レヴィ「ヘイ、ロック。火、よこせよ」ロック「ああ、いいけど」(120)

ロック「……あれ?」

ベニー「ロック、どうしたの?」

ロック「悪い、ベニー。火を貸してくれないか? どこかに置いてきたみたいだ」

ベニー「いいよ。でも、珍しいな。ロックが忘れ物なんて。盗まれたんじゃないのかい?」カチッ

ロック「ライターを盗まれたか。それはおっかないね。俺の火でロアナプラが燃えるなんてことになったら、生きていけない」

ベニー「言えてるね。バラライカ辺りに簀巻きにされて魔女裁判だ」

ロック「ありがとう。助かった」

ベニー「それじゃ、仕事に戻るよ。可愛い子が手に入ってね」

ロック「日本で見つかった基盤、気に入ったのか。それはよかった」

ロック「ふぅー……」

ロック(ライター。どこにいったんだろう?)

レヴィ「よう、ロック。シガータイムか。丁度いい。あたしにも火、よこせ」

ロック「悪い、レヴィ。ライターを無くしてね。ベニーに借りてきたらいい」

レヴィ「何言ってんだ。今、咥えてんだろ。それでいい」

ロック「え? これ? まぁ、いいけど」

レヴィ「ん……」

ロック「……」

レヴィ「……ふぅー。サンキュ」

ロック「レヴィも火をどこかになくしたのか?」

レヴィ「え? あ、ああ。まぁな」

ロック「マッチも無いのか」

レヴィ「あったら、こんなことしねえだろ。少しはてめえで考えろよな。言われたことばっかやってたら、馬鹿になるぞ」

ロック「それもそうか」

レヴィ「じゃあな」

ロック「ああ」

ロック(まだ時間もあるし、ライターでも買ってこようか)

ダッチ「ロック、出かけるのか?」

ロック「火を求めてね」

ダッチ「ここで火を見たかったら、歩いてるトンチキに狂言吐けばいいんじゃねえか?」

ロック「楽しめない火は遠慮するよ」

ロック「これでいいか……」

エダ「よーぉ、色男。火遊びでもすんの?」

ロック「ライターを買っただけ」

エダ「あれ? この前、新調したって言ってなかった?」

ロック「そうなんだけど、今朝無くしたみたいで」

エダ「ふぅーん。んなシケたライターより、あたしと熱い夜でもどう? 今晩、暇でさぁ」

ロック「タバコに火がつくほどの夜なら、俺はいないほうがいいだろ」

エダ「つれないねぇ。レヴィ一筋ってわけ?」

ロック「レヴィとは何もないって言ってるだろ」

エダ「いいこぶってんじゃないよ。あれだけ近くにいてそりゃあないでしょう? ガキじゃないんだから、さ」

ロック「早く教会に戻ったほうがいいんじゃないか。それとも君が小遣い稼ぎしていること、バラしてもいいのか?」

エダ「あら、ロック。脅し? なら、もっと刺激的にやってよぉ。そのほうが燃えるだろ?」

ロック「それじゃあ」

エダ「いつでもレヴィから乗り換えてもいいからねー」

ロック「はいはい。何かあったら相談するよ」

ロック「ただいま」

ダッチ「良いのは見つかったか、旦那」

ロック「上々。前のが気に入ってただけにね」

ダッチ「そりゃ残念だな。前のも今はどこかのスラムで雨ざらしなってるだろうし、哀れだな」

ロック「優しい主に拾われていることを願うよ」カチッ

レヴィ「なんだ、ロック。買ってきたのか」

ロック「ダッチやベニーのを毎度借りるわけにもいかないからな」

レヴィ「ふぅん」

ダッチ「しかし、まぁ、見事なまでに無個性だな。これなら張さんの奴のほうが見栄えがいい」

ロック「あれは良すぎる。誰のか一目で分かるんだから」

ダッチ「だが、無くすこたぁありえねえ。遠目からでも良く分かるからな。夜のジャングルで火を焚いているようなもんだ」

ロック「そうだけど。そこまでライターに拘りはないからね」

レヴィ「だから無くすんだろ。てめえの所有物はいいけどよ、あたしのものを無くしたらただじゃおかねえぞ、ロック」

ロック「反省してる。気をつけるよ」

レヴィ「けっ。ホワイトカラーは口だけは達者だからなぁ。信用できねえな」

数日後

ロック「さてと……」

ロック「……あれ?」

ベニー「ロック、どうしたの? 困りごと?」

ロック「ああ、いや……」

ロック(おかしいな。昨日、帰り際にこのデスクに置いておいたはずなのに……)

ロック「なぁ、ダッチ。昨日、俺が帰ったあと誰かここを使った?」

ダッチ「ん? いや、ラグーン商会に夜のセールスは来ちゃいないが。何かあったのか?」

ロック「ああ……その……」

ダッチ「……火か?」

ロック「実は、そうなんだ。昨日、確かにここに置いたはずなんだ。酒も入ってなかったし、間違いない」

ダッチ「他に無くなってるもんはねえだろうな?」

ロック「んー……。いや、ライターだけだ」

ダッチ「そうか。あとで自室を探してみろ。今、吸うなら俺のを貸してやるぜ」カチッ

ロック「助かる。とりあえず吸わないと考えもまとまりそうにない」

ロック「ふぅー……」

ロック(思い違いか……? 持って帰ったんだろうか? いや、自室用のライターはあるんだし、持って帰るなんて……)

レヴィ「ヘイ、ロック。火、よこせ」

ロック「悪い。今は持ち合わせがない」

レヴィ「口にあんのはなんだ? シュガースティックか?」

ロック「これでいいのか?」

レヴィ「火は火だろ?」

ロック「なら……」

レヴィ「ん……」

ロック「……」

レヴィ「ふぅー……。んじゃな」

ロック「ああ」

ロック(仕方ない。自室を探してもないならこれからは自室用のライターを持ち歩こう)

ロック(でも、どうしてなくなったんだ?)

