ルルーシュ「世界よ…我に従え!」スザク「」(205)

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■最終話 ダモクレス制圧直後 ─────

 ルルーシュ「我が覇道を阻む者はもはや存在しない……」
        「そう、今日この日、この瞬間を以て、世界は我が手に落ちた!」

 ルル「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる……」
    「世界よ……我に従えッ!」バッ!!

 ジェレミア「オール・ハイル・ルルーシュ!」

 ブリタニア軍「オール・ハイル・ルルーシュ!」
         「オール・ハイル・ルルーシュ!」
         「オール・ハイル・ルルーシュ……」

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■ダモクレス 空中庭園 ─────

 ルル「C.C.、戻ってきたか!」
    「俺はついに成し遂げたぞ、世界制覇を!」フハハハ

 C.C.「そうだな……」カツカツ
    「お前が無事でよかったよ、ルルーシュ……」

 ルル「カレンとジノの追撃にはややあせったが、スザクもいたしな」
    「そう困難な状況でもなかった……うむ、ジェレミアも来たか!」

 ジェレミア「……陛下、」カツカツ
       「そのことで、申し上げねばならぬことが……」

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 ルル「ん、どうした?」

 ジェレミア「その……」…チラッ

 C.C.「……」…チラッ

 ルル「なんだ、もったいぶって?」

 ジェレミア「……枢木卿が戦死しました」

 ルル「……フッ、そういう冗談で笑うほど、俺は勝利に酔ってはいない」
    「今後の予定を詰めなければならん、スザクもここに呼べ」

 C.C.「……『届きすぎだよ、カレン』というのが奴の最後の通信だった」
    「おそらくカレンに負けたようだな」

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 ルル「…………ギアス持ちのスザクが、戦闘で死ぬわけなど」

 ジェレミア「ランスロットの残骸からは、枢木卿の遺体が発見されました」
       「腹部に、紅蓮の右腕の破片が突き刺さっておりました」

 ルル「…………」

 C.C.「……冗談ではないんだ、残念ながら」

 ジェレミア「陛下、ゼロレクイエム計画への影響が……」

 ルル「……問題ない、」

 ジェレミア「陛下……」ホッ

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 ルル「ゼロの役はC.C.がやれ」

 C.C.「え?それは無理だろう?」
    「背も低いし、私はスザクほどの運動能力もない」

 ルル「お前ならパレードの護衛兵に撃たれまくっても大丈夫だ」
    「這いずってでも壇上に上がって俺を刺せ」

 ジェレミア「陛下、それはさすがに不自然すぎますぞ!」

 ルル「ならばジェレミア、お前が」

 C.C.「ガタイが違いすぎるぞ?」
    「それにギアスキャンセラーがジャマで仮面が被れないだろう」

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 ルル「……ロイドならよかろう、ロイドを呼べ」

 ジェレミア「確かに彼も我々の計画に賛同しましたが、」
       「C.C.様と同様に最初の掃射で粉みじんになるかと……」

 ルル「セシルはどうだ!?」
    「というか誰でもいい、こうなれば『生きる』ギアスをかけてでも……!」

 C.C.「無理だよ、坊や……」
    「たとえスザクと同様のギアスをかけたとしても、運動能力が伴わない」
    「奴のアレは、常人の域を超えてたからな……」

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 ルル「……」

 ジェレミア「陛下……」

 ルル「…………フッ、」
    「フフフ……フハ、フハハハハハハ!」

 C.C.「坊や……」

 ルル「フハッ、ハハハハハアハハハハハハ!」
    「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

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 ジェレミア「へっ、陛下ッ!」
       「まさか狂気がマッドネス!?」

 C.C.「おい、大丈夫か坊や!?」

 ルル「アハハハハハッハハハハハハアハハハハハハハハ!」
    「ヒーッヒヒヒヒハハハハアハハッハハハハハ!」

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~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 ルル「……ハアッ、ハアッ……」

 C.C.「……落ち着いたか」ナデナデ

 ルル「くそッ、計算ではスザクがカレンに殺されるわけがなかった!」
    「なぜだ、なぜ死んだスザク!」

 ジェレミア「紅月カレンとの戦闘は熾烈を極めていたそうです」
       「ほんのわずかの差であった、と……」

 ルル「おのれ……肝心なゼロがいなくては、この計画は崩れ去ってしまうではないかッ!」
    「スザク……おのれスザク!最後まで俺の邪魔を……ッ!」ギリッ…

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 C.C.「それはさすがにかわいそうだと思うぞ」
    「奴もわざと死んだわけではあるまい」

 ジェレミア「陛下……」
       「計画の修正をするしかないのでは……」

 ルル「ああ、今考えている……くそッ!」

 C.C.「…………」ジー

 ルル「……む、待てよ?」
    「そうか……手駒が増えているじゃないか、今は」

 ジェレミア「手駒、ですか?」

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 ルル「そうだ、何もブリタニアの人間から選ぶ必要はない」
    「今や、騎士団や中華連邦の連中も選択肢に含まれる」
    「フフ、助かったぞ……やはり、世界制覇はしておくべきものだな」

 ジェレミア「しかし彼らのうちの誰にしろ、陛下の意向を汲んで、」
       「ゼロに成り代わってくれるとは思い難いのですが……」

 ルル「問題ない、最悪の場合でも、ギアスで言いなりにさせればいい」
    「それに、実はすでに目星はついている」

 ジェレミア「そうなのですか?」

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 C.C.(……まさか)

 ルル「ああ、この事態に対し、責任を取るべき奴がいるだろう?」ニヤリ
    「ジェレミア、早速だが椅子を二つと、それと一緒に……」

 C.C.(……やめた方がいいと思うが……)

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~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 ルル「……連れてきたか、その椅子に座らせ、拘束しろ」ニヤ
    「もう一つはこっちに」

 ジェレミア「ハッ」

 カレン「……ルルーシュ……」キッ

 ジェレミア「皇帝陛下とお呼びしろ、紅月カレン!」

 ルル「よい、少し二人で話をしたい」
    「ジェレミアとC.C.は、庭園の外で控えていてくれ」

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 ジェレミア「イエス、ユアマジェスティ」カツカツ

 C.C.「……」テクテク

 ルル「……さてと、」…ギシッ
    「とんでもないことをしてくれたな、カレン……」

 カレン「それはこっちのセリフよ!」
     「何が世界制覇よ……くだらない……!」

 ルル「世界制覇は手段に過ぎなかった」
    「さらにその先の目的があったのだが……」ジロッ
    「……お前に邪魔をされた」

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 カレン「邪魔?わたしが何をしたっていうのよ!?」
     「まあ別に知りたいとも思わないけど……いい気味だわ、」
     「せいぜい悔しがるがいいわ」フン

 ルル「いいや、そう悔しいってわけでもないのだよ」
    「……代わりに、お前に手伝ってもらうことにしたからな」

 カレン「はっ、誰が!」
     「嫌よ、あんたの手伝いなんか、絶対にお断りよ!」プイ

 ルル「………………」
    「断れると、思うのか……?」ジッ…

 カレン「!」ビク

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 ルル「……俺の"力"の前では、お前には選択肢など存在しない……」
    「断ってみせるか?どこまで抵抗できるか、試してみるか?」ジー…

 カレン「……な、何よ……!」
     「そんなの……!」ブル…!

 ルル「従わないなら、騎士団の連中を皆殺しにしてもいいんだぞ?」 
    「あるいは、お前の母親も道連れに……」

 カレン「!!!!」キッ!!
     「ひっ……卑怯だ…………!」
     「あんた、やっぱり最低の皇帝だ……!」ギリッ…

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 ルル「……」ジー

 カレン「…………」
     (わたし……結局こいつに勝てないの……?)
     (くそっ、なんでわたし、こんな奴が……悔しい……っ!)ポロ…

 ルル「……手伝う内容は、ごく簡単なものだ」
    「俺を刺し殺せ」

 カレン「……」

 ルル「……」

 カレン「…………はあ?」キョトン

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~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 カレン「……何よ、それ……何なのよ……」
     「あんたが死ぬための計画?……ふざけてんの……?」

 ルル「俺が死ぬためじゃない、」
    「世界から争いごとを無くすための計画だ」

 カレン「スザクがゼロになってあんたを殺すはずだった……」
     「それを、わたしが台無しにしちゃった、と……」

 ルル「そういうことだ」
    「ただの暗殺ではダメだ、公衆の面前で、正義の象徴が悪逆皇帝を刺す、」
    「これで初めてカタルシスが得られるんだ」

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 カレン「……スザクは死んだことになって、ゼロとして生きる……」

 ルル「奴には身寄りもいないから好都合だったしな」
    「それに、奴もその身を世界平和に捧げてくれると誓っていたんだ」
    「それをカレン、君が……ッ!」ギロ

 カレン「……なら、最初から説明しなさいよ」
     「あのスザク相手に、手加減できるわけないでしょ」フン

 ルル「説明できるわけないだろう」
    「史上最大の茶番劇だ、真実を知る者はこれ以上増やせない」

 カレン「……茶番劇だっていう自覚はあったのね……」
     「ほんとに、こんな話、聞いたことないわよ……」

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 ルル「そうだろうな、世界初の試みなのは間違いない」

 カレン「……あんた、騎士団にいた頃から、」
     「ずっとこんな馬鹿なことを考えてたの?」

 ルル「ああ、ずっとだ」
    「明確な形になったのは、騎士団を追われる少し前だがな」

 カレン「……あんた、馬鹿なの?」

 ルル「……ああ、馬鹿だ」

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 カレン「……」ジー

 ルル「……」ジー

 カレン「…………ねえ、ルルーシュ」

 ルル「なんだ?」

 カレン「あんた、どう思ってんのよ?」

 ルル「何がだ?」

 カレン「……わたしの気持ちよ……」
     「クラブハウスでのこと、忘れたとは言わせないわよ……」

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 ルル「…………感謝している」

 カレン「……感謝?」ピクッ
     「感謝ですって?」

 ルル「いけないのか?」

 カレン「……いけないっていうか、おかしいだろっ!」ガバッ!!

