【fate】ウェイバー「ステータス低いサーヴァント引いた」【東方】 (170)

たったご都合主義でやって且つ、できるだけfate/zeroの流れに合わせる

東方とfateのクロスオーバー的ななにか

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1368360618

「・・・」
 白黒の衣服をまとったウェイバーとそうかわらない歳の金髪の少女がそこにいた。
 ロードエルメロイに自分の論文を馬鹿にされ聖杯戦争への参加を決めて数日。
 当然のことながら聖遺物というものがみつかるはずもなく
 やけくそ気味でウェイバーベルベットが英霊を召喚した結果がである。
 触媒無しでの召喚は召喚主と根が近いものが呼び出されるため
 不仲になるということは無いだろうが召喚した英霊が何者なのか
 わからないというのは不安である。一介の魔術師と歴史に名を残す英霊とでは
 天と地ほどに実力の差があるのだから、令呪による縛りがあるとはいえ殺されても可笑しくないのだ。
「・・・?」
 少女はいぶかしみながら様子を見ている
(なんなんだよ・・・この子が英霊・・・?)
 まったく持って英霊には見えない
 ウェイバーが馬鹿にする漫画にでてくる魔術師がよくもっている箒を握っている当たり
 キャスターのクラスだろうか?
 そうこう考えているうちに少女が不思議そうにいった
「えーと・・・ あんたが私のマスターか?」

「は、はいっ!?」
 疑問系・・・?疑問系ッ!?ウェイバーの頭が素早く廻る。
 目の前にいるのがマスターかどうかの確認かどうかではない。
 今の言葉は明らかに彼女自身が”言わなくてはいけない”と感じていっただけだ
 それゆえの疑問系。聖杯戦争に呼ばれる英霊には必ず願いがある。
 聖杯に託す願いがあるからこそこの場に呼ばれることになるのだ。
 つまり、ここに呼び出されてまでその疑問を投げかけることはありえない。
「んー・・・ なんかいきなり今までしらなかった知識が流れ込んできて凄く不快なのぜ
 そもそもわたしが英霊ってなんなんだ」
 少し男っぽい口調で少女は言う。
 聖杯には過去の英霊を現代に呼び出す時に一般的な常識を知識として付与する。
 文化の違う彼等に違和感なくそれを与えるのはもはや奇跡とよぶべき大魔術である。
(そうだステータス・・・ 意識すれば見えるはずだ…)
 きょろきょろと周りを見る彼女の姿を凝視する。
 決して胸を見ているわけではない。マスターとして聖杯から与えられた能力を確認する。
 クラス:ライダー
 『筋力:E 耐久:E 敏捷:C 魔翌力:B 幸運:A+ 宝具:A』
 『騎乗:C 心眼真:C 対魔翌力:C 魔術:B 弾避けの加護』
(控えめなステータス・・・いやなんだこの貧弱なステータス・・・
 しかも魔翌力だけってライダーというよりキャスターじゃないか・・・)
「おい」
「はい!?」

 思考をめぐらすウェイバーに少女が話しかける。
「わたしはよくわからないがこの聖杯戦争とやらに参加しないといけないのは分かった
 マスターって奴が必要なのも。お前はマスターじゃないのか?」
 聖杯から得た知識なのだろう。それを口にだしている。
「ぼ・・・ぼくが君のマスターだ
 マスターに向かってその口は失礼なんじゃないか!?」
 精一杯の虚勢。
 ステータスがいくら低くとも英霊。ウェイバーを軽く[ピーーー]程度の実力はあるはずだ。
 一発目から下に見られてはいけないと胸を張る。
「しらん」
 少女は切り捨てる。
 思わずいらっときたウェイバーは思わず令呪を使おうとするが踏みとどまる。
 召喚したばかりで3画しかないものを使うなんて言語道断。愚考の極み。
 魔術師として未熟ではあったがそれを把握するだけの精神的余裕はあった。
 令呪は絶対命令権、3画消費した途端に殺されることもありうるのだ。
「この世界ではスペルカード・・・宝具っていうのか…いくつ使えるのかな
 対人・対城・対軍・・・よく意味がわからんのぜ」

(ランクは低いけど対人・軍・城と揃っているのか・・・!?)
 ウェイバー心から安堵する。
 多数の宝具が存在するということは状況に応じて使い分けられるということ。
 ステータスこそは貧弱だが相手との間合いに応じて宝具を使い分ければ勝機は十分にある。

 まさにマスターの腕の見せ所というわけだ。
 この貧弱なステータスなサーヴァントで勝ち抜ければ自分の自信にも繋がるはずだ。
 ライダーのクラスを生かした長距離の魔術戦に望めば敏捷の低いクラスなら完封できるかもしれない。

「まぁこれはわたしにとって”異変” 異変を解決するのは私の仕事だ」

 一通り状況を整理し終えたのか少女はウェイバーのほうを見る。

「まああんたがマスターだってのは分かったから自己紹介といくぜ

 霧雨魔翌理沙、普通の魔法使いだ」

――

「天秤の守り手よ――」

――


 1時間前――英霊召喚の折、衛宮切嗣の前に現れたのは紅白の巫女であった。

 騎士王召喚のための触媒を使わないと決めた切嗣は、触媒無しでの召喚を決めていた。
 魔術師殺しの異名を取る彼にとってもっとも必要なのは忠実な駒
 騎士王のような英雄然たるした英雄を招いても切嗣の命に従わない可能性は非常に高かった。

 それどころか、「英雄」を招けばその分だけ切嗣の理想と衝突する可能性がある。
 衝突を避けるためにはできる限り己と誓いサーヴァントを召喚する必要がある。

 そのため触媒無しのほうが忠実な駒が手に入る可能性は英雄然とした英雄呼び出すより高い。
 最悪マスターとしての権利さえあれば衛宮切嗣という人間は全てのマスターを殺戮してでも聖杯を手に入れることができる。
 それが魔術師殺し衛宮切嗣だった。

 マスターを殺されたサーヴァントに再契約を持ちかけるという方法もある。
 サーヴァントは願いをもって召喚に応じる。
 マスターを殺されただけで聖杯を諦めるとサーヴァントは少ない。

 衛宮切嗣の勝利にとって必要なのは己のみである。
 故に―― どこの馬の骨ともしれぬ英霊の方が相性のいいだけマシと考え――

 その思惑は失敗であったと彼は召喚後に思った。

 筋力:D 耐久:D 敏捷:D 魔力:B 幸運:A 宝具:EX
 陣地作成:C 直感:A 対魔力:C 心眼偽:A 弾避けの加護
 
(最優のサーヴァントとは思えないほど貧弱なステータス・・・
 EXの宝具は魅力だが運と直感だけで戦えとでも言うのか
 本来魔術師のクラス特性である陣地作成・・・わけがわからない)

「あんたさっきから黙ってばっかりじゃなくてちょっとぐらい話したらどうなの」

 博麗霊夢、そうなのったサーヴァントは感情を激しくぶつけてきた。

「ま・・まぁ落着いて。切嗣も色々と考えてるみたいだし・・・」

 アイリスフィール――アイリがこの1時間で何度目かわからない停止の言葉を発した。
 霊体化不可能…触媒無しで召喚した場合に課せられるペナルティは存在しないはずであるが
 このサーヴァントはそれができなかった。
 しかもおおよそ忠実な駒とは言いがたい性格をしている。
 聖杯にかける願いは無い、しいていえばお金。

 幻想郷という場所の出身だと主張する少女
 アインツベルンの記録に幻想郷なんていう場所は存在しない。
 アインツベルンが把握していない英霊など存在しえない。完全に謎のサーヴァントあった。

「失礼なこと考えてそうな顔ね」

 巫女の勘・・・そんなことを言い出しそうな顔で切嗣をみる。
 切嗣は最低限以上の会話はする気がないといわんばかりに無視を決め込む。

 アイリに対する彼女の宝具の説明は要領を得なかった。
 使用出来る”スペルカード”は7つ。一度使うとこの聖杯戦争中にはもう二度と使えないと言うのだ。
 ステータスは低いが7つの宝具は魅力。相手によって使い分けることが可能である。
 さらにこの宝具は特殊な効果があるらしい 

(宝具が尽きるまでは何度でも再挑戦(リトライ)できる・・・全てを合わせた上でEXということなのか・・・
 この再挑戦というのが甦生ということなのか時間を巻き戻すかなのかで大きく状況が変わる)

 この点についてふかくきいても巫女の返しといえばその場からでもいいしその戦場からでもいいと要領を得ない。
 似た者が呼び出されるどころか価値観が違うのだ。
 これであれば価値観がちがっても道具としての性能が保障されている騎士王のほうがいくぶんかマシ。

 さらに傍若無人な少女との会話はドッチボールというのが相応しい。
 幻想郷というのが本当に存在するのであればそこの住民は皆この巫女のようなものなのかと
 どうでもいい諦めを感じつつ巫女を見る。

「失礼なことは考えていないよ
 君がどの程度”使える”のか考えていただけさ」


 ――ピシッ

 そんな音が聞えたきがした。
 この世界にわけもわからぬまま召喚され、呼び寄せた人間から碌な説明を受けられず。
 巫女の怒りが頂点に達した。巫女が神を呼ぶときは要件を伝える。

 だからといって神を道具扱いすることは無い。

 だがこの霊夢という少女が怒ったのはそれが理由ではない。
 「巫女」という道具としての扱いは幻想郷の住民からされている。
 霊夢の先代にいたっては「巫女」としか記憶されていないほどだ。

 しかし先ほどの切嗣の発言は彼女のプライドを傷つけた。
 何者にも縛られないはずの彼女が令呪でしばられている。
 さらには異変だというのにいつもとは違うことに意味の無い不快感を感じている。
 9割9分理解できない現状に対する八つ当たりである。