ロック「……まぁ、いいか。仕事しないと」

レヴィ「あれ? ヘイ、ダッチ。ロックの馬鹿はどこにエスケープしたんだよ」

ダッチ「一度、自室に戻るっつってたぞ。また火を無くしたんだと」

レヴィ「はっ。日本で積み上げてきた平和ボケがまだ抜け切ってないのかよ」

ダッチ「火だけを無くすほうも器用だけどな」

レヴィ「曲芸師にでも転職させるか?」

ダッチ「手品が地味すぎて、客がこねえな」

レヴィ「ま、そうか」

ロック「はぁ……」

ベニー「どうだった?」

ロック「やっぱり無かった。これからは自室で使ってたライターを使うよ」

ベニー「持ち歩けばそうそう無くさないだろうし、いいんじゃない?」

ロック「これは日本に居たときから使ってるやつで、思い入れもあるから無くしたくないんだ。だから、自室用に使ってたんだけど」

ダッチ「派手なパーティーに呼ばれたときはどっかにいっちまうかもしれねえしな」

ロック「ここではパーティーのないほうが珍しいしね。どこかの女海賊の所為で」

レヴィ「ほめんなよ。なんもでねえぞ」

ダッチ「また買ってこいよ。無くしたら困るならな」

ロック「今日からは忙しくなるし、暇が出来れば買いに行く。それまではコレで」カチッ

ベニー「無くさないようにね」

ダッチ「首輪つけて紐でもつなげとけ」

ロック「そうする」

レヴィ「……」

ロック「レヴィ? 火かい?」

レヴィ「あ? いらねえよ。あるし」

ロック「でも、今朝は……」

レヴィ「あのときはたまたま無かったんだよ」

ロック「そうだったのか」

レヴィ「そうだ」

ダッチ「よっし。そろそろ仕事に行くか。お前ら、用意しろ」

ロック「今日は沖で釣りでもできればいいね」

ダッチ「シガータイムぐらいは設けてやるから心配するな、ロック。それぐらいのゆとりがねえと仕事はできねえからな」

海上 甲板

ロック「……」カチッ

ロック「ふぅー……」

レヴィ「ヘイ、ロック。火、よこせ」

ロック「どうぞ」カチッ

レヴィ「……」

ロック「どうした?」

レヴィ「別に。てめえがそうやってアホ面で仕事してんのがきにいらねえだけだ」

ロック「タバコを吸うときぐらい、穏やかな気持ちになってもいいじゃないか」

レヴィ「いつでも気を引き締めとけって言ってんだよ」

ロック「悪かった。次からはそうする」

レヴィ「はっ。締まりがねえのはケツだけじゃダメなんだ、ぜっ!」バンッ

ロック「いつっ!? なにするんだ」

レヴィ「ダッチが呼んでる。早く来い」

ロック「オーライ。でも、わけもなく叩くのはやめてくれ」



ダッチ「お疲れさん。今日は上がっていいぞ」

ロック「あとのことは任せていいのか?」

ダッチ「おう。明日も仕事は入ってるからな、ゆっくり休め」

ロック「了解」

ベニー「暫くはゆっくり飲めそうもないね」

ロック「そうだな……。あれ?」

ベニー「どうした?」

ロック「……おかしい。ライターが……あれ……」

ベニー「またかい? 荷物の積み下ろしのときに走ってたし、そのときじゃないか?」

ロック「そんな馬鹿な。昼間に甲板で吸ったときは確かにあったし、そのあとも……」

レヴィ「ヘイヘイヘイ、ロック。何やってんだよ。しっかりしろよな」

ロック「どうして……こうもライターだけを……」

ベニー「ライターに嫌われてるんじゃないか?」

ロック「すまない、ベニー。また、貸してくれ」

>>16
レヴィ「はっ。締まりがねえのはケツだけじゃダメなんだ、ぜっ!」バンッ

レヴィ「はっ。締まりがねえのはケツだけにしとけ、よっ!」バンッ

ベニー「でも、こう続くと不自然ではあるな」カチッ

ロック「ふぅー……。ああ、俺もそう思ってる」

ベニー「ロックが他の私物をよく無くすなら僕もダッチも呆れて、外に放り出すところだけど。基本的にロックの管理は行き届いている」

ロック「向こうに居たときから、物は無くすなって言われていたからな。そもそも私物を無くすような奴に仕事を持たせようなんて誰も思わない」

ベニー「となると……。やっぱり、盗られていると考えたほうが」

レヴィ「ロックのカスみたいな火を奪って、なんの金になるんだよ」

ロック「レヴィの言うとおりだ。盗むメリットがない」

ベニー「そうだ。どうせ盗むなら現金を奪って、自分用の火を買ったほうがいい。僕ならそうする」

ロック「俺だってそうするよ」

レヴィ「あたしだって同じだ」

ベニー「ライターマニアがいるとしても、僕たちのライターが盗まれていないのもおかしな話だしね」

ロック「俺のだけを狙うか……」

レヴィ「たまたまロックの持っているライターが欲しくなっただけだろ? つーかよぉ、盗まれたのはてめえが悪いんだから、責任はてめえにある」

ロック「そんなこと」

レヴィ「ここはそういう場所だぜ、ロック? 教えただろ? 生きてる奴ぁ、全員漏れなくハイエナだ。死肉を貪って生きてるような連中が住む場所で、泣き言なんざ糞にもならねえ」

