ。4人目はさすがに居ない?」

男「居てたまるものか、気色悪い」

聖母「それで・・・」チラ

男「ああ。ええと…おまえは? 喋れるか?」

?「無論、喋れるに決まっているだろう」フフン

男「う」

ひかり「え」

聖母「……」


?「何故、そのような目でみるのだろうね」

聖母「……なんだかすごく生意気でイイわ。…この子をあなたの2代目にしましょう」

ひかり「2代目・天神様っていうところでしょうか」

男「お、俺自身は神を名乗ったのは一度しかないのだけれど…。ま、まあいいか」


男「おまえの名は、天神だよ。この世界の神になってあげて」

天神「神というのは、なろうとしてなるものなのかね? 父よ」

男「…とりあえず父はやめてほしいかな。感覚的に息子とは思えないんだよね」

?「では、先代と呼ばせていただこう」

男「なにやら、おじいちゃんになったような気がする」

天神「祖父ではない、先代だといっている」

天神「それに文句ばかり…先代はわがままだな」

男「わがままで何が悪い! っていうか! 何その口調!」


聖母「ちょっと。いきなり親子喧嘩をするのはやめて頂戴?」

男「なんかすごく昔の自分の黒歴史を穿り返されてるようで腹が立つんだよ!」

聖母「黒…歴史?」

男「若かった頃の俺を思い出すようだ」

ひかり「実際、若い男さんなのでは? 存在的には…」


男「あっ」

聖母「…へぇ」

ひかり(よ、余計なことを言ってしまったのでしょうか…)


