織莉子「鹿目まどかとの対話を試みる」(313)

織莉子「猫さん、猫さん……こっちよ」

エイミー「にゃー」

織莉子「よしっ、捕まえた…と」

キリカ「それで、ここで待っていればその、鹿目まどかだっけ?が来るのかい?」

織莉子「ええ、そのはずよ。本来、ここでこの猫は事故にあう。そして弱っているところを見掛けた鹿目まどかは、魔法少女の契約をするはずよ」

キリカ「……ふむ」

織莉子「早く来なさい、鹿目まどか……」

10分後―――

キリカ「………」

織莉子「………」

キリカ「……………まだかい、織莉子?」

織莉子「ま、まだよキリカ。まだ10分しか経っていないわ」

キリカ「うーん……」

エイミー「にゃー」モゾモゾ

織莉子「あ、ごめんなさい猫さん。もういいわよ」

エイミー「にゃっ」スタッ スタスタ

織莉子「ふぅ……」

20分後―――

キリカ「…………」

織莉子「…………」

キリカ「…………………来ないよ?」

織莉子「ま、まだよキリカっ!まだ20分しか経っていないわっ!」

キリカ「……本当に来るのかい?」

織莉子「わ、わたしを疑っているの、キリカっ?」

キリカ「そういうわけじゃないけど……」

織莉子「大丈夫、きっと、きっと来るわ!もう少しだけ待ちましょう?ね?」

キリカ「……」

一時間後―――

キリカ「……………」

織莉子「……………」

キリカ「……ねぇ、織莉子」

織莉子「グスッ……」

キリカ「!?」

織莉子「どうして……何故来ないの、鹿目まどか……ヒック」

キリカ「お、織莉子!き、今日はもう帰ろう!ねっ?」

織莉子「来ないはずないのよぉ……早く、来てよぉ……」

キリカ「何も今すぐ世界が滅ぶってわけでもないんだ!当面の問題は解決したんでしょ?なら、ほら、帰ろう?」

織莉子「グス……うん……」

その頃、ショッピングモール―――

さやか「あれ、ねぇまどか……なんかここ、変じゃない?」

まどか「こっちから来たはずなのに……なんか、おかしくない?」

QB「………」


ほむら(くっ……キュゥべえとの接触を阻止出来なかった……!)

織莉子「はぁ……」

キリカ「落ち着いた、織莉子?」

織莉子「ええ、とりあえずは……ごめんなさい、取り乱しちゃって」

キリカ「いや、気にする事はないよ。それより、なんで姿を現さなかったのかな?」

織莉子「わたしにもわからないわ……未来予知の魔法も完全ではないということかしら」

キリカ「うーん……確かその鹿目まどかって子、見滝原中学の生徒なんだよね」

織莉子「? えぇ、そのはずよ」

キリカ「わたしも一応見滝原中学の生徒なんだし、学校で接触するという手もありなんじゃないかな?」

織莉子「………なるほど、その手があったわね」

織莉子「それじゃ明日、鹿目まどかと接触を試みてみましょうか」

キリカ「うん、了解。クラスとかはわからないのかい?」

織莉子「ごめんなさい。さすがにそこまではわからないわ」

キリカ「学年も?」

織莉子「ええ……わかるのは、見滝原中学の生徒であるということくらい」

キリカ「全校生徒の中から一人を探しだすのは大変そうだね……」

織莉子「わたしはひと目見たらわかるわ。明日の放課後に、校門前で鹿目まどかを待つ事にしましょうか」

キリカ「そうだね。織莉子は先に校門前で待っててよ。わたしも、すぐに行くから」

織莉子「そうね、そうしましょうか」

翌日、放課後・校門前―――

ワイワイ ガヤガヤ

織莉子(ここでなら、確実に鹿目まどかと接触出来る筈)

ネードコカイコウヨー イイヨードコイクー?

織莉子(……それにしても、生徒が下校する中一人というのはなかなかにつらいわね……早く来ないかしら、キリカ)

アーチョットマッテヨー ハヤクハヤクー

織莉子(………)

その頃、職員室―――

先生「久しぶりに来たと思ったらろくに授業も聞かず―――」アーダコーダ

キリカ(なんてことだ……まさか先生に捕まるだなんて想定していなかった)

先生「大体呉さん、キミは―――」クドクド

キリカ(織莉子、校門前で待ってるんだろうな……早く行きたいんだけど)

先生「聞いてるのかい、呉さん?」

キリカ「え、あ、ハイ、ハイ。聞いてます反省してます」

先生「なんだその態度は!反省しているのなら―――」ゴチャゴチャ

キリカ(うぅ……いつまで続くんだ、これは……)

織莉子「………キリカも、鹿目まどかも来ない」

アータリィ メシクイニイコウゼー

織莉子「人の数が目に見えて減ってきた……何故来ないの、二人とも……」



まどか「え?あれ?わたし、玄関から出て来たと思ったのに……」キョロキョロ



ほむら(……美国織莉子……まさか学校の前で堂々と待っているとは……まどかとはち合わせる前に気付けてよかった)

