P「誰だお前?」美希「そんな……ひどすぎるの!」(543)


タンタンタンッ

事務所の階段を登る。通い慣れた階段だ。最初は長くて苦しかったこの階段も、今では軽快に登りきることが出来る。

(今日はハニーに謝らなきゃいけないことがあるの。だから……)

今日はそのために、朝早く来たのだ。心なしか、足に力が入る。
扉の前で深呼吸。ちょっと緊張してしまう。

(ハニー、許してくれるかな? 大丈夫だよね……。だってハニーだもん!)

ガチャ

美希「おはようございますなの!」


美希「あれー? 誰もいないの……」キョロキョロ

美希「おかしいなぁー。ハニーはいつもはこの時間にはもう来てるはずなのに。あ、給湯室に明かり……」

ガチャ

P「ふぅー。誰もいないと自分でお茶も淹れないといけないからなぁー」

美希「あ、ハニー! おはようございますなの!」

P「え? お、おう」

美希「あのね、ハニー。実は今日ミキ、ハニーに謝らなきゃいけないことがあるの。聞いてくれるかな?」

P「あ、っと」

美希「あの、ミキね、ハニーの気持ちも考えずに……」

P「ちょっとまってくれ! なぁ、そんなことよりもまず」

美希「ん?」

P「君は……誰だ?」

美希「おぉ? な、なにそれハニー?」

P「えっと、どこかであったことあるっけ?」

美希「な、なになに? どういうこと?」

P「こっちが聞きたいよそれは。いきなり事務所に入ってきて、よく分からない話を始めるけど、君はまず一体誰なんだ?」

美希「え、え、え?? 何が言いたいの?」

P「だからまず、君と俺とは初対面じゃないか! 俺は君を知らないぞ! だいたいハニーってもしかして俺のことを言ってるのか? いきなり初めて会った人にハニーとか、ふつうじゃないぞ」

美希「そんな! ハニーはハニーだよ! ハニーこそ何言ってるの? 昨日まで普通だったのにいきなり! 何? もしかしてミキのこと忘れちゃったの?」

P「だから忘れたも何も、俺は君のことを……」

美希「えーっと……そ、そっか! ちょっとした嫌がらせなんだね? ミキがハニーを怒らせちゃったから、お仕置きとしてちょっと悪戯して苦しめてやろうってことなんだね?」

P「いや、悪戯とかじゃなくて本当に……もしかして遠い親戚とかか?」

美希「違うよ! え、ホントに忘れちゃったの? ミキは星井美希だよ? ハニーがプロデュースしてくれた星井美希だよ!? いくらなんでもそれは冗談きついの!?」

P「そっちこそなんの冗談だ? そもそも俺は君を見たこともないのにプロデュースとか、よく分からないことを言うんじゃない!」

美希「やめてなの。謝るからやめてなのぉ! いくらお仕置きでもこれはあんまりなのぉ。ミキ、ハニーにそんなこと言われたら生きてけないよぉ……うう、ぐずっ」ポロポロ

P「うわっ、ちょ、ちょっと泣くなよ!」

美希「ほんとのホントに、ミキのこと憶えてないの……?」ウルウル

P「ごめん、俺は本当に君のことを知らない……と思う」

美希「あ、あはは……、さすがにそれはひどすぎるの。いくらなんでも、そんなのってないの!!!」ブワッ ダッ!

P「えっ!? ちょっとまっ! 行っちゃった……」

事務所階段下

美希「どうしてこんなことになっちゃったんだろ」トボトボ

美希「ミキ、ハニーがいないと生きてけないのに……そんなのひどすぎるよ」ブワッ

美希「これから、どうしたらいいんだろう……。わかんない。わかんないよ……うう、ぐずっ、うわあああああああああん」ボロボロ

??「こんなところでどうしたんだい?」


美希「あ、亜美、真美?」

亜美「そんなとこで泣いてたら亜美達までかなしくなっちゃうYO→」

美希「あ、あのね、そんなことより大変なの」グズ

真美「んー?」

美希「ハニーがね、ミキのこと忘れちゃったみたいなの」

亜美「あぁ、失恋話かぁー。重いね、真美隊員!」

真美「そうですな、亜美隊員!」

美希「失恋とかじゃないの! ホントにハニー、ミキと会ったことなかったみたいな風で!」

真美「うーん。でもそんなのいきなり真美達に相談されてもなあ」

亜美「うん。だって亜美達、君と今初めて会ったばっかりっぽいし、なんもアドバイスしてあげらんないYO→」

美希「そ、そんな! 亜美と真美までミキのこと忘れちゃったの?」

真美「ほえー? 姉ちゃんが何言ってるか真美には分かんないよ→」

亜美「真美隊員! これはおそらく失恋の悲しみで昨晩してるんだよ」

真美「それを言うなら錯乱っしょ!」

亜美「そっかー。とりあえず悲しみを乗り越えたらいいことあるから」

真美「自殺とかしちゃダメだよ!」

亜美「じゃ、亜美達行くから~。バイバーイ」

美希「えっ!? ちょっと!」

美希(そんな……亜美と真美までミキのこと忘れてたの。もしかして765プロのみんなミキのこと忘れてるんじゃ……)


美希「そんなの……そんなの嫌だよお! たのしくないよおおお! うわああああん!」

真「うわ! どうしたの?」

美希「あ、真君……」

美希(でもハニーも亜美と真美もミキのこと忘れてたし、だったら真君もミキのこと忘れてる……んだろうな)

美希「真君もミキのこと、憶えてない……んだよね……」

真「え? そんなことないよ。ボクがキミのこと忘れるわけがないじゃないか」

美希「……本当に? ホントにミキのこと憶えてるの!?」

真「当たり前だよ」

美希「よかった! よかったの! ミキ、もしかしたらもう皆に忘れられて、誰にも助けてもらえないかと思ったの! 真君がミキのこと憶えててくれて、ホントに、ほんとによかったの!」ダキ

真「ボクはいつだってキミの味方だよ。お姫様のことを助けるのが、王子様の役目だからね!」

美希「えへへ。なんか今日の真君変なの。なんかちょっとキザなの。ホントに王子様みたい」

真「そりゃあファンの子の前ではボクは、真王子だからね! シャキーン! なんちゃって!」

美希「え……? ファンって?」

真「キミのことだよ。ボクのファンなんだろ? そうだ! サインあげるからもう泣かないで」

美希「やっぱり、やっぱり真君、ミキのこと憶えてないの?」

真「え、いや! ライブ会場とか、サイン会とかで会ったかな、なんて思って。ち、違うかな?」

美希「……いや。なんでもないの。そんな感じなの」

美希(やっぱりだ。やっぱり真君も、ミキのこと忘れちゃってるんだ)

雪歩「真ちゃーん! ごめん、遅くなっちゃって」

真「雪歩! 全然大丈夫だよ。それより財布は見つかった?」

雪歩「うん。家に忘れてきただけだったみたい」

真「よかったー。なくしたら大変だもんね」

雪歩「ありがとう、真ちゃん! あれ、この人は?」

美希「……そ、そんな、なんで?」

真「あ、えっと、さっき事務所の前で泣いていたから声をかけたんだけど」

美希「雪歩……、なんでここに……」

期待


雪歩「へ? ななななな、なんで私の名前知ってるんですかあ!?」

真「やったじゃないか雪歩! 名前が売れてる証拠だね。あはは、キミ、765プロに詳しいんだね!」

雪歩「そ、そうなんですか? 私なんて真ちゃんと違ってまだまだダメダメの無名アイドルで誰も知らないと思ってたのに」

真「でも最近頑張ってるじゃないか! プロデューサーとの毎日の居残り練習の成果か、不得意のダンスもだいぶ様になってきたし」

雪歩「そ、それはプロデューサーのおかげだよ! 私がすごいんじゃなくて」

真「でも頑張ってるのは雪歩だよ」

雪歩「そ、そっか。そうだよね。私だってちょっとは……。ありがとうございます! 私の名前覚えてくれて! ってあれ?」

真「いつの間にかいなくなっちゃってる。どこ行ったんだろあの子……」

公園

美希「ねぇカモ先生……。ミキ、これからどうしたらいいんだろ? 分かんなくなっちゃったよ」

美希「ミキね、アイドルたのしかったけど、それはみんなのおかげだったと思うの」

美希「みんながいたから楽しかったし、みんながいたから頑張れた」

美希「ミキね、最初頑張るの嫌いだったんだよ? カモ先生みたいに、頑張らないでトップアイドルまで浮かんでいけたらなぁって思ってた」

美希「でも、みんなが頑張ってるの見てるうちに、頑張るのもいいかなって思えてきて」

美希「頑張ったら褒めてくれるハニーがいて、ライブとかフェスとか上手くいったらアイドルのみんな全員で喜んで、オーディションに受かったらみんなでパーティして」

美希「すごく楽しかった。でも……それももう終わりだね」


美希「みんなが……ううっ、みんながミキのこと忘れちゃって、もうみんなとお仕事出来ないなら、ぐずっ」

美希「アイドルなんかやめちゃった方がいいよね……」

美希「うう、ふぇぇえ、ひっぐ、ぐずっ……やだよぉっ、ミキまだアイドル続けてたいよぉ! 765プロのみんなといっぱいいっぱいお喋りしたいよぉ! ハニーと一緒にもっとキラキラしたいよぉ!」

美希「どうしたらいいの! どうしたら元に戻るのねぇ! 教えてよカモ先生! 分かんないよぉ」

美希「一人ぼっちはヤだよ……寂しいよ……。誰でもいいからミキのこと、思い出してよぉぉ」ポロポロ

カモ「ぐわっぐわっ!」

美希「うわああああああああん」ボロボロ

事務所内

亜美「兄ちゃーん、なんかさっき階段の前に泣いてる女の人がいたっぽいよ→」

真美「そうそう。金髪のキレイな人」

P「ああ。その人ならさっき事務所内にまで入ってきたよ」

真美「ええ!? 不毛侵入じゃんそれ! 世の中物騒になったね→」

真&雪歩「おはようございまーす」

P「おう。おはよう。あと真美、それをいうなら不法侵入だぞ」

真美「そっかー! さすが兄ちゃん!」

真「何の話ですかー?」


亜美「さっき階段で女の人が泣いてたって話だYO→」

真「ああ。僕のファンかー(ドヤァ」

真美「ええー! まこちんのファンなの!?」

真「そうなんだよ(ドヤァ。いきなり泣きつかれてびっくりしたよ。あ、でもあの子、雪歩のことも知ってたんだよ。かなりの765プロのファンなんじゃないかな?」

亜美「ほほーう。そんな人が出てくるとは765プロも立派になりましたなあ」

雪歩「765プロ大躍進ですね、プロデューサー!」

P「……」

雪歩「あ、あの、プロデューサーどうしたんですか?」


真美「ほんとだよ。さっきから兄ちゃんだまりっぱなしだよね」

P「ああ。ちょっと考えててな」

亜美「えっちなこと?」

P「そ、そんな訳ないだろ! そうじゃない。さっきの子のことだ」

真「あ、僕のファンの子のことですね?(ドヤァ」

真美「で、その子がどうしたの?」

P「ああ、みんな聞いてくれ。俺はさっきのあの子、アイドルにスカウトしようと思う」

一同「ええええええ!!!」

公園

美希(泣いてちょっとだけすっきりしたの……)

美希(今度はもっとポジティブに考えよう。765プロの皆は13人もいるんだから、きっと誰かミキのこと憶えてる人はちゃんといるの)

美希(そうだ! 今から全員に電話して、ミキのこと忘れてないか聞いてみるの! そしたら一人くらいは憶えてる人がいるはずなの!)

美希「よーし。そうと決まればみんなのケータイに……」

美希「あれ?」

美希「……みんなのアドレスも電話番号も全然ないの」ブワッ

美希「なんで? 昨日までは全員分アドレス帳に入ってたはずなのに」

美希「あ、春香だけある……。気を取り直して電話してみるの」


美希(繋がるかな? 繋がらなくても無理はないけどもしかしたら……)

春香『はい。天海ですけど?』

美希(ほ、ほんとに出た!)

美希「あの、えっと、ミキだよ! 春香、ミキのこと憶えてる?」

春香『あ、美希? いきなりどうしたの?』

美希「あ、あのあの、春香はミキのこと憶えてる? 星井美希のこと憶えてる?」

春香『憶えてるって、記憶喪失でもないんだから、美希のこと私が忘れるはずないよ』

美希「ホントに? 春香の友達の星井美希だよ? ファンとかそういうのじゃなくて!」

春香『もう、何言ってるの美希? そりゃあ美希は私の友達だよ。そうでしょ?』

美希「よかったの。ホントによかったの。ミキ、もう誰にも思い出してもらえないかと思ったの……」ポロポロ


春香『いきなりそんなこといいだして、変な美希。ふふ!』

美希「ほんとにありがとう、春香。ミキ、安心したの」

春香『大げさだよ。何もしてないよ私?』

美希「でもいいの。ありがとう、春香。あ、そうだ! 今から会えるかな? 人恋しくてしょうがないの!」

春香『うんいいよー。ちょうど一人でショッピングしてただけだし』

美希「ホント? やったー! 春香は今どこにいるの? ミキは○○公園にいるの」

春香『○○公園ならすぐ近くだよ! 今からそっちにいくね!』

美希「うん!」

美希(一時はどうなるかと思ったけど、本当によかったの。これで相談もできるしなんとかなるかもしれないの!)

