カイジ「765プロ・・・・?」(266)

カイジ「ふざけるな・・・・っ!誰が乗るか・・!そんなわけのわからねぇ船・・っ!幽霊船に・・・・っ!」

遠藤「おまえのために言ってやってるんだがな・・・・」

カイジ「うるせえっ・・・!帰るぞっ!帰る・・・っ!オレは・・・・!」

遠藤「そうか、なら無理にとは言わんが・・・・チマチマ働いて返すんだな、何年もかけて・・・・」

カイジ「言われなくてもそうするさ・・!じゃあな・・・・遠藤・・!」

遠藤「これがオレの連絡先だ、乗りたくなったらいつでもかけてこい」

カイジ「いるかよ・・・・っ!こんなもん・・!」

バタン

カイジ「なんだよエスポワールって・・・・薄気味の悪い・・」

カイジ「・・・・・・はぁ~、でも・・どうやって返すんだよ・・?こんな大金・・・・?」

高木「おぉ?あの若者は…む、ティンときた!」

高木「おぉい、君ぃ!あー、そこで途方に暮れている君だよ!君!」

カイジ「あぁ・・?なんだ・・?おっさん・・・・オレはイタズラなんて何も・・」

高木「君、ウチにきてプロデューサーになってみないかね?」

カイジ「はぁ・・?なんだって・・?」

カイジ(なんだ・・?こいつ・・・・?全身真っ黒じゃねえか・・・・・!怪しいにも程があるってもんだ・・・!)

高木「いやぁ、実はわが765プロはちょっとしたピンチに陥っていてね」

高木「そこで、有能な人材を私みずから探していたところ、ただならぬ気配を発していた君を見つけた、というわけだよ」

カイジ(くそ・・っ!こいつもだ・・・・!)

カイジ(どいつもこいつも、ロクに仕事もせずブラブラしてるだけのオレをゴミかそこらの石コロみたいにしか思ってねえ・・!)

カイジ(・・っざけんな・・!ざけんなよ・・っ!あっていいのかよ・・・・っ!こんなこと・・っ!)ポロポロ

ざわ・・ざわ・・

カイジ(・・・・っいや・・まて・・まてまてまて・・・・?)

カイジ(これは・・!ひょっとすると・・・オレにとってまたとないチャンスなんじゃないのか・・・・?)

カイジ「・・おい、おっさん・・・・!」

カイジ「その仕事・・・・!報酬、というか・・その、給与はどのくらいなんだ・・・?」

高木「んほぉお!その気になってくれたのかね、君ぃ!ではこうしちゃいられない、すぐに事務所に来てくれたまえ!」

カイジ「あっ・・!おい・・!まだ話は・・・・!」

ガラッ

小鳥「おかえりなさい社長…あれ?そちらの方は?」

高木「おぉ、ただいま音無君。この人は今日からウチで働くことになった、伊藤開司君だ。仲良くしてくれたまえ」

カイジ「おい・・っ!オレはまだ・・・・!」

小鳥「うぇえ!?と、突然すぎますよ社長!そういうことは前もってですね…」

小鳥「え、えぇと…とにかく私、事務などをしております、音無小鳥と申します!おたがい大変ですが、どうぞよろしくお願いします!」

小鳥(なんだか覇気のない人ね…大丈夫かしら?)

高木「た、大変とはどういう意味だね音無君!?」

小鳥「そのままの意味です!もう…いきなり外に出ていったと思ったら、突然新しいプロデューサーの方を連れてきたり…」

高木「いやぁ、スマンスマン…あまりに変わった若者だったもんでな、つい…」

小鳥「つい、じゃありません!」

ハハハハ…

カイジ(うえぇ~~~~っ・・・・・・こんな雰囲気たまんねーーーーっ)

カイジ(こんな・・・・!頭の中が花畑みたいな連中と一緒に仕事なんてできるか・・っ!)

カイジ(くだらねえ・・・・っ!やめだ・・・・っ!やめ・・っ!何かもっと別の・・・!)

カイジ「あの~、オレ・・・・もう帰っ」

高木「ではカイジ君、君がプロデュースするアイドルを選んでもらおう」

カイジ(まただ・・っ!この野郎・・・・!まともに人の話も聞かず・・・!)

カイジ(そのくせ自分の与太話にはなんの躊躇いもなく引きずり込む・・っ!否が応・・・!こっちの気も知らずに・・・っ!)

カイジ(悪魔だ・・っ!てめえは・・・っ!まごうことなき悪魔・・・・っ!)

