灼「エバーグリーンズサポ?」哩「ああ」 (141)

全国大会団体戦終了後 東京の喫茶店

灼「白水さんに呼び出された」

灼「何の用だろ…。あ、この店だ」

カランカラン ラッシャーセー

哩「ああ、よう来た」

姫子「こんにちは」

灼「……どうも」

灼(白水さんと、大将の鶴田さん…だけど)

灼(…二人とも、なにあの服…?)

灼(新道寺の制服と違う緑のシャツ……ユニフォーム?)

灼「それで何の用ですか?」

哩「うん、その…。阿知賀は、いつ奈良に帰っと?」

灼「?」

哩「個人戦に誰も出らんって聞いたけん…もう東京に用のなか事なら、いつまでこっち居るつもりかと」

灼「……どういう意味ですか?負けたならさっさと帰れと?」ムッ

姫子「部長!そいな言い方せんと!そいぎケンカ売っとーごたる感じやなかですか!」ヒソヒソ

哩「えっ…そがんつもりじゃ…」

灼「…………」

姫子「あ、あの、だからね」

姫子「私ら、ハルちゃんの…、えっと、そちらの監督さんの、実業団リーグ時代の大ファンでね」

灼(…ハルちゃん?)ムムッ

姫子「もしよかったら…。帰る前に、一目でよかけん会わせてもらえたらと思って」

灼「それを、なぜ私に?」

哩「君が阿知賀の部長やろう?…それに」

灼「それに?」

哩「あん準決勝で気付くべきやったが…後でようやくわかった」

哩「君の打ち筋、ハルちゃんにそっくりやったね」

哩「そいも、相当昔の…高校の頃のハルちゃんに…」

哩「君も…相当なハルちゃんのファンなんじゃなかと…?」

灼(気安くハルちゃんハルちゃんって……)ムムム

灼「監督として尊敬はしていますが…。赤・土・先・生・のファンとか別にないです、そんなの」プイッ

哩「ただでとは言わん…お礼はするったい」

灼「お礼?」

哩「ハルちゃんのエバーグリーンズでの様子なんて、知らなかろ?」

灼「?」

哩「資料やグッズもたくさんあっけん…、当時の話、いろいろ聞かせたるよ」

灼「!」

哩「例えばこの試合ユニフォーム…」チラッ

灼(あ、やっぱその服なんだ…)

哩「試合会場だけで配っとったパンフレット… 応援グッズ…」

灼「!」

哩「サポーター会誌にしか載っとらん、当時の写真に牌譜にインタビュー…」

灼「!!」

哩「地元局でしか流れんやった、プレーオフのテレビ中継…」

灼「よくそんなもの東京に持って…」

姫子「阿知賀の監督がハルちゃんって聞いて…。急遽、寮に電話して送ってもろうてね」

哩「うん、今日のためにな」

灼「…………」

哩「興味あっとやろ?」

灼(うう…)

灼(どうしよ…)

灼(正直、凄く見たい…)

灼(実業団リーグのハルちゃんなんて、玄に聞くまで存在すら知らなかったし…)

灼(そこから私が探せたものといえば、ネットにあった最後のプレーオフの話くらい…)

灼(それ以前の話はさっぱり…ましてや写真や牌譜なんて全然…)

灼(実業団リーグの紹介なんて、麻雀雑誌でも多くな…というか、あると分かってたらちゃんと買ってたし)

灼(…………)

灼(でも…)

灼(なんか、負けたくない…)

