レイ「765プロの中では誰が好き?」 カヲル「えっ?」(150)

カヲル「何だい? なむこぷろ、って」

レイ「……知らないの?」

カヲル「ああ」

レイ「…………」ハァ

カヲル「そんな露骨にがっかりされてもね」

お、続きか

この二人接点あったっけ

死ぬ前に一回顔合わせてるくらいかね

レイ「……これを貸すわ」

カヲル「? これは……?」

レイ「去年の6月にあった、765プロのライブのBDよ」

カヲル「……へぇ。つまり、『765プロ』というのは歌手の一団ということかい」

レイ「簡単に言えばそうね」

カヲル「そしてこのBDには、『765プロ』が歌を歌っている様子が収録されている……ということだね」

レイ「…………」コクリ

カヲル「まさか、君から音楽を勧められるとは思わなかったよ。前から好きだったのかい?」

レイ「……私は、碇君から教えてもらって知ったわ」

カヲル「シンジ君から? へぇ、それはなかなか興味深いね。ありがとう。帰ったら観させてもらうよ」

レイ「…………」コクリ

これを南斗水鳥拳の人が喋ってると思うと・・・くる・・・!

カヲルきゅんは貴音にいきそう

~翌日・第壱中学校~

シンジ「おはよう、綾波」

レイ「……お、おはよう」ソワソワ

アスカ「? 何ソワソワしてんの?」

レイ「……べ、別に」ソワソワ

シンジ・アスカ「?」

カヲル「おはよう」

シンジ「あ、おはよう。カヲル君」

レイ「!」ガタッ

アスカ「わっ。びっくりした。どうしたのよ」

レイ「……い、いえ……べつに……」ドキドキ

アスカ「?」

カヲル「おはよう、綾波さん」

レイ「お……おはよう」ドキドキ

カヲル「ああ、そうそう。昨日のあれだけど」

レイ「!」ビクッ

カヲル「……凄く良かったよ。どうもありがとう」

レイ「!」パァアア

シンジ・アスカ「??」

シンジ→やよい
アスカ→伊織
レイ→千早
だっけ?

カヲルくんは誰にいったのか

ゲンドウさんは雪歩だっけ?

カヲル君はあずささんとみた

アスカ「なーんだ。765ライブのBDを貸してたのね」

レイ「…………」コクッ

シンジ「でも綾波、いつの間に買ってたの? BD」

レイ「……碇君に借りてたのを返した後、すぐ。アマゾンで買ったわ」

シンジ「……な、なんか綾波、いつの間にか、随分そういう方面に明るくなったね……」

レイ「? そう?」

カヲル「へぇ。はるばるアマゾンから輸入したのかい。それはまた大変だったね」

アスカ「そういう定番のボケはいいから」

カヲル「?」

シンジ「……ところで、カヲル君」

カヲル「何だい? シンジ君」

シンジ「カヲル君は……誰のファンになったの?」

レイ「!」ドキッ

カヲル「……そうだねぇ……。正直、どのアイドルも魅力的だったけど……」

アスカ「けど?」

カヲル「……その中でも、僕の心を最も激しく揺さぶったのは……」

レイ「…………」ドキドキ

カヲル「……双海真美君・亜美君姉妹だね」

シンジ・アスカ・レイ「!」

輸入ww

なんと!

予想外だった

プロデューサーじゃないのか

真の名前を出さないお前らの優しさ

まさかの

お前はホモだろ!

カヲル「? どうしたんだい? 皆。呆けたような顔をして」

シンジ「あ、いや……なんか意外っていうか……」

アスカ「……なんとなく、貴音ちゃんあたりかと思ってたわ」

レイ「……同じく」

カヲル「……ああ、四条貴音君か。確かに、彼女の歌声も素晴らしかった……。満月の夜の下、彼女の開くコンサートのたった一人の聴衆になれたとしたら、この上ない至福だろうね」

シンジ「ああ、それいいなあ。お姫ちんといえば月、ってイメージあるもんね」

カヲル「? お姫ちん?」

シンジ「ああ、貴音ちゃんの愛称だよ。765内では双海ちゃん姉妹がそう呼んでるんだ」

カヲル「ああ、そういえば曲の合間のMCでそういうやりとりがあったね」

レイの話のスレタイ教えろください

アスカ「……んで、なんであんたは双海ちゃん姉妹推しなわけ? 単純に可愛いから?」

カヲル「そうだね……。一言で言い表すならば……『調和』かな」

シンジ「? ……『調和』?」

アスカ「どういうこと?」

カヲル「言葉の通りの意味さ。双海姉妹はそれぞれ、単独でも十分な歌唱力を有しているが……この二人が同時に歌うとき、つまりデュエット曲になると……その可能性は無限大に拡がるんだ」

シンジ「? 可能性?」

カヲル「進化の可能性、とでもいうべきかな。彼女達は、リリンの……失礼、人類の可能性の顕現たるべき存在なんだよ」

シンジ「な……なんか難しいよ。カヲル君」

カヲル「まあ、言葉で説明するより、実際に体験してもらった方が分かりやすいかもしれないね。……君達、ちょっと放課後、付き合ってくれるかい?」

シンジ・アスカ・レイ「?」

おうおう

~放課後・音楽室~

アスカ「……で、なんで音楽室なワケ?」

カヲル「言ったろう? 君達に、実際に『調和』を体験してもらうって」

シンジ「……『調和』を体験って……具体的に何をするの? カヲル君」

カヲル「すぐに分かるよ」

レイ「…………」

カヲル「……さて、では早速始めよう。……この中で、ピアノが弾ける人はいるかい?」

シンジ・アスカ・レイ「…………」シーン

カヲル「……オーケー。それなら、何らかの楽器の演奏経験がある人は?」

シンジ「あ、僕、チェロなら少し」

カヲル「よし。じゃあこっちに来てくれたまえ。シンジ君」

シンジ「?」

アスカ「何する気なの?」

カヲル「まあ見ていておくれ。……さあシンジ君、ここに座って」

シンジ「いや、僕ピアノは……」

カヲル「いいから」

シンジ「……?」スッ

カヲル「では、僕も」スッ

シンジ「? カヲル君も弾くの?」

カヲル「そう。……連弾、さ」

はよはよ

なんでQ展開取り入れたし

ホモの流れが…

シンジ「連弾?」

カヲル「そう。僕の音に君の音を合わせるんだ」

シンジ「そ……そんなの、無理だよ」

カヲル「大丈夫。君は君の思う通りに鍵盤を叩けば良い」

シンジ「……でも……」

カヲル「さあ、いくよ。シンジ君」

シンジ「え、ええっ。ちょ、ちょっと待っ……」

(♪~♪~♪~)