 令呪の縛りで切嗣へその八つ当たりはできない。
 アイリには恨みはない。
 ならば傍若無人な巫女がぶつける対象はただ一つ。

「ならさっさと命じなさいよ 聖杯を取って濃いと
 こんな異変さっさと終わらせておちゃでものみたいの
 私は博霊の巫女よ」

 この聖杯戦争という枠組みそのものである。

プロローグ:召喚後

終わり
久々に書いてるから誤字脱字文法の不備には気をつけて生きたいね
基本的にfate/zero準拠でいくからこの2人が出てない所は全カット
さくさくやって完結させます

セイバー=霊夢
ライダー=魔理沙

だけだね
投下量は多分1回にこの程度だと思います
あと色々投下時の不備指摘してくれたひとありがとさん

投下します
一応最終話まで考えてあって
全部理由つけてはあるから最終話にまではまとまる予定
色々意見あると思うけど最終的に納得してもらえれば嬉しいかな

「さっさとかかってきなさい。私はさっさとかえりたいの。」

 夜、『巨大な寺子屋』に巫女はいた。
 戦闘の気配を隠すわけでもなく、ただそこに。
 切嗣から最低限の作戦を貰いここに立つ。
 既に人払いがなされておりその場には人っ子一人いない。
 否。魔貌の槍兵が一人。

「初陣の相手が女子とはな」

 美男子――そう思わせたがそれまで。
 巫女には天性の才がある。才だけで言えばこの場に召喚された英雄でも彼女に勝るものは少ないだろう。
 彼女はある意味での才、セイバーのクラス適性の耐魔力で槍兵の魔貌を退けた。

「あなたの顔、呪われているのかしら?」
「心配不要、貴女こそ俺の顔を見て呪われていないかな?」

 尋常な勝負を求める槍兵はきく。
 別に巫女のことを心配しているわけではなく、己の立会いのために。
 巫女はそれに不快感を感じる。魔貌からも
 それだけではなくよくわからない、いつもと違う今の状況にも

「いらつくわね、不快感を感じるだけよ」
「それだけ言えるのならば問題なかろう、フィオ――」

 風を切る音が聞える。
 名乗りを上げようとした槍兵≪ランサー≫の頬を光が掠め
 一筋の血が流れでた。

「グダグダ言ってる暇があるなら始めましょう?ランサーさん?」

 投げた体制のまま巫女は絶対の自信を持って見つめる。
 これは”異変”である。嘗ての英雄が生き返って徘徊するのであればそれは”妖怪”である
 その異変を解決し、妖怪を倒すのは巫女以外にありえない。

「人の話をきかない女子だ」

 血を拭おうともしない彼を
 巫女はお払い棒で殴りかかるもかるく流される。
 刹那悟る。接近戦では勝ち目がないと。
 幻想郷にも半人半霊の庭師のような接近戦を得意とする獲物を使うのはいる。
 その全てと霊夢は才能だけで渡り合ってきた自負がある。
 格が違う。それで全て方がつく差だった。

 相手が本気であればさっきの殴りかかった一瞬で貫かれていても文句は言えなかった。
 ランサーは殺傷能力のない棒だったからこそ必殺の反撃をしてこなかったのだ。
 次に殴りかかれば殺傷能力があろうと無かろうと 貫かれる。

 冷や汗が巫女の背に流れた、いかに強大な妖怪を打倒したところで
 いくらでもリトライ(再挑戦)ができる弾幕ごっことしての遊び。
 戦争という経験は今の幻想郷は――遠くはなれいている。
 スキマ妖怪の月侵攻なんてただの茶番――
 最後の闘争は紅霧異変の前まで遡ることになるのだから。

「ほう?まさかその棒がお前の剣だとでもいうのか?」
「そうね、私はセイバーとして呼ばれたらしいから」

 そういいながらも巫女は接近戦をする気は無かった。
 異変を解決して、次の異変が起きればそれを解決する。
 その中で邪魔する奴は全てぶっとばす・・・それが『博麗の巫女』
 針や札を投げて接近を防ぐ、それが精一杯。
 残弾が尽きれば一瞬で貫かれるだろう。
 恵まれた才を伸ばさなかった人間と恵まれた才を磨き続けたそれが英霊、その差。

(宣言さえ出きれば・・・)

 別にスペルカードの宣言は彼女に必要ではない。
 これは弾幕ごっこではないのだから宣言等という行為は必要ではない。
 宣言をするのは『宝具とかしたスペルカード』の特性を発動させるため。

「どうした?その程度で剣の英霊を名乗っているのか?」

 ランサーの動きが止まる。
 磨き上げた技術の打ち合いを楽しみにしていたのか心なしか失望の顔。

「正直今まで剣なんて握ったこともないわ、なんで私がここに呼ばれたのかすらわからない」

 だが止まった。失望のせいとでも止まった。
 霊夢はスペルカードを掲げる。
 これはただの飾り。スペルカードにはなんの力も無い。

「もう宝具を使うというのか」

 歓喜の声。
 ランサーが求めるのは強敵との勝負。
 お互いが武器を持ち戦うのはランサーの知る戦場。
 だがしるがいい。彼女”達”の戦場はランサーの戦場と同一ではない
 意味を持たせるのは強さではなく美しさ。

「見せてもらうぞ!」
「私の使えるスペルカードの枚数は7枚」

 宣言すると、この世界に来て意味を与えられた言葉を紡ぎ出す。

『神霊「夢想封印 瞬」』

 そして巫女は動いた。
 ただゆっくりと。
 ランサーは警戒を解かない。なにをしてきても対応してもいいという風に。
 ランサーの後ろへ横へ。ゆっくりと動いているはずなのに
 その動きは直線。しかし既にランサーは完全包囲されていた。
 魔力の弾や破魔の札、。セイバーとは明らかに違う戦闘スタイル。

「キャスターか!」
「セイバーよ」

 ランサーは驚愕の声を上げつつ弾幕を避けようとするが被弾する。被弾する。
 霊夢達と違いピチュることはないが確実にダメージを受けていく。
 さながらダメージ制シューティングのように。

「くおおおおおおお」

 体を捻り、とび、しゃがみ。必死に避けるランサー。
 接近でしか攻撃できない彼では必死に避け続ける間ようでは自慢の槍を霊夢に当てることができない。
 色とりどりの弾幕が次から次へと彼を襲い続ける。

「綺麗・・・」

 その姿を見て。アイリは呟いた。
 剣舞とは違う。違うがその戦闘は美しかった。
 避けるランサーの動きはまさにダンス。
 光る弾と踊っているかのよう。
 ”殺すため”ではなく”躍らせる” ”魅せる”ために存在する。。

「舐めているのか!」

 生殺しのような状況になったランサーは叫ぶ。

「これは弾幕ごっこよ? 逃げ道を完全に塞いでしまったらそれはもう遊びじゃないわ」

 それに対する巫女の返しは一言。
 幻想と運命では戦闘の形が違うのだ。

『何をしているランサー、そのような小娘に押されるんおか』

 声が聞えた。
 戦場の外から見守っている者がいるのだろうのだろう。

「我が主!申し訳ありません!」
「あんたがこいつのマスター? 私の勝ちよ 諦めたらどう?」

 声に対してかえす2人。
 この間も弾幕は飛び交い続ける。

『余裕を魅せ宝具を使わせるとは間抜けめ・・・
 騎士の誉れなどを気にするでない・・・』
「申し訳ありません!!」

 余りにも尊大なものいいに巫女は顔をしかめる。
 アイリは声の元を探している。切嗣との”作戦”のためだろう。

 切嗣の作戦は至極単純。マスターを引っ張り出して切嗣が打倒する。
 その間霊夢は耐えるだけでいい。
 この策を取るならキャスターを召喚しておけばという愚痴を城できいた気がするがきのせいだろう。

 霊夢はその作戦を聞いた時自分の力が舐められている、そう思った。
 異変解決のプロである自分が舐められている――が今は安堵。 

 スペルカードとは違う、殺すつもりの戦いをしてくるランサーと
 長時間の戦闘になったら自分は間違いなく負ける。”弾幕ごっこ”ではないため恐らく「死ぬ」。
 紅霧異変以降ごっこ遊びになれた霊夢にとって久しい感覚でもあった。

『まぁよい、不出来なサーヴァントはマスターがカバーすればよい
 令呪をもって命じる――』

 刹那――巫女に直感が告げる。
 ヤバイと。あの言葉を言わせるのはまずいと。
 しかし防ぎようが無い。アイリの様子を見る限り切嗣もマスターの居場所は特定できていない
 できることは弾幕の維持のみ

『避けよ、ランサー』

 ランサーの動きが変わる。
 初めての弾幕に四苦八苦していた動きが、さながら高難易度シューターのように変わる。
 幸いランサーに遠距離攻撃がないため極端接近を許すことは無い。
 しかし、時間切れによるスペルブレイクはスペルカードの宣言がごっこ遊びである以上刻一刻と迫っていた。

☆☆☆

「どうなってんだよおおおおおおおお」

 ウェイバーの叫びが響いた。
 箒に乗り掛ける少女にしがみつくのは男として嬉しいやら悲しいやらだったが
 そんなことを今気にかけている暇はない。
 それはしがみつかれている少女も同じ。2人は空を全力で翔けていた。
 後ろからは散髪的に殺人的な力を持った石が飛んでくる。
 それらの全てを避けつつもスピードを維持し箒を駆る姿はライダーに相応しかった。

「こっちがききたいぜ!一人抱えてくるとは言えこのスピードについてくるなんて人間技じゃねぇ!」
「人間技じゃないから英霊なんだよおおおおおお」

 そんな情けない叫びを上げつつ
 人間技ではないスピードを出す魔理沙につかまりウェイバーは叫んでいる。
 魔理沙はそんな中で文字通り、光を発見する。幻想郷では見慣れた弾幕。

「ウェイバー、一気に撒くから死んでも話すんじゃないじょ」
「ふぇ?」

 別にスペルカード、弾幕ごっこというわけではない。スペルの宣言は必要ない
 ただの移動用だ。自分はわるくないぜ。と自分に言い聞かせ少女は準備する。

「精神を集中させ、優しくミニ八卦路に呪文をかける」
「あの?ライダー?」

 怪しいことをし始めた”普通の魔法使い”に声をかける。無視されり。
 ちょっと口元が笑っているのがさらに恐怖心をあおる。

「ちょっとこわいターゲットを狙い」
「ま・・魔理沙さん?」

 ライダーと呼ばれてもわからなかったのかと思い真名のほうで呼ぶ、しかし無視。
 ぎゅっと少女は箒を握り締める。
 本人曰く、箒にのら無くても空は飛べるらしいので箒をどこか落とさないようにするためだろう。
 覚悟を決め・・・いや決めることはできないがウェイバーもとにかく少女にしがみ付く。。

「放つは恋の魔砲」 

 ウェイバーの体から一気に魔力が抜きとられる。
 つまりは、宝具の使用、またはそれに準じる行い。

 ――え?

