モバP「フルサワー対サギサワー feat. 前川」 (41)

――ある日、アイドル事務所にこんな手紙が届きました。


『12月XX日YY時、Pさんの心を頂きに参上します。 
            ――怪盗フルサワーより』


P「…これは」

ちひろ「予告状と見せかけて、明らかにラブレターですよねソレ……しかも名前とか明らかに――」チラ

古澤頼子「……」ソワソワ

P「怪盗フルサワー……い、一体何者なんだ? 俺、どうなっちゃうの?」ガタガタ

ちひろ「えっ」

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安斎都「事件の予感!」ガチャッ

P「あ、安斎先生っ!!」

都「怪盗と聞いて居ても立っても居られなくって……秘宝『Pさんのココロ』、この都がお守りしますっ!」ビシ!

P「おお、それは頼もしい…!」

ちひろ「都ちゃんがいれば百人力ですねー(棒」

頼子「……」

ガチャ

千秋「おはようございます……って、朝から何やっているのあなた達……?」

P「お、千秋か。それが俺宛にこんな手紙が」ピラ

千秋「?……これって……はあ、Pさんこんな手紙を本気にしているの? これはどう見たって頼kムグッ――?!」

都「ストッ~プ!! 千秋さんは黙ってて~!!」ガシッ

千秋「…あのね安斎さん……あんまりPさんを困らせちゃ駄目よ?
あの人かなり純粋なんだから、早いうちに本当の事教えてあげないと……」ヒソヒソ

都「そうかも知れませんけど……アイドルのお仕事以外では滅多にない、名探偵・都のせっかくの出番なんです!
お願いですから、千秋さんも協力してくださいよー!」ヒソヒソ

