あかり「みんながあかりの事を無視するよぉ……」 (125)

~元旦~

ちなつ「はー、元旦に集まったのはいいんですが、京子先輩が居ないと何か盛りあがりませんね」

あかり「うん……京子ちゃん、お正月早々風邪なんてかわいそうだよね……」

結衣「昨日お見舞いに行った時は割と元気だったから、きっと明日には顔を出してくれるよ」

ちなつ「で、ですよね……よし、じゃあ気を取り直して盛り上がって行きましょう!」

あかり「おー!」

ちなつ「じゃあ、あかりちゃん?景気づけに何か面白いこと言って?」

あかり「え、ええー!突然そんな事言われても……」

結衣「あかり、頑張れ」

あかり「えっと、えっと……そ、そうだ!今年は午年だったよね!?」

ちなつ「うん」

あかり「午年に食べたお節料理も、とっても、うまかったよぉ!」

結衣「……」

ちなつ「……」

あかり「うまかった……よぉ……」

あかね「……」

ともこ「……」

あかり「う、うま……」

結衣「……」

ちなつ「……」

あかね「……」

ともこ「……」

あかり「う、ううっ///」


キャー

1/7

赤座宅


ピピピピピピピピピピ


あかり「……ん、んぅ」モゾモゾ

あかり「あれえ、どうしてこんな時間に目覚ましなんて……」

あかり「……」ボー

あかり「……あ、そっか、今日から、学校始まるんだった」

あかり「……」

あかり「……」

あかり「よしっ」ガサゴソ

タッタッタッタッ


あかり「お姉ちゃん、おはようっ」

あかね「……」

あかり「お姉ちゃん、何してるの?」

あかね「……」ゴソゴソ

あかり「あ、そっか、お弁当作ってるんだ、お姉ちゃんも今日から学校?」

あかね「……」

あかり「……ご、ごめんね?お姉ちゃん忙しいんだよね?」

あかね「……」

あかり「じゃ、あかり、今から学校だから、行ってきます!」

あかね「……」

あかり「行ってきまーす……」

あかり(はあ、お姉ちゃんの様子、今日もおかしかったなあ……)

あかり(あれ以来、ずっとだよお……)

あかり(もう、前みたいに普通に接してくれることはないのかな……)

あかり(……)

あかり「だ、だめだめっ!今から学校なんだから、こんな暗い顔してたら皆心配しちゃうよお」プルプル

あかり「よ、よーし!学校、頑張るぞっ!」

あかり「あ、京子ちゃんだ!結衣ちゃんも!」

あかり「おーい!京子ちゃーん!結衣ちゃーん!」タッタッタッ


京子「……」ボソボソ

結衣「……」ボソボソ


あかり「2人とも、何のお話してるの?」

京子「……」

あかり「京子ちゃん?」

結衣「……」

あかり「結衣ちゃん?」

京子「……」

あかり「あ、あはは、あかりには内緒のお話……なのかな?」

結衣「……」ペッ

あかり「……!」

あかり「ゆ、結衣ちゃん、お行儀悪いよ?」

結衣「……」

京子「……」

あかり「あ、2人とも、待ってよぉ!」タッタッタッ


あかり(うう、2人もやっぱりおかしいよお……)

あかり(けど、あんな事があったんだから、仕方ないのかもね……)


あかり「……そういえば、ちなつちゃんはどうしたのかな」

あかり「あれ以来、姿見てないけど……」

~学校~

ザワザワ


あかり「うぅ……何か、新学期に教室入るの、ちょっと緊張するよお……」

あかり「け、けど、頑張るって決めたし……」

あかり「よ、よーしっ!」


ガラッ


あかり「み、みんなー!おっはよー!」

シーーーーーーーーーン


あかり「み、みんな?」


シーーーーーン


あかり(あかりが教室入った途端、みんな黙っちゃった……)

あかり(さっきまでは、割と騒がしかったと思うんだけど……)

