照「清…原…?」(92)

~白糸台高校麻雀部部室~


ガヤガヤ 

ガヤガヤ

新入部員A(ねえねえ、あれって弘世菫じゃない?)

新入部員B(えっ!?弘世菫ってあの帝央中学の!?)

新入部員A(そうそう、中学麻雀界最強の実績を誇る帝央中学でエースで主将
      確か2年の春季大会では全国優勝も果たしてる)

新入部員B(白糸台に入るって噂は聞いたことあったけど本当だったんだ)

新入部員A(何かオーラがあるよね)

新入部員B(オーラっていうか、威圧感…?)

部長「皆静かに!私は白糸台高校麻雀部の部長だ」

部長「まずは新入生諸君入学おめでとう 
   そして、我が麻雀部に入部してくれたことを心から歓迎する」

部長「だが、こんな言葉を掛けるのは今日だけだ
   2ヶ月後にはもうインターハイの西東京予選が始まる」

部長「皆知っているかとは思うが、我が校はインターハイの全国大会出場を2年連続で逃している
   隣の東東京では臨海女子が13年連続で代表になっているのに比べ西東京はまさに激戦区、
   どこが勝ち上がってもおかしくない状況だ」

部長「だからこそ使える奴はたとえ1年でも使う、学年は関係ない!
   もちろん、特待生も一般入部の者も入ったからには条件は同じだ」

部長「明日から1年はしばらく3軍の中に入ってリーグ戦を行ってもらう
   部活といっても地方のインターハイ予選より熾烈だと言われる我が校のリーグ戦だ、心して懸かってほしい」

部長「それでは、明日からの戦いに備えて本日はゆっくり休養をとるように
   最後に、君たちが我が校の全国優勝という悲願を果たす大きな力となってくれることを期待している
   話は以上だ、解散!」

~帰り道~


菫(……)トコトコ

菫(さすが名門の高校麻雀部だな、緊張感が中学の頃とは大違いだ)

菫(…それにしても堅苦しい挨拶だったな、あの部長)

菫(……)トコトコ

菫(…私と気が合うかも)

菫「ん?」

菫(前を歩いてるあいつ、さっき麻雀部の新入生の集まりの中にいたよな)

菫(下向きながら歩いて危なっかしい奴だな、ちょっと声かけてみるか)

菫「おい、そこのホーン生やしてるおま…」


キィイイイイイッッッッ

おっさん「どこ見て歩いてんだこの糞ガキ!!!その頭のホーン引っこ抜くぞ!!!」ペッ

?「す、すいません…」ペコペコ


菫「おい、大丈夫か?」

照「……!」クルッ

菫(!?)

菫(な、泣いてる…!)

照「泣いてない」

菫「いや、だっておまえその眼…」

照「泣いてない、涙が頬を伝ってないからセーフだ」

菫「セーフって何だよ…」

菫「そもそもおまえ本読みながら道歩いてたらそりゃ危ないだろ」

照「私が今まで住んでたところでは全然平気だった
  もっと道は広かったし人通りは少なかったし、そもそもあんな怖いおっさんいなかった」

菫「今まで住んでたところ?」

照「長野。東京に引っ越してきたのはつい2週間ほど前のことだ」

菫「まあ長野だろうとそれはだめだろ」

照「東京怖い」

菫「いや明らかにおまえが悪いから」

照「そんなことより、私に何か用か?」

菫(…そんなことって)

菫「あ、あぁ…おまえも麻雀部の1年だろ?名前なんていうんだ?」

照「人に名前を聞くときはまず自分から名乗るもの」

菫「えっ、おまえ私のこと知らないのか?」

照「なぜ初対面なのに私がおまえのことを知ってるんだ?」

照(何だこいつ…新手の詐欺か何かか…?)

照(ここは東京だしありうる…)

照(だが、そう簡単に引っかかる私ではないぞ!)

