王様「勇者を見送った直後に襲撃された」 (75)



王様「というわけなのだ」

勇者「よくご無事でしたね」

王様「流石に死を覚悟したがな」

勇者「それで? 被害は?」

王様「側近を二名、兵士を23名、そして私の右腕だ」

勇者「えっ?」

王様「うむ?」



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勇者「右腕……無くされたのですか」

王様「今や義手だ」

勇者「……申し訳ありません、王様」

王様「気にせんで良い、ただ……1つ聞きたいのだが」

勇者「なんでしょう?」

王様「実は右腕をドラゴンに喰われ、もうだめだと思ったその時にこの義手を手に入れたのだが」

勇者「えっ」




王様「もしや私が手にしたこの義手……ぶっちゃけヤバい?」

勇者「……ヤバいと申しますか、どんな経緯でその義手を?」

王様「ドラゴンが一頭、麗しき美女の姿で現れたのだ」

勇者「…」

勇者(このオッサン……まさか相手が美女だからって迂闊に近寄ったんじゃ)

王様「そこで私はすかさず側室に迎えようとしたのだが……その正体は刺客のドラゴンだったのだ」

勇者(もっと酷かった……)


王様「私は勇敢にもそのドラゴンを抑えようと奮闘したのだ」

王様「だがしかし嘆かわしいことに…私は兵士一人の力も無い、いとも簡単に右腕を喰い千切られてしまった」

勇者「ご立派です、王様」

王様「そして私が瀕死の所を兵士達が助けに入り……」

王様「……」

勇者「王様?」

王様「き、気がついたら私がドラゴンを殴り倒していた」

勇者「誰か救護班を!!」

王様「私は正気だ」


王様「見よ、これがそのドラゴンを殴り倒していた義手だ」ガシャッ

勇者「……鎧の籠手にも見えますね」

王様「だがしかし軽い、そして恐ろしい程に……くさい」

勇者「くさい?」

王様「鉛の匂いがすっごいくさい」

勇者「はぁ……」

勇者(なんか血の匂いがすると思ったら、それか)

王様「余りの一瞬の出来事で、私には何が起きたのかわからん」

勇者「私もです王様」

王様「なんでや」


勇者「……どうですか」

僧侶「これ……」

賢者「うーん…?」

< ガシャッ

王様「どうなのだ、魔法や様々な祝福、呪いに通じているそなた達ならば…」

僧侶「呪われてます……けど」

王様「やはりか」

賢者「これ、さまようよろいですね」



王様「」
勇者「近い近い近い近い近い」



王様「何故に私の右腕がさまようよろい!?」

賢者「よく分かりませんが……うーん?」チラリ

僧侶「呪いとしての効力は精々外せない程度の物ですよ?」

王様「ならば、それをどうにか消せぬのか」

僧侶「王様」

王様「む?」

僧侶「義手が必要なのでしたらそれで良くないですか?」

王様「……そうだな」


賢者「それにしても、私達が魔王を倒している間に襲撃だなんて…」

僧侶「魔王はそれを知っていたのですかね?」

王様「なにがだ?」

僧侶「私達の知る魔王は、そういった騙し討ちを最も嫌っておいででしたから」

賢者「ちょっと想像つかないのよね」

勇者「確かに」


王様「むぅ……私よりも王の器だとでも言うのかそなたらは」

勇者「いえいえ、少なくとも王の気質だったと言いたいだけです」

賢者(このお調子者王よりは王様らしかったとは思うけどね)