カイジ(心の深奥まで真っ黒な・・!悪魔・・・!ちくしょう・・っ!)ポロポロ

高木「あぁ、重要なことを言い忘れていた。君のユニットにはIU(アイドルアルティメイト)での優勝を目指してもらう」

カイジ「アイ・・・なに・・?それ・・・?」

高木「なんだ、知らないのかね?音無君、説明をたのむ」

小鳥「はい。カイジさん、よく聞いてくださいね」

~~~~~

カイジ「なんだと・・・?って、ことは・・・つまり・・そのIUで優勝すれば、大金がもらえるっ、てこと・・・・?」

ざわ・・ざわ・・

高木「う、うむ。まあ、そういうことになるな」

小鳥(お金の話になると目つきが変わった…?さっきまでは、死んだ魚のような目をしてたのに…)

カイジ(これだ・・っ!これしかねえ・・・っ!一発逆転・・!千載一遇・・!這い上がりのチャンス・・・っ!)

カイジ(まさに神がもたらした僥倖・・っ!一縷の希望・・・!光・・・っ!)

カイジ「やってやるよ・・っ!アイドルプロデュース・・・・っ!」

高木「実にいい面構えだ!では早速、この中から数人のアイドルを選んで、その子達でユニットを組んでもらう」

カイジ(うっ・・・・!)

ざわ・・ざわ・・

カイジ(あっ・・!しまった・・・!もしかして・・・・とんでもない思い違いをしていたんじゃないのか・・?オレは・・・・・・・!)

カイジ(いや・・・・!本当は気付いていた・・!心のどこかで・・っ!なのに気付けない・・気付かないフリをしていたっ・・!)

カイジ(オレがやるのは・・・あくまでプロデュース・・っ!アイドルじゃねえ・・・・っ!)

カイジ(ぐっ・・!なんだよ・・?なんだよこれ・・?)

カイジ(結局舞台の上で歌って踊って、勝敗の鍵を握るのはアイドル・・!他人じゃねえか・・・・っ!)

カイジ(結局のところ、最終的な勝ち負けはアイドルの成否で決まる・・・?)

カイジ(オレがいくら・・っ!いくらプロデューサーとして・・・・・死力を尽くした所でっ・・・・!)

カイジ(ふざけるな・・・っ!オレがいくら骨を折っても・・アイドルが負ければそこで終わり・・・・?)

カイジ(それはつまり・・・・・・・・・『人任せ』・・ってこと・・・?)

カイジ(あああ・・・っ?)

ぐにゃあ~

カイジ(もはや狂気・・・!狂人の蛮行・・・・・っ!)

カイジ(できるか・・っ!そんなこと・・!荒れ狂う奔流に身を任せるかのような暴挙・・・・っ!)

カイジ「正気の沙汰じゃねえ・・!できるかよっ・・!こんなもん・・っ!」

高木「どっ、どうしたというんだね!?さっきはあんなにやる気になっていたというのに!」

カイジ「あんまり人を舐めるな・・・!悪魔が・・っ!」

小鳥「まあまあ、そう仰らずに、アイドルの子達のプロフィールを見てみてください。きっとプロデュースしたくなりますよ」

小鳥(なんだかすごく面倒臭そうな人ね…本当に大丈夫かしら)

カイジ「ぐっ・・っわかったよ・・!見りゃあいいんだろ見りゃ・・・!」

諦念・・!カイジ・・敗北する・・・っ!悪魔に・・・!

カイジ「これか・・プロフィール・・・・・!」

カイジ(うっ・・・・!)

まさに閃光――――・・・・電流がカイジの脳を駆け巡る・・!

カイジ(なんだっ・・・・!これ・・・っ!)

ざわ・・ざわ・・

カイジ(かわいい・・・・っ!それも・・・!とびきりっ・・・・・・!したい・・・っ!プロデュース・・・・!)

高木「ど、どうだね?やっぱりプロデュースする気になっただろう?」

カイジ「黙ってろ・・!おまえは・・っ!」

高木「う、うむ…」

カイジ(よく考えてみれば・・オレに他の手なんて残されていなかったんじゃなかったのか・・・・?)

カイジ(だからこそオレは・・・この事務所を最後のチャンスだと確信し・・・いや、そうだと信じてここへ来た・・・!)

カイジ(だったら・・!やる以外の手はねぇじゃねえか・・・っ!プロデュース・・・・っ!)

稚拙・・・・!あまりに稚拙な・・・!本心への抵抗・・・・!幼稚な反駁・・・っ!

目の前の悪魔に・・色香という武器で負けたことへの言い訳・・・・欲求から身を隠す・・・!論理の隠れ蓑・・!

本来『論理』とは・・・・あくまで判断を決定する要素の一つにすぎない・・・・!

しかしカイジはそれを・・!自らの行動を正当化するための理由として使ったのだ・・・・!

許されざる使用法・・・!論理の濫用・・っ!理屈への責任転嫁・・・・・!しかしっ・・・!

ともあれカイジは・・・・手にした・・!自らを騙し・・謀り・・・奮い立たせるに足る十分な言い訳・・理由を・・・・!

カイジ(問題は・・・・どいつをプロデュースするか・・?ってこと・・・)

カイジ(これは『ユニット』・・・っ!組み合わせは何通りも存在する・・っ!それこそ数限りなく・・・!)

カイジ(選択肢は・・・・10・・・・っ!10人の中から選べ・・・ってことになる・・・・!)

カイジ(選ぶ・・・!選・・)

ざわ・・ざわ・・

カイジ(っ・・!選べるかよ・・っ!こんなもん・・・!まともな神経でっ・・!)

カイジ(それって・・!前と同じ・・ってことだろ・・・?オレが選ばなかった奴は・・・・?)

カイジ(パッとしない・・・・生きてるのか・・死んでるのかさえわからない・・オレが来る以前の活動と変わらぬまま・・・・っ!)

カイジ(あいつ・・!悪魔なんてもんじゃねえっ・・!おどけた顔して・・・!権化だ・・っ!悪の権化・・・・っ!とんだ極悪・・!)

カイジ(ぐっ・・!ぐっ・・!どうしてだ・・?どうして喰い物にされる・・?オレ達は・・!いつもいつも・・・!)ポロポロ

――カイジ・・号泣・・・・!

憤怒・・!共感・・・!怨嗟・・!同情・・!るつぼ・・・っ!感情のるつぼ・・・っ!結果・・・・・・

号泣っ・・・!止まらない・・・!涙・・・・!零れ落ちる・・・・・っ!

カイジ「うっ・・!ぐぐぐ・・・っ!」

高木「!?どうしたんだね!?大丈夫かねおい君!君!」

カイジ「ぐっ・・・!」

カイジ(そうだ・・オレに泣いてる暇なんてねえ・・っ!ねえんだよ・・っ!選べ・・・!選ぶんだ・・ちくしょうっ・・!)

カイジ(しかし、このユニット選び・・!おそらくは・・・・運否天賦じゃない・・!愚図が堕ちていく・・・!)

カイジ(どうすればいい・・・・?どうすればいいんだ・・・・・・?オレは・・・・?)

苦悶するカイジに・・・・降りる・・・・!天啓・・・・・・・!

カイジ(あっ・・・・?まてよ・・!こいつ・・・・!確か・・・・!『数人』とは言った・・・言ったが・・・・・)

カイジ(正確な人数までは指定していなかった・・・・!つまり・・!それは・・・・・・っ!)

カイジ(こっちがその気になれば・・・・ユニットの人数は5人、6人・・・・とどのつまり・・・・)

カイジ(10人・・・・!と、いうことも・・・・可能・・・・・・・・・・?)

ざわ・・ざわ・・

カイジ(いや・・・・・?まてよ・・・・まて・・・・!)

カイジ(確かに・・・・ユニットの人数を増やすことで・・・・結果、リスクやスケジュールは容易く分散できる・・・・)

カイジ(しかし・・・・!管理は至難・・・・っ!・・・・そしてこれも・・・・至極当然のことだが・・・オレの体はひとつしかねえっ・・!)

カイジ(人数が増えれば・・・個々の技能の質も低下する・・・っ!多ければいいってもんじゃねえ・・・っ!)

カイジ(かといって・・・・人数が少なければ・・・一人あたりのリスクは大きい・・・・大きい・・!が・・っ!全体の管理はしやすい・・・・!)

――カイジ、長考・・・・!誰をどうプロデュースするのか・・・・?という具体的な吟味ではなく・・・・それとは異質・・・!

ユニットの人数・・・という、根っこ・・・・!根底の部分に根ざす懊悩・・!煩悶・・・・!

カイジ(よし・・!決まった・・・・・っ!・・・・・・2人・・!2人だ・・・・っ!2人・・・・・・っ!)

カイジ(一時は・・!3人・・・!ユニットとしての見栄えもする絶妙な人数・・・・!トリオも考えた・・・・!考えた・・・っ!がっ・・!)

カイジ(オレの差し迫った現状と鑑みると・・・!人数は極力少なくしたい・・・!そのためにはここ・・っ!ここがその淵・・・!崖っぷちの二重奏・・・・・っ!)

カイジ「はぁ~~~っ・・・・」

カイジ(その2人をどうするか、だよな・・・・問題は・・・・・・)

カイジ「さて・・・・!」

