ことり「信じる、君だから」 (78)

チュンチュン。

目覚ましの代わりに小鳥の鳴き声で起きられるようになった今日この頃。
夏冬構わず気持ちの良いお布団の中もぐり、最大級のため息をつく。
昨日は衣装作りも少し早めに終わらせ、かなり早めに寝たはずなのに身体が受けた満足感が少なすぎる。
温もりの塊とも言えるお布団から起き上がると、脳が「やめろ!もっと寝ないと死んでしまうぞ!」と警告を出している。
そんな警告に逆らい、まだ少しうとうとする目を擦り、布団から足を出しスリッパを履く。
音ノ木坂の制服を着て、歯を磨いたり髪をとかしたり。
朝ごはんを食べながら朝の星占いコーナーを見る。
乙女座のことりは生憎最下位で。
ついてないなぁ…と心の中で思いながら最後の一口を食べる。
鞄の中を見て忘れ物がないか確認して、今日も海未ちゃんが既に待ってるのかなぁ…なんて思いながら。

ことり「よしっ」

靴に履き替えて、勢いよくドアを開ける。

ことり「行ってきます!」

真夏日、快晴、快調。

いつも通りの景色だ。


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※注意点

笑えはしないがそんなシリアスでもない絶妙なSSです。

・書くの遅い
・途中で>>1の挿絵()注意

こんなんでよければ付き合ってください

海未「おはようございます、ことり」

軽く微笑み挨拶する海未ちゃんに「おはよう」と返す。
周りは道路や一般の通学路から少し離れてい騒音が少ない分、?の声が盛大に鳴り響いていた。
気持ち悪いほどの暑さに?の声、まさに『夏』としか言い様がない中
海未ちゃんと昨日の宿題とか今日の授業とか練習のことについてとか色々お話して。
やっぱ一番は海未ちゃんだったかぁとか、穂乃果ちゃんは今日も寝坊かな?とか色々考えてたら、

穂乃果「二人共~!!遅れてごっめーん!!」

両手にランチパックを持った穂乃果ちゃんがバタバタと走ってきた。

海未「こらっ穂乃果!食べながら喋らない!!そして走りながら食べない!!」

怒る所が海未ちゃんらしいなぁなんて思いながら横一列に並んで登校。

穂乃果「ねーねー海未ちゃん!穂乃果昨日の宿題わかんないところあったんだけど教室行ったら写させて!!」

海未「ダメです」

穂乃果「なんで!?」

海未「なんでっても写すのは自分のためになりませんから」

穂乃果「も~!ことりちゃんからもなんとか言ってよ!」

ことり「うえぇ!?う、うーん……ことりも海未ちゃんの言う通りだと思うなぁ……」

穂乃果「そんなぁっ」

海未「ほらみなさい」


ギャーギャーふざけ合って、教室に着き、海未ちゃんの長々としたお勉強会が始まる。
海未ちゃんの教え方上手なのにどうして穂乃果ちゃんは覚えないんだろうな……
この間なんか「あの先生は宇宙人か何かかな?何言ってるか全然わかんない」なんて言ってたっけ。
本当、一緒に居て飽きないなぁ穂乃果ちゃんは

海未「いいですか?まずここ、1じゃない!何をどうしたら1に……ここは…」

穂乃果「どうしようことりちゃん……海未ちゃんがよくわからない専門用語喋り始めたよ……」

ことり「いや授業で教わったはずなんだけどなぁ……」

苦笑いをして机の横に鞄をかけ、椅子に座る。
窓の外を見ると太陽の眩しさに思わず目が眩む。
そのまま徐に目を閉じて机に突っ伏した。
最近流行りのファッションや、美味しいお菓子屋さんについて、昨日やってたテレビのこと、近くでは海未ちゃんが勉強を教えている声。
今日も教室は平凡だなぁ

そんな中……

「おはようございます!!」

窓の外、校門の方から挨拶が聞こえた


窓の外を見て、明るさの中に仄かに凛々しさが混じった声の主を特定した。
絵里ちゃんだ。
登校してくる生徒一人一人にきちんと挨拶をしている。
風紀委員の人はいるけど希ちゃんが見当たらない。
また生徒会室で焼肉してるのかな……副会長なのにしっかりしてほしいよ。
そんなことを思いながら絵里ちゃんをじぃっと見つめる。
お辞儀をするたび揺れる金髪、引き締まった腰、ほっそい腕……綺麗だなぁ……


穂乃果「んもおおおおお!!何回やったって変わらないよ!!7×8は24だもん!!!絶対24だよおおおおお!!」バンッ

海未「しっかりしてください穂乃果!!7×8は24ではありません!!」

遂に海未ちゃんの大和撫子が崩れかけ始めてきたとき、ふと絵里ちゃんがことりの方を見た。
もしかしたら別の方を見てるんじゃないかな、なんて最初は思ったけど
絵里ちゃんがこちらに微笑み、口パクで「おはよう」と言ったのを見て、あぁ、やっぱことりの方を見てたんだなぁと思ったと同時に、


ドキン


……ん?何だ今の。

ドキンッって何だドキンッって。
いや確かにね、確かに太陽の眩しさと絵里ちゃんスマイルの合わせ技攻撃にちょっとクラってなったけどさ、

なったけどさ……

ことりの心臓おかしいのかな……
そんなことを思ってると目の前に数式が広がった。

穂乃果「見て見てー!ことりちゃん!!宿題終わったー!!」

何事かと思い振り返ると、穂乃果ちゃんが満面の笑みで堂々とノートを広げていた。

海未「もう……教えるのに一苦労したんですから……」

ことり「あはは……お疲れ様海未ちゃん」

海未「次、穂乃果に宿題を教えるのはことりの番ですからね」

ことり「うえぇ!?」

穂乃果「やったー!!
     ことりちゃん!!穂乃果はノート見せてくれるだけで大歓迎だからねっ?」

海未「ダメです。」

穂乃果「げえぇ……」

海未「ちなみに穂乃果、しちは?」

穂乃果「27」

海未「ダメだこいつ」

そんな穂乃果ちゃんと海未ちゃんのボケとツッコミに思わず笑がこぼれた。
あぁ…本当今日も平和だなぁ……

海未「それにしてもことり、頬が赤いですけど……大丈夫ですか?」

ことり「うえぃ!?」

奇声をあげ、慌てて頬を触ると、真夏なのに手の平がとても冷たく感じた。
まさかさっきのが……

海未「…ことり?まさか熱でも……」

いや、ちょっとまって。


ことり「ねぇ、海未ちゃん穂乃果ちゃん、ちょっとことりに向かって微笑んでみてよ」

海未「えぇ…?なぜ……」

ことり「いいから!とりあえず微笑んでみて!」

海未「そ、そんな急に言われても……」

穂乃果「海未ちゃん!わがままはいけないよ!!」

海未「穂乃果だけには言われたくないですね」

ことり「そんな漫才はいいから!
    はい!スマイルスマイル!!」

穂乃果「よーし!!やるよ海未ちゃん!!」

海未「えっ、しょ、しょうがないですね……」

穂乃果「いくよー!せーの!!」

穂乃果「……」ニコッ

海未「……っ」ニ、ニコッ

ことり「……」

ことり「……」

……うーん
……
なんか違う。

なんかこう……ドキンッってしなかったっていうか…
いや確かにね、可愛いんだけど何か違うっていうか……
絵里ちゃんが微笑んだ時は心臓に鉛玉ブチ込まれたような感覚になったのに
二人のはこう……心臓を小鳥につつかれてるような……

うーん……難しいね。


海未「で、何か分かりました?」

ことり「うん……二人共まだまだ甘いね」

穂乃果「そんなっ…精一杯の穂乃果スマイルだったのに……
    よし!海未ちゃん特訓だよ!!」

海未「ええっ!?何も今特訓しなくても……」

穂乃果「その気持ちが甘いんだよ!!」バンッ

海未「宿題もそのくらいの熱意でやってくれれば嬉しいんですけどね」

穂乃果「因みにことりちゃん、今のスマイルは100点満点中何点?」


何点……うーん……

……絵里ちゃんのスマイルが100点満点だとしたら今のは……


ことり「5点。」

穂乃果「ひっく、ほら海未ちゃん!練習するよ!!にこちゃんの所に行ってこよう!!」グイッ

海未「何故にこの所にっ……ちょっ襟を引っ張らないでくださっぐへぁっ!!」

穂乃果「あ、ことりちゃん、にこちゃんスマイルは何点?」

ことり「うーん、8点!」

穂乃果「にこちゃんに負けてるよ!!ヤバイよ!!このままじゃスクールアイドル失格だよ!!」グイッ

海未「がはっ……だ、だから手を離し……ぐえふっ」ズルズル


そのまま海未ちゃんは穂乃果ちゃんにズルズルと引きずられ教室を出て行ってしまった。
その後、廊下から「ぐぎゅあァあ゛!!」という声が聞こえて来たけどことりそんなこと気にしない♪