王様「……などと言いおって、帰って行ったのだ」

侍女長「ほっほっほ……王様は皆に尊敬されているのですよ」

王様「それは分かっているが」

侍女長「分かっておりませんよ、王子坊ちゃまよりも王の気質だったと、そう勇者殿は言っているのです」

王様「ば、ばぁや! 貴様……!」

侍女長「考えてご覧なさいませ、どこに美女に釣られて兵や自分の命を危険に晒す王がいるのです」

侍女長「お若き頃は、もっと勇ましく勇敢であったというのに……全く」


王様「む、むぅ……」


王様「……」

王様「何やら今日は疲れたな……」

王様「そんなにも私はだらしなくなったのだろうか…」

王様「確かに若い頃は沢山の無茶をやったものだ」

王様「冒険を夢見て……馬に跨がり、荷物と騎槍を片手に旅をしたこともあった」

王様「そして……あの日に私は自身が王になる身であることを強く悟ったのだった」


王様「……元気にしているのだろうか、あの恩人は…またあそこに行けば会えるのだろうか」


~数日後~


侍女「おはようございます」

王様「うむ、彼氏とは上手くいっておるか」

侍女「な、何故それを…」

王様「適当に言っただけなのだが……」

王様(彼氏おったのか、ナンパしなくて良かったわい)

侍女「し、しつれれ…失礼しました!」ササッ

< ガッ!

侍女「きゃぁっ!?」

王様「!」ヒュッ



< カシャカシャッ

王様「……?!」

侍女「……私が落とした食器を、片手で全部キャッチした…」

王様「これは……」ギシッ

王様(まさかこの右腕が?)


侍女長「どうされました、王様」

侍女「侍女長……その、私が転んでしまって…」

侍女長「ほう」

王様「大丈夫だばぁや、この通り私は無事だ」

侍女長「右腕の義手も調子良さそうですな」


王様(……などと今朝はあったが)

王様(あれは完全に私の意思で動いてはいなかった)

王様(ドラゴンを殴り倒していたのも、やはりこの右腕の……個体としての意思か)

王様(ふむ)ガシャッ

< ガシッ

王様「ヌ……ぬ…ぅ…ッ!」ギリギリギリ…

王様(リンゴ1つ潰せぬのか…!)


< ゴシャッ!!


王様「……」

王様「また、私の意思とは関係なく動いてリンゴを潰したな…右腕よ」ガシャッ


王様「書記官」

書官「は、これは王様ではないですか」

王様「うむ、夜分手間をかけるな…少し良いか」

書官「……」カタン

< ギシッ……


書官「幼き頃はこうしてよく共に語り合ったものです、何でもお話下さいませ」

王様「そうであったな……私も、そなたも老いたものだ」

書官「して、用件とは?」

王様「『さまようよろい』に関して、全て教えてもらいたい」






書官「さまようよろい、とは文字通り彼らモンスターの習性からそう名付けられた魔物です」

王様「様々な地域でさまよっている、のだったな」

書官「ええ……しかし、ただ彷徨くだけの鎧というわけでもありません」

書官「彼らには一貫して共通の習性……いえ、『癖』があるのです」

王様「癖、とは…何なのだ」

書官「距離を、間合いを計算して……彼らは剣士として戦いを挑んでくるのですよ」


王様「剣士として?」

書官「勇者殿の皆さんには何度か資料のまとめを手伝って頂いたのですが、面白い事がわかりました」

書官「勇者殿の皆さんは勝手に各個名称してらっしゃったのですが……」

王様「名称して…? 何か、名付けられるような違いでもあったか?」

書官「正答でございます陛下、『鎧の種別』だけでなく、明確に『能力』と『意思』を持った鎧が存在したのです」


書官「鉄の鎧『さまようよろい』、鋼の鎧『じごくのよろい』、一部の魔物の中には貴族のフルアーマーのモンスターも居たとか」


王様「……」

王様「人間、であったものの……意思が宿っているのか」

書官「鋭いですね、私もそう考えておりました」



書官「さまようよろいの中には、ホイミスライムを呼ぶ者もいれば、恐ろしい事に岩を両断するような者も居たようです」

王様「勇者は凄いな、そのような者と戦っておったのか」

書官「まったくです」

書官「ですがもっとよく分からない現象もある、それは王様がよく分かっておいでだ」

王様「むぅ……」ガシャッ

書官「『右腕として出現したさまようよろい』、これはどう考えても今まででは見られなかった現象だ」

王様「確かにその通りだ…」
















王様「……朝、か」


王様「…………」ガシャッ

王様(我が右腕よ……貴様は何故、私の右腕として現れたのだ)

