ジャン「サシャと踊ろう」(1000)



ジャン(――― 夜会?)

    ザワザワザワッ

ジャン(……ダンスパーティーだと??)


キース「…まぁ、さほど畏まったものでもない。こちらの地区に常駐する兵士達の懇親会のようなものだ」

キース「南地区の駐屯兵団と調査兵団、これに訓練兵が加わる。…なお、訓練兵に関しては、3年目の者達だけが参加を許される」

エレン「調査兵団!?」キラキラ

キース「元々は年に一度開催されていたのだが、4年前の巨人の襲撃以降は取り止めとなっていた」

キース「それが今年になって、再び催されることになったのだ」

キース「当日は立食ではあるが、食事もふんだんに用意される」

サシャ「!!」



キース「基本的に、踊る踊らぬは個人の自由。同性と踊るも、異性と踊るも自由」

キース「しかし全く踊れんとあっては、恥になる」

キース「…よって、本日は訓練の終了時間を早め、基本のステップだけ今 叩き込む」

キース「各自、隣の者とペアと組め!」

ジャン(…ハ? ペア?)チラ

ジャン(右はエレンじゃねぇか…)

サシャ(左はクリスタ…)

ミカサ「エレン、一緒に…」

ジャン(チッ、エレンの野郎…)

サシャ「ク、クリスt
ユミル「クリスタの相手は私な?」

サシャ(そ… そうなりますよねぇ…)



サシャ(私の右…)チラ    チラ(…俺の左)ジャン


ジャン・サシャ「………」


サシャ(……ジャン?)
ジャン(サシャ……?)


ジャン・サシャ(ほ… 他の奴(人)は…?)キョロキョロ

ワイワイワイワイ…

ジャン・サシャ「………」

サシャ(皆、もう隣の人と組んで…)
ジャン(…ここで組まねぇのは不自然)

ジャン「あ… じゃ、じゃあ組むか?」

サシャ「そ、そうですねぇ…」

ジャン(なんか… やりずれぇな…)

ジャン(ま、いっか。 どうせ今だけだし…)



キース「円舞曲は3拍子で歩きと回転が中心だ」

キース「では各自向かい合って…」

キース「まず、男子パートを踊る者は、胸の前に手で大きな輪を作るようにして、その中に女子を入れろ」

ジャン「ん? …こうか?」スッ

キース「男子は女子の背中に手をやり、女子は男子の腕の上から、やはり大きな輪を作るように男子の肩に手を置け」

キース「この状態から、男子の左手と女子の右手を横に持っていってつなげば完成だ」

ジャン「ホラ、手ェ貸せ」

サシャ「ハ、ハイ…」

キース「1、2の3で男子パートはまず左足を前進させ、女子パートは右足を後退させる…」

キース「男子は左右左・右左右、女子は右左右・左右左の順序でステップを繰り返す」

キース「…少し練習してみろ」



ライナー「…何で俺が女子パートを踊らなきゃならんのだ」

ベルトルト「そんなコト言われたって… 僕がやってもいいけどさ」

ライナー「お前と組んだのが間違いだった…」


アルミン「相手がアニで良かったよ。 僕、背が低いから…」

アニ「まぁ、今だけだから…」


ミカサ「私が女子の方で良いの?」

エレン「オレが女子のパート踊るワケねぇだろ」


コニー「オレ、絶対女はヤダからな」

マルコ「分かった分かった、僕がやるから…」



ユミル「…おっ、上手いじゃないかクリスタ」

クリスタ「エヘヘ」


ジャン「行くぞ… せーの、1!」ゴスッ

サシャ「イタッ!」

ジャン「お前も左足出してどうすんだよ。 最初は右を下げるんだろ?」

ジャン「ほれ、1・2・3、1・2・3、右左右・左右左」

サシャ「う、うわわ…」ヨレヨレヨレ

サシャ「ジャ、ジャンは… 意外と器用なんですね」

サシャ「当日踊るかどうかは自由と言ってましたが… 踊るつもりなんですか?」ヨレヨレ

ジャン「分かんねぇよ、んなコト…」

ジャン「でも他の奴らができることを、俺ができないのはイヤだ」

サシャ「なるほど、負けずギライなんですね」

ジャン「うるせぇよ」

面白い期待

>>9 ただのしがないジャンサシャだよ



ジャン「つーか、喋ってる場合か? 足、またおかしくなってんぞ」

サシャ「エ、あ… あれれ??」ギュムッ

ジャン「あ! 馬鹿、足踏むな! …う、うわっ!!」ヨロロッ

    …ドッタン!!

サシャ「…!?」チュゥ  ジャン「…!?」ムニュ
ジャン・サシャ「!!??」

クリスタ「な… 何をしてるの2人とも…?」

ユミル「ジャンが… サシャを押し倒してるように見えるが…」

ジャン「…ウ、ウワアアァァァアッ///!!!」ガバァッ!

サシャ「ひやぁぁあああぁッ!!!」

ライナー「キスしてるようにも見えたが…」

ジャン「じッ… じじじ事故だ事故//!! …誰がこんな!!」

サシャ「ス、スス… スイマセンッ! 私が足踏んだから!!」



サシャ「私もう覚えましたから! つ、続きはどうぞ他の方と!!」ダダッ


ジャン(事故… だけど…)

ジャン(俺の初めてが…)

ジャン(それに… 胸まで触ってしまった…)


ライナー「まあ… アレだ、ジャン」ポン

ライナー「女相手で良かったじゃないか。 俺とベルトルトだったら、トラウマにしかならんぞ」

ベルトルト「そんなの、僕だってイヤだよライナー!」



ジャン(ひと月後のその日までに、各自練習するようにと教官に言われ、訓練は終了したのだが…)



ジャン(……実は『サシャ』という存在を意識したのは、今日が初めてではない)

ジャン(あれは2ヶ月ほど前… 夏も始まったばかりの頃のこと…)


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――― とある休日の山中


ジャン「…あっちいな」ザクザク

ジャン「午前中の早いうちはそれほどでもなかったが、さすがに日が高くなると…」フゥ

ジャン(でも明日の訓練は山登りだし、今回はタイムも評価されるってことだったからな…)

ジャン(コースの下見と、大まかな所要時間も考えねぇと…)

…サアァーーーーー

ジャン(お、左側… 木々の向こうに川が流れてる)

ジャン(川に沿ったこの道を登ってきゃいいのか?)ザッザッ

ジャン(…俺って、採点がかかると妙に真面目になるよな)

ジャン(イヤ、でもこういう地味な積み重ねが憲兵への道に繋がるのであって…)



――― 翌日・技巧


ジャン(なんか… モヤモヤして、あんまし眠れなかった)

ジャン(サシャは斜め前か…)

ジャン(よく考えてみたら、意外と近くにいること多いんだよな)

ジャン(ああ見えて、成績も決して悪くはないし… 女子の中では3番目か4番目くらいか?)


ジャン(女子のトップは間違いなくミカサだ)

ジャン(黒い瞳、黒い髪… 皆とは少し違う顔立ち…)

ジャン(入団式の日に一目で魅かれた)

ジャン(ミカサの両隣はまたエレンとアルミンか…)イラッ

ジャン(…クソッ、羨ましい)



ジャン(サシャ… くるくるした大きな茶色い瞳、赤みがかった茶色い髪…)

ジャン(こうやって、俯きがちで作業してると… 睫毛長ぇ…)

ジャン(…昨日のこと、何とも思ってねぇのかな?)

ジャン(だとしたら… 俺だけがこんなこと考えてんだとしたら、それはそれで腹立つな)

ジャン(間近に迫った顔…)

ジャン(あの日見た白い綺麗な体、胸…)

ジャン(…触っちまった)ワキワキワキ

マルコ「ジャ、ジャン… 手は動いてるけど、作業が全然進んでないよ?」

ジャン「あ… やべぇ」

ジャン「えっと… スパナは… と」キョロキョロ

ジャン「あ、サシャそれ、スパナ終わったら貸して」



サシャ「ああハイ… どうぞ」スッ

ジャン「……」ジッ

サシャ「何です?」

ジャン「イヤ… 指長ぇなと」

ジャン「…結構、綺麗な手ェしてんだな」

サシャ「//!?」ガッチャン!

ジャン「落っことすなよ。 どうした?」

サシャ「イ、イエ… なんでも…」


ジャン(…アレ? ひょっとして、やっぱり意識しちゃってる?)

ジャン(下唇噛んで… 顔、少し赤い…)


ジャン(なんかちょっと… 可愛いとか思っちまったじゃねぇかよ)



――― 対人格闘訓練前


サシャ「…準備運動でもしておきますか」

クリスタ「そうだね、柔軟とか…」

ユミル「クリスタ、背中押してやる」

サシャ「」ペター

ユミル「サシャは… 何でそんな体柔らかいんだ?」

クリスタ「ホント… 誰かに手伝ってもらう必要ないもんね」

クリスタ「脚、ほとんど180度開いて胸まで地面にペッタリ」

サシャ「昔からヒマになると、よくやってましたから…」

サシャ「ホラホラ、こんなこともできますよ? …ヨッと」


ジャン「………」



ジャン(…そうしてサシャはおもむろに立ち上がると、右足を後ろに高々と上げた)

ジャン(両手で踵を押さえ、頭よりはるか上に)

ジャン(のけ反った顔… 顎から胸にかけてのライン、細い腰、すんなり伸びた長い手足…)


ジャン「………」


クリスタ「スゴーイ! バランス感覚良いね!」パチパチ

ジャン「!!」


ジャン(なんだ俺… 何じっくり見てんだよ)

ジャン(お、俺も準備運動しよ…)


ユミル「……?」



サシャ「…さて、教官も見てることですし、たまには真面目にやりますかコニー」

コニー「よっしゃ、本気で行くぞ!」ジリッ

サシャ「望むところです!」ジリジリ…

コニー「…セイッ!」ビュビュッ

サシャ「おっと! まずは左の突きからですか!」ヒョイ

サシャ「では私めも…!」シュシュッ

ジャン(サシャとコニーは左の差し合いか… お互い自分のペースを掴もうとしてる)

コニー「ヘッ、懐入ったぜ!」

ジャン(自分よりリーチの長いサシャの懐に入ったコニーが、すかさず掌底を繰り出す…)

サシャ「なんの!」

ジャン(ヒョイと避けたサシャがコニーの右に回り込み、コニーの腹を狙うが…)

コニー「させるかぁッ!!」ブンッ



ジャン(さらに体を回転させたコニーが左の上段廻し蹴り! サシャ、くぐって避けた!)

ジャン(…そのままコニーの軸足を刈り取るべく、地面に手を付き水面蹴り!)

ジャン(コニー、大きく後ろへ飛んだ!!)

ジャン(そして助走をつけ、飛び膝蹴りか!)

ジャン(…うっわ、危ねえ! サシャが避けたからいいようなものの、あんなの当たったら痛ぇだろうが!!)

ジャン(サシャが構えた!)

ジャン(飛び膝から振り返ったコニーに… 踵落とし!?)

コニー「…足元がお留守だぜ、サシャ」トン…ッ

サシャ「あ、あわわ…」トサッ

コニー「オレの勝ちだな!」

サシャ「…うむむ、してやられました」

コニー「あんなトコで踵落とし出すからだろ」

サシャ「まだ早かったですねぇ…」



ジャン(何だよアレ… )

ジャン(アイツら… いつもフザケてばっかだと思ってたのに)

ジャン(…なんて多彩な攻撃技、息を呑むような攻防…)

ジャン(相手が避けると思って仕掛けてんのか?)

ジャン(俺… アレに対応できっかな…?)


コニー「…しかし、オレらって打撃技ばっかだな」

サシャ「今度、アニに絞め技でも習ってきましょうかね」

コニー「お前だけするいぞ!」

サシャ「習ったらちゃんと教えてあげますって」


マルコ「…ジャン、教官がこっちに来るよ! 集中しないと…」

ジャン「あ、ああ… そうだったな」



――― 夕食


コニー「…サシャ! パン寄越せよ!」

サシャ「なッ!? ナゼに!!」

コニー「格闘、オレが勝ったじゃんか」

サシャ「きょ、今日は賭けてなかったじゃないですか!!」アセアセ

コニー「なんも賭けてない時だって、お前が勝ったらオレから奪ってくだろ?」

サシャ「エ゛ェ゛エ゛エ゛ェ゛エ゛エ゛」

サシャ「ヤです ヤです! これがなかったら、私はまた食糧庫に忍び込まきゃなりません!!」ブンブン

サシャ「もしバレたら、コニーに頼まれたって言いますよ!」

ユミル「なんて脅し方してんだ、お前は…」

コニー「しょうがねぇなぁ… そんじゃ今度、前に作ったウサギ肉のワイン煮込み食わせてくれよ」

サシャ「なんだ、それくらいならお安い御用です」ケロリ



ジャン(……今日気付いたコト)

ジャン(食事の時間のサシャは、相変わらず騒がしかったが…)

ジャン(でも、よく見てると表情がコロコロ変わる)

ジャン(ウサギの煮込みだって? …スゲェな、そんなの作れんのか)


ジャン(…食事や訓練前、普段の時間は大抵クリスタ、ユミルと一緒にいる)

ジャン(格闘では、以前からコニーと組むことがほとんどだ)

ジャン(2人で遊んでばかりいると思っていたが…)

ジャン(真面目にやってるところを見てみれば、なるほど女子の中で上位にいるのも頷ける身体能力だった)

ジャン(それに体、柔らかいんだな…)

ジャン(踵落としもそうだけど… あの足、後ろに上げてたヤツ…)

ジャン(身体のラインがすげぇ綺麗だった)

ジャン(あと そうだ、手も…)



ジャン(…ハッ!)ブルブルブル

ジャン(イヤイヤ、俺はミカサが…)

ジャン(これは仲間の良い所を再発見しよう的な… 決して浮気ではない)

ジャン(…というか、顔だってスタイルだって、意識して見りゃ驚くほど綺麗なのに…)

ジャン(アイツ… 勿体ねぇな…)

ジャン(サシャがただ黙ってんなら、男どもだって放っとかねぇと思うんだが…)

ジャン(頬赤らめて俯いて…)

ジャン(大抵の男なら、あれだけでやられちまうんじゃねぇのか?)


ジャン(事故とはいえ、俺の初めてだったワケだが…)

ジャン(多分… サシャにとっても初めてだったんだろうな)

ジャン(悪いコトしちまった…)



――― とある訓練中・休憩時間


ジャン「…暑い」

マルコ「朝晩はともかく、日中はまだまだ暑さが残ってるから」

ジャン「俺、暑いのキライだわ…」

マルコ「エレンなんかは夏が好きだって言ってたけどね」

ジャン「アイツの話はいいっての」

ジャン「…ちっと顔洗ってくる」テクテクテク…



ジャン(…アレ、あそこ… サシャとユミルとクリスタ?)

ジャン(休憩時間だからか。木陰で3人で涼んでる)

ジャン(ナニ話してんだろ?)



ユミル「…今日を乗り越えれば、明日はやっと休みだな」

クリスタ「明日はどうする? ユミル」

ユミル「ウーン…」

サシャ「そういえば、例の懇親会だかなんだかは正装しなければいけないと言ってましたが…」

クリスタ「ドレスは貸してくれる中から好きなの選んでいいんだよね?」

サシャ「そういった格好はしたこともないですし、そもそも苦手なんですけどねぇ」

クリスタ「そーお? 結構楽しいと思うんだけどなぁ」

サシャ「実用性第一です」

クリスタ「そうだユミル! それなら街に小物を見に行こうよ!」

クリスタ「本当は、ドレスを選んでからの方がいいんだけど…」

ユミル「ん? ああ、いいぞ別に。 …サシャはどうする?」

サシャ「私はコニーとの約束がありますから、ウサギを捕りに行かないと…」

サシャ「それに2人と違って、私が着飾っても笑われるだけですから」

クリスタ「もう! サシャったら、そんなコトないのに…」



サシャ「…フフ、クリスタは優しいですねぇ」

クリスタ「ねぇサシャ、あの唄 歌って?」

サシャ「へ? どの歌です?」

ユミル「クリスタが好きなのは、アレだろ」

クリスタ「そうそう!『草をしとねに』ってヤツ!」

サシャ「あれは戦の歌で…」

サシャ「あまりクリスタには似合わないと思うんですがねぇ…」フフッ

クリスタ「いいの、好きなの! 歌って!!」

サシャ「クリスタが望むのなら、いくらでも」


『山に屍 川に血流る
   故郷の天地 秋寂し
 草を褥に 夢いずこ
   明けのみ空に 緋の翼…』



ジャン(澄んだ声…)

ジャン(…聞いたことある)

ジャン(凄惨な戦いの… でも物悲しいその歌を、サシャは朗々と歌った)



ジャン「………」スタスタ

マルコ「お帰り、ジャン」

マルコ「あれ? 顔、洗ってきたんじゃなかったっけ?」

ジャン「…洗ってない」

ジャン「なんか、あんまり暑くなくなった」

マルコ「? まぁ、もうじき休憩も終わりだしね」



ジャン(何だろう… 確かにキラキラに着飾ったサシャというのは想像つかないが…)

ジャン(普通… 若い女なら、可愛くなりたいとか綺麗に見せたいとか思うものじゃないか?)

ジャン(訓練所に入る前だって… 街の女は、今の俺達よりも小さな子供でさえ、そういう興味でいっぱいだった)

ジャン(リボンがどうとか、髪飾りがどうとか…)

ジャン(その頃はくだらねぇと思ってたけど)


ジャン(…それに、笑われるって)

ジャン(誰も笑ったりなんかしないだろうに…)

ジャン(何だろう… この気持ち)

ジャン(恋愛感情とかじゃなくて…)


ジャン(…サシャの歌声が頭を巡る)

ジャン(あのよく通る、澄んだ声で頭がいっぱいになる)



――― 休日朝・食堂


クリスタ「…それじゃ、私達は街に行ってくるね」

サシャ「エエ! ウサギが獲れたら、2人にもご馳走しますよ」

ユミル「サシャ、なんか土産いるか?」

サシャ「そうですねぇ… 煮込みの付け合せに、野菜が少々あると嬉しいですかね」

クリスタ「それだけでいいの?」

サシャ「ハイ! 後でちゃんと払いますから」

クリスタ「いいよ、そのくらい。 ご馳走してもらうんだし」

サシャ「でも…」

ユミル「いいっての」

サシャ「そうですか… じゃあ、たくさん捕れるよう祈ってください」



マルコ「今日は何か予定があるの? ジャン」

ジャン「…別にねぇな」

マルコ「それじゃ、本屋にでも行かないかい?」

マルコ「確かもう新刊が出てるはずなんだ」

ジャン「ああ… そういや俺も見たいのあるんだった」



アルミン「エレンとミカサは今日も自主練?」

ミカサ「ええ、今日は主に組み手をやるつもり」

エレン「オレ多分ボッコボコにされるんだろうな」

ミカサ「私はそんなことしない」



――― 街


ジャン「…最後の新刊買えて良かったな、マルコ」

マルコ「本当だよ! 今日を逃したら、また来週までお預けだったからね」

マルコ「…っと、そろそろ昼だよ。どうする?」

ジャン「そうだな、食ってくか」


ジャン「あ… 向こうから来るの、ライナー達じゃねぇ?」

ジャン「ヤツらも街で飯食ってくのかな?」

マルコ「声かけてみようか」


マルコ「オーイ! ライナー、ベルトルト!!」



-------------------

ライナー「…懇親会では男も正装なんだろう?」

ベルトルト「貸し出してくれるのは有難いけど、僕のサイズに合うのあるかな」

マルコ「駐屯兵や調査兵でも借りる人はいるだろうから、サイズは問題ないんじゃない?」

ジャン「つーか、兵士の正装っていったら普通、戦闘服じゃねぇのかよ」

ライナー「戦闘服じゃ色気がないだろう」

ジャン「男に色気は必要ねぇだろが」

マルコ「でもせっかく女子達が着飾ってくれるんだから、僕らも合わせないと」

ベルトルト「私服でのスカート穿いてるのは見たことあるけど、ドレス姿っていうのも見てみたいね」

ライナー「そういや、あれっきりまったく練習してないが… ダンスのステップ覚えてるか?」

マルコ「一応覚えてるけど…」

ベルトルト「誰かを誘うつもりがないのなら、無理に練習しなくてもいいんじゃない?」



ライナー「…イヤ、誘われる可能性もなくはない」

ジャン「誰にだよ?」

ライナー「クリスタ… とか」

ジャン「それはねぇだろ」

マルコ「でも仮に誘われたとして、全然踊れなったらやっぱり恥ずかしいよ」

マルコ「誘うつもりなら尚更ね」

ベルトルト「マルコは誰か誘いたい相手がいるの?」

マルコ「い、いや僕はその…//」

ジャン「ベルトルトはどうなんだよ?」

ベルトルト「ウーン、僕は… いないこともないような…」



ライナー「ジャンはやっぱりミカサか?」

ジャン「エッ!?」

ジャン「で、でもそりゃあ… 無理に決まってるだろ」

マルコ「そうだねぇ…」

ライナー「それじゃサシャはどうだ? こないだキスしてただろう」

ジャン「なッ//! あれはただの事故だ、事故!!」

ライナー「事故でも何でも、男ならやってしまったコトの責任は取らんとなぁ」ニヤニヤ

ジャン「サシャだって気にしてねぇって!!」

ベルトルト「本人に聞いたの?」

ジャン「イヤ… 聞いちゃねぇが… でも、そんなんワザワザ聞くモンでもねぇだろ?」

マルコ「まあ聞きづらいよね」

ライナー「よし! じゃあ帰ったら4人でダンスの練習でもするか!!」

ジャン「マジかよ…」



――― 訓練所


ジャン「……本当に練習するとは思わなかった」

マルコ「真面目にやってみると、結構疲れるものだねぇ」

ライナー「2人ともサボるんじゃない」

ジャン「俺はちょっと休憩だ」

ジャン「食堂行ってコーヒー飲んでくる」タタタッ

マルコ「ジャンが逃げた……」



ジャン「…やってられるかってんだ」スタスタ

ジャン「俺が誰かに誘われるワケねぇだろが…」

ジャン(誘う相手だって……)



ギイィーー バタンッ!


ジャン「あー疲れた…」

ジャン(厨房でお湯沸かさないと… ん?)


サシャ「」コトコトコト…

ジャン「…何やってんだ?」

サシャ「エ? あぁ… ちょっと厨房借りて、煮込みを作っててですね…」

ジャン「そういや、ウサギがどうとか言ってたな」

ジャン「こっちの火ィ借りて、お湯沸かしていいか?」

サシャ「もちろん」



ジャン「……」コポコポ…  サシャ「……」コトコト…


ジャン「…いい匂いだな」

ジャン「それ、もう出来てんの?」

サシャ「ほぼ完成です。 後は付け合せの野菜に合わせて、火を入れ直すだけなので…」

ジャン「フーン」ジイィー

サシャ「あ… 味見してみますか?」

ジャン「いいのか?」

サシャ「今日は大漁だったので、味見程度なら、なんてコトありませんよ」

サシャ「今取り分けますから…」チャッチャ

ジャン「」ムグムグ…

ネタが無いネタが無いと言いながらも何時も面白い事書くんだよね~尊敬乙

支援・乙等、ありがとうございます
>>51 完結しちゃったなら、また最初から書いてもいんじゃん? という結論に至った
でも何で分かったんだ? ジャンサシャだからか、やっぱり書き方にクセがあんのか
あと、面白いといわれるのは何より嬉しいです。 ありがとう



ジャン「………」

サシャ「もう、火 止めちゃいましょうかね」ゴソゴソ

ジャン「…旨い」

ジャン「スゲェ旨い」

サシャ「…口に合いましたか。 それは良かった」

ジャン「へぇー、こんなの作れるモンなんだな」

ジャン「…今すぐでも嫁に行けるんじゃねぇの?」

サシャ「//!!」




ジャン(サシャ… 走って出てっちゃった…)

ジャン(前みたいに、唇噛んで顔赤くして…)


ジャン(…洗い物しとくか)



――― 夕食


コニー「うめェ!!」バクバク

クリスタ「ホント! すっごい美味しいよサシャ!」

サシャ「ちゃんとご馳走できて良かったです」

ユミル「ちょっぴり野菜買ってきたくらいじゃ、割に合わないんじゃないか?」

サシャ「そんなコトないですよ。 材料は前から買ってありましたし、メインのお肉はタダですから」

ライナー「何だ? イイ匂いがすると思ったら、このテーブルか」

コニー「サシャとの勝負に勝ったから、作ってもらったんだ」

ライナー「ほう… サシャに勝てば、メシをご馳走してもらえるのか?」

サシャ「エッ!?」



サシャ「ラ、ライナーはダメですよ! 格闘では勝てる気がしません!!」

ライナー「格闘以外の何ならいいんだ?」

サシャ「エート… ば、馬術とか?」

ライナー「馬術か… それはちょっと俺には分が悪いな」ウーム

サシャ「別に勝負なんかしなくたって、大物が獲れたらちゃんとご馳走しますから」

ライナー「そうか… それじゃ楽しみに待つとしよう。 しかしウマそうだ」


ジャン(…マジで旨かったぞライナー)


…ギギイィーーー


ジャン(教官…?)



キース「明日の訓練… 立体機動だが」

キース「…これは第二訓練場にて行う」

キース「貴様らは初めてだろうが… 実際にブレードを使用した、巨人討伐の模擬訓練だ」

キース「今後はそちらが主な訓練場になる」

キース「地図を廊下に貼りだしておく。 各自確認し明日の朝、その場に集合するように」

全員「「…ハッ!!」」バッ!



クリスタ「…遠いのかな?」

ユミル「さぁな、地図見てみないとなんとも…」

サシャ「私、食べ終わったし先に見てきますよ!」



------------------


ユミル「…サシャ、見てきたか?」

コニー「ドコだったんだ?」

クリスタ「遠いの?」

サシャ「遠くないですよ。 今日狩りに行った場所の、すぐそばでした」ニコニコ

ユミル「何でそんなに嬉しそうなんだ?」

サシャ「あそこには、私のお友達がいるんです」

クリスタ「…おトモダチ??」

ユミル「なんのことやら、サッパリ分からんが…」

サシャ「明日、紹介します」



――― 翌日・立体機動訓練前


ユミル「…フーン、何度か通ったことあるが、ここも訓練場だったんだな」

クリスタ「あんまり木々の中までは入って行かないからね」

ユミル「そんで、おトモダチはどこにいるんだ、サシャ?」

クリスタ「古い布をいっぱい手に巻いて… それなぁに?」

サシャ「ちょっと待ってください」

…ピュイィィーーーーーーーーー!!


ジャン(…サシャが指笛を鳴らしてしばらくすると、ソレは現れた)

ジャン(アレは… 鷹!?)

クリスタ「キャッ!」

鷹「」バサバサッ

ユミル「それ… もしかして前に拾ってきたって、しばらく面倒見てたヤツか?」

サシャ「そうです。 巣から落ちてて…」



クリスタ「ヘェー、随分大きくなったのね」

サシャ「森に返したんですけどね。 笛を吹いたら、ちゃんとやって来るんですよ」

サシャ「かしこいかしこい」ツンツン

サシャ「ちなみに名前はピーちゃんです」

ユミル「ピーちゃんて目付きじゃないと思うんだが…」


ジャン(…俺もそう思う)


サシャ「だって雛の時はピーピー鳴いてたじゃないですか」

コニー「すげぇ! カッケェじゃんか!」

サシャ「昨日、ウサギを捕まえるのにも協力してくれました」

ユミル「鷹狩りか」

コニー「オレも雛探して育ててみようかなー」

サシャ「やっと一緒に飛べますよ、ピーちゃん」ニコニコ



ジャン(…訓練が始まると、サシャは鷹と一緒に飛んだ)

ジャン(鷹は初めて空を飛ぶ我が子を先導しているようで、また時には上からサシャを見守るようでもあった)

ジャン(サシャはとても楽しそうだった)

ジャン(訓練のことなど頭になかったに違いない)

ジャン(…しかし鷹の誘導は的確で、滑車で動く大きな板で作られた巨人のうなじをサシャは大いに斬り取った)

ジャン(俺は常に頭で考え、そして体を動かすが…)

ジャン(サシャはまず動き、動きながらその理由を考えるのだろう)

ジャン(ただ… 嬉しそうに飛ぶサシャは、普段地面に足をつけて歩いているのが不自然に思われるくらい自由に見えた)



コニー「…ズリィぞサシャ!」

ジャン「サシャ、お前… 立体機動上手かったんだな。 すげぇ削いでたじゃねぇか」

サシャ「こちらは1人と1羽ですからね!」ニコッ

ジャン「………」



――― 食堂


ジャン「」ギイィー

   …ワイワイワイワイ

ジャン「?」

ジャン「…何だ? どうしたマルコ、皆ナニ盛り上がってんだ?」

ジャン「俺、倉庫に寄ってたから全然分からねぇんだが…」

マルコ「ああ… 確か最初にライナーが『いつか結婚したら…』みたいなことを話し出して」

マルコ「そしたらユミルが『結婚するつもりなのか』って返してさ」

マルコ「そこから皆で結婚談議が始まっちゃって…」

ジャン「ハァ?」


ライナー「…だから、今すぐでなくても結婚くらい皆するだろうに」

ミーナ「私は良い相手さえいれば、いつしてもいいけどなぁ」

アニ「…そんなのまだ想像もつかないよ」



フランツ「僕らは今すぐにだって構わないよね?」

ハンナ「もちろんじゃないフランツ」

ミカサ「子供はたくさん欲しい」

アルミン「ミカサは良いお母さんになりそうだよね」

エレン「ハハ、口うるさそうだけどな」

コニー「うちの母ちゃんなんて、怒鳴ってばっかだぞ?」

マルコ「僕は… そうだな。 ちゃんと一人前の生活できるようになってからかな」

ベルトルト「さすがマルコ。 しっかり考えてるね」

ライナー「ジャンはどうなんだ?」

ジャン「お、俺!?」

ジャン「子供の事なんか今はまったく考えられねぇが… 結婚はできたらいいと思う、か?」

ユミル「ジャンは短気だし、口が悪いからな。 嫁さんが苦労しそうだ」

ジャン「口の悪さはお前に言われたくねぇぞ、ユミル」



クリスタ「私もそうねぇ… いつかはしたいかな」

ユミル「クリスタの相手は私だから、結婚したくなったらいつでも言え」

クリスタ「サシャは?」

サシャ「私ですか……」ウーン

サシャ「私は… しないんじゃないでしょうかねぇ…」

サシャ「子供は欲しいような気もしますが…」

ユミル「誰かに求婚されてもか?」

サシャ「フフ、そんな物好きいやしませんよ。 …スイマセン私、明日早いので先に戻ってますね」

クリスタ「明日の朝は一緒に水汲み当番だものね」

ユミル「クリスタも今夜は早く寝ろよ?」



ジャン「………」



――― 部屋


ジャン「…なぁ、マルコ」

マルコ「何だい?」

ジャン「マルコは人に褒められたら嬉しいか?」

マルコ「まぁお世辞じゃなければ嬉しいと思うよ」

マルコ「どうしたの?」

ジャン「イヤ、別に…」



ジャン(何でだろう… サシャは兵士としての能力を褒めたら普通に喜ぶのに…)

ジャン(それが容姿だとか… 女らしい部分に触れると、とたんに赤くなって黙り込む)

ジャン(唇噛んで…)



ジャン(…結婚か)

ジャン(確かに考えるのはまだ早過ぎるが…)

ジャン(サシャは興味ないというか、ハナっから無理だと決め付けてるような言い方だったな)

ジャン(とっとと部屋に戻っちまうしよ…)

ジャン(そりゃ、ああいう話は俺だって得意じゃねぇけど)


ジャン(あんな旨いメシ作れるのに…)

ジャン(今日の立体機動の時だって、すごく伸び伸びして綺麗だったのに)


ジャン(…なんか、俺おかしい)

ジャン(何でこんなことばっか考えてんだろう…)

ジャン(俺、どうしちまったんだろう…)



――― 翌日・早朝


サシャ「…ユミル、ユミル起きてください」ユサユサ

ユミル「何だよ… 私は当番じゃないぞ」

サシャ「そうじゃなくてクリスタが…」

ユミル「」ガバッ!


サシャ「なかなか起きてこないので、起こそうと思ったら…」

ユミル「かなりの高熱だな」

クリスタ「」ハァハァ

サシャ「水汲みは私だけでもできるからいいんですが、クリスタをこのままには…」

ユミル「これは… 薬をもらってくるより、医務室に連れてった方がいいな」

サシャ「私も行きましょうか?」

ユミル「イヤ… こっちは大丈夫だから、悪いがサシャはクリスタの分も水汲み頼めるか?」

サシャ「分かりました。 それじゃクリスタをお願いします」



…ザブザブザブ


サシャ(クリスタ… 大丈夫でしょうか)

サシャ(あんなに高い熱を出すなんて…)

ザブザブ…

サシャ(…もうすぐ終わりそう)

サシャ(1人でもこれくらい余裕です)

サシャ(力持ちで良かった)

…ザブッ

サシャ「…終わった」フゥ

サシャ(まだ時間に余裕がある…)



ジャン「……ハァ」テクテク

ジャン(なんだかチョコチョコ目が覚めちまって…)

ジャン「…あんまり寝た気がしねぇ」

ジャン(結局起きて歩き回ってるワケだが…)

ジャン(今日は座学だよな)

ジャン(途中で寝ないようにしねぇと…)

ジャン「……ん?」

ジャン(何か聞こえる… 歌か?)

ジャン(あ… サシャだ。 そっか、今朝は水汲みとか言ってたっけ)



『雁よ南へ飛ぶ時は 我がこの想いを運びゆき
  雁よこの地に帰る日は 彼の地の便りをお願いします
    そう思えども空高く飛ぶ 彼方の雁に問うすべはなし』


ジャン(高くてよく通る澄んだ声… サシャは故郷に帰りたいんだろうか…?)



ジャン「」…ガサッ

サシャ「!?」バッ

ジャン「あ… わ、悪ィ… 散歩してたら何か聞こえてきたから…」

サシャ「……//」スッ

ジャン「ちょ! 待て、行くなって! 少し話を…」

サシャ「……?」

ジャン「あ、あのよ… 昨日の話、あの結婚の…」

ジャン「どうしてあんな… 自分には無理みたいな言い方すんだ? 自分を選ぶ奴は物好きだとか…」

サシャ「どうしてと言われても… そう思っているからとしか」

ジャン「俺はそ… そんなコトはねぇと思うぞ?」

ジャン「お前… 顔だってスタイルだって良いし、その…」

サシャ「―― やめてください!!」



サシャ「もう、やめてください」

ジャン「…え?」

サシャ「何でそんな…」

サシャ「人の手がどうとか、顔だとか…」

サシャ「…ちゃんと謝ったじゃないですか」ポロッ

サシャ「足を踏んだのはワザとじゃないです。 ただ私が不器用だからで…」

サシャ「不器用で頭も悪い、田舎育ちの芋女だからで…」オロポロポロ

サシャ「事故とはいえ… こんな女が相手ですみませんでした!!」

サシャ「だからもう、これ以上私を貶めないで…」

サシャ「…もう私に構わないでください!」ダダッ

ジャン「エッ!? な、何を…」

>>52
癖とかは判りませんので安心してください。
それよりも、せっかく前の方で有耶無耶にしてたのに
はっきりと言わせてしまい申し訳ないという気持ちです。
すまんのう。

>>73 どうせすぐ分かることだから、気にするこたぁない


ジャン(貶めないでくれって… 何が?)

ジャン(…何で泣くんだよ)

ジャン(サシャは… 俺がずっと馬鹿にしてると思ってたのか?)

ジャン(だからあんな唇噛んで…?)

ジャン(そんな、俺はそんなつもりはまったく…)


ユミル「……ジャン!」…ザッ

ジャン「ユミル!?」バッ

ジャン「い、今の… 見てたのか…?」

ユミル「まぁその… 水汲み手伝おうかと思って来たら、たまたまだが…」

ユミル「…なんだジャン、サシャに心変わりか?」

ジャン「…そんなんじゃねぇよ」



ジャン「でも… 何でアイツ、あんな…」

ユミル「卑屈なくらい、自分に自身がないかって?」

ジャン「………」

ユミル「サシャは、自分が社会不適合者だと思ってるからな」

ユミル「ここに入った頃は、もっとひどかった…」

ジャン「…芋か?」

ユミル「それもあるが…」

ユミル「いつも人の目を気にして怯えて」

ユミル「…覚えてないか? サシャは入団した頃、自分からは誰にも話しかけようとしなかった」

ジャン「俺は、その頃は… 自分のことだけで精一杯で…」

ユミル「ああ、お前はそうだったっけ」

ユミル「あんなに奔放に見えるのにな… 本心は決して話さない。 自分の故郷のことも」

ユミル「さっきの唄、聞いてたよな?」

ジャン「ああ…」

まずい失敗した



ユミル「あれ、サシャは1人の時にしか歌わないんだ」

ユミル「たまたま聞いたクリスタが、前にねだったことがあるんだが… 笑って濁してさ」

ユミル「故郷に帰りたいのかって聞いても、アイツは帰れる家があるはずなのに、ただ自分は帰れないからって言うだけで」

ユミル「あの敬語にしたってそうだ」

ユミル「よほど山奥の小さな村で、人との交流もなく過ごしてきたんだろうな」

ユミル「今は周りにも一応馴染めてるし… サシャの能力そのものを褒めれば、素直に喜ぶようになってきたが…」


ユミル「勿体ないだろ? アイツ… あんな美人なのに」

ユミル「いくら私やクリスタがお前は綺麗だと言っても、サシャは笑ってるだけなんだ」

ユミル「まぁ… 自分を駄目な人間だと思ってる奴に、女を自覚しろと言ってもな」

ユミル「…女の部分に関して言えば、サシャが自分を卑下する原因は私やお前らにもあるんだぞ?」

ジャン「え?」



ユミル「入団式できっかけを作ったのはサシャだが…」

ユミル「皆結構しつこく芋女って呼んでたし、その上次は『放屁女』だからなぁ…」

ユミル「その場を収めるためとはいえ、そう呼ばれるようになったのは誰のせいだっけ?」

ジャン「それは… 俺とエレンが喧嘩して…」

ユミル「あとな、ジャンお前… 前にダンスの練習してスッ転んだ時、何て言ったか覚えてるか?」

ジャン「……あ」


  ジャン『事故だ事故! 誰がこんな!!』


ユミル「何だよ『こんな』って…」

ジャン「…イ、イヤ! アレは違うんだって!!」

ユミル「その後にどんな言葉が続いたのかは知らんが…」

ユミル「でも… これ以上深入りするつもりがないのなら、サシャの言った通り、もう構わないでやってくれないか?」

ユミル「…クリスタとは違うが、サシャはサシャで私の可愛い妹分なんだよ」



――― 夕食


サシャ「…クリスタは今夜は医務室ですか?」

ユミル「食事を運びがてら、様子を見てきた。 熱は一応下がったんだが」

サシャ「そうですか… 訓練後に行った時にはちょうど眠っていたので…」

ユミル「水汲み、悪かったな」

サシャ「イイエ! そんなのは別に…」


    …ガッシャーーーーーン!!


ジャン「…壁の外に出た人類がどれだけ死んでったか分かってんだろ!!」

エレン「そんなの分かってる! でも…」

エレン「だからって、ここで誰も続かなかったら、今まで死んだ人間の命が無駄になる!!」



サシャ「…またやってますねぇ」

ユミル「そうだな…」

ユミル「だが… 自分の思ってることを包み隠さず口に出せば、そりゃ他人とぶつかることはあるさ」

ユミル「アイツら2人とも、真っ正直で嘘がつけないからな」

ユミル「誰かさんとは正反対だ」

サシャ「え……?」

ユミル「確かにジャンは抜き身すぎるが… それでも奴は嘘をつかない」

ユミル「恐れず、人に嫌われることを厭わず正直に思いの丈をぶつける」

ユミル「そういう勇気を持った奴だと… 私は思うよ」


サシャ「…………」



――― 夕食後


マルコ「…どこか行くの? ジャン」

ジャン「イヤ、ちょっと図書室に…」

ジャン「あそこ、確か音楽聴ける道具もあったよな?」

マルコ「あった… と思うけど、一体どうしたんだい?」

ジャン「まぁ、それはな…」

ジャン「それからマルコ… 部屋戻ったら、ちょっと頼みがあるんだが…」

マルコ「僕でいいなら、いくらでも」



ジャン(…あと、一週間)

少ししか書けなくてすんません。気分転換にちょっと他の書いてました
今夜か明日くらいにもう少し進められたらと思ってます



――― 翌日


サシャ「…クリスタ! 元気になって良かったです!」

クリスタ「ごめんね、急に熱なんか出して… 今度サシャの当番代わるから」

サシャ「エェ!? そんな必要ありませんよ!」

サシャ「私はクリスタがニコニコしててくれれば、それでいいんですから」

ユミル「…だってよ、クリスタ」

ユミル「サシャは、怒りんぼクリスタは見たくないんだと」

クリスタ「何よそれ!」プクッ

ユミル「ハハ、それだよそれ!」

サシャ「…フフッ」



ミーナ「ねぇねぇ! 今日、訓練少し早めて夜会の会場に行くって!」

ミーナ「ドレス選びだって!! アニ、何色が着たい?」キャッキャ

アニ「それは見てみないと何とも言えないねぇ…」


ユミル「…ん? そうか、今日ドレス選びか」

クリスタ「会場って遠いのかな?」

ユミル「そうでもない。 結構近いぞ」

ユミル「何でも、王や貴族がこちらにやって来た時に利用する建物として建設されたらしいんだが…」

ユミル「…アイツらこんな前線まで来やしないからな。 普段は商会の関係者が使ってることが多いんだとさ」

サシャ「ユミルは物知りですねぇ…」

ユミル「まぁ訓練所に入る前は、あちこち歩いてたからな」

クリスタ「ドレスかぁ… 楽しみだね!」ニッコリ



――― 訓練後・会場試着室


ライナー「うーむ…」

ベルトルト「どうしたんだい、ライナー」

ライナー「肩… と、胸が少しキツイ」

ジャン「ライナーは胸板あるからな。 丈のことは気にしないで、肩と胸周りに合わせたらどうだ?」

ベルトルト「僕は逆に背丈に合わせると、緩くなっちゃって」

マルコ「皆大変だね。 僕は標準体型で良かったよ」

マルコ「ジャンも身長の割に細身だよね」

ジャン「まあ俺くらいならよくいるだろ。 エレンとかさ」

ライナー「いつか自分の体に合った礼服をきちんと仕立てたいものだな」



クリスタ「…ユミル! ユミルにはこれが似合うと思うの!!」

ユミル「こんな背中開いたのヤダ」

サシャ「エェ? 背中キレイなのに…」

ユミル「それならお前が着ろ」

サシャ「遠慮します」

クリスタ「サシャはどれにする?」

サシャ「私は派手でなければなんでもいいです」

サシャ「あ! ゴハンいっぱい食べるので、あんまり体にピッタリした物もいけませんね」

クリスタ「でも早く決めないと、次は靴も選ばないといけないのに…」

サシャ「むむぅ…」ゴソゴソ


サシャ「………!」



マルコ「…ジャン、今夜もかい?」

ジャン「ああ、迷惑でなければだが…」

マルコ「いいよ。 ジャンのお願いなんて滅多にきけないものね」

マルコ「僕で役に立てるなら、いくらでも」

ジャン「…悪ィな、マルコ」



コニー「メシ食い放題なんだよな?」

アルミン「立食だしね。 ふんだんに用意してあるって言ってたから、いいんじゃない?」

エレン「よっしゃ! 食いまくるぞ!!」

アルミン「フフ、借り物の服が破れない程度にね、エレン」



ジャン(…ダンス云々はともかく、皆がその日を前にして落ち着きをなくしているのは確かだ)

ジャン(何せ、駐屯兵や… あの調査兵団もやってくるのだ)

ジャン(調査兵団の団長、それに人類最強と名高い兵士長…)

ジャン(…エレンなどは子供のように浮かれている)

ジャン(ヤツにとってはきっと、見たこともない王などよりも、よほど憧れの存在なのだろう)



ジャン(…あれからサシャには近付いていない)

ジャン(ふと、視界に入ることはあっても、一切話し掛けるようなことはしない)



ジャン(頭の中で、美しい音色が奏でられる)



ジャン(………夜会が、始まる)



――― 夜会・当日


ライナー「…午後の訓練を早々に切り上げ、出発か」

ベルトルト「お風呂に入る時間があったのは嬉しいね」

ジャン「午後は座学だが、午前は馬術だったからな」

ジャン「せっかく借りた服が、馬の匂いになっちまう」

マルコ「まぁ近距離とはいえ、移動はまた馬なんだけどね」

ジャン「ハハッ、そうだった」



マルコ「………ジャン」パカパカ

ジャン「ん? 何だマルコ」

マルコ「……イヤ… 何でもない」

ジャン「おかしなヤツだな」



――― 会場


エレン「着替えて広間に出てきてみたら…」

エレン「なんて広いんだ! それに夜なのに、すげぇ明るい!!」キラキラ

コニー「見ろエレン! ヘンな物持って座ってるヤツらがいるぞ」

アルミン「コニー、彼らは楽団の人達だよ」

ベルトルト「まだ開始時間ではないけど… 食事も普段とは比べ物にならない物が用意されてる」

ライナー「それだけでも、来た甲斐があったというものさ」

マルコ「女子はまだなんだね。 支度が済んでないのかな?」

ジャン「女ってのは支度に時間がかかるんだろ、きっと」



コニー「…お、訓練兵の女子と駐屯兵、調査兵がちらほら入ってきたぞ」

エレン「調査兵団!!」パアァァ

マルコ「さすが女子達は色とりどりだね」

フランツ「…ハンナ! 白のドレスだなんて… まるで花嫁衣裳じゃないか!!」

マルコ「ミーナは華やかなバラ色のドレスだ」

アルミン「ミカサは光沢のある紺… 品があって、よく似合ってる」

エレン「ミカサはああいう落ち着いた色が似合うんだな」

ベルトルト「アニは薄い紫か… まるで花が咲いたみたいだ」

ライナー「空色のドレス… クリスタはなんて可憐なんだ」

ジャン「ユミル黒か… さすが、大人っぽいな」

コニー「でもあんなに肩も背中も開いて… 寒いんじゃねぇのか?」

ライナー「コニー、あれは色っぽいと表現するものだと思うぞ」



ジャン(…開始時間も間近になると大広間は人で埋まり、一緒に固まっていた男ども以外、誰がドコにいるのか分からない状態になった)


エレン「人がいっぱいだ…」


ジャン(兵士達の懇親会は、トロスト区を含む南側を束ねる最高責任者、ピクシス司令の挨拶で幕を開け…)

ジャン(次に調査兵団エルヴィン・スミス団長の乾杯の言葉で、シャンパンを飲み干してから始まった)

ジャン(…まだ踊るには早いのだろう)

ジャン(楽団は人々の歓談の邪魔にならぬよう、控えめで緩やかな音楽を奏でる)



ジャン「マルコ… ごめん俺、ちょっと…」

マルコ「ああジャン、行っておいでよ。 僕も適当にやってるから…」



ジャン(……どこだ?)

ジャン(確かここに入ってきてから、向こうの方に…)


ジャン(………いた!)タタッ

ジャン「ユミル! ……ユミル!!」

ユミル「どうした、ジャン?」

ジャン「ユミル、俺………」

ジャン「心変わりだ!!」

ユミル「…………そうか」

ユミル「そうかジャン、それなら… 行ってこい!」

ジャン「ああ!」タタタ

クリスタ「……ナニ? 何の話?」

ユミル「ン? そうだなぁ…」

ユミル「一人の臆病な女の子が、新しい一歩を踏み出せるかって話さ」

ちゃんとユミル姐さんの許可を得るのかジャンさん乙

>>102 前に心変わりじゃないって言っちゃったからな


ジャン(ドコだ…? ドコにいる…?)キョロキョロ

ジャン(…きっと開始直前に、人が一杯になってから入ってきたんだ)

ジャン(服の色も分からねぇし…)タタッ

ジャン(きっと、テーブルの… メシのそばにいるはずなんだが…)

ジャン(つーか、人多すぎだっての!)

ジャン(走るに走れねぇ…)

ジャン(…あぁもう! 広間の壁際全部探しったってのに…!)

ジャン(アイツ、テーブルの下潜ってんじゃねぇのか?)

ジャン(イヤ、それはねぇだろ… 多分移動しながら食ってるんだ)タタタ

ジャン(サシャ……)



ジャン「………ッ!!」



ジャン(いた…………)ドキッ



ジャン(…こんな隅っこに)

ジャン(コニーと食ってる…)


ジャン(…………緑)

ジャン(まるで、深い森の木々をその身に纏っているような…)



コニー「…これもウマイな」モグモグ

サシャ「余った分、お持ち帰りできますかねぇ…」ハグハグ



ジャン「あ、あの…」スッ

サシャ「!!」

コニー「お、ジャンじゃねーか。 一緒に食うか?」

ジャン「イヤ、そうじゃなくて… あの、サシャ…」



サシャ「………」コトッ …モソモソ

コニー「あン? 何やってんだサシャ、靴脱いで…」

サシャ「…コニー、私の靴をお願いします」

コニー「く、靴? エ、ちょっとオイ…」

サシャ「」スタタタタタタタタタタタタタタタッ
ジャン・コニー「!!??」

ジャン「なッ!? …ま、待てサシャ!!」ダダダダダダダダダダ



コニー「一体、何が起こってんだ…?」



サシャ「………」タカタカタカタカタカタカ

ジャン「待てって! 何で逃げんだよ!!」ダダダダダダダ



ライナー「…な、何だ何だ!?」

ベルトルト「ジャンがサシャを追いかけて…?」

ミーナ「すごい勢いだったね…」

アニ「…ちょっと楽しそう」


ジャン(アイツ… 足速ェ!)ダダダ


ミカサ「この場で追いかけっこは、すべきでないと思う」

エレン「オレも混じろうかな」

アルミン「い、いやエレン… あれには何か事情があるんじゃないのかな」



マルコ「ジャ、ジャン………」オロオロ



ジャン(…クソッ、この人ン中をスルスルと…)ダムッ!