ロック「確かにそうだけど……」

ベニー「それじゃあ、寄るところがあるから。また明日」

ロック「ああ。おやすみ」

レヴィ「おう」

ロック「はぁ……。でも、あのライターだけは無くしたくなかったな」

レヴィ「いつまでもウジウジいうな。全部、ロックがわりぃんだからよ。ほら、火、よこせ」

ロック「ベニーに頼めばよかっただろ」

レヴィ「あたしは今、吸いたくなったんだよ。吸いたいときに吸ってなんか不都合でもあんのか?」

ロック「ないけど。自分のは?」

レヴィ「仕事に不必要なものは持ちあるかねえよ。バァーカ」

ロック「必要になるときもあるだろ、ライターは」

レヴィ「いいか、火をよこせ」

ロック「はいはい」

レヴィ「ん……」

ロック(これからマッチでも持っていたほうがいいか……?)

翌日 教会

エダ「ハロー、バカップル」

レヴィ「おう。もう一回言ってみろ。足下にてめえの奥歯を順番に並べてやるから」

エダ「こわいねぇ。ロックぅ? こんな奴とバディは解消して、あたしのボディにつかないかい?」

ロック「いや……」

レヴィ「おお、いい提案だな、糞ビッチ」

エダ「あんたよりは男を悦ばせる術があるってだけで嫉妬ぉ?」

レヴィ「銃も夜も技術はあたしのほうが上だ、クソ尼。さっさと、注文してたやつ出して、消えろ」

エダ「あいよ。全く、冗談もつうじないほど惚れてんか。ロックも大変な奴に好かれたもんだ」

レヴィ「銃抜けよ」

ロック「エダ。あと、マッチももらえるか」

エダ「マッチ? どうしてさ?」

ロック「火が無くて。このままだと憩いの時間がやってこない」

エダ「ライター買ったんじゃないの?」

ロック「それが……なくして……」

エダ「なくした?」

ロック「ああ」

エダ「……」

レヴィ「あ? なんだよ、こら。やんのか? あー?」

エダ「レヴィに借りればいいじゃないのさ」

ロック「レヴィは火を持ち歩いてなくて」

エダ「禁煙でも始めたの? 母体には毒だからねえ」

レヴィ「何がいいてえんだよ、こら」

ロック「仕事には必要ないから持ち歩かないらしい」

エダ「ふぅん……。わかったよ。その代わり、お代は貰うからね」

ロック「マッチ1箱でか?」

エダ「こっちは聖母に仕えるシスターやってないんだ。求める者がいれば、金を貰って与える」

ロック「オーライ。いくらになる?」

エダ「今日じゃなくていいけど、夜の時間をあたしにおくれよ」

レヴィ「誰がやるか。死ね」

エダ「誰もあんたにゃあ言ってない」

レヴィ「ロックはあたしの部下だ」

ロック「ダッチの部下だけど」

エダ「こんなやつは無視して、あたしと一夜を過ごそうよぉ」

ロック「飲むだけなら」

レヴィ「ヘイ、ロック。誰の許可を得て、んな戯言吐いてんだよ?」

ロック「プライベートは詮索なし。レヴィだって似たようなこと言ってただろ」

レヴィ「てめえは別だ」

ロック「なんでだ」

レヴィ「文句いうんじゃねえよ!!」

エダ「じゃ、時間が決まったら連絡してね」

ロック「わかった」

エダ「それじゃあ、マッチを先に渡しておくから」

ロック「助かる」

レヴィ「……けっ。勝手にしろ」

エダ「バイバーイ」

レヴィ「はっ!! 二度とくるか、ファック!!」

ロック「これで自由に吸える」ボッ

レヴィ「……」

ロック「ふぅー……。レヴィも吸うか?」

レヴィ「そうだな……。クソ尼の所為で余計なストレス溜めちまったし」

ロック「はい、マッチ」

レヴィ「ふざけんなよ、ロック」

ロック「え?」

レヴィ「あたしにあの万年発情女が手にしたモノを咥えさせようって言うのか?」

ロック「マッチ箱は手にしたけど、マッチ自体は手にしてないだろ」

レヴィ「一緒だ。こんなもんで火をつけてみろ、口元が腐る。お前が咥えてるのでいい」

ロック「でも、これもエダから貰ったマッチで点けた火だぞ?」

レヴィ「ロックが咥えたからもう中和されてんだよ。それぐらいわかるだろ。ほら、よこせ」

ロック「仕方ないな……」

バンバンバンバンバンバンバンバンバンバン
バン       バンバンバン゙ン バンバン
バン(∩`・ω・)  バンバンバンバン゙ン
 _/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/
    \/___/ ̄

