打ち止め「ずっと一緒にいたいってミサカは」一方「あァ」(14)

っていうやつ書いてください

期待を裏切った>>1は万死に値するってミサカはミサカは怒りを露にしてみたり


打ち止め「多分、これで良かったんだよって、ミサカはミサカはあなたに告げてみる」

 思いを巡らせるかのように視線を少し下げたまま、その体には不釣り合いなほどに大人びた口調で少女は言葉を漏らす。
 真っ白な部屋には何もない。
 ベッドとそこで横たわる少女自身と、目を離した隙にこの部屋に埋もれてしまいそうな程に儚く、雪のように冷たく白い彼だけ。
 歪な白色の世界に存在するのは、たったそれだけだった。

打ち止め「ミサカは、あなたにあえて幸せだったって。ミサカはミサカはかわいそうな子兎ちゃんに言ってみたり」

 誰が兎だ、と彼は少女の額をぺちりと叩く。
 その仕草は恋人にするような甘さを含んだものではなく、母親が子供に向ける絶え間ない愛といった方が正しいのであろうと錯覚させるほどに、あまりにも優しすぎた。

打ち止め「……あんまりにも、幸せすぎちゃったかな」

 以前なら、感じなかったはずの不安や恐れが身を包む。
 どれもこれも全て、生まれたての人形"妹達"の一つとして存在していた少女が彼と出会い救われて過ごしてきた中で、ゆっくりと確かに育ってきたものであろう。
 それはまるで、子供がその庇護のベールを脱ぎ捨てて大人になるのと同じくらいに、当たり前で自然であった。

打ち止め「ずっと一緒にいたいってミサカは、っ……」

一方「あァ」

 俺も、一緒にいたかった。と音にならない声を零し、白い少年は涙を流す彼女の頭を、憐憫を孕んだ優しい手付きで撫でる。
 その二人の姿はどこか神聖さを持って、二人だけの二人のための場として存在していた。


一方通行「俺、だって。お前に会えて、……幸せだった」

 いつもの彼とは思えないほど、その声は少女の押し殺した涙の音と同じくらいに悲哀を持ち、かつての栄光は何処へと揶揄されるかのように窶れ、困惑しているかが解るかのように掠れていた。
 普段は様々な感情を尖らせ湛えている深紅の瞳は、これからの事を想像してか澱みを増し、少女と出会った時と同じ……いや。それよりも深く澱んでいた。

ミサカ「……ごめんなさい」

一方通行「……謝ンなよ、お前は悪くねェンだから」

 はたと少女を撫でる手を止め、彼はぶっきらぼうに言葉を放つ。
 その台詞は、少女と"とてもよく似た"彼女達から何度も聞いていた。
 彼女達は誰だって全て、少女と同じように懺悔ともとれる謝罪の言葉を口にした後に消えていった。
 穏やかでありながら、悲しみを映すように笑いながら一言だけ謝罪の言葉を口にしたあと、彼女達は皆、まるで蜃気楼かのように消え去っていく。

 あの夏の日に産まれた9969人、その全ての最期を。彼は一人で見つめてきた。


打ち止め「ミサカは、なにか悪いことをしたのかなってミサカはミサカは最期にあなたに聞いてみる」

 そう問うた少女は、自分の末路なぞ解りきっているというのに、今までのそれと代わりのないほどに美しく、溢れんばかりの輝きを持って、彼に笑った。
 …… ――嗚呼、その少女の姿極寒の地に咲かせた向日葵のように美しく際立ち、今にも消えてしまいそうな程に脆く儚かった。

打ち止め「クローンは、人を愛しちゃいけないの?……って、ミサカはミサカは、」

 ああ、来てしまったか。
 指先がうっすらと透け、段々自分が軽くなる気がする。
 実際に体験してみたら、案外受け入れられるものなのだなと少女は自嘲気味に笑う。

一方通行「……っ、"打ち止め"ァ!」

打ち止め「あ、れ……おかしいな。涙も出ないやって、ミサカはミサカは笑ってみた、り」

 人が人を愛するのは至極当たり前のことで、では人と同じ元素ででき人と同じ事を話し、人と同じく生活をし、人と同じくセックスだってできる。
 ただ違うのは代替品の効く物、ただそれだけなのに。
 それでもいいと言ってくれた人を愛してしまうこと、これは罪なのだろうか。