菫「いや、まぁいい…私は弘世菫だ。中学で麻雀やってたならそこそこ有名だとは思ったんだが」

照「そうなのか。私は宮永照。
  悪いが中学では麻雀部に入ってなかったんだ」

菫「へぇー。麻雀は友達とでもやってたのか?」

照(…友達!)ビクッ

照「まぁ、主に家族とだが…」

菫「家族麻雀か。私は一人っ子だからそういうの憧れるな
  ってことは兄弟か姉妹でもいるのか?」

照「……」

照「…まぁ…妹が一人…」フイ

菫(…?)

菫「白糸台の麻雀部に入ったってことは麻雀に自信あるのか?」

照「まぁ。家から近くてそれなりに麻雀部が強いって評判のとこなら別にどこでも良かったんだが」

菫「おまえ変わった奴だな。今日の部長の話聞いてただろ?
  そんな軽い気持ちで白糸台の麻雀部に入ってくるやつなんてそうそう居ないぞ」

照「そうなのか?よく分からんが」

菫「おっと、私は帰り道こっちだからまた明日な。お互いリーグ戦がんばろう」

菫「せっかく友達になったんだしすぐ辞めたりするなよ、それじゃぁ」

照(……!!!)ドキッ

照「ああ、また明日」

照(…友達)ドキドキ

照(…ふふ)


菫(宮永照か…少し変だが何か面白い奴だったな)

翌日

~白糸台高校麻雀部部室~

3軍リーグ戦

照「ツモ」

照「ロン」

菫「ツモ」

照「ロン」

菫「ロン」

照「ツモ」

照「ロン」

菫「ツモ」

菫「ロン」

照「ツモ」

部員A「部長…!あの二人…!」

部長「ああ、弘世菫…噂通りの強さだ」

部長「そしてもう一人…宮永照…!」

部長「うちはとんでもない化け物を引き入れてしまったのかもしれん…」

部長「あの二人がいれば本当にいけるかもしれんぞ…全国優勝…!」

~帰り道~


菫「おい、待てよ宮永」

照「弘世か、どうしたそんな慌てて」

菫「慌てて、って…昨日帰り道同じだったんだから今日も一緒に帰るだろ普通…
  部活終わった瞬間知らん間にいなくなりやがって」ハァハァ

照(……うっ!)

照(…そういうものだったのか)

照「わ、悪い、ちょっと疲れててな」

菫「そんな風には見えなかったが、まぁいい。それより何だおまえの麻雀!」

照「何だって何だ?」

菫「めちゃくちゃ強いじゃないか!?全国でもこれほどの奴とは会ったことないぞ!?」

照「私は自分の麻雀を打ってるだけだ」

菫「おまえがいれば本当に全国優勝できるかもしれ…!?」

菫「……」

照「…どうした?」

菫「いや、何でもない…それよりこの後予定とかあるのか?」

照「別に何もないけど?」

菫「それなら今から喫茶店でも寄ってちょっとゆっくりしていかないか?」

照「…弘世」

菫「ん?」

照「見損なったぞ」

菫「へ?」

照「学校の帰りに寄り道して買い食いなんてそんな不良みたいなマネ私はしない」

菫「お、おま…」

照「そもそも部長も言ってただろ。休養はしっかりとるように、って」

菫(こいつの今までの言動でもしや…いや間違いなくそうだろうとは思っていたが…)

菫「おまえ友達いなかっただろ」

照「!!!!」

照「……」プルプル

照「……」ジワ

菫「……!」

菫「おい、今のは冗談だ!だからそこの喫茶店にでも入って少し落ち着こ、な?」

照「……」コク

~喫茶店~


照「……」プルプル

菫「宮永もアイスコーヒーでいいか?」

照「……」コク

菫「すみません、アイスコーヒー2つお願いします」

店員「かしこまりましたー」

菫「でもなぁ宮永」

菫「私もあんなこと言って悪かったが、寄り道や買い食いはだめなんて今どき小学校高学年でも言わんぞ」

照「そうなのか…東京のティーンは進んでるんだな…」

菫「いや東京とか関係なく…てかティーンって」

菫「それじゃあ学校終わりとかおまえはどうやって過ごしてたんだ?」

照「ずっと本読んでた、親が早く帰ってきたら家族で麻雀したり」

菫(私も小中と放課後は麻雀漬けでろくに遊んでこなかったが
  こいつを見てると自分がすごく青春してたように感じるな)