天神「何故、そのように間抜けな顔をするのだろうね?」

男「なんか、俺も 時間の経過と共にずいぶん丸くなったんだなーっておもって」

天神「まるで俺が尖っているようではないか。失敬ではないかね」

男「…ねえ、ひかり?」

ひかり「はい、なんでしょう男様」


男「ちょっとこいつに抱かれてみない?」

ひかり「なっ!?//」

聖母「男、いくらなんでも唐突過ぎるわ。どういうつもりなの?」

男「いや。こういう口調をしてた頃の俺って、結構なかっこつけでさ」

天神「ぎく」

男「可愛いオンナノコと『目的』を果たすと、油断して口調がゆるくなるんだ」

天神「何故、俺を貶めようとするのだね、先代よ」

男「不快だからにきまってるだろう。昔のアルバムよりタチがわるいぞ」

天神「だが、それを立証するために女性を抱けるならば本望だ」

ひかり「えぅ!?」

男「ああ・・・そういえば俺ってこういうやつだった・・・」ガックリ


天神「だが、まあしかし。あまりに不快だといわれるようなら、すこしラフにしようかな」

男「おお、っていうかおまえがそのキャラきついんだろ?」

天神「ぎく」

男「だいじょうぶ、よくわかってるよ・・・」ハァ

ひかり「と、ともかく、男様、天神様」

天神「少女よ、ついに抱かれる気になったのかね?」

ひかり「えっ//」

天神「なかなか良い反応。俺は好みだよ」

男「うあああああ! もーいやだ!!! 生まれた瞬間にこいつはなんなんだ! なんでこんなんばっかなんだ!!」

聖母「あなたのせいだとおもうわ・・・ていうかあなた、こんなだったのね…」

男「」

天神「妙な感じだね。何も知らないのに…なんでも知っているような気がするのは何故だろう」

聖母「ふふ。この世界に散らばった生気を使って生まれたのだもの…そのはずね」

男「ああ・・・」


ひかり「そそ、それでは、男様」

男「うん?」

ひかり「よろしければ、しばし天神様とお語らいのお時間でもお作りになってくださいませ」

聖母「そうね。あまり喧嘩をしていたら駄目よー?」

ひかり「では、私たちは退室させていただきますね」

テクテクテク… ギィ

天神「ああ。花が行ってしまう」

バタン

天神「行ってしまった… なんてこの世は非情なのだろう」

男「なんだかコイツ、俺以上に軽薄な気がする」


天神「そんなことはないとおもうよ。俺のほうがすこし素直なくらいで」

男「何故そうおもうんだね?」


天神「……掬うように、記憶が溢れてくる。まるで泉のように」

男「はは。さすが、俺の“生気“。肉体だけではなく、魂そのもので産まれて来たか」

天神「……しかし、わからないね。教えてくれないか?」

男「わからない?」

天神「うむ」

天神「この世界は、俺の趣味でもなければ、父の趣味でもない」

俺「ほう」

天神「何故、この世界をこのように創ったのだね?」

男「…………」

天神「……」ジー

男「知りたいかね?」クス

天神「教えてもらえるのならば。無理にとはいわないがね」

男「後悔をするかもしれないよ」

天神「ふむ…」

天神「それならばなおのこと、是非きいておかなくてはね?」


男「はは。 おまえは、本当にいつかの俺に似ている」

男「おまえが産まれてくれてよかったと、心から思うよ」

天神「それを聞いて、今 俺はとても嫌な予感がするよ」

男「何。おまえはきっと気に入るさ… なにしろ、『俺』なのだからね」


男「聞きたいかね? 『俺』の果たすべきことを。叶えてくれるかね?」

天神「………叶えてくれるか、などと聞いておきながら…」



天神「俺のこの魂は、それをかなえるまでは満足できないのだろう?」クス

男「うん。きっとね」クス



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・

―――――――――――――――――



天神「先代が、倒れた?」


聖母「ええ…。さすがにもう駄目ね」

天神「神というのは、不老不死じゃなかったのかね?」

聖母「そうよ。不老不死・・・でも彼は魂を使いすぎてしまったから、もう駄目なの」

天神「魂を、使う…とは?」

聖母「あなたも、男と同じように能力を行使して物を創るでしょう」

天神「ああ。とても便利だね」

聖母「その神気。それはどこから来たと思う?」

天神「……世界中に溢れている。それが集まってくることで利用できる。そして、使えばまた溢れていくのでは?」

聖母「違うわ。それは、彼が一番最初から持っていたもの…魂の力なの」

天神「魂の、力…?」

聖母「この世界に、彼が撒き散らした生命。それが溢れているの、この世界に」

聖母「だからそれを使うことができる。その力…神気は、まさしく神の”気力”そのものなのよ」


天神「気力…? 生命力だとかそういう意味かね」

聖母「その通りよ。あなたは彼の魂そのものを使って生まれてきた…」

聖母「だからこの世界に同じように撒き散らされている大量の神気を、自らの身体をめぐる血液のように循環させて使うことが出来る」

天神「先代は違うのかね?」

聖母「違うわ。彼には肉体があり、魂そのものではないから。彼以外にも数人、そういう存在がこの世界にはいるのを知っているでしょう」

天神「先代、先代の半身であるリリス嬢、リリス嬢の頭部である地上の勇者、先代の2/3である地上の魔王…だね?」