千秋「仕方ないわね……とりあえず、本当のことは黙っておくけど」ヒソヒソ

都「ありがとうございますっ! 早速報告書を作らねば……探偵都っ、今回の事件は――!!」カタカタ

ちひろ「(いつの間に事務所にタイプライタが)」


P「…あいつら何をヒソヒソ話してるんだ……?」

頼子「あの、Pさんっ……」トントン

P「! どうした頼子?」

頼子「怪盗の予告した時間まで……果たしてPさんの身に何が起きるとも分からないと思いませんか」ボソ

P「そ、そうだな……『いただく』と宣言している以上はどんな手段で来るかも分からない……
もしかしたら、約束の時間を破ってくるかもしれないっ」ドキドキ

頼子「そこで私からの提案なんですが――」

――週末

頼子「……」ソワソワ

頼子「……まだかな」

「おーい!」

頼子「!」

P「おーい!!」タタタッ

頼子「…Pさん」

P「ごめん頼子、待たせちゃったな」

頼子「ううん、そんな事…ない…」

P「そっか。じゃあ、今日はよろしく頼むな、『ボディーガードさん』」

頼子「任せてください。……それじゃ、入りましょう」

頼子「ふふ、ちょうどよかったです。美術館のチケット……二枚あって」クス

・・・

都「千秋さん! マル被は依頼人と一緒に美術館に入りましたよっ! 私達も追いましょう!!」ワクワク

千秋「なぜ私まで……」

文香「…都ちゃん、楽しそうですね」

千秋「鷺沢さん……私はともかく、あなたまで付き合う必要はないのよ」

文香「良いんです。…大学はもう講義が終わって…ほとんど冬休みに入っているようなものですから」

千秋「でも、どうして鷺沢さんまで一緒に? こういうのって、都ちゃんのチョイスとしては例えば早苗さんとか、じゃないの?」

都「早苗さんには他に用事があるとの事で断られちゃいました。それに……文香さんを選んだのにはれっきとした理由があるんです!」

千秋「理由?」

文香「…」

都「頼子さんと文香さん……お二人には共通点があるんですっ。まず二人ともCo系アイドルであること……」

文香「確かに…」

千秋「あら、それだったら私もCo系だけど」

都「次に! 文系であること……文香さんは文学部専攻……頼子さんは……学業の方はあまり知りませんが、本をたまに読んでいるそうで」

千秋「文系、というより文学少女ねソレは」

都「うぐっ……三つめには、お二人とも……大人しい性格をしていること……なんてっ」

文香「びっくりしました…そんなに私と頼子ちゃんって……似てるんですね……」フム

都「でしょうでしょう? だから、そんな文香さんの意見を頂ければ、頼子さんが次に何をしようとしているかが分かるのでは…と!!」

千秋「まあ、確かに似ているかもしれないけど…都ちゃん、その考えはちょっと浅すぎてよ?」

都「えっ?!」

文香「……」

千秋「あんまり乗り気ではなかったけど……少しだけモチベーション上がったかも。さて、それじゃ私達も入りましょうか」

――館内にて

頼子「これが彼の最後の作品で…これを描いたその月のうちに…彼はこの世を去ってしまいました」

P「へぇ……最後まで絵に全力だったんだな。
 それにしても、頼子も相当詳しいよな。絵に関して色々幅広く、それだけじゃなく深く知っていて……」

頼子「時間がある時は…こうしていつも通っていますから」

P「最初にお前をスカウトした時も、確かここで絵を見てたよな」

頼子「そうですね…あの時はPさんは大きな声で話しかけてきたものですから…二人とも追い出されてしまいましたよね」

P「あの時は……本当にごめん、非常識だったよ。一人の時間も邪魔しちゃって。…今でも一人で通っているのか?」

頼子「大抵は。でも、少し違います。たまにはアイドル仲間や…それに…今はこうしてPさんとも来てますし」ニコ

P「あ、ああ…」ドキ

頼子「そうそう……怪盗の事で思い出したんですが」

P「?」

頼子「怪盗はモノを盗む前に…しばしばこういう具合に…下見に来るんですよ?」

P「えっ?! 俺…もしかして今見られてるかも知れないの?!」キョロキョロ

頼子「ふふっ……どうでしょうか…ね。でも、今は近くに私がいますから…大丈夫だと思いますよ?」クス


・・・


千秋「(下見どころか、思い切り手の上で転がされている、といっても言い過ぎではないわね)」

文香「…」

都「千秋さん、さっき言っていた事って…」

千秋「ああ、そうだったわね…」

千秋「いきなりで申し訳ないのだけど…鷺沢さんはPさんの事、好き…かしら?」

文香「えっ」ビクッ

都「なな、何を」

千秋「…予想通りの反応ね。鷺沢さんは、日も浅いこともあるかも知れないけど……

少なくとも、Pさんにそこまでの感情を抱いているとは思えないのよ」

文香「…はあ」

都「…そこまで…というのが…どういうことかは分かりませんが…
と、なると頼子さんの場合は……」

千秋「そうね…」

アイドルデビュー、番組終了直後

頼子『この私がアイドルだなんて…驚きです』

P『そんなびっくりしてるようには見えないけどな……千秋にも一緒に出てもらったが、
まるで初めてとは思えないくらい、二人の掛け合いや息は合ってたぞ?』

千秋『ええ。次も御呼ばれするときは、古澤さんと御一緒したいわ』

頼子『ありがとうございます。ポーカーフェース…得意なんです…おかげで緊張を見せずに、乗り切れました』

P『そうか。やっぱり頼子にアイドル活動は向いていそうだな!』

頼子『ええ。でも、ちょっと前まではそんなこと本当に思ってもいませんでした』

頼子『この衣装だって新鮮だし……さすがプロデューサー、私以上に私を知っているの……』ボソ

P『ん、今何か言ったか?』

頼子『フフ、何でもないです…』クスッ

千秋『……』

・・・

千秋「――という感じだったわ。あの後、鷺沢さんがデビューした時にも番組で御一緒したけど、
特訓後のあなたと頼子ちゃんとでは、Pさんに対する反応が、やっぱり違うと思ったの」

文香「なるほど。そうですね…私も確かに…プロデューサーの事は嫌いではありませんが…
 それは恋愛というよりは、尊敬の念に近いと思います」

都「ふむふむ……あ、ちなみに思い出したんですが、千秋さんもPさんと話すとき、
ちょっとだけ声のトーンが高くなりますよね、あれはどういう――」

千秋「…」スパァン!