あかり(あ、そ、そっか、多分そろそろホームルームが始まるから、みんな準備する為に黙ったんだよね)

あかり(きっとそうだよね……)


あかり「櫻子ちゃん、向日葵ちゃん、おはよっ!」


櫻子「……」

向日葵「……」

あかり「あ、あれ?あかりの机が……」


ベチャー


あかり「……何か、変なドロドロだらけになっちゃってる……どうしたんだろ」

櫻子「……」

向日葵「……」

あかり「あ、あはは、そっか、きっと冬休みの間に、汚れが溜まっちゃったんだよね」

あかり「そうだよね、二週間もお休みだったんだし、汚れも溜まるよねっ!」

向日葵「……」

あかり「ね!櫻子ちゃんも、そう思うよねっ?」

櫻子「……」

あかり「……あはは」



あかり「お掃除、しよっと……」ゴソゴソ

あかり「よし、何とか綺麗になったよお……」

あかり「先生が来る前に終わって良かったぁ」

あかり「……あ、あれ?もう9時過ぎてる」

あかり「先制遅いなあ……」

あかり「どうしちゃったんだろうね、向日葵ちゃん」

向日葵「……」

あかり「……どうしちゃったんだろ」

 



結局、お昼を過ぎても先生は教室に来なかった



 

あかり「はあ……」

あかり「先生、どうしちゃったんだろうね、櫻子ちゃん」

櫻子「……」

あかり「もしかして、冬休み終わったの、忘れちゃってるのかなあ」

向日葵「……」

あかり「……」

櫻子「……」

あかり「あ、あかり、そろそろ部活に行くねっ!」ガタンッ

あかり「じゃ、じゃあ、みんな、さよなら~!」タッタッタッ

バタンッ


ザワザワザワ


あかり(……うう、あかりが居た時は、みんな静かだったのに)

あかり(あかりが教室を出たら、みんなお話しはじめた……)

あかり(あかり、あかり、邪魔なのかなあ……)

あかり(今日はまだ、誰ともお話できてないよお……)

あかり「……」

あかり「そ、そうだ、部室に行こうっと」

あかり「もしかしたら、ちなつちゃんとかも来てるかもしれないしっ」

あかり「そ、そうだ、そうしようっと!」タッタッタッ

~娯楽部~


あかり「……」ソーッ

結衣「……」

あかり「あ、結衣ちゃん」

結衣「……」

あかり「結衣ちゃん、ひとりなの?京子ちゃんは?」

結衣「……」

あかり「おトイレ、かなあ……」

結衣「……」

あかり「……」

あかり「……ね、結衣ちゃん」

結衣「……」

あかり「結衣ちゃんは、前に行ってくれたよね」

結衣「……」

あかり「こんな事が、ずっと続くはずないって」

結衣「……」

あかり「きっと、しばらくしたら、全部解決するはずだって、言ってくれたよね」

結衣「……」

あかり「言って……くれたよね?」

結衣「……」

あかり(……結衣ちゃん、あれ以来ずっと喋ってくれないよお)

あかり(何だか、凄く、寂しいな……)

結衣「……」

あかり「……」

結衣「……」

あかり「京子ちゃん、遅いね」

結衣「……」

あかり「あ、あかりも、ちょっとおトイレ行って来るね!」

あかり(はあ……どうしよう、このままお家に帰ろうかな……)

あかり(けど、お家にはお姉ちゃん達が居るし……)

あかり(……そうだ、ちなつちゃんだ)

あかり(ちなつちゃん、今日お休みみたいだし、ちなつちゃんの所へ行こうっと)

あかり「えへへ、ちなつちゃんと会うの、久しぶりだなあ」

あかり「きっと、ちなつちゃんなら、喜んでくれるよねっ」

あかり「……そうだ、一応、結衣ちゃん達にもそう言ってこようっと」

あかり「突然帰ったら、2人とも心配するかもしれないし」

あかり「……」ソーッ



京子「……」ボソボソ

結衣「……」ボソボソ



あかり(……京子ちゃん達、あかりが居ない所では、何かお話してるんだよね)

