P「今夜は酷い雨だな……」(96)

P「やれやれ……もう8時か。こんなに打ち合わせが長引くとは思わなかったな」

P「まあ、おかげで次の企画の準備は万全だ! よかったよかった」

 ザーザーザー

P「しかし、今夜は酷い雨だな……」

P「運転中、ワイパーが全然役に立たなかったぞ」

P「まだ4月だってのに、まるで台風でも来たみたいだな」

P「何か変なことが起こらなきゃいいけど……」

 ガチャ

P「ただいまー。戻ったぞー」

千早「お疲れ様です、プロデューサー」

雪歩「お帰りなさい、プロデューサー。すぐにお茶を淹れますね」スクッ

貴音「首尾の方は、いかがなものでしたか?」

P「ああ、バッチリだったよ!」

貴音「そうでしたか。それはなによりです」

P「次のブーブーエスの番組には、貴音と千早、雪歩の三人に出演してもらうからな」

千早「わかりました。決まったからには、全力を尽くさなければいけませんね」

P「ああ、頼んだぞ!」

雪歩「お待たせしましたぁ」コトン

P「お、わざわざすまないな雪歩」ゴクゴク

雪歩「とんでもないですぅ。はい、千早ちゃんと四条さんもどうぞ」

千早「ありがとう、萩原さん。いただくわね」コクコク

貴音「まこと、雪歩の淹れてくれたお茶は美味しいですね」コクコク

P「ああ、雪歩のお茶は最高だよ。疲れが一気に吹き飛ぶな」ゴクゴク

雪歩「えへへ……ありがとうございますぅ。それじゃ、私も」コクコク

P「ところで、残ってるのは三人だけか?」

千早「はい。今日春香たちは、5時には帰っています」

雪歩「小鳥さんが仕事で残ってましたけど、ついさっき帰りましたぁ」

P「ふーん、そうなのか。入れ違いになったかな?」

貴音「そのようですね。忙しそうに、せっせと作業をしておりましたよ」

千早「何か、機械のようなものを取り付けてたみたいです」

P「へえ……何だろう? まあ、小鳥さんも毎日仕事が山積みだろうし、大変だよな」

P「それはそうと、すまないな。帰りが遅れたせいで、こんな時間まで残らせちゃって」

貴音「プロデューサーが気に病む必要など、何一つありません」

雪歩「そうですよぉ。プロデューサーは、私たちのために頑張ってくれてるんですぅ」

千早「私も打ち合わせの結果、早く知りたかったですから」

P「ありがとう。そう言ってくれると嬉しいよ」

P(本当に三人とも、年齢の割には大人だよなぁ)

P「……下手すると、俺の方が子供っぽいんじゃないか?」ボソ

千早「プロデューサー、何か言いましたか?」

P「え? いやいや、何でもない何でもない」ブンブン

千早「それにしても外の雨、弱まる気配がありませんね」

雪歩「何だか台風が来たみたいですぅ」

P「お、奇遇だな雪歩。さっき俺も、同じことを考えてたぞ」

貴音「雨は気持ちを憂鬱にさせます。これ以上、悪化して欲しくはありませんね」

P「だな。この分だと、そのうち雷でも鳴るんじゃないか?」

千早「……雷」ギクッ

 ピカッ

千早「ひ……」ビクッ

P「おー、言わんこっちゃないか」

雪歩「結構強く光ったみたいですぅ。ここから近いんですかね――」

 ゴロゴロゴロ!