哩「ほーれほれー、こんなん持っとらんやろ?ふっふーん」

灼「…ぐぬぬ」

姫子「…あの部長、あんまり煽ったりせんと…」ヒソヒソ

哩「?」


後ろの席

美子「あれ…調子乗りすぎやなかと?」ヒソヒソ

仁美「こげん自慢できる相手、いままでおらんやったけんね…」ヒソヒソ

煌「せっかくの、お仲間が増えるかもしれない機会!すばらな猛アピールです!」ヒソヒソ

哩「うっふっふ~、見たかろ~? 無理せんでよかよ~」

灼「………………」

哩「あっそうそう、このユニフォームは直筆サイン入りの限定版で~」

灼「………………」

哩「こっちのグッズはもう入手不可能やし~」

灼「………………」

姫子「…あの…部長…」オロオロ

灼「………………」


ぶちっ


姫子「ぶち?」

灼「……のネクタイ」

哩「?」

灼「このネクタイ!ハルちゃんがインターハイでしてたやつ!!」

哩「!」

灼「インターハイの後にもらって!10年ずっと大事にしてた!!」

哩「!!」

灼「毎日部活で麻雀指導してくれるし!私を信頼して部長にしてくれた!!」

哩「!!!」

灼「ホテルでも一緒の部屋に泊まってる!毎晩私が寝るまでそばにいてくれる!!」

哩「うっ…うぐぅ~」


美子「あれ…こっちも割とまずかね?」ヒソヒソ

仁美「そろそろ止めに入っか…」ヒソヒソ

煌「すばら!」ヒソヒソ

灼「あ、あと今日着てるのは…前にハルちゃんからもらったクマさんの…」ヌギヌギ

煌「ストーップ!それ以上いけない!」

灼「!?」

哩「花田…」

美子「はいはい、両方とも落ち着いてね」

灼「…新道寺の皆さん…。みんな同じ緑のユニフォーム…」

仁美「女の子が人前で服脱いだらいかんよ」

灼「……すみません、取り乱しました」

美子「まったく…、部長もなんばしよっとね?煽りに来たんじゃなかろーもん?」

哩「う…ごめん」

美子「驚かせてごめんね、鷺森さん」

仁美「うちの部長も本当に、悪気はなかとよ」

煌「そうです!ただひとえに、みんなで赤土さんにお会いしたいと思いまして!」

灼「…みんなで?」

姫子「そう!」

煌「私達みんな!」

全員「エバーグリーンズサポーター!」

哩「うむ!せーのっ」

煌「とーもにー走れー」

美子「たーたかーえハルーエー」

仁美「勝ー利ー目指しー」

姫子「緑ーのー勇ー者ー!」

全員「VAMOS!」シャキーン

灼「あ、あの、ここ喫茶店…」

―応援歌10曲くらい熱唱中―

煌「今日もーひとつーになってー!」

哩「追い求めろー、オレら!と!」

美子「九州ー、福岡のmahjongを!」

仁美「ゆけHAーRUーEー!」

哩「イェーイ!」パシン

姫子「イェーイ!」パシン

煌「イェーイ!」パシン

ピシガシグッグッ

灼「……帰っていいですか」

煌「ああっ!お待ちくださいませ!」

姫子「まずは話だけでも!ね?」

灼(……結局話を聞くことになった)

哩「安心してよかよ、悪い話はせん」

煌「ところでエバーグリーンズについては、どの程度ご存知で?」

灼「去年の末に消滅した、実業団リーグのチーム…というくらいしか」

煌「そう…消滅してしまいました…」

哩「せっかく何年もかけて…盛り上がってきて…」

姫子「あと一歩で、プロチームになれるはずやった……」

灼「……それは初耳……」


(※このSSでの話です)

哩「チーム自体はそのつもり…。あとはもう、プロリーグ参入ライセンスば取るだけやった」

灼「ライセンス?」

姫子「チームの経営状況とか成績とか、色々審査があってね」

哩「サッカーのJFLみたいなもん…。チームの意向と実績次第で、実業団チームからでも昇格できっとよ」

煌「成績は問題ありませんでした…。プレーオフ出場、それが昇格条件になっていたのです」

姫子「問題は…経営面…」

哩「親会社が…傾きさえしなければ…」グスン

灼「…それはちょっと聞いたことある…」

哩「親会社の傾いた理由は知っとーと?」

灼「社運をかけた新商品が失敗したとか、噂では…。でも詳しくは知らないです…」

美子「そう、新商品ね…」

仁美「それも、エバーグリーンズに乗っかろうとして作った関連製品たちが、軒並みな…」

灼「…一体何を」

煌「いろいろとあったんですが…、いくつかこちらに」スッ

灼「大きなバッグ…」

煌「よろしければ阿知賀の皆さんにもと、グッズや製品もいろいろ送っていただきました!」

灼「用意いいですね…」

哩「まずはこれ、公式ドリンクの自社製青汁『エバーグリーン汁』」

灼(あ、これダメなやつだ)