あかり(何のお話してるのかな)

あかり(……)

あかり(ご、ごめんね、京子ちゃん、結衣ちゃん、立ち聞きみたいなことしてごめんね)ソーッ

 



京子「ご……ご、ごご、ご……」

結衣「……き、き……き……」




 

 




あかり(何言ってるか、判んないや……)




 

~吉川宅~


あかり「ちなつちゃんのお家、久しぶりだよねえ」

あかり「けど、何かちょっとイメージが変わったかなあ?」

あかり「窓も全部カーテンが閉まってるし、そこら中に、板が打ちつけられてる」

あかり「りふぉーむってやつかなあ」

あかり「……えっと、インターホン押して……あれ?」スカスカ

あかり「音が鳴らなくなってるよお……」

あかり「ど、どうしよう……」

あかり「もしかして、お留守なのかな……」

あかり「だったら、今日はもう帰って……」

あかり「……あれ?」

あかり「今、二階の窓のカーテンの陰から、誰かがこっちを見てたような……」

あかり「あの部屋って、ちなつちゃんのお部屋だよね?」

あかり「やっぱり、ちなつちゃん、お部屋にいるのかも……」

あかり「ちょっとだけ、ノックしてみよっと……」


コンッコンッ


あかり「あ、あのっ!赤座あかりですっ!」

コンッコンッ


あかり「ち、ちなつちゃん、居ますかっ!」

あかり「……」

あかり「……」

あかり「……」


キィィィィーーーー


あかり(あ、扉が開いた)