春香「おまたせー!」

美希「春香! 会いたかったの!」ダキッ

春香「久しぶりだね、美希!」

美希「本物の春香だぁ! 春香だ春香だ!」ギュー

春香「あはは、ちょっとぉ、苦しいよ。なんか今日の美希変だよ?」

美希「へへ。ゴメンゴメン」

春香「あれ、美希、もしかして泣いてた?」

美希「え、なんでわかったの!?」

春香「だって泣き後すごいし目充血してるしすぐ分かるよ。どうかしたの」

美希「あはは。ちょっとヤなことがあって……」

春香「なにがあったの? 私でよかったら話聞くよ?」

美希「うん。ありがと春香。……あのね、皆がミキのこと忘れちゃったみたいなの」

春香「え、それってどういう?」

美希「あ、えっとね、今日会った人たちがみんなミキのこと忘れてるみたいになってて」

春香「ええー!? それってどういうこと?」

美希「今日朝からあったハニーも亜美も真美も真君も、雪歩も……ミキのこと、誰って言ってきて。昨日までは普通だったんだよ? なのにいきなり初対面みたいにふるまうの」

春香「そっか、それはつらかったね。よしよし」

美希「うん。かなしかったの」

春香「でも大丈夫。そんなのちょっとした悪戯で、すぐ終わるよ。安心して!」

美希「そうだよね。ミキ、ちょっと悲しくて泣いてたけど、春香のおかげで元気でたの!」

春香「よかった。私は美希のこと忘れたりしないから、ずっと側にいるからね」

美希「春香……、ありがとうなの!」ダキッ

春香「よしよし」ナデナデ

美希「そういえば春香、今日はオフ? 仕事はないの?」

春香「仕事?」

美希「アイドルの仕事だよ」

春香「え? アイドル? わ、わたしアイドルじゃないよ? なれたらいいなとは思ってるけど」

美希「な、なにいってるの春香まで!?」

春香「ええ? ちょ、ちょっと話が見えないんだけど、なんか美希勘違いしてる?」

美希「えっと、春香はアイドルじゃないの?」

春香「え、うん。いつもアイドルとか憧れるなぁ、なんて美希と話してはいるけど、私そんなにかわいい訳じゃないし、やっぱり夢のまた夢かなぁなんて」

美希「そう。ちょっと頭がこんがらがってるから、トイレで顔でも洗ってくるの……」トボトボ

春香「う、うん。いってらっしゃい」

春香(わ、私何か変なこと言っちゃったかなぁ?)

一方その頃

P「あっれー? どこ行ったかなぁ。何というかすごいオーラがある子だったから、見ればすぐ分かると思うんだけどなぁ」キョロキョロ

P「あの子、名前は星井美希だっけ? アイドルになったら絶対伸びるぞ。絶対探し出さないと!」

P「ん? あの子、さっきの星井美希とはちょっと違うけど、すっごくいい感じだ! あの子と星井美希がユニットを組めば……。よし、ちょっと声をかけてみよう!」

P「あの、ちょっと今時間いいかな?」


美希(春香、自分がアイドルじゃないとか言ってたな)

美希(やっぱりなんかおかしいの。ハニーも事務所の皆もミキのことは忘れてるしアドレスも消えてる。春香だけはミキのこと憶えてたけど、アイドルのこと忘れてるの)

美希(これはどう考えても何かがおかしいの……ってあれ?)

美希(変な男が春香の前に! きっと春香狙いのナンパなの! 美希が撃退するの!)

美希「ちょっとなにやってるの! ナンパなら……」キッ

P「おわっ! って、君は今朝の! 星井美希ちゃんだっけ?」

美希「え、はにー……?」

春香「たたたたたたいへんだよ、美希! この人ナンパじゃなくてスカウトの人だよ! わわわ私アイドルにスカウトされてるの! あわわわわ!!」

P「よかった! 探してたんだ!」

美希「探してたって……」

P「そう。君をずっと探してた。君にはアイドルの才能がある。間違いない。今日朝あった時、ピンと来たんだ」

春香「ええー! もしかして美希もスカウトされてる!?」

P「君たちなら、きっとトップアイドルになれる。いや、俺がしてみせる! だから……」


P「――――俺と一緒に来てくれないか?」


春香「あわわわわわ! 私がアイドル!? ってうわぁ」ズッコケ

P「おっと。大丈夫?」ダキッ

春香「は、はい……///////////」

その時になってようやく、これは嫌がらせの類なんかじゃないことに気づく。

美希「そっか……」

小さく誰にも聞こえないようにつぶやいた。


――――これは、ミキに与えられた最後のチャンスなんだ……


ならいっそ、誰も自分を憶えていないこの世界でこの状況で、もう一度一からやり直してやろうじゃないか。そうしてもう一度トップアイドルを目指してやろうじゃないか。

美希「ハニー。いや、プロデューサー。ミキ、やるの!」

美希「絶対にトップアイドルになるの!!」

始まりの風が吹いた。あの日を思い出すような、涼やかな風が。

翌週 事務所

P「今日からさっそく、みんなにはアイドルとして活動してもらうぞ!」

美希&春香「はい(なの!」

雪歩「あ、あのー、私、ここに呼ばれた理由が分からないんですが……」

P「ああ、言ってなかったな。これからお前らは三人でユニットを組んでもらう!」

雪歩「ええ!?」

P「雪歩も事務所に入ってからなかなか目立つチャンスがなかったが、ここで一気にブレークだ!」

雪歩「は、はい!」

P「美希、春香、雪歩。この三人でユニット、なずけて『StealS』だ!」

三人「はい(なの!」

レッスンルーム

P「よーし、まずはダンスレッスンだ! 皆にはさっきデビューシングルの曲を聴いてもらったと思う。その振付を覚えてもらうぞ」

美希「ハニ、じゃなかった。プロデューサー。たぶんミキ、それもう出来るの」

P「え、まだ俺音楽聞かせて振り付けの紙渡しただけだぞ? 出来る訳が……」

美希「こうっ、で、こう、で、ここをこうして、最後はこう! でしょ?」キュッキュッ

P「おお! すごいぞ美希! いきなり完璧だ!」

春香「美希すごい!」

雪歩「何かダンスとかやってたのかな?」

美希「えへへ」

P「じゃあ今の美希のをお手本に、春香と雪歩もやってみろ」

二人「はい!」


P「うん。さすがに雪歩は今までにダンスの基礎をやってきただけあって、いい感じだな」

雪歩「はい! ありがとうございます!」

P「それに比べて春香は……、てんで素人だな」

春香「ご、ごめんなさい」

P「気にするな。最初から出来る方がおかしいんだ。ゆっくり頑張っていけばいいさ。春香だって才能がない訳じゃない。すぐにうまくなるよ」

春香「はい! がんばりま、ってうわぁ!!」

P「う、うわっ!!」ドシン

春香「ごめんなさい、ドジに巻き込んでしまって!! 痛くなかったですか?」

P「ああ。大丈夫、大丈夫!」

春香「わ、私ってけっこうドジなところあって」コツン

P「あはは。そのドジなところも春香の取り柄かもな!」

美希&雪歩「」

P「こんなもんか。美希はもう完璧だし、雪歩も形になってきたな。春香はまだもうすこしかかりそうだが体力も限界だろう。よし、じゃあ今日のレッスンは終わりだ」

雪歩(よし、今日もプロデューサーと二人で居残り練習を……)

雪歩「あの、プロデ「プロデューサーさん!」

P「ん、どうした春香?」

春香「あの、私他の二人より全然ダメだから、少しでも追いつくために、自主練に付き合ってもらえませんか?」

P「おお! やる気だな、春香! 協力するぞ!」

春香「お願いします!」

雪歩「あ……」

美希(ジトー

翌日 レッスン後

雪歩「あ、あのプロ「プロデューサーさん!」

春香「今日も自主練、付き合ってもらえますか?」

P「おう! もちろんだ! 精がでるな!」

春香「お願いします!」

雪歩「……」

美希(ジトー

また別の日

春香「プロデューサーさん! ドーナツ作ってきたんですけど食べませんか?」

P「おっ! ありがとう! おいしいな!」

春香「ほんとですか?」

P「おう! 春香は料理上手なんだな!」

春香「そんなでもないですよ/////// あの、今日も自主練付き合ってもらえますか?」

P「もちろんいいぞー」

雪歩「……はぁ」

美希(ジトー

練習後更衣室

雪歩「……はぁ」

真「雪歩、最近元気ないけどどうかしたのか?」

雪歩「いや……、別に何も」

真「親友のボクにも相談できないこと?」

雪歩「そ、そんなんじゃ」

真「じゃあボクに話しちゃいなよ。気が楽になるよ。もうすぐデビューシングル発売で、ライブもあるし、不安は減らしといたほうがいいんじゃない?」

雪歩「……じゃあ、ちょっとだけ、相談しちゃおっかな」

美希(なんかしゃべり声が聞こえる)ソローリ

雪歩「あのね、最近プロデューサーと春香ちゃん、仲がよすぎないかなぁ?」

真「ああ、なるほど! 雪歩はそんなこと気にしてたのか。あはははは」

雪歩「真ちゃん、笑うなんてひどいよっ!」

真「ごめんごめん。それで、雪歩はプロデューサーと話せなくて寂しいと?」

雪歩「……うん」

真「そんなに深く考える必要はないよ。だってまだ春香とプロデューサーは出会って間もないだろう? そんなすぐに距離は縮まらないよ」

雪歩「そうかなぁ」

真「そうだよ。それに、プロデューサーを想ってきた時間なら、雪歩は誰にも負けないじゃないか! 時間は愛を育てる。絶対にプロデューサーに一番近いのは雪歩だよ」

雪歩「な、なるほど」

真「そうだ、この機会にプロデューサーに告白しちゃったらいいじゃないかな!」

雪歩「こここここここここここくはくうううう!? そそそそそそんなの無理だよ////!!!!」

真「でも、告白しちゃってプロデューサーの愛を確かめたら、今の雪歩の不安は吹っ飛ぶだろう?」

雪歩「そ、そうだけど。でも告白なんて……。それにもし失敗したら……」

真「まぁいきなりは無理だろうけど……。そうだ! じゃあ次のライブが無事成功したら告白する、ってしたらいいんじゃないかな?」

雪歩「それって?」

真「そういう風に願掛けしておいたら、雪歩も練習頑張れるだろう? そしたらきっとライブも成功して、その流れに乗って告白も成功する。いいこと尽くしじゃないか!」

雪歩「う、うーん。なんかホントにそんな気がしてきたよ」

真「その意気だよ! がんばれ!」

雪歩「う、うん! 真ちゃん、私頑張るよ!」

美希(聞いちゃった……)

ライブ前日

P「みんな! 明日はついに待ちに待ったStealSの初ライブだ。初めて三人の頑張りをお客さんに生で見てもらう機会でもある。失敗は許されない一発勝負だが、その分チャンスにもなりうる、ビックイベントだ。頑張るぞ!」

三人「はい(なの)!」

P「で、でも全然緊張しなくていいんだぞー! みみみんながいままでやってきた実力を出せばきっとけっかかはついて」

美希「ハ、プロデューサー緊張してるの。あはっ」

春香「腕ふるえてますよ、プロデューサーさん!」

P「うう。なんだか震えが収まらないんだ。緊張して緊張して」

春香「今から緊張してたらもちませんよ?」

P「そ、そうだな。そうなんだけどな」

雪歩「プロデューサー、深呼吸ですぅ!」

P「お、おう。なるほど!」スーハースーハー


P「はぁ」

雪歩「落ち着きましたか?」

P「ああ。なんとかな。しかし実際舞台に立たない俺ですら緊張してるのに、みんなよく平気だな」

美希「プロデューサーが緊張しすぎなだけなの。大丈夫なの。なんとかなるの」

P「なんていうか、すごい適当だな」

春香「でもそこが美希のいいところだよね」

美希「そういう春香も全然緊張してるように見えないの」

春香「あはは。なんかプロデューサーさんが私の分まで緊張してるっていうのかな、私自分でも不思議なぐらい緊張してないよ」

P「そうか、なら俺の緊張も結果オーライかもって思えてくるよ。春香も自主練の成果、明日見せつけてやらないとな!」

春香「はい!」

P「雪歩は……、なんかとっても緊張してるな」

雪歩「そ、そうですね。でも……、これは明日の、ライブとは関係ないとこで緊張しているというかその」

P「ん?どういうことだ?」

雪歩「い、いえ、何でもないですぅ! あ、穴掘って埋まってますぅ」

P「おおい! なんでだなんでだ!?」


P「よーし。まぁとりあえずじゃあ今日はちょっと早いけど解散! しっかり寝て明日のライブに備えてくれよ」

三人「はい(なの)!」

春香「じゃあお疲れ様でーす」ガチャ

P「おう! 明日頑張ろうな!」

春香「はい!」バタン

美希(ミキも今日は帰るの。荷物まとめてっと)

雪歩「プロデューサー!」

美希(!)


雪歩「あの、明日のライブの後、大事な話があるんです」ヒソヒソ

P「ん? 話なら今聞くぞ?」

雪歩「えええ!? そ、それじゃダメなんです! 明日のライブ後に」

P「なんの話だ? 改まった感じで怖いな」

雪歩「そ、それはその時になっての……お楽しみ、です//////」

P「まぁとりあえず分かった。ライブ後時間開けておくよ」

美希(そっか。やっぱり雪歩、ライブ後に告白を……。ちょっとヤダな)

美希(でも今は気にしちゃダメなの。ミキは今回は身を引くって決めたの……)

美希(それに明日は大事なライブなんだから!)

――――美希ちゃんは最低だよ!

美希(……。変なこと思い出しちゃったの)

美希(大丈夫。あんなことにはならない。……帰ろっと)

美希「一度のひーあそびでーもいーいからー♪」

三人「今すぐ抱いてー♪」

\ウォォォォォォォ/\ワァァァァァァァァァ/\ミキチャァァァァァン/\スティールズゥゥゥゥ/




P「みんな! 今日のライブは大成功だ! これ以上ない出来だったぞ!」

美希「やったの!」

春香「やりましたね!」

P「ああ! よくやってくれた!」

雪歩「あ、あのプロデューサー!」

P「ああ。分かってるよ。じゃあ今日は疲れてるだろうし解散だ。また成功のお祝いは明日にでも事務所でやろう。おいしいプリンを買っておいてやるぞ!

美希「さすがハ、プロデューサーなの!」

春香「やったね!」

P「おう。楽しみにしてろよ! じゃあお疲れ様ー」

美希(雪歩とハニーは……公園の方に行った、か)

美希(ちょっと気になるな……。でも邪魔するのは悪いの)

美希(それに……ちょっと嫉妬しちゃうけど、この告白が成功したら、あの悲劇は起こらないかもしれない)

――――美希ちゃんはあまりにずるいよ!