 ルル「なッ!縛りつけた椅子ごと立ち上がっただと!?」ギョッ!!

 カレン「あんたが好きなのわかってるのに、あんたを刺せですって!?」
     「できると思ってんのおっ!?」ブンブン!!

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 ルル「ぐあ!」バキツ!!
    「やめろ、椅子を振り回すなッ!」
    「それに、さっきまでは俺を殺す気満々だったじゃ……」

 カレン「さっきはさっきよ!!!」バキイッ!!
     「そんな話聞いて、殺せるわけないでしょ!」ドカッ!!

 ルル「ぐお!げは!」ドタッ!!
    「フッ、ふふ、そうだその桁違いの運動神経……!」ゲホゲホ
    「カレン、お前はまさにスザクの代わ……」

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 カレン「知るかあっ!」ドカア!!
     「そんな計画、させないからね!」
     「あんた生き残んなさいよ、絶対に!死ぬな!生きろ!」バキ!!
     「生きないなら今殺してやる!」ボカバキボカ!!

 ルル「まっ……待ってくれ……死ぬ……死にそうだ……!」ドカバキドカバキ
    「今死ぬのはまずい……やめてくれ……頼みます……!」バキドカバキドカ

 ジェレミア「騒々しいな、一体何事……へっ、陛下アアッ!?」ドダダダ!!

 C.C.(……こうなるんじゃないかと思っていたよ)テクテク

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■数日後 ─────

 ジェレミア「……陛下、お身体はもうよろしいのですか?」

 ルル「うむ……いつまでものんびりとしていられないからな」
    「……いてて……」
 
 C.C.「よりによってカレンに話すとはな……」
    「ルルーシュ、お前はたまに、IQがゼロになる瞬間があるよな」

 ルル「……他の人間には、計画を包み隠さず話して賛同を得た」
    「彼女だけ、理由も言わずに道具として使うわけにはいかん」

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 C.C.「皇帝になっても、そういう融通の効かないところは全く変わらないのだな」

 ルル「……フン」

 ジェレミア「とりあえず、紅月カレンには他言無用を言い含めて独房に繋ぎました」

 ルル「ああ、それでいい」
    「……しかし、スザクの代わりが全くいないのはどうしたものか……」

 ジェレミア「咲世子はいかがでしょうか?」
       「彼女なら、スザクに近いレベルの運動神経がある上に変装も得意です」

 ルル「実は、この数日寝てる間に、看病に来ていた彼女にも言ってみた」

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 ジェレミア「そうだったのですか」
       「咲世子は何と言っておりましたか?」

 ルル「うむ……まあ……」
    「結果は、ノーだった……」

 ジェレミア「そうでしたか」

 C.C.(…………)ジー

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~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 ルル(咲世子、少し話がある)

 咲世子(なんでしょうか?)

 ルル(済まないが、ゼロに変装し俺を刺してくれ)

 咲世子(わたくしでよろしければ……)

 ルル(済まない、最後まで迷惑をかけるな)

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 咲世子(ですが、その前にひとつだけお願いがございます)

 ルル(なんだ?)

 咲世子(……陛下……いえ、ルルーシュ様……)ポロ…

 ルル(……咲世子……泣くことはない)
    (これで世界は平和に)

 咲世子(いえ、そうではないのです……)
      (……この想い、墓の中まで秘めておく決意でした……)シュル…

 ルル(……なっ、何をッ!?なぜ服をはだける!?)

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 咲世子(ですが、私自らが貴方様を殺せというご下命で、決意が砕けました……)
     (ルルーシュ様、以前からお慕い申し上げておりました……)シュ、シュルッ

 ルル(まッ、まま待て咲世子ッ!)
    (寝床に入ってくるな、こらッ!)

 咲世子(愛する貴方様を刺し貫けというご命令、)
      (それを完遂するだけの勇気を……お情けを、わたくしに……)サワサワ

 ルル(ちょっと待て、待つんだ!やめろ、待って、待ってくれ!)

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 咲世子(ルルーシュ様……)
      (愚かな咲世子をお叱りください……)ギュッ

 ルル(NOOOOOOOOOO!!)

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 C.C.(様子を見にいって、あんなに面白い場面を拝見できるとは思わなかったな……)
    「……で、童貞は卒業したのか?」

 ルル「なッ……!」ギョッ!!
    「何を言い出すお前はいきなり関係ないことをッ!」

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 C.C.「関係ないか?」
    「まあ、その様子だとまだのようだな」ニヤリ

 ルル(さては、見られたのか!?くそッ……!)

 ジェレミア「しかし、咲世子もダメでしたか……」
       「他に候補といえば……」

 ルル「ゴホン……うむ、いないのだ」
    「これまでの人生も、人並みの幸せも全てを捨てて、」
    「今後一生をゼロとして生きることができる人間がそもそもいない」

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 C.C.「ブリタニアの側近にはいないとして……」

 ジェレミア「藤堂はいかがでしょうか?」

 ルル「千葉が暴れるだろう」

 C.C.「星刻は?」

 ルル「じき死ぬだろう」

 ジェレミア「では扇は?」

 ルル「ちょっと心が動いたが、奴も人並みの幸せを掴む権利はあるからな」

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 C.C.「玉城は?」

 ルル「人物像としては妥当なんだが、運動能力がな」

 ジェレミア「南は?」

 ルル「太すぎだろう」

 C.C.「ジノは?」

 ルル「でかすぎだろう」

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 ジェレミア「ギルフォードは?」

 ルル「目がみえないだろう」

 C.C.「ふむ……そうだ、シュナイゼルは?」

 ルル「ゼロレクイエム後の政治で必要だ」

 ジェレミア「カノンは?」

 ルル「それも人物像はともかく、運動能力がな」

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 C.C.「……いないじゃないか」

 ルル「だから困っているんだ!」

 ジェレミア「困りましたなあ……」

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~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 C.C.「……あまり贅沢を言ってもしようがないだろう」
    「この際、計画を変更すべきじゃないのか?」

 ルル「ふむ……例えば?」

 C.C.「要求される運動能力が高すぎるのが問題だろう」
    「つまり、パレード中に襲撃するというシナリオを変えるんだ」

 ルル「カタルシスが必要だぞ?」

 C.C.「わかっているさ、坊や」
    「TV局での生放送の最中に、というのはどうだ?」

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 ジェレミア「ふむ……それなら、ナイトメアもいませんな」
       「さほどの運動能力がなくとも暗殺できた、という名目は立ちそうです」

 ルル「一応、公衆の面前ということにはなるか……」
    「だがヤラセの疑惑は持たれるだろう」

 C.C.「全盛期の独裁者が、自分の死を偽装する理由はないだろう?」

 ルル「……まあな」

 ジェレミア「ですが、TV局で事を起こすとなると、凶器が限定されますな」
       「計画にあった、身の丈ほどもある長剣は、まず持ち込めないでしょう」

 ルル「うむ……見栄えが劣るが、ナイフなど携帯できるものに変えるしかなかろう」

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 C.C.「ルルーシュ、ゼロに変装するのは、局内ということになるのか?」

 ルル「そうだな……」
    「む、ということはゼロの衣装をケースに入れて持ち込まないとならん」

 C.C.「大きなものは、所持品検査をされる可能性があるぞ」

 ジェレミア「衣装は、我々が持ち運んでおくというのはどうでしょうか?」

 ルル「ふむ、どうやってだ?」

 ジェレミア「当日の番組を工夫するのです」
       「『テロリスト・ゼロ』という特番でも作り、スタジオの展示品ということで……」

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 ルル「それはさすがに難しいだろう」
    「第一、なぜブリタニアがゼロの衣装を持っているのか、ということになる」

 ジェレミア「そうですか……」

 ルル「警備員に、衣装ケースは見逃すようギアスをかける手もある」
    「そこはどうとでもなるだろう……む、いかん」

 ジェレミア「何事でございましょう?」

 ルル「俺が殺された直後、民衆が蜂起しブリタニア軍が引く、という演出ができんぞ」

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 C.C.「必要なのか?」

 ルル「ああ、TV局だと、番組を見ていた民衆が……ということになる」
    「革命の演出としてはかなり弱いぞ、これは」

 ジェレミア「なるほど……臨場感の問題ですか」

 ルル「そうだ」
    「民衆の怒りに怯むブリタニア、という演出は絶対に必要だ」

 C.C.「……各地にサクラを仕込んでおくのはどうだ?」
    「放送中にお前が殺された途端、租界の各地でサクラが表に出て、」
    「口々にブリタニア打倒を叫ぶ……」

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 ルル「それは……ちょっと間抜けな絵面じゃないか?」

 C.C.「革命はだいたいそんなものだぞ?」
    「統制などない、散発した暴動が合流して大きなうねりになるものだ」
    「少なくともフランス革命はそういう感じだったぞ」

 ルル「……お前にそう言われると、反論しがたいものがあるな」
    「だが、別にリアルな革命にしたいわけじゃない、あくまで演出だ」
    「"我々が悪を倒した"と民衆に思わせればいいだけだ」

 ジェレミア「だから、当初の計画であったわけですな」

 ルル「そうだ……そうだったのだがな……」

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 C.C.「修正案をまとめると、こうなるぞ?」

  1: ルルーシュがTV局の生番組(インタビュー系か?)に出演
  2: ゼロ役はトイレなどで着替える(候補は未定)
  3: スタジオに突如ゼロが現れる
  4: 護衛やTVスタッフを押しのけ、カメラの前でルルーシュと対峙
  5: ポケットからナイフを取り出し、ルルーシュを刺す
  6: それと同時に、租界各所でサクラが打倒ブリタニアをシュプレヒコール
  7: ブリタニア崩壊

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 ジェレミア「……恐れながら申し上げると、ややチープかと」

 ルル「俺もそう思った、ドラマ性が随分とそぎ落とされてしまっている」
    「それに、6:から7:に展開するかどうか、かなり怪しい」

 C.C.「いいアイデアだと思ったのだがなぁ……」

 ルル「ふう……しばらく一人で考える、また後で検討しよう」

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彡 ⌒ ミ 
(´・ω・`) ひと段落であります!