レヴィ「ん……」

ロック「……」

レヴィ「ふぅー……。あぁー、エダの野郎だけはいつか絞めっか」

ロック「なぁ、レヴィ。ライターかマッチを常備したらどうだ? 最近、いつもこんな吸い方じゃないか。疲れるだろ?」

レヴィ「べっつに。あたしの勝手だ」

ロック「……あれ? でも、俺がこっちに来たばかりのときはレヴィ、持ってたよな?」

レヴィ「あ?」

ロック「ライター」

レヴィ「……いや、もってねえけど。何と勘違いしてんだ? バッカじゃねえの。その若さで白痴か。この先、大変だな。良い施設紹介してやってもいいぜ?」

ロック「いや、そんなはずは――」

レヴィ「ヘイ、ロック」

ロック「なんだ?」

レヴィ「あたしにつまんねえ過去の話をさせて、楽しいか? 楽しいっていうなら、ここでお前を土の下に埋めなきゃならねえな」

ロック「悪かった。もう言わない」

レヴィ「それでいいんだよ」

数日後 ラグーン商会

レヴィ「ロック、火」

ロック「はい」

レヴィ「ん……」

ダッチ「なんだ、レヴィ。火なら貸してやったのに」

レヴィ「なんだよ、あるなら言えよ、ダッチ。もうロックからもらっちまっただろ」

ダッチ「俺がロックに貸したの見てなかったのか?」

レヴィ「ああ、みてねえ」

ダッチ「なら、仕方ねえな」

ロック「ダッチ、今日は上がってもいいか?」

ダッチ「どうした? 個人事務所でも開くのか?」

レヴィ「おう、なら、あたしもそっちに行ってやろうか?」

ロック「ここで新しい商売なんて怖くてできないよ。島を荒らしてのし上がろうなんて野心は火と同様に持ってないからね」

ダッチ「そうりゃあ賢いぜ、ロック。こっちも競争相手を増やしたくはねえからな」

レヴィ「なんだ、違うのかよ」

ロック「でも、クライアントはいるんだ」

ダッチ「へぇ、そうかい。なら、早くいってこい、この時間だとイエローフラッグもそこまで盛り上がってねえだろうしな」

ロック「助かる」

レヴィ「誰と飲むんだ?」

ロック「先日の約束を果たすんだよ」

レヴィ「あたしも行く」

ダッチ「レヴィはまだ残業だ」

レヴィ「明日やればいいだろ、んなこと」

ダッチ「レヴィ。社長命令だ」

レヴィ「……イエス、ボス」

ダッチ「それでいい。ロック、いい夜にしてこいよ」

ロック「ありがとう」

レヴィ「あとであたしも行くから、席とっとけよ」

ロック「少し飲むだけだ。レヴィが間に合うかは分からない」

レヴィ「あたしが来るまで居ろよ!」

イエローフラッグ

エダ「お、きたきた。待ってたよ」

ロック「それで、話したいことって?」

エダ「まぁ、まぁ、とりあえずのみなよ。ロックの奢りだし」

ロック「そうだね」

エダ「そうだ、ライターは買ったのぉ?」

ロック「いや。また無くしそうで」

エダ「なら、いいものやるよ。ほら」

ロック「ロンソンか……」

エダ「気に入らないかい? 乙女の目線じゃ、ライターの良し悪しなんてわからなくてねぇ」

ロック「いや。タダでいいなら、喜んで使わせてもらう」

エダ「タダなわけないだろ。あたしは出来た女だからね」

ロック「確かに。しっかり自立してる。また奢ればいいのか?」

エダ「いーや。何度も酒代目的でたかるような真似はしないさ。そのライターを常備してくれてればいい。肌身離さずね」

ロック「これを? 俺はライターに嫌われているみたいだから、ポケットに入れていても勝手に出て行くかもしれないけど、いいのか?」

エダ「構いやしないさ。ロックが持っていることに意味があるんだから」

ロック「わかった。何か目的があるみたいだけど、言う気はなさそうだな」

エダ「言ったら面白くないしね」

ロック「誰が面白くなくなるんだ?」

エダ「あたしだよ。他に誰かいる?」

ロック「いや……」カチッ

エダ「……」