菫「まあ私もクラスメイトよりも一緒に練習に励んできた麻雀部の仲間といる方がしっくりするしなぁ
  宮永は今まで部活に入ってなかったんだし高校の麻雀部できっと自然と友達もできるさ」

照「……うん」

照「……それに」

照「……もう一人できたし」

菫「な!?」

照「?」

菫(…こいつ…恥ずかし気もなくいきなり何を…//)

店員「アイスコーヒーの方お持ちいたしましたー」コト

店員「それではごゆっくりどうぞー」ペコ

菫(素晴らしいタイミングだ…!ここでコーヒーはありがたい…!)

菫「……」チュー ゴクゴク

照「弘世はコーヒーブラックで飲むのか?」

菫「ああ、甘いのは苦手なんでな」

菫(特に今はな…)

菫「宮永はクールそうにみえて実は甘いのが大好きとみた」

照「…いや、私も甘いのは苦手なんだ」チュー

照「ぶはっ!」ビシャ

照「……」

菫「…別に甘いモノ好きだからって子供っぽいとか思わんから好きに飲め」

照「……うん、そうする」ドバドバ

照「……」チュー ゴクゴク

照「おいしい」ホッコリ

菫(……すごい嬉しそうだ)

菫「ところでさ、いつまでも名字でってのもあれだし下の名前で呼んでいいか?」

照「えっ!」

照「……いいけど」ドキドキ

菫「よし、それなら照も私のこと下の名前で呼んでくれ」

照「いや、それはちょっと…」

菫「何でだ?」

照「…何か恥ずかしいし」モジモジ

菫(くそ…ちょっと可愛いじゃないか…)

菫「じゃあ照が好きなあだ名付けてくれてもいいが、ヒロとか」

照「中学のときのあだ名とかなかったの?」

菫「親しい奴はみんな下の名前で呼んでたからなぁ」

菫「いや、あだ名とはちょっと違うがそういうのが1個だけあったな……」

照「どんなの?」

菫「でもこれはあんまり言いたくない」

照「友達同士で隠し事しちゃいけないってばっちゃが言ってた」

菫「……」

照「……」ジー

菫「分かった…言うよ…」

菫「……清原」

照「え?」

菫「……清原だ、元プロ野球選手の清原和博」

照「……」プルプル

菫「うちの中学が東京ドームの近くにあってだな…
  女の割に図体がでかくて威圧感があることと
  名門麻雀部の主将ってことで番長っぽいイメージが重なってそう呼ぶ輩がいたのだ」

