男「楽しい夢は終わりにしようぜ」女「お互いね」(33)

女「おはよう、愛しの男君」

男「…ああ、おはよう」

女「今日もクールでかっこいいわあ…ああ、惚れてしまいそう」

男「はいはい、ここがどこだかわかってる?」

女「あなたこそ」

男「もちろん…学校だろ」

女「…そうね、そうよ?」

男「だったらもう少し人目をはばかれよ」

女「何言ってるのよ男君、私とあなたの愛の前にはそんなささいなもの気にするまでもないのだわ」

男「いつからお前との間に愛が成立した」

女「そんなもの…生まれる前から!」

男「あーはいはい、授業が始まるから席につけ」

女「うふふ、はあい」

―――

男「はーあ、今日も一日退屈だったなあ」

女「そうかしら?私は一日とっても刺激的だったわあ」

女「あなたのことを、ずーっと見ていられましたもの…♪」

男「モンスター級の愛だな、お前の片思いも」

女「…!」

男「どんだけ積極的でも、べつにお前にそういう感情抱いたりしないから」

女「だから抱かせようと頑張っているのに」

男「できるもんならやってみろって」

女「なんならいますぐ襲ってくれても構わないのよ?」

女「自分で言うのもなんだけど、顔にも体にもスタイルにも自信あるし…♪」

男「…まあ、そりゃそうだろうな」

女「え?」

男「いや、別に…その見た目なら、普通にかわいいしきれいだしエロいなって思うしさ」

女「そ、そんな…照れるじゃない…///」

男「…男は見た目に騙されるバカばっかりだけど、だからってそこまで短絡的でもないぜ?」

女「…じゃあ中身重視?」

男「そう、そういうこと」

女「えー」

女「それじゃあ私の自慢のプレイで気持ちよくさせてあげたらどうなるかなー?」

男「触んな」

女「もー、いけずー」

男「ったく…」

女「ねえ、そろそろ家?」

男「ああ、そうだな…こっから左」

男「じゃあな、また明日」

女「うん、また明日!」

―――

男「…なあ、女」

女「んー?」

男「つらいことってさ…逃れるのと受け入れるの、どっちが幸せなのかな」

女「…なに急に?悩み事でも?」

男「そうだな…そんなとこ」

女「私はもちろん、逃れていたいわね」

男「どうして?」

女「だって、そのほうが幸せじゃない」

女「現実がつらかったとしても、今が楽しければ私はそれでいいんだもん」

女「それとも…男君は、あきらめたくないの?」

男「…いや」

男「けど意外だな、お前は逃れたいのか」

女「…男君絡みじゃなければね」

男「あきらめてもいいんだぜ」

女「お断り、まだAにもいってないのよ?」

男「BにもCにも永遠にたどり着かないけどな」

女「…私ってそんなに魅力ない?」

男「そういうことじゃないけど」

女「じゃあどうして…」

男「それは…」

女「…あ!もしかして焦らしてるのね?さっすが男君…意地悪なところもいいわぁ~…♪」

男「…おめでたい頭で助かったよ」

―――

男「…この学校、なんで体育で球技やらないんだろうな」

女「そりゃ、危ないからでしょ」

男「危ないか?」

女「だって、碌なボールがないし」

男「代わりになりそうなものならそこらじゅうに転がってるだろ」

女「危なっかしいのばっかりだって」

女「…ねえ、あのさ」

男「そっかあ、それじゃあ仕方ねえな」

男「まあ、走るのも嫌いじゃないからいいけどさ」

女「…そうね」

女「私も男君の走る姿、嫌いじゃないわよ?」

男「黙ってろ」

―――

女「男君ってすごくクールよね、昔からそうなの?」

男「昔ってどのくらい昔?」

女「んー…文明が滅びる前くらい昔」

男「普通に『生まれたときから?』とかでいいだろ…まあ、そのくらいからずっとだな」

女「そっかあ…やっぱりモテたんだろうなあ」

男「…俺みたいなやつ好きになったのは後にも先にもお前みたいな変わり者だけだ」

女「まあ、そんなこと…///」

男「べつに褒めてはないぞ」

女「でも嬉しいわ、それってあなたを独占できるってことだもんね」