ジャン「あっ… ス、スミマセン!!」

オルオ「気を付けろ、クソガキ!!」

ペトラ「あの2人… 何で走ってるんだろ?」


ジャン(サシャ… ドコ行く気だ…? そっちはバルコニーだろ)

ジャン(ユ… ユミルとクリスタが驚いた顔でこっち見てる)

サシャ「」ターンッ!

ジャン「バカ! ここ2階……ッ(バ、バルコニーから飛び降りやがった!!)」

サシャ「」シュタッ! …タタッ

ジャン「い… 行くなサシャ! 聞け!!」スゥー


ジャン「―――― 好きなんだ!!!」

    …ザワワッ!

サシャ「!?」



ジャン「サシャ、俺… お前が好きなんだ!!!」

サシャ「…なッ//!?」

サシャ「そんな… コトを言って、また…」カァッ//

サシャ「…ジャンが! あなたがミ………… 他の人を好いているのは、誰もが知っていることじゃないですか!!」

サシャ「私を馬鹿にしないで!!」

ジャン「違ッ…! 馬鹿になんてしてない!!」

ジャン「本当なんだ! ………本気なんだ!!!」

ジャン「…いいか? 今行くから、もう逃げるんじゃねぇぞ!!」…ヒョイッ

―― ダムッ!

ジャン「くッ……!」ビリビリ

ジャン「あ… あのな。 いいからちゃんと聞け」



ジャン「俺、前に… 夏に、山に一人でいたお前を見て…」

ジャン「山の生命力を吹き込まれたみたいに、生き生きしたサシャを見て…」

ジャン「…夏の日差しを浴びて、それこそお日様みたいに笑ってるお前を見たら…」

ジャン「…そりゃもう目ェ離せなくなんだろ!!」

ジャン「あんな綺麗な人間、見たコトねぇよ!!」


サシャ(…私と正反対な人)

サシャ(嘘をつかない… 正直で、純粋な魂を持った人…)


ジャン「俺… また、あれが見たいんだ…」

ジャン「…お前の一番そばで! あの笑顔が見たいんだよ!!!」


サシャ(…人を恐れず、自分を貫くことができる人)

サシャ(私に欠けたもの… そのすべてを持った人)



サシャ(私… 知ってた)

サシャ(本当は、知っていた…)

サシャ(そして、自分にはないものを突きつけられそうで怖くて… ずっと、ジャンを避けてきた)


ジャン「だからその…」


サシャ(横に階段があるのに… 私と同じように飛び降りて…)

サシャ(痛いのガマンして… 誰よりも負けずギライな…)


ジャン「…もう一度、俺と踊ってくれよ」




クリスタ「ウフフ…」

ユミル「…サーシャ!」



サシャ(バルコニーにはクリスタが… ユミルがいる)

サシャ(…クリスタが優しく微笑み、ユミルが私の背中をそっと押す)


サシャ(なぜ気付かなかったんだろう…)

サシャ(…2人はいつも私の下にいて、私を支え、押し上げていてくれたのに…)

サシャ(…そして今、高みから… ジャンが私を引き上げようとしている)

サシャ(真っ直ぐに私を見つめながら…)

サシャ「わ、私………」


ジャン(涙目で視線を逸らしながら… 震える手をおずおずと差し出してくる)

ジャン(…本当にこの手を預けていいのかと、躊躇いながら)

ジャン(それがあまりに可愛らしくて… 俺は堪らずその手をグッと引き寄せ、サシャをこの胸に抱き締めたんだ)


  オオオォォーーーーーー!! パチパチパチパチ…


ジャン「なッ! 何だ!?」



ライナー「…男らしかったぞ! ジャン!!」

ベルトルト「すごいよ… 本当に、スゴイ!!」

ジャン「お前ら! 何で見てんだよ//!?」

コニー「そりゃ、あれだけ走り回って…」

ミーナ「あんなに大きな声で言われたら… ねぇ、アニ?」

アニ「ウ… ウン」

マルコ「ジャン… 良かった」ウルウル

エレン「ビックリしたな。 あのジャンが…」

ミカサ「潔い」


クリスタ「ユミル…」

ユミル「……フフ」



ジャン「あーもう//!! お前ら散れ! とっとと散れ!!!」



サシャ「あの… 私…」

ジャン「…行こう」グイ


ジャン(そうして俺達は階段を上り… いつの間にか始まっていた美しいワルツの音色に合わせ、中央に躍り出る)


サシャ「わ、私… あれ以来練習もしていなくて…」

ジャン「俺が教えてやる」

サシャ「それにこんな… 裸足で駆け出すような女で…」

ジャン「裸足でいい。 サシャはそれだからいいんだ 」

ジャン(俺がそう言うと サシャは少しだけ、泣き笑いみたいな表情を見せた)


ジャン「…最初は右からだ。 右を下げて、左右・左右左… ちょっとやれば、すぐ慣れる」

サシャ「あわわ…」ヨレヨレ



サシャ「や、やっぱりその… 足を踏んでしまいそうで…」

ジャン「俺の足くらい、いくら踏んだって構わねぇよ」

ジャン「…それに、今度は事故じゃない。 堂々とキスしてやるさ」

サシャ「//!!」



ジャン「ホラ、右左右・左右左… よし、大分慣れてきたな」

ジャン「…ん、どうした? キョロキョロして」

サシャ「何だかその、皆に見られているような気が…」

ジャン「それは、サシャが綺麗だからだ」

ジャン「だが周りが気になるなら… 俺の顔を見てろ」

ジャン「…ずっと俺だけ見ていればいい」

サシャ「///」



オルオ「……チッ、ガキのクセに一丁前に色気づきやがって…」

ペトラ「でもアレは、なかなか言えるコトじゃないよ?」

ペトラ「この人数がいる中で… あれだけの告白ができるなんて、並大抵の度胸じゃできないと思う」

ペトラ「本人は、ただ必死だっただけだろうけど…」

ペトラ「…なんにせよ、上手くいって良かったね」


オルオ「…何だ、本当は俺と踊りたいのか ペトラ?」

オルオ「だが… 俺のダンスのパートナーになるには、まだ必要な手順こなしてないぜ?」

ペトラ「イヤ、それはないから」

ペトラ「オルオなんか… あの男の子みたいに2階から飛び降りて、そのまま首でも折っちゃえばよかったのに」

オルオ「笑えない冗談だぜ、ペトラ…」



ハンジ「…いやぁ、若いって素晴らしいね!」

ハンジ「初々しくて、堪んないよ!!」

リヴァイ「…ご機嫌だな、ハンジ…」

リヴァイ「だがテメェ… 何で男物の服着てやがるんだ?」

ハンジ「そりゃ、このトシで今さらドレスなんて着れやしないからね」

ハンジ「これは、私が自分用に仕立てた服さ」

ハンジ「でもホラ、中のシャツは一応レースとフリルもついてるんだよ?」

リヴァイ「…見せんでいい」

ハンジ「…っと、そんなコトを言いに来たんじゃなかった」

ハンジ「たまには私と踊ってみないかい? リヴァイ」



リヴァイ「…まだ夜も始まったばかりなのに、寝言か? ハンジ」

ハンジ「そんなコト言わずにさ」

ハンジ「ちゃんと私が女性パートを踊るから」

リヴァイ「当たり前だろう」

リヴァイ「どうしてもというなら、1曲くらい踊ってやっても構わんが」

リヴァイ「…眼鏡を外せ」

ハンジ「おや? これを外したら、リヴァイの顔がボヤけてしまうよ」

リヴァイ「俺の顔なんざ、別に見えなくたって構わねぇだろうが」

ハンジ「仕方ないなぁ…」スチャ

リヴァイ「フン… 1曲だけだぞ」

ハンジ「ハイハイ」



ジャン(…サシャが踊る)

ジャン(最初のぎこちなさが嘘だったかのように、軽やかに踊る…)

ジャン(…裸足のサシャがステップを踏み、クルリと回ればドレスの裾が優雅になびく)

ジャン(…そしてそこから、深い深い森の息吹が広がっていくようだ)


ジャン「サシャ、腰支えててやるから… 次で右手上げて、背中を大きく反らして」

サシャ「ハ、ハイ」フワリ



サシャ(音楽は不思議…)

サシャ(……ジャンの言葉は、なんて不思議…)

サシャ(体が軽い… あんなに縮んでいた手足が、自由に動かせる…)

サシャ(…ジャンの言うままに体を動かせば… こんなにも体がなめらかに、柔らかくなっていく)



サシャ(…私はただステップを踏み、くるくると独楽のように回る)

サシャ(私の手を引き、私を支え… 私を見つめる…)

サシャ(恥ずかしくて、ちゃんと見ることができなかったジャンの顔…)

サシャ(…今はもう、それしか目に映らなくなる)


サシャ(やがて私の視界から、人々が消え…)

サシャ(ここがどこであったかも忘れ…)



サシャ(この長い夜 疲れも知らず、私は踊る…)

サシャ(――― 彼の手を取り、踊り続ける)





おしまい(※転載禁止でお願いします)

この2人を最初から書くとか、すごい疲れるからもうしない
このまま続くなら、あんまり原作に沿わない軽い感じでやっていきたい
読んでくれてた人、ありがとう

とりあえずアテもなく書き始めてみる



サシャ(――― 夢の跡)

サシャ(灯りが消え、ひっそりと静まり返る広間…)

サシャ(美しい楽の音… 人々のさざめき)

サシャ(…魔法のような一夜が明ければ、また日常に戻る)

サシャ(また、当たり前の日々を繰り返す)


サシャ(夢から覚めて鏡を見れば、いつも通りの私がいる)

サシャ(…いつもと変わらぬ私がいることだろう)



クリスタ「…お休み、サシャ」

サシャ「お休みなさい、クリスタ……」



――― 朝


ユミル「……起きろサシャ! 今日は休みじゃないぞ!」

サシャ「…ふぁぁ?」モゾ

サシャ「」ボーッ…

ユミル「ホラ、とっとと目ェ覚まして顔洗ってこい!」

サシャ「ふえぇーい」トロトロ

クリスタ「昨日遅かったんだし、今日くらい休みにしてくれてもいいのにね」


サシャ「」パシャパシャ

サシャ「………」ジイィー

サシャ「やっぱり… なんの変哲もない、いつも通りの私ですねぇ…」



――― 食堂


クリスタ「サシャ、こっちこっち!」

サシャ「ああ、スイマセン場所取ってもらって…」


サシャ「………」モグモグモグ

ユミル「どうしたサシャ? 元気ないな」

サシャ「ゴハン…… 昨日、持って帰るの忘れてました…」ズウゥン

サシャ「あんなにいっぱいあったのに…」

クリスタ「でも、終わる頃にはもうほとんど残ってなかったよ?」

サシャ「たくさんあるうちに包んでおけば良かった…」ションボリ

コニー「サシャ! オレ、山ほど持ってきたぞ!!」

コニー「お前、持ち帰りできないかって呟いてたからさ。 …ホレ、こっちお前の分」

サシャ「コニー!!」パアァア

サシャ「ありがとうございます、さすがコニー! 日持ちしそうな物ばかりじゃないですかぁ!!」ゴソゴソ



ジャン「…お前はまた食い物の話か」ヒョコッ

サシャ「ジャ… ジャン!」

ジャン「まぁ昨日腹いっぱい食えなかったのは、俺のせいなんだが」

サシャ「……//」

ジャン「…ん? どした顔赤くして」

サシャ「イ、イエ何でも! あ… あの、昨夜はどうもお手数をお掛けしまして…」

ジャン「何だ? 何言ってんだサシャ」

サシャ「アァッ! そうだ私、支度が!! でっ… では皆様、ワタクシお先に失礼をば!」ガタ… タタタッ ドォーーン!!

サシャ「アイタァッ!!」

ユミル「オ、オイ! ドアを開けずに出ようとする奴があるか!」

ジャン「どれ、ちょっと見せてみろ。 あぁハナ打ったのか、涙目だぞ? …ハイ、もう痛くない痛くない」ナデナデ

サシャ「~~~ッ」ボンッ//

サシャ「ど、どうも… ではその…//」ダダダッ


クリスタ「サシャ…… 支度って何の?」



ユミル「…フフ、昨日は周りの雰囲気もあったが、落ち着いてみたら気恥ずかしいんだろうさ」

ジャン「何が?」

ユミル「何がってな… ジャン、お前もう少し女心ってものを学んだ方がいいぞ?」

クリスタ「しかも相手はサシャだしねぇ… 色々難しいところもあると思うよ?」

ジャン「だってよ。 俺が好きだって言って、サシャもそれ受け入れたんなら、別になんも恥ずかしがるコトねぇだろ」

ユミル「まぁそういう考え方も、男前っちゃ男前なんだがな」

クリスタ「…それにしても、昨日はすごかったねぇ」

ユミル「ああ… あの衆人環視の中でだからな。 見直したぞジャン」

ユミル「一晩で駐屯兵や、調査兵団にも顔が知れ渡ったコトだろうよ」

ジャン「お、俺だってあんな大声出すつもりじゃ! …でもアイツ、俊足で逃げ回るしよ。 挙句の果てにはバルコニーから飛んじまうしで…」

クリスタ「アハハ、あれもサシャらしいというか…」

ユミル「何にせよ、成績上位であるジャンが、あれだけの告白をしてのけたんだ。 今後はサシャにちょっかい掛ける奴もいなくなるだろうよ」



ジャン「…どういう意味だ? ユミル」ズイ

ジャン「ちょっかいって何だ、ちょっかいって」

ユミル「言葉通りさ。 単に芋ネタ引きずって、からかってただけのヤツもいるだろうが…」

クリスタ「…容姿は良いし、普段は明るく気さくでミーナと同じくらい気軽に話しかけやすいからね」

ジャン「その上、上位に食い込む程度に優秀… か。 改めて考えてみりゃ優良物件だな」

ユミル「上位で美人といったらミカサやアニだが、あの2人は別次元だからな。 それに、お世辞にも気さくとは言えんし…」

ユミル「…クリスタのガードは完璧なんだが、さすがにサシャまでは手が回らなかった」

ユミル「まぁジャンも知っての通り、本人があの調子で自分を女と思ってなかったから、安心してたところもあったが…」

クリスタ「確か前に、お花貰ってたコトあったよね?」

ジャン「だッ、誰に!?」



ユミル「誰だったっけ」

クリスタ「…サムエルだったと思うけど」

ジャン「あの黒髪の!? …そんで、サシャは何て?」

クリスタ「それが、どうやら毒のある種類だったらしくて…」

ユミル「似たような花で、毒性のない食用の物との見分け方を語ってたなぁ…」

ジャン「…そっか」

ジャン(ちょっと安心した……)


ジャン「……おっと、もうこんな時間か。 悪ィな、時間とらせちまって」スタスタ


クリスタ「さ、私達も急がないと…」

ユミル「そうだな」

クリスタ「ねぇ、ユミル」

クリスタ「…ジャンが、サシャの上辺だけを好きになったんじゃなくて良かったね」

ユミル「ああ… そうだな」



――― 訓練中


ジャン(…サムエルって、確か前回の試験では20番内にいたな…)

ジャン(サシャはどんくらいだったか… ギリギリ10番とかだったか?)

ジャン(…俺は5番)

ジャン(成績でいえば、どっちも釣り合わないコトもないが…)

ジャン(そこはやっぱ俺だろ)

ジャン(…やっぱ前に思った通り、サシャを放っとかねぇ男もいたんだな)

ジャン(今さら譲ってやる気はまったくねぇが…)

ジャン(あの体を見たのも… 事故とはいえキスしたのも、胸触ったのも俺だけなんだしな)

ジャン(体……?)ハッ!

ジャン(あんな… 川で素っ裸で泳いでたのに、見たのが俺だけだってどうして言える!?)

ジャン(あれが初めてってワケでもなさそうだったし…)

ジャン(季節的にもうそんなコトはしねぇだろうが… 今度話してみよ)



ジャン(…なんか考え事ばっかしちまって、訓練に身が入らなかった)

ジャン(これじゃいけねぇな…)


ジャン(…あれ? サシャ)

ジャン(皆の使った道具を箱に集めてトコトコと…)

ジャン(…倉庫に返しに行くのか?)

ジャン(重そうだな…)スタタッ



ジャン「……オイ」

サシャ「ふぇっ!?」ドキ

ジャン「倉庫行くのか?」

サシャ「エ、エェ… 訓練前に教官に頼まれまして…」



ジャン「俺、持つ」

サシャ「でも重いですし…」

ジャン「いいから貸せ」ヒョイ… テクテク

サシャ「ありがとうございます…」

テクテクトコトコ…

ジャン(……無言だ)

ジャン「サシャ悪ィ、扉開けて」

サシャ「あ、ハイ」ガララッ


ジャン「……ここら辺でいいか?」

サシャ「大丈夫だと思います。 スイマセン、お手数を…」

ジャン「お手数って… 今朝も言ってたが、何だそれ?」



サシャ「それは… お手間を取らせたとか、そういった意味合いの…」アセアセ

ジャン「そんなの知ってるっての」

ジャン「俺は別にそうは思ってねぇから、礼はいらねぇよ」

サシャ「左様ですか…」

ジャン「…なんかお前、変だぞ?」ズイッ

サシャ「……ひ」ビクン

ジャン「俺、昨日ちゃんと言っただろ?」

ジャン「俺は、お前のコト好きなの! だから、こういうのは自分がやりたくてやってるの!」ズイズイ

ジャン「俺… 確かに昨日は強引過ぎたし、お前も周り見て、俺を気遣ったとかもあるかもしれねぇから…」

ジャン「お前がイヤなら、今からだって断っていいんだぞ?」

サシャ「そ、そんな! 私はイヤとかでは…」

ジャン「じゃあいいんだな?」ジリジリ

サシャ「あ……ぁぅ…//」アトズサリ…

ジャン「後ろ、もう壁だぞ?」



サシャ「あ… アレ!?」オロオロ

ジャン「サシャ……」ジリッ

サシャ「はぅぅ……ッ//」ギュッ

ジャン「…そんな目ェギュッと閉じたって、俺はいなくならねぇよ?」

サシャ「~~~ッ//!!」


…ナデナデナデ


サシャ「……//?」

ジャン「今日は、これだけ」

ジャン「俺、急がねぇから…… ちゃんと待つから…」

ジャン「…もうちょっと、警戒心解いてくれよな」

ジャン「行こうぜ?」

サシャ「あ… ハ、ハイ」



――― 夕食


クリスタ「…あれ? 今日はいつもの所が埋まっちゃってるね」

ユミル「ちょっと長風呂し過ぎたか」

サシャ「ポツポツとしか空いてませんが… あ、あそこ! ミカサ達の所3人座れそうですよ」


サシャ「…すみませんアルミン、隣いいですか?」

アルミン「ウン、どうぞどうぞ」

クリスタ「ミカサ、隣座らせてもらうね」

ミカサ「いらっしゃい」

ユミル「悪いな、話の途中だったみたいなのに」

エレン「構わねぇよ」



サシャ「何の話をしてたんです?」

ミカサ「巨人の弱点について」

ユミル「………」

アルミン「うなじの部分、縦1m幅10cm… これ以外には何もないのかと思ってさ」

クリスタ「うーん… そう教わってきたし、その他なんて考えたことなかったなぁ…」

ユミル「………そもそも」ボソッ

ユミル「一体誰が、うなじの弱点なんて発見したんだろうな」

エレン「そりゃ調査兵団に決まってるだろ」

アルミン「偶然うなじを削いだなんてコトは有り得なそうだし… やっぱり捕獲して色々試したんじゃない?」

クリスタ「捕獲なんて、ただ倒すより大変そう…」

ミカサ「3~5m級なら、私ひとりでもイケると思う」

エレン「ハハ、確かにミカサならできそうだ」



サシャ「弱点とは違うんですけど、私、前から気になってたコトがあるんですが…」

ミカサ「何? サシャ」

サシャ「うなじを切り取ると、巨人は蒸発してしまいますよねぇ?」

エレン「そうだな」

サシャ「もしも巨人の頭部をうなじごと斬り落として… 首のあたりをこうV字にですね」

サシャ「今は削ぐことはできても、首ごと斬り取る方法はありませんが… でもそしたら首から下、もしくは体から上の部分は再生するんでしょうか?」

ユミル「……うなじがなけりゃ、体は蒸発するんじゃないか?」

アルミン「少なくても頭部は蒸発しなさそうだけど… 体全体の再生か…」ウーン

エレン「仮に体が再生しないとして、巨人の頭をどうするんだよ?」

サシャ「あ、イエ… これは私の故郷のというか、一族の話なんですけど…」

サシャ「すべての生き物は、その頭部に魂が宿るという言い伝えがあってですね」

アルミン「そういう考え方があるというのは、何かの本で読んだなぁ」



サシャ「それで、そこから頭の骨を抜き取って皮膚を剥ぎ、中身を乾燥させてから元に戻し… 干し首にするんです」

クリスタ「エェッ!?」

ユミル「サシャお前… 珍しく故郷の話をしたと思ったら、なんておっかないコトを…」

サシャ「私だって絵で見ただけで、実物は知りませんよ!」

サシャ「ただ、巨人の頭でやったら豪快だろうなぁと思って…」

ミカサ「作業に手間がかかりそう…」



ライナー(隣のテーブルで恐ろしい話をしている…)

ベルトルト「…………」ブルブル



ジャン「…何だ? さっきから不気味な話を…」ガタッ

サシャ「ジャン//」

ジャン「椅子持ってきたし、いいから続き聞かせろ」



アルミン「…それで? それにはどんな意味があるの?」

サシャ「あ… さ、さっき言った通り、頭部には魂が宿るとされているので…」

サシャ「これによって相手の魂を縛り、支配するという意味があってですね」

アルミン「宗教的なものなんだ」

サシャ「おそらく。 …ですが、これを噂に聞く超大型巨人で作ったらスゴイと思うんです!」


ベルトルト「」ビックン!


サシャ「きっと作り応え、見応えともに十分でしょう!!」

エレン「でも超大型巨人て… 皮膚ないぞ?」

サシャ「エ゛ッ! 皮なしですか? それじゃ干し首は無理ですねぇ…」ウムム

ジャン「随分と残念そうだな」



ベルトルト「………」ホッ



サシャ「でも皮膚がない… というのは具体的にどういった感じなんでしょう、エレン?」

エレン「どういったも何も、肉の繊維が浮き出た感じだよ。 …まぁ、以前は顔しか見なかったが」

サシャ「赤かったですか? それとも白かったですか」

ミカサ「赤かった… と思う」

サシャ「赤身… ですか」…トローン

ジャン「オイ… まさか」

サシャ「…ハッ! イエ別に極上の赤身肉を想像したワケではないですよ!」ズビッ

ジャン(……してたな)

アルミン(してた……)

クリスタ「…それなら超大型は置いておいたとして、鎧の巨人はどうだったのエレン?」

サシャ「一体どんな鎧を!?」

エレン「別に、本当に鎧を着てたワケじゃねぇよ。 ただ武器が効かないってだけで…」



ライナー「」ドキッ



サシャ「表皮が硬いということですかねぇ… 見たコトないのでよく分かりませんが…」

ユミル「多分… そうなんじゃないのか?」

サシャ「焼いてみたらどうでしょうか?」

ジャン・アルミン「エ!?」

サシャ「あ… 勿論、巨人ですし再生速度より早く高熱でですが…」

サシャ「これも昔、本を読んだんですが… 一部の地域には、硬い表皮で覆われた生き物がいてですねぇ」

サシャ「危機を感じると丸まって、外敵をやり過ごすらしいんですが…」

サシャ「この丸まった状態でふん縛って、じっくり蒸し焼きにするんですよ」

サシャ「焼き上がったら… 関節やお腹の柔らかい部分から硬い表皮を引き剥がして、中の美味しい部分を頂くという…」ズビッ

ジャン「…巨人を食料として考えるのは、とりあえずやめとけ」

サシャ「そう、ですか… 鎧の蒸し焼きに、超大型の炙り焼き… 本当にできるなら美味しそうなんですが…」

サシャ「食べ放題……」



ベルトルト「……」ガタガタ
ライナー「……」ゾクゾク



ジャン(…2人きりでなければ、サシャは割と普通に話すということが分かった)

ジャン(倉庫にいた時は、本当はヤバかった…)

ジャン(あんな真っ赤な顔して、目ェ閉じてプルプルしてたら…)


ジャン(一瞬、理性飛んじまいそうだった)

ジャン(よく、頭撫でただけで済ませられたな…)

ジャン(俺… 急がねぇとは言ったけど…)

ジャン(あんなのずっと見せられたら、ヤバイ)

ジャン(…本当ヤバイ)


ジャン(つーか… あんな可愛い生き物いねぇだろ)

ジャン(…ヤバイ俺、マジヤバイ)


ジャン(昨日より、もっと好き…)



――― 翌朝・食堂


ザアアァアアァァーーーーー


サシャ「ウーム… 外すっごい雨です」

クリスタ「今日は技巧と座学で良かったよね」

ユミル「こんな日の兵站行進だけは、遠慮したいからな」

サシャ「もうすっかり秋めいてきましたからねぇ… 風邪を引いてしまいます」

ユミル「風邪なんて引いたコトあったか?」

サシャ「ム! 引きましたよ夏に! だから私はおバカさんではありません!」

ユミル「あのなサシャ、夏カゼは馬鹿が引くという言葉があってだな…」

サシャ「なんですと!?」

クリスタ「アハハハ」



ミーナ「皆、今日の午後は自習だってー!!」バターン

アニ「自習?」

ミーナ「うん! 今そこでキース教官に会ったんだけど、なんか座学の教官が熱出したとかで…」

ミーナ「皆に伝えるように言われたの!」


エレン「自習って何すりゃいいんだ?」

アルミン「それは、これまでの復習とか…」


ジャン「まぁ何もせず、喋ってるヤツがほとんどだけどな」

マルコ「課題が出てるなら、それをやるんだけどね」



――― 座学


コニー「エレン! 紙相撲やろうぜ!」

エレン「お、やるやる!」キラキラ

アルミン「エレンはやっぱり…」

エレン「ミカサも一緒にやろうぜ。 ほら、紙」

ミカサ「……やる」

アルミン「フフ、ミカサまで…」


クリスタ「ユミル、次のお休みどうする?」

ユミル「秋冬物でも見に行ってみるか?」


ジャン(サシャ… 隅っこで教科書読んでる…)

ジャン(…まさか、真面目に自習してんのか?)



ジャン「……何見てんだ?」ヒョイ

サシャ「あ…//」

ジャン「…固定砲? 今さら?」

サシャ「あの、ちょっと昨日考えたコトがあって…」

ジャン「何だよ?」

サシャ「榴弾って、壁に群がってる巨人に対してはうなじを狙うことができますけど…」

サシャ「そもそも速射できないし、移動されると命中率も低いじゃないですか」

ジャン「ああ、そうだな。 …ちょっと座るぞ?」ガタッ

サシャ「そこでぶどう弾についてなんですが…」

サシャ「ぶどう弾に炸薬を使用してみたらどうかと」



ジャン「…まぁ、理論上は可能だろうが…」

ジャン「しかし、なんだって急にそんなコト考え始めたんだ?」

サシャ「そ、それは昨日の…//」

ジャン「…蒸し焼きに炙り焼きか。 なるほどな」プッ

サシャ「なッ! 火力をバカにしてはいけませんよ! 料理だって、火加減が大事なんですから!!」

ジャン「分かった分かった」

サシャ「それに、できれば目標のやや手前上空で炸薬を炸裂させ、散弾をばら撒けられればと…」

ジャン「空で炸裂させるのか。 それは… どうだろう」

サシャ「信管を時限式にすればできないこともないと思うんです」

ジャン「…ちょっと待て、アルミンも呼ぼう。 オーイ、アルミン!!」



------------------------------


アルミン「……なるほど、それはとても面白いと思うよ」

ジャン「時限信管か… 構造はこんな感じか?」カキカキ

アルミン「そうだね、炸薬は底部にこう…」カキカキ


ジャン「うーん… 大体こんなモンか」

サシャ「イケそうですか! 良かった!」

アルミン「まとめて、教官に提出してみたら? 技術班に上げてくれるかもしれないよ」

ジャン「お前が出せサシャ。 お前が考えたんだからよ」

サシャ「イエ、私は思い付きだけですから… いつも提案して人任せで」

アルミン「…フフ、それを思い付けない人も沢山いるんだよ、サシャ」

サシャ「///」



――― 夕食・食堂


サシャ「もう… 食べ終わりましたか//?」モジモジ

ジャン「ン? ああ…」ドキッ

ジャン(サシャが自分から来た……//)

サシャ「あの… 今日の座学の時の、アレなんですけど…」

サシャ「ジャンとアルミンと、2人の名前で出してもらえませんか?」

ジャン「え… 何で? 考えたのお前なのに」

サシャ「あれは本当に、昨日ふと頭に浮かんだだけですし… もし技術的な質問をされても、私では答えられませんから」

サシャ「それに私… もう1つ考えたことがあるので、もし教官に提出するのならそちらを、と…」

ジャン「そっか… 分かった」

ジャン「それじゃもう一度アルミンと練って、それをまとめるコトにする」

サシャ「良かった!」パアァァ

ジャン(ヤバイ、可愛い…)



ジャン「あ、あの… お前、今度の休み、なんかしてんの//?」

サシャ「次の休みは、固定砲整備の当番で…」


マルコ(どうしよう… そばにいるこっちまで赤面しそうなんだけど…)

マルコ(初々し過ぎるよ2人とも…)

マルコ(…ていうか、こんなジャン見たコトない)


ジャン「アレ、サシャって何班だっけ?」

サシャ「4班ですよ」

ジャン「4班… エレンの班か。 他には誰がいるんだ?」

サシャ「コニーとミーナ、サムエルにトーマスです」

ジャン「!!」

ジャン(…サムエル… そっか、ここで一緒だったのか)

サシャ「……何か?」

ジャン「イヤ… 何でもねぇ…」



ジャン(…サシャ、行っちまった)

ジャン(固定砲整備班か… 盲点だったな)


ジャン「……ン? どうしたマルコ、テーブルに突っ伏して」

マルコ「な… 何でもないよ…//」

マルコ「…それより、少しずつでも進展してるみたいだね」

ジャン「進展たって… まだ昨日の今日みたいなモンだしよ…」

マルコ(照れてる… あのジャンが照れてる!)

マルコ「でも、本当に良かったよ。 僕相手だけど… ステップはおろか、ターンやパートナーを魅せる技まで練習したんだもの!」

ジャン「マ、マルコには… 今度ちゃんと礼をするから…」アセアセ

マルコ「いや、そういうコトじゃなくて… 僕はすごく嬉しいんだよ」


マルコ「本当に… とても嬉しいんだ」



ジャン(……考えたこともなかった)

ジャン(固定砲なんて… 使い方はもちろん勉強したし、いざ使えと言われてもすぐ使えるとは思うが…)

ジャン(しかし普通… 巨人を焼くことから、炸薬の使用に繋がるか?)


ジャン(目標の手前上空で炸裂か…)

ジャン(…時限信管)

ジャン(…俺は固定砲なんか最初から、そうあるべきものなんだと勘違いしてた)


ジャン(固定観念に捉われない発想…)

ジャン(自由な発想に、豊かな想像力… 創造力)



ジャン(…サシャはきっと、誰よりも自由だ)



――― 休日昼・食堂


ジャン「……よぅ、当番お疲れサン」

サシャ「あ、どうも…//」

ジャン「今日はユミル達は?」

サシャ「2人で街に行きましたよ。 秋冬物を見てくるとか…」

ジャン「フーン」

サシャ「えと… ジャンは午前中何を?」

ジャン「こないだのヤツ、アルミンと見直してた」

ジャン「…サシャ、午後の予定は?」

サシャ「特にないんですけど… 私もこの間話した、もう1つの方を調べに図書室に行こうかと…」

ジャン「それ俺も知りたい。 一緒に行っていいか?」

サシャ「ハ… ハイ//」



――― 図書室


ジャン「…そんで、何を調べたいって?」

サシャ「超大型と鎧の巨人についてです」

ジャン「まだ食う気でいるのか?」

サシャ「そうではなく! 特徴というか、その現れ方ですとか!」

ジャン「分かった悪かった」


サシャ「…あった。 コレですね」

サシャ「あと、現在の榴弾について詳しく載っている物が欲しいですね」

ジャン「俺持ってきてやるから、先に読んでろ」

サシャ「スミマセンお願いします」



ジャン「…ハイよ、榴弾の本」

ジャン「だが… 鎧と超大型っていっても、扉壊した後は煙みたいに消えちまったんだろ」

ジャン「その2匹については、あまり詳しいコト書かれてないんじゃねぇか?」

サシャ「…最初にシガンシナの扉と蹴破ったのは、超大型ですよね」

ジャン「そうだが…」

サシャ「次に現れる可能性が一番高いとされているのは、ここトロスト区ですよね」

ジャン「まぁ、そう言われてるな」

サシャ「大事なのは、扉に穴を空けられる前に撃退もしくは倒すこと…」

サシャ「超大型の身長は約60m… リーチはどれくらいだと思いますか?」

ジャン「大体身長より少し長いくらいか… でも70mはねぇだろうな」

サシャ「では、扉を中心として左右35m付近に新たに固定砲を設置してはどうでしょう?」



ジャン「今あるヤツじゃ駄目なのか?」

サシャ「今の固定砲は、台座ごとレールで移動するようになっていますが… 発射前に固定作業が必要じゃないですか」

サシャ「それじゃ遅いんです」

サシャ「レール上ではなく壁上に直接据え置いて、まず固定作業にかかる時間をなくします」

サシャ「それから角度と向きを、あらかじめ超大型のうなじを狙える位置に合わせておくんです」

ジャン「フーン… 悪くねぇな」

ジャン「でも何で左右35mだ?」

サシャ「手の届く所だと、払われてしまうかもしれないじゃないですか」

ジャン「ヤツらにそんな知能があんのか?」

サシャ「知性があるかは分かりませんが、邪魔だったら… 例えば普通に歩いていても目の前にクモの巣があったら、つい払いたくなるでしょうし…」

ジャン「ハハ、なるほどな。 …それで?」

サシャ「…ただ、現在の榴弾では、超大型のうなじを破壊するだけの威力はないと思うんです」



ジャン「確かに… 普通の巨人の頭はフッ飛ばせても、60mもあるとな…」

サシャ「ですから大砲の大型化と、これに合う榴弾が必要かと…」

サシャ「あと、できれば同じ大砲をもう一門、移動可能な物がもうひとつ欲しいですね。 …鎧の巨人用に」

ジャン「鎧の巨人にか?」

サシャ「鎧の巨人は閉まりかけるウォール・マリアの扉目指して、真っ直ぐ走ってきて体当たりしたそうですが…」

サシャ「道筋が分かるなら、真正面から打ってもいいんではないかと思って」

サシャ「いくら武器が効かないといっても、前回は急過ぎてそこまでの攻撃もできなかったようですし…」

サシャ「まぁ、避けられたらおしまいなんですけどね」


サシャ「…お陰で、話していたら考えがまとまってきました」

サシャ「今度、清書して教官に提出してみます。 ありがとうございました」

ジャン「イヤ別に、俺は何も…」

サシャ「ちょっと本を戻してきます」タタッ



ジャン(……そんなコトも考えてたのか)

ジャン(何か… 色々すげぇな、サシャって…)

ジャン(あ、そうだ榴弾の本…)

ジャン(アレ、結構高い所に置いてあったんだ)

ジャン(…サシャじゃ届かねぇんじゃねぇか?)ガタッ スタスタ


サシャ「………うぅ」プルプル


ジャン「やっぱり… 貸せ、俺が戻す」ヒョイ

ジャン(距離… 近い…)ドキ

ジャン(細い首に白いうなじ、後れ毛…)

ジャン(か、髪… いい匂いがする…)



ジャン(あ、俺… コレもう駄目だ…)

ジャン「………サシャ」ギュ

サシャ「!!」

ジャン「サシャ…」クイッ

サシャ「……ん…ッ///」


サシャ(――― 窓… 風が入って)


ジャン「………」…スッ

ジャン「あ… わ、悪ィ… 俺…」バッ!

ジャン「ゴ、ゴメン俺… 先帰ってるから!」タタタッ



サシャ「………あ///」ヘナヘナ…



ジャン(…バカ! 俺のバカ!!)タタタッ

ジャン(何であそこで我慢できねぇんだよ!)

ジャン(自分で待つとか言ったクセに… )

ジャン(せっかく、サシャから話してくれるようにもなったのに…)

ジャン(でも、でも…)

ジャン(…アレで我慢なんてできるワケねぇだろ、チクショウ!!)

ジャン(何であんなイイ匂いとかすんだよ!!)

ジャン(ホントに訓練してんのかよ! 何であんなに柔らけぇんだ!)

ジャン(口… 唇も、柔らかくて…)ボーッ//


ジャン(…どうしよう)

ジャン(また、警戒させちまうかな…)

ジャン(また… 振り出しに戻っちまうのかな…)



――― 部屋


クリスタ「ただいまぁー!」ガチャッ

クリスタ「…あれ? どうしたのサシャ、ベッドに潜り込んで…」

サシャ「なん… 何でもありません!」

ユミル「そんなコト言ったって、気になるだろう。 …どうした具合悪いのか?」バサッ

サシャ「ひゃぁ//!?」

クリスタ「サシャ、顔… 耳まで真っ赤っかだよ?」

クリスタ「ホントに具合でも悪いんじゃないの?」オロオロ

サシャ「違ッ… 本当に何でもないんです//!」

ユミル「そっか… じゃ、落ち着くまでゆっくり休んでな。 私達、先に風呂行ってくるから」

サシャ「ハ、ハイ…」

ユミル(フーン……)



――― 夕食


マルコ「…頼まれてた本買ってきたよ」

ジャン「あ、悪ィ… 後で金払うわ」

マルコ「ジャンは今日、何をしてたんだい?」

ジャン「別に… 午前中はアルミンの部屋にいて、午後はサ………」カアァッ//!

ジャン「///」

マルコ(ジャンが… ジャンが赤面してる!)

ジャン「…ご、午後はアレだ。 その、普通に……」

マルコ(イヤ、絶対普通じゃないから!!)

マルコ「そ、そう… やっぱり休日は、のんびり過ごすのが一番だよね…//」

ジャン「……だ、だな//」


マルコ(ああぁあ… 僕までおかしくなってくるぅ…//)グハアァァ



クリスタ「サシャ良かった、顔色戻ったみたいで…」

クリスタ「さっきは何で、あんなに顔が赤かったんだろうね?」

サシャ「さ、さぁ… 多分暑かったんじゃないでしょうか」モグモグ

ユミル「暑かったのに布団に潜り込んでたのか?」

サシャ「あぅ……」

クリスタ「でも具合良くなったんだから、もういいじゃないユミル」

クリスタ「…それより今日のスープ、いつもより味薄くない?」

ユミル「そっかぁ? こんなもんジャン?」

サシャ「//!?」ガタタッ!

クリスタ「サ、サシャ! 大丈夫!?」

ユミル「椅子から落ちるな、サシャ」

サシャ「ハ、ハイィ……//」

クリスタ「サシャ、また顔が…」

サシャ「わたっ、私… 食べ終わりましたし、先に戻りますね!」ダダッ



ジャン「………」モクモク

マルコ「………」

マルコ(あれっきりジャンは無言… しかも、まだ頬がうっすら赤い…)

…ガタタン!

マルコ(サシャはサシャで、椅子から転げ落ちたようだし…)チラッ

マルコ(これは…)

ジャン「ハァ… マルコ、俺 先に部屋戻るわ…」ガタッ

マルコ(今度はタメ息!?)



ユミル「…よぅ、マルコ」

マルコ「ユミル? どうしたの、珍しいね」

ユミル「イヤ… 色々大変そうだと思ってな」

マルコ「ハ… ハハ…」



――― 数日後


ユミル「…さぁて、午前の座学も終わったし、下へ移動して昼にするか」

サシャ「ゴハンゴハン! さぁ行きましょう! 早く行きましょう!!」グイグイ

クリスタ「引っ張らなくても、すぐ行くからサシャ」フフッ

トコトコトコトコ…

ユミル「…次の休みはどうするんだ、サシャ?」

サシャ「うーむ、鹿のような大物を狩りに行きたいトコロですねぇ…」階段スタンスタン…

クリスタ「アレ?もう下に私達よりも早い人が…」

クリスタ「…当番なのかな、ジャン」

サシャ「!!」…ズルッ! ズダダダンッ!!

クリスタ「サシャ!!」


ジャン「!?」グルンッ!

ジャン「サシャ!?」…タタッ



サシャ「アイタタ…」

ジャン「…お前何やってんだよ! 一体何段落ちたんだ!?」パムパム

サシャ「…うぅ」

ジャン「痛い所は?」

サシャ「お… お尻打ちました…」イテテ

ジャン「あぁホラ、もう痛くない痛くない」ナデナデ

サシャ「ひゃっ//!?」

サシャ「お、おし…り」カァッ//!

ジャン「エッ……//」

ジャン「あ… アァ、俺! 食事当番だから!! そんじゃ!」ダダダッ

サシャ「ぁ、ぁぅぅ…//」プシュゥ//



ユミル・クリスタ「………」



ジャン(お、俺ってば… つい勢いに任せてケツまで触っちまった!)

ジャン(ここ何日か、何となく気恥ずかしくてサシャの顔見れなかったけど…)

ジャン(…だって、振り向いたらすぐそばにいるしよ)

ジャン(誰だって、あんな風に階段から落ちたら気遣ってやるだろ!)

ジャン(…でも普通、ケツまでは撫でねぇか…?)

ジャン(ち、違う! あれは我が子を思いやるように…)

ジャン(…イヤそうじゃねぇ! つーか、俺は自分に対して何を言い訳してるんだ!!)


ジャン(俺もう… どうしたらいいんだよ…)フゥ…

ジャン(何かどんどん、俺が俺じゃなくなってくような気がする…)



――― 午後・格闘


コニー「サシャ、アニに締め技習ったのかよ?」

サシャ「あ… そういえば忘れてました」

コニー「なんだよ! 早く習ってオレにも教えてくれって!」

サシャ「スイマセン、今度頼んでおきますから…」アセアセ

コニー「しょうがねぇなぁ… じゃあ今日もちょっと真面目にやるぞ!」

サシャ「ハイ! 望むトコロです!」

コニー「よーっし! 行くぞー!!」ダダッ ビュンッ!

サシャ「おっとー! こちらも行きますよ …セイッ!」ヒュッ

コニー「当たってたまるか!」タタッ

サシャ(今日は、珍しくライナーと組んで……)

サシャ(……やっぱり体格差が…)

コニー「…フンッ」ドスッ!

サシャ「!!」



サシャ「……っく!」

コニー「あ! わ、悪いサシャ!」

コニー「まさか入ると思わなくて…」オロオロ

サシャ「ウッ… く、 い… いえ、ゆ、油断した私が…」ウウゥ

コニー「ごめん、ホントごめん! 医務室行くか!?」

ジャン「…何だ! どうした!?」タタッ

コニー「は… 腹パンが綺麗に決まっちまって…」

サシャ「だ、大丈夫です… せっかくの昼食が、少し逆流しそうになっただけで…」

サシャ「ほんのチョット休めば元通りですから…」

ジャン「でも…」

サシャ「そこら辺で休んでますから… スミマセンが、しばらく他の人と組んでてもらっていいですか? コニー」

コニー「ウ、ウン…」

ジャン「………」


ユミル・クリスタ「………」



――― 休憩時間


ユミル「…さっき見てたぞ、サシャ」

クリスタ「どうしたの? 普段はアレくらい避けられるのに…」

サシャ「イエ、何だかボーッとしててですねぇ…」ホケー

ユミル「確かに… 集中はしてなさそうだな」

クリスタ「そんなに上向いて口開けてたら、葉っぱが入っちゃうよ?」

サシャ「ふえぇい…」ボケーッ

ユミル「………」

…ヒラヒラヒラ

サシャ「?」モグモグ

サシャ「…うえっ、ぺっぺっ!!」

クリスタ「もう! だから言ったじゃないサシャったら!」

サシャ「うぅぅ…」



――― 夕食後・部屋


クリスタ「サシャ? 今日も先に戻ってきてたけど…」ガチャッ

クリスタ「…どうしたの? 枕抱えてベッドにうずくまって」

サシャ「………」

クリスタ「隣… 座るね?」ギシ

クリスタ「サシャ……」ナデナデ


サシャ「……クリスタ」

サシャ「クリスタ… 私… 私、変なんです」

サシャ「なんだか… ここのところ、ずっとオカシイんです」

サシャ「まるで自分が自分でないような気がして…」


クリスタ「フフ、サシャはねぇ…」



クリスタ「サシャは今、変わろうとしてるんじゃないかな?」

サシャ「……へ?」

クリスタ「それも徐々にじゃなくて、急激に」

クリスタ「それは… 急激な変化なら、サシャが戸惑うのは当たり前だよ。 誰だって不安になると思う」

クリスタ「だけどもし、サシャがそれを怖れずに… 素直にその変化を受け入れるコトができたなら…」

クリスタ「サシャはきっと… ひとりの人間としても、女としても、もっともっと素敵になれるんじゃないかなぁ」

クリスタ「…逃げるばかりじゃなくて、時には自分から進む勇気も必要だと思うよ?」

サシャ「勇気……」

クリスタ「…そう。 見張りの目を盗んで、食料庫に忍び込むような勇気」

クリスタ「サシャは罰則だって怖れないじゃない?」

サシャ「アレはただ空腹で!」

クリスタ「ウフフ」

サシャ「…フフッ」



サシャ「クリスター」ギュゥゥ

クリスタ「きゃっ、くすぐったいよサシャ!」

…ガチャッ

ユミル「ただいま… って、アァッ!?」

ユミル「ナニ! 何でサシャのベッドで2人イチャイチャしてるんだ!?」

サシャ「それはクリスタが可愛くて…」ギュム

ユミル「私が当番でいないのをいいコトに! ズルイぞサシャ! 私もクリスタとイチャイチャする!!」ギシッ

サシャ「せ、狭いですよユミル!」

ユミル「いいだろ、それくらい!」ギュムギュム

クリスタ「きゃあぁ! アハハハハ!!」


サシャ「……フフッ」



ユミル「つーかサシャ、明後日の訓練どうするんだ?」

サシャ「へ? 明後日何があるんです?」

ユミル「なんだよ聞いてなかったのか? 地図貰ったろ」

サシャ「あぁ… 全然見てなかったんですが…」ゴソゴソ

サシャ「…これは登山道ですね。 これが何か?」

ユミル「ホントになんも聞いてなかったんだな。 クリスタ、説明してやれ」

クリスタ「あのねサシャ、地図に3つのコースが記されてるでしょう?」

クリスタ「道幅も広く、比較的なだらかで歩きやすいのがこのAコース。 でも、その代わり時間は一番かかるけど…」

クリスタ「BとCは急勾配な箇所はあるけど、距離は短いから頑張れば早い時間で済む…」

サシャ「ふむふむ」

ユミル「今回はゴールまでのタイムも関係してくるからな」

ユミル「だから、そこに書いてあるコース以外でも、早ければどんな道を選んでも構わない」



クリスタ「1人で好きな道を行ってもいいし、誰かと… 何人かと協力しながらでもいいの」

クリスタ「私達、一応このBコースで行こうと思ってるんだけど…」

ユミル「サシャさえ良ければ一緒に行くか?」

サシャ「私… 私は…」

ユミル「無理にとは言わない。 サシャは1人でも誰かとでも、好きな道を行けばいい」

サシャ「…スミマセン私、ちょっと声を掛けたい人がいるので…」

ユミル「そうか …分かった」

サシャ「あ… でも2人とも、もしかしたらBよりもCコースの方がいいかもしれませんよ」

サシャ「パッと見、Cの方が急な箇所が多いようですが… Bコースは沢を渡るコトが多いので、状況によってはとても歩きづらいと思います」

クリスタ「そう? 気付かなかった」

ユミル「フム… サシャが言うならそうしようか」

クリスタ「アリガトね、サシャ!」ニッコリ



――― 翌朝・食堂


サシャ「……ジャン、ちょっといいですか?」オズオズ

ジャン「あ、あぁ… オハヨ、どうした?」

サシャ「あの… 明日の訓練なんですが、そのぅ… もうどなたかと?」

ジャン「…えーと、一応マルコと…」

マルコ(そこはそう言っちゃダメだろ、ジャン!!)テーブル下ゲシッ!