ロック「ふぅー……。ああ、悪くない」

エダ「似合ってるよ、ロック。あたしもお持ち帰りしてほしいね」

ロック「悪いけど、そういう気分じゃない」

エダ「気分なんて時々刻々と変わるもんさ。少し静かな場所にいけば、ね」

ロック「さぁ、どうだろう」

エダ「試しに行ってみるぅ?」

レヴィ「――ここ、空いてるよな?」

エダ「あら。もう来ちゃったの? 仕事は?」

レヴィ「黙れ。てめえに関係ねえだろ」

エダ「そう?」

ロック「レヴィ。抜け出してきたのか?」

レヴィ「あんなもん、早朝にやればいいんだよ。それより、火」

ロック「はい」カチッ

レヴィ「な……。このライター、どうしたんだよ?」

ロック「今、エダから貰った」

レヴィ「なに!?」

エダ「火がないのは不便だろぉ?」

レヴィ「てめぇ……!!」

エダ「どうかした? エラく不機嫌だけど。やっとこさ生理でもきたの?」

レヴィ「うっせえ!! 仕事終わりでむかついてるだけだ!! おい、バオ!! マッチだせ!!」

バオ「毎度毎度うっせえなぁ。カウンターで大声出すんじゃねえよ。ほら」

レヴィ「くそっ……」ボッ

ロック「そんなにエダの火は嫌なのか」

エダ「そうだぁ、ねえ、ロック? ちょいと賭けでもどう?」

ロック「そういうのは苦手なんだ」

エダ「簡単な賭けだよ。ロックがライターを無くすか無くさないか。どう?」

レヴィ「賭けになんねーな。どうせ無くすぜ。このうすのろホワイトカラーじゃ」

ロック「酷い言われようだな」

エダ「そう思うんなら、レヴィは無くすに賭けるわけだ」

レヴィ「ああ。20賭けてやる」

エダ「大きくでたね。なら、あたしは無くしても見つかるに賭けよう」

ロック「無くしても見つかる?」

エダ「今までのライターはロックの懐からふけちまったんだろ? でも、あたしのあげたライターは戻ってくるよ」

ロック「根拠は?」

エダ「あんたのためだけに用意した特別仕様だから」

レヴィ「どこにでもあるロンソンじゃねーか」

エダ「まぁね。でも、あたしが選んだものは世界でこれだけ。あたしの愛が詰まってるから、ロックの肌恋しさに戻ってくるわけさ」

レヴィ「けっ。くだらねえ。ああ、確かにてめえの愛はオイルみてえにくせえだろうけどな」

ロック「エダは幾ら賭けるんだ? それによって俺は管理を強化するけど」

エダ「そうだねえ……」

レヴィ「いくらでもいいぜ。潤うのはあたしだけだからな」

エダ「ロックがこのチョコプレッツェルの端を咥えて、レヴィが逆側から食べていくってどう?」

レヴィ「ぶっ!?」

ロック「エダ、それは」

エダ「ロックんところにあるゲームだろぉ?」

レヴィ「おら、エダ!! ガキの遊びじゃねえんだ!! 金賭けろよ!!」

エダ「何を賭けようと一緒だろ。あたしが負ければ金を払う。レヴィが負ければこのゲームをする。オーライ?」

レヴィ「……っ」

エダ「それにあんたの読み通りなら、ロックはライターを必ず無くすんだろ? ならいいじゃないのさ。あたしなんて無くしても見つかる、だ。レヴィのほうが有利だろ、これは」

ロック「でも、エダ」

エダ「いいじゃないの。賭けは面白いほうが盛り上がし、燃える」

レヴィ「ふんっ。なら、てめえが負けたら50だ。いいな!」

エダ「いいよぉ。はい、賭けは成立っと。いやー、楽しみだね」

レヴィ「はっ。この町でなくしたら、一生見つからないか、犬のエサになってるな」

エダ「そうとも限らないさ。この間、無くしたドル札も見つかったし。血で染まってたけど」

レヴィ「おい、ロック」

ロック「なんだ?」

レヴィ「無くしたら探すなよ?」

ロック「いや、探すよ。少しぐらいは。流石にビラを撒いたりはしないけど」

レヴィ「なら、いい。いいか。ダッチとかベニーにも頼むなよ。てめえのケツはてめえで拭け、よ!」バンッ!!