カヲル「ほら、シンジ君」

シンジ「え、えっと」ポン

カヲル「そう! その調子だ」

シンジ「こ、こう?」ポポン

カヲル「良い! 良いよ……君の音」

シンジ「そ、そう……なの?」ポン ポン パン

カヲル「優しく繊細で……思いやりに満ちた音だ」

シンジ「そ、そうなの……かな……」ポポン ポンポン

カヲル「……そして感じてごらん。……君の音と僕の音が織りなす、『調和』を」

シンジ(……『調和』……)ポン パン ポンポン

カヲル「分かってきただろう? 音と音の『調和』。その意味が」

シンジ「う、うん……」ポン パパン ポーン

カヲル「音と音は加法じゃない。乗法の関係なのさ」

シンジ「乗法……」パン ポン

カヲル「1+1は2にしかならない……。でも、1×1は10にも100にもなるんだ」

シンジ(10にも……100にも……)パン ポポポン

Qの流れに…

カヲル「…………!」ジャーン

シンジ「…………っ」ポーン

カヲル「…………」

シンジ「…………」

カヲル「……どうだった? シンジ君」

シンジ「う、うん……なんか……良かった」

カヲル「本当かい?」

シンジ「うん、なんか……楽しかった。……すごく」

カヲル「それは……良かった」

(パチパチパチパチパチ)