王様(こんな老いぼれの、ろくでなしの王に……何をしろと言うのだ)

< ギシッ…

王様「………」

王様「剣士……では、ないな…そう言えば 」



王様(ドラゴンを殴り倒していた、つまりこの右腕は『剣』を必要とする意思は無かった)

王様(何より……ただの剣士なら、何故ここまでして完全なパワータイプなのか)

王様(仮に剣を得意とするとして……)


王様「……ふむ」

< ギシッ…

王様「そなたは『騎士』なのではないか……?」ボソッ


< ………ギギギギッ

王様「…その軋む音、今まででは無かったな……どうやら肯定らしい」


~数日後~


王様(……幾分か、これならば若き頃の私に近づけたか)

< ギシッ…

王様「弓矢、放て!」



弓兵「はい…っ」

< ビュバッ!


王様(叩き落とせ…!)ヒュッ

< バキィンッ

< カランッ…カラカラッ


王様「……落とせたな、よくやったぞ右腕よ」


弓兵「……」

王様「ご苦労、今日も実に美しい軌道であった」

弓兵「王様」

王様「なんだ」

弓兵「王様がもしも、実践的な矢の落とし方を学びたいのであれば…」


< ギシッ…チャキッ

弓兵「少しだけ、本気で射かせて頂きます」


王様「弓兵との射撃戦…か」

王様(ちょうどいいのかもしれないな)

< ガシャッ

王様「頼もうか」






弓兵「ゼェ…ゼェ… 」

弓兵「降参しましょう……もう、腕が矢を引けない」


王様「うむ」ガシャッ


弓兵「……いつの間に王様は、このような技術を? 」

王様「いや、私はただ右腕の『調子』が見たくてな」

王様(結果は想像以上のモノではあったが…)

弓兵「以前、弓矢を悉く叩き落とす魔物がおりましたが……今回のような綺麗な落とし方は初めて見ました」

王様「綺麗な落とし方とな?」


弓兵「落とされた矢を御覧ください、どれも全て、折れておりません 」


王様(…………)ガシャッ

王様(私の指示とは違う動き……これはこれで、面白い)

王様(ますます私の欲求を刺激してくる…… )



王様「よくぞ来てくれた勇者よ」

勇者「どうされました、王様」

王様「王座をそなたに譲る契約をしておこうと思ってな」

勇者「なるほど」

勇者「……」


勇者「え?」

王様「うむ」

勇者「誰か救護班を!!」ガタッ!!

王様「私は正気だ」



勇者「な、な、なんで俺が王様にならないといかんのですか!?」

王様「いや、それはだな…」

勇者「このスケベ親父!! 職務放棄して何をしようてんだ!!」

王様「きさまそんなこと思ってたのか!? 怒るぞこの駄勇者!!」

勇者「魔族との戦争終わらせたのに駄勇者とかざけんなよジジィ!!」


侍女長「やかましいですぞお二方」



勇者「……真面目な話、どうして俺に王座を?」

王様「真面目な話をするのならば、私の後を継げるのは勇者しかいないからだ」

勇者「何故ですか」

王様「私には妻も、息子もおらん……このような独身の老いぼれでは後継者は見つからん」

王様「大臣でも良かったのだが、確たる要素が無くてな……」

勇者「要素?」


王様「国を、世界を救うと考えられるような最強の聖人に匹敵する、これ以上ない王の器が見つからなくてな」


勇者「………王様」

王様「そんな勇者が私の国民であり、良き友となったのは幸運であった」

王様「美女と出会いやすくなったしな」

勇者「色々と返せコノヤロー」


王様「とにかく、そなたを上回る人材は無かろう」

勇者「それでも政治なんて……」

王様「裁判はそなたの正義感と、ただの前例に基づいて自由にやればよい」

王様「税や法を作るのならば、それによる犠牲から考えればよい」

王様「外交で大切なのは民の事と、相手の本質を見ることだ 」


勇者「………」


王様「分からぬ事や、まだまだ学ぶ事は、そなたが王になるまでに勉強すればよい」

王様「侍女長は大臣よりも博識だ、彼女に頼めばよかろう」

勇者(ちょっとまて何気に何者だあの婆さん)