約一時間後―――

キリカ「ようやく解放された……」フラフラ

キリカ「織莉子、ちゃんと鹿目まどかと接触出来たかなぁ……」フラフラ

キリカ「あれ、校門前に誰かいる……?」フラフラ

織莉子「…………………………」

キリカ「!? お、織莉子!?」

織莉子「―――……あ、キリカ……」

キリカ「鹿目まどかは!?って、もしかして放課後からずっとここで……?」

織莉子「なんでこんなに遅いのよ、キリカぁぁ!!」ガバッ

キリカ「うわっ!?」

織莉子「一人で寂しかったんだからぁ!」

キリカ「ゴメン、ゴメン織莉子!先生に捕まってたんだ!」

織莉子「うぅっ……!」グスグス

キリカ「……それで?」

織莉子「え、えぇ……鹿目まどかとは接触出来なかったわ」

キリカ「え?ということは、まだ学校にいるんじゃ?」

織莉子「さあ、それはわからないわ。もしかしたらわたしが見落としただけかもしれないし」

キリカ「……うーん、うまくいかないね」

織莉子「そうねぇ……どうしたらいいかしら?」

キリカ「とりあえず、今日はもう帰ろうか。また明日、ここで同じように待てばいいよ。明日も先生に捕まる事はないだろうし」

織莉子「………ホント?」

キリカ「か、確証は無いけどね」

ほむら「その必要は無いわ」スタスタ

織莉子・キリカ「!」

ほむら「久しぶりね。美国織莉子、呉キリカ」

織莉子「……?キリカ、知り合い?」

キリカ「さあ?わたしの記憶に間違いなければ初対面だと思うけど」

ほむら「それはそうでしょうね。でも、わたしは知っているわよ、あなた達のこと」

織莉子「…………ごめんなさい、ちょっと」

ほむら「……」


織莉子「ねぇ、キリカ?もしかしてあの子、危ない子なんじゃないかしら?」ヒソヒソ

キリカ「ああ、わたしもなんだかそんな気がする。初対面って所は否定しない癖にわたしは知ってるってわけわかんないよね」ヒソヒソ

ほむら「……ちょっと?」


織莉子「大体、何よあの子?キリカのクラスメートなんじゃないの?」ヒソヒソ

キリカ「いや、それは……うーん、なまじ否定出来ない所がつらい」ヒソヒソ

織莉子「でも、何故かわたしの名前も識っているのよね。どうしてかしら?」ヒソヒソ


ほむら「わたしの話、聞いてる?」


キリカ「いやホラ、織莉子だって一応はそれなりに有名なんじゃないのかい?そりゃ織莉子は嫌ってるかもしれないけど、美国議員の娘さんなんだしさ」ヒソヒソ

織莉子「うぅっ……そっち方面で知られてるとしたら話なんてしたくないわ。どうしたらいいかしら?」ヒソヒソ

キリカ「………逃げる?」

織莉子「……そうね、そうしましょう」


ほむら「こっちを向きなさい!!」


キリカ「三十六計逃げるに如かず!!」ダッ

織莉子「さよなら、名も知らぬ少女!!」ダッ

ほむら「!?」

~~~

織莉子「キリカっ!あの子、追って来てる!?」タッタッタ

キリカ「いや、追ってきて、ないみたいだ!」タッタッタ

織莉子「それ、じゃ……」タッタッタ…スタスタ

キリカ「ふぅ…まさか夕暮れ時に変な人に遭遇するなんて、ついてないね」

織莉子「全くね。早く家に帰りましょうか」

ほむら「………」

織莉子・キリカ「!?」

ほむら「何故逃げるの?」

キリカ「え、ああああああのいやちょっと」アタフタ

織莉子「お、おおおおおおお落ち着きなさいキリカ!そ、素数を数えて落ち着くのよ!!」アタフタ

ほむら「………」

数分後―――

キリカ「はぁ、はぁ……」

織莉子「はぁ、はぁ……」

ほむら「取り乱し過ぎよ、あなた達……」

キリカ「いや、だって……ねぇ?」

織莉子「走って逃げたのに、気付いたら目の前にいるってどんなホラーよ……」

織莉子「どっ、どうしましょうキリカ?」ヒソヒソ

キリカ「いや、これ多分逃げても無駄だよ織莉子」ヒソヒソ

織莉子「でも!怖いわ、あの人!完全に睨んでるじゃない!」ヒソヒソ


ほむら(またひそひそ話……)


キリカ「大丈夫、いざとなったら身を呈してでも織莉子はわたしが守るから」ヒソヒソ

織莉子「キリカ……ダメよ、勝手に死んじゃ?」ヒソヒソ

キリカ「わたしを信じてよ、織莉子」ヒソヒソ

織莉子「わ、わかったわ」ヒソヒソ


ほむら「……内緒話は終わったかしら?」

織莉子「え、えぇ」フルフル

キリカ「は、話を聞こうじゃないか、名も知らぬキミ」フルフル

ほむら「………」(どうも様子がおかしい……わたしの知っている二人とはあまりにもかけ離れている)

織莉子(ち、沈黙してるわキリカっ!ま、まさか怒ってるのかしら!?)

キリカ(い、いや……もしかしたら、そうかもしれない!さっき逃げた事を根に持っているとか!?)

織莉子(こ、怖い……!)

ほむら「……とりあえず、自己紹介しておくわ。わたしは暁美ほむら」

織莉子「! わ、わたしは美国織莉子と申しますっ!」

キリカ「わたしは呉キリカだっ!」

ほむら「………。ひとつ聞きたい。あなた達の目的はなに?」

織莉子「か、鹿目まどかとの対話です!」

キリカ「他意はありませんっ!」

ほむら(やけに素直ね……)

ほむら「わたしの事、だけれど……これを見せれば、わかるかしら?」スッ

織莉子・キリカ「!」

ほむら「あなた達も、これと似たものを持っているでしょう?」

織莉子(キリカ、キリカ!あれ、もしかしてソウルジェム!?)

キリカ(そ、そうだよ織莉子!間違いない!)

ほむら「……」

織莉子「あ、あぁごめんなさい!そうね、ソウルジェムね、ハイ、識ってますよ!」

キリカ「何を隠そう、わたし達も持ってるんだ!」スッ

織莉子「ぐっ、偶然ね、お、オホホホホ……」スッ

ほむら「それで?」

織莉子「そ、それで、とは……?」

ほむら「鹿目まどかとの対話をするのはわかったわ。その後、どうするのかを聞きたいの」

織莉子「ど、どうすると言われても……ねぇ?」

キリカ「ああ。ただわたし達は、鹿目まどかに魔法少女となって欲しくないというだけなんだよ」

ほむら「………最悪の魔女になる、から?」

織莉子「!」

キリカ「……これは驚いた。真実を知った上で生きている魔法少女に会うのは、初めてだよ」

織莉子「まぁわたし達以外の魔法少女に会ったこと自体初めてなのだけれどね」

キリカ「織莉子、それは言わない約束だろう?」

織莉子「あら、そうだったわねキリカ」

ほむら(……)イラッ

ほむら「………鹿目まどかをどうにかするつもりはない、と捉えていいのかしら?」

織莉子「どうにかと言われても……」

キリカ「契約はしないでくれと頼む以外、何か思い当たる節でもあるのかい、キミは?」

ほむら「……まどかを、殺すつもりとかは?」

織莉子・キリカ「!?」

ほむら「どうなの?」

織莉子「ちょ、ちょちょちょちょっと待ってね!」


織莉子「キリカ、あの人やっぱり怖いわ!軽々しく人を殺すだなんて言い出して!」ヒソヒソ

キリカ「危険人物だ!落ち着いて話なんてしてる場合じゃないよ織莉子!」ヒソヒソ

織莉子「わ、わわわわわたし達も殺すつもりなのかしら!?」ヒソヒソ

キリカ「わ、わからない!でも、相当危険なのは間違いない!」ヒソヒソ

ほむら「答えなさい、美国織莉子、呉キリカ」

織莉子「あ、ああああああそういえばわたし用事があったんだわ!急いで帰らなくっちゃ!」ダッ

キリカ「わ、わたしも織莉子の手伝いをしなくちゃならないから!そ、それじゃね暁美ほむら!」ダッ

ほむら「あっ…。………」

~~~

織莉子「こ、今度こそ、巻いたかしら?」ハァ、ハァ

キリカ「そ、そう思いたいところだけど…」ハァ、ハァ

織莉子「注意深く辺りに気をつけないと……どこから来るかわかったものじゃないわ」キョロキョロ

キリカ「魔法少女というのは、あんな危険な奴ばかりなのか…?」キョロキョロ

織莉子「こ、今度は追ってきていないみたいね」

キリカ「そう、みたいだね……」

織莉子「!」パァァァ

キリカ「ソウルジェムが反応しているね。魔女、かな?」

織莉子「みたいね。……どうする?」

キリカ「いや、一応わたし達も真っ当な魔法少女なわけだし……行くしかないんじゃないかな?」

織莉子「でも、またあの人……ほむらさんにはち合わせるのでは……?」

キリカ「可能性は、高いよね……」

織莉子「……―――!」

――――――――――――――――

『ティロ・フィナーレ!』

『いやったぁ!』

『……―――えっ?』

――――――――――――――――

キリカ「織莉子?どうかしたかい?」

織莉子「……急ぎましょう、キリカ!」ダッ

キリカ「っ、了解!」ダッ

お菓子結界―――

キリカ「ここ、だね」

織莉子「病院に結界を展開するなんて……」パァァァ

――――――――

キリカ「………静かだね」

織莉子「気をつけて、キリカ……どこから使い魔が出て来るか、わからないわ」

キリカ「わかってる、織莉子……」


織莉子「………あら?」

キリカ「? ……あ」

ほむら「っ……さっきぶりね、二人とも」

織莉子「で、出たああああああ!!」

キリカ「お、落ち着いて織莉子!ほら、よく見る!」

織莉子「あああああ……え?」

ほむら「………」

織莉子「……こ、こんなところで、その、ソロSMプレイかしら?」////

キリカ「っ」////

ほむら「どこをどう見たらそうなるのよ!?拘束されているだけよ!!」

織莉子「そっ、そうね……確かに、SMプレイの場合縛り方がソフトすぎるわ」

キリカ「そ、そういう問題じゃないよ織莉子っ!」////

ほむら「こ、こんなところでバカな話をしている場合じゃないわ!お願い、敵対するつもりが無いのならわたしを解放して欲しいの!」

織莉子「え?」

キリカ「え?」

ほむら「何故そこで不思議そうな顔をするのよ!?」

織莉子「……解放した瞬間に襲ってきたりしない?」

ほむら「襲わないわよっ!!

キリカ「ぶ、物理的にも、性的にも?」

ほむら「前者はともかく、後者はもっと無い!!!」

織莉子「そ、そうだ!こんな事をしている場合じゃないわ!キリカ、急ぎましょう!」ダッ

キリカ「わかっているよ!」ダッ

ほむら「ちょっ、行くならわたしを解放してからああああああぁぁぁ……―――」

お菓子結界・中枢―――

ガシャァァァン!

織莉子「ここが中枢ね!」

キリカ「織莉子、あそこ!」

織莉子「っ!」


シャル「アーン」ガパァァ

マミ「………」


織莉子「てやぁ!!」ヒュンヒュン!!

ゴッゴッ!!

シャル「あがっ」ズダァァン!!

キリカ「ナイスショット織莉子!!」

マミ「―――……あ、あれ?わたし、生きてる?」

織莉子「もう大丈夫です、名も無き魔法少女よ!」スタンッ

キリカ「さあ、恵方巻きの魔女!わたしが相手だよ!!」タンッ


さやか「マミさん、マミさん!!」

まどか「だ、大丈夫ですかぁ!?」


織莉子「!?」

マミ「あ、あなた達は……?」

織莉子「かっ、鹿目まどか!?何故ここに!?」

マミ「えっ?鹿目さんの知り合い?」


キリカ「しぶっといね!!これでトドメだよ!!」スパスパァン

シャル「」ズドォォォォン ボロボロ…

キリカ「一丁上がりってね!」ビシッ

ズアアアアアァァァァァ……

キリカ「織莉子、織莉子!グリーフシードゲットしたよ!」

織莉子「お疲れ様、キリカ。いい子いい子」ナデナデ

キリカ「ふふ……」

マミ「………」

ほむら(結界が崩れた……まどかも、マミも、さやかも、生きている……それに、あの二人も)

キリカ「ん、キミ達は…?」

まどか「マミさぁぁん!」

さやか「無事でよかったぁ!あの、ありがとうございますっ!!」

織莉子「え、えぇ、それはいいのだけれど…」

織莉子「あの、あなた、鹿目まどかね?」

まどか「え?はい、そうですけど…」

キリカ「この子が、わたし達が探してた……」

まどか「あれ?確かあなたは…」

織莉子「自己紹介が遅れましたね。わたしの名前は美国織莉子。そしてこっちの子が……」

まどか「呉キリカさん……ですよね?」

織莉子・キリカ「!?」

さやか「あれ、まどかの知り合い?」

まどか「確か、手芸部の先輩……ですよね?」

キリカ(お、織莉子以外にわたしの事を知ってる人が……っ!!?)