哩「こいが全然売れんやってな…。何が悪かったんか」

灼「…失礼ですけど、物凄くまずいとか…?」

姫子「味はなんてことない、普通の青汁とよ。普通にまずい」

灼「……まずいんだ」

仁美「もっと味が何とかなれば…私らも喜んで買ったが…」

美子「こればっかりは、さすがにね」

煌「それでも部長は毎朝、エバーグリーンズのためって言って泣きながら飲んでました!すばらです!」

哩「おかげで健康には自信あっとよ」キリッ

灼「……そっすか」

哩「食品部門ではこれ、ご当地グルメ『エバーグリーン明太子』」

灼「もう名前だけで嫌な予感が… まさか」

仁美「…そのまさか」

哩「唐辛子の代わりに青汁で漬け込んだ、緑色の明太子ぞ」

灼「…おえっぷ」

美子「試合会場で観戦しながら食べられる、ファストフード的アイテムのつもりが…」

哩「こいもまあ…、さっぱり売れんやったとよ」

灼「当然だと思…」

煌「ご賞味いただければよかったのですが…。なまものですから箱だけで申し訳ありません」

灼「…お気遣いなく」

哩「味もさることながら、緑色の明太子って外見どう見てもイモムs」

灼「言わないでください分かりますから」

哩「そいから一番の原因が…これ」スッ

灼「…化粧品?ですか?」

哩「業界初、わかめ由来の天然色素ば配合した緑色のヘアカラー『フォーエバーグリーン』たい」

灼「わ、わかめ…?」

哩「こいが、びっっくりするほど売れんやったと…」

灼(そりゃ、わかめじゃ……って、)

灼「…まさか、白水さんの髪って」

哩「こいは地毛ぞ」

灼「…はあ」

哩「そいが、そいが悔しかとよ…」

灼「?」

哩「私の地毛が緑でなければ…いくらでも買って染めることもできたばってん…」

哩「同じ色やったばっかりに…私が買っても意味が無い…」

灼(いや、そのりくつはおかし……)

哩「売れんやった責任、感じよったい…」

灼「別に同じ色でも…。同じ色の人こそ使えばいいっていうか…」

哩「?」

灼「たとえば将来、白髪染めに使うとか…」

哩「!!!」

灼(「それだ!」ていう顔をされた)

姫子「…でもね、緑ってだけならたぶん、ここまで売れんこともなかっとよ」

灼「?」

煌「ええ、原因は別に…。色のことよりわかめ成分から出る磯の香りが、まーそれはそれは不評でございまして」

灼「えっ」

姫子「ほら、嗅いでみる?」スッ

灼「くさっ!何これ!?」

姫子「あまりの臭いに時間が飛んだような感じがするって、一部のマニアにはウケとったんやけどね」

哩「よければ、鷺森も使わんか?生産終了してしまったけん、ここにある分しかなかばってんが」

灼「いえ、遠慮します」

哩「……そうか」ショボン

灼(…親会社の人たちって、バカなのかな?)

姫子「会社の方は「絶対売れる!」と自信満々やった様子ばってん…、結果は経営難で廃部の道」

煌「まあ、会社側の問題は我々が言っても仕方ないところですけどね」

煌「しかし、プロリーグに向けて支える気持ちは、皆さんとても盛り上がっておりました」

煌「有志が自主的に集まったりチームに働きかけたりして、色々と準備もしてたんですよ!」

哩「うん。例えば…クラブチームの定番、マスコットキャラのデザインとかな」

灼「マスコット?」

煌「企画段階で終わってしまったので、イラストしかございませんが…はいこちら」スッ

哩「こいが第一候補やった、アライグマのエバー君」

灼(あ、かわい…)

姫子「マスコットと一緒に応援したり記念撮影したり、プリントTシャツやぬいぐるみを売ったり…」

灼「楽しそう」

灼「私も…タヌキさんは嫌いじゃないです」

哩「あ、タヌキじゃなかよ、アライグマたい」

灼「?」

姫子「タヌキは…日本代表のあぐちゃん言う有名なんがおっけんね」

灼「はあ…」

哩「そこはちゃんとせんとな」

灼(あんまり変わらないと思…)