 逃走?宝具?
 華々しく戦い認められないウェイバーにとっては繋げたくない2つの単語
 それが彼の頭の中で繋がる前に世界が動いた。

「ヒャッホーーーー!!」

 森も建物もない上空で飛ぶ。
 「マスタースパーク」と呼ばれる物を推進力してして超高速で突撃する
 スピードと火力を兼ね備えた霧雨魔理沙の集大成といえる技「ブレイジングスター」
 
 使う本人が気持ちいいと断言するその速度は神速。刹那の長距離移動を可能にする。
 推進力に使った閃光が追ってきていたもの正体、黒い鎧に直撃したのがウェイバーの眼の端に移った。
 逃げるのに必死できがつかなかったがちょっと冷静に考えればあれはサーヴァントだ。
 自分でも英霊以外ありえないと言っていた気がする。逃げるのではなく戦うべき相手。

 じゃっかんもっちりしていたが閃光の威力は絶大で鎧を吹っ飛ばす。
 一瞬で離れて見えなくなるがサーヴァントとは言え五体満足というわけではないだろう。
 サーヴァントでなければ即消滅している。そんなことを考えながら。
 まぁサーヴァントに打撃を与えれたなら宝具使ってもいいかと強引に納得して

(どこが普通の魔術師なんだよ・・・)

 余りの高速移動にウェイバーはそんなことを思って考えるのをやめた。

☆☆☆

 ≪スペルブレイク≫

 霊夢の弾幕が一瞬で消える。
 ――時間切れ。
 夢想封印は消える。

「ふ・・・」

 令呪の力とやらがあったとは言え初見で避けきられた。
 やばい――等と思いつつ次のスペルを準備。
 次は無い。次のスペルで決める。

 そんな中で現れる乱入。

「おーい霊夢!」

 なんとなくだが分かっていた。
 異変なのだ。この聖杯戦争と言うのは
 異変というのを解決する『主人公』は最低2人いる。
 博麗霊夢に霧雨魔理沙
 それが幻想郷の異変解決の顔なのだ。一人は主役。一人は脇役であっても
 2人が主人公なのはかわらない。主人公以外の物語が紡がれることはない。

「あら魔理沙、今回の異変を解決するのは私よ?」
「先に解決するのはわたしだぜ」

 笑う魔理沙。
 神社の縁側でいつもやるように。

「わたしはもう1人撃破してきたからな、さしずめ中ボスとでも言おうか」
「あら、最初の雑魚を倒したところで調子に乗るなんて落ちたわね」
「最初の雑魚にスペル避けられてる奴にいわれたくないぜ」

 掛け合い―― 調子が戻る。
 異変は1人で解決するものだ、だが競争相手というものは必要。
 博麗霊夢にとって異変解決の競争相手といえば霧雨魔理沙以外にありえない。
 いつもの主人公が揃った。

「セイバー、馴れ合いはその程度にしていただけるのか?」
『小娘が1人増えた程度ではなにもかわらんはずだな?ランサー』
「当然です我が主よ」

 置いて行かれて不機嫌そうなランサーとそのマスター。
 ランサーの発言に嘘はない。

 魔理沙がきてもなにもかわらないとこの男は本気で思っているのだ。
 私に接近戦で劣る魔理沙がランサーに勝てることはありえない。

「おおっとまった”普通の魔法使い”であるこの魔理沙様が現れても何もかわらないとはいい度胸じゃないか」
『ふん、サーヴァントも無しに魔術師がのこのこと現れるだと?舐めるなよ
 さらに根源への到達を達成しておらん小娘が魔法使いを名乗るなど――』
「表に出てこれない臆病者ははしらないのぜ」

 言葉を魔理沙が綺麗に遮った。
 ランサーのマスターは何か言い返そうとしたがやめたようだ。
 ――と、魔理沙が一歩動いた。
 魔理沙の足元が一瞬前まで立っていた場所がへこんでいる。

(あいつ…)

 ”狙撃対象”をランサーのマスターから突然登場した金髪にかえたのだということは容易に想像できた。
 この場に現れて『魔術師]を名乗るなど自分をマスターだといっているようなもの
 しかしながら銃弾は外れる。幻想郷の住民との戦いの経験と幸運が魔理沙を銃弾から守る。
 2射目を切嗣はうたないだろう。初見殺しで殺せなかったら次の初見殺しで殺す。
 切嗣はそういう人間だと僅かな付き合いの中で霊夢は確信していた。

「ふん・・・どうやら我らの戦いをよこから視ているやつがいるようだな」

 ランサーが視線で射抜く。

「先ほどの戦い方といい俺は合点がいかない、お前等はなんのために聖杯戦争に参加している?
 殺意が微塵も感じられん」
「なりゆきだぜ」
「特にないけどお金」

 即答。

 即答。

 即答だが彼女らにとっては事実。彼女らは完全に巻きこまれただけで望みなんてない。

 霧雨魔理沙は自分の努力で結果を望み
 博麗霊夢は努力を否定する。
 聖杯戦争という根源にいたる努力と、努力無しで結果を手に入れる願望機は彼女らにとって興味の対象になりえない。
 聖杯戦争が異変ごっこであれば本気で求めただろうが、2人とも既にこの戦争がごっこ遊びではないというのはわかっていた。 
 最も、自分のスタイルを崩す気はなかったようだが

「――ふん、なにを望むかと思えばその程度か
 くだらん雑種よ。そのようなことを我が財に望むなどは不敬だと思わんか」

 馬鹿と天狗は高いところがすき。
 そんな言葉を思い出す。馬鹿みたいに金ピカで天狗のように自信満々の男が屋根の上に現れる。

「我が財を求めるからには――」
「危ない!」
「王の言葉を遮るか雑種!」

 金ピカの言葉を金髪が遮る。
 遮った言葉を無視して王を名乗る金ピカは魔理沙に手を振り上げ

【aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa】

 突如飛んできた黒い塊に、金ピカの足元が吹き飛ばされた。

「己バーサーカー!下郎の分際で我を貴様と同じ大地に立たせるかつうもりか」

 そういうと再び手を振り上げる。
 こんど対象は魔理沙ではなく黒い塊。
 突如、隙間が開く。

 そこから現れた大量の剣が黒い塊――バーサーカーを襲う。
 いや、今かれの視界に入る全てを襲った。
 霊夢は咄嗟に状況についていけていなかったアイリを抱えると逃げ出す。
 直感が危険だと教える。この金ピカは”おかしい”と
 危険だと悟ったのは魔理沙も同じなのか、魔理沙も全力で逃げの姿勢に入っている。
 ランサーはアイリを抱えている霊夢を狙っているが金ピカの生み出す剣で近づくことのない位置にいる。

『ランサー、引け』

 霊夢と魔理沙が剣の掃射範囲から逃げたころそんな声も聞えてきて初戦は終わりを告げた。 

おわり
他の陣営顔出し程度で

スペルカードがどういう扱いなのかとか
そこらへんもおいおいやっていけたらいいね
なんか勘違いさせちゃったけど
セイバー霊夢、ライダー魔理沙で後はfateそのままです

復活したのでいきます
これ思ってたのと違うと思ったらできたらブラウザバックでお願いします
ぼくのかんがえたさいこうのクロスオーバーって奴なので

☆☆☆

「おーい」

 頬を軽く叩く。

「んー空が・・・彗星が・・・」
「おきないぜ」

 バーサーカーからの逃避行であっさりと考えることをやめたウェイバーはまだ眠っていた。
 先の戦闘からはせいぜい3時間程度であるが、眠っていたことは結果的してよい方向へ向っていた。
 幻想郷の住民であるが故に与えられたスキル「弾避けの加護」がなければ
 どんなに幸運であろうと切嗣の狙撃を回避することはできなかった。
 あの場にウェイバーがいた場合狙われていたのは彼だったのである。
 魔理沙はライダーのクラスで召喚されてもあくまで普通の魔法使い、決して身体能力が高いわけではない。
 自分を狙う弾丸を回避できてもマスターを狙う弾丸から守るなんて芸当はできないのだ。
 担ぐ体力も無ければ、箒に括りつけて飛ぶほど鬼畜になれない魔理沙は金ピカの
 剣が掃射の舞台となった学校からそう遠くない位置で移動をやめていた。

「うーん・・・あの黒鎧と槍の奴ならなんとかなりそうなんだがあの金ピカはちょっと怖いのぜ」

 開幕こそ黒い鎧にふっとばされ出落ちになったが自分を王と名乗るうさんくささ
 生み出した大量の剣を異空から飛ばす戦闘スタイル。
 どこぞの隙間妖怪をどうしても意識してしまう。