シンジ「! アスカ! 綾波……」

アスカ「へぇ。結構いいじゃん」パチパチパチパチ

レイ「……良かった」パチパチパチパチ

カヲル「ありがとう。二人とも」

シンジ「あ……ありがとう」

カヲル「……とまあ、こんな風に……音と音は『調和』することによって……各個の持つ可能性を飛躍的に増幅させるのさ」

アスカ「……まあなんとなく、あんたの言いたいことはわかったわ」

シンジ「つまりカヲル君は、双海ちゃん姉妹のデュエットにその『調和』をみた……ってことなんだね」

カヲル「そう。ただ……さっきの僕とシンジ君の連弾は、全く別個の音同士の『調和』だったけど……双海姉妹の『調和』は……ほとんど同一の音によるものだ」

アスカ「確かに。あの二人って声全く同じだもんね」

カヲル「でも……機械のように寸分違わず同じというわけではない。当然だ、機械ではなく、別個の身体を持つ人間なのだから」

レイ「…………」

カヲル「だが、その微粒子レベルの差異が……二人の音の『調和』をより一層引き立たせている」

アスカ「へぇ。そういうもんなの?」

カヲル「ああ……。ほとんど同じ、だがほんのわずかに異なる……まさに『似て非なる音』」

シンジ「うーん……僕には全く同じに聴こえるけどな……」

カヲル「その二つの音が交わり、重なったとき……最高の『調和』が生まれるんだ」

アスカ「ふーん。……まあ、双海ちゃん姉妹のデュエットが良いってのには全面的に同意するわ」

カヲル「ああ、やはり歌は良い……。リリンの生み出した文化の極みだよ」

シンジ「? リリン?」

カヲル「ああ失敬、気にしないでくれ。……さ、もう下校時間だ。帰るとしようか」

~下校中~

カヲル「そういえば、綾波さん」

レイ「? 何?」

カヲル「君は、どのアイドルのファンなんだい?」

レイ「私は如月千早が好き」

カヲル「へぇ、なるほど。如月千早君か」

レイ「彼女の歌声は人類の至宝」

カヲル「確かにね。僕はまだ『蒼い鳥』『眠り姫』『約束』くらいしか聴いていないけど……彼女の歌声の素晴らしさは、とてもよく理解できたよ」

レイ「……本当?」パァアア

カヲル「ああ。とても奥行きがあって……それでいて、透明感に満ち満ちた声だね」

レイ「…………」コクリ

カヲル「ちなみに、他に彼女の曲でお勧めはあるかい?」

レイ「……全部、と言いたいところだけど……最近はよく『rise』を聴いているわ。カバー曲だけど」

カヲル「へぇ。どんな歌なんだい?」

レイ「英語とロシア語の組み合わさった複雑な歌詞を、見事に歌い上げているわ」

カヲル「へぇ。君は英語のみならずロシア語にも通じていたのかい」

レイ「いいえ、全く分からないわ。ちなみに英語もよく分からない」

シンジ「綾波、この前の英語のテスト赤点だったもんね!」

レイ「…………」シュン

アスカ「バ、バカ! 何も今言わなくてもいいでしょ!」

シンジ「あ、ご、ごめん、綾波」

レイ「……いい」

シンジ「あ……綾波はネルフの関係で学校休むこと多いもんね! だ、だから仕方ないよ! うん!」

レイ「……ありがとう」

カヲル「……まあ、音楽に国境は無いからね。……ところで、シンジ君は誰が好きなんだい?」

シンジ「僕? 僕はもちろん“絶対的天使”高槻やよいちゃんだよ」

カヲル「(“絶対的天使”……?)なるほど。では、シンジ君はやよいちゃんの何処が好きなんだい?」

シンジ「えっ……?」

カヲル「?」

シンジ「ごめん、カヲル君……。君が何を云っているのか、分からないよ」

カヲル「え?」

シンジ「だって……『やよいちゃんの何処が好きか』なんて質問、『空気の中のどの成分が好きか』って聞いてるようなもんじゃないか」

カヲル「……なるほど。空気の中のどの成分が欠けても、人が生きていくことはできない……。シンジ君にとって、やよいちゃんはそのような存在なんだね。よく分かったよ」

シンジ「ふふっ……分かってくれて嬉しいよ、カヲル君……」

アスカ「……いや何言ってんの、あんたら」

カヲル「ちなみに君は? 式波さん」

アスカ「へ? 私? わ、私はまあ……皆好きよ」

カヲル「ふうん?」

シンジ「…………」ニヤニヤ

アスカ「な、何よあんた……何か言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ!」

シンジ「え? はっきり言っていいの? アスカ」ニヤニヤ

アスカ「……ごめん、やっぱやめて」

カヲル「?」

レイ「…………」クスッ

しえ

~同日夜・ゼーレのモノリス群が浮かぶ湖畔~

SEELE01「……タブリス。用があればこちらから連絡すると言っておいたはずだが」

カヲル「そうつっけんどんにしないでくれよ。用があるから連絡したんだ」

SEELE02「……して、何用か」

カヲル「単刀直入に言うよ。……765プロの……いや、双海姉妹のデュエットの聴けるライブに行きたい」

SEELE01「いいだろう」

カヲル「ああ、心配しなくても、理由は後でちゃんと……えっ?」

SEELE03「一週間後に竜宮小町メインのライブがあるが、そこには双海真美も出演する」

カヲル「……えっ、えっ?」

SEELE04「我らの統計によれば、双海亜美・真美が同時に出演するライブでは、実に95%超の確率で同姉妹のデュエット曲が披露されている」

カヲル「…………」

SEELE05「左様。なお双海姉妹はMCの観客受けも良く、そのことも双子のデュエット披露を後押しする積極材料といえるだろう」

カヲル「……えーっと……」

人類補完委員会ェ……

こいつらもか…

カヲル「……ちょっと、いいかな」

SEELE01「何か不満か。確かに席はステージからやや離れてはいるが……」

SEELE06「しかし一週間後というタイムスパンを考慮するとこれ以上の選択肢はないぞ」

SEELE05「左様。この機を逃すと次のライブはまた数ヶ月先に――……」

カヲル「い、いや……そうじゃなくてね」

SEELE01「? 何だ」

カヲル「なんで、その、あなた達は……そんなに765プロに詳しいんだい」

SEELE01「愚問だな」

カヲル「いや、至極真っ当な疑問だと思うよ」

SEELE07「それは……765プロが……否、765プロに所属する『あるアイドル』が……我々の計画にとっての、要だからだ」

カヲル「!?」

補完する気ねえだろ

アスカが伊織ファンのSSの人?

シゲルだっけ?声優ネタできるとしたら意外とこいつだけか?

こいつらが人類補完計画進める理由が
お熱のアイドルと物理的に溶け合いたいが為だけだとしても驚かない

カヲル「……『あるアイドル』って……?」

SEELE01「そのアイドルとは―――天海春香」

カヲル「!? 春香さん……だと……?」

SEELE05「左様。彼女こそ、我らの祀る神に相応しい」

カヲル「神……?」

SEELE02「彼女のアイドルとしての資質、実力を客観的に評価すると……765プロの中でも5~6番目といった程度だが」

カヲル(妙にリアルだな)

SEELE03「しかし彼女には、他のアイドルには無い強固なる特性がある」

SEELE04「それはすなわち、群衆をひれ伏させ、崇め奉らせるに足る絶対的統率力」

SEELE06「それこそ、我等の計画を遂行させるにうってつけというわけだ」

カヲル「なるほどね……春香さんを神とし、彼女を崇め奉ることにより人類を一つにする……というわけか」

SEELE05「左様。できそこないの群体である人類を、『天海春香の下僕』という完全なる単一の生命体に人工進化させる」

SEELE01「それが、我らの目指す人類補完計画の真の姿」

SEELE07「通称『春閣下計画』だ」

カヲル(まんまだな)

わろた
王国民かよ

のヮの

SEELE01「……まあぶっちゃけ、私個人としてはむしろ高槻やよいちゃんを推したかったのだが―――」

SEELE02「いやお前今更何言うてんねん。多数決で決めたやろ」

SEELE03「空気読めや」

SEELE01「ご、ごめん」

カヲル「…………」

SEELE01「……と、いうわけでライブは先ほど述べたもので良いか。タブリス」

カヲル「あ……ああ、願ってもないよ」

SEELE06「では、チケットは今日明日中にも速達で送っておく」

カヲル「ああ、助かるよ。あと、できれば四枚お願いしたいんだけど」

SEELE05「よかろう」

カヲル(なんかえらい寛大だな)

SEELE07「なお、チケット代はお前の給料から差し引いておく」

カヲル「えっ」

SEELE01~07「すべてはゼーレのシナリオ通りに」ブンッ

カヲル「あ、ちょっ……」

カヲル「…………」

カヲル「……ちっ……ケチな老人達め……」

キールざまぁ

全人類まこまこりん計画始動しろ

~翌日・第壱中学校~

カヲル「……というわけで、今週末の765プロのライブのチケットが手に入ることになったんだけど、よかったら君達も是非一緒に――」

シンジ・アスカ・レイ「行く!」ガガタタタッ

カヲル「!? あ、ああ、そうかい……。それはよかったよ」ドキドキ

シンジ「ありがとう……! ありがとうカヲル君……! 今度お礼に、765ウエハースのおまけのやよいちゃんシール(ダブリ)あげるよ!」

カヲル「あ……ああ、ありがとう……シンジ君」

アスカ「と、特別に、私の視界に入ることを許してあげてもいいわ!」

カヲル「えっ……。今まで許されてなかったのかい僕は……」

レイ「……渚君」

カヲル「? なんだい? 綾波さん」

レイ「……ありがとう」

カヲル「……いや、お礼を言うのは僕の方さ」

レイ「?」

カヲル「僕は君のおかげで……765プロに……双海姉妹に、出会えたのだから」

レイ「……!」パァアア

カヲル「ライブ……思う存分、楽しもう」

レイ「…………」コクリ

~一週間後・ライブ会場~

シンジ「あ~。いよいよ開演だ……緊張するなあ」

アスカ「ああ……もうすぐ……もうすぐで……」

カヲル「……式波さん、大丈夫かい? なんか目が血走ってるけど……」

レイ「心配要らない。いつものことだから」

カヲル「? まあ、それならいいけど……」

シンジ「! 場内の照明が落ちた!」

レイ「サイリウムの海……綺麗……」

カヲル「これは……映像で観るのとは全然違う……」

(突如、スポットライトが照らされるステージ)