織莉子「キリカ?あなた、知り合いだったの?」

キリカ「え、ああああああいやいやいやうん、そういえばそうだったね」アタフタ

まどか「?」

ほむら(意外だったわ……まどかは呉キリカと顔見知りだったのね)

ほむら「……わたしからも礼を言うわ、織莉子、キリカ」

織莉子「っ!」(すっかり忘れていた……っ!!)

ほむら「拘束されているわたしを置いて先に行ったのはいただけないけれど、マミを助けてくれてありがとう」

織莉子「い、いえ、それはいいのよ。わたしも、たまたま未来予知の魔法で見えただけなのだし」

キリカ「こうして見返りのグリーフシードも手に入れたしね」

織莉子(キリカ、さっきの事また根に持っているわ、彼女)

キリカ(いや、まぁ、仕方ないんじゃないかな)

マミ「あなた達も……魔法少女なのね」

織莉子「ええ、そうですよ」

キリカ「暁美、キミはもしかしてこうなる事を知っていたのかい?」

ほむら「……ええ、まあね」

織莉子「まさか、あなたも未来予知の魔法を?」

ほむら「いえ、そうではないわ」

織莉子「……色々と気になることはあるけれど、とりあえず今は置いておきましょう」

キリカ「今は、そうだね。鹿目まどか」

まどか「!」

キリカ「キミと、話がしたいんだ。いいかな?」

まどか「え、あ、えっと……」

ほむら「………わたしも同席させてもらっても構わないかしら?」

織莉子「え、それは……」

ほむら「……」ギロッ

織莉子「カマイマセンヨ、オホホホホ」

ほむら(まどかと、三人きりにはさせられないわ……いざとなったら、わたしが二人を……)

織莉子(キリカぁぁ!なんだか殺気を感じるわ!)

キリカ(ぐ、偶然だね織莉子。わたしもなんだか殺気を感じるよ)

マミ「わ、わたしは……」

ほむら「あなたは家に帰りなさい。そして、一般人を巻き込んだ事を反省しなさい」

マミ「………」

織莉子「ほ、ほむらさん、その言い方はいかがなものかと……」

ほむら「まどかもさやかも無事だったからよかったものの、あなた達が来ていなかったら二人はどうなっていたの?考えてごらんなさい」

さやか「……」

まどか「……」

マミ「……ごめんなさい、鹿目さん、美樹さん。危険に晒してしまって……」

さやか「い、いやいや!あたしたちが首を突っ込んだだけですから!ね、まどか?」

まどか「そっ、そうですよ!」

マミ「二人とも……」グスッ

織莉子(わたし達、置いてけぼり食らってない?)

キリカ(間違いなく食らってるね)

さやか「あ、あたしはマミさんと一緒に帰るから!」

まどか「え?さやかちゃん、来ないの?」

さやか「マミさん、放っておけないしさ」

マミ「………」

まどか「そっか……うん、わかった」

ほむら「美樹さやか。巴マミの事、お願いね」

さやか「! 転校生……」

ほむら「わたしは、まどかと一緒に織莉子達と話があるから。……ね?」

さやか「……了解。マミさん、帰りましょう!」

マミ「えぇ……」

さやか「そんじゃ転校生……いや、ほむら。まどかのこと、よろしく。あの二人、悪い人じゃなさそうだし、なんともないと思うけどね」

ほむら「だといいけれど……」

織莉子邸―――

織莉子「はい、紅茶」カチャ

まどか「あ、ありがとうございます」

キリカ「いやいや、気にする事ないよ鹿目」

まどか「あの……キリカさん?」

キリカ「ん、なにかな?」

まどか「いえ、こうして話をするのは初めてかな、って」

キリカ(わたしはそもそも忘れてたけどね)

ほむら「まどか、キリカの話は今はいいわ。織莉子、話があるのでしょう?」

織莉子「え、えぇ……鹿目まどか」

まどか「は、はい!」

織莉子「単刀直入に言うけれど……あなたに、魔法少女になってほしくないの」

まどか「………え?」

織莉子「柄にも無くシリアスな話をさせてもらうけれど……それが、わたしが話したかったこと」

キリカ「うん、そういうことだ。なんか、放っておいたら大変な事になりそうでね」

まどか「た、大変なことって、その……?」

ほむら「待ちなさい、織莉子。あなたまさか……」

織莉子「……」

まどか「ほ、ほむらちゃん?」

ほむら「……いえ、ごめんなさい。なんでもないわ」

織莉子「先に、わたしの魔法について教えておきましょうか。わたしの魔法は、未来予知の魔法。それによって、あなたが魔法少女となって暴れまわっている未来を垣間見たわ」

まどか・ほむら「!?」

織莉子「それはもう、修羅の如く……ビルを破壊したかと思うと、一般人を虐殺して、大地を抉って……」

キリカ「………」

まどか「ちょっ、え?嘘?わ、わたしが?」

織莉子「見てるだけでドン引きだったわ……思い出すだけで恐ろしい」

キリカ「わたしは直接見たわけじゃないけど、織莉子の言うとおりだよ、鹿目」

まどか「え、あ、あの……」

ほむら(………何を考えてるのかしら、この二人は……?)

織莉子「今は、まだ契約はしていないのよね?」

まどか「は、はい……」

織莉子「あなた、破壊願望があるのかしら?」

まどか「そ、そんなことは無いですけど……」

織莉子「では、わたしが見たあの光景はどう説明するつもり?」

まどか「………」

ほむら(……なるほど、そういうことね)

織莉子「わたしの未来予知が完全に当たるとは限らないけれど……もしそうなったら、大変よ?」

まどか「……………」

織莉子「わかったなら、魔法少女の契約はしないと約束して?」

まどか「は、はい……わかりました。あ、でも……」

キリカ「何か、心残りでもあるのかい?」

まどか「わたし、マミさんと約束しちゃってて……今日の魔女を倒したら、わたしが契約してマミさんと一緒に戦うって……」

ほむら「それなら心配は無いと思うわ」

まどか「え?」

ほむら「彼女は、孤独に戦うのがつらかっただけ。わたしや織莉子、キリカがいるのなら、そもそも彼女は一人ではなくなるもの」

まどか「……」

織莉子「もし巴さんがそれについて言ってきたら、わたし達が弁解します。なので、あなたは契約したらダメですよ?」

まどか「………ちょっと、信じられない、です」

織莉子「何が、ですか?」

まどか「わたしが、魔法少女になって暴れていた、というのが……」

織莉子「そ、それは……」

キリカ(織莉子、何か信じさせられる材料はないのかい?)

織莉子(信じさせるもなにも、全てデタラメなのよキリカ?)

キリカ(う、うーん……なら、どうしようか……)

ほむら「わたしの言葉なら、信じられるかしら?」

織莉子・キリカ「!」

まどか「ほむらちゃんの言葉?」

ほむら「ええ。実はわたし、未来から来たの」

織莉子・キリカ・まどか「!?」

ほむら「魔法少女はね、絶望したらその力が暴走するのよ?」

まどか「ど、どういうこと!?」

ほむら「どういうもなにも、そのまま。自棄を起こして、所構わず暴れまわる」

織莉子(そっ、そうなのキリカ!?)

キリカ(わ、わたしに聞かないでくれ!)

ほむら「わたしが元いた未来では、そういう形で暴れまわるまどかを見たこともあるわ」

まどか「………」

ほむら「わたしは、そんなあなたを見たくない。だから、わたしもあなたには契約して欲しくないのよ」

まどか「そう、なんだ……」

織莉子(こっ、怖いわキリカ。ほむらさん、いきなり暴れたりしないかしら?)

キリカ(あ、ありえないと否定できないのが恐ろしいっ……!)

ほむら「もちろん、わたしの言葉にも証拠は無い。だから信じるかどうかはあなた次第よ、まどか」

まどか「………今日の魔女のところにほむらちゃん、来てくれたよね。マミさんを助ける為に」

ほむら「……そうね」

まどか「そんなほむらちゃんの言葉を、疑うようなことはしたくない、かな」

ほむら「まどか……」

織莉子・キリカ(同じ匂いを感じる……!)

まどか「それでも、イマイチ信じきれないけど……うん、わかったよ」

織莉子・キリカ・ほむら「!」

まどか「契約は、もう少し慎重に考えてみるよ」

織莉子(な、流れが……)

キリカ(変わった……!!?)

