伊織「アンタたちは夢と魔法の国を、まだまだわかっちゃいないわ!」(224)

いち

―――

ガチャ


伊織「おはよ……って、3人揃ってどうしたのよ」

響「お、伊織もきたぞ」

真「よしこれで全員か」

伊織「え、何が?」

貴音「まあまあ、まずはこちらに座ってください」

伊織「い、いいけど……何だって言うのよ」ストン

響「ふっふっふ……伊織!」

伊織「なぁに?」

真「今度、4人でディズニーシーに行こう!」

伊織「……」

伊織「……は? ディズニーシー?」

響「ああ、この4人で行こうって皆と話してたんだ!」

伊織「この4人でディズニーシーって……去年と同じじゃない」

真「何言ってんるんだよ~、去年と同じだからいいんじゃないか」

伊織「去年と同じだから……」

伊織「へぇ~……なるほど、そういうことね」

貴音「はい……1年ぶりに、みっきー殿たちに会いに行こうと思い、わたくしが提案させていただきました」

真「1年ぶりに同じメンバーでってのも、特別感あっていいと思ってね。この4人で行こうって話してたんだ」

響「あと自分たちが去年行った後に、トイストーリーのアトラクションも出来たんだろ? それもやってみたかったからさぁ」

伊織「もう……それで3人とも、行く前からそんなにはしゃいでたのね」

伊織「……ていうか、あの後ディズニーリゾートに行ってないのは貴音だけ?」

貴音「わたくしは去年のでぃずにーしー以降は訪れていませんね」

貴音「本当ならば『らんど』にも行ってみたかったのですが、中々予定が合わなかった故……残念です」

前にも書いてたやつ?

響「自分はー、冬に真と二人でディズニーランドに行ったな」

真「やよいと伊織も一緒の予定だったやつだね」

伊織「覚えてるわよ、直前になって予定が狂っちゃったのよね~」

真「そうそれ。でも二人でもすっごく楽しかったから、今度こそみんなで一緒に行こうよ」

貴音「……その時は、わたくしも混ぜていただけるのでしょうか?」

響「お、貴音、もちろんさー! 貴音はランドも未体験だから、みんなで案内してあげるよ」

伊織「他には?」

真「あと……今年の初めに、伊織と美希とボクで、ディズニーシーに行ったか」

伊織「……アレも覚えてるけど、あんまり思い出したくは無いわね」

真「ま、まあ……美希が暴走するから結構疲れたけど……で、でもあれはあれで楽しかったじゃないか」

伊織「それは否定しないけど……やよいたちと行くときの何倍も疲れたわ」

伊織「てことは……シーに2回以上行ったのは、3人の中だと真だけってことね」

真「そうなるかな」

>>6
そう、前にも書いたやつ

伊織「アンタたちは夢と魔法の国をナメすぎよ!」
伊織「アンタたちは夢と魔法の国をナメすぎよ!」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1340716026/)

伊織「ふーん……」

伊織「…………」

響「どうかしたのか、伊織?」

貴音「難しい顔をして、何を考えているのですか?」

伊織「……アンタたち、今度もアトラクション中心の周り方でいいの?」

響「うぇ?」

真「去年みたいなってこと? ボクはむしろパレードとかよりもそっちの方がいいかなぁ」

響「まあ余裕があれば見てみたいけど、自分もまた色んなアトラクション乗ってみたいぞ」

貴音「わたくしは……皆とのそういった交流が、何よりも楽しいと思っております」

貴音「ですから、楽しめるのならば無理にぱれーどに拘りはしませんよ」

伊織「まあ恥ずかしいこと言ってくれちゃって……わかったわ」

真「どうするんだい?」

伊織「今度もアトラクション中心に周りましょう」

真「うん、オッケー」

響「わかったー」

貴音「承知しました」

伊織「あと、予定日はいつ?」

真「ああ、律子と伊織の話この前耳に挟んでさ、来週は伊織、金・土・日が収録日なんだろ?」

伊織「あら聞いてたの? そうよ、だから月から木だったらいつでも大丈夫だけど」

響「みんなも特に予定は無いみたいだけど……確か、水曜日が混まない曜日なんだよな?」

伊織「まあそうかしらね。週の真ん中だから、普通なら休みは入れにくいし」

響「ああ、だから来週の水曜日にしようかって思ってたんだけど……」

伊織「どうかしたの?」

貴音「……先ほど皆と話していたときに、その日は天気が優れない、という情報を得まして……」

真「そうなんだよなぁ。他の日は天気良いみたいだから、別に水曜に拘る必要も無いんだろうけどさ」

伊織「天気が優れない……ねぇ」

伊織「どんな予報なの?」

貴音「小雨が降る、という予報でした。何時頃止むのかわからないそうです」

響「いくら小雨でも一日中降りっぱなしの可能性もあるんだよな……」

真「……どうする伊織? 火曜とか木曜に行くことにするかい?」

伊織「……ハァ」

伊織「やーっぱり……わかってないわね」

響「へ?」

伊織「ふっふっふ」


伊織「……アンタたちは夢と魔法の国を、まだまだわかっちゃいないわ!」

響「わ、わかってない?」

伊織「ホントよ、全然だわ」

伊織「あ、あとどうでもいいけど、ディズニーシーは」

『冒険とイマジネーションの海』

伊織「……だったわ」

貴音「そ、それはともかくも……今の話のどこが、わかっていなかったというのでしょう」

伊織「初めてのディズニーシーならまだしも2回目だって言うんなら、雨の日に行くのは全く問題にならないわよ」

真「え? だって雨降るって予報なんだよ?」

響「普通はそういう時って日にちずらすんじゃないか?」

伊織「ハァ。アンタたち、雨……しかも小雨の日を避けるなんて、むしろアトラクション派なら損してるわよ」

真「何でさ?」

伊織「だって雨の日って、そうやってみんな日にちをずらそうとするんでしょ?」

伊織「つまり雨の日に行ったら、それだけ人が少ないってことじゃないの」

響「え、あ……」

貴音「確かに、一理ありますね」

伊織「しかもファストパスが必要なアトラクションで、雨で影響受けるのってレイジングスピリッツくらいでしょ」


※ファストパス
人気アトラクションをスムーズに乗るためのチケット
ランド・シーの両方とも、複数の人気アトラクションに設置されている

発券し、パスに記された所定の時間に行けば
専用の入り口から、長~い行列をすっとばして乗り場近くまで一気にワープできる

ただし優先案内できる時間は、パスとった人同士で混まないようにどんどん繰り下がっていく
一定の深い時間まで到達してしまうと、その日のファストパスは発券終了となってしまう


真「他のは……そっか、ほとんど屋内なのか」

伊織「ま、屋外のアトラクションにほとんど乗れないくらい雨が酷くなったら、屋内に人が集中しすぎちゃうし……」

伊織「それに雨の日でも普通に混む事もあるけど……何のイベントもない平日の雨の日なら、まず混まないわね」

響「そうかぁ……言われてみたら、そうだよな」

貴音「特に問題は無いように思えますね」

伊織「……それにね、雨の日限定のお楽しみもあるものなのよ」

真「そうなの?」

伊織「例えば雨の日限定で、グリーティングのミッキーがレインコート着てるとか」


※グリーティング
キャラクターたちと触れ合うこと。写真を撮る、握手やハグをする、など
ミッキーやミニーのように専用のグリーティングスペースを持つキャラクターもいれば、
決まった時間・場所に現れず、パーク内をうろうろしている
「フリーグリーティング」のキャラクターもいる
ちなみに専用のスペース以外でも、ミッキーたちはパーク内に現れたりする


真「へぇ~」

貴音「あ、雨合羽を着たみっきー殿ですか!?」

響「!?(ビクッ) そ、そんな驚くことか?」

伊織「……ランド限定で、シーではレインコートミッキーは居ないけど」

貴音「!! な、なんと……!」

貴音「……それは……非常に、残念ですね……」ガックリ

真「そ、そんなに? ……もういっそランドに行く?」

貴音「……いえ、確実に雨が降るとも限らず、それに雨合羽を着たみっきー殿に会いたいというだけで皆を振り回すわけには……」

伊織「あんたね、そんなに重く考えることもないでしょ」

伊織「ああ、それに水上ショーとかは中止にならない程度の雨でやる場合は、ミッキーたちがレインコート着てる

ガタッ

貴音「是非『しー』に行きましょう!」

響「(ビクッ) 早っ!」

伊織「どんだけレインコート見たいのよ」

真「レアだから一目見てみたい、とか?」

真「ってそれは置いといて……じゃあ予報では雨だけど、水曜日に行くってことでいいか」

伊織「いいわよ。レインコートか折り畳み傘、どっちか忘れずに持ってくることね」

響「おう」

貴音「楽しみですね……!」

真「そ、そうだね……」

伊織「……この分じゃあ、晴れたりしたら酷くがっかりしそうね」

響「あはは、ほんとは晴れた方がいいのにな!」

―――

8:50 ディズニーシー・エントランス前

響「ほんとだ。なんか気持ち、人が少ないかも」

真「朝からちょっとパラついてるからね、本格的に降るかも、って予報してるとこもあるし」

貴音「ね、願わくば水上しょーが中止にならない程度の雨を……!」

伊織「どんだけ必死なのよ」

響「今は曇りか……」

伊織「そうみたいね。じゃあ最初は打ち合わせ通りで行きましょ」

真「わかった。任せてよ」


9:00 開園


伊織「みんな入ったわね? じゃあ真……頼んだわよ!」

真「ああ、行って来る!」

ダッ

9:05 アメリカンウォーターフロント

タッタッタッタ……

真「―――ふう~、ここかぁ」

真「ウッディの顔、やっぱインパクトあるなぁ」

真「ってそんなこと言ってる場合じゃないや。 ファストパス発券機は……」


真、去年と同じよ

開園したらみんなの入園チケットを持って、最初のファストパスを発券しに行って頂戴

ファストパスを取るのは、「トイストーリーマニア!」でお願いね


真「うわ、ボクも結構急いだんだけど……もうこんなに人が……何でだ?」

真「……あ、そうか。ホテルに泊まってる人は開園時間より前に入れるんだっけか」

真「まあいいや。とりあえずファストパスを取ろう」

9:15 エントランス前

響「う、うがぁ…人だかりが凄くて全然ミッキーに会えない……!」

貴音「一筋縄では行かぬようですね」

伊織「エントランスグリーティングはいつも人気だからしょうがないわね」

伊織「それに私たちと同じようなこと考える人、少なくないはずだもの」

響「雨が降ったらフリーグリーティングが出てきにくくなるから、出来るうちに…ってやつだな」

伊織「ええ。……まあ、真が居ない間に散々グリーティングしちゃうのもどうかと思うけど」

貴音「……どうやらその真も、戻ってきたようですね」

響「お、どこだどこだー?」

タッタッタッタ……

真「ふぅー、お待たせ! そっちはどう?」

伊織「まだ全然ダメ」

真「あれ、そっかぁ。 あ、貴音、ポップコーンほら」

貴音「お、お待ち下さい!」

真「!? た、貴音がポップコーンをスルーした!?」

響「どうしたんだ貴音、何があったんだ!?」

貴音「……みっきー殿への人だかりが、先ほどよりも少なくなっております」

貴音「これは千載一遇のちゃんすと言えましょう!」

貴音「この機会を逃せば、もう触れ合うことが出来ぬやもしれません!」

伊織「……凄い執念ね」

真「と、とりあえず……ミッキーのとこ行ってみようか」

―――

9:20

貴音「ああ……わたくしは何と運が良いのでしょう!」

響「よ、よかったなぁ、貴音」

伊織「まあ、去年行ったグリーティングトレイルに行けば、またミッキーには会えるけど……」

伊織「パーク内で会えるってのは、また特別よね。それはわかるわ」

真「なんかいつもよりちょっとお茶目だったよね。可愛かったなぁ!」

伊織「さて、じゃあこれから本格始動よ」

伊織「真、ファストパス見せて」

真「ああ。はいこれ」

響「えーと……わ、開園してすぐ行ったのに12:00からしか乗れないのか!」

真「ホテルの人たちが先に来ててさ、入り口ももうすっごい混雑なんだ!」

伊織「ちなみに待ち時間は?」

真「さっき行った時点で70分待ちとかだったよ」

貴音「な、なんと……この天気でその混み様ですか」

響「去年みたいに、またすぐファストパス出せるようにはならないのかぁ」

伊織「ま、去年は色々と運も良かったから、普通はこんなものよ」

真「じゃあトイストーリーマニアは12:00過ぎとして……どうする伊織?」

伊織「ちょっと待って……」スッ

響「スマホか。確か待ち時間が調べられるんだよな」

伊織「ええ……やっぱり、トイストーリーマニアとタワーオブテラーだけだわ」

貴音「何がでしょうか?」

伊織「トイストーリーマニアが70分、タワーオブテラーが30分」

伊織「待ち時間が長いのはこの二つくらい、後はどこも空いてるわ」

真「え、じゃあインディジョーンズとかは?」

伊織「インディは……待ち時間10分」

響「うえぇ!? ふぁ、ファストパスあるのにそんだけしか待たないのかぁ!?」

伊織「だから言ったじゃない。雨の日は、それだけ人も少なくなるのよ。今日の場合は雨の予報、だけどね」

伊織「で、どうする? 話に出たし、早速インディジョーンズに行ってみる?」

真「ああ、空いてるうちに行っちゃおう!」

貴音「あのお方に会うのも、わたくしは一年ぶりですね。楽しみです」

9:35 ロストリバーデルタ

響「た、貴音…地図見せて」

貴音「これですね、どうぞ」ピラッ


http://www.tokyodisneyresort.co.jp/images/tds/map/btn_dl_on.gif
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響「や、やっぱりさぁ真……こんな一番上の方まで、いきなり歩いて来ることもなかったんじゃないかぁ?」