照「……くくく」プルプル

菫「おまえが笑ってるとこを初めて見たよ」

照「うっ…ふふ…あははははは」

菫「おい笑い過ぎだろ!」

照「ご、ごめん」

菫「というわけでだ、あだ名もないし照も私を下の名前で呼ぶこと」

照「…分かった…それじゃあいくぞ」スゥー

照「か…薫…!」

菫「え?」

照「え?」

菫「……」

菫「せっかく勇気を振り絞ったとこ悪いが…私の名前…菫なんだが」

照「えっ!でもその学校用のバッグに薫って…」

照「!!!」

菫「よく間違えられるんだが…でも昨日帰り道で名乗ったはずだぞ」

照「あのときは気が動転してて初めの方ちゃんと聞いてなかった…」

菫「そっか、おまえあのとき泣いてt」

照「泣いてない」

菫「言っておくが私はすぐ泣く女は好かんぞ、涙は女の武器だなんて言葉も大きr」

照「泣いてない、あれはセーフ」

菫「はぁ…そういうことにしておいてやろう。時間も遅くなってきたしそろそろ出るか」

……

店員「ありがとうございましたー」カランカラン

菫「明日また部室でな、照」

照「ああ、それじゃあ…す」

照「菫」

馴れ初め編終了
ここから誰得シリアス編突入



~菫自宅~


菫「……!」バッ

菫「ハァハァ…」

菫「…またあの夢か…」

菫「中学を卒業してからはあまり見なくなってたんだがな…」

菫「照に出会って、あいつの麻雀をみてからか……」

菫「照……おまえは私を……」

インターハイ西東京予選1週間前

~白糸台高校麻雀部部室~

監督「それではインターハイ予選のオーダーを発表する」

監督「先鋒・部長……………大将・宮永」

監督「予選を勝ち抜いた場合、特にアクシデント等が無ければ本選もこのメンバーで臨む」

監督「メンバーに選ばれた者は体調管理に気をつけ、それ以外の者は全力でサポートすること。以上!」
 
菫「……」


~別室~

部長「弘世のやつはどうしたんでしょうか?
   メンバー選抜戦、中盤まであんなに良い麻雀打ってたのに後半は逃げ腰になり失速
   やはり実績はあっても1年生ということでしょうか」

監督「いや、あの子の一番の武器は肝っ玉の強さだ
   それは彼女をスカウトした私が一番良く知ってる」

監督(……あの試合と何か関係が……?)

~帰り道~

照「おい菫」

菫「どうした?照」

照「何故おまえがメンバーに入っていない
  私と部長の次にメンバーに選ばれるのは実力的におまえのはずだろ」

菫「それは私を買い被りすぎだ
  3年生はこのインハイが最後の大会だ、後半は先輩たちの気迫に押されて上手く調子が出なかったんだ」

照「誰よりも図太い神経してそうなおまえが?」

菫「何か失礼な言い草だな」

照「もしかして先輩に気を遣ったとかじゃないだろうな?」

菫「まさか。そんな甘ったれた考えはもってないさ
  まあ今回はだめだったが次はメンバーに選ばれるよう頑張るよ」

照「……ならいいが」

菫(図太い神経か……)

菫(相手の麻雀の本質を見抜くおまえでもこの気持ちまでは分からないだろう)

菫(このことを知ったらおまえはどれだけ私に失望するだろうか…?)

菫(おまえの底知れない強さを知れば知るほど、私の中の葛藤はどんどん大きくなるばかりだ…)

菫(おまえさえいなければこれほど悩むこともなかっただろう…)

菫(なあ照……おまえなら私を……)