~~~~~

カイジ「決まりだ・・・・!2人・・・っ!」

高木「うむ、どうやら決まったようだな。では早速、彼女らとミーティングをおこなってくれ。その後、すぐに活動を開始してもらう」

カイジ(大丈夫・・・!問題ない・・・・!獲れる・・っ!栄華・・・・っ!トップアイドル・・・・!このユニットなら・・・・っ!)

やよい「うっうー!はじめましてー、高槻やよいです!よろしくお願いしまーっす!」

伊織「まったく…こんなのが私達のプロデューサーなわけ?大丈夫かしら、ホント…」

――カイジが選択した方法は・・・・・・消去法であった・・!可能性の低いものから順番に潰していく戦略・・・・!

古典的・・!普遍的・・・・!しかし安寧な選択法・・・・!今のカイジにとっては・・!まさに正着手といえよう・・・・・・・・!

やよいおりとは中々見る目があるじゃないか
どちらもコミュは難しくない、むしろやよいは易しいレベル
テンション管理も放っておくだけでぐんぐん上がるやよいと、高い基礎能力・成長性の伊織は正に至高のデュオ
何より二人とも天使

~~回想~~

カイジ(まずは・・・・!絞る・・っ!徹底的に・・・・・・っ!『動機』という篩でっ・・・・・・!)

カイジ(オレには後がない・・・・!おそらくは・・・・この機を掴まなければ逃げていくだろう・・!オレに吹いている風・・!流れ・・っ!命脈・・・っ!尽きる・・!全て・・・・っ!)

カイジ(つまりオレは・・・・!トップアイドルにならざるをえない・・・・!そんな奴をプロデュースすればいい・・・・!そういうこと・・っ!必然・・!)

カイジ(この時点で・・・・!萩原、秋月、双海、星井はっ・・・除外・・!有り得ない・・っ!愚手・・っ!最悪・・!選択肢として・・・・っ!)

カイジ(こいつらは・・そもそもが・・・・・!なんらかの成り行きや・・・・半ば強引に、あるいはただ何となく・・・徒にアイドルをやろうって腹の奴ばかり・・・・・・!)

カイジ(駄目・・っ!その甘い考え・・・・・・心構えが・・・・!駄目・・・・っ!なれる訳ねえだろっ・・!そんなんで・・・・王になんて・・・・っ!)

カイジ(次にハネるのは・・・・・・菊地、三浦、水瀬・・・・っ!こいつらにとってのアイドルは・・・・!目的ではない・・・・!単なる手段・・!しかし・・・・っ!)

カイジ(女らしくなるだの・・・・・・!運命の相手を見つけるだの・・!無理にアイドルにならずとも・・可能な目標とは違い・・・・!水瀬・・!)

カイジ(この水瀬ってやつの目標は・・・・!高すぎる・・!他のそれと比べて・・っ!・・・・おそらくは・・・アイドルという手段が不可欠・・・・!この目標の達成には・・っ!)

カイジ(保留だ・・っ!水瀬・・・・っ!保留・・・・・!)

カイジ(もう半分以下か・・・・少し切りすぎたか・・?軽々に・・・・!)

カイジ(いや・・・っ!確かに・・!例えばさっきの・・・・・星井の内に眠る才覚・・!才能は凄まじい・・・!素人のオレにも十分伝わってくる程に・・・・・・・)

カイジ(しかし・・・・時間がないっ・・!圧倒的に・・!時間が足りない・・・・っ!悠長に温めている暇などないっ・・・・!いつ孵るかもわからない金の卵を・・っ!)

カイジ(今・・!必要なのは即戦力・・・・!満開の桜・・・・・っ!蕾はいらないっ・・・・!磨かなければゴミ・・・っ!それが・・・・・ダイヤの原石であってもっ・・・!)

カイジ(残ったのは・・・・天海、如月、高槻の3人・・・・・・か・・・?いや・・・・)

・・・・・10人の中で唯一・・・・純粋にアイドルそのものが目的であり動機であったのは・・・・天海春香一人だけである・・・!

しかしカイジ・・・・意外にもこれをスルー・・・・・・・!ふるい落とす・・っ!容赦なく・・・・っ!

カイジ(単純な話だ・・!目標がただ一つ・・・・!それは強い・・!それはそのまま芯の強さ・・・・硬さに繋がる・・・・!しかし同時に・・!それは『脆さ』を意味する・・・・っ!)

ナシ・・・・・・・・天海春香・・・!ナシ・・・・っ!

カイジ(如月・・・!こいつの歌唱力・・!完成された技術・・・・!それは凄え・・・っ!文句ねえ・・・・っ!満点だっ・・・・・・!)

カイジ(ただ・・・・・・・―――乗りこなせるのか・・・・・?オレに・・・・・・?このじゃじゃ馬が・・・・・・?)

カイジ「・・・ぐっ・・・・・・・!」

カイジ(駄目だ・・・!逆に作用しかねない・・っ!その馬力・・・・っ!オレを喰らう・・・!おそらくは・・・・・牙を剥く・・・・!半端な騎手に・・・・!)

――残ったのは、高槻やよい・・・・カイジが自分と同じとはいかぬまでも・・・・・

似た境遇にいるこの少女を放っておくことができなかったのは不思議ではない・・・・

真っ当・・・・至極真っ当なことであるといえよう・・・・・

無論カイジも・・・・気付いてはいない・・・!己の同情心・・!自らさえ与り知らぬ庇護欲に・・・・!

しかし・・・・!結果は瞭然・・!克明に物語っていた・・・っ!カイジの無意識を・・・!