「……あかりちゃん?」


あかり「ちなつちゃん?」


「……どうしたの、こんな所で」


あかり「よ、良かったぁ、ちなつちゃんは普通だぁっ……」ウルッ


「……」


あかり「あ、あのね!あかりね!」


「うるさい」


あかり「え……」

「声が大きい」


あかり「あ、ご、ごめんね、あかりちょっと興奮して……」


「1人なの?」


あかり「え?」


「1人できたのって聞いてるの」


あかり「う、うん、そうだよぉ?」


「……そう」


あかり「あ、あの、ちなつちゃん?どうしてドアのチェーン越しにお話するの?」

「……怪我は?」


あかり「え?」


「怪我とか、してない?見たところ、大丈夫そうだけど」


あかり「う、うん、あかりは元気だよ?」


「……」


あかり「あの、ちなつちゃ……」


グイッ


あかり「ひゃっ!?」

あかり「い、いたた、酷いよ、ちなつちゃん、突然引っ張りこむなんて……」

ちなつ「……」ガチャガチャ

あかり「ちなつちゃん?どうしたの?」

ちなつ「鍵、閉めてるの、危ないから」

あかり「あぶない?」

ちなつ「……」

あかり「あ、あの……」

ちなつ「……あかりちゃん」ギュッ

あかり「ち、ちなつちゃん?」

ちなつ「よかった、よかったよぉっ、無事で、無事で本当に良かった、良かった……」グスッ

あかり「ちなつちゃん……」

ちなつ「私、私、あれから、ずっと1人で、1人でっ」ヒック

あかり「ど、どうしちゃったの、ちなつちゃん?」

ちなつ「ずっと1人で家に籠ってて、電話もつながらなくなるし、不安でっ」グスッ

あかり「ちなつちゃん、ともこさんとか、お母さん達は?」

ちなつ「……おねえ、ちゃん」

あかり「う、うん、お正月は、家族で家にいるって言ってたよね?」

ちなつ「……おねえちゃんたちは、にかいにいるよ」

あかり「二階に?」

ちなつ「あのね、私がね、あねえちゃんたちを、二階の私の部屋にとじこめたの」

あかり「え……」

ちなつ「それでね、私はずっと、ずっと1階の居間に隠れてたの」

ちなつ「ずっと、静かにしてて」

ちなつ「そうしないと、気付かれちゃうし」

ちなつ「一人や二人だったらね、扉とか破られないけど、いっぱいになるとね」

ちなつ「あいつら、扉破って入ってくるの、だから、だから、しーっ」

あかり「ち、ちなつちゃん……」

ちなつ「あかりちゃん、しーっ」

あかり「う、うん……」

ちなつ「静かにしてれば、平気だから」

ちなつ「あいつら、気付かないから、ふ、ふふ、馬鹿だから」

ちなつ「きっと脳味噌無いんだよ、または腐ってるか」

ちなつ「そう、そうだよね、結衣先輩も言ってた、電話が不通になる前に励ましてくれた」

ちなつ「ずっとこんな事が続くはずないって」

ちなつ「あいつらだって、ずっと歩いていられるわけじゃないって」

ちなつ「そのうち腐るって」

ちなつ「頭も手も足も腐って動けなくなるって」

ちなつ「そうしたら、そうしたら外に出られるよね」

ちなつ「また、結衣先輩や京子先輩たちとも会えるよね」

ちなつ「そうだよね、あかりちゃん」

あかり「……」

ちなつ「ね、あかりちゃんもここにいよ?」

あかり「え?」

ちなつ「ここだったら、大丈夫だよ、ご飯もちゃんと用意してあるし」

ちなつ「多分、3週間くらいなら持つと思う」

ちなつ「きっと、あいつらだって3週間もたてば、腐って動けなくなるよ、だから、ね?」

あかり「ちなつちゃん……」

ちなつ「ね?いいよね?」

あかり「……ごめん」

ちなつ「は?」

あかり「あかり、そんなに遅くまではいられないよお、お家に帰らないとお姉ちゃん達、心配するし」

ちなつ「……何言ってるの、あかりちゃん」

ちなつ「帰れるはずないじゃない、だってここから、あかりちゃんの家までどれくらい距離があると思ってるの?」

ちなつ「道は、あいつらでいっぱいだよ?」

ちなつ「だから、だからね?あかりちゃんずっとここに居よう?ね?」

あかり「けど、明日も学校があるし……」

ちなつ「学校!?」

あかり「うん、学校」

ちなつ「行けるはずないでしょ!?」

あかり「そんなことないよお」

ちなつ「……あかりちゃん、さっきから何言ってるの」

あかり「あ、あのね、ちなつちゃん」

ちなつ「なに」

あかり「あの人達ってね、ちなつちゃんが言うほど、酷い人達じゃないよ?」

ちなつ「は?」

あかり「ちょっと、ドロドロの液体をあかりの机にかけたりするけど、悪気があってやってる訳じゃないと思うし」

ちなつ「わ、悪気も何も、あいつら凄い勢いでこっちを食べようとしてくるじゃない!」

あかり「それは、そうだけど……」

ちなつ「というか、良く考えたら、あかりちゃん、どうやって私の家まで来たの?」

あかり「え?道を歩いてだけど……」

ちなつ「……道って、あの、大通りを?」

あかり「うん」

ちなつ「あいつらが、沢山いなかった?」

あかり「いた」

ちなつ「え」



ドンドンッ

ちなつ「……!」

あかり「……!」


ドンドンドンドンッ!