「話しがあまり通用しそうにないのがなぁ」

 等といいながらミニ八卦路を取り出す。
 切り替えの早さは幻想の少女達に共通する美徳である。
 火力は最低。むしろ火をつけるのではなく熱を発生させる程度で。
 山一つ焼き払う火から一晩中じっこり煮込むとろ火までの火力調節が可能。
 ”スペルカード”が宝具といえるか疑問に思える存在な以上
 彼女のもつ宝具といえる宝具はこのミニ八卦路1つといえるだろう。
 それをウェイバーの顔に思いっきり近づけた。

「・・・」

 1秒経過。
 だが2秒経過するまえに飛び起きる。

「あっちいいいいいい」

 ウェイバー起き上がり横で笑っている犯人を見る。

「何を考えてやがりますかこの馬鹿はああああああああ!!!」
「おいおい、寝坊している主人を起こすなんて従者として最高じゃないか?」 
「こういう時だけサーヴァントするな!」

 ケラケラとわらう少女を見る。
 本来なら英雄と共に戦場を翔けるはずだったのに――

 いや、確かに戦場は翔けたもののあまりにも恥ずかしい。
 気絶してなにがおこったのかまったく理解できていない。
 睡眠が取れているのが幸いだろうか。

「おいおい、襲ってきた鎧から逃がした恩人でもあるんだぜ?」
「逃がすんじゃなくて戦えバカちん!」 
「1人なら避けて上から狙い撃ちにすればいいけど、あの程度で気絶する奴がいるとなぁ」

 喉まで上がってきた文句を飲み込む。
 確かにその通りだ。
 謎の鎧はステータスが見えなかった。
 だが恐らくこのライダーよりもステータスは圧倒的に上、それだけは分かる。
 この聖杯戦争中にこの少女よりも肉体的ステータスが低い英霊は存在しない。
 
 先の戦闘は少女の”空を飛ぶ”という技の一つで生き残ったにすぎない。
 空を飛ぶという技が無ければ初戦にして脱落もありえたのだ。
 ウェイバーも時計塔のはしくれ。魔術を学んでいる。
 その中で”空を飛ぶ”という行為に成功した魔術師に聞き覚えなかった。
 セイバーやランサーだけではない空への攻撃手段を持たないサーヴァント全てを完封しかねない能力――

(どこが普通なんだよ・・・)

 心の中でウェイバーは嫉妬の炎を燃やした。

「さてどうするんだ?ウェイバー?」
「主人と従者はどうしたんだ?ライダー」


 方針を聞いて来る少女だったが、開戦までの数日で彼女の性格は理解できていた。
 自分が面白いと思う方向に行く。別に人の話をきいているわけではない。
 とにかく周りに迷惑を振りまく性格だということを。

「忘れたぜ、あと何度目かだが魔理沙でいいぞ」

 顔を赤くする。
 ウェイバーとて男である。だが初心だ。
 英雄譚にでてくるプレイボーイではないのだ。女性の名前を呼び捨て
 そんな言葉で想像するのは友人――いや、友人より一歩踏み込んだ関係。
 魔理沙はライダーと呼ばれなれていないため
 分かりやすく魔理沙と呼んでくれといっているのだと分かっていても
 ウェイバーはどうしても恥ずかしさを抑えることができない。

「僕がマスターなんだから呼び方は僕が決める。

 後ちゃんと僕のこともマスターと呼べ」

「はいはいウェイバーちゃん」

 舐められている。
 そう感じてもウェイバーは言葉を飲み込んだ。
 この少女は恐らく楽しんでいるのだ。ウェイバーの初心な反応を。
 
「さて、撃つと動く。いや撃つから動く」

 そんな風にウェイバーをあしらっていた魔理沙は突如彼を抱えて飛び上がると。星型弾を撃つ。
 狙われたものは後ろへ下がる。

「おお聖処女よ・・・なぜ・・・ 

 一瞬の光の中照らされたギョロ眼に2人は息を呑む。
 一見して狂っている。そんなことが分かる顔。

「おいおい、わたしにはあんたみたいな知り合いはいないぞ」

 空に浮いたまま。言い返す。
 そのままウェイバーに目配せ。

(こいつ、サーヴァントか?)
(間違いないええっとステータスは・・・えぇ!?)

 筋力D 耐久E 敏捷D 魔力C 幸運E 宝具A+

 驚愕に眼を見開く。

(ライダーと互角ぐらいじゃないのか…?)
(どういうことだ)
(宝具だ、宝具の力で英雄になった、あいつの宝具はやばい)

 魔理沙は山1つ焼き払う宝具、ミニ八卦路を所有する。ランクはA。
 それを上回る宝具となるとその効果は想像すらできない。
 勝敗が宝具ランクだけで決まるものではないがランクから判断するのもマスターの重要な仕事である。
 この宝具は危険だとステータスが伝えていた。

「聖処女ジャンヌよ、私のことをお忘れになったのですか?
 ジルです!ジル・ド・レェです!」
「私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだ
 ジャンヌなんてのは知り合いにもいないぜ」

 少女の背中をこづいてやる。
 真名がばれたところで「霧雨魔理沙」から、英雄譚がばれることはありえない。
 本当に存在した英霊なのかすら疑わしいのだ、それどころか霊体化の不備等イレギュラークラスの可能性すらある少女だが
 可能な限り情報がばれないほうが好ましいのは確かである。

「おおジャンヌよ・・・記憶を失いになられたのですね」
「近寄るな」

 が、その名乗りをきいていないかのように近づくジルドレイ。
 構える。 八卦路を構える。

「それ以上近寄るとごっこ遊びじゃなくて消し飛ばす
 消して飛ばすぜ うふふ、うふふ」

 黒い笑いが聞こえる。
 本気で気分を害したようだった。

「そんなにも錯乱しておいでか・・・
 今日は引きましょう・・・次こそは思い出させて差し上げましょう」

 そして闇にジルドレイと名乗ったサーヴァントは消えていった。
 本当に消えたのか何度も確認してから彼女ら地に下りる 

「なんだったんだぜ・・・」
「わ・・・わからないけどバーサーカーかキャスターだろう
 直接戦闘に向いたステータスじゃなかったし・・・」

 そこまで聞いてパチンと少女が指を鳴らす

「そうだそうだ、そういえばなんだがウェイバーが寝てる間に1回戦闘に巻きこまれたんだった」
「え・・・?」
「前話しただろ? 幻想郷には霊夢って奴がいるんだよ。偶然ってあるものなんだな、そいつがいた。
 他には剣飛ばしてくる金ピカと槍持ってるイケメン、あと追ってきてた黒い鎧も乱入してきたんだよな
 いやぁ焦ったぜ」
「・・・え?」

 こともなげに話す少女をみて悟る。
 己が華々しい初戦に出遅れたこと。
 そして他サーヴァントの情報をまだ1人だけ入手できていないということ。

「ライダーのバカちん!!」
「ん?・・・んんん?」

 叫ぶウェイバーをみて首をかしげる魔理沙だった。
 そしてウェイバーにあらかた気絶中に出来たこと話し終えてかえろうと決めたころ――
 遠くのビルが 崩落するのを見た。

☆☆☆

「あーもうなによ」

 巫女は少々不機嫌だった。
 切嗣に昨晩の戦闘で攻められたのだ。
 もっとも切嗣が攻めたのはスペルカードを勝手に使用してランサーを打倒できなかったことよりも
 ランサーの名乗りを途中でとめ、セイバーだと自分からばらしたことなのだが。

 そんな不機嫌な彼女がいるのはとある日本家屋。
 この日本家屋に陣地――結界を作れというのだ。
 霊夢の見た限りアインツベルンの城というのはかなり堅固。
 隙間妖怪の結界にも比肩しかねないもので昨夜のランサーが仕掛けてきてもそうやすやすとは突破されないだろう。

 しかし一方でこの日本家屋は結界を作る場所にも向いておらず貧弱という言葉が相応しい。
 よって霊夢はこの日本家屋全てを堅固な結界で覆うのではなく、この家屋の中でもっとも
 結界を作りやすい場所を重点的に覆うことを決めていた。
 中途半端な結界を張ればまた切嗣に小言を言われてしまう。
 召喚から開幕までに多少は関係を改善したが、些細なことで関係を悪化させるのは霊夢とて本望ではない。
 ならば博麗大結界を預かる巫女として後々小言を言われないように、ベストな結界を作ろうとしていた。

「ケホッ 完全に放置されてるのね・・・」

 土倉を開いて肩を落とす。
 しかし埃だらけの土倉を掃除するのは不思議な安息感につつまれていた。
 掃除の後一通り結界を完成させ、仮の拠点を作り上げる。
 アインツベルンの城は冬木の中心部にかなりの距離があるため小回りがきかない。
 最低限の小回りを利かせるためにもこの結界は拠点として重要な役割を持つ。

 ――結界を完成させたらこれで連絡をするんだ

 切嗣か渡された『耳に当てると不幸な音が聞えてくる小箱』をもつ。
 簡単な扱い方は説明されているとは言え幻想郷では霊力を蓄える程度にしか使えなかったものが
 この世界では地底の異変のときに使った陰陽球のようなことができるといわれても実感がわかない。

 実感がわかないことを言い訳に小箱を睨みながあr縁側に座る。
 まだこちらにきて1週間程度しかたっていないはずなのだが茶を飲んで縁側に座る仕事をしていたのが懐かしく思える。

「疲れてるのかしら」

 一人呟くと空を見る朝日が昇り始めるころに始めた筈だったが
 既に太陽は一番高く上っていた。
 途端・・・ケイタイデンワから音がなる。

「えーと・・・」

 咄嗟に使い方がわからずにケイタイデンワを取り落とす
 使い方が思い出せずにダメもとでボタンを押しているとなっていた『不幸な音』は止まってしまった

「あー・・・これまずいんじゃ・・・」

 確かにこの音が止まると不幸な気分になる
 幻想郷にきた外来人の気持ちが少し分かる気がした。
 連絡を取るための小箱で連絡がとれないとなれば不安に思う。
 再びなり始める不幸な音だがどうしても使い方が思い出せない。
 先ほど押さなかったボタンを何度も押したはずなのだが再び音は止まってしまう。