煌「で、もうひとつの候補がこっち…」スッ

哩「麻雀ロボットのエヴァ君たい」

灼「えっ」

灼「…ロボット?」

哩「ロボットぞ」

灼「いや、これってどう見てもあのアニメの…」

哩「ロボットぞ」

灼「人型兵器とか、もっとこう言い方が…」

哩「そいな言い出したら偉い人に怒られっやろーが…」

灼「…そうですけど」

哩「だけん、こいばただのロボットぞ。人型なんちゃらとか、なんちゃらゲリオンとか関係なか」

灼「…ゲリオンとは誰も言ってな…」

哩「で、こん二つで意見が割れてな…」

美子「アライグマはあぐちゃんと被るやろ、っていう派閥と…」

仁美「被る言うならエヴァ君こそやろ、っていう派閥に分かれて… それはもう大激論が…」

灼(ふ、不毛…)

姫子「ま、今となってはもう詮無い争いやけどね」

哩「ああ…なんもかもエバーグリーンズが…」

灼「…………」

哩「…ちなみに、どっちがよかとね?」

灼「……アライグマさんがいいです」

灼「でも…潰れたクラブなのに、これだけデザインができてるなんて凄…」

姫子「プロデザイナーの人が熱心なファンで…、ブレーンになっていろいろ協力してくれったと…」

煌「ザキヤマナビスコ杯って大きな麻雀大会、ご存知ですか?あれのマスコットのリッツさん等も作られた有名人です」

灼「ナビスコのリッツ…。ああ、あのお菓子の」

哩「鷺森!」ガタッ

煌「いけません!」ガタッ

灼「!?」ビクッ

煌「リッツさん、です!さん付けをお忘れなく!そこはお願いします!!」

灼「は、はあ…」

姫子「リッツさんは…そいだけは丁重に扱わんばらん…」

哩「ないがしろにしたら…こん世界が終わっとよ…」

灼「世界って…」

……

煌「…と、まあ大体こんなところですね」

姫子「うん」

哩「そいぎ、最初のお願いに戻っけど…。なんとか一目、赤土さんに…」

灼(うーん…)

灼(いろいろ見せてもらったし…悪い人たちではないのかな…)

灼「…わかりました」

哩「よかと!?」パァァ

煌「よかったですね!部長!」

移動中

哩「うふふ…」スキップスキップ

哩「はーるちゃんGo! はーるちゃんGo!」

哩「いーかした和了見せてくれー」

哩「ふんふふーん」ニコニコ

煌「ノリノリですね部長!」

灼(……やっぱわずらわし)

阿知賀女子宿泊ホテル 晴絵の部屋の前

灼「多分、部屋にいると思います」

哩「ま、待って…まだ心の準備が…」ドキドキ

煌「部長…大丈夫ですか?」

哩「だ、大丈夫ですよ?ご心配なさらずに?」

煌(部長…私に向かって敬語とか…)

姫子(全然大丈夫じゃなかと…)

灼(さっきまで元気だったのに…)

煌「はい部長、深呼吸です!吸ってー吐いてー」スーハー

哩「…スーハースーハー…ヒッヒッフー…」

灼「…入りますよ?」

哩「えっと…もう少し…」グズグズ

美子「あ……ねえ、後ろ」チョイチョイ

仁美「? …あっ」

晴絵「おう灼、帰ってたのか」

灼「あ、ハルちゃん」

煌「えっ?」

哩「!!!」

晴絵「それと何だ…新道寺…?お客さんか?」

哩(あ……)

哩(は………)

哩(ハルちゃんだーーーーーーーー`@ω@´ーーーーーーーー!!!!!!)

フラッ

バターン!!

姫子「ぶちょーーー!!!!」

憧「どしたのハルエ?」

穏乃「何か凄い叫び声が…って、あれ?新道寺の人たち?」

玄「大変!人が倒れてるよ!」

灼「あ、みんな…」

仁美「まずかね…このままじゃ人目につくとよ」

煌「と、とにかく部長を安静に!」

姫子「あの、すみません!こちらのお部屋で介抱させてもろうてよかですか!?」

晴絵「あ、ああ…」

ホテルの部屋 全員集合

煌「…というわけでございまして!わが福岡のスター、赤土選手にお会いしたいと!」

穏乃「スターだってー!」

晴絵「ハハハ…照れるな…」

姫子「でも…、一番会いたがってた人が…」チラッ

哩「…………」(気絶中)