まどか「話は……それだけ?」

織莉子「そ、そうだけど、ちょっと待って!」

まどか「?」

織莉子「慎重に考える、じゃ安心し切れないわ!契約しないって、しっかりと約束して欲しいの!」

キリカ「そ、そうだ!頼む、鹿目!」

まどか「え、あ、その……」

ほむら「無理強いはよくないわ、二人とも」

織莉子「ほ、ほむらさん……」

ほむら「慎重になる、という言葉だけでも十分な収穫なんじゃない?」

キリカ「む、むぅ……」

織莉子「……わかったわ。それなら、ひとつだけ」

まどか「はい、なんですか?」

織莉子「もし、契約してまで叶えたい願いが出来た場合……そうね、まずは周囲の誰かに相談して欲しいの。巴さんでもいいし、ほむらさんでもいい。わたしでよければ、わたしでも」

キリカ「今後はわたしも学校には普通に通おうと思うし、わたしでもいいよ、鹿目」

織莉子「わたし達で力になれることがあったなら、力になるわ」

まどか「織莉子さん……キリカさん……」

織莉子「そう、約束してくれる?」

まどか「はい、わかりました」

ほむら「………ありがとう、二人とも」

織莉子「! ほむらさん……?」

まどか「それじゃ、紅茶、ごちそうさまでした」

織莉子「ええ。帰るのかしら?」

まどか「はい。もう、遅いですし」

キリカ「家まで、送ろうか?」

まどか「あ……それじゃ、お願いします」

キリカ「うん。織莉子、ちょっと行って来るね」

織莉子「わかったわ。まどかさんの事、お願いね」

キリカ「わかってるよ。行こうか、鹿目」スタスタ

まどか「それじゃ、また……」スタスタ

織莉子「…………っ……―――はぁぁぁぁ~~~~……」

ほむら「ずいぶん長いため息ね……」

織莉子「それは、そうよ……ようやくひと息つけたって感じだわ……」

ほむら「それにしても、何故ここまで穏便に話を済ませようと?」

織莉子「え?」

ほむら「………」

織莉子「穏便に……と言われても……。これが普通、じゃないかしら?」

ほむら「普通……」

織莉子「前にほむらさんが言ってたわね。鹿目まどかを殺すつもりなんじゃないのかって」

ほむら「ええ」

織莉子「わたしにはむしろ、何故そんな物騒な話になったのかの方が疑問なのだけれど?」

ほむら「……これは、話してもいいものかどうかわからないのだけれど……」

織莉子「?」

ほむら「わたしにとって、忌まわしい記憶。……聞きたい?」

織莉子「話してくれるのなら、是非」

ほむら「……いいわ。いつまでももやもやしてるのも、嫌だし」

――――――――――――――――

――――――――――――――――

ほむら「…………」

織莉子「…………」

ほむら「わたしが体験した、ひとつの時間軸。どう?信じられる?」

織莉子「グスッ…」

ほむら「!?」

織莉子「ほ、ほむ、ほむらさん、そんなに一途に、まどかさんの事を……っ!」ボロボロ

ほむら「な、何故あなたが泣くのよ?」

織莉子「いい話じゃないのよぉぉ!」ボロボロ

ほむら「い、いいからとりあえず涙、拭きなさい!顔、酷いことになってるわよ!?」

織莉子「グスッ……ズビーッ」

~~~

織莉子「ふぅ……」

ほむら「その様子だと、疑ったりは、しないのね?」

織莉子「それはそうよ。あなたを疑う理由が、どこにあるのかしら?」

ほむら「………」

織莉子「でも、それなら、何故あなたはこうしてわたしと穏やかに話を……?わたしとキリカが、憎いんじゃ?」

ほむら「少なくとも、あの時間軸のあなた達は憎いわ。それこそ文字通り、殺しても殺しきれないくらいに」

織莉子「こ、怖いわね……じゃあ、この時間軸でのわたし達は?」

ほむら「……そうね。油断だけは、見せないようにしようとは思っているわ」

織莉子「ふふ……信用されていないのね」

ほむら「あなた達がした事を考えてみなさい。信用しろって方が無理よ」

織莉子「……そう、ね」

織莉子「迷惑を掛けたみたいで、ごめんなさい」

ほむら「!」

織莉子「こんな程度で、許してもらえるとは思わないけれど……」

ほむら「………」

織莉子「………」

ほむら「………………………」

織莉子「………………あ、あの、ほむらさん?」

ほむら「何?」

織莉子「その、こう言う時は、頭を上げてとか、そういう事を言うモノでは……?」

ほむら「反省しているなら、黙って頭を下げ続けなさいよ」

織莉子「は、はいぃっ!」

ほむら「……ふふ、なんてね。冗談よ、織莉子」

織莉子「……!」

ほむら「もう……頭を上げなさいよ」

織莉子「ほ、ほむらさん……」

ほむら「あの時間軸のあなた達と、今ここにいるあなた。無関係とは言わないけれど、今のあなたに関してはもういいわ。誠意も感じられたし、ね」

織莉子「「そ、それじゃ……?」

ほむら「信用、させてもらうわ」

織莉子「あ、ありがとうほむらさん!」ガシッ

ほむら「!」

織莉子「あなたがいれば、わたしの世界を守れる確率は更に上がる気がするわ!」

ほむら「全く、大げさね……」

キリカ「織莉子!ただい……ま……?」

織莉子「あら、キリカ。お帰りなさい」

ほむら「……どうかしたの?」

キリカ「お、織莉子……信じてた、のに……」

織莉子「え?」

キリカ「うわあああああ!織莉子に浮気されたあああああ!!」

織莉子「ああっ!こ、これは違うのよキリカ!?」

ほむら「ふふ……騒がしい二人ね」

キリカ「なんだ、そういう経緯だったのか」

織莉子「わたしが浮気するわけないでしょう、キリカ?わたしはあなただけを見てるから……」

キリカ「織莉子……うん、疑ってゴメン」ギュッ

織莉子「キリカ……」

キリカ「織莉子……」

ほむら「あの」

織莉子・キリカ「っ!!」ズザザァァ!!

ほむら(完全にわたしの存在を忘れてたわね、二人とも)

織莉子「ご、ごめんなさいほむらさん!」

キリカ「い、いやいや、全く!あ、あはは!」

ほむら「それじゃ、わたしの方からの本題に入らせてもらってもいいかしら?」

織莉子「本題?」

ほむら「ええ。ワルプルギスの夜について……」

織莉子・キリカ「!」

ほむら「未来予知で見たんなら、ワルプルギスの夜についても知っているわよね?」

織莉子「……ええ。鹿目まどかが魔女となる前にこの街に訪れる、歴史に名を残す大型魔女……」

キリカ「わたしとキリカは、その魔女を撃退しようと考えていたんだけどね。そいつがどうかしたかい?」

ほむら「撃退……ね」

織莉子「ほむら、さん?」

ほむら「わたしにマミ、それにあなた達……あと、心当たりがもう一人いるのだけれど。全員揃えば、撃退どころか討伐出来るって思わない?」

織莉子「討……」

キリカ「伐……?」

>>120
間違えた…上から七行目は「わたしとキリカ」じゃなくて「わたしと織莉子」だよ…

ほむら「ええ。撃退でもいいと言えばいいのだけれど、それだと根本的な解決にはならない」

織莉子「まぁ、倒せるのならば倒すべきだとは思うけれど」

キリカ「しかし、歴史に名を残す程の魔女だぞ?倒せるのか?」

ほむら「全員揃えば、或いは」

織莉子「全員……ね」

キリカ「えーと、わたしと織莉子と、ほむらと、巴と、あともう一人心当たりがあるんだっけ?それだと、五人になるのか」

ほむら「そうね。もう一人についてはまだどうなるか、わからないけれど」

織莉子「ワルプルギスの夜……それほどまでに、強いの?」

ほむら「ええ。強いわ」

織莉子・キリカ「………」

ほむら「まずは、あなた達に協力を要請したい。いい、かしら?」

織莉子「ええ、それはもちろん」

キリカ「この街は、わたしと織莉子にとって大切な場所だからね」

ほむら「………ありがとう」

織莉子「むしろ、わたし達にとっても願ったり叶ったりよ」

ほむら「それでも、ありがとう……っ」

キリカ「……ほむら?」

ほむら「っ……ごめんなさい」ゴシゴシ

織莉子「……大変な想いを、してきたのね」

ほむら「………」

織莉子「ええ。力になるわ。わたしも、キリカも。だからあなたも、わたし達に力を貸して?」

ほむら「それはっ……もちろんよ!」

ほむら「それじゃ、最終目的は……」

織莉子「ワルプルギスの夜」

キリカ「それの撃退、可能ならば撃破」

ほむら「その為に、いくつか解決しておきたい事があるの」

織莉子「なにかしら?」

ほむら「美樹さやか……わかる?」

キリカ「今日、鹿目や巴と一緒にいた少女の事かな?」

ほむら「ええ、そう。彼女の契約も、阻止したい」

織莉子「これ以上、魔法少女が増えても大変だものね……それについては、わたしも賛同するわ」

ほむら「わたしは、美樹さやかの監視をするから……あなた達には、別行動を取ってもらいたいの」

織莉子・キリカ「?」

―――――