ジャン「…痛ッ!」

サシャ「そうでしたか。 それはどうも…」トボトボ

ジャン「アァッ待て! …マ、マルコを誘おうと思ったんだが、まだ声は掛けてないんだ!」ガタッ

ジャン「サシャはクリスタ達と行くんじゃないかと思ってよ。 今日、お前に聞いてからにしようと…」

サシャ「そうですか!」パアァ

ジャン(うぅ… 可愛過ぎる…)

サシャ「じゃあ、お昼か夕食後にでもコースの打ち合わせをしましょうね!」パタパタ



ジャン(誘っても、きっと断られると思ってたけど… まさかサシャの方から…)

ジャン(サシャと訓練…)

マルコ「まったく、ジャンってば…」フゥ…

マルコ「僕のことは気にしないでいいからさ… というか、自分でチャンスを失くしちゃダメだろ?」

ジャン「す、すまねぇマルコ…」



サシャ(よし…… ヨシ! やりましたよ私!!)ドキドキドキドキドキ



ユミル「…サシャはちゃんと声を掛けられたみたいだな」

クリスタ「良かった」

ユミル「クリスタが昨日、何か言ってやったんじゃないのか?」

クリスタ「フフ… でも結局、決めるのも動くのもサシャ次第だから」



ジャン「……で、ドコを行くつもりだ? BかCか …まさかAってこたねぇだろ」

サシャ「そのどれでもなく… 今回のコースからは外れた所を行きたいんです」

ジャン「ハァ!? 道なき道か?」

サシャ「道はちゃんとあります。 この中ではCに一番近いですね。 ここをこう…」

ジャン「…つか、歩けるのか? そんなの」

サシャ「確かにCよりも厳しい道になりますが… ちゃんと歩けば、時間的には最も早いでしょう」

サシャ「早くゴールすればするほど加点が多いんですよね?」

ジャン「そりゃそうだが… お前大丈夫なのか?」

サシャ「私は山育ちですから、ご心配なく」

サシャ「ジャンが無理そうならCにしますが…」

ジャン「イヤ、行く。無理じゃない、全然」

サシャ「……フフ」

ジャン(あ… 笑った…)



サシャ「それじゃ今日は、明日に備えてゆっくり休んでくださいね」

サシャ「夜更かししては、いけませんよ」

ジャン「分かったって」



ジャン(…あの図書室の時から、久しぶりにまともに話したような気がする)

ジャン(近くで見るサシャはやっぱり綺麗で、澄んだ声は耳に心地良い)


ジャン(加点か…)

ジャン(アイツ、こういう訓練でも地味に評価上げてたんだな)

ジャン(確かにサシャは、山に強いような気がする)


ジャン(…明日の訓練が終われば、明後日は休みだ)

ジャン(また誘ってみよう)



――― 次の日


サシャ「うーむ、イイ天気ですね」

クリスタ「サシャも結局Cコースを行くの?」

サシャ「私はコース外を行きますが、途中まではクリスタ達と一緒ですよ」

ユミル「フーン、それじゃ競争だな」

サシャ「フフフ、私の足腰をナメてもらっては困ります」


サシャ「…さぁ、準備もできましたし、食事して出発しますか!」

クリスタ「サシャはこういう訓練だと、ホントに楽しそうよね」

サシャ「座学以外なら、割と何でも好きですよ」

サシャ「体を動かせるなら何でも」

ユミル「ハハ、サシャらしい…」



サシャ「昨日はよく眠れましたか?」パカパカ

ジャン「ま、まぁ一応な…」

マルコ(ウソだ… 寝返りばっかり打ってたじゃないか、ジャン…)

サシャ「良かった。 今日は少し強行軍になりそうなので…」

サシャ「時間と己との勝負です」

ジャン「ハハ、覚悟はできてるさ」


クリスタ「私達の馬は、ゴール地点まで連れてってくれるんだよね?」

ユミル「でなきゃ帰ってこれないからな」


ジャン「…オッ、あそこがスタートか?」

サシャ「では、馬を預けて出発しましょう」



-----------------


クリスタ「…Aから外れてCコースに入ったけど… いきなり急になったね」ハァハァ

サシャ「まだまだ序の口とだけ言っておきましょう」ザクザク

ジャン「…マジか」

サシャ「でも今日は結構歩きやすいと思いますよ」

サシャ「それじゃ私達はここで外れますから、2人とも気をつけてくださいね」


…ザクザクザクザク


サシャ「…ジャン、前歩きますか?」

ジャン「イヤ… お前が先行け」

ジャン(サシャが滑り落ちたら、俺が支えてやらねぇと…)

ジャン(しっかしサクサク登って行くなぁ… どんな足腰してやがるんだ…)


ジャン「!?」



ジャン「……オイ、ここ」

ジャン「…これは道じゃなくて、崖って言うんじゃねぇのか?」

サシャ「そうですねぇ… ちょっと急ですね」

ジャン「ちょっとか? コレ…」マジマジ

サシャ「ここで少し待っててもらっていいですか?」

ジャン「エ? サシャ何す……」

サシャ「」ザザザザザザザッ

ジャン(て… 手ェつきながら、スゲェ勢いで登ってった!)

ジャン(……まさに野生児!)

サシャ「…ジャーン! ロープ下ろしますから、掴まって登ってください!!」ブンッ

ジャン「………」ノボリノボリ



ジャン(……ハァ、登れた)

ジャン「つーか、お前… 何でそんなサクサク進めるワケ?」

サシャ「それはまぁ… 山歩きが趣味のようなものですから」

サシャ「両手が空いてる分、今日はまだマシですよ。 狩りの時は獲物を持っていたりもしますし…」

ジャン「なるほどねぇ…」

サシャ「上りでは今の所が一番急なので、後は楽になると思いますよ」

ジャン「………下りは?」

サシャ「やはり一箇所、急な所はありますが…」

サシャ「登り切った後、その箇所を過ぎたら… 少し平らになりますんで、そこでお昼にしましょうか」



ジャン(サシャはロープもなしで登ったのに… 俺、足手まといとか思われてねぇかな…)

サシャ(あんな所を四つん這いで登ってしまうなんて… 私やっぱり女らしくなんてなれませんよ、クリスタ…)



サシャ「あの…」

ジャン「…ン?」

サシャ「スミマセン… こんな道を選んで…」

ジャン「イヤ… 別に俺、全然平気だし(キツイけど…)」

ジャン「それに加点狙いなら、望むトコロだし…」


ザクザクザクザク…


サシャ「…あ、アソコ」

サシャ「あの辺から下りになりますから…」

サシャ「急なトコ過ぎて… そしたらお昼にしましょう」

ジャン「……ん」

サシャ「………」



ジャン「……これも崖だな」

ジャン「しかも、岩肌丸見えじゃねぇか…」

サシャ「この木にロープを巻き付けますから… 先に下りてもらってもいいですか?」

ジャン「それは構わねぇが… お前が下りた後、どうやってロープ外すんだよ?」

サシャ「ああ、それはとりあえず大丈夫だと思いますから…」

ジャン「フーン、じゃ先に下りるぞ」ズリズリ



ジャン「…着いたぞ! この後どうすんだ?」

サシャ「エット… 私のリュックだけ、先に投げ下ろしてもいいですか!?」

ジャン「あ、ああ…」

サシャ「じゃあお願いします!」ヒョーイ

ジャン「」ドサッ!



ジャン(リュックは受け取ったけど…)

ジャン「…オイ! ロープ外してどうすんだ!?」

サシャ「だって… 置いていくワケには行きませんから」

ジャン(そういうコトじゃなくて……… エッ!?)

サシャ「」…タンッ タンッ タンッ! シュタン!

ジャン「…なッ!?」

ジャン(い、岩肌の出っ張ったトコ… 飛び降りて…)


サシャ「…リュック、ありがとうございます」

ジャン「お、おう…」


サシャ「さぁ… じゃあ、そろそろお昼にしましょうか?」



サシャ「…訓練でなくピクニックなら、携帯食糧以外にも持ってくるんですけどねぇ…」モソモソ…

ジャン「ピクニックでは、こんな道 来ねぇだろ」

サシャ「はい…」

ジャン「………」モソモソ

サシャ「………」


ジャン「…食ったんなら行こうぜ」

ジャン「早く着きたいんだろ?」

サシャ「……エ、エェまぁ…」


ザクザクザクザク…


ジャン(何だろう… 俺、何かモヤモヤしてる…)

ジャン(せっかく、サシャと一緒になれたのに…)



ジャン「……なぁ」

サシャ「ハイ!?」ビクッ

ジャン「そういや… ゴメンな、この間… 図書室で…」

サシャ「イ、イエ! あの時はビックリしただけですから…//!」アセアセ

ジャン「その後… 避けられてると思ってた…」

サシャ「そ… それはただ、恥ずかしくて…」

サシャ「わ、私… 一生こんな風に、誰かに想って貰うことがあるなんて思わなかったものですから…」

サシャ「あの… しかも、入団当初からずっと上位にいるジャンですし…」

ジャン「…ハァ?」クルッ

ジャン「じゃあお前は… 最初にお前に惚れた男なら誰でも」

ジャン「お前より優秀な男なら… ライナーでも、ベルトルトでも、エレンでもマルコでも」

ジャン「誰でも良かったんだな」



サシャ「…え? そ、そんなコト言って…」

ジャン「いや、分かってたつもりだし」ザッザッ

ジャン「別に俺だろうが、他の男だろうがさ…」

サシャ「そうでなくて!」オロオロ

サシャ「……あの!!」

ジャン「もういいよ… 先進もうぜ」ザクザク…

サシャ「あ……」


サシャ「………」


ジャン(比較的なだらかな下り道になって… 俺はサシャの前を歩いていた)

ジャン(俺の後ろを歩くサシャは多分… 声を殺して、泣きながら歩いていた)

ジャン(そんなコト、初めから分かってたのに… これから時間をかけて俺を好きになってくれればいいと思ってたのに…)

ジャン(俺がサシャを責める理由なんて、何ひとつないのに… 何で俺、こんなコト言っちまうんだろう)

ジャン(それでも俺は… 振り返って優しい言葉をかけることも、手を差し伸べることもできずにいたんだ)

オッス、オラ>>1
いつの間に200いったっけ?と思って読んでみたら、オラ昨日酔った勢いで書いてたみたいだ
何か書いたような気はしてたけど、内容覚えてなかった
なんだか困った展開になってるけど、やり直しは嫌いだからこのままいくぞ

これからの忘年会シーズン、皆も飲み過ぎには気を付けろよな!



ジャン(……あそこがゴールか?)

ジャン(まだ誰もいねぇな)

サシャ「……」顔ゴシゴシ

ジャン「サシャ先行けよ。 一番だぜ多分」

サシャ「一緒に…」

ジャン(目、赤い…)ズキーン



キース「随分と早い到着だな。 …ペアを組んだのか?」

サシャ「…ハイ」

キース「どのコースを選んだ」

ジャン「Cの途中から、このように脇へ抜けました」地図スッ

キース「こんな所を歩いたのか」

ジャン「非常に急な個所も2つほどありましたが…」

キース「…ふむ、これは確かに1人では難しいかもしれんな」



キース「早く到着した者から帰っていい… と言いたいところだが、残念ながら馬がまだ届いておらん」

キース「多くの馬を連れ麓の道を迂回している上、これ程早い到着は予想していなかったからな」

キース「このまま、ここでしばらく待っていろ」

サシャ「ハイ…」



キース「おや… 次が来たようだ」

ジャン「…誰だ? デカイからライナーとベルトルトか? あと1人いるが…」

サシャ「アニ…」

ジャン「アニ? 珍しい組み合わせだな」


ライナー「何だ、俺達が一番だと思ってたんだが…」

ベルトルト「いつ抜かれたんだろう?」

ジャン「そういや最初2人とも前を歩いてたな。 俺らは途中から違う道行ったんだよ」

サシャ「アニ、この2人と一緒なんて珍しいですね」

アニ「途中で追いついただけ」



ジャン「…お、マルコとコニーも来たぞ」


マルコ「やぁジャン、何番だったんだい?」

ジャン「一応… 最初に着いた」

コニー「何だよ、ズルしてねぇだろうな?」

サシャ「人聞きの悪い! ズルなんてしてませんよ!!」


サシャ「……あっ、ユミル! クリスタ!!」

ユミル「あーあ、やっぱサシャのが早かったか…」

クリスタ「あのね、ジャン! 私考えたの! 明日、私達と一緒に4人で街に行きましょうよ」

ジャン「エ… あ、ああ…」チラ

ユミル「そんで? 何番目だったんだサシャ」

サシャ「エヘヘ、一番乗りです」

ユミル「おお、そりゃスゴイ」



コニー「…エレン達も来たぞ!」


ライナー「頑張ったな、アルミン」

アルミン「僕は2人の足を引っ張って…」

アルミン「ごめんエレン、ミカサ… 荷物まで持ってもらったのに」

エレン「でもアルミンは、前に比べたら体力ついたよな」

ミカサ「本当。 以前だったら、歩き切るのも大変だったと思う」

アルミン「2人だけなら、もっと早く着けたのに…」

ミカサ「問題ない。 十分加点の範囲内」


…パッカラパッカラ ヒヒーン! ブルルッ


ベルトルト「馬が着いたよ」

ライナー「俺達はもう帰っていいのか」



クリスタ「…サシャー、帰ろう!」

サシャ「ハァーイ!」…タッ

ジャン「あ、待ッ… サシャ!」

サシャ「」クルッ

ジャン「ゴ、ゴメンさっき… 俺、あんなコト言いたかったワケじゃ…」

サシャ「……」フルフル

ジャン「あの、明日さ… クリスタが4人で街に行こうって言ってた…」

ジャン「一緒に… 行ってくれるか?」

サシャ「……」コクリ

サシャ「」タタッ

ジャン「」…ホッ


ユミル「………」



ジャン「………」パカパカ

ユミル「…ジャン」パカラッ

ユミル「何だ? せっかくトップになれたってのに、浮かない顔してるじゃないか」

ジャン「イヤ、俺…」

ジャン「なんか… サシャが無茶するなら、俺がなんとかしてやらなきゃと思ってたんだけど…」

ジャン「…逆に俺が足手纏いになってたような気がして」

ジャン「俺と一緒じゃなければ、もっと早くゴールできたんじゃないかと…」

ユミル「…ハ? お前は馬鹿か? 馬鹿なのか!?」

ジャン「なッ!?」

ユミル「サシャが自分のために頑張るワケないだろ!」



ユミル「あのなぁ、言っちゃ悪いが… あからさまに憲兵目指してるお前と違って、あれほど自分の成績に無頓着なヤツいないぞ」

ユミル「…今回は多分、ジャンを一着でゴールさせてやりたかったんじゃないか?」

ジャン「エ…」

ユミル「まぁ多分… だけど」

ユミル「…自分はお前にとって、少しでも役に立つ人間だと思って欲しかったんじゃないのか?」

ユミル「アイツ… そういうの言わないから、分かんないけどさ…」

ジャン「成績…」

ユミル「だってそうだろ?」

ユミル「エレンは物好きにも調査兵団、ミカサはエレンと同じ所…」

ユミル「他はアニもベルトルトも、コニーもマルコもジャンも… 皆、憲兵狙いだろう?」

ユミル「ライナーは分からんが… クリスタでさえ、一応は目標があるようだし…」



ユミル「…サシャは自分が一番になりたいなんて、思っちゃいないよ」

ユミル「まぁ… 下のヤツらからしたら妬ましい限りだよな」

ユミル「…何の目的意識もないのに、常に上位に入るか入らないかの成績でいるんだから」

ジャン「………」


ユミル「私もクリスタも… これまで何度も助けてもらったさ」

ユミル「今回だって、最初はBコースを選ぶところだったが… 結果、さっきあそこに揃ってた中に、Bを選んだ奴らはいなかった」

ユミル「そんな精鋭揃いの面子の中で、なんとかお前に一番を取って貰うために選んだのが、コースの外に出ることだったんじゃないか?」


ユミル「…そんな卑屈に考えるコトはないだろ」

ユミル「ジャンなら大丈夫だと、サシャはきっと思ったんだろうからさ…」



――― 夕食


クリスタ「…それでねサシャ、明日は街に…」

サシャ「聞きました。 4人でですよね?」

クリスタ「サシャはどこか行きたい所ある?」

サシャ「私は特に… クリスタに任せしますよ」

ユミル「まぁ4人でいるのも午前中だけだからな。 お前も午後どうするか考えておけよ」

サシャ「エ… 1日一緒ではないんですか?」

ユミル「そりゃあジャンが可哀相だろ」

ユミル「…何だ? 2人っきりはイヤなのか?」

サシャ「そういうワケでは…」


サシャ「………」



ジャン「なぁマルコ… 女って、どんなトコ連れてったら喜ぶと思う?」

マルコ「街でかい?」

マルコ「どうだろう… サシャだったら市場とか喜ぶんじゃないかな」

ジャン「市場か! アイツ自分で料理もするし… そうだな、そうしよう」

ジャン「マルコ、アリガトな!」

マルコ(素直だなぁ…)ニコニコ


ジャン(昼までは4人て言ってたから、メシ食ったら市場行って…)

ジャン(…小腹が空いたら、そのまま屋台で何か食わせて)

ジャン(市場は人が多いから、はぐれないようにしねぇと)

ジャン(そんで… 今日のコト、もう一度ちゃんと謝んなきゃな…)

ジャン(そうだ俺… 泣かしちまったんだ…)ズウゥーン


マルコ(…アレレ? 今度は途端に暗くなったよ!?)

マルコ(ジャンの百面相…)


――― 休日・街


クリスタ「さて、ドコ行こっか?」トコトコ

ユミル「こないだ行った店はどうだ? まだあの時は、そんなに品物出てなかったろ」

クリスタ「あ、そうだね! サシャも見るといいよ」

ジャン「ナニ屋?」

ユミル「服屋だよ。 前の休みに秋冬物を見に行ったんだ」

ジャン「フーン、男物もあんのか?」

クリスタ「ジャンの趣味に合うか分からないけど、あるよ」

サシャ「服… 服ですか」

ユミル「どうした、サシャ?」

サシャ「私、自分の服って選ぶの苦手なんですよね」

ジャン(そうなんだ…)



クリスタ「…ここだよ! このお店」

ユミル「やっぱりこの間より品が増えてるな」

ジャン「へぇ… キライじゃねぇな、こういう感じの服」

クリスタ「ジャンはいつも、どんなお店で服を買ってるの?」

ジャン「ここをもっと真っ直ぐ行った、男物しか置いてねぇ店だよ」

ジャン「結構安いし、訓練兵の男はそこで買ってるヤツが多いんじゃねぇかな」

サシャ「ほほぅ…」キョロキョロ

ユミル「なんか気になる物あるか?」

ユミル「クリスタはチビッコだから、サイズ探しに一苦労するが… サシャなら大体の物は着られるだろ」

クリスタ「何よユミルったら、自分が大きいからって!」

ジャン(あ、アレ……)スタスタ ジィー



ジャン「サシャ、ちょっと……」

サシャ「…何です?」

ジャン「これ、ちょっと羽織ってみろ」

サシャ「カーディガンですか…」モソモソ

ジャン「フゥン… 似合ってるぞ」

ジャン「ドレス見た時も思ったけど… やっぱ緑似合うな」

サシャ「ど、どうも……」カアァ//

ジャン「それ貸して。 会計してくっから」

サシャ「エ!? そんな! それくらい自分で」

ジャン「いいの、俺が買いたいの」

サシャ「で、でも……」アセアセ

ユミル「サシャ、ただ買ってもらうのがイヤなら、後でメシでもご馳走してやればいいだろ?」

サシャ「そ… そういうモノなんでしょうか?」



クリスタ「…結局、靴下しか買わなかったねぇ」トコトコ

ユミル「でもクリスタは、行く度に何かしら買ってるからな」

クリスタ「…まだ少し早いけど、ゴハンにしよっか?」

サシャ「!!」パアァァ

サシャ「ゴハンゴハン… 街のゴハン!」ウキウキ

サシャ「」スンスンスンスン…

サシャ「ココ! ここにしましょう!!」ビシッ

ジャン(嬉しそうだなぁ…)


サシャ「さあ! 何にしましょうか?」

ユミル「…サシャは街での食事、好きだよな」

サシャ「だって! こういったお店では… 食べさせるためではなく、食べて貰うために作ってくれているんでしょう?」

サシャ「だから美味しいし… 美味しく食べれば、作った人も喜んでくれるはずです!」ニコニコ

ジャン(メシか… 金払えば、適当に食えるのが当たり前だと思ってた…)



クリスタ「…じゃあ、また後で寮でね! サシャ」フリフリ


ジャン(…ここで、クリスタとユミルが別行動になった)

ジャン(ここまでは予定通りだ…)


ジャン(…だが、予想通りにいかないこともある)

ジャン(サシャが喋らなくなった……)

ジャン(俺は手を握って歩くコトもできなくて… ただ『はぐれるなよ』とだけ言ったけど)

ジャン(そしたら… 俺の服の裾を、ちんまり摘んで付いて来る…)

ジャン(俺… まだ嫌われてねぇのかな)

ジャン(…なんて可愛い生き物なんだ)

スタスタトコトコ…

1のジャンサシャ大好きです!

>>218 アリガトウ嬉しい


ジャン(市場、市場……)テクテク


サシャ「……」ピタッ

ジャン「!?」ピンッ!

ジャン「…何だ、どした?」

サシャ「……//」

ジャン「何でここで立ち止まる? ……エッ!?」

ジャン(エ!? ここって…… その、そういう場所じゃねぇの//!?)

ジャン「あの… サシャ//?」

サシャ「……//」ピタッ

ジャン(み… 耳まで真っ赤だ… じゃ、じゃあ… どんな場所か、分かってるんだよな…?)



ジャン「あの、サシャ…// もし俺が昨日言ったコト気にしてるなら…」

ジャン「…あれ、悪いの全部俺だし、サシャが気にする必要まったくねぇから」

サシャ「……//」裾パッ

ジャン「そ、それにホラ… まだ早いかなって…」アセアセ

ジャン「イヤ! 気持ちは嬉しいんだけどよ?」

ジャン「そういうの… 女から言わせるのはアレかな? っていうか… その//」

サシャ「………」ジワァ

ジャン(うっわ、大粒の涙! …泣かせてんの俺なのに、超可愛いぞチクショウ!!)

サシャ「……」クルリ!   ジャン(エッ!?)

サシャ「」タカタカタカタカタカタカタカターッ!

ジャン「エェッ!? …オ、オイ! 待てサシャ!!」ダダダダダダダダダダ



サシャ「…ウワアァアアァーーーーーン!!」スタタタタタタタタッタタタッタタタタタ

ジャン「ま、待てってば!(…涙で油断した!)」ダダダダダダダダダダ

ジャン(アイツ… 異常に足速ェんだよ! クソッ!!)


ジャン「…うぉ!」ピタッ


ジャン(ひ… 人混みに紛れて、姿見えなくなっちまったぞ!)キョロキョロ

ジャン(夜会の時もそうだったけど… 人混みスリ抜けるの、妙に巧いよな)

ジャン(…イヤ、感心してる場合じゃねぇぞ!)

ジャン(あの時と一緒だ… 多分ここで見失ったら、もう戻れねぇ!!)ダダッ


ジャン「…スイマセン! あの… ここに泣きながら走ってる茶色い髪の! …こうひとつに束ねてる女の子通りませんでしたか!?」

「あぁ、多分その娘なら… 号泣しながら、そこの積荷を大きく飛び越えて… 次の角を左に曲がって行ったよ」

ジャン「ありがとうございます!」ダダッ

ジャン(間違いなくサシャだ。 つーか… 泣きながら、どんだけ軽やかに走ってんだよ!)

本当は明日くらいに終わらせられればと思ってたけど、ちょっと無理そうです
しかも今日は時間あったのに、こないだ乗っ取ったスレの続きを書いてました
まぁ一昨日飲み過ぎて、方向を見失ったが故の気分転換だったと思って下さい

乗っ取った作品教えてください。

>>223 進撃bbsの『ジャン「お前太ったな」』ってヤツ。 アホみたいな話なので、期待はしないように


ジャン「」ハァハァ

ジャン(左… こっちの通りは… もういねぇ)

ジャン(……ダメだったか)テク、テク

ジャン(……ん?)


サシャ「」シクシクシクシクシクシク…


ジャン(ろ、路地裏の… 木箱の陰に隠れて…?)


ジャン「よぅ… 鬼ごっこの次は、隠れんぼか? お姫様」

サシャ「!?」ビクンッ!

ジャン「ハァァ、疲れた…」ズルズル


サシャ「わた、私……」



サシャ「私… ジャンみたいに器用じゃないし、口下手で…」グスグス

サシャ「…私ずっと、ジャンが羨ましかった」

サシャ「何でもソツなくこなせるし… 頭も良くて、自分の気持ちに正直で勇敢で…」

サシャ「それに前の砲弾の話だって… 私はいつも思い付きだけで、それをひとつずつ形にしていくコトができないんです」

サシャ「分かってたんです…」

サシャ「…私の相手はジャンなんです」

サシャ「恋愛感情ではありませんでしたが、他の誰でもなく… 私の相手がジャンだということは分かってたんです」

サシャ「でも… でも今は、近付くだけで心臓は躍り出すし、顔は熱くなるし…」

サシャ「…それなのにどうしても目が行ってしまうし、気になって訓練でも他でもポカばっかり」

サシャ「私、恋だとか、よく分からないけれど…」

サシャ「…まるで今の自分は自分じゃないみたいです」

サシャ「だからもう… いっそのコト、私をジャンのものにしてほしいと思ったんです」


ジャン「サシャ……」



ジャン「……俺もひとつ、情けねぇ話をしてもいいか?」

ジャン「昨日のアレ… 俺が言ったの、ただの八つ当たりなんだ」

ジャン「お前の発想の自由さ、柔軟性… 大らかさや生命力、野生の獣みたいなしなやかさ…」

ジャン「全部がすげぇ眩しく見えて… そしたら俺がクソつまんねぇ、小さい人間に思えてさ」

ジャン「そんでお前に当たっちまうなんて… やっぱ俺、小せぇ男だよな」

ジャン「ごめんな? …俺、こんなでごめんな?」

ジャン「サシャの気持ち乱して… 本当にごめん…」

サシャ「」ブルブルブルブル

サシャ「ジャン…… ジャン、お願いです。 もし、あなたが嫌でなければ…」

サシャ「私をジャンのものにしてください」

ジャン「サシャ……」

サシャ「そうしたら私… きっともう… もう、取り乱したりしませんから」



――― 宿


ジャン「…き、来ちゃったけど、その…//」

ジャン「俺… 多分もう、待ったは聞けねぇよ?」

サシャ「いいんです」

サシャ「エット… どうしたら?」

ジャン「そりゃやっぱり脱ぐんだろう」

サシャ「で、ですよね//」

サシャ「あの… 恥ずかしいので後ろを向いてもらっても?」

ジャン「あ、ああ…」クル

サシャ「……」スルスル

ジャン(き… 衣擦れの音)ドキドキドキドキ



サシャ「もう… いいですよ//」

ジャン「!!」グルンッ

ジャン(シャ、シャツで前を隠して!)

ジャン「サシャァァーーー!!」ガバッ

サシャ「ひゃあぁぁあぁ//!!」

サシャ「あ、慌てないで… ジャンも! ジャンも脱いでください!!」

ジャン「そうだったそうだった」ヌギヌギヌギヌギヌギヌギ

ジャン「サシャァァーーー!!」ガバッ

サシャ「ひゃあぁぁあぁ//!!」

ジャン「隠すなって! 俺のも見ていいから! つーか見ろ!!」バーン

サシャ「ふ、ふぁ… ぁ///」

サシャ「そ… そんな、そんな大っきいの… ム、ムリですよぅ…//」

ジャン「大丈夫! ツライの最初だけだから!」

昂る気持ちを酒で鎮め、続きを書き直し戻ってきたのだが… どうやら手遅れだったようだ
>>231を投下したときの>>1が素面であったとは、誰も想像できないであろう



ジャン「ホラ、もう隠さない隠さない」バッ

サシャ「ぅぅ……//」

ジャン「あー綺麗! やっぱ綺麗! 超キレイ!!」

ジャン「肌スベスベだ…」サワサワ

サシャ「…ッ//! ジャ、ジャンの肌もキレイですよ」

ジャン「俺なんかどうでもいい。 スゲェ… 柔らかい…」ムニュ

サシャ「んっ//」

ジャン「サシャ……」チュ

サシャ「ウ、ンン…ん…」

ジャン(これまでのキスとは違い… 舌を絡ませ唇を吸い、舐め回す… ゆっくり、ゆっくり時間をかけて…)

サシャ「…はぁ…ぁ//」

ジャン(耳元から首筋… そして胸へと舌でなぞる)



ジャン「サシャの胸…」ペロ

サシャ「//!!」ビックン

ジャン「…我慢しないで、声出せって」

サシャ「ん、っく…//」

ジャン「俺のモノ…」コリッ

サシャ「んぁッ! は… ハァ//」

ジャン(下……)スッ

サシャ「ひゃうッ//!!」ビクビクッ

ジャン(ぬ、濡れてて… あったかいし、スゲェ柔らかい…)

ジャン「サシャ全部、全部見せて」

サシャ「やッ… は、恥ずかしい、から…」

ジャン「ダメ、見たいの」グイッ

サシャ「アァッ//!」



ジャン(コレが… 女の…)

サシャ「見な、見ないで… くださ、いィ//」

ジャン「……ん」クニクニペロッ

サシャ「はあぁんッッ//!!」

サシャ「アッ… ンンン//、んくっ… ひゃ」

ジャン「サシャ… 俺もうダメ、早く挿れたい」

サシャ「あ… ぁぅ、ん」

ジャン「…挿れるぞ?」グイッ

サシャ「…い゛っ」

ジャン「…んっ」グリ

サシャ「イ゛… ッ」ズリズリ

ジャン「んっ」グリグリ

サシャ「ふ… ふぐ、ぅ…」ズリズリ



サシャ(これは… そ、想像以上に…)ズリズリ

サシャ(体が勝手に上へ… あぁッ! 頭… ベッド、行き止まり…)

ジャン「サシャ…」グリリッ

サシャ(も、もう……っ//)


ジャン「………あ」

ジャン「あれ…? エッ、ちょ……」

サシャ「……??」(涙目)

ジャン「…………」

サシャ「え…何、か…?」

ジャン「」ガックシ

ジャン「…ゴメン俺、俺…」



-----------------------


サシャ「ス、スミマセン… 私がズルズルと上がっていったから…」

ジャン「…イヤ」

ジャン「謝られると余計惨めになる…」ズウゥーーン

ジャン(挿れる前に… イッてしまった…)

ジャン(先を擦ってただけなのに…)ウッ

サシャ「でもその… ビックリしました」

サシャ「ジャンはあまり、乗り気でないというか… イヤなんじゃないかと思ったので…」

ジャン「ハァ!? んなワケねぇだろ!!」

ジャン「俺はもう… この体、俺だけのものにしたくてしたくて堪んなかったんだぞ!」ムニュ

サシャ「んんっ//」



ジャン「……そうだ、思い出した」



ジャン「サシャお前… いつも裸で泳いだりすんのか?」

サシャ「エェ!? 何のコトです?」

ジャン「いや、前によ… 山で… 滝壺ントコで、裸で泳いでたお前見かけてよ」

サシャ「な、夏に山で見た私って… あの時の//?」

ジャン「あのなぁ… 俺だから良かったようなものの、他のヤツだったら襲われてたぞ確実に!!」

サシャ「違ッ、あの… あの時は、もっと早く帰るつもりで…」アセアセ

サシャ「でも、予想以上に時間がかかってしまってですね」

サシャ「いつも川に入る時は、服の下に中に濡れてもいいような物を着て行くんですが…」

サシャ「その…//」

ジャン「フーン… じゃあ、あの時だけなんだな?」

サシャ「…ハイ」



ジャン「なら俺だけなんだな。 …良かった」

ジャン「もうあんなコトしたら駄目だぞ?」

サシャ「…ハイ//」

ジャン「この体… 他の男に見せちゃ駄目、絶対」

ジャン「こんなの見たら… 誰だって理性失くすだろ」サワサワ

サシャ「///」ビクンッ

ジャン「でも、あの時のサシャ… スゲェ綺麗だった」

ジャン「いつかまた… 日の光の下で、サシャの体が見たい」ナデナデモミモミ

サシャ「あン……//」

ジャン「………」



ジャン「……サシャ、俺復活」

ジャン「今度こそ、ちゃんと…」

サシャ「ハ、ハイ……//」



――― 夕食


ジャン「マルコに土産買ってきた。 厚手の靴下… 後で渡す」

ジャン「その… 色々アリガトな」

マルコ「そんな! 僕なんかに気を遣わなくていいのに…」

マルコ「でも… これから冷える時期になるし、嬉しいよジャン」ニッコリ

マルコ「…それで? 市場には行けたのかい?」

ジャン「エッ! い、市場!?」

ジャン「あ… い、行ったぞ? ウン//」

マルコ(行ってないね、コレは…)

マルコ(でも市場に行くより… もっと素敵なコトでもあったのかな?)フフッ



マルコ「…あれ? サシャがドアの前で立ち尽くしてるよ?」

ジャン「」ガタンッ



ジャン「…どした? ボーッと突っ立って」

サシャ「外に… 部屋に戻ろうとしたんですが…」ボーゼン

ジャン「なら出りゃいいだろう。 …ん? 何を手に持ってんだ?」

サシャ「こ、これ…」

ジャン「ハァ? …扉の取っ手じゃねぇか。 ナニがしたいんだお前は」

サシャ「イエ、外に出ようと思ったらスポンと抜けて…」

ジャン「…プッ、お前 面白いヤツだなホントに……」

サシャ「わ、笑わないでください…//」

ジャン「分かった分かった。 …貸せ、とりあえず一旦ピッタリに戻してドア開けたら、そのまま開けっ放しでいいから… 俺、後で工具借りて直しといてやる」

サシャ「あ… じ、自分で…」

ジャン「いいの、俺がやりたいの!」

ジャン「けど、前みたいに扉開けないで出ようとして、ハナぶつけるようなコトがなくて良かったな。 ん?」ナデナデ

サシャ「ハ… ハイ//」



ジャン(……それから数日後、例のぶどう弾についてアルミンと最終的なチェックをし、教官の元へ持って行った)

ジャン(3人の名前を書いて…)

ジャン(教官は興味深げにそれを読んでいたが、ふとこちらに目を向けた)

キース「……これは3名で考えたものか?」

ジャン「発案はサシャ・ブラウス、砲弾内部の構造や設計は自分とアルミン・アルレルトです」

キース「フム… 面白い。 実に面白いな」

キース「先日ブラウスが提出した固定砲の案も、言われてみれば『ああ、なるほど』と思わせる内容だったが…」

ジャン(サシャはもう出してたのか…)

キース「立体機動装置にだけ頼らない兵器の改良… これは駐屯兵団の中でも大きな課題だった」

キース「ほんの少しの発想の転換、これこそが重要なのだ」



キース「実のところ私は、貴様がブラウスを選んだ事がひどく意外だったのだが…」

キース「…貴様らは、全くもって対照的だからな」

ジャン(エ? 何で知って…?)

ジャン(そうか、教官も当然あの夜会にいたワケだし… うわ、恥ずかしい//)

キース「だが… 対照的であるが故に、最良のパートナーともなり得る」

キース「おそらく貴様らは… お互いの足りぬ部分を補い合い、また本来持つ力を高め合うことのできる関係を築けるだろう」

キース「常に相手を尊重し、決して驕ることのないよう励め」

ジャン「ハ… ハッ!」



ジャン(俺とサシャ…)

ジャン(お互いを補い合い、高め合う…)

ジャン(…サシャはおそらく、それを本能で感じ取っていたんだ)

ジャン(だから自分の相手は俺なんだと…)

ジャン(きっかけは些細な事だったかもしれないが…)

ジャン(…だから俺も、これほどまでに魅せられたんだろうか)

ジャン(あの… 背中に羽が生えていないのが不自然なほどの軽やかさ)

ジャン(大地の息吹を吹き込まれたような生命力?)

ジャン(…俺の優れた点だって?)

ジャン(そんなモン… サシャの前では霞んで、吹き飛んじまうさ)


ジャン(俺はただ… これから先 あの自由な魂が、籠に閉じ込められてしまわぬよう…)

ジャン(…くだらない現実や常識に潰されてしまわぬよう)

ジャン(見守り続けてやりたいと思うんだ)

おしまいです
途中、変なテンションになってたんで、もしかしたら後で書き直すかもしれないし
直さず変態のままかもしれません

ちょっと違う感じの話を書いてみる



――― 849年・秋


ジャン(――― 壁内に奇妙な噂が流れ始めていた)

ジャン(ウォールローゼ内のある村を中心とした地域に、巨大な獣が現れ人々を襲うという)

ジャン(…無論、巨人ではない)

ジャン(四足の… 狼のような姿形…)

ジャン(…しかしその大きさは、牛ほどもあるそうで)

ジャン(近隣住民の被害は30数件に及び、幾度か兵が派遣され大規模な山狩りが行われたが…)

ジャン(…件の獣は一向に姿を見せず、捜索は徒労に終わるばかりだった)

ジャン(―― 人々は噂した)

ジャン(それは神の怒りであると…)

ジャン(…3人の女神達の呪いであると)


ジャン(真実は遠く、今の俺達にはそれを知る術もない……)



――― 休日


サシャ「…やっと皆にご馳走するコトができます!!」

クリスタ「狩りに行ってきたの?」

サシャ「ハイ!!」

ユミル「…お前も一緒に行ったのか? ジャン」

ジャン「行ったけど…」

ジャン「運ぶ以外は、俺ほとんど役に立たなかった…」

ユミル「最初はそんなモンだろう?」


ジャン(前の休み… 初めてサシャとベッドを共にした日以来…)

ジャン(サシャは、俺によく笑顔を見せてくれるようになった)

ジャン(不思議なコトに… サシャが笑っていると、周りの人間も笑っているコトが多い)

ジャン(そりゃ ふくれっ面の奴の周りで、笑ってられる人間も少ないだろうが…)

ジャン(笑顔のサシャを中心として、2重3重に笑顔が広がっていくようだった)



ジャン(もちろん俺もその1人だ)


ジャン(前にサシャがウサギの煮込みを作った日… 鹿のような大物が獲れたら、ライナー達にもご馳走すると言っていたが)

ジャン(今日… その約束を果たそうと、サシャは山へ行ったんだ)

ジャン(今思えば無理やりのような気もするが、俺もついて行った)

ジャン(山の中では狩場があるらしく(特に鹿では)、サシャは慎重に進んだ)

ジャン(例の鷹も一緒だった)

ジャン(ある場所で、鷹が空をぐるりと一周回った)

ジャン(…そこには鹿が群れで草を食んでいて)

ジャン(風上側にいたサシャは、俺をそっと押し止めると…)

ジャン(…キリキリと弓を引き、見事に1頭の鹿の心臓を射抜いた)

ジャン(鹿達はすごい勢いでその場を走り去り…)

ジャン(心臓を射抜かれた鹿は、ゆっくりと歩んだが… 最後に力尽き倒れた)



サシャ「…先程通った小屋へ、戻っていてもらえませんか?」

ジャン「でも、お前1人で運ぶんじゃ大変だろ?」

サシャ「そう… そうなんですが…」

ジャン「いいよ、俺も一緒に運ぶから」

サシャ「じゃあ… 作業はあちらでしますか… 沢もありますし」


ジャン(…何故か気が重そうなサシャだったが)

ジャン(その理由は、山小屋に着いたらすぐに分かった)


サシャ「スミマセンが… 小屋に入っていてもらえませんか?」

ジャン「…何で? できるコトがあるなら手伝うぞ?」


ジャン(…俺がそう言うと、サシャは微妙な表情で言った)



サシャ「狩りをして、最初にするコトは血抜きです。 喉を切り裂き、内臓を取り出して洗って…」

サシャ「私は首をそのまま落としてしまいますが…」

サシャ「できれば… 見ないでいて欲しいんですけど…」


ジャン(俺が狩りについて行きたいと言った時に、困ったような顔をしていたのはコレだったのかと…)

ジャン(サシャは、その姿を誰にも見せたくなかったのではないかと…)

ジャン(俺は、サシャの聖域を荒らしてしまったのかと…)


ジャン「あ… 頭はどうすんだ?」

サシャ「埋めます」


サシャ「ただの言い伝えですが… 魂は頭部に宿っていると話したコトがありましたね」

ジャン「…あぁ」

ジャン「それなら… 俺が頭を落とそう。 感謝と敬意をもって」



ジャン(そして俺は… 生まれて初めて動物の頭部を切り落とし、サシャの掘った穴に埋めた)

ジャン(サシャはその後、胴体を手際良く捌き… その一部を鷹にもやっていた)

ジャン(…俺は、いつも出された物を当たり前のように食うだけで)

ジャン(誰かがそんな作業をしてるなんて、考えたコトもなかったが…)

ジャン(『食』に対して貪欲… というよりも、サシャは『食物』に対して誰よりも過敏であったのだと、今更ながらに思った…)


ジャン(帰り道、サシャが言っていた)

サシャ「えっと… イヤではありませんか?」

サシャ「休日の私は、いつもこんななんです」

サシャ「私の手はもう、沢山の血に塗れているんです」

ジャン「……前に味見させてくれたウサギの煮込みも、そうやって獲ったものなんだろ?」

ジャン「俺… あんなに旨いと思って食ったの、初めてだった」

ジャン「嫌なワケないだろ? 俺… 邪魔しないように手伝うから、また来ていいか?」


ジャン(…そう言うと、サシャは泣きそうな顔で微笑んだ)



サシャ「…お待たせしました。 鹿肉のローストとシチューです。」

ライナー「おお! まさか本当にご馳走して貰えるとは思ってなかったぞ」

サシャ「約束はちゃんと守りますよ」

ジャン「持って帰ってきたヤツ、全部使ったのか?」

サシャ「イエ、干し肉用にも取っておいてありますよ。 保存食です」ニッコリ


マルコ「…なんだか申し訳ないな、僕までご相伴に預かっちゃって…」

ジャン「まぁ俺も狩りを手伝ったっていうよりは、運んだだけだからな。 …しかし旨いなコレ」モクモク

マルコ「…本当だ。 まさか訓練所でこんな物が食べられるなんてね」


エレン「ハァ… 食った食った」

ミカサ「サシャ、私達にまでありがとう。 とても美味しかった」

アルミン「訓練所ではお肉なんて滅多に出てこないからね。 ご馳走様、サシャ」

サシャ「フフッ… でも、エレンもアルミンも細いですからねぇ。 もっと食べてもいいくらいですよ」

ミカサ「それは確かに…」



――― 数日後夕方・医務室


ジャン「…よぉ、具合どうだ?」ガチャ

ジャン「熱下がったか?」

サシャ「平熱に戻りました。 まぁ丸一日寝てましたからね」

ジャン「お前が熱出すなんて、珍しいってユミルが言ってたけど…」

サシャ「年に1~2回あるんですよね。 いきなりブワッと熱が出て、でも夕方には下がるという…」

ジャン「飯どうすんだ?」

サシャ「もう少ししたら一度部屋に戻って、食堂で食べます」

ジャン「そっか…」

サシャ「今日、何かあったんですか?」

ジャン「……ん。 ちょっと座るな」ガタ

ジャン「今日の訓練後にさ…」


------------------



サシャ「……狩り、ですか?」

ジャン「うん… 黒い獣の噂、聞いたコトあるだろ?」

サシャ「それは… ちょっと小耳に挟んだくらいですけど…」

サシャ「熊か、狼の類だと思ってました」

サシャ「…ですがそれは、憲兵の役割ではないんですか?」

ジャン「ヤツらは何度か行って捕獲を試みたようだが… 結局匙を投げたらしい」

ジャン「まぁそうだよな。 大規模な山狩りをしても、まったく姿を現さず…」

ジャン「罠を仕掛けても、その罠にはまるのは住民ばかり」

ジャン「…憲兵の沽券に関わるんだろうよ」

ジャン「そんなモン最初から存在しなかった、みたいな報告してたらしいぜ?」

ジャン「そんでヤツらはもう、この件には関わりたくないんだと。 …多少、俺の推測も入ってるがな」

ジャン「だが、被害者は今もなお増え続けてる…」



サシャ「で、でも… それなら駐屯兵は? 彼らも壁内の安全を守る立場でしょう」

ジャン「当然その質問は出た… でも、それに関しては俺達が悪い… のかな」

ジャン「教官はその場では言葉を濁したが…」

ジャン「…話の後で、俺とアルミンが教官に呼ばれた」

ジャン「…前に提出したレポートあったろ?」

サシャ「エ… 改良型ぶどう弾と、壁上大型固定砲ですか?」

ジャン「ああ… それが技術班に上げられ、どちらも採用になったらしい」

ジャン「ちなみにぶどう弾の方は、『榴散弾』て名前が付いたそうだが…」

ジャン「どちらも壁上で使用するものだし、そうすると管轄は駐屯兵団になる」

ジャン「1日でも早く使用できるようにと、技術班・駐屯兵団ともに研究開発に懸命になっているそうなんだ」

サシャ「…つまり駐屯兵団は、そんな獣に関わっている暇はないと?」

ジャン「ま、そういうコトだな」



ジャン「次の休み明けの日から、7日間… 俺達に行って来いとさ」

サシャ「そんな! 現地の状況も知らず、一週間でなんてとても…」

ジャン「上としては短期間でも… 俺らみたいな未熟な訓練兵であっても、とりあえず兵を送ったという事実があればいいんだろう」

サシャ「でも! それじゃ現地の人には、何の解決にもならないじゃないですか!」

ジャン「…俺達は兵士だからな」

ジャン「上がそうしろと言えば、従う以外他にない」

サシャ「………」

ジャン「…次の休み明けだ」

ジャン「それじゃ俺は行くから… ちょっと額、見せろ」

ジャン「あぁ… 本当に下がってるな。 しっかり治しとくんだぞ?」チュ

サシャ「……ハイ//」

ジャン「後でまた、食堂でな」



――― 休日明け・獣狩り初日 朝


エレン「さて、出発か…」

ジャン「…昨日はさすがに街に行くヤツはいなかったな」

マルコ「皆、準備があったからね」

コニー「たったの1週間じゃ、なんもできねーだろ」

ライナー「憲兵の残した報告書は、どうにもアテにならなそうだしな」

ベルトルト「あちらに着いたら、もう一度村の人達に話を聞くしかないね」

エレン「行ってみないと何も分かんねぇってのは、随分心もとないな」

アルミン「それでも、僕らでやれる限りのコトはやらないと…」


ジャン「……ん? サシャ!」パカラッ



ジャン「何だお前、それ持ってきたのか? …弓」

サシャ「狩りであるなら、使い慣れた物が一番です。 私、銃器の扱いは下手ですし…」

サシャ「それに弓だけじゃありませんよ。 ホラ、上…」

ジャン「……マジか」

鷹「」バッサバッサ

サシャ「いいコですねぇ… 今回は壁も越えるというのに…」

サシャ「昨日の休みにちょっとゴハンをあげに行ったら、私についてきてくれました」

サシャ「動物は賢いから… 私が離れてしまうコトが分かるんでしょうか」ニコニコ

ユミル「サシャは人間よりも、きっとああいった生き物に近いんだろうよ」


ジャン(ユミルが軽く笑いながらそう言って… サシャはとても嬉しそうだった)

サシャ「…それで、ドコまで行くんですか?」

ジャン「よくは分からんが、ローゼの南東… トロスト区とカラネス区、ストヘス区とエルミハ区… その4つの区の真ん中辺りだと」



ジャン「…今回は小銃だけじゃなくて、ライフルなんかも運んでるんだよな?」

マルコ「うん… 巨人相手ではないけれど、人間相手でもないからね」

マルコ「もちろん数は限られているようだけど…」

ジャン「獣、ねぇ…」

ジャン「噂ったって、ドコまでが本当の話なのやら…」

マルコ「それを突き止めるのも、今回の僕らの仕事だろう?」

ジャン「マルコは真面目だからな」

ライナー「…それに今回は、熟練の狩人もいるじゃないか」

ジャン「ン? サシャのコトか?」

コニー「何だと!? 俺だって狩りは得意だぞ!」パカパカッ

ベルトルト「フフ、期待してるよコニー」



---------------------


エレン「着いた… のか?」パカッ…

クリスタ「何だか、今までよりもさらに木々が鬱蒼と…」

ユミル「確かに… な」

アニ「…薄気味悪い」

ベルトルト「それは… ここら辺に住んでいる人に失礼だよ、アニ」

アニ「でも、気持ち悪いものは気持ち悪い」

アルミン「今回は付き添いの教官も1人しかいないし、僕らがしっかりしないと…」

アルミン「…ライナー、あそこにいるのが村の代表じゃない? 挨拶しないと…」

ライナー「ああ… そうだな」



ジャン(…ライナーは今回、訓練兵代表として皆を取りまとめる)

ジャン(理由はもちろん、ヤツが優秀で冷静な判断を下せるというコトもあるが…)

ジャン(若造ばかりと侮られぬよう、老け顔のライナー(一番の老け顔はダズだが)が選ばれたワケだ)

「ようこそお越し下さいました」

ジャン(ライナーが村の代表者… おそらくは村長と握手を交わした後、宿舎まで案内された)

ジャン(宿舎までの道には、古びた教会があり…)

ジャン(村人は各々の家から顔を出し、胡散臭げに俺達を眺めていた)

ジャン(…違和感、とでもいうのだろうか)

ジャン(昼過ぎでまだ陽も高い時間であるのに、村には外で元気に遊ぶ子供達もいない)

ジャン(まぁ… いつ何時、獣に襲われるかもしれないと恐怖があるのだろう)

ジャン(村の印象としては、薄暗く陰鬱として閉鎖的…)

ジャン(……とにかく、あまり良いものでないのは確かだった)



――― 宿舎


ライナー「……資料はこれだけですか?」

村長「以前、憲兵が残していったものは、これだけです」

ライナー「これまで獣の現れた場所を記した地図と、おおまかな被害状況…」

ライナー「どなたかにお話を伺うことは?」

村長「何せ、アレに襲われて生き残った者が殆ど…」

村長「ですが何名かはおりますので、後でこちらに寄越しましょう」

村長「…ここは憲兵の方々も使用した宿舎ですが、今回女性もこれほどいらっしゃるとは知らず、他に宿などの用意はないのですが…」

ライナー「それに関しては、こちらで良いようにしますので、ご心配なさらずに」

村長「左様でございますか。 恐れ入ります」


村長「では… また後ほど夕食の時間に参りますので、まずはごゆるりとお寛ぎ下さい…」



ミカサ「…ゆっくり寛いでる時間はない」

エレン「7日しかねぇんだからな」

ジャン「ライナー、その資料… ちょっと見せろ」

ジャン「うわ… マジでこんなモンしか書いてねぇのか」

ライナー「しかもこれ1冊だけときた」

アルミン「でも、ここにいる全員分用意するのは大変な作業だよ」

アルミン「まず被害地を記した地図は、皆がいつでも見られる所… 今いるこの食堂に貼っておこう」

アルミン「それからライナー、もうひとつの方を読み上げてくれるかな」

ライナー「ウム… では読んでいくぞ。 皆、ちゃんとメモを取れよ」


ライナー「まず、最初の被害者は……」


----------------



ライナー「……班を決める必要があるな」

アルミン「そうだね。 外に出る時は、できれば5人… 少なくとも3人以上で行動するようにしないと」

ジャン「今日はもう日も暮れちまうが… 明日はその班で村を調べて回るようにするか」

ライナー「もし… それらしいと思われる獣を見つけても、決して無茶はするな」

マルコ「小銃も必ず携帯させないと」

サシャ「ふーむ…」

ジャン「何だサシャ、どうした?」

サシャ「さっきの報告では、通常より大きな狼だとのコトでしたが…」

ジャン「それ以外には考えられねぇってこったろ」

サシャ「基本的に狼は用心深く、人に近付かないものなんです」

サシャ「もちろん、森に餌となる動物がいなくなったりすれば話は別ですが…」

コニー「熊なんかは一度人の味を覚えると、人間ばっか襲ったりするようだけどな」



ミカサ「病気の可能性は?」

サシャ「狂犬病ですか…」

サシャ「もし狂犬病を発症していたら、とっくに死んでいますよ」

ライナー「1頭とは限らないかもしれんぞ?」

ジャン「そんなバカでかい狼が何匹もいるって?」

マルコ「それも考えにくいね」

ユミル「とにかく夕食の時間まで待って、もう少し話を聞いてみるしかないな」

クリスタ「そうねぇ…」

アニ「とりあえず、一旦荷物を部屋へ持って行きたいんだけど…」

ライナー「ああ、そうだった」

ライナー「今回は男女がひとつ屋根の下だからな。 きちんと部屋割りも決めないと」



――― 夕食


ジャン(夕食には村長の他、村の有力者数人と… 例の獣に襲われ生き延びた何名かがやってきて同席し…)

ジャン(中には顔にひどい傷を残している者もいた)


村人「……狼はこれまで何度も見たが、あれは違う」

村人「…ヤツは狼より強大で、銃を恐れない」

村人「あれは悪魔だ」

村人「その証拠に背中に鋭い棘が生え、黒い縞模様がある」


コニー「…銃が効かないのか?」

マルコ「イヤ… 効かないワケではないと思うよ」

ベルトルト「きっと音や、硝煙の匂いを気にしないんじゃないかな」



コニー「背中にトゲって… 聞けば聞くほど、ワケ分かんねぇな」

コニー「そんな生き物いんのか?」

エレン「まさか外の世界からやってきたんじゃないだろうな」

アルミン「さぁ… でも4年前の襲撃で扉が破られた時に、入ってきた可能性も全く無いとは言えないけど…」

エレン「だとしたら… スゲェ! やっぱ外の世界ってスゲェな!!」キラキラ

村長「…あなたは壁の外に行きたいのですか?」

エレン「それはだって! 行ってみたい… 見てみたいじゃないですか!」

エレン「この狭い壁の中から出て、広い広い外の世界を!!」

ミカサ「エレン… 今、その話は…」

村長「フフ… お若い方は勇ましいですなぁ」

村長「ですが我々は… もしかしたらこれは、女神のお怒りなのではないかとも思っているのですよ」

ライナー「あぁ、確かにそんな話もどこかで聞いた覚えがあります」

ジャン「…本当に神の罰だってんなら、それこそ硫黄の火でも降らせるだろうさ」



ジャン(その後暫く話した後… 村長達は人数分には満たなかったが、村全体とその付近の地図を置いて帰って行き、俺達は明日の為の班を決めた)

ジャン(もちろん俺はサシャと同じ班だ)

ジャン(俺とサシャ… それからアルミンとベルトルト、アニ)

ジャン(明日はこの5人で調査することになる)

ジャン(地図を見て、各班が調べて回る地域も決めた)

ジャン(しかし正直… 何を調べていいものやら、さっぱり分からない)

  ガチャッ…

ジャン「……サシャ?」

ジャン(出てっちまった… まさかアイツ、外に出る気じゃねぇだろうな)タタッ


ジャン「…サシャ! おい待て! 勝手に外に行くな!!」

ジャン「ナニ扉開けてんだ! 危ねぇだろうが!!」バタンッ

サシャ「ス、スイマセン… ちょっと覗いただけなんですが…」

サシャ「なんだか… 誰かに見られているような気がして…」



――― 獣狩り2日目


ジャン「んで、何を調べりゃいいんだ?」パカパカ

アルミン「僕も動物の生態とかはあまり詳しくなくて…」

サシャ「私も別に、詳しいワケではないんですけどね」

サシャ「普通の狼ならホラ、あんな感じに…」指サシ

ベルトルト「うわ! あんな所に!」

アニ「結構いるモンなんだね…」

サシャ「こちらを見てはいますが、それ以上近づいて来ないでしょう?」

サシャ「私が知っているのはああいったのであって、例の獣については見当も付きません」

サシャ「ですが、『追跡不可能な動物はいない』という言葉もありますし、頑張りましょう」ニコッ

ジャン「そう… そうだなウン」



サシャ「それと… ジャン、これを持っていてくれませんか?」スッ

ジャン「これ、お前の銃じゃねぇか!」

ベルトルト「銃は必ず持つようにと、昨日話したじゃない」

サシャ「私が持っていても、使えませんから。 ジャンはどちらの手でも銃を扱えましたよね」

ジャン「まぁそうだが… お前はどうするんだよ?」

サシャ「咄嗟の時には使い慣れた物が一番ですから、私は弓で。 それに硝煙の匂いは苦手です」

アニ「サシャも動物みたい」

アルミン「フフフ」

ベルトルト「それにしても… 今日は随分肌寒いね」

ジャン「ただでさえ薄暗いのに、天気までこんなじゃ一層暗いな」

サシャ「もうすぐ雨が降るかもしれませんね」パカパカ


  …ビッ! ビビィィーーーーッ!!