晴絵「まあ、目が覚めるまでゆっくりしてきなよ」

煌「ありがとうございます!ではその間に…」ガサゴソ

憧「?」

煌「せっかくですから、阿知賀の皆様にも色々見ていただきましょう!グッズもお話も豊富に揃ってございますよ!」

宥「わぁー」

玄「楽しそー」

煌「まずはこちら!サイン入りユニフォームでございます!」バッ

阿知賀「おおー」

晴絵「ハハ…懐かしいものを…」

ワイワイキャッキャッ

……

煌「こちらが当時のパンフレットにファンブック…」

玄「わぁー」

……

煌「…で、こちらの牌譜!この跳満がとてもすばらなのです!」

憧「ふむふむ」

……

煌「そしてこちらのDVD!プレーオフのテレビ中継です!」

穏乃「わー見たい見たい!」

―DVD上映中―

晴絵『……ツモ! 2000・4000でー!!』

オオー スゴーイ

……

仁美「…隣、よかと?」

灼「あ、はい…」

仁美「今日はすまんやったね、突然無理言って押しかけて」

灼「いえ…。それより、肝心の白水さんが倒れちゃって…」

仁美「あいつああ見えて、テンパると全然ダメな子なんぞ」

灼「…そうなんですか」

仁美「全く、困った部長ったい」チュー

灼「…あの、白水さんってどうしてあんなに…?」

仁美「…ああ」

仁美「入学したばっかりの頃な…、あいつ、ちょっと周りから浮いとったと」

灼「…白水さんが…」

仁美「新道寺は福岡やけど…あいつ中学は佐賀なんよ」

仁美「一年のときは姫子もおらんやったし、うちの学年で県外もんは一人やった」

仁美「隣の県とはいえ、よそものはよそもの…。それだけで、距離ば置かれとるような雰囲気もあって」

仁美「うちにはインターミドルの福岡代表もおったけん、特にそんなんとは折り合いがようなかったんよ」

仁美「……そんな中で、エバーグリーンズと出会った」

仁美「あいつと同じ、アウェーの中で戦ってる赤土さんと…」

灼「ハルちゃんがアウェー…?」

仁美「……『あの準決勝』は、見たことあっと?」

灼「?」

仁美「十年前のインターハイ…」

仁美「高校時代の小鍛治プロと瑞原プロ…それに、赤土さんとうちの理沙先輩がぶつかり合った、伝説のインハイ準決勝」

仁美「…あ、理沙先輩って野依プロな」

灼「…はい、テレビで見てました…」

仁美「新道寺じゃ今でも語り継がれる伝説…。牌譜的にも凄く参考になっけん、毎年上映会もやりよっと」

灼「…そんなに有名だったんだ」

仁美「…でも、悪いけどうちでは、赤土さんの印象は決して良いもんじゃなかっと」

灼「えっ」

仁美「言っても負けた側の人やったし、新道寺ん中じゃOGの理沙先輩の肩持つんが当然…」

仁美「赤土さんは、敵方の人って扱いやった」

灼「…………」

仁美「まして、その敵方の応援するんは新道寺じゃ異端もの…」

仁美「エバーグリーンズに来た赤土さんのことも…」

仁美「うちの部ん中じゃ、むしろ歓迎せん部員の方が多かっとよ」

灼「…………」

仁美「…それでも、赤土さんは福岡で頑張ってた」

灼「!」

仁美「まあ、たかだか高校生ファンの心象なんぞ気にしちゃおらんやったやろうけどね」

灼「…………」

仁美「あいつはそげな赤土さんと自分を重ね合わせてた」

仁美「周りに身内が誰もおらん中で…」

仁美「それどころか、あまりよく思われとらんと知ってて頑張ってる姿…。」

仁美「たぶん、自分もそうなりたくて…。あいつはあの人に…」

仁美「エバーグリーンズのハルちゃんに、あこがれるようになったんよ」

仁美「始まりは、二人であいつを試合観戦に誘ったんがきっかけ」

美子「うん」

仁美「…美子が孤立しとったあいつを見かねてな」

美子「その時は、ただ仲良くしようって思って…。こんなに続くとは思わなかったね」

仁美「本当、あんなにハマりよるとはねえ」

美子「びっくりやったね。…でも本当によかった」