カイジ「決まりだ・・・!高槻やよい・・・・!こいつと・・!もう一人・・・・っ!水瀬伊織・・・・・っ!」

~~回想終わり~~

やよい「それでプロデューサー、今からどんなお仕事するんですか!?なんだか私、メラメラーってもえてきちゃいましたー!」

カイジ「よし・・ついてこい・・・・!レッスンだ・・!まずは・・・・っ!レッスン・・っ!」

伊織「ちょ、ちょっと!私の意見は!?それより喉がかわいたって言ったじゃない!早く飲み物持ってきなさいよね!まったく気がきかないんだから…」

カイジ(はぁっ・・・・・・?なになになに・・・・?なに・・・・・・?こいつ・・・?)

カイジ「はぁ~~・・・・・・・自分で持ってこいよ・・・!そんなもん・・・・!ガキじゃねえだろっ・・・・!おまえも・・・っ!」

伊織「なっ…!ア、アンタねえ…!私を誰だと思ってるの?私はスーパーアイドルの水瀬…」

カイジ「・・いい・・・・!」

伊織「え?」

カイジ「もういい・・・・・!たくさんだっ・・・!御託はたくさん・・・・!」

カイジ「聞き飽きたって言ってんだよ・・・・っ!こっちは・・!」

伊織「ふ、ふぅん…!そう…なら私にも考えがあるわ。やよい、事務所に帰りましょ」

やよい「えっ?伊織ちゃ…」

カイジ「なっ・・・・!」

伊織「アンタがそんな反抗的な態度をとり続ける気なら、私達は金輪際アンタの言う事は聞かないわ」

カイジ(こいつ・・・っ!)

伊織「無理に何かさせようとすれば、社長に報告する。それでいいわね?」

カイジ「ぐぐぐっ・・・・・・!」

伊織「私達は別に何も困らないわ。アンタが来る前と同じ。何も変わらないし、焦る必要もないわ」

カイジ「ぐぅ・・・・・っ!」

伊織「アンタ、何か抱えてるんでしょ?借金とか?」

カイジ「ぐ・・っ!」ポロポロ

伊織「図星みたいね?まあ、私達には関係のないことだけど。…とにかく、765プロにいたいのなら、私には逆らわないことね」

カイジ「ぐぅっ・・!ぐぐ・・・・っ!」

伊織「わかったらさっさと買ってきなさい、オレンジジュース二つ。100%のね、にひひっ♪」

カイジ「ぐぐぐっ・・・・・・!ぐぅ・・・・・・・・っ!」

カイジ・・・・・惨敗・・!遥か年下に・・・・!ボロ負け・・・っ!中学生相手に・・・・!

挙句・・・!パシリ扱い・・・・・!首輪を付けられ・・引きずり回されているかと錯覚するほどの完敗・・!

大敗・・!完膚なきまでの大敗・・・!恥辱・・!汚辱・・!挙句また号泣・・・・・・!

カイジ「はぁ~・・・・・・・・」

カイジ(なにやってんの・・・・・?オレ・・・・?)

カイジ(あんな高飛車・・・!傲慢・・!尊大・・・!倨傲・・・・・!)

カイジ(そりゃあ・・・!オレだって・・!歩んじゃいねえ・・・・っ!)

カイジ(人生・・・・胸を張って自慢できるような人生・・・・・!)

カイジ(けど・・・・・・・・!年上じゃねえか・・・・っ!年上・・・!腐っても・・・・っ!)

カイジ(なってねえっ・・・・!態度・・!口の利き方・・・・!目上の人間に対する・・・・・・・っ!)

カイジ「ぐぅ~~・・・・・・・・っ!」ポロポロ

カイジ「おい・・っ!買ってきたぞ・・・・・・!オレンジジュース・・・・!100%・・・っ!」

伊織「おっそ~い!ジュースふたつ買ってくるのに何分かかってるのよ!?早くしなさいよね!」

伊織「って…ちょっと!これ濃縮還元じゃないの!」

カイジ「なんだ・・?またいちゃもんつける気か・・・・?買ってきただろうが・・!オレンジジュース二つ・・・!100%・・!」

伊織「どうしてストレートじゃないのよ!?私達をバカにしてるわけ!?」

カイジ(・・・・は・・・・・・?ストレート・・・・・?)

伊織「そうよ、ストレート!わかる?す、と、れ、え、と!」

カイジ「このっ・・・!」

カイジ(人をコケにしやがって・・!わかるに決まってんだろ・・・!わかるよ・・!そのぐらい・・・っ!)

通常、オレンジジュースは・・・・100%とは書かれていても・・・・・・・実は少し違う・・!

計算上は・・確かに100%・・・!ただしそれは・・・・あくまで計算の上での話・・・・!

実際は・・・・・・一度・・!工場で200%、300%に水分をとばして蒸発・・・・濃縮させてから・・・・・・

さらに凍結・・・・!固体にする・・!そして保存・・・!シーズンまで保存・・・・!オレンジジュースが最もよく売れる時期まで・・!

そしてシーズン到来・・・!ジュースを固体から液体に戻し・・・出荷する・・・・・・!

ここ・・っ!ここで行なわれる行程こそが・・・・!還元・・・・・・・・!キモ・・!

2倍、3倍と濃くなったジュースに・・・・・!水を加えて還元・・・・!

2分の1、3分の1にする・・・・・・!つまり・・・・・・・・・!

もとの1倍・・・!100%・・・・っ!これ・・・・・・っ!これこそが・・・っ!濃縮還元・・・!

普通100%として売られているオレンジジュースのほとんどはこの濃縮還元であると言える・・・・・・これは事実・・・!

濃縮還元でない完全な100%のオレンジジュースを手に入れることは至難・・!よって・・・・・・

カイジには何の非もない・・・・・!当然である・・!

これが・・・・店に入り・・!あるいは自販機で・・!こっちの濃縮還元と完全な100%、の・・・・

どっちにするか・・・・・・?と問われて・・カイジが敢えて濃縮還元を選択した・・・!

というのであれば・・・・責められても致し方ない・・!非難されて然るべし・・・・!

しかしそうではない・・・!今回は・・・・・!

カイジはただ走っただけ・・・・!最寄・・!最も近い自動販売機まで・・・!

この小うるさい・・癇にさわる少女のために・・!より短時間で所用を済ませられる行動を選択しただけ・・!

ベストな判断・・!結果・・・・・・・救われた・・!伊織は・・・!

喉の渇き・・・・!渇仰から・・・・・!にも拘らず・・・・!

伊織、感謝ゼロ・・・・・!カイジへの感謝はゼロ・・・・・・・!感謝知らずの女・・・・!100%減点法の女・・・・!