ロック「いつっ! 分かってるから叩くなよ」

レヴィ「ふんっ」

ロック「それにしてもエダは随分と自信があるみたいだけど、勝算が愛情だけじゃ心許ないだろ」

エダ「いやぁ、でも、ライターに首輪と紐つけていれば問題ないからね」

ロック「どういうことだ?」

エダ「これ、渡しておくよ。無くしたらスイッチを入れてみて」

ロック「どうなるんだ?」

エダ「大きな音がなるよ。10マイル先にいる亀も早足で逃げ出すぐらいの音がね」

レヴィ「……え?」

ロック「防犯機能じゃあるまいし。ライター一つにそんな機能を?」

エダ「試しに入れてみたら?」

ロック「でも、怖いな」

エダ「どんな音か知っておかないと」

ロック「それもそうか……」

レヴィ「やめろ!! ロック!!!」

ロック「え?」

エダ「なんで?」

レヴィ「そ、そりゃあ……他の客に、迷惑だろ……常識で考えろよ」

バオ「なんだぁ、レヴィが常識を語ってくれるのか? そりゃあ、いい!! この店も破壊されずにすむってもんだ!!」

レヴィ「うっせえ!! 黙ってろよ!! 騒音で客が逃げてもいいのかよ!? あぁ!?」

ロック「まぁ、でも、一瞬入れるだけなら」

レヴィ「ああ、分かった。入れるのはいい。その前に叩かせろ」

ロック「意味がわからないぞ、レヴィ。どうして叩かれなきゃいけないんだ」

エダ「スリってさぁ、盗るのは簡単でも入れるのってまた違う技術がいるんだよね」

ロック「エダ?」

エダ「盗る専門で尚且つ半ば強引にスってた野郎は、元に戻すのが苦手なんだよ。不器用だから」

ロック「へえ……。その話は何の関係が?」

エダ「別に。さ、ロック。スイッチ入れてみな。どこにライターがあるか、わかるよ」

ロック「いや、ライターはここに……あれ? ライターが……」

レヴィ「……」ゴソゴソ

エダ「レヴィ? なにしてんの? ずっと見てるよ、あたしは」

レヴィ「な、なんでもねえよ!! こっちみんなよ!!」

エダ「そう。なら、いいけど」

レヴィ「この……アマぁ……!!」

ロック「大変だ。ライターがない」

エダ「ワォ。大変だ、ロック。さ、スイッチ入れて。まだ遠くに行ってないだろうしさ」

ロック「そうだな」

レヴィ「ヘ、ヘイヘイヘイ!!! ロック!!! やめろ!! 鼓膜を潰す気かよ!?」

エダ「盗んだ奴の当然の報いだろ?」

レヴィ「か、かわいそうだろ!!」

ロック「よし」ピッ

レヴィ「あー!!! このやろう!!! いれやがったな!! ファック!!!」

ロック「レヴィ、何を焦って――」

ピリリ……ピリリリ……

ロック「……ん?」

エダ「聞こえてきたねぇ」

レヴィ「うぅ……え?」

ピリリリ……ピリリリ……

ロック「携帯電話の着信音か?」

エダ「スイッチ切ればわかるよ」

ロック「そうか」ピッ

ピリ……

ロック「止んだ……。この音がライターから出ている音か? 思ってた以上に小さいな。身構えていたのに、肩透かしじゃないか」

バオ「さっきの音、レヴィのほうから聞こえたぞ?」

レヴィ「バオ!! てめぇ!! ケツ穴ふやされてぇのかよ!!」

ロック「……」ピッ

レヴィ「……」ピリリリリ

ロック「……レヴィ」

エダ「ケツのほうにあるポケットから聞こえるみたいだけど、なんか入ってる?」

レヴィ「……今のはあたしの屁だ」

エダ「随分とまぁ、電子音のガスを出すんだね。テレビにでてごらんよ、きっと儲かるよ」

レヴィ「いや、これぐらいは珍しくねえだろ」

ロック「……」ピッ

レヴィ「……」ピリリリリリ

バオ「随分と長い屁だな。何食ったらそんなに出るんだ?」

エダ「健康体ってことだね。いやぁー、羨ましい。レヴィはきっと長生きできるよ」

レヴィ「……っ」ピリリリリ

ロック「レヴィ。レヴィのオナラってことでいいのか?」

レヴィ「いや……」ピリリリリ

ロック「俺、スイッチオフにしないよ」

レヴィ「な、なにいってんだ!!! こらぁ!!!」

ロック「レヴィから出ているものなら自分で止めればいいだけだろ」

レヴィ「と、とまらねえんだよぉ……」ピリリリリ

ロック「てめえのケツはてめえで拭くものなんだろ、レヴィ?」

レヴィ「いや……」ピリリリリリ

ロック「そんな目で見たって、俺は止めないから」

レヴィ「……」ピリリリリリ

「見ろよ、レヴィが屁こいてるってよ」

「おお、中々キュートな音色だなぁ!!」

「そのオナラ、1ドルで買った!!」

レヴィ「だ、黙れ!!! 糞野郎ども!!! 死にてぇのかぁ!!!!」ピリリリリリ

ロック「死にたいのはレヴィのほうじゃないのか?」

レヴィ「……そうだよ。もう止めろよ。これ、屁じゃねえから」ピリリリリ

ロック「出してくれ」

レヴィ「ほ、ほらよ」

エダ「間違いなく、あたしがロックにあげたもんだ。どこで手に入れたの、レヴィ?」

レヴィ「今回が初めてだ。気に入ったから盗っただけだ」

ロック「今日、初めて俺のライターを盗んだって意味か?」

レヴィ「おう。そうだよ」