仁美「それから、心を開いてくるようにもなって…、私らとも話すようになった」

美子「うん。そこから私らも協力してね」

灼「協力?」

美子「みんなで赤土さんを応援しようって言い出してね」

仁美「寮の食堂にポスター貼ったり…、試合中継の入るケーブルテレビを入れてもらえるようお願いしたり…」

美子「他の部員も誘って応援行ったり、グッズ買ってきて配ったり。いろいろしたね、本当に」

仁美「うん。それでだんだん、否定してた奴らも認めるようになってきた」

仁美「赤土さんだけでなく…あいつのこともな」

灼「…………」

仁美「そんなこんなが積み重なって…、いまの新道寺はすっかりあげな感じ」

煌「じゃじゃーん!こちらがプレーオフ表彰式の記念写真でございます!」

阿知賀「おおー!!」

仁美「県外もんをよそもの言う空気もなくなって…。あの通り、全員揃ってエバーグリーンズファンたい」

灼「でも、よくそこまで皆ついてきて…」

美子「部長は頑張ってたよ、応援も部活も人間関係も。みんなそこを分かってたから」

美子「それに、赤土さんの活躍でエバーグリーンズが勝ててるのも事実やったしね」

仁美「赤土さんには全く知る由もなか話ばってん……」

仁美「結果的に赤土さんのおかげで…、あいつ自身も新道寺も、よか方向に変わってった」

仁美「ここだけの話、友達としても、赤土さんには感謝しとーとよ」

灼「江崎さん……」

仁美「………あいつには内緒な」

美子「…本当に素直じゃなかね、中学福岡代表さんは」

仁美「…ふん、昔の話ったい」チュー

美子(素直じゃなか事は相変わらず…。でも、変わったんはあんたもよ、仁美)

灼(…なんか、いいな…。この3人…)

灼(凄く気持ちが通じ合ってる感じがする…。いい友達さんだ…)

仁美「ただ、私のドリンクの中身を青汁にしようとしたんだけは…全力で拒否させてもらったが」

美子「あれは本当にねー、どっちか退学するかって程の大喧嘩やったよねー」

灼(……前言撤回)

仁美「あ、最後はマスカットジュースで妥協させたけん、問題なかよ」

灼「そ、そうですか…」

哩「うーん…、はっ?」

美子「あ、部長起きたよ」

姫子「よかった…部長…」

哩「あれ…ここは…?」

煌「阿知賀の皆様のお部屋でございます…。落ち着かれましたか?」

哩「あ、うん…あいがと」

煌「さあ、存分にお話を!」

哩「うん……」ドキドキ

煌(部長、がんばって!)

哩「あ、あのっ!えっと!」

晴絵「…いいから、落ち着いて喋りなよ」

哩「と、とても好きでした!ずっと、大好きでした!!」

煌(部長…その言い方は…)

憧(愛の告白じゃないんだから…)

灼「………」イラッ

姫子「………」イラッ

哩「あの!いろいろと!試合観に行ったり!グッズ買ったりして!」

晴絵「ああ…見せてもらったよ」

哩「たくさん応援してました!かっこよかったです!」

晴絵(…………)

晴絵(あの頃は…まだ麻雀にまっすぐ向き合うこともできず…)

晴絵(ただ、目の前のことに必死だったかな…)

晴絵(はっきりと目標とか持ってたわけじゃないし…そんな立派なもんだったともわからない…)

晴絵(だから申し訳ない感じもするけど……それでも、)

晴絵(そんな私でもこうやって見てくれた子がいるってことは…)

晴絵(素直に嬉しいね)

晴絵「…ありがとう、嬉しいよ」ニコッ

哩「!!」パァァ

哩「…あの、そいでひとつ、聞きたかったことが…」

晴絵「何?」

哩「…福岡には、もう来んとですか…?」

灼「!」

晴絵(……うーん……)

晴絵(小鍛治プロの前では「私もプロを目指します!」とか大見得切っちゃったけど…)

晴絵(冷静に現状、そっち方面にはまったくもって……無い内定どころかツテすら無いのよね…)

晴絵(トシさんの誘いも断っちゃったし…そのことは別に後悔もしてないけど…)