雪歩「きゃっ!」ピクッ

千早「――!」ビクン

P「やれやれ、こりゃまいったなぁ」

貴音「雪歩の言うとおりですね。どうやら、近場に落ちたようです」

P「いやぁ、こんなでかい雷は久しぶりじゃないか? なあ、千早?」

千早「……」パクパク

P「ん、どうしたんだ千早? 何だか顔色が悪いみたいだけど」

雪歩「千早ちゃん大丈夫? 具合でも悪い?」

千早「……い、い、いえ。だだだだ、大丈夫です」ブルッ

P「いや、どう見てもあんまり大丈夫そうじゃないんだが……」

千早「そ、そんなことは――」

 ピカッ

千早「ひいぃ!」ビクン

P「うおっ、びっくりした!」

雪歩「ちょ、ちょっと千早ちゃん、本当にどうしたの? 顔、真っ青だよ?」

千早「な、な、何でもないわ……」ブルッ

貴音「……もしや」

P「ん、どうした貴音?」

貴音「いえ。もしかすると千早は、雷が嫌いなのではないかと思いまして」

P「なに? そうなのか、千早?」

千早「そ、そ、そんな訳が――」

 ゴロゴロゴロゴロ!

千早「いやあああああっ!」ガバッ

P「うおおおっ!?」 

P「だ、大丈夫か千早! というか、いきなり抱きつかないでくれ!」

千早「プ、プロ、プロりゅーサー!」ブルブル

P「お、おう何だ千早! とりあえず右腕が重いんだが!」

P(というか、千早の体が右腕に密着してるのがヤバイ)

千早「か、か、かみ、かみな、雷、雷!」ブルブル

貴音「どうやら、間違いないようですね」

雪歩「こんな取り乱した千早ちゃん、初めて見たかも……。何だかびっくりですぅ」

千早「~~~~~!」ブルブル

P「うーむ、千早は雷が苦手だったのか。それにしても、何とも意外な……」

千早「いけませんか! だ、だ、誰にだって、苦手なものの一つくらいはあります!」キッ

P「あ、ああ。そうだな。そうだよな。悪かった」

千早「プロ、プル、プロ」ブルブル

雪歩「大丈夫だよ千早ちゃん。ほら、よしよし」ナデナデ

千早「ププププロデューサー! はは早く外に行って、雷を止めてきてください!」ブルブル

P「え?」

千早「早く、早く!」ブルブル

P「いや、止めろって言われたって、無理だろどうやっても」

千早「そ、そんな簡単にあきらめないでくださ――」

 ピカッ

千早「っっ!」ビク

P「おい、千早! そんなに強く抱きつかないで――」

 ゴロゴロゴロゴロゴロ!

千早「いやあああああああああっ!」ビクンビクン

P「ちょ、お、おおおおい千早! ちーちゃんってば!」

P(千早の胸が! 美乳が! 俺の腕に! 抑えろ俺、落ち着け俺!)

千早「止めてえ! 早く止めてえええええ!」

P「だから俺には無理だって! 正気に戻ってくれ千早ぁ!」

雪歩「あのぅ……プロデューサー、少し落ち着きませんか?」

貴音「今、無理な説得は逆効果かと。ここはしばし、様子を見るとしましょう」

P「うー、そうするしかないのかなぁ」

雪歩「千早ちゃんもしばらくすれば、慣れてくれるかもしれませんよぉ?」

P(このままの体勢で俺の理性が持つか心配だけど……何とか頑張るしかないか)

P「まあどのみちこの雷じゃ、外に出るのは危険だよな」

雪歩「私もそう思いますぅ」

千早「うう……」ブルブル

P「くそっ……早くおさまってくれよ」

P「しかし、これだけ立て続けに落雷があると、事務所が停電しそうで心配だぞ……」

雪歩「……停電」ピク

貴音「おや雪歩、どうかしましたか?」

雪歩「あ、あのあの! プロデューサー!」

P「ん、どうした雪歩? 急に慌てて」

雪歩「や、や、やっぱり無理してでも今すぐ帰りませんか?」

P「へ?」

貴音「え?」

千早「…………」ブルブル

P「雪歩、いきなりどうしたんだ?」

貴音「強行突破をすべきでないのは、雪歩も納得済みなのでは?」

雪歩「そ、それがですね。私、実は――」

 ジーーーーーープツン

雪歩「ひぃ!」ビクン

貴音「おや……噂をすれば」

P「だな。見事に停電したみたいだ。全く、何てこったい――」

雪歩「きゃあああああああああ!」ガバッ

P「どわあっ!」

P「ゆ、雪歩? 今、左腕に抱きついてるのは雪歩か?」

雪歩「く、暗い暗い暗い! プロデューサー、暗いです!」ガタガタ 

P(ゆ、雪歩の柔らかい体が、胸が、俺の左腕に……)