伊織「キミが触れたから 七彩ボタン~♪」

アスカ「きゃあああああ!! 伊織様ァあああああああッ!!」

カヲル「!?」ビクッ

伊織「すべてを虹にか~え~たよ~♪」

アスカ「あああ……伊織様ぁ……! 今日も……今日もこの卑しい雌アスカは、最大望遠28,34mの距離から貴女を見守っておりますわ……!」

カヲル「……えっ、と」

シンジ「カヲル君、ぼーっとしてないでコール入れて」

カヲル「えっ」

レイ「サイリウムはピンク、パープル、イエローの中から適宜選択。秋月プロデューサーに敬意を表してグリーンでも可」

カヲル「え、あ、はい」

私怨

ケンスケは律っちゃんファンだろうな

あずさ「『大人になったらね』♪ ちょっと油断してる~♪」

シンジ「はぁ……良いなぁ……生あずささん」

レイ「とてもよく通る声ね」

カヲル「『隣に…』あたりも歌ってほしいね」

亜美「ほらね♪ 気づい~た~ら~♪」

シンジ「お、亜美ちゃんのソロだよカヲル君」

カヲル「ああ……」

亜美「同じ♪ 眼のた~か~さ~♪」

カヲル「…………?」

シンジ「? どうしたの? カヲル君?」

カヲル「……いや……」

伊織「いつの間に~か~♪ 少女じゃな~い~♪ 驚~く~でしょう~♪」

アスカ「ああああぁああっ!! 伊織様伊織様伊織様ぁああああはぁああんっ!!!」

シンジ「どこか具合でも悪いの?」

カヲル「……いや、何でもないよ。ありがとう」

シンジ「そう? ならいいんだけど」

レイ「…………」

~二時間後~

シンジ「……ふぅ。もう次の双海ちゃん姉妹のデュエット曲で最後かあ」

アスカ「なんかあっという間だったわねぇ」

シンジ「そりゃそうだろうね」

アスカ「え?」

シンジ「いや、何でも」

アスカ「竜宮小町はさることながら、他のアイドル達も流石だったわね」

シンジ「うんうん。『Next Life』は響ちゃんのダンサブルな動きが圧巻だったし」

レイ「四条貴音の『風花』は鳥肌が立った」

アスカ「あと、真ちゃんの『自転車』の最後のコールは最高だったわ」

シンジ「ああ、『大好きーっ!』のところね」

レイ「コールを入れると、アイドル達と一体になった気持ちになれる」

シンジ「そうだね。カヲル君はどうだった? 初めてコールを入れてみて」

カヲル「…………」

シンジ「? カヲル君?」

カヲル「え? あ、ああ……なんだい? シンジ君」

シンジ「…………?」

カヲル君……

亜美「会場の兄ちゃん姉ちゃ~ん! まだ元気残ってるかな~?」

観客「ウオォオオオオオオ!!!」

亜美「えっとねぇ、最後は亜美と真美のデュエット……のはずだったんだけど……」

シンジ「?」

亜美「実は……真美が風邪引いちゃって、今日来られなかったんだ~」

観客「エエエエェェェェェェエエエ」

亜美「でもでも! 最後なのに亜美一人じゃあ寂しいし、真美に会いに来てくれた兄ちゃん姉ちゃんもがっかりしちゃうだろうから……」

シンジ「?」

亜美「このスクリーンに! 真美の過去のライブ映像を映して、仮想デュエットをすることになったんだよー!」

観客「ウオォオオオオオオ!!!」

亜美「だから皆も、真美もここにいると思って、最後まで聴いていってね~!」

観客「ウオォオオオオオオ!!!」

亜美「それじゃあいくよ~ん。『スタ→トスタ→』!!」

観客「ウオォオオオオオオ!!!」

亜美真美好きとかわかってるなカオル君

シンジ「へぇ。仮想デュエットかあ。でも真美ちゃんがいないのは残念だなあ」

アスカ「そうねぇ。やっぱり二人揃っての双海ちゃん姉妹だし……」

シンジ「まあ愚痴っても仕方ないか。今は『スタ→トスタ→』のコールに全力を注入しよう! ね、カヲル君!」

カヲル「…………」

シンジ「……カヲル君?」

カヲル「……う……」

シンジ「え?」

カヲル「……違う……」

カヲルくん…

まさか見抜いた…?

シンジ「カヲル君? もう曲始まってるよ?」

カヲル「…………」

シンジ「カヲル君!?」

アスカ「ちょっとシンジ! 何やってんのよ。最後なんだからちゃんとコール入れなさいよ!」

シンジ「あ、うん……ごめん、アスカ」

レイ「…………」

カヲル「……双海姉妹は……真美と亜美……二人揃って、初めて双海姉妹なんだ……」

亜美「タリラン Turn it up! 無敵!」

カヲル「そう……真美と亜美……二人揃って……」

亜美「チカラ 無から 無限 yeah! yeah!」

カヲル「なのに……なのに……」

亜美「元気 Get it on! 激論♪」

カヲル「……今……スクリーンに映し出されている映像は、さっきの説明の通り……双海真美で間違いない……」

亜美「地球 無休 夢中♪」

カヲル「……だが……」

亜美「アハハン♪ Rise your hands! 素敵!」

カヲル「……今……このステージで歌っているのも……双海真美だ……!」

亜美「期待♪ いっぱい♪ 2倍 hu! hu!」

カヲル「……どういうことだ……!?」

シンジ「カヲル君!? カヲル君もコール入れるの手伝ってよ!!」

亜美「適当♪ Take it on! 適温」

カヲル「亜美と真美……二人いなければならないのに……」

シンジ「カヲル君!? ねぇカヲル君ってば!」

亜美「野望♪ 陰謀♪ レインボー♪」

カヲル「……両方とも真美なんて……そんな、ことが……!」

シンジ「カヲル君!」

カヲル「……シンジ君」

シンジ「カヲル君! やっと正気に……ほら、サイリウム(イエロー)を……」

カヲル「……やめよう」

シンジ「……え?」

亜美「あーゆーれでぃ?! 魅力のレディのPUSHすた~と♪」

シンジ「やめるって……何言ってるの? カヲル君」

カヲル「今の僕は……とてもコールを入れる気にはなれない……」

シンジ「そ、そんな……カヲル君、何を言って……」

亜美「ま ま ま まじめに ラブ! 見つけて未来のぷりぷりプリンセス♪」

アスカ「シンジ! あんたまでサボっててどーすんのよ!」

シンジ「あ、うん……」

レイ「…………」

カヲル「……………」

亜美「野望♪ 陰謀♪ レインボー♪」

ワーッ パチパチパチパチ……

亜美「……そんじゃあ兄ちゃん姉ちゃん、今日はここでお別れだね→ばいばい☆」

ワァァァアアアアアアアアアアア

シンジ「はーっ……終わった……」

アスカ「お疲れー」

レイ「お疲れ様」

シンジ「お疲れ様。アスカ。綾波……って、あれ? カヲル君は?」

アスカ「え?」

レイ「?」

シンジ「……あれ? おかしいな。さっきまでいたのに……」

アスカ「先に帰ったんじゃないの? あいつ、なんかライブ中も様子おかしかったし……」

シンジ「そんな……。カヲル君がチケット取ってきてくれたライブなのに……」

レイ「…………」

なんだよこの無駄なQリスペクトネタバレはwwww

~『双海亜美』控え室~

(鏡をじっと見ている亜美)