―――

翌日、病院・上条恭介の病室―――

コンコン

恭介「? はい、どうぞ」

ガララ

織莉子「こんにちは、上条恭介くん」

恭介「どなたですか?」

織莉子「通りすがりの占い師です」

恭介「う、占い師?」

織莉子「あなたの未来を、占ってあげようと思いまして」

恭介「僕の、未来……?」

―――――
―――

隣町・風見野―――

杏子「ふんふ~ん……っと……」

キリカ「やあ、こんにちは、佐倉」

杏子「あん?誰だ、あんた?」

キリカ「こういうものだ」スッ

杏子「! 魔法少女……」

キリカ「まぁ、なんだ。ここじゃひと目につく。場所を移動しようじゃないか」

杏子「………」

―――――
―――

夜・町外れの工場―――

織莉子「結界は、ここね」パァァァ


織莉子「さて、どこに……」ユラユラ

まどか「だ、誰か……」

織莉子「いた!まどかさん!」ヒュヒュン

バキバキィ!

まどか「! お、織莉子さん!?」

織莉子「この魔女は、わたしが倒します!」

エリー「キャハハ……」

使い魔s「アハハハ」

織莉子「わたしの邪魔は……―――!!」


ザザザ…

美国議員の―――
               綺麗な薔薇―――
                          出来た娘だ―――
         よくやったね、織莉―――                   お父様は、わたしの―――
美国久臣の不正疑惑―――             美国じゃない、わたしは―――

ザザザザ……


織莉子「っ……いや、わたしは……!!」

エリー「キャハハハハハ!」

織莉子「こ、この魔女が……っ!」ヒュヒュッ

バキャッ!

エリー「アハハ!?」

織莉子「この程度、なんてことありません……!!」ドドン

グシャァァァァ!!

ボロボロ……ズアアアアアァァァァァ―――

まどか「あ、あの、織莉子さん?」

織莉子「はぁ、はぁ……」

まどか「大丈夫、ですか?」

織莉子「……心配してくれて、ありがとう……大丈夫、もう何ともないわ」

まどか「………」

織莉子「危ない所だったわね、まどかさん」

まどか「いえ……助かりました」

織莉子「ふぅ……嫌な汗をかいたわ。気を失ってる方々も、時間が経てば気がつくはずよ。長居は無用ね」ギュッ

まどか「え、え!?」

織莉子「退散と行きますよ!」タンッ

まどか「う、うわ!すごい!」

風見野の町外れ・教会跡―――

キリカ「はぁ、はぁ……手こずらせてくれたね」キィン

杏子「っ……ちっ、強いなアンタ。名はなんてぇんだ?」

キリカ「わたしの名は呉キリカだ」

杏子「呉キリカ……な」

キリカ「さて、わたしが勝ったんだ。話を聞いてもらおうか?」

杏子「言われなくってもわかってる……この街を出てくよ」

キリカ「いやいや、そんな話じゃないんだ」

杏子「?」

キリカ「とりあえず佐倉、アンタ巴と仲直りするんだ」

杏子「はぁ!?なんだアンタ、マミの差し金か!?」

キリカ「そうじゃない。キミが巴と仲良くしてくれないと、わたし達が困るんだよ」

杏子「……詳しく話を聞こうか」

キリカ「ああ。ワルプルギスの夜……聞いたことはあるだろう?」

杏子「……ワルプルギス………」

キリカ「その魔女が、近々見滝原にやってくるんだ。わたし達は、それと戦う為の戦力を集めてる」

杏子「その戦力に、加われってのか?」

キリカ「嫌とは言わせないよ?このまま、わたしがちょっと手首をひねったらどうなるか……わかるだろう?」

杏子「………」

キリカ「ま、とりあえずは大人しく見滝原まで来てもらおうか」

杏子「……仕方ねぇな。どの道、あたしは負けたんだ。大人しく従うよ」

キリカ「そう来なくちゃ」

深夜・織莉子邸―――

ほむら「………驚いた」

織莉子「?」←手の中にハコ魔女のグリーフシード

キリカ「何がだい?」

杏子「………」

ほむら「まさか、こうまでうまく行くなんて……」

杏子「悪かったな、弱くって」

キリカ「いや、強かったけどね佐倉は」

杏子「はん、お世辞なんていらねーよ」

ほむら「自己紹介が遅れたわね。わたしの名前は暁美ほむら」

杏子「……佐倉杏子だ」

ほむら「キリカから、話は聞いている?」

杏子「ああ、聞いてるよ。ワルプルギスの夜の事、だろ?」

キリカ「キミに関してはそれよりも先にやることがあるだろう?」

杏子「だぁぁぁ!わかってるよ!マミはどこにいるんだ!?」

ほむら「マミとは、まだ具体的な話が出来ていないのよ」

杏子「はぁ!?おいおい、話が違うんじゃねぇのか!?」

ほむら「え?」

杏子「あたしは、マミと仲直りして、ワルプルギスの夜との戦いの戦力に加われって言われて来てるんだぞ!?」

ほむら「……キリカ」

キリカ「なんだ、間違ってないじゃないか」

ほむら「はぁ……いい、杏子?よく聞いてちょうだい」

――――――――――――――――

杏子「……つまり、こういうことか?」

杏子「『あたしがマミと仲直りして、かつマミを対ワルプルギス戦の戦力に加わるよう説得しろ』」

ほむら「理解が早くて助かるわ」

杏子「あたしが聞いた話と違うぞ……」

キリカ「早とちりしたキミが悪い」

杏子「うっせぇ!」

ほむら「お願い出来る?」

杏子「あーもうっ!わーったよ!こうなりゃヤケだ!なんでも任せろっての!」

ほむら「ありがとう。あなたがマミを説得してくれるなら安心だわ」

杏子「なんだよ、どいつもこいつもあたしとマミの事を知ってるみてぇな素振りしやがって……」

ほむら「それじゃ次は、織莉子」

織莉子「ええ。見ての通りよ」スッ

ほむら「……疑っていたわけではないけれど。よく、無事で倒せたわね」

織莉子「人のトラウマを刺激する……魔法少女には有効な手ではあるけれどね。強靭な精神力さえあれば、なんてことないわ」

ほむら「わたしは、美樹さやかの監視をしていたけれど……とうとう、最後まで契約する素振りを見せなかったわね」

織莉子「ああ、だってわたしがちょっと干渉したもの」

ほむら「え?」

織莉子「上条恭介くん、だったかしら?」

ほむら「彼に、接触したの?」

織莉子「あなたの未来を占ってあげましょー、ってな感じで」

ほむら「………。それで?」

織莉子「残念ながら、彼の腕はもう治る事は無いみたいね」

ほむら「……………」

織莉子「だから、言ってあげたわ」

織莉子「『あなたを心配する存在に、気付いてあげる事。そうすれば、あなたの未来は明るい』とね」

ほむら「それは……どういうこと?」

織莉子「言ったままの意味よ。彼がそれをどう捉えたのかは……結果を見れば、わかるんじゃないかしら?」

ほむら「………そんな事で、彼は……?」

織莉子「まぁ、わたしが目の前で変身してあげたから。彼も、わたしの言う事を信じれたのではないのかしら?」

ほむら「え、えぇっ!?」

織莉子「だって、いきなり現れたよくわからない人がそんな事を言って、ホイホイと信じると思う?」

ほむら「そ、それは確かに……」

織莉子「だから、ひとつ不思議を見せてあげたってだけよ」

ほむら「……あなた、ずいぶんと大胆ね」

織莉子「いやだわ恥ずかしい」

キリカ「おい、ほむら!何織莉子を口説いてるんだ!?」

ほむら「頭が痛くなってくるわ……」

織莉子「もう少し詳細に話しましょうか?」

ほむら「いえ、結構よ!」キッパリ

織莉子「あら、そう?残念ね」

ほむら「……さて。それじゃ、今日はこんなものかしら」

杏子「あたしはどうすればいいんだよ?」

ほむら「あなたについては、明日ね。わたしも一緒に行くから、マミと話、しましょう?」

杏子「……まぁ、気は進まないけど……仕方ねぇ、行くしかないか」

織莉子「わたしとキリカは?」

ほむら「とりあえず、当面はやることはないわ。現れる魔女を倒しながら、ゆっくりしていてちょうだい」

織莉子「ええ、了解よ」

キリカ「ま、今日は風見野まで足を延ばして疲れたからね。休ませてもらうよ」

ほむら(ここまで頭のネジが外れた二人も珍しいけれど……意外と、頼もしいものね)

翌日・昼間―――

織莉子「久しぶりに、二人でゆっくり出来るわね」

キリカ「なんだかずいぶんと久しぶりに感じるね、二人きりと言うのも」

織莉子「そうね……お砂糖は何個?」

キリカ「三つ!ジャムも三杯!」

織莉子「いつも通りね」コポポ…

織莉子「はい、キリカ」

キリカ「うん、ありがとう」

織莉子「ふぅ……」

キリカ「………うん、おいしい」

織莉子「………」

キリカ「………」

織莉子「………暇ね」

キリカ「………そうだね」

織莉子「…………上条恭介は、どうしているかしら?」

キリカ「? 病院にいる少年、だったっけ」