真「へへっ、ボクばっかり走らされちゃ面白くないからね」

伊織「……あれ、貴音」

貴音「どうか致しましたか?」

伊織「ポップコーン、いいの?」

貴音「!?」ハッ

貴音「みっきー殿に会えた感動のせいで、わたくしすっかり忘れておりました!」

貴音「ま、真…ポップコーンをお恵み下さい!」

真「そ、そんなににじり寄らないでくれよ! ほら、これとこれ」

貴音「お、おぉ……一方は香ばしい胡椒の香りが、もう一方からは甘い林檎の香りが……!」

伊織「アメリカンウォーターフロントのあそこって売り場近いから良いわよね」

真「うん。確か去年来た時がそこの売り場、アップルシナモンじゃなくてクランベリー味だったかな」

響「へぇ~、季節によってポップコーンの味が変わるのかぁ」

伊織「そうね。買ってきてもらったヤツだと、ブラックペッパーは売り場に変化無し」

伊織「で、アップルシナモンが期間限定。他にも季節によって味が変わる売り場はいくつかあるわね」

真「あ、そうそう。それでさ、後でもいいんだけど、もう一個バケット買わない?」

響「バケット、ってポップコーン入れるカゴか。どうしたんだ?」

真「や、ほら……貴音がハイスピードで食べちゃうから、もう一個単純に欲しいな~ってのと」

真「あと30周年の記念バケットが売ってるみたいなんだ。可愛いから欲しいなって思ってさ」

伊織「いいわよ。ていうか賛成。ていうか今すぐ買ってきてもいいわよ」

響「へ?」

伊織「……貴音が一つ目を御完食しちゃったわ」

真「え、も、もう!?」

貴音「……大変、美味でありました」

響「は、早すぎるって貴音ぇー! まだ食べてないのに!」

貴音「も、申し訳ありません。しかし一度手を進めるとどうにも止まらず……」

真「まあまあ、もう一個あるから」

伊織「ハァ。……後で近くの売り場で、バケットごと新しいの買いましょ」

響「そうだな。貴音、無闇に食べちゃダメだぞ?」

貴音「うぅ……反省致します」


※ポップコーン
ポップコーン売り場には、使い捨て紙ケースでの販売や
「バケット」と呼ばれる、使いまわせる専用プラ容器に入れての販売の他に
「リフィル」という販売方法がある。

前述のバケットを持参すれば、その中にポップコーンを入れてくれる。これがリフィル。
リフィルだと通常よりもちょっとだけ安く買える
以前購入したバケットを、家から持参してきても良い

―――

9:40 インディ・ジョーンズ前

真「ほんとに10分待ちだ」

響「去年は入り口まで人が出てきちゃうくらい混んでたのにな」

貴音「ええ、懐かしいですね」

伊織「じゃ、さっさと入っちゃいましょ」

真「うわぁ、やっぱ何回来てもここは楽しみだなぁ……!」


『インディ・ジョーンズ・アドベンチャー~クリスタルスカルの魔宮』
インディ・ジョーンズ博士の助手パコが、
博士に内緒で“若さの泉”を探す魔宮ツアーを企画しました。
さあ、さっそくあなたも参加しましょう。

ところが招かれざる客の侵入に、魔宮の守護神クリスタルスカルの怒りが大爆発!
無事に脱出できるのでしょうか!?


真「そういやさ、伊織」

伊織「なぁに?」

真「ここでパコって人が言ってる『若さの泉』……どこにあるんだい?」

響「あ、自分もそれ気になってたんだ! この中にほんとにあるのか?」

伊織「あるにはあるけど……そうねぇ」

伊織「じゃあ、そんなに気になるなら、自分で探してみたら?」

貴音「やはり若さの泉は『ある』のですか」

伊織「ええ、まあ、『ある』わね。まあ、とりあえず『ある』わよ」

真「? なんか変な言い回しだけど、どういうこと?」

伊織「まあまあ、真は美希と来たのも含めて三回目でしょ?」

伊織「新しい楽しみ方の一つだと思って、頑張って探してみなさいよ」

真「わ、わかった。…やってやろうじゃないか」

響「でもあんな激しいのに見つける暇なんてあるかなぁ……」

真「難しくてもやるんだ! きっと博士だってそう言うさ」

伊織「博士ってインディ・ジョーンズ? 真ってば入り込みすぎじゃないの」

伊織「ねえ貴音?」

貴音「…………」

伊織「……アンタ、ポップコーン食べたいなら食べていいわよ」

貴音「!? し、しかし」

伊織「食べられないからってそんな顔される方くらいなら、食べてもらった方がマシよ」

伊織「別にみんなだって、アンタほどそこまでポップコーンに執着してるわけでもないし」

貴音「よろしい…のでしょうか」

響「ん? 自分まだお腹空いてないしいいぞー?」

真「まあ、ボクらが食べる分残してくれるなら」

伊織「……って言ってるけど?」

貴音「そうでしたか、ありがとうございます。では、存分に……」

真「……あ、もうすぐ乗り場だから、食べるのは止めといた方がいいかも」

貴音「!? そ、そんな……いけず……です」

伊織「ふふ…アンタも運が無いわね」

伊織「いや、エントランスでミッキーと写真撮ったので、運を使い果たしたのかしら」

貴音「む……確かにみっきー殿と触れ合えただけでも、今日の目標は達成したようなものですから……致し方ありませんね」

響「自分たちとディズニーシー楽しむんだろぉ、なぁ~に言ってるんだよ貴音!」

貴音「ええ、冗談ですよ」

伊織「……あ、そろそろ乗れるみたいよ」

―――

テーッテレッテー、テーレレー♪

響「あれ、あの人あんなこと言ってたかな?」

伊織「乗るたびにセリフが変わるのよ」

貴音「そうなのですか」

真「うーん……若さの泉ってどこだろ……?」キョロキョロ

真「あ、あれかな……!」

―――

『おーろーかーもーのー!』

ドゥーーン!!

響「うぐっ!」

真「……!」

貴音「くぅ…!」

―――

ゴロゴロゴロゴロ……

真「た、確かここで写真が……」

ガクンッ!

響「貴音、大丈夫か!?」

貴音「お、おそらくは……」

伊織「私はバッチリよ、にひひっ」

―――

真「はぁ、やっぱり良いなあ。博士もかっこいいし」

響「や、やっぱり自分には泉を探す余裕なんて無かったさぁ……」

貴音「……去年の様な情けない写真になっていないかどうかが気がかりです」

伊織「じゃあその写真を確かめに行きましょ」

貴音「はい……!」

―――

『エクスペディション・フォトアーカイブ』
ここは、発掘調査隊が撮影した現場記録写真の保管室。
現在も記録写真を取り扱っているのですが、
そこに写っているのはクリスタルスカルの魔宮に挑む探険家たちの勇猛果敢な(恐怖の?)姿です。
手に入れたい探険家の方は、キャストまでどうぞ


伊織「さて、どうなってるかしら」

響「……フグッ」

真「ブッ……い、いや……これは……」

伊織「なになにどうしたの……プッ」

貴音「ど、どうしたというのです!」

伊織「い、いいから見てみなさい……」プルプル

貴音「……」

貴音「!! な、何故……! 今度は完璧な振る舞いで写ったと思っていたというのに……!」

響「ひ、ひー……! 貴音、し、白目剥いてる……!」プルプル

真「ふふふふ、ダメだ……我慢できない……!」プルプル

伊織「どーしてこういう顔が出来るのよ、もう……!」プルプル

貴音「そ、そんなはず……」

貴音「岩石に注意をしつつ、足場が下がるのを予測して顔を下に向けようと……」

貴音「ま、まさかその時、目だけは上のほうを向いていたから……それでこの様なことになったと言うのでしょうか」

真「な、なんでもいいけどさぁ、貴音……どうする、この写真?」

響「自分買っちゃおうかな」

貴音「!? な、なりません!」

貴音「去年の写真ですら恥ずかしかったというのに、このような写真を手元に残されては……!」

伊織「ふぅ、面白かった。……響とよぉ~く話し合った方がいいかもね、貴音」

伊織「もう二度とポップコーンを無闇に食べたりしない、とかの約束を結ぶとかね」

貴音「そんな殺生な!」

貴音「食欲と恥、どちらを選べと言うのですか、響!」

響「じ、自分は買おうかな、って言っただけだって! 伊織も煽らないでくれよぉ!」

伊織「ごめんなさいね~、にひひっ」

真「はー、お腹痛い。これ面白すぎるって」

真「あ、そうそう伊織。『若さの泉』見つけたよ!」

伊織「どこにあった?」

真「ほら、博士が出てきた後だったかな、小さな泉みたいなのが見えたよ!」

伊織「……ふぅ~ん」

真「? でも意外とあっさり見つかったから、ちょっと拍子抜けだったかな」

伊織「……真」

真「ん?」

伊織「大不正解」

真「……」

真「…………え?」

伊織「それ、若さの泉の偽者だから。不正解」

真「……え、偽者?」

伊織「そう、偽者。ちなみにあの洞窟の中に、偽者はたくさんあるわよ」

真「え、え、え?」

伊織「……まあ、こっちもちょっとイジワルだったわね」

真「へ、な、何が?」

伊織「偽者はすぐ見つかるようになってるんだけど、肝心の本物の若さの泉は……」

伊織「『直接』は見る事ができないの」

真「……? 直接は見れない? どういう意味だい?」

伊織「まず、私たちがジープに乗って、そしてクリスタルが怒ってた場所があったでしょ?」

真「ああ」

伊織「で、左にカーブした後で、右側の壁がゆらゆら光ってたのよ」

真「はぁ」

伊織「その光が、『若さの泉』の水が反射した光なの」

真「……え?」

伊織「だからぁ、壁に反射した光が、若さの泉の水が、反射した光」

伊織「……わかったかしら?」

真「……」

伊織「どうしたのよ黙っちゃって」

真「いや、あの……リアクションが追いつかないんだけど」

真「え、つまり、若さの泉は、水の反射でしか確認できない、ってこと?」

伊織「そうね、そういうことになるわね」

真「い、伊織ぃ! そんなの絶対わかるわけないじゃないかぁ!」

伊織「でもちゃんと言ったじゃないのぉ、とりあえず『ある』わよ、って」

真「でもそんな……うわー、伊織に上手い事騙されたぁ!」

伊織「人聞き悪い事言わないで欲しいわね」

真「もう悔しいぃ~、反射とかわかるわけないよぉ~!」

真「もう怒った、次来たら反射した光だけでも絶対見逃さないでやる」

伊織「……ま、頑張んなさい」

真「ああ、頑張ってやる! ……へへっ」

伊織「ふふ、何よもう」

響「お、どうしたんだ楽しそうだな」

伊織「あら、話し合いは終わったの」

響「ああ、このカエルのぬいぐるみ買ってもらったから、写真は買わないことにした」

真「でっか!」

貴音「ふふふ……カエルのぬいぐるみ一つで、わたくしの醜態が晒される事が無くなるのならば……」

伊織「や、やつれたわね随分……」

真「この後もあるんだけど……タワーオブテラーどうする?」

響「ああ、タワーオブテラーか……もっと酷い写真になる可能性もあるよな……」

貴音「ふふ、ふ……もはやわたくしに怖いものは何もありませんよ」

伊織「今のアンタが一番怖いわよ」

―――

10:00 ロストリバーデルタ

伊織「ちょうどいいわ、キャラメル味のポップコーン売り場が近いから行きましょう」

貴音「おお、心に大きな傷を負った今のわたくしには、確かにポップコーンが必要です!」

響「よっし行ってみるぞ」

―――

ポップコーン売り場

響「あ、これかあ30周年記念バケット」

貴音「30……成程、ここが作られてから、今年で丁度30年目なのですね」

真「あれ…ディズニーシーって、この前10周年イベントやってなかったっけ?」

伊織「ええそうよ。30周年は『ディズニーリゾート』の、記念イベントなのよ」

響「へぇ~、じゃあランドの方でも30周年グッズとか売ってるのか」

伊織「もちろん。あ、あとこの売り場だと、バケットのストラップにつけるクリップもあって……」

真「あ、可愛い。ミニーだ」

響「これいいな。自分も買おうかな」

貴音「……何にせよ、ポップコーンがまた食べられて嬉しい限りです」

伊織「アンタは完全に、色気より食い気、ってとこね……」

―――

10:10

真「どうしよう、どこに行こうか」

響「……なあなあ、みんないいかな!」

伊織「何?」

貴音「どうかしましたか響?」

響「せっかく近いんだしさ、1年ぶりに、グーフィーたちにまた会いに行こうよ!」

伊織「ああ専用グリーティングね」

真「いいね」

貴音「ぐーふぃー殿だけでよろしいのですか?」

響「そうだなぁ……とりあえず行って、待ち時間見てみよう!」

伊織「いいわよ、じゃあ行きましょうか」

―――

『ミッキー&フレンズ・グリーティングトレイル』
ロストリバーデルタのジャングルに囲まれた場所で、古代文明の遺跡や、
植物や昆虫などの調査・研究をしているディズニーの仲間たちと記念撮影をしたり、
触れ合ったりして楽しもう!
道の途中にもいろんなしかけが施されていて、探険家気分で楽しめます。