男「…そうなるな」

女「他の誰にも取られないもんね、一生二人きり」

男「俺はお断りだけどな」

女「またまた、相変わらずお堅いわね…だけどそういうとこ、好きよ」

男「はいはい」

―――

女「エッチしません?」

男「しません」

女「……」

男「……」

女「チューしません?」

男「しません」

女「……」

男「……」

女「じゃあ一緒にお風呂にでも」

男「いや、無理だろ」

女「えっ」

男「無理」

女「……」

男「……」

―――

女「男君、好きよ」

男「ああ、知ってる」

女「男君、愛してます」

男「おう」

女「なかなかそっけないわねー…」

男「まあな」

女「けど実はあなたの童貞、もう奪っちゃってたりするのよねえ…」

男「…冗談でもやめろ、鳥肌が立つ」

女「ばれちゃったか」

男「……」

女「じゃあ今夜は夜這いにでも…」

男「やめろ」

―――

男「ただいまー」

女「おかえりなさいあなた」

男「なんでてめえがここにいるんだ」

女「ご飯にする?お風呂にする?それともわ・た・し?」

男「うるせえ黙れ、分かれ道で別れたはずだろうが」

女「でもでも、私たちの家結構近いし」

男「いや帰れ」

女「たまにはいいじゃない?こういうのも」

男「よくねえ帰れ」

女「んもーう、ツンデレなんだから」

男「比率は10:0だから帰れ」

女「いつか0:10にしてみせるんだからねっ!」

男「それはもうツンデレじゃねえよ」

―――

女「男君、触手ものとか好き?」

男「最近嫌いになったね」

女「うーん…じゃあ押しかけ女房とか」

男「それも最近嫌いだね」

女「えっとー…じゃあ異種姦?」

男「いや元から無理」

女「困ったなあ、なんでそんなに好き嫌いばかりしてるのよ」

男「大体お前のせいかな」

女「じゃあ最近は何でオナニーしてるのよ?」

男「お前のせいで妄想ばっかりだね」

女「そうね、見てるもん」

男「見てんじゃねえよクソストーカー」

女「して、内容は?」

男「スク水、妹、緊縛」

女「わお…男君には無縁のものばかりね」

男「お前のせいでな」

―――

女「しりとりでもしない?」

男「…暇つぶしにはなるだろう」

女「じゃああなたから」

男「俺からかよ…しりとり」

女「理性的で理知的なところがかっこいいわ…」

男「……わんこそば」

女「バカ、アホ、クズ、雌豚…はぁん、もっとののしってぇ!!」

男「…えんぴつ」

女「突いてぇ!もっと突いて!ぁっ、いいっ!そこいいわぁ!」

男「…アホ」

女「ほぎゃあぁぁぁぁ!!らめぇ、きもひいいっ、おまんこきもひいいのぉぉぉ!!」

男「…お前みたいなやつのことをなんていうか知ってるか」

女「かしこい!?かわいい!?女ーチカァ!?」

男「呆れて物も言えない」

―――

女「男君、今日は裸エプロンにしてみたわ」

男「…あっそ、ていうかなんでまたここに」

女「そりゃあまあ、将来を約束された二人ですもの…♪」

男「俺はてめえとまぐわうつもりはない」

女「そんな…二人は運命の赤い糸で結ばれた仲でしょう」

男「血まみれの赤い糸ならまだわかるよ」

女「わかってくれるのね!嬉しいわ…♪」

男「『赤い糸』の部分しか聞いてないぞこいつ」

―――

女「暇ねえ」

男「お前のせいでな」

女「……」

男「…なんだよ」

女「…いえ」

女「あなた、何か食べたいものとかない?」

男「食べられるわけねえだろ」

女「…それもそうね」

男「食べなくても平気な体にしたくせによ」

女「…けど、あなたには食べ物が見えるでしょ」

男「…まあな、だが所詮見えるだけ」

男「腹が膨れるかは別問題だ」

女「…そう」

女「あなたやっぱり気づいて…」

男「…だとしたらどうする」

男「殺すのか?」

女「…いえ」

男「…あっそ」

―――

女「天体観測でもしましょ」

男「お断りだ」

女「どうして?」

男「見ようと思えばいつでも見られるだろうが」