……

………

実況「試合終了ー!!白糸台高校1年宮永照!
   団体戦に続いて個人戦でも全国優勝を達成です!」

実況「何という強さでしょう!恐ろしい選手が現れました!
   インターハイは宮永照のためにあるのかーー!!!」


照「ありがとうございます!」

照「いえ、私はそんな…
  優勝できたのは周りの人たちが支えてくれたおかげです!」


菫「……」

半年後

春季大会1週間前

~白糸台高校麻雀部部室~

監督「それでは春季大会のオーダーを発表する」

監督「……………大将・宮永照。以上だ」

菫「……」

照「……!」ワナワナ

~帰り道~

照「待て菫!」

菫「ん?何か用か?」

照「しらばっくれるな!おまえどういうつもりだ!
  この前と同じだ!途中まで完璧な麻雀を打ってるのに後半で不自然に失速する!」

菫「ああ、どうやら私は勝負弱いらしい」

照「そんな嘘が私に通用すると思っているのか!
  今回の選抜戦、私はおまえのことを特に注意して観察していた」

照「何をぐるぐる考えてるのか知らんが、それでも焦りやプレッシャーなんてものは微塵も感じていなかった!」

菫「まあ落ち着けよ照。そうだ、久しぶりにあそこの喫茶店に寄っていかないか?」

~喫茶店~

菫「……」ズズ

照「3年生が抜けて迎える春季大会、メンバーにおまえが選ばれないのはあまりに不自然だ
  そんなこと私じゃなくても分かる」

菫「……」

照「つまりおまえは自分がメンバーに選ばれないようにわざと手を抜いて打った
  どういう理由があってかは知らんが、そんな行為私は絶対に許さない」

菫「麻雀に対する侮辱ってやつか?さすがチャンピオンは言うことが立派だな」

照「違う!」

照「手を抜いて打たれることがどれほど屈辱的かおまえに分かるか?
  譲られた勝利がどれほど惨めで虚しいものかおまえは知ってるか?」

菫「……」

照「…私は嫌というほどそれを知っている…
  だからどんな相手でも全力で叩き潰すと私は心に誓っている」

菫「……」

照「おまえは理由もなくそんなことする奴だとは思ってない
  教えてくれないか、そのワケを?友達として、私に」

菫「……」

照「できれば私はおまえと一緒に全国優勝したいと思ってるよ」

菫「……」

菫「…前に話したことあったよな…私のあだ名…」

照「え?」

菫「私が清原と呼ばれていたことだ」

照「おい、こんなときに何の話を…?」

菫「実はあれ嘘なんだ…といっても由来の方がだがな
  清原が現役時代何て呼ばれてたか知ってるか?」

照「…いや」

菫「『無冠の帝王』。彼は甲子園で大活躍しプロに入ったその年に強烈な成績で新人王に輝いた
  その後も球界を代表する4番打者として存在感を示してきたが、
  彼はその生涯で一度も打撃三冠のタイトルを獲得することはできなかった」

照「……」

菫「私は小4のときに初めて麻雀の全国大会に出場してから、団体戦と個人戦を合わせてこれまで9度全国の舞台に立っている
  そのうち決勝の卓まで勝ち上がったのは5回、一度も優勝することはできなかった…」

菫「女の割にでかい図体、中学が東京ドームの近くにあったこと、
  そして名門帝央中学を率いる優勝経験のない主将…」

菫「『無冠の帝王』…。自分でも呆れるほどぴったりなネーミングだよ…」

照「でも、中2の春季大会で全国優勝したって誰かが言ってたぞ?」

菫「そいつはすこし勘違いしているようだな。
  その大会のメンバー登録の日の直前に私は体調を崩し2週間ほど入院してたんだ。
  春季大会ということもあり大事を取って私はメンバーを外れ、その結果チームは全国優勝」

菫「それが皮肉にも無冠の帝王の名が定着するきっかけになってしまったわけだが…」

照「だが、おまえがそんなあだ名を気に病むような奴とは思えないが…」

菫「もちろん私も最初はそんなこと気にも留めていなかった。名付けた奴もほんの冗談でただの笑い話だったんだ
  だが、中3の夏最後のインターハイの団体戦であれは起こった……」

菫「先鋒だった私は大量リードを奪ってバトンを渡し、後続の仲間もすばらしい麻雀を打ってそのまま大将まで繋いだ
  優勝は確実だと思われた後半戦南3局、うちの大将が2位の親に国士無双を振り込みまさかの大逆転負け…」

照「……」

菫「5巡目だった。流れもへったくれもない完全な事故だった…」

菫「もちろんそいつを責める奴なんて誰一人いなかった。
  だがそいつが二度と牌を握ることはなく、高校も麻雀部のないところへ進学したよ…」

照「……」

菫「ずっと一緒に努力してきた一番気のおけない仲間だった
  忘れられないんだ…残りの2局、泣きながら麻雀を打っていたあいつの姿が、どうしても…」

菫「私のせいじゃないかと思った…私の呪縛が、あいつをあんな目に遭わせたんじゃないかと…」

菫「それ以来、私を清原と呼ぶ者はいなくなった。冗談だったはずなのに誰も笑い話にできなくなっていた…」

照「それで、メンバーに選ばれるのを拒んだのか?自分がいたらチームが優勝できなくなると」

菫「そうだ…笑えるだろ?
  威厳あるように振舞い男勝りだなんて呼ばれてその実は、こんなに女々しく情けないのが本当の私なんだ」

菫「白糸台を選んだのだって逃げだったんだ。東東京が臨海女子の1強なのに対し西東京は激戦区
  全国優勝への憧れは抱いたままなのに、より頂点に近い高校で麻雀を打つのが怖くなっていた」

菫「ここ数年全国を逃してる白糸台なら、全国優勝を夢みたまま自分が真剣に打ってもし届かなくても苦しむことはないと考えた…
  だが、いざ入部してみると白糸台には照、おまえがいた…」