美希(うるさいうるさい! 大丈夫なの)

美希(気になるけど……帰ろっと)

翌日

美希「おはようございますなの!」

美希(あ、ハニーと雪歩の二人だけだったんだ)

美希「えっと」

シーン

P「ああ、ミキ。昨日言っていたプリン、冷蔵庫に入ってるから食べていいぞ」

美希「あ、はいなの」

美希(プリンプリンっと)ガチャ

美希(す、すごい! こ、これはゴージャスセレブプリンなの! まぶしさで目がつぶれそうなの)

美希(ソファーに座って食べるの)ドッコイショ

美希(おいしそうなの)パクッ

美希(おいしいの!!)

シーン

美希(気まずいの!!)

美希(一言も会話がないの。その上なんかしゃべりだせる雰囲気じゃないの)

美希(なんかつまらないから変顔して遊ぶの!)

美希(・3・)

伊織「美希……あんたどうしたの? そんな変な顔して?」

美希「うわあああ! デコちゃん、いたの?」

伊織「デコちゃん言うな! ちょうど今さっき帰ってきたのよ」

美希「そうなんだ」

伊織「しかしそれにしてもなによこの空気。まるでお葬式じゃない」

美希「さすがデコちゃん! うまいこと言うの。天才なの!」

伊織「ま、このスーパーアイドル伊織ちゃんにかかればこのくらい、ってデコちゃんいうな!」

伊織「で、これ、何があったの?」ヒソヒソ

美希「えっと、なにも美希は知らないの」ヒソヒソ

伊織「知らないってことはないでしょ? 同じユニットのメンバーなんだから」

美希「いや、でも」

伊織「私だってある程度は分かってるわよ。アイツと雪歩、何かあったんでしょ?」

美希「え! なんで」

伊織「馬鹿でも分かるわよ。昨日まであんなに仲好さそうだった二人が、今日この場でこうよ?」

美希「そこまでわかってるなら……。昨日のライブの後雪歩はハ、プロデューサーに告白したの」

伊織「やっぱり……。で、フラれたのね」

美希「この雰囲気から言って多分」

伊織「そっか。にひひっ♪」

美希「デコちゃん?」

伊織「ここはこの、スーパーアイドル伊織ちゃんがひと肌脱ぐしかないようね!」

美希「?」

伊織「もしもし、新堂? 今からとびっきりの焼肉パーティを用意しなさい。そうよ。あと今日のメインゲストはお茶にうるさいお客だから、最上級のお茶も用意するのよ。そう」

伊織「雪歩ー! 今日一緒に焼肉に行かない? 私のおごりで最上級のお肉をごちそうするわ」

雪歩「え! 焼肉!?」

伊織「そうだ。真も呼びましょう! あとはあずさとかもいいかしら」

P「おお。焼肉か……」

伊織「アンタはだめよー。今日は女子だけで水入らずで楽しむんだから。もしもし真? 今日暇かしら?」

美希(さすが伊織なの。ちょっとは雪歩、元気でるかな?)

翌日

P「次のシングルが決まったぞ」

美希(やっぱり雪歩、まだ元気になってないの。昨日よりはちょっぴりマシだけど)

P「ってことで今日からさっそく準備に入ろうと思う。新しいシングルのデモデータを持ってきたから、それを聞こう」

三人「はい(なの)!」

春香「あ、プロデューサーさん。私今日またドーナツ焼いてきたんですけど食べませんか?」

P「お、いつも悪いな」パク

春香「美希も雪歩も食べながら聞こうよ。結構自信作なんだ」

美希「あ、うん……」

P「うん。うまい。さすが春香だな」

春香「もう、プロデューサーさんったら///////」

雪歩「……」

別の日

P「よーし、ダンスレッスン終わり!」

三人「お疲れ様です」

P「じゃあ今日は解散だ。疲れたぁ」

春香「プロデューサーさん、お疲れですか?」

P「ああ。昨日ちょっと徹夜でなぁ。ずっとデスクに張り付いてたから、眠いうえに肩も痛い」

春香「じゃあ私、肩もみしましょうか? 得意なんですよ、こう見えても(ドヤッ」

P「おお! ホントかじゃあ頼もうかな」

春香「よーし、はりきっちゃいますよー」

雪歩「……お疲れ様です」ダッ

数週間後

P「やったな! 新しいCD、トップ20入りだ! StealSもどんどん人気が出てきてるな」

春香「そうですねー。最近TV収録とかも増えて、だんだん楽しくなってきました!」

P「おう。そして軌道に乗ってるそんなStealSに、もう一つビッグニュースだ! 六日後に、765プロオールスターライブが武道館にて開かれるのは知ってるな? そしてそのライブで、なんとStealSはトリを務めることになった!」

美希「おお~! すごいの!」

P「ああ。だからあと六日でしっかり最終確認して、絶対ライブ、成功させような。じゃあちょっと早いけど今日は解散!」

美希&春香「はい!」

雪歩「……」

P「なぁ、雪歩、最近大丈夫か? 元気なさそうだぞ」

雪歩「大丈夫です。プロデューサーに心配されるようなことはありません」

P「あのさ……悪かった」

雪歩「謝らないで下さい」

P「でも、やっぱ俺が雪歩の気持ちに応えられなかったから……。だからごめんな」

雪歩「だから謝らないで下さいって言ったでしょ! 謝るなら私と付き合ってください! できるんですか!?」

P「そ、それはできないけど……」

雪歩「……」

P「……」

春香「忘れ物しちゃったー」ガラッ

春香「あ、プロデューサーさんと雪歩、まだ残ってたんですか?」

P「お、おう。ちょっとな」

雪歩「……」

春香「私マフラー忘れちゃって、いちいち取りに戻ってきちゃいました笑」

P「寒いもんな。最近」

春香「そうですねー。ホント一気に寒くなりましたよね。あ、そうだプロデューサーさん、ほら、ストラップですよ、ストラップ!」

P「お。どうしたんだそれ」

春香「さっき帰り道で見つけて、可愛かったから買っちゃいました。二個買ったんで一個つけませんか? おそろいですよ、おそろい/////」

P「おお、ちょうどストラップなくなっちゃってたところだったし、つけようかなぁー」

春香「じゃあ、はい、どうぞ」

雪歩「……お疲れ様です」バタン

P「あ……」

美希(うわぁ……)←給仕室に隠れてた。

夜 事務所

美希(まずいの。これじゃ一緒なの。あのライブも迫ってきたし、これじゃあ、だめなの……)

美希「でも、どうしたらいいの?」

??「何かお悩みですか?」

美希「うわっ? 誰!?」

貴音「わたくしですよ、美希」

美希「貴音……」

貴音「お気に召しましたか?」

美希「……これ、やっぱり貴音の仕業だったんだね」

貴音「仕業などと言われては困ります。美希、これはあなたが望んだことなのですよ」

美希「そうかもね。願ってもないことだもん」

貴音「でもその割には、美希は何もしないのですね」

美希「そ、それはっ」

貴音「待ってるだけでは、運命は変わらない。あなた以外は前と何も変わっていないのですから。あなたが行動を起こさない限り、あの悲劇は……」

美希「わかってるよ。ミキだってこれから何もしないわけじゃないの。すでに賽は投げられたの」

貴音「期待していますよ、美希」



――――俺はお前のこと、絶対許さないからな!

美希(美希だって、もうあんなのごめんなの。絶対に、絶対に……)

翌日

雪歩「お疲れ様です」

美希「あ、ちょっと待ってなの! 雪歩、一緒に帰ろ」

雪歩「うん。いいけど」

美希「じゃあおつかれさまなのー」

雪歩「どうしたのいきなり。一緒に帰るとかあんまりなかったのに」テクテク

美希「うん。帰る方向逆方向だしね」

雪歩「ええ!? じゃあこっち来ていいの?」

美希「うん。今日はそんなことより雪歩とお話がしたいなぁって」

雪歩「お話?」

美希「うん。ミキ、お喋りするの大好きだから」

雪歩「美希ちゃんがいいなら、私はいいけど……。どんなお喋り?」

美希「特に決めてないよ? 雪歩の家に帰るまで、なんでも好きな話をしようよ」

雪歩「うん。わかった。美希ちゃんって結構気まぐれなんだね」

美希「そうかも。ミキは犬か猫かで言ったら猫タイプだって思うな」

雪歩「よく寝てるしね(笑」

美希「むぅー。それはちょっとひどいの!」

雪歩「ごめんごめん」

美希「雪歩はどっちかっていうと犬タイプだと思うな」

雪歩「そうかな? その心は?」

美希「穴を掘るからなの! あは☆」

雪歩「そんな理由!?」

美希「そういうところから考えると、モグラが一番近いかもなの」

雪歩「犬か猫かで考えてるんじゃなかったのー?」

美希「忘れてたの」

雪歩「犬猫以外がアリなら美希ちゃんはナマケモノだね」

美希「それはひどいの!」

美希「寒くなってきたね」

雪歩「うん。そだね。もうマフラーないと外出られないよ」

美希「……」

雪歩「……」

美希「ねえ、雪歩最近大丈夫? 元気ないけど」

雪歩「そうかな……。そう見える?」

美希「見えるの。すっごく元気なさそうなの」

雪歩「そっか。これでもちゃんと笑おうって努力してるんだけどな……」

美希「無理しない方がいいの。だって失恋って、いつまでたっても痛いものだから」

雪歩「うん。そうだね。ありがとう」

美希「何かあったら、ミキにも相談してね。ミキ、雪歩のこと大切に思ってるから」

雪歩「じゃあ……」

美希「なあに?」

雪歩「じゃあ教えてよ……。プロデューサーと春香ちゃんってさ、付き合ってるのかな」

美希「え、っとわからないの」

雪歩「でも最近いっつもいっつもいっつも仲よさそうにしてるし、私がプロデューサーにフラれたってこと知らない訳ないのに、さも見せつけるかのようにベタベタしてて」

美希「ど、どうしたの雪歩? なんかこわいよ?」

雪歩「教えてよ教えてよ教えてよ教えてよ。ねぇ知ってるんでしょ美希ちゃんは? だって春香ちゃんと一緒に事務所入ってきたもんね。仲良いもんね」

雪歩「もしかしてグルなんじゃないの? 二人で裏で話してて私を悲しませるためにわざと春香ちゃんとプロデューサーが仲良くしてるのを見せつけるようにしてるんじゃないの?」

美希「雪歩!? なにいってるのか全然わかんないよ!」

雪歩「そういえばそうだ。美希ちゃんは春香ちゃんとプロデューサーとが仲良くしてるの絶対に邪魔しないよね。やっぱりグルなんだ。今もこうやって私と話して私が悔しい思いしてるの見て楽しんでるんだね」

美希「違うの! そんなつもりちっとも」

雪歩「違わないよ!!!!」

美希「ひっ!」

雪歩「違うっていうなら見せてよ証拠! 見せられるでしょ? 春香ちゃんとプロデューサーがベタベタしてるとき邪魔してみせてよ! 春香ちゃんとプロデューサーがイチャイチャするの止めさせてみせてよ。出来るでしょ?」

雪歩「出来ないなら……やっぱり美希ちゃんも同罪だよね」

別にさげんでもいいやないの

美希「ごめんなさいなの! ごめんなさいなの! だからお願いだから落ち着いてなの!」

雪歩「……っ! いや、こっちこそごめん美希ちゃん。私なんか頭に血が上って……。もう今日は一人で先帰るね」タッタッタッタッ

美希「いっちゃったの……」

美希(雪歩、やっぱりあんなに思いつめてた。これじゃ、このままじゃダメなの)

――――お前が二人の夢を壊したんだ!

美希(うるさいの! やめてなの!)

美希(まだ、まだなんとかなるの)ダッ!

>>114
上げ下げよく分からんが次からそうしてみよう。ありがとう。

事務所

美希「ただいまなの!」

春香「それをいうならおはようございますだよ美希」

美希「よかった。春香まだいたの!」ハァハァ

春香「どうしたの、そんなに汗だくで?」

美希「なんでもないの。それよりプロデューサーは?」

春香「プロデューサーなら今は響ちゃんを収録で送っていったからいないよ。プロデューサーさんに用事?」

美希「別にそうじゃないの。いないならいいの」

春香「ねえ美希、見てよこの記事」

美希「あ、StealSの記事」

春香「『StealS快進撃、IA大賞ノミネートも確実』だって。信じられないよね。この前までアイドルに憧れてただけの普通の高校生だった私たちが、もうトップアイドル目前なんだよ?」

美希「そうだね。StealS、最近すごい人気だもんね。次のライブもミキ達がトリなんでしょ」

春香「うん。それって私たち、765プロで今一番のトップアイドルってことだよね」

美希「だからこそ、ミキ達頑張らなきゃいけないの」

春香「そうだね。明日も全国歌番組に出演だもんね」

美希「うん。……そうだ、春香」

春香「ん?」

美希「最近、プロデューサーとはどんな感じ?」

春香「どんな感じっっていうのは?」

美希「上手くいってる?」

春香「上手くいってる……かー。仲良くやってるって意味では上手くいってるよ?」

美希「ねぇ、変なこと聞いていい?」

春香「変なことって?」

美希「春香とプロデューサーって付き合ってたりする」

春香「えええ!? そんな訳ないじゃん!」

美希「だよね」

春香「え、ちょっと何それ? そんな噂流れてるの?」

美希「そういう訳じゃないよ。ミキがもしかしてって思ったから聞いてみただけ」

美希「でもちょっと気を付けた方がいいかもしれないよ。ミキがそう思ったってことは、他にもそうなんじゃないかって思ってる人がいるかもしれないってことだから」

春香「そ、そっか。なんでだろ」

美希「春香はプロデューサーとちょっと公然と仲良くしすぎなの。ミキはそれをとやかく言うつもりはないけど、ちょっと一目があるところでは、控えた方がいいかもなの」

春香「うん」

美希「特に、雪歩の前では、プロデューサーと仲良くしちゃダメだって思うな」

春香「わかった」

美希「わかってくれてよかったの。じゃあミキ今日は帰るね。お疲れ様ー」タッタッタッ

春香「うん。おつかれさま」

春香「そっか。付き合ってるように見えるんだ////// なんか照れちゃうな///////」

翌日

春香「プロデューサーさん、だーれだ?」

P「春香だろ? 分かるに決まってるぞ」

春香「正解でーす」

P「収録終わったのか」

春香「終わりましたー。今日もバッチリでしたよ!」

雪歩「……」

美希「は、春香、ちょっと!」

春香「うふふ、なぁに?」

美希(こいつバカなの……!)