都「あいたァ!! 何するんですか…っていうかどこからスリッパを……!」ジンジン

文香「館内では、お静かに」

――美術館を出て

P「ん~」ノビノビ

頼子「美術館…退屈でしたかね……?」

P「え? そんな事はないぞ。良し悪しまではよく分からないけど、絵は嫌いじゃない。

 ただ、どうも場の雰囲気がな……この手の場所は厳かで、こうキチッとしてないと、
そこらに座ってる係員さんに叱られそう、って思っちゃうのがなあ」

頼子「最初に出会った時が、そうでしたからね」フフ

P「だったよな。――そもそも、あの時だって誰かをスカウトしたくて来たわけじゃないんだ。

 偶然街で見かけたポスターに写った一枚が気になって…しかも…これまた偶然、
次の仕事までに時間があったからって、気分転換に来ただけだったんだよ」

頼子「そうだったんですね…知らなかった」

P「でも、絵にちょっと興味があって良かったなーって、今なら思えるよ。

 何せ、こうして頼子を見つけることが出来たんだからなっ」

頼子「!」

P「さて、次は一体どこに…って頼子?」クルッ

頼子「…」

P「頼子? おーい頼子…」

頼子「…次ですね…次は動物園です、今度はもっと楽しみましょう」スタスタ

P「わっ、急に立ち止まったと思ったら…今度は…頼子まってくれよオーイ!!」タタタ


・・・

都「マル秘は依頼人と一緒、別の場所へ行くようです! 見失ったときに何か起こってしまったら困ります!