他人が自分に完全に奉仕出来てギリギリ合格・・・・・・・・!100%出来て・・・・・・・・・!

ギリ合格の50点・・・・!一つでもミスをすれば40、30、20・・・・・・!

それが伊織の思考法・・・!スーパー減点法・・・・!恐るべき女・・・・・・!

カイジ「ふざけろ・・・・っ!聞いてねえぞ・・・!こんな・・・・・っ!あるかよ・・!こんなこと・・・・・っ!」

伊織「何なのその顔?文句あるわけ?」

カイジ(不満たれながら・・!飲んでるじゃねえか・・・っ!しっかり・・!それってあれだろ・・・・?)

カイジ(わかってた・・・・ってことだろ?手に入らないこと・・・・・っ!濃縮還元以外・・!)

カイジ(もういい・・・っ!辞めてやる・・!こんなとこ・・・!今すぐに・・・・っ!)

カイジ「おい・・・・・!」

やよい「うっうー!このジュース、とっても美味しいですーっ!プロデューサー、ありがとうございます!」

カイジ「え・・・・・・・・?」

カイジ「え・・・・あ、そう・・・?」

カイジ(なんだなんだ・・・・・!出来るじゃねえか・・・・!こいつ・・・!礼儀・・・っ!)

カイジ(水瀬の方は確かに・・傍若無人・・・・!横柄極まりない・・!が・・・・・)

カイジ(・・・・・・・・・・)

カイジ(こいつ・・・は・・・・・珍しく・・・・歳の割にはしっかりしてやがる・・・)

カイジ(失礼じゃねえか・・・・・・?儀礼がしっかりしてる以上・・・!その期待に応えないのは・・・・・・・・!)

カイジ「おい・・・!いいのか・・・・?高槻は・・!」

やよい「え?」

カイジ「ストレートだよ・・・・っ!濃縮還元なんだろ・・・!それっ・・!」

カイジ「ストレートじゃなくていいのか・・って言ってんだ・・・・・!」

伊織「!?」

やよい「うぅ~…ストレート、とか…なんだかよくわかりませんけど、美味しいから満足かなーって!えへへー」

カイジ(な・・・・・っ!こいつ・・・・・・・!)

カイジ(天使だ・・・・っ!天使・・・・・っ!オレに舞い降りた天使・・・・・・・!)

伊織「ちょ、ちょっと!何でやよいにはそんな態度なのに、私には何も聞かないわけ!?」

カイジ「あぁ~?なんだ・・・・?こんな時に・・・・・・・!ハタ迷惑な・・・!」

伊織「迷惑ですってぇ!?きぃー!アンタ、私にケンカ売ってるんじゃないでしょうね!?」

カイジ「うるせえ・・・っ!さえずるな・・・・・!小物が・・・・・っ!」

伊織「こっ…!」

やよい「なんだかプロデューサーって、すっごく優しい人かなーって!私、なんだか安心しちゃいましたー!」

伊織「…!」

伊織・・・・・・・・絶句・・!つい先程までは・・・・一人・・!形勢不利だったのはカイジ一人・・・!

それが・・・・!突然・・!ふ・・・・と気が付くと・・・・・・・・

一転・・!自分だけ・・・!一人になっていたのは・・・・自分・・・!

おそらくはカイジも・・!この場の誰一人として・・!想像だにしなかった展開・・・・!あり得ぬ状況・・!

例えるなら・・・!私刑・・・!リンチ・・・!仲間と共に・・・!敵をリンチしていたら・・・・!ほんの手違い・・・・・!幽かなミスで・・・・・・!

寝返り・・・・っ!仲間総寝返り・・・・っ!逆転リンチ・・・・・!そんな絶望的な状況・・・・・・!陥る・・・・!穴・・・っ!嵌る・・・・っ!

結果・・・・・!絶句・・っ!伊織、絶句・・・・っ!開いた口が塞がらない・・・・・・!

カイジ「ククク・・・・!どうした・・・・?その顔・・!何か文句があるのか・・・・・・・?」

伊織「……!や、やよいっ…!」

カイジ「行くか・・・!高槻・・!レッスンに・・・・・っ!」

やよい「うっうー!プロデューサー、レッスンよろしくお願いしまーっす!」

伊織「あ……やよ…」

ぐにゃあ・・・っ!

カイジ(さて・・・・どうする・・?一体何のレッスンを・・・・・・)

やよい「プロデューサー、ちょっといいですか?」

カイジ「あ・・・?なんだっ・・?高槻・・・・!」

やよい「今日は表現力レッスンがやりたいかなーって!」

やよい「伊織ちゃんも最近、表現力のレッスン、やってなかったような気がします!ね、伊織ちゃん?」

伊織「え、ええ…、そうね…」

カイジ(おいおい・・!おい・・・・・!何決めてんの・・?勝手に・・・!)

カイジ(おまえらが決めることじゃねえだろっ・・・・!それ・・っ!)

カイジ(天狗になってやがる・・・・・!とんだ天狗・・!)

カイジ(ガキだ・・!やっぱり・・・・・ガキっ・・・・!所詮は子供・・・!どこまで行っても・・・・!)

カイジ「駄目だ・・・っ!決めるのは・・・オレっ・・・・!オレが決めるっ・・・・・!」

やよい「……」

カイジ(ああ・・・・・・・?何・・・?何黙っちゃってんの・・・・・・?こいつ・・・・?)

カイジ(当たり前だろうがっ・・・・!当然・・・・・・!)

カイジ(おまえらは・・・・・アイドル・・!アイドルなんだから・・・・・・・・!)

カイジ(言いなりだろうがっ・・・!プロデューサーのっ・・・・・・!)

カイジ(それを何・・・・・?何・・面食らっちゃいました・・みたいな顔してんの・・・・?)

カイジ(まるで予想もしてませんでした・・・・みたいな・・・・・・・・こっちが悪者みたいな・・・・・!その顔・・・!)

カイジ(違うだろ・・っ!そこの認識がズレてるから・・・・おまえらっ・・・・・)

やよい「ううっ…」

カイジ「・・!?」

やよい「うううぅ~~…」

カイジ「な・・!」

カイジ(おいおい・・・・!ざけんなっ・・・!泣き落としかよっ・・・・・・!今度は・・・・!)

カイジ(なんだよ・・・・・っ!あるかっ・・・!そんな卑劣・・・・!卑怯な手が・・・・っ!)