真「ちょっとまた雨がパラついてきたかな」

響「えーと、グーフィーは10分待ちで、ミッキーとミニーが20分待ち……」

響「グーフィー……」

伊織「……ミッキーの人気が飛びぬけてるだけで、グーフィーも人気キャラよ? ……って去年言ったわね、コレ」

響「あ…ああ、そうだな! 心配なんかしてないさぁ!」

響「自分はグーフィー好きだけど、人気が無いかも、なんて心配するのは失礼だもんな!」

響「よし……とりあえず、まずはグーフィーのとこに行こう!」

貴音「ふふ……そうですね、並びましょうか」

―――

真「美希が一緒の時はここに来なかったから、ボクも二回目だね」

伊織「そうなるわね。……雨がちょっと強くなってきたかしら」

響「えーと、レインコートレインコート…あった、これだ」

貴音「響、今から着るくらいならば、わたくしの傘に入ってはどうですか?」

響「ん? あ、そういう手もあるか」

響「じゃあ仲良く相合傘な」

貴音「ええ、どうぞ」

真「うぅ~……ちょっと湿気強いなぁ」

伊織「そうねぇ…日本だとジメジメするから、こういうのが雨の日の一番イヤなところね」

伊織「……真、私の傘に入る?」

真「え、い、いやいいよ」

伊織「なぁ~に恥ずかしがってんのよ。濡れるでしょ、来なさいよ」

真「……じゃあ、せっかくだから…お邪魔します」

伊織「いらっしゃい。なんてね」

響「う~ん、強くはならないけど、雨まだ止まないぞ」

貴音「これはこれで……水上しょーが雨合羽で行われる可能性が高くなります故……」

伊織「そういやアンタの目的の一つはそれだったわね」

真「……」ボーッ

真「……ん?」

真「ひょっとしてアレ……」

真「…………」

真「……!!」

真「え!? い、いやまさか……!」

響「な、なんだ真、どうしたんだ?」

真「い、いや……!」

真「すごい! すごいよ伊織! 響も貴音も!」

貴音「な、何でしょうか?」

真「ほら、あのトーテムポール」

響「3兄弟のヤツだな」

伊織「ヒューイ、デューイ、ルーイね。それがどうかしたの?」

真「い、いや、それはボクもわかってるんだけど……二人目の右腕の下……!」

響「ん~…?」

貴音「……」

響「!?」

貴音「!?」

響「ミッキーだ!」

貴音「みっきー殿の輪郭が……!」

伊織「へぇ~、よく見つけたわね、こんな小さいの」

真「こ、これって『隠れミッキー』!?」

伊織「もちろん」

真「こ、こんなとこにもあるのか……やったぁ!」

響「真すごいな~、可愛いな~とは思ってたけど、こんなのあるなんて全然知らなかったぞ」

伊織「ここの待ち時間用の通路って特に隠れミッキーが多いから…」

伊織「響も周りを見れば、何か見つけられるかもしれないわよ」

貴音「わたくしでも見つかりますでしょうか?」

伊織「頑張れば見つかるんじゃない?」

響「ど、どこだろう。何かないかな?」

真「ボクも他に探してみよう」


※隠れミッキー
ミッキーの特徴的なシルエットである
「●」が3つのシンボルマーク

ディズニーリゾートには、このマークが至る所に配置されている
一見するとわからないが、見ると確かにミッキーの形をしている、というものもあり
そういったものを総称して「隠れミッキー」と呼ぶ

―――

10:25

響「やっぱりグーフィーは可愛いなぁ~」

真「ひょうきんでお茶目って感じだよね」

貴音「しかし、時たまぐーふぃー殿が非常に凛々しく見えるときもありましたね」

響「そうそう、そういうギャップがたまらないんだ!」

伊織「響は大満足みたいだけど……他のグリーティングもする?」

真「そうだなあ…待ち時間は……」

貴音「みっきー殿、みにー嬢、どちらも20分待ちですね」

響「あ、じゃあさじゃあさ、ミッキーにはエントランスで会ったから、ミニーのとこ行きたい!」

真「そっか、ミニーにだけまだどこでも会ってないんだね」

貴音「みにー嬢は1年前、だっふぃー殿を作っている姿を見たきりでしたね」

伊織「じゃあ、ミニーのグリーティングに行きましょう」

―――

10:50

真「可愛い、あれは問答無用で可愛い」

響「うん、自分が可愛さで勝てる面、一つもない気がする……」

伊織「なんでミニーに会ってきて暗くなるのよ」

貴音「ぐーふぃー殿にはぐーふぃー殿の、みにー嬢にはみにー嬢の良さがあるものです」

貴音「響がみにー嬢と自分を比べて、そう悲観することもないでしょうに」

響「や、もちろんわかってはいるんだけどさぁ……」

真「立ち振る舞いがさ、完璧に『お嬢様』なんだもの!」

真「あんな可愛くてあんな上品なの、ボクには出来っこないって思うとさ……」

響「そうそう、可愛くて、グリーティング出来て嬉しいんだけど、自分はそれと比べると……」

伊織「ミニーに会ってそんなに落ち込むこともないでしょうが!」

伊織「しゃきっとしなさい、次のとこ行くわよ」

真「あ、ああわかった」

―――

11:00 アメリカンウォーターフロント

真「じゃあまず、タワーオブテラーのファストパスとってくるよ」

伊織「ええ、お願い」

響「……貴音、大丈夫か」

貴音「の、乗る前から怖気づくような柔な精神力ではありませんよ……!」

伊織「ましてやファストパス取ってくるだけだものね」

貴音「ふふ……いざ乗る時は、去年よりも進化したわたくしをお見せいたしましょう」


11:05 タートル・トーク前

響「お、ちょっと雨弱くなってきたぞ」

伊織「まだ完全に止んだわけじゃなさそうね」

真「ただいま~、はいファストパス」

貴音「ふむ……14:00から15:00まで有効、ですか」

響「結構時間空くなぁ」

伊織「ま、その都度何か考えるわ。まずはクラッシュの質問考えておかないと」

真「そうそう、ボクこの前行った時も当てられなかったんだ。今日こそは当たりたいな」

貴音「くらっしゅ殿は確か、120年程一緒にいる、しぇりーという奥様がいる……」

貴音「ふむ、何を質問すればよいものでしょうか」


『タートル・トーク』
ここはS.S.コロンビア号の船尾にある海底展望室。
大きなガラス窓越しに、ウミガメのクラッシュとお話しすることができます。
クラッシュにどんな質問をするか考えておいてくださいね!


―――

お姉さん「それでは、みんなでクラッシュを呼んでみましょう~」

せーの

「「「「クラッシュー!!」」」」


デンデケデン、デデン、デンデケデン、デデン~♪

クラッシュ『ぃょぉおおおお~!!ほっほ~』

クラッシュ『みんな、こんにちわ~』


「「「「こんにちわー」」」」


クラッシュ『ん~? なんか元気なくないかぁ~?』

クラッシュ『みんな……こんにちわ~!』


「「「「こんにちわー!!」」」」


クラッシュ『うほぉ、今度は急に元気になったなぁ~』

クラッシュ『よぉ~し、じゃあそんなみんなに、オレから質問をしてみようかな~』

クラッシュ『じゃあまずは、こっちの方に居る人、そうそう、前から4番目の……』

クラッシュ『右端に座っている、緑の帽子の、男の子……? かな』

クラッシュ『そうそう、君。君と話をしてみたいな~』

クラッシュ『こんにちわ~』

男の子「こ、こんにちわ」

クラッシュ『名前はなんてーの?』

男の子「『りょう』です」

クラッシュ『へぇ~、『りょう』……ふむふむ、なるほどぉ』

クラッシュ『カッコいい名前じゃないかぁー!』

クラッシュ『よし、りょう。オレたちが出会った記念だ』

クラッシュ『俺が、最高だぜーっ! って言ったら……りょうは両方のヒレを大きく上げて』

『うぉー!!』

クラッシュ『って言うんだぁ~』

クラッシュ『大丈夫かぁ? 勢い良く上げるんだぞ~?』

クラッシュ『じゃありょう……最高だぜー!』

りょう「うおー!」

クラッシュ『お、おいおいりょう、予想以上に勢いが良いなあ』

クラッシュ『よーし、じゃあみんなりょうに拍手だぁー』

パチパチパチパチ

真(なんか聞き覚えのある声だったような……気のせいかな)

クラッシュ『よし、じゃあ今度はみんなでやってみるぞー』

クラッシュ『みんな~、りょうに負けるないくらい大きい声で頼むぞ~』

クラッシュ『みんな……最高だぜぇー!』

響「うおー!」

真「うおー!」

貴音「うぉー」

クラッシュ『はっはっは~、みんな今日はえらく元気だなぁ』

クラッシュ『よぉ~し、じゃあみんな自分に拍手だぁー』

パチパチパチパチ

響(やっぱこれ楽しいなぁ)

貴音(くらっしゅ殿の話芸は、やはり見事ですね)

―――

クラッシュ『お前たち……最高だぜぇ~』

真「うおー!」

響「うおー!」

貴音「うぉー」

伊織「うおー」

りょう「うおぉー!」

クラッシュ『いやおいおい、りょうはどんだけ元気なんだよ~』

響「ほ、ほんと元気だな……」


りょう「……ゆ、夢子ちゃん、もう勘弁してよぉ……」

夢子「なぁーに言ってんのよ涼、せっかく当たったんだからもっと楽しまないと」

夢子「まあ、もうクラッシュも元気いいくらいじゃ反応してくれないでしょうけどね」

涼「で、でしょ? もうあんな大声出すのほんと恥ずかしいんだって……」

夢子「……」

―――

クラッシュ『よぉ~しそれじゃあ、俺に質問のあるやつはいるかなぁ?』

クラッシュ『いたらヒレを大きく上げてくれー』

真(当たんないかなぁ……)バッ

クラッシュ『そうだなぁ……じゃあまずは、後ろの列の……』

クラッシュ『後ろから3番目、こっちのブロックに居る~、右から3番目のお嬢ちゃん』

真「……え、ボク?」

クラッシュ『うんうん、君に話を聞いてみようかなぁ~』

響「お、おい真!」

伊織「当たったわよ! ほら質問!」

真「まま、まさか本当にいきなり当たるなんて……!」

クラッシュ『質問は何かな~?』

真「え、えと、そ、その……!」

真「どこか行ってみたいところはありますか!?」

クラッシュ『行ってみたいところか~、そうだなぁ』

クラッシュ『オレは世界中の海を泳ぎまわってるからぁ~、行こうと思えばどんなとこにでもスーッと行けちゃうんだぁ』

クラッシュ『でも本当に行きたい場所にはもう行ってるんだぜ~?』

クラッシュ『どこだと思う?』

真「え? ……わ、わかりません」

クラッシュ『ふふ…』

クラッシュ『みんなと出会えた、今日のこの場所さ』

……

オオォー

ヒューヒュー!

パチパチパチパチ

響「か、かっこいい……!」

貴音「あのようなセリフをこともなげに……」

クラッシュ『おいおい照れるじゃないかぁ~』

クラッシュ『お前たち、最高だぜ~』

伊織「クラッシュの良いセリフのダシにされちゃったわね、真」

真「何言ってるんだよ、当てられただけでもすっごく嬉しいんだからさ、そんなの関係無いよ」

伊織「にひひっ、わかってるわよ」


クラッシュ『他に質問のあるやつはいるかぁ~?』

クラッシュ『いたら大きくヒレを上げてくれ~』


バッ

涼「!? ゆ、夢子ちゃん!?」

クラッシュ『おぉ~、そうだなぁ、じゃあ勢い良く上げてくれた、前の列の……』

クラッシュ『そう、丁度りょうの隣にいる女の子』

クラッシュ『君とお話をしてみようかぁ』

夢子「……よし」グッ

クラッシュ『名前は?』

夢子「ゆ、夢で~す!」

クラッシュ『夢~、オレに質問って何だ~?』

夢子「クラッシュさんは、奥さんと長い間一緒にいるそうですね」

夢子「パートナーと長く関係を保てる秘訣って何ですか?」

涼「!? な……」

クラッシュ『おぉ~よく知ってるなぁ』

クラッシュ『オレにはさぁ、シェリーってパートナーがいてさぁ、120年一緒にいる大切なやつなんだ~』

クラッシュ『長く関係を保つ秘訣かぁ~……』

夢子「…………」

クラッシュ『はっは~、よくわかんねぇな~』

夢子「!?」ズルッ

涼「へ?」

クラッシュ『気が付いたら、いつも側にシェリーがいたからなぁ~』

クラッシュ『だから何か秘訣があって一緒にいるわけじゃないんだぁ~』

夢子「……! な、なるほど」

クラッシュ『いつも側にいて、それが当たり前……そういう関係になることが秘訣なのかなぁ』

クラッシュ『まあそんなわけで、あんま質問の答えになってなかったかなぁ』

クラッシュ『夢には誰か、大切なパートナーはいるのか?』

夢子「! はい、私の横に座ってる『りょう』がその人です」

涼「ちょ、え!?」


真「……え、恋人同士? が二人ともクラッシュに当てられたってこと?」

響「丁度横にいる人っていってたもんな、そういうこともあるのか」

伊織「熱々で羨ましいわね~」


クラッシュ『はっはっは、何だそうだったのか~』

クラッシュ『りょう~、素敵なパートナーがいるなんて素晴らしいじゃないかぁ』

りょう「あうぅ、ゆ、夢子ちゃん……!」

夢子「ムフー……」

クラッシュ『二人が仲良ければ、それで何よりだぁ』

クラッシュ『夢~、ありがとうな』

クラッシュ『お前たち…最高だぜー!』

―――

デンデケデン、デデン、デンデケデン、デデン~♪

クラッシュ『みんなじゃあな~』

クラッシュ『りょう~、夢を大切にしろよ~』

真「あはははは、そんなことも言ってくれるんだ」

響「うわぁ、すっごく羨ましいなぁ」

貴音「公の場で祝福してくれるなど、なんと運の良い二人なのでしょう」


涼「ま、まさかこんなことになるなんて……///」

夢子「私は大満足よ」

涼「そ、そう……///」

伊織「お客さんの反応で全てが決まるアドリブだから、こういう回もあるものよね~」

伊織「ほーんと、クラッシュてばナイスガイなんだから」

真「やっぱ聞き覚えあったんだけど……気のせいかなぁ」

響「……あ、そうだ。お昼どうする?」

貴音「もうそのような時間になりましたか」

伊織「11:45ね。混み始めるとこも多いけど、多分あそこなら大丈夫かしら」

真「どこかアテがあるのかい?」

伊織「ええ。まずは『ポートディスカバリー』まで行くわよ」

―――

11:50 ポートディスカバリー

響「あー、そういえばストームライダーは今日やってないんだよな」

伊織「全部のアトラクションが正常に運転してる日って結構少ないのよね」

貴音「そうだったのですか」

真「なんだっけ、定期メンテナンス? それで休止中みたいだよ」

貴音「でいびす殿には会えないのですか。寂しいものですね」

伊織「また別の日に来ればいいでしょ……あ、着いたわ」

真「ってちょっと伊織! すごく混んでるじゃないか!」

響「こ、ここに来るまでずーっと続いてたこの行列って……ここに入るためのものだったのか」

貴音「これでは食事をするどころではないでは……」

伊織「ふっふ……なぁ~にを勘違いしてるのかしら?」

響「ひょ?」

伊織「私たちが入るのは、こっちの入り口よ」


『ホライズンベイ・レストラン』
フェスティバルの開催中に気象コントロールセンターを訪れる科学者やゲストをもてなすため、
ヨットクラブを改装してレストランをつくりました。