雪歩「……帰ります」バタン

美希(なにも解決に近づかなかったの……。何がいけなかったのかな?)

美希(でもいい加減にしないとだめなの)

美希(ちっとも前に進んでない)

――お前なんかプロデュースしなけりゃよかった!

美希(考えるな! 考えるななの!)

美希(ダメ……。もう、時間がないのに……)

翌日

P「雪歩、来ないな」

春香「どうしちゃったんだろ」

美希「やっぱり昨日の……。ミキ、様子見てくるの!」

P「いや、お前たちは二人で先練習しとけ。俺がちょっくら車で行ってくる」

美希「……はいなの」

P「だめだった。電話をかけても出ないし、家の前まで行ったが話を聞かせてもらえもしなかった」

P(というか超怖かった)ブルブル

美希「……そうなの」

春香「どうしよう。雪歩が来ないとレッスン進まないし……。ライブ本番まであと三日しかないのに」

P「まぁ仕方ないな。午後からの営業はキャンセルだ。今日は動きの確認だけして解散にしよう。きっと雪歩も明日には何事もなかったかのように戻ってくるさ」

二人「……はい(なの)」


翌日

春香「やっぱり雪歩来ないね」

P「電話もやっぱりつながらない」

美希「雪歩、大丈夫かなぁなの」

春香「もう。今大事な時期なのに……雪歩分かってるのかな?」

P「まぁ焦らなくてもまだ余裕はあるさ。とりあえず二人で動きの確認とボイスとレーニングだけしておいてくれ。俺はまた様子を見てくるよ」

春香「はぁい」


翌日(ライブ前日)

春香「また来ない」

美希「……雪歩」

雪歩「す、すいません、遅れました」ガチャリ

美希「雪歩! よかった!」

P「おお! 心配したんだぞ」

雪歩「ごめんなさい……」

P「気にするな! 大したことじゃない」

美希「うんうん! いいよいいよ!」

春香「全然よくないよ!!」

P「え?」

     ,。、_,。、
   .く/!j´⌒ヾゝ

    ん'ィハハハj'〉  
.    ゝノ`ヮ´ノノ  ニヤニヤ


春香「雪歩、どれだけ迷惑かけたか分かってる? もうライブは明日なんだよ? そんな大事な時期に無断で休むなんて何考えてるの!? どうかしてるよ!」

春香「だいたい最近何があったのかレッスンにも集中してないし。そういう意識低い人が一人いると、ユニット全体としての雰囲気が悪くなるし、今の雪歩ははっきり言って足手まといだよ!」

美希「春香、そんな言い方って!」

春香「だって実際そうでしょ? 今だって雪歩のせいでレッスン全然進んでないし、このままでライブ迎えられない!」

春香「そもそも雪歩がいたらなんかプロデューサーさんも暗くなるし、なんか雰囲気も重くなるし。そうだよ、雪歩がいたらプロデューサーさんがかわいそうだよ!」

雪歩「黙ってよ……」

春香「なに? 何か言える立場なの今の雪歩は? いきなり無断で休んで! プロデューサーさんもかわいそうだよね、デリケートで面倒くさい雪歩なんかを担当することになって「だから黙って!!!!」


    _          ,。、_,。、
   '´   ヽ       .く/!j´⌒ヾゝ
  i  ノノハ)i | ドカッ  ん'ィハハハj'〉

  ヽ (l゚ ヮ゚ノリ `从; ≡ゝノ;ヮ;ノノ

   (⊃  .(⌒)∵;   ≡ とと ノ
   (__ノ⌒ ̄  ,W:  ≡と_ノ
  彡            (/

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               |            |
            \          ノ
               ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

      _
     '´   ヽ
    i  ノノハ)i |   ザッザッ
    ヽ (l゚ ヮ゚ノリ  .__
     / つ=O===|__)ミ.・
     し―‐J       ミ∵ ,。、_,。、
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l;:;::;:;;;::::;::::;:;::;;;∩::::;;::::::| ̄ ̄ ̄

               |:::;::::;:;::;:;;;:;::::::;;::::;::;:;;;:;:.|
            \::::::::;::;:;;;:;::::::::::::;::;::ノ
             . ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


雪歩「さっきから上から目線で言いたい放題言って、春香ちゃんは私のなんなの? 私のことなんて春香ちゃんは何にも分かんないでしょ!!」

雪歩「いっつもいっつも私の目の前でプロデューサーとみせつけるようにイチャイチャして! そんな人間に私の気持ちも悩みも苦しみも分かるわけない! 分かってたまるか!!!!!!!!」

春香「そ、そんないきなり大声出さないでよ。ほら、プロデューサーさんも驚いて……」

雪歩「だから黙れって言ってるの!!! そんなことも分かんないの!!!? 春香ちゃんの言葉は不快だよ! ありえない! もう消えてよ!」

春香「消えてって……、だったらそっちが消えてよ! 不快なのはそっちだよ! 雪歩なんか……」

春香「――――お前なんかStealSにいらない!!!」


雪歩「なっ……っ」

雪歩「……」

雪歩「……」ダッ

ガチャ

P「待て雪歩!!」ダッ

ガチャ バタン

春香「……」

美希「……」


美希「春香……」

春香「なに……?」

ピシッ

春香「痛っ! 美希なにするの……!?」

美希「春香、自分が何言ったか分かってる?」

春香「……」

美希「反省するの。今のは最低なの」

春香「……」

美希「……じゃあ、ミキも雪歩を追いかけるの。一緒に来てなの!!」

春香「……」コクッ

765プロ前道路


P「俺はお前のこと、面倒だなんてこれっぽっちも思ってないからな!」

雪歩「もういいんです! 放してください! もう分かってるんです、私がプロデューサーにとって迷惑だって!」

P「違う! 俺はお前のことすごく大切に思ってるし、お前をプロデュースできたことは何よりの自慢だ。その気持ちに嘘偽りはない!」

雪歩「でも私を受け入れてくれなかった!」

P「それはアイドルとプロデューサーだからで!」

雪歩「もうそんな言い訳聞きたくないです!」バッ ダッ!

P「雪歩!」ダッ

美希「あ、ハニーと雪歩! このまま追いかけるの!」ダッ


P「くそっ、人ごみが邪魔で!」

美希「ハ、プロデューサー! 雪歩は!?」

P「美希に春香か! どっちに行ったか見失った」

美希「じゃあ二手に分かれて探すの! ミキ達は公園の方に行くね!」

P「じゃあ俺は歓楽街の方に向かうよ」

美希「健闘を祈るの!」

P「そっちもな!」

美希「春香、行くよ」ダッ

春香「……」ダッ


公園

雪歩(なんで……。なんでこんな気持ちになっちゃうんだろう。もう終わりだ……)

美希「雪歩!」ハアハア

雪歩「美希ちゃん………………春香ちゃん」キッ!

春香「……」

美希「よかった、見つけられて……」

春香「……あの……」

雪歩「わざわざ来てもらって悪いけど、仲直りなんかできないよ」

春香「……」

美希「そだよね。さっき喧嘩したばっかりだもんね。でもミキね、明日のライブは、ライブだけは絶対にこんな状態で臨みたくないの」


美希「ミキは明日のライブのためにここまで生きてきた。だから、絶対に明日は負けられない」

美希「……二人に聞いてほしいことがあるの。あまりにバカバカしすぎて、二人とも信じてくれないかもしれない。でもホントのことなの」

美希「ミキはね、未来から来たんだ」


――――――――――――――――――――――――――――


美希と春香は学校の文化祭で偶然会った友人だった。二人の夢はアイドル。
歳は違えど同じ夢を共有する二人はすぐに意気投合した。

よく二人で町に出かけ、可愛い服やアクセサリーを選んだりして遊んだり、アイドルになる夢や妄想を語り合ったりしていた。

その日も二人は町でショッピングを楽しみ、疲れたところで公園で休憩していた。

美希「あ、アイスクリーム屋さん! 美希買ってくるの! 春香何がいい?」

春香「あ、私はストロベリーで」

美希「分かったの」


美希(買えた買えたー。ちょっと春香の味見しちゃお)ペロッ

美希(おいしいの! ん?)

美希(変な男が春香の前に! きっと春香狙いのナンパなの! 美希が撃退するの!)

美希「ちょっとなにやってるの! ナンパなら……」キッ

??「おわっ! そんなんじゃないんだ! 決して怪しいものでは」

美希「スーツ姿でホストみたいで、どう考えてもナンパなの!」

??「ち、違うって! これは仕事中だからで」

美希「仕事中にナンパ? ますますありえないの!」

春香「ちち違うよ、美希! この人ナンパじゃなくてスカウトの人だよ! わわわ私アイドルにスカウトされてるの! あわわわわ!!」


美希「ええええ! うそ、うそ!」

P「そう。でも正確に言うと俺はスカウトじゃなくてプロデューサーだけどな。たまたま春香ちゃんを見かけてピンと来て」

美希「ほんと!? じゃあじゃあミキもアイドルにすかうとして欲しいの!! ミキもアイドル目指してるの!」

P「ほう。君は……」ジローッ

美希「どう? どう?」キメポーズ!

P「もしかしたら、すごい才能があるかもしれない……」

美希「ほんと!? ホント!?」


春香「すごいすごい! 美希、私たちの夢、叶っちゃうかもしれないよ!」

美希「うん! うん!!!」

P「ああ。君たちなら、きっとトップアイドルになれる。いや、俺がしてみせる! だから……」

P「――――俺と一緒に来てくれないか?」

美希「プロデューサー! ミキ、やるの!」

春香「私も! よろしくおねが、ってうわぁ」ズッコケ

P「おっと。大丈夫?」ダキッ

春香「は、はい……///////////」


その時風が吹いていた。涼やかな風が。始まりの風が。


春香と美希、そして最初から事務所に所属していた雪歩を加えた三人でユニットを組んで活動することになった。

名前はStealS 

三人はすぐに仲良くなって、一緒に厳しいレッスンやオーディションをこなしていった。

また、アイドルそれぞれとプロデューサーとの関係はそれぞれ良好すぎるくらい良好で、

三人は親しい友人であると共に、恋敵でもあった。


美希「ハニー」ダキッ

P「こら、ベタベタするなよもう」

美希「仕方ないの! ミキはハニーの成分が足らないとお仕事できないの!」

P「もうわがまま言うなよー。五分だけだぞ」

美希「ありがとうなの!」ダキッ

P「まったく」ナデナデ


春香「プロデューサーさん! ドーナツ焼いてきました!」

P「おお、新作か!」

春香「はい! 事務所のみんなの分も」

P「みんな喜ぶぞー、きっと」

春香「今回はちょっと自信作ですからね。それに……」

P「それに?」

春香「今回のプロデューサーさんの分は、他とは一味違うんですよ!」

P「うわ、ハート型じゃないか」

春香「そうなんです/////////」

P「大変だったろ。ありがとな」ナデナデ


P「……ふぅ、仕事疲れたー」

P(お茶でものんで一息つきたいところだな)

カタッ

雪歩「プロデューサー、お茶です」

P「おお! ちょうど飲みたいと思ってた時に! 気が利くな!」

雪歩「プロデューサーのこと、いっつも見てますから/////////」

P「ありがとな」ナデナデ


しかしそんな関係もも、ある出来事をきっかけに、変わってしまうことになる。

雪歩があるライブの後、プロデューサーに告白したのだ。

噂はすぐに広まったが、みんな腫れ物扱いして、誰も雪歩を励まそうとはしなかった。



事務所内

P「……」

雪歩「……」

一同「……」

シーン

美希「ただいまなのー」ガチャ


美希「あ、ハニー、今日ミキね、雑誌の写真撮影の仕事頑張ってきたよ! 褒めて褒めてー!」

P「え、いや、その、今は……」

美希「ええ、ハニーのケチー! だったら、こうしちゃうの!」ダキッ

P「ちょ、ちょっと! コラ!」

春香「おっはようございまーす!」ガチャリ

春香「あ、プロデューサーさん! さっき可愛いストラップ見つけたんですけどつけませんか? おそろいですよ、おそろい//////」



雪歩とプロデューサーの微妙な関係を知ってもなお、美希と春香は相も変わらずだった。

それが、雪歩をどんなにか苦しめてるかなんて、ちっとも想像できずに。


休憩時間

雪歩「ねぇ……」

美希「どうしたの?」

雪歩「プロデューサーと春香ちゃんってさ、付き合ってるのかな?」

美希「え!? ち、違うと思うの!」

雪歩「でもさ、二人お揃いのストラップ付けてるし」

美希「えっ、ハニー昨日のストラップホントにつけてるの?」

雪歩「うん。それにさ、あの二人いっつも仲よさそうに話してるしさ……」

美希「……言われてみればそうなの」

雪歩「だいだい美希ちゃんがどんなに抱きついたりして激しくアタックしても、ちっとも何とも思わないなんて、おかしいでしょ。プロデューサーも男なのに……」

美希「それは思ってたの!」

雪歩「きっとそれは、プロデューサーが春香ちゃんと付き合ってるからなんだよ」

美希「そ、そうなのかな……」ショボーン

雪歩「許せないよ……!」ボソッ


美希(そっか。春香とハニー……)

P「今日は765プロオールスターライブだ! なんとStealSはトリだぞ! がんばっていこう!」

美希(そういえば春香とハニー、仲良いもんね。ミキは抱きついても何してもプロデューサーに何しても相手にされないのに、春香は相手してもらってる)

P「どうした、春香」

春香「なんでもないです……、ちょっと緊張しちゃって」

P「そうか、そういう時は手に人って文字を書いてだな」



美希(なんだか嫉妬しちゃうの)



美希「じゃあ……みんな、行くよー!」

三人「ファイト! おー!!」


美希「じゃあねなんていーわないーで♪ またねーっていいってー♪」

美希(そっか、春香とプロデューサー……。ダメダメ! 集中しないとなの!)