亜美「……これで……良かったんだよね……」

亜美「……お客さんも、めちゃ喜んでたし……」

亜美「……うん。そうだよ……これで……」

亜美「…………」

亜美「……これで……良かったんだ……」

カヲル「何が良かったんだい?」

亜美「……っ!?」バッ

カヲル「……………」

亜美「なっ……だっ……誰!?」

カヲル「……名乗るほどの者じゃないよ。強いて言うなら……ただの君の一人のファンさ」

亜美「ふぁ……ファン……!?」

カヲル「そう。君と……君の『妹の』双海亜美君の……ね」

亜美「……えっ……!?」

スタイリッシュ不審者

亜美「な……何言ってんの……? 『妹の』って……」

カヲル「…………」

亜美「あ……亜美は私だよ! 真美は今頃家で……」

カヲル「……最初から、違和感はあった」

亜美「……え?」

カヲル「今日のライブの最初の曲……『七彩ボタン』から……ずっと、違和感はあったんだ」

亜美「……な、何を……」

カヲル「……だがその正体はつかめなかった。『何かが違う』ということ以上には……」

亜美「…………」

カヲル「……しかし、君と映像上の『真美』君の仮想デュエットによる『スタ→トスタ→』……この曲が始まったとき、疑念が確信に変わった」

亜美「…………」

カヲル「君達双子はとてもよく似ているが……当然、全く同じというわけではない。当たり前だ。双子とはいえ機械ではなく、生身の人間なのだから」

亜美「…………」

カヲル「なのに……君達二人は『同じ過ぎた』」

亜美「…………」

カヲル「映像上の『真美』君と、ステージ上の君……『亜美』君は、あまりにも『同じ過ぎ』たんだ」

亜美「……そ、そんなの、言いがかりっていうか……お兄さんの思い込みかもしんないじゃん」

カヲル「ああ、確かに……外見上の対比だけなら、あるいはそうだったかもしれない」

亜美「……え?」

カヲル「でもそのすぐ後、歌が始まって……つまり、ステージ上の君……『亜美』君と、映像上の『真美』君がデュエットで歌い始めて……」

亜美「…………」

カヲル「……すぐに気付いたよ。君達『二人』の音は、微粒子レベルですら違わず『同じ』音だった」

亜美「…………!」

しえん

カヲル「君達二人の音の『調和』……僕はそれに魅せられた」

亜美「…………」

カヲル「でもそれは、全く同じ音を二つ合わせたものでは決してない。とてもよく似ているけれど、僅かに異なる二つの音……それらの『調和』こそが……僕を魅了した君達のデュエットだ」

亜美「…………!」

カヲル「……僕は別に、君を非難したりするつもりはない」

亜美「…………」

カヲル「……ただ、知りたかっただけなんだ」

亜美「…………」

カヲル「君がこんなことをした……理由を」

亜美「…………」

カヲル「……教えて、くれないかい?」

亜美「…………」

亜美「……その前に、いっこだけ、いい?」

カヲル「? 何だい?」

亜美「……何で『真美』って思ったの?」

カヲル「え?」

亜美「……だって、私は『竜宮小町』として歌ってたんだから……私が『亜美』で、映像の方も『亜美』って考えた方が自然じゃないの? ……声が同じだったって言うならさ」

カヲル「それは……僕がさっき言った『違和感』ゆえだよ」

亜美「……?」

カヲル「言っただろう? 最初の『七彩ボタン』を聴いたときから、違和感はあった……って」

亜美「…………」

カヲル「君が本当に『亜美』君なら……そんな違和感は無かったはずだ。おそらく、僕は無意識のうちに……事前に聴いていた『竜宮小町』の曲――その中の『亜美』君の歌声――と、今日の『君』の歌声との間に……差異を感じ取ったんだろう」