女「…見せるつもりはないわよ?」

男「…そうか」

男「別にしたいわけでもないからいいけどな」

女「綺麗だとは思わないの?」

男「…星はな」

女「じゃあ何なら綺麗だと思うわけ?…もしかして、いやもしかしなくても、私?」

男「つまらない冗談はよせ」

男「お前が俺の代わりに壊したもの全部だ」

女「…愛国精神満載ね」

男「…腐った国だけど、腐った雌よりはマシだったさ」

女「雌だなんて…そんな罵り言葉興奮しちゃうじゃない…」

男「……」

―――

女「…ねえ」

男「んだよ」

女「…あなたにはもう、見えてるの?」

男「聞かなきゃわからないか?」

女「…確かめておきたくて」

男「…それも、改めて確かめないとわからないのかよ」

男「俺は馬鹿だから自分から喋ってるのにさ」

女「…全部回りくどいわよ、はっきり言って…」

男「…どうせわかってること、改めて口に出してどうする」

男「何の意味があるんだ」

男「…この世界も、俺の人生も…」

女「…意味ならあるわよ、私がいるじゃないの…」

男「…いい加減にしろよ、お前なんか…」

女「…でも…でも、好きなのよ…」

女「私、あなたが好きだから…」

男「……」

女「…ごめんなさい、忘れて」

男「…ああ」

―――

男「…あのさ」

女「なに?」

男「死ぬのって、どんな気分なんだろうな」

女「……」

男「地面から湧き出した無数の触手に、口から、鼻から、耳から、目から、性器から…」

男「…入り込まれて、体中ぐちゃぐちゃにされて殺される気分って、どんななんだろうな」

女「…恨んでる?」

男「…当然」

女「……」

男「女、お前は俺のことが好きか?」

女「うん、とっても」

男「そうか…でも俺はお前のことが嫌いだ」

女「……」

男「わかってるだろ」

女「…うん」

―――

女「男君、おはよう」

男「ああ、おはよう」

女「今朝も学校に…」

男「…無理してるだろ」

女「…な、なにが…?全然、そんなこと…」

男「…現実を見ただろう、お前も」

女「……」

男「…言ったはずだぞ、俺はお前のことが嫌いだって」

女「…でも、私は…」

男「…まだ好きなのか?俺のこと」

女「……」コクン


男「…あのさ、ほんとにいい加減にしてくれよ」

男「いったいどこの世界に、母星の仇と一生をともにしたがる人間がいるんだよ」

女「…だって、だって私…」

男「…もうこの地球には朝も来ないし学校もない」

男「当然だ、お前が全部…全部全部ぶっ壊しちまったんだから」

女「…見えてたんだね、やっぱり」

男「…お前こそ、わかってたんだろう?」

女「…いつから?」

男「…さあな」

男「最初はお前の幻覚にずっと騙されてた」

男「お前の起こした『破滅の日』、その翌日からだ」

男「…なんだ、あれは夢だったのか」

男「世界を呑み込む触手の被害なんて…最初からなかったんだ――ってな」

女「そうよ、なかったの…あなたは、ずっと幸せな世界に…!」

男「…うるせえ、黙ってろ」

女「……」

男「…お前のみせた幻は完璧じゃなかったんだよ、最初から」

男「俺の知ってる街の幻、俺の通ってる学校の幻、俺の好きだった人たちの幻――」

男「…ベースこそ合ってたけど、細かい間取りとか、店やビルの場所とか、言動とか…」

男「そういうちょっとしたところが間違ってた」

男「そしてそういう間違ってる部分は、時空の歪みのようにぐねぐねと波打って見えた」

女「……」

男「…しかもその時空の歪みからは、お前の見ている世界が…俺たちのいる、真実の世界が見えたよ」

男「荒廃しきって、建物どころか…植物や水、陽の光すら差し込んで来ない、暗黒の世界」

男「学校に球技がないのも、家から家まですぐ来られるのも、余所から丸見えなのも、スク水も妹も緊縛も存在しないのも全部納得だよ」

男「…お前が跡形もなく、この世界の文明ごと…触手の力で滅ぼしたんだからな」

女「……」

男「そもそもおかしかったんだよ、俺が目覚めたその日に」