アルミン「うわぁっ! 木の枝に引っかかってマントが!!」

ジャン「あーあー、ボタンまで飛んじまってんじゃねぇか。 馬降りて探さねぇと…」

サシャ「ありましたよ! …でも破れた上にボタンもないのでは、マントが着けられませんねぇ」

サシャ「私の着ますか?」

アルミン「エッ!? いいよ悪いし」

ベルトルト「ん? 何だろう、あそこ…」

アニ「ドコ?」

ベルトルト「この先、広場みたいになってる」

アルミン「ちょっと見てみよう」


ジャン「何だココ? 石が積み重なって……」

アニ「柱みたいな物もあるよ」

アルミン「昔、何かがあったのかな…」

  …パラパラ



ベルトルト「あぁ… 雨、降ってきちゃったね」

サシャ「……おや?」トコトコ

サシャ「アルミーン! ちょうど良くこんな所にマントらしき物が落ちてましたよ!!」

ジャン「そりゃ落ちてたんじゃねぇ、置いてあったんだろ」

サシャ「大した違いはありませんよ。 古い物ではないようですし、今日はとりあえずコレを羽織ったらいかがです?」

アルミン「けど、人のだし… 忘れ物だったら、誰か取りに来るかもしれないよ」

ベルトルト「でも雨も降ってきたし、冷えちゃうよ」

ジャン「ここまで来て、風邪引いて寝込んじまいましたはイヤだろ?」

アニ「明日でも… まぁ帰る時までに村の誰かに渡せばいいでしょ」

アルミン「そう… かな。 じゃあ有難く着させてもらうよ」

ベルトルト「ウーン、この場所は一体……」

  …ザワザワザワ
  
サシャ「風が…」



アニ「ここ… なんかヤダ」

アニ「すごく嫌な感じがする…」

サシャ「ふむ… 確かにここの空気は少しおかしい気がします」

サシャ「なんだかこう… うなじの辺りの毛がゾワゾワするような…」


アルミン「あれは何だろう……」スタスタ

アルミン「石碑…? 文字が刻まれてる」

ジャン「何て書いてある? アルミン」

アルミン「古くて所々読めないけど…」

アルミン「壁を軽んじ、外の世界を目指す者ども… 異端者20名をこの地で焼いた、と…」

サシャ「……ひ」

ジャン「オイオイ、そんなコト言ってたらエレンだって焼き殺されんじゃねぇか」

アルミン「僕も以前… 外の世界の話をする『異端者』と呼ばれていたんだ」



アルミン「僕らの時代だからこそ、ちょっと苛められるくらいで済んだけど…」

アルミン「昔はこうして… 外の世界を求める者は、ひどく迫害されたのかもしれないね」

アルミン「…そういえば、ウォール教の教義の中にこんな言葉がある」

アルミン「『神は神を侮るものに十の災いをもたらすであろう』と…」

アルミン「!!」

アルミン「そうだ! 『獣の災い』はこの中のひとつなんだ!!」

ジャン「だから昨日、村長はあんなコト言ってたのか。 ただのくだらねぇ噂だと思ってたが…」

アルミン「『お前達の罪が許されるまで、お前達の子を食らおう』…」

アルミン「…『恐ろしい獣を送り、お前達とその民を屠らせよう』」

アニ「よくそんなコト知ってるね」

アルミン「前に少し興味を持ったことがあって…」

ジャン「しかし、おっかねぇ女神様だ。 …だがこの村は閉鎖的だし、そういう迷信も信じてんのかもな」

アルミン「………」



サシャ「アルミン、こちらの裏側にも建物がありますよ」

ジャン「どれ?」

サシャ「これは猟場… ですかねぇ。 今は使われていないようですが…」

ジャン「…そうみたいだな」

  …ザアァァァーーーーー

アニ「雨が強くなってきた」

アルミン「…これ以上は何も調べることができないし、一旦宿舎に戻ろう」

サシャ「そうですね」

ジャン「他の誰かが、手掛かりでも見つけてくれるといいんだがな」

ベルトルト「1日2日では難しいだろうね」

アニ「そもそも7日ってのが無理あるんじゃない?」

ベルトルト「違いない」フフッ


サシャ「」チラッ



------------------------


ジャン「……結局今日は、どの班も何の手掛かりもナシか」

マルコ「昨日こちらに着いたといっても、今日が初日のようなものだから…」

ライナー「確かに、一日目で成果を挙げるのは難しいだろう」

ライナー「それより各班、気になる… というか注意すべき点はあったか?」

ライナー「馬で進みづらいとか、何でもいい」

エレン「それなら…」

エレン「…ココ、この被害のあった場所なんだけど、ただの急坂かと思ったら下に葉っぱが溜まってて…」

ミカサ「下りられるか確かめるために石を投げたら、下は沼のように大きな水溜りになっていた」

ライナー「フム… じゃあ水に足を取られているウチに、襲われたということなのか?」

ミカサ「多分…」

ミカサ「今は雨も降っているし、明日以降も地面が濡れてたら滑りやすいかもしれない」

ライナー「じゃあ皆、注意するよう書いておけよ」



コニー「つーかオレ達… ここにいるより、訓練所で普通に訓練してた方が良かったんじゃねぇ?」足ブラブラ

ベルトルト「それを言ったらお終いだよ、コニー」

ジャン「…どうせもう少ししたら夕食だろ? 俺、一度部屋に戻るわ」ガタッ

  スタスタ…

ジャン(被害地の箇所、か…)

ジャン(獣に食われるのも、人間に焼き殺されるのも… 俺はどっちも嫌だ)

ジャン(…アレ? 廊下の隅っこにサシャ… なんか考え事でもしてんのか? じっと座って…)

ジャン(…いつの間に出て行ってたんだ? 今日は正面扉開けてるワケじゃねぇからいいけどよ)


ジャン「…オイ、何やってんだ?」ヒョコッ

サシャ「エッ!? ああ、ジャン」

ジャン「何だよ、近付いてたの気付きもしなかったのか? 珍しいな」



サシャ「えぇ… チョット…」

サシャ「私… 元々考えるの苦手なんですけど、なんだかもう色々頭がゴチャゴチャになってしまって…」

ジャン「皆そうだろ」

ジャン「それに、調査してる俺達もいつ狙われるか分かんねぇ…」ハァ…

ジャン「ホントに何が何だかなぁ…」

ジャン「パッとしねぇ村に根暗な住民… 得体の知れねぇ獣…」

ジャン「サシャ… 怖いか?」

サシャ「私はいつだって怖がりですから」

ジャン「だよなぁ… 男の俺だって訳分かんねぇのに、ましてやお前は女だもんな」

サシャ「……まぁ、それもありますが」

サシャ「私が本当に怖いのは…」

ジャン「?」



サシャ「私が何もできない… 取るに足らないつまらない人間だと軽蔑されるコトです」

ジャン「!?」

サシャ「…もちろん獣は怖いですけどね」

サシャ「狩りの時は、いつだってそうです」

サシャ「どんな獲物でも、決して侮ったコトはありません」

サシャ「彼らが必死になる最期ほど、注意が必要だというのも忘れてはいません」

サシャ「私は… ジャンに軽蔑されたくないんです」

サシャ「嫌われるならともかく… 軽蔑だけはされたくないんです」

サシャ「私は、私を好いてくれた人を裏切りたくない」

ジャン「そんな!!」

ジャン「俺がお前を嫌いになるなんて… ましてや軽蔑なんかするワケねぇだろ!!」

ジャン「なんでそんな… そんなコト言うなよ」



サシャ「フフ… 明日からまた頑張りましょうね」



――― 獣狩り3日目


  ザアアァアアァァーーーーー


ライナー「生憎の雨、か…… これでは動くに動けんな」

ジャン「クソ! 時間がねぇってのに…」

コニー「…なぁ、村はずれからココに来る途中に教会あっただろ?」

コニー「あれって、何する所なんだ?」

ライナー「教会なんだから、神様に祈るんだろうさ」

クリスタ「そういえば村長が言ってたね」

ユミル「女神様のお怒りねぇ… 信心深いこった」

サシャ「本当に罰が当たったのだとしても、被害がこの地域だけに集中しているのは変な話です」



サシャ「おかしな点は他にもあります」

サシャ「昨日、資料を見直していて思ったんですが…」

サシャ「この3人目の方は、牛の世話をしている時に襲われたんですよね?」

ライナー「そう書いてあるな」

サシャ「ナゼ、家畜は無事なんでしょうか」

サシャ「それに… 普通なら捕食動物が狙う喉や足は無視して、頭部ばかりに被害が集中しています」

サシャ「これじゃまるで…」

アルミン「人間だけを… 捕食ではなく、殺害そのものが目的みたいだ」

ジャン「被害者には何か共通点があるのか?」

ベルトルト「でも、年齢も性別もまちまちで…」

サシャ「うむむ… やっぱりワケが分かりませんねぇ」



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コニー「ハァ… 結局今日は何もできずじまいか」

エレン「焦ってもしょうがないとはいえ、もどかしいな」

ジャン「神様にお願いでもしておくか? 明日は晴れますようにってさ」

エレン「ハハ、ここの神様ならご利益あるかもしれねぇぞ」

ジャン「そんじゃ部屋に戻ってお祈りでもすっかな」ガタッ

  …パサッ

マルコ「ジャン、地図落としたよ。 ハイ」

ジャン「ああ… 悪ィ」


ジャン(獣の現れた場所を記した地図…)

ジャン(何だろう… なんか、引っかかる…)



――― 獣狩り4日目


コニー「うぉ! すっげぇイイ天気じゃんか!!」

エレン「お祈りって効くんだな、ジャン」

ジャン「まぁ祈ったの俺だからよ」

エレン「何だよ! オレだってお空に向かってお願いしたんだぞ!」

ジャン「お空って… 子供か、お前は!」

マルコ「…フフッ、まぁまぁ2人とも」

ライナー「ともあれ、今日は待機しなくて済みそうだ」

ライナー「一昨日と同じ班で調査しよう」

サシャ「調べる場所も、前回と同じですか?」

ライナー「イヤ… 人が変われば、また違う見方もできるかもしれん」

ライナー「皆、今日は必ず何かしらの手掛かりを見つけるぞ!」



アルミン「なだらかな丘が続いてる…」パカパカ

ベルトルト「ここでは女性が亡くなってるね」

ジャン「…あそこか? あの、大岩」

アニ「ここによじ登ろうとしたのかな」

ベルトルト「登ろうとしたけれど、足を噛まれてこの岩に何度も叩き付けられ…」

サシャ「すごい力ですね」

  …ピェーー ピェーー

アニ「ねぇ… さっきから上グルグル廻ってる鳥って…」

サシャ「あれは私のお友達ですよ。 …オーイ!」ブンブンブン

鷹「」バッサバッサ

アニ「…アンタ、ホントに人間?」

ジャン「サシャは今のところは、とりあえず人間だな。 前世は知らねぇが…」

アルミン「フフッ」



サシャ「うーむ… ここには手掛かりになりそうな物は、何もないようですねぇ…」キョロキョロ

ベルトルト「亡くなった女性は、市場に買出しに行った帰り道だったそうだけど…」

アルミン「すごく見晴らしの良い場所だね」

ジャン「どこから追われていたんだろうな」

アニ「そんなの… 本人が生きているなら分かるけどさ」

ジャン「でも何か… 必ず何かがある筈なんだ…」

アニ「私は目に見えるものしか信じたくない」

ベルトルト「確かに… 一度でも実物を見たなら、こちらから追う事もできるけど…」

アルミン「人から聞いた話だけだと… 見かけからして、どうにも普通の生き物とは違うようだからね」

サシャ「ここはもう、いいでしょう」

ジャン「そうだな… 戻りながら、また考えるか…」



パカパカパカパカ…


サシャ「今日はいいんですけど… 皆の内容次第では、できれば明日…」

「…ウワアアアァァアアァーー!!!」

ジャン「何だ!? 何があった!?」ドカドカッ

ベルトルト「あ… トーマス達の班だ!!」

アルミン「どうしたの!? エ、あそこは…」

アニ「一昨日、エレン達の班が話した… 急坂の下に沼地がある所じゃないの?」

ジャン「誰か下に落ちたのか!?」

ナック「ヒッ! ヒイィイィイーーーーーッ!!!」

アニ「見て! 沼地の向こう、何か来る!!」

ジャン「………なッ! 獣か!?」

サシャ「!?」パカラッ…

獣「」ザザザザザザザッ



サシャ「!!」…キリキリ ピシュッ!

  …パキッ!

鷹「」バサアッ!  獣「!!」バシャバシャ

ベルトルト「ナック! 早く上へ!!」

サシャ「ジャン! 銃を! 威嚇でいいですから!!」

ジャン「分かってるッ!」パンパンッ!!

獣「グルルルルルル…」…ダッ!!

トーマス「い… 行った……」ヘナヘナ

ベルトルト「本当に… 背中にトゲがあった…」


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ナック「し、死ぬかと… もう食われて死ぬのかと思った…」ハァハァ

アルミン「多分… 人が集まったから去って行ったんだろう…」



サシャ「ジャン、すみませんがマントと荷物を… 私、ちょっと下りてみますから」バッ

ジャン「な!? 危ねぇだろうが! またヤツが来たらどうすんだ!!」

サシャ「これだけ人がいれば、もう来ないと思います」

サシャ「それより弓が… 何か、手応えがあったような気がするので…」


ジャン(サシャは昨日の雨で、まだ湿った急坂をスルスルと下りて行った…)

ジャン(無論、下は浅いが沼地のように水が溜まっていて、サシャの下半身は水浸しになった)

ジャン(サシャは用心深く、放った弓を探し… その周辺を漁っていたが、ふと何かを手に取ったようで…)

ジャン(帰りは俺の投げたロープに掴まり、上ってきた)


ジャン(ナックはすぐ横の森に狼の群れがいることに気づき、銃を取り出したのだが…)

ジャン(やはり焦っていたのか手を滑らせ、坂の途中に銃を落としてしまったらしい)

ジャン(それを取りに行こうとし、水溜りまで落ちてしまったのだそうだ)



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ライナー「―― 何だと!?」

エレン「見つけたのかッ!?」

ナック「向こうから勝手にやって来たんだよ!」

ベルトルト「でも僕らが通りがかって、サシャが弓を放ち… ジャンが銃を撃ったら、引き返して行ったんだ」

アニ「あの鳥も… サシャの鷹も加勢してくれた」

ライナー「…逃げられてしまったことは仕方ない」

ライナー「だが、実物を見たというなら… これから残されたわずかな日数でも、捕獲もしくは討伐できる可能性がある」

ジャン(この日の報告会は、ここへ来て初めて実のあるものになった)

ジャン(帰ってからアルミンが描いた、獣の絵も皆に回された)

マルコ「本当に… 棘が生えてるのか」

サシャ「それなんですが、これを…」



ジャン(…サシャが見せたのは、細い針金をより集めた物だった)

ライナー「それが何だと言うんだ?」

サシャ「弓を放った時、獣のトゲのひとつを折ったんです」

サシャ「確かに音も聞こえましたし、矢尻とも合います」

サシャ「こんなトゲを持った生き物は、自然界にはいないと思うんです」

コニー「つまり何だってんだ?」

サシャ「近くで見たワケではありませんし、はっきりしたコトは言えませんが…」オロオロ


ジャン「…獣の正体は、棘の鎧を着けた狼だとサシャは言いたいんじゃないのか?」

ジャン「息遣いや唸り声なんかは、まるっきり狼のソレだったしな」

サシャ「!!」

ベルトルト「言われてみれば…」



アルミン「……鎧を着けさせた、誰かがいるんだ」

サシャ「あの… はっきり言えない理由が、もうひとつあって…」

ジャン「何だ?」

サシャ「ただの狼にしては、大き過ぎると思うんです。 鎧を脱がせてもきっと相当の…」

ナック「そうだよ! アレは普通の大きさじゃない!!」

ライナー「フム… 中身が何であれ、明日は村人の方も当たってみるとしよう」

アルミン「ライナー、すまないけど僕は、他に少し調べたいコトがあって…」

ライナー「外に出るなら、単独行動はイカンぞ」

エレン「それならオレとミカサで…」

ジャン「イヤ… ここはヤツに一度でも遭遇した人間の方がいいだろう」

ジャン「俺がついて行く。 サシャ、いいか?」

サシャ「ハイ」



――― 獣狩り・5日目


ジャン「また曇り空か…」

エレン「ジャンの祈りも一日限りだったな」

ジャン「テメェのお空へのお願いもな」

ベルトルト「今日もまた肌寒いねぇ…」ブルッ

サシャ「アルミン、あのマント持って行った方がいいですよ。 もしかしたらまた降るかもしれませんし」

アルミン「そうだね、僕のマントはまだ繕っていないから…」

アルミン「今度からどこかへ出かける時は、裁縫道具も用意しようかなぁ」

アルミン「それじゃエレン、ミカサ、僕達行ってくるね」

エレン「気をつけろよ、アルミン」

ミカサ「本当は私達も行きたいけれど…」

ジャン「けど、そっちだって人数が必要だろ」



ジャン「…んで、ドコでナニを調べたいって? アルミン」パカパカ

アルミン「村はずれの… 最初の犠牲者の家だよ」

ジャン「そこはもう調べたんじゃねぇのか?」

アルミン「昨日までの僕らは、獣の痕跡だけを探していた…」

アルミン「それに… 他の犠牲者と違って、彼だけが家にいる時に襲われている」

ジャン「それは俺も気になった」

アルミン「きっと、最初に狙われた理由が何かある筈なんだ」

サシャ「………」

ジャン「どうしたサシャ?」

サシャ「イエ、なんだか見られているような気がして…」

ジャン「この間もそんなコト言ってたな」



サシャ「……ここですか」パカラッ

ジャン「この家の地下… 食糧庫で襲われたんだったな」

アルミン「地下へは室内からも、外からも入れるようになっている」

アルミン「彼は外から入って… その時扉は開けたまま」

サシャ「彼は片腕が不自由だったそうですから、食糧を抱えながらまた扉を開けるのは難しかったんでしょう」

ジャン「だから獣はおそらく食糧の匂いに釣られたんだろう、と資料には書いてあったな」

アルミン「僕らは住居の方から行こう」

  ギイィィーーーー

サシャ「…やっぱり荒れてますねぇ」

ジャン「今は住む人間もいねぇからな」

サシャ「…おや? これは埃を被っていますが、肖像画でしょうか」

アルミン「……調査兵団の制服を着てる」



ジャン「俺、一応下も見てくるわ」

サシャ「扉はちゃんと閉めてくださいよ」

ジャン「中から行けば大丈夫だろ」トントントン…

アルミン「他にも何か…」

サシャ「机の中は空っぽですねぇ」ガタガタ

アルミン「きっと憲兵が持って行ってしまったんだろう」

サシャ「あ、アルミン! 机の裏、ノートが貼り付けてあります!」ビビッ

アルミン「見せて!」

アルミン「これは…… 日記?」パラパラ

アルミン「………」

サシャ「アルミン、イスに腰掛けてじっくり読むのは結構ですが、少し震えていますよ?」

サシャ「室内とはいっても、ここは荒れて隙間風が入ってきますからね。 マント羽織ってください」スッ

アルミン「あ、アリガト …これ結構あったかいんだよね」



アルミン「この日記は……」

サシャ「何か手掛かりが? ………ン?」

アルミン「ホラ、見てよココ」ガタッ スタスタ

サシャ「!!??」

サシャ「アルミン窓!! ――― 伏せて!!!!」

  ――― ガシャァァーーーンッ!!!

獣「ガアアァアァッッ!!!」

アルミン「――うわあぁぁあぁぁッッ!!!」ガタタッ!

サシャ「ア、アルミン… ゆっくり… ゆっくり後ろに下がって… 」キリキリ

アルミン「う… ぁ、うぅ…」

獣「グルルルルル…」ジリッ ジリッ…

アルミン「」ガクガクガクガク

サシャ「―― こっちですよ!!!」


ジャン「何だ! 何があッ ――― !?」



--------------


ジャン(……アッという間だった)

ジャン(地下にいた俺は… 上の階の異常な物音で、上への階段を駆け上がった)

ジャン(…銃を両手に構えながら)

ジャン(そして一階で、俺が見たもの…)

ジャン(サシャの声と共に… アルミンから、今まさにサシャに狙いを移した獣…)

ジャン(サシャに飛びかかろうとする獣…)

ジャン(…俺が部屋に戻ったその時、サシャは木箱の上に立ち)

ジャン(弓を構え、獣に向かって矢を放った…)

ジャン(と… 同時に俺は、両手に構えた2つの銃で、その弾丸を獣の胴体に打ち込んだ…)


ジャン(『ギャンッ!』と一声発した獣は… 侵入して来たであろう窓から… すごい勢いでまた出て行った…)



ジャン「…アルミン! 無事か!?」タタッ

アルミン「だ… 大丈夫…」ハァハァ…

アルミン「…大丈夫だよ」

サシャ「スミマセン、また逃げられてしまって… でも…」

ジャン「あぁ… ヤツはお前の矢も、俺の弾も食らってる」


ジャン「……そうだ!」

ジャン「アルミン… アルミン、地図を貸せ!」

ジャン「俺、ずっと引っかかってたコトがあったんだ!」


ジャン「これまで獣の現れた場所は一見、てんでバラバラに見えるが…」

ジャン「この場所とココ… それからココとこっちを線で引いて…」スッスッ

ジャン「…こうしていくと、必ずしも一致はしないが、いくつかの線が重なる箇所がある」

アルミン「!!」



ジャン「……ここには何があった?」

サシャ「石碑が… あの、異端者が焼き殺されたという…」

ジャン「そうだ、そしてその傍には廃屋が… 今は使われていないという猟場があった」

アルミン「…追って!」

アルミン「今ならまだ誰にも知られてない…」

アルミン「2人はすぐ獣を追って欲しい」

サシャ「アルミンは!?」

アルミン「僕は… 教会に行く」

アルミン「僕らは調査以外の時は、ずっと宿舎にいたけれど…」

アルミン「あそこには、きっと何かが… 誰かがいる筈なんだ」

ジャン「アルミン1人でか!?」

アルミン「…獣が傷を負った今なら、僕ひとりでも何もないよ」



  …パカラッ パカラッ パカラッ


ジャン「やっぱり銃が効かないワケじゃなかったんだな」

サシャ「その銃は… 巨人にこそ役に立ちませんが、普通の人間の頭を飛ばすコトくらいは可能な代物でしょう?」

サシャ「私の矢は… 鎧の隙間を縫って、右目を貫きました…」

サシャ「でも私に向けられたアレは… 殺意だけじゃなかった」パカッ パカッ

ジャン「??」

サシャ「………」パカパカ


ジャン(この時、横目で見たサシャの表情… 眼の色は… 何か形容しがたいものがあった)

サシャ「早く… 早く行きましょう」



サシャ「もう苦しまずにすむように……」



――― 廃屋(猟場)


サシャ「…行きましょう」

ジャン(そしてサシャは弓ではなく、今度は刃を抜いて… ひたひたと廃屋に入った)

ジャン「誰も… 何もいねぇぞ」

サシャ「……います」

サシャ「何か聞こえる… そして血の匂いがします」

サシャ「この間ここに来た時には血の匂いはなかったし、雨音で分からなかったんですが…」

ジャン「………?」キョロキョロ

サシャ「この… 奥…」

ジャン「隠し扉か!!」バンッ!

「ヒイィイィッ!?」

ジャン「アンタは ―― !?」



ジャン(隠し扉の向こうには、もうひとつ小さな小部屋があり…)

ジャン(そこには初日の晩に宿舎へやって来た、村の有力者の男と…)

ジャン(右目を射られ、瀕死の状態で横たわる… 巨大な生き物がいた)

ジャン(俺は男を銃で脅し縛り上げ… サシャは獣の傍らに膝をついた)

サシャ「……ジャン、私の銃を」

ジャン「俺が…」

サシャ「いいえ私が」

ジャン(サシャは凛と言い放ち… 俺は銃を手渡した)

ジャン(サシャは鎧の隙間からこちらを見る獣の左目… 瞼を優しく撫で… 口元に銃を持っていった)

  ―― ドンッ!!

サシャ「………」グッ!

ジャン「サシャ!? 何を…」

ジャン(サシャは右目に刺さった矢を引き抜いたのだ)

サシャ「体は… 引き渡さないといけないのでしょう? それならせめて…」



ジャン(血と脳漿の滴る矢を廃屋の裏… 森の木々の根元に埋めている時、一匹の狼がこちらをじっと見ていた)

ジャン(……俺達がまた小屋に戻るまで、ずっと)


ジャン(縛り上げた男は『神が』とか『使命が』などと繰り返すばかりで会話にならず…)

ジャン(面倒なので猿轡をかませ、俺のマントを被せてフードで顔を覆い、馬に乗せた)

ジャン(正直、知らないおっさんに俺の物を着けさせるのに抵抗はあったが仕方ない)

ジャン(宿舎まで、コイツをバレないよう連れて行かなければならないからだ)


ジャン「……行こう。 皆が待ってる」

サシャ「そうですね」



――― 宿舎


ライナー「戻ったか、ジャン! アルミンから話は聞いた」

ベルトルト「その人は!?」

ジャン(俺は手短に経緯を説明し、男の猿轡を外してやった)

ジャン「…アルミンは?」

ライナー「一度戻った後、今度はミカサを連れまた教会へ行った」

男「教会だと!? 何をする気だ!」

ジャン「ようやくまともに喋ったな」

ジャン「…知ってるコトがあんなら話した方がいいと思うぞ?」

男「この不届き者めらが! 貴様らに話すことなど何もない!!」

ジャン「」イラッ

ライナー「まぁ待て、ジャン。 もうじきアルミンも帰ってくるだろう…」



ジャン(…程なく戻ってきたアルミンが語り始めた)


アルミン「ジャン達と別れた後、僕は1人教会に向かった…」

アルミン「教会には、村長がいた」

アルミン「僕は不審そうな目を向けられたけれど… 『3つの女神の健在と、我々の安泰を祈らせて下さい』と言ったら、態度を変え招き入れてくれたよ」


-----------------------


村長「あなた方はまだ訓練兵でしたね。 …その後はどちらへ入られるおつもりですか?」

アルミン「現在の僕の成績では、駐屯兵団でしょう」

アルミン「ですが当然憲兵を目指し、日々努力を怠ってはいないつもりです」

村長「そうでしょう、そうでしょう」ニコニコ

アルミン「ハイ。 王の元で民を統制し秩序を守る憲兵団… これほど名誉なことはありませんから」



村長「…調査兵団については、どう思われますか?」

アルミン「調査兵団…」

アルミン「壁外の巨人領域に挑むのは、神聖なる壁を疑っていることになるでしょう」

村長「あなたはお若いのに、よくご存知だ」ニッコリ

村長「そう… 神の手から生まれし3つの壁は、我々の信仰心を捧げることで、より強固になります」

村長「神を信じる無垢な心こそが、唯一巨人を退けられる力なのですからね」

アルミン「ところで、この村には… これほど立派な教会があるのに、祈りを捧げる方はあまりいらっしゃらないのですか?」

村長「立派だなどとは、お恥ずかしい…」

村長「この村にも信心深い教徒は沢山おりますよ。 時折集まっては、皆で祈っています」

村長「ですがこんな小さな村からも訓練所に入り、中にはあろうことか調査兵を目指す輩もいるのは事実です」

村長「不敬であるとしか言えませんが、神の罰は必ず下るのです。 ……必ず」

アルミン「………」



村長「…長話をしてしまいました。 あなたはどうぞ、お気の済むまで存分に祈りを捧げて下さい」

アルミン「ご親切に、ありがとうございます」

アルミン「実は僕の友人で… これも熱心な信徒なのですが、後で連れてきてやってもよろしいでしょうか?」

村長「勿論でございますとも」

村長「どんなお方ですか?」

アルミン「女性なのですが、それは優秀で… おそらくは首席での卒業となるでしょう」

アルミン「当然憲兵を目指しています」

村長「ほほぅ、女性で… それは頼もしいことですねぇ」


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アルミン「そして僕は宿舎に戻り、ミカサと2人でまた教会へ行ったんだ」

ジャン「…よくそんな言葉が、つるつる出てくるモンだ…」

アルミン「それは場合によるさ」



コニー「何でエレンじゃなく、ミカサを連れて行ったんだ?」

アルミン「エレンは初日の晩に、外の世界について話してしまったし…」

アルミン「それにエレンには、別のコトをお願いしたかったからね」

エレン「それならマルコと一緒に行ってきた」

マルコ「例の獣に襲われて生き残った人に、目立たぬよう教会を見張ってもらえばいいんだよね?」

アルミン「ウン、人が集まるようであれば、すぐ知らせをくれるようにと…」

アルミン「もちろん僕らでも見張るけど… あまり人目につきたくないからね」

エレン「ちゃんと頼んできたぞ」

アルミン「ありがとう、2人とも。 それで、コレなんだけど……」

ジャン「教会の間取りか?」

アルミン「簡単にだけどね」

アルミン「上の窓をミカサに頼んで開けてもらった。 祭壇の奥の部屋は、残念ながら鍵がかかって入れなかったけど…」

ミカサ「扉を破ってしまっても良かったのに…」

アルミン「今は、まだダメだと思ったんだよ」



ジャン(…男を玄関口から一番遠い部屋に監禁し、そこには見張りを置いた)

ジャン(ミカサが開けた窓… その外側)

ジャン(そこには小さな小屋があり、そこを上って窓から進入することが可能であるとのことだった)


アルミン「教会で何かあった時なんだけど…」

アルミン「サシャにはその窓から、この場所… ここにカーテンが掛けてあるんだけど、そこに向けて火矢を打ち込んで欲しいんだ」

アルミン「そしてその後、窓から… 外へ追い出す形で、何人かに突入して欲しい」

アルミン「できれば小回りのきく… コニーとか、アニとか」

コニー「オレはいいぜ」

アニ「…私の技は、逃げ出す相手には向かないよ」

サシャ「矢を放った後、私もそこから行きましょう」

アルミン「ゴメン… そうしてくれると、とても有難い」

ジャン「なら俺も行く。 外に追い出す形にすりゃいいんだな?」



ジャン(外には大人数になり過ぎないよう、格闘術に優れた者が待ち構える…)

ジャン(ミカサやライナー、エレン… アニ、マルコやベルトルトが、教会から出て来たヤツらを捕らえる)

ジャン(その他の者は逃げ出す者がいないようにと、周辺で待機…)


ジャン(サシャ… あの猟場を出てから、まったく口をきかなかったけれど…)

ジャン(サシャは俺達の中で誰よりも… あの、哀れな獣に近い精神を持っているんじゃないだろうか)

ジャン(殺意以外のものを感じ取り… 瞼を撫で、一番楽な方法で逝かせてやった…)


ジャン(前の狩りでも、長く苦しむことがないようにと鹿の心臓を射止め…)

ジャン(そして切り離した頭を埋めた…)


ジャン(…狼は、何故俺達を見ていたんだろう)

ジャン(何故、サシャを見つめていたんだろう…)



ジャン(動きがあったのは、深夜になってからだった…)

ジャン(教会を見張っていた訓練兵と、村人から知らせが届いた)


ライナー「…行くぞ。 気付かれないよう、そっとだ」


ジャン(宿舎の見張りを残し、俺達は外に出る…)

ジャン(…そして無事、配置についた)

ジャン(火矢が目立たぬよう、サシャは一歩下がって構える…)

ジャン(中には20人以上の人間がいるようだ)

ジャン(窓が開いているため、声が聞こえてくる。 …村長達の声が)


「係りの者はどうしたのだ!?」

村長「…アレは多分追われていることに気付き、逃げたのだろう」

村長「ともあれ……」



村長「――― 獣は死んだ!!」

「やはり隠しておくべきだったんだ」

「しかし聞いたろう、あのガキどもの不遜極まりない言葉を!」

村長「確かに獣は死んだ… だが! 何度でも蘇る!!」

村長「そして神をないがしろにする者どもに、然るべき鉄槌を下すであろう!!!」

一同「オオォォーー!」


ジャン(ふざけんな… ふざけんじゃねぇぞ! サシャがどんな気持ちで… サシャ?)

サシャ「……ッ」ボソ  ジャン「!!」

   キリキリ… ヒュンッ!
   タンッ ボワッ!!

「なッ! 何事だ!?」
「火が… 火がまわるぞ!!」

ジャン「蘇らせるワケねぇだろ!!」

村長「こ、小僧!!」



ジャン「こんな若造に出し抜かれるなんざ、モウロクしてんじゃねぇのか? ジイさんよ!!」

ジャン「行くぞ! コニー、サシャ!!」タンッ

コニー「おうよ!!」ヒョイッ   サシャ「」ターン!

「ヒイィイィーーー!!」ダダダッ

村長「この… 無礼者めが! やれ! 殺してしまえ!!!」

ジャン(向かって来る幾人かの屈強な奴らと、逃げ出す奴ら… 頼むぞライナー、1人も逃がすなよ!!)

コニー「来やがれってんだ! 日頃の訓練の成果を見せてやる!!」タタッ

ジャン「サシャ、来るぞ!!」

サシャ「ハイッ!!」ヒュッ



ジャン(…対人格闘なんて点数の低い、巨人相手にゃ何の役にも立たねぇ代物だと思っていたが…)

ジャン(そう馬鹿にしたモンでもないんだな。 相手が素人だからだろうが… 動きが分かる)

ジャン(サシャとコニーは…)



ジャン(…それは、目を見張るような見事な動きだった)

ジャン(いつも遊んでばかりだと思ってた2人…)

ジャン(以前訓練で見た時と同じ… 擦り抜け、躱し、流れるように攻撃に転じる)

ジャン(小柄なコニーと、男に比べ非力なサシャ…)

ジャン(自分達の弱点をよく理解し、決して相手に掴ませない)

ジャン(サシャは腕力に頼らぬ足技が多い)

ジャン(それはアニ程の鋭さはなかったが… 身体の柔らかさと相まって、しなやかで軌道が読みづらい)

ジャン(まるで踊ってるみたいだ…)



サシャ「…そろそろいいでしょう! そこら辺に倒れている人を外へ運び出してください!」

コニー「ああ、火の勢いが強くなってきた。 手ェ貸せ、ジャン!!」



ライナー「…出てきた者はこれで全員か」

ライナー「誰も逃がしてはいないな」

エレン「他愛ないモンだったなぁ… オレも中に入れば良かった」


コニー「ライナー! 中にまだ人が… ブッ倒れてる奴が何人かいる!」ズルズル

ジャン「火が回り切るまでに運んでくれ!」ズルズル

ライナー「よし! 入るぞベルトルト、マルコ、エレン!」

ライナー「ミカサ達は運び出した奴らを縛っておいてくれ!」

ミカサ「分かった」


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ベルトルト「間に合った…」ハァハァ

コニー「…オイ、村長がいねぇぞ?」



ライナー「何だと!? 俺達は誰も逃がしてはいないぞ!!」

アニ「出てきた人間は全員捕まえたよ」

ジャン「………サシャは?」

ジャン「サシャは… 先に外に出たんじゃねぇのか!?」

ミカサ「サシャは見ていない…」

ジャン「アイツ… ひょっとしてまだ中にいんのか!!??」ダッ

コニー「お、落ち着け、ジャン!!」ガバッ

ジャン「だってサシャが!!!」

サシャ「私が何か?」ヒョコッ

ジャン「サ、サシャ!! お前… 何やってたんだよ! いつからいた!?」

サシャ「い… 今さっきから、皆さんの後ろにいましたけど…」

アニ「サシャが出たのは見てない」



アルミン「一体ドコから出てきたの?」

サシャ「あの、私… アルミンの言っていた奥の小部屋に… ちょうど空いていたので、何かあるのかと…」オロオロ

サシャ「それで机があったので、引き出しの中を適当に漁っていたら… 火の勢いが強くなって」

サシャ「そしたら床のズレている箇所の下に階段があるのを見つけて、そこを下りた道を辿ったら、この裏へ出てきたんです」

アルミン「…村長はそこから逃げたんだ!」

ジャン「お前なぁ! 心臓止まるかと思ったじゃねぇかよ、まったく…」

サシャ「すみません…」シュン

ジャン「無事だったならいいけどよ。 …だが、まずは村長だ」

ライナー「よし、それなら… アルミンは宿舎に戻って、今回の報告書を作成してくれ」

ライナー「もうすぐ夜明けだ。 夜が明けたら、近くの憲兵団支部に使いを出す」

ライナー「使いは… ジャンとマルコでいいか?」

アルミン「イヤ… ジャンは、ジャンとサシャには残っていて欲しい」



アルミン「獣の最期を見たのはその2人だから…」

ライナー「そうだったな… では、ジャンとサシャはアルミンと一緒に報告書の作成」

ライナー「憲兵団へはマルコとベルトルトで行ってくれ」

ライナー「…憲兵へ知らせに行く2人と、報告書の3人… それから何名かは、ここの村人を宿舎へ連れて行ってくれ」

ライナー「きちんと事の顛末を聞き出せよ? でないと報告書が作れないからな」

ライナー「その他はすべて、村長の捜索に当たる」

ジャン「ライナー!」

ジャン「その… ライナー、決して逃がすなよ」

ライナー「…当たり前だ」

ライナー「では… 行動開始!」



――― 宿舎


アルミン「何人かは話してくれたけど…」

ジャン「宗教にどっぷりハマッた奴ってのは、意外に頑固だな」

アルミン「僕もここまでとは…」

ジャン「そういやサシャ… 奥の部屋で何か漁ったって言ってたが…」

サシャ「ああ、コレですね。 割といっぱいあったので、ワケも分からず持ってきてしまいましたが…」バサバサ

アルミン「これは…」

ジャン「こりゃあ、中央のウォール教幹部との間の手紙じゃねぇか!」

アルミン「村長の日記もある!」

アルミン「すごい… すごいよサシャ!」

ジャン「お手柄だな!」

サシャ「…あの」

サシャ「あの… できればそれは… 証拠として憲兵に渡して欲しくないんです」



アルミン「何故?」

サシャ「彼らに渡しても、役立てて貰えないような気がするんです。 何となくですが…」

アルミン「ウン… それはそうかもしれないね…」

ジャン「そんじゃ、渡さなくてもいいだろ」

サシャ「エ!? ですが私達が持っていても…」

ジャン「ちゃんと証拠の品として渡す」

ジャン「…だが、わざわざ憲兵にくれてやる必要はねぇ」

ジャン「アイツらの思想と、最も相反する精神から設立された組織…」

ジャン「―― 調査兵団に持って行けばいい」

アルミン「……」コクッ

ジャン「いいか? サシャ」

サシャ「………」コクリ



ジャン「じゃあ報告書は2つ必要だ。 …アルミン、俺も書く」

ジャン「それと… 上に集めてる村の奴らにも、もう一度ちゃんと話を聞きに行こう」

ジャン「…多少、手荒に扱ってもな」ニヤッ



ジャン(捕まえた教徒は… アルミンが丁寧に話を聞けば、それなりに質問に答えてくれた(俺は後ろで銃を持ってた))

ジャン(首謀者はやはり村長… だがしかし、この村はあの石碑にあったように、外の世界を目指す者は異端者だという認識が強く)

ジャン(最初の犠牲者は、調査兵団から戻ってきた元兵士…)

ジャン(壁外で巨人と戦い、片腕を損傷して退団し… 故郷へ戻ってきた者だった)

ジャン(その他の犠牲者は、片腕の彼に親切にした者やその家族…)

ジャン(…もしくは身内が、訓練兵から調査兵団に入った者達だった)



ジャン(―― 翌朝、マルコとベルトルトが憲兵団支部に向けて出立した後、村長は見つかった)

ジャン(村長は、村の中心部から程近い、沼のそばで倒れていたらしい)

ジャン(だがソレは… かつて村長であった者、と言うべきで…)

ジャン(捜索の人間が発見した時には、おそらくは狼の群れに体を喰い千切られ、事切れていた…)



ジャン(…俺は思い出す)

ジャン(昨夜… 教会への進入直前、俺はサシャを振り返った)

ジャン(それは呟きにも満たない… ごく小さな声だったが、確かに聞こえた)

ジャン(サシャはほんの一言、『贖え』と言ったのだ)

ジャン(あの時の戦慄と昂揚… 教会の窓から照らされる明かりと火矢の炎を受けて… あの表情、あの眼…)

ジャン(サシャ自身がまるで炎の化身のようで…)

ジャン(あれもまたサシャの一面だと… そして俺は一瞬ではあったけれど… これほど美しい生き物は見たことがないと、思わず見惚れてしまったんだ)



ジャン(…狼は基本的に人を襲わない)

ジャン(だが… それが復讐であるならどうだろう?)