聖母「そう。彼らはこの世界にとって異物。力の循環に収まれない特別な存在になるのは間違いないわ」

天神「俺はどうなのだろう?」

聖母「元々、別枠じゃないかしら? だって、魂であってもあの人なのだもの」クスクス

天神「ふむ」


聖母「あの人は…力を行使することによって、その魂を削る」

天神「無から有は生み出せない。何かを得るならば支払うものがある。それが彼自身の生命…ということだね」

聖母「そう。だから彼が何かを創り、この世界が満たされれば満たされるほど、彼は失っていくの」

天神「失う…」

聖母「望みを。生きる気力を。そういうものをじわりじわりと削られていくのよ」

天神「……先代にはもう、この世界に生きていく気力が無いというのかね?」


聖母「…絶望してしまったのだと思うの」


天神「ふむ…わからなくはないかな。こんな世界を創って完成させてしまったのだものね。彼はこの世界を嫌って、嫌うあまりに絶望したのだろうね」

聖母「そう。ついに彼の望んだ世界が完成してしまった」

天神「この世界は、彼自身の 歪みきった願望の上に成り立っている」

天神「そうしてこんなやり方しか出来ない自分を嫌っている。それが先代だ」

聖母「あの人は、とても不器用なのよ」

天神「不器用というか、悪趣味なだけだとおもうがね」

聖母「ふふ… 必死なのね、きっと」


天神「……完成、か。ついに」

聖母「もう、私も必要なくなるわね」

天神「それは、まだだろう?」

聖母「……本当に、この世界は残酷。ひどい役割を押し付けられたわ」

天神「この世界は、あることの証明のためだけに作られたものだから。君はそれが証明されるまでは役割を果たさなければならない」

聖母「・・・・・・・・・・・そのとおりね。私はこの世界の駒のひとつだわ」


天神「悪いとおもっているよ、聖母。どうかあまり苦しまないでほしい」

聖母「ありがとう。あなたはあの人じゃない分、すこしは優しいわ」

天神「俺もまた、役割のひとつを担わされるために生まれたから」

聖母「……あの人は…きっと最初から、あなたを創るつもりだったのね。それであんなに力を撒き散らかしたのだわ」


天神「俺が生まれるよりも、先代に生きていてほしかったと思うかい?」


聖母「…いいえ。彼の魂は 削られて、光となってこの世界に満ちているのよ?」

聖母「私と同化してくれたようで、すこしだけ嬉しいの。ふふ、ひどいでしょう?」

天神「そうか…君は“ひるま”。光そのものだったね」

聖母「そう。その光を集めて、作り出された彼の望む姿。それがあなた。彼の唯一の希望で…光としての、私と彼の子供」

聖母「生まれてほしくなかったなんて、あるわけないじゃない」

天神「ありがとう」


聖母「彼の魂は、世界を覆うほどに広がってしまって。もうこの世界に溶け込んでしまっている。だから男はもう、動けない。このままきっと…消えるのね」

天神「先代の魂は、”彼”に戻ろうとして…戻れなかったのかな?」

聖母「さあね。でも… 男は戻りたくなかっただけじゃないかしら?」クス

天神「なぜ、戻って自分で成し遂げようとしなかったのだろう」

聖母「この世界を… すこしの人を、すこしでも愛してしまったから。だから、それを裏切れなかったのよ」


天神「君はまるで聞いてきたかのように話すね」

聖母「あら。男のことならよくわかるのよ」

聖母「自分自身で最期のときを迎える事すらも恐れてしまったから。それを、あなたに託したの」

聖母「この世界で彼を愛した人々のために。彼はもう先へ進むことも出来なくなってしまった」

聖母「愛してしまった人々を裏切るようなことを…」

聖母「最後の最後の、肝心な事が出来なくなってしまった。それが彼の優しさで、愛の形だわ」



天神「……彼は本当に屈折してるね。そんな愛を誰が受け止めたいと思うのだろう」

聖母「この世界の人は、何も知らずにその愛を受けて生かされているのよ?」

天神「・・・孤独だね、神というのは」

聖母「ちがうわ。心の中に、誰かが入り込みすぎているの。ヒトリになれないから、こんなに我侭になれないのよ」


天神「・・・先代を・・・『俺』を、愛してくれてありがとう」

聖母「あら。代弁?」

天神「きっと、先代にはいえない言葉だからね」クス

聖母「そうね。彼の愛は、受け取るのも捧げるのも、本当に難しくて・・・」ポロ

天神「泣かないで」

聖母「泣かせてほしいのよ」

天神「わかっているよ、でもいやなんだ。俺は『彼』で、でも我侭になれる『俺』だから」

聖母「彼の一部であるあなたにそう言ってもらえるなら。すこしは幸せだわ」


天神「・・・先代の最期を、見届けてあげよう」

聖母「あなたも。彼にとっての希望は、あなただけなのだから」

天神「もちろん。先代の・・・最期まで彼であったその魂は、必ず俺が引き継いで見せなくては」


天神「すまない」

聖母「ばかねえ…やっぱり あなたも男と一緒ね」フフ

天神「……」


聖母「そういうときは。ありがとう、って いってくれなくちゃ」ニコ…

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・


-------------------------------------


<数百年後 男と女の居た、世界>

キィィィィン…
シュパン!