あかり「ち、ちなつちゃん、誰かが扉を叩いてるよ?お客さんじゃないかなあ」


ドンドンドンドンッ


ドンドンッ


ドンドンッ


パリンッ


ちなつ「あ、あ、う、うそ、うそっ……」

ちなつ「うそ、うそっ!ずっと大丈夫だったのに!ずっと気づかれずに隠れてたのにっ!」


ドンドンドンッ

パリンパリンッ

ドンドンッ


ちなつ「は、入ってきちゃう、あいつらが、入ってきちゃうっ!」

あかり「ち、ちなつちゃん?落ち着いて……」

ちなつ「あ、あかりちゃん、逃げよう?ね?一緒に逃げよ?」

あかり「う、うん、いいけど……どこへ?」

ちなつ「に、二階に……」

あかり「二階って、ともこさんたちが居るんだよね?」

ちなつ「……」

あかり「ちなつちゃん?」

ちなつ「は、ははは、だめ、だめだよ、そう、もう駄目なんだ……もう」

あかり「ちなつちゃん、大丈夫?ちなつちゃん?」

ちなつ「だって、あんなにいっぱい、あいつらが入ってきてるもん」

ちなつ「私は、きっと食べられるんだ、あいつらに、あいつらに……」

あかり「ちなつちゃん!危ない!」

ちなつ「え?」


ガブッ


ちなつ「痛っ……!」

ちなつ「やっ、だ、だめ、やだ、やっぱりやだっ!」

ちなつ「た、助けてっ、助けてあかりちゃんっ!」


ガブッ


ガブガブッ



あかり「あ、ああ……ち、ちなつちゃんが、ゾンビさん達に食べられてる」

あかり「だ、駄目だよっ!ゾンビさん達、駄目っ!」グイッ


ちなつ「痛いっ、痛いよぅっ、いたいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」


あかり「だめ!ちなつちゃんを食べちゃ駄目っ!」グイグイッ

あかり「う、うう、駄目だよぉ、またみんな、あかりの事を無視するよぉ……」

あかり「ど、どうしてなのかな、どうして無視するのかな」

あかり「あかりだって、あかりだって……」


ちなつ「あ……あかりちゃ……」


あかり「あかりだって、みんなみたいに、ゾンビさんになってしまいたかったのに……」

ちなつ「……たす……け……」

あかり「そ、そうだ、あかりが、あかりがちなつちゃんに覆いかぶされば……」

あかり「そうすれば、ゾンビさん達はちなつちゃんの事を無視してくれるんじゃ……」

ちなつ「……」

あかり「ちなつちゃんっ!」ガバッ

ちなつ「……あか……り……」

あかり(あ、ゾンビさん達が……)



あかり(……あかりを見た)

あかり(そっか、きっと、あかりは美味しそうじゃなかったから、今まで無視されてたんだ)

あかり(美味しそうなちなつちゃんの血がついたから、無視されなくなったんだ)

あかり(だったら……もう、ゾンビさん達の仲間に、入れてもらえるかな)

あかり(京子ちゃんや結衣ちゃんや櫻子ちゃんや向日葵ちゃん達の仲間に、入れてもらえるかな)

あかり(そうだったら、嬉しいなあ……)


ううううう……


あああああ……


あかり(ああ、あかりとちなつちゃんに、ゾンビさん達が群がってくる)

ちなつ「あかり、ちゃ、逃げ……て……」

あかり「ううん、逃げないよ、ちなつちゃん……」

ちなつ「あかりちゃ……ん?」

あかり「ちなつちゃんと、一緒にいてあげる」

ちなつ「う……うう……」

あかり「だから……一緒に、ゾンビさんになろう?」

ちなつ「うう、痛いよお……痛い……」

あかり「少しの我慢だから、ね?」

ちなつ「ううう……」

 



「キィアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」



 