依頼人を泣かせないためにも、我々も引き続き尾行しましょう!!」

文香「お、おーっ…」

千秋「…(今日のお財布、持つかしら)」

――動物園

P「ここには前にも仕事で来たんだ。だから、今度は俺が頼子を案内する番だな」

頼子「あ…それならお願いがあります…手を」スッ

P「え!」

頼子「手を…引いてください…私が迷子にならないように…」

P「いや…それは」

頼子「今日の私はPさんのボディーガードですから…
これには、Pさんをしっかり守る、という目的もあるんです…いいでしょう?」

P「ま、まあそのくらいは」スッ

頼子「よろしくお願いします」ギュッ

P「…じゃあ、行こうか。まずはそうだな…鳥類エリアでもどうだ?」ギュ

頼子「ふふ、良いですね」


・・・

千秋「…最初から分かっていたけど、完全にデートよねアレ」

文香「しかし年がちょっと離れてますからね…お二人」

都「もしかして……事件の予感ですか?」

千秋「そうね……それもちょっと犯罪の香りのする」


都「しかし意外でした。頼子さんって文香さんと同じく、あまり喋らない…大人しい方だと思っていたのですが」

千秋「でしょう? 頼子ちゃんはどちらかと言えば、感情を隠すのが巧い子…と言うべきかしらね…」

文香「…」

都「文香さんはどうですっ? Pさんと手をつないだりしたことあります?」

文香「私が…ですか? 本でしか読んだことないです……あんな事……私には……出来ません」プイッ

都「ふふーん、文香さんもウブですねえ。都はしょっちゅうありますよっ!
しかもですよ? Pさんの方から求めてくるんです! 私って罪作りな探偵ですよねっ?」

千秋「それはあなた……仕事先で事あるごとに現場検証だとか言ってあちこち動き回ってるからでしょ……」

都「ち、千秋さんっ。それは言わない約束で」

文香「私が…Pさんと…考えたこともなかったです…でも…まあ、想像してみると…Pさんとなら」ボソボソ

千秋「(あらまあ…)」

頼子「あれは、何て言う鳥なんですか」

P「ショウジョウトキのヘンリーくん。この園には一匹しかいないけど…本当は、マングローブ林の中で群れている鳥なんだよ」

頼子「名前まであるんだ。……でも…道理で寂しそうにしているわけです」

P「えっ、そうなのか?」

頼子「だって私も……少し前まではそうでしたから」ギュッ

P「よ、頼子っ…?」

頼子「次に行きましょう? あの子にも…良い人が現れるといいですね」クス

P「と、鳥だけどなっ。じゃあ次は――」

・・・

都「千秋さん!! Pさん見つけましたか?」タタタ

千秋「はぁ、はぁ……駄目だわ……」

文香「す、すみません二人とも……私があらぬ事に思い耽って固まってしまったために……」カアァ

頼子「あれはコアラですね」

P「ああ、コアラだな」

頼子「木にしがみついてますね…まるで今の私とPさんのよう」ギュ…

P「そうだな…見た目は可愛いが、鋭い爪をしているな」

頼子「! どういう意味でしょうか……」

P「腕…痛いんですけど」

頼子「す、すみません…見るのに夢中になって…つい強く」パッ

P「ははは」

頼子「…はっ」

頼子「…」ギュッ

P「とりあえず、腕組みは続行なんだな」

頼子「…」コクリ


・・・


千秋「うーん、Pさんどこ行ったのかしら」

都「もしや、もう出てしまったとか!」

文香「こうなったら…電話、かけてみます?」

千秋「そ、それはさすがにまずいわよ」

梨沙「お困りのようねっ!!」バァ~ン!!!


文香「!」

千秋「ま、的場さんっ?! どうしてここに……」

梨沙「何でって、それはオフだから……パパとデートに決まってるじゃない」フフン

都「ああ、ご家族で遊びに来たんですね? なるほど」

梨沙「ち、違うわよー! デート! これはれっきとしたデートで、ママはただの付添人なのーっ!」プンプン

千秋「(別にお母様の事、聞いてもないのに…)」

文香「梨沙ちゃん…それで、Pさんの事で何か?」


梨沙「そうそう…アンタ達、プロデューサーを探してるんでしょ?

さっき向こうのコアラの檻で見かけたわよ。それも、このアタシをハグしたコアラのいる檻の近くでねっ!!」

都「おおっ、実に重要な手掛かりを頂きましたね! ありがとうございます梨沙ちゃん」

梨沙「お礼だなんていらないわよっ…アイドルは助け合い、でしょ?」フフン


千秋「ところで的場さん、そのお父様(とデートの付添人)はどうしたの?」

梨沙「あっ……」

文香「…見たところポーチ以外はこの季節にしてはいたって身軽な装い」

都「謎は全て解けました! 梨沙ちゃん、あなたつまり迷g――」

梨沙「う、うるさァーいっ!!」カアア

梨沙「お願いだからっ…んぐ…迷子センターに連れで行くのだけは…それだげはやめでっ!
っひっぐ…パパにごんなどごろ見られたらアタシ……アダジっ!」グスン

文香「大丈夫ですよ…連れてきませんから…泣かないで…ね」ナデナデ

千秋「(どちらにせよお父様の方からアナウンスするのでは……まあ、いいか)

なら、的場さんもお父様を見つけるまで、Pさんの追跡に参加しましょう?
聞くところによると、Pさんは梨沙ちゃんのパパの携帯番号を知っているそうだし」


都「むむ、そうしたら尾行がばれることになるのでは…」

千秋「安斎さんっ」

都「わ、わかりましたよ…しかし、せっかくの探偵活動が…ううぅ」

梨沙「ぐすん…一応…お礼を言うわ…ありがとう」ズズッ

文香「アイドルは助け合い…ですからね」ナデナデ

P「――ああ、そうでしたか……分かりました。では、見つけたら折り返し連絡入れますね」ピッ

P「ごめん、頼子。話を途中で切っちゃって」

頼子「電話なら仕方ありませんよ。梨沙ちゃんのお父様からですか」

P「御明察の通りで。迷子センターは梨沙のプライドが許さないようなので……あと10分は待ってほしいそうだ」

頼子「えっ…だ、大丈夫ですか…? いくら園内だからと言って…女の子を一人にして…しかも対応を遅らせるなんて」

P「だろうな――だから、頼子には本当に悪いけど動物園巡りはここまでにして、これから梨沙を探そうと思うんだ」

頼子「!」

P「頼子も…手伝ってくれるか?」

頼子「もちろん! もしも放っておこう…なんて言い出したら…私…っ…!!」ギュ…

P「ふふ、ありがとうな。それじゃあ、俺は爬虫類館の近くを探すから、頼子はそっちのペンギン館あたりを頼む」

頼子「はいっ」

・・・
・・


P「さすがにここらへんにはいないかなぁ…」prrr...