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■カレン独房 ─────

 カレン(……ん?誰かの足音……?)

 ルル「……」カツカツ…ピタ

 カレン「…………何の用?」

 ルル「……様子を見に来ただけだ」

 カレン「あっ、そう」フン
     「どうしてわたしだけ独房に移したの?」

 ルル「万が一にも、他の連中に話されると困るのでな」

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 カレン「話さないわよ、あんなバッカバカしい話……」

 ルル「……バカバカしい話、か」フッ…

 カレン「……」ジー…

 ルル「……正直、計画は手詰まりの感だ」
    「思わぬ形で、君に負けたようなものだな」

 カレン「……ルルーシュ、」
     「その計画って、騎士団を追われる前後に、って言ったわよね?」

 ルル「ああ、そうだ」

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 カレン「……フレイヤで、ナナリーが死んだと思ったことが引き金に?」

 ルル「…………そうだ」

 カレン「そう……やっぱり、そうなんだ」
     「……ナナリーは生きてたけど、それでもまだする気なの?」

 ルル「計画を始めた時点で、ナナリーの生死は既に関係なくなったんだ」
    「もはや、後戻りはできない、できる立場にない」
    「……カレン、もう一度聞く、協力する気はないか?」

 カレン「…………協力してもいいけど、」

 ルル「ほう……?」

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 カレン「あなたが死なない計画ならね」ジッ…

 ルル「……」
    「君の考えはわかった、それでは……」カツカツ

 カレン(…………なんで、)
     (どうして……そんなに死にたがるのよ……)

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■皇帝の部屋 ─────

 C.C.「……ソファに寝転んで、まだ悩んでいるのか、ルルーシュ」テクテク

 ルル「ああ……」
    「無くしてから、初めてわかることって、あるのだな……」

 C.C.「……」テクテク…モスッ

 ルル「……自分がどれだけ奴の、薄汚いドブネズミのような並外れた生存能力に、」
    「過大な期待をかけてきたか、って……」

 C.C.「貶すのか褒めるのか、どちらかにしろ」

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 ルル「スザクとは愛憎究る関係だったからな、これが正直な気持ちだ」

 C.C.「ふふ、面白い奴だよ、本当に……」
    「ルルーシュ、苦悩するお前のために、助っ人を呼んできたぞ」

 ルル「助っ人……?」ギロ

 C.C.「ああ、大変に強力な助っ人だ」
    「入っていいぞ」

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 ??「……話は聞いた」ガチャ
    「ルルーシュ……いや、ゼロ、この藤堂鏡志郎に任せろ」カツカツ

 ルル「……とッ、藤堂だとおッ!?」
    「シイツウウウウッ!貴様、何を考えているッ!?」

 C.C.「味方にすれば、これほど頼りになる奴もいまい」
    「話したら、案外にすんなりと理解を示してくれたぞ?」

 藤堂「ルルーシュ……そしてスザク君の真意、」
    「今の今まで見抜けなかったのは私の一生の不覚だ」
    「わかっていれば、君を騎士団から追放しなかった……」

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 ルル「藤堂……」

 藤堂「志に殉じるその心意気、感服つかまつった」
    「案じることはない、他言はせん」

 ルル「……聞いてしまったのなら仕方がない」
    「否応もなく、計画遂行に協力してもらうぞ」

 藤堂「元よりその覚悟!」
    「藤堂鏡志郎、君の一世一代の大立ち回りに全力を尽くそう!」

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~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 ルル「……さて、」
    「問題点はすでにわかっていると思うが……」

 藤堂「うむ、スザク君の役割があまりに特化しすぎていて、」
    「他の誰もその役割を代行できない、ということだな」

 ルル「そうだ、そのための計画変更はやむを得ないとしても、」
    「それと同時にカタルシスという目的も決して外せない」

 藤堂「うむ……」
    「ひとつ確認がある、君はギアスをまだ使えるのか?」

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 ルル「ああ、問題ない」
    「より強力になってきたので困っているほどだ」

 藤堂「なるほど」
    「もう一つ確認だ、ゼロとなった者は、」
    「以降も必ずゼロであり続けなければならないのか?」

 ルル「……そこは、こだわる必要もないか、とは思い始めている」

 藤堂「ふむ?」

 ルル「スザクがゼロになる計画だった時は、」
    「奴を一度死んだことにしなければならなかった」
    「ゼロの正体が奴だと知れれば、ただのクーデターになってしまうからな」

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 藤堂「ふむ……そうだな」

 ルル「しかし、それ以外の者がゼロになる場合、条件が変わる」
    「場合によっては、死んだゼロの遺志を受け継いだ者、」
    「という設定でもよいだろう」

 藤堂「ふむ……」
    「パートタイムのゼロもあり、ということだな?」
 
 ルル「ああ、状況が許すならば」

 藤堂「なるほど、わかった」
    「……下調べをするために色々と動く必要がある、」
    「ルルーシュ、私を、命惜しさにブリタニアに寝返った者だと喧伝してくれ」

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 ルル「なにいッ!?」クワッ!!
    「藤堂、君は私のために、自身の誇りをも捨てようというのかッ!?」

 藤堂「フッ、スザク君が私の立場であれば、同じようにしたことだろう」
    「それに……違う、間違っているぞ、ルルーシュ」ニヤリ

 ルル「!?」

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 藤堂「争いのない世界のため……だ」

 ルル「……と、藤堂……ッ!」スッ…

 藤堂「ルルーシュ……!」ガシッ!!

 C.C.(……志を通じた男同士の、固い握手か……ちょっと妬けるな)
    (しかし、藤堂は果たして、どのような奇手を見出すのかな……?)

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彡 ⌒ ミ 
(´@ω@`) 年末wwwwはwwげwwwそwwwうwwww

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■ブリタニアの牢獄 ─────

 千葉「そっ……そんな、馬鹿な!?」

 玉城「あの藤堂が……寝返ッただとおッ!?」
    「デタラメ言ってンじゃねえぞッ!」

 星刻「ぬうッ……!」

 ルル「ああ、彼は心を入れ替えたと言っていた」ニヤリ
    「私のためにその全てを捧げる、とな……」

 ラクシャータ「あいつがねぇ……ちょっと、信じがたい話だよ……」

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 扇「ルルーシュ、貴様、ギアスを使ったなッ!」

 ルル「使う必要などなかったよ……彼は、進んで申し出たのさ」
    「さて、他にもいるかな?私に恭順を示そうという者は……」
    「神楽耶様、いかがですかな、率先して手本をお見せしては?」ニヤ

 神楽耶「私は、悪逆皇帝の思い通りになどなりませぬ……!」キッ

 ルル「牢の中でも矜持を捨てていないようですな……重畳に敬服申し上げる」
    「しかし私の"力"の前では、無駄な努力です……」ジロ

 天子「ひ!…………し、しんくー……!」ビクビク

 星刻「天子様……!」ギュウッ

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 ルル「フフ……フハハハハハハ……!」バッ!!
    「お前たちはもはや、かごの中の鳥だ!私のために、せいぜいさえずるがよい!」
    「フハハハハハハ……」カツカツ…

 千葉「……うそだ……嘘に決まっている……」
    「あの人が……」ポロポロ

 扇「……しかし、藤堂が牢を出てから、未だに戻っていないのは……」

 神楽耶「いいえ、きっと何か戻ってこない理由があるはずです……」
      「私は、藤堂様を信じます!」

 星刻「うむ……私もだ」

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■逃亡者たちのアジトにて ─────

 コーネリア「おい、大変だ!臨時ニュースだ!」カチカチ

 ヴィレッタ「何でしょうか?」
 
 コーネリア「藤堂が、ラウンズ・オブ・ゼロに就任するらしい!」

 ヴィレッタ「何ですって!?」

 南「本当ですか!?」

 コーネリア「街では号外が配られている!」
       「信じがたいが……」カチカチ…ピッ

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 ミレイ『ここ、謁見の間には、元貴族や現職の官吏、地方の諸侯など多数の方々が、』
    『その瞬間を息をひそめて見守っていらっしゃいます……』

    『……あっ、ただいま、亡き枢木スザク卿の後を襲い、新たにラウンズ・オブ・ゼロに』
    『就任される藤堂鏡志郎卿が、謁見の間に見えられました……!』
    『厳粛な空気の中、卿は皇帝の御前まで足を運ばれます……』
    『……いよいよ、ラウンズ・オブ・ゼロの就任式が始まります!』

 ルル『……藤堂鏡志郎……そこにひざまづくがよい』

 藤堂『はっ!』…スッ

.
 ルル『……汝、ここに騎士の誓約を立て、ブリタニアの騎士として戦うことを欲するや?』

 藤堂『……イエス、ユアマジェスティ!』

 コーネリア「なっ……!?」

 ヴィレッタ「なんと……!」

 ルル『……汝、我欲を捨て、大いなる正義のために、剣となり盾となることを欲するや?』

 藤堂『イエス!ユアマジェスティッ!』

.
 ルル『うむ……』 ニヤリ
    『第99代ブリタニア皇帝、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの名において、ここに命ず……』
    『只今を以て、汝、藤堂鏡志郎をラウンズ・オブ・ゼロに任ずる!』

 藤堂『ハッ!』

 ルル『面を上げよ……その顔を、皆の者に見せるがよい』

 藤堂『……』…スック

 ミレイ『ご覧ください!藤堂卿の誇らしげな笑顔を……!』
    『ブリタニアの軍事組織のトップであらせられる皇帝陛下、その直属のラウンズの』
    『中でもトップとなるゼロの呼称を得たのですから……』

.
 藤堂『私が、第2代ラウンズ・オブ・ゼロ……藤堂鏡志郎であるッ!』ニカッ!!

 南「……な、なんて笑顔だ……!」

 ルル『さあ、皆の者……新たなるラウンズ・オブ・ゼロの誕生を祝うがよい!』
    『オール・ハイル・ブリターニアッ!』バッ!!