エダ「んじゃ、今からレヴィの部屋に行ってみよっか」

レヴィ「な、なんでそうなるんだよ!!」

ロック「証拠は無くなってる可能性があるけど、一応探してみないと」

レヴィ「勝手なことぬかすな、ロック!!!」

ロック「……」

レヴィ「な、なんだよ……文句あんのか……」

ロック「エダ、行こう」

エダ「あいよぉ」

レヴィ「おい!! せめてエダはやめろ!!! ロックだけなら特別に許してやる!!! それ以上はゆずらねえぞ!!!」

レヴィの部屋

エダ「うわ、きったないねえ。こんな部屋でロックとよろしくしようとしてたの?」

レヴィ「エダは帰れっつてんだろ!! あと別に汚くねえよ!! てめえの性根のほうがくっせえんだよ!!」

エダ「もう一回、可愛いお尻から電子音響かせたいですって意味でいい?」

レヴィ「やめろよ。ちげえよ」

ロック「えーと……」ゴソゴソ

エダ「どうだい、ロック?」

ロック「見つからない。やっぱり、無いか」

レヴィ「あ、あるわけねえだろ。ふざけんな」

ロック「まぁ、普通は捨てるか」

エダ「例えばこの下着の下に埋まってるとかは?」

ロック「エダ、見てくれ」

エダ「サー」

レヴィ「勝手にあたしのモンに触れんな。てめえの垢がついたら二度と穿けなくなるだろうが」

エダ「よっと」バッ

レヴィ「てめぇ――」

エダ「お? ロック、これがお探しのブツかい?」

ロック「それは……!!」

レヴィ「あぁ……」

エダ「大切なライターなの?」

ロック「ああ。日本にいたときから使ってるやつだ。良かった……あったのか……」

エダ「これで証拠は十分。一連の犯人はレヴィだったわけだ」

レヴィ「あー!! そうだよ!!! あたしだ!! あたしがぜーんぶ盗んだ!!! なんだよ!!! 油断してるロックが悪いんだろうが!!!」

ロック「……」

レヴィ「ロアナプラで気を抜けば、あっというまに身包み剥がされて、ケツの毛一本も残さず抜かれちまうってことをあたしが教えてやったんだ!!!」

レヴィ「おら!! 全部、てめえのためなんだよ、ロック!!! 親指しゃぶってばっかいる奴のお守りはメンドだぜーっ!! ったく!!!」

ロック「どうして盗んだんだ、レヴィ?」

レヴィ「聞いてなかったのか!? 今説明してやっただろうがぁ!!! 聞こえてねえなら、その耳は切り取って豚にでもやれ!!!」

ロック「もう一度、聞くぞ。どうしてライターを盗ったんだ?」

レヴィ「……いいたくねえ」

ロック「レヴィ、正直に言ってくれ。ライターだけを盗むなんて異常だ」

レヴィ「……」

エダ「まぁまぁ、ロック。そのことは追及するまでもないんじゃない?」

ロック「どうして?」

エダ「ライターだけを盗んだんじゃなくて、ロックのライターだけを盗んでたわけだから、さ」

ロック「そういえば……」

レヴィ「おい、やめろ」

エダ「ねえ、ロックぅ? ライターが無いとタバコは灯らないだろ?」

ロック「ああ」

エダ「二人いてさぁ、二人とも火がないときはどうする?」

ロック「誰かに借りるしかない」

エダ「そうだ。じゃあじゃあ、片方だけタバコが灯っていたら?」

ロック「そのときは――」

レヴィ「やめろ!!! それ以上、言ったら殺す!!!」

エダ「おー、こわ。はいはい、言わないよ。もう十分だろうし」

ロック「そういうことか……」

レヴィ「いや、多分違う」

ロック「レヴィ……」

レヴィ「違うっつってんだろ!!! そんな目でみるんじゃねえよ!!!」

ロック「……」

エダ「ところで、レヴィ? 賭けはあたしの勝ちだよね?」

レヴィ「あぁ!? ……あ」

エダ「はい、色男。これ、咥えて」

ロック「本気か?」

エダ「賭けだもの。やってもらわないと、落とし前がつかないじゃないか」

レヴィ「エダ。わかった。50払えばいいんだろ? な?」

エダ「ロック、あーん」

ロック「……」パクッ

エダ「はい、レヴィも端を咥えて。で、同時に食べ始めるんだ。先に離したほうが負けだから。食べきったら、めでたくマウストゥマウスになるって寸法さ」

レヴィ「んなことできるわけねえだろ!! くっつまんねえ!!! ガキにやらせろよ、んなことはぁ!!!」

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      `、  f´ \ `丶、\   ヽ.  {.   \        リ / /   ,. 'r'⌒ヘ
       丶_l'ー' ヽ\   ヾ>、>r'ニニニ\,r-、i        //j/ /  !´ヽ. !
        { `ヽ.  \\  \   }  {´ ヽノ         /,/   |  /
        ハ  \  `ヾ     /、   ト、 ( `ヽ       ´|     |_/
     ,. イ   >、   ヽ       / ヘ  ゝ._`¨´ヽ     __,.イ     |
  \ / ノ / ,ノ \       ノ  ハ  ゝ 二ニ) ̄ ̄   j      |