ジャン(自分達の仲間を攫われ、人間に都合の良いよう調教された仲間の為なら…)

ジャン(…村長はサシャの言ったように、その無残な死をもって罪を贖ったのだ)



ジャン(報告書が仕上がったのは、憲兵団がやって来る直前… 昼前だった)

ジャン(アルミンは村人達の引渡しに立ち会うため宿舎に残り…)

ジャン(俺とサシャは、例の廃屋へと憲兵の馬車を案内した)

ジャン(獣はぞんざいな扱いで馬車に移され… 俺は途中、サシャの目を覆ってやりたくなった)

ジャン(憲兵団が去って行ったのは夕方…)



ジャン「眠い…」

ライナー「今夜はゆっくり眠れるぞ、ジャン」

ライナー「もう… 全部、終わったんだからな」



――― 7日目・朝


エレン「お、イイ天気だ」

コニー「今日訓練所に戻ったら、明日は休みか」

ベルトルト「期限内になんとか解決できて良かったね」

アニ「アルミン、あのマント返したの?」

アルミン「さっき宿舎に挨拶に来てくれた人に渡したけど… 多分、持ち主はもう現れないんじゃないかな」


ジャン(…昨日報告書を書きながら、アルミンと話した)

ジャン(おそらくあのマントは、獣の世話をする者が着ていたのだろう)

ジャン(犠牲者の家を調べていた時、アルミンはマントを羽織っていた)

ジャン(獣が目の前のアルミンを襲わず、サシャに向かった理由…)

ジャン(アルミンの推測だが… あのマントや世話係の衣類には、特殊な薬剤か香料がつけられていたのではないかとのことだった)

ジャン(人間では(サシャでも無理だった)感じないほど僅かな匂いでも、鋭敏な嗅覚を持つ狼なら嗅ぎ取れたのだろうと…)



ミカサ「帰ったら繕うから、アルミンのマントを貸して」

エレン「オレの着てけよ、アルミン」

アルミン「今日は天気も良いし大丈夫だよ。 ありがとうエレン」


ライナー「―― さぁ、帰るか!」


クリスタ「最初にここに来た時は、薄暗くて正直あまり良い印象ではなかったんだけど…」パカパカ

サシャ「晴れていれば何てコトもない、普通の森ですよ」

ユミル「鬱蒼としてるのは変わらんけどな」


ジャン「サシャ、明日…」

サシャ「ハイ、調査兵団本部へ行くんですよね」

ジャン「ああ… それまで手紙と日記、俺が預かってていいか?」

サシャ「どうぞどうぞ」



ジャン(……こうして俺達はひとつの仕事を終わらせ、訓練所へと戻った)



――― 休日


ジャン(……昨夜、アルミンが熱を出した)

ジャン(アルミンは疲れが出ただけだと言っていたが…)

ジャン(今朝になっても熱は下がらず… エレンやミカサは、無理にでも自分のマントを着させれば良かったと言っていた)

ジャン(あまり間を空けたくもないので、調査兵団へは俺とサシャの2人で行くことになった)


ジャン(調査兵団本部… 緊張する)

ジャン(休日ではあるが、もちろん訓練着を着ないワケにはいかない)


ジャン(サシャはといえば…)

ジャン(俺の隣でピヨピヨと、口笛を吹きながら馬を走らせていて…)

ジャン(……なんだか緊張している自分が馬鹿らしくなってきた)



ジャン(…あいにく団長他幹部は不在で、受付の人間に事情を説明し、報告書一式を置いて帰ろうかと思ったが…)

ジャン(もうすぐ帰るので待つようにと、室内へ通された)

…ガチャ

ペトラ「…ハイ、お茶でもどうぞ」

ジャン「ス、スミマセン、お気遣いなく…」

ペトラ「……アレ?」

ペトラ「アァッ! あの、夜会の時の2人じゃない!! 訓練着だから分からなかったけど!」

サシャ「//!!」

ペトラ「キャー! どう? その後仲良くしてる??」キャッキャ

ジャン「ハ… まぁ、その…//(やっぱり顔覚えられてた…)」

ペトラ「あの時はスゴかったねぇ! ここでもしばらく話題になってたよ!!」

ジャン「……//」

オルオ「うるせぇぞペトラ! 何騒いでん……」ガチャッ



オルオ「…ア! あの色ガキじゃねぇか!!」

オルオ「おい、テメェ… あん時 俺にぶつかったよな!?」

ジャン「あ… スミマセン! その節は大変失礼を…」

オルオ「…チッ、ガキのクセに一丁前に色気づきやがって… いいか? 彼女持ちだからって調子に乗るんじゃねぇぞ訓練兵!!」

ペトラ「ちょっとオルオ! なんて絡み方してんの!!」

オルオ「こういうのは最初が肝心だろうが」

サシャ「…うーむ」

サシャ「調査兵団のお茶は美味しいですねぇ…」ズズズ

ペトラ「プッ… アハハハ!」

ペトラ「マイペースなコだね。 …ね、名前何ていうの?」

サシャ「ハッ! サシャ・ブラウスであります!!」バッ

オルオ「テメェの名前も一応聞いといてやる」

ジャン「第104期訓練兵! ジャン・キルシュタインです!」バッ



…ガチャッ


ハンジ「ゴメンゴメン! 待たせちゃったね …ん、ペトラとオルオ?」

ペトラ「あぁ私達、お茶を出していてですね… も、もう行きますから!」アセアセ

オルオ「し、失礼しますッ!」バタバタ

----------------

エルヴィン「さて… 待たせてしまって、すまなかった」

ジャン「イエ! 突然お伺いしたのは、こちらですから」

エルヴィン「例の報告書だが… ここに来るまでに、ざっと読ませて貰った」

エルヴィン「とても分かりやすく書けている」

エルヴィン「実を言うと… 件の事件については、こちらでも秘密裏に調べさせていた」

エルヴィン「ウォール教との関係性についても、気付いてはいたのだが…」

エルヴィン「…管轄が憲兵である以上、表立っては行動できないでいた」

エルヴィン「今回、君達訓練兵が解決できたことを、とても喜ばしく思っている」



リヴァイ「…ひとつ質問がある」

リヴァイ「報告書は同じ物を作れるからいいとして… 何故お前らは何よりも証拠になるであろう、この手紙や日記を憲兵に出さなかった?」

リヴァイ「訓練兵とはいえ… 兵士の端くれなら、命令系統くらい理解できているはずだろう」

ジャン「それは…」

サシャ「兵士としてではなく、ひとりの人間として、こちらに提出すべきだと判断しました!」ビシッ

ハンジ「ハハ、物怖じしないコだねぇ」

ジャン「あ、あの! …最初の犠牲者はもちろん、すべての被害が調査兵団に関係しているものであったので、こちらにお持ちしました!!」

リヴァイ「………」

ハンジ「…ウン。 まさにその関係で、我々も調べていたんだけど…」

ハンジ「まぁ彼らもね、昔はそこまで凝り固まった宗教観は持っていなかったハズなんだ。 …土地柄は多少あったにしても」

エルヴィン「だが… 4年前の襲撃から、世論が変わってきた」

ハンジ「侵略された土地を奪い返すため、外へ外へという意識が高まってきてね」



エルヴィン「それ故、彼らは危惧したのだろう」

エルヴィン「…彼らの目的は、神の教えを狂信的に守り… 広めることにあった」

ハンジ「女神の『十の災い』のひとつを模倣しようとしたことも…」


エルヴィン「リヴァイは先程ああ言ったが… 君達がこれを調査兵団に持ってきてくれたのは、我々にとって とても有難いことだ」

リヴァイ「フン… どうせ憲兵に渡したところで、すぐ処理済の棚に入れられちまうのは目に見えるしな」

ハンジ「今すぐではなくても… 私達には、有用なカードがいくらあっても嬉しいから」

エルヴィン「…ご苦労だった」


ジャン「ハ! では失礼を… エ!?」ビクッ   ミケ「……」スンスンスン …フッ

ハンジ「…ああゴメン、彼も一応分隊長なんだけど… ちょっと人の匂いを嗅ぐクセがあって… って、エ?」

サシャ「」スンスンスンスン…  ミケ「!?」

サシャ「」ニヤリ   ミケ「……フッ」



ジャン(……これほど長時間になるとは思わなかったが、調査兵団への訪問は終わった)

ジャン(分隊長の一人と、サシャとの謎の戦いも…)

サシャ「あの人であれば… マントの匂いも嗅ぎ分けられたかもしれません…」

ジャン(帰り道、馬を走らせながらサシャが言った)

ジャン(サシャは嗅覚の戦いに負けたのだろうか…)



ジャン(預かった手紙と日記… 昨夜全て読んでみた)

ジャン(サシャが見なかったのは、幸いとしか言う他ない…)


ジャン(4年前… ウォール・マリアへの襲撃の後… 村長は森で5匹の狼の仔を攫ってきた)

ジャン(その後、中央のウォール教幹部とのやり取りが始まり…)



ジャン(恐ろしいことに… 中央では、 成長剤… 強壮剤とでもいうのだろうか)

ジャン(生物を以上成長させ、且つ、より頑丈に… しかも洗脳までさせるような薬物が開発されているという)

ジャン(村長はそれを狼の子達に投与した)

ジャン(…無論、小さな狼にそんな薬が合うはずもなく、5匹のうち4匹が死に…)

ジャン(あれは… あの獣は、最後に残った1匹だったんだ)

ジャン(そして仄暗い情熱と忍耐… そして想像を絶するような残酷さをもって調教した)

ジャン(自分達の意のままに動く、殺人兵器として…)



ジャン(…俺は夢を見る)

ジャン(春… 鬱蒼とした森に、春がやって来る)

ジャン(今は誰も訪れることのなくなった猟場の裏… 木々の根元に、小さな花が咲く)

ジャン(そして生まれて間もない狼の子供達が、元気に駆け回る)

ジャン(体はなくても… そこには、ある狼が眠る)

ジャン(―― サシャが作ったあの墓には、ある狼の魂が静かに眠っている)

おしまい

デュラハンかバンシーかユニコーンか、何か変わった話を書いてみたかったんだけど
結局あまりにも幻獣過ぎるのはどうかと思い、ジェヴォーダンの獣を取り扱ってみた
我ながら雑で拙い出来だとは思ってます

また下に続くかもしれません。 今度はまた話を訓練所に戻して

小ネタ『サシャと遊ぼう』

――― 格闘訓練・休憩時間

コニー「サシャ、遊ぼうぜ」

サシャ「いいですねぇ、何しますか?」

コニー「ん~。 あそこの木まで、逆立ちで歩って早く着いた方の勝ち」

サシャ「よーし! 頑張りますよ~!」



マルコ「…ジャンはさ、ヤキモチとか焼く方なのかい?」タイイクズワリ

ジャン「俺か? ウーン、多分…」アグラ

ジャン「独占欲は強いかもしれねぇなぁ… まだよく分かんないけど」

マルコ「ああいうの見て、何か思ったりする?」指サシ

コニサシャ「…ヨーイ、ドン!」

ジャン「コニーとサシャ?」

ジャン「ありゃ微笑ましいっていうか… 仔犬がじゃれ合ってるみたいじゃん?」


ジャン「それに俺なんかより、もっと長い付き合いだしよ」

ジャン「…あ、サシャが負けた」

ジャン「つーか… 休憩時間に何でまた体力使うんだ?」

マルコ「ハハハ、あの2人らしいね」


サシャ「うわあぁーん!コニー、もうひと勝負! 今度はコレで!!」

コニー「ブリッジかよ!? それでどうすんだっての!」

サシャ「もちろん歩くんですよ、ホラ」テコテコ

コニー「スゲェ! よく進めるな。 オレもやってみよっと!」グイン

コニー「お… エ、アレ? なんか手足がうまく動かねーぞ?」

サシャ「フフフ、これなら勝てそうです!」

コニー「ちょっと待て、練習すっから」ヨタヨタ


ジャン「今度は何を始めたんだ?」

マルコ「2人を見てると飽きないなぁ」フフフ


コニー「オイ! ジャン、マルコ! 笑ってねーでお前らもやってみろ!」

コニー「これ、意外と難しいぞ!」ヨタヨタ

ジャン「誰が休憩時間に…」

サシャ「ふはははははは」カサカサカサカサカサカサ

ジャン「…うっわ! お前気持ち悪ィぞ、その動き」

サシャ「ジャンなら多分できるんじゃないですか?」

ジャン「………やる」

ジャン「やってやるってんだチクショウ! おいマルコ、お前もだ!」バッ

マルコ「エ!? 僕まで?」ナゼニ?



コニー「行くぞ! せーのっ」テコテコテコ

ジャン「感、覚が… よく分からん…」ヨタヨタ

マルコ「ぼ… 僕は、なおさら… だよ」ググッ


テコテコ カサカサ ヨタヨタ ガクガク…

ユミル「お… まえら… 何を?」

クリスタ「なんで休憩時間にそんな…」

コニー「ふ、2人も… やってみろってんだ。 できるモンならな」

サシャ「さぁ! クリスタもやってみてください!」カサカサ

クリスタ「エ、エェ~」

テコテコ カサカサ ヨタヨタ ガクガク モゾモゾ

サシャ「おおクリスタ! 上手じゃないですか!」

クリスタ「エヘヘ//」トテトテ



ライナー「あそこは… 一体何をしているんだ?」

ベルトルト「じゅ、柔軟性でも競ってるのかな…?」

ライナー「よしベルトルト! 俺達もやるぞ!」

ベルトルト「なッ!?」

ライナー「これも鍛錬だ!! お… アニ、いい所に!」


ライナー「お前はいつもサボってばかりなんだから、たまには参加しろ!」

アニ「休憩時間にやるコトじゃないでしょ」

ライナー「いいから!」


アルミン「何が… 起こってるんだ?」

エレン「皆して、モゾモゾカサカサと…」

ミカサ「こうしてはいられない。 これが新しい訓練法であるのなら、私達もやらない訳にはいかない」

エレン「そ… そうだよな」

テコテコ モゾモゾ カサカサ ヨタヨタ グラグラ テクテク…


キース「貴様らは… 何をしておるのだ? 休憩時間を過ぎているぞ」

一同「「…………」」



ジャン「…結局、訓練時間を1時間増やされました」   一旦終わり



残った104期の中で一番最初に逝ってしまいそうなサシャたんですが、来月も生き残るといいね

とりあえず書き出してみるけど、どんな流れになっていくか全く予想つかない



ジャン(――― 訓練所に戻れば、またいつもの生活が始まる)


ジャン(本来、訓練兵がやるべきではないような仕事を終え訓練所に戻った俺達は、労いの言葉を教官からかけられた)

ジャン(おそらく教官も俺達が無事、事件を解決できるとは思っていなかっただろう…)

ジャン(軽い驚嘆の表情を浮かべていた)


ジャン(…翌日の休みには、サシャと2人で調査兵団本部へ行った)

ジャン(エルヴィン団長は落ち着いた物腰でありながら、他を圧倒するような存在感で…)

ジャン(分隊長の一人(多分女性)からは明敏な印象が感じ取れた)

ジャン(もう一人の分隊長はとても大きくて… 匂いを嗅がれ、鼻で笑われた)

ジャン(正直よく分からない人だった)

ジャン(リヴァイ兵長…)

ジャン(…何となくではあるが、一目見て思った)

ジャン(この人は『許さない人』なんだと)

ジャン(上手く表現できないが… これが調査兵団幹部を間近で見た時の、俺の印象だった)



――― ある日の夕食後・ライナー達の部屋


  …コンコン


ライナー「勝手に入っていいぞ」

フランツ「…お邪魔するよ」ガチャッ

ライナー「フランツか、珍しいな」

ベルトルト「どうしたの?」

フランツ「ちょっとジャンを探してるんだけど… ああ、いたいた。 ていうかマルコもアルミンもいたんだ」

ジャン「俺? …何かあったっけ?」

フランツ「そうじゃないんだけど、コレを渡したくてさ」ドサッ

ジャン「本…?」



ライナー「どれどれ? 『上手なキス・下手なキス』、『セックステクを磨こう』…」

マルコ「『体位48手』」

アルミン「…『彼女をイカせるテクニック10選』」

ジャン「ハアァ!? これをどうしろってんだよ」

フランツ「イヤ、ジャンもさ、彼女持ちになったワケだし… 今すぐでなくても、こういう勉強はしといた方がいいと思うんだ」

フランツ「僕にはもう、とっくに必要のない物だから… ジャンもそれ読んで勉強して、いらなくなったらまた彼女のできた誰かにあげるといいよ」

ジャン「んなッ!? お、俺はこんな…」

ライナー「せっかくくれると言ってるんだ。 有難く貰っておけばいいじゃないか、ジャン」

フランツ「用はそれだけだからさ、それじゃもう行くね」

ベルトルト「お休み、フランツ」

ジャン「………」



ベルトルト「ええと… キスのポイント… 力の入った舌先を一生懸命動かさず、意識して力を抜く事が大事、と…」

ジャン「ちょ! 声に出して読むな//!!」

マルコ「………」ジックリ

ジャン「マジマジ見んなっての!!」

ライナー「これを… ジャンが… サシャに…」モワモワ

ジャン「サシャを思い浮かべんじゃねぇ!!!」

アルミン「ジャンが… ジャンがこんなコトする人だったなんて… ウワァァアァーー!!」ダダダッ バターーン!!

ベルトルト「飛び出してっちゃたよ、アルミン…」

ジャン「俺なんもしてねぇだろが!!」

ジャン「つーか貸せ! 俺もう帰る!」プンプン

ライナー「ハハ、悪かった悪かった」

ライナー「まぁフランツの言う通りだな、長く付き合えばいずれはそういう関係にもなるだろう」

ベルトルト「勉強しておくのは悪いコトではないんじゃない?」

ライナー「そして次は、俺にこの本を渡せるよう祈ってくれ」



――― ジャン達の部屋


ジャン(今すぐでなくても、いずれはそういう関係に… か)

ジャン(実は既にそういう関係だというのは、誰にも内緒だ。 わざわざ人に話すようなコトでもないしな)

ジャン(しかしフランツ… 意外に勉強家だったんだな)

ジャン(なんかここ暫く忙しくて、そんな感じにならなかったけど…)


ジャン(サシャの体…)

ジャン(…白くて、スベスベで柔らかくて)

ジャン(ちょっと触っただけでもビクンビクンして…)

ジャン(喘ぎ声… 可愛かったなぁ…)

ジャン「…………」モンモンモンモンモン…



マルコ(想像してる… 絶対想像してるよ…)



---------------


ジャン『サシャ… ここ感じる?』

サシャ『ひゃ… ン//』

ジャン『…もっと気持ちイイ所教えて?』

サシャ『あぁッ//! ジャン、そこ… そこイイですぅっ//!』

サシャ『ぁあ… んんッ// あっ、はぅっ… ン』

ジャン『ゴメン、俺もう我慢できない… 挿れるぞ』ズンッ

サシャ『やぁあんッ// はぁっ… あ、アァッ//!』

ジャン『んっ、サシャ… スゲェ気持ちイイ』パンパンパンパン

サシャ『…んあっ、あぁ… はぁぁっん//!!』

ジャン『ダメ、俺… 俺もうイッちゃう …ン、んんっ…』



  …チュンチュン チチッ


ジャン「…………」

ジャン(……マジか?)ボーゼン

ジャン(夢精なんて… 初めてだぞ俺…)


ジャン「!!」ガバッ


ジャン(良かった… マルコはまだ寝てる…)ホッ

ジャン(皆が起きてくる前に、早いトコなんとかしねぇと)


  バシャバシャ…


ジャン(…クソッ! 夢の中でもどんだけ可愛いんだよ!!)

サシャたんエロかわ
期待

>>361 ヒント:夢

――― 朝食・食堂


サシャ「おはようございます。 ジャン、マルコ」

マルコ「おはよう、サシャ」

ジャン「あ、オ… オハヨ」

サシャ「…ン? ちょっと顔色悪い?」ノゾキコミ

サシャ「昨日は夜更かしでもしたんですか?」

ジャン「イヤ全然! すげぇ寝たけど?」アセアセ

サシャ「そう、ですか… ならいいんですが…」


マルコ(…寝返りばかり打ってたじゃないか、ジャン)ハァ…

マルコ(その上タメ息ついたり、頭掻きむしったり…)

マルコ(『うおぉぉぉ』みたいな声も聞こえてきたのは気のせいかな?)



マルコ(一方、サシャはといえば…)チラ

マルコ(ジャンの苦悩も知らずに… イヤ、全然知る必要はないけど…)

マルコ(…改めて考えてみれば、サシャってイイコだよね)

マルコ(寝不足のジャンに、すぐ気付くんだもの…)

マルコ(あまり深く問い詰めないのもイイね)

マルコ(いつもニコニコして明るくて… 人とぶつかり合うコトがない)

マルコ(僕相手ではそうでもないけど… 他の人には棘だらけのジャンに、良い相手だと思うよ)

マルコ(ジャンには幸せな訓練生活を送ってほしいなぁ… 勿論その後もだけど…)


マルコ(でも… でも、フランツ)

マルコ(正直、君は… あの本を持ってくるのが早過ぎたんじゃないかな)

マルコ(せめて… せめてもう少し落ち着いてからの方が…)

ジャン「………」



――― 夜・ジャンの部屋


マルコ「…ジャン、それ… 読むのかい?」

ジャン「読まねぇよ! で、でも… キスの本くらいならさ//」テレッ

マルコ(読むんだね?)

ジャン「………」ジックリ

ジャン「…マルコ」

ジャン「マルコ、大変だ! …女はセックスよりもキスを重視してるんだってよ! ホラ!!」

マルコ「そ、それはでも… 本の内容だけだろう?」

ジャン「だって本なんて、それをよく知ってる人間が書いてるんだろ! 見ろって!!」

マルコ「あ、ああ… でも全ての女の人がそうとは言えないよね、多分」ハハ…

ジャン「…舌をからませ、軽く噛み合う。 そして上下の唇を舌で舐め、強弱をつけ舌を吸う…」ドキドキドキドキドキ…

ジャン「………」チラ

マルコ「ぼ、僕はそれに関しては練習相手になれないからね!!」アセアセ

ジャン「そんなの分かってるっての!!」



マルコ「エート… そういえば、明日は座学の小テストがあるんじゃなかったっけ?」

ジャン「あ! そうだった、そうだった」ゴソゴソ

ジャン「悪ィ、思い出してくれて助かったマルコ」

マルコ「どういたしまして」

ジャン「………」カリカリカリ

マルコ(切り替えは早いんだよなぁ… 真面目だし、結構素直だし…)



ジャン(今度の休み… 街に誘ってみよう)

ジャン(誘うのはいいが… 正直ソコに持っていくには、何て切り出せばいいんだ)

ジャン(2度目のタイミングって、意外と難しいモンなんだな…)

ジャン(とりあえず今はテストに集中、集中と…)カリカリ



――― 翌朝・食堂


ジャン「サシャ、今日座学のテストだろ。 ちゃんと勉強したか?」

ユミル「サシャはやってない。 なーんも、やってない」

サシャ「そっ! そういうコトは内密にしといてくださいよ、ユミル」

ジャン「内緒にしてたって、結果に出るだろうが」

サシャ「あ… 後でテストの前にノート見直すからいいんですよぅ…」

ジャン「10分程度じゃねぇか」

サシャ「ダイジョウブ! きっと大丈夫ですから!」

ジャン「ハァ… 今度から、前日に言っとかないとダメだな(今回は俺も忘れてたが)」



――― 講義室


ジャン(俺が生真面目過ぎんのか…?)

ジャン(…イヤ、でもライナーやベルトルト、アルミンなんかもやってるハズだしな)

ジャン(お、サシャが入ってきた…)

ジャン(遅えっての! これからじゃホントに10分もねぇぞ)

ジャン(…あ、でもノート見てる)

ジャン(真剣だ… 集中してんな)

ジャン(……ってアレ? ノート閉じたぞ。 まさか、もうお終いか?)

ジャン(クリスタと喋ってる…)

ジャン(5分かよ!!)



----------------------


ジャン「……フゥ」

マルコ「どうだった? ジャン」

ジャン「きっちり見直しもしたし、完璧」

ジャン「サシャ、ちゃんとできたか?」

サシャ「一応、全部埋めました」

ジャン「答えが合ってなきゃ意味ねぇぞ」

サシャ「まぁ、多分今回は大丈夫でしょう」

ジャン「返ってきたら見せろよ?」



ジャン「そうだ、あの… あのさ。 明後日の休み、何か予定あんのか?」

サシャ「今の所、特にありませんが…」

ジャン「そっか! じゃあさ、街へ… 外へメシ食いに行こうぜ」

サシャ「エ!?」

ジャン「ダ、ダメか?」アセアセ

サシャ「ゴハン!」キラキラ

サシャ「わぁーい! 街のゴハン~」キャッホゥ

ジャン(嬉しそうだなぁ…)ニコニコ

マルコ(サシャを誘うなら、やっぱりご飯だよね。 でも…)

マルコ(ジャンがすごく嬉しそうだなぁ…)ニコニコ



――― 夕食・食堂


ジャン(サシャの行きたいメシ屋でもいいが…)

ジャン(以前行きそびれた市場でもいいな)

ジャン(あそこなら、時間に関係なく屋台やってるし…)

ジャン(…前にサシャ達と4人で行った定食屋)

ジャン(すんげぇ旨そうに食ってたなぁ…)

ジャン(配膳のオバチャンも厨房のオッチャンも、ニッコニコしてた…)

ジャン(サシャの食いっぷりがあまりに見事で、オマケまで出してくれたもんなぁ)


ジャン(しかし、俺の今回の目的は無論メシではない)

ジャン(そこに、どうやって持っていくかだ…)



マルコ(無言だ…)

書いといてなんだが、ジャンがヤバくなってく予感がハンパない
止まれ>>1 己の欲望をジャンに乗せちゃ駄目だ



マルコ「ジャ、ジャン… スープが冷めちゃうよ?」

ジャン「ああ、そうだな…」ズズ…


ジャン(サシャの体…)

ジャン(真っ白で柔らかくて…)

ジャン(胸… 指が吸い付くみたいだった…)

ジャン(…乳首も可愛くて)

ジャン「」ワキワキワキワキ…


マルコ(ジャン… 食事は進まないのに、手はハンパなく動いてる…)

マルコ(ああ、ジャン… 君の欲望が… 君の心が透けて見えるようだよ…)



マルコ「きょ… 今日は、あの本読まないよね?」

ジャン「エ、何で? 読んじゃダメか?」

マルコ「余計なコト言うようだけど、ああいった知識を仕入れるのは早いんじゃないかと…」

ジャン(ああ… マルコは俺がまだ未経験だと思ってるから…)

ジャン「イヤ、俺は… いつ何時そういうコトになってもいいようにだな//」

マルコ「ジャンが勉強熱心なのは分かるけどさ… あんまり上手だと、慣れた人だと思われちゃうかもしれないよ?」

ジャン「ハッ!」

ジャン(確かに… 最初とあまりにも違い過ぎるのは変かもしれねぇ)

ジャン(やっぱ、いきなりじゃなくて徐々にだよな…)

マルコ(…分かってくれた?)ホッ

マルコ(やっぱりこういうトコは素直だなぁ…)



――― 翌日・休憩時間


ジャン「サシャ… 明日だけどさ、市場の方に行ってみねぇか?」

ジャン「屋台いっぱい出てるし、好きなモン買って摘んでよ」

サシャ「市場!」パアァァ

サシャ「市場で食べ歩きですね!」

ジャン「お、おう… そんで…」

サシャ「あ! でも前みたいに、ご馳走してくれるのはダメですよ?」

サシャ「あの時は私が出そうと思ったのに… トイレ行く振りして、結局4人分払ってくれたじゃないですか」

サシャ「ああいうのはいけません」

サシャ「それに私、自分のお小遣いくらい自分で稼いでますし…」

ジャン「エッ!? どうやって?」

ジャン「まさか… 変なコトしてるんじゃねぇだろうな?」

サシャ「変なコト??」

ジャン「あ、イヤ……」アセアセ



サシャ「山でですね、獲れた物を売りに行くんです」

サシャ「お肉は結構イイ値で売れますよ。 下処理を済ませてあれば尚更です」

サシャ「今の季節なら、きのこなんかも持っていけば買ってくれますし…」

ジャン「へぇ… 生活力あんだな。 逞しいっていうか…」

サシャ「褒められているのか分かりませんが」

ジャン「褒めてんだぞ。 スゴイスゴイ」ナデナデ

サシャ「へへ// …じゃあ明日は市場ですね。 楽しみにしてます」

サシャ「い~ち~ば~で、食べ歩き~♪」トコトコ


ジャン(何か… 肝心なトコ言いそびれた感じがするが…)

ジャン(まぁいっか、嬉しそうだしな)


ジャン「いーちーばーで、食べ歩きー♪」フンフン



ピピィィーーーーー!


サシャ「…おや、訓練再開ですね」

サシャ「あ、そうだコニー! 私ちょっとアニの所に行ってきますから!」

コニー「なんか習ったら、オレにも教えろよ」

サシャ「はぁーーい!」

サシャ「アニ、アニ! ちょっと教えて欲しいコトがあるんですが…」

アニ「…何?」

サシャ「あの… この間、教会に乗り込んだ時に思ったんですけど」

サシャ「あの時は相手が素人だったので、私程度でもなんとかなったんですが…」

サシャ「私、大体いつもコニーと組んでるじゃないですか」

サシャ「実は私もコニーも打撃系の技ばかりで、相手に掴まれてしまうコトには、とんと弱くてですねぇ…」



アニ「ハァ… つまり、間接系の技を教えろって?」

サシャ「さすがアニ! 察しが良い!」

アニ「アンタの戦い方は、あれはあれで良いと思うけどね」

サシャ「弱点攻略のため、是非!」

アニ「仕方ないなぁ、後がつかえてるから少しだけだよ。 …サシャは右利きだっけ?」

サシャ「そうです」

アニ「それじゃこう、私が対角でアンタの左手を掴んだとする。 …どうする?」

サシャ「それは外しますよ、こうやって」グイーン

アニ「…全然ダメ。 まるでなってない」

アニ「それだと私はサシャの横に回り込むコトになるでしょ。 しかも私はすぐ攻撃できるけど、サシャの右手は遠過ぎる」



アニ「外に引っ張っても、相手を呼び込むだけで外れないよ」

アニ「そういう時はこう… 内側にひねるように腕をたたむんだ」クイッ

アニ「まぁ焦ってる時には中々できないかもしれないから、普段から練習しとくんだね」

サシャ「ハイ! ありがとうございます!」ビシッ! タタタ

アニ「(なんか張り切ってるね。 …イイ事でもあったのかな?)…エレン、やるよ!」



サシャ「あのですね、コニー」(腕の外し方練習中)

コニー「ン? 何だよ」

サシャ「普段、私達がやってる格闘って… 他の人にはどのくらい通用するんでしょうかね?」

コニー「そういや仲間相手では、あんまし考えたコトなかったな」

コニー「今度、誰かとやってみっか …ライナーとかミカサとか」

サシャ「それは… これまで積み上げてきたものが、粉々に打ち砕かれそうですねぇ」



――― 夕食・食堂


ジャン(休み、休み…)ウキウキ

マルコ「フフ… ジャン、明日は晴れるといいね」

ジャン「あ、あぁ… そうだな」

ジャン(そっか、雨が降るという可能性もあるんだった…)

ジャン(でも、そしたら市場はやめて… 適当な店で時間潰して、そんで…)フフッ

トム「ジャン!」

ジャン「ん? 何だトム、珍しいな」

トム「明日の当番の件なんだけどさ…」

ジャン「当番!?」ビックン!

トム「うん、忘れてたのかい? いつもはあんなにキッチリしてるのに…」

ジャン「あ… イ、イヤ…(すっかり忘れてた…)」



トム「……それじゃ明日、よろしくね」

ジャン「お、おう……」


ジャン「………」ズウゥーン

マルコ(珍しいな。 ジャンが当番を忘れるなんて…)

ジャン「………」ションボリ


マルコ(でも、この意気消沈っぷり… 気の毒過ぎるよ)ウゥ

マルコ「あの… ジャン、良かったら当番代わって…」

ジャン「イヤ、やるべきコトはちゃんとやらねぇと…」

ジャン「俺、一応班長だし… 皆に示しがつかないからな」

マルコ「う、うん……」


ジャン「サシャに謝ってくる………」トボトボ

マルコ「ジャン……」

今後の展開がまったく浮かばない… どうしよう



----------------


サシャ「当番、ですか……」

ジャン「悪い! 俺、忘れてて… 楽しみにしててくれたのに、ほんっとゴメン!!」合掌

サシャ「イエイエ! そんな謝るようなコトでは」アセアセ

ジャン「その次こそ必ず!」

サシャ「気にしないでくださいって」

ユミル「ジャンが班長でなかったら、代わってくれるヤツもいるだろうがな」

クリスタ「残念だったね、ジャン」

ジャン「うぅ……」



ユミル「とりあえず一緒にいたいだけなら、サシャがジャンの班のヤツと代わったらどうだ?」

ユミル「固定砲の当番なんて、ちょっと整備した後は大体壁上でヒマ潰してるだけなんだしさ」

ジャン「そんな! せっかくの休みなのに…」

サシャ「そうした方がいいなら、誰かと代わりますよ?」

サシャ「休みといっても、狩りに行くくらいしかやるコトはないんですし…」

ジャン「え… で、でも」

サシャ「」ニコニコ

ジャン「ホ… ホントにいいのか!?」パアァァ

ジャン「じゃあ俺、班の誰かに聞いてくるから!!」タタタッ


ユミル「…ハハ、急に元気になったな」

クリスタ「ウフフ」



ジャン「ただいまマルコ!」

マルコ「おかえり」

マルコ(オヤ… さっきとは打って変わって明るい顔つきだよ?)

マルコ「謝れた?」

ジャン「ああ… そんでサシャが当番代わってもいいって言ってくれたから、ウチの班のヤツと代わったんだ」

マルコ「…なるほどね」

マルコ(それで元気になったってワケか…)

マルコ(ションボリしたと思ったら、また嬉しそうな顔して)

マルコ(本当にこれまでは、こんなジャン見たコトなかったよなぁ…)

マルコ(見てて飽きない…)



ジャン(食べ歩きとアッチの夢は潰えたが…)

ジャン(…当番一緒か)

ジャン(それはそれで悪くない)

ジャン(壁上はキライじゃねぇんだよな。 眺め良いしよ… 風もまだ、そこまで冷たくないし…)

ジャン(昼は食堂で食って… 午後は何すっかな?)

ジャン(そこら散歩してもいいし、軽く馬走らせてもいいな)

ジャン(サシャに聞いてみよ…)


ジャン(…なんか眠くなってきた)

ジャン(お休み、サシャ……)

ジャン「」スー



――― 翌日・壁上


ジャン「んー、イイ天気だな」ノビー

トム「こっちは終わったよー」

サシャ「こちらもこのくらいでいいですかね?」

ジャン「後ひとつ… 向こうが残ってるな。 行ってくる」スタスタ

サシャ「ああ、それなら私も…」タタッ

ゴシゴシ

ジャン「そもそも使ってねぇから、綺麗なモンだよな」

サシャ「少なくとも火薬で汚れて… みたいなコトはないですねぇ」

ジャン「まぁ、錆びないようにはしとかないとな。 …ヨシ、これでいいか」



サシャ「あ… ジャン、この位置…」

ジャン「ン? ここがどうかしたか?」

サシャ「もうちょっとその辺ですが…」トコトコ

ジャン「ああ! 35m付近か! …どれ」

サシャ「うーむ、超大型…」

ジャン「こっからだと… あの辺りになんのかな、うなじ」

サシャ「赤身…」ジュルリ

ジャン「まだ言ってんのか」

サシャ「早く開発できるといいですねぇ!」

ジャン「だが、それを使う時ってのはつまり……」

サシャ「分かってます。 兵器なんて物は元々使わずに済むのが一番ですから」

ジャン「でも備えあれば憂いなしとも言うしな」

サシャ「そうそう、そういうコトですよ」

ジャンの夢がお預け(´・ω・`)
サンタさんに頼めば叶う?

>>388
この世界のサンタさんは頼んでも、サシャたん印のラブドールしか届けてくれないと思う
それでも年頃の男子には嬉しいよね



ジャン「この後、午後… 用事ないなら散歩でもするか? 馬出してもいいし…」

サシャ「それなら、どちらかの立体機動場へ行きませんか?」

ジャン「立体機動場? いいけど… 何で?」

サシャ「よくキジがいるんですけど… ダメですか?」

ジャン「イヤ全然? ダメじゃねえよ」

サシャ「良かった! 獲れたら、夕食に揚げて出しましょう」

ジャン「ウン」

サシャ「キジはですねぇ、高くは飛べなくてですねぇ…」

ジャン「ウンウン」


ジャン(つーか、何度か食べたけど、サシャの作るメシはスゲェ旨い)

ジャン(……正直、胃袋だけで男を掴んでおけるレベルだと思う)

ジャン(もちろん俺は、胃袋だけなんかではないけど… これはとても幸せなコトだと思うんだ)



------------------


ジャン(…キジは2羽獲れた)

ジャン(一度目こそ逃してしまったものの、その後立て続けに2羽獲った)

ジャン(…それは見事な腕前で、そう言ったら照れ臭そうに笑ってた)

ジャン(そんで今、厨房にいるワケだが…)

ジャン「…なんか手伝う?」

サシャ「イエ… こちらは大丈夫ですから、先にお風呂どうぞ?」

サシャ「私も下味付けたら入ってきますんで…」

ジャン「……ン」


ジャン(お風呂どうぞ、なんて… 何か新婚さんみてぇだな//)



――― 夕食


コニー「ンマァアーーイ!!」バクバク

サシャ「…これで当分私が負けてもパンは渡しませんからね、コニー」

ユミル「熱の通し加減が絶妙だな」

サシャ「それは2度揚げしてあるからでしょう」

クリスタ「へぇ… そんな手間がかかるんだ」

サシャ「手間ではありませんよ。 最初に低温でじっくり揚げて、最後に高温で揚げ直すだけですから」



サシャ「…ジャン、マルコ、お口には合いましたか?」ヒョコッ

マルコ「ありがとうサシャ、とても美味しいよ。 ゴメンね、僕にまで…」

ジャン「ウン、やっぱ旨い。 超ウマイ」モクモク

サシャ「こんなのばかりでスミマセン。 今度は野菜をいっぱい使った物も作りますから……」

トムはトーマスの間違いかな

>>394 トムはトロスト区襲撃の時、本部補給所へ向かう途中にガス切れで食われた


ジャン(…腹は満たされ、サシャは今日も可愛かった)

ジャン(幸せだ…)ゴロゴロ


マルコ(ジャンはまた寝返りを…)


ジャン(だが、あとひとつ… あとひとつだけ幸せ成分が足りない)ピタ

ジャン(……ヤリたい)

ジャン(早くサシャを抱きたい)

ジャン(あの体に触って、あの顔… あの声が聞きたい)

ジャン(次こそ… 当番表は確認したから、来週は俺もサシャも大丈夫)

ジャン(あー、早く来週にならねぇかな)

ジャン「」スー



――― 数日後


マルコ「座学のテスト返って来たね。 ジャン、どうだった?」

ジャン「完璧。 マルコもだろ?」

マルコ「でも一ヶ所自信のない問題あったし、今回はギリギリ満点て所さ」

ジャン「そうだサシャ! テスト見せろ」

サシャ「え? あぁハイ、どうぞ」スッ

ジャン「………ふたつ間違えただけか」

マルコ「でも勿体ないね、単純な計算ミスじゃない」

ジャン「こんなん見直しすれば、すぐ気が付くだろうに」

サシャ「そうなんでしょうけど… 見直しとか面倒で…」



ジャン「お前さ、実は勉強してたの?」

サシャ「しましたよ? テストが始まる前に」

ジャン「あんなん、ものの5分じゃねぇか。 それ以外にだよ」

サシャ「いやぁ… そういうのも面倒でですねぇ…」テヘッ

サシャ「でも教官のクセってあるじゃないですか? 多分ここを出すだろう、みたいな…」

ジャン「フーン」


マルコ(…何だか、この2人って本当に対照的だよなぁ)

マルコ(ジャンは几帳面で、全部をきっちり把握しないと気が済まない方だし…)

マルコ(サシャは要点以外、全て取っ払っちゃった感じだし…)


マルコ(…だからこそ、うまくいくのかもしれないねぇ)



――― 格闘


サシャ「今日は前もって予約済みなので、アニに組んでもらいます」

コニー「そんじゃオレは、どこまでオレの技が通用するのか試してくるわ」

サシャ「いきなりミカサ相手とか、無茶しないでくださいよ?」

コニー「分かってるって。 オーイ、ジャン!」タタッ



サシャ「さてアニ、今日もお願いします!」

アニ「前にも言ったけどさ… サシャはサシャで、凄く良いモノ持ってるんだから、わざわざ自分のスタイル変えなくてもいいと思うんだけど」

サシャ「変えるワケではないんですよ。 全部を組み合わせて、臨機応変・多種多様な攻撃ができるようにしたいんです」

アニ「ふぅん… 急に真面目になったモンだね」

サシャ「それじゃ、これまでが真面目じゃなかったみたいじゃないですか」

アニ「まぁいいか、始めよう」



-------------------


コニー「それでどうだったんだよ、サシャ?」

サシャ「……痛かったです」

コニー「そうじゃなくてよ、どんな技教わったんだって」

サシャ「そうですねぇ…」ウーム

サシャ「とにかく、相手の力を利用して技をかけるの一言に尽きますね」

サシャ「私達って、基本的に相手の攻撃を受けないようにしてるじゃないですか」

サシャ「それをあえて受けて、且つその力を使って反撃に出るという…」

コニー「それ聞いてから行きゃ良かった…」

サシャ「コニーはどうだったんです?」

コニー「ジャンが攻撃してる間はいいんだよ。けど、オレから行こうとすると、どうしても掴まれちまって…」

コニー「あ! でも、この間の腕外すヤツ、あれは成功したぜ!」



サシャ「ふーむ… ではやっぱり、今の私達に必要なのはそういう技術なんですね」

コニー「今日習ったの、具体的に教えろよ」

サシャ「もちろん」

サシャ「アニは形が身につくまでの反復練習が何よりも大事だと言ってました」

サシャ「一緒に強くなりましょうね、コニー!」

コニー「おう!!」



ジャン(コニーの奴… 俺からの攻撃、全部避けやがった)

ジャン(コニーの攻撃は、なんとか受けて返せたが…)

ジャン(1回はマジで危なかったな。 急に腕外されて、隙を突かれた)


ジャン(それと対等にやり合ってるサシャも、同じレベルってコトか…)



――― 翌朝


  ザ゙アアァァァーーーー  ゴロゴロゴロ

ジャン(……すんげぇ雨)

ジャン(雷まで…)

ジャン(どういうコトだよ、オイ……)

ジャン(マジかよ神様… 俺が何したっていうんだよチクショウ…)ウゥ

ジャン(俺はただ… ただ、サシャと…)

ジャン(ダメだ… 俺はもう、立ち直れねぇ…)ガックシ



ジャン(神様なんか、この世にはいねぇんだ…)



マルコ「…ジャン、ジャン」ユサユサ

マルコ「珍しいなぁ、こんな時間になってもジャンが起きないなんて…」

マルコ(頭まで布団に包まってるし……)

マルコ「ジャン! もう朝食の時間だよ!」

ジャン「………いいんだよ」ボソッ

ジャン「マルコ… 俺はもうダメだ…」

ジャン「もう、ダメなんだよ…」

マルコ「…エ?」チラッ

  ザザアアアァーーーー ゴロゴロ

マルコ(あぁ… そういうコトか…)

マルコ「でもホラ… 朝食に行かないと、サシャが心配するかもしれないよ?」

ジャン「そりゃいかん。 支度しなきゃ…」ガバッ

ジャン「マルコ… 後からすぐ行くから、先に食堂行っててくれ」

マルコ「ウ、ウン……」



――― 食堂


マルコ「…それで今朝はいつもより薄暗いから、寝坊しちゃったみたいでさ」アセアセ

ユミル「ハハ、マルコ… そんなフォローはいらないだろ」

クリスタ「…きっとふて腐れてるか、しょげ返ってるんでしょ?」

ユミル「天気だけはどうしようもないモンなぁ…… ン? サシャ、ドコ行くんだ?」

サシャ「イエ、ちょっと手でも洗ってこようかと…」テテテッ

ユミル「…サシャもまた、分かりやすい」

クリスタ・マルコ「…フフッ」


―― 食堂玄関口前


ジャン「ハァ… ん?」

ジャン「…サシャ! 何やってんだ、そんなトコで! 屋根あるけど、そこいたら濡れるだろ!!」タタッ

サシャ「おはようございます」ニコニコ

ジャン「お、おう……」キュウゥン

こんだけでスマン
明日はもうちょっと進む予定



ジャン「…俺、待っててくれたの?」

サシャ「フフ… 雨、残念でしたね」

ジャン「……ん。 今日どうしたモンかな」

サシャ「うーむ… ちょっと大降り過ぎますからねぇ… 皆と談話室とかでしょうか?」

ジャン「…そうだな」

サシャ「後で少し教えてほしいコトもありますし…」

ジャン「俺に!? ナニナニ? 聞いて、何でも!」パァアァ

サシャ「格闘術のコトなんですけど」

ジャン「対人格闘? 何でまた俺に…」

サシャ「この前、掴まれて大変だったとコニーが言ってました」

サシャ「今日は実践ではなく、理論的な部分を知りたいと思って…」

ジャン「そういうのなら俺、得意!」



――― 朝食後・談話室


ジャン「…サシャもコニーも打撃技が得意だよな」

サシャ「まぁ、ほぼそれだけしかできないですね」

ジャン「イヤ… 実際それに関してはスゲェと思うぞ?」

ジャン「ただ、やっぱり打撃プラス間接や投げ、絞め技… あと場合によっては寝技なんかもアリっちゃアリか」

ジャン「サシャは身体能力高いから、色々組み合わせたらもっともっと強くなるんじゃねぇか?」

ジャン「足への関節技は、相手に逃げられたり反撃食らうことも多いから、まずは腕だな」

ジャン「お前らはまず、掴まれねぇようにしてるんだろうが…」

ジャン「例えばこう… 胸元辺りの服を掴まれたとすんだろ? したら、こうやって…」

ジャン「相手の手首を固定して、左手を肘に入れて下に絞る…」

ジャン「マジでやると結構痛ェぞ。 そんで相手が痛みで膝ついたら、後は蹴りでもなんでも入れられんだろ」

サシャ「ほうほう」



ジャン「捻り上げて脇で固めちまうのもいいかもな」

ジャン「加減によっては素人の腕1本くらい、簡単に折れちまうだろう」

サシャ「なるほどなるほど」

ジャン「もちろん、ブン投げてもいい」

ジャン「こう左足を踏み込んで、右足で相手の右足を刈って後ろに倒す」

ジャン「相手のアゴを押すと倒しやすいが、ちゃんと腕引き上げてやんないと頭 強打すっから注意が必要だ」

サシャ「へぇぇ… ちょっと掴まれただけでも色々返し方があるんですね」

ジャン「まだまだあるがな」

エレン「…何だ、何の話だ? 格闘か?」ヒョコッ

ジャン「うわ! どっから出てきたエレン!」

エレン「さっきから3人でそこにいたっての」

エレン「サシャも格闘なら、アニとかオレに聞けばいいのに」

ジャン「うっせぇな! 俺だって頭ではちゃんと理解してんだよ! それにテメェは説明すんの苦手だろうが!!」

サシャ「ア、アハハ……」



エレン「しっかし雨止まねーなぁ…」

ミカサ「これでは筋トレくらいしかできない」

アルミン「2人は休みも自主練してるからね」

ジャン「ご苦労なこった」

…バタンッ

サシャ「おや、ライナー達もやってきましたよ」

ジャン「珍しいなライナー、いつもは大体部屋にいんのに」

ライナー「まぁ何せ暇だし、たまにはな」

ベルトルト「ここなら誰かいるだろうと思ってさ」

ライナー「ここまでの雨だと、街にも出れんからな」

ベルトルト「アルミン、またお薦めの本何かない?」

アルミン「ちょうど昨日読み終わったのが面白かったから、後で持って行ってあげるよ」



ミカサ「たまにはエレンもアルミンの本を読んで勉強したら?」

エレン「オレはどうも、本読んでると眠くなってさ」

エレン「5ページ読めればいい方だな」

ライナー「ハハ、睡眠薬みたいなものか」

ベルトルト「ジャンも結構、読書するよね」

ジャン「俺は本好きだからな。 サシャは?」

サシャ「うぅむ… 私はまぁ時々ですが」

ミカサ「サシャは時折、おかしな本を図書室から借りてきて読んでる」

ジャン「どんな?」

ミカサ「私が知っているのは凧の作り方とか、昔の貴族の遊び、だとか…」

ジャン「お前、遊んでばっかだな」

サシャ「エへへ…」



ライナー「…お、そろそろ昼だ」

エレン「そんじゃ移動すっか」

ジャン「…ン? サシャ、行かねぇの?」

サシャ「ああ… ちょっとイメージトレーニングしたらすぐ行きますから、どうぞお先に」

ジャン「さっきのか。 付き合うぞ?」

サシャ「イエ、体を動かすワケではないし、ほんの2~3分ですから」

ジャン「…そっか、じゃあ先に行ってるな」

バタン…

サシャ(エート… こう来たらこう! こう来たらこう!)

サシャ(ふむふむ、なんとなく分かったような…)

サシャ(今度、コニーと一緒にやってみましょう)

…バタンッ トコトコ



――― 食堂


ジャン「何だよサシャ、2~3分じゃなかったのか? 結構時間かかったな」

サシャ「ここに来る途中、教官に頼まれゴトをされまして…」

サシャ「後で準備室においてある道具箱を、倉庫に持って行って欲しいそうで」

ジャン「この雨の中?」

サシャ「まぁ、今日中であればいいとのことですが」

ジャン「なら俺も行く」

サシャ「え、でも…」

ジャン「一人じゃ傘差せねぇだろ」

ジャン「メシ食ってちょっとしたら行こうぜ」

サシャ「ハ、ハイ… すみません」



クリスタ「…私達は部屋にいたけど、サシャは午前中何を?」

サシャ「談話室にいましたよ」モグモグ

ユミル「へぇ… 午後はどうすんだ? 一向に雨止まんけど」

サシャ「とりあえず教官に頼まれた用事をひとつ済ませたら、また談話室だと思いますけど…」

サシャ「午後はあのテーブルとイスをちょっと端に寄せて、軽い実戦形式にしてもいいですね」

クリスタ「何の?」

サシャ「へ? イエ、格闘の… あそこではちょっと狭いですかね?」

ユミル「どうした、ここんトコ急に真面目になって」

サシャ「あのぅ… 誤解されがちですが、私はいつだって真面目でしたよ?」

ユミル「ハハ、そっか… そうだったか。 そりゃスマン」



ジャン「…サシャ、メシ食ったんならチャッチャと終わらせちまおうぜ」

ジャン「面倒クセェ事は、とっとと済ませちまった方が楽だ」



ジャン「……持ってく道具箱ってこれか? 結構重いな」ズシッ

サシャ「あ… わ、私が」アセアセ

ジャン「あのなぁ… どこの世界に女に重いモン持たせて、ラクする男がいるってんだよ」

ジャン「いいから、サシャは外出たら傘差せ」テクテク

サシャ「あ、ハイ…」トコトコ

  …ザザアァァァアーーーー

ジャン「やっぱスンゲェ雨だな…」

サシャ「…スミマセン、付き合ってもらって」バシャバシャ

ジャン「またそれか… だから、こういうのに一々礼とか詫びとかいらねぇから」

ジャン「大体今日なんて、一人だったらビショ濡れじゃねぇか」

ジャン「教官もわざわざこんな日に…」バシャバシャ



――― 倉庫


ジャン「フゥ… サシャ、濡れなかったか?」

サシャ「私は大丈夫です」

ジャン「箱、ここでいいのかな?」

サシャ「場所は指定されなかったので、目立つ所ならどこでもいいんじゃないでしょうか」

ジャン「そっか…」ゴトッ

ジャン「…あ! サシャお前、嘘付いたな! ビショビショじゃねえか!」

ジャン「一本の傘なのに… どおりで俺が全然濡れてねぇワケだよ」

ジャン「そういうの… やめろって言ったろうが!」

サシャ「で、でもその… そんなの当たり前というか…」オロオロ

ジャン「あーあ、髪まで濡れて… ホラ、倉庫にある予備のタオルだけど拭け」ゴシゴシ

サシャ「うわっぷ! スイマセン…」

ジャン「ホント… 俺なんて、どんなに濡れたって構わねぇのによ」ゴッシゴッシ

サシャ「………」



ジャン(…小走りで、雨の向きに合わせて傘持ち替えて)ゴシゴシ

ジャン「…もうそろそろいいか?」

サシャ「十分ですよ」

ジャン(一生懸命、俺が濡れないようにと…)キュウゥゥン

ジャン(可愛いなぁ… ホント、コイツ可愛い…)

ジャン(…今すぐ押し倒したいくらいだ)ハッ!