P「ん? 電話か。的場さん、梨沙でも見つけたかな…って、文香からか」ピッ

P「もしもし?」

文香『…Pさん? …今どちらにいますか?』

P「動物園だよ。それがどうかしたのか?」

文香『梨沙ちゃんを見つけたので…合流したいんです』

P「えっ、どうしてお前がそれを……」

文香『本人が…迷子センターのお世話になるのを嫌がっているもので』

『ちょっ文香さんそれは言わないで――』ギャーギャー

『はいはい、的場さん落ち着きなさい』

P「(的場さんの言うとおりだ)そうかい…分かった。じゃあ、コアラのところで落ち合おうか」

文香『了解しました』

園内の噴水広場にて



頼子「…見つかって良かったですね」

P「でも驚いたよ? まさかお前達も来ていたなんてなあ」

都「え、えへへ……」

P「それにしては…都に千秋に文香……こう言っちゃ何だが、奇妙な組み合わせだ。お前ら、そんなに仲良かったっけ」

千秋「べ、別に良いじゃないっ、文句あるの?」ギク

文香「で…ですよね…」

頼子「……」ジー


梨沙「――ふん」

P「機嫌直せよ梨沙。パパに見られたくないところ、見られなかっただけマシだろ?」ポンポン

梨沙「アンタにばれたってことは……パパに見られたも同然なのよ!! もーっ!!」ウワーン

P「あはは、そうかも……っていうか、そもそもその事で的場さんと話済みだし――あ、やべ、これ言っちゃいけな」

梨沙「」プルプル

頼子「もう……Pさんたら…ひと言余計な事を」

梨沙「本当にバレてたの……だ…だましてたのねっ…」プルプル


P「う…これはまずいな…しかし梨沙……別に俺の方からでなくって、的場さんからだな…」タラ

梨沙「これでもくらえ!!」バッ

P「うおっ?!」

頼子「Pさん!!」

都「で、出た!! 梨沙ちゃんの必殺マトバキックだ!!」オオオ!!

みく「そうはさせないにゃ!」ドン

梨沙「わっ」

都「キックが防がれたっ?!」

P「あっ――」

千秋「ま、前川さん?!」

みく「ふふっ、こんなところで偶然Pチャン達に会えるなんて……ついてるにゃぁ」

みく「それにしても梨沙チャン。Pチャンも梨沙チャンのパパも、梨沙チャンの事が心配だったはずにゃ。
たとえ今の梨沙チャンのことを笑ったとしても、決して馬鹿にしたりはしてないはず……むしろ無事で安心しているくらいだにゃ」