―…ふと窓の外を見ると絵里ちゃんが校舎に戻ろうとしていた。
時計を見るとまだHRまで時間がある。
椅子から立ち上がった私の足はいつの間にか生徒会室に向かっていた。
もしかしたら絵里ちゃんに会えるかも……なんて淡い希望を抱きながら。


生徒会室に着くと「希いいいいいいいっ!!」という絵里ちゃんの叫びが聞こえてきた。
それと同時にこんがりとお肉の焼けた匂いと焼肉のタレの匂いがしてきた。
やっぱ希ちゃん焼肉してたんだなぁ……
そう思いヒョイっと窓から覗いてみると

絵里「いい!?希!?あなたは副会長なの!?
   なんでサボって生徒会室で焼肉なんてしてるの!?」バンッ

希「違うでエリチ、これは焼肉ちゃう、肉を焼いてタレにつけてご飯と一緒に食べとるんや」

絵里「世間ではそれを焼肉っていうの!!最近希ちょっとたるんでるわよ!?」

希「お腹が?」

絵里「誰もそんなボケ求めてないでしょ!?希自身がたるんでるのよ!!」バンッ

絵里「っていうか昨日も一昨日も焼肉食べてたわよね!?
   そんな食生活ばっかしてると太るわよ!!」

希「……しょうがないんやエリチ……カードがウチにこう告げとるんや……」モグモグ


希「……『太れ』と……」スッ

絵里「はいはいカードのお告げならしょうがない……なんて言うと思った!?」バンッ

絵里「そんなカードボッシュートよ!!」バッ

希「oh……」

ドア越しのせいで声は良く聞こえなかったけど色々な表情で怒鳴る絵里ちゃんを見て
ことりは何故か頬が赤くなっていた。
さっき見たあの凛々しい絵里ちゃんに反して、感情をむき出しにして凛々しさなんて微塵も感じられない絵里ちゃんもいいなぁなんて思ったりして。
きっと他にも、ことりの知らない絵里ちゃんがいるんだろうなぁって思うと
その色々な絵里ちゃんを知りたいなぁなんて思ったりして。

……今日のことり、本当におかしいな

―――――――――――――――

―――――――――

――――


結局、絵里ちゃんに話しかけようと思ったけど、
顔は赤いし、声は震えるし、そういえば何話すかすら決めてなかったなことを思い出して挨拶すら出来なかった。

あの後、穂乃果ちゃん達が戻ってきて特訓したスマイルとやらを見せてくれたけど
どうしても絵里ちゃんのあの微笑みと比べてしまい「7点」という評価。

なんでかな…こう…あぁもうもやもやするなぁ…!!


お昼ご飯中。
いつも通りランチパックをもちゃもちゃ食べる穂乃果ちゃんに、礼儀よくお昼を食べる海未ちゃん。
海未ちゃんのお茶に炭酸水入れたんだけど気付いてくれてないのかなぁなんて思いながら、
私の頭は絵里ちゃん一色。

穂乃果「ねーね海未ちゃん!穂乃果のエビフライの尻尾とそのハンバーグ交換しない?」

海未「尻尾と!?ダメに決まってるじゃないですか!」

穂乃果「もー海未ちゃんケチぃ!ケチケチラブアローシュート!!」

海未「ちょっ何でそれ知ってっ……」

穂乃果「よーし!ことりちゃーん!穂乃果のエビフライの尻尾とその卵焼き交換しない?」

ことり「……」

……。

穂乃果「ことりちゃん?」

……絵里ちゃん……。


穂乃果「ことりちゃーん!?」

ことり「うえぇいっ!?な、何?穂乃果ちゃん」

しまった。絵里ちゃんのことばっか考えてて穂乃果ちゃん達の話全然聞いてなかった……
穂乃果ちゃんがハムスターのようにほっぺを膨らましてる。可愛いね。

穂乃果「もー!ちゃんと聞いててよね!このエビフライの尻尾とその唐揚げ交換しない?」

海未「今地味に交換物変えましたね」

ことり「……
    ……いいよ」

穂乃果「本当!?やったー!!」ヒョイパク

海未「えぇ!?いいんですかことり!?」

ことり「うん、そんな食欲もなかったし……」

海未「…………」

ことり「エビフライの尻尾も好きだし……」

海未「…………」


海未「どうしたんですことり、朝から元気が無いようですが…」

ことり「そ、そんなことないよ」

海未「……」

ことり「ほ、本当に元気だから!!ほらっ!ちゅんちゅん♪」フリフリ

海未「そ、そうですか……ならいいんですけど……」

海未「何か悩み事があったらすぐ私に相談してくださいね?」

ことり「うん、わかった……ありがとう」

海未「親友が落ち込んでたら相談に乗るなんて当たり前ですから」

そう格好良く言って海未ちゃんはお茶に口をつけた。

海未「ンフッ…!!」

穂乃果「ど、どうしたの海未ちゃん!?」

と同時に吹き出した。


海未「お、おひゃが、おひゃがひゅわひゅわひた……」

穂乃果「ひゅわひゅわ?…わかった!!あくまでもぴゅわぴゅわだね!!」 

海未「ひ、ちがっ」

へへっ!やったぜ。と、ちょっと気分が良くなったけど心のもやもやは晴れないままだった。
さっきからずっとこんな感じだ。
授業中も休み時間も、絵里ちゃんのあの笑顔が頭から離れなくて……

本当、今日のことりどうしちゃったんだろうなぁ……

朝変なもの食べたっけかなぁとか、あの星占いが当たったのかなぁ、とか色々考えたけど
結局答えは見つからないままだった。

http://i.imgur.com/tTZJoS6.jpg




にこ「ちょっとことりいいいいいいっ!?」

ことり「うえぇい!?なっ何!?にこちゃん!?」

放課後。
練習に行こうと穂乃果ちゃんたちを誘ったけど、にこちゃんからスマイルの訓練してもらうって言ってどっかいっちゃった。
一人で部室に向かうことりの目の前に、息が荒いにこちゃんが突然現れてビックリしちゃった。

ことり「……ど、どうしたのにこちゃん?
    あ、さっき穂乃果ちゃんたちが探し

にこ「見てわかんない!?穂乃果たちから逃げてるの!!」

ことり「ほ、穂乃果ちゃんたちから?」

にこ「そう!あいつらにこがトイレに行ってもついてくるの!!
   おまけに鍵がかかってるからって上から侵入してくるしうざったいったらありゃしないわよ……」

にこ「朝から「スマイルのコツ教えて!!」とか言ってきて、最初はノリで教えてたけどなんかもうああああああっっ!!!」バタバタ

ことり「ちょっにこちゃん落ち着いて!!周りの目が痛

「いたよ!!」

にこ「!?」バッ

にこちゃんを落ち着かせようとしたとき、後ろから声が聞こえた。
こ、この声は……

穂乃果「見つけたよにこちゃん!!今度こそ逃がさないんだから!!」ダッ

海未「……」ズルズル

海未ちゃん(白目)を引きずりながら現れたのは穂乃果ちゃんだった。
やばいよ……海未ちゃんが息してないよ……

にこ「くっ……ヤバイわね……逃げるわよことり!!」グイッ

ことり「えっ!?こ、ことりも!?」グイッ

腕を掴んだとは思いきや、そのままにこちゃんは猛ダッシュで走り出した。
にこちゃんは空気抵抗が少ない分、とても走るのが早かった。


海未ちゃん大丈夫かなぁ……


―――――――――――――――

―――――――――

――――



にこ「ふぅ……疲れたわね……」

ことり「うん……風が気持ちいいね……」

逃げ着いた場所は屋上。
二人で柵に寄りかかって風にあたっていた。
相変わらず太陽は滲む様に眩しくて、思わず目を細めてしまう。
隣のにこちゃんを見ると、風になびく綺麗な黒髪に、少し黄色がかった太陽の光があたり、とても絵になっていた。
ことり達の後ろは抜けるような青空。
遠くには大きな入道雲が見えた。