ジャン(ダッ、ダメだ俺! 抑えろ抑えるんだ!!)ブンブン

サシャ「……ジャン?」キョトン?

ジャン「(…ウン、無理!!)サシャ……」ギュムッ

ジャン「サシャ……」チュゥ

サシャ「ん//! …ンンッ…」ビクッ!

ジャン「(そう… 焦らず、力を入れずにゆっくりだ)…む …んン」クチュクチュ… ペロッ

サシャ「んっ… ム、んんんンッ///!!」ゾクゾクッ



ジャン「………」フゥ…

サシャ「ハァ……//」

ジャン「…アァッ! 悪ィ、俺… やっぱ我慢できなかった!」

サシャ「……エ//?」

ジャン「ごめんサシャ、俺… 次の機会までずっと抑えとこうと思ってたんだけど…」アセアセ

ジャン「もうホントさぁ! 調査兵団行った日もそうだけど、先週も今日も… 早くサシャを抱きたくって!!」ギュッ

ジャン「なのに先週は当番だしよ… 今日はこんな天気だし…」顔グリグリ

サシャ「そう… なんですか?」

ジャン「エッ!? やっぱ嫌だったか? こんな男…」

サシャ「そうではなくて… あの//」

サシャ「確かに時間がなかったのもありますけど… 最初から… あの日からほぼ何もないので…」モジモジ

ジャン「??」

サシャ「本当はその… 私はあまりよろしくなかったのではないかと、そのぅ……//」



ジャン「ハァッ!? んなワケねぇだろ!!」

ジャン「つーかもう… 俺、今だって限界なんだけど!!」ギュムム

サシャ「……良かった」

サシャ「エ……?」

サシャ「ジャンは優しいし… 責任感が強いから、それで一緒にいてくれたのかと…」

サシャ「良かった…」ヘヘ//

ジャン「…そんな」

ジャン「そんなワケねぇじゃん… お前、どこまで自分を過小評価してんだよ…」

ジャン「何かある度、謝ったり礼言ったり… 傘のコトとかもさ」

ジャン「ホント可愛いと思うけど… でも俺、それ以上に切なくなっちまって…」

ジャン「俺… そんな頼りがいねぇか?」

サシャ「イエ! まさか!」フルフル



ジャン「そんならさ… もっと頼れよ」

ジャン「もっと甘えてくれよ」ギュウゥ

サシャ「……ジャン」

ジャン「あのさ… こんなコト言っといてアレなんだけど…」

ジャン「…俺が先に甘えていい?」

サシャ「な… なんでしょう//?」

ジャン「俺もう限界… ここで抱いていい?」ジッ

サシャ「でも、人が…//」

ジャン「…こんな雨の中誰も来ない」

ジャン「雨音で声も聞こえない」


ジャン「……ダメ、か?」キュッ

サシャ「いいえ…… んッ//」



ジャン「予備の毛布もある。 下敷いて、と」

サシャ「いいんでしょうか…」

ジャン「いいだろ、別に。 …腕、抜いて」スガシヌガシ

ジャン「…あぁ、やっぱ冷えちまった」ギュッ

サシャ「///」

ジャン「でも胸は温かいな」ムニムニムニ クニッ

サシャ「んあっ//!」ビク

ジャン「おっきくて、柔らかくて、あったかい…」ペロペロ チュゥ

サシャ「ひゃぁんっ//」

ジャン「サシャ綺麗…」ボソッ

サシャ「//!」



ジャン「ずっとこの顔見たかった…」クチュクチュ

サシャ「ひぁっぁ…ん///」ビクビクッ

ジャン「サシャの感じてる顔、もっと見たい」クニュクニュクチュ

サシャ「ぁあ… んんッ// あっ、はぅッ… ン」

サシャ「ひぁっ!あ…っダメッ…」

サシャ「やぁあんッ// はぁっ… あ、アァッ//!」

ジャン「………超エロい」グチュグチュ

サシャ「あっ…あぁ//!ひゃぅっ!あ…はあぁぁッ…ン//!!」

ジャン「ヤバイもう我慢できない…挿れていい?」ズズ

サシャ「んあっ、あぁッ… あ、やぁ//!!」

ジャン「ん… っく」ズップズップ

ジャン「サシャん中も… ン、あったかい」パンパンパン

サシャ「…んはぁっ!ひゃぁあんっ// 」



ジャン「も、良過ぎて……んんッ」

サシャ「やぁっ//!あ、ぁっ、はぁぁッ//」

ジャン「ゴメ… イキそう」パンッパンッ

ジャン「あ… 出る …ンッ、んん…っ」


---------------


ジャン「…あー、なんかもう… ずっとこうしててェなぁ」スリスリ

ジャン「でも戻んねぇと不審に思われるし…」

ジャン「しょうがねぇ、行くか!」モソモソ



サシャ「…オヤ、雨上がってますよ?」ガララッ

サシャ「服がまだ湿ってるので私、一度部屋に戻って着替えてから行きますね。 談話室でいいですか?」



――― 部屋


…ガチャッ

ユミル「ん? サシャ、談話室じゃなかったのか?」

サシャ「教官の頼まれゴトで倉庫に行ったら、濡れてしまいました」

クリスタ「随分長いコトかかったのね、用事」

サシャ「雨が小降りになるまで、話をしてまして…」

サシャ「いちいちお礼を言ったり、謝ったりしない方がいいと言われました」

ユミル「へぇ… でも、礼は構わんだろうが、謝り過ぎは確かにそうだな」

クリスタ「『スイマセン』より『アリガトウ』だね」

ユミル「もっとジャンを使ってやればいいんだよ」

ユミル「サシャがニコニコ笑ってアリガトウって言えば、ジャンはそれが何より嬉しいんだからさ」



――― 夕食


マルコ「へぇ、打撃以外の攻撃技かぁ…」

マルコ「サシャは今のままでも、相当強い方だとは思うけどね」

ジャン「技の幅を広げたいんだとよ。 …まぁ所詮、対人格闘だがな」

マルコ「ジャンはまた、そういう…」

ジャン「ま、サシャが強くなるなら、その分俺も強くなんねぇとな」

ジャン「ハァ… しょうがねぇ、俺も もうちっと頑張るか!」

マルコ「フフ…」

マルコ(…しょうがない、なんて言いながら凄く嬉しそうだよ、ジャン)

マルコ(今朝はこの世の終わりみたいな顔してたのに…)フフ

マルコ(…さっき見たサシャは、朝とは違う緑色のガーディガンを着ていて)

マルコ(それは初めて見た物だったので尋ねてみたら、ジャンからのプレゼントだということだった)

マルコ(サシャがそう言った時のジャンも、とても嬉しそうだったなぁ…)ニコニコ



ジャン(今日… ここへ来て初めて、教官に感謝した)

ジャン(入団初日から、人に頭突きかましてくれた教官だけど…)

ジャン(雑用頼まれて感謝ってのも、おかしな話だな)

ジャン(あの倉庫… 訓練着やタオル、毛布なんかの予備も置いてあった)

ジャン(…でもケジメがねぇのは嫌いだからな。 訓練所内ではこれっきりにしよう、ウン)


ジャン(ガーディガン、やっぱ似合ってたなぁ…)

ジャン(スタイル良いから、訓練着だって何だって似合うんだけどよ)ヘヘ



ジャン(現状に満足せず、さらに強くなろうと…)

ジャン(でも、きっとサシャなら… 関節技も投げ技も締め技だって)

ジャン(しなやかで柔らかく… まるで踊るように軽やかなんだろう)

ジャン(卒業まであと5ヶ月と少し… いつまでも、このままじゃいられねェのは分かってる)

ジャン(…サシャがどの道を目指すのであれ、俺は今と変わらずアイツの隣にいるだろう)

ジャン(……そうして俺は、ただサシャを支え… より高みへと押し上げてやりたい)

終わり

時系列に沿って進めるのは限界なんで、こっからはバラバラに書いていくと思う
行き詰った挙句、他スレ書いたり安価しようかと思ったり
ジャンをモテ男にしようとしたり、サムエル氏にご登場頂こうかと思ったり色々だったけど、まぁ終わらせた
読みづらくてスンマセンでした

日常の次は非日常的な…
掃除もするけど書ける限りは書く



ジャン(――― 年が明け850年)


ジャン(俺達は新年を迎えた)

ジャン(新年1日目の夕食では、ここ訓練所でも僅かながら豪勢な…)

ジャン(といっても普段の食事にもう1品足した程度だが、振舞われ…)

ジャン(サシャはその他に、俺や居残り組用に料理を作ってくれた)

ジャン(皆がそれを堪能してくれたコトは、言うまでもない)



ジャン(―― そして休暇は終わり、また訓練が始まる)

ジャン(卒業まであと、3ヶ月…)



ジャン(…思い起こせば、入団初日に開拓地に帰って行った奴らもいた)

ジャン(その後も、実力不足や訓練中の負傷… 様々な理由で人は減っていったが…)

ジャン(今残っている者達は、それを乗り越えてきたんだ)

ジャン(当初立体機動の適正ナシと判断され、開拓地に戻されそうになっていたエレンでさえ(結局ベルトの破損だったワケだが))

ジャン(強い意志と努力の結果、3ヶ月後の卒業を迎えようとしている)

ジャン(でも恥ずかしいし、調子に乗られたらムカつくから絶対本人には言わない)


ジャン(結局、俺が何を言いたいのかって… 今残ってる奴らは、もう誰も欠けないだろうってコトなんだけど…)

ジャン(ただ… 卒業試験の前に、最後の難関が残っている)


ジャン(それが雪山訓練だ)



――― 談話室


アルミン「……今でこそ雪山訓練は3人1組、2泊3日の行程だけど」

アルミン「ひと昔前は訓練兵全員で3泊4日、総距離75kmを歩かなければならなかったんだ」

エレン「兵站行進みたいな感じか?」

アルミン「それに近いとは思うよ」

アルミン「僕は今回の訓練に備えて、年末休暇に過去の記録を読んでみたんだけど…」

アルミン「それは恐ろしいものだったよ」

ジャン「俺は近年のヤツしか見てねぇが…」

ライナー「どんなだったんだ?」

アルミン「過去最悪の死傷者数… 雪山訓練参加者110名中、89名が死亡… そのうち3名は救出後に亡くなったんだけどね」

ベルトルト「そんなに!?」

アルミン「……ウン」



ミカサ「アルミン、詳しく聞かせて」

アルミン「当時の訓練兵110名は、3日分の食糧や燃料、テント等をソリ5台で引いてく計画だったんだけど…」

アルミン「ソリの重さは1台約70キロで、それを引くための必要人員は最低4人」

アルミン「だけど雪による横滑りなどで、さらに人員が必要になったんだ」

エレン「他の奴らは何を持って歩いてたんだ?」

アルミン「それは個人の装備だろうね。 寝袋やいざという時の携帯燃料・食糧じゃないかな」

アルミン「2日目夕方の峠までは障害もなく進めたんだけど… ソリ隊が遅れていたため、早めの夕食を取ろうと一旦休止した」

アルミン「…この時に天候が急変したらしい」

アルミン「暴風雪の兆しがあったことから、皆の間で進むか退くかの協議を行ったそうだよ」

アルミン「個々の装備の不安や、そこから先の道の険しさ… 天候がさらに悪化することを恐れて、各班長は訓練所へ戻ることを勧めた」

アルミン「でも各班の班員達や、班長を束ねている責任者… この前の狩りの時のライナーみたいな人の反対があって、結局進むことに決めたんだ」

ライナー「俺はそんな事はさせんぞ!」

マルコ「分かってるよ、ライナー」



アルミン「その結果、ソリ部隊は本隊から2時間以上遅れ…」

アルミン「…本隊の責任者はその応援のために20名を派遣」

アルミン「その他の者は雪濠を掘り、待機することになった…」

エレン「テントは?」

サシャ「テントはソリで運んでたんですよ」

アルミン「ソリ部隊が到着する前に、残った責任者や班長達で会議が開かれ… 遅ればせながら訓練所へ戻る事を決定した」

アルミン「けれど全員が揃った後、結局道を間違えてしまったんだね」

アルミン「元来た道など分かるはずもなく、隊列は乱れ… 皆、疲労困憊」

ライナー「で、遭難か……」

アルミン「………ウン」

アルミン「そしてその事故以来、今の… 3人一組、2泊3日の行程に変わったんだって」



ミカサ「…その組は教官側で決められて、明後日発表されるのでしょう?」

エレン「そうだなぁ… オレ、あんまり知らない奴だとやりにくいかも」

ライナー「だがしかし… 今ここにいる俺達が一緒になる可能性は低いと思うぞ」

ベルトルト「…そうだね、各班のレベルを同じくらいにしないと」

ジャン「今回はタイムは関係しないんだよな?」

アルミン「うん、今回は各々のコース… 登山口から下山口までをしっかり歩くコトが目標だね」

サシャ「およそ55~56kmですか…」

マルコ「それでも結構な距離だよ」

ベルトルト「雪深い山の中だものね」

ジャン「ショートカットはナシだろうな」

アルミン「雪山は危険だし、それはまずできないと思うよ」



ライナー「何にせよ、班が決まったら3人でよく話し合うしかないな」

ライナー「これをきっかけに、他の訓練兵とも話せる良い機会と思うしかないだろう」

マルコ「なんだかんだで、僕らはいつも固まっているからね」

ジャン「まぁそうなんだがな…」


ジャン(今更名前もロクに覚えてないヤツと一緒なんて、俺達どころか相手にとってもやりにくいと思うんだが…)

ジャン(…サシャと一緒は無理かなぁ)

ジャン(決してサシャの能力を疑ってるワケじゃないが…)

ジャン(班員次第で苦労するコトは目に見えてる)

ジャン(…だが今日のサシャは口数も少なく、その表情からは何も読み取れない)


サシャ「………」



――― 2日後・班発表


コニー「…貼り出されたぞ!」

ミカサ「!!」ガタッ


   ワイワイワイ…


ジャン(………マジか)

ジャン「マジか!!!」

ジャン「一緒だ… 一緒だぞサシャ!!」バンザーイ

サシャ「おおぅ… これは驚きですねぇ」

ジャン「お前… ひょっとしてヤなの? 俺と一緒…」

サシャ「そんなワケないじゃないですか」

サシャ「毎日神様と、教官の後姿にお祈りしてたんですよ?」ニッコリ



ユミル「私と一緒に毎日祈ってたんだよな」

ユミル「お陰で私もクリスタと同じ班だ」

サシャ「おお! 良かったですね、ユミル!」


ダズ「…オイ、そこの2人」

ジャン「ん? ダズか、どうした?」

ダズ「どうしたじゃねぇよ! 俺も同じ班なんだよ!!」

ダズ「俺の存在無視すんな!」

ジャン「…アレ? 本当だ」

ダズ「今気付いたのか!? ホンット、自分のコトしか考えてねぇな」

ダズ「いいか? お前らの能力は信頼してる。 …だがな、これは訓練だ」

ダズ「決して2人の世界に入ったりすんじゃねぇぞ!」

サシャ「…あ、向こうでミカサが打ちひしがれてます。 ちょっと行ってきますね」タタタ

ダズ「サシャ、聞けええぇえぇい!!!」



ミカサ「エレンも… アルミンとも分かれてしまった…」ガックシ

ミカサ「これまで話した事もない2人…」

サシャ「ミカサの場合、これまで話した人の方が少ないと思いますが…」ナデナデ

サシャ「…ホラ、あそこにいるアニを見てください。 同じように打ちひしがれていますよ」

ミカサ「アニは私よりも人と会話しないから…」

ミカサ「……慰め合ってくる」トボトボ

サシャ(ミ、ミカサの背中が小さく見える…)


マルコ「…ジャン、良かったね」肩ポン

ジャン「お、おぅ…//」

マルコ(正直ダズはちょっと気の毒だけど…)

ジャン「マルコは? 誰と一緒なんだ?」

マルコ「僕はトーマスとミーナだよ」



――― 食堂


ミカサ「………」ムゥ

サシャ「おや、ミカサ… やっぱりまだ立ち直れませんか?」

アルミン「これは違うんだよ、サシャ」ハ、ハハ…

ミカサ「…あの時」

ミカサ「私はアニがしょげ返っているように見えた」

サシャ「はぁ… 私にもそう見えましたねぇ」

ミカサ「知らない人に囲まれる私なら… また、同じ境遇のアニなら私を理解できると思った」

ミカサ「…それなのに、アニの班にはハンナがいる」

ミカサ「これは私と大きく違う。 少なくとも知っている人が… 話した事もある人が1人はいる」

サシャ「じゃあ… どうしてアニは下を向いて寂しそうに見えたんでしょうか」

ミカサ「それも聞いた。 そうしたら彼女は… 彼女はあろうことか、足元の蟻を眺めていたのだと言う」

エレン「冬場に蟻が外歩いてるのは珍しいからな」

ミカサ「……とにかく私は今、誰よりも孤独」ズウゥーーン



ライナー「まぁ、確かにミカサは残念だったな」

ジャン「エレンは誰と一緒になったんだ?」

エレン「オレはサムエルとミリウスだよ」

エレン「ミリウスは34班、サムエルは整備で同じだし、良かったよ」

コニー「オレとアルミンは一緒だぜ?」

ベルトルト「フゥン… ピッタリかもしれないね」

コニー「…ン? どういう意味だ?」??

ライナー「それでいったら… 2人の関係はさておき、ジャンも良い班だな」

ライナー「ジャンは何事においても… 全ての行動に、とかく理由を考えがちだからな」

ベルトルト「勘と本能で動くサシャとは、良い組み合わせってコトかな」

ダズ「だーかーら! 俺を忘れんじゃねえっての!!」

ライナー「ハハ… スマンスマン、ダズも中々良い働きをすると思うぞ? ウン」

ダズ「まったくよぅ…」ブツブツ



マルコ「…次の休み明けからか」

マルコ「ジャンは休日、どうするの?」

ジャン「出掛けてるような余裕はねぇだろ」

ジャン「装備の見直しと、俺達の行く山… そのルートの確認だな」

マルコ「僕とジャンはまず、登る山自体が違うものね」


ジャン(そう… 今回、皆が同じ山を登るワケではない)

ジャン(いくつかの班ごとに分かれ、違う山… 同じ山でも違うルートを行く)



ジャン(サシャ… 同じ班になれて本当に良かった)

ジャン(同じ訓練兵といっても、誰もが信用できるワケではない)

ジャン(…中には、数少ない女子に対し、良からぬ思いを抱いている者もいる)

ジャン(無論、上位に入っている… もしくは、少なくとも俺が名を知っている奴にそんなのはいないが…)



ジャン(…教官に感謝するのは、これで2度目だな)



――― 休日午前・図書室


サシャ「…今の装備の他に、手袋の中に付けるための軍手をもう少し持っていきましょう」

サシャ「ロープももうひとつ …もし前が見えなくなっても、3人を結んではぐれたりしないように」

ジャン「あとは各班に1つずつ持たされるテントか」

サシャ「それは1日交代で持てばいいでしょう」

ジャン「大丈夫か?」

サシャ「私のコトはお気になさらず」

サシャ「それよりダズ… 顔色悪くないですか?」

ダズ「…そうか?」

ジャン「なんだか ここ最近、やたら高熱の出る病が巷で流行ってるそうだが…」

ダズ「俺は別に… ちょっと寝不足でな」

ジャン「頼むぞダズ、明日からなんだからな? 今夜はしっかり眠ってくれよ?」

ダズ「分かったよ。 じゃあ最終確認がこれでいいなら、もう俺は行くぜ」テクテク



ジャン「ダズの奴… 大丈夫なのか?」

サシャ「私達2人が元気なら、なんとでもなりますよ」ニコッ

サシャ「それに… 明日も体調が悪かったら最悪、参加しないというコトもできますし」

サシャ「本当に、今回は体調不良のまま行くような場所じゃないですから」

ジャン「そうだな…」

サシャ「…実は私、先日アルミンが言っていた… 過去の雪山訓練の本、前に読んでいるんです」

サシャ「私、山について書かれている本は結構好きなので…」

サシャ「…でも、それを読んだら怖くて怖くて… その晩は夢まで見てしまったほどでした」

ジャン「110人中89人が死亡ってヤツか…」

サシャ「ハイ…… それに、ジャンも近年の訓練の記録は読んだんでしょう?」

ジャン「あぁ… その時ほどではないが、滑落なんかの死亡事故の事例も載ってた」

ジャン「…なんにせよ、油断は禁物ってこったな」

ジャン「さぁ、ぼちぼち昼だ。 行こう」


ジャン(……と、先に食堂へ行くようサシャを促して、俺はその本をコッソリと借りた)

休憩で小ネタ。 一足早い正月

小ネタ『サシャと遊ぼう2』(正月編)


――― 食堂

アルミン「…こんなに人のいない休みは久しぶりだね」

ジャン「まぁ4日間もあるし… 年末休暇も今回で最後だからな」

ライナー「普段帰らない奴も帰って行ったしな」

ベルトルト「今残ってるのは誰だっけ? エート…」

エレン「男はオレとアルミン、ライナーにベルトルト、ジャンか?」

クリスタ「女子は私とユミルとサシャ… ミカサにアニだね」

ユミル「寮も静かだし、風呂はゆっくり入れるしで、私は有難いがな」

エレン「しっかし寒くて外出る気にならねーなぁ。 中途半端に雪が降り出したし」

ミカサ「筋トレと走り込みはしたけれど…」

サシャ「雪合戦でもできるほど、雪が積もってればいいんですけどねぇ」

アニ「私パス。 …寒いのキライ」


アルミン「本ばかり読んで目も疲れちゃったし、何か良い気分転換ないかな?」

ライナー「普段は訓練漬けだからな。 時間があり過ぎると、逆に結局何をしていいのか分からん」

ジャン「室内でできる気分転換ねぇ…」ウーン


サシャ「かるたでもしましょうか?」

ジャン「そんなの持ってんのか?」

サシャ「イエ… だからそれを作って」

クリスタ「絵札と読み札を皆で書けばいいのね!」

ベルトルト「いいんじゃない? どうせ時間はたっぷりあるんだから」

ライナー「フム… ではやってみるか」

サシャ「じゃあ書く物持ってきます!」タカタカ


ユミル「読み札と… それに合わせてもう一枚に絵を描けばいいのか?」

ミカサ「絵札の右上に、最初の文字を書いておかないと」

アニ「お絵かきか…」

ベルトルト「同じのがダブらないようにしないと」

   セッセセッセ…

アニ「ねぇ… 濁点ついてもいい?」

ユミル「いいんじゃないか? それくらい」

エレン「フーン、いいのか…」カキカキ

ジャン「おいエレン… 何かヘンなコト考えてんじゃねぇだろうな?」

ジャン「ちょっと見せろ」グイ

エレン「離せよ! 紙が破けちゃうだろ!」

ジャン「クソッ… こうなったらいっぱい書いてやる」

サシャ「♪~」カキカキ


サシャ「……揃いましたね。 では絵札を皆さんの前にバラバラに置いて…」

サシャ「僭越ながら私が読み上げさせていただきます」

ジャン「絵ェ下手クソだな、エレン」ニヤニヤ

エレン「うるせーな!!」

ライナー「コラ、始めるぞ! 2人とも」

サシャ「ではまず最初… “せ”かい(世界)は残酷」

アニ「…ハイ」パシ

ミカサ「あぁ、私が描いたのに…」

アニ「だってここにあったんだもん」

アルミン「ミカサも自分の手前にあるのを狙ったら良いと思うよ」

サシャ「次行きます… “わ”たし(私)の嫁はクリスタ」

ユミル「へぇーい」バシ

ライナー「誰が描いたかすぐ分かるな… というかユミル、それ自分の前に持ってきてたろ」

ユミル「さぁーてね」


サシャ「“あ”ルミンは賢い子」

アルミン「ハ、ハイ…」

ミカサ「それも私が描いた」ニッコリ

アルミン「なんだか照れ臭いな//」ヘヘ

サシャ「“ら”イナーは皆の兄貴」

ライナー「お、嬉しい事を…」パシ

サシャ「“べ”ルトルトは背が高い」

アニ「ハイ」ペシ

ベルトルト「それ… アニが描いてくれたの?」

ベルトルト「とても嬉しいんだけど… 外見だけじゃなくて、もっとこうライナーみたいな…」

ライナー「うるさいぞベルトルト、サシャ次を頼む」

サシャ「……///」


ライナー「サシャ?」

サシャ「よ、読めません//… ライナー、代わりに読んでください」スッ

ライナー「一体どうしたっていうんだ? …ン、あぁ成程」

ライナー「“さ”シャは可愛い」

ベルトルト「あ、僕の前に」ス…   ジャン「ハアァァイ!!」ズザッ

ベルトルト「うわッ! ビックリした!」

ジャン「フフ… かるたといえども譲ってやるもんか」

サシャ「で、では次… “ち”ょうおおがた(超大型)の炙り焼き」

エレン「ハイッ!」

ジャン「サシャか… 肉の絵だな」

ベルトルト「」ブルッ

サシャ「“ゆ”ミルは時々イジワル」

クリスタ「はぁい!」パシッ


ユミル「おっ、クリスタは絵も上手だなぁ」

クリスタ「ヘヘっ//」

サシャ「次… “え”レンは家族」

ミカサ「!!」バシッ

ミカサ「…エレン、これはあげる。 お肉の札と交換して」

エレン「ン、いいぞホラ」

ミカサ「…フフ」

サシャ「“な”いち(内地)で快適」

ライナー「…これか」パシ

サシャ「“の”… 脳内快適」

ジャン「……」パシ

ジャン「なんだそりゃ… 俺のコトか?」ジロッ

エレン「♪」ピュ~


サシャ「“く”ちく(駆逐)バカ…」

エレン「んん?」ペシッ チラッ

ジャン「♪」ピュ~

サシャ「“じ”ャンは馬面……」

ジャン「オイ、こらエレン… ケンカ売ってんのか?」パシ

サシャ「まぁまぁ、次行きますよ!……って… “し”に急ぎ野郎」

エレン「ケンカ売ってんのはジャンの方だろうが! しかも微妙に絵ェ上手いし、腹立つなもう!」

ジャン「テメェの絵がガキみたいなんだろ!」

サシャ「もういいから、どんどん続けましょう!」


サシャ「“そ”との世界に行きたい」  パシッ!

サシャ「“は”やく壁の外行けよ」  ビシッ!

サシャ「“こ”の敗北主義者が」  パンッ!

サシャ「“き”ょじんの胃袋に直行しろ」  ピシッ!


ライナー「ただの悪口の言い合いだな」

ベルトルト「しかもジャンとエレンの一騎打ちになってるね…」

ユミル「…低レベルだ」

アニ「普段やってることと変わりないじゃん」

クリスタ「この2人はどうしてこう…」


ミカサ「……エレン、ジャン」

サシャ「まったくもう…」



ジャン「…この後、サシャとミカサに『かるたでまでケンカするな』と怒られました」

ジャン「サシャの札は記念にプレゼントしました」

サシャ「貰いました//」



おしまい

今年も一年、お疲れさんでした

このスレの内容全部、サシャ亡き後ジャンが見た長い夢にならないよう
是非ともサシャたんには長生きして欲しいね
そんじゃまた


個人的には「お嬢さんを僕に下さい」的なイベントが見てみたい
来年も楽しまさせて頂きます

謹賀新年
高速の渋滞って前を走る車のランプが王蟲の群れのように見えるんだな

>>460 サシャ父はいつか出したいんだけど、もう少し先になると思う

※今更だけど訓練内容は前回書いたものと一緒(数班ごとに違う山に分かれ、各々のルートを回る)

――― 訓練初日・朝(営庭)


  …ザワザワザワ


ジャン「…まずまずの晴天か」

サシャ「ダズ、昨夜はちゃんと眠ったんですか?」

ダズ「まぁな。 いつもより早めに寝た」

ジャン「そうか良かった。 調子が悪いようなら、訓練中止にしてもらおうかと思ったぞ」

サシャ「確かに昨日より顔色は良くなってますね」

ダズ「ガキじゃねんだから、自分の体調管理くらいできるっての」

ジャン「今日は俺がテント持つから、明日頼むわ」


サシャ「違う山の人達とはここでお別れですね。 …あ、クリスター! ユミルー! 頑張ってくださいねー!!」ブンブン

クリスタ「サシャもねー!」



ジャン「ホラ、もう馬乗って出発だぞ」

サシャ「あぁ… 名残惜しい…」

ダズ「3日後にはまた会えるだろ」

サシャ「そうなんですけど… どうせなら、あちらの山を歩きたかったですねぇ」

ジャン「…珍しいな。 お前がそんなコト言うなんて」

ダズ「俺達の行く山は厳しいのか?」

ジャン「他と比べて特別厳しいってワケでもないハズだが…」

サシャ「…まぁ、どの山でも天気や状況次第ですよ」

サシャ「では、行きますか!」


  パカパカパカ…


ダズ「この天気がずっと続いてくれりゃあな」



ジャン(同じ山に行く班同士、馬に乗って目的地を目指すが…)

ジャン(ライナーもベルトルトもマルコも… 普段よく話すヤツは皆、違う山か)

ジャン(…どうせ向こうに着いたって、スタートもゴール地点もバラバラなんだがな)

ジャン(準備は万端だし、今のところ天気も良い)

ジャン(…何より、サシャが一緒だ)チラ

ジャン(またピヨピヨと口笛吹いて… 緊張感ねぇ)フフッ


ジャン(寝袋着てミノ虫みたいになってるサシャ… )

ジャン(可愛いだろうなぁ… つついて遊びたい)

ジャン(…おっと、緊張感ねぇのは俺の方だな)

ジャン(気ィ引き締めていかねぇと…)パカパカ



-------------------


ダズ「……この山か?」パカラッ

ジャン「まず、ひと班行ったか。 俺達はもう少し先の登山口だな」

サシャ「………」

ジャン「どした、サシャ?」

サシャ「あ、イエ… 壮大だなぁと思って…」

ダズ「見てる分にはな」

ダズ「ハアァァ… これを登んのか」

ジャン「溜息ついて人の気をくじくなっての」

ダズ「だってよー、俺 元々冬は… 寒いの苦手なんだよ」

ジャン「俺は真夏の方がイヤだな。 暑いとなんもする気が起きねぇ」

サシャ「そういう時は川で水浴びを…」

ダズ「やめろサシャ! 余計寒くなるわ!!」



―― 登山口


ジャン「…ここだな。 そんじゃ馬を預けて… お願いします」

サシャ「また3日後ですね、お馬さん」ナデナデ

ダズ「しょうがねぇ、行くか…」トボトボ

ジャン「背中丸めて歩くんじゃねぇ!」ゲシッ

ダズ「ってーな、蹴んなよ!」

  …ザクザクザクザク

サシャ「…ジャン、テント大丈夫ですか?」サクサク

ジャン「平気。 まだ始まったばっかだし、体力あるからな」

ジャン「最終日も… 俺持つから」

サシャ「エエ!? 自分の分担くらいちゃんとやりますよ!!」

ダズ「悪ィなジャン、そんじゃ明日も持ってくれ」

ジャン「アァ!? 馬鹿か、甘ったれんな!!」



ダズ「クソ、サシャは甘やかすクセに…」ブツブツ

ジャン「サシャは ただ甘やかされてニコニコしてるような女じゃねぇんだよ」

ジャン「俺はそれでもまったく構わねぇんだが…」

ジャン「イヤ… むしろ、もうちょっと甘えて欲しいような…」

ジャン「…というワケでサシャ、もっと甘えろ」

サシャ「エッ//!?」

ダズ「だーかーらぁ! いるの! 俺もここにいるの! 分かるか??」

ジャン「あーあー、そうだったなダズ」

ダズ「あからさまに『何でコイツいんの?』って目ェすんな!」

サシャ「ダズも大事な仲間ですよ?」

ダズ「お、サシャ… お前イイ奴だなぁ」

ジャン「何だよ、今頃気付いたのか」

ダズ「だあぁぁ! いいからお前はもう喋るな、ジャン!!」

サシャ「ア、アハハ…」



ジャン「…ぼちぼち昼にするか?」ザッ…

サシャ「そうですね、天候の変わらないうちに… ダズ、大丈夫ですか?」

ダズ「俺は平気だって。 あぁー、腹減った」

サシャ「じゃあ携帯燃料使ってお湯沸かして… 持ってきたコレ… ハチミツを少し入れましょう」

サシャ「暖まるし、体力の補給もできます」

ジャン「そんなの持って来てたのか? 高価だろうに」

サシャ「…フフ、前に鹿を狩って、街に持って行った時に交換して貰いました」

ジャン「鹿一頭でその量か?」

サシャ「いつか役立つかと思って…」ニコニコ

サシャ「…さぁ、休憩しましょう」

ジャン「……ん」



ダズ「…うぉ、スゲェ体が暖まる」ズズ…

サシャ「午後はまた天気が変わるかもしれませんからねぇ」

サシャ「…ジャン、どうかしましたか?」

ジャン「いや… 旨いなぁと…」ズズッ

ジャン「…………」


ジャン(…前に俺が持って帰るのを手伝った鹿ではない)

ジャン(あの時だって、俺は頭を落として一緒に運んだだけだったけど…)


ジャン(サシャはそれ以前から、ずっと一人で…)

ジャン(ずっと一人であの作業をして… そして街まで行っていたんだ…)


ジャン(サシャは、そんな俺の気持ちが分かるんだろうか)

ジャン(熱いハチミツ湯をフーフーしながら、ニコニコしている)

ジャン(…俺を眺めながら、微笑んでいる)



   ハラハラハラハラ…


サシャ「…おや、降ってきましたね」

サシャ「この後、もっとひどくなるかもしれません」

ジャン「これまでは天気が良かったから、大分先に進めたな。 今夜の山小屋はすぐ先だろ?」

サシャ「そうですね。 でも この先一応、布をこう… 三角に折って、鼻と口の上に被せるように結んで歩くようにしましょう」

サシャ「フードも被ってくださいね?」


ジャン(ちょっと降り出しただけだと思った雪は、あっという間に大雪に変わり…)

ジャン(サシャは自ら先頭を歩き… 少し歩いては、後ろを歩く俺達を振り返った)

ジャン(自分が踏んだ上をちゃんと歩いているか、確認するかのように…)



ジャン(…少ししたら、山小屋が見えてきた)

ジャン(これ以上吹雪いたら、見逃していたかもしれないが…)

ジャン(先頭のサシャは、的確に俺達を導いてくれた)


  バタァーン!


サシャ「フゥ… とりあえず今日はここまでですね」雪ブルブルッ

ジャン「あぁ… ちゃんと薪も用意してあるな」

ダズ「……疲れた」グッタリ

サシャ「ダズ、雪を払い落として。 今、火を熾しますから…」

ダズ「…おぅ」バサバサ



ジャン(…少ししたら、山小屋が見えてきた)

ジャン(これ以上吹雪いたら、見逃していたかもしれないが…)

ジャン(先頭のサシャは、的確に俺達を導いてくれた)


  バタァーン!


サシャ「フゥ… とりあえず今日はここまでですね」雪ブルブルッ

ジャン「あぁ… ちゃんと薪も用意してあるな」

ダズ「……疲れた」グッタリ

サシャ「ダズ、雪を払い落として。 今、火を熾しますから…」

ダズ「…おぅ」バサバサ



サシャ「…少し早いですが、火を熾したらすぐ食事にしましょう」

サシャ「ダズ、夕飯は食べられそうですか?」

ダズ「…んん、それより疲れたし眠いな」グテー

サシャ「寝袋に入る前に、どうか携帯食糧だけでも食べてくださいね」

ジャン「…ホレ、そんなに眠いならとっとと食っちまえ」

ジャン「火の番はしててやっからよ」

ダズ「あぁ… 悪ィ」モグモグ

ダズ「…ゴメン、俺ダメだ。 先に寝かせてもらうな」ゴロン


サシャ「…ジャン、干し肉も持って来たので、食べられるなら食べてください」

ジャン「お前… リュックにどれだけ詰めてきたんだ?」フフッ

サシャ「ちなみに明日の分もありますよ」

サシャ「だからいっぱい… いっぱい食べて、元気でいてくださいね?」ニコッ



ジャン「俺は… 俺は大丈夫だよ」

ジャン「サシャこそ疲れてんじゃねぇのか? 前… 歩きにくかったろ?」

サシャ「私はこれくらい大丈夫ですよ。 さ、ゴハンにしましょう」


ジャン(いつもの携帯食糧と… それからサシャの持って来てくれた干し肉)

ジャン(あと、昼に飲んだハチミツ湯…)

ジャン(俺、ホントは甘い物苦手なんだけど… きっと口じゃなくて、体が糖分を欲してるんだろうな)

ジャン(昼も思ったけど… すげぇ旨い)

ジャン(味気ない携帯食糧も(これまで思ったコトもないが)サシャと一緒ならご馳走みたいだ)


サシャ「…ジャン、今日はテント持ちで疲れたでしょう。 私… 火の番しますから、先に眠ってください」

ジャン「でも…」

サシャ「いいから、さぁ…」



ジャン(……そうしてサシャの言葉に促され、俺は寝袋に包まり深い眠りに落ちた)

ジャン(薪のはぜる音を聞きながら眠るのは とても心地良くて、何だか幸せな夢を見ていた気がした……)


-------------------

  パチパチ…

ジャン「!!」ハッ

サシャ「……エ?」

ジャン「…サシャ! 何で起こさねぇんだよ! 代わるから寝ろ、今すぐ寝ろ!!」ガバッ

サシャ「ほぇ!? ひ、火は切らしてないんですが…」

ジャン「そんなのどうでもいい。 交代だ、寝ろ」

ジャン「…ったく、寝不足で倒れちまったら元も子もねぇだろが…」

サシャ「スミマセン… でも寝顔を見てるのが幸せな気がしたので…」シュン

ジャン「それじゃ今度は、俺がお前の寝顔を見る」

ジャン「だから、な? いいから眠れ」ナデナデ



ジャン(サシャは寝袋から少し手を出し…)

ジャン(俺の服の端っこを摘み、目を閉じた)

ジャン(まるで自分が眠っている間、俺がどこかに行ってしまわぬようにと…)

ジャン(俺はそれをひどく愛しく感じながら、そっと… そっと薪をくべた)

ジャン(……もうすぐ夜が明ける)


----------------


ジャン「……起きろ、ダズ」

ダズ「う、うぅ……」ゴロッ

ダズ「あ… 俺… 結局朝まで眠っちまったのか?」

サシャ「雪は止んでますから、朝ゴハン食べたら出発しましょう」

ダズ「……すまねぇ」モソモソ



サシャ「薪… 少し余りましたね」

ジャン「だが荷物になるし、持ってけねぇだろ」

サシャ「そうなんですが… オヤ? あれは……」ゴソゴソ

サシャ「おお! ソリじゃないですか!」

ジャン「持って行く気か?」

サシャ「もちろん!」フンフーン

サシャ「…さぁ! 今日も頑張りますよ!!」

ジャン「お前は元気だな」ハハ

ジャン(だがダズは… 昨日の疲れが取れてねぇのか?)チラ

ジャン(……顔色が悪ィ)

ダズ「………」



サシャ「ジャン、テントを」

サシャ「あと余った薪を袋に入れて結び付けて、と…」

ジャン「お、その為のソリか」

サシャ「これならテントを担がなくても大丈夫ですからね」

ダズ「助かった……」

ジャン「そんじゃ、天気が変わらないうちに行くとするか。 ソリの紐貸せ」

  …ザックザックザックザック

サシャ「ダズ、大丈夫ですか?」

ダズ「ん… あ、あぁ…」

ジャン「なんなら、ダズの荷物もくくり付けちまったらどうだ?」

サシャ「そうですね、一緒に引きましょう」ズリズリ



ダズ「ハァ… ハァ…」ザクザク

ジャン(ダズ… 遅れてきた…)

ジャン「…サシャ」コソッ

サシャ「ふむ… この上りが終わったら、一旦休憩しましょうか」

ジャン「昼にはまだ早ェな」

サシャ「ですが、また降り出す前に昼食にしてもいいかもしれませんよ?」

ジャン「任すよ。 …しかし、どうしたモンだろうな」チラ

サシャ「…明らかに顔色が悪いですね」




ジャン「ダズ、休憩すんぞ。 …メシ食えそうか?」

ダズ「イヤ… 固形物は入らねぇ…」ハァハァ

サシャ「では体を冷やさないよう、温かい飲み物だけでも」



サシャ「ちょっとスミマセン…」手袋ヌギヌギ …スッ

ダズ「…ア?」

サシャ「少し… 熱がありますね」

ダズ「けど… こんな所にずっといるワケにもいかねぇだろ」

ダズ「…荷物まで、お前らに引っ張ってもらってんのに」

サシャ「この後はしばらく平坦な道が続きますから…」

ダズ「そりゃ有り難ェ… 行こう、ぜ… ウッ」グッ

ジャン「ダズ!?」

ダズ「……ウグッ! オ゛エ゛エ゛エ゛エ゛ェ゛」ビシャビシャビシャ

ジャン「サシャ、こりゃあ…」

サシャ「」コクリ



サシャ「…ジャン、ダズの荷物から彼の寝袋を出してもらっていいですか?」

サシャ「それからダズを寝袋へ…」

ジャン「どうするつもりだ?」

サシャ「ダズの言う通り、ここにずっといるコトはできません。 いつまた吹雪くか分かりませんし…」

サシャ「それから軍手や色々… 荷物を解いて一緒に寝袋に入れて…」

サシャ「ちょっと窮屈ですけどロープで縛っちゃいますから、我慢してくださいね?」

ダズ「」ハァ…ハァ…

ジャン「ダズをソリで運ぶのか」

サシャ「幸いこれから平坦な道ですから… さ、これでいいでしょう」ギュッ

ジャン「俺が引く」

サシャ「それなら私がテントと薪を」



   ザクザク ズルズル…


ジャン「サシャ、大丈夫か?」ズルズル

サシャ「私は平気ですが… ジャンこそ大丈夫ですか?」

ジャン「ダズを担いで歩くよりは、よっぽど楽さ。 だが… 上り道じゃなくて良かった」

   …ハラハラハラハラ

ジャン「…チ、降ってきやがったか」

サシャ「ジャン、少し止まってもらっていいですか?」

ジャン「どした、疲れたか?」

サシャ「ちょっと地図を見るので… 多分このペースでは、今夜の小屋まで辿り着けないでしょう」

ジャン「今日はテント泊か」

サシャ「それではダズをゆっくり休ませてあげられません」

サシャ「予定とは違いますが、近くに他の山小屋がないかと…」



ジャン「貰った地図… 沢山書き込んであるな」

サシャ「×印を付けた所が山小屋です」

ジャン「ここ… ここいいんじゃないか? 元のコースから、さほど外れてもいねぇし…」

サシャ「………」

ジャン「何か問題でもあんのか?」

サシャ「…そうですね、背に腹はかえられません」

サシャ「ここを目指しましょう」

ジャン「??」


   ザクザクザクザク…


ジャン「…着いたか。 随分古い山小屋だな」

ジャン「雪と… 風を凌げるだけ有り難いが… さすがに疲れたしな」

サシャ「まずはダズのロープを外しましょう」



サシャ「…やっぱり今回使用しない小屋なので、薪は用意されていませんね」

サシャ「持ってきた分だけでは到底…」

ジャン「イヤ、何とかなんだろ」バキバキッ

サシャ「ジャン、何を!?」

ジャン「何って… 椅子を叩き折ってるんだが」

ジャン「こんな古い山小屋に置いてあったって、誰も使わねぇだろ」

ジャン「せめて燃やして役立てようじゃねぇか」

サシャ「…フフッ」

ジャン「ん? 何笑ってんだ?」

サシャ「イエ… 普段なら、むしろ私の方がそういうコトをやるような気がして…」

ジャン「ハハ、そういやそうだな」

サシャ「ではあちらの木箱も壊してしまいましょう」



   …パチパチパチ


サシャ「ダズ… ダズ、具合はどうですか? 今、寝袋に詰めた荷物を取り出してあげますからね」

ダズ「」ハッ…ハッ…

サシャ「とりあえず濡らした布を額に置きましたが… 熱が上がっています」

ジャン「まぁ… この寒さの中、動きもせずに引き摺られてりゃな」

ジャン「だが仕方ねぇ。 これが最善の方法だった」

ジャン「ソリ持って来て本当に良かった。 イイコだ、サシャ」ナデナデ

サシャ「エヘヘ//」


   …ビュウウウゥゥウウウゥーーー


ジャン「…外、スゲェ吹雪いてきた」

サシャ「間に合って良かったです」

ジャン「これ以上歩いてたら、俺達までヤバかったな」



サシャ「それじゃゴハンにしましょうか」

ジャン「メシ食ったら… 今日はお前が先に寝ろよ?」

サシャ「一緒に寝られたらいいんですけどねぇ…」

ジャン「一緒に寝るって? ン?」

サシャ「エ!? あ、あの…//」

ジャン「ハハ、冗談冗談。 …でも」

ジャン「……2人っきりなら、間違いなく襲い掛かってるな、ウン」

サシャ「///」

ジャン「頑張ったご褒美… これくらいならいいだろ?」チュゥ…

サシャ「…ン、ぅ…//」


ジャン「……残念だが、ここまでだ」スッ

ジャン「これ以上は、マジで抑えらんなくなる」



ジャン「…ホラ、寝袋入って休め」

サシャ「ハイ…」モゾモゾ

ジャン「何で座ったままなんだ? 横になりゃいいのに…」

サシャ「…もうしばらく、このままで」チョコン

ジャン「そんなら頭… 頭もたれていいから」グイ


   パチパチ… ビュゥゥウウウゥーーー


ジャン「何か… 世界に俺達しかいないみたいだ」

サシャ「……ええ」

ジャン「このまま雪が降り続けたら… 俺達どうなるんだろうな」

サシャ「私達は大丈夫… 大丈夫ですから…」ウトウト

ジャン「サシャ、眠るなら横に…」

サシャ「このままがいい…」

ジャン「………ン」



   …パチパチパチ


サシャ「」スースー

ジャン(寝たか… 横になった方が楽だろうに…)

ジャン(『このままがいい』とか… サシャはなんて可愛く甘えるんだろう)フフッ

ジャン(そういや敬語じゃなかったな…)

ジャン(こうして俺の肩に頭をもたれ… スヤスヤと眠るサシャは、まるで小さな子供みたいだ)


ジャン(サシャはそりゃ… 訓練兵の中でも、普通の女より体力はあるだろうが…)

ジャン(この状況で、疲れてない方がおかしい)

ジャン(…サシャと一緒の班になれて良かった)



ジャン(もし… 明日もダズがこの調子なら、色々考えなきゃならねぇな…)



   …ビュウウウゥゥウウウゥーーー


ジャン(明日… この吹雪がやまなかったら、か…)

ジャン(いい… 今考えるのはよそう)

ジャン(今はただサシャをゆっくり眠らせて… できるなら、いい夢を見させてやりたい)

  …トンッ

ジャン「………ん?」

 トンッ… トン

ジャン(………風か?)ビクッ!!

ジャン「サシャ…?」

ジャン(眠ってばかりいると思ったサシャが…)

ジャン(……目を見開いて、扉を凝視している)

 トン… トン…

ジャン「……まさか迷った誰かが」スッ

サシャ「」バッ



ジャン(ゆっくりと寝袋を脱いでいたサシャが、立ち上がろうとした俺を抑え…)

ジャン(低い… 低い姿勢で、瞬きひとつせず扉を睨みつける)

 トン、トン…

サシャ「………」

ジャン(サシャが獣であったなら… おそらく背中といい尻尾といい、全身の毛を逆立てていただろう)

ジャン(……何故それほど警戒を)

ジャン(風で扉が揺れているだけだろ…? 確かめれば済む話じゃねぇか)


 トン、トン、トン…


ジャン(イヤ… これはおかしい)

ジャン(……これは、ノックの音だ)

ジャン(だが… もしも道に迷った仲間なら、もっと切羽詰って扉を叩くはずだ)



ジャン(…この時点でようやく、俺の背中を冷たい汗が流れた)

ジャン(何が… 起こっているんだ…?)