照「……」

菫「おまえの麻雀を知るほど、全国優勝が手の届く距離にあることを感じた…
  そして、その分あのときのことを思い出さずにはいられなかった…」

菫「希望と不安が私の中でぐちゃぐちゃに混ざり合っていた
  こいつなら、私のジンクスなんてものともせずずっと目指してきたあの場所まで私を連れてってくれるかもしれない」

菫「でも、照みたいなすごい奴が仲間にいてそれでもだめだったらどうしよう…
  そのとき私は永遠に仲間を背負って卓に着くことができなくなるんじゃないかと思った…」

菫「そうなることがどうしようもなく怖かったんだ……」

照「……話は分かった」

照「おまえが抱えてきたものに対して私はとやかく言うことはできない…でも…一つだけ言わせてくれ、菫」

菫「…?」

照「私を信じてくれ」

菫「……」

照「私の側で麻雀を打つ限りおまえにもうそんな思いはさせない」

菫「……」

照「だから、菫の夢を私に託してほしい」

菫「……」

菫「…ああ」

菫「頼む」



……

照「ツモ」

実況「試合終了ー!!白糸台高校、次鋒の弘世菫が稼いだリードを一度も奪われることなく圧巻の勝利!!
   2年連続のインターハイ団体戦優勝を達成しました!!!」

実況「永水の神代小蒔に龍門渕の天江衣!今年も新たな選手が大会を湧かせましたがこの選手はやはり別格か!!
   白糸台高校宮永照!付け入る隙を一瞬も与えずその強さは今年も健在だぁ!!!」」
 

部員A「よくやったぞ宮永!」

部員B「おめでとうございます、宮永先輩!」

照「ああ、ありがと」

照「…ところで菫は?」

部員B「弘世先輩ならさっき廊下の奥の方へ歩いていきましたが…」

~会場トイレ~


一番奥の個室「……ッグ……ヒッグ」

照「すぐ泣く女は嫌いじゃなかったのか?」

菫「……」

菫「…すぐ何かじゃない…私はこの日を…」

照「知ってるさ…少しからかっただけだ」

照「ここには私しかいない…好きなだけ泣けばいいさ」

菫「…こんなところで私なんかに構ってていいのか…主役がいなきゃ締まらんだろ…」

照「私がああいう場は苦手なの知ってるだろ…それに…」

照「あっちで歓喜の輪の中にいるよりも、こうしてここでおまえの泣く声を聞いてるほうが優勝したんだという喜びを実感できる」

菫「…そのセリフ…何か変態みたいだぞ…」

照「全国優勝の気分はどうだ?」

菫「……嬉しい……本当に……」

菫「……照」

照「ん?」

菫「ありがとう」

照「私は自分の麻雀を打っただけだよ」

照「清原の呪縛なんて微塵も感じなかった、それより…
  おまえが稼いだ点棒がどれだけチームの皆の気持ちを楽にしたか…」

菫「…照」

照「何だ?」

菫「…私が泣いたことは誰にも言うなよ」

菫「私の威厳というか…イメージが…」

照「ふふ」

照「分かってるさ」

照「おまえがここで泣いたことも、私がちょっぴり泣き虫だってことも二人だけの秘密だ」

菫「……来年も優勝しような」

照「当たり前だ。言っただろう?私の側にいる限りもうあんな思いはさせないと」

菫「…そうだったな」

照「それに」

照「もしこの先離れていつか戦うときが来たとしても」


照「私たちはずっと友達だ」




~END~

照と菫の馴れ初めが書きたかっただけです
後半はストーリー作るために偉大な清原選手に力をお借りしました
ありがとう、清原和博

読んで下さった方はありがとうございました

今さら言うのもなんだけど
清原は個人としては無冠だけど甲子園優勝2回日本一8回という輝かしい経歴の持ち主だということを忘れないで欲しい

>>88
親がKKコンビの大ファンだったこともあり私も清原選手は本当にすごい人だと思ってます
その辺は確かに引っかかりましたが「無冠の帝王」で思いつくのは私の知識では清原とレバンナぐらいだったこと
私が野球好きでできるだけ他の人にも馴染みある方をということで清原選手を題材にさせてもらいました

清原選手をネタにしようなんて気持ちはこれっぽっちもありませんので悪しからず

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