にこ「…っていうか穂乃果たちは何があったの?いきなりスマイルのコツを教えろだなんて……」

ことり「さ、さぁ?どうしてだろうね?」


『絵里ちゃんの微笑みと比べたかったから』

なんて、口が裂けても言えない。

ああもう、絵里ちゃんって聞くとどうもあの微笑みを思い出しちゃって胸がきゅっとする……

ことり「やんなっちゃうな……」

ポツリ、そう呟いた。
にこちゃんはそんなことりの顔を見て、深くため息をつくと、腕を組み手すりに寄りかかった。


にこ「その……よかったら話聞くわよ?
   さっきから何か浮かない顔して……こっちまで微妙な空気になるっての……」

ことり「……ごめん」

にこ「いや、別に謝れって言ってるわけじゃなくて!
   ……なんかアンタらしくないわね…ほ、ほら、にっこにっこにー!!」

ことり「……」

『もぉ~にこちゃんそれ寒いよ~』

そう笑って誤魔化そうとしたけど、喉の奥が震え笑うことができなくなっていた。


昔からそうだった。
自分の正直な気持ちを誤魔化すのが習慣なってしまっていて、自分すらその気持ちに気付けないままでいた。
唐突に現れたこの感情。
今までのことりなら間違いなく気付かないフリをしていただろう。
いつも通り、皆で教室で授業を受けて、いつも通り皆でお昼を食べて、いつも通り皆で練習して――
いつも通り皆と過ごせていたらそれで良かった。
それならばこんな感情も心の奥底にしまいこんで放っておけば良かったはずなのに
何度しまおうとしてもこの感情は胸から一歩も動いてくれる気配はなかった。

にこちゃんなら……にこちゃんならきっと……


ことり「…………笑わないで聞いてくれる?」

にこ「…勿論、後輩の真剣なお悩みを笑うなんて先輩失格よ」

ことり「…ありがとう……じゃあ話すね」

にこちゃんのその優しさだけで出そうになる涙を抑え、私はにこちゃんに話した。


朝、絵里ちゃんスマイルを見てから絵里ちゃんばっか考えちゃうこと。

ことりの知らない色々な絵里ちゃんを知りたいなぁって思ったこと。

絵里ちゃんのことを考えると胸がきゅっとすること。


他にも色々、朝からのことりの気持ちを、動作もつけて事細かく話した。

私が話してる間、にこちゃんはとても真剣な顔で話を聞いてくれた。

ただ時々、ちょっと顔が引きつったりするけど、どうしたんだろ……?



にこ「えーと、よくわかったわ。凄くよくわかったわ。」

ことり「わかったの?」

にこ「え、逆にアンタはこれが何かわかんないの?」

ことり「……」

ことり「…心臓に鉛玉を

にこ「だからそのリアルな表現やめなさいよ 
   あのね、にこが言ってるのはそういうことじゃなくてね……」

そう言うとにこちゃんはまた少し難しそうな顔をして頬をかじり始めた。

にこ「もうぶっちゃけて言うわね」



にこ「それは恋よ」








――……はい?


ことり「鯉?」

にこ「はぁ?……何言ってんの?恋よ恋。」

……何言ってるのにこちゃん……恋愛は男女でするものだよ?
ことりと絵里ちゃんはどっちも女の子で……

にこ「……あんた今、

『……何言ってるのにこちゃん……恋愛は男女でするものだよ?ことりと絵里ちゃんはどっちも女の子で……』

とか思ったでしょ?」

ことり「……」

自分が思っていたことを気持ち悪いぐらい正確に当てられ肩が小さく跳ねる。
にこちゃんは「やっぱりね」と言うように軽く笑った。


にこ「しっかしあんたも変わってるわね……絵里なんかに恋するなんて……」

ことり「ちっ、違っ……恋じゃないよ!!」

少しからかい気味に言ってくるにこちゃんに、ことりはムキになって叫んでいた。
そんなことりをにこちゃんは静かに見つめると、笑みを消し、再び深くため息をついた。


にこ「じゃあ何?ただの憧れ?
   そんなわけ無いでしょ」

にこちゃんが睨むように目を細める。

にこ「……好きなんでしょ?
   絵里のことが」

ことり「……」

にこ「認めなさいよ、自分に嘘ついても良いことないわよ?」


恋……
なのかなぁ……





あの時から絵里ちゃんのことばっか見ちゃって。
授業中も休み時間もお昼休みも絵里ちゃんのことばっか。
今までこんなことなかったんだけど……
もやもやして気持ち悪い、この感情が恋なのかな…?


ことり「……わかった」

ことり「ことり絵里ちゃんが好き!」

にこ「……そう、よく言ったわね」

ことり「おやつにしたいぐらい好き!!」

にこ「ちょっとそれはまずいわね」

ことり「それでね!!
    そのっ……」

ことり「こ、ことりの恋…手伝ってくれる?」

にこ「……手伝うことはできないわね
   応援ぐらいならできるけど」

ことり「……っ…ありがとう!」ギュッ

そう言った途端、今まで自分の中で突っかかっていた感情が全て溢れ出して来た気がして目の下が熱くなった。

勢いで抱きついてしまいにこちゃんの顔が真っ赤になっていた。

にこ「こ、こここここことり!!そういうのは絵里としなさいよ!?」

ことり「え!?あ、うん。ごめん」


バッとにこちゃんから離れると、目を逸らしながら「まったくもう……」と独り言をブツブツ言っていた。

にこちゃんもやっぱりにこちゃんだなぁ……



決して簡単ではないであろう女の子に対する恋愛感情。

そんな感情と過ごす私の恋の幕が今開いた。

今回はここまで。
こんな感じでダラダラ続いてく予定です。
また今日中に投下できたらいいなぁと思ってます。

文章とか絵とか色々見苦しい点があると思いますがよろしくお願いします。

コメントありがとうございます。嬉しいです。

それでは手汗ビッショビショの状態で投下させて頂きます。


(昨日貼り忘れたよくわからないのもついでに貼っとこう…)

  ・ことにこが屋上で語り合ってる最中……・

    バーン!!

絵里「ちょっと、どうして部室に凛達しかいないの?2年生組はどこにいっちゃったの?」

凛「知らないにゃー、あ、かよちん!今そこにアイテムブロックあったよ!!」

花陽「ええぇェ゛!?そんなぁ!!もっと早く言ってよ!!」

真姫「くっ……初めてやってけど意外に難しいわね……コレ」

希「焼肉めっちゃ美味しいねえええええええんんっ!!!」

絵里「っていうかなんで貴方たちもWiiでゲームなんてやってるの!?練習は!?」

真姫「エリー、これはゲームじゃないわ、マリオカートよ。」

絵里「同じじゃない!!そして部室にテレビとWiiを持ってきたのは誰!?」

穂乃果「穂乃果だよ!!」

絵里「穂乃果いたの!?びっくりした……っていうか何してるの?それ海未よね」

穂乃果「正確には『海未ちゃんだったもの』だけどね」

絵里「何笑顔でさらっと怖いこと言ってるのよ……いいから早く海未を起こしなさいよ」

穂乃果「だから、海未ちゃんは起きないよ、永遠に」

絵里「ごめんちょっと何言ってるかわからないわ」

穂乃果「ごめんね海未ちゃん……穂乃果が海未ちゃんの襟を引っ張って校舎内を駆け巡ったから……」グスッ

絵里「そんなことしたの!?っていうかホントに海未大じょ

希「焼肉めっちゃ美味しいねええええええええええんんっ!!!」

凛「ブオーンブオーン!!いっえーい!!また凛一番だにゃー!!」

花陽「ふえぇ……初心者の真姫ちゃんにも勝てなかったよォ゛!!!」

真姫「ふんっ!!私の実力よ!!もう一回やりましょう!凛!!」

凛「OK!!じゃあ次はこのステージにゃー!!」

絵里「人の話を聞けやああああああああああああああああっっ!!」


今日もμ'sは平和である。


『絵里ちゃんのことが好き』


あの日、その気持ちに気付いてから、絵里ちゃんのことばっかに見ちゃって。

練習の時、ちょっと手が触れただけで顔が真っ赤。

そんなことりを見てニヤニヤしているにこちゃんは昨日、穂乃果ちゃんの襟掴み校内駆け巡りの刑にあわせました。

「女の子同士」なんて、簡単じゃないことはわかっていたけど

もしこの思いを伝えたとしたら、絵里ちゃんはどんな反応をするのだろうか?