 観衆『オール・ハイル・ブリタニア!』
    『オール・ハイル・ブリタニア!』
    『オール・ハイル・ブリタニア!』
    『オール・ハイル……』

 コーネリア「一体、どうなっておるのだ……」…ギリッ

.
■皇帝執務室にて ─────

 ルル「……藤堂、一体何の目的で、ラウンズ・オブ・ゼロになったのだ?」

 C.C.「私も気になっていた、どういう理由だ?」

 ジェレミア「……」

 藤堂「理由は二つある」
    「このまま私が、何の役職もなく君の傍にいることは、あらぬ疑いをもたれること」

 ルル「ふむ……」

 藤堂「そしてもう一つは、今後君が為す"悪事"のためだ」

.
 ジェレミア「悪事?」

 藤堂「左様……ルルーシュ、これから君は、ゼロレクエイエムの総仕上げとして、」
    「世界中の人々を苦しめるのだろう?」

 ルル「ああ、その計画だが……」

 藤堂「圧政を敷き民を苦しめるにあたり、君ひとりでは手が回るまい」
    「私も世界を飛び回り、悪事をばらまいてくる」

 C.C.「それは、お前も恨まれることになるのではないのか?」

.
 藤堂「なあに、『皇帝陛下の命に逆らうのか?』の一言で済む」
    「何しろ私は、ラウンズ・オブ・ゼロだからな……」ニヤッ
    「責任は、皇帝陛下持ちで頼むぞ」

 ルル「ふむ……ならばよいが……」
    「くれぐれも、君が恨みを買うことにならないよう、気を付けてくれ」

 藤堂「承知!」

.
彡 ⌒ ミ  次回、「藤堂、覚醒。」
(´・ω・`)  ご期待ください!

おお、去年の内に来てたのか。続き期待
ところで少し気になるんだが、ナイトオブゼロじゃなかったっけ?

>>84
その通りです!めっさはずい!

.
■EUにて ─────

 常任議長「なっ、なんですと!?」

 藤堂「聞こえなかったかな……?」
    「もう一度だけ言う、EUなどという無駄な組織は解体する、」
    「EUの連合軍は全て帝国軍に編入する」

 常任理事「そ、それは……!」
       「加盟国との検討をせぬことには……」

 藤堂「そうやって、責任をたらい回しにし何事も先送りにしてきたのがお前らだ」
    「全ての権力を皇帝陛下に集約する、その方が効率がよろしい」

.
 常任理事「そ、そんなことをして、ヨーロッパの民衆が納得をするとでも……」

 藤堂「皇帝陛下の命に逆らうのか?」ギロ
    「私の言葉は即ち、皇帝陛下のお言葉だぞ?」
    「お前の自宅を中心に、半径100kmをフレイヤで吹き飛ばされたいか?」

 常任理事「!!!」ビク
       「……け、検討いたします……!」プルプル…

 藤堂「検討ではない、実行せよ、1週間以内に!」バッ
    「ナイト・オブ・ゼロの言葉をゆめゆめ疎かに扱うなよ……」カツカツ

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 ルル「……ふむ、そうか」
    「各国の政府を解体し、権力をここに集中したか」

 藤堂「各国には、地方自治レベルの権力しか残さなかった」
    「各国が保持していた軍事力も、ブリタニアに集約させたぞ」

 ルル「俺も、いずれはそれを手掛けようと思っていたところだった」
    「先んじて手を打つとは、さすがは藤堂だな」

 藤堂「ふっ、ゼロレクイエムの目的を考えれば、自然と必要となる措置だ」

.
 ルル「俺の名を、うまく使っているか?」

 藤堂「うむ、"皇帝陛下"と"フレイヤ"の2つを出せば、どんな無理難題でも」
    「相手は聞かざるを得なくなるからな……よい感じで怨嗟が満ちつつある」

 ルル「そうか……皇帝である俺があちこちに出向いて"悪事"を為すのは、」
    「ちょっとフットワークが軽すぎだという気もしていた、助かるぞ」

 藤堂「感謝は、計画が実現できてからでよい」ニヤッ
    「さて、次はもっと細かな"悪事"をしてくるかな」カツカツ

.
 ジェレミア「……かつての彼からは、想像もつかないですな」

 ルル「奇跡の藤堂、か……」
    「フッ、ひょっとすると、俺の計画よりも見事な結末になるかもしれんな」

 C.C.(藤堂……まさか、な……)ジー…

.
■ナナリーと ─────

 ナナリー「そうです、ルルーシュ皇帝は……私の、兄です」

 藤堂「ふむう……そういう経緯であったか」

 ナナリー「……私は、フレイヤで多くの人々を殺してしまいました、」
      「いかなる罰をも……たとえ死であろうと、甘んじて受け入れる覚悟です」

 藤堂「……」

 ナナリー「ですが……お兄様をお止めできなかったことが、唯一の心残り……」
      「この先、一体世界はどうなってしまうのか……」ポロ…

.
 藤堂「それは、皇帝陛下の胸先三寸の話……」
    「私からは、如何とも申し上げようのないことだ」スッ…

 ナナリー「……藤堂さま、あなたも元は騎士団の幹部……」
      「どうか、兄をお止めいただけませんか……」ポロポロ…

 藤堂「……ふ、私は今や、皇帝陛下に仕える者だ」
    「その戯言は聞かなかったことにしておこう」カツカツ

.
■ジェレミアと ─────

 藤堂「ほう……ゴッドバルト卿のその左目には、そのような力が……」

 ジェレミア「左様、私のギアス・キャンセラーは、皇帝陛下のお力も含めた、」
       「あらゆるギアスを解除・無効にする能力がある」

 藤堂「それは、何度でもできるのか?」

 ジェレミア「制限はない」

 藤堂「なるほど……ありがとう、参考になった」
    「先を急ぐので失礼する」カツカツ…

.
■アッシュフォード学園 生徒会室 ─────

 委員A「リヴァル会長、今度の通達、聞きました……?」

 リヴァル「ああ……"フンドシ"だろ?」
      「ウチにもチラシが入ってたよ……ほら」ピラッ

 委員A「ウチと同じやつですね」
     「僕、そんなもの着用したことがないですよ……」

 リヴァル「オレもだよ」ハァ…
      「抜き打ち検査で引っかかったら投獄だろ?」
      「ひっでえよなぁ、今のラウンズは……」

.
 ??「公の場でラウンズを批判するとは、良い度胸ではないか?」

 リヴァル「ひいっ!?」ビクッ!!
      「いえ!そ、その…………」クルーリ

 ミレイ「ふっふーん♪」ニヤリ

 リヴァル「……かっ、会長ぉ!脅かさないでくださいよ!!!!!」

 ミレイ「もう会長じゃないわよぉ~」
     「元気してたぁ?あら、そっちは新人さんね?」

 委員A「あっ、はじめまして!」

.
 リヴァル「会長……って呼べないなら、じゃあ、ミ、ミレイ……」ドキドキ

 ミレイ「さま!」

 リヴァル「……さん」ショボン
      「今回のコレって……皇帝陛下は関わってないですよね?」

 ミレイ「フンドシって、日本の文化だしねぇ……」
    「多分、ナイト・オブ・ゼロの独断じゃないかしら……」

 リヴァル「ルルーシュの奴、一体何を考えてるんだ……」

.
■ラウンズ執務室 ─────

 藤堂「……うむ……そうだ、ペットを安易に捨てた者は、財産没収だ」
    「保護されていた環境から捨てられることがどれほどつらいか、」
    「飼い主たちにわからせてやるのだ」…ピッ

 C.C.「……藤堂」シュイーン、テクテク

 ジェレミア「……」カツカツ

 藤堂「おや、珍しいツーショットではないか……何事かな?」

.
 C.C.「今、ルルーシュはゼロレクイエム後の世界の形を練っていて、」
    「お前がしていることに関与していない」

 藤堂「そうだな、そうするよう、私が進言したからな」

 ジェレミア「今の電話の話は?」

 藤堂「生類憐み法だ、生き物を飼うことの責任を知らしめるための……」

 ジェレミア「犬を捨てただけで家名を失うのは、あまりにも重すぎるだろう!」ドン!!

 藤堂「では、飼わなければよいのだ」
    「そのくらいの節度も無き者が、他者の世話をするなど言語道断」

.
 C.C.「藤堂……お前は、何を考えている?」ジー

 藤堂「何の話だ?」

 C.C.「先のフンドシ法といい、ここ最近のお前の仕業は、」
    「本当に皇帝の名において下された命令なのかと疑われつつある」

 ジェレミア「この間は、男子がスイーツを食するのを禁止したな……」

 藤堂「うむ、男があのようなものを常時食すると堕落する」
    「食べたければ事前に許可を得てからだ」

.
 C.C.「机の傍らに置いてある、そのカップは何だ?」

 藤堂「ああ、これか?チョコパフェだ」
    「疲れた時の脳には最適な食べ物だからな」ニッコリ

 ジェレミア「藤堂ッ!貴様、主を嘲り裏切るつもりではあるないまッ!?」

 藤堂「どういうことだ?」

 C.C.「今のお前は、ただの権力に溺れた男に見える」
    「本当に、ゼロレクイエムを実現させる気はあるのか……?」

.
 藤堂「無論だとも」
    「私の行動は全て、ゼロレクイエムの実現のためである!」

 ジェレミア「貴様、まさかこの国を盗る気ではあるまいな!?」

 藤堂「そのような気は毛頭ない!」

 ジェレミア「……本当だな!?」
       「その言葉、違えば命はないと思えッ!」カツカツ、シュイーン

 藤堂「肝に銘じておこう……」ニヤ

.
 C.C.「……さて、ソファを使うぞ」…モスッ

 藤堂「ん?君はまだ他に用があるのか?」

 C.C.「私の目はごまかせない……」
    「藤堂、本当の目的を話せ」

 藤堂「言っているだろう、ゼロレクイエムの」

 C.C.「結末が、随分と変わってしまうのではないか?」
    「私たちが当初考えていた結末と……」ジー…

 藤堂「スザク君がいないのだからな、当然だろう」

.
 C.C.「そうではない」
    「結末が……ずいぶんと……変わってしまうのか?」ジー…

 藤堂「……」

 C.C.「…………」

 藤堂「……ふむ、君の協力は欠かせないな……」
    「今から言うことは、ルルーシュには絶対に話さないでくれ」

 C.C.「よかろう」

 藤堂「私のレクイエム計画だが、実は……」

.
彡 ⌒ ミ  お正月ってステキですね!
(´・ω・`)  ステキすぎて毛が生えてきそうです!