打ち止め「なんだ、あんまり怖くないって、ミサカのミサカの、指が透けていくのをじっと眺めてみたりして、」

一方通行「いいからもう喋ンな!」

 閉じ込めるように、誰にも渡しはしないと、小さな躰を強くかき抱く。

 いかないでくれと、口にすることは彼は出来なかった。
 その想いが叶ったのなら消えてしまうということは、彼は十分に分かっていた。けれどもそれを知りつつ、それに答えたのは、紛れもなく彼自身であった。
 ――結果的に、少女を殺してしまう引き金を引いたのは彼だった。


 抱き締める少女の躰はもうほとんどの感触が残されていない。
 少女が消えてしまう、今まで人を何人も殺してきたというのに、その中には彼女と同じ顔をした10031人も含まれていると言うのに。ただその事実が、彼にとって恐ろしいことだと感じていた。

 過去を振り返った中でも、これくらいに喪うことを恐れたことがあっただろうか。
 これほどまでに、いとおしいと思えた人を喪う恐怖を、絶望を、一体これまでの彼は想像できただろうか。
 Level5、学園都市第一位のベクトル操作でさえも当てにすることができずに、為す術もなく少女は妹達の最後の一人として、その身を一片たりとも残さずに目の前から消え去ってしまうなんて、そんなこと考えてすらいなかったと言うのに。
 既に少女の躰は、首もと近くまでが消え失せてしまった。


打ち止め「あなたといれて、良かった」

 形は見えないものの、抱き締めている彼の腕には微かに少女の感覚が残っている。
 肩口と思わしきところに顔を当てれば、少女の仄かな香りがしたような気がして鼻奥がつんとした痛みを覚える。

一方通行「……俺もだ」

 柔らかな少女の声と、彼の声が白の部屋に響きあう。
 透けていく彼女の躰の先の白が、目に焼き付いてちかちかと光る。

打ち止め「あなたのこと、好きになれた事に、ミサカは後悔なんてないよ」

 ああいつからだろう、こんなにもこの不器用で素直で天の邪鬼な小さな少女を愛しいと思えたのは。
 こんなにも側にいたいと思えたのはいつのことだったのだろうか。

一方通行「……俺も、後悔してねェ。好きになれた事には」

 彼は少女を抱く腕に力を込める。
 そうでもしないとこの少女は、彼が瞬きをした瞬間にでも消え去ってしまいそうだった。

打ち止め「ふふっ、なんか素直なあなたって凄く可愛いってミサカのミサカの手はもうないけど、あなたを無償に撫でてみたかったりして」

 その言葉通り、少女の手はもう消え去ってしまい僅かな感覚すら感じないでいた。

 もしも、少女に違った形で会えたのなら恋に落ちることはなかったのだろうか。もしも少女が人であれば消えてしまうことはなかったのか。
 考えても尽きることの無い問いに疲れたのか。

 透明度を増した顔を近づけ、色彩を欠いた少女と白さを増していく彼は見つめあい、誰からともをなく唇を近づけ、触れるだけのキスを交わした。
 子供同士がするようにささやかで、恋人同士がするように愛に溢れるそれに、少女は目を眇める。






打ち止め「ずっと一緒にいたいって、……ミサカは、ミサカは叶わないって解っていながら、願ってみたり」

一方通行「あァ、俺も、お前の側に居たかったよ。打ち止め」




.


 願わくば、ずっと隣にいたかったのだと、もうなにも感じられない腕の中で響いた声に彼は答える。
 白い部屋は全ての存在をなかったことにしたいのだろうか、と錯覚させるくらいに虚ろであった。

 主の消えたベッドと所在をなくした彼の腕だけが、少女の存在を肯定しているかのように、無機質な白い空間の中で異質さを放っていた。





おわり

思い付いて即興で書いたから適当
あとは好きにどうぞ、腹筋でもなんでもどうぞ

泣いた

打ち止めァ


読んでて辛かったが読んでしまった


即興でこれだけ書けるとか凄いな

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