あかり「ひゃっ!」

ちなつ「……」

あかり「い、今の叫び声は……?」

ちなつ「……」

あかり「あ、あれ?ゾンビさん達が……」

ちなつ「……」

あかり「ゾンビさん達が、帰って行っちゃう……」

ちなつ「……」

あかり「ど、どうして……」

ちなつ「……」


「……ご、ごご、ご」

あかり「あれ、京子ちゃん?」


京子「……ご、ごご」


あかり「結衣ちゃんも」


結衣「……き、き……き」


あかり「……あかりを追いかけて、来てくれたの?」


京子「……」


あかり「……もしかして、さっきの叫び声でゾンビさん達を追い払ってくれたの?」


京子「……ご、ごごご、ご」

あかり「……そっか、ゾンビさん達があかりの事を無視するのって……」

あかり「京子ちゃん達が、居てくれたからなんだ……」


京子「……」フラフラ

結衣「き……き、きき」フラフラ


あかり「あ、あれ?2人とも、もう帰っちゃうの?」


京子「……」フラフラ

結衣「……」フラフラ


あかり「……ばいばい、京子ちゃん、結衣ちゃん」

あかり「また明日、学校でね……」

ちなつ「あ、ああ、あ……」

あかり「ちなつちゃん、痛い?大丈夫?」

ちなつ「あ、ああ……あああ、あか……」

あかり「ごめんね、助けられなくてごめんね」

ちなつ「あか、あ……ああかりちゃ」

あかり「ちなつちゃんは、ゾンビさん達に噛まれたから、もうゾンビさんになっちゃうの」

ちなつ「あ、あああああ……」

あかり「けど、何だか、羨ましいなあ……」

ちなつ「あ……あ……」

あかり「あかりも……あかりも、みんなと一緒に、なりたかったなあ……」

ちなつ「あ……」

あかり「おやすみ、ちなつちゃん」

1/7

赤座宅


ピピピピピピピピピ



あかり「う、ううーん……」

あかり「今日も、学校行くよお……」

あかり「1人は、いやだもんね」

あかね「……」

あかり「お姉ちゃん、おはようっ」

あかね「……」

あかり「うう、やっぱり、反応してくれないよお……」

あかり「まあ、ゾンビさんになったんだから、仕方ないけど……」

あかり「じゃあ、行ってきまーすっ!」

あかり「京子ちゃん、結衣ちゃん、ちなつちゃん、おはようっ!」

京子「ご、ごご……ご……」

結衣「き……きき……きょ」

ちなつ「あ……ああ……あ……」

あかり「あ、三人とも、今日はちょっとだけ反応してくれたっ!」

あかり「わあい!あかり、嬉しいなあ!」

京子「……」

結衣「……」

ちなつ「……」

あかり「うう、そう思ったとたんに無視されたよお……」

あかり「けど、あれだよね、京子ちゃん達、全然腐らないよね」

京子「……」

あかり「結衣ちゃんは3週間くらいで腐るだろうって言ってたけど」

結衣「……」

あかり「……あのね、もしね」

ちなつ「……」

あかり「もし、皆が腐らなくって、成長もしなくて」

あかり「ずっとこんな時間が続くなら」

京子「……」

あかり「きっと、きっとさっきみたいに、あかりの言葉に反応してくれる日が、来てくれるよね?」

結衣「……」

あかり「だからね、あかりは」

ちなつ「……」

あかり「あかりは、そんな日が来るまで、頑張って生きようと思います!」













おわり

>>94の修正


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【西垣奈々】


「私がこのシェルターに入ってもう1週間がたつ」

「そして、外に残った彼女からの通信が途絶えて24時間が経過している」

「恐らく彼女は既に生きてはいないのだろう」

「ざまあみろ」

「この世界に生きている人間は、もしかしたら私が最後なのかもしれない」

「だから残された者の使命として、記録を残したいと思う」

「シェルターに残されたPCは外部と繋がっていたので、そこから得た情報を繋ぎ合わせてみよう」


「事件は七森市から始まった」

「風邪とよく似た症状が大流行したのだ」

「その症状は、潜伏期間が非常に長く、七森市から徐々に都心部まで広がり」

「空港を経由して世界中に広がった」

「気がついた時にはもう遅かった」

「世界の全てが汚染されていた」

「その症状が空気感染する事を突きとめた彼女は、私をシェルターに閉じ込めた」

「私は、その事を今も恨んでいる」

「どうして、私1人を閉じ込めたのか」

「どうして、私を一人ぼっちにしたのか」

「私のその問いかけを一切無視して、彼女は情報だけを私に送ってきた」

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