「・・・」

 切嗣の現在の顔を想像する。
 恐らくイリヤの前で見せていたような笑顔は見せていないだろう。
 渋面でタバコを加え別の人間へ電話をかけている姿が想像できる。
 まぁしょうがない。テレパシーとやらで会話もできないのは霊夢の不備ではない。
 恐らく触媒とやら無しで召喚を試みた切嗣のせいだろう。

 こんな小さな箱の使い方わからないのも教え方がわるいせいだとポジティブに切り替える。
 巫女は幻想郷でそうしていたように能天気に縁側で日向ぼっこを続けた。
 2回の電話で諦めたのか3度目はかかることはない。
 恐らく舞弥がしばらくしたらくるだろう。

 レミリアと咲夜、西行と妖夢、数多くの人の主従をみて来たが
 舞弥と切嗣はそのどれとも違う。主従関係とは違う何かをこの2人は結んでいた。
 忠義や奉公という概念は巫女にもわかる。
 しかし舞弥だけは彼女に理解できなかった。
 何か根本的に主従関係とは違うなにかがある。

「セイバー」
「ケイタイデンワの扱いが難しいのよ」

 車の止まる音と共にやってきた舞弥に文句をぶつける。
 舞弥は顔色一つ返る事無く言葉を紡いだ。

「切嗣からの伝言です。
 先ほど教会から通達があり一時、マスター同士の戦闘を停止し
 キャスターの討伐に全力を注げとのことです。報酬も用意されているようで」
「キャスター・・・?」

 昨日の戦闘を思い出す。
 セイバーである自分、ランサー、バーサーカーと呼ばれた黒鎧、クラス不明の金ピカ、そして魔理沙。
 魔法使いと名乗ったことで切嗣は無謀なマスターだと判断していたようが実際は違う。
 魔理沙がマスターでないというのは既に分かりきったこと。元々魔理沙は幻想郷の住民
 彼女がこちらの世界にやってきたということはサーヴァントとしてだろう。
 彼女がキャスターである可能性は極めて高い。 

「心当たりがあるのですか?」
「いや、ないわ」

 とりあえず反射的にないといっておく。
 昨日の時点で魔理沙は目立ちたがりの馬鹿な7人目のマスターということになっている。
 切嗣は不確定な情報は好まないのでわざわざ伝える必要もないだろう。

 アイリはその魔理沙が霊夢に話しかけたのを幸い、まだ話していないようだ。
 アイリの切嗣への態度すれば細かく話してもおかしくなかったのだがその話題の時たまたま席を外していたのだ。

 ――相変わらず運の強い奴

 そんなことを重い出しながら少し安堵する。
 幻想郷のことをしっているのは魔理沙だけなので霊夢からするといなくなってもらっては困る。

「ですが、このキャスター征伐には参加してもらわなくて結構です」
「へぇ、報酬目的で参加しろって言われると思っていたけど」

 この聖杯戦争というもの
 実際に参加してわかるがかなり大規模なものである。
 例えば昨夜の派手戦闘は一切新聞には乗っていない。
 さらには切嗣が爆破したらしい巨大な建物も事故として処理されている

 天狗のパパラッチといえばどんな小さな事件でも大きくしてしまうものなので
 昨夜の戦闘は明らかに新聞屋の大好物だっただろう。
 その餌に待ったをかけれるのはさらに大きな力のみ。

「既にご存知だとは思いますがアサシンは既に開戦以前に脱落済み、マスターだった
 言峰は教会の庇護下に入っています」

 そんなことを考えている間にも舞弥は機械的につげていく。

「これだけなら問題ないのですが言峰と遠坂は繋がりが深く
 言峰は遠坂に弟子入りしているほどです」
「匂うわね」

 勘でもなんでもなくそう思った。
 アサシンは脱落していない、茶番だと。
 この冬木に伝わる御三家の因縁等は異変の解決に必要ないと聞き流していたが
 案外重要なことらしい。しってて損のない情報はまとめて貰える様に頼んでおいたほうがいいかもしれない。
 そんなことを考える。

「つまり遠坂にいい所どりされたくないから消極的でいいのね。わかったわ」

 思考をまとめたところで話をきる。
 聖杯戦争という大きな異変の解決の前にはキャスターの討伐等という異変は些細なものである。
 キャスターが聖杯戦争の解決の大きな障害になるまで手を出す気は彼女にも無い。

「ところであんたなんで切嗣に使えてるのよ」

 話を切った所で先ほどふとかんがえた疑問をぶつける。
 よく考えれば連絡できない中でもなんとなく舞弥がくると思った。
 あれは巫女の勘ではない何かでそう感じたのだ。

「理由・・・ですか? 私は幼いころから切嗣の一部でしたから・・・」

「ふーん」

 多少要領を得ない答えだったが霊夢にはわかった気がした。
 この舞弥は式なのだ。
 切嗣の定めた方程式の中でしか動かない式神。
 切嗣が連絡を取るためにケイタイデンワの代わりに使うような式でしかないい。
 自分の意思ではなく、定められた方程式の中でしか動けないケイタイデンワのように。
 切嗣にも彼女は多くの不幸を伝えてきたのだろうとなんとなくそう思った。
 恐らく切嗣が始めに言った”使える”というのも霊夢がその方程式の中でどの程度動くかということだったのだろう

「まーでも残念ね」

 怪訝そうな顔で舞弥が見る。
 感情の無い彼女には珍しい行為だ。

「いや、なんでもないわ なら結界も張り終わったし探索させてよ
 戦場をしっておくのは重要でしょう?」
「ええ、構いませ――」

 舞弥の言葉をきき流しながら前にでる
 どうせ車の中に着替えは乗っているだろう。

――方程式に彼女は縛られない
 

☆☆☆

「ライダー!ライダー!」
「どうしたんだ?ウェイバー」

 彼等が滞在しているのはマッケンジー邸。 
 ウェイバーの暗示により居候していることになっている家である。

「わたしは”葉桜ロマンティック”で忙しいんだぜ
 用事ならこの章が終わってからにしてくれ」

 少女はなにやら顔を輝かせながら画面にくらい付いている。
 どうやらノベルゲームというものらしい。
 召喚されてから既に1週間ちかくが立ち、その間も外に出るのを制限されている彼女は暇つぶしとしてゲームを購入してきている。
 ウェイバーからすればばかばかしいものであるが少女に外出したいとうるさく言われ続けるよりはマシなので許可している。
 許可した理由はかわいらしい少女にたのまれた――というのも勿論心の中に存在する。
 たくましい男の英霊が召喚できていればこんなことで悩む必要は無かっただろう・・・多分

「そんなことより大変なんだよ!」
「こっちもいいところなんだ!ゲームは一旦記録すればいいだろ!」
「話が終わったら夜までゲームさせてもらうからな」

 そんなかわいらしい少女は画面に釘付けになりながら本気で迷っている。
 ゲームの選択肢だ。
 ヒーローが私には出来ない等と泣き言をほざいている

 1.私が力を貸すから
 2.絶対倒せるよ!
 3.貴方なんてもう嫌い!

(うーん、3は絶対にない。ヒロインに戦闘力はないし1も無さそうだ2かな・・・ってちがああう)

 思わずちょっと考えてから言葉をかえす。

「ゲームばっかりしてどうするんだよ!」
「夜以外は神秘の漏洩になるから外出制限っていったのはウェイバーだぜ!
 昼間なんて眠気もないしゲームぐらいしかやることがはないんだ!」
「ぐぬぬ…」

 思わず正論を吐かれる。
 トラブルメイカーなのは間違いないが彼女細かいところでは気を使ってくれている
 マスターと呼ぶ気はないらしいがウェイバーのことを立ててくれているのは事実。
 初の戦闘――それ以前で気絶した彼など見捨ててもいいだろうに
 彼女はウェイバーを見捨てなかった。
 迷惑を振り向いてこのマッケンジー邸に入る時もひと悶着あったが
 あくまでウェイバーのことを尊重してくれているのだ。
 マスターとして最低限立ててくれているからこそこうして大人しくしてくれているのだ。

「まぁセーブポイントまでこれたからいいけど、なにがあったんだよ」

 そして今回も、少女は素直にゲームをやめた。
 言葉遣いこそは男のようだが、細やかなきくばりは乙女というべきだろう。

「さっき教会から召集があったから使い魔を飛ばしたんだけどキャスターを討伐しろって命令だったんだ」
「うげぇ、あのギョロ目玉か」

 昨晩を思い出して肩をすくめる。
 思わず”昔”がでてしまうほどに怖気を走らせたのだ。

「多分ね、あいつがキャスターだって確証はないけどあいつが本線だ。あくまで可能性としてだけど」
「ううあいつを思い出すと鳥肌たつのぜ」
「いや――でもキャスターは僕たちがなんとかしないといけない」

 本気で嫌がっている魔理沙にウェイバーは事情を話す。
 魔理沙も非常に頭がまわるほうだがこの聖杯戦争というものついていささか知識が欠落している。
 霊体化できないこともそうだし念話ができないのもそうだ。
 彼女が壊れない程度に聖杯が知識を送り込んだ結果がこの不十分な知識なのだろう。
 動いているテレビや電話をみて感動しているのはみた時はどれだけ中途半端な知識なのだウェイバーは思ったものである。

「昨日ライダーが登場したときにいったんだろう?”普通の魔法使い”だって
 魔法使いじゃ意味は通らないかもしれないけど
 マスターかキャスターのどっちかだと思われてる可能性は否定できないよ
 教会はキャスターを倒せとはいったけど誰がキャスターかは教えなかったからね」
「それってなんかおかしくないか!?」