「気持ち悪い」とハッキリ言うのだろうか。

もしそう言わなくても、絵里ちゃんとの関係がギクシャクしてしまうのだろうか?

どっちも嫌だなぁ……

伝えなかったら後悔するってわかってるけど……

伝える勇気なんて持ってなくて…

でも芽生えちゃった感情だから、伝えるまで引きずってくしかないんだよなぁ

本当、恋ってめんどくさい


ことり「はぁ……」

今日も部室でみんなが来るまで衣装作り。
絵里ちゃんの服だけちょっと布を少なめに作ってみてるんだけどバレちゃうかなぁ……
スカートが短くて、それを気にしながら恥ずかしそうに踊る絵里ちゃん……
想像しただけで眼から鼻血が吹き出そうだよ……


「ハルルルゥアッショゥアアアアアア!!!!!」バーン

ことり「!?」

声に驚き振り向くとそこには……

絵里「あれっ…まだことりしか来てないの?」

ことり「え、ええ、ええええ絵里ちゃん!」

え、えええ絵里ちゃんだ。

ことり「お、おひゃよう絵里ちゃん!!」

絵里「おはようことり、今日もいい天気ね」

ことり「しょ、そうだね!!いい天気だね!!」

どうしよう!!まだみんな来てないからことり絵里ちゃんと部室で二人っきりだよ!!
ヤバい!これは眼から鼻血レベルじゃない!!鼻から心臓レベルだよ!!


絵里「あら、それ新曲の衣装?」

うっひゃあああ!!絵里ちゃんがこっちを見てるよおおお!!

ことり「しょっそうなの!!新しい曲の衣装なんだけどちょっとリボン付けるのに手こずっちゃって……」

絵里「そうなの?頑張るのはいいけど、頑張り過ぎもあまり身体に良くないから、程々にね?」

ひゃっはあああああ!!絵里ちゃんに身体の心配されちゃったよ!!

ことり「う、うん!心配ありがとね!!」

ど、どどどどうしよう!!テンション上がりすぎて手が震えちゃうよ!!
あれっ……ていうかことりどこまで縫ったっけ?次どっから縫うんだっけ?
あわわ!!どうしよう!!


そんな風に絵里ちゃんに気付かれない様、静かに慌てていると……

ことり「痛っ……」

指を針で刺してしまった。
結構深くまで刺してしまったようで大きな血の玉がプクリとできた。
やっちゃったな……

絵里「どうしたのことり!」

うっはああああっ!!絵里ちゃんが駆け寄ってきたよ!!まつ毛めっちゃ長いよ絵里ちゃん!!

ことり「え、あ、いや、その、ちょっと指をさしちゃって、えへへ……」

絵里「まったくもう……ほら、手かして」

ことり「えっちょっ」

そう言って絵里ちゃんはことりの手を取ると口に近づけた。
ま、まままままさかこれって……

絵里「……」ペロッ


ことり「……っ////!!」

やっぱりいいいいいいいいいいいあああああああああ!!!


絵里ちゃんが私の指から舌を離すと、銀色の糸がことりと絵里ちゃんを繋いだ。
その、なんていうかこう…すっごくエロいですはい。
そんなことを思ってると糸がプツンと切れた、と同時にことりの肩がビクンと跳ねた

ことり「あ、あぁの、え、絵里ちゃん?」

絵里「はい、これでよし、次から気をつけるのよ?」

ことり「いや、その、今指舐め……」

絵里「あ、
   ……嫌だった?ごめんなさい……」

嫌じゃないです全然嫌じゃないです、寧ろ大歓迎ですはい。
もうこの指は後でことりのおやつ決定だな……


ことり「いや…別に嫌だったわけじゃないけどその…絵里ちゃんにも良くなかったりするし……」

絵里「え!?えぇ、そうね……次から気をつけるわ……」

ことり「……」

絵里「……」

ことり「……」ペロペロ

絵里「……」

うわあああ微妙な空気になっちゃったよおおお!!
お願い!誰か来て!!この際穂乃果ちゃんでも希ちゃんでも誰でもいいから!!

 
  ガチャッ

凛「おっはにゃーん!!」バーン

絵里「あら凛、おはよう」

ことり「お、おはよう凛ちゃん!」

いっちばん空気読めなさそうな人が来ちゃったよおおお!!


凛「んん?それは新しい曲の衣装?」

ことり「え、あ、うん…」

凛「うおおおっ!!凄いにゃー!!絵里ちゃんのだけ何か露出度高いけど可愛いにゃー!!」

ことり「!?」

絵里「うえぇっ!?」

凛ちゃあああああん!!何で言っちゃうのこのばっかあああああ!!

ええ!?これなんて言おう!!『布が足りなかった』とか?それじゃあ買ってこいよって話になっちゃうじゃあああん!!
な、何か良い言い訳を考えるのよことり!!

ことり「えぇ?き、気のせいだよ……」

凛「うーん…そうかにゃー?」

そう!気のせい!!気のせいなの!!お願いだからもう何も喋らないで凛ちゃあああんん!!

絵里「確かに…何か私のだけ露出度高いわね……」

そっちかああ!!そっちが喋っちゃったよおお!!終わったあああ!!!

ことり「そっ…そうかなー?あはは、じゃあ後で布増やしとくね!!」

もうダメ。もうこうするしか手は無いね。
欲に従っちゃったことりに神様が罰を与えたんだね……


―――――――――――――――

―――――――――

――――

いつも通り『絵里ちゃん可愛いなぁ』なんて思ってたら練習が終わってた。
時間の流れって早いね。

校舎から出ると夕暮れが私の目を差した。
夏でしか味わえないこの感覚
ことりは案外嫌いではない。

穂乃果「うえーん!今日宿題多いよぉ!!」チラッ

海未「……」

海未「さぁ、帰りましょうことり」

ことり「え、あ、うん」

穂乃果「ちょっと海未ちゃん!!そこは『私の宿題、見せてあげますよ穂乃果(キリッ』」

穂乃果「じゃないの!?」

海未「はぁ……穂乃果もいい加減、宿題ぐらい自分でやったらどうです?」

穂乃果「ほ、穂乃果なりには頑張ってるんだよ!?」

海未「しちは?」

穂乃果「27」

海未「……」

ことり「……」


ことり「はぁ……」

何か最近穂乃果ちゃん達との会話に参加できないなぁ……


穂乃果「じゃあ今日!穂乃果んちで勉強教えてよ!!」

海未「しょ、しょうがないですね……じゃあ帰ったらすぐ行きますね」

穂乃果「わかった!!楽しみにしてるね!!」

何か今日二人でお勉強会する約束になってるし……ん?
ん?んん?
もしかして穂乃果ちゃんと海未ちゃんは既にそういう関係なのかな?んん?

穂乃果「えへへっ!今日も一緒にお風呂入ろうね海未ちゃん!」

海未「ちょっ穂乃果!!そういうことは二人っきりの時以外言わないとっ…」

あわわ!やっぱりそうだったのか!