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

……それから後も、皇帝の代理として強大な権力を握る藤堂は、
より常軌を逸した圧政を敷くようになった。

 ・信号無視をした者は現行犯で射殺も可
 ・70kgを超える体重の者は、重量税として1kg毎に100ドルを課税
 ・処女喪失は必ず所轄に申請、後ほど喪失が発覚の場合、投獄

等の、おおよそ法理のない法の発布が相次いだ。

また、それらを守らせる為、街のあちこちに監視カメラが設置され、空中には
ホバリング可能な小型監視カメラが罪を犯す者はないかと縦横無尽に飛び回り
探し出す……

.
軽重合わせてのがんじがらめの刑法により、しまいには、おおよそ前科の
ない者を見つけることが難しいほどになってしまった。
例えば、休み明けの会社では……


 社員A「おうおはよう、先週いくつ前科ついた?」

 社員B「オハヨー、前科3つだ、ちょっと好調だったわ」
     「お前はどうだ?」

 社員A「聞いて驚け、前科1だったぜ!」

 社員B「嘘こけ、ありえねえだろ!」
     「ってかその1って何だよ?」

.
 社員A「休みに家で6時間ゴロゴロしてたら、ニート禁止法ってのにやられた」
     「就寝以外の、無許可で6時間を超えるゴロ寝はダメだってよ」

 社員B「何もしてなくても違法かよ、たまらんなあ……」


さらに、それらに異議や疑念を唱えた場合、最も過酷な刑が執行される。
個人であれば一族郎党皆殺し、集団であれば小型フレイヤを使用する。
街並みの中に突如ぽっかりと、丸い空白地が見えたらそれは、フレイヤで
消し去られた哀れな市民たちの跡なのであった。

そうして、しばらくの後……

.
■謁見の間 ─────

 藤堂「……」カツカツ…
    「……皇帝陛下、仰せによりまかり越しました」スッ…

 ジェレミア「……」ジロ

 ルル「藤堂……」
    「最近、君は精力的に活動をしているようだな?」

 藤堂「はっ、全てはゼロレクイエムの為に……」

 ルル「うむ……」
    「ところでだ、この法令は君が公布したのか?」ピラ

.
 藤堂「拝見します……」スッ

   ★辞令★
     女性は、12歳から成人として扱うこと、結婚も可

 藤堂「はっ、私が公布いたしました」
    「やはり女性の旬であるこの年齢を……」

 ルル「藤堂、君は私を愚弄しているのか?」キッ

 藤堂「何のことでございましょう?」

 ルル「誰がこのような、訳のわからん法を敷けと言った!」
    「しかも、君が作った法の数が1000を超えていると言うではないか!」

.
 藤堂「はっ、それほどまでに人々は愚かゆえ……」

 ルル「さらに!」
    「最近では、私ではなく君を恐れるよう仕向けていると聞く……」

 藤堂「それは誤解でありましょう」
    「法令には常に、陛下のご署名をつけて……」

 ルル「……私を神輿だと言ったそうだな?」ギロ

 ジェレミア「……」キッ

 藤堂「……はて?誰がそのようなことを?」

.
 ルル「C.C.だ」
    「貴様を信じ、レクイエム後の世界の在り様を構想していた私は、」
    「まるでガキ扱いだな」

 藤堂「これは異なことをおっしゃいますな」
    「ゼロレクイエムなどという、妄想に近い計画にこれまで協力を尽くして」
    「きた私を、まるで疑うかのような……」

 ジェレミア「……藤堂!貴様にはもはや陛下への忠節の魂を感じられぬ!」
       「ナイト・オブ・ゼロの地位を返上し、牢獄に戻るがよい!」

.
 藤堂「……お言葉ながら……」スッ


突如、それまでよりも低い声で呟く藤堂。
彼は顔を上げると、口をニヤアと広げた。


 藤堂「……できるなら、やってみるがいい、ブリキども……!」


……もはやそこには、忠義の士は存在しなかった。
権力という魔力に憑りつかれた、一匹の獣がそこにいた。

.
 ジェレミア「きッ……貴様アア!」ガバッ

 藤堂「ゲフィオンディスターバー……」カチッ、ジバババババ!!

 ジェレミア「ぬお……ギギ……!」…ガクッ

 ルル「ジェレミア!」
    「藤堂……貴様いつの間にッ!」

 藤堂「ふふ……ルルーシュ、お前ももはや必要ないのだ」
    「すでに兵も半数以上を掌握している、世界中から集めた、」
    「お前のギアスにかかっていない兵ばかりをな……」

 ルル「!!!」

.
 藤堂「そうして、貴様が消えれば、お前の奴隷である残りの半分は」
    「ただのでくの坊だ……ふっ、国盗りなどたやすいものよ」ニヤリ

 ルル「過ぎた権力に溺れたか!」
    「愚かな……愚かなり、藤堂鏡志郎ッ!」ガバッ

 藤堂「全ての権力を、我が手に握るッ!」ズバッ


勢いよく立ち上がり、腰に差していたレイピアを抜き放つ藤堂。
ルルーシュも、コンタクトを取り去り封じていた"力"を解き放つ。
藤堂との距離は10m近くはある、彼が駆けてもギアスの発動が早い。

.
 ルル「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが……」

 藤堂「発動ッ!」

 ルル「何ッ!?」


ルルーシュは、そのかけ声と共に藤堂の瞳に浮かび上がったものを
見て驚愕した。それは、まごうかたなきギアスの紋章……!


 藤堂「……心眼!」

 ルル「貴様は死ねェッ!」

.
 藤堂「ふん!」ブン!!


藤堂は、造作なくレイピアを投げた。
それは、全くコントロールした様子もないのに10mもの距離を飛び、
ルルーシュの腹のど真ん中を正確に貫いた。
しかも、ルルーシュのギアスは彼に全く影響を与えなかった……!


 ルル「ばっ、馬鹿な……!」…ドサ

 ジェレミア「へっ、陛下アァァ……!」プルプル…

.
 藤堂「……私の"心眼"は、空気を読む"力"だ」カツカツ…
    「空気の中を動く物体は全て、その先の流れまで読める」
    「当然、望む結末を得るためにどうすればいいかもわかる……」


レイピアに突き刺され、その場に倒れたルルーシュに、藤堂はゆっくりと歩み寄る。
不敵な笑みを浮かべた彼を、ルルーシュは息も絶え絶えに見上げていた。


 ルル「……見ていないのか……」ハアッ、ハアッ

 藤堂「見えているのは空気だ」フッ
    「今も見えているぞ、お前の周りで淀む空気をな……」ニヤリ

.
 ルル「その力を得たのは……」

 藤堂「無謀な戦いはしない主義だ」
    「当然、彼女の協力が得られたから決行したのだ」

 ルル「おのれ、C.C.……なぜだ……!」
    「なぜ、俺を裏切った……シイツウウゥッ…………!」


声を振り絞り、悲痛な叫びを上げたルルーシュ。
そうして……彼は、その場で力尽きた。
ルルーシュの亡骸を冷たく見下ろす藤堂は、やがて高らかに哄笑する。

.
 藤堂「ふふ……ふは、ふはははははははは!」
    「今ここに宣言する!第100代ブリタニア皇帝、藤堂鏡志郎の誕生を!」

    「愚民どもよ、ひれ伏せ!恐れ戦け!」
    「この瞬間、貴様らは私の所持品にしか過ぎなくなった!」
    「皆平等に、消しゴムやボールペンと同じ価値しかなくなったのだ!」
    「命が惜しければ、我に這いつくばるがよい!」
    「ふはははは、ははははははははははは……!」

.
彡 ⌒ ミ  次回、「優しい世界のかたすみで」
(´・ω・`)  ご期待ください!

.
■2か月後 皇帝直轄領 日本 ─────

『神聖ブリタニア帝国 第100代 唯一皇帝陛下にして黒の騎士団CEO、』 
『超合衆国第2代最高評議会議長であらせられる、藤堂鏡志郎様のお姿が』
『見えました……!』


沿道を埋めつくした民衆が見守る中、多数の護衛兵やナイトメアの警護に
囲まれ、ブリタニア皇帝である藤堂の乗る巨大な御料車がしずしずと進んできた。
御料車の先頭にはジェレミアが仁王立ちになり、周囲に鋭い視線を走らせている。
そして車輛の頂点には巨大な玉座が設置され、そこには藤堂その人が、
尊大な態度で座り、傲岸な笑みを浮かべながら民衆たちを見下ろしていた。

.
しかし、それら民衆は全て、保安上の理由もあり周辺のビルから強制的に
駆り出されたもの。
皇帝を見る彼らの目は、極めて冷ややかなものであった……暴虐皇帝という
理由以外にも、もう一つ。


 リヴァル「……うえぇ、何だあの恰好?」

 男「マントに赤フン一丁、って……」

.
まだ肌寒い季節だというのに、藤堂は、全裸の上に純白のマントを羽織るのみ。
見せつけるようにがばりと開いた股には、目に刺さるほどの真っ赤なフンドシが
風にひらひらと舞っている。
そんな恰好なのに一切の恥を感じないのか、藤堂は不敵な笑いを浮かべた
ままであった。


 男「……ルルーシュが死んで、余計にひどいことに……」

 警官「そこのお前、今陛下を愚弄したな?こっちに来い」グイッ

 男「えっ!?いえ、僕は何も……ちょっとまって……!」ジタバタ…

 リヴァル(あぶねー!何時の間に後ろにいたんだよ……)

.
『……そしてご覧ください、愚かにも、藤堂様に反逆した者たちが、』
『処刑場へと運ばれてゆきます……』


磔台を並べた護送車の上には、黒の騎士団や中華連邦の面々、
そして、ナナリーが磔にされていた。

藤堂の足元には、白装束を乱暴にまとった千葉が手足を鎖で拘束され、
肌も露わな状態でうずくまっていた。彼女は、真っ赤に泣き腫らした目を伏せ、
あまりに変わり果てた藤堂の姿に、悄然としていた。

.
『先の大戦で、帝都ペンドラゴンや多くの将兵、そして初代ナイト・オブ・ゼロ、』
『枢木スザク卿という尊い犠牲を払いつつも、前代皇帝ルルーシュは一切の』
『責任を負う事なく、酒池肉林に溺れ民を顧みることはありませんました……』

『しかし、藤堂様のお諫めによりルルーシュは葬られ、こうして我らは、喜びに』
『満ち溢れたこの瞬間を迎えることができたのです!』
『藤堂様に栄光あれ!』
『オール・ハイル・ブリタニア!オール・ハイル・キョウシロウ……!』


 藤堂「ふははは……崇めよ、恐れよ……!」
    「唯一世界皇帝、藤堂鏡志郎にひれ伏すがよいッ!」バッ!!