晴絵(ちょっとこの状況で迂闊なことは言えないな…)

哩「…………」ドキドキ

晴絵「先のことは…ちょっとわかんないな…」

哩「そう、ですか………」ショボン

美子の携帯「ピロリロリン 17時をお知らせします」

美子「あっ…、ねえ、部長」

哩「ん?」

美子「そろそろ門限の時間よ」

哩「えっ…まだろくに話して…」

晴絵「ん?どうした?」

煌「申し訳ありません、そろそろおいとまするお時間に…」

晴絵「お、もうそんな時間か」

哩「でも…でも…」

仁美「あんまり遅いとこちらも迷惑とよ。私らだって門限破りは厳禁たい」

晴絵「ま、個人戦も見学しようと思ってるから、まだ何日かはこっちにいるよ。また会えるさ」

哩「……はい……」

煌「本日はありがとうございました!」

穏乃「こちらこそ!楽しかったです!」

煌「では、最後に部長!ご挨拶を!」

哩「あ、うん…えっと…あの…」

煌(部長…がんばって!)

姫子(部長……)

美子(…………)

仁美(…………)

哩「あの……ふ……」

 



哩「――福岡も楽しいよ!またおいで!!」



 

煌( ゚д゚)

姫子( ゚д゚)

阿知賀「?」

仁美( ゚д゚)

美子( ゚д゚)

晴絵「??」

哩「…………(><)…………」

新道寺(゚д゚)

晴絵「…………」

フフッ

晴絵「…おう!いつかな!」


カン

その夜

晴絵「どした、灼?もう寝るよ?」

灼「うん…。昼間のこと、思い出してた」

晴絵「?」

灼「今日は、なんだかびっくりだった」

灼「まだまだ、私の知らないハルちゃんがいっぱいいて…」

灼「私の知らない、ハルちゃんを好きな人もいっぱいいた」

灼「白水さん…本当に好きなんだな、って」

晴絵「フフッ、人気者はつらいな!」

灼「最後に…白水さんに言ったこと…」

晴絵「ん?」

灼「福岡、行くの…? エバーグリーンズでプロに…」

晴絵「うーん…」

晴絵「現実問題、あの親会社がまた福岡でチーム作るってのは難しいかな…」

晴絵「別の形でチームができたとしても、即プロチームってのは無理だと思うし…」

晴絵「私がそこに居るかはもっとわかんないな」

灼「でも…白水さんと約束した…」

晴絵「……「いつか」って言ったさ」

灼「?」

晴絵「今回、詳しい時と状況の指定まではしていない…」

晴絵「つまり…その気になれば10年20年後ということも可能だろう…ということ……」

灼「…………」

晴絵「……それにエバーグリーンズって形じゃなくてもさ、」

晴絵「例えば敵方として出向いたって、別の仕事だって、観光だって…。福岡に行くなら、間違いじゃないしな!」

灼「……ずるい」

晴絵「大人はずるいものさ」

晴絵「…ま、今のは半分冗談だけど、冗談だけで言ったわけじゃないよ」

灼「?」

晴絵「今はまだね、鬼が笑うくらい先の話かなっていうだけさ」

灼「…………」

晴絵「…………」

灼「…迷ってるの?」

晴絵「ん?」

灼「私たちがいるからプロになるのを迷ってるなら……遠慮とかしないで……」

灼「私はやっぱり…ハルちゃんが麻雀打ってる姿を、見たいから…」

灼「決勝戦が終わってから、ずっと考えてた」

灼「やっぱり…優勝してたら、何も心残りなくプロを目指してた…?」

晴絵「…バカ言うなよ」

晴絵「アンタ達には本当に感謝してるんだ」

晴絵「先のことは……これからよく考えるから大丈夫。心配しなくていいよ」

晴絵「決勝はみんなよくやったよ… ありがとう、部長」

灼「…ハルちゃん…」

晴絵「じゃ、おやすみ」

灼「…おやすみ」

……

灼「もう、寝た…?」

晴絵「…………」

灼「…………」

灼「みどりーのーゆーうーしゃー…」ボソッ

灼「…………」

灼「……かっこいいな……」

灼「いつか… 私も…」


もいっこカン

おわりです 読んでくれた人ありがとう
またどこかのスレで~

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