……女の子同士っておかしくないのかなぁ

女の子同士』

きっとそれは両思いだから乗り越えられる壁なだけで
片思いの人にとってはただの棘だらけの絶壁でしかない。

『親友』として傍にいられる。
『親友』として手をつなげる。
『親友』として笑い合える。


ことりはそれに『恋人』という立場を求めてしまっている。


『恋人』として傍にいられる。
『恋人』として手をつなげる。
『恋人』として笑い合える。

一見簡単そうな言葉だが、それが女の子同士となるととても難しい。

どうしてことりは女の子を好きになっちゃったんだろ……
どうしてことりは……





にこ「そんな暗い顔してどうしたの?」


ことり「……にこちゃん……」

ポケットに手を突っ込んで相変わらずのジト目でこちらを見てくるにこちゃん。

にこ「そんな所にボーっとつっ立ってないで早く行きなさいよ、通行の邪魔よ。」

ことり「……ごめん」

にこ「だから別に謝れって言ってるわけじゃなくてっ!……」

ことり「……」

にこ「……はぁ、あんたのことだからどうせ「女の子同士の恋愛だよっ!!どうしよう!!」」

にこ「とか考えてたんでしょ?」

ことり「……よくわかったね」

ことりがそう言うとにこちゃんは目を閉じ、やれやれ……というようにため息をついた。

そしていきなり両手でグイッとことりの肩を掴んだ。

ことり「!?」


にこ「あのね!?恋愛に年齢も性別も人種も関係ないの!!」

にこ「あんたは絵里が好きなんでしょ!?
   だったらあんたは「絵里が好き」って気持ちに自信を持ちながら生きなさいよ!」

にこ「赤の他人だったらまだしも、顔見知りで同じスクールアイドルのメンバーでしょ!?」

にこ「良かったじゃない!そこらへんの絵里が好きな人より一歩先からスタートよ!?」

ことり「……」

にこ「……」

ことり「……って……」


ことり「だって嫌なんだもん……」

ことり「今、皆と笑ってふざけ合ったり、真面目に練習したり」

ことり「μ'sの順位が上がって喜んだり、下がって悲しんだり」

ことり「そんな毎日がことりは大好きなのに」

ことり「『絵里ちゃんに告白したい』って気持ちのほうが一歩勝っちゃってて」

ことり「告白したらこの関係が崩れちゃうってわかってるのに!!」

ことり「わかってるのに……」

駄目。これ以上喋ったら泣いちゃいそうで
自然とにこちゃんから目をそらしてしまった。

にこ「……」


にこ「関係なら何回でも壊しなさいよ。」

にこ「あんたが何回失敗して何回この関係を壊しても、
   私が何回でも元通りに戻してあげる。」

ことり「……」

にこ「こんなプリティでピュアピュアなにこちゃんがあんたの恋愛のために無様でだっさく頑張ってやるんだから
   あんたも絵里に恋して無様でだっせぇ所見せなさいよ」

ことり「……絵里ちゃんに恋していいの?」

にこ「あったりまえでしょ?全力で絵里に恋しなさい」

にこ「ていうか、絶対絵里に思い伝えなさいよ?
   伝えないなんてにこが許さないから」

ことり「あはは……それは困ったなぁ……」

笑いたいのに苦笑いしかできない。
駄目だなぁ……こういう時に笑えてこそアイドルなのに……

すると、にこちゃんはそれを察したかのように私の頬を左右に引っ張った。


ことり「ひゃ……ひゃい?」

にこ「ほら、にっこにっこにー!!」

ことり「……?」

にこ「にっこにっこにー!!」

ことり「にっ……にっこにっこにー……」

にこ「そう!それでいいの!
   もしすっごい辛くてすっごく悲しいことがあったらそう言うのよ?」

にこ「必ず笑顔にしてあげるから」

ことり「にこちゃん……」

ことり「あのっ

にこ「それじゃぁっ!あと15分でスーパーの特売始まっちゃうから先に帰らせてもらうわね!!」ダッ

ことり「えっ!?う、うん!じゃあまた明日!!」


急な展開の切り替えに少し焦ったけど先ほどまでのモヤモヤは何処かへ行っていた。
ちょっとにこちゃんのことかっこいいなぁなんて思ったけど最後の一言で台無しだよ……

ことり「……」

『必ず笑顔にしてあげるから』

その言葉、信じるからことり。

http://i.imgur.com/TKw6qtA.jpg


  ・穂乃果んちのお風呂・

穂乃果「ふぅっ……海未ちゃん顔真っ赤だよ?////」

海未「はぁっ……そういう穂乃果こそ顔が真っ赤ですよ?////」

穂乃果「まぁ、真っ赤にさせたのは海未ちゃんなんだけどね……////」

海未「じゃあ次は私の番ですね……////」タッ















海未「スライディングタックルゥアアアアアアァ゛!!!」ドゴアッ

穂乃果「ぐふあっ!!!」ドゴッ


穂乃果「うぐっ……海未ちゃんもなかなかやるね……」ズルッ

海未「練習しましたからね……」

穂乃果「まさか『ドキッ!!お風呂でローションレスリング☆』
    を海未ちゃんがここまで楽しんでくれるなんて穂乃果は嬉しいよ……」

海未「はっ……前回は負けてしまったので今日はバリバリ勝つ気ですから……油断は禁物ですよ?
   こんな馬鹿げたことやってるなんてことりにバレそうになったときはちょっとヒヤヒヤしましたけどね……」

穂乃果「なっ……馬鹿げたことなんて……ローションレスリングを馬鹿にしないで!!」ドンッ

穂乃果「穂乃果はテレビでこれを見たときに可能性を感じたんだよ……可能性を。」

海未「なぜそんな可能性を強調するのかはわかりませんがグダグダ言ってるなら次も私が行かせてもらいますよ!!」ダッ

穂乃果「甘いね海未ちゃん!!」サッ

海未「なっ!?避けっ!?ぐっへァ!!」ドゴッ

穂乃果「へっ…甘いよ…甘すぎるよ海未ちゃんッッ!!
    そんなに猛ダッシュで走ったら滑って壁に顔ぶつけちゃうなんて小学生でも分かることだよ……」

海未「ぐぅ……顎が……」ヒリヒリ

穂乃果「そこに穂乃果が踵落とし」バッ

海未「ちょっそれは禁止技だと昨日決めっ

ギャアアアアアアアアアアアアアアッッ!!


亜里沙「何かお風呂場が騒がしいね」

雪穂「あぁ、気にしないで、どうせまたローションレスリングやってるんだろうし」

亜里沙「ローションレスリング?何それハラショー!!今度やろうよ雪穂!!」

雪穂「全力で遠慮しとくわ」


今日も高坂家は平和である。

今回はここまで。
改めて見ると絵里ちゃんよりにこちゃんとの会話の方が多い気がするぞ…?

そんな感じで頑張ります。

ことり「それでねっ!!ことりその指どうしたと思う!?」

にこ「舐めた」

ことり「…………どうしてわかったの…?」

にこ「いや逆に絵里に舐めてもらった指でなにすんのよ……」

ことり「確かにそうだね…ごめんことりどうかしてたみたいだよ……」

部室。
ことりは新曲の衣装作り、にこちゃんはネットでμ'sの評判を見てるらしい。
最近、にこちゃんとの会話数が増えた気がする。
ことりの絵里ちゃん話を聞いてくれるからだろうか?
……もしそうだとしたら何かことりばっか喋っちゃって悪いなぁ……

にこ「それで、それから何か進展あった?」

ことり「ううん、全然。
    びっくりするほど何もない平凡な毎日だよ」

にこ「そう…それはそれでよかったじゃない」

今日の天気は曇り。
空は灰色、空気はじめじめとしていてあまり良い気分ではない。
でも天気予報によると雨は降らないらしい。よかった。

にこ「……」

ことり「……」

にこ「さぁて、そろそろ皆来る頃だろうし先に着替えようかしら」

ことり「……」

ことり「…じゃあことりも……」

にこ「……」

にこ「……別に、無理してついてこなくてもいいのよ?
   衣装作りきりのいい所で終わらせて、ことりはことりで着替えればいいんだし」

ことり「別に無理してないよ。リボンも付け終わってちょうどことりも着替えようと思ってたし」

にこ「…そう、それならそれでいいんだけど」

そう言って二人静かに立ち上がった。

またこれだ、にこちゃんは会話が途切れると決まって「着替える」と言って逃げる。
きっと今、顔には出していないが「なんでついてくるのよ!!空気読みなさいよ空気!!」と思っているに違いない。
ことりはそんなにこちゃんがことりとのこの空気をどんな感じで過ごすのか
それを見るのが楽しみでいつも何らかの理由をつけてついて行く。
ちょっと悪趣味かもしれないけど、にこちゃんもことりの赤面見てニヤニヤしてたんだからこれくらいしたっていいよね。

ことり「そういえば、にこちゃん」

にこ「なに?」

屋上。
着替え終わったことり達は柵に寄りかかり、曇天の下で無言の時間を過ごしていた。
しかし、少しにこちゃんに聞きたいことがありその静寂をことり自身で破った。
ちょっともったいないことしたなぁ……

いつも通りぶっきらぼうな声で返事をするにこちゃんだが、きっと心の中では(うっひゃあああ!!会話きたあああ!!)と叫んでるだろう。へへっ

ことり「その……
    海未ちゃんと穂乃果ちゃんって…付き合ってるの?」

にこ「……」

ことり「……」

にこ「……」

ことり「……」

にこ「え?」

ことり「え?」

にこ「え……えぇ?そうなの?」

ことり「え、いや、その、この間何か一緒にお風呂入る的な話してたから……
    いや、別にまだ付き合ってるって決まったわけじゃないんだけど……」

にこちゃんなら自称恋愛マスターだからそういうの詳しいと思ってたんだけどなぁ……

にこ「え?『一緒にお風呂に入る』?」

ことり「うん、確かにそう言ってたよ」

にこ「あぁ……じゃあ付き合ってはいないわね」

ことり「え、そ、そうなの?」

どんな基準でそうなったのかはわからないけど
そっか……穂乃果ちゃん達付き合ってないのかぁ……

にこ「あんた「ドキッ!お風呂でローションレスリング」知ってる?」

ことり「何それ」

にこ「……知らないならそれでいいわ
   ほら、よく言うでしょ?『知らぬが仏』って」

何の話かさっぱりわからないけど知らなくていいことらしいから知らないでおこう。うん。

にこ「……」

ことり「……」

にこ「それにしても…皆遅いわね……」

にこちゃんがドアの方を見ながらそう呟いた。

それは遠まわしに(ことりとのこの空気が辛いですー!)って言ってるのかな?もう面白いなぁにこちゃん。
表情には出さず、ニヤニヤしてにこちゃんを見ているとガチャリとドアの開く音が聞こえた。