カイジ(クソっ・・!ちくしょう・・・・・・・!)

カイジ(やるしかねえだろ・・・・!表現力レッスン・・!そんなことされたら・・・・っ!)ポロポロ

異様―――

失意の底から幾分か回復し・・前を向いた伊織が見た光景・・・・・それは・・・・

まさに異様・・・・・そう言う他になかった・・・・!

少女と・・・・・大の大人が二人揃って涙を流し・・!嗚咽を上げている異様な光景・・・・!地獄絵図・・!

伊織「ちょっ、どうしたのよあんたたち!?なんで泣いてるの!?」

やよい「うぅっ、ううう~…」

カイジ「ぐぅっ・・・・うっ・・・・!」

伊織「な、なんなのよ…もう…わけわかんない…」

伊織「…グスッ」

伊織「ふぅっ…うう…」

―――拡大する地獄・・・・・!わけのわからぬ地獄・・・・・・!

眼前の意味不明な光景と・・・・それを見ても何も出来ぬ己の愚かしさ・・!なにがあったかわからない・・・・!

どうすればいいのかも・・・何も・・・・・・!出来るのはただ・・・号泣する二人を眺めることだけ・・・・!

そして・・・・・・もらい泣き・・!涙の連鎖っ・・!

~~~~~

当然・・・・レッスンになどなるはずがないっ・・・!こんな様で・・・!

中止・・!カイジ達はレッスンを中止し・・・・・事務所に帰る・・・・!咽び泣きながら・・・!

~~~~~

高木「どうだ、落ち着いたかね?皆」

小鳥「もう、驚かせないでください…3人が泣きながら戻ってきたときは何があったかと思ってすごく心配したんですよ?」

カイジ「ぐっ・・!悪い・・・・・!悪かった・・!」

カイジ「だがもう大丈夫・・・!うろたえないっ・・・!固まった・・・・!地盤・・!」

カイジ「雨降ってなんとやら・・・・!だっ・・!オーライ・・・・結果オーライ・・・・!」

涙と鼻水を拭い・・・・営業へ向かうカイジ一行・・!

~~~~~

高木「これで一日が終わったようだが、どうだったね?初めてのプロデューサー業は?」

カイジ「ああ・・っ!感じたよ・・・・・!手応え・・・!確かに・・・っ!」

高木「おほぉ!それはよかった!いやぁ、一時はどうなることかと思ったが、どうやら私の杞憂だったようだ、ハッハハハ!」

高木「それはそうと、明日はいよいよ重要な仕事をしてもらう。音無君」

小鳥「はい!いいですか?カイジさん」

カイジ「ああ・・!なんでもこいよ・・・・!もう驚かねえよっ・・・!蛇が出ようが・・邪が出ようがな・・!」

翌日

やよい「おはようございまーす!」

伊織「あら、おはよう。今日もシケた顔してるわねぇ、この伊織ちゃんはこーんなにかわいく生まれ変わってるっていうのに♪」

昨日・・・カイジが冴えない事務員から受けたのは・・・説明・・!新人オーディションの・・・・・!その概要・・・・!

カイジ「行くぞ・・・っ!今日はオーディション・・!デビューの成否が決まる・・・・!おまえらの・・・っ」

やよい・伊織「はーい!」

そして・・・・・・遂に本番・・!来る・・・・!審判の日・・・!アイドルデビュー・・・・!新人オーディション・・・・・・!

オーディション直前の参加者の顔合わせ・・・・!が・・・・!カイジが見たもの・・・・・!それは・・・!審査員・・・!その中に・・・・・!

遠藤「ククク・・・!また会ったな・・・・!カイジ・・・・・!」

カイジ「なっ・・・・・!」

やよい「?」

伊織「どうかしたの?」

カイジ「なんでここにいる・・・・っ!関係ねえだろうが・・・・っ!おまえには・・・・・・っ!」

遠藤「いや・・・・・・それがな、そうでもねえんだ」

遠藤「というか・・・・大アリだ・・!大いに関係アリ・・!」

カイジ「説明しろ・・・・・・っ!なんの関係がある・・・・・っ!」

遠藤「するとも・・!おまえには・・言われなくとも説明を聞いてもらう必要があるからな・・・・・・・!」

遠藤「が・・その前に・・・・・・そこの女をはけてもらおう・・・!他人に聞かせる話でもないんでな・・・・・」

カイジ「・・・!着替えてこい・・・・・!お前ら・・・っ!早く・・!」

伊織「…ほら、行くわよ、やよい」

やよい「あっ、プロデュー…」

伊織「……」

遠藤「・・・・・お前も知っての通り・・これは新人がデビューするための登龍門・・・・!最初の関門・・・・・・・・!」

遠藤「と・・・・いうことになっている・・・!表向きは・・・・・・・!」

遠藤「しかし実態は・・・・・・単刀直入に言おう・・!多額の負債を抱えたプロデューサー・・・・債権者が・・!」

遠藤「最後の希望である・・デビューに失敗した場合、その場でさらうためのオーディションだ・・・・!」

カイジ「なっ・・・!」

遠藤「さらに付け加えると・・・・さっきオレはおまえの担当アイドルを・・『他人』と言ったが・・」

遠藤「事の成り行き次第じゃあ・・・・『仲間』というか・・・『同類』になる可能性も・・・・無きにしもあらず、だ・・!」

カイジ(同類・・・・?それって・・どういうこと?それはつまり・・・・・・あいつらが・・オレと・・・・・?)

カイジ「・・・っ!」

カイジ「てめえっ・・・!関係ねえだろうがっ・・!あいつらはっ・・・・・・!」

遠藤「ああそうだ・・・・関係ない・・それはあくまで・・・おまえが大人しくオレに従わなかったときの話・・・!普通は何もしない・・!そのままお別れだ・・・!一生な・・!」

カイジ「・・・・・・・・・」

遠藤「と言っても・・・・今、この中で・・・・・多額の借金をしてるのは・・・・・・カイジ、おまえだけだがな」

カイジ「あるか・・・っ!そんな話・・・・!横暴が・・・・っ!だって・・・・・!」

カイジ「あるじゃねえかっ・・!まだ・・!チャンスっ・・・・!オーディション・・っ!」

遠藤「確かに・・・無いとは言い切れん、が・・・・」

カイジ「だったら・・・・・・っ!」

遠藤「考えてもみろ・・・!こんなところでつまずくユニットが・・・・この先生き残り・・・・・!ましてやトップアイドルなんぞ・・・・・!夢のまた夢・・っ!なれるわけねえだろ・・っ!」

カイジ「ぐっ・・!」

遠藤「いずれにしろ・・・・・・『次』なんてないんだよ・・・・・!おまえには・・・!乗船権を棄てたんだから・・・!」

カイジ「いい・・・・・!」

遠藤「あ・・?」

カイジ「勝てばいいってことだ・・・・!つまり・・・・・!勝ち続ければ・・・・・!オレは自由・・!自由の身ってことだ・・!晴れて・・・!」

遠藤「ククク・・!そう・・!そうだカイジ・・・・!そういうことだ・・・・・・!勝てばいい・・!簡単な話だ・・・!単純明快・・!」

遠藤「しかし負ければ・・・・・!無論ある程度想像はついているだろうが・・・・・・」

カイジ「・・・・」

遠藤「強制労働・・!地下行きだ・・っ!地獄の底・・・・!二度とは戻れん・・・・・!」

カイジ「わかってるよ・・!んな事・・・!丁度あいつらも戻ってきた・・!次会うときは・・・・・!返すときだ・・!金をっ・・・・!」

遠藤「そうだな・・!ククク・・!確かに・・・・・・次に会うときが最後だな・・・・・・・!カイジ・・・・!祈ってるぞ・・・・・健闘を・・・」

カイジ「あばよ・・!遠藤・・・・・!」

伊織「……」

カイジ「調子はどうだ・・?聞くまでもないが・・・・・」

やよい「バッチリですー!今なら私、なんでもできちゃうかもです!」

伊織「ええ、私もよ…」

『もうすぐ始めまーす、参加者は集まってくださーい』

カイジ「大丈夫だ・・・・!大丈夫・・!オレの指示・・・・!こいつらの能力・・・・・!合格しないはずがねえ・・・っ!」

カイジ「落ちるはずがねえんだっ・・!不測の事態でも起こらない限り・・・・!」

『3番の方ー、いませんかー?3番の方ー』

カイジ「よし・・・っ!行ってこい・・・・・・!やよい・・!伊織・・・・!」

やよい・伊織「はいっ!」