亜美「…………」

カヲル「……それこそ『微粒子レベルの差異』を……ね」

亜美「…………」

亜美「……はあ。参ったよ」

カヲル「…………」

亜美「お兄さんの言う通り……私は『真美』。双海……真美だよ」

カヲル「…………」

真美「まさか見破られるとは思ってなかったよ……お兄さん、すごいね」

カヲル「……何、大したことじゃないよ。それより君が、こんなことをした理由を……」

真美「あ、その前にもういっこだけいい?」

カヲル「……何だい」

真美「どうやってここまで入ってきたの? 関係者以外立ち入り禁止のはずなのに」

カヲル「……それも大したことじゃないよ。ほんの少しだけ、ここに来るまでにいた人たちの心の壁に干渉し、それを少しだけ緩めさせてもらっただけさ」

真美「……心の、壁?」

カヲル「そう。僕たちは『A.T.フィールド 』と呼んでいるけどね」

真美「えーてぃーふぃーるど?」

カヲル「そうさ。それを緩めるということは、他人との距離を縮めるということ。つまり、自分の領域に他人を容れるということなのさ」

真美「な……なんかよくわかんないっぽいよ!」

カヲル「……まあ簡単に言えば、僕がここの廊下を歩いていても、誰も気に留めないようにしたってことさ」

真美「……お兄さん、マジシャンか何かなの?」

カヲル「……まあこの際、それで構わないよ」

おもしろい

真美「ふぅん……。まさかマジシャンさんが真美達のファンだったなんてね」

カヲル「……まあそれはともかく、そろそろ教えてくれるかな。……君がわざわざ、『亜美』君を演じていた理由を」

真美「ああ……まあ、ここまで引っ張っといてなんだけど……別に大した理由じゃないよ?」

カヲル「? そうなのかい?」

真美「うん。それでもいい?」

カヲル「ああ」

真美「分かった。じゃあ話すね。……お兄さん、良い人そうだし」

カヲル「……それは、どうも」

真美「えっとね……まず、亜美が風邪引いちゃって、今日のライブお休みすることになったんだ」

真美「で、亜美パート抜きでやるか、代役を立てるかって話になったんだけど……」

真美「今日は竜宮メインのライブだし、亜美パート抜きはまずいだろうってことになったんだ」

真美「んで、代役を誰にするかって話になって」

真美「真美にお鉢が回ってきたってわけ」

真美「真美は家でもよく、遊びがてら、亜美から竜宮の振り付けとか教わってたから……それでいつの間にか、自然と覚えちゃってたんだ」

真美「だから最初は、『双海亜美』のパートを『双海真美』がこなす……ってことになった」

真美「真美も最初はそうするつもりだった……けど」

カヲル「…………」

真美「本番が近付くにつれて、やっぱり『逆』にした方がいいんじゃないかなーって、思い始めたんだ」

カヲル「……『逆』?」

真美「うん。……つまり、風邪で休んだのは『真美』ってことにして、ステージに立つのは『亜美』にした方がいいんじゃないか、って」

カヲル「……それは、何故だい?」

真美「や、だから、そんなに大した理由じゃないんだけどさ」

カヲル「…………」

真美「単純に……真美より亜美の方が、人気あるから……さ」

カヲル「…………」

真美「なんだかんだで、やっぱり竜宮の人気ってすごいし……今日のライブだって、竜宮メインだったしね」

カヲル「…………」

真美「ってことはつまり、真美目当てのお客さんより、亜美目当てのお客さんの方が明らかに多いわけで」

カヲル「…………」

真美「だからまあ、亜美がお休みってするより、真美がお休みってした方が、がっかりするお客さんが少なくて済むなーって、思ったんだ」

カヲル「…………」

真美「まあ兄ちゃ……プロデューサーには、最初、反対されたんだけどね」

カヲル「…………」

真美「でもまあ、ライブはお客さんを喜ばせてなんぼでしょ→、って真美が言ったら、渋々納得してくれたんだ」

カヲル「…………」

真美「それにさ、昔は、真美は亜美と代わりばんこで『双海亜美』ってアイドルやってたからね」

カヲル「…………」

真美「だから別に、『亜美』をやるのは真美にとっても慣れたもんなんだよ」

カヲル「…………」

名探偵カヲル

真美「そういう理由で、真美は『亜美』をやってたの。ね? 別に大した理由じゃなかったっしょ?」

カヲル「…………」

真美「まぁーファンの人達に嘘をつくのは良心が痛まないでもないけどさ」

カヲル「…………」

真美「でも結局は、こうした方がより多くのファンを喜ばせることになるわけで」

カヲル「…………」

真美「んで結果的に、ファンの人達の多くは満足してくれたと思うから」

カヲル「…………」

真美「だから、これで良かった……うん、これで良かったんだよ」

カヲル「……君は」

真美「ん?」

カヲル「君は……誰に言い訳してるんだい?」

真美「……え?」

生で見れるとは

真美「い……言い訳?」

カヲル「ああ」

真美「な、何言ってんの……? 真美は何も言い訳なんて……」

カヲル「……アイドルなら」

真美「?」

カヲル「アイドルなら……まず第一に、『自分の』ファンを喜ばせようとするんじゃないかい? 数の多寡にかかわらず」

真美「…………!」

カヲル「『自分の』ファンを差し置いて……わざわざ『他のアイドルの』ファンを喜ばそうとするなんて……普通じゃないと思うけどね。……たとえそれが『自分の妹』のファン、だったとしても」

真美「…………っ」

カヲル「……真美君。君は……亜美君のファンを『喜ばせたかった』のではなく」

カヲル「……亜美君のファンから『がっかりされたくなかった』んじゃないかい?」

真美「! …………」

カヲル「ライブの本番を目前にして、君はふとこんな想像をしたんだ。……もし、『双海亜美』の代わりに『双海真美』が出演したとしたら……『双海亜美』目当てに来たファンはがっかりする……と」

真美「…………」

カヲル「『なんで亜美じゃなくて真美なんだ』『亜美に会いたかったのに何で真美なんだ』……そんな観客達の無数の目線が突き刺さる」

真美「…………」

カヲル「『双海亜美』の代役として出演した……自分に」

真美「…………」

カヲル「君はそんな事態を想像してしまい……自分のファンより多数である、亜美君のファン達からそのような目線を向けられることを……『がっかりされる』ことを……避けるために――いや、そういったことから逃れるために――」