美希「私のものにならなくていーいー、っ!」

美希(おっとっと! 集中してないせいでバランスが……)フラッ

ドンッ!!

美希(ゆ、雪歩に押された!?)

美希(だ、だめ、足がもつれて)

美希(わっとっと! ダメだ! このままじゃ舞台から落ちちゃう!)

美希(どうしたらいいの!? あっ!)

春香「もしもあの子にあきたーら♪」


美希「っ……! 春香っ!」


美希(もしも、もしも春香にぶつかって勢いを止めれば、春香は舞台から落ちるけどミキは落ちないで済む)

美希(でも春香を避ければ、ミキが舞台から落ちる!)

美希(どっちか二つに一つ。どうすれば、どうすれば……っ!)

美希(ヤダッ! 死にたくない! それに……)

美希(春香は……プロデューサーと付き合ってるんだよね……。ずるいよ、春香ばっかり)

美希「……春香っ」

ドンッ

春香「えっ!?」

ドサッ!



タイヘンダー!! 誰カ落チタゾー!!

救急車ヨベー!!

ライブハ中止ダー!

ピーポーパーポー


病院

医者「残念ながら、もう……」

P「そ、そんな!」

医者「あの高さですからね。もう天海さんは助かりません。」

美希「あ……うっ……っ!」

雪歩「そ、そんな!」

P「うそだ……、こんなの夢だ」

美希(ミキが、ミキが殺したようなものなの……)

美希(ミキが……、ミキが……)

美希「はに……、プロデューサー……、ミキ……」

P「……」トボトボ

美希「……っ!」

美希(何も言ってくれなかった。ハニーにも、ハニーにも嫌われちゃったよぉ)ポロポロ


雪歩「……」ジロー

美希「ゆ、きほ?」

雪歩「……美希ちゃんは最低だよ」

美希「……っ!」

雪歩「こけたフリして春香ちゃんを突き飛ばしたんだよね?」

美希「そ、そんなの。それにまず雪歩がミキに」

雪歩「それは言い訳だよ。あんなのちょっとぶつかっただけでしょ? それであんな風になる?」

美希(確かにそうだけど…………っ!)

雪歩「美希ちゃんは春香ちゃんを故意に殺したんだ! プロデューサーを春香ちゃんから奪うために! 美希ちゃんはあまりにずるいよ!」

美希「そ、それは……っ!」


雪歩「この人殺し!!」ダッ

その言葉を否定することはできなかった。
一切春香を突き飛ばそうと思わなかった訳ではない。
避けようと思えば避けられたのだ。

美希(だけどっ!)


雪歩「プロデューサー。大丈夫ですか」

P「あ、ああ。大丈夫だ」

雪歩「嘘だ。顔色悪いですよ」

P「そうかもしれない。ちょっと寝れてなくてな」

雪歩「辛いなら言ってください。苦しいなら相談してください。私はプロデューサーの味方ですから」ギュッ

P「ごめん……、俺、三人を、春香をトップアイドルにしてやるって言ったのに、叶えられないどころか、あいつを殺してしまった……これも全部俺の、俺のせいだ……」グズッ

雪歩「プロデューサー」

P「それなのに何がプロデューサーだよ! ぐぞっ! おればおまえらになんにもじでやれでないじゃないがぁ グズっ! 今だっでぼんどは泣いでなんがいられないのに」ボロボロ

雪歩「プロデューサー。強く振舞わなくたっていいんです……。無理しなくたっていいんです。自分を責めなくったっていいんです」

P「でも!」

雪歩「私が許してあげます。私が慰めてあげます。だから元気をだして」

雪歩「それとも、私じゃだめですか?」ギュッ

P「……」

二人はゆっくりと抱き合い、自然と顔を引き寄せ、キスをしていた。
それを、一人遠くから見つめる少女が一人。


雪歩の方がずるいじゃないか。そう思った。
自分が、プロデューサーを奪うために春香を殺したと罵った雪歩が、プロデューサーの哀傷に付け入ってプロデューサーを奪ったのだ。
雪歩こそ最低だ。最低の、死んでもいいような人間だ。

美希(そうだ。雪歩なんて死んだらいいんだよ)




プルルルルルルルルルル プルルルルルルルルルル ガチャ

美希「もしもし! 雪歩、大変なの! 今すぐ○○山の中腹まで来て!」

雪歩『こんな時間に? もう暗いしやだな。何の用?』

美希「プロデューサーがね、ショックで今にも自殺しようとしてるの! それを止められるのは雪歩しかいないの! だから早く!」

雪歩『っ!!! なんで!?』

美希「プロデューサー、やっぱり春香のことでショック受けてたみたいで、でもミキじゃ……春香を殺したミキじゃ止められないから! だから雪歩ぉ!!」

雪歩『う、うん!! すぐ行くね!』


雪歩「はぁ、はぁ、はぁっ」タッタッタッ

美希「雪歩!! こっちだよー!!」

雪歩「っ! 今どうなってる!」

美希「今あっちの崖の方にプロデューサーが! いそいで!」

雪歩「うん! プロデューサー!!」ダッ

雪歩(お願い、無事でいて! やっと結ばれたのに、ここでお別れなんて絶対ヤだよ!)


雪歩「プロデューサー! お願い、死なないで!」

雪歩「ねぇ! プロデューサー??」キョロキョロ

ザッ!

雪歩「わっ! 美希ちゃん! ねえプロデューサーがいないの! どこにいるの!」

美希「あれー、ミキ的にはこっちに行ったんだけどなー」

雪歩「そんな! じゃあもうプロデューサーはもうこの崖の下!?」

美希「そうかもしれないの」

雪歩「っ! どうして! プロデューサーとせっかく結ばれたのに! やっと幸せになれるって思ったのに! こんなところでお別れなんて! ……やだよお」グズッ

美希「そうだよね。お別れなんてヤだよね。でもね、お別れするのは、雪歩の方だよ」

雪歩「え?」

ドンッ

美希「安心して。プロデューサーは無事だから。今頃家でぐっすり眠ってるって思うな」

ドサッ


翌日 公園

美希「今日はこれからどうしようかなー? これで邪魔者もいなくなったし、事務所に行ってハニーと……」

プルルルルルル、プルルルルルルル

美希「あ、電話なの。はい、もしもし」

P『もしもし、美希か』

美希「あ、ハニー? どうしたの? デートのお誘い?」

P『美希、今どこで何してる?』

美希「ミキは今公園でカモさんとお話してたところだよ?」

P『そうか……。なぁ、美希は雪歩知らないか?』

美希「………………知らないの」


P『そうか。ご両親から問い合わせがあってな。昨日何か電話のあと、焦って家を出て行ったきり、戻ってこないらしい』

美希「そっか。大変なことになってるんだね。誘拐とかかな?」

P『ああ。それでな』

美希「誰が犯人なんだろうね」

P『その最後の電話の番号な』

美希「美希も殺されちゃうのかなぁ。怖いよ」

P『調べたところ』

美希「ねぇハニー、ミキを犯人から守ってよ」

P『お前の番号なんだ』

美希「……」


P『今日のお昼ごろ、今さっきなんだが、○○山の崖下で、雪歩の死体が見つかったんだ』

美希「……」

P『雪歩の服に、綺麗な金髪が数本くっついていたらしい』

美希「……」

P『昨日深夜に○○山の方へ向かうお前を見たという情報もある』

美希「……」

P『もう、分かってるんだ。だから、全部話してくれないか?』

美希「………………あはは。あはははははは」

P『美希?』

美希「ああっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!」

美希「……バカみたい」

美希「そうだよ。ミキが雪歩を殺したの。後ろからポンッって押して。春香の時みたいに」

美希「人間意外と脆いよね。ちょっと押しただけですぐバランス取れなくなって、そのまま落ちたらおしまい。ミキちょっと驚いちゃったの」

P「分かった。もういい。やめろ」

美希「でも面白かったな。雪歩も春香も、ハトが豆鉄砲喰らったみたい意外そうな顔で落ちていくんだよ。今から死ぬんだってこと、自覚する暇あったのかな? 聞けるならきいてみたいな」

P「ミキ、だからやめろって!」

美希「そうだ聞いてよハニー! ミキが昨日なんて言って雪歩呼び出したか知ってる? ハニーが自殺しそうだから止めに来て、だよ? そしたら血相変えて飛んできてさ。ホントバカなの」

P「もうやめてくれ!!!!!!!!」

美希「っ!」

P「俺は、俺はお前を絶対許さない!! 春香も雪歩もずっと頑張ってトップアイドル目指してたんだ! なのに、なのにお前が、お前がいたせいでっ! お前が二人の夢を壊したんだ!!!!!!」


P「――――お前なんてプロデュースしなけりゃよかった!!!!」

ブツッ  ツー ツー ツー

美希「ミキだって、必死でトップアイドル目指してたの……」

ウー ウー ウー

美希(サイレン!? 警察!?)


気づけばケータイもバッグもすべて放り出して走り出していた。

走って走って逃げて逃げて

ビル街の大きなモニターに、自分の顔が写っていた。

キャスター「人気アイドルユニットStealSの星井美希さんが、現在殺人の疑いで指名手配されており……」

キャスター「警察が現在も懸命に捜索中です。さて、次のニュースです。世間はクリスマス。今夜は一段と冷え込み、ここ東京もホワイトクリスマスを迎えることになりそうです」

でもどこまで走っても、そこらかしこに自分を知っている人間がいた。

「あれ、StealSの星井美希じゃね?」
「うっそー、さっきのニュースで今指名手配されてるって!」
「じゃあ警察に連絡しなきゃじゃん!」
ザワザワザワ

美希(ここもダメなの!)ダッ

美希「はぁ、はぁ、はぁっ、ぐっ、ゴホッゴホッ」

美希「もう、息が……」


たどり着いたのは、ビルとビルの間の薄暗い路地裏。
生ごみの臭いのする、汚い隙間にうずくまった。

美希「どうしてっ! どうしてっ!」

美希(ミキだって頑張ってたよ……。頑張るのキライだったけど、トップアイドルになるためにいっぱいいっぱい努力したよ……。なのにハニーは……)

――――お前なんてプロデュースしなけりゃよかった!!

美希(もう真っ暗だ)

どこからか、軽快な音楽が聞こえてくる。

ジングルベール ジングルベール 鈴ガ鳴ルー

今日はクリスマス・イヴ。世間はとても賑わっていた。


美希(お腹減ったな。七面鳥、食べたいの。おにぎりと一緒に食べたらおいしいかな)

美希(ケーキも。みんなで食べたらおいしいだろうな。そうだ。春香はお菓子が得意だったの)

美希(ケーキも作るのかな? きっとおいしいだろうな。春香のクリスマスケーキ、食べてみたいの)

美希(寒い。寒いの。こんな時は雪歩の暖かいお茶が飲みたいの)

美希(いっつも飲みたいな、って思った時にちょうど出てくるの。あれはすごかったの)

美希(………………)

ヒラッ

美希「あ……、雪……」


普段なら喜ぶような、ホワイトクリスマス。
今だけは不安や寂しさを増長させる雪だった。


美希「もうヤだよ。寒いよ、おなか減ったよ、悲しいよ、寂しいよ……。ねぇ、春香、雪歩、謝るからっ。謝るから帰ってきてよぉ……」ポロポロ

気づいた時には遅すぎた。大切な友達――自分を支えてくれるユニットの仲間は、もういなかった。


ウー ウー ウー ウー

美希(またサイレン)ビクビク

美希(怖いよ。捕まりたくない……。助けてよぉハニー……)ポロポロ

美希(ハニーっ、ハニーっ、はにー!!)ボロボロ

――――俺はお前を絶対許さない!

美希「っ!」

美希(ハニーっ、見捨てないで! ハニーに見捨てられたらミキはこれからどうやって生きていけばいいの……)

美希「はにぃー……」ポロポロ

ザッ!

美希「っ!? 誰!?」ビクッ


貴音は同じ事務所の先輩だった。ほとんど一緒に仕事したこともないし、会話したこともなかったが、その美しい髪が印象的で、名前は憶えていた。


貴音「美希……。あなたはこの運命に満足していますか?」

美希「な、何言ってるの貴音。いきなりなんでこんなとこに」

貴音「この運命に満足しているか、と聞いているのです」

美希「えっと、その……してないの……」

美希「こんなの、苦しすぎるの。悲しすぎるの。暗くて、寒くて、お腹減って、一人ぼっちで、寂しくて……。こんなのヤなの! 耐えられないの!」

貴音「ではもし、もう一度人生をやり直せるとしたら、この運命を変えられると思いますか?」

美希「……分からないの」

貴音「そうですか……では……」


貴音は少し残念そうな顔をして、背中を向けた。


美希「でも!」

>>303 投稿順間違えた……


ザッ ザッ

質問に答えず足音はどんどん迫ってくる。

美希「ねぇ、誰なの! ねぇ!?」

警察だろうか。もし警察だったらここで終わりだ。

美希(に、にげなきゃっ)

必死に後ずさるも、足が震えて上手く動かない。
体が冷えすぎたのだろうか。すぐに追いつめられた。

ザッ

目の前まで人影が迫ってきたところでようやく、それが誰か認識することが出来た。
雲間から射した月明かりに照らされるその姿はとても印象的で

美希「貴音……」

恐怖なんて感情は消えていた。


貴音は同じ事務所の先輩だった。ほとんど一緒に仕事したこともないし、会話したこともなかったが、その美しい髪が印象的で、名前は憶えていた。


貴音「美希……。あなたはこの運命に満足していますか?」

美希「な、何言ってるの貴音。いきなりなんでこんなとこに」

貴音「この運命に満足しているか、と聞いているのです」

美希「えっと、その……してないの……」

美希「こんなの、苦しすぎるの。悲しすぎるの。暗くて、寒くて、お腹減って、一人ぼっちで、寂しくて……。こんなのヤなの! 耐えられないの!」

貴音「ではもし、もう一度人生をやり直せるとしたら、この運命を変えられると思いますか?」

美希「……分からないの」

貴音「そうですか……では……」


貴音は少し残念そうな顔をして、背中を向けた。


美希「でも!」


美希「でももし、すこしでも変えられる可能性があるなら、もう一度やり直したいの!」

貴音がまた向き直る。

貴音「いいのですか? それはつまり、この悲しみや苦しみをもう一度味わうことになるかもしれないということですよ」

美希「それでも……」

貴音「もしかしたら今よりひどい結末が、あなたを待っているかもしれないのですよ?」

美希「それでもやり直したい。こんな、こんな悲しい結末のまま、終わりたくない。終われないの! みんなでトップアイドルになって笑いあうまで、絶対にあきらめたくないの!」

貴音「そうですか。あなたはまだ、絶望していないのですね」


貴音はそういってほほ笑むと、


貴音「では、またいずれ会うこともあるでしょう。見せてもらいますよ、あなたの頑張り」


闇の中へと消えて行った。
まるでそれは、あまりの現実感のなさから、夢だと思い込んでしまうような出来事だった。


翌朝

朝の陽ざしで目が覚めた。
結局少しだけ路地で寝ていたらしい。

昨日の夜と打って変わって、とても暖かかった。

美希(やっぱり、ハニーに謝ろう。ハニーなしじゃ、ミキは生きていけないの)

美希(ハニーはきっと許してくれる。そうだよ。そして、きっとこの状況だってなんとかしてくれるの)

――――俺はお前のこと、絶対に許さない!