穂乃果「ことりちゃんたちこんなところにいたのー!!もう穂乃果探しちゃったよぉ!!」

現れたのは穂乃果ちゃん。
走ってきたらしく、息は荒く、肩が上下に動いていた。
だがしかし、着ているのは練習着ではなく制服、一体どうしたのだろうか。

穂乃果「今日天気が悪いから練習中止だって!
    それに海未ちゃんも何か怪我してるみたいだし凛ちゃんと花陽ちゃんと真姫ちゃんは風邪で人数が少ないから今日はやらないみたいだよ!」

にこ「えぇー?何それぇー」

にこちゃんが目を細めて言う。
にこちゃん、アイドルとしての意識が高いから、練習中止って聞くといつも不機嫌になっちゃうんだよなぁ…

それにしても、海未ちゃん怪我してたんだ……朝から一緒にいたのにことり全然気付かなかったよ。
それに一年生三人風邪って……また雨の中走り回ったのかなぁ?あれはもうやらないって凛ちゃん言ってたのに……

穂乃果「じゃあ、穂乃果下で海未ちゃん待たせちゃってるから先行ってるね!
    ことりちゃんも早くきてよー?」

ことり「あ、うん!」

穂乃果ちゃんはそう言うと屋上から出て行った。
この前は二人でどんどん帰っちゃったけど、今日は待ってくれるんだ。


そんなことを思ってるとにこちゃんが「くぅー!」と声を出し背伸びをした。

にこ「はぁあー、せっかく着替えて練習する気満々だったのになーったく……
   こんなところに居ても時間の無駄だし早く着替えて帰りましょ?」

ことり「うん、そうだね」

にこちゃんの方へ向かおうとした時、後ろから笑い声が聞こえてきた。
なんだろうと思い下を見ると校門の方に絵里ちゃんがいた。
その隣には希ちゃん、二人で何か話しているようだった。

にこ「何?どうしたの?
   ……あぁ、絵里じゃない」

屋上から出ようとする足を止め、ことりの隣に来て一緒に下を見つめるにこちゃん。
「よかったじゃない」と言う様にニヤニヤするにこちゃんを横目にことりはぼーっと絵里ちゃんを見つめた。
ここからじゃよくわからないが二人で笑い合ってる様だった。
――……あの二人…仲良いなぁ……
絵里ちゃんと笑談する希ちゃんを羨ましいなぁなんて思ったりして。

すると……


ことり「っ……」

にこ「……」


二人が手を繋いだ。

仲良く手を繋ぎ、一緒に校門を出ていく絵里ちゃん達を見て、何故か目が霞んだ。
ことりどうしたんだろ……別に仲良い子同士が手を繋ぐことはおかしくないのに。
しかもよく見ると恋人繋ぎ。更に胸が苦しくなった。
にこちゃんが黙って下を見ている。そして心配そうな顔をしてゆっくりとことりの方を見た。
やめて、そんな顔してこっち見ないでよ。

愚図りだした空が私達を覆った。
そしてポツポツと予報外れの雨が降ってきた。
何が「雨は降らない。」だよ……降ってきたじゃん……

そんなことを思ってると、音は激しくなり、地面が黒に染まっていく。
汚い色をした空から降ってくる冷たい銀色の針がことりとにこちゃんを濡らした。
肩と心はすごく冷たいのに、目だけが熱い。

ことりの頬を伝ってるのは雨だから。

濡れてたってしょうがないよね。


  ・いつかの部室・

真姫「あんたのせいで私が風邪をひいたの!!すっごい辛かったんだからね!?」バンッ

凛「凛のせいだけじゃないにゃー!!真姫ちゃんだってノリノリだったじゃん!!雨の中カズダンス踊ちゃってさ!!」バンッ

真姫「踊ってないわよ!!いつの話よそれ!?」

真姫「大体何!?あんたのその「にゃー」ってやつ!!魚嫌いなのににゃーにゃーにゃーにゃー言っちゃってさ!!
   高校生にもなってそんなキャラ続けてるとこの先にこちゃんみたいになっちゃうわよ!?」

にこ「ちょっと、今にこのこと馬鹿にしたでしょ」

凛「真姫ちゃんこそ!!話しかけると「何よ」「何でよ」って疑問ばっかじゃん!!
  スクールアイドル界のエジソンぶるのもいい加減にしてほしいにゃー!!」

真姫「スクールアイドル界のエジソンって何!?そんなのぶってるつもりないんだけど!?」

真姫「それにあんたに作詞してもらった曲なんなの!?
   『にゃーんにゃーんにゃにゃにゃーんさぁみんなも一緒ににゃんにゃんにゃーん』
   ってふざけてるの!?私の要素0じゃない!!」

凛「真姫ちゃんの作った曲こそ!!
  『私は薔薇の中の姫、私の美貌に勝てるもの?この世にあるわけ無いでしょう』
  ってどういうことなの!?真姫ちゃんのただの自分語りじゃん!!こっちの方こそ凛の要素0%にゃー!!」

真姫「うっるさいわねぇ!!猫!!似非猫!!似非にゃんにゃん!!」

凛「はいはいうるさくてすいませんでしたー!!高嶺のflowerさん(笑)」

真姫「ッ……!!」ブチッ

真姫「もおおおお!!花陽!!今回の件は絶ッッ対凛の方が悪いわよね!?」

花陽「ゴハンオイシイヨォ」

真姫「ほら!!花陽だってそう言ってるじゃない!!」

凛「言ってないにゃー!!かよちんはいつだって凛の見方だもん!!ねーっ?」

花陽「ゴハンオイシイヨォ」

凛「ほおおぉら!!かよちんも「そうだよ」って言ってるにゃー!!」

真姫「ぐぅうっ!!こうなったらブリッジ対決よ!!」

凛「ふんっ!!負けるとわかってて勝負を仕掛けてくるなんて真姫ちゃんもお馬鹿さんにゃー」

真姫「今回はどうかわからないわよ?穂乃果!!審判お願い!!」

穂乃果「わかったよ!!
    えー、それでは第56回、ブリッジ対決を始めます。
    両者はブリッジの準備をしてください。」

凛「負けたら土下座で「ごめんなさい、私が悪かったです」だからね真姫ちゃん?」

真姫「はっ、その言葉、そのままそっくりお返ししてやるわ」

穂乃果「それじゃあいいね?
    レディー、ファイッ!!」

こうして今日も一年生組は平和である。


またことりちゃんが絵里ちゃんと話せなかった……
次こそはイチャイチャさせたいです。




もしかしたら俺のことじゃないかもしれませんが俺はペロリストさんじゃないです。はい。

ことり「そ、それじゃあボタン押すね……」

絵里「え、えぇどうぞ……」

今日の天気は快晴。
ポカポカしたお日様が窓から入り、とても心地良い。
時刻は丁度12時、お昼時だ。
向かいに座る絵里ちゃんの視線にかなり緊張しつつ、私、南ことりは机端に置かれたボタンに指を乗せた。
少し力を入れると「ピンポーン」という少し低めの音が店内に鳴り響く。
しばらくすると店の奥の方からハンディを持った店員がにこやかにやって来た。

店員「お待たせいたしました、御注文をどうぞ」

ことえり「あのっ……」

ことり「……」

絵里「……」

絵里ちゃんと声が重なってしまい、少しの静寂が始まる。

ことり「えっと……じゃ、じゃあことりから言うね
    このミートソースパスタを一つとセットドリンクバーを一つ、あと食後にふんわりチーズケーキを一つ。
    絵里ちゃんは?」

絵里「私はハンバーグステーキを一つ……
   それと食後に……」

ことりと絵里ちゃんは目を合わせた。
そしてアイコンタクトで合図し二人同時にメニューを呟いた。


「「こ、この…………限定……と……フェを一つ……」」

どうしてこんな料理名にしたのか、店側に小一時間問いたいぐらいだ。

店員「あ、あの、すいません……もう少し大きい声でお願い致します」

どうやら二人共声が小さすぎたようで店員が困り気味に聞き返してくる。
お願い、お願いだから次こそはちゃんと聞いててください店員さん……

二人で気まずそうに目を合わせ、もうこの際どうなったってもいいとことりと絵里ちゃんは吹っ切れた。



「「この!!『カップル限定☆すぃーとチェリージャンボチョコレートパフェ』一つ!!」」


周りの視線が一斉にことり達に集まる。
その視線には「どうして女の子同士がカップル限定パフェを?」とか「どうしてそんな大きな声で?」など色々な疑問が含まれているだろう。
見なくてもわかる、きっと今ことりも絵里ちゃんも顔が茹でだこの様に真っ赤だ。
店員が「かしこまりました、ご注文を繰り返させていただきます」と笑顔を崩さずに言う。

あ、あっれぇ……?
どうしてことり達こんなことしてるんだっけ……?