天神「…っと」

トンッ…

天神「…ここが、先代の元いた世界だろうか?」

天神「まったく。世界を創ったくせに、こちらの世界に来る方法は考えて無かったなんてありえない」

天神「本当に、大変なことをやりのこしてくれたものだよ…」ハァ


天神「まあいい。先代は永久の呪いをかけて生き永らえさせた、と言っていた…ずいぶんなおばあさんになっていなければいいがね」

スタタタタ…


・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・


<山の中>


天神「思ったよりも大変なことになっていた」

天神「先代は時間をかけすぎだな。いくらなんでも非道すぎると思うのだが」

天神「……それとも、それすら必要だったというのかね」

天神「まあいい。ようやく、見つけた。おそらく…間違いないだろう」


天神「この家だ」


トントン

?「…誰!」

天神「『やおびくに』だね。この世界で伝説とされる女性…」

?「…私は、そんなものじゃないわ」

天神「知っているよ。……『女さん』」

?「!!」


ギィッ… 

天神「おや。そちらから開けてくれるとは思わなかった」

女「あなたは……っ!?」

天神「お目にかかれて光栄だよ。まあ、必ず探し出すつもりだったのだけどね」

女「……私の本当の名を知っているヒトなんてもういないハズなのに。おかしいと思ったわ」

天神「それについては本当に申し訳ないと思っている」

女「申し訳ない、程度で許されると? あなたをどれだけ探したと思っているの」

天神「残念。俺は、君の知ってる彼とは違うものでね」

女「そんな言い訳が通じると思うの? 同じでしょう? 見た目も性格も、かわらないじゃない」

天神「近年の彼は随分と変わっていたけれど。俺はちょうど同じくらいのようだね」

女「……どういうこと?」

天神「俺は、正確には2代目なものでね」

女「息子…ということ?」

天神「正解」


女「……あいつはどうしたの」

天神「……彼は不死なんかじゃなかった。魂を使い果たして消えた…いや、僕の中に居るのだけれどね」

女「……」

天神「どうかしたかね。彼の死を悼んでくれるのだろうか」

女「いいえ、絶望しているの。どこかに私の仲間がいると思って、今日まで生き永らえたのよ」

女「不死だといったあいつだけ、私のことを知っている。探して探して、どれだけ探して求めたかわからないのに」


女「勝手にひとりで死ぬなんて」


天神「……仲間、か。確かに君にとって、随分と長い間の孤独だったようだね」

女「あなたに、何がわかると…!」

天神「わかるよ。俺は彼自身でもあるのだからね」


天神「彼の元へいきたい? まあ、俺の元でもあるのだけれど」

女「……ああ。何をしに現れたのかと思ったら…そういうこと?」

天神「何か察してくれたのかね」

女「私の記憶の中にある、あいつの最後の言葉。それを忘れたことは無いわ」


『悔しいから、君の生涯だけは俺が貰っていく』
『いつか、君を殺しに来るまで…この世界で いつまでも待っていてくれ』
『それまでは、苦しみの中で。俺の救いを待っていてくれ』