雪歩「怖いです怖いです怖いですぅ!」ガタガタ

P「お、おい雪歩! とりあえず、もうちょっと腕から離れてくれないか?」

雪歩「む、む、むむむむむ無理ですぅ! 暗い場所は苦手なんですよぉ!」ガタガタ

貴音「……はて? ならば、なぜいつも穴を掘って埋まりたがるのですか?」

雪歩「自分で掘るのはいいんですぅ! 停電だと心の準備ができないんですううぅ!」

P「俺には違いがさっぱりわからんぞおぉ!」

雪歩「はうぅぅ! 暗いよ暗いよおぉ! 何も見えないよおおぉ!」」ガタガタ

 ピカッ

千早「ひいい!」ギュムッ

P「うおい! だから千早、そんなにくっつくなって!」 

千早「落ちる! また落ちるう!」ガタガタ

P「ちょっと、おい雷! 少しは空気を読めって――」

 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!

千早「ひいいああああ!」ガッシ

P「読んでくれないですよねそうデスヨネー」

貴音「どうやら、一段とこちらに近づいているようですね。音がだんだん大きくなっています」

P「冷静に分析してる場合じゃないだろ貴音ぇ!」

千早「ひあああああああ? ひあひあ!」ガタガタ

P「ほら見ろ! ちーちゃん余計に怖がっちゃったでしょーが!」

貴音「はっ……確かに余計なひと言でした。申し訳ありません」

P(ヤバイマジヤバイマジヤバイ俺アイドル二人に抱きつかれてる俺落ち着け落ち着け落ち着け)

雪歩「プロデューサー! 明かりを、明かりをお願いしますぅ!」ギュウ

P「いや、お願いされたいのはやまやまなんだけど!」

P「そんなに強く腕にしがみつかれたら――」

 ピカッ

千早「うひいいいい!」ギュウウ

雪歩「プロ、プロプロプロデューサー! 早くお願いしますってばぁ!」ギュムギュム

P「いや、だからさ! 雪歩と千早が離れてくれないと、ここから動けないんだってば!」
 
 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!

千早「もういやあああああっ!」ギュウウウ

雪歩「プロでゅうサアアア! 助けてえええええ!」ガッシリガッシリ

P「助けて欲しいのは俺の方だあああ!」

P(雪歩の体が、ボディが胸が! ボディがバストが!)

P「た、貴音! 頼む、戸棚の懐中電灯を! 携帯で照らせば見えるだろ!」

貴音「承知しました、プロデューサー。今しばらくお待ちください」スッ

P「千早、雪歩! 大丈夫だから、もう少し落ち着いてくれって!」

雪歩「無理ですぅぅぅぅ! 暗いんですぅぅぅぅぅ!」ガタガタ

千早「早く鳴り止んで早く鳴り止んで早く鳴り止んで」ブルブル

雪歩「暗いよ怖いよ暗いよ怖いよ暗いよ怖いよぅ」ガタガタガタ

千早「もう鳴らないでもう鳴らないでもう鳴らないで」ブルブルブル

P「おおい、まだなのか貴音ぇ! このままじゃ、このままじゃ俺は!」

P(千早の美乳が雪歩の胸が俺の腕が俺の心が俺の理性が俺の股間が)

貴音「お待たせいたしました、プロデューサー」カチッ

P「おお、助かったぞ貴音!」

雪歩「あ、光が……」

P「ありがとう貴音。本当に、間一髪だったよ」

貴音「間一髪? プロデューサー、それはどういう……?」

P「い、いや。特に深い意味はないぞ。さて雪歩」

雪歩「ふぇ?」

P「……コホン。もうちょっとだけ、離れてくれないか?」

雪歩「……あああああああああ! プロデューサーごめんなさいいいいいいい!」バッ

P「い、いや、不可抗力だし仕方ないよ。全然気にしなくて大丈夫だからな」

P(ともあれ危なかった……。抱きつかれてるのが一人だけなら、何とか耐えられる……ハズ)