それは昨日のことだった。


あの日、あの屋上から見た光景は私の心にくっきりと焼きついていた。
それから何故だかことりとにこちゃんまでの関係までもギクシャクしてしまい、二人っきりの時間が更に辛くなった。
ことりとの空気の気まずさに、にこちゃんが「着替える」と言って出て行ってもことりはどうしてもついて行く気になれなかった。
真姫ちゃんとふざけるにこちゃんに穂乃果ちゃん達と笑い合いながら衣装作りをする私。
私がにこちゃんと話す回数はほぼ0に近い状態となっていた。

しかし、意外にもそんな毎日を破ったのはにこちゃんの方だった。

にこ『くじ引きで二人組を三つ、三人組を一つ作ってそのグループでお出かけしましょう』

唐突に、独り言の様に、私の目を見ずにこちゃんはそう言った。
部室にはにこちゃんと私しかいないし、話しかけるような語尾におそらく私に話しかけているんだろうなと予想はついた。

その時はにこちゃんが何を言っているのか全くわからなかった。
どういう意味か聞こうとしたが「じゃあクジ作るから今日練習休むわ」と言い、荷物をまとめ、すぐ帰ってしまった。
あれだけ練習熱心なにこちゃんが自分から練習を休むなんてこれはただ事ではないな、と思ったが
『グループを作ってお出かけ』
その意味はわからないままだった。



だがしかし、その意味を知る機会は意外と早く訪れた。


絵里「あら、私はことりとね、よろしく」

「たまには息抜きも必要じゃない?」というにこちゃんのゴリ押しでやることになったこの「お出かけ企画」
にこちゃんが作ったくじを引いて同じ色だった人とグループになり、お出かけするらしい。
場所は自由、時間は明日の朝9時から各自スタート。
ルールは主に一つ、にこちゃんが出した超難問(自称)お題をそのお出かけ中にクリアすること。
そんな特に深い意味も無い、ただのお出かけごっこ。

私のペアは偶然にも……いや、必然的に絵里ちゃんだった。
この時、あぁ、にこちゃんはこれを企んでたんだなぁと直ぐに理解した。
きっとあの時、私がどのクジを引いても、絵里ちゃんとペアになっていただろう。
おそらく、そのことをにこちゃんに問い詰めても
「えぇーにこ知らないー。きっとー二人はー最初っから結ばれる運命だったんじゃないのかなー?にこっ☆」
とシラを切るだろう。だから私はあえて何も言わず、無言でにこちゃんにお礼をした。

そんなにこちゃんの考えた組み合わせは
私と絵里ちゃん、希ちゃんとにこちゃん、真姫ちゃんと海未ちゃんの二人組、そして花陽ちゃん穂乃果ちゃん凛ちゃんの三人組。
まあ特に片寄りもなく均一された組み合わせなんじゃないかなぁと私は思う。

絵里「どこに行こうかしら?やっぱお出かけといったら水族館とかゲームセンターとか?」

ことり「げ、ゲームセンターはどうかと……遊園地とかどうかな?」

絵里「遊園地……いいわね。
   小さい頃に行ったっきり行ってないわね……
でも水族館も捨てがたい……」

ことり「ま、まぁ時間は一杯あるんだし色々行こうよ」

絵里「そうね、そういえば最近新しくできた遊園地あるじゃない。あそことかどう?」

ことり「あっいいね!あそこのチュロスすっごく美味しいんだって!!」

絵里「ちゅ、チュロス…?新しいネズミの仲間かしら……」

ことり「食べ物だよ……」

そんな感じで話し合っていると校内に下校時間を知らせるチャイムが鳴り響いた。

絵里「とりあえず、待ち合わせ場所だけ決めちゃいましょうか」

ことり「そうだね」


明日、どんな服着ていこうかなぁとか、待ち合わせ時間には遅刻しないかなぁとか
私の頭はそんなことで一杯だった。


にこ「さぁて、明日に備えてにこはさっさと帰ろ

希「しっかし、ビックリしたなぁー
  にこっちがまさかウチとペアになりたかったとは、予想外だったわー」チラッ

にこ「な、なななんのことにこー?にこ全然わかんないにこぉー☆」

希「誤魔化さなくてもいいんやで?
  このペア、全部にこっちが予め決めてたんやろ?」

にこ「…………」

希「……」ニヤニヤ

にこ「はぁあー、やっぱ希は誤魔化せないかぁー」

希「ウチだけじゃないんやない?
  きっとことりちゃんも、気付いてるけど気付かないフリをしてるだけ。
  ウチにはそう見えたんやけどなぁ」

にこ「おそらくそうね…………ん?」

希「ん?」

にこ「今なんて」

希「ま、さ、か。
  ウチがことりちゃんがエリチのこと好きなこと知らんと思ってたー?
  思ってたやろ?ん?ん?んん?」ニヤニヤ

にこ「顔がうるさいわよ希……
   ……やっぱり、希はなんでもお見通しってわけね」

希「なんでもってわけじゃないんやでにこっち。
  この先、ことりちゃんとエリチがどうなるのか、ウチには全く予想できん」

にこ「とか言いつつ、実は予想できちゃってるんでしょ?
   そういう小芝居はいいから……」

希「いいや、この先あの二人がどうなるのか、ことりちゃんにかかってる。
  だからウチには全く、これっぽっちも予想できないんやで」ニコッ

にこ「……そう
   ……そういうことにしといてあげる」

希「ふふっ
  いやー、明日楽しみやなぁにこっち?」

にこ「そうね、色々な意味で」

泣き叫ぶ様な蝉の声、その声に合わせる様に辺り一面が茜色に染まっていく。
炎天下、滲んだ影が二つ。
夕焼けに消えていった。


ことり「ポーチはちゃんと持ってるよね?ハンカチに皺は無い?携帯の充電は……よし、満タン!!
    あ、前髪おかしくないよね…?髪の毛絡まってないよね?靴反対じゃないよね!?」

朝、自分が翌日の遠足が楽しみすぎて眠れない系の子だということを思い知った。
鏡の前で何回も髪の毛を梳かし、顔にゴミは付いてないか、何回も確認した。

理事長「はいはい、大丈夫大丈夫。いつも通りのことりよ?」

壁に寄りかかったお母さんがめんどくさそうに返事をする。

ことり「本当?本当に本当!?」

理事長「本当に本当。
    っていうか今日やけに張り切ってるじゃない……
    お、もしかしてデートかなぁ?んん?」

ことり「違っ……そんなんじゃないよ!!ただ同じスクールアイドルの子とお出かけするだけで……!!」

理事長「それで準備に1時間?
    ……彼氏ができたなら、お母さんに報告しなさいよ?ん?」

お母さんがニヤニヤしながら言ってくる。
この顔……正直ムカつく……

ことり「彼氏なんていないよ!!本当にただ一緒にお出かけに行くだけで!!」

理事長「あーあー、わかったわよ。
    ……もしかして、彼女だったりしてぇ?」

ことり「……」

理事長「……」

ことり「……」

理事長「……」

理事長「え、ちょ、何で何も言わないの?え?まさか本当に彼女?いや、別に今のは冗談で……え?」

ことり「しつこいよお母さん……じゃあ行ってくるね……」

無駄にテンションの高いお母さんを無視して私はドアを開けた。
外から涼しい風が入り込んできて、髪がふわっと舞い上がる。

理事長「お、オ゛ォお……ン……行ってらっしゃい……」

後ろの方で静かにドアの閉まる音が聞こえた。



 ガチャン

理事長「え、いや……まさか本当にことりが女の子と……いや無いわ。
    まさかあの子に限って……」

理事長「いやちょっと待って……私がことりぐらいの時誰に恋をしてたっけ……?」


(西木野(母)「今日駅前のパフェ食べに行こうよ」)

(西木野(母)「おぉー!今日は青い水玉のパンツかー」)

(西木野(母)「今日のテストどうだったー?私今回満点行けちゃうかもー」)

(西木野(母)「今日のお弁当はー丸ごとトマトだァああああッ!!」)

(西木野(母)「ほら、泣かないで、私がいるでしょ?」)

理事長「……っ///」

理事長「いやいやいやいや、ないないないない。
    …でもことりは私の子よ……もしかしたらそういう可能性も……」

理事長「あああああ!!だめ!!どんどん変な方向になってく!!
    