梨沙「ま、前川先輩…その…ごめんなさい」

文香「(今Pさん…思いっきり笑ってましたけどね…)」

千秋「(言わぬが花、よ)」

都「あれ、そのPさんは?」

みく「!」

梨沙「ええと……今、先輩が庇う形で突き飛ばしたから……」

頼子「あ…噴水からPさんの足が」

P「…」ブクブク

みく「げっ!! Pチャ~~~ン!!」



P「ぶるるっ、うおおお寒ぅ……おのれ前川……今度出演のドラマ、
脚本家に頼んで、食事シーンにサバ味噌でも追加してもらおうかな……」

ピンポーン

P「おや、こんな時間に誰だろう」

P「はいはーい」ガチャ

頼子「こんばんわ…」

P「よっ、頼子っ?!」

頼子「お身体の方は大丈夫ですか?」

P「まあ、ちょっと良くなったかな。月曜までには治すつもりだけどさ……」

頼子「良かった……じゃあ、お邪魔しますね」

P「おいおい風邪移したら洒落にならんぞ? 自分の面倒くらい自分で」グゥウ…

P「あ…」

頼子「ふふ、何か温かいものでも作りますから……ね?」

頼子「~♪」コトコト

P「…悪いな……本当に、心配かけさせて」

頼子「お気になさらず。さあ、出来ましたよ」


P「おお、たまご粥。ありがとうな、頼子…では、いただきまs 熱っ!!」

頼子「あらあら……Pさん、如何です? ――ふーふー、してあげましょうか?」

P「あ……いや、それはさすがに……」

P「…」

頼子「? どうかしました?」

P「いや……何だか今日の頼子はいつもと違うな……って」

頼子「Pさん、今何時ですか?」

P「え、YY時だけど…あ、この時間は確か……」

頼子「すっかり忘れていたようですね……まあ、今日は色々ありましたから」

P「ああ、でもどうやら賊は諦めてくれたようだな? 今は近くにいるのは頼子だけだし……」


頼子「…そうですね」スッ

P「あの…頼子…さん? ち、近いんですけど」

頼子「それは近づいているからですよ、Pさん」ギュ

P「?!」

頼子「この距離なら、もう耳を誤魔化せませんね」

P「(み、耳に頼子の息が……)」


頼子「Pさん……私、言いましたよね…。『Pさんの心を頂きに参上します』って…ね」

P「ま…まさか……怪盗フルサワーって……」ゾクッ

頼子「(この人…本当に気づいてなかったのね)」

P「頼子、お前…(いかん…頭がぼうっとしてきた…)」

頼子「安心してください。別にご飯には何も盛っていませんから…きっと単に熱が上がってきたんでしょう」

頼子「だから風邪がひどくならないうちに……いえ、今だからチャンスなのかな」ギュッ

P「!」


頼子「Pさんに出会って…アイドル活動もして…私の世界は大きく広がりました」

頼子「アイドルになった私の役目はみんなの心を奪う事…でも、それは貴方だって例外じゃない…」

頼子「誰かに奪われる前に奪おうと思うの…たった一つ大切な…Pさんの心…それがあれば私は何だってできる…」

P「頼子、俺は――」

頼子「Pさん、私ね……」

バダン!!

P・頼子「!!」

都「決定的現場を捉えましたっ!!」タタッ

千秋「間に合ったようね」

P「お、お前ら何で……」

千秋「御見舞いに決まっているじゃない、あと…」

都「古澤頼子、いや怪盗フルサワー!! Pさんの心を奪おうとした容疑で身柄を確保です!」ガシッ

頼子「きゃっ…う…あと少しだったのにっ……」ガクッ

文香「…」

P「ん? 文香……どうした?」

文香「それが…Pさん宛に…こんな手紙が届いたんです」スッ

『12月ZZ日AA時、Pさんの心を頂きに参上します。 
              ――怪人サギサワーより』

頼子「…」

千秋「…」

P「えっ…?!」

文香「今日の幸せそうな頼子ちゃんを見て……わt…怪人サギサワーも、少しPさんに興味が出たようです」


文香「(一人では届かない夢……Pさんとなら……叶えられる)」

都「おお! また事件の予感!!」

頼子「文香さn…怪人サギサワー、私…負けませんよ?」

文香「……私、結構本気ですよ」

P・千秋・都「(隠す気ないし!!)」



 こうして、怪盗フルサワーと怪人サギサワーの戦いの火ぶたが切って落とされた!!
――果たしてPの心をつかむのはどちらなのか? そしてPの明日はどっちなのか?!



つ づ か な い

エピローグ

「前川さん、しばらく控室の方でくつろいでください」

みく「…はいにゃー」ガチャ

みく「ふふふ……ついにみくもドラマデビュー! しかも初出演で初主演!! Pチャンも良い仕事取ってきてくれたにゃあ…」

みく「どれどれ脚本を改めて確認…」ピラ

『前川、サバを頬張ったまま登校途中の曲がり角で●●とぶつかる』

みく「えっ…ひどくないこの脚本?!」



 その後、Pの心を狙った予告犯罪が手紙やSNSを中心に多発したり、
千川議員が「創作における突発性難聴の描写を禁止する法案」を提出したことが物議を醸したり、
梨沙の結婚式に向かう途中、Pが通り魔に刺されたりするのだが、それはまた別のお話……


<今度こそおわり>

>>21
×:千秋「ところで的場さん、そのお父様(とデートの付添人)はどうしたの?」
○:千秋「仰る通りだわ…ところで的場さん、そのお父様(とデートの付添人)はどうしたの?」

>>22
×:聞くところによると、Pさんは梨沙ちゃんのパパの携帯番号を知っているそうだし
○:聞くところによると、Pさんは的場さんのパパの携帯番号を知っているそうだし


短い話を長々続けましたが、読んでいただきありがとうございます。
忘年会シーズンは酒と風邪に気をつけましょう。

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