王様「……では、この契約書にサインを頼む」

勇者「……書いても、いいですよ」

勇者「そこまで言うのなら、俺が王になっても…いえ、王になりたいです」

王様「うむ」

勇者「ですが……なんで、こんな契約を…?」


王様「……」

王様「私はこれから旅に出る、そしてその契約書にそなたがサインをすれば、ギアスによって私の生死が分かるようになる」

王様「旅に出た先で、仮に死んだとしても、そなたは私の死が分かる」

王様「その時、そなたが自分で考えて王になるがよい」


勇者「……だから、なのか」

勇者「この契約書には、俺が王になりたい時に前王は死んだとして王位に着けるように書いてある」

勇者「これってつまり、俺がなりたい時に王になれて…王様を殺せるんじゃ」

王様「そう考えてはならぬ」


王様「そなたと私の絆、それこそがその契約書の肝よ」

王様「それにな」ガシャッ

勇者「?」


王様「……行かせてくれぬか、私の死ぬ前に成したかった事を、いまやらせてくれ」




~数日後~


王様(懐かしい…な)ギシッ

王様「こうして城を背に深夜に旅に出るなど、若き頃の私を思い出すようだ」

王様「さて……」


馬「ブルルッ……」


王様「今宵、いや……暫くの間、私と苦楽を共にするのはそなたか」

王様「右腕以外は齢60の老いぼれ、私の足はそなたしかおらんよ」なでなで


馬「……ヒヒィン」







王様(……さて)

馬「ブルルッ…」

王様「隣の国の国境まで来たが、この先の森林はあまり走れないな」

王様「適度に休みつつ、進むとしようか」

< なでなで

馬「ブルルッ…」



< サァァァ・・・


王様「ふむ……」チャプッ…

王様(確か勇者達は魔王討伐の冒険の際、この国は素通りしたと聞いていたが)

王様(その原因はこれか……)

< プーン…

王様(濁っているレベルではない、森林を流れる川の水が何かに汚染されている…)

王様(この動物の死骸からして……毒だろうか)


馬「ヒヒィン…」


王様「駄目だ、お前はこの水を飲んではならん」

王様「川の上流を調べるぞ、この『森の民の国』で水が汚染されている事が放置されているのはおかしい」

王様(何より……場合によっては私の国にまで影響が及ぶやもしれん)



・・・~???~・・・




スライム「ぴきーっ」


ダークエルフ「……」チャキッ

< ズバッ!


スライム「ぴぃぃぃぃ」ドサッ

子スライム「ピーッ…!」プルプル


ダークエルフ「……こ、ろ、…す…」

< ガサッ

ダークエルフ「!!」グルン!!


ガップリン「そ、そいつから離れろ…キチガイエルフ!」プルプル


ダークエルフ「…だ……ま、れ、れれ……」ダダッ

ガップリン「ひっ…!」


< ズバァッ!

ガップリン「」バチャァッ


ダークエルフ「………ひ、ひ…… 」

子スライム「ピーッ……」プルプル




< ガサッ

王様(……あれは…エルフ、なのか?)

王様(あれほどまでに殺気立たせ、更には美白の肌ではなく、褐色肌とは…何者)


王様(……しかし)

王様(思った以上に動きが速そうだ……あれと正面から戦うのは…)

< ギギギギッ

王様「っ!」



ダークエルフ「………」ピタッ!



王様(右腕の軋む音に気づかれたか……なんだと言うのだ!)

王様「くっ!」バッ


ダークエルフ「シャァァァ!!」チャキッ


< ガシャッ!!

王様(右腕に引っ張られる……!!)ヒュッ



< ズガン!!!


王様(……!!)ザザッ

王様(恐ろしい腕力だ…一撃で大樹の幹を抉るか)

< ギシッ…

王様(だが相手は見たところ、冷静さは無さそうだ)


王様(『次の攻撃に備えろ』、『受け流せ』、『一撃で意識を奪え』)


< ガシャッ…ギシッ…ギシギシギギギギギ………

王様(これならば、私でも戦えそうだ……)


ダークエルフ「シャッ……!!」ヒュッ

王様「ヌゥ…!」ヒュッ


< シュキィィンッッ……

< ザッ!!