美希(っ! いや、大丈夫なの! ちゃんと謝ればきっと、許してもらえる。ハニーはそういう人だ)

夜は酔っぱらった人などでごった返していた通りも、今は閑散としていた。
人目につかないようにささっと移動し、先を急ぐ。

目指す場所は765プロの事務所だ。


タンタンタンッ

事務所の階段を登る。通い慣れた階段だ。最初は長くて苦しかったこの階段も、今では軽快に登りきることが出来る。

(今日はハニーに謝らなきゃいけないことがあるの。だから……)

今日はそのために、朝早く来たのだ。心なしか、足に力が入る。
扉の前で深呼吸。ちょっと緊張してしまう。

(ハニー、許してくれるかな? 大丈夫だよね……。だってハニーだもん!)

ガチャ

美希「おはようございますなの!」


美希「あれー? 誰もいないの……」キョロキョロ

美希「おかしいなぁー。ハニーはいつもはこの時間にはもう来てるはずなのに。あ、給湯室に明かり……」

ガチャ
P「ふぅー。誰もいないと自分でお茶も淹れないといけないからなぁー」

美希「あ、ハニー! おはようございますなの!」

P「え? お、おう」

美希「あのね、ハニー。実は今日ミキ、ハニーに謝らなきゃいけないことがあるの。聞いてくれるかな?」

P「あ、っと」

美希「あの、ミキさ、ハニーの気持ちも考えずに……」

P「ちょっとまってくれ! なぁ、そんなことよりもまず」

美希「ん?」

P「君は……誰だ?」


>>1へ至る


だから、誓ったのだ。
ハニーに二回目に、アイドルに勧誘されたとき。

――――ミキ、やるの

そう言った瞬間に。

――――絶対にトップアイドルになるの!!

そう誓った瞬間に。

今度こそ絶対に誰も死なせない。誰も不幸にさせない。
皆が笑って、トップアイドルになれる、そんな結末を……


絶対に掴み取る!!!!


美希「だから! だから、明日だけは、絶対に仲直りして臨みたいの! そうじゃないと、またあの時みたいな悲劇が起こっちゃうの!」

春香「そんなのいきなり言われても……」

美希「信じてくれとは言わないの。バカみたいな話だってのはミキだってわかってるから」

雪歩「じゃあどうしろっていうの?」

美希「明日のライブで、気を付けてほしいの。この話を全部信じられなくても、明日もしかしたらそんなことが起きるかもしれない、って考えるだけで未来は変わるかもしれないから」

雪歩「それくらいなら……」

美希「ありがとうなの!」

美希「そしてもしできるならなんだけど、仲直りして欲しいの。そうした方がきっと明日のライブで集中できて、事故も減ると思うから」

雪歩「……それは……」

春香「……」

美希「……。そっか。それなら仕方ないね。でも明日のライブだけは、例え仲直りできてなくても、集中して、気を付けてほしいの……」




貴音「いよいよ明日ですね」

美希「そうだね」

貴音「上手くいくと思いますか?」

美希「ミキにできることはやったの。きっとうまくいくの」

貴音「そうですか」

美希「ねぇ、貴音はなんでこんなことしてくれたの?」

貴音「こんなこと、とは?」

美希「なんでわざわざミキの前に現れて、チャンスをくれたの? 貴音に、貴音に何かメリットがあるの? それとも後で代価として魂を支払えとかいうの?」

貴音「それは……、トップシークレットです」

貴音「でも、強いて言うなら、あなたが悲壮すぎて見ていられなかった……からでしょうか」

美希「そっか。やさしいんだね。……ありがとうなの」

貴音「いえ。私も楽しいものを見させていただいてますので。それでは続きも期待していますよ。美希」ズズッ


ライブ会場

美希「プロデューサー。ちょっと話が……」

P「なんだ?」



雪歩「あっ」

雪歩(プロデューサーと美希ちゃん、なんだか楽しそうに……)


美希「今日は、運命のライブなの。今日、悲劇が起きないように、気を引き締めていくの!」

美希「じゃあ……みんな、行くよー!」

三人「ファイト! おー!!」

ダッ

\スティールズー/ \キャーッ/ \ウオオオオオオ/


雪歩(もう曲も後半なのに、やっぱりなにも起こらないじゃん)

雪歩(むしろ美希ちゃんが話してたみたいに、春香ちゃんなんか舞台から落ちちゃえばいいのに……)

雪歩(なんて、思うのもいけないよね。でもやっぱり私は春香ちゃんを許せないんだ)

雪歩(プロデューサーと春香ちゃんが仲良くしてるだけで私は、嫌な気持ちになっちゃう)

雪歩(それに美希ちゃんも今日プロデューサーと……)

雪歩(どうしたらいいんだろう)

雪歩(っ!? こんなところにコードが!! 引っかかってっ)

雪歩(美希ちゃんにぶつかっちゃう)

雪歩「美希ちゃん!!」

美希「えっ?」

ドンッ

ちょwwwIDに765来たwwwwwww

>>357
す、すげえな! いいもん見たわ!


美希「っ!!」ヨロ

美希(ま、前より強く……! 勢いがっ止まらない!)

美希(これじゃまた……)

美希(ダメだ、春香にぶつかっちゃう! 今度は避ける余裕なんかもない!)

美希「春香っ!」

ドンッ

春香「えっ……」

スローモーションのように春香にぶつかっていく体。
避けることも叶わず、春香を舞台から押し出す。

美希(そんなのだめ!!)

美希の願いは叶わない。春香は大きくバランスを崩す。
もう、間に合わない。


美希(まただ。またダメだったんだ)


美希(もういいや。頑張ってきたのも全部無駄だったんだ)

美希(運命は変えられない。悲劇を回避することは出来ないんだ)

美希(また貴音にたのんだらもう一回やり直せるよね。次頑張ればいいや。もうどうでもいいよ)

美希(どうだって……)



――――俺はお前のこと、絶対許さないからな!

――――お前のことなんか、プロデュースしなきゃよかった

言葉が突き刺さる。

あの悲しみがよみがえる。

おいしいお菓子を作ってくれる春香も、

暖かいお茶を入れてくれる雪歩も、

大事な大事な、大好きなハニーも、

全部失ってしまう。

そんなの……そんなの……

美希「だめなのっ!!!!!!!!!!!!!!!!!」


倒れていく春香の体を思い切り引っ張った。
自分の態勢も元々危ういのに思い切り。
浮き上がる春香の体。その代りに沈んでいくのは、美希の体だった。



間一髪、春香は気づいた時には舞台端にペタリと座り込んでいた。

ドサッ

重い音が少し遅れてやってくる。
春香が恐る恐る後ろを見ると、そこには落ちた美希の姿があった。

P「救急車だ! 救急車を呼べ!!」

辺りは喧騒に包まれた。

春香「……っ!」


美希は目覚めなかった。
病院に運ばれて、絶対安静を言い渡された。
心臓は止まっていないし、体に大きな外傷もない。
しかし打ち所によってはどうなっているか分からない、そんな状況だった。

病院にはプロデューサーが付っきりで見守っていた。
春香と雪歩は、もう遅いからということで事務所に返された。

春香「……」

雪歩「……」

二人は事務所の電気もつけず、向き合って座ったまま、黙りこくっていた。
薄く月明かりだけが二人を照らす。


春香「……ねぇ、美希、どうなっちゃうのかな」

雪歩「わかんないよ……」

春香「そうだよね……」

雪歩「……」

春香「……私ね、昨日美希が言ってたこと、これっぽっちも信じてなかった」

春香「私たちを無理やり仲直りさせるための、美希の適当な作り話だって思ってた」

春香「ずっと美希はこの悲劇を知ってて、それを回避するために頑張ってきてたのに、私なんにもわかってあげられてなかった」

雪歩「……」

春香「この前ね、美希に言われたんだ。雪歩のこと何も考えずにプロデューサーさんと仲良くしない方がいいって」

春香「そりゃあそうだよね。私も雪歩が告白したって事情は知ってたし、第一私はプロデューサーさんと付き合ってる訳でもなんでもないのに」

春香「でもそんなのちっとも聞かなくって、雪歩を悲しませて、美希を困らせて、挙句昨日雪歩にあんなこと言っちゃって……」

春香「ホントごめん。バカだ、私……」


雪歩「そんなこといったら、私もバカだよ」

春香「雪歩?」

雪歩「春香ちゃんがプロデューサーと仲良くするのなんて、実際春香ちゃんの勝手だよ。なのに私一人でから回って嫉妬して」

春香「そんなの……」

雪歩「それにね、昨日だって春香ちゃんの言ってることは正しかったよ。勝手に休んだ私がそもそも悪いんだよ」

春香「でも私は言い過ぎたよ……」

雪歩「うん。ちょっと効いたかもね。あれ……あはは」

春香「……ごめん」

雪歩「ううん、いいの。こっちこそごめん」


春香「これで……仲直りかな」

雪歩「そうだね。でも私、まだやり残したことがあるの」

春香「やり残したことって?」

雪歩「ねぇ、春香ちゃん。一回落ちると途端周りが見えなくなって、友達関係まで悪くしちゃう穴って、なんだと思う?」

春香「えと、恋?」

雪歩「そう。恋。こんな穴に踊らされて、私たちは不安定になって、美希ちゃんはあんなことになっちゃって……」

春香「そうだね。恋に盲目になって友達なくしちゃってたら馬鹿らしいよね。どっちも同じくらい大切なのに」

雪歩「だから私、決着付けたいの」

春香「……そっか。じゃあ私も。明日美希の目が覚めたら」

雪歩「じゃああれやろっか」

春香「そうだね。明日全部決着がつきますように。明日美希が目覚めますように」

雪歩「いくよー! せーの!」

二人「ファイト! おー!!」


ここはどこだろう。
一人あてどない旅をしている。

あてどない時間の旅だ。
何度も何度も、やり直す。
でもいつも同じ場所で失敗するのだ。

必ず春香を失って、
雪歩を呪って、
ハニーに見放される。

その繰り返し。


何度やろうと、何度頑張ろうと、
悲しい未来を繰り返すだけ。

臨んだ未来は手に入らなくて
悲劇はちっとも回避できなくて


ついには絶望した。


「じゃあどうすればよかったの!?」


返事は帰っては来ない。


「ミキの何がいけなかったの!?」


声は虚空に飲み込まれる。


――――俺はお前のこと、絶対許さない!


帰ってきたのは罵声だった。


――――お前なんかプロデュースしなきゃよかった!


一番聞きたくない言葉。大好きなハニーからの、大嫌いという言葉。

「やめて! 聞かせないで、そんな言葉!」

――――俺はお前のこと、絶対許さない!
――――お前なんかプロデュースしなきゃよかった!

声はエコーして、何度も何度も彼女を責める。

「聞きたくないの! そんなの聞きたくない……。そんなことハニーに言われたら……いきてけないよぉ……」ポロポロ


ついには彼女は、奈落の底へ落ちて行った。


真っ暗な、真っ暗な闇。自分のことさえ見えない。

「なんだろう。ここ、落ち着くの」

そのうちだんだん自分の形が分からなくなっていく。

「安心できるの。あふぅ」

自分が闇の中に溶けだしていく。

(もう、ここで眠ってしまっていいかな)

ついには自分の声も聞こえなくなり、自分と言う存在が思考だけになる。

(そっか。ここが天国かぁ。なんだかさみしいんだね)

(あ、でもミキは人を殺しちゃったから、天国じゃなくて地獄かぁ)

(だったらさみしい訳だ)


(………………………………)

(………………)

(………)

(…)




「美希っ!」

完全に思考を閉じようかとしたその時だった。

遥か上方から、声が聞こえた。

「美希っ! 死なないでくれ!」

必死そうな声。あまりの必死さに聞いていて滑稽になる。
だけどその声はとても暖かい。

(ハニー……。でももういいんだよ……)

(もうどうせ、臨んだハッピーエンドは来ないんだよ)

「帰ってきてくれ!!」

(もう、全部終わりだよ)


「お前は……トップアイドルになるんじゃなかったのかよ!!!!!」

(……っ!)