オープンキッチンに広がる香ばしい香りが食欲を誘います。
明るく開放感のあるダイニングで、心地よい風と波の音を間近に感じながらいただく料理は格別!
ディズニーの仲間たちがごあいさつに訪れる「ディズニーキャラクターダイニング」も大人気です。

※お食事のみでもお楽しみいただけます。

響「そっかぁ~、混んでたのはキャラクターたちと食事できる方のスペースだったのか」

真「えーと、料理の種類に応じて、好きなものをプレートに乗っける、と」カチャカチャ

貴音「何でも無制限にとってよいわけではないのですね……そうでしたか」ガックリ

伊織「別料金払うんなら単品でも食べられるわよ」

貴音「ふむ…そうですね、鶏肉…いや鮭もそそられるものがありますが……」

響「……向こうがすっごい混んでるのに、こっちはそんなにだな」

伊織「ええ、キャラクターダイニングが人気な分、通常のレストランのこっち側は空いてることが多いわね」

伊織「仮に空いてなくても、席が多いからそれだけ混みにくいのもあるし」

真「……よし、セレクトファイブセット、これでちょうど5種類かな」


カチャカチャ モグモグ……


伊織「お昼にここでたくさん食べる分、夜は軽食で済ませてもいいかしら?」

伊織「……貴音には、そこらへんのスナックで空腹を満たしてもらうとして」

貴音「わたくしは構いませんが」

響「確かに量多いな。これなら夜までもつと思うぞ」

真「うん、それでいいんじゃないかな」

伊織「じゃあ、食べて、少し休憩したら、午後の予定を考えながらトイストーリーに行くわよ」

響「はーい」

真「わかったー」

貴音「畏まりました」

―――

12:30 ホライズンベイ・レストラン前

伊織「雨は止んだけど……空は曇りのまま」

響「また降り出しそうだな」

真「ほらほらみんな、そんなことよりファストパスの時間、もう30分も過ぎてるよ」

貴音「13:00までは有効ですから、そんなに急がずとも良いではないですか」

伊織「そうそう、急がない急がない」

真「もう、こっちは大変な思いしてファストパス取ってきたんだから」

真「万が一にも乗れなくなったらイヤなんだ。ほら、早く行こう!」

響「あ、ちょっと待つさぁ、真!」

―――

12:45 トイ・ストーリー・マニア!前

響「う、ウッディの顔が……でかい……」

貴音「威圧感がありますね」

真「ボクもここは初めてなんだよな」

響「美希たちと来たときに乗らなかったのか?」

伊織「……美希が寝坊して遅刻したから、入園時間がまず遅れて」

伊織「ファストパスも終了しちゃったし、待ち時間長いとこに並びたくないって言うし」

伊織「……で、結局その時はここには来なかったわ」

響「そうだったのか」

貴音「……御苦労様でした」

真「はは、他のとこ周って、それはそれで楽しかったけどね。ありがと」

『トイ・ストーリー・マニア!』
ウッディが広げた大きな口から中へ進むと、
いつのまにかおもちゃの大きさになっちゃった?!
アンディのベッドの下で、おもちゃの世界のシューティングゲームを楽しもう!


伊織「ってわけで、ウッディの口の中に入った瞬間から、私たちはおもちゃの大きさよ」

響「よ、って言われても……」

真「実感が湧かない、よなぁ……」

貴音「いえ、そうでもありませんよ」

響「え?」

貴音「この建物の中……まさしく、わたくしたちがおもちゃの大きさであることを実感するではありませんか」

伊織「例えば?」

貴音「あちらにある、大きな四角いものは……『どみの』ではありませんか?」

響「…お、ほんとだ。ドミノだな」

真「でっかいね。…あ、そうか、ボクらがちっさくなったってことか」

貴音「ええ、そういうことです。部屋の中にあるあらゆるおもちゃ達が、わたくしたちよりも大きいのです」

貴音「正に、わたくし自身が小さくなったかのような感覚になりますね」

昼過ぎまで保守してくれるなら書く
ごめん

真「そう言われると…なんか楽しくなってくるね」

響「てことはこの大きいカードみたいなのってトランプなのか…自分たちが小さくなって、大きく見えるんだな」

真「こっちのウッディたちが書いてあるでっかいのは本だね、へぇなるほどー」

伊織「……あ、そうそう、今のうちにゲームの解説だけしておくわね」

響「ん?」

貴音「おや、そういえばここは遊戯施設でしたね」

真「ゲームって何やるんだい?」

伊織「えーとね、乗り物に乗って、手元にあるキャノン砲みたいなので、画面に向かって弾を撃つのよ」

貴音「ふむ、射的ですか」

伊織「紐を引いて弾を発射するんだけど、先端には撃ちやすいようにボールが付いてるわ」

――●

伊織「こんな感じの」

響「あはは、なんかしっぽみたいだな」

伊織「ワイングラス持つみたいにボールに指を掛けて引っ張れば、そんなに疲れないわね」

真「ふむふむ」

響「指と指の間に挟む感じか」

伊織「特に真とか響は好きでしょうけど、的によって点数が変わって、的の種類が変わったりして……」

伊織「最終的に個人成績が発表されるわよ」

真「お、ってことは……」

響「競争…するかぁ?」ニヤリ

真「もちろん」グッ

伊織「……最後の方でたくさん稼げるポイントがあるから、前半飛ばしすぎないようにね」

貴音「逆転の機会が設けられている、と。……わたくしにも芽はありそうですね」

伊織「アンタもやる気なのね。まあいいわよ、全員で競ってやろうじゃない」

―――

真「ドアでかっ!」

伊織「ここからが、アンディの寝室」

貴音「あんでぃ殿……? 誰でしょうか」

響「トイストーリーっておもちゃの話だろ? そのおもちゃの持ち主さぁ」

貴音「おや、ではおもちゃの大きさになったわたくしたちにとっては、あんでぃ殿は巨人のような大きさに見えるのですかね」

真「アンディが実際にいるのかな」

伊織「そこはほら……あのでっかいの、アレ」スッ

響「アレ? ……あ、ひょっとしてあれって、ベッドか!?」

真「アンディのベッド? でっかいなぁ」

貴音「やはりわたくしの推測は間違ってはいなかったようですね」

伊織「今からやるゲームも、アンディの寝ているベッドの下でやるってことになってるのよ」

伊織「そうねえ……だから、もし万が一アンディが起きてきたりしたら、わたしたちピンチねぇ」

響「……そ、そうだな」

真「……あえて言うけどさ、まだお昼じゃないか。なんでアンディこんな時間にベッドで寝てるんだよ」

伊織「そんな野暮なことは言いっこナシよ」

貴音「ふふ、しかしこれだけ大勢の人間が騒いでいたら、流石に起きてしまうのでは……」

伊織「だから野暮なことは言わないの、にひひっ」

貴音「そうですね。失礼致しました」ニコッ

―――

ガチョンガチョン ペチャ、ペチャ!

ガチョンガチョン ペチャ、バシャ!