ジャン(サシャ……)

サシャ「………グルルル」

ジャン(サシャの目は野生の獣さながらに、扉の向こう… 外の『モノ』に向けられている)


…トン、トン、トン

  トン… トン…

   …トンッ  …トン

      ………トン


サシャ「…………」

ジャン「…………」



ジャン(……どれくらい経ったろう)


サシャ「………もう… 大丈夫」フゥ

ジャン「サシャ… サシャ、一体…」

サシャ「何も考えないでください」

サシャ「多分… 風でしょう」

ジャン「…あれは風なんかじゃ!」

サシャ「風、です」クルッ


ジャン(そうして俺を振り返ったサシャの顔は、いつもみたいに朗らかではなく…)

ジャン(…まだ警戒心も解け切らず、若干憔悴したような真顔だったので)

ジャン(俺はそれ以上、何も言えなくなった…)



サシャ「…今度はジャンが眠る番ですね」ニコッ

ジャン(…ようやく、サシャが笑った)

サシャ「肩… ずっともたれたままでスイマセンでした。 疲れたでしょう?」

ジャン「全然。 サシャこそあんな姿勢で眠って… 疲れ取れなかったんじゃねぇか?」

サシャ「イイエ! お陰で良い夢が見られました」

ジャン「…どんな?」

サシャ「明日は快晴で… ダズの具合も良くなって、3人で訓練所に戻る夢です」

ジャン「そりゃあイイ夢だな」

サシャ「でしょう? その続きは、ジャンが見てください」

ジャン「じゃあ俺も… イイ夢見られるように、その…」

サシャ「??」



ジャン「膝枕… してもらっていいか?」

サシャ「」ニッコリ


ジャン(…サシャの太腿に頭を乗せ、俺は目を閉じる)

ジャン(サシャがそっと、俺の頭を撫でる)

ジャン(優しく… とても優しく)

ジャン(俺は心地良い眠りに落ちていく…)


ジャン(最後にふと… 先ほどのコトを思い出した)

ジャン(あれは一体何だったのか…)


ジャン「………」


ジャン「」スゥ…



――― 翌朝・雪山訓練最終日


ダズ「…ふ、わああぁあぁぁぁぁ」ノビー


サシャ「ダズ!? ダズ、具合は?」バッ

ダズ「…ハァ!? 俺? 全然元気だけど…」

ダズ「すんげぇ寝た気がする。 …って、今日はもう最終日かァ?」キョロキョロ

ジャン「…ダズ、起きたか!」ガバッ

ダズ「俺… 昨日どうしたんだ?」

ジャン「お前、昨日… 昼に吐いた後、倒れたんだよ! 熱は!?」

サシャ「…下がってますね」ガッシリ

ダズ「オイオイ… そんなに俺の頭を掴むなよ」



ダズ「すげぇ腹減った… サシャ、まだ肉あるか?」

サシャ「ちゃんと取っておいてありますよ!」ゴソゴソ

サシャ「今、お湯も沸きました!」

ダズ「よっしゃ、ちゃんと食わなきゃな」

ジャン「昨日の不調は何だったんだよ、ダズ…」

ダズ「知らねぇ… モグモグ… でも昨日は朝から肩や背中が重くてよ…」

ダズ「頭は割れるようだし、やたら寒ィし…」

ダズ「悪かったよ、迷惑かけて…」

サシャ「元気になったのなら、そんなのいいです!」ニコニコ


サシャ「あ! 今朝はすごい晴れてますよ!」

ジャン「ホントだ… 昨夜の猛吹雪がウソみてぇだな」

ダズ「…そんなひどかったのか?」

ジャン「もし、ダズが今日も動けないようなら… 俺かサシャが、訓練所まで救助を呼びに行こうと思ってたぞ」



ジャン「…昨日は到底、目的の山小屋まで辿り着けねぇと思ってよ。 今ココ… 目的地のもっと手前で、サシャが小屋探してくれたんだ」

ダズ「そうなのか… すまねぇな」

サシャ「謝らないでください。 誰だって慣れない所に来たら、体調を悪くするコトはありますから」

サシャ「それより昨日はほとんど食べてないんですから、あんまり慌てて食べてはいけませんよ?」ニッコリ

ダズ「お、おぅ…//」キュゥゥン

サシャ「さぁ、ジャンも食べてください!」

ジャン「…ん。 そんじゃ食って、出発するか」モクモク

ジャン「昨日の分の遅れも取り戻さないとな!」

サシャ「…フフッ」


ジャン(サシャの膝枕で見た俺の夢… は、まったく覚えてねぇが…)

ジャン(サシャの見た夢は正夢だったのかな)

ジャン(真冬の澄み切った青空に、元気な俺達…)

ジャン(…今、サシャはとても嬉しそうだ)

すごいいいんだけど、これ訓練としてみたら全くダズのためになってないよな。
あ、そんなんだから原作で…(察し)

>>501 可哀想にダズは原作ではリタイアだしな。まぁ、だから今回ダズを一緒にしたんだが

ダズ「サシャ、ソリ貸せよ」

サシャ「テント乗せるんですか?」

サシャ「でも昨夜で大分積もりましたからねぇ… 滑りづらいかもしれませんよ」

ダズ「担ぐよりはマシだ」

ジャン「一緒に引っ張るか?」

ダズ「いいよ別に」

ダズ「…つーか、何で昨日はあんなに調子悪かったんだろ」

ダズ「スゲェ嫌な夢見るし」ブツブツ…

ジャン「イヤな夢?」ザクザク

ダズ「おぉ、なんかよ… 俺達3人で歩いてると思ったら、いつの間にか大勢になっててよ」

ダズ「誰もなんも喋んねぇから、不安になって周り見渡したら、知ってる顔が1人もいねぇの」

ダズ「皆凍りついたみたいに無言でさ…」ザクザク

ダズ「俺… 怖くて元来た道を戻ろうって言うんだけど… 誰も聞いてくれねぇ」

ダズ「俺の声なんか聞こえてねぇって感じで、皆どんどん先に進んでいっちまうんだ」



ジャン「そりゃあ… 確かにイヤな夢だな」

ダズ「だろ? 夢の中なんだけど俺… 絶対そっちの道は間違ってると思って、仕方ねぇから1人で引き返すんだけど、それも怖くて…」

ダズ「風の音だか人の声だか、変なのが聞こえてくるしよ」

ダズ「でも… ふと気づいたら、俺の隣を狼が並んで歩いててさ」

ダズ「時々後ろを振り返って唸ったり、道案内してるみたいに俺の前を歩いたり…」

ダズ「あ、コイツといれば大丈夫なんだと思ったら、妙に安心してさ」

ダズ「そんでまぁ気持ち良く寝て、気がついたら朝だったワケなんだが…」

ジャン「へえぇ…」

サシャ「とにかく今日は熱も下がったし、食欲もあるしで良かったじゃないですか!」

ダズ「まぁな! 訓練中断なんてコトになんなくて、マジで良かったよ」ザクザク


サシャ「…お、道が下りになってきましたね。 滑らないよう気をつけてくださいよ、ジャン」

ジャン「分かってるって」

ダズ「下り道…」



ダズ「…なぁ、これソリで滑ってくワケにはいかねぇか?」

ダズ「新雪ったって、なんとかなんだろ?」

ジャン「雪が大丈夫でも、そのソリで3人は無理だろ」

サシャ「あ、でも昨日みたいに寝袋に荷物やら詰めて括ってしまえば…」

ダズ「それじゃ俺の寝袋出すわ。 どうせ昨日も引き摺ったしな」ゴソゴソ

ジャン「最初にテントを入れて… 荷物をバラして隙間を埋めて、と」ゴソゴソ

サシャ「あとはロープで結んで… 完成!」

ジャン「俺真ん中座るから、サシャは後ろな」

ジャン「ちゃんと右、左とかブレーキとか指示しろよ」

ダズ「おぅ! じゃ行くぜ!」



  …スルスルスルスルスルスル
  
  
ダズ「お? こりゃあ…」

ジャン「意外と快適じゃねぇか」

サシャ「ワアァーーイ!!」キャッホゥ

ジャン「ダズ、正面に木だ! 右に避けるぞ!」ズザザーー

サシャ「なかなか速いじゃないですか!」

ダズ「俺のおかげだな、オイ!」


  ワーワーワー! ズザザザザザザーー
  
  
サシャ「はあぁ… 楽しかったですねぇ」

ダズ「昼メシ食ったらまたやろうぜ」

ジャン「遅れてた分、大分進んだんじゃねぇのか?」



--------------


ジャン(午後、軽い上りや平坦な道… 雪が深すぎてソリが進まない場所では、3人で荷物を引き…)

ジャン(急な斜面は避け、緩やかな下りをソリで滑った)

ジャン(それはとても訓練とは思えないほど楽しくて、最初にソリを使おうと言い出したダズに感謝したほどだ)

ジャン(天気は相変わらず快晴で、下山は普通に歩くより快適で捗った)

ジャン(だが、さすがに最後まではそのまま行けないので下山口近くでロープを外し、荷物を戻した)


サシャ「…もしかしたら、他の班より早いかもしれません」サクサク

ダズ「だな。 …俺、最後まで2人のお荷物にならずに済んで良かったよ」

ジャン「あ… あそこ、ゴールか?」

サシャ「誰か立ってますねぇ」



ジャン(無事に下山した俺達は、馬を受け取り訓練所に戻る)

ジャン(昨夜… もし今日も吹雪が続いていたら、とか…)

ジャン(ダズの具合が悪いままだったらどうしようとか、色々悩んでいたのが嘘みたいだ)



ダズ「…訓練所に着いても、夕食までまだ間があるんじゃねぇか?」パカパカ

ジャン「そうだな… 時間があるなら俺、図書室に行かねぇと…」

サシャ「何か借りるんですか?」パカパカ

ジャン「イヤ、昨日借りたんだが、読み終わったし もう使わねぇからさ」

サシャ「それなら私も返さないといけない物があるので、一緒に行きましょう」

ダズ「俺はとにかく風呂に入りてぇな。 熱ーい風呂によ」


――― 訓練所・図書室


ジャン「…やっぱり他の山の奴ら合わせても、俺達相当早かったんだな」

サシャ「ソリのおかげですねぇ」

ジャン「お前、何の本借りてたの?」

ジャン「ン? 寄木細工の作り方? …なんだこりゃ」

ジャン「ハハ、サシャは遊んでばっかだな」

サシャ「わ、私はいいんですよぅ…//」

サシャ「ジャンこそ何を読んだんですか…… って、エ… これを?」

ジャン「ン、あぁ… ザッとだがな」

サシャ「そう、ですか… じゃあ知ってたんですね」



ジャン「何をだ?」

サシャ「何をって… これ… この事故は、私達が登った山であったコトですよ」

ジャン「ハァ!? そうなのか?」

サシャ「最後のページに、地図とルートが載っています。 …ホラ」

ジャン「イヤ俺… 文章だけしか読んでなかったから」

ジャン「そうだったのか…」

サシャ「兵士達がバラバラに遭難した後、救助隊が3名を発見したという小屋があったでしょう?」

ジャン「あぁ… 発見時に1人は既に凍死… 他の2名は救出後に死亡だったか」

サシャ「それが昨夜泊まったあの小屋です」

ジャン「なッ……」



サシャ「…さ、本を返して戻りましょう」



ジャン(出発の朝、違う山を登りたいと言っていたサシャ…)

ジャン(あの時はただ、サシャにしては珍しいコトを… としか思わなかったが…)


ジャン(昨日… 予定通りに進めず、他の山小屋を探していた時…)

ジャン(…俺が地図であの小屋を示した時、何か渋った風だったのも…)

ジャン(サシャは知っていたからなのか)




――― 夕食


ジャン「…マルコ、どうだったんだ?」

マルコ「僕らは特に何事もなく… 帰りにトーマスが鼻を垂らしていたくらいかな」

ジャン「まだ戻ってねぇ奴らも、結構いるんだな…」キョロキョロ



ジャン(―― そして、凶報は夕食後に届けられた)



ジャン「―― 死者!?」

ジャン「死者が出ただと!?」

コニー「あぁ… 今教官らが、班員の話を聞いてる」

ジャン「誰だ!? 一体ドコの班の…」

ライナー「詳細はまだ分からんが… ジャンと同じ山に入った奴らの誰かだということだ」

ジャン「俺の行った… 山…?」


ジャン(…その後、俺はひどい眩暈と寒気がしたので部屋に戻り… 事故の詳細を聞いたのは就寝前… マルコからだった)


マルコ「事故… ではないらしいよ」

マルコ「昨夜… ちゃんと目的の小屋まで辿り着いて、3人で今日の行程など話し合ったらしい」

マルコ「そして交代で火の番をして…」

マルコ「亡くなったのは、2番目に火の番をしていた班員で」

マルコ「3人目を起こして寝袋に包まって眠った後… 朝には冷たくなっていたそうだ」



マルコ「火も切らせず… 彼は外にも出ていないのに朝、凍死していた…」

ジャン「なん、だと……?」

ジャン「そんなの、おかしいだろ!?」

マルコ「ぼ、僕を問い詰めても仕方ないよ! 他の班員がそう言っていたんだって!」

マルコ「ただ… 最後の火の番の彼は、2人目が火の番に代わってから ずっとウツラウツラしていて、よく眠れなかったそうなんだけど…」

マルコ「…吹雪の中、誰かが訪ねてきたような気がしたって。 …でも、そんな夜中に訓練兵が歩いているワケもないし」

マルコ「夢かと思って気にも止めずに目を閉じたままでいたから、本当に誰かがやってきたのかは分からないんだ」


マルコ「分からないことばかりで… 結局事故ではなく、突然死という扱いになったらしい」

ジャン「突然、死…?」


ジャン「俺はもう… 俺達の中の、誰一人欠けるコトなんてないと思ってた…」

ジャン「…開拓地に戻されるでもなく、卒業を目前に控えたこの時期に…」



ジャン(―― 昨夜の、扉を叩く音)

ジャン(ダズの見た夢… 大勢の、見知らぬ顔の兵士達…)

ジャン(救出後も含め… 89名もの尊い命が亡くなった、あの山…)



ジャン(……俺は確信した)

ジャン(彼はきっと… 開けてしまったのだ)

ジャン(……その扉を開け、人ならざるモノ… それらを招き入れてしまった)

ジャン(…招き入れたのか、連れ出されたのかは分からないが)

ジャン(俺達が扉を開けなかったからなんだろうか…? だから、他に行ったのだろうか)


ジャン(普段親しくしたこともない、訓練兵の1人…)

ジャン(しかし俺は身近な人間の死を… 負傷でも実力不足で開拓地に戻されるワケでもない… 人の死を、今日生まれて初めて知った)

ジャン(そして本当に恐ろしいのは、『彼ら』が扉を開けた人間を連れ去った事だ)



ジャン(あの時俺を押し止め、ただ外にだけ意識を集中していたサシャ…)

ジャン(サシャは動物的な本能で唸り、警戒し… 俺達を守ったんだ)



ジャン(俺は本来、目に見えないものを信じはしないが…)

ジャン(…ダズの夢に出てきた狼)

ジャン(それはきっと、サシャ自身か… サシャを守る何かだったのではないかと思うんだ)



ジャン(もしも本当にいるのなら…)

ジャン(どうか神様… 志を果たせず倒れた気の毒な兵士達の魂を、貴方の御許へ…)

ジャン(多くの命を吸ったあの山に、ご加護のあらんことを ――)




終わり

少し怖い話が書いてみたくなったんだ
数こそ違うし詳細にはあまり触れてないが、八甲田山の雪中行軍を参考にしたのは言うまでもない
二重投稿ゴメン、あとジャンが本を借りたのは昨日ではなく3日前だった
こういう話がキライな人にはスマンです

HAHAHA 考えても無駄みたいだから、飲みながらとりあえず何か書いてみるわ
時系列的には雪山の前… ジャンが一人悶々としてた話の後ってことで



――― 部屋


サシャ「……うぅむ」

クリスタ「ど、どしたのサシャ? ベッドの上にドッカリ座って腕組んで…」

ユミル「随分とムズカシイ顔してんな… 何だ、悩み事か?」

サシャ「悩み… というワケではないんですが、ちょっと考え事などをですね」

ユミル「聞いてやろうか?」

サシャ「イエ… 気持ちは有り難いんですが、まずは自分で考えてみようと思いまして」

クリスタ「そぉ? 1人で抱え込まないで、何かあったらすぐ言ってね?」

サシャ「ありがとうございます、クリスタ」



サシャ「………」

サシャ(……どうしたものか)


ジャン『…もっと頼れよ』

ジャン『もっと甘えてくれよ』


サシャ(頼った… つもりだったんですが)

サシャ(格闘の… 掴まれた時の返し技を教えてもらったり…)ウーム

サシャ(でも、これ以上頼っては… ただの依存になってしまうのでは?)

サシャ(他に何を頼ればいいというのか…)

サシャ(…例えばテストの答えを見せてもらったり?)

サシャ(……イヤそれ、カンニングですから)

サシャ(今度また、格闘の話でも聞きましょうかねぇ…)



サシャ(…まぁ『頼る』は、ひとまず置いておいて)

サシャ(次は『甘える』について考えてみましょう)

サシャ(…『抱っこー』とか、『おんぶー』とか言えばいいんでしょうか)

サシャ(……私、赤ちゃんですか?)

サシャ(甘えるとは一体……)

サシャ(…よく分からないけども、明日から皆の様子を見てみることにしますか。 …おや?)


クリスタ「…最近、朝晩冷えるようになってきたよね」

ユミル「寒いなら一緒に寝てやろうか?」

ユミル「…ハハ、でもクリスタは意外と寝相悪いからな」

クリスタ「そんなコトないもん!」プクー


サシャ(…フフ、クリスタはいつも可愛らしいですねぇ …ン?)ホワンホワンホワン…



サシャ『…最近は、朝晩冷えますね』

ジャン『そうか? ん~、そうかも』

サシャ『実は私、寝相悪いんですよ』

ジャン『……だろうな』


---------------


サシャ「………」

サシャ(…ダメじゃないですか)

サシャ(そもそも男女別なのに、私の寝相なんて知るワケがないでしょう)

サシャ(…今のは使えませんね)

サシャ(でもクリスタは可愛いし、他のコだって…)

サシャ(ミカサやアニやミーナ… それに…)ハッ!



サシャ(…そうだハンナ! ハンナはきっと甘え上手なハズ!!)

サシャ(フランツがあんなに惚れ込んでいるくらいです)

サシャ(明日はハンナを観察して…)

サシャ(目指せ、甘え上手!!)

サシャ(…ジャン、私頑張りますからね!)ウフフフフ…



クリスタ(サ… サシャが笑ってる…)

ユミル(さっきはあんなに思い悩んだ風だったのに…)

サシャ「…フフフフフフフフ」


ユミル・クリスタ(……怖い)



――― 翌朝・食堂


ハンナ「…フランツ、フランツ」アーン

フランツ「フフッ、小さなお口をアーンして… ハンナは本当に可愛いなぁ」ヒョイ

ハンナ「こんなに硬いパンなのに、フランツが食べさせてくれると美味しく感じるのは何故かしら」ウフフ

フランツ「それは勿論、僕の愛情も注いでいるからだよ」アハハ



サシャ「………」

サシャ(……無理ッ!)

サシャ(で、でもアレが… もしかしたら普通なんでしょうか//)

サシャ(…私ができないと思い込んでいるだけで)

サシャ(ほ、他の人も…)キョロキョロ



エレン「……これやるよミカサ」スッ

ミカサ「またエレンは玉ネギを…」

ミカサ「好き嫌いをしては、強い兵士になれない」

エレン「だ、だってさ…」

アルミン「訓練所の野菜は、あまり煮込まれていないからね」

エレン「そうなんだよ! 玉ネギってよく煮ないと辛いじゃん?」

エレン「柔らかければオレ、食べられるんだよ」

アルミン「…でも、なんだかんだ言ってミカサはエレンに甘いよね」フフッ

アルミン「結局食べてあげるもの。 …他の物と交換こしてあげてさ」

ミカサ「だって… 涙目で食べてるエレンは可哀想…」


サシャ(…これは使えそうですよ!)キラーーン

サシャ(アレ…? でもよく考えたら私、いつもジャンと一緒に食べてない……)

サシャ(でもまぁそれくらいなら… 私があちらに行けば済む話ですからね。 やってみる価値はあります)



――― 昼


サシャ「クリスタ、ユミル。 私… ちょっとやらなければいけないコトがあるので、お昼2人で食べてもらっていいですか?」

クリスタ「また教官に用事でも頼まれたの?」

サシャ「そういうワケではないんですが…」モジモジ//

ユミル「まぁいいさ、行こうクリスタ。 また後でな、サシャ」

サシャ(…よし、早速実行に移しますよ!)



サシャ「あ、あの… ここここ… ココ、いいですか//?」

マルコ「あれ、珍しいねサシャ」

ジャン「んぁ? 何だ、どした?」

サシャ「イエ… ちょっとやるコトがあってですね」アセアセ



ジャン「メシの時間にメシ食う以外に何をやるってんだ? …ま、いいから座れよ」

サシャ「ハ、では失礼させていただきます」ガタ

サシャ「………」

ジャン「…食わねぇのか?」

サシャ「み… 見ていてくださいよ?(まずはハンナの… 頑張れ私!)」アーーーン

ジャン「………」

マルコ「………」

サシャ「」アーーン

ジャン「そんな… でっけぇ口開けて待ってても、パンの方からは飛び込んで来ねぇと思うぞ?」

サシャ(でっかい口!?)ガァーン!

マルコ「でも、もしかしてサシャならと、期待しちゃったよ」フフッ



サシャ(ダメです! アーンは却下!!)

サシャ(気… 気を取り直して、今度はエレンの…)

サシャ「ジャ、ジャン… これを、どうぞ…」ブルブル

ジャン「…ニンジン? お前キライなの?」

サシャ「イイエ」…ハッ!

サシャ(そうだ私… 好き嫌いなんてないじゃないですか!)ガァーン

ジャン「何でキライでもねぇのに俺に寄こすんだ??」

サシャ「あ、あぅ… ひょっとしてジャンはニンジンが好きなのではと…」

ジャン「何が言いたいのか分からんが、特別好きなワケじゃねぇ」

サシャ「ぅぅ… もう… もういいです。 おジャマしました…」トボトボ


ジャン「一体どうしたってんだ? サシャは…」

マルコ「ハハハ、見ていて飽きないなぁ」



――― 午後の訓練前


アニ「…風が冷たい」フルフル


サシャ(…アニがうずくまって震えている)

サシャ(これは何か羽織らせてあげたくなる可愛さですよ!)ピーーン

サシャ(ハッ! 向こうからジャンがやって来ます)

サシャ(私もやってみましょう!)

サシャ「」プルプル

ジャン「サシャ… 丸まって、何やってんだ?」

コニー「お、サシャ! ダンゴムシの真似か!」

コニー「震えてるってコトは、脱皮でもすんのか?」

コニー「転がしてやれー!」エーイ

サシャ「うひゃーー」ゴロンゴロン

ジャン「なんだ、コニーと遊んでたのか」スタスタ



サシャ(……コニーに遊ばれてしまいました)

サシャ(ゴロゴロと転がされて…)

サシャ(……楽しかった)ニコニコ

サシャ(…って、そうじゃなく!)ビシッ

サシャ(私は可愛い甘え方を知りたいんですよ)

サシャ(ハアァ… 今日はもう諦めますか…)トボトボ


ミーナ「ウ~~ン」ガラガラ


サシャ(おや… 井戸にいる、あれはミーナ)

サシャ(そうか、今日は水汲みの当番なんですね。 …あれ、マルコが近付いていきますよ?)

サシャ(一体何を?)ドキドキ



ミーナ「あ! マルコ、いい所へ!!」

ミーナ「重いし、手も冷たいしで水汲みが全然進まないの!」

ミーナ「手伝ってくれると嬉しいんだけど…」

マルコ「僕で役に立つならいくらでも」ヒョイッ

ミーナ「うわぁ! さすがマルコ!」

ミーナ「優しいし、やっぱり頼りになるよね!!」パチパチ

マルコ「そ、そうかな…//?」


サシャ(ほほぅ… アレは『甘える』よりも『頼る』分類に入るんでしょうか…)

サシャ(でも、相手を褒めながらお願いを聞いてもらうとは、ミーナはかなりの上級者ですね)

サシャ(いつか私も真似してみましょうか)…ハッ!

サシャ(明日は私が水汲み当番じゃないですか! これは好都合!)ニヤリ



――― 翌日・午前訓練前


ユミル「クリスタ、寒いー!」ギュー

クリスタ「ユミルの手、冷たァーい!」

ユミル「あっためてくれよー」ギュムギュム

  キャッキャ キャッキャ

サシャ(…こうしていると、ユミルもクリスタに甘えているように見えます)

サシャ(私の場合、抱きつく… のはさすがにできませんが…)

サシャ(アニといい、人は寒さの前では甘えん坊になるんでしょうか)

サシャ(まだそんなに寒くはないと思うんですがねぇ…)

サシャ(とはいえ、やってみる価値はあるでしょう)



――― 立体機動訓練


サシャ「…キャッホゥ!」ヒュウゥーーン バシュッ!

コニー「相変わらず速ェな、サシャは!」ビュン

ジャン「一体どっから飛んできてんだよ」

ジャン「…オイ! そんなにガス噴かしたら勿体ねぇぞ!!」ヒュンッ

サシャ「ふははははははは」ビューン


サシャ(…実際、見た目ほど噴かしていないハズなんですけどね)

サシャ(上手な人(ジャンとか)について… そのやや後ろか、上を進むようにしているので)

サシャ(それにしても立体機動は楽しいですねぇ…)

サシャ(馬術と同じくらい好きです)



サシャ「……動いたら暑くなりました」ヌギッ

ユミル「マジかサシャ!? あんなに風冷たかったのに…」

サシャ「そうでしたか?」

クリスタ「そうだよサシャ! 上着脱いで半袖とか… 見てるこっちが寒いよ」

サシャ「す… すぐ着ますから大丈夫ですよぅ…」

クリスタ「サシャはこの後水汲みだよね? 先に食堂行って、席取っておくから!」

サシャ「ハァーイ!」



サシャ「フンフンフン♪」ガラガラ ザバァー

サシャ「」ガラガラ



サシャ(誰も来ませんね…)ガラガラ



ジャン「」テクテク

サシャ(…ハッ! ジャン!!)

サシャ「あの… どうしたんですか//?」

ジャン「イヤ… クリスタに聞いたら、お前水汲みだって言うからよ…」

  ピュウゥゥーーーー

サシャ(風が… そうだ! あの時のユミルの!)

サシャ「ジャン… 私、寒いです」

ジャン「そりゃ半袖ならな。 …上着は?」

サシャ「エ…? すぐそこに…」

ジャン「お前なぁ… そんな格好でいたら寒いに決まってんだろが」

ジャン「ガキじゃねぇんだから、体温の調節くらいできんだろ」

サシャ「ス… スミマセン」シュン



ジャン「…ホラ、手伝うからバケツ貸せ」

サシャ「あ… そういえば終わってしまいました」

ジャン「もう? 早いな。 そんじゃ食堂行こうぜ」

サシャ「ハイ……」


サシャ(あれれ? こんなハズじゃなかったような…)トコトコ

サシャ(…そもそもマルコと違って、ジャンは最初から手伝うつもりで来てくれたワケですし)

サシャ(しかも終わっちゃってるとか… これじゃ、ジャンに無駄足を運ばせてしまっただけじゃないですか)

サシャ(力持ちな自分を恨みますよ!)クゥ~


ジャン(…どうしてサシャは頭を抱えてるんだ?)スタスタ



――― 昼食・食堂


サシャ「………」モグモグ チラッ


フランツ「今度の休みはまた街に行くかい? ハンナ」

ハンナ「そうね、でもフランツと過ごせるなら私… ドコだって構わないんだけど…」

フランツ「休日、いつもハンナは帰り際に『帰りたくない』とか、『もっと一緒にいたい』とか言ってくれるよね」

フランツ「そんなハンナを見る度、僕は君が愛しくなるよ」

フランツ「2人きりの時間をもっと作れたらいいのに…」

ハンナ「…フフ、言葉にしなくてもフランツは全部分かってくれるのね」


サシャ(何ですと!?)

サシャ(ハンナは2人きりになると、そんなに可愛いんですか!)

サシャ(は… 恥ずかしいですが、ここはひとつ覚悟を決めて言ってみましょうか…)



――― 午後・格闘訓練


サシャ「うぅむ… せっかくジャンに返し技を教えてもらったのに…」

サシャ「中々それを使える機会がないですねぇ…」

コニー「そりゃまぁオレたち元々、お互い相手を掴もうとしないからじゃねぇ?」

サシャ「…なるほど。 言われてみればその通りです」

コニー「これからちょっと、相手を変えてやってみるか?」

サシャ「コニーは誰を相手に?」

コニー「さすがにミカサはアレだからなぁ…」ウーン

コニー「やっぱりこないだみたいに、ジャンかマルコ辺りがいいのかもな」

サシャ「フム… エレンはアニと組むことがほとんどですし、ライナーやベルトルトでは体格差があり過ぎますからねぇ…」

コニー「修行を積んだらライナーにだって挑戦するぜ?」

サシャ「それはいいコトだと思いますよ」



  ピピィィーーーーーッ!


サシャ「…おや、もう午後の訓練終了ですか」

コニー「真面目にやってると、時間が短く感じるな」

コニー「帰ろうぜ、サシャ」

サシャ「あ… 私は前に教えてもらったのを忘れないうちに、少しイメージトレーニングをしていくので…」

サシャ「どうぞ先に行っててください、コニー」

コニー「そっか、ならオレ先行くな。 あ~、腹減った」トコトコ


サシャ(エート… 胸を掴まれたら、相手の手首を固定して、左手を肘に入れて下に絞って…)

サシャ(相手が痛みで膝ついたら、後は蹴り…)



サシャ(他には捻り上げて脇で固めたり…)

サシャ(こう左足を踏み込んで、右足で相手の右足を刈って後ろに倒すのもアリ、と…)



ジャン「サシャ… お前、何を1人で踊ってるんだ?」

サシャ「踊って!?」

サシャ「ち、違いますよ! 私はただ… この間ジャンが教えてくれた、返し技のおさらいをですね」

ジャン「あぁ、アレか… サシャは真面目なイイコだな」ナデナデ

サシャ「…ヘヘ//」

ジャン「…さ、帰って風呂入ったら夕飯だからな。 もう戻ろうぜ」スタスタ

サシャ「あ…(い、今2人きり…//)」

ジャン「…どした?」クルッ

サシャ「あの…// わ、私… まだ帰りたくないんですが…」



ジャン「………」

サシャ「///」

ジャン「そうか!」ピーーン

ジャン「そりゃそうだ! 返し技の練習なんだから、相手がいないとイメージも沸かねぇよな!!」

ジャン「そんじゃ付き合ってやっから! …ホラ、こうやって掴むだろ? そしたら…」

サシャ「…こ、こうですよね!?」グイッ

ジャン「そうそう」


サシャ「…セイッ! トリャッ! フンヌッ!」


サシャ「いやぁ… いい汗かきました」フゥ

ジャン「そりゃ良かった、サシャは覚えが早いな。 …じゃ、帰ろうぜ」

サシャ「ハイ!」ニコニコ



サシャ(……アレ? こんな感じでしたっけ?)



サシャ(何かが… 何かが違う気が…)

サシャ「………」ムゥゥ



クリスタ「…ねぇユミル… またサシャが難しい顔してるよ?」コソッ

ユミル「サシャなりに、色々考えてんだろうさ」

ユミル「…もうしばらく、そっとしといてやろう」

クリスタ「大丈夫かなぁ……」

ユミル「力になってやるコトは、いつだってできるんだから」

ユミル「…クリスタは優しいな」ナデナデ

クリスタ「ユミルこそ」フフッ



――― 数日後・昼休憩


サシャ(結局何もできないまま…)

サシャ(…すべてにおいて、空回りをしているような気がします)トコトコ

サシャ(でも、本人に聞くワケにはいきませんし…)

サシャ(…誰かに相談してみるとか)

サシャ(ゴハン… 食べてから考えましょう)ハァー


キース「…サシャ・ブラウス」

サシャ「ハ、ハイ!?」

キース「午後なんだが、少々用事を頼まれてもらえんか」

サシャ「用事……?」



----------------


ジャン「―― 調査兵団へ?」

サシャ「書類を持って行ってほしいそうです」

ジャン「何でお前が?」

サシャ「あいにく人手が足りないそうで… それに前に行ったの、知ってるんじゃないですか?」

サシャ「午後は馬術ですからね。 私は抜けても構わないと判断したんでしょう」

サシャ「私はクリスタと違って、上手く人に教えてあげるコトができませんから…」

サシャ「…さ、食事も済ませたし、ちょっと行ってきます」

ジャン「…ウン」

サシャ「できたら帰りにお土産でも見てきますよ。 それじゃ」



サシャ(……調査兵団)パッカラ パッカラ

サシャ(前に出して貰ったお茶… 美味しかった)ウフフ

サシャ(調査兵団には、面白そうな人ばかりいましたねぇ…)

サシャ(キッチリ横分けの団長さん… 性格もキッチリしてそうです)

サシャ(兵士長は意外と小っちゃくて、でもあの目つきは…)

サシャ(あの目つきの悪さは、誰かを彷彿とさせますよ)

サシャ(それからハキハキ喋るメガネの分隊長さんと、もう一人の…)

サシャ(もう一人の大きな分隊長… 嗅覚では多分、私の負けです)

サシャ(いつか他の… 聴覚や目の良さなんかで勝負を挑んでみましょう)

サシャ(あと、お茶を出してくれた… そうだ、ペトラさんとオルオさん)

サシャ(明るくて、とても優しそうで…)

サシャ(……今日も、少しお話できたらいいんですが)



――― 調査兵団本部


サシャ「たのもー!」

グンタ「……は、はい?(頼もう?)」ガチャッ

サシャ「訓練兵のサシャ・ブラウスと申します!」バッ

サシャ「キース教官から、こちらの書類を団長にお渡しするようにと言われて参ったんですが…」

グンタ「あ、あぁ…(道場破りかと思った…)」

エルド「どうしたグンタ? ん… 何だ、訓練所からの使いか」

ペトラ「訓練所ォーーー!?」ダダダダッ

ペトラ「あぁー! やっぱりサシャちゃんだ!! 今、声が聞こえたから!」

サシャ「うわぁ! ペトラさぁん!!」ワァーイ!

ペトラ「サシャー! どしたのー?」キャッキャ



サシャ「エット… あの、今日はですね。 教官のお使いなんですが…」

ペトラ「…アレ? あの男の子は?」キョロキョロ

サシャ「今日は他の皆は訓練で、お使いは私だけなんです。 …この書類を団長に… あの…」

ペトラ「そうなんだー …ね、今お茶入れるから、飲んでいきなよ」

ペトラ「団長はもうすぐ帰るから、ね?」

サシャ「エェ!? でも今回私が来たのは、団長とお話するためでは…」

ペトラ「いいじゃない! どうせこれから帰ったって、午後はもうまともに訓練できないでしょ?」グイグイ


オルオ「…何だペトラ、うるせぇぞ。 俺は今から瞑想を……って、うぉ?」

サシャ「オルオさん!」



-------------------


エルド「そういや夜会の時の…」

グンタ「…ドレスと訓練着じゃ、全く印象が違うから分からなかったが」

ペトラ「可愛いの! このコ、スゴく可愛いの!!」

サシャ「///」

ペトラ「ねぇ、上手くいってるの? 彼と問題はないの!?」

サシャ「問題、ですか……」

オルオ「俺はアイツはオススメしねぇぜ? 女に苦労かけそうな奴だからよ…」

オルオ「とっとと別れちまえばいいのに…」チッ

ペトラ「男の嫉妬は見苦しいよ? オルオ」


サシャ「あ、あの… もし良ければ、ひとつ質問が…//」オズオズ



サシャ「……甘えるって、なんですか?」

サシャ「どうすれば、いいんですか?」

ペトラ「サシャ……」ウルル

ペトラ「…ホラ可愛い! 皆見て! ホント可愛いでしょ!?」ギュウッ!

サシャ「うひゃー//」


------------


サシャ(ギュムギュムされてしまいました…)

サシャ(…年上だからと、軽く相談する内容じゃなかったんでしょうか…)

サシャ(でも、やっぱりペトラさんは優しいですねぇ…)フフッ

サシャ(…しばらくして帰ってきた団長には、お土産にリンゴをいっぱい頂いてしまいましたし…)

サシャ(…調査兵団は良い所です)ホクホク

サシャ(今度の休みには、アップルパイでも作りましょうか…)



ペトラ『……そんなの、意識してするコトじゃないよ』

ペトラ『もちろん誰かの真似する必要もない』

ペトラ『一緒にいたいと思ったら、素直にそう言えばいいだけじゃない?』

ペトラ『相手を好きなら、一緒にいたいと思うのは当たり前だもの』


サシャ(相手を… ジャンを好きなら…?)パカパカ

サシャ(ジャンは… ジャンは好きです… でも)


サシャ(甘えるコトと頼るコト…)

サシャ(我侭と依存… どう違うんですか?)

サシャ(お互いが対等に尊重し合うだけではいけないんですか…?)



――― 翌朝


サシャ「ふあぁぁ……」

ユミル「大アクビだな」

クリスタ「サシャ… 昨日は遅くまで起きてたでしょう?」

クリスタ「全然寝てないんじゃない? 大丈夫?」

サシャ「これくらい、よくあるコトですよ」

ユミル「だが、午前はお前の大嫌いな座学だぞ?」

ユミル「居眠りでもしてたら、評価が下がるんじゃないか?」

サシャ「眠ったりはしませんよ」

サシャ(でも、以前なら多分… 評価が多少下がったから何だと思っていたでしょうねぇ)



エレン「―― 自習? 座学の教官が急病?」

コニー「課題だけやればいいって… エレン、遊べるぞ!」ヒャッフゥー

アルミン「でも一応、課題は出てるからね?」アセアセ


マルコ「フゥン… これを用意してたって事は、抜き打ちの試験でもするつもりだったのかな…」

ジャン「しかし… 見回る人間がいねぇなら、他の奴の答え見放題じゃねぇかよ」

マルコ「フフ… ジャンはそんなコトしないだろうけどね」

ジャン「…そんなの、俺のためにならねぇだろうが」


ジャン(案の定… 皆で見せ合いながら、答えを埋めてるみたいだ)チラチラ


ジャン(こういう時… サシャは1人だな)

ジャン(……もう終わったのか? 時々何か書いては、ボンヤリ外を眺めてる)



ジャン「……よぅ、ちゃんと終わったのか?」

サシャ「ジャン//!」ハワワワ!

ジャン「……答えは一応埋めてるが… 計算式が全く書いてねぇじゃんか」

ジャン「前にも言おうと思ったけど、途中経過を書かねぇから見直しとかしないんじゃねぇのか?」

サシャ「わ… 私は元々一発勝負で…」クシャクシャ

ジャン「…何だ? 今、ナニ丸めたんだ?」

サシャ「アアァァ! これは見ちゃダメですうぅぅーー//!!」ガバッ

ジャン「…イタズラ書きしてるくらいなら、計算式をちゃんと書けよ」

ジャン「…ま、答えだけは俺のと同じようだが…」

ジャン「…これじゃ、人のを写したみたいじゃねぇか」ピラピラ

サシャ「……う」



サシャ「でも私… ずっとこうやってきて…」

サシャ「計算とか… ひとつひとつ書いていくの苦手で…」

サシャ「本当に、苦手で……」ジワッ

「それじゃ集めるよーー!」

サシャ「…答えだけはポッと出てくるのに」…ポロポロ

ジャン「あぁ! 俺は別に責めてるワケじゃ…」

サシャ「うぇ…っ ヒック、…ウエエェェーーン!!」ダダダッ …ポイッ ガララッ

ジャン「待てってサシャ!」ダッ…

「ジャン! 持って来て!!」

ジャン「あ、あぁ…」オロオロ



――― 裏庭


サシャ(…お昼ゴハン持って来ちゃいました)

サシャ(天気が良いから外で食べると、ココに来る途中クリスタには言っておきましたが…)

サシャ(…ジャンはきっと、呆れてしまったでしょうね)

サシャ「………」モグモグ

サシャ(イイ天気… 風もないし、日なたは暖かくて…)ゴロン

サシャ(ゴハン食べたら、なんだか眠くなってきました…)ボーッ

サシャ「」ウトウト


   …ザッ


サシャ(……人影?)


サシャ「ジャン!?」ガバッ!



ジャン「あ… わ、悪ィ… 起こしちまったか」アセアセ

ジャン「クリスタが… 庭に行ったって言うからよ… あ、あの…」

ジャン「さっき… その、すまなかった」

サシャ「イイエ、私こそあんなコトで泣き出したりして… スミマセンでした」

ジャン「あのよ、クリスタが… お前昨日、全然寝てないって」

ジャン「…サシャは何か、悩みがあるんじゃないかって言ってた」

サシャ「別に悩みなんてモノじゃ… ただちょっと考え事を…」

ジャン「でも、お前ココんとこ様子おかしいしよ」

ジャン「…俺じゃ話も聞かせてもらえねぇか?」

サシャ「そういうワケでは!」

ジャン「そんじゃ教えてくれよ、頼むから…」



----------------


ジャン「エット… それじゃ、その…」

ジャン「様子がおかしかったのって、そのぅ… 俺に甘えようと…?」

サシャ「………」コクリ

ジャン「丸っこくなってたり… ニンジン寄こそうとしたり」

ジャン「妙に寒がってたのも、帰りたくないとか言ったのも…?」

サシャ「……空回りばかりで、恥ずかしい限りです」

ジャン「」バッ!

サシャ「どうしました? 顔を覆って」

ジャン「だって… 可愛くて…… それに俺、全く気付けなかったのが情けなくて…」

サシャ「それは私のやり方が下手だったからです」

サシャ「甘えるコトと我侭の境い目も分からないし… もう、どうしていいか」



ジャン「境界なんてない」キッパリ

ジャン「お前が言うなら、どんな我侭でも俺は可愛いとしか思わない」

ジャン「絶対にだ」

サシャ「じゃあ… 我侭でもいいんですか?」

ジャン「ああ、どんどん言え。 さあ!」

サシャ「さあと言われても、すぐには思い浮かびません…」

サシャ「例えばジャンなら、どんなコトを?」

ジャン「俺がお前に? ウーン… さすがに今すぐ抱きたいとかは無理だしなぁ」

ジャン「…あ、さっきお前が丸めて捨てた紙…」ガサ

サシャ「見たんですか//!」

ジャン「だって気になって… そしたら、肉持ったサシャを、俺がおんぶしてる絵が描いてあったからよ」

ジャン「俺、取っておくから、また今度描いてくれよ。 …何枚でもいいからさ」

サシャ「…ハイ//」



ジャン「…そうだ、お前眠かったんだろ? さっき寝てたし。 午後は立体機動だ。 寝不足での立体機動は集中できねぇし危ないからな」

ジャン「起こしてやるから… 少し寝ろよ。 な?」

サシャ「ここに… いてくれるんですか?」

ジャン「もちろん」

サシャ「エヘ…// それならお言葉に甘えて少し…」ゴロン

ジャン「俺の上着もかけとけ」バサ

サシャ「でもそれじゃ、ジャンが…」

ジャン「平気。 俺は大丈夫だから… 寝ろ」

サシャ「……ひとつワガママを言っても?」

ジャン「何でも言え」

サシャ「……子守唄を… 歌ってくれませんか?」

ジャン「エ」

サシャ「ダメ… ですか?」

ジャン「お、俺は歌なんてその…// ちょ… チョットだけだぞ?」



――― 休日


サシャ「さぁ皆さん! アップルパイが焼けましたよ!!」

クリスタ「待ってました!」

ユミル「おぉ、イイ匂いだな」

コニー「ウマそ~」ジュルリ

ミーナ「お湯沸いたよ~! 皆、コーヒー紅茶どっちがいい?」

サシャ「では切り分けまして、と…」サクサク

クシャ「…ささ、召し上がれ」

エレン「母さんが昔焼いてくれたのを食べた以来だな」

ミカサ「おばさんのパイも美味しかったけど、これもとても美味しい」

アルミン「サシャはお菓子も作れるんだね」ニッコリ

サシャ「食べれる物なら何でも作りますよ!」



サシャ「…ジャン、これは大丈夫でしたか?」

サシャ「確か、甘い物はあまり好きではないと…」

ジャン「イヤ、リンゴ本来の味がして… 甘さ控えめだし、ウマイぞ?」

サシャ「あぅ… 甘さ控えめなのは、砂糖をケチったからで…」

マルコ「パイ生地もサクサクだし、スゴク美味しいよ?」

ジャン「俺も今度、何か作ろうかな…」

サシャ「ジャンも料理するんですか?」

ジャン「ま、これまでは芋の皮剥きくらいしかしたコトねぇが…」

サシャ「…包丁を使えるのは素晴らしいと思いますが、無理はしないでください …ン?」

アニ「………」

サシャ「おや、アニ… 複雑そうな顔をして…」

サシャ「あんまり口に合わなかったですかねぇ…」

アニ「……違う」

アニ「ただ… あと一口で食べ終わっちゃうと思って…」ジィーーー



サシャ「なんだ、そんなコトですか」

アニ「そんな事って!」

サシャ「今もうひとつ焼いてますから、すぐ出来上がりますよ?」

アニ「じゃあコレ… 食べてもいいの?」

ベルトルト「…フフ、足りなかったら僕の分もあげるよアニ」

アニ「………やった」ボソ

サシャ「アニ… アニは可愛いですねぇ」ニコニコ

アニ「また… 稽古つけてあげるよ」

サシャ「ありがとうございます。 色んな技教えてくださいね」




クリスタ「…サシャの悩みは解決したのかな?」フフッ

ユミル「いつだって、悩みを解決するのは自分自身か… それに関わる人間だけさ」



――― 部屋


サシャ(調査兵団で貰ったリンゴが全部なくなりました)

サシャ(…痛まないウチに使い切れて良かった)

サシャ(もちろん何個かは、普通に齧って食べましたけど…)

サシャ(自分が作った物を、皆が喜んで食べてくれるのは嬉しいです)



サシャ(ジャンが歌ってくれた子守唄……)

サシャ(……照れていたのか、少しかすれた甘い声…)


サシャ(…これから先、私は幾度眠れぬ夜を過ごすだろう)

サシャ(でもきっと… その度に思い出す)



サシャ(…卒業したら、皆が一緒ではいられない)

サシャ(そんなの、初めから分かっていたコトだけど…)

サシャ(…そしていつかは、あなたがあなたの道を目指す時が来るかもしれない)

サシャ(その時私はきっと、私の枕を涙で濡らすでしょう)



『― 眠れ眠れ 疾く眠りて
   朝まだき 覚めて見よ
    麗しき 百合の花
      微笑まん 枕もと ―』



サシャ(これから先の幾百、幾千の夜……)


サシャ(―― あなたの歌声に包まれて、私は眠る)






終わり



ジャン(――― 木々はその葉を落とし、北風が吹き始める)

ジャン(吐く息は白く… 手足の先がかじかむようになってきた)

ジャン(…今年の初雪は早いかもしれない)


ジャン(この時期になってくると、立体機動が辛い)

ジャン(馬術などと違い、手袋が着けられないからだ)

ジャン(ワイヤーの射出・巻取りや、ブレードの扱いは素手でなければ行えず…)

ジャン(身を切るような冷たい風の中、ひたすら俺達は目標を求めて飛ぶ)


ジャン(そんな中、サシャはといえば……)

サシャ「キャッホーーーーイ!!」ヒューーーン

ジャン(……やたら元気だ。 そしてコニーも…)

コニー「見っけェーーーー!!」ズバッ!

サシャ「アァッ! 私が先に見つけたのにぃ!!」パシュッ

ジャン(……狩猟民族というヤツは、寒さに鈍感なのだろうか?)



サシャ「……寒いに決まってるじゃないですか」

ジャン「だよな。 手もほっぺたもこんなに冷たいし…」サワサワ

コニー「まさかオレ達が、寒さも感じねぇバカだとでも思ったのか?」

ジャン「イヤイヤ、そうは言ってねぇが… ま、普通の感覚だと分かって安心した」

サシャ「でも、寒いのはキライじゃないんですよ」

ジャン「俺も暑いよりは寒い方がいいかな。 限度ってモンはあるが…」



ジャン(今年も… 849年も、残す所あと僅か)

ジャン(年末年始には4日間の休暇が与えられている)

ジャン(年が明ければ雪山訓練に、卒業試験…)

ジャン(最終的な上位10名は、解散式の日に発表される)

ジャン(油断は禁物… とはいえ余程のコトがない限り、俺の10位内は確定しているといっていいだろう)

ジャン(おそらくはサシャも……)



マルコ「今年は帰らないのかい? ジャン」

ジャン「…ン、まぁ俺は帰ろうと思えば、普段の休暇でも帰れるしよ」

ジャン「それより……」チラ


-----------


サシャ「私ですか? 私は今まで帰ったことはありませんが…」

クリスタ「でも長期休暇では、宿舎に戻らない時もあったじゃない」

サシャ「それは1人で山小屋に泊まっていたからで」

ユミル「今回はどうすんだ?」

サシャ「冬場ですから、山小屋は無理ですよ」

ジャン「………」



マルコ「今年は帰らないのかい? ジャン」

ジャン「…ン、まぁ俺は帰ろうと思えば、普段の休暇でも帰れるしよ」

ジャン「それより……」チラ


-----------


サシャ「私ですか? 私は今まで帰ったことはありませんが…」

クリスタ「でも長期休暇では、宿舎に戻らない時もあったじゃない」

サシャ「それは1人で山小屋に泊まっていたからで」

ユミル「今回はどうすんだ?」

サシャ「冬場ですから、山小屋は無理ですよ」

ジャン「………」

しくじった

――― 部屋


ジャン(1日… 1泊でいい)

ジャン(…サシャと夜を過ごしたい)

ジャン(できればあんまり街中じゃなく、街道沿いとかのこじんまりした宿で…)

ジャン(時間を気にせずゆっくりメシ食って、風呂入って…)

ジャン(そして2人で新しい年を迎えたい)

ジャン(サシャは嫌がるだろうか……)

ジャン(明日… 聞いてみようかな)



マルコ(ジャンはまた寝返りばかり打って…)



――― 翌日


サシャ「…年越し? 訓練所を出てどこか違う所でですか?」

ジャン「あ… ヤ、ヤならいいんだけどよ…」アセアセ

サシャ「構いませんよ。 たまにはいいんじゃないですか」

ジャン「ホントか!!」

サシャ「ちなみにどちらへ?」

ジャン「俺はドコでもいいんだが… こういう所行きたいって、あるか?」

サシャ「ハテ、特に思いつきませんが… あ、でもあまり人が多過ぎない方がいいですかね」

ジャン「俺もそう思ってたんだ! じゃ俺、ちょっと考えてみるから!」タタッ


ジャン(やった! 2人で… 2人でゆっくり年越しできる!)

ジャン(…そんで眠くなったら俺、ずっとこの手でサシャを抱きながら眠るんだ!)