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

……中継車の中では、カメラ映像に映し出された藤堂の姿に、TVクルーたちが
小声で不平を漏らしていた。


 クルー「……こんなものを、正義として報道しなきゃならんとは……」

 ミレイ「……ほんとですね……」
     (ルルーシュ……少なくとも、服装については貴方の方が、)
     (何百倍もマシだったわ……)

.
……沿道のビルには、コーネリア率いるレジスタンスの集団が、警備の隙を
突き藤堂を討たんと、パレードを虎視眈々と伺っていた。しかし、警備が厳重で
思うように手が出せない……

集団の中で、同様にパレードを睨んでいたヴィレッタだが、拘束・連行される
罪人たちの中に扇の姿を認めた途端、思わず駆け出した。


 ヴィレッタ「……お、扇……っ!」タタッ…

 コーネリア「待て!」ガシッ
       「……今出てゆけば、思う壺だ……!」

 ヴィレッタ「しっ、しかし……!」

.
その時……窓の外で、大きなどよめきが起きた。
コーネリア達は、何事が起きたのかと窓に走り寄る。

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

皇帝のパレードの一団は、その先に"異物"を発見し、停止していた。
彼らを阻むかのように……行く手の先に、1人の"影"が立っている。
全身を包むほどもある、大きな漆黒のマントを羽織り、そして、頭には
真っ黒な仮面を……


 リヴァル「ぜっ……ゼロ!?」

 ナナリー「ゼロ……?」

.
 玉城「ゼ……ゼロ、って……!?」

 カレン「うそ……だってルルーシュは、藤堂さんが……!?」クルッ


カレンが振り向いた先には、玉座に座る藤堂の姿があった。
ゼロの姿を認めた藤堂は、微動だにせず目を細めて笑う。


 藤堂「何者だァ……?テロリストの姿をとる痴れ者が……」
    「ジェレミア、奴を討ち果たせッ!」

 ジェレミア「承知!」
       「警備兵、奴を殺せッ!」

.
その掛け声と同時に、ゼロはマントをひる返し、藤堂らに向けて駆け出す。
ナイトメアたちの銃口が一斉に火を噴くが、ゼロは何と、それよりも速く……


 扇「なんだ、あの速さはッ!?」

 カレン「まるでスザク……いえ、それどころじゃない!?」


ゼロは、躱すことすらせず、一瞬にしてナイトメアらの間を駆け抜ける!
その疾風のような速さに、警備兵たちは狙いが全く定められない!

.
 ジェレミア「撃つな!私が相手をする!」チャキッ

 ゼロ「……」シタタタタ!!


互いに真正面から、ぶつかりあう勢いで走り出す二人。
しかし、ジェレミアが振るった剣の切っ先を掠めるようにゼロは飛び、彼の肩を
踏み台にしてさらに高く飛び上がる!
ゼロに踏まれ、前のめりに倒れ込む寸前、ジェレミアはかすかに微笑む。


 ジェレミア(お行き下さい、純粋なる正義の君よ……!)

.
ゼロは御料車に飛び乗ると、そのまま台を駆け昇り、赤フンの藤堂と対峙する。
腰に差すレイピアを抜き、怒号を上げる藤堂。


 藤堂「心眼ンンン!」キュィィィィィ!!

 ゼロ「……」チャキ…


ゼロは、長剣を構えその切っ先を藤堂に向けた。しかし、藤堂は全く焦る様子も
ない。むしろ、この状況を楽しむかのようであった。

.
 藤堂「我が"心眼"を破ってみよ、ゼロオオォッ!」

 ゼロ「……!」シュッ


藤堂の胸を狙って繰り出された、ゼロの長剣の一閃。
それは、藤堂には全ておみ通しの攻撃。レイピアをしならせ、カウンターで
ゼロを刺すつもりであった藤堂……だが!


 藤堂「な……速いッ!?」

.
剣の先端の速度は音速を優に超え、空気を打ち破った。
それは、藤堂の"読み"を遥かに超えた、常人には到底不可能な剣技であった!


 藤堂「ぬおおッ……!」

 ゼロ「!!!」

.
■パレードの前夜 ─────

……宮殿の、深夜の謁見の間。
窓から差し込む満月の、ほのかな光だけが室内を照らす中、ゼロレクイエム
計画の遂行者たちが一同に介していた。
藤堂、C.C.、ジェレミア……そして、ルルーシュ。

彼らは、計画の総仕上げのための、最後の打ち合わせを行っていた。
藤堂はルルーシュに、ゼロの仮面をそっと差し出す。


 藤堂「ルルーシュ……話した通り、君がゼロになるのだ」…スッ

 ルル「……藤堂、本当にやるのか……」

.
 藤堂「スザク君がゼロになれないなら、後は君しかいない」
    「それに、君は元々、ゼロだっただろう?」ニッ

 ルル「……その為に、わざと側近として……」

 藤堂「私が書き直した計画は、思った以上にうまくいった」
    「かの悪逆皇帝を弑逆した、よりさらに下劣な男、藤堂鏡志郎……」
    「世間は私をそう信じている」

 ルル「……」

……ルルーシュは、己の腹部にそっと手をあてる。
そこには、彼の生命を維持する為のサイバネティクス機器が備わり、
暖かに脈打っていた。

.
■藤堂とルルーシュの対決の直後 ─────

 C.C.「急げ!何が何でも間に合わないといけないんだ!」タタタッ…

 ラクシャータ「全く……いきなり牢から出したと思ったら、走れって……」タッタッ…

 ロイド「ふうふう……ねえ、僕も必要なのぉ?」パタパタ…

 セシル「ロイドさん、ほら早く!急いで!」グイグイ

.
C.C.に牢から出されたラクシャータ、ロイドとセシルの3名は、彼女にせかされ
ながら宮殿の薄暗い廊下を走っていた。
長く続いたその廊下の先にあった一室に飛び込んだ一行は、そこが医務室で
あることに気付いた。部屋の中央には手術台があり、傍らに藤堂が立って
彼らを待ち構えていたようだ。

そして、眩しいほどの明かりに照らされた台の上には……


 ロイド「……皇帝陛下!?」

 セシル「ええっ!どういうこと……?」

.
 藤堂「ゴッドバルト卿にも用いられているサイバネティクス技術で、」
    「今すぐルルーシュを生き返らせてほしい」

 ラクシャータ「はあ?」

 藤堂「いや、正確には、彼はまだかすかに生きている」
    「急所は外した、だがもうじき死んでしまうのだ」
    「必要な機材は予めここに揃えてある、すぐに始めてくれ」

 ロイド「……でもぉ……ゴッドバルト卿のアレ、」
     「僕らがやったんじゃないんですけどぉ……」

.
 C.C.「ラクシャータ、お前はジェレミアの身体を調べたのだ!」
    「それに元々はサイバネティクスの技術者だったな?」
    「できるはずだ、頼む、やってくれ!」

 ラクシャータ「……できないことはないけど……」
        「どうして私が、悪逆皇帝を助けなきゃいけないのさ?」
        「このまま死なせときたいんだけどねえ……」

 C.C.「ラクシャータ……!」

.
 藤堂「……詳しい事は後で話す、これ以上時間が経てば手遅れになる!」
    「お願いだ!……このとおり、今生の頼みだ!」ガバッ


藤堂がいきなり、その場で土下座をしてみせたことに驚く一行。
ラクシャータらは、互いに顔を見合わせるが……


 ロイド「君は、事情を知らないんだよねぇ……」
     「後で僕からも説明するから、今は彼を助けようよ……」

 セシル「……」コクリ

.
 ラクシャータ「……はぁ……わかった、じゃあチャッチャとやるよ、」
        「言う通り手伝いな、プリン伯爵!」

 ロイド「またぁ……その呼び名……」カチャカチャ

 セシル「今はどうでもいいでしょ、早く準備をしましょう!」カチャカチャ

.
藤堂は、慌ただしく手術の準備をする3名の傍らで、
C.C.と向かい合わせに立つ。


 藤堂「……これしか方法がなかったのだ、許してくれ」

 C.C.「わかっていて、私もその賭けに乗ったのさ」
    「坊やが生き返ったら、二人とも頭を剃って謝罪するか」…フッ

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 藤堂「……先の手術で君に施されたのは、生命維持だけではない」
    「関節および筋肉には、脚力の増強を図る機器が取り付けられた」
    「ゴッドバルト卿の話が大変な参考になった」

.
 ジェレミア「私の身体が陛下のお役に立ち、光栄の極みである」ニッ

 藤堂「うむ……」
    「……これで君は、スザク君を遥かに超える能力を備えたことになる」
    「動くのにはもう慣れたか?」

 ルル「ふむ……そう悪くない感じだ」ギッチョンギッチョン
    「小隊程度なら私単独でも撃破できそうだな」

 藤堂「さすがにそれは難しいだろう」フッ
    「奇襲に特化した能力だと思ってくれ」

 ルル「ああ……わかっているさ、まさに明日の為のものだからな」

.
 藤堂「……ルルーシュ、君は、私に刺されて死んだことになった」
    「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは、もはやこの世にいない」