響「な、なるほどこういうことかぁ~」

真「うわ面白い、これすっごい面白いって!」


ガチョンガチョンガチョン

伊織「くっ……やっぱり慣れてる立場でもちょっと難しいわね」

貴音「あまり飛ばしすぎないようにと言っておりましたが……無理な忠告というものですね」

伊織「何でよ」

貴音「こ、このように楽しい射的を、止められようはずもありません……!」

ガチョンガチョンガチョン

伊織「それは何よりね……!」ガチョンガチョン

―――

響「はぁ、はぁ、次は輪投げか……」

真「ま、まずいなぁ……もうこんな疲れてるよ……」

響「よっし、いくぞー!」

ガチョンガチョンガチョンガチョン


伊織「輪投げは下ばっかり狙いすぎない方がいいわよ」

ガチョンガチョン

貴音「ふむ…やはり輪が入らないと得点とはみなしてくれぬようですね」

伊織「そうそう、上の方が入りやすいわ」

ガチョンガチョンガチョン

―――

響「こ…これかぁ~、最後のボーナスってこれのことかぁ~」ガチョンガチョン

真「うおおぉぉー!」ガチョンガチョンガチョン

響「ま、負けるもんかぁー!」ガチョンガチョンガチョン

―――

伊織「えーと本日の最高得点が……はぁ、相変わらず異次元の得点だわ」

貴音「わたくし自身の得点は…成程」

伊織「初めてにしては上出来じゃない?」

貴音「そうなのですか?」

伊織「そこそこってとこね」


真「はぁ、はぁ……お、お疲れ」

響「じ、自分たち頑張ったぞぉ……」

伊織「バテすぎでしょ! どんだけ飛ばしたのよ!」

貴音「しかしその分、二人には高得点が期待出来そうですね」

伊織「そうね。じゃあ私たちから報告するわね」

真「あ、ああ、お願い」

伊織「えーと、私の得点は、162200点」

真「あれ、経験者の伊織でもそんなものなのか」

伊織「まあテクニックでカバーできるけど、最後は体力勝負だから仕方ないわ」

響「で、貴音が……」

貴音「わたくしは94200点、ですね」

伊織「女性で初プレーならそこそこのスコアよ。二回目以降はもっと上がるんじゃないかしら」

伊織「……で、本命の二人だけど」

真「えーと…じゃあ響からでいいかな」

響「そうだな」

響「自分は……209300点!」

貴音「に、20万……」

伊織「流石に高得点出して来るわねー、20万超えが一つの指標にもなるのに」

響「へへ、そうか? でももうちょっとで21万だったのになぁ、そこが悔しいぞ」

伊織「で、最後が真だけど」

真「ボクの得点は……226200点!」

伊織「……筋肉バカだわ」

真「こんな頑張ったのにその反応!?」

貴音「す、凄まじい得点ですね、二人とも……」

響「最後のラッシュでちょっと差ぁつけられちゃったんだよなぁ」

真「それまではほとんど同じだったんだけどね」

伊織「でもよかったわ。流石にいきなり最高得点更新するような異次元の筋肉バカじゃなくて」

真「ああ、そう最高得点!」

真「なんだよアレ、本日の最高得点が35万とか!」

響「真が1時間のハイスコア更新したから二人で喜んでたのに、あれ見せられたらショックだったよなぁ」

貴音「それだけ、上には上が居る、ということなのでしょう」

伊織「そうそう、あんまり落ち込まなくてもいいわよ」

伊織「『トイストーリーマニアのマニア』が出した得点もあれば、ディズニーのキャストが出した得点もあるから」

真「キャスト……なんでキャストの人が乗ってるの?」

伊織「色々と理由はあるわよ。後で教えてあげるわ」

―――

13:10 アメリカンウォーターフロント

伊織「どうする? ファストパスが出せる時間になったわ」

伊織「トイストーリーマニアのファストパスは、今から出せば20:00から、だけど」

真「もし出したら、最後の最後にここに来る、って感じになるのかな」

響「他のとこってパス出さなくても少ししたら乗れるんだろ?」

伊織「そうね、雨はほとんど止んだけど、人はそんなに増えてないかしらね」

伊織「えーと……うん、センターオブジアースでも15分待ちくらいだわ」

貴音「これほどの人気施設だと言うのに、まさかまた乗ることができるとは……」

伊織「貴音ってばけっこーはしゃいでたものね」

真「よし、じゃあ取ってくる」

13:15 タワー・オブ・テラー前

響「なん、なんだなんだ?」

真「タワーオブテラーの前に凄い人だかりが……」

伊織「……雨が上がったからだわ」

貴音「どういうことでしょうか?」

伊織「フリーグリーティングが来てるのよ、しかも……3人も」

真「3人、えーと……あ、ほんとだ見える」

響「あれってドナルド…じゃない、スクルージ伯父さんだ!」

貴音「わたくしにもわかるのは、あちらの『でいじぃ』嬢ですね」

伊織「あとは奥の方にもう一人、多分『マリー』だけど」

伊織「午前中に雨が降ってて、フリーグリーティングとして出てこられなかったから」

伊織「雨が止んでみんな出てくるようになったんだわ」

響「それでこんなにたくさん人がいるのかー」

真「写真、撮ってみようか?」

伊織「あの人だかりだと、写真撮るのもたいへんよぉ」

貴音「では、誰か一人に狙いを絞るのはいかがでしょうか」

真「そっかそれならいけるかも」

伊織「誰にする? 響は誰か一緒に写真とりたいキャラクターいる?」

響「えーと…話にだけ聞いてて今日初めて生で見れたから、スクルージ伯父さんと撮ってみたいぞ」

貴音「あちらの、どなるど殿に良く似たアヒルの方ですね」


伊織「最初に行っておくと、エントランスのと同じで、フリーグリーティングは順番待ちとかが存在しないわ」

伊織「前の人が終わったら、いろんな人が次は自分が、って群がってくるの」

真「な、なんかちょっと怖いね、それ」

伊織「まあそれに命かけてる人もいるわね」

響「で、でも、自分はスクルージ伯父さんと一緒に写真撮りたい!」

伊織「熱意があればきっと大丈夫よ、タイミング見計らって突撃! ってね」

貴音「……とても触れ合いの打ち合わせをしているようには聞こえませんが……なにやら楽しくなってきましたね」

―――

響「うわぁ、ほんとに人が……! く、次は自分が行くんだ……!」

伊織「キャラクターが自分を見てくれるかどうか、の運も絡んでくるから」

伊織「どうしてもダメなときもあるわよ、あんまり気負いすぎないようにね」

響「う、うん」

真「……今写真撮ってる人も、もうそろそろかな」

貴音「……」

貴音「…………」


真「終わった…けどスクルージがあっち向いちゃってる」

響「う、う~ん…こっち向いてくれないとどうしようもないなぁ……」


貴音「…!」カッ

スクルージ「!?」クルッ


響「……うぇ? む、向いた?」

スクルージ「……!」

響「じ、自分と写真撮ってくれるのかぁ!?」

真「やったね響」

伊織「運が良いわね~」

貴音「……ふふ、そうですね」


真「スクルージと一緒にいたお姉さんに頼んで、ボクたち全員でも撮れたね」

伊織「まさかあんなスムーズに行くとは思わなかったわ」

響「えへへ~、嬉しいなぁ~」

真「……どうする? 思ったよりスムーズに行ったし、他のキャラクターのとこも行ってみるかい?」

伊織「あら、じゃあ私はデイジーと一緒に取りたいわね。実はまだデイジーとだけ一緒の写真が無いのよ」

響「お、いいぞー、今度は自分も協力するぞ!」

―――

真「ちょっと…逆に怖いよ」

伊織「私もよ」

響「で、デイジーも…マリーも…すぐこっちのほう向いて、写真撮ってくれたもんなぁ」

貴音「…………」

伊織「ラッキーだった…で済ませていいのかわからないくらいラッキーだったわね」

真「ま、まあ……とりあえず、良かったと思う事にしようよ」

響「そうそう、実際に写真だって撮れたわけだしさぁ!」

伊織「フゥ…そうね、深く考えても仕方ないかしらね」

貴音「……フゥ」


13:25

伊織「タワーオブテラーまでちょっと時間があるから、ミステリアスアイランドの方に行ってみない?」

真「センターオブジアースのとこだね、いいよ」

―――

13:35 ミステリアスアイランド

伊織「……で、着いたわけだけど……」

響「何だ?」

伊織「実はここってね、全部のエリアの中でも、特に設定やストーリーが凝ってるとこなのよ」

貴音「どういったところが?」

伊織「まずこの一帯は、『ネモ船長』って人が中心に、火山調査をしてるところなの」

真「ネモ船長って聞いた事あるね、センターオブジアースだったかな」

伊織「そうね、海底二万マイルもそう。ネモ船長が発掘したりした施設を巡ってるって設定なの」

響「発掘した施設って、センターオブジーアスがか?」

貴音「何か根拠はあるのでしょうか? それとも、そういうことになっている、というだけでしょうか?」

伊織「ふっふっふ……ちゃあんと、根拠があるのよ」

伊織「あそこに、岩盤に突き刺さったドリルマシーンがあるでしょ?」

響「ああ、外から見るとすごく目立つよなアレ」

伊織「センターオブジアースの洞窟は、アレで掘って出来たものよ」

真「……え、本当に?」

伊織「本当に」

貴音「ふむ……」

貴音「……!!」

貴音「い、伊織の言っている事は…どうやら紛れもない真実のようですね」

響「ど、どうしたんだ貴音?」

貴音「こちら……施設の入り口を見てください」

真「入り口? 普通じゃないか」

貴音「いえ、そうではありません、入り口の形です」

響「ハートみたいだ」

貴音「そうです、そして、先ほどのどりるの機械を見てください」

真「ドリル……?」

真「あ!」

響「ドリルが二つ付いてて……あれで彫ったらハートみたいになるな!」

伊織「貴音に上手い事説明されちゃったけど、そういうことよ」

伊織「センターオブジアースの入り口を見れば、あのドリルで掘ってあるのがわかるってわけ」

貴音「……もちろん、隠された設定や知られざる話は、まだまだあるのでしょう?」

伊織「ええ、もちろん……並びながら、色々教えてあげるわよ」

真「き、期待してるよ」


『センター・オブ・ジ・アース』
謎の天才科学者、ネモ船長によって明かされる、
いまだかつて誰も見たことのない地底世界へようこそ。
地底走行車で、神秘と驚異の世界をめぐりましょう。

まばゆい光にあふれた水晶の洞窟、巨大キノコの森、地底に生息する珍しい発光生物。
と、そのとき、なんだか不気味な振動が…。

―――

伊織「まずここの本来の目的なんだけど」

響「へ? 本来の目的?」

伊織「本来は、ネモ船長たちが発掘した地底洞窟を巡って、色んな不思議なものをみて楽しみましょうってツアーなの」

伊織「例えば火山が噴火したりしさえしなければ、楽しい地底探検ツアーになるわよぉ」

真「……説明が白々しすぎるって」

伊織「大丈夫よぉ、火山が噴火したりしさえしなければ、危険は無いんだもの」

響「自分たち去年ここ乗ったのに、そんな説明してどうなるんだよ……」

貴音「ふふふ……響、野暮な事は言いっこなし、ですよ」


伊織「そうそう、ミステリアスアイランドの合言葉も教えておかないと」

真「合言葉?」

伊織「左手を、右の肩のちょっと下に、ポンと置くように」

響「こ、こうか?」

貴音「腕は体に密着させるのですね」

真「ポーズ自体は全然違うけど、『イエッサー』って言いたくなる感じだね」

伊織「で、これが基本ポーズ」

伊織「出来た相手のポーズを見るなんとなくわかると思うけど、体で『N』の字を表現してるの」

響「N……ああ、なんかそんな感じだな」

真「Nってなんだろ?」

貴音「……『ネモ船長』殿の頭文字、ということでしょうか」

伊織「そうそう、ネモ船長のN。ミステリアスアイランドには『N』にまつわるオブジェクトがたくさんあるわよ」

伊織「この状態で『モビリス』って言って、言われたほうが『モビリ』って返す」

伊織「これが、ミステリアスアイランドの合言葉よ」

真「モビリス、モビリね」

響「どういう意味なんだろ」

伊織「確か、『変化し、変化せよ』がモビリス・イン・モビリになるはずだったわね」

伊織「そこから取って、モビリスって言った相手にモビリって返すのがこの合言葉」

貴音「覚えたはいいのですが、いつ使えば良いのでしょう?」

伊織「そこなんだけど……このエリアは、ネモ船長を中心とした調査団のいるとこって言ったわよね?」

響「ああ」

伊織「ここではキャストは、『クルー』って呼ばれているの。優秀な調査員たちってことなのよ」

真「それで?」

伊織「この合言葉は、調査員たちが使うためのもの、だから……」

貴音「もしや、ここの調査員たちに『もびりす』と言えば、『もびり』と返ってくる、と?」

伊織「にひひっ、大正解!」

伊織「クルーの人にNマーク作って、『モビリス』って言えば、クルーの方からは『モビリ』って返ってくるのよ」

真「えー、何それ? 全然知らなかったよ」

伊織「まあ、普通に周ってるだけじゃまず身に付かない知識よね」

響「伊織はなんでそんなこと知ってるんだ?」

伊織「ネットで見たりした知識もあるけど……」

伊織「ほとんどは、ガイドの人に教えてもらったの」

真「ガイド?」

伊織「事前に予約したり、当日は早い者勝ちだったり」

伊織「ともかく、ディズニーを周るのにガイドをつけてもらうことが出来るのよ。お金はかかるけどね」

貴音「がいどとやらを付けると、どうなるのでしょうか?」

伊織「ガイドの内容にもよるけど、各施設の裏話とか設定とかも教えてもらえるし……」

伊織「何よりファストパスが必要な施設も、ガイドがついてるとファストパス無しで行列をすっ飛ばせるの」

響「あ、それ便利だな」

伊織「ガイドさんがそのまま、一緒にアトラクションに乗ってくれたりもするわよ」

伊織「私が一番ビックリしたのは、タワー・オブ・テラーで微動だにしなかったところね」

響「すごいな!」

貴音「そ、そのような強靭な精神力をお持ちとは……素晴らしいです」

真「単にたくさん乗って、慣れただけとか?」

真「……あ! 伊織、ひょっとしてトイストーリーマニアのってあれ……ガイドさんってこと?」

伊織「ああ、全部が全部そうじゃないでしょうけど、そういうパターンもあるわよ」

伊織「さっき言った、『キャストの人が出した高得点』の理由の一つよね」

真「あー、そっかぁ。納得したよ」

伊織「で、ガイドの話は置いといて……いい? モビリス・モビリよ」

真「ん? ああ、合言葉だね」

伊織「地底探検車に乗って出発する前、クルーの人と目が合った時に使うといいんじゃないかしら?」

響「……貴音、モビリス!」

貴音「!?(ビクッ) え、と……も、もびり?」

響「へっへー、完璧だな!」

貴音「……響、もびりす」

響「モビリ!」

貴音「ふふ、大丈夫なようですね」

―――

ジリリリリッ!

火山発動発生 火山発動発生!