織莉子「ええ。昨日は言いたい事だけ言って、出てきてしまったけれど……」

キリカ「……行ってみる?」

織莉子「………」ニヤ

キリカ「………」ニヤ

病院・上条恭介の病室―――

コンコン

恭介「どうぞ」

ガララ

織莉子「こんにちは、上条くん」

キリカ「……」

恭介「あ、ええと、昨日の占い師さん」

織莉子「あら、覚えていてくれたのね。嬉しいわ」

キリカ「少年、ちゃんとした名前ももちろん覚えているんだろうな?」

恭介「え、えっと……教えてもらっていないですけど」

織莉子「あら、そうだったかしら?」

恭介「それよりも!今日も、占いに来てくれたんですか?」

織莉子「え、あ、それは……」

織莉子(暇だったから来たなんて言えない……)

織莉子「え、えぇ、そうよ!」

キリカ「織莉子に感謝するんだぞ、少年」

恭介「はい、それはもちろん!」

織莉子「それじゃ……」スッ

パァァァ シュンッ

恭介「おお!すごい!すごいです!」パチパチ

織莉子「ふふ、照れるわ。そんなに褒めないで」

キリカ「少年、織莉子に惚れるなよ?」

織莉子「さて、今日は何を占いましょうか?」

恭介「ええと……それじゃ、退院出来る日は、いつになるかで」

織莉子「お安い御用よ」

織莉子「………」

キリカ「………」

恭介「……ゴクリ……」

織莉子「……今のまま、順調に行けば……ひと月後、くらいかしらね」

恭介「そんなに先なんですか……」

織莉子「まぁ、今はまだ自力では歩けないのでしょう?なら、妥当なところだと思うわよ」

恭介「うーん……松葉杖も使えないですしね……」

キリカ「なに、生きていればいつかいい事もあるさ。落ち込むなよ、少年!」

恭介「はは……いい事なら、もうありましたよ」

織莉子「あら、そうなの?詳しく聞かせてもらえないかしら?」

恭介「昨日、ええと、織莉子さん、でいいんですか?」

織莉子「ええ」

恭介「織莉子さんに言われた事を、じっくりと考えて……気付きました」

キリカ「キミを心配する存在とやらに、かな?」

恭介「ええ。僕の幼馴染、いるんですけど……考えてみれば、今の僕があるのは、彼女のおかげだったのかな、って」

織莉子「美樹さやかさん、の事ね」

恭介「さやかと、知り合いなんですか?」

キリカ「顔見知り程度だけどね」

恭介「……。だから、彼女にお願いしたんです。『これからも、僕の側にいてくれるかい?』って」

織莉子「………っ」

キリカ「織莉子?」

織莉子「いい話ねぇ……」ホロリ

キリカ「それで、美樹の返答は?」

恭介「彼女曰く、『当然!だってあたしは、恭介の幼馴染だし』らしいです」

織莉子「ええ、ええ!そうよね!幼馴染、かくあるべし!素晴らしいわ!」

恭介「はは、ありがとうございます。だから、まぁ、織莉子さんにはホントに感謝してます」

織莉子「いえいえ、そんな恐縮です!あなたが幸せなら、わたしは言う事ありません!末長くお幸せにね、上条くん!」

恭介「はい……この手は、もう動かないけど……僕の未来は、明るいんですよね?」

織莉子「当然でしょう!身近な幸せに気付けた人の未来が、暗いわけがないわ!ね、キリカ!」

キリカ「ああ、そうだとも!」

織莉子「さて!彼とさやかさんの現状も聞けたし!帰りましょうか、キリカ」

キリカ「ああ、そうだな」

恭介「来てくれて、ありがとうございます。頑張ってリハビリして、織莉子さんの占いを、いい意味で裏切って見せますから!」

織莉子「あら、頼もしいわ。ええ、頑張って、上条くん」

キリカ「強く生きるんだぞ、少年!キミは一人じゃない!何かつらいことがあったら、側の人に寄りかかるのも一興だ」

恭介「……これ以上、さやかには甘えられませんよ」

織莉子「あなたが甘えるんじゃないの。彼女が、あなたを甘やかすと考えればいいのよ」

恭介「っ……それは、ちょっと恥ずかしいですね」

キリカ「男ならば!女の顔を立ててやるもんだ!」

織莉子「よく言ったわ、キリカ!ええ、その通りよ!」

キリカ「じゃあな、少年!」ガララ


恭介「………はは、騒がしい人たちだな」

キリカ「……いい男じゃないか」

織莉子「そうね……一人の少女と、一人の少年を救えたのね、わたしは」

キリカ「それだけじゃない。ワルプルギスの夜……奴さえ倒せば、もっと多くの人を救う事になるんだよ、織莉子」

織莉子「………わたしに、救世は成せるかしら」

キリカ「成せるか成せないかは、問題じゃない。『成す』!そう思わなきゃ。だろ、織莉子?」

織莉子「キリカ……そうだったわね」

キリカ「未来予知で見える光景は、どうだい?」

織莉子「……………」

キリカ「……まだ、不確定?」

織莉子「………そうね。でも、いくつかの魔女の姿は、見えなくなったわ。それだけでも、前進していると考えるべきね」

キリカ「そうだね。何事も、前向きに。それが一番だ」

夕方・マミマンション前―――

杏子「……はぁ」

ほむら「………」

織莉子「こんにちは、ほむらさん、杏子さん」

キリカ「これから、かい?」

ほむら「そうだけれど……何故、あなた達がここに?」

織莉子「それは暇だっt……ゴホ、ゴホンッ!心配だったからに決まっているでしょう?」

ほむら(今絶対『暇だったから』って言いかけた)

キリカ「まぁまぁ、わたし達の事はいいんだよ。ほら、ブザー押すよ?」

ピンポーン

マミ「はい……あら?」

ほむら「こんにちは、巴マミ」

織莉子「お久しぶりです、巴さん?」

キリカ「あの日に会って以来だったね。元気だったかい?」

マミ「暁美さんに、ええと、美国さんと呉さん、だったかしら?」

織莉子「ああ、わたしとキリカの事は下の名前で呼んでください」

マミ「え、えぇ……それに……」

杏子「よ、よぅ……久しぶり」

マミ「佐倉……さん……」

キリカ「まぁまぁ、ここで立ち話もなんだろう?家に上げてくれないかな」

ほむら(ず、図々しい)

マミ「え、えぇ……上がって、みんな」

居間―――

マミ「ごめんなさい、大したものは用意出来ないけれど……」

織莉子「巴さんも紅茶、嗜むのね」

マミ「え?ええ、まぁ。そう言うってことは……あなたも?」

織莉子「ふふ、ええ。今度、わたしの紅茶も御馳走するわ」

キリカ「織莉子の紅茶はおいしいんだぞ、巴?」

マミ「楽しみにしているわ……」

マミ「それで……」チラッ

杏子「………」

マミ「……久しぶりね、佐倉さん?」

杏子「あぁ……」

マミ「……」

杏子「……」

織莉子(な、なんだか気まずくない?)

キリカ(ちょうどわたしもそう思っていたところだよ)

ほむら(黙っていなさい、あなた達)

杏子「………じ、実は、さ」

マミ「なに、かしら?」

杏子「……ま、マミ……さん……」

マミ「…!」

杏子「マミさん……に、頼みたい事が、あって……」

マミ「わたしに、頼みたい事?」

杏子「……あと、何日かしたら、この街にワルプルギスの夜が……来る、らしい」

マミ「ワルプルギスの夜……」

杏子「あたしたち……ほむらと、織莉子と、キリカは、そいつを撃退する為に戦おうって思うんだけど……それに、マミさんも力を貸して欲しくって……」

マミ「…………」

織莉子(き、気まずいわ……なんだか背中もかゆくなってきたような気もする!)

キリカ(なんだ、この妙に暗い雰囲気は!?わたしは、こういうのが一番苦手なんだぞ!?)

ほむら(いいから黙っていなさいっ!!)

杏子「お願い……出来ないかな?」

マミ「ワルプルギスの夜が来る、と言うのが本当なら……見過ごすわけにはいかないわね」

杏子「じ、じゃあ……!」

マミ「暁美さん、織莉子さん、キリカさんはともかく。あなたと共に戦うというのは、首を縦に振るのは難しいわね」

杏子「っ……」

マミ「あなたも、わかっているでしょう?」

杏子「………あぁ」

織莉子「どういう事、ですか?」

キリカ「悪いけど、話について行けてない」

ほむら「ちょっ、黙ってなさいって言ってるでしょう!?」

マミ「……いえ、いいのよ。わたしと佐倉さんはね、前に、コンビを組んでいたの」

織莉子「魔法少女のコンビを……?」

キリカ「……ふむ」

マミ「まぁ、ちょっとした意見のすれ違いで……別れる事になったのだけれど」

織莉子「意見のすれ違い?」

ほむら「その辺りは、また今度話すわ。今は、マミと杏子の話し合いを、見守って。お願いだから」

キリカ「ほむら?」

ほむら「………」

織莉子「……ごめんなさい。話、続けて」

杏子「………あたしも、悪かったって思ってる」

マミ「………」

杏子「ずっと、あたしは風見野でひとりぼっちで……マミさんも、それは同じだったんでしょ?」

マミ「そう、ね」