女「……あなたは、私を連れにきたのね」

天神「ふふ…そんなことを先代は言っていたのか」

女「殺しに来たのでしょう。私に散々、あいつのことを考え続ける生涯をおわせて」

女「その生涯を、もらいにきたのでしょう。あいつに殺される幸せを待ち遠しく思う、私の生涯を」

天神「…………」

女「ようやく…今度こそ、地獄へ連れていってくれるのね」


天神「何か、勘違いをしていないかね」

女「勘違い?」

天神「どうやら先代は、地獄への案内人は廃業させられたようでね。君のせいだけれど」

女「……じゃあ、何をしにきたの」

天神「まずは、君を彼女にするためかな。それから、先代のやりのこした『彼女との約束』を果たしににきたんだ」

女「……か、彼女にする、ですって?」

天神「そう」

女「……まるっきり、あいつと同じじゃない」

天神「そうなのかい?」

女「そうよ。いきなり目の前に現れて、私が『あなた、だれ。何をしにきたの?』と聞いたら……」


『君の彼氏。 君を彼女にするためにきたのだよ』


女「なんてふざけた現れ方をしたのよ」

天神「それは知らなかった。一定より昔の彼の過去についてはあまりよく知らなくてね」


女「それで?」

天神「それで、というと?」

女「あなたは……  私で、何人目の彼女?」

天神「知りたいかね?」


天神「……く、あははは」

女「はぁ… またそれ? あなた、本当はやっぱりあいつなんじゃないのかしら」

天神「いや、これはね。彼の口癖だったのだよ」クスクス

女「じゃあ、どうしてそんなに笑うのよ」

天神「君とのやりとりがよほど好きだったのかもしれないね。魂が喜んでいる」クスクス

女「意味がわからないわ」

天神「俺にもわからないよ。まったく、本当におかしいのだよ、先代は」


女「それで…何人目なの?」

天神「何人目だと思うの?」

女「…99823人目でなければ別にいいの。また同じ繰り返しはごめんなのよ」

天神「そんな中途半端な数字をよく覚えているね」

女「……あのひとが、彼にとって記念すべき99823人目だといっていたから」

天神「覚えにくいことこの上ない。ごろあわせにもならないし…優しくないね、先代は」

女「優しさなんて期待していないわ」

天神「ならば俺は優しくしよう」

女「どういうこと?」

天神「覚えやすい数字にしてあげるってことだよ」


女「……42090人目とかかしら」

天神「桁がそういうレベルなのは疑わないんだね。結局覚えにくいよ」

女「ゴロはいいわ。42090…『死にまくれ』。呪いでも掛けられそうだもの」

天神「相当ひどい男だと思われていたようだ」

女「あたりまえじゃない…本当に、一体私がどれだk


天神「一人目の彼女」

女「え?」


天神「……記念すべき一人目だというのに、何か不満なのかな」

女「……あ、あまりに意外だっただけよ」


天神「俺にとって、君は最初の彼女。間違いなく記念すべき存在だ」

女「……」


天神「迎えにきた。約束通り…君を、救いにきたんだ」

天神「この世界で処罰されない方法で、この世界のルールに従ってね」

女「……この世界で処罰されない…この世界の、ルール…?」

天神「俺の世界に来ないか? 言うまでもなく、素敵な所だよ」

女「おぼえてるわ。また私をひっかけるつもりでしょう」

天神「ひっかける?」

女「そう。桃源郷か理想郷のイメージ図のように表現して、私にそこに行きたくないと言わせたのよ、彼は。 本当はそこが地獄で…私はそこに行きたかったのに」

天神「……ああ、なるほど」

女「連れて行って、素敵なところへ。そこは地獄なのでしょう」



天神「……いや。どうやら彼のほうが君よりも策士のようだね」

女「……どういう、こと」

天神「連れて行くのは、イメージどおりの『理想郷』だ。まさしく、皆が天国と呼ぶ世界だ」

女「なっ…!」


天神「花は咲き、穏やかな風に揺れて… 人々は心豊かに笑顔に溢れている」

天神「閉ざされた世界の中で、魂は転生を繰り返しては成長を重ね、その一生を謳歌していく」

天神「挫折し後悔しては、希望を胸に立ち上がる」


天神「……それが彼の用意した… 彼が『生涯を掛けて創った世界』だ」

女「ふふ…なんのつもり? 地獄の案内人が理想郷をつくる? そんなわけないじゃない」

天神「望むなら、いますぐに連れて行ける。嘘ではない……」

天神「君に 嘘をつきたくなかったから。 …来ないとわかっている場所でも、律儀に完璧に創ってしまったのだよ、先代は」

女「嫌がらせのために、随分と徹底しているのね。でも…そうね、そう考えればすごくあいつらしい気もするわね」

天神「嫌がらせ。嫌がらせ…なんだろうね。あそこまであの世界に絶望していたから」

女「あいつの死を、聞かせて」

天神「理想郷の神だった。誰もが彼の死を悼み、この素晴らしい世界を創ってくれたことに感謝をして。彼は最期まで、自分たちを救うための存在だとして、それを疑われなかった」

女「……それは、絶望でしょうね」

天神「いつだって苛まれていた。自分が言葉にすることで、本当にこの世界を… 彼を愛する人々を裏切ることになるのを恐れて…」

天神「自分自身である『俺』以外には 誰にも、何もいえないまま… ただ、愛されて死んだよ」


女「理想郷を創ったのに… 自分にとっては地獄を創っているようなものね」

女「残酷。愛に溢れているのに、そのひとつも手に取れない世界。いい気味だわ」

天神「彼の創った天国は、嫌かね?」

女「行きたくない。絶対にいやよ、この世界をさらに腐らせて熟させたような世界じゃない。連れていかないで」

天神「どうしても?」

女「そんなところに行くくらいならば、まだ今のまま… 『化け物』としてでも生きていく方がマシだわ」

天神「化け物として生きていきたいんだ?」クスクス

女「~~~っあなたって本当に最悪のゲスね!! 何もわからないくせに!」

女「あなたたちの世界なんて、絶対に行かない!! 用意された理想郷なんか、要らない!!」


女「そんなところで生きるくらいなら この世界に生きていたほうが余程幸せだわ!!!!」


天神「そう言うと思ったよ」


女「何を…!」

天神「よかったよ。君が… 彼の好きだった君のまま、変わらないでいてくれて」

女「…え?」

スッ…

シュパァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!