真美「…………」

カヲル「君は……自分が『双海亜美』として出演することを提案した」

真美「…………」

カヲル「そうすれば、自分は『双海亜美』として、『双海亜美のファン』から『がっかりされる』どころか――むしろ堂々と、支持を受けられる……」

真美「…………」

カヲル「……違うかい?」

真美「…………」

面白いけどおせぇw

真美「…………」

カヲル「…………」

真美「……ふっ」

カヲル「…………」

真美「……ふふ、ふふふっ」

カヲル「…………」

真美「くくっ、ふっ、ははっ」

カヲル「…………」

真美「あははははっ!」

カヲル「…………」

真美「…………」

カヲル「…………」

真美「……すごいね、お兄さん……」

カヲル「…………」

真美「……マジシャンってだけじゃなく、エスパーでもあったんだね」

カヲル「…………」

真美「そうだよ……その通り、だよ」

カヲル「…………」

真美「真美は……真美は……」

カヲル「…………」

真美「……怖かった、んだよ……」

カヲル「…………」

真美「自分が『真美』としてステージに立った時……」

カヲル「…………」

真美「『亜美』のファンはきっとがっかりする」

カヲル「…………」

真美「溜め息をつく。目線を落とす。熱気を冷ます。サイリウムの振り方も雑になって、挙句の果てに『来なきゃ良かった』なんて思ったりする」

カヲル「…………」

真美「そんな風になるのを想像したら、怖くて……」

カヲル「…………」

真美「……お兄さんの言った通りだよ。『亜美のファンを喜ばせるため』なんて……嘘」

カヲル「…………」

真美「本当は、ただ怖かっただけ……逃げたかっただけ。亜美のファンに、がっかりされるのが嫌だっただけなんだ……」

カヲル「…………」

支援。

真美「偉そうなこと言ったけど、本当は、真美……自分の事しか考えてなかった。自分が傷付くのが怖いから……『亜美』を利用したんだよ」

カヲル「…………」

真美「自分が、傷つかずに済むように……」

カヲル「…………」

真美「最低、だよね……」

カヲル「…………」

真美「……お兄さんも、こんな……こんな最低な真美のファンなんて、もうやめたくなったでしょ?」

カヲル「…………」

真美「……それでもいい。真美のファンはもう、やめてくれてもいいから……」

カヲル「…………」

真美「……だけど」

カヲル「…………」

真美「亜美の……亜美のファンだけは……やめないでいてあげてほしいんだ」

カヲル「…………」

真美「今回の事は……真美が勝手にやったことで、亜美はいっこも悪くないんだ。だから……」

カヲル「…………」

真美「お願い……。亜美のファンは……亜美のファンだけは、やめないであげて……」

カヲル「…………」

真美「お願い……」

カヲル「…………」

カヲル「……最初に言ったはずだけどね」

真美「……え?」

カヲル「僕は別に、君を非難したりするつもりはない、って」

真美「……あ……」

カヲル「ただ、君がこんなことをした理由を知りたかっただけなんだ、ってね」

真美「じゃ、じゃあ……」

カヲル「……もちろんやめないよ。亜美君のファンも……君のファンも」

真美「お、お兄さん……えぐっ」

カヲル「おっと。泣かないでくれよ。これじゃまるで僕が泣かせてしまったみたいじゃないか」

真美「だ、だって……真美、悪い子なのに……。自分のために妹を利用した……最低な、お姉ちゃんなのに……ぐすっ」

カヲル「……君は、最低なんかじゃないよ」

真美「え……」

カヲル「君が怖いと思ったことも、そこから逃げようとしたことも……そしてそのために、妹さんを隠れ蓑にしたことも」

真美「! …………」

カヲル「何一つ、悪いことじゃない」

真美「……で、でも、真美……」

カヲル「……なぜなら君は、アイドルである前に、双海亜美の姉である前に……この世界にたった一人しかない、『双海真美』という人間だからさ」

真美「! …………」

イイハナシダナー

カヲル「人間なんだから……多かれ少なかれ、弱いところがあって当然なんだ。だから何も……気に病むことはないんだよ」

真美「人間、だから……」

カヲル「ああ」

真美「…………」

カヲル「…………」

真美「……ねぇ、お兄さん」

カヲル「ん?」

真美「……これからもずっと……真美の……『双海真美』の……ファンで、いてくれる?」

カヲル「ああ、もちろん。さっき、そう言ったじゃないか」

真美「……ん。ありがとっ」

カヲル「礼には及ばないよ。僕は、これからもずっと君を愛しているからね」

いいね

真美「ああ、ありが……って、え?」

カヲル「ん?」

真美「え、ええと……お、お兄さん、今、なんて?」

カヲル「? 僕はこれからもずっと君を愛している……そう言ったのだけど?」

真美「なっ! ……なななななに言っちゃってるのさ!?」

カヲル「もちろん、君の妹さんである双海亜美君も同じくらいね」

真美「い、いやいやいやいや真美まだコドモだしそーゆーオトナの関係はまだ早いっていうか……え?」

カヲル「僕はファンとして君達二人を平等に愛している、そう言ったのさ」

真美「…………」

勘違い真美かわいい

面白い。
みてるぞー

カヲル「どうしたんだい?」

真美「べっつに!」

カヲル「?」

真美「……危うく勘違いするとこだったじゃんか……」

カヲル「? 何か言ったかい?」

真美「何でもないっぽいよ!」

カヲル「勘違いをさせてしまったようなら、その点については謝るよ」

真美「聞こえてたっぽいよ! もう何なのこの人!」

お姫ちんといいナルシスホモといい色白赤目には双子を見抜く能力でもあるのか?

カヲル「ああ、それから」

真美「な……何? い、言っとくけど、もう真美はこれ以上お兄さんの毒牙にはかかからないんだかんね!」

カヲル「(毒牙?)いや……君にこれを渡しておこうと思ってね」

真美「何? これ……SDカード?」

カヲル「それを再生してみるといい」

真美「? な、なんかわかんないけど……わかったYO!」

カヲル「ふふっ。じゃあ僕はそろそろ行くよ。友人達が探しているかもしれないのでね」

真美「えっ、あっ、ま、待って!」

カヲル「? 何だい?」

真美「あ、その、えっと……」

カヲル「?」

真美「あ、あの……あ、あんがとねっ! その……色々っ!」

カヲル「……ふふっ。礼には及ばないよ。僕はただの一人の君のファンとして……自分の思う通りに行動しただけさ」

真美「……そっか」

カヲル「そうさ」

真美「……ん。わかった。またライブ来てね!」

カヲル「ああ、必ず行くよ。……では、亜美君にもよろしくね」

(ギィッ……バタン)

真美「…………」

真美「……ふふっ。変なお兄さん」

真美「……って、そういや結局、名前も聞かずじまいだったな……」

真美「……ま、いっか」

真美「ずっと真美のファンでいてくれるって言ってたし……真美がアイドルやってる限りはまた会えるっしょ→」

真美「あ、そういやこのSDカードって何が入ってるんだろ?」

真美「再生してみろって言ってたから……音楽ファイルでも入ってんかな?」

真美「ま、まだ時間あるし再生してみますか→」

真美「スマホに挿し込んで、っと……」

真美「一個だけ音楽ファイルが入ってるっぽい。よし、再生、と……」

真美「……? なんかノイズみたいなのが入ってて聞こえにくいっぽい……」

『……ザワ……ザワ……』

真美「…………」

『……ちゃん……った……』

真美「? …………」

『……真美……ゃん、会いた……ったな……』

真美「!」

『……風邪、早く良く……と良いね……』

真美「これ、って……」

ええ話や

『……私、なんか差し入れ送ろ…かな……栄養付き……なやつ』

『食べ物はNG……ないの?』

『あーそっか……じゃあせめ……ファンレター送ろ……かな』

真美(……さっきの……ライブの、後の……)

『真美ちゃん会いた……ったなー』

『まあ映像で観れ……だけまだマシか……』

真美(ファンの……皆の……)

『早く元気にな……てほし……な』

『やっぱ真美ちゃ……がいない……な』

真美(あ……ああ……)

『真美……ゃん……』

『真……ちゃん……』

『……真美ちゃん……』

『…………』ピッ

真美「………ぅ、あ……」

おお

真美「……あっ……あああっ……」

真美「み、皆………ひっぐ……」

真美「ごめん……ごめんね、えぐっ……ウソ、ついて……うぇっ」

真美「で、でも……ぐすっ」

真美「あり、がとう……!……ひっぐ……」

真美「……えぐっ……ぐすっ……」

真美「……あ、あり……が、とう……おにい、さん……ぅぐっ……う……」

真美「う……う……うわああああああああん!!」

P「ど……どうした真美!?」バタン

真美「! に……兄ちゃん……」

P「な……何だ真美、そんなに泣いて……や、やっぱり亜美のフリをしたことが辛かったのか……?」

真美「……んーんっ」

P「えっ」

真美「えへへ……なんでもないっぽいよ!」ニカッ

電車の中なのに泣かすなよ…

~二ヶ月後・ライブ会場~

シンジ「いやーまたライブに来れるなんて……本当、カヲル君のツテはすごいね!」

アスカ「ホント、一体どうやって入手してんの?」

カヲル「それは企業秘密ってやつさ」

レイ「……ヤフオク?」

カヲル「……違うよ、綾波さん」

レイ「……そう」

亜美・真美「会場の兄ちゃん姉ちゃ~ん! 亜美真美だよ→!」

シンジ「あ、双海ちゃん姉妹!」

アスカ「あら、今日は歌からじゃないのね。珍しい」

カヲル「…………」

真美「えーっとですね、わたくし、双海真美、この度無事に風邪から回復致しました! その節は誠にご心配をお掛けしました」ペコリ

亜美「まあ三日間寝たら治ってたけどね→」

真美「っていうか二ヶ月前の風邪がまだ続いてたらやばいよね→」

(ドッ ハハハハハハ)