「春香も雪歩も、お前が目覚めるのを待ってる!」

真っ暗な暗闇の中に、小さな光が射す。

「皆お前を待ってるんだ! 帰ってこいよ!」

光はだんだんと少しずつ、大きくなっていく。

「お前を大好きな皆が、お前が大好きな仲間が、お前を待ってるんだ!」

確実に、着実に、光は暗闇を照らし出す。

「お前、頑張ってたじゃないか!! トップアイドルになるために、誰よりも!」

光はついに彼女を照らし出す。闇に溶けだしていた体は、急速に形を取り戻し始めた。

「こんなところで諦めていいのかよ! こんなとこで終わりでいいのかよ」

彼女は光に手を伸ばす。いきなりの眩しさに、目も眩むような光に。

「俺は嫌だぞ! 俺は絶対にお前をトップアイドルにするの、諦めないぞ!!! だから……」

「――――帰ってこい!!!!」


……ゆっくりと目を開ける。

いきなりの陽ざしに視界が霞む。

そこにいるのは誰だろう。
そこにいるのは……スーツを着て、冴えない顔つきで自分を見守っているのは。
自分の手を、暖かくて大きな手で握っていてくれているのは。

美希「……あふぅ。ハニー?」

P「……っ! 美希っ! 目覚めたのか!」

美希「ハニー、どうしたの?」

P「よかった! よかった!! 本当に……よかった……」ポロポロ

美希「どうして泣いてるの?」

P「そりゃぁ、お前が……お前が目を覚ましてくれたからだよ」ボロボロ

体を起こした美希に、プロデューサーはゆっくりと抱きかかる。
そのぬくもりを感じて、

美希「そっか。これは夢じゃないんだね。ミキ、生きてるんだね」


P「ああ、そうだ! お前は生きてる!」ボロボロ

美希「ミキ、一人ぼっちじゃないんだね」

P「ああ。俺がずっとついてる」ボロボロ

美希「ミキっ……、ミキ……」ポロポロ

美希「まだみんなでトップアイドル目指せるんだね……!」ボロボロ

P「……ああ!!!!」ボロボロ


美希「……あふぅなの」

P「落ち着いたか?」

美希「うん」

P「お医者さんの話でも、もう大丈夫だってさ。目立った異常はないらしい。よかったな。」

美希「なんか不思議なぐらいだね。ミキあんなに高いところから落ちたのに」

P「そりゃ俺のおかげだろう」

美希「そうなの?」

P「いや、嘘だ。俺にライブ前にあんなこと言った美希のおかげだよ」

美希「あれ? ミキ何か言ったっけ?」

P「憶えてないのか?」


ライブ前

美希「プロデューサー。ちょっと話が……」

P「なんだ?」

美希「もしかしたらだけど、今日のライブで事故が起こるかもしれないの」

P「ええ! ホントか!?」

美希「分からないの。証拠はないし、信じてくれとは言わないの」

P「おお?」

美希「でももし事故が起こるとしたら、曲の後半、ステージからの転落事故なの。だからもし叶うなら、ちょうどステージの真ん中あたりの下で待機していてほしいの」

P「えらく具体的だな。なんで分かるんだ?」

美希「ミキが未来から来たからだよ」

…………………………

P「って言ってたじゃないか。アレを信じて一応舞台下に居たらホントに美希が落ちてきて吃驚したよ」

美希「ハ、プロデューサー、アレ信じてくれたの!?」

P「ああ。あんな真剣にいわれちゃあ不安になってな。結局いきなりで驚きすぎて、転落の衝撃を弱めることぐらいしか出来なかったけど。実際美希をこんな目に合わせちまったし」

美希「それでもいいの! ミキが生きられたのは、プロデューサーのおかげなの!! 信じてくれてありがとうなの」ギュッ

P「おいおい。くっつくなって。さっき連絡したし、もうすぐ春香や雪歩が来るぞ」

美希「プロデューサーのケチー」パッ


ガラッ

雪歩「美希ちゃん!?」

春香「目覚めたんだね!」

P「ほら、ちょうど」

美希「雪歩、春香!」


春香「よかった……。よかった……。本当に、もう、美希が目覚めないかと思って心配したんだよ……」ウルウル

美希「春香……。心配かけてごめんなの」

春香「許さないよっ。助けてもらった分、恩返しさせてもらうまで絶対許さない! ありがと、美希っ!!」ダキッ

美希「春香ぁ、いたいの! もう!」アハハ

雪歩「……美希ちゃん…………、私」

美希「雪歩も心配してくれてたんだよね。心配かけてごめんね」

雪歩「謝るのは私だよ。私が美希ちゃんを押しちゃったから……。本当にごめん……。謝って許されるようなことじゃ……」

美希「……いいよ。許したの」

雪歩「そ、そんな簡単に……。私のせいでこんな目にあったんだよ? 散々気を付けてって言われてたのに、私何も聞いてなくて」

美希「いいの。もう許しちゃったの。だからこの話はおしまいでいいの」

雪歩「……美希ちゃん」グスッ

美希「だから、雪歩も春香も泣くの止めて笑って欲しいの。笑って一緒にまた、トップアイドル目指そう?」



雪歩&春香「うん!」ニコッ


春香「そうだ。私たちね、昨日二人で話してきたんだよね」チラッ

雪歩「うん。今日、全部決着をつけようと思うんだ」

春香「喧嘩しちゃったのも、美希がこんな風になっちゃったのも全部、原因は一緒」

雪歩「全部、プロデューサーへのモヤモヤした想いが原因なんです!」

P「へ? お、俺?」

雪歩「私にとっては美希ちゃんも春香ちゃんも大事な友達だから、こんなことで失いたくない」

春香「だから、今日こそはっきりしてもらいますよ、プロデューサーさん!」

P「ん? えっ?」

雪歩「プロデューサー!」
春香「プロデューサーさん!」

雪歩「私と」

春香「私」

春香&雪歩「どっちと付き合いますか!?」


数日後 公園

美希「ハ、プロデューサーはぜいたくでひどい男なの。かわいいアイドルを二人同時にフっちゃうなんて」

P「そんなこといわれてもなぁ。アイドルとプロデューサーだぞ? 本当に付き合う方が問題だよ」

美希「そうやってプロデューサーはすぐいい人ぶるの」

P「いい人ぶってるんじゃないって。それに実際二人も納得してたじゃないか。プロデューサーとアイドルの恋愛は無理だってことに」

美希「まぁ納得して決着付けたって感じだったね。清々しそうに笑ってたし」

P「そうそう。だいたいあいつらは自分を安売りしすぎなんだよ。あいつら可愛いんだし、俺なんかじゃなくてもっといい人が絶対見つかるっての」

美希「それ本気で言ってるの?」

P「え? 本気じゃなかったらなんだっていうんだ」

美希「別に何もないの。プロデューサーのどんかーん」ベーッ

P「ああ、こいつ!!」


美希「じゃあさ、プロデューサー的な気持ちはどうなの?」

P「え? それってつまり?」

美希「プロデューサーと春香、雪歩が、プロデューサーとアイドルっていう関係じゃなかったらどうしてた、ってことなの」

P「うーん。そりゃ好いてもらえるのは嬉しいけどなぁ。やっぱりフってただろうなぁ」

美希「そっか。そうなんだ」

P「ん? 美希、どうして嬉しそうなんだ?」

美希「な、なんでもないの!」

P「??」



美希「……クリスマスだね」

P「だな。公園のライトアップが綺麗だ」

美希「なんかロマンチックで素敵なの」

P「だな。なんだか懐かしい。……そういえば美希を勧誘したのもこの公園だったな」

美希「そうだね。懐かしいなぁ」

P「ああ。最初会った時の美希は不思議だったなぁ。いきなり事務所に入ってきて。吃驚したよ。そんなにアイドルになりたかったのか?」

美希「ぶー。こっちにもいろんな事情があるの!」

P「分かったって。怒るな怒るな」


美希「そうだ! 美希、今日七面鳥が食べたいの! あったかい部屋で、みんなで一緒に。それが出来たらすっごく幸せだって思うな」

P「おっ。そうするか。じゃあ後で音無さんに連絡して準備しておいて貰おうか。事務所でクリスマスパーティだ」

美希「やったぁなの!」

P「765プロのアイドル全員呼ぼう! 律子も、音無さんも、社長も一緒だ。盛り上がるぞきっと」

美希「えっへへ~。楽しみなの」

P「帰りにケーキ買って帰らないとな」

美希「ミキ、生クリームがいーっぱい載ったケーキがいいな」

P「いいな。いまから楽しみだ」

美希「ねぇ、プロデューサー」

P「どうした? いきなり真剣な顔して」

美希「もしも、もしもだよ。ミキが……プロデューサーに付き合ってって言ったら、やっぱりフっちゃう?」

P「お前、そりゃあ……っておい、なんで泣いてるんだ!?」

美希「プロデューサー……いや、ハニー! 大好き」ダキッ

P「ちょっ、美希っ!」

美希「大好き大好き大好き!! ずっと大好きだった!!」ギュッ

美希「ミキね、アイドルになってから今回は、ハニーに抱きついたりしたこと全然なかったけど、ずーっとこうしたかったんだよ」

P「……美希」ギュッ

美希「ずっとずっと、ハニーが大好きだった。それはもう、出会う前からずっと」

P「そっか。ありがとな」ギュッ

美希「ハニー。今度は嫌いにならないで、ミキのことずっとキラキラさせてくれる?」

P「ああ! 当たり前だろ! おれとお前で、目指せ、トップアイドルだ!」

美希「ハニー!!!!!」ダキッ


美希に最高のハッピーメリークリスマスを。おしまいです。


最後まで付き合ってくれた人ありがとう。腰が痛くてしょーがない。

ところで残念なお知らせなのだが、後日談的なのが二個ほどあるんだが需要ある?
投下中暇で仕方なかったから書いた。


本当は今日は寝たいのだが……。

明日投下するから誰か保守してって言っても無理だよね?

保守して欲しいならそう言いなさい

>>467

保守して!

個人的にはさっさと投下してしまってそれで寝たほうがいいと思うのだが、まあそこはお好きに

>>470も一理あるな……。

じゃあやっぱ今から投下するお。

二分間隔くらいでばばっって投下してくからおさるさん喰らったら保守お願い。

――――最近のStealS――――


かつてあった悲しい出来事は回避され、今ミキたちはとっても楽しくアイドル活動をやってるの!

ミキが転落した事件はけっこう大きく取り上げられて、『星井美希 ステージでの悲劇と奇跡』なんていって、世間を騒がせた。
その影響なのかな?
とりあえずStealSは今さらに人気絶頂なの!

「いらっしゃいませー」

春香「久しぶりだね、三人でご飯なんて」

雪歩「最近すっごくいそがしかったもんね」

美希「ミキスイパラ初めて~」

雪歩「ええ? そうなの? 意外かも」

美希「そうなの~」


そして三人の仲も今ではすっかり良くなって、予定さえ合えば三人いつも一緒なの!

春香「じゃあ私荷物見てるから、先取ってきなよ」

美希「うん!」

雪歩「ありがとう」




??「う、うわ! なんであいつらがいるんだ!?」

??「え、何が起こって……」

??「い、いいから隠れろ!」バッ

??「なんで俺まで……」


美希「ん? あれは……」

雪歩「どうしたの?」

美希「……いや、なんでもないの。あはっ☆」



P「あ、危なかった……」

冬馬「隠れる必要あったのかよ?」

P「あ、当たり前だ! 冬馬! お前は分かっていない」

冬馬「なにをだよ?」

P「真昼間から、男二人でスイパラにいることが、いかに恥ずかしいかをだ!!」カッ


冬馬「な、なにぃ!? これは恥ずかしいことだったのか!!」

P「あたりまえだ。だが男一人でスイパラに行くよりは若干マシだ。故にお前を誘った!」

冬馬「くっ、くそ! 奢りって言葉に騙された!! 超恥ずかしいぜ///////////////」

P「ふっ。やはり冬馬、お前はまだまだだな」

冬馬「くっ、やはり765プロのプロデューサーだけある……。社長の言ってた通り卑怯だぜ//////////////」



冬馬「でも恥ずかしいと分かっていながらなんで俺を誘ってスイパラに来たんだ?」

P「愚問……。スイーツを愛しているからだ!!!!!!」

冬馬「そんなこと聞いてねぇよ……。お前なら俺なんかいちいち誘わなくても、担当アイドル誘ってくりゃいいじゃねぇかよ。ほら、現にあの三人も今こうやってここに来てる訳だし」

P「そ、それには……、ふがいわげがあるんだああああああああああああ」ブワッ


P「よーく耳を澄まして聞いてみろ」

冬馬「ふむ」


春香「~から、ありえないよね~」

雪歩「そうだね。それでのうのうと生きてられるんだもん」

美希「あはっ☆ その通りなの」


冬馬「ふ、普通の会話のようだが……」

P「よく聞いてみろ……」


春香「だから、プロデューサーはほんと見る目がない最低な男だと思うの」

雪歩「そうだね~。一生仕事に噛り付いて一人孤独に死んでいけばいいんだよ」

美希「あはっ☆ それは傑作なの!」


冬馬「」


冬馬「ど、どうしてこんなことになっちまったんだ!? お前!?」

P「きかないでぐれ……」ボロボロ

冬馬「この前まであんなに仲良かったじゃねぇか、お前ら!」

P「うぐううう……。あの頃を思い出しただけで……オエェ」

冬馬「は、吐くほどだなんてっ!」

P「す、すまん」

冬馬「だが、こんなにお前が身を粉にして頑張ってるのに、当のプロデュースされるあいつらがあれかよ! なんか頭にきたぜ!!!」

P「い、いいんだ冬馬! 全部俺が悪いんだ!」

冬馬「ガツンと一言言ってきてやる!」ガタッ

P「や、やめろ!! そんなことしたら……!!!!!!」


冬馬「…………」

ズーン

P「な、そんなに落ち込むな……。状況が悪かったんだ……。お前が悪いんじゃない」

冬馬「…………」

P「むしろお前はよくやったよ……。胸を張っていい! そうだ! 男の勲章だぞ、その頬の腫れは!」

冬馬「……は、初めてだったんだ。同い年ぐらいの女子と、直接喋ったことなんて……。ファンの女どもはあくまでどちらも互いに遠くから眺めるだけ。だから……」

P「と、冬馬っ! お前!」

冬馬「それが、それがこんなのってないぜ……。こんなの辛すぎるぜえええ……オエェ」

P「は、吐くほどだなんてっ!」

冬馬「す、すまねぇ」

P「無茶しやがって……。今は……安心して俺の胸で泣け……」

冬馬「ず、ずまねぇ……」ズズズッ





P「…………というわけなんだ」

冬馬「なるほど。恋愛がらみか……。そりゃ難しいな。俺も経験があるぜ」

冬馬(ギャルゲでな!)