貴音「落ち着きましたか、雪歩」

雪歩「は、はい……。何とか、少しは、ですけど」

P「よし、雪歩は大丈夫そうだな。千早はどうだ?」

 ピカッ

千早「イヤ! イヤイヤイヤイヤ……」ブルブル

P「……こっちはダメっぽいな。とにかくこの雷――」

 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!

千早「イヤああああああああっ!」ガッシ

P「ゴホン。雷が鳴り止むのを待って、とっとと退散しよう」

千早「うううう……」ブルブル

貴音「安心しなさい、千早。わたくしたちがついてますからね」サスリサスリ

P「ああ、大丈夫だぞ。それに室内にいれば、打たれる心配もないだろうしな」

雪歩「そ、そ、それにしても、どのくらいで鳴り止みますかね?」

貴音「こればかりは、何とも言えません。天に祈るよりほかはないでしょう」

P「だな。それにしても、暗闇で懐中電灯か。何だかお化けでも出てきそうな雰囲気だな」

貴音「……お化け……」ブルッ

P(あ、しまった)

貴音「プ、プ、プロデューサー。わたくし、そういう話は――」

P「すまん、ついうっかり言っちゃったんだ。貴音が怪談を苦手なのはちゃんと知ってるぞ、うん」

貴音「し、知っているのでしたら、不安を煽るような言葉を口に出さないでください!」

P「ごめんごめんごめん! わざとじゃないから、そんなに怒らないで――」

 スッ

P「あれ? 懐中電灯が消えた――」

雪歩「きゃああああああああああああっ!」ギュウッ

貴音「ひいいいいいいいいいっ!」ダキッ

P「のわのっ!」

雪歩「ま、また、また暗くなったよぅ!」

貴音「プロ、プロ、あ、あ、あああああああ!」ガクガク

P「ゆ、雪歩、落ち着け! というか、貴音まで後ろから抱きつかないでくれ!」

P(これはまずい! 雪歩に加えて貴音の爆乳が俺の背中に! 爆乳が背に!)

貴音「あ、あ、あああなた様! れ、霊が!」ガクガク

P「え、霊?」

貴音「れ、れれれれれ霊が! 霊が! 懐中電灯を!」ガクガク

P「待った待った! 冷静になれ貴音! 今のは霊のしわざなんかじゃないぞ」

貴音「し、しか、しかしかしかし!」ガタガタ

千早「もう終わりでしょ? もう終わりよね? もう終わりでいいじゃない……」ブルブル

P「安心しろ貴音、ただの電池切れだって。霊なんて、この世にいるわけないだろ?」

貴音「でも、でもでもでもでもだって!」ガクガク

P「しばらく使ってなかったからな、そんなこともある――」

 バン!

P「うわっ!」

貴音「ひいいいいいい!」ギュムッ

P「何だ、窓か?」

貴音「あ、あ、あなた様! ま、窓に、窓の外に何者かが! 窓まど窓にぃ!」ガクガク

P「大丈夫だから! そんなに背中に押し付け……じゃない、抱きつかないでくれ!」

雪歩「消えちゃったよぅ……光が消えちゃったようううぅ!」ギュウギュウ

貴音「あなた様! あなた様あ!」ガクガク

P「おそらく今の音は、風に飛ばされた何かが窓に当たっただけで――」

 ギシッ

貴音「ひいいいいあああああ!」ギュウッ

P「だからそんなにくっつかないでくれよぉ!」

貴音「今聞こえた! 廊下から変な音が聞こえたぁ!」ガクガク

P「霊じゃない霊じゃない霊じゃない! 風で床がきしんだだけだよ、貴音!」

貴音「あなた様ぁ! わたくしは、わたくしはまだ死にたくありません、あなた様ぁ!」ギュムギュム

P「しっかりしてくれ貴音! じゃないと……じゃないと!」

P(お、俺の心と体のリミッターが……それだけは、何としてでも避けないと……)