シンジ「相変わらず双海ちゃん姉妹はトーク慣れしてるなあ」

アスカ「やっぱ双子だけあって掛け合いのテンポは抜群よね」

カヲル「…………」

亜美「そうそう先週ですね、実は私達映画を観に行きまして……」

真美「あ、亜美ちょっとタンマ」

亜美「うぇ?」

真美「えー実はワタクシ双海真美、ちょっと前にとある男性から愛の告白を受けまして」

亜美「んなっ!?」

シンジ・アスカ・レイ「!?」

カヲル「…………」

ホモの癖に

>>127
冷静すぎでワロタ

亜美「ちょちょちょっと真美何言っちゃってんの? ここは三年ぶりに続編が出た映画を観に行ったらあまりにも展開ぶっ飛び過ぎで浦島太郎状態になっちゃったってトークをするとこでしょ!? ていうか何!? 愛の告白って!?」

真美「いやだからちょっとタンマって」

亜美「タンマって何が!?」

真美「えっとですねー。そういうわけで愛の告白を受けたわけですよ」

亜美「無視かい!」

(ドッ ハハハハハハ)

シンジ「こ、これは台本……なのかな?」

アスカ「さ、さあ……」

レイ「…………」

カヲル「…………」

真美「でもですねー。よくよく聞いたらそれは『ファンとしての』愛の告白だったんですねー」

亜美「ファンとして? あー、つまり真美の勘違いだったってこと?」

真美「かっ、勘違いなんかしてないYO! た、ただえっと、まあそこまで言ってくれるファンがいて真美は幸せだなって話!」

亜美「なんだよ結局ノロケかYO! Boo! Boo!」

真美「う、うるさい亜美! ブーブーすんな!」

(ドッ ハハハハハハ)

シンジ「……台本なのかアドリブなのかわかんないけど、まあ面白いからどっちでもいいか」

アスカ「ま、確かにね」

カヲル「…………」

真美「ま、まーそういうわけでですね! とにかくえっと、私にもそこまで想ってくださるファンの方がおられるということで、これからはより一層! アイドルとして頑張りまくっちゃおうという決意を新たにしたのです!」

亜美「なんかゼンゼンわかんないけど、とりあえず真美がやる気にあふれてるってことは分かったYO! こりゃー亜美も負けてらんないね☆」

真美「てなわけで早速一曲目参りましょう!」

亜美「双海亜美・真美で『スタ→トスタ→』!!」

亜美(……ねぇ真美、さっきのハナシ、マジバナ?)

真美(ん~? どっかな~?)

亜美(あんだよ→! 双子のよしみで教えろYO!)

真美(んっふっふ~。ヒ・ミ・ツ♪)

亜美(なっ……ちょ、ちょっと真美、もしかしてマジで……!?)

真美(亜美! もう歌始まるって!)

亜美(ああっもう!)

亜美・真美「タリラン♪ Turn it up! 無敵!」

まだまだ続いてくれ

このシリーズはやばい
アイマス知らんけどやりたくなってくる

亜美・真美「チカラ♪ 無から♪ 無限 yeah! yeah!」

カヲル「…………」

シンジ「カヲル君! またぼーっとして……! 早くコールを……って」

カヲル「…………」

シンジ「…………」

アスカ「? どしたの?」

シンジ「……いや」

アスカ「!? 渚のやつ、泣いて……?」

亜美・真美「元気♪ Get it on! 激論」

カヲル「…………」ツーッ

シンジ「……ライブの楽しみ方、アイドルの愛し方は……人それぞれってことだね」

レイ「……ファンの数だけ、愛の形がある」

アスカ「…………」

亜美・真美「地球♪ 無休♪ 夢中♪」

シンジ「僕らは僕らのやり方で……アイドルを愛するだけさ」

アスカ「……ふんっ。あんたにしてはまともなことを言うじゃないの。……そんじゃあいっちょ、いつも以上に気合入れてコール入れるわよ!」

シンジ「おう!」

レイ「合点承知」

亜美・真美「アハハン♪ Rise your hands! 素敵!」

カヲル「……………」

亜美・真美「期待♪ いっぱい♪ 2倍 hu! hu!」

カヲル「……ああ、やはり歌は良いね……」

亜美・真美「適当♪ Take it on! 適温」

カヲル「リリンの、いや……人類の生み出した、希望の光だよ」

亜美・真美「野望♪ 陰謀♪ レインボー♪」

亜美・真美「あーゆーれでぃ?! 魅力のレディの PUSHすた~と♪」

真美(う~ん、流石にここからじゃ分かんないな~)

亜美・真美「ま ま ま まじめに ラブ! 見つけて未来のぷりぷりプリンセス♪」

真美(……まあそもそも、今日のライブに来てるかどうかすら分かんないしね)

亜美・真美「逃がさないから♪ 急げっとレディの スペシャルテクニック♪」

真美(でも、真美は信じてるよ…お兄さん)

亜美・真美「チャ、チャ、チャ チャンスの ラブ! んーとね 簡単で そんなの つまんない♪」

真美(お兄さんは今もどこかで……真美達のこと、見守ってくれてるんだって)

亜美・真美「神様~♪ ねぇ神様~♪」

真美(だから……だからこれからも、真美達のこと―――)

亜美・真美「お~ね~が~い 夢を ももももぉーっとちょうだーい♪」


真美(ずっと……ずっと見ててよね!)


亜美・真美「ミラクル スタ→トスタ→! スタ→とスタ→! ハッピーになるの 絶対~♪」


真美(約束……だかんね!)






>>137
乙!
楽しかった!

流石イケメンだわ

乙!いい話だった



亜美真美の兄(c)として認めてやろう

綾波の合点承知は卑怯だろwwww

あぁよかった

>>129
>三年ぶりに続編が出た映画を観に行ったらあまりにも展開ぶっ飛び過ぎで浦島太郎状態になっちゃった

Qですね。わかります。

カヲル君は相変わらずイケメンだなぁ

感動した
涙が滲んできた

なるほど

いい話すれば控室行っても通報されないのか

カヲルはジュピター押しかと思った

アイマスって面白い?

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