    ……二度寝しよ」



携帯の時計を見たら、現在時刻8時。
待ち合わせ時間9時だよ……何やってんのことり……

一人の時間というものは長く感じるもので
お店のガラスで全身をもう一回確認して、コンビニで少しお菓子を買って、
店を出て時計を見ても10分ほどしか進んでいない。

ことり「はぁ……」

近くの柵に寄り掛かりぼーっと上を見上げる。
目が痛くなる様な青色に、厚塗りしたような真っ白い雲が広がっている。
今日も元気に蝉や最近流行りの声優の声が聞こえ、サラリーマンやくどい化粧の女の人達が目の前を通る。
暖かいとも冷たいとも言えない絶妙な風が私の頬を撫でた。
その時

「あ、あれぇ?……ことり?」

少し抜けた声が聞こえた。
こ、こここここ、この声は……

ことり「え、絵里ちゃん!?」

絵里ちゃんだ


絵里「ごめん待たせちゃった?
   少し早めに来たつもりだったんだけど……ことり、来るの早いわね」

苦笑い気味に笑う絵里ちゃんに、ことりの心臓は俗に言うギガキュンMAXというやつだった。
いや、早めにって言ってもまだ待ち合わせ時間30分前ですぜ絵里さん……
でもまぁ、絵里ちゃんの性格なら少し納得いくかな。

ことり「ぜ、ぜぜぜ全然待ってないよ!?つい30分前ぐらいに来たばっかだから!!」

絵里「んん!?結構待ってるじゃない!?」

だめ、慌てすぎて自分が何言ってるかすら解らなくなってきた……

そんなことりの顔を見て絵里ちゃんは何かに気付いた様に眉をひそめた。

絵里「あ、ことりぃ、目の下のクマ酷いわよ?また遅くまで衣装作りしてたでしょ?」

絵里ちゃんが小悪魔笑顔で聞いてくる
うっひゃあ可愛いよ絵里ちゃん……

ことり「ちょっとわくわ……そう!衣装作りしてて!」

『わくわくしすぎて寝れなかった』
なんて言ってもきっと絵里ちゃんは何がわくわくするのかわからないんだろうな……

絵里「まったく、頑張り過ぎは身体に良くないってこの前話したばっかじゃない……
    まだライブまで時間もあるんだしそんな焦らなくてもいいのよ?
    ことりは、クマの無い笑顔のことりが一番可愛いんだから」

ことり「うっひぇえ゛ェ!?そ、そそそう!?あ、ああああありがとう!!」

絵里「?」

『可愛いんだから』
その一言だけで……一晩で法隆寺建てられちゃうよ……


絵里「とりあえず、どうする?ゲームセンターとかで時間潰す?」

ことり「……そんなに絵里ちゃんゲームセンター行きたいの?」

絵里「い、いいじゃない!行ったことないんだもん!」

ことり「うえぇっ!?そ、そうなの?
    じゃ、じゃあ行く?」

絵里「い…行きたい」

ことり「よし!たしか近くに一杯ゲームがあるゲームセンターあったよね!そこ行こうか!」

絵里「ふふっ…私の初ゲーセンはことりとね」

ことり「……」

はぁあんっ!!絵里ちゃん可愛い!!いちいち言うことが可愛いよ!
何初ゲーセンってそんな初体験みたいなあああ!!
絵里ちゃんの初体験(ゲーセン)ことりが貰っちゃったよ!!ひゃはああああっ!!

炎天下、私のテンションは最高潮に達していた。


海未「……」

真姫「あら、おはよう海未
   来るの早いのね。待たせちゃった?」

海未「おはようございます真姫、私も今来たばかりですから全然待っていませんよ」

真姫「とか言って、
   実は結構前からここに居たんでしょ?」

海未「そんなに私の言葉は信憑性に欠けているでしょうか?」

真姫「いや、そういうこと言ってるわけじゃなくて……」

海未「あ、すいません……」

真姫「……」

海未「……」

真姫「……」

海未「……」

うみまき(辛いッッ!!)


真姫(何で!?何で私のペアは海未なの!?
   穂乃果や凛みたいに存在自体がボケな人がペアだったらどれだけ空気が楽だったろうか……
   海未ってどっちかっていたらツッコミ役だし、かと言って空気を和ますためにボケるタイプの人じゃなさそうだし……
   いや、でもこの空気の辛さにボケを振ってくる可能性も無きにしも非ず……そのときは全力でノってあげよ……)

海未(な、なななぜ私のペアが真姫になってしまったんでしょう……
   私にはくじ運がないのでしょうか……今年の御籤は大吉だったはずなのに……
   いや、その大吉御籤を引いたことで今年の運を全て使い果たしてしまったという可能性も……そんな……
   と、とりあえず真姫がボケたら全力でノってあげることにしましょう……正直この空気は凄い辛い……)

真姫(っていうかなんで9時とか微妙な時間からなの!?することないじゃない!!)

海未(12時とかからスタートならお昼に誘ってなんとか時間を潰すことが出来ましたのにこれじゃあ……)

真姫「……」

海未「……」

うみまき(だっ……)

うみまき(ダレカタスケテー!!)
   
二人は似たもの同士だった。


にこ「ぜぇ…・・ぜぇ……」ハアハア

希「二分遅刻、罰ゲームやね」ニコニコ

にこ「に、二分ぐらいいいじゃない!!二分よ二分!!まだインスタントラーメンもできない時間よ!?」

希「『にこはぁ~一分一秒を大切にする人間だからぁ~絶対遅刻しないにこっ☆にこを待たせないようにしなさいよ~?』
  って言ったのは誰だっけ?ん?」

にこ「に、にこそんなこと言ってないにこぉ☆」

希「でも遅れたのは事実やん?
  罰ゲーム!!ワシワシMAX!!」ワシワシ

にこ「ちょっここは公共の場ッぎゃあああぁああああああぁああッ!!!!」


花陽「……」

花陽「……」

花陽「……」

花陽「……」

花陽(あれっ!?)

花陽「ま、待ち合わせ時間9時だよね!?それに場所もここで間違いないよね!?」

花陽「な、なんで二人共来てないのぉ!?」


――――――――――


穂乃果「……それはロールパンだよ!!……ZZZ……」

凛「んン……かよちん……そっちは雑穀米にゃ……ZZZ……」


花陽「ど、どうしよう……絶対二人共まだ寝てるよ……
   起こしに行ったほうがいいのかなぁ……で、でも二人の家に行ってたら時間が……」

花陽「だ、ダレカタスケテー!!」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年01月23日 (木) 16:02:45   ID: iUv-wz-g

本当続き期待

2 :  SS好きの774さん   2014年01月25日 (土) 08:00:08   ID: 9a1abFPx

続き期待してます。

3 :  SS好きの774さん   2014年02月13日 (木) 00:45:44   ID: r8LKGcfJ

続き楽しみです!

4 :  SS好きの774さん   2014年03月04日 (火) 14:42:52   ID: w_N9Mw2i

期待してます!

5 :  SS好きの874さん   2014年04月29日 (火) 01:22:36   ID: PdoW_ZKb

ま~だかな?

6 :  SS好きの774さん   2014年07月19日 (土) 22:02:29   ID: VeC7gcI4

法隆寺ネタで笑った

7 :  SS好きの774さん   2014年08月12日 (火) 02:02:27   ID: HB0qa1zB

期待

8 :  SS好きの774さん   2015年01月22日 (木) 17:16:48   ID: faA-9bU2

センスを感じる
期待

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