男「…お前は…俺の見知らぬ少女の姿をしたお前は、俺の枕元にいた」

男「しかもこんな美少女が積極的にアプローチかけてくるもんだから、俺は当然戸惑ったさ」

女「そんな、美少女だなんて…ほめすぎなのだわ…///」

男「……」

男「…けどあるときお前に触って気づいた」

男「感触がな、明らかに人間のそれじゃないんだよ」

女「…うかつだったわね」

男「そのとおりだな、てめえは幻術に関して詰めが甘すぎた」

男「俺の見てる世界だけを誤魔化して、触覚に働きかける術を持っていなかったんだ」

男「…人を不死身の存在にするわけのわからん術や」

男「太陽も月も地球もぶっ壊したほどの力を持つ触手まで備えているのにな」

女「…そうね」

男「それと…いっぺんだけ時空の歪みからてめえの姿を覗き見たことがあるがな」

男「…残念ながらてめえとまぐわうのは正真正銘無理ってもんだ」

男「てめえの姿を一言で表すなら…そうだな、【異形】とでもいうべきか」

女「…ひどい…」

男「地球人の感性には…グロテスクすぎて合わなかった、ただそれだけだ」

女「…中身で判断するんじゃなかったの…?」

男「うるせえよヤンデレクソメス他星人、惚れた異星人の独占のために文明ひとつぶっ壊すようなキチガイなんざ外見抜きでもお断りだ」

女「そんな…ひどいよ、男君…」

女「私はただ…宇宙をお散歩してた時に、あなたの姿を見つけて…」

女「ひと目ぼれして…絶対に、絶対に私のものにしたいって…」

女「そう思って…邪魔なもの全部取っ払って、ふたりだけの世界を作りたかっただけなのに…」

男「……」

男「俺に幻覚を見せたのはなんでだ?」

女「…それは…男君に、少しでも悲しんでもらわないようにしたかったの…」

男「…じゃあ文明を滅ぼすなんてバカな真似、しなくたって済んだんじゃないのか」

女「今言ったでしょ…私が住むには、この星の環境は息苦しすぎたわ」

女「宇宙人の存在なんて、せいぜい都市伝説にすぎなかったと聞いてるわ」

男「ああ、誰も信じちゃいない…俺もこうなるまでは信じてなんかなかったさ」

女「でしょ…コソコソ存在を隠しながら生きるなんて、私には窮屈過ぎて耐えられない」

男「…移住って手は?お前と一緒になる気なんかないけど、一応聞いとく」

女「いろいろ手間がかかるのよ、異星間での移動は」

男「…あっそ」

男「…結局お前は…二人だけの夢の世界を作りたかっただけってわけか」

女「…ええ、そのとおりよ」

男「なあ」

女「…まって、いいたいことはわかるから」

男「…そうか」

女「いま、覚悟きめてるとこよ」

男「…なんだその言いぐさは…化け物の分際で、罪の意識があるとでも?」

女「…罪っていうか…虚しくなってきちゃったっていうか」

男「…この現状が、か」

女「…うん」

男「諦めたんだな、何もかも」

女「…うん…だって私のやったこと、何もかも無意味だったみたいだから」

男「なに、俺の人生よりは有意義だったと思うぜ…最後の最後に、情熱的な恋ができただろ」

女「…そうね、ごめんね…」

男「謝って済むんなら、はじめから生きるための惑星なんかいらないんだぜ」

女「……」パァァ

男「…なにをした」

女「…あなたの不死身の力を失くしたわ」

男「…そうかい、ありがとさん」

女「お礼を言ってもらえただけでも…幸せだわ、私」

男「…母星の仇にこんなこと言うのも変だけど、来世じゃマシな恋愛しろよな」

女「…そうね、そうするわ」

男「それじゃあ、そろそろ…」



男「楽しい夢は終わりにしようぜ」

女「お互いね」



―終―

支援と思ったが終わってた

なんだ、サヤウタか

おつん

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年11月22日 (日) 23:28:17   ID: 3sBYFPbs

なかなか良かった

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