天神「……」

女「っ、う…!?  か、は」 ガクガク

天神「君の魂から、残りの生をもらったんだ」

女「は…っ、苦、しい…」


天神「可哀想な俺の彼女」


天神「化け物と罵られ、苦痛の中でも生きながらえ…待ち望んだ仲間とようやく出会えたと思ったら」

天神「そいつは仲間ではなく、ましてや仲間など居なかったと知らされ、期待していたことの全てを裏切られる」


天神「それでも、それにのるくらいならば 『化け物と罵られるようなこの世界』にでも、まだ生きていたいとようやく願えるようになったのに… 」

天神「仲間によく似た他者に心を許した瞬間……気紛れに、生を、奪われてしまったね?」

女「……ッ!」カハッ


天神「ここまで最低最悪なことってあるだろうか」

女「…自分で、した、くせに…」

天神「言っただろう? 俺は君を、殺しに来た。そして救いにきたんだよ」クス

女「苦しいのも、生きるのもいやだったのに…苦しませて生かして、また苦しませて殺しにくるなんて… 案内人を、廃業させられたこと…そこまで、恨んで、いるのね」

天神「恨む?」


天神「とんでもない。愛しているよ、僕の一人目の彼女。先代は愛しすぎたようだけれど」


天神「君だって、俺を…彼を愛してくれていたみたいだね」

女「唯一の…不死仲間、だっただけよ…」


天神「不死にしたのも彼。支えていてのも彼」

天神「そして今、生きていたいと願った途端にその人物らしき者に、苦しめられて殺される」


天神「どう、裏切られた気分がする?」ニッコリ


女「は…、やっぱり…最低最悪の…クズ、ね…」

天神「その通りだよ」



天神「だから…



「俺が君から全ての救いを奪うことで、
君はこの世界の神の慈悲を受け、この世界から赦され、
それに見合うだけの…本当の望みを、叶えてもらえるようになるだろう」



女「…え…」


天神「今度こそ、何もかもを正しくやり直す機会をもらえる」

天神「もう、苦しむことも悩むこともない…天国や地獄のような場所に魂を閉じ込められることもない」

天神「いますぐにそんな人生を、終わらせて…新しく、全てを忘れて、正しく初められるだろう」

女「なに、よ…それ」

天神「君はうそつきだ。地獄におちたいなどと言って、本当は誰よりも救いを求めている」

天神「それなのに絶望に落ちすぎて、もう“与えられる救い”などに手を伸ばすことすらもできない」

女「は……なにそれ」

女「つまりあいつは、『自分には救えない。私が…女が受け取らないから。』そういって逃げたのね?」


天神「違うよ。受け取らないだけなら無理やりにでも与えただろう」

天神「それもできなかった。俺や彼自身が、己のために直接君を救うことは『この世界で処罰されるやり方』なんだ。許されず、実行できないやり方なんだ」

天神「今度こそ追放じゃ済まない…彼がどれほど頑張ったとしても、君を彼はその手で救うことができなかったんだ。許してやって欲しい」

女「あ…。 それが、この世界の… 『ルール』…だった?」

天神「そう。本当の意味でヒトを救うなんてことは、神にしか許されていない」

女「ふふ…随分と、神は 傲慢なのね…」

天神「そのようだね。地獄は地獄、天国は天国、そしてこの世界のそれを美しいと思い、守るのに必死なようだ」

女「価値観の違う私が、この世界に受け入れてもらえないのは…その、せいね…」

天神「だけれど価値観の同じ先代は…君をひどく愛してしまった」

天神「その生涯を、この世界の神に… 他者に託して願うほどに」


女「私は…どこにも行かずに、このまま終われるの…?」


天神「君の意思も、思考も消える。 君がそれを望むなら。その魂は真っ白になって、また生まれるだろうけど、そんなのは君であっても君じゃない」

天神「俺も、彼も。君ですらも知らない 新しい君だ」

女「……そう。私は 私じゃなくなるのね。ただ死ぬだけじゃなくて。輪廻だのなんだのも気にせず、何の心配もなく……消える事が出来るのね」


天神「でも…責任もって、来世も見届けてあげよう。困った時には助けにこよう」

天神「何もかもを忘れてしまったとしても…必ず君を見ていてあげよう」


天神「君の存在を 愛し続けよう」


女「…押し付けがましいのね」

天神「別世界とはいえ、俺は神になったからね。どこの世界も神とは傲慢なようだ」

女「この世界の神も、こんな世界をつくったのには理由があるのかしらね…」

天神「さあね。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」


女「あなたみたいな神に愛されたせいで、とんでもない人生になったわ」

天神「神に愛されるなんて、本当に迷惑だろうね。どうか許してくれ」

女「…いい、わ…」

天神「許してくれるのかね?」

女「許さない」

天神「」


女「馬鹿ね、ひどい顔をしてるわよ?」

天神「そこは、許すといってほしかった」

女「許せるわけが無いじゃない。でも、あなたの掌でなら… 転がされるのも、悪くない気がする」

女「何かあったら、覚えてなくても、全て あなたのせいにしてやるわ…」

天神「…ありがとう」

女「何故、礼なんて。恨み続けるといっているのよ」

天神「君の望みは、この世界の神によって叶えられるだろうから…。君は来世でも、何か悪いことがあるたびに俺を想ってくれるだろう」

天神「俺を思い出してくれるだろう」


天神「それが、嬉しいんだよ」


女「あなた。本当に曲がってるわ」

天神「確かに」

女「………少しくらい否定しなさいよ」

天神「いや、確かに、やや右曲がりなんだけれどね。先代もそうだったのか…」

女「何の話」

天神「アレの話」

女「最低」

天神「大事なものだよ? 彼女との相性に関わるし」

女「……ふ」

天神「どうしたのかね」

女「ふ… ふふ。 あは、やだ、あははは」

天神「どうやら君には随分と妙なツボがあるようだ」


女「あはははは。はは、ゲホっ、ゴホ…! あ、あなたって本当に最低ね。こ、こんなに苦しいのに、まだ人の死に際を茶化すなんて、最悪の、クズ…だわ あははは」アハハ

天神「わかってるよ。でもいいんだ」

女「こんっな最低なクズが、私の最後の彼氏! 本当に、この人生にぴったりだったわ…あはは、ゴホッ、ゲホ!!」

天神「まさかの笑い死に?」

女「ふふ、ああ、ほんとに、くるしくて… もうダメ、あはは」

天神「さすがに予想外だ」


女「ああ… もう、だめ。 ふふ…おやすみなさい。ようやく、眠れる…」

天神「うん。ゆっくり、おやすみ… 永く永い、夢の世界へ行っておいで」

女「うん… ああ、ねえ?」

天神「なにかね」

女「手を、繋いでもいいかしら。彼氏なら…、そのぬくもりくらい、知っておきたいわ」

天神「……もちろん。俺も教えてあげたいと思うよ」


天神「……」スッ…

女「……」ソッ…


パァァ…

シュワ・・・・・・・シュパァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!