杏子「……寂しかった。でも、あたしから謝るのは癪で、つまんない意地張って、悪ぶって……」

キリカ(佐倉……)

杏子「それで、そこのキリカがこの前風見野に来たんだ。で、あたしと戦って……」

マミ「キリカさんと?」

キリカ「ああ。佐倉を見滝原に連れて来たのは、わたしだよ」

杏子「強かった。あたしだって、かなり強くなったつもりだったけどさ……やっぱ、誰かと一緒に戦ってる奴ってのは、得てして最後には勝つもんなんだよ」

織莉子「……」

杏子「やっぱ、一人ぼっちはダメなんだ。誰かと、一緒にいなきゃ、人は生きていけない。孤独を好む奴はいても、孤独に耐えられる奴はいないって思い知らされた」

杏子「だから、つまんない意地を張るのはやめにしたんだ」

杏子「………ごめんなさい、マミさん!」ガバッ

マミ「………」

マミ「佐倉さんの気持ちは、よくわかったわ」

杏子「………」

マミ「その言葉……信じても、いいのね?」

杏子「……うん」

マミ「……顔を上げて、佐倉さん」

杏子「マミさん……」

織莉子(巴さんは優しいわね。誰かと違って、イジワルな事をしないわ)

ほむら(うるさいわね。もう忘れなさいよ)

マミ「今のあなたなら、信じられそうね」ニコッ

杏子「マミさん……」

マミ「もう、いいのよ。わたしも、あなたの気持ちを考えられていなかったから。だから、わたしも、ごめんなさい」

杏子「………」

マミ「これで、おあいこ。でしょう?」

杏子「……ありがとう、マミさん」

ほむら「一件落着……かしら?」

マミ「ええ。ワルプルギスの夜……来るのでしょう?わたしも、戦わせてもらうわ」

織莉子「それじゃ、これで……?」

ほむら「ええ……そうね」

キリカ「対ワルプルギスの夜への戦力、揃ったわけだね!」

杏子「……はぁ、疲れた……」

ほむら「お疲れ様、杏子」

織莉子「何より誰より疲れたのはわたし達よ……結局、来た意味なかったじゃないの……」

キリカ「妙に背中がムズムズしただけで終わったね」

杏子「大体、こうして素直に謝るってのはあたしの性分じゃねぇんだよ!」

マミ「あら、素直なのはいいことよ、佐倉さん?」

杏子「参った参った!もうあんたらにはかなわねぇよ」

織莉子「ふふ……後は、嵐の夜を乗り越えるだけ、ね……」

夜―――

ほむら「それじゃ、わたし達はお先に失礼させてもらうわ」

キリカ「後は、元コンビ共々、よろしくやんなよ」

杏子「うっせぇ!キリカ、あんたとはいずれまた勝負してやるからな!」

キリカ「ふふ、わたしに勝てるかな?」

杏子「次も同じように行くと思うな!なんたって、あたしにはベテラン魔法少女のマミさんが付いてんだからな!」

マミ「わたしは関係ないでしょう!?」

杏子「マミさんに特訓付けてもらうんだよ!お願いします、マミさん!」

マミ「もう、都合のいいことばかり言って……」

織莉子「では、行きましょうか」

杏子「おう!じゃな、ほむら、織莉子、キリカ!」

織莉子「これで、ひと安心ね」

ほむら「えぇ……理想的、とさえ言えるわ」

キリカ「でも、よかったのかい?」

ほむら「え?」

キリカ「わたしと織莉子、ほむらは魔法少女の真実とやらを知ってるけどさ。あの二人は、知らないんだろう?教えた方がよかったんじゃ?」

ほむら「……杏子はともかく、マミは機を見た方がいいわ」

織莉子「どういうこと?」

ほむら「彼女は、なにより魔法少女が希望の存在だと信じて疑わないし、それが何よりの生きがいだから。もし自分が魔女になるだなんて知ったら、酷く落ち込んでしまう」

キリカ「………ふむ」

ほむら「ワルプルギスの夜を無事、乗り越える事が出来たなら……その時、落ち着いて話せる席を用意しましょう」

織莉子「なら、その時はわたしの家でお茶でも飲みながら話をする事にしましょうか」

ほむら「織莉子の家で?」

織莉子「約束、したものね。今度はわたしの淹れた紅茶を御馳走するって」

ほむら「………」

キリカ「キミは飲んだ事あるだろう?織莉子の紅茶は絶品なんだぞ?」

ほむら「そう、ね。おいしかったわ、織莉子の紅茶は」

織莉子「ふふ、ありがとう、ほむらさん。また飲みたかったら、頑張らないとね?」

ほむら「それは、当然……!今度こそ、決着をつけてやるわ……ワルプルギスの夜!!」

織莉子「………」

数日後、ワルプルギスの夜襲来前日―――

ほむら「ついに、明日に迫ったわ」

キリカ「意外と、早かったね。まだまだ日はあるとばかり思っていたけれど」

杏子「ま、何だ。どんな化けモンだろうと、ぶっつぶしてやろうじゃないの!」

マミ「油断は禁物よ、佐倉さん?」

杏子「わかってるっての!」

ほむら「奴は、見滝原の河川敷の向こうからやってくる。だから、この川のほとりを中心にして、いくつかのポイントに構える必要があるわ」

杏子「奴に弱点とかは無いのか?」

ほむら「弱点なんて、奴にあるとは思えない。どんな攻撃を受けても平気で、とてつもなくしぶとい……」

ほむら「しかも、嵐をも巻き起こすから、油断していると風で飛ばされて来た物にぶつかったりもする」

ほむら「奴を前にして、一切の油断も見せちゃダメよ」

織莉子「………火力の高い攻撃を、ぶつけ続けるしかない、ということね」

ほむら「そういうことね。攻撃の手を緩めてはダメ。常に誰かが攻撃を加えて、反撃を許さないくらいの気持ちで行きましょう」

数時間後―――

マミ「外も、少し風が強くなってきたわね……」

ほむら「すでに、近くまで来ているのかもしれないわ。気をつけて帰ってね、みんな」

杏子「おう!んじゃ、明日。川んとこで会おうぜ!」

マミ「見滝原の魔法少女の力、歴史に名を残す魔女に見せてあげましょう!」

ほむら「……頼もしいわ。お願いね、みんな。わたしに、力を貸してちょうだい」

織莉子「………」

キリカ「………」

マミ「それじゃ、織莉子さんキリカさん。明日、河川敷で会いましょう?」

杏子「寝坊すんなよ!」

織莉子「……ええ、ありがとう二人とも」

キリカ「心配しなくても、奴を倒さなきゃわたし達の身も危ないからね」

マミ「………また、会えるわよね?」

織莉子「…!」

マミ「……いえ、ごめんなさい。妙な質問だったわね」

織莉子「………」

マミ「行きましょう、佐倉さん」

杏子「ああ。明日に備えて、しっかり寝ないとな!」

織莉子「………。さて、キリカ」

キリカ「うん、わかっているよ」

織莉子「河川敷で、合流しましょう」

キリカ「ああ。………やっぱり、やるんだね?」

織莉子「ええ……」

キリカ「わかった。わたしはどこまでも、織莉子について行くからね」

織莉子「ありがとう、キリカ……」

さやかのマンション前―――

ピンポーン

さやか『はい、美樹ですが」

キリカ「ああ、美樹さやかかい?わたしだよ、呉キリカ」

さやか『キリカさん?どうしたんですか?』

キリカ「直接会って、話したいことがあるんだ。出てきてくれるかい?」

さやか『わ、わかりました』 ガチャ

キリカ「………さて、と。これを置いて……」カサ

キリカ「じゃあね、美樹。幸せ、掴みなよ」スタスタ

ウィィィン

さやか「……あれ?」キョロキョロ

さやか「キリカさん……?」

さやか「ん、紙が置いてある……?」カサ

『ほむらや巴、佐倉の事をよろしくね。あと、少年にもよろしく。
 わたしも、織莉子も、楽しかったよ。                呉キリカ』

さやか「………。何、これ……?」

鹿目家―――

QB「……おや?」

織莉子「キュゥべえ……まだ、鹿目まどかとの契約を諦めていなかったのね」

QB「当然だろう?彼女ほどの素質を秘めた少女は希少なんだ。諦めるわけがないだろう?」

織莉子「……消えなさい、キュゥべえ。わたしはまどかさんと、大事な話があるの」

QB「………………。やれやれ……仕方ないな」トコトコ

織莉子「………」

ピンポーン

まどか「はーい……」ガチャ

織莉子「こんばんは、まどかさん」ニコッ

まどか「織莉子、さん……?」

織莉子「魔法少女の契約、していないのね?」

まどか「ええと、はい」

織莉子「……ほむらさんの想いは?何か、聞いている?」

まどか「ほむらちゃんの、想い?」

織莉子「………その様子だと、何も聞いていないようですね。なら、わたしからは何も言いません」

まどか「織莉子さん……?どうしたんですか?」

織莉子「……」

まどか「なんだか、寂しそうな顔をしてますよ……?」

織莉子「っ……ごめんなさい。この一ヶ月、本当に楽しかったから」

まどか「何、を……?」

織莉子「あなたを大切に思う存在に、なるべく早く気付いてあげてね。それだけ、言いたかったの」

まどか「………」

織莉子「それじゃ、ね。またいつか、会えたらいいわね」スタスタスタ……