貴音「ひ、ひぃいぃ!」

真「そ、そろそろ……」

響「きたぁー!?」

―――

響「ふはぁ……あ、そういえばやっぱ、ちゃんと返してくれたな」

真「モビリ、ね」

貴音「や、やはりわたくしはその後の事を思うと、それ所では無かったです……」

伊織「はぁ~あ、楽しかったわ」

伊織「……真、気付いてた?」

真「何に?」

伊織「私がさっき言ったじゃない? 本当は楽しい地底探検ツアーのはずだって」

真「あ、あー……そんなこと言ってたね」

伊織「信号が赤になって急にスピードが上がったあそこ、本来のルートじゃないのよ」

真「…? 本来のルートじゃない?」

伊織「地底探検ツアーのルートを外れて、火山の噴火の勢いでコースが外れちゃったの」

真「……あ、そういうこと?」

伊織「そう。実は外れる前、地底探検ツアー用の通路が、ちょっとだけ見えてたの」

響「そんなとこあったのか」

伊織「大きな卵がたくさんある所よ、火山が噴火したりしなければ、そこにも行けたんだけどね~」

真「……ふふ、そうだね」

伊織「今度乗る時は、火山が活動したりしなければいいわよね?」

貴音「……ふふ」

真「ははは、本当にそんな日が来るか、疑わしくてしょうがないけどね」

響「み、みんな悪ノリが過ぎるぞぉ……」

―――

14:00

真「タワーオブテラーのファストパスの時間になったね」

響「今すぐ行くか?」

伊織「私はいいわよ?」

貴音「そうですね……」

真「? 貴音は何か別のとこに行きたいのかい?」

貴音「何かに乗るわけではないのですが、伊織」

伊織「はいはい」

貴音「この『みすてりあす・あいらんど』と呼ばれる一帯……他に何か知っていることはありますか?」

伊織「ああ、設定とか裏話とかってことね?」

響「お、そういうのなら自分も聞いてみたいな」

真「でも秘密の合言葉まで出ちゃったし、もうないんじゃないかい?」

伊織「……いや、あるわよ、とっておきのが」

真「と、とっておき?」

伊織「ちょっと着いてきて」


伊織「これ、この地面に書いてある模様、なんだかわかる?」

響「ん~……あ、Nだ!」

真「ここでもネモ船長の『N』か」

伊織「そう、地面にでかでかと記されてるNの文字」

伊織「じゃあ、これが何なのかはわかるかしら?」

貴音「何か、と聞かれても……頭文字を地面に刻印している、という現状以外には何も」

伊織「違うわよぉ、これって意味があって地面にこんなに大きく書いてあるのよ」

響「意味ぃ? なんだろなぁ……」

真「……」

貴音「……」

伊織「……出そうにないみたいね」

真「ま、待って、なんかここらへんまでそれっぽいのが出掛かってるんだ!」

伊織「わかった?」

真「えーとね、あの……あれだよ、あれ」

響「あれじゃわかんないって」

真「あの、ほら……大きくて目印になる……」

真「……思い出した!」

響「あ、ヘリポートか!」

真「あぁー!! それボクが言おうと思ったヤツ!」

響「え、あ、ごめん」

伊織「ふくく……何してんのよ二人で。響のヘリポートが正解」

真「ぼ、ボクもわかってたんだってば、ヘリポート!」

貴音「大丈夫ですよ真、皆それも理解しています」

伊織「そうそうわかってるから。……この地面の大きなNは、ネモ船長の飛行機の着陸目印ってことよ」

真「はぁ~、ただ地面に書いてあるだけじゃないんだね」

響「飛行機かぁ、何でも作れるんだなネモ船長」

伊織「で、驚くのはここからよ」

貴音「まだ何かあるというのですか?」

伊織「今言ったでしょ? 飛行機って」

伊織「ほら、着陸のNの少し前のあたりに……」

真「……んん?」

響「なんだこれ……雨降ってたから、そのシミじゃないのか?」

貴音「……いえ、どうやら違うようですね」

真「これってひょっとして……」

伊織「そう、その飛行機のタイヤの跡」

響「え…えぇ!? そんなのが付いてるのか!?」

伊織「でさらに、真正面の壁……壁の向こうはマーメイドラグーンだけど」

伊織「壁がうっすらと汚れてるでしょ?」

貴音「あれは……苔、ですか?」

響「あれって掃除してないだけだろ」

伊織「そんなわけないでしょ、天下のディズニーが」

伊織「あの壁の下は水場なの。つまり、あの苔が着いた位置まで、壁が下がるってことよ」

真「壁が下がる……」

貴音「……伊織、でぃずにーとやらは、ここまで計算しつくして施設を作っているのですか」

伊織「あら、貴音は完全に気付いたのね。そうよ、細かく計算しつくして、色んなものを作ってるの」

響「え、何が? 貴音、何がわかったんだ?」

貴音「響、こちらの記号が着陸の目印であり、実際にそこに至るまでの飛行機の跡も残っている」

貴音「そしてその飛行機の跡に繋がるように、奥には苔むした壁が存在する」

貴音「これが意味するものは……」

響「……!」

響「奥の壁が苔の位置まで下がって、ネモ船長の飛行機がここまで入ってこれるようにする」

響「……てことか」

真「そうか……そうなるとここらへんの全部がきちんと説明がつくのか……」

貴音「まこと……考え抜かれた、遊び心というものを感じますね」

伊織「どうだったかしら、伊織ちゃんの不思議発見ミステリーは?」

貴音「脱帽ですね」

真「……ひょっとして、これってガイドの人に教えてもらった?」

伊織「ええ。私も最初聞いたときは目を疑ったわよ」

伊織「それこそ苔もただの汚れだと思ってたし、タイヤ跡も地面のシミだと思ってたもの」

響「うひゃぁ、こんなのばっかだと思ったらそこかしこ見て周りたくなってきちゃうぞぉ……」

伊織「にひひっ、他のメンバーと来たときにひけらかしちゃうのもアリじゃないかしらぁ?」

真「う、うん。ていうかもう、すぐにでも知らない人に言ってみたいね」

―――

14:20 タワー・オブ・テラー

伊織「さあ、いよいよ着いたけど、貴音は覚悟はいい?」

貴音「は、はい」

伊織「……あ、ごめんなさい、間違えたわ」

貴音「?」

伊織「このタワー・オブ・テラーも、ニューヨーク市保存協会が、廃ホテルの見学ツアーとしてやってるだけのものだったわね」

伊織「何か変なことが怒らない限りは、エレベーターで最上階に行ってそれでお終いよ」

貴音「そ、そうですか……何も起こらなければ良いのですが」

真「そうだね、何も起こんなきゃいいね、本当に」

響「ああそうだな。多分無理だろうけど」


『タワー・オブ・テラー』
時は1912年のニューヨーク。
舞台は、1899年に起きたオーナーの謎の失踪事件以来、
恐怖のホテルと呼ばれるようになった「タワー・オブ・テラー」。
今日は、ニューヨーク市保存協会による見学ツアーに参加していただきます。
さあ、エレベーターで最上階へ…。


伊織「ハイタワー3世は覚えてる?」

真「ホテルの元オーナーだろ」

響「世界中のお宝を集めてる、って言ってたな」

伊織「ホテルの中にも、世界中を旅した形跡とかが残ってるのよ」

伊織「インディ・ジョーンズ・アドベンチャーの施設とかと一緒に写ってる写真だったりね」

真「このロビーの中にも結構色々あるんだね」

貴音「こちらの観葉植物は枯れ果ててしまっていますね……廃旅館だから、ということでしょう」

響「やっぱものものしい雰囲気が凄いな……」

―――

伊織「シリキ・ウトゥンドゥを持ってる現地の人と、ハイタワー3世の写真、ほら」

響「現地の人、すっごいイヤそうな顔してるな」

真「手放してハイタワー3世に渡したくないからだろうね」

伊織「でも実際ハイタワー3世は、ほとんど奪うような形でこのお宝…シリキ・ウトゥンドゥを手に入れたわ」

貴音「そういった背景を考えると……彼が斯様な目に会うのも必然です」

真「……結果的にボクらまで巻き込まれちゃってるけどね」

伊織「さっきのロビーで、壊れたエレベーター見たでしょ?」

真「ああ、ボクらが乗るこっちは業務用ってことか」

響「何も起こんないといいな……な、貴音!」

貴音「…………」

響「あちゃー、もう冗談も聞こえてないぞ……」

―――

『さあ手を振って、この世の自分に別れを告げたまえ……』


伊織「写真のポイントもうすぐよ」

真「お、落ちる直前だから、今なら表情もなんとか……!」

響「ふぅ、ふぅー……」

貴音「…………」グッ


ガシャン


……ガシャン!

真「ふうー……3回目でもまだ慣れないな」

響「あうぅ…やっぱり心臓がばっくんばっくん言っちゃってるよぉ」

伊織「こういうのは慣れてきても、叫びながら楽しむのが一番気持ちいいわよ」

貴音「ふ、ふふ……で、ではわたくしは、はからずとも一番の楽しみ方を味わっていた、というわけですね」

響「……凄かったもんな、貴音の悲鳴」

真「泣いてない?」

貴音「お、恐らくは大丈夫かと」

伊織「……まだまだダメっぽいから、貴音に連続でタワーオブテラー乗せるのはまたの機会にするわ」

貴音「素直な感想を述べるならば……ご配慮痛み入ります、としか」

響「よっぽど怖かったんだな……よしよし」


『タワー・オブ・テラー・メモラビリア』
恐怖のホテルと呼ばれる「タワー・オブ・テラー」のツアーの開催にともない、
ニューヨーク市保存協会は当時の内装をそのまま公開することにしました。
ハイタワー三世のお気に入りのプールも、
現在ではツアーのおみやげを売るショップとして営業しています。

「タワー・オブ・テラー」ならではのユニークなグッズや、
ツアー中のゲストの決定的瞬間をとらえた写真も販売しています。

伊織「ここのショップは元々プールだったのよ」

響「……はぁ」

伊織「とまあ、いきなりそんなこと言われても全くピンと来ないわよね」

伊織「そこでほら、ここの壁の写真」

響「ん……ん?」

響「……」キョロキョロ

響「ん? ……んん!?」

伊織「どう?」

響「……プールだ………」

響「床のタイルの部分に、前までは水が張ってたんだな」

響「それで……!」

響「あれだ! なんか売り物飾ってあるあの台! あれが飛び込み台なんだ!」

伊織「はーい、よくわかりました」

響「うわぁ、と、飛び込み台だったのか、アレ……」

伊織「……にしても真と貴音ってば、まだ確認終わらないのかしら」

響「あ、帰ってきた」

伊織「どう? 写真は」

真「……」

貴音「……」

伊織「どうしたのよ二人ともダンマリで」

真「あの写真は……ぶふっ……み、見ないほうがいいと思うよ…」

伊織「うわ…そんな反応されたら凄い見たくなっちゃうじゃないの」

貴音「伊織……今回ばかりは命に代えてでも、あの写真を手に入れさせるわけには参りません」

貴音「あのような写真、恥辱の極み、としか言いようがありません」

響「ま、真……そんなにそんなにだったのか?」

真「いや、あの……ご、ごめん……ククッ……し、深呼吸させて」

貴音「……真も、一刻も早くあの写真のことは忘れてくださいまし」

真「わ、わかってる、ごめんごめん……スー…ハー……ふぅ」

真「はぁ……た、貴音が言うように、ものすっごく恥ずかしいであろう顔だったから」

真「買うのはよしといた方がいいと思う」

伊織「残念ね~。せっかく私の方はバッチリ笑顔決められたのに」

貴音「す、すみませんでした……わたくしが未熟なばかりに写真をふいにしてしまい……」

響「あ、真、自分はどうだった?」

真「響はなんか……覚悟決めたみたいな、ちょっとカッコいい顔してたよ」

真「ボクは何かだらしない表情だったから、買われなくて済むならボクもラッキーだけど」

伊織「あらそう、それが見れないのも残念だったわ」

真「もうっ……あ、そうだ伊織、さっき響と何を話してたんだい?」

伊織「ああ、ええとね

響「そ、それだったら自分が説明してあげるぞっ!」

響「伊織、いいか?」

伊織「にひひっ、そうね、じゃあ響お願い」

響「ああ! えっとな、実はこのショップって―――」

―――

15:00 アメリカンウォーターフロント

伊織「私の行きたいところ、ねえ……」

響「どこでもいいぞぉ!」

貴音「何かありますか?」

真「アトラクションじゃなくて、エリアででもいいよ」

伊織「えーと……」

伊織「…………」

伊織「……思い出した!」

響「何を?」

伊織「もうすっかり晴れたけど、午前中は雨降ってたわよね?」

真「ん、そうだね」

伊織「……雨の日のお楽しみ、行くわよ!」

―――

15:10 マーメイドラグーン

響「ここに何かあるのか?」

伊織「いえ、用があるのはアラビアンコーストよ」

伊織「…そうねえ、そこまで急ぐ事もないから、ここでもガイドさんの受け売り知識、披露しちゃっていいかしら?」

真「お、何かあるのかい?」

貴音「どういったものでしょうか」

伊織「シーはね、エリアごとに、柵や街灯、植物なんかがそれぞれ違ってるのよ」

伊織「今から行くアラビアンコーストだったら、中東系っぽい植物が植えられてたりね」

真「ここのは、柵が波打ってるね」

響「海がテーマだからかな」

伊織「そうだと思うわ。……それで、実はエリアとエリアの境目って、今言った柵とか街灯が変わってるの」

貴音「どうなっているのでしょう」

伊織「今から行くから、ちょうど見れるわよ」


真「あ、ほんとだ」

響「こっちがマーメイドラグーンで、あっち側がアラビアンコーストか」

貴音「視点を引くとそれぞれの地域の特徴が出ていますが、その境目は……」

真「お互いがミックスされたみたいな、全然別のものになってるね」

伊織「どう? 楽しんでもらえた?」

響「うん、すごいなこれ!」

真「で、今からちょうどアラビアンコーストに入るわけだね」

伊織「……」

伊織「ちょっと待って」

響「んあ?」

伊織「こんなとこで見れるとは思わなかったわ、こっち来て」

真「え、ど、どこ行くんだよ!」

伊織「雨の日の……いいえ、『雨上がりのお楽しみ』よ」

響「?」

貴音「ともかくも……着いていけば、面白いことには出逢えそうですね」

―――

清掃員1「はい、みなさんこんにちわ」

清掃員1「僕たちは、普段はディズニーシーの中で、お掃除をしています」

清掃員1「お掃除も大好きですが、実はお絵かきをするのも大好きなんです」

清掃員1「はい、じゃあこっちのおねーさんの方を見てください」

清掃員2「…………」

シャッ シャッ シャッ シャッ

響「箒、と水か……」

貴音「地面に丸が画かれていきますね」

清掃員1「この丸のところまで前に出てきてもらって大丈夫ですよー」

伊織「ですって、ほら」

真「あ、うん」

清掃員2「…………」

清掃員1「はい、では今からこのおねーさんが、地面にあるキャラクターを書いていきます」

清掃員1「何を書いているのか、考えてみてくださいね」

清掃員2「…………」ペコリ


シャッ シャッ シャーーーッ シャッ……


響「まだ何だか全然わかんないな」

貴音「見当がつきませんね」


シャッ シャシャッ シャッ


真「なんか……輪郭かな、これ?」

伊織「ふーん……」

清掃員1「はい、今ここで、大きな耳がグルンと」

響「あー、これミッキーかぁ」

伊織「予想通りね」

真「輪郭の時点で、ミニーかミッキーかのどっちかだったな」

貴音「……全くわかりませんでした」

清掃員2「……」

清掃員1「ではここで、みなさんにも協力してもらおうと思います」

清掃員1「もう一方のミッキーの耳を、おねーさんと一緒に描いてもらいまーす」

伊織「……」

グイッ

貴音「!? い、伊織!?」

清掃員「あ、じゃあいち早く前に出てきてくれた、そこのお嬢さんに協力してもらいましょう」

響「おぉ貴音、やる気あるなぁ」

貴音「し、しかし……!」

伊織「やらないの?」

貴音「……いえ、伊織の好意…と受け取っておきます」

貴音「わたくしは何をすればよいのでしょう」

清掃員1「はい、おねーさんと一緒に、もう一方のミッキーの耳を書き上げてください」

清掃員2「……」ペコリ

貴音「持ち方は…こう、ですか? はい、わかりました」

清掃員1「じゃあ、いちにのさん、でいきますね」

清掃員1「いち、にの、さーーん」


グルンッ


貴音「……ふぅ」

清掃員1「はーいありがとうございましたー」

パチパチパチパチ

清掃員2「……」ペコリ

貴音「ふふ……こちらこそありがとうございます」ペコリ

真「上手く描けてるよ貴音」

響「まあっていっても耳だけだけどな」

伊織「ほら、写真も」

貴音「そうでしたか……ふふ、箒を持ったわたくしはこのような体勢だったのですか」

伊織「……まあ、やってもらってわかったと思うけど、今のが『雨上がりのファンカストーディアル』よ」

響「ファンカスト、って前にゴミ箱が喋ったりしたときの清掃のお兄さんと同じか?」

伊織「種類は違うけど、まあ清掃員がパフォーマンスすることを考えたら同じようなものね」

真「雨上がりの、ってことは、雨が上がった後じゃないとお絵かきはしないの?」

伊織「ええ、逆に言うと、雨が上がった後は、色んなとこの路上に絵が残ってたりするわよ」

貴音「路上ですら人々を魅了する場に変えてしまうとは……見事ですね」

伊織「で、そうよ、これはたまたま見かけたから寄っただけで、本命はこっち」

真「アラビアンコーストだっけ」

響「何かあったかな? 雨の日しかやってない出し物とか?」

―――

15:30 アラビアン・コースト

真「そういえばこっち側って来たことなかったね」

響「アラジンの世界の商店街みたいでワクワクするなぁ!」

貴音「あれは駱駝でしょうか、子供が背に乗れるように工夫されているようですね」

伊織「そういえばここって、去年はアトラクションに乗るだけでショップとかは見てなかったわね」

伊織「……着いた、ここがお目当ての場所」


『アブーズ・バザール』
市場の中のひときわにぎやかな一角をのぞくと、
そこは、アラジンの相棒、サルのアブーのお店。

ここでは、2種類のゲームが楽しめます。
ゲームを成功させて、宝物を手に入れましょう!