天神「っ! 消える!? 透けて…!!」

スカッ

天神「あ……手が…」


女「ふふ。繋げなかったじゃない…」

天神「くそ、神は本当に性格が悪いな!」

女「いつか、繋ぎにきなさいよね。あなたのぬくもりを、おしえてちょうだい」


女「約束よ」


キラキラキラ…… 


天神「あ… 消えた…? 神に、召されたのか…?」

天神「なんというかこの。まるで寝取られたような気分だ」

天神「……寝取られた…始めての彼女を寝取られたよ、神に」

天神「こんな最悪なことってあるだろうか。神なんて大嫌いだ」




天神「でも…最期に、ようやく君の笑顔が貰えてよかった」

天神「頼んだよ。この世界の、神様。 “この世界の”彼女の魂を、完全な救いへ導いてくれ」

天神「俺がどれだけしたくてもできなかったことだ。きっと神は今、最高な気分なんだろうな……。反吐が出る」


天神「………“俺”がしたかったこと、か。 彼だけではなく、俺自身も、そうしたいと思えたのかな」

天神「俺は、彼だけれど。でも、やはり俺だから。だから、すこし不安もあったのだけれど……」



天神「初代。約束通り、俺は彼女の全てを好きになれました」

天神「彼女をきちんと、愛して。それでもきちんと、この道を選んで……見送ることができました」

天神「彼女のための最良の道を、選ぶ事が出来たと思うのです」


天神「あなたの選んだやり方は、間違ってなかったのだと、思えるのです」



天神「だからもう…この心を痛めるのは、やめてください…」

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・

―――――――――――


<男の創った世界>


天神「ううーん…」


モコモコ。フワフワ。コロコロ。


聖母「……“それ”はなにかしら?」


天神「これ? 神に愛された娘の、生気だね」

聖母「それ、どうするつもりなの?」

天神「どうしようかな…せめてこれくらいは、そばにおいておきたい」

聖母「……置けばいいじゃない。ふふ、いまさらよ。男の愛した娘なのでしょう、それ」

天神「…いいのかな」

聖母「いいんじゃないかしら? 今ではあなたが、この世界の神だもの」

聖母「この世界に持ち込んだものを、好きにして悪いわけがないわ」


天神「……この世界に、持ち込んではいけないと悩み続けてたんだ。それなのに持ってきてしまったよ。どうしても手放せなかった」

聖母「本体は、逃がしたのでしょう? この世界にとっての異物である、彼女自身は」

天神「それが、彼女にとっての最良だったから」

聖母「……」

天神「……どうかしたのかね」

聖母「『人間はモラルだのルールだの、観念だの倫理だの。そういうことに縛られていないと、自分を律する事すらできない』」

聖母「逆説的に言えば、ルールやモラルや観念や倫理に縛られない場所では、自分を律せないからこそ人間なのね」

天神「人間?」

聖母「これは昔聞いた男の言葉よ。男は人間だったと言っていたわ」

天神「……先代が… 神が? 人間だった?」

聖母「そしてその魂で生まれたあなたも、きっと人間なのよ」


天神「人間……。俺は、彼女と同じ…人間なのか」

聖母「神だけど、人間であるあなた。…ここではあなたがルールだから。人間として、そういうものを抱えて手放せなくなるのは……仕方ないことよ」フフ

天神「………」


天神「…そうだね。それくらいは赦されるかな」


天神「えい」抱きッ

聖母「きゃっ」

パァァ… バシュッ!