まどか「……織莉子、さん………?」

深夜・見滝原の河川敷―――

キリカ「………織莉子」

織莉子「さやかさんに、ちゃんと伝えてきてくれた?」

キリカ「ああ」

織莉子「それじゃ……行きましょうか」

キリカ「どこまでも、ついて行くよ」

QB「待つんだ、キミ達」

織莉子・キリカ「っ!」

QB「何をしようとしているんだい?」

織莉子「キュゥべえ……」

キリカ「キミには関係ない事だ、キュゥべえ」

QB「………ここへ来る前に、刺し違えるつもりかい?」

織莉子「言ったはずよ、キュゥべえ。消えなさい、と」

QB「ワルプルギスの夜は、僕にとってもまどかの契約に対する切り札なんだ。そんな事をされたら、困るよ」

キリカ「それはそれは。いい事を聴かせてもらったよ」

QB「止めるつもりは、ないのかい?」

織莉子「何度も言わないわよ、キュゥべえ。………消えなさい」

QB「……………キミ達二人で、本当にどうにかなるt」グシャ

織莉子「………」

キリカ「小うるさい奴だね。わたし達の決意にあーだこーだ言わないで欲しいもんだ」

織莉子「……さて。邪魔が入ったけれど。行くわよ、キリカ」

キリカ「ああ」

織莉子「さあ、この水晶に乗って……」タンッ

キリカ「……」タンッ

そうして、織莉子とキリカは大空へと飛び立った―――

―――どうだい、織莉子?未来の光景は?―――

―――ええ。とても、とても明るくて暖かい光に満ちているわ―――

―――そっか。なら、わたし達のこの行動も無駄じゃなかったって事だね―――

―――そうだと、いいわね―――

―――耳障りな笑い声が、近づいて来たね―――
              ⑤
―――そうね。長い間聞いていたくは無いわ―――
              ④
―――なに、すぐだよ織莉子。さくっとやってやろうじゃないか―――
              ②
―――あなたと一緒なら、本当にさくっと終わらせられそうだわ―――
              ①
―――見えた。あれが、ワルプルギスの夜―――
キャハハハハハハ……アハハハハハハハハハハ……ヒャハハハハハハハハハハハハハハハ………
―――さあ。わたし達の目指す救世は、すぐそこよ、キリカ―――

翌日。

窓から差す光に、暁美ほむらは起こされた。

おかしいと想い、カーテンを開けた。

そこには、スーパーセルなど微塵も感じさせない、見事なまでの空が広がっていた。

「……嘘。ワルプルギスの夜は……?」

信じられない光景を目の当たりにしたと言いたげなほむらは、急いで部屋着から普段着へと着替え、外へ飛び出した。

辺りは、いつも通りというのが躊躇われるほどにいつも通りだった。

行き交う人の中を、ほむらは河川敷目掛け走り抜けていく。

目的地には、既に二人の少女が構えていた。

「暁美さん!」

「どういうことだよ、おい!?ワルプルギスの夜は!?」

「わ、わたしにもわからないわ。織莉子とキリカは!?」

「それが、まだ姿を現していないの。もう来てもいい頃だと思うのだけれど……」

戸惑う三人の元に、駆けて来る二つの影があった。

「ほむらちゃーん!マミさーん!」

鹿目まどかと、美樹さやかだった。

「まどか、さやか!?嘘、避難勧告は出ていないの!?」

「いや、何も……そ、それより!キュゥべえから聞いたよ!なんか、とんでもない魔女がやってくるって!?」

「それが……来るはずだったのだけれど……」

ほむらは、事情を話す。

美国織莉子や呉キリカを含めた五人の少女で、その魔女を倒そうという話をしていたということを。

「……やっぱり、昨日のあれは……」

「昨日?」

「うん。昨日の夜、キリカさんがあたしの家に来てさ。こんな紙を残して行ったんだよね」

キリカからさやかへ当てられた手紙を渡されたほむら達は、それに目を通した。

それで、全てを理解したのだった。

「……お、織莉子さん、キリカさん……っ!!」

「っ……バッカ野郎!!あたしとの約束、忘れたのかよ、キリカぁぁ!!」

「そ、そんな……それじゃ、あの二人は……?」

三者三様に、空を仰ぎ見た。

雲ひとつないその空の、更に向こうを見るように。

届かないとわかっていても、杏子は叫ぶしか出来なかった。

「お、織莉子さんとキリカさんは……?」

「っ……」

まどかの問いに、ほむらは答えられずに閉口した。

ただ、その首を小さく左右に振るのみだった。

「やれやれ……ここまで、か」

五人とは離れたところ、ビルの屋上に立っていたキュゥべえはぼそりと呟く。

「あの二人の執念は、凄まじいものがあるね。たった二人で、ワルプルギスの夜を”撃退”するなんて」

空の遥か向こうを見据えながら。

「しかし、戻ってくるのが遅いね。何をやっているのかな」

キュゥべえは、確かに感じ取っていた。二つの微かな魔力反応を。

「……おや、ようやく戻ってきたみたいだね」

地平線の向こうから、小さな二つの影が見えた。

「まぁ、まだまどかは生きているし。チャンスは、途絶えたわけではないよね。いつか、またこの町に来るのを待つとしよう、ワルプルギスの夜―――」

その言葉を最後に、キュゥべえは姿を消した。

キリカ「いやぁ、正直生きて帰ってこれるとは思ってなかったよ!」

織莉子「帰りはキリカ、何も力使っていなかったでしょう……」

キリカ「いやいや、織莉子の操る水晶にしがみつくだけでもかなりの力を使ったよ!はっはっは!」

ほむら「……」

マミ「……」

杏子「……」

まどか「……」

さやか「……えっと……」

キリカ「ごめん、ほむら、巴、佐倉。グリーフシード、あるかな?」

マミ「え、あ、えぇ……二つ、あるわ」

キリカ「ん、ありがとう。はい、織莉子」パァァァ

織莉子「ええ、貸してもらうわね、巴さん」パァァァ

ほむら「………それで、ワルプルギスの夜は?」

キリカ「ん、あぁ……その、ヒジョーに言いづらいんだが……」

織莉子「………」

キリカ「ゴメンっ!倒すことは、出来なかった!!」

織莉子「進路を、わずかに逸らすだけでいっぱいいっぱいだったわ」

キリカ「みすみす取り逃がすことになってしまった……いや、不覚ッ!」

織莉子「キリカの斬撃数百回、わたしの水晶攻撃数千回で、もう二人ともいっぱいいっぱい」

キリカ「いや、歴史に語り継がれる魔女って半端ないね!もう二度と戦いたくないよ!」

マミ「っ……もう!!心配掛けさせないでよ!!」

杏子「キリカ!てめ、生きて帰ってくる気はなかったってのかよ!?」

キリカ「正直すまんかった!死ぬ気マンマンだったよ!はっはっは!」

ほむら「……釈然としない……」



終わり

色々すまんかった
おりきり無双が書きたかっただけなんだ

オマケ―――

杏子「んじゃ、あたしは風見野に帰るわ」

マミ「見滝原に、残るつもりはないの?」

杏子「んー……いや、やっぱあたしの居場所は風見野だし。こっちにだって、たくさん魔法少女、いるだろ?」

マミ「……」

杏子「たまには、あたしも帰ってくるからさ。マミ達は見滝原で、あたしは風見野で、お互い頑張ろうぜ?」

マミ「そう、ね。おいしいケーキと紅茶を用意して、待っているわ」

杏子「楽しみにしてるぜ!それと、キリカ」

キリカ「うん、なんだい?」

杏子「次会った時は、またあたしと勝負だかんな!」

キリカ「望むところ。いつでも掛かってくるといいよ」

杏子「その言葉、覚えとけよな!」

織莉子「そうそう、杏子さん」

杏子「ん?なんだ、織莉子」

織莉子「未来予知の魔法で見えたのだけれど……風見野に帰るのなら、行って欲しい所があるの」

杏子「なんだ?なんかあんのか?」

織莉子「……彼女を、保護してあげて欲しい」

杏子「彼女……?」

織莉子「きっと、今も孤独に過ごしてると思うから……」

杏子「………なんかよくわかんねぇけど。どこだ?」

織莉子「えぇ………」

―――――
―――

数日後、風見野商店街・路地裏―――

「うぅ……」

杏子「んー……この辺だったかな」

「!」

杏子「! おい、お前」

「だ、誰……?」

杏子「あたしは佐倉杏子。あんたの名前は?」

「ゆ、ゆまは……えっと……」

杏子「千歳ゆま……か?」

「! ど、どうしてゆまの名前を……?」

杏子「……さて、ね。見たところ、困ってるみたいだけど?」

「……お腹、すいた」

杏子「なら、ほれ。お菓子だけど……食うかい?」

ゆま「……!うん!」

ホントに終わり

影ながら戦ってる魔法少女が他にもいたってことで許してくださいな
あすなろ市からかずみん辺りが来てたかもね
では、これでホントに終わりです

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