P「そうだろ。まぁだから仕方ないんだ」

P(冬馬……。さっき女と喋ったことないって……)

P「でもまぁ、それでStealSの結束は強まったから、俺はいいんだ。あいつらの夢さえ叶えば」

冬馬「そっか。アンタ、良い奴なんだな。あんなに嫌われてんのに、それでも必死にプロデュースするのを止めない」

P「どうなんだろうな。せめてもの償いのつもりなのかもしれない。自分を納得させるための、エゴに満ちたな」

冬馬「そんなことねぇよ。お前は良いことをしてる」

P「……ありがとう」


冬馬(そっか。なんか女性アイドルのプロデューサーって言ってたからリア充の類かと思ってたが)

冬馬(意外とこいつは同じ穴のムジナなのかもな! 気が合いそうだぜ!)


冬馬「困った時や苦しい時はいつでも俺に言えよな。こんな俺でも心の支えぐらいにはなってやれるぜ!」


美希「ハニー!」ダキッ

P「み、美希!? いいのか?」

美希「うん! 春香も雪歩も奥の方でワッフル焼いてもらってるから大丈夫!」

P「目の前で焼いてくれるあれか?」

美希「うん! しばらく時間かかるらしい。だから今はハニーと好きなだけイチャイチャできるよ!」

P「み、美希……」

美希「ごめんね、ハニー。ミキ、二人の前では話合わせないとだから……。でもミキはハニーのこと愛してるよ!」

P「美希……もうお前だけが心の支えだよ……」ウルウル


冬馬「ばっ……ばっ……」

P「ん? どうした冬馬?」

冬馬「爆発しろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」

終わり

次!

――――貴音の謎に迫る!――――


美希「……貴音。謎が多い女なの」

美希「貴音が、貴音のことが気になって夜も眠れないの!!」

――――――――――――――――――――

先日

美希「貴音! この前はありがとうなの!」

貴音「礼には及びませんよ」

美希「ねぇねぇ、あの時間移動の力ってどうやったの? ミキ気になって仕方ないの!」

貴音「それは……トップシークレットです」ドヤァ カッ

美希(た、貴音からすごいオーラが! すごいドヤ顔がああ!!)

――――――――――――――――――――

響「それで自分のところに来た……と?」

美希「響は貴音と仲良いでしょ?」


響「そ、そうだけど」

美希「ね! だから協力して! 貴音の張り込み密着調査24時!」

響「ええっ! や、やめようよ! 貴音にそれは悪い気がするぞ!」

美希「でもそれじゃあ貴音の秘密がいつまで経っても……」

??「ふっふっふっふっふ……。張り込み調査と言えば探偵の仕事。探偵と言えば、この私をお忘れではないですかな?」

美希&響「誰!?」

真美「私だ……」

美希「お、お前だったのか!?」

響「まったく気づかなかったぞー!!!」

真美「暇を持て余した」

美希「神々の!」

響「あ・そ・び」

貴音「何をやっているんです?」


美希「ひぃ!!」

響「じ、自分たち、なにも企んでなんかないぞっ!!」

真美「お、お姫ちんを密着で監視するなんてそんなことする訳ないっしょっ!!!

貴音「…………何をたくらんでいるのか知りませんけど、余計な詮索はしないことです。でないと……」ニヤァ

貴音「大変なことになりますよ?」

三人「ひ、ひぃ~!!!」


響「だ、だからやめようって言ったんだよ!」ブルブル

美希「だ、だめなのミキ……。ここで引き下がったら……」ブルブル

真美「あ、亜美……。真美は相当ヤバいことに首突っ込んじゃったっぽいよ……」ブルブル

響「あ、真美、そういえば亜美は?」

美希「いつも一緒なのに」

真美「……亜美は置いてきた。はっきり言ってこの闘いにはついて来れない」

美希「竜宮小町のお仕事が忙しいんだね……」


響「とりあえず、貴音を詮索するのはもうやめにしよう」

真美「うん! 真美的にもちょっと残念だけど、この事件は迷宮入りがいいって思う」

美希「……もう、遅いよ」

真美「え?」

美希「ミキね、今日朝やる気満々すぎてね」ブルブル

響「……!」

美希「貴音のバッグの中に盗聴器しかけちゃったの」ガクガクブルブル

真美「……さっきので、真美達三人が何か企んでるってのはすでにバレてる!」

響「何かあれば自分ら三人がやったってすぐ分かっちゃうぞー!」

美希「そう。もう、後には引けないってことなの…………!!」


美希「もう貴音は仕事に行ったの。おそらく今日は事務所に帰ってこない」

響「つまり盗聴器を回収できるのは明日ってこと?」

美希「そう。物的証拠がある限り、ミキ達に平和は来ないの。だから、盗聴器を何事もなかったかのように回収し、ミキ達は何もしてないと言い通すの! 名付けて……」

美希「オペレーションTAKANE!!」

真美「あんまかっこよくない!!!」


響「とりあえずじゃあ明日の朝一に集合ってことか?」

美希「そう。そして貴音が事務所にやって来次第、……ミッションを開始する!」

真美「オ、オペレーションじゃなかったの!!?」

美希「まずフェイズ1にて響と真美は貴音を引き付ける。出来るだけバッグから遠ざけて」

響「わ、分かった!」

美希「そしてフェイズ2でミキが貴音のバッグから、盗聴器を抜き取る! それ以降は貴音に何を聞かれても『何もしてない』の一点張りなの!」

真美「な、なんかミキミキが頼りになる!」

美希「一年皆より多く経験したからなの!」

響「種を撒いたのは自分だけどな」

美希「うっ……」


美希「とりあえず、ここは協力してピンチを脱する時なの!」

響「ああ。そうだな。絶対全員で生き残るぞ!」

真美「どんな時だって、真美達三人は仲間だ」

美希「絶対に裏切ったり、見捨てたりしない!」

響「死ぬときは皆一緒さー!」

真美「団結した真美達に、怖いものはなにもないYO→!!!」

美希「じゃあ行くよ! せーの」

三人「ファイト! おー!!」



美希(せっかく仕掛けたから一応聞くの)

美希(貴音の声? いや、違う!!)

美希(しかも一人だけの声じゃない……。貴音以外に、かなりたくさんの人間がいる)

美希(時刻はもう12時を回っているの!)

美希(こんな時間に何を!? 事件の臭いなの!)

美希(……っ! この声、聴き覚えがある!)







美希「…………これ、ダウンタウンの浜田の声なの……!!!!」

美希「って深夜バラエティ見てるだけか!!」


翌朝

美希(遅くまで盗聴してたせいで寝過ごしちゃったの。みんなごめんなの!)

美希「おはようございますなの! 二人とも遅れちゃってごめんなの」ガチャ



貴音「――――おそかったですね。美希」

美希「た、貴音!?」


そこには手と足を完全に拘束され、目を塞がれた響と真美がいた。

美希「ひ、ひどい! なんてことを! これじゃまるでタリバンに捕まったアメリカ人記者なの!」

美希「二人とも大丈夫!!」ダッ

貴音「無駄ですよ、美希。今の二人には私以外のどんな声も届かない。そうしてあるのです」

美希「くっ! 卑怯者!!」


貴音「卑怯者……ですか。その卑怯者が誰かを今から確かめましょうか」

美希「どういうことなの?」

貴音「響、私の声が聞こえますか?」

響「た、貴音ぇ! 許してくれ! 自分が悪かったぞ!」

貴音「響……反省しているのですね。では、もしこの質問に答えてくれたら、響を許してあげましょう」

響「ほ、ほんとか! よかった、よかったぞ!」

貴音「ええ。響。私の鞄に、盗聴器なるものを仕掛けたのは誰ですか?」

響「そ、それは…………」

貴音「教えてください、響」

響「い、いくらなんでもそれは無理さー! 自分は絶対言わない!! 絶対に仲間を裏切らないって誓ったんだ! そんな簡単に仲間を売る訳ないぞ!」

貴音「そうですか」


貴音「今、同じ質問を真美にしているのですが、響と同じようになかなか答えてくれなくて」

響「当たり前だろ! 自分たちの結束は完璧だからなー!!」

貴音「だから、二人のうち先に質問に答えてくれた方だけ、許してあげることにしようと思います」

響「……っ!」

貴音「代わりに言うのが遅かった方には、きつーいお仕置きを用意しなきゃいけませんね」


美希(やられた!! これは!!)

――――囚人のジレンマ

有名な自白の取り方だ。
それぞれお互いを認識できない状況で、二人に自白の早い者勝ち競争をさせる。
それはまさに強い絆をあざ笑うかのように相手を締め付ける。卑劣な拷問。

貴音は響に言ったのと全く同じことを、真美にも囁いた。


響(真美だって絶対、仲間を裏切ったりしないはずだ! だから自分も信じる……)

響(待てよ……。だけど真美はああ見えてずるいところとか適当なところあるし……)

響(律子から二人が逃げてるところとかから推察すると、絶対にお仕置きとかは受けたくないタイプだ)

響(うん。やっぱりよく考えるとお仕置きを回避するためには手段を厭わない……そういうやつだ)

響(もしかしたら早々に自白しているかもしれない……)

響(いや、だけどまだ自分はお仕置きされてないぞー? ってことは、まだ真美は自白していないってことだ)

響(でも……今まさに自白しようとしているところかもしれない)

響(そしたら貴音のお仕置きを受けることになるのは……自分……)

響(なら先手を打って自白してしまった方が得なんじゃないか?)

響(もう悩んでる時間なんてない……こうして考えている一瞬のタイミングで真美が自白するかもしれない!)

響(ど、どうすれば……もうこれしか手段は……)


時間にして数分
二人がどれほどの不安と焦りに苛まれながら、友情と自己愛を天秤にかけているかが、遠くから見つめている美希にも手に取るように分かった。
苦悩に歪む二人の表情。
見ていられなかった。

昨日の約束を思い出す。

――――どんな時だって、真美達三人は仲間だ
――――絶対に裏切ったり、見捨てたりしない!
――――死ぬときは皆一緒さー!

――――ファイト! おー!!


二人はあの約束を守るために、必死に戦っているのだ。
すぐに自白すれば心も罪も軽くなる。だが、二人は逃げずに重圧を背負い込み、今まさに戦っているのだ。

それなのに自分は何をしている?

二人を巻き込んで、そのくせ遅刻して、挙句今は立ち尽くしているだけ。

聞いてあきれる。なにが――――仲間だ


響「た、貴音ぇ」

真美「お、お姫ちん」

二人が口を開いたのはほぼ同時だった。

貴音「どうしました? やっと言う気になりましたか?」

響「ああ。言う。言うから!」

真美「真美を助けて!!」

貴音「じゃあ、せーの、という掛け声に合わせて、犯人の名前をいうのですよ」

貴音「それじゃあ。せーの」


美希「――――待てなの!!!!!!」


美希「二人は、もう頑張った。死ぬほど頑張ったと思うの……。だから、もう許してあげて……。二人の名誉を汚さないであげて……」

美希「盗聴器を仕掛けたのは、ミキだから!!!!!」

貴音「……よく言えましたね」

美希「だから、二人を解放してあげてなの」

貴音「分かりました」

貴音「響、真美。終わりましたよ。二人は何も悪くなんてなかった。だから、お詫びに二人が味わった恐怖も苦悩も辛さも、全部忘れさせてあげます」

貴音「ごめんなさい……二人とも」ボソッ


ドサッ

美希「ふ、二人とも大丈夫!?」

響「う、うう。なんか悪い夢でも見ていたみたいだぞー」

真美「なんか頭痛いよ→」

美希「よ、よかった。無事なんだね」

響「う、うん。特に大丈夫だけど」

真美「そんなことより姉ちゃん誰?」

美希「……っ!」

貴音「これが、あなたへの罰です」

美希「そ、そんな……」

美希の顔は青ざめていく。ついにはその場にへたりこんだ。
それは恐怖故ではない。悲しみ故ではない。
絶望故だった。
せっかく悲しい想いを乗り越えて手に入れた安穏の日々を。
仲間と共に楽しくトップアイドルを目指せるはずのこの日々を。

自分はちょっとした好奇心で、捨ててしまったのだ。

美希「…………」

貴音「分かりましたか? 好奇心は、猫をころすのです」

パチンッ

貴音が指を鳴らす。

貴音「分かったら二度と余計なことに首をつっこまないのですよ」

そのまま貴音は事務所から出ていった。


響「美希、どうしたんだ? そんなところに座り込んで?」

美希「え?」

真美「そだよー。スカート汚れちゃうよ?」

美希「ふ、二人とも、ミキを憶えてるの?」

響「当たり前さー! ここ一時間くらいの記憶はちょっとあいまいだけど……」

真美「ミキミキのことは、忘れろって言われても忘れられないYO→」

響&真美「だって私たちみんな……」

美希「仲間だもんげ!」

三人「あはは!」

翌日

春香「ねえ、貴音さんってさ、凄い不思議な雰囲気だよね」

亜美「亜美気になって仕方ないよ→」

春香「じゃあさ、この三人で密着調査しない? 探偵みたいに!」

亜美「いいねえ! 探偵と言えばこの美少女探偵双海亜美を忘れちゃいけないYO→」

春香「よーし、盛り上がってきたあ!」

美希「ぜ、ぜったいにヤなのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」


こんどこそ本当に終わり!


けっこうスピード上げて投稿してもおさるさんひっかからないんだな。
最初ビビりすぎてて時間喰ったわ。

最初はあの花みたいな物語を書こうと思って、あの花を意識して書いてたんだがこんなことになってた。


とりあえず最後までみんなありがとう。乙。

このスレはもう落としてもらって構わないので。
次があったらまたよろ~。

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