 魔理沙が露骨にあわてる。自分が狙われてるというのは心地よいものではない。
 ウェイバーも同感――しかし、彼は自分でも驚くほどに冷静だった。

「そりゃおかしいよ、神秘の秘匿のためには速やかにキャスターを倒すことが必要なはず。
 今後も犠牲者がでるならどんどんまずいことになるしね
 でもキャスターの意図的に正体を明かさなかったとすれば昨日の戦場にいて能力の割れてない
 ライダーも同時に潰しにきたと考えるのが自然なんじゃないかな」

 むむむと少女が唸る。
 霊夢の弾幕が見えたからといって安直に姿を現したのはまずかったらしい。
 『ブレイジングスター』で逃げた後素直にウェイバーを連れてマッケンジー邸に篭っていれば
 サーヴァントの情報は得られなかったがこうして狙われることも無かったのだ。
 自分のステータスが低いということは機能の戦闘で彼女分かっていた。
 
 自分を上回る”天才”霊夢
 その霊夢のスペルをブレイクにまで追い込んでいたランサー
 マスタースパークの直撃を受けて吹き飛んだが無事だったバーサーカー
 そして自分含む全てをあの場で圧倒した金ピカ

 全てがタイマン勝負なら勝ち筋が無いわけではない、と思う
 ランサーはスペルをタイムオーバーでブレイクさせただけだし
 バーサーカーからは直接的な攻撃は受けていない。
 金ピカの掃射も避けられないほどではない。
 霊夢も決して勝てない相手ではない。4割ぐらいでは勝てる。
 だがその全てからいや、2人からでも襲われれば勝てないことは分かっていた。

「わたしじゃまず無理だろうなぁ」
「でも調べる限り”霧雨魔理沙”なんて英霊はこの世界存在しないし情報アドバンテージは確実に僕たちにある
 そもそも冬木の聖杯に東洋の英霊は呼ばれないという大前提があるからね
 サーヴァントではなくマスターだって思ってもらえるならいいけど
 流石に楽観視しすぎだ、可能性として残すのはいいと思うけれど
 セイバー陣営に博麗霊夢なんてのが召喚されて初戦で戦っている時点で東洋の英霊が呼ばれないって前提が崩壊しているのはしれわたっているし」
「お前結構頭廻るんだな」

 魔理沙はウェイバーの頭脳に舌をまく。
 キャスター討伐をきいてから情報を整理してから話したのだろうがそれにしても十分すぎる情報である。

「まさか、魔術師として三流もいいところさ この聖杯戦争に勝って認められないと」

 魔理沙の褒め言葉に首を振ると立ち上がる

「それじゃあちょっとキャスターを探すための買い物にいってくるから留守番頼むよ
 マッケンジーさんとはできるだけかかわら無いこと」
「わたしも付いていっていいか?」

 ウェイバーが露骨にいやな顔をする。
 名前こそ日本名とはいえ金髪は露骨に目立つ。
 昼から戦闘を仕掛けてくる奴はいないだろうが用心に越したことは無い。

「どんな風にキャスターを探すのか興味あるんだぜ」
「夜までゲームはどうしたんだ?」

 興味津々といった感じの少女を断ることはウェイバーにできなかった。
 苦し紛れにゲームに話題を逸らすが――  

「聖杯戦争にセーブはないがゲームにはセーブがあるんだぜ?」

 満面の笑みの少女を断ることなどできるはずもなく
 自分の女性への免疫の低さに健全な男子は肩を落とした。 

☆☆☆

 夕刻、アインツベルンの城

(美味しい…紅魔の館の宴会ででてくる様なくどい甘さじゃなくて控えめな甘さ
 見た目こそあちらのほうがいいけど味はこちらが好みね)

 顔に笑み出てしまっているはずだ。
 それほどに美味しい。紅魔の主は妖怪と言っても見た目はお子様。
 恐らく味覚も甘いほうが好みなのだろう。

「今日は本当にお疲れ様、セイバー 私が出向く必要がなくて助かったわ」
「こういうものが食べられるならよろこんで解決しにいくわよ」

 ケーキを頬張って飲み込む。
 目の前の舞弥は既に3つ平らげている。栄養補給にしか興味はないのだろう。
 一方の切嗣は1個食べて席を立っている。こちらは最低限食べれば満足といったところか既に席を立っている。
 神秘の秘匿とかで夜にしか動けないのなら落着いて食べればいいのに、等とおもいつつ紅茶を一口。
 紅魔館で出されるなにかよく得体の知れない物質の入った何かという評価は既に改めている。
 お茶とは違うが違う味わいがある。
 切嗣が飲んでいたブラック珈琲というものの苦さだけは理解できないが
 痛覚だか味覚だかよくわからないものを好むのもいるということだろう。

「ねぇセイバー? いいかしら」
「ん?」

 アイリが声をかける。
 残り僅かになったケーキを租借しながら見る。
 割と真剣な表情。

「なんであなたわセイバーとして呼ばれたの?
 剣を振り回す所なんてみたことないし…」
「しらないわ、強いて言えばこの棒よ」

 今更。確かにつっこみたくなるだろう。
 セイバーというものは剣の英霊というものだ。
 実際の戦闘は始めてだが昨日の戦いでつかった剣らしきものといえば”巫女棒”だけである。

「その棒で剣の英霊になれるっていうのはちょっと・・・」

 膝の上置いていた巫女棒を上げると。
 ちょっと引いたようにアイリが言う。

「この聖杯戦争っていうのは決められたルールがあるの
 東洋の英霊は呼べない、クラス適性にあったサーヴァントが呼び出される
 戦いあって残りの1組が聖杯を手にする。」
「ふーん」

 今まで聖杯戦争そのものには関係ないとして切嗣も舞弥も伝えなかったルール。
 霊夢自信もそのルールはどうでもいいと思っていた。

「運命づけれてるといってもいい、でも貴方はセイバーらしくないし、ステータスはキャスターだわ
 弾幕戦闘ではアーチャーとしても通用すると思う」

 だが霊夢は無関心。
 自分がセイバーとして呼ばれているのならばそれでいいだろう。
 セイバーの資格等ではなく、セイバーとして呼ばれたらセイバーでいいじゃないかと
 能天気に考える。

「霊体化できない、念話もできない そしてさらには切嗣から魔力供給もほぼ受けていない。
 あなたがこの世界に現界するのは令呪の繋がりがあるから――」
「なら令呪をさっさと使い切ってもらえれば私はかえれるのね」

 興味が無い話をいつまでもきく趣味は巫女にはない。
 話題を切りつつ見据える。
 彼女に取っての異変は聖杯戦争そのものではなく
 彼女が幻想郷にいないことだ、幻想郷にかえるために聖杯戦争に勝ち残ろうとしているだけ。
 聖杯戦争以外に勝ち残る他に方法があるのであれば楽で早い方法を選びたい、
 それにこんなにも神社を離れるようでは隙間妖怪に後でなんといわれるかわからない。

「そうかもしれない、でも私たちにもかなえたい願いがある。かえらせるわけにはいかないの」
「fate・・・ねぇ」

 見据えかえしてくる。
 おそらくアイリも方程式に縛られているといってもいいのだろう
 アインツベルンの悲願――なんどかきいた話だが先祖からの目標、存在意義らしい。
 残ったケーキを口に放り込む。

「来るわね」

 なんとなくくると分かった。
 ”勘”というものが冴えているのは間違いない。

「ちょっとセイバー!?」

 アインツベルンの結界の侵入者がひっかかったのはその直後である。

☆☆☆

「なによこれ気持ち悪い…」

 外にでた霊夢の前には謎のキモイがうごめいている。
 海魔と呼ばれるそれはアインツベルンの結界内に進入していたのだ。
 周囲を確認。陣地作成の能力を持つ霊夢はアインツベルンの工房の機能をある程度利用できる。
 操り主の存在も確認する。

「そこっ」

 自動で追尾する札を投げつける。
 しかしマスターへと到達するまでに海魔が障害となり届かない。
 如何に優秀な追尾機能があろうと大量の雑魚がいるのでは届かないのは必然。

 霊夢の弾幕とて全てに万能ではない、相手に応じて使い分けてこそのシューターだ。
 アミュレットで届かないなら針を出せばいい。
 なにも接近戦に拘る必要は無い。
 ある意味で彼女の唯一の形を持つ宝具『陰陽球』
 スペルカードは聖杯戦争に置いて『宝具』として認識されているだけで
 実際はなんの意味もないただの紙切れと技術である。

 巫女は陰陽球から針を自動で射出する。
 これはただの対人宝具、怪魔の群れに有効な攻撃となるわけではないが
 追尾するアミュレットだけよりは効果を上げていた。

「しかし数が多すぎる・・・」

 数には数、元々複数の妖精や妖怪を相手にしてきた霊夢である。
 分類上、対人宝具と呼ばれるであろう陰陽球から射出される針で足止めには成功しているが
 じりじりと押され始めていた。

「次から次へと・・・」

 海魔ではない反応がさらに増える。
 舌打ちをしながらさらに後退する。最悪の場合はスペルカードを使わざるを得ない。
 スペルカードとして”宣言”しなくても戦うことは可能だがそれは弾幕ごっこではない。
 それはいまの霊夢は可能な限り避けたかった。

「どうしたセイバー、俺に使った宝具は使わないのか?」
「宝具を勝手に使うと怒られるのよね」

 新しく現れた反応に対して札を1枚。
 しかしそれは難なく避けられる。
 ランサーに大して牽制の札を投げ続けるが一向に攻撃に移ってくる気配はなかった。

「まぁ落着け」
「なんであんたまでここに来たのか教えてもらいたいわ」
「キャスターの征伐に決まっているではないか」
(この気持ち悪い式を操ってるあいつがキャスターだったのね)

