白望「チョコ作りたいから手伝って」塞「」(70)

盛大に遅刻した



白望「よければ明日、私の家で」

塞「え、ちょ、ちょいタンマ」

白望「都合悪い?」

塞「いや悪くはないけれども…え、チョコ? シロが?」

白望「うん」

塞「それってまさかあれ? バレンタインデーの?」

白望「うん」

塞「えー、うわー、マジか、シロが、うわー…」

白望「さすがにそこまでうわーうわー言われると傷つくんだけど」

塞「だってさー、シロがさー、うわー」

白望「…わざと言ってる?」

塞「いや、わざとじゃないけれども、うわーとしか言いようがないわ」

塞「だってシロがバレンタインチョコって…うわーうわーこれは夢だわきっと」

白望「…」ツネリ

塞「いたい。夢じゃないのかうわー」

白望「…それで、手伝ってくれるの、くれないの」

塞「あー、うん、手伝うよ手伝う」

白望「ん、ありがと。材料はこっちで用意しとくから、手ぶらでいいよ」

塞「ん、わかった」

白望「じゃあ、また明日」

塞「はいはいばいばい」



塞「…うわー、マジか、うわー…」

塞「シロも女の子だもんね」

塞「18にもなればバレンタインにチョコ渡す人の一人や二人いるよねー、あはは」

塞「…それで、私にチョコ作りの相談ってことは、ほぼ100%相手は私じゃないってわけで」

塞「あーいや何言ってんだろ私、そもそも同性じゃない。チョコとかないない」

塞「シロは毎年女の子から貰ってるけど、まぁあれは例外よね」

塞「……っあー…、あー…、あー…」

塞「…なんで断らなかったんだろ」

塞「あーあ…」

塞「大体さーシロもさー、チョコ作り手伝わせるって何なのさー」

塞「本命ならいちから自分で作るべきだよねー」

塞「まずいの出して嫌われたくないとか?」

塞「意外と小心者なんだねーシロも。」

塞「……はぁ」

塞「毎年渡せず仕舞いの私が、小心者とか言う権利ないか」

塞「…今年は作る手間が省けた分、マシかもね」

塞「あはははは……はは……は」

塞「……ぐすっ」

翌朝


塞「あー、朝になっちゃったかー」

塞「やだなーいきたくないなー」

塞「…開き直って、タバスコでも仕込んじゃおうか」

塞「…なんてね」

塞「…いこ」



塞「シロー、来たよ」

白望「うん、ありがと、あがって」

塞「おじゃましまーす」

白望「じゃあ、塞はそっちお願い」

塞「うん。…うん?」

塞(なんだろう、この、”チョコレートの山”という表現が比喩にならない量は)

塞(シロの好きな人は大変な大食漢なんだろうか…)

塞(いやいやいやいや、どう考えても人間の胃袋の容積超えてるよこれ)

塞(え? マジでなにこれ?)

白望「湯せんで溶かして型に流して、出来たの片っ端から冷蔵庫に突っ込んで」

白望「冷蔵庫がいっぱいになったら二階のも使って」

塞「え?うん。…ええ?」

塞「ちょ、ちょっと待ってくださいよシロさん」

白望「なに?」

塞「ちょっと、私が想像してたのと状況がだいぶ違うんですけれども」

白望「?」

塞「私としてはさ、それはもうバレンタインにふさわしい彩色凝ったチョコレートを作るのを手伝わされると思っていたんですよ」

白望「いや、そういうのなら自分で作るし…」

塞「え?じゃあなんで私いるの?」

白望「手伝ってもらうためだけど」

塞「えー?」

塞「…ひょっとして、ひょっとしてだけどさぁ」

塞「チョコ作りの手伝いって、本命チョコじゃなくて、義理チョコ量産の手伝い…だったりする?」

白望「うん」

白望「…毎年さ、たくさんの人が、私にチョコくれるじゃない」

塞「…うん」

白望「でも、私はそのお返しとか、一度もしたことなかったんだよね」

塞(相手がシロだと、渡す側はお返しなんて考えてもないと思うけどなぁ…)

白望「だから、ダルいけど、今年は私からも…って思って」

塞「それで、この量か…」

白望「うん。一応、今まで貰ったプレゼントの包装とかは取ってあったから、わかる範囲で全部」

白望「もう、県外に行っちゃった先輩とかには、さすがに無理だけど」

塞(ふむ、つまり)

塞(…つまり、全部私の勘違いかぁ…)