伊織「ここってね、ゲームに挑戦して失敗した場合でも、特製のピンバッジが貰えるのよ」

伊織「しかも雨が降った日には、テルテル坊主のミッキーミニーの雨の日限定ピンバッジも貰えるの」

真「そうか、それで雨の日のお楽しみって言ってたのか」

貴音「球を転がす遊びのようですね」

伊織「奥のお皿にギリギリで止めるチキンレースゲームと、転がして穴に入れるゴルフゲームと二種類あるわね」

響「じゃあ自分、こっちのお皿の方でやってみるぞ!」

―――

真「もしもピッタリ止まれば、巨大なチップとデールのぬいぐるみか……」

響「可愛いな、欲しいぞ」

真「ボクもだよ……それっ」

ゴロンゴロンゴロン……

真「うっ…強すぎた。穴に落ちちゃった」

真「よし、力をセーブして……」

―――

貴音「こちらは、ぼうりんぐの様でもありますね」

伊織「力加減が微妙だけど、地面につけたまま転がすといいわ」

貴音「こうでしょうか……それっ」

ゴロンゴロンゴロン

…ポテッ

貴音「……全く駄目ですね、これでは」

伊織「力が弱すぎたみたい。もう少し強くやってみて」

貴音「はい。……ふんっ!」

―――

響「やっぱり難しかったなぁ」

真「でもピンバッジ、ほんとに可愛いね」

響「えへへ~、2回やったからグーフィーのも貰えたぞー!」

真「伊織たちの方はどうかな」

真「伊織、そっちはどうだっ……

伊織「……」

貴音「……おや、真、響も」

響「う、うえぇぇえぇ!?」

真「どうしたんだよそのでっかいの!」

貴音「い、伊織が事も無げに……」

伊織「待って、まだ最後の一球が残ってるわ、集中させて」

響「え、だって、これ……どうやったんだよ!」

貴音「こつがわかっていたようで、わたくしの次に始めたところ、あっさりと入れてしまいました」

貴音「ただ今二回目の挑戦をしております。これが最後の一球ですね」

響「も、もう一個のぬいぐるみも狙ってるのか……」

真「凄い集中力だ」

伊織「……」

伊織「…………」

伊織「……はっ!」

真「とりあえず伊織が……ここに来たがっていた一番の理由はわかったよ」

響「ああ、そうだな」

伊織「~♪~♪」

貴音「ちっぷ殿とでーる殿、二つとも取ってしまわれるとは……」

真「プロだね、もう」

響「あーでも自分ももうちょっとだったんだけどなぁ」

真「惜しかったよね、次回にリベンジしよう」

貴音「しかし伊織……それでは移動に嵩張るのでは……」

伊織「大丈夫よ、どうしてもかさばったらロッカーに入れるし」

響「……ん、なんだこれ」

真「へぇ~、ジャファーのお店がある。閉店してるや、はは、当たり前か」

真「……あれ、響どうかしたの?」

響「なんかへんなものがあるんだ」

真「これって……ロープ?」

響「浮いてるんだ、変だろ?」

真「まあ、変っちゃ変かな」

伊織「ああ、それ、面白い使い方できるわよ」

伊織「貴音、ちょっとロープに上ってみて」

貴音「わ、わたくしですか? こ、こうでしょうか」

伊織「いいわよ、そんな感じ。ちょっと写真撮るわね」

パシャ

伊織「……ほら、こういう風になるの」

真「……あ、貴音が浮いてるように見える」

響「足元を見えないようにして撮ったのか、へぇ~」

伊織「大した仕掛けとか出し物じゃないけどね、こういう小さいのもたくさんあるわ」

貴音「ふふ……中々に面白い写真になりましたね」

―――

13:50

貴音「なにやら向こうからやって来ますね」

真「……楽器隊? なんでここに?」

伊織「ストリートシークスじゃないの、見て行きましょうよ」

響「え、ここでなんかするのか?」

伊織「こっちの広場まで来たら始まるわよ」

伊織「正式なアトラクションとは違う、アトモスフィアの一つだわ」


※アトモスフィア
先述の、パフォーマンスする清掃員「ファンカストーディアル」など
場所・時間を指定しない、突発的なパフォーマンスが行われる事がある
これらを総称して「アトモスフィア」と呼ぶ

「ストリート・シークス」は、絨毯商人に扮したストリートバンドが、
ディズニーの名曲を演奏しながらパフォーマンスするもの

~♪

響「わ、近い!」

真「楽器演奏しながらでこれは凄いなぁ」


~♪

貴音「胸が高ぶるような、高揚感溢れる曲ですね」

伊織「パイレーツ・オブ・カリビアンのテーマ曲だけど、貴音ってば映画は見てないの?」

貴音「でぃずにー作品はあにめではいくつか見ておりましたが……」

貴音「確かその作品は実写のものでしたね。未試聴のものです」

伊織「本編で流れる方は、これとはまた違うけど同じくらい熱いわよ」

貴音「……非常に興味深いですね」

~♪

真「やっぱ名曲だよなぁ」

響「A Whole New Worldなぁ」

伊織「アラジンは見てた?」

貴音「ええ、この音楽も知っていますよ」

貴音「幻想的で感動的な、心が温かくなる音楽……」

伊織「そうね、名曲中の名曲だと思うわ」

―――

響「ふわぁ~、なんか感動して泣きそうになっちゃったぞー!」

真「良かったよなぁ。こんなパフォーマンスもあるんだね」

伊織「他のエリアでも、アトモスフィアはいくつかやってるわよ」

伊織「そこかしこで色んな楽しいことをやってる、ってのがいかにも非日常でサイコーよね」

貴音「成程、確かに夢の中にいるようなひと時でした」

―――

16:30 ロストリバーデルタ


『レイジングスピリッツ』
燃え上がる炎、立ち込める蒸気…。
古代神をまつった遺跡の発掘現場で、数々の異常な現象が!

復活した神々の怒りによって、中断を余儀なくされた調査隊。
ところが、あなたに見学のチャンスがやってきました。
さあ、自らの体でこの超常現象を確かめにいきましょう!


響「うげ、ここかぁ……」

真「響が一番苦手なとこだね」

響「に、苦手じゃないぞ! 他の遊園地でも一回転コースター乗ったし!」

貴音「伊織はなぜここへ?」

伊織「アトラクション間での繋がりがあるのを見せたかったからね」

真「繋がり?」

伊織「アトラクションの前のここに、箱があるわ……何て書いてある?」

響「英語だな、えーと」

響「HIGH TOWER TRUST……ハイタワー!?」

真「ハイタワーって、ひょっとしてハイタワー3世?」

伊織「そ、タワーオブテラーのハイタワー3世」

貴音「なぜこのような場所で彼の名前が……」

伊織「ハイタワー3世って、世界中の珍しいものを収集してたでしょ?」

伊織「ここは元々、古代神を祀ってた遺跡の発掘現場」

伊織「色んな珍しいものも発掘されたでしょうから……」

真「それをハイタワー3世が欲しがって、自分のホテルに送るようにしてるのか!」

伊織「ご名答~♪」

響「あ、アトラクション間の繋がり……こういうことかぁ」

貴音「しかし、はいたわー殿も節操の無いお方だったのですね」

伊織「まあ珍しいものなら何でも集めてたものね、でもこんなとこで名前見れると、なんだか嬉しいでしょ?」

真「鳥肌がぶわーってなったよ、面白いや」

―――

真「ここも待ち時間15分……もう止んだのに、雨が午後になっても活きてるみたいだね」

伊織「雨止んだからって、昼過ぎから来るって人もそうそういないものね」

キャー!! ウワァー!!

響「……うぅっ、乗ってる人たちの悲鳴が……」

伊織「……じゃあ響の怖さを軽減するのも兼ねて、ここの説明をしときましょう」

伊織「さっき、古代神が祀られてる遺跡だって言ったのは大丈夫?」

貴音「はい、覚えております」

伊織「ここには『火の神』と『水の神』の2種類の神様がいるの」

伊織「発掘して神様の像が出たとき、発掘隊は『二つの像が向かい合ってる』んじゃないかと思ってたのよ」

響「ふむふむ」

伊織「でも実は逆で、元々二つの像は向かい合わないように祀られてたの」

伊織「それを知った時にはもう遅く、像を向かい合わせちゃった発掘現場は、神の怒りによって……」

キャーー!! ウギャアー!!

伊織「こーんな有様になっちゃった……ってわけ」

真「神の像って、あのフラフラしてるヤツ?」

伊織「いや、怒りに触れたっていう直接の原因は、コースの中にある石像よ」

響「えーとどれどれ……」

響「あの、なんか水吐き出してるヤツのことか?」

伊織「あれではないわね」

伊織「まず火の神と水の神なんだけど、火の神は入り口の一番高いとこにあるアレよ」

貴音「あのような高い場所に……あれが火の神ですか」

伊織「水の神は、実は顔をいくつも持ってるの。響が見つけたのはそのうちの一つ」

真「ん……ってことはどこかに、あそこにある火の神と、向き合ってる石像があるってことだね」

伊織「あらぁ真ってば冴えてる~!」

伊織「そうよ、たくさんある水の神の顔のうち、一つだけ向き合っちゃってるのがあるのよ」

貴音「それによって、神の逆鱗に触れてしまったということなのですね。中々良く出来ています」

伊織「それで、この発掘現場はセンターオブジアースとかタワーオブテラーとは違うわよ」

真「何が?」

伊織「異常現象の起きた発掘現場に向かう、ってスタンスだから」

伊織「何も起きなければ平和でいいわね~ってことじゃなくて、確実に何か起こるって体で乗るの」

真「……まあ、結果的には同じ事だから、スタンスが違っても意味は無いけどね」

響「ていうかそんな…『何か起きます』なんてとこで開き直られても……」

貴音「響、どう考えようとも、覚悟を決めたほうが良いのは確かですよ」

ヒェーーー!! ギョェーーー!!

響「ううぅ……みんなの悲鳴が辛いぃ」

伊織「響以外の二人は平気そうだから、私からミッションを出しておくわ」

真「ミッション?」

伊織「コースの途中でシンデレラ城が見えるから、見つけてみなさい?」

貴音「ほう、眼力を試すというのですか。よろしい、ならば受けてたちましょう」

―――

真「み、見えた! シンデレラ城だ!」

響「ゼハー……ど、どこだどこ


ガクンッ


響「うぎゃぁああああ!!」

―――

響「ああ……お、終わったか……」

伊織「大丈夫?」

貴音「無理に乗らぬ方が良かったかもしれませんね」

響「や、そ、そんなことないぞ……ちょっと目が回っただけさぁ」

響「この程度で疲れるなんて、自分もまだまだ完璧じゃないかぁ……ははは」

伊織「そういえば、真、シンデレラ城見つけたの?」

真「ああ、バッチリだったよ!」

貴音「それらしき建物が見える高さにいる時間がほんの僅かだったというのに……」

真「動体視力は良い方だからね」

伊織「やるじゃない、少し見直したわよ」

真「少しって何だよ、少しって」

響「……あ、なんだこれすごい」

貴音「響、体調は大丈夫なのですか?」

響「ん? ああもう平気……それよりこれ見て」

真「……あれ、なんだぁ、水の中で火が燃えてる」

響「な、すごいだろ?」

貴音「ひょっとして火の神と水の神の両方が怒った為に起きているのでは」

伊織「そう、貴音の言う通り。超常現象の一つってとこ」

響「へぇ~……すごいけどやっぱり、当分ここには来なくていいかな」

―――

16:55 ハンガーステージ

響「でっかい建物だなぁ」

真「こんなとこにこんな大きな建物があったんだ」

伊織「ここではね、ショーを見れるの」

伊織「幻想的かつ荒々しい……そうね、真とか好きなタイプのショーだと思うわよ」

真「へぇ、じゃあ楽しみにしてよう」

貴音「幻想的かつ荒々しい……どういった見世物になるのでしょうか」


『ミスティックリズム』
ここは、かつて多くの物資を運んだ水上飛行機の格納庫(ハンガー)。
ロストリバーデルタが発見された頃は、
われ先にと訪れる人々であふれかえっていた場所です。

今は廃墟となり、再び青々と茂るジャングルと静寂に包まれています。
聞こえてくるのは、精霊たちの声…。

真「わ、なんか涼しい……!」

響「ジャングル? ステージがそんな感じだ」

―――

響「……」

響(ま、まずいぞ……今日遊びっぱなしで休憩ほとんどしてないから……)

響(な、なんか段々眠くなってきた……)

~♪

響(……あ、でもなんか眠いまま見ると精霊たちがそれっぽく見えていいかも……)

響(…………)ウトウト



―――ドン!