 呆れたような顔でランサーは言う。
 そういえばそんな連絡きてたわね――そう思いつつ。言葉をかける。
 しかし警戒は怠らない。

「同盟ってこと?」
「そういうことになる、そんなに警戒するな 我が騎士道にかけて不意打ちはしない」

 一安心。
 騎士道だとかいう奴は基本的に信頼できるのだ。
 嘘のつけない鬼のようなもの。
 しかしランサーが参加して押される速度こそ下がったものの
 押され続けていることに変わりは無い、数の差は大きかった。

「きいいいいいい何故道を阻むのです!
 我が聖処女の居城として相応しい神殿を作る必要があるというのに!
 今の工房では聖処女に相応しくありません!」

 キャスターは遅々としてすすまない行軍に腹を立てる。
 倒された海魔を贄に新しい海魔を召喚し続ける。

「聖処女だのなんだのなんよこいつ」
「キャスター、別に貴様の恋路に口出しするつもりはないが
 我が主からの命でね 貴様の首級を貰い受ける」

 2人は不快感を露にしつつキャスターを狙う。
 ランサー破った一角に集中して弾幕を打ち込むが海魔に対して有効なダメージは与えられていない。
 倒しても倒しても沸き続ける。

「邪魔は許さぬ・・・そこを退けえええええ」

 キャスターの手に持つ本が光り輝く。

 海魔召喚速度が上がった。 
 
「あの大群どうするのよ」

「恐らくあの本がキャスターの宝具だ
 あれを狙い撃ちにすることはできないか?」
「無理ね、あの化け物を貫通して届かせる宝具なんてもってないわ
 下手に飛んでこれ以上奥に行かれたくもないしね」

 自分じゃお手上げだと霊夢は手を上げた。
 スペルカードを宣言すれば突破できないこともないだろうが
 また勝手にスペルカードを宣言してしとめ損ない小言を言われるのは勘弁である。

「セイバーの宝具は対軍宝具とみた、それで一掃してもらいたいが」
「分類上は対軍らしいけどあまり使いたくないわね。倒せるともかぎらないし」
「ならばオレが弾の一つとなる。それではだめか」

 大真面目にいってくるランサー。
 あまり気はすすまないがこのままでは打開できないのは事実。
 1人ではなく2人であれば海魔の大群を突破してキャスターを倒すのは不可能ではないはずだ。


「まぁそれならばいけないこともないと思う。但しランサー、貴方の宝具も見せてもらうわ」
「よし、隙を作れば
 我が宝具にてキャスターを打倒してみせよう」
「あんたもちゃんと避けなさいよ」

 霊夢は一旦後ろに下がり、スペルカードの使用を宣言する。

『回霊「夢想封印 侘」』

 大量の弾が飛ぶ。
 弾は一度静止したのち札へと変化しキャスターへと向う。
 巫女は不動、本来ならば逃げ道を塞ぐために移動するのだが
 今回の目的は逃げ道をふさぐことでは無い、ランサーが到達するまでの道を作ること。
 同時に飛ばす大玉を持って怪魔の接近を防ぎ機を伺う。

 スペルのパターンさえ見極めてしまえば回避するのは容易い。
 ランサーが大玉の回避に必死になっているのは気のせいだろう。
 突っ込んだ時にはスペルを自分からブレイクさせてやろう等と心の中で思う。

 
『破魔の紅薔薇!!』 

 ランサーが突っ込んだ。
 大量の海魔を退治し、道を作り上げる。
 避けさせるためにわざとつくられている札の収束点。それを華麗にランサーは見極める。
 恐らく初戦で学んだのだろう、”弾幕の見極め”というものを
 しかしいくら学んでも初見で交わすというのはランサーというクラスの敏捷性
 そしてディムウッドがもつ心眼のスキルから生み出されるものだ。
 既に夢想封印は必要ない、自らブレイクさせる。

「貴様ッッッキサマキサマキサマあああああああああああああああああああああ!!」

 一瞬で接近されたキャスターが咆哮する。
 ランサーの槍が貫いた瞬間に怪魔が消える。
 読み通りあの本がキャスターの宝具だったのだ。

「これが俺の宝具だ魔力を断ち切る槍、それが破魔の紅薔薇」

 ポーズを決めている。
 英雄らしいといえば非常に英雄らしい。
 キャスターは海魔無しでは戦えないことを悟り直ぐに逃げ出している。

「さぁ!止めを刺させてもらうぞ!」

 キャスターをランサーは追う。霊夢もそれに遅れて走る。
 ――が、ここでランサーが立ち止まる。
 迷ったようにアインツベルンの城のほうを見ている。
 霊夢は一瞬の硬直の後に迷わずスペルカードを宣言した。

『神技「八方鬼縛陣」』

「な・・・セイバー!」

 ランサーが驚愕の顔で硬直する。
 体を動かそうとするがそのスピードは信じられないほどに遅い。

「どうやらあんたを足止めしたほうがいいみたいだから足止めさせてもらうわ」

 スペルを発動した体勢のまま霊夢はいう。
 相手を縛るかわりに自分も動けないスペル。
 キャスターを取り逃すことは確実だが霊夢はランサーの動きを封じていた。

「そっちに行かれては困るのよ 何か焦ることがあったようね」
「我が主の危機だ! セイバー!」

 悲痛な声でランサーは叫ぶ。
 一瞬前まで共闘していた相手のありえない裏切り。
 騎士道を踏みにじるのかといわんばかりの表情である。

「わからないわね、この私たちの陣地であなたのマスターに危機が迫ったとすれば
 私の陰湿なマスターにしかけて返り討ちにあったって所かしら」

 サーヴァントとしての維持か、本来誰も動けないはずの陣の中でランサーは僅かなら動く。
 破魔の紅薔薇で陣を切り逃れようということなのだろう。
 だが今は切嗣が離脱する時間さえ稼げれば十分である。

「尽くす義理は無いけどあんたを通してしなれると寝覚めが悪いのよ」
「き・・きさま・・・」

 強制的に解除される、まだ霊力も残っているし時間切れでブレイクしたわけでもない。
 破魔の紅薔薇の効果で霊力の流れが立ちきられた一瞬でランサーは離脱したのだ。

「その紅い槍は魔力だけじゃなくて霊力まで断つようね」

 槍を見ながらいう。霊力を主軸においたスペルは通用しない。
 札と針で戦う必要がある。

「通させてもらう」 

 だからこそこの状況では霊夢の不利は揺るがない。
 霊夢の今使えるスペルカードには霊力を使うものしか残っていない。
 札をメインとしたスペルカードは残っていない。

 しかもランサーは初戦で弾幕の避け方というものを学んでいる
 うまく残りのスペルカード長期戦に持ち込んでも一度紅い槍できられればなにが起こるかわからなければ
 黄色い槍もどんな効果を秘めているかもわからない、このまま戦うのは危険
 幸いにもランサーはマスターのほうへいくことを優先している
 ならば時間を稼ぎつつもわざと逃がすべき

(時間を稼げばアイツなら離脱するはず)

 走るランサーに最大の速度を出させない程度に牽制程度に弾幕をはる。
 あえて針や札ではなく大玉をメインで撃つ。紅い槍に触れると――消失。

「面倒な相手ね・・・」

 ランサーが去った後一人呟いた。

 その後、主従の微弱な繋がりを辿り巡ると無表情の男がそこにいた。
 眼に光はない、今の彼女のマスター切嗣。

「セイバー。ベストだ」

 平坦な声のまま切嗣は言う。
 嗅ぎ慣れない臭いを発しており霊夢の想像の通り切嗣はランサーのマスターを返り討ちにしたのは間違いなかった。
 止めまで刺したのは間違いないだろう。霊力供給を失ったサーヴァントは消滅をまつしかない。
 新たな契約を防ぐためにはサーヴァントも打倒するのがベストだが
 霊夢がランサーと戦った場合勝敗はどうなるかわからない、故にあの場面
 ランサーがマスターの元に戻り切嗣を倒すのを防ぐのがベストなのだ。
 事実切嗣は霊夢の時間稼ぎで安全な離脱に成功している。
 騎士道精神にかまけていればどうなっていたかわからない。
 最悪切嗣がマスターを倒してもサーヴァントに殺されて脱落の未来もありえたのだから。

「私はやりたいようにやっただけよ
 敗退して聖杯にくべられるなんて勘弁だもの」

 最低限の会話を交わした主従だったが、同時に見る。
 冬木大橋―― 

「さて、働いた後なのにもう一仕事やらないといけないことがあるようね」

 異常な力を感知した2人は遠くを見る。
 何事かはわからないが何かが起こっているのは間違い。

「舞弥はアイリを送ったら連絡を頼む
 そしてセイバーは僕と一緒に」

 切嗣は電話で素早く、短く指示を出すと走り出した。

終わり
旦那はルーラーと青セイバーの差がわからないぐらいだし
金髪だったら多分だいたい勘違いするだろうなとかなんとか
その割には赤セイバーは勘違いしてないからよくわからん人である

 英雄――”正義の味方”
 子供でもわかりそうな不可能に近い理想をあの男は掲げている。
 その為には世界の方程式に汲みこまれることすら厭わないと。
 彼からみてこの”英雄”はなにに見えているのだろうか。

「理想の体現・・・ではないでしょうね」
「無駄口を叩いている余裕は無いぞ!」

 弾幕の範囲を霊夢は逃げる。
 しかしその回避はぎりぎりで少しずつランサーに追い詰められていく。
 弾幕によるアドバンテージはあれどあくまで人間の範疇である彼女と人間から英雄へと昇華したランサーの地力の差は明確であった

「くっ・・・」

 裏返った弾幕の飛び交う空間の中、ランサーはどんどん近づく。
 2本の槍で致命の一撃を避け、2本の足で進む。
 右へ左へと逃げる霊夢だがランサーはその身を焦がしながらどこまでも追いすがる。
 2人の距離は槍が届く距離にまで肉薄する。
 赤の槍が、黄色の槍が彼女の身を削る。