王様「受け流せたこの隙を逃すな! 叩き潰せ!!」

< ガシャガシャンッッ!!

ダークエルフ「!?」


< ドゴッ!!



ダークエルフ「……っ、ッか…!」ドサッ



王様(……よくやった、我らの初陣は完璧だな)ガシャッ


子スライム「ピーッ…」


スライム「」

ガップリン「」


王様(……魔物)

王様(それも、この小さなスライムの家族……なのだろうか)

< 「ブルルッ」

王様(とりあえず待たせている馬を連れてくるか)



子スライム「ピー……」




< ぽんぽん


王様「魔物は不可思議な粒子となって世界に溶けると聞く、土に埋めればこの地に還るだろう」

子スライム「ピーッ?」

王様「いつか、良い出会いがあるやもしれんぞ?」

子スライム「ピー…」


王様(ふむ)


王様「こちらは、どうしたものか」

ダークエルフ「…スゥ……スゥ……」

王様(私の右腕ならば一撃で意識を奪えるとは思っていたが……殴打した背中に痣はない)

王様(……必要以上に力を加えぬように、加減したのだろうか)ガシャッ


王様「よくわからんな、右腕のお前は」ギシッ…

子スライム「ピーッ?」


馬「ヒヒィンッ!!」ブルルルァ!


王様「どうどう……何だ、どうしたと言うのだ 」

馬「ヒヒィンッ!! ブルルッ! ヒィィアォ!」

< ユサユサ

ダークエルフ「……っ…」ミシッ


王様「あぁ……背に乗せたエルフが嫌か」

王様「モテる王はつらいな…全く」

王様「他所の女は乗せられないのか? 私とそのエルフはさっき会ったばかりの他人……相乗りくらい良かろう」


馬「ヒィィィンッ!! ブルルルルルァァ!!」


王様「ちょっとまてそなた何故そこで暴れる」



王様(手持ちの角砂糖を食わせたら大人しくはなったが)

王様「よく考えてみれば……そなた♀だったっけ」

馬「ブルルッ… 」パカパカ

子スライム「ピーッ」


王様「ん?」

子スライム「ピッ?」


王様「……」

王様「ま、まぁ……年寄りの話し相手が増えたと思えば、良いか」

子スライム「ピーッ」ポヨン


< キィンッ! ガンッ!

< ボン!!


王様(む……)

王様(この音、近いな…)ガシャッ


子スライム「ピー?」

馬「……ブルルッ」


王様「そなたらは待っておれ、私が見てこよう」

ギアスって単語はクラーク・アシュトン・スミスの小説「7つの呪い」の原題The Seven Geasesから来てるんじゃないの?

>>64 Exactly(その通りでございます)】




エルフ「そっちに言ったぞ! 左だ!!」

< バシャァァァァ……!!

エルフ2「陣形を崩すな! 我々の頼りは一人しかいないんだぞ!?」

< バシャァァァァ……!!






素手ダークエルフ「シャァ・・・!」ダダッ

素手ダークエルフ2「ジャァアアアア!!」ダダッ

素手ダークエルフ3「シャァァァ!!」ダダッ

格闘ダークエルフ「シャッッ!!」ヒュッ





エルフ3「う、うわぁ! 一人だけなんだ、あの速さ……」

エルフ4「怖じ気づいてる暇があるなら、魔法を撃つのよ! このままじゃ圧倒される…!!」

エルフ5「矢がもう無くなった! 剣をこっちに渡してくれ!」

エルフ6「左翼、陣形崩れてきてるぞ! 危ない!!」


王様(これは……)

王様(エルフと……あの、褐色肌のエルフ達で戦っている…のか)

< ザッ

王様「!」



鉤爪ダークエルフ「しゃぁぁあああぁあ……」ザッ

短剣ダークエルフ「シャァァ!」ザッ



王様「……流れで少し戻れそうにはない、無事でいるのだぞ」ガシャッ

王様「馬とスライム」


王様(……なぜか空しいな)


エルフ「ぎゃああっ……」

< ドサッ…

素手ダークエルフ「シャァァァ・・・ッ」ズバッズバッ


ドレスエルフ「くっ……立て、火柱ぁ!!」



< ボン!!