ジャン(ドコがいいだろう…)ウキウキ

ジャン(トロスト区からエルミハ区への街道沿い近く… もちろん少しくらい外れたって平気だが…)

ジャン(川に近い所… 山の景色が綺麗な所…)

ジャン(…サシャはこれまで故郷に帰ったコトがないって言ってた)

ジャン(前にユミルも言ってたけど、帰らないのは何か理由があるからなんだろう…)

ジャン(…今回くらい、それに似た場所に行ってもいいんだろうか)


ジャン(昼に地図とか借りて来よう…)


ジャン(今更だけどサシャ…)

ジャン(…俺、お前と一緒にいたい)

ジャン(お前の喜ぶコト、何でもしてやりたいって思うんだ…)



――― 食堂


サシャ「……ジャン」

ジャン「どした? トレー持ったままで…」

サシャ「あの… 他の人には、まだ年越しの話をしてないんでしょうか?」

サシャ「ユミルに聞いても、知らないと言っていたので…」

ジャン「……あ」

サシャ「エ…? あ!」

サシャ「ス、スミマセン… 何でもないです//」ソソクサ


ジャン(そういや俺… 2人でとは言ってなかった…)

マルコ「…何の話だい?」

ジャン「イ、イヤその……//」



マルコ(…ジャンの様子からするに… サシャと2人でどこかへ行く計画を立てているんだろう)

マルコ(『年越し』とサシャは言っていた)

マルコ(ジャンはサシャと2人で、それを迎えるつもりなんだろう)

マルコ(一晩一緒… それは…)

マルコ(…ジャン、君は大人の階段を登ろうとしているんだね?)

マルコ(少し悲しいけれど… 僕は君を祝福したいよ)

マルコ(実際… これまであんなに刺々しかった君が、今はこんなに穏やかで…)フフ

マルコ(フランツの本が役立つ時が間近なんだろう?)


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ジャン(……って、マルコは思ってんだろうな)



ジャン「………」

ジャン(昼を早めに終えて、地図を借りてきたが…)

ジャン(…正直さっぱり分からねぇ)

ジャン(そもそも地形しか書いてないしな)

ジャン(…やっぱり街道沿いが無難なのか?)ウーム

ジャン(その地域に明るいヤツに訊くのが一番なんだが…)

ジャン(ローゼに住んでたヤツか…)ハッ!

ジャン(そうだ、コニーに訊いてみよう)


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コニー「…あ? 宿場だって?」

ジャン「あんまりザワザワしてねぇトコがいいんだが…」



コニー「騒がしくねぇトコか…」

コニー「…あ、そうだココ!」

コニー「このエルミハ区への街道の… ココを少し右に入った辺りは湖があって、ちょっとした観光地のハズだぞ?」

コニー「この時期なら人も少ねぇだろ、きっと」

コニー「でも、どうしたんだ? 急に…」

ジャン「…まぁ、色々知っておくのも悪くねぇと思ってよ」

ジャン「アリガトな! コニー」タタッ


ジャン(湖… 湖畔の宿…)

ジャン(サシャは気に入ってくれるかな?)



サシャ「…湖ですか!」

ジャン「いいか? その辺で…」

サシャ「私、湖好きなんです!」ニコニコ

ジャン「そ、そっか… 良かった」

サシャ「あ… それよりスミマセン… 私、てっきり皆で行くのだとばかり思って…」

ジャン「それは俺がちゃんと言わなかったから…」

ジャン「あの… イヤじゃねぇか?」

サシャ「ナゼです?」

ジャン「だ、だってよ…」

サシャ「私、故郷と訓練所の周りしか知らないから、嬉しいです!」ニッコリ

ジャン「///」



ジャン(…年末休暇の前には、数日かけて訓練所全体の掃除をしなければならない)

ジャン(各自の部屋は勿論のこと、食堂や沢山の倉庫… 講義室や準備室などもだ)

ジャン(俺はやるべき事はキッチリやる性分だが…)

ジャン(正直、この年末の掃除だけはダルくてやってられないと思ってた)

ジャン(訓練の方がよっぽどマシだとも…)


ジャン(…だが、今年はそれが待ち遠しくて仕方ない)

ジャン(全部を綺麗にしたら、きっと清々しい気分で休暇を迎えられる)



ライナー「…何だ? 最近のジャンは妙にご機嫌だな」

マルコ「フフ、何かイイ事でもあるんじゃないかな」



――― 2週間後


ジャン「……掃除だ」

ジャン「…お前ら! 掃除だぞ! キリキリ動きやがれ!!」

エレン「何だよジャン、妙に張り切って…」

コニー「お前、そんなに掃除好きだったか?」

ジャン「俺は元々、綺麗好きなんだよ」

ジャン「…さ、今日の分担チャッチャと終わらすぞ!」

ベルトルト「掃除でこんなに生き生きしてるジャンは初めて見たなぁ…」

アルミン「僕らは講義室だっけ?」

ミカサ「そう。 …やるからには、キチンとやらなければ」


ユミル「私らはドコだったか…」

クリスタ「食堂だよ」

サシャ「厨房も含みますね。 皆さんの食事を作っている所ですから、丁寧にやらないと…」



サシャ「♪~」フキフキ

クリスタ「ねぇ、随分頑張ってるけど… サシャってそんなに掃除好きだったっけ?」

サシャ「へ? 別に好きではないですよ?」

サシャ「でも、皆のゴハンを作る所ですから… 自分の部屋なんかより熱が入るのは確かですねぇ」

ユミル「サシャ… 休暇には、どっか出かけるんだろ?」

サシャ「ハイ! でも戻ったら皆には… 訓練所に残る皆には、何か美味しい物を作りますから!」

ユミル「そんなコト気にせずに、休みの間ぶらぶらと色んなトコ廻ってくりゃいいのに…」

サシャ「…フフ、ユミルはクリスタと2人だけで休暇を過ごしたいですか?」キュッキュ

ユミル「それもいいが… サシャの手料理は楽しみだしなぁ」

クリスタ「私も手伝うからね!」

サシャ「じゃあ、色々仕入れて帰ってきますから!」



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ジャン「……今日は疲れた」ハァ…

マルコ「ジャンは今日、張り切ってたもんね」フフ

ジャン「たかが掃除でも、真面目にやると結構疲れるモンだな…」

マルコ「でも… もうあと少しで休みだから」

ジャン「……マルコは家に帰るんだよな?」

マルコ「まぁね。 今年は訓練兵最後の年だし、今後の事もキチンと話しておきたいから」

ジャン「マルコは念願通り、憲兵団確定だろうに…」

マルコ「…ハハ、最後まで気は抜けないよ」

マルコ「ジャンこそ憲兵になりたいんだろう?」

ジャン「んん… なんかもう、ドコでも良くなってきた…」ウトウト

ジャン「でもマルコと一緒なら、憲兵団に行きてぇな… とりあえず… 俺は寝るよ」



マルコ(僕と一緒なら? …違うよジャン、今の君はきっと……)



―― 2日後


ミーナ「あ~、やっと終わったァ~!!」

アニ「疲れた…」

ベルトルト「でも、これでようやく明日から休みだよ」

ライナー「どこへ行く訳でもないが、のんびりできるだけでも有難いな」

ジャン「サシャ、明日朝メシ食ったらすぐ出られるようにできるか?」

サシャ「もう持ち物の支度はしてありますから大丈夫ですよ」

ライナー「何だ、2人はどこか出かけるのか?」

ジャン「ン… あ、あぁ」

ハンナ「私達はお互いの家に行くのよね、フランツ」

フランツ「うちの母もハンナが来てくれると喜ぶし、ハンナのお母さんは料理が上手だから、今から楽しみだよ」



――― 翌日・休暇1日目 食堂


  ザワザワザワ…

ジャン「…俺達も結構早起きしたってのに、皆随分と早いもんだな」

マルコ「帰郷組は少しでも早く訓練所を出て、家に戻りたいんじゃないかな」

サシャ「おはようございます、ジャン、マルコ」

マルコ「おはようサシャ」

ジャン「クリスタ達は?」

サシャ「まだ寝てますよ。 今日は食堂の閉まるギリギリまで寝てるんじゃないですか?」

サシャ「私はもう食べ終わったので、荷物を取りに戻って厩舎にいますね」

ジャン「あ… 俺も食ったらすぐ行くから」



-----------------


ジャン「…悪ィ、待たせちまったか?」

サシャ「全然! 馬を見ていましたし… それに今日帰る人たちが、入れ替わり立ち代わりで…」

サシャ「今は引けましたけど… ついさっきまで人がいっぱいでしたよ」

ジャン「そっか… ゴメンな、俺から声掛けたのに」

サシャ「いいですよ。 私は元々早起きですし… さ、行きましょう」

サシャ「…私、ずっと楽しみにしてたんです!」ニコニコ

ジャン「俺も…」

ジャン「俺も、こんなに休みが待ち遠しかったのは初めてだ」

ジャン「…アレ? 朝食のときは着てなかったけど、上着の中… カーディガン着てくんだ?」

サシャ「これ好きです! 着やすい上に暖かいですし…」

サシャ「部屋でも冷えると結構、羽織ったりしてるんですよ」



  …パッカラパッカラ


サシャ「…そうそう、少し寄り道して行ってもいいですか?」

ジャン「んぁ? 構わねぇよ、夕方までに着きゃいいんだし…」

ジャン「何すんだ?」

サシャ「明日戻ったら、お留守番の皆にゴハンをですね… 新年とはいっても、訓練所で出るものではたかが知れていますから」

サシャ「明日はさすがにお店も閉まっているでしょうから」

ジャン「そうだなぁ… 市場なんかも新年初日からはやってねぇよな」

ジャン「でも今日買って大丈夫なのか?」

サシャ「冬場ですから問題ないでしょう」

サシャ「食材を探してくる間、私の馬を見てもらってもいいですか?」

ジャン「それも勿論構わんが… 何買ってくるんだ?」

サシャ「それは見てから決めますよ」



ジャン(俺達は年末で賑わっている市場の手前で馬を止め、サシャは俺に馬を預けてサカサカと人込みに消えていった)

ジャン(何でだろう… アイツ、やっぱり人込み擦り抜けるのウマイよな)

  …ザワザワ

ジャン(市場はいつも人が多いけど… 今日は更に多い気がする)

ジャン(この辺の奴は皆、ココで買い込んで明日からの新年を過ごすんだろう)

ジャン(サシャが戻ったら、少し脇道に抜けて先に進もう)

ジャン(コニーの言っていた、湖畔の観光地…)

ジャン(どんなトコなんだろうな…)



サシャ「…スイマセン! お待たせして!」タッタッ

ジャン「ん、もういいのか? 早過ぎないか?」

サシャ「いやぁ… ザッと眺めてみたら、色々年末価格でですねぇ…」

サシャ「とりあえず、目に付いた安い物だけ買ってきました。 …ま、なんとかなるでしょう」



ジャン「それでも結構買い込んだように見えるが…」

サシャ「…フフ、うちの居残り組は欠食児童ばかりですからね」

サシャ「ああ見えて、ユミルもクリスタも出したら出した分は食べるんですよ?」

ジャン「そういや街に行くと、ライナーなんかもかなり食うな」

サシャ「ライナーはあの体格ですからねぇ…」

ジャン「ハハ、お前はそんなに細いのにな」

サシャ「常人と一緒にしてもらっては困りますよ」

サシャ「私は代謝と消化が良いんです」

ジャン「燃費が悪い、とも言うと思うが?」

サシャ「むうぅ…」

ジャン「冗談だって。 先を急ごうぜ」



ジャン(俺達は馬を走らせ、トロスト区からエルミハ区への街道を上り…)

ジャン(…コニーに聞いた所を右へ入っていく)

ジャン(しばらく進めば、そこには…)



サシャ「…うわぁ!」

サシャ「大きい湖ですねぇ! 向こう岸が見えませんよ!!」ワァーイ



ジャン(…見事な景観の湖が広がっていて)

ジャン(岸沿いには、いくつもの宿が並んでいた)


ジャン(これは… 想像してたよりイイんじゃねぇの?)



ジャン(買い物も済ませ、昼も途中で食ってきたが割と早く着いた)

ジャン(まずは今日の宿を探さないと…)

ジャン「…ちょっとそこら辺歩いてみようぜ」

サシャ「そうですね」

  テクテクトコトコ…

ジャン「へえぇ… やっぱ観光地なんだな」

サシャ「こう並んでいると、ドコにしようか迷ってしまいます」キョロキョロ


男「……アンタ達、ひょっとして宿を探しているのかい?」

ジャン「え? エェ、まあ…」

男「そんなら、ついておいでよ。 俺ァここの人間だし、大抵の宿に食材を卸してるから皆知り合いだ」

サシャ「ジャン、せっかくこう仰ってるんですから…」

ジャン「ウ、ウン…」

ジャン(…こうして俺達は、男の後について歩くことになった)



男「……ここ、ここはな」

ジャン「お勧めですか?」

男「逆だ。 見かけは大層立派だが、とにかくメシがまずい」

男「それなのに、料金だけは見かけ通り立派ときたモンだ。 …ありゃあ食材が泣いてるね」

サシャ「それは勿体ないですねぇ…」

  …テクテクテク

男「…ほら、ここだよ」

ジャン「ココ… ですか?」

ジャン(それは一見何の特徴もない… 一言で言えば可もなし不可もなしといった、地味な宿屋だった)

男「料理の味は地元で一番! …イヤ、壁内でも相当上の方だと思うぜ」

男「俺が卸した新鮮食材を、この宿ほど上手く使ってくれる所はないね」

男「馬の面倒もそりゃあキッチリ見てくれるし、何しろ価格が良心的だ」



男「親父さん! オーイ、親父さーーん!!」

ジャン「エ!? ちょ…」

主人「何だうるせえ。 人ン家の前で騒ぐんじゃねえ」バタン!

男「何だよ! せっかく客連れてきてやったのに…」

主人「客ぅ? …おぉ、こりゃまた随分と可愛らしいご夫婦だね」

サシャ「///」

ジャン(現れたのは赤ら顔の… 口調は乱暴だが、人の良さそうなオヤジだった)


-------------


ジャン「……何だかその場の勢いで宿決めちまったなぁ」

サシャ「良い人そうですし、いいじゃないですか。 それにゴハンが楽しみです!」ウキウキ


ジャン(先ほどの男は主人に『また後で!』と言って去って行き… 俺達は馬を繋ぎ、部屋へと案内された)



ジャン「まだ夕飯には間があるが… どうする?」

サシャ「少し散歩でもしませんか? 湖をそばで見たいです」

ジャン「そうだな、せっかく来たんだし… あ、上着ちゃんと着てけよ?」

サシャ「すぐ近くなのに…」

ジャン「ダーメ。 もう夕方だし、体を冷やすのは良くない」

サシャ「ふえぇい」モゾモゾ



ジャン「この時期は人が少ないと聞いたんだが… 割といるモンだな」テクテク



サシャ「湖……」

サシャ「私の故郷にも湖があって… こんなに大きくはないんですけどね」

サシャ「夏は釣りをして… でも冬になると、もう少ししたら氷が張ってしまうんです」



サシャ「水辺は… 川のせせらぎも好きですが、湖の静けさも私は好きです」

ジャン「……そっか」

ジャン(サシャの、故郷の話… サシャは何故多くを語らないんだろう)

ジャン(いつかそれも話してくれる日が来るんだろうか…)


サシャ「あ! 見てください夕焼けですよ!!」

ジャン「ホントだ… 凄ェな」

サシャ「湖の向こうに沈んでいきます。 …こんなに綺麗な夕焼けを見たのは久しぶりですよ!」



ジャン(頬を夕焼け色に染めて… 綺麗なのはサシャ、お前だと俺は思う)

ジャン(明るく元気で大らかで、野生の獣のように軽やかで優美だ)

ジャン(そしてお前は自分を飾らない… 奇跡みたいに綺麗な生き物だと、俺は思うんだ)



ジャン「…サシャ、そろそろ帰ろう」

サシャ「もう少しだけ… 全部が沈むまで…」

ジャン「………」



ジャン「…暗くなっちまった。 戻ろうぜ?」

サシャ「……あ! そうですねスミマセン、私ボーッとしちゃって…」

サシャ「とても… とても綺麗だったので、つい見入ってしまって」

ジャン「綺麗なのは……」

サシャ「へ?」

ジャン「…イヤ、何でもない。 サシャ」

ジャン「サシャ……」ギュ

サシャ「//!」



ジャン「今日… 抱くぞ」



--------------

    …ザワザワザワ


ジャン「何…だ? 夕食で降りて来たら、人がいっぱいじゃねぇか」

サシャ「賑わってますねぇ」

男「オーイ、アンタ達! そこの若夫婦!」

ジャン「あ… さっきの!」

男「ホラ、こっち来いよ! 早くしないと席なくなっちまうぞ!」ブンブン

ジャン「…ど、どうする? サシャ」

サシャ「構いませんよ。 ここを紹介してくれた人ですし」ニッコリ



男「…どうだい? この宿は」

ジャン「まだ、アンタがオススメだって言ってたメシ食ってねぇし」

男「何だ? さっきとは態度が違うな。 急に小生意気になって…」



サシャ「ジャン!」

ジャン「それに、そもそも俺達はまだ結婚してねぇの! ……まだ訓練兵なんだからよ」

男「そうか訓練兵か! だが『まだ』って事は、いずれするんだろ? 結婚」

ジャン「イヤ… それはしたいとは思ってるけどさ…//」ブツブツ

男「ハハ、ならいいじゃねぇか! 親父さーん」

男「この未来の若夫婦に酒! お代は俺にツケといてくれ!」

主人「あいよ。 …あ、お前! いくらお前が連れて来てくれたっていってもな! ウチの宿客に絡むんじゃねぇぞ!!」

サシャ「いいですよ、これくらい」ニコニコ

ジャン「エ… でも酒!?」

男「お前なぁ… どこの兵団に入るにしても、酒くらい飲めなきゃこの先やってけねぇぞ?」

ジャン「……う」

サシャ「私は大丈夫ですよ?」

主人「そんじゃ最初は果実酒かハチミツ酒にしとくか!」スタスタ

ジャン(最初は!?)



ジャン(…少しして運ばれてきた酒… 俺は果実酒を手に取り、サシャはハチミツ酒を持って男と乾杯した)

ジャン「なぁ… 何でココ、こんなに混んでんだ? 泊り客はそんなにいなかったと思うんだが…」

男「あ? ここはさっきも言った通り、飯がウマイってんで有名だからよ」

男「この宿の泊り客以外にも、地元の人間や… 噂を聞いた他の宿の客も来るんだよ」

男「普通の飯屋としてもやってるしな」

サシャ「やっぱり! 厨房からずっとイイ匂いがしていたので、ココは当たりだと思ってました!」

サシャ「教えてくれてありがとうございます!」

男「お、嬉しいねぇ… 兄ちゃんよ、嬢ちゃんの方はこんなに礼儀正しいのに、お前は何だってそんなに小生意気なんだ?」

ジャン「コイツは誰に対してもそうなの! そんで俺も、いつもこんななんだよ」

男「ハハハ、そんなんじゃ憲兵団には入れねぇぞ! あそこはうるさいらしいからな!」


主人「…ハイ、お待ち!」ドンッ



ジャン「ン、何だコレ? 真っ白で平べったい… パン?」

サシャ「…それに切った野菜がアレコレと… 薄切り肉? 魚の切り身を揚げた物も…」

男「そうか、食べ方知らねぇか」

男「いいか? コイツはこうして… ホラ、このパンみてぇなのは2つに折り畳んであんだろ?」

男「それをこうして手で開いて… 簡単に開くからよ。 そんで野菜やら肉やら、好きなモンを挟んで食うんだよ」

ジャン「へえぇ…」

男「一緒に持ってきた、壷煮のシチューも絶品だぜ?」

サシャ「ほほぅ」ズズ…

サシャ「…美味しい! ジャン、これは本当に絶品ですよ!!」

ジャン「マジだ。 凄ェ旨い…」

サシャ「わあぁーい! 美味しいゴハンー!」ハグハグモグモグ

男「おぉ! イイ食いっぷりだな、嬢ちゃん」

>>1だけど、昼に書いたヤツがどっかいっちゃった。7レス程度だけど、遅筆の>>1には致命傷
人生で泣いていいのは財布落とした時と、ハチに刺された時と、ンコ踏んづけた時だけって教わって生きてきたのに
今、結構涙目。行き当たりばったりだから内容覚えてないよ…

クッソー! 書いてやるってんだチクショウ!!


男「こりゃあ、ここいらの名物でな」

男「だが、この店… この宿ほど旨い蒸かしパンを食わせてくれる所はねぇ」

サシャ「本当に… フカフカのモチモチです」ハムハム

ジャン「なんも挟まなくても… このまま食っても旨いんだな」

ジャン「訓練所の堅いパンとは大違いだ」

主人「…気に入ってくれたかい?」

サシャ「ハイ、とても! 作り方を教えてほしいくらいです!!」

主人「そんなら、ちょっと厨房を覗いてみるかね?」

サシャ「ジャン、あの…」

ジャン「いいぜ? 見させてもらって来いよ」

サシャ「ハイ!」ニッコニコ



ジャン「……」キョロキョロ

男「どうした兄ちゃん?」

ジャン「…イヤ、客が一向に引けねぇなと思って」

ジャン「俺達より前にいた客らは、皆食い終わっててもいい頃だろうに…」

男「ここは酒も飲めるからな。 他に宿取ってる奴らは帰るだろうが、知ってる人間は帰らんだろうさ」

ジャン「へぇ…」

男「ここいらにゃ、年越しにはその年に収穫した果実酒の樽を開けて、祝おうって風習もあるしな」

男「俺も含めて、残ってる奴らは年越し待ちなんじゃねぇか?」

男「兄ちゃんも一緒にどうだ?」

ジャン「お、俺達はいいよ…」

ジャン「明日には帰るし、新年を二日酔いで迎えたくねぇもん」

男「フーン… 嬢ちゃんの方はかなりイケるクチだと思ったんだがなぁ」

男「それに、いーい嫁サンになりそうだ。 甲斐甲斐しいしよ」



ジャン「…でも、ホントにメシは旨かった」

ジャン「……感謝してるよ」

男「お? またしおらしくなったな」

男「ホラ、腹一杯になったんなら、また飲めよ!」トクトク

ジャン「あぁっ! こぼれるって!!」



サシャ「…ジャァーン!!」タカタカッ

サシャ「見せてもらいましたよぉー! あのですね! 水と塩と砂糖に少しラードを…」

サシャ「……どうしました?」



ジャン「お前… まだ酒飲める?」

サシャ「…お酒!」ワァーイ



--------------


ジャン「…結構飲んだ気がするなぁ。 お前が戻ってくるまでにも何杯か飲まされたし」

ジャン「でもあの後… サシャもあの果実酒の壷、空けるまで飲んでたよな」

ジャン「…平気か?」

サシャ「私は間を空けてましたし。 ジャンはお風呂一人で大丈夫ですか?」

ジャン「2人じゃ入れねぇだろ、さすがに」

サシャ「そりゃまぁ…//」

ジャン「どうせ俺のが先に上がるだろうから、部屋の鍵は俺持ってるな」

ジャン「…風呂で寝たりしないで、ちゃんと戻って来いよ?」

サシャ「ハ、ハイ」



ジャン(……風呂から上がって部屋に戻れば、下の喧騒など聞こえもしない)

ジャン(年明けまでは、まだ時間もある…)



サシャ「…ジャン」バタンッ!

サシャ「スイマセン、さっきも一人にさせてしまったのに…」

ジャン「いいよ、そんなの。 …あ! お前、髪ビッチョビチョ!!」

ジャン「こっち来い、拭いてやるから…」

サシャ「あぅ… でも待たせたら悪いかと思って…」アゥアゥ

ジャン「何もそんなに急がなくても… ホラ、ここ座れ」

サシャ「…ハイ」チョコン

ジャン「」ゴッシゴッシ…



ジャン「……ゴメンな? 人の少ない所がいいって言ってたのに…」…フキフキ

サシャ「そんな! ここの人達は、皆暖かくて私好きです!」

サシャ「厨房にいた、ご主人の奥さんも優しくて… 粉も一緒に捏ねさせてもらったんですよ!」ヘヘッ

サシャ「こういうの… 私、大好きです!」

ジャン「そりゃ良かった。 …あとお前さ、何気に酒強い?」

サシャ「強いかどうかは分かりませんが、故郷にいた頃は、今日より強いお酒を飲んだコトもありましたけど…」

ジャン「憲兵団に入るなら… もうちょっと酒も飲めなきゃいけないって言われた」

ジャン「ホントかどうかは分からねぇが… アソコなら、それも考えられそうなんだよな…」ブツブツ


ジャン「……こんなモンでいいか?」

サシャ「十分です」

ジャン「髪… 洗った髪、イイ匂いだなぁ…」スンスン

サシャ「ひゃ…//」

ジャン「…凄ェいい匂いだ」ギュウ…



ジャン「……脱がしていい?」

サシャ「ハ… ハイ…//」

ジャン「…手ェ抜いて腕上げて?」モソモソ …ペロ

サシャ「ひゃうッ!? わ、腋を舐めないでください//」

ジャン「石鹸の匂いがする… 腕、そのまま上げてて」ペロペロ

サシャ「うぅ… く、くすぐったいですぅ…」フルフル

ジャン「スカート…下着も汚さないウチに脱がしてやんないとな」

サシャ「あの、ジャンも……」

ジャン「…ン、ベッドに移るぞ …ヨッと」

サシャ「抱っこ//!?」


…トスッ



ジャン「……綺麗」

ジャン「何度見ても綺麗…」

ジャン「サシャの耳……」ハムッ

サシャ「ん、んンッ//!」ゾクンッ

ジャン「耳も… 首筋も…」ピチャピチャ …ムニッ

サシャ「ひゃ…ぁああッ…んん」

サシャ「はぅ、ン… あぁっ」

ジャン「胸… こんなに柔らかいのに、乳首は固くなってる」コリッ

サシャ「んはぁッ!…く、クチに出さない、でくださ… あぁっ//」

ジャン「……ん」ペロペロ クリクリ

サシャ「んっ…ぁあん! はぁぁ…ッ」ビクッ



ジャン「下は……?」…ヌルッ

サシャ「ひぁッ//! や、はぁあンッ!」ビクビクッ

ジャン「スッゲェ濡れてる…」クチュクチ

サシャ「あ、んああぁっ… はぁッ」

ジャン「…サシャ、気持ちイイ?」

サシャ「ん… んん、ひゃぁあンッ//」

ジャン「教えてくんないと分かんない」…ヌプッ

サシャ「はぁッ//! き、きも… ちい、れすぅ」

ジャン「感じてるサシャ、凄ェ可愛い…」グチュグチュジュプ

サシャ「ひあッ//!」ビックン!

サシャ「そ、そこ… ダメッ、で… んはあぁっ//」ゾクゾク

ジャン「…ココがイイんだ?」ジュプジュプ



サシャ「違ッ… そこ、はあぁっ//! や、おかし… んあぁぁッ」

ジャン「いいじゃん、おかしくなったって…」グチュッ グチュクチュ

ジャン「もっと感じろよ」グチュグチュジュプジュプ

サシャ「そんっ、は… 激し、や… やぁンッ!」

サシャ「ヘ… ヘン、になっ… あ! はああぁぁっ//」フルフル

サシャ「やあぁッ! も、ぁあッ… んはああぁァッ///!!!」ビクビクッ

サシャ「あ、ハァ… あぁぁ//」

ジャン「………超エロい」チュッ

ジャン「…サシャの声も、感じてる顔も大好き」

サシャ「ジャ、ジャン……」ハァ…


サシャ「……私にも」



サシャ「先に… 透明な……?」

ジャン「俺のガマンも限界ってこった」

サシャ「………」ペロッ

ジャン「ッ!」

サシャ「」ペロペロチュゥ

サシャ「ん… コレでいいんでしょうか」ペロ… レロレロ

ジャン「あ、あぁ。 …んっ」

サシャ「……ン、ンン」ハムッ

ジャン(く、咥えた!?)

サシャ「あむ…… んんん…」チュバチュバ

ジャン「……ん、っく」


ジュルジュルチュパチュパ…



ジャン「う……ンッ、サシャ、もういい」

ジャン「…これ以上はダメだ。 もう挿れたい」


-----------


サシャ「…はあッ! ん、あぅっ//」

ジャン「サシャん中… 超気持ちイイ」ズップズップ

サシャ「ジャ… ン、あぁっ//! キス、を… ひゃあぁンッ」

ジャン「……んっ」チュウ

サシャ「んむっ… ン」

ジャン「サ… サシャ、俺そろそろ…」

ジャン「ウ… も、ダメ… イキそ」パンパンパンッ

ジャン「ん…っく、……ンンンッ」



ジャン「ハアァァ… 満足」ギュム


  ワァァァーーーー!!


サシャ「何でしょう… さっきまであまり声も聞こえなかったのに、下が急に騒ぎ出して…」モソッ

ジャン「あ… そうだ、年越し!!」ガバッ

ジャン「サシャ一緒に毛布かぶって… ホラ!」

ジャン「窓の外… なんも見えねぇかもしれないけど…」バタンッ

サシャ「新年…? あちらこちらでまだ灯りがチラチラと… あ、雪が…」

ジャン「この辺りじゃ、年越しン時に樽酒開けて祝うんだって言ってた」

サシャ「小さな灯りがとても綺麗です…」

ジャン「……ン、所々雪が光って見える」



ジャン「……ここに来て良かった」

ジャン「こんな風に、お前と新しい年を迎えられて…」ギュ

ジャン「でも… 来年も、再来年もその次もずっとずっと…」

ジャン「…俺、こうやってお前と一緒に新年を迎えたい」

ジャン「サシャ大好き……」ギュウゥ


サシャ「………私も」ポソッ

ジャン「エッ!?」

サシャ「…エ?」

ジャン「私も… ナニ?」

サシャ「エ、あ… わ、私もそのぅ…」オロオロ

サシャ「ジャンが、すっ……」カアァ//

ジャン「続き! 続き聞かせろ!!」

サシャ「す、スキ… デス///」



ジャン「ホントか!?」

ジャン「ホントに俺のコト好きか?」

サシャ「ハ、ハイ…//」

ジャン「ヤッタァー!! …初めてお前から言ってくれた!」

サシャ「で、でも… そんなのはこれまで十分態度に出ていたような…//」

ジャン「違う! 俺… ずっと、お前の口からその言葉が聞きたかったんだ!」

ジャン「……良かった」ギュゥ

ジャン「俺… 強引だし、本当は無理して一緒にいるんじゃないかと思ったコトもあってさ…」

サシャ「そんなワケありませんよ!!」

ジャン「…俺、嬉しい」

ジャン「スッゲェ嬉しい! …最ッ高の新年だ!!」



ジャン(…寝巻きに着替えた俺達は、寒さも気にせず また外を眺める)

ジャン(年越しの祝いも終わったのか、窓から見える灯りはひとつ、またひとつと消えていき…)

ジャン(…下の食堂も静まり返った)



ジャン「……もう眠ろう、サシャ」

ジャン「一緒に眠ろう」

サシャ「あ… ウデ枕は…」

ジャン「腕枕キライか?」

サシャ「そうではありませんが、ひと晩では疲れてしまうでしょう。 ……私はこの方が」キュ

ジャン「ここ… またいつか来れたらいいな」

サシャ「そう… ですね…」ウトウト

サシャ「」スーー



ジャン(そうして俺達は手を繋ぎながら… 安らかな眠りにつく)



――― 休日2日目・朝


ジャン「んー! イイ朝だ」ノビー

ジャン「雪は少し積もってるけど、空が晴れ渡って…」

サシャ「湖面がキラキラ光って見えます!」

ジャン「……そんじゃ、朝メシ食って出るか!」


サシャ「あ… まだ少し寝グセが… フフ」チョイチョイ

ジャン「何だ、まだ笑ってんのか? しょうがねえだろ、俺は毎朝あんなモンなんだよ」

ジャン「エレンなんか、もっとヒデェぞ? …あ、ベルトルトもだな」

ジャン「しかもベルトルトがヒデェのは、寝グセだけじゃねぇし」

ジャン「コニーはまったく変わらんが…」

サシャ「コニーの髪に寝グセがつくなら、私も是非見てみたいですよ」トコトコ



主人「…おぉ、お二人さん! 昨夜はゆっくり眠れたかね?」

主人「スマンなぁ… 年越しで客が皆、盛り上がっちまって… うるさかったんじゃないかい?」

サシャ「全然! 逆に、年明けの時間が分かって有難いくらいでした」

サシャ「私… 私達、またここに来たいです!」ニコニコ

主人「お客さんにそう言って貰えるのが、俺らは何より嬉しいよ」

主人「母ちゃんも… 昨日厨房にいたババァだが… アンタと一緒に粉捏ねたのを、そりゃあ喜んでたよ」

主人「急に娘ができたみたいだってな! ハハハ」

サシャ「教えてもらったの、忘れないウチに作ってみますから!」




ジャン「……随分と仲良くなったんだな」

サシャ「それはやっぱり、厨房に入れてもらいましたし…」

サシャ「でもジャンは、あの案内してくれた男の人と仲良くなったんじゃないですか?」

ジャン「…ン? そういやそうだっけか?」



ジャン(宿の朝食は、やはり新鮮な野菜をふんだんに使った素晴らしい物で…)

ジャン(…朝だけに肉は出されなかったが、俺達の胃を十分に満足させてくれた)

ジャン(どうせ休みなんだから、もう一泊くらいしてってもいいかなと、ふと思ったが…)

ジャン(外出許可は一泊分しか出していないし…)

ジャン(何より、昨日サシャが買った食材が無駄になってしまうかもしれない)



ジャン(宿の出立前… 馬を出していたら、サシャを呼び止める女の人がいた)

ジャン(小柄でニコニコして… あれがここの奥さんなんだろうか)

ジャン(サシャと女性はいくつか会話をし… 一生懸命 首を振るサシャの手に、何か袋を握らせていた)




サシャ「……いいんでしょうか」パカパカ

ジャン「んぁ?」



サシャ「今夜はもうお客さんもほどんど来ないだろうからと、串焼き用のお肉を頂いてしまいました…」

サシャ「本当は凄く嬉しいんですけど、何だか申し訳ないような気がして…」

ジャン「…よっぽど気に入られたんだな」

ジャン「いいじゃねぇか。 切ってあるんなら、もう保存も効かねぇんだろ」パッカパッカ

ジャン「…また来りゃいいさ」

ジャン「今度は、皆を連れて来たっていい」

ジャン「そんで、皆でお礼言やぁいいじゃねぇか」

サシャ「そう… そうですね!」

サシャ「…ジャンはやっぱり頭がイイです!!」

ジャン「寝グセはつくがな」

サシャ「フフ… でも、寝グセ頭のジャンは可愛らしいですよ」ニコニコ

ジャン「んなッ//!?」



サシャ「…忘れないウチに」

ジャン「?」

サシャ「昨日教えてもらったの… 今日すぐにでも作ってみたいんですが…」

ジャン「あぁ、あのパンか」

サシャ「…同じ物が続いてしまうのはイヤですか?」

ジャン「別に? だってアレ、そのまま食ったって訓練所の硬ェパンなんか比べモンになんねぇくらいウマイし」

ジャン「それに、挟む物変えりゃ何度だって楽しめるからな」

ジャン「正直、毎日だっていいくらいだ」

サシャ「じゃあ!」パアァ

サシャ「じゃあ… 訓練所に戻ったら、私作ってもいいですか?」

サシャ「初めてですし、美味しく作れないかもしれませんが…」

ジャン「俺はいつだって… お前の作るモンなら、世界一のご馳走だと思ってるさ」



ジャン(行きのように買い物に寄らなかった分、帰り道は捗って… 訓練所に着いたのは、午後もまだ早い時間だった)


サシャ「それじゃ私、一旦部屋に戻ったら厨房で夕食の支度をするので… あの…」

サシャ「外に… ココの外に連れて行ってくれて、ありがとうございました!」


ジャン(俺は充足感と… それから少しの寂しさを感じながら部屋へと歩く)

ジャン(……途中、ライナーに会った)


ライナー「…ジャンもとうとう大人だな」

ジャン(そう言うライナーだったが… 俺は意味が分からなくて、ただ『ハァ?』と答えた)

ライナー「ジャンも、大人の男の仲間入りってことさ」

ジャン(…なるほど、そういうコトか。 そっちの話だったか)

ジャン「……でも、それよりもっとイイ事あったからさ」

ライナー「なっ! もっと良い事だと!? そりゃ何だ一体!!」

ライナー「ジャン、聞かせろ! 今夜聞かせろ!!」

ジャン「……教えない」



――― 夕食


サシャ「蒸し上がりましたよぉーー!!」タカタカ

ジャン「できたか!」

サシャ「さぁ! 中身はどうなっているでしょうか…… お! おぉ?」

クリスタ「ワアァ! 湯気が立って美味しそうじゃない!」

ユミル「随分白いんだな。 蒸かしたからか?」

サシャ「あぅ… 違う… コレ違いますぅ…」ウッ

サシャ「あそこほど、フンワカしてない…」ウルウル

ジャン「そんな一発目から作れるような代物だったら、あの店が繁盛してる意味がねぇだろ」

ジャン「そっちは? そっちは何だ?」

サシャ「あ… 頂いた串焼き用の肉を… そのまま焼いたのでは全員に行き渡らないので…」

サシャ「細かく叩いて繋ぎを入れて、ミートパテのようにしてみました。 パンに挟んでもいいかと思って…」

サシャ「…昨日買っておいた安めの野菜も適当に切ってあります。 …どれを挟んでも合うと思いますよ」



アルミン「新年だからか、訓練所でもいつものメニューに加えて、肉の薄切りを出してくれてる」

ベルトルト「少量だけどね」フフ

エレン「でも、スゲェご馳走じゃねーか!!」キラキラ

ライナー「残ってて良かったな、ベルトルト!」

ミカサ「好きな物を取って挟んで良いの?」

アニ「お肉…」

サシャ「あ! そうだ、次のヤツを蒸かしてる途中でした」

サシャ「またすぐ温かいのを持ってきますんで、皆さんは冷めないウチにそれをどうぞ!」タタッ



ジャン(…2度目も含め、サシャはパンの仕上がりが不出来だと嘆いていたが…)

ジャン(3度目が蒸し上がった後… サシャは何やら覚悟を決めたようだった)



サシャ「…ジャン、リベンジです! もう一度あそこに行って、今度は本格的に習ってきますよ!!」


ジャン(十分ウマイのになぁ… と思いつつも、そんなサシャを見ていると笑みがこぼれ…)

ジャン(…俺は、何でもお前の言う通りにしてやりたいと思うんだ)



ジャン(休暇は残り2日… 訓練所での生活も今年が最後)

ジャン(コニーやマルコが帰ってしまっているのは残念だが…)

ジャン(皆と過ごすのは良いモンだな…)

ジャン(…それにサシャ)

ジャン(お前の言葉が聞けて良かった)

ジャン(俺を好きだと言ってくれたその言葉を、俺は自信に変えて頑張っていける)



ジャン(もしも、お前も俺と同じように感じてくれるならサシャ… 何度だって言ってやろう)

ジャン(―― 俺はお前が好きなんだと)

終わり
レスありがとうございました

ID:6XKz1OHU ありがとう
昨日何となく会話的なものをしてたら、漠然と何か浮かんできたので書いてみる



ジャン(―― 845年、ウォール・マリアの陥落後、ウォール・ローゼ内では食料不足が深刻化…)

ジャン(そのため食料生産を目的として新たに森を切り開き、畑を整備し作物を育てる必要があった)

ジャン(マリア陥落後は訓練兵団に入団可能な12歳を迎え、開拓地に残る者は臆した腰抜けだと見なされていたのだが…)

ジャン(…846年、ローゼ内のある開拓地で凄惨な事件が起きた)

ジャン(2時間足らずで20名が死亡… 4名が重軽傷を負うという壁内史上類を見ない殺戮事件)

ジャン(…犯人は僅か14歳の少年だった)



ジャン(彼の両親は、マリア陥落時に他界… 祖母と一緒に開拓地に移るが)

ジャン(翌年の春… 他の皆と同じように訓練兵団に入った彼は、たった1ヶ月で兵士の資質なしと見なされ、開拓地に送り戻される…)


ジャン(…元々彼は、自分を他より優れた人間だと認識する傾向が強かったようで)

ジャン(意気揚々と入団したものの… わずかひと月での強制送還は、彼の誇りをいたく傷付けた)



ジャン(…元いた開拓地の者達も、彼の性格を知っていたからか、訓練所から戻された彼に中傷の言葉を浴びせていたらしい)


ジャン(戻ってきた開拓地… そこには幼馴染の少女もいたのだが…)

ジャン(彼女も、負傷した訳でもなく開拓地へ戻された彼には、冷たい態度を取ったようだ)

ジャン(…どんな恨みが彼の中で育っていったのだろう)

ジャン(846年、ウォール・マリア奪還作戦の前にその凶行は行われた)



ジャン(…彼が凶行の初めに手に掛けたのは、その祖母)

ジャン(それは後に残される祖母の未来を憂いたものかもしれないが…)

ジャン(土地の… 開墾用の斧で、祖母の首を落とすところから始まった)



ジャン(その後、開拓地で暮らす住民達は、訳の分からぬまま殺されていく…)



ジャン(…深夜に行われた凶行は、犯人である少年の自決をもって幕を締めた)

ジャン(これは無論、エレンやミカサ… アルミン達のいた開拓地ではない)


ジャン(だが… 2時間弱の殺戮の間に使われたのは、硬質ブレードと数種の銃器…)

ジャン(何故、開拓地で銃器が手に入ったのか…)

ジャン(そして犯人を生存の状態で確保できなかった、憲兵団の不手際…)

ジャン(それらは、その後行われた人口2割を投入するウォール・マリア奪還作戦のため有耶無耶にされ…)

ジャン(…銃器の入手経路も含め、数年経った今でも、すべてが謎に包まれたまま…)



ジャン(その翌年… 俺達は訓練兵団に入団した)


ジャン(これは俺が図書室の本で読んだ記録と… そして俺も幼かったが、当時の民衆の噂だった)



――― 図書室


サシャ「…何を読んでるんです?」

ジャン「おっと、こんな事件を調べに来たわけじゃなかったな」

ジャン「悪ィ、つい見入っちまって…」

サシャ「それはいいですけど…」

ジャン「…でも、ねぇな。 過去の馬術試験の内容」

サシャ「教官の説明では、何が何やらですもんねぇ…」

ジャン「そもそも卒業試験とはいえ、何で馬術の試験だけ7日間もあるんだ?」

ジャン「『馬場馬術』と『障害』…これで2日かけるのは分かるが…」

ジャン「残り5日は野外の耐久だろ? そんなに日数かける必要あんのか?」

サシャ「さぁ… でも、これだけ探しても見つからないなら、対策の仕様がないのかも…」

ジャン「そいつは困った… ま、明日にはちゃんと教官からの説明があんだろ」

津山事件か…どうアレンジされるのか期待!

これは期待

>>660>>661 出オチの可能性も…


ジャン(…休日である今日、俺達はその大半の時間を図書室で過ごした)

ジャン(卒業まで、あとひと月足らず…)

ジャン(…既に科目によっては、卒業試験のいくつかは行われ)

ジャン(残りは立体機動… そして馬術の試験)

ジャン(この馬術の試験について、昨日簡単な説明が行われた)

ジャン(まず馬場馬術… これは定められた経路で、いかに馬を正確に操るかを見る)

ジャン(次に障害馬術… 言葉の通り、いくつもの障害を飛び越え、足場の悪い場所や川を渡ったりもする)

ジャン(そして総合馬術…)

ジャン(訓練所を出、ローゼ内に設けられた何箇所ものチェックポイント… それらを廻り、ここに戻ってくるというものだ)

ジャン(これについては、1人で廻ってもいい… 何人かで組んで廻ることも可能)

ジャン(しかし必ずメンバーを… 1人で行くなら自分の名を、数名であるなら全員の名を記入し、事前に提出しなくてはならない)



ジャン(…図書室に過去の馬術試験の内容を書いたものはなかったが)

ジャン(どこから聞いたのか、アルミンが言うには… 総合馬術は、ここ南側の訓練所だけでなく…)

ジャン(東西南北、全ての訓練所で日を合わせて行われるらしい)

ジャン(5日間で一体どれだけのチェックポイントを廻らなければならないのか、それはまだ分からないが…)

ジャン(一緒に廻ろうとサシャに申し出、それを快く受けてもらったのは言うまでもない)

ジャン(雪山の時とは違う… やはり訓練ではあるが、だが今度は2人だけだ)

ジャン(別にやましい気持ちがあるワケじゃない。 …なんといっても試験だし)

ジャン(だが5日もの間、2人で助け合い協力し、なんて… こんな素晴らしい試験もあるんだ!)


ジャン(…ともあれ資料がないのでは、対策の仕様もない)

ジャン(行き当たりばったりになるかもしれないが、条件は皆同じだ)

ジャン(そして野外での… 無論それだけでないが、サシャの能力は素晴らしいと思う)

ジャン(俺は俺にできるコトを頑張りたい)



――― 翌日


キース「…全ての名前が出揃った」

キース「今年は個人で廻る者はいないが… 各グループに、それぞれのチェックポイントを記した地図を渡す」

キース「ポイントには、そこを廻る者達の氏名を書いた紙が届けられている」

キース「注意事項としては……」



ジャン(注意事項… まず訓練終了まで、移動時には決して訓練着を脱いではいけない)

ジャン(夜、眠る時だけは着替えてもいいそうだ)

ジャン(5日分の食事代… 及び宿代は、贅沢をしなければ何とか足りる程度に支給される)

ジャン(個人の金… それに食べ物は持っては行けない)

ジャン(少量ではあるが一応、携帯食糧も事前に配られる)



ジャン(禁止されている物を除けば… あとは寝袋でもテントでも、自由に持ち出していいそうだ)

ジャン(ただ訓練所に戻ってきた際、馬の状態も確認されるため…)

ジャン(長距離ということもあって、重量の荷を積んで、あまり馬に無茶をかけるようなコトはできない)


ジャン(そして最後の… 最大の注意点)

ジャン(地図に記されたチェックポイント… これを1つでも抜かした者)

ジャン(それに5日目の日没を過ぎた者… これらは失格となり、一切の点数を貰えず…)

ジャン(…逆に早く帰ったとしても、これも別段、加点にはならない)


ジャン(出発は3日後… 明日にでも、サシャとまた話し合おう)

ジャン(贅沢をしなければ、宿にも泊まれる…)ウキウキ



マルコ(僕はコニーと組むことになったけど… ジャン、とても楽しそうだなぁ…)



――― 馬術試験1日目(馬場馬術)


サシャ「……これはやっぱりクリスタの一人勝ちでしょうねぇ」

クリスタ「ウフフ、サシャもとっても上手だったじゃない」

ユミル「サシャの馬は、落ち着きが足りないんだよ」

ユミル「乗り手にそっくりだ」

サシャ「あうぅ… 正確に、とかいうのはどうも苦手でして…」

ジャン「だが、サシャは障害とかは得意だろ?」

クリスタ「そうよ、そっちではさすがに敵わないよ」

サシャ「障害… 確かに得意だし、好きではあるんですけど… これはコニーも大の得意なんですよねぇ…」

ユミル「そんじゃ明日はコニーとの一騎打ちか」

サシャ「が、頑張ってみます…」



――― 夕食後


ジャン「そんじゃ、この箇所で一回チェックしてその付近で一泊… その後遠い所から順に廻って行くか?」

サシャ「そうですね、途中何があるか分かりませんし…」

サシャ「遠い所からの方が、後半安心して廻れるでしょう」

ベルトルト「…ン、2人で明後日からの相談かい?」

ライナー「お前達はまだマシだろう… これを見ろ」

ジャン「うっわ! こんなトコまで行くのか? ほぼ北じゃねぇか!」

サシャ「代わりにチェックポイントは少ないんですね」

ベルトルト「色々回り道しなくていい分、結局皆と同じくらいの距離になるのかな」

ジャン「途中の宿探しやらが大変そうだな」

サシャ「やっぱりベルトルトは、今回もライナーと2人ですか?」

ライナー「イヤ… 今回は、アニも含めて3人だ」

ジャン「アニか… そんなに仲良かったっけ?」



ベルトルト「違うんだよ」フフッ

ライナー「自分一人の名だけ書いた紙を持って、教官室の前でウロウロしていたからな」

ベルトルト「せっかくだしと思って、声を掛けたんだ」

ジャン「…夜とか、手ェ出して逆に蹴り飛ばされるようなマネすんなよ?」

ライナー「俺はそんな不埒な事はせん!」

ジャン「ハハッ」

ライナー「俺はジャン、お前にこそ言いたいぞ?」

ライナー「いくらお前らがそういう仲だといってもな、これは訓練… 卒業試験だ」

ベルトルト「そうそう、ハメを外すようなコトしちゃ駄目だよ?」

ジャン「なッ!? 俺はその辺のケジメはちゃんとだな//!」

ライナー「ハハ、冗談だ。 エレンはやはりミカサ、アルミンと一緒か」

ジャン「マルコはコニーと行くって言ってた」

サシャ「クリスタとユミルは勿論一緒ですよ」

ベルトルト「全訓練所の合同試験というコトは、他の訓練所の人にも会うかもしれないんだね」



――― 馬術試験2日目(障害)


サシャ「………負けた」ガックシ

クリスタ「ま… まだ結果は分からないじゃない」

サシャ「だって私… バーを1本倒してしまったんです」

サシャ「コニーは完璧だったのに…」ウゥ…

ジャン「あんだけできりゃ、十分だと思うがなぁ」

サシャ「だって私コレしか! 一番になれそうなもの、コレしかなかったんですよ」ウルウル

ユミル「大した進歩じゃないか」

ユミル「…以前のサシャなら一番でもビリッケツでも、気にも留めなかっただろ?」