    「そしてこれから君は、ゼロとして生きるのだ……」
    「これまでの人生を捨て、人並みの幸せも捨て、」
    「君の頭脳、その力、全てを世界平和に捧げてもらう」

 ルル「それは、俺がスザクに言うはずだった言葉だ……」
    「計画の細かなことは言っていなかったのに、同じ考えに達するとは……」

 藤堂「……」

 ルル「初めて、呼ばせてもらうぞ……」
    「……さすがは、"奇跡の藤堂"だ」

.
 藤堂「ふっ、その通り名も、君に言われるとそう悪い気もしないな」
    「……ゴッドバルト卿、改めて謝罪する……あの時は、済まなかった」

 ジェレミア「ゲフィオンディスターバで私の動きを止めたのは正解であった」
       「でなければ、藤堂のギアスを防ぎ、結果として陛下の心臓に」
       「レイピアが刺さっていたかもしれんからな」

 藤堂「それもあってのことだが、仮初とはいえ主を守れなかったという屈辱を、」
    「貴公に味わせてしまった……」
    「この結末を、謝罪の代わりとさせて欲しい」

 ジェレミア「うむ、その覚悟、私の忠義の心にも匹敵する決意だと認めよう」
       「心置きなく、果たされるがよい」コクリ

.
 藤堂「ありがとう……」
    「C.C.、君もよく私の計画に協力をしてくれた」
    「心ならずも、ルルーシュを欺くことを強いてしまったが……」

 C.C.「生半可の演出では、大衆を欺くことはできない……」
    「坊や自身の考えじゃないか……な、ルルーシュ?」クルッ

 ルル「フン……」
    「まあ、大方そんなところだろうとは思っていたさ」

 C.C.「おや?そうかな?」
    「あの瞬間、お前は何と叫んだのだったかな?」ニヤ

 ルル「……知らん」ムスッ

.
 藤堂「ルルーシュ、彼女を許してやってほしい」
    「C.C.も、君を死なせぬために必死だった……」
    「手術の間中、君の手をずっと握っていたのだ」

 ルル「ほう……?」ジロ

 C.C.「そうだったかな?……忘れたな」プイ

 藤堂「……」フッ
    「ルルーシュ、今後については、わかっているとは思うが……」

.
 ルル「ああ、俺はもはやゼロであってルルーシュではない」
    「決して正体を悟られるわけにはいかない、万が一に仮面の下の顔を」
    「見られても、俺だとは思いもよらないようにする必要がある」

 藤堂「……」コクリ

 ルル「だから……ジェレミア、頼むぞ」

 ジェレミア「……よろしいのですか?本当に……」

 ルル「ああ、迷いはない」

 C.C.「……」

.
 ジェレミア「失礼いたします……ギアス・キャンセラーッ!」キュイイィィン!!

 ルル「!!……ふう、よし」
    「さあ、鏡を渡せ、ジェレミア」
    「終わったら、俺の顔を焼き、のどを潰すのを忘れるなよ」

 ジェレミア「陛下……」…スッ

.
ひざまづき、ルルーシュに手鏡をひとつ差し出したジェレミア。
ルルーシュは彼の手からそれを取ると、感慨深げにつぶやいた。


 ルル「……これが、最後の言葉になるのだな、」
    「やはり言い残しておかねばなるまい」ニコッ

    「……ジェレミア、お前の忠義に心から感謝している」
    「せめて余生は、連れなどを見つけ穏やかに暮らしてくれ」

 ジェレミア「も、ももも勿体なきお言葉……!」ウルッ…
       「おっと、目からサクラダイトが……」

.
 ルル「C.C.……俺がここまで来れたのは、お前のおかげだ」
    「それと、済まない……約束は、果たせないようだ」

 C.C.「なんだ、知らなかったのか?お前は既に約束を果たしている」
    「そうしてお前は、これからもずっと望みを叶え続けてくれるのさ……」

 ルル「フッ……そうか、そうだな……」
    「これからもずっと、俺の傍にいろよ」

 C.C.「時が二人を分かつまで……」ニコッ

 ルル「……」フッ
    「そして、藤堂……君には、騎士団の頃から世話になった」
    「その献身、心から敬服する」

.
 藤堂「恐悦至極だ、君の覚悟に比ぶれば私など、大したものではない」
    「それよりも、いざという時に怯むでないぞ」

 ルル「ああ……大丈夫だろう」
    「……藤堂、最後に一つ、教えてほしい」

 藤堂「何だ?」

 ルル「どうして君は、己を犠牲にする気になったのだ?」
    「君には、千葉が……」

.
 藤堂「……彼女には、随分前に言い含めた」
    「男子としての、"一世一代の仕事"がある、とな」
    「その意味は、今は誤解をしていようが……」

 ルル「ほう?」

 藤堂「それに……私は本来、2度は死んでいるのだ」
    「チョウフ基地で、そしてブラックリベリオン後の租界で……」
    「それを、2度も君に拾われた」

 ルル「……」

.
 藤堂「にも関わらず、私はトウキョウ決戦後に斑鳩で君を放逐した……」
    「C.C.から話を聞いた時、全てに得心がいったと同時に、その事を」
    「本当に悔いたのだ」

 ルル「あの時は、やむを得ないと私は思っているぞ」
    「シュナイゼルの策略が……」

 藤堂「良いのだ、あそこがターニングポイントであったのは事実……」
    「今の世界の形には、私も責を負うべき所がある」

 ルル「だから、か……」ジッ…

 藤堂「ふふ……納得のいかない顔だな?」

.
 ルル「ああ……本来、死ぬべきは俺なのだからな」

 藤堂「君は、"死ぬ"だろう?」
    「それだけの力が、君のギアスにはある……」ニッ

 ルル「フフ、その通りだ……」ニヤリ
    「……いいだろう!我が最後の"力"、見届けよ……!」

.
……ルルーシュは、鏡に映る己の瞳を覗き込んだ。
ジェレミア、藤堂、そしてC.C.に見守られながら、彼は最後のギアスを行使する。


 ルル「……ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる!」
    「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとしての人生を捨てよ!」
    「純粋な正義の象徴、ゼロとして生きるのだ……!」キュイイィィィィ…!!

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 藤堂「ぐは……ッ!」

 ゼロ「……!」


ゼロの長剣に胸を貫かれた藤堂は、口から大量に吐血する。
力が抜け、ゼロによりかかる形となった藤堂は、かすかに微笑みながら、
振り絞るような小さな声でゼロに呟く。


 藤堂「君は……後悔、する……かもしれない……」

.
 ゼロ「……?」

 藤堂「君が、死ぬ、形なら……もっと、楽だった……だろう……」
    「もう、わからない……だろうが……済まな、かった……」ズル…

 ゼロ(済まなかった、だと?何のことだ……?)

 藤堂「片瀬……少将……」
    「わたしは、やりとげ……ました……ぞ……」…ドサッ


藤堂皇帝が倒れたのを機に、レジスタンスが掛け声を上げる。
通りの両側にいた民衆が一斉にパレードの一団に群がった。ジェレミアは
迅速に、一団に撤収を指示する。

.
藤堂皇帝が倒れたのを機に、レジスタンスが掛け声を上げる。
通りの両側にいた民衆が一斉にパレードの一団に群がった。ジェレミアは
迅速に、一団に撤収を指示する。

藤堂の亡骸の傍らに立ち、しばらくその姿を見下ろしていたゼロだが、いつしか
湧き上がる周囲からのゼロの名の連呼に、顔を上げ、歓喜する民衆たちの
表情をゆっくりと見回した。


 ゼロ(これで、世界は平和になる……きっと、平和にできる!)

.
ゼロが藤堂から抜いた剣を鋭く振るうと、民衆の呼び声はさらに高まった。
圧政から解放され、ようやっと平和が訪れる実感を高らかに謳う彼らの声……

もはや動くこともない藤堂の屍……
しかしその顔は、かすかに微笑んでいた。
命果てようとしていた彼の耳にも、それが届いていたのだろうか……

.
■エピローグ ─────

ゼロは、生きていた。

藤堂が騎士団に在籍していた時、彼の謀略によりゼロは暗殺されかったが、
かろうじて脱出をした。その際、火災で顔が焼け、のども痛めたため喋ることが
できなくなった……それでも、彼は生きていた。
また、事件のショックで自身の記憶が断片的にしか残らなかったものの、己が
為すべきことだけはわかっていた。
そうして密かに、皇帝ルルーシュおよび藤堂の悪事の行く末を見定めていた。

……世間には、そう公表された。

.
ゼロがルルーシュであったことを知る者たちは、彼の正体に興味を示した。
それについては、C.C.とジェレミアが個別に事情を話した。勿論、秘密厳守で、だ。

記憶を消し、顔も消し、声も消し、全てを捨ててゼロになった彼の覚悟。
そして、そのような彼に殉じ、世界に命をも捧げたスザク、藤堂。
それら壮絶な意思の存在を知り、誰も秘密を明かそうとする者はいなかった。

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

悪逆皇帝の系譜は途絶えた。
新たに、ナナリー提督が新生ブリタニアの大統領に就任し、ゼロとシュナイゼルが
その後見人となった。

世界中から集められた悪意は、ルルーシュおよび藤堂の死により昇華され、
訪れた平和を維持するための取り組みが各地で始まった。
世界は、少し気恥ずかしそうに……しかし、ゆっくりと、確実に、ゼロレクイエムの
計画どおりに歩み始めた。

そうして、月日が流れた後……

.
 ナナリー「どうしても、ここを去ってしまうのですか……?」

 ゼロ「……」コクリ


……ゼロは、国際連合の成立後、運営が順調に行われるようになったのを
見届けてから、姿を消すことをナナリーに伝えた。平和になったならば、
自分は必要ない存在だから……というのが、彼の理由だった。

.
ゼロが記憶を消したルルーシュであることは、ナナリーも知っていた。
しかし、記憶が無くともなお心優しき彼の振る舞いに、却って元の兄が戻って
きたように彼女は感じていた。だから、余計に別れが惜しく感じられた。