響「(ビクッ)!?」

ドンコドンドコドコドコドコ……!

響「び、びっくりした……」

~♪

真「す、ごい……」ギュッ

貴音「幻想的かつ荒々しい……言葉の通りですね」

~♪

ギュォォォォ

響「わぁ、すごいすごい、すごいぞぉ!」

真「うわぁぁ、あれメチャクチャ大変だろうな……頑張ってるんだなぁ」

伊織「相変わらず目の付け所がおかしいわね」

―――

シュゥゥゥゥゥゥゥゥ

真「わっ!?」

響「な、なんだこれ!?」

貴音「し、視界が……!」

伊織「……ふぅ、やっぱりこのステージ見るだけでもチケット代分の価値はあるわね」

―――

伊織「どうだった……って、聞くまでもないって顔ね」

貴音「はい、大変素晴らしいものを見せていただきました」

真「これすっごくテンション上がるね! 見れて良かった!」

響「じ、自分、最初ちょっと寝ちゃいそうだったんだけど……」

響「大っきな音がしてから起きて、その後はずっと興奮しっぱなしだったさぁ」

伊織「私もこのショー大好きなのよ。みんなも同じ感想で嬉しいわ」

真「次来た時も絶対に見よう!」

伊織「にひひっ、そうね!」


17:45 ロストリバーデルタ

東京ディズニーシーの海をめぐる蒸気船。
ここ、ロストリバーデルタのドックからは、
メディテレーニアンハーバー行きの船が出航しています。

見えてくるのはエキゾティックなアラビアの宮殿、
珊瑚でできた美しい城、火山の中に潜む秘密基地…。
風を感じながらの船旅を、ゆったりとお楽しみください。

真「トランジット・スチーマー・ライン……去年も乗ったね」

伊織「これで反対側まで行ったら、夕食代わりの軽食でも食べましょ」

貴音「それは良い提案ですね」ジュルリ

響「よだれ、よだれ垂れてる」

―――

伊織「そういえば貴音……アンタ忘れてない?」

貴音「何か忘れ物をしていましたか?」

伊織「いや、そうじゃなくて、レインコート着たミッキーよ」

響「あ、自分は忘れてた」

真「今日も今日で色々あったからなぁ、雨も止んだし、ボクもすっかり忘れてたよ」

貴音「……不覚にも、わたくしもたった今思い出しました」

伊織「……まあ、結局見れなかったと思うけどね」

伊織「水上ショーの『ミシカ』の時間には、雨も完全に上がっちゃってたし」

貴音「ふふ……しかし、それならばそれで、素晴らしいことではありませんか」

伊織「そう?」

貴音「わたくしが会いたいと願っていた雨合羽を着たみっきー殿」

貴音「最後まで会うことは出来なかったというのに、そこに悔しさは一片も感じていません」

貴音「わたくしの当初の目的、願い以上に素晴らしいことがあった」

貴音「……そしてわたくしは、当初の目的や願いを忘れるほどに、今日という日を楽しませていただいた」

貴音「これ以上何を望むと言うのでしょう」

響「……ふふ」

真「……へへっ」

伊織「アンタってばまぁ~たそんな、歯の浮くようなセリフ言ってくれちゃって」

伊織「……楽しんでもらえたなら、何よりよ」

伊織「ランドの方なら、グリーティングのミッキーがレインコート着てることもあるわ」

伊織「今度はみんなで、ランドにも行けばいいだけの話よ」

真「そうだね、4人で行ければ、それが一番だね」

―――

18:15 メディテレーニアンハーバー→アメリカンウォーターフロント

伊織「雨で人が少ないって時点で、予想してたことだったけど」

伊織「私たちに最後のラッキーが巡ってきたわよ」

響「なんだ?」

伊織「もう一つ、私の好きなショーがあるんだけど、本当は座席指定券が必要なの」

伊織「でも今日はそういう抽選を行うほど、シー自体に人が集中しなかったわ」

真「ってことは、指定券なしで見れるってこと?」

伊織「ええ、そういうこと」

伊織「収容人数も多いから心配はしなくていいと思うけど、念のために早めに集まるようにしましょう」

貴音「それまでに食の準備を整えておけ、ということですね……!」

伊織「そうね、あと私はさすがにロッカーに入れてくるわ、ぬいぐるみ」

真「場所は?」

伊織「集まるのは『ブロードウェイ・ミュージックシアター』よ」

『リバティ・ランディング・ダイナー』
ニューヨークの波止場にある機械修理屋の奥さんは料理上手。
旦那さんやお客さんのために腕をふるった料理がいつしか評判になり、
故郷の味を伝えるフードスタンドを出すことになりました。
地元の人々に愛されているテイストをあなたもぜひお試しください。


貴音「『ぽーくらいすろぉる』……不思議な形状をしていますね」モグモグ


『デランシー・ケータリング』
「ディズニーシー・エレクトリックレールウェイ」の
アメリカンウォーターフロント・ステーション前には、
たくさんの人が集まる黄色い車がとまっています。

彼らのお目当ては、ボリューム満点のホットドッグ!
皆さんもニューヨーカーのように豪快にほおばりながら、
にぎやかな街を散策しましょう。


貴音「こういった昔ながらの『ほっとどっぐ』もいいものですね」モグモグ

『パパダキス・フレッシュフルーツ』
ワゴンには、季節のフルーツが満載! これはギリシャからの移民、
パパダキス一家がニューヨーク郊外にある小さな農園で栽培したものです。

店先に並ぶ新鮮なフルーツは、どれにしようか悩むほど!
港の散策で乾いたのどを、フレッシュなフルーツでうるおしましょう。


貴音「酸味のある果物で喉を潤す……やはりたまりませんね」パクッ

響「た、貴音、まだ食べるとか言い出すんじゃないよな?」

貴音「そうですね……余裕があればもう少し行きたいところですが、この辺にしておきましょう」

響「遅れたら大変だぞ?」

貴音「わかっております。しかしもう少し味わわせて下さいまし……」パクッ

『マクダックス・デパートメントストア』
ニューヨークの街の一区画を占領する大きな建物は、
世界で一番リッチなアヒル、スクルージ・マクダックが経営する百貨店。
お菓子やアクセサリー、ステーショナリーなどさまざまなグッズが手に入ります。

質屋から始めたスクルージの商売は大繁盛して、
今では金貨でできた噴水までつくるほど!
まさに、アメリカンドリームを手に入れたアヒルですね。


伊織「私たちは軽食無しでいいグループだから、適当に買い物でもしてましょ」

真「そうだね。……あ、そういえばマグカップこの前壊しちゃったんだ」

真「ダッフィーの柄の新しいマグカップとか買おうかな」

伊織「私も選んであげるわよ、確かこっちだったわ」

真「ああ待って待ってよ」

―――

18:45 ブロードウェイ・ミュージックシアター

『ビッグバンドビート』
ようこそ、ブロードウェイ・ミュージックシアターへ!
この劇場では、ビッグバンドジャズの迫力あふれる演奏をバックに、
本場のミュージシャンやタップダンサーたちが
スタイリッシュなレビューショーを繰り広げています。
もちろん、ディズニーの仲間たちも登場!

響「す、すっごい並んでるけど……ほんとに入れるのか?」

伊織「問題ないわよ、この程度なら」

真「この程度、って言える人数とは思えないよ……」

貴音「しかし、この建物の大きさからすると、あながち推量不足とも思えませんね」

伊織「そーいうこと、もうちょっとで入れるようになるわよ」

―――

響「ほんとに広いな、ていうか天井たかーい!」

真「席も結構いいところだね」

伊織「ショーが30分くらいで、最後のトイストーリーマニアまでは30分くらい余裕があるから」

貴音「その間に、本格的に買い物を済ませてしまえば良い、と」

響「おっけー!」

~♪

真「お兄さん歌うまっ……!」

~♪

響「ミニーもマリーも可愛いなぁ……」

~♪

貴音「……わたくしたちアイドルでさえも、あれほどまでに皆の心を掴む事ができるのでしょうか……」

響「うん、なんか……ちょっと自信なくしちゃうよな」

貴音「ふふ……わたくしたちはわたくしたちの出来る事をやればいいのですよ、響」

~♪

真「み、ミッキーがカッコよすぎる…!」

伊織「このショーの最大の目玉なのよ、ここからがもっと凄いわよ」

~♪

パチパチパチパチパチパチ

―――

19:30

伊織「さ、ショーの感想とか、各々言いたいこともあるでしょうけど……」

真「うん、わかってるよ」

響「トイストーリーマニアが20:00からだよな、水上ショーも同じ時間」

真「夜の水上ショーが終わると人がドッと出口に集まって大変だから……」

貴音「それまでにはここを出られるようにする、そういうことですね」

伊織「そう、よくわかってるわね」

伊織「ってわけで、トイストーリーマニア終わったらそのまま帰れる様に」

伊織「今のうちに買い物済ませちゃうわよ」


「「「「おー!」」」」

『エンポーリオ』
とにかくたくさんお買い物したい!
そんな人におすすめなのが、パーク内で一番大きなこのショップ。
イタリア語で“百貨店”という名前のとおり、
ぬいぐるみ、ステーショナリー、生活雑貨などさまざまなグッズがそろっています。
天井に描かれた夜空もこのお店の自慢。ぜひ見上げてみてくださいね。


『ヴァレンティナーズ・スウィート』
お店の壁には、ミッキーやミニー、ドナルドとデイジーなど、
ディズニーの恋人たちが描かれた絵画が飾られ、とってもロマンティック!
キャンディーやチョコレート、クッキーなどのお菓子がいっぱいのこのショップでは、
毎日がヴァレンタインデー。大好きなあの人へ、甘~い愛を贈りませんか?


伊織「じゃあ去年と同じで、この二つのお店を中心に周るってことで」

―――

貴音「皆へのお土産、何に致しましょう」

真「ボクは無難にクッキーにしようかな」

貴音「それも悪くないのですが……うっかり自分で食べてしまいそうで危険ですね」

真「……その心配をしなくちゃいけないのは貴音くらいだと思うよ」

―――

響「うーん、これすっごくいいけど…うーん……」

伊織「どうしたのようんうん唸って」

響「あ、伊織。クリアファイルがさ、あるんだ、ほらこれ」

伊織「あら可愛いわね。不思議の国のアリス」

響「だろ、可愛いだろ!? でもこっちのグーフィーたちのクリアファイルも可愛いんだ」

響「どっちにしようかなぁ…うーーーん……」

伊織「二つとも買うって選択肢は無いの?」

響「!? そ、その手があったかぁ!」

伊織「……まあ響がいいなら何でもいいけど」

―――

20:05 トイストーリー・マニア!

真「いよいよ最後だね」

響「これで終わりだから、頑張って高得点出してやるぞ!」

貴音「わたくしも、先ほどよりは良い点数を出したいですね」

―――

ガチョンガチョンガチョンガチョンガチョン

真「くそっ、もうちょっと上か!」

響「うがぁ、コウモリが多すぎるぞ!」


ガチョンガチョンガチョンガチョンガチョン

貴音「く……ふ……むぅ……!」

伊織「また飛ばしすぎじゃないの? 最後まで持つの?」

貴音「も、持たせます……!」


ガチョンガチョンガチョンガチョンガチョン……

―――

ブロロロロロー……

20:40 帰りの車内


伊織「……」

新堂「お嬢様、本日もよく遊ばれたようですね」

伊織「まあね」

新堂「そちらのご友人様方とは、確か一年前にここで遊ばれましたね」

伊織「ええ、よく覚えてるじゃない」

新堂「ふふ……帰りの車内でも、とても賑やかで楽しそうでしたからね」

伊織「そう……」

新堂「…………」

伊織「…………」

新堂「お嬢様」

伊織「なに?」

新堂「本日は……一年前よりも楽しかったでしょうか?」

伊織「……楽しかったわ、少なくとも私はね」

伊織「真や貴音や響は、どうだったか知らないけど」

新堂「…………そうですか、それは何よりでした、お嬢様」

伊織「……ふんっ」

新堂「しかしお嬢様……」


真「zzz……zzz……」

響「んが……んぐぅ……」

貴音「…………」スヤスヤ


新堂「ご友人様方も楽しんだからこそ、ここまで熟睡されているのではないですか?」

伊織「……一番最後に、体力使うアトラクションやったからよ、きっと」

伊織「私はこうなると思って、力抜いてたけどね」

新堂「そうでしたか、そのような事情がおありとは」

新堂「……これは失礼致しました」

伊織「……ふふ」

伊織「ありがと、新堂」






おわり

お疲れさまでした
保守と支援本当にありがとうございました
途中で投げ出さなかったのはあなたたちのお陰です。マジありがとう

「ランド編も頼むよ」って1年前に言われてて実際ランド編も書こうかと思ってたけど、
前のSSでディズニーシーに興味持ってくれた人たちがいて、
その人たち向けに何かお礼の意味をこめてSS書くとしたら
「二回目以降のディズニーシー」の方が有益なんじゃないかと思ってこういう感じになりました

ランドはランドで楽しいけど、
何回も行きたくなる魅力はシーの方が上だと(個人的に)思ってるので
前のSS見てその後実際に行った人とかがいたら、
是非二回目以降のディズニーシーでこのSSも参考にしてもらえれば凄く嬉しいです

即興だったから複線やら何やら回収し忘れてたらごめんなさい

真へのご褒美とはなんだったのか

>>220
それ前回のだろw

いおりんは後日、真にでっかいダッフィーのぬいぐるみをプレゼント
シェリーメイは自分が持ってます

俺が妄想したのはこんな感じ

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