~~~~~

カイジ「やり切った・・・・!やった・・・・・!あいつらに致命的なミスはなかった・・・・!オレの指示にも・・・!当然・・!」

カイジ「何も狂いはない・・!順調・・!全て順調だった・・・・!負けるはずがねえっ・・・・!これで・・!突破だっ・・・!突破・・!」

『それでは結果を発表します―――

合格したのは……2番、4番、5番の方です―――――』

やよい・伊織「えっ…」

カイジ(え・・・?)


え・・・?

ぐにゃあ~

あああっ・・あ・・・・?

カイジ「ああっ・・・・・?あ・・・・っ?」

カイジ「あ・・・・・っ?どういう・・・・こと・・・・・?」

『繰り返します―――合格したのは……2番、4番、5番――――』

カイジ「オレの番号は・・・・・・3番・・・・?あれ・・・?」

カイジ「って・・ことは・・・・・・・・?どういうこと・・・・・?」

ぐにゃあ~

カイジ「あっ・・・・?」

やよい「あ、あの…プロデュー…サー?」

カイジ(あああ・・・・・・・っ?あっ・・・?)

伊織「ちょっと!アンタ、大丈夫!?」

カイジ「あああああっ・・・・・・・・・・・・・?」

遠藤(クククク・・・・っ!終わったか・・・・・・!終了っ・・!ジ・エンド・・!)

遠藤「残念だったな・・・!まあ・・死ぬことはねえから安心しな・・!カイジ・・・!」

カイジ「え・・あ・・・!」

カイジ(そうだ・・!なんでオレは問わなかったんだ・・!審査員の一人・・・・!こいつじゃねえかっ・・!)

カイジ「おいっ・・!遠藤・・!てめえ・・・・・っ!まさか・・・・・・!」

遠藤「よせよ・・!オレは審査自体には関わっちゃいねえ・・・・!何もしてねえんだ・・・・!観てただけ・・!」

遠藤「つまりこれは・・・・・実力・・っ!正真正銘・・・・・・・おまえらの実力・・っ!ってこと・・・・!」

カイジ「うぅっ・・!そんな・・・・!なんで・・・・っ!」

遠藤「知りたいか・・・・?」

カイジ「えっ・・・・・・?」

遠藤「理由だよ・・・!おまえが負けた理由・・・・!」

カイジ(理由だって・・・・・・・・?さっきの歌は完璧だった・・!非の打ち所はなかった・・・!ダンスにも・・・!なのに・・・・!負けたっ・・・!)

カイジ「どうして・・・・・?」

遠藤「だろうな・・・・おまえも腑に落ちんだろ・・?わけのわからないまま堕ちるのは・・・・・・!」

遠藤「まず・・・・・・おまえが選んだ楽曲・・・!『Do-Dai』・・・・・!これに問題があった・・・・・!」

遠藤「いや・・・この曲自体には何ら欠陥はない・・・・・いい曲だ・・・!おまえにしては上出来・・!」

遠藤「問題なのはこいつの系統・・・!Do-Daiの系統はDaに属している・・!これがまず一つ目・・・・・!」

遠藤「それともう一つ・・!おまえが行なってきたレッスン・・・・!思い出してみろ・・!何をしてきたか・・・・!」

カイジ(レッスンだと・・・・?あいつらがやったのは・・・・・・・表現力・・・!Viをメインにレッスンしたが・・・・・・これに何か問題が・・・・・・・・)

ざわ・・ざわ・・

カイジ「あっ・・・・・・!」

遠藤「気付いたか・・・・敏いな・・そう・・・・・!それだよカイジ・・・!」

遠藤「審査にはその時の流行・・!審査員の好み・・・!それら無作為な偏りが存在する・・・・っ!」

カイジ(しまった・・・・・っ!なんてバカなんだ・・っ!オレは・・・・!くそ・・!」

カイジの油断――――

もし・・・・・・・・このオーディションが初めから・・・カイジにとって命の懸かった難問・・!真剣勝負であれば・・!

おそらくしなかったであろう凡ミス・・!しかし・・・・・!事前に命が懸かっているとは夢にも思わず・・・・

『失敗しても次がある』・・・・『また挑戦すればいい』・・・・・・『オーディションとはいえ所詮は新人』・・・・・・

そんな思い・・油断が・・・・・!カイジの六感の覚醒・・!気付きを妨げた・・・・!

カイジ(やって・・・!なかった・・・っ!デビューオーディションとタカを括り・・・!Voのケア・・・・・っ!)