 さけるたびに黒髪が飛ぶ、完全な回避に失敗するたびに小さく皮膚が裂け、薄く血が流れる。
 服が裂け、槍が体に傷をつける。
 霊夢の顔が始めて苦痛に歪む。
 ランサーの表情に他者を痛みつけるような色も女を容赦する色もない。
 仇として敵を討つという決意だけがそこにある。

「もらった!」

 無意識の回避すら許されぬ一瞬。
 黄色の槍が迫る。
 ”HPの最大値”を削り取る槍に急所を貫かれれば死は免れない。
 認識すら間にあわず、その瞬間は終わる。
 必滅の黄薔薇は確かに霊夢の心臓を貫いた。

 刹那――
 心臓を貫かれた霊夢から発せられた光がランサーを弾き飛ばす。
 同時にスペルカードが解除される。荒れ狂う光に驚愕したのか体勢を建て直しながらランサーは呆然とその光を見つめた。
 必滅の黄薔薇で貫かれた傷は絶対に直らない。心臓を貫かれれば敗北は必至なのだ。

「”傷は絶対になおらない”はずだが」

 ランサーは吐き捨てる。
 その一撃は彼のマスターを死に到らせた元凶を確かに貫いた。
 だが、それまで与えていた小さな傷、それどころか致命の一撃すらも消え去っていた。

「俺の必滅の黄薔薇の呪いを無効化するとはどういった宝具だ」
 
 身をけずられボロボロになり、心臓を貫かれたはずの霊夢は戦闘開始時の完全な姿。
 腋を露出した特長的な巫女服に紅白のリボン。黒髪。
 ランサーによって傷つけられたもの全てが元に戻っている。

「再挑戦≪リトライ≫よ」

 ――彼女の宝具とでもいうべきもの。
 彼女の宝具は”スペルカード”では”ない”
 宝具はスペルカードそのものではなくその仕組み『安心安全決闘符<スペルカードシステム>』
 その弾幕そのものの存在の枠組みこそが彼女に与えられたもの。
 スペルカードというのは決闘の形をつくるために必要なだけでただの紙切れでそれそのものにはなんの効果はないのだ。
 あくまで弾幕を展開することを宣言するための枠組みでしかない。
 その枠組みを聖杯が彼女らを招くことに合わせてデザインした宝具である。

 もっとも完全な敗北を無かったことにするほどメリットに比例してデメリットも大きく、自身のスペルカードを全て使い切った場合
 まだ戦うだけの余力が残っていても強制的に負けとなってしまう。自機とボスモードを併せ持つと言い換えることもできるだろう。

 スペルブレイクまでの制限時間も存在し、優位な相手にしかければ強制敗北もありえてしまう諸刃の剣
 さらには強引に接近戦に持ち困れば相手側を自機と見立てた『ダメージ制STG』ともいうべき状況になってしまい
 一方的な不利を蒙ってしまう。

 さらには本来適性のないセイバーで召喚されているが故に彼女はこの聖杯戦争中に
 <スペルカードシステム>として使える枚数は7枚と大きく制限を受けているのだ
 ランサー相手に使った『神霊「夢想封印 瞬」』『境界「二重弾幕結界」』
 キャスター相手に使った『回霊「夢想封印 侘」』『神技「八方鬼縛陣」』
 
 既に7枚のうち4枚を使っているというのに、ここからさらに使わなければならない危機に陥っている。
 長い聖杯戦争をかぎられた枚数で戦うのは非常に大きなハンデキャップ。

 しかし、霊夢はこの”異変”として捕らえている。
 そのハンデキャップを受け入れた上でスペルカードを使っているのだ。
 異変の解決にボムを惜しむことは許されない。

『夢符「封魔陣」』
 
 彼女の選択する5枚目のスペルカードは封魔陣
 移動を制限することに特化したスペルカード。

「今時間をかせいでもどうにもならんぞ!」
「あんたの体力切れ以外に私の勝ちはないわ 我慢比べといきましょうか」

 内心冷や汗をたらしながら霊夢はいう。
 幻想郷と比べてスペルブレイクまでの時間は長くなっているとはいえ決してランサーの魔力が尽きるまで耐えられるほどではない。
 半分は虚勢であったが霊夢は耐えるしかなかった。
 切嗣と舞弥は勝ち残るために動いているはずだ。最高の援護があることを信じて機をまつしかない。

 丁寧にスペルの展開をまつランサーに心中で呆れながら、霊夢は陰陽球を出す。
 弾幕展開の起点となる道具だ。

「いくぞ」
「・・・!」

 準備の整ったのを確認したのかランサーは突撃する。
 多少の被弾は覚悟ということか、間合いをつめにかかる。
 霊夢はランサーの突撃の前に札を全力で当てにいきその突撃を逸らす。

 本来は対象を狙わない高速弾を全てランサーへぶつけにいくことで接近を防ぐ。
 続いて霊弾が逃げ道を塞ぐように放たれる――。
 致命の一撃ではないと判断するとランサーはそれを避けることも無く再度の突進。

 回避し距離を取らせる余地は残しながらも霊夢は妨害の一手。
 札を誘導し戦闘不能を狙う。
 ランサーは札は全て避け。避けきれないものだけは紅い槍で叩き落す。
 霊力を絶つ槍で受けなければ危険だということだろうか。

(そんなに封魔陣用この札はなにか仕込んであるように見えるのかしら)

 魔理沙曰く「興味がそそられるが何も入っていない大入りの袋」はその形状が味方してランサーを遠ざけるのに役立っていた。
 ポテチのようなその袋は一見爆発してもおかしくないように見える。
 ランサーからすればそのような危ないものは受けたくないのは当然の話。

 魔力霊力の流れを封じる破魔の紅薔薇ならともかく、必滅の黄薔薇で受けて失うわけにはいかないのだから。
 右へ追い詰めるが僅かな隙間を抜けて左へ、左へ追い詰めると隙間を抜けて右へ
 一瞬の隙間を見事にかいくぐりランサーは切り替えしていく。
 少しずつ少しずつきりかえし、接近する。

 ランサーに遠距離攻撃をできる宝具があれば既に勝負はついていただろう。
 しかしランサーにそのような宝具はない。だからこそ時間をかけて接近した。
 霊夢も移動を妨害することに特化したスペルカードで倒しきれないことを理解した上で全力で時間を稼いだ。
 結果――必然的に長期戦となる。

 何度も何度も同じ行動を繰り返すパターン。
 スペルブレイクまでの制限時間になれば自動解除され、その瞬間霊夢は槍に貫かれるだろう。
 そしてまたリトライする。 リトライし同じことを繰り返せば必ず霊夢は負ける。

「貴様”達”・・・何をした」

 が。 ――ランサーの顔が怒りに歪む。

「しらないわ」

 その言葉は事実である。だが同時に嘘だった。
 理想を掲げる英雄等ではない
 正義の味方は勝利を掴むために理想を捨てる。

 ランサーの現マスター。ソラウは教会に保護されている。
 そして教会の監督役を殺した上でのこの戦闘。
 本来隠すはずのマスターの居場所がばればれの状態から戦闘を開始していたのだ。
 
 ランサーの誇り高き騎士道は何度失敗しても曲がることは無い。
 故に、サーヴァント同士の戦闘に、サーヴァント同士の戦闘での華やかな仇討ちに固執し同じ愚を冒す。

「さあかかってきなさい」

 眼に見えて移動に迷いが起こる。
 ”なんらかの異常”が起こったのは間違いない。
 その原因が正義の味方であることも。
 ランサーは既に封魔陣の中に入り込んでいる
 霊夢に接近して倒すために、入りこまざるを得なかった。
 入り込んだがために、異常が起きても敏捷を活かした早期離脱は不可能だった。

「貴様らはそんなにも」

 ランサーは叫ぶ。
 異常のせいで霊夢に接近するも即座の離脱ことが不可能だと悟っているからこそ叫ぶ。
 二度までも華やかな戦闘を汚す者達に。

「そんなにも勝ちたいのか!」

 霊夢は答えない。目的を達成するために勝つのは当然だから
 叫びは敗者の遠吠えにしかすぎない 

 さらに単純な戦闘でランサーに霊夢が及ばないのは事実。
 ランサーがサーヴァントとして主を二人三脚で戦えば必ず勝利できた。
 汚いと罵られようと、必滅の黄薔薇で少しずつ傷を増やしていけば必ず勝利できた。
 それをせずに一対一の戦いを、堂々とした仇討ちを望んだが故におきたことなのだ。
 同情する余地など、僅かたりともない。

「俺は諦めん!忠義を尽くすべき主がいなくなろうとも」
 我が主の仇だけは討つ!」

 特性上接近する相手の移動を妨害する封魔陣は逃げる相手には弱い。
 叫びをききながらも霊夢はスペルを維持する。
 ここで解除して怒りのランサーに貫かれるというのは当然ありえない。
 逃がしてでも霊夢が生き残ることが重要。
 ランサーが頼れる相手等もういないのだから、消滅をまつ他無い。

「ディルムッドの怒りを忘れるな!!」

 最後の叫びを残して完全にスペルカードの範囲から逃れたランサーはその敏捷を活かして消える。
 既に3度。霊夢と3度戦闘して負けながらもランサーは生き延びた。
 その叫びの余韻が消えてしばらく、封魔陣が限界に達し停止する。

「忠犬は忠猫よりもやっかい・・・といったところかしら」

 一息つきながらその場に立つ。
 遊びではない命を掛ける戦いという物は霊夢にとっても久々の経験。
 その疲れを感じながら霊夢はふらふらと座り込んだ。
 
 また戦う機会がくる。
 切嗣はうまくやったのは間違いないだろう。
 しかしなにかを見落としている。なんとなく、そう思った。

★★★

戦闘描写って難しいよね
色々頑張ったけど全然できるきがしない
また1月たつかたたないかの頃に投下するでしょう

色々考えたけどfate世界でのスペルカードの解釈はこれ以外に思いつかなかった

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