素手ダークエルフ「しゃ…ぎ…ぁ!!」ジュゥゥゥ…

素手ダークエルフ「ぁ……た、すけ…て」ドサッ



ドレスエルフ「…ッ、撤退しましょう!!」

ドレスエルフ「この作戦は失敗です、撤退、撤退です!!」


エルフ7「そんな……大勢の仲間がまた殺られたのに…」

ドレスエルフ「相手も同胞だという事を思い出しなさい! 殺意に身を委ねては、生き残れる戦いも生き残れない!」


ドレスエルフ「次の魔法で周囲のダークエルフを吹き飛ばします……全員、それまで耐えなさい!!」キィィィンッッ



エルフ5「くそ……陣形が崩れてきたな」

< バシャァァァァ…

エルフ8「『姫様』をお守りしていれば、どうにか離脱は出来るわ……耐えるのよ」ザパッ

エルフ5「そろそろ水流移動の魔法を使えるだけの魔力が切れる…どっちみち、私は駄目さ」チャプンッ…

エルフ2「なら私も付き合うよ、あっちのダークエルフさ……私の妹なんだ」

エルフ5「エルフ2……お前…」



< タッ! タンッ! ダンッ!!

格闘ダークエルフ「シャァァァ!!」ヒュッ



エルフ8「来たわよ…ッ」



< ドゴォ!!

格闘ダークエルフ「!?」メコォッ

王様「これで八人か……まだ何人かおるようだな」ギギッ

格闘ダークエルフ「……シィィァア」ザッ


王様(! このエルフ、今の打撃を上手くいなしたのか?)


エルフ5「あの老人は!?」

エルフ2「何だか知らないけどチャンスだ……陣形を組み直して防御に徹しよう」

エルフ5「ええ……」



格闘ダークエルフ「シャァァァ!! シャァアッ!!」ギュルンッッ


王様「足払いと旋回後蹴、来るぞ」ギシッ

< ガシャッ…ギギッ


< ヒュッ!
< ガガガン!!

王様(弾いて怯んだその華奢な脇腹に、渾身の拳を叩き込め)

格闘ダークエルフ「!!」


< ドゴォ!!

格闘ダークエルフ「かッ……ァは………」ぐらっ

< ドサッ……



王様(……口に出しての指示より、念じた方が早いのかもしれぬな)

王様(さて、とりあえず……)

王様(あちらの懐かしき貴婦人に挨拶に行くとしようか、我が右腕よ)ガシャッ



ドレスエルフ「……マナの集まりが悪い…」キィィィンッッ

ドレスエルフ(通常時ならばとっくにマナを結晶化出来るのに、全く出来ない…!)

ドレスエルフ(いったい、なぜ……っ)


< バッ!

素手ダークエルフ6「シャァァァ!!」


ドレスエルフ「!?」

エルフ9「姫様!」バッ

ドレスエルフ「だ、だめです! よしなさ…」

< ズバァッ!

エルフ9「がぁあ・・・!!」ドサッ


ドレスエルフ「そんな…ッ」



素手ダークエルフ6「シャァァ・・・」ギロッ


ドレスエルフ「くっ……まだ、魔法が撃てないのに…… 」

素手ダークエルフ6「シャァアアアアッ!!」

ドレスエルフ「……ここまで、でしたか」



王様「そのような諦めの早さならば、数年前の国王会議でも少し折れて欲しかったものだ」

ドレスエルフ「…え」

王様「久しいではないか、『森の女王』よ」ヒュッ!!

< ドゴォ!!

素手ダークエルフ6「ぎひぃ!?」ドサッ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年04月25日 (金) 05:07:52   ID: XtsdWUx1

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