塞「ふ…ふふふ…」

白望「塞?」

塞「あーっはっはっはっはっはっはっは!」

塞「ははははははは!」

白望「ちょ、ワライダケでも食べた?」

塞「いやいやいや、ひいーっ、ひーっ、あはは…おーけーおーけー、よっしゃ、手伝うわ」

塞「あー、でも、やっぱこういうのはシロが作ったほうがいいんじゃ?」

白望「うん、最初はそう思って、一人で作ってたんだけど」

塞「うん」

白望「これリスト」

塞「…………」

白望「半分ほど作ったあたりで炎症起こしかけた」

塞「ああ…」

塞「…下手すると今日中には終わらないかもね」

白望「こないだは同じ量を1日かけてやったから…今日は塞もいるし、大丈夫」

塞「だといいけど…」

白望「それじゃあ頑張ろう」

塞「おー…」

>>21誤字ってた
○装飾
×彩色

塞「…ねえシロ」

白望「…んー?」

塞「本命チョコは、作らないの?」

白望「……内緒」

塞「えーっ、こんなに尽くしてあげてんのに! 教えなさいよ!」

白望「やだ」

塞「けち!」

白望「塞のほうは、どうなの」

塞「え、私?」

白望「うん」

塞「私は、うーん…」

塞「渡すかもしれないし、渡さないかもしれない」

白望「…作りはするんだ」

塞「…変なところで鋭いよねシロって」

塞「毎年さ」

塞「作ってるんだよね、本命チョコ」

塞「でもさ、本命がさ、それはモテるのなんのって」

塞「いざ渡しに行こうとするとさ、囲まれてんのよ、チョコに」

塞「しかも、女子力とか、本気度とか、そういうのがすんごい滲み出てるのそのチョコ陣」

塞「まるで結界」

塞「結局、ビビって渡せず仕舞い」

塞「笑えてくるわ。自分の臆病さに」

塞「シロも笑っていいわよあはは」

白望「……へえ」

塞「いや、ギャグっぽく流してよそこは」

塞「ちょっと恥ずかしいじゃない」

白望「塞の本命は――」

塞「ん?」

白望「……ちょいタンマ」

白望「んー……」

白望「…やっぱいいわ」

塞「ちょ、そこで切らないでよ、超気になるんだけど」

白望「気にしないで」

塞「えー、ちょっと、もうちょっとこう、私に配慮してよ」

白望「どうせ、すぐにはっきりするし」

塞「え? なんか言った?」

白望「なんでも」

塞「そう…って、いつの間にかもう夜じゃない」

塞「このままじゃバレンタイン間に合わないわよ」

白望「ん、頑張ろう」




塞「終わったー!!」

白望「疲れた…」

塞「もう二度と手伝わないからね…」

白望「もう二度とやらないよ」

白望「……今年のは、けじめだから」

塞「?」

白望「一人で作りきれなかったって言うのは、半分は口実」

塞「はァ?」

白望「どうにか0時まで、塞を手の届く範囲に縛っておきたかった」


白望「バレンタインデーに一番に、本命――塞にチョコレートを渡すために」


塞「え」

白望「ハッピーバレンタイン、塞」

塞「っは、はは、シロ、どうしてくれんのさ」

塞「シロのせいで、本命チョコ、作れなかったじゃない」

白望「…ごめん」

塞「しょうがないから、ちょっと貰うよ」

白望「…?」

塞「シロのチョコだから、味見して、飽きちゃってるかもしれないけど…」パク

塞「…」チュ

白望「…っ…!」

塞「…私からも、ハッピーバレンタイン」

白望「…両思い、かな」

塞「そうだね……ひぐっ」

白望「…塞?」

塞「あーっ、あーっ、ぐすぐすっ」

白望「どうしたの?」

塞「もーっ、ずーーーーっと不安だったのよーこのこの!」ポカポカ

白望「…いたい」

塞「もっとさーモテなくなりなさいよーもーっ!」

白望「そんな理不尽な…」

白望「今年からは、ちゃんと断るから…」

塞「うんうん、そうしなさい」

白望「「塞に悪いから」って言って」

塞「やめて刺される」

白望「冗談だよ」

塞「交際初日で刃傷沙汰とか洒落にならないからね」

白望「さて、これからが大変だね」

塞「うん?」

白望「このリストの全員にチョコ渡しにいかないと」

塞「あー、そうか、その作業があった…」

塞「こればっかりは着いていっちゃ駄目だよねぇ」

白望「うん、それじゃあ行ってくる」

塞「いってらっしゃい。刺されないようにね」

白望「縁起でもない…」

白望「チョコの材料は十分あまってるはずだから」

塞「え?」

白望「道具の位置も覚えたよね」

塞「うん?」

白望「期待してるよ。…行ってきます」

塞「え、どういう…」

塞「……あー、そういうことね、抜け目ないなぁ」

塞「道具よし、材料よし、…あ、愛情よし」

塞「…は、はずかし…。…いやいやなんで誰も見てないのに照れてるのさ」

塞「数年分の思いが詰まった本命チョコ、しっかり味わってもらわないと」

塞「よし、一丁頑張りますか!」



カン!

書いたの久しぶりすぎて塞さんの口調に違和感あるかも…

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