遠藤「クク・・・・・もう言うまでもないと思うが・・・・・・」

遠藤「今回の審査員の好み・・・・!それは・・・・Voっ・・!流行の一位も・・・・・・Vo・・・っ!」

カイジ(なんて・・・・こと・・・・・・・!)

遠藤「ハナから負けてたんだよ・・・・・・!おまえ・・!戦う前から・・・・・っ!」

カイジ「あああっ・・・・・・・」

ぐにゃあ~

遠藤「おい、連れていけ」

黒服「はっ」

バタン

やよい「プ、プロデューサー!?」

伊織「…!」

やよい「伊織ちゃん!ど…どうしよう、プロデューサーが、プロデューサーが…怖い人に連れてかれちゃった…!」

伊織「……」

やよい「ど、どうして何も言わないの…?伊織ちゃんは心配じゃないの!?」

やよい「たしかに最初は伊織ちゃんとよくケンカしてたけど、プロデューサーは私たちをデビューさせてくれようと頑張って…!」

伊織「…心配してないわけないじゃないの」

やよい「じゃあ、どうして…!」

伊織「知ってるからよ!もうどうにもならない!アイツは…一生戻ってこれないわ」

やよい「そんな…!」

伊織「今、真や私の息のかかった人間に頼んで、力づくでアイツを奪い返すことは可能よ」

伊織「でも…もしそんなことをすれば危ないのは私達よ?765プロだってどうなるか…」

やよい「うぅぅ…」

伊織「わかってちょうだい、やよい…」

やよい「うっ…うぅ…」

ダッ

伊織(ごめんなさい、やよい…)

伊織「……」ピッ

伊織「もしもし…」

カイジは・・・・・・・眠っていた・・!

車中・・・!遠藤の手下が運転するクルマの中で・・・・!

カイジ「グゥ~~・・・・」

遠藤「クク・・!いい気なもんだ・・・・!地下暮らし・・!これから一生日の光を拝めねぇっていうのに・・・・!」

遠藤「まあ・・・・!その方がいいか・・!変な気を起こされると面倒臭いしな・・・!最後の地上を見て・・・!」

運転手「なっ・・!」

キィィ

遠藤「なんだ・・!どうした・・・・?老いぼれかガキでも飛び出してきたか・・・・・?」

カイジを連行する地獄行きの列車・・!突如として・・・・それを止めたのは・・・・一台のクルマ・・・!

遠藤のそれと同じ・・・・いかにも高級車という・・・!悪趣味にも見えるそのクルマ・・・!

その中から・・・・アタッシュケースを持った一人の人物・・・・!

伊織「…待ちなさい」

遠藤「は・・・・?」

遠藤「誰かと思ったら・・・・!アイドルじゃねえか・・っ!『元』プロデューサーの・・・!こいつが担当してた・・・・!」

遠藤(ククク・・・!ガキはガキだが・・・・・!ただのガキでもないらしい・・・!)

伊織「アンタと一秒でも同じ空間にいたくないから、手短に言うわ」

伊織「その男を返しなさい、こっちに」

遠藤「おいおい・・!傷心なのはわかるが・・・・!そりゃあねえだろう・・!暴挙ってもんだ・・・っ!」

遠藤「見たところ・・おまえ・・・・・!馬鹿じゃないっ・・・!確かに今やってる事は馬鹿としが言いようがないが・・・」

遠藤「この世界にもルールがあることぐらいはわかってるはずだ・・・!違うか・・?」

伊織「ええ、そうよ。だからルールに則って、その男を取り返しに来たのよ。文句ある?」

遠藤(クククっ・・・・!どうやら・・こいつ・・!馬鹿・・・・!馬鹿だったらしい・・・・!本当に・・・・・!)

遠藤「おまえ・・知ってるのか・・・?こいつの債務の額・・・・・!」

伊織「いくら?言って頂戴。払うから」

遠藤「しめて2千っ・・!2千万だ・・・・っ!金利は膨らんでるんだよ・・・!こいつがエスポワール行きを断り・・・俺から去った後も・・・!」

伊織「…!」

遠藤「わかっただろう・・・?これで・・!おまえはもう帰れ・・・!」

遠藤「おまえはこいつと違って・・・!場所は地下以外にもあるんだからな・・・・!いくらでも・・!」

伊織「よかった、ギリギリ足りたわ。はい」

遠藤「はぁ・・・っ?」

遠藤「うお・・・!なっ・・・・・!」

~~~~~

遠藤「受け取った・・・・・・たしかに・・・・」

伊織「そう。なら早く消えて。二度と私達の前に姿を見せないで」

遠藤「おまえ・・・・・!馬鹿か・・・・・?」

遠藤「他人だろうが・・・・・っ!こいつと・・・!何の関係もねえ・・・・・・!一朝一夕の他人っ・・!」

遠藤「安くはないだろう・・!いくらおまえが・・・・!ボンボンでも・・・・・!」

伊織「もう用は済んだんだから、早く消えて。運転手、出しなさい」

遠藤「まあいい・・!ともあれこれでっ・・・!回収の手間が省けた・・!感謝するよ・・嬢ちゃん・・・!」

~~~~~

カイジ(あれ・・・・?どこ・・・・?ここ・・・・・・・?)

カイジ(なんでオレ・・・地上にいんの・・・?)

伊織「目が覚めたみたいね」

その後・・・・・伊織はカイジの借金を肩代わりする代わりに・・・・・・

765プロのアイドル全員をプロデュースし・・・・トップアイドルにすること・・!

さらに・・・勤務時間以外は自分の家で雑用をこなし少しずつでも借金を返させることを約束・・!契約する・・・・!

伊織「当然、あんたが受け取る給料も全部私に返すこと。最低限の生活費を除いてね」

カイジ「・・っ!」

感涙・・・!感謝・・!感激してものも言えぬカイジ・・・・!

伊織「あんたを助けたのは、あんたが私達にとって最後の希望だからよ」

カイジ「・・・・・・!」

カイジ「約束する・・っ!必ずっ・・・・!」ポロポロ

伊織「あんたがキッチリ2千万返して、それを私がパパやママ、兄さんに返すことが出来なければ、私は勘当なのよ?当然でしょ?」

伊織「だから、今度は最後までちゃんとプロデュースすること、えこひいきなしでね!にひひっ♪」












立て替えーてくれーたよーω


おわり

とっにかっく大成功(乙)
とっにかっく大成功(ざわざわ)
第っ一っ部 終っわっり(はよ)

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