エダ「あたしらの世界で、そんな言い訳が通じるとでも思ってるのかい?」

レヴィ「いや……でも……」

エダ「やれ。あんたは負けたんだ」

レヴィ「……やだ」

エダ「なら、今回のことバラライカや張あたりに吹き込んでもいいわけ、だ」

レヴィ「……」パクッ

エダ「いい子、いい子」ナデナデ

レヴィ「あふぉふぇころふゅ」

ロック「……」

エダ「それじゃあ、よーい、スタート」

レヴィ「くふぉっふぁれぇ!!!」ポリポリポリ

ロック「……!」

エダ「お、いいペース。いいペース。そのまま、いけー」

ロック「――もうやめよう。十分だ、エダ。ライターも戻ってきたし」

レヴィ「なふぃ!? ふぁふぇるふぉふぉあよ!?」

エダ「そう? ロックがそういうなら、いいけどさ」

ロック「実害は好きなときにタバコを吸えなかったぐらいだからな」

エダ「ふーん。ま、あたしも人生で一番面白いモンみれたし、いいか」

レヴィ「……」ポリポリポリ

エダ「それじゃあ、ね。お二人さん。また何かあれば教会まできな。手厚くもてなしてあげるから」

ロック「ああ。そのときはよろしく」

レヴィ「ふぁやふふぁえふぇ」

エダ「はいはい」

ロック「……レヴィ」

レヴィ「……なんだよ?」

ロック「どうしてライターを盗んだ?」

レヴィ「……ロックの想像通りだ」

ロック「確証を得るためには本人の口から動機を聞かないと」

レヴィ「な……!?」

ロック「どうした? 言えよ。ほら」

レヴィ「て、てめぇ……あまり調子にのんなよ……!!!」

ロック「天下の海賊が身内の火を盗むなんて、よっぽど高尚な理由がなきゃ納得できないからな」

レヴィ「そ、その口、ふさいでやろうか……鉛玉つめこんでよぉ……!!!」

ロック「言えないなら、俺の憶測で語る。ダッチやベニーの前で」

レヴィ「ダッチもベニーもかんけぇねえだろ!!!」

ロック「二人ともライターだけが盗まれていることには疑問を持っていた。説明して然るべきだ」

レヴィ「い、いうじゃねえか……ロックのくせによぉ……!!」

ロック「なら、言ってくれ。俺だってレヴィの顔が血以外で赤く染まるところなんて見たくないからな」

レヴィ「う……」

ロック「言えないないなら、言えないって言ってくれ。別に怒らない」

レヴィ「……」

ロック「ここで言ってくれたら、口裏を合わせる。エダにも言って口を閉じておいてもらう。さぁ、どうする、レヴィ?」

レヴィ「おまえ……悪党だな……」

ロック「まさか。俺は当たり前のことしか言ってないぞ」

レヴィ「ざけんな……逃げ場を潰しておいて……どの口がいってやがる……」

ロック「そうか。なら、仕方ない。確証は得られないから、事の真相は俺の推理から導き出した答えを……」

レヴィ「わ、わかった!!! それ以上、喋るな!! カトラスをぶん回すぞ!!! こらぁ!!!」

ロック「喋る気になったか」

レヴィ「……タバコの火……欲しかっただけだ……」

ロック「誰から?」

レヴィ「ろ、ろっく、から……」

ロック「どうやって?」

レヴィ「タバコから……火をうつして……」

ロック「へえ……。それ、何て言う移し方なんだ?」

レヴィ「な、なんだよ!! んなこと、自分で調べろよ!!!」

ロック「……」

レヴィ「……シガー……」

ロック「大きな声で言えよ。戦場じゃあ、相手の鼓膜を突き抜けるぐらいの声量で怒鳴るじゃないか」

レヴィ「あぁぁ!!! シガーキスしたかったんだ!!! くそったれ!!!! ファック!!!!」

ロック「初めからそう言えばいいのに」

レヴィ「ちくしょう!!!! ふざけんなぁぁ!!! ロックのくせに!!!! 死んじまえよ!!!! あぁぁぁ!!!」

ロック「ベッドから出て来い。怒ってないから」

レヴィ「うそつけ!!!」

ロック「俺のライター、捨てずに置いててくれたからな」

レヴィ「……」

ロック「だから、怒ってない」

レヴィ「……ホントか?」

ロック「ああ」

レヴィ「これからも……」

ロック「レヴィ、ライターもマッチも持たないんだろ? なら、俺が火を移してやる。傍にいるときはな」

レヴィ「マジ?」

ロック「なら、火を持つか?」

レヴィ「もたねえ」

ロック「持たないなら、そうするしかレヴィはタバコは吸えないだろ?」

レヴィ「おう。吸わねえ」

ロック「よし。ダッチとベニーには上手く言い訳しておく」

レヴィ「頼むぜ、ロック」

ロック「任せてくれ。口だけは達者だからな」

レヴィ「……タバコ、吸いたくねえか?」

ロック「いや。別に」

レヴィ「なんでだよ。普通、吸いたくなるだろ」

ロック「ならない」

レヴィ「おら!! 吸えよ!!!」

ロック「お、おい……ま……」

レヴィ「ほら」カチッ

ロック「レヴィ……」

レヴィ「ん……」

ロック「……」

レヴィ「ふぅー……。一仕事終えたあとの一服はいいな。体に染み渡るぜ」

ロック「まぁ、いいけど」

翌日

ダッチ「なんだ、結局持って帰ってたってオチか」

ロック「すまない。気味悪かっただろ」

ベニー「いや。でも、盗まれてたわけじゃなくてよかった」

ダッチ「ここのセキュリティが甘くなってるのかと思ったぜ。番犬にケルベロスがいるのにな」

ベニー「全くだね」

レヴィ「はっ。ロックがノーナシってことが実証されたってわけだ!! ホント、つかねえな、こいつ」

ロック「面目ない」

ダッチ「いや、いいんだ。ロック。重要なのは謎がとけたって結果だ。過程なんざどうでもいいんだよ」

ロック「そう言ってもらえるとありがたい」

レヴィ「ヘイヘイ、ダッチ。あまりそいつを甘やかさないほうがいいんじゃねえか? 調子に乗らせて、大事な商品を無くされたら信用に関わるぞ」

ダッチ「それもそうだな。レヴィ、暫くロックから目を離すなよ。できれば四六時中隣にいろ」

レヴィ「あ? なんであたしが。お守りは勘弁だぜ、ダッチ」

ダッチ「お前が適任だと思ってるんだが? 俺の目は節穴か?」

レヴィ「そこまで言われたら、仕方ねえな。面倒だけど、やってやるか。ボスの命令には逆らえねえし」

ベニー「それじゃあ、僕らは資材の調達に行ってくるよ」

ダッチ「二人で仲良く留守番してろ。1時間ぐらいで戻ってくる」

ロック「わかった」

レヴィ「ロックと二人っきりだと? やめてくれよ。こんな臭いやつと一緒にいたら、カトラスまで錆び付くぜ」

ダッチ「ロック、火もって無いだろ? 一本、出しな」

ロック「悪いね、ダッチ」

ダッチ「レヴィのことよろしくな。あいつも首輪つけておかねえと、フラフラしやがるからな」カチッ

ロック「自信はないけど、やってみるよ」

ベニー「ごゆっくり」

ロック「行ってらっしゃい。ふぅー……」

レヴィ「あー、タバコすいてぇなぁー」

ロック「ほら。火はこれだけだ」

レヴィ「ホントだな、しかたねえなぁ、全く」

ロック「ああ、こうするしかない」

レヴィ「ホントにひでぇ話だぜ……んっ……」

ホテル・モスクワ バラライカの自室

バラライカ「軍曹、火を」

ボリス「はい」カチッ

バラライカ「そうじゃない。なんど言えば分かる。そうじゃないぞ、ぐんそうっ」

ボリス「申し訳ありません。では……」

バラライカ「そうそう。んー……」

ガチャ

「大尉殿、ラグーン商会の――」

ダッチ「……」

バラライカ「……!?」ガタッ

ダッチ「邪魔したな」

バラライカ「ま、まて!! 違う!! 違うから!! ダッチ!! ねえ、きいて!!!」

ダッチ「シガーキス、流行ってんのか……」

バラライカ「こら!! 言い訳させろ!! ほら、軍曹もなんか言ってやって!!」


おしまい。

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