聖母「ちょっ、何するのよ!」

天神「君の胎内に、彼女の生気を植え付けた」

聖母「なっ」


天神「産んでやって」

聖母「産む…って! 私、この娘のことはほとんど聞いていないのよ! いったいどこのどういう誰なのよ!」

天神「誰って…誰よりも優しくて報われない、病んでるオンナノコだよ」

聖母娘「えっ…」

天神「意外?」

聖母「男、オンナノコの趣味やっぱりおかしかったのかしら……」

天神「俺も愛してるんだけどね。俺の趣味もおかしいと言いたいのだろうか」

聖母娘「だ、だったら どうして私にそんなことを!? 自分でウツワを用意して個体として創生すればいいでしょう!」

天神「それだと、困るんだ」

聖母「どうして…!」

天神「妹ってことにしちゃおうと思って」


聖母「・・・・・・は?」


天神「本物は別にいるから…この子を必要以上に愛してしまわないように 規律やモラルに縛られておきたいんだ。妹として愛するならいいだろう?」

聖母「……ほんとに、そんな…人間みたいなこと、いわないでほしいわ」

天神「すまないね。でも、それだけ大切な娘なんだよ」

聖母「…私が…聖母の地位を受け継いだ私が産んだら、どうなるかわかってるの?」

天神「わかってるよ? 俺の妹。神の妹。それは、女神だ」

聖母「……いくら好きだからって…理想化どころか神聖化するのはどうかとおもうわ」

天神「俺の仲間。かわいい妹。生気によってうまれた、神聖な女神」


天神「ふふ。きっと、誰も触らせたくないくらい愛しちゃうんだろうなぁ」

聖母「…生まれる前からブラコン…なのね…」


天神「彼氏とかできたら、全力で別れさせる。彼氏を寝とってでも、誰にも触らせない!」

聖母「いくら恋敵だって同情するわ! 可哀想すぎて、彼女、ひねくれるわよ!?」

天神「それはそれで、可愛いんだろうなと」

聖母「曲がってるわ!! 」

天神「右曲がりです」

聖母「もういいわ、そういうのは!」

天神「早く生まれておいで。俺の女神」スリスリ

聖母「ちょ、ちょっと…」

天神「君のモトを救ってあげるんだから、そのかわりに君は俺に愛されてくれたまえ」ナデナデ

聖母娘「ひっ…怖いわよ! 男よりもさらに屈折してる気がするわ、あなた!」

天神「これは仕方ないんじゃないかね? だって…」



天神「彼女の全てを、好きになっちゃったんだからね?」

―――――――――――――――――


おわり。
純愛書こうと思ったんだけど、これって純愛でしょうか。

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そして、ここより下は おまけです


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・

<深夜の公園 ブランコ>


女「………」ギィ…

ヒュパァァァァ…

暗闇の公園に、突然の閃光が走った
放射状に光るその中心に、うっすらと黒い影が浮かび、次第に濃さを増していく

女「え… え? 何? まぶしい…」

スッ… トン。

影は、ヒトの姿となって 私の前に突然に現れた
まぶしさで目がくらみ、よく見えない
目を細め、意識を集中する。すると、やたらと澄んだ 甘い声が脳に響いた


?「……はじめまして」

女「え…? ええと、あなた、誰?」

?「僕の名は、3代目・天神。先代より引き継いだ、君との約束を果たすために… 遠い世界から会いにきたよ」

男だった
妙な服装をしている
でもそれ以上に発言が妙すぎる


女「人違いね」キッパリ

天神「いやいや。間違いようがない。なんとも素敵な約束だから楽しみにしてたものでね。ここに来れるようになって本当に嬉しい」クスクス

女「なんだか変なのに絡まれたわ…」

天神「ひどいなぁ」クスクス


女「……それで? なんなの、その約束って?」

天神「君に、『僕のぬくもりを おしえてあげる』ことだよ?」

女「・・・・・・・・・・・・は?」

天神「女の子にぬくもりを教える。こんなに素晴らしい使命ってあるだろうか」ワクワク

女「……」

天神「と、いうわけで。神様であるこの僕が…」

女「何」

天神「僕が天国にイかせてあげるよ」クス

女「……っは」


なんてムカツクやつだろう
嫌な事があって こうして一人で落ち込んでいるのに
現れた瞬間、いきなり傷を抉るようなことをいってくる

そりゃ、鼻で笑うってものよね


天神「いや、そんな吐き捨てるような嘲笑しなくても… 大丈夫! 最高のぬくもりをお届けするよ?」ニッコリ

女「……本当に?」

天神「もちろん! 絶対に最高にキモチよくしてみせるよ、それが僕の使命だからね!」

自信満々
顔も悪くないし、優しそうで、絶望なんてしらなそうで

面白いわ
いいじゃない、やってもらおうじゃない


女「………私ね」

天神「うん?」

女「私、うまれもっての不感症なの。体感覚ってものがない病気なの」

天神「え」


女「気持ちよくしてくれるんだっけ?」


女「……やれるもんなら、やってみなさい!」

天神「予想外だ!?」


――――――――――――――――――――

未投下SS 
天神「僕が天国にイカせてあげるよ」 女「……っは」 より
おまけでした

本当におわりです ありがとうございました!!

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