だが、当然そのことは彼には言えない。黙って送り出すしかないだろう。
彼の手を取り、涙を流すナナリー……その様子を、C.C.は静かに見つめる。
ゼロは、ナナリーの手をとり、手の平に指で字を書いた。


 お げ ん き で い つ も み ま も つ て い ま す

 ナナリー「ありがとうございます……」ポロポロ
      「お便りを楽しみにお待ちしております!」ニコッ…

.
ゼロは、涙を流しながら微笑む彼女に静かに頷いてみせる。
そうして、C.Cの方を振り向いた。

記憶のないゼロに、C.C.は自分のことを「同志」だと教えた。
断片的にしか残らぬ記憶の中にも、彼女が常に傍にいた覚えがあったので、
彼は疑いもしなかった。

……本当のなれそめや"契約"のことは、あえて伏せた。
運命に逆らい、文字通り全身全霊で平和な世界の実現に尽くした彼が、
その"果実"を味わう時間が少しくらいはあってもいいはずだ、と彼女は思った。

.
今回、ブリタニアを去ることにあたり、彼女も共についてゆくと言い、
ゼロもそれを拒まなかったのだった。
自分にゼロが頷いてみせたのを見て、C.C.も小さく頷いた。


 C.C.「では、いこうか……」
    「ナナリー、いつしかまた、逢う時が来れば」ニコッ

 ナナリー「はい……C.C.さんも、お元気で……」ポロポロ…

 ゼロ「……」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

……藤堂の墓は、日本のとある田舎にひっそりと建てられた。
これとは別に、ブリタニアには皇帝としての藤堂の墓があるが、亡骸はこちらにある。
藤堂がゼロに殺された後には、日本に埋葬してもらいたいという彼自身の希望で、
騎士団の千葉が亡骸を引き取り、極秘に日本で埋葬したのだ。

C.C.は、その後の千葉の様子を見るために、ゼロと共にここへ来ていた。
彼には、外に止めた車の中で待っておくように伝え、千葉と二人きりで話をする。
墓は、千葉が住む家の敷地の隅にあった。その前で、C.C.は千葉に、藤堂から
託されていた遺言を語る。

最期まで真実を明かせなかったことへの謝罪、そして千葉が静かに、息災に
過ごすことをあの世から祈っている、と……

.
 千葉「……ありがとう」
    「やっと、心の重荷がとれた……」ニコ…

 C.C.「そうか」

 千葉「あの人が皇帝になる少し前、牢の中の私に逢いにきてくれた」
    「意を決した眼差しに、私は何か、私に伝えられない決意を抱いて」
    「いたのだと察したが……」

 C.C.「そうだな……」

.
 千葉「あの決戦の時も、身体が動かないのに『自分はこれしかできない』と」
    「言って、ナイトメアに乗ろうとして……」
    「本当に、不器用な人だった……」ポロ…

 C.C.「……いい奴だった」

 千葉「……」ポロポロ

 ??「ただいまー!」タタッ…


その時、帰宅の挨拶と共に、庭の方へ誰かが駆けてくる音がした。
小学生くらいの小さな男の子が、駆け足でこちらへ来ると千葉の足に
抱きついた。

.
 子供「おかーさん、おやつ!」

 千葉「……ちょっと待ちなさい、お母さんはいま、お話をしてるところだ」
    「ほら、お客さんにご挨拶しなさい」

 子供「あっ……こんにちわ……///」

 C.C.「こんにちわ、よろしくな」
    「……子供ができたのか、初めて知ったぞ」

 千葉「そうだ、日本へ戻って半年を過ぎた頃に……」

.
 C.C.「……まさか、その子の父親は?」

 千葉「藤堂鏡志郎……あの人の、忘れ形見だ……」

 C.C.「なんと……!」


子供の頭をなでながら、千葉は優しく微笑んでみせる。
それを見て、C.C.は"あの日"の藤堂の「協力が必要だ」の本当の意味を初めて
知った。
藤堂から、ゼロレクイエムの"別ルート"のアイデアを聞かされた日……

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 藤堂(ひとつ頼みがある)
    (私の死後、君からの計らいで千葉へ十分な支援をしてやってほしい)

 C.C.(ふむ、私からか?ルルーシュなら、もっと簡単に……)

 藤堂(彼には出来ないのだ)
    (だから、君にお願いしたい……)


そう、ルルーシュでなくなったゼロには、できない。
藤堂は、ここまでも計画をして、そして実行に移したのだ。

.
 C.C.(奇跡の藤堂、か……いいや、違うな、奇跡などではない)
    (ルルーシュにも劣らぬ、稀代の策士だったよ、お前は……)

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

……のどかな田園風景。
緩やかな丘陵を、一台の荷馬車がゆっくりと登っている。
その、むぎわらを満載した荷台には、マスクもマントも取り去ったゼロが……
その傍らにはC.C.がねそべり、空を眺めていた。


 C.C.「……王の力は、人を孤独にする、か……」
    「少し違ったな」ニコッ

.
 ゼロ「??」

 C.C.「いや、お前は覚えていないことだよ」
    「なれ初めの話さ……」

 ゼロ「……」コクッ

 C.C.「しかし、どうして急に、ブリタニアを出るなどと言い出したのだ?」
    「私はてっきり、ずっとナナリーを見守り続けると思っていたが」

.
 ゼロ「……」スッ


ゼロが差し出した手の平に、C.C.は己の手を乗せる。
彼は、C.C.の掌に、指で文字を書いた。


 な な り い が い も う と だ つ た こ と を お も い だ し た

 C.C.「……なに!?」


驚愕で思わず身を起こし、彼の顔をまじまじと見つめるC.C.。
ゼロは、小さくうなづくと続きを書き始める。

.
 ま だ す こ し し か お も い だ せ な い

 C.C.「……どのようなことを?」

 こ う て い だ つ た こ と を お も い だ し た

 C.C.「では、なぜ、そのような姿なのかも……?」

 お ぼ ろ げ な が ら


C.C.はそれを聞き、寂しそうな微笑みを浮かべた……
どうしてギアスの束縛が弱まっているのかはわからないが、もし全てを思い出して
彼がルルーシュに戻ってしまったなら、彼はきっと悶え苦しむことになる。

.
声を捨てた彼には、もはやギアスで記憶を消し直すこともできない。
おそらく、命を断ってしまうだろう……


 C.C.「……それ以上、無理に思い出さない方がいい」
    「お前の記憶には、知れば苦しむものばかりがある」

 ゼロ「……」

 C.C.「私とも、別れた方がいいかもな」
    「私の存在自体が、記憶を呼び戻す引き金になっているかも……」
    .「それに、思い出せば……」

 ゼロ「…………」

.
 C.C「……お前は、いい"同志"だったよ」
    「次の街でお別れだ、ゼロ……」


そう言って、C.C.は俯いた。
今まで通り、不意の別れ……慣れたものだ。また元通り、孤独になるだけ。
そうさ、私はC.C.だからな、これでいいのさ……

ゼロは、青空を少しの間見上げていたが、再び彼女の手を取ると、
そこに指を走らせる。

.
 ゆ る さ な い

 C.C.「??……しかし、お前の……」

 ま だ わ か た れ る と き は き て い な い

 C.C.「……!!」

.
あの時の言葉……!
ルルーシュが、己を消し去った時の、あの言葉!


 ルル(これからもずっと、俺の傍にいろよ)

 C.C(時が二人を分かつまで……)


驚いて振り向く彼女に、彼はその醜く焼け爛れた顔をわずかに歪め、
唇をゆっくりと動かした。
声がなくとも、C.C.は彼が何を言おうとしたのか、わかった。

.
 (俺の傍にいろ、魔女)

 C.C.「……お前は……!」


彼女は、その先の言葉を飲み込み、にこりと微笑んだ。
あるいは、これも私をも包み込んでいる"大いなる意思"の仕業なのか。

そう、コードのみなもとの意思……
ルルーシュは、記憶を……経験を失うことすら許されない……ということなのか。
ならば、私もそれに付き合おう。時の果て、世界の終わりまで……

.
 C.C.「……もう一人、様子を見に行きたい奴がいるんだ」 

 ルル「??」

 C.C.「紅月カレン……思い出せば、逢いに行く理由もわかるだろう」
    「ふふ……奴は、お前のことで大泣きしてな……」

 ルル「……」

 C.C.「可愛げのある顔をくしゃくしゃにしながら、かわいそうだとな……」
    「一時期、どうしてもお前の世話をしたいと言って聞かなかった」

 ルル「…………」

.
 C.C.「……あいつのことだ、未だにお前を待っていると思う」
    「そいつに関する記憶が戻ったら……一緒に逢いに行こう」

 ルル「……」コクリ


……経験しかなかった、私の過去。
だが、初めて気づいた。成し遂げてこそ、経験は思い出に変わるものなのだと。

そして、あるいは……
"想いで"の中で生きることを、彼は許されたのか。
彼がそれを、"想いで"とすることができたならば、だが……

.
しかし、そうでなくとも、構わない。私はひとつ、決めた。


 C.C.「……思い出せなくとも、いいか」ニッ
    「明日行こう、奴のところへ」

 ゼロ「??」

.
 C.C.「お前の思い出を、私がつくってやるぞ、ゼロ」
    「私についてこい、離れるなよ?」

 ゼロ「……」ジッ…

 C.C.「……勝手なことを、か?」
    「よく覚えておけ、何しろ私は……C.C.だからな」ニコッ

.
彡 ⌒ ミ  完結です!ありがとうございました!
(´・ω・`)  どうしてこうなったのかわかりません!

おつ!

>>196
おつありであります!

よかったです

>>198
嬉しさで毛が生えてきそうです!

面白かった!乙!
ただし毛は生えない

>>200
ありがとうございます!しかしいつか、必ずやふさふさに……!

面白かったし予想以上に感動したぞハゲ
また書いてくれよ

>>202
ありがとうございます!もうフサフサになりそうです!

おつん

>>204
おつんありんです!

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