雪歩「はうううう! はうううう! はううううううう!」ギュウギュウ

P「ちょ雪歩、というかみんな、頼むからもう少し離れて――」

 ピカッ

千早「どうして終わってくれないの……どうしてなの……どうして……」ブルブル

 ギシッ ギシッ

貴音「わたくしは何もしておりません! お許しを、お許しをぉ!」ギュギュギュ

P「いや、ちょっとマジでホントに――」

 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!

千早「やだああああああああああっ!」ブルブルブルブル

雪歩「暗いですぅ! 怖いですううううぅ!」ガタガタガタガタ

 ギシッ ギシッ ギシッ

貴音「あうあうあうあうあうあうあうあうう!」ガクガクガクガク

P「お願いだからそんなに体を動かさないでくれええええ!」

P(柔らかいよ温かいよ良い匂いだよ俺の体がもたないよ俺の心が溢れちゃうよおっぱい)

千早「雷やだああああああああっ!」ブルブルブ

雪歩「暗いよおおおおおおおおっ!」ガタガタガ

貴音「あううううううううう!」ガクガ

P「このままじゃ俺の、俺の尊厳が、俺の社会的生命が……って」

P(何だ? 急に三人の力が……?)

千早「…………」トサッ

雪歩「…………」ガクッ

貴音「…………」トスン

P「……あらま」

P「おい、千早。千早ってば……」ユサユサ

千早「…………」

P「雪歩、雪歩ー」ユサユサ

雪歩「…………」

P「貴音ー、おーい貴音ー!」ユサユサ

貴音「…………」

P「……どうしよ」

小鳥「プロデューサーさん」

P「うおわっ!!」

P「こここ、小鳥さん! どうしてここに?」

小鳥「忘れ物に気がついて、取りに来たんですけど」

P「あ、そうなんですか。びっくりしたぁ……」

小鳥「停電してたんで、ここまでたどり着くのが大変でしたよ」

P(そうか。さっきの床のきしみは風じゃなくて、小鳥さんの足音だったのか)

小鳥「こういう時に、携帯電話のライトは頼りになりますね。……ところで」

P「……はい」

小鳥「千早ちゃんと雪歩ちゃんに貴音ちゃん、一体どうしたんですか?」

P「何から何まで説明します。俺も、誤解で刑務所に入りたくはないですから」

――十分後

小鳥「雷、鳴り止んだみたいですね。停電も回復しましたし」

P「全く、どうしてもう少し早く……ぶつぶつ」

小鳥「ふふふ。災難でしたね、プロデューサーさん?」

P「本当に、小鳥さんが話の分かる人で助かりましたよ」

小鳥「まあ、プロデューサーさんが担当アイドルに、変なことするはずないですからね」

P「もし信じてもらえなかったら、俺はこれからどうなってたことやら」

小鳥「それにしても、まさか三人揃って気絶しちゃうなんてねぇ……」

P「全くです。こう言っちゃなんですけど、まるで小さな子供みたいでしたよ」

小鳥「ふふ……千早ちゃんも雪歩ちゃんも貴音ちゃんも、可愛い顔してますね」

P「にしてもみんな、もっと大人だと思ってたけどなぁ……」

小鳥「プロデューサーさん。いくら大人びてても、千早ちゃんたちは十代の女の子なんですよ?」

P「……そうなんですよね。しっかりしてるから、つい忘れそうになりますけど」

P(千早が16、雪歩が17、貴音でも18……か)

小鳥「これからは怖がってたら、ちゃんと安心させてあげないとダメですからね?」

P「はい……おっしゃる通りです……」

P(煩悩に苛まれて、あたふたしてた自分が情けない……)

小鳥「それはともかく、そんな美味しい場面を独り占めなんて、ずるいですね」

P「いや、ですから俺も、さっきは必死だったんですって!」

小鳥「じゃあ今からもう一度、落ち着いてゆっくり観てみませんか?」

P「……どういうことでしょう?」

小鳥「さっきの一部始終、監視カメラに撮影されてるんですよ!」

P「は!? 監視カメラ?」

小鳥「今日帰る前に、あたしが仕掛けておいたんです!」

P「千早が言ってたのは、それのことか。にしても……まさかさっきまでの出来事って……」

小鳥「あ、先に言っておきますけど、それはあたしのせいじゃないですよ?」

P「……ホントですか?」

小鳥「もちろん。超能力者じゃあるまいし、雷をコントロールできるハズないですよ」

P「まあ、そりゃそうですけど……。それじゃ、どうしてカメラを仕掛けたんですか?」

小鳥「女のカンです!」

P「はい!? カン?」

小鳥「今日はあたしの妄想レーダーに、ビンビン反応があったんですよ!」

P「……はあ」

小鳥「そしたら見事にピッタシカンカンでした! 女のカンってすごいですよね!」

P「ううむ……すごいというか、何というか……」

P(大丈夫かこのピヨ)

小鳥「とっても楽しめそうな場面が撮れたみたい! うふふふふふ……」

P「……一応、忠告しておきますね。今、この場で観るのはやめておいた方がいいです」

小鳥「そう言わずに一緒に観ましょうよぉ! 冷静になって観れば、新たな発見があるかもしれませんよ?」

P「いや、だって、ほら……ねぇ」

小鳥「もう、ノリが悪いですねぇ。それなら早速、あたし一人で観ちゃおっかなっと――」

 ガシッ

小鳥「え?」

貴音「小鳥嬢」

千早「そのカメラの映像」

雪歩「どうするつもりですかぁ?」

P(あーあ)

小鳥「あ、あら? 三人とも、ずいぶんと早いお目覚めで――」

雪歩「何だか小鳥さん、とっても楽しそうですねぇ……」

小鳥「い、いや、それほどでもないわよ雪歩ちゃん。だからちょっと、離してくれない?」

千早「私たちの怖がる姿を見て、私利私欲を満たそうとしていましたよね……」

小鳥「え、そ、それは気のせいよ、気のせい! 私はただ――」

貴音「言い訳は無用です。証拠の品はこちらで預かりましょう。大人しく渡さないなら……」

小鳥「わ、渡さないなら……?」

三人「「「こうです!」」」ガバッ

小鳥「きゃあああああ!?」

P「お、おい千早、雪歩、貴音! あんまり手荒な真似は――」

小鳥「きゃはははははははははは!」

P「ん? あれ?」

小鳥「ちょ、くすぐらないでぇ! みんなやめ、やめ、やめてーっ!」ジタバタ

P「って、くすぐるだけかい!」

千早「どうですか音無さん? そろそろ渡す気になりました?」コチョコチョ

小鳥「わ、わかったから! 渡すってばぁ! ひゃ、雪歩ちゃんそこはダメぇ!」ジタバタ

雪歩「あ、小鳥さんはここが弱いんですねぇ。要チェックですぅ」コチョコチョ

小鳥「はひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! お願いだからぁ! もう許してぇ!」

貴音「好奇心は身を滅ぼすということです。もう少し、このまま反省してもらいましょう」コチョコチョ

小鳥「プ、プ、プロデューサーさぁん! 助けてくださいぃ! うひぃいいいい!」ジタバタ

P「ふぅ……」

P(ま、何だかんだで千早も雪歩も貴音も、まだまだ子供ってことかな)

P「……俺も大人として、これからはもうちょいしっかりしないとな」

小鳥「カッコつけてないで助けてぇ! あひひひひひひひひぃ! 死ぬううううう!」

その後小鳥さんは、気絶寸前まで三人にくすぐられ続けましたとさ。



 ――おしまい

以上です

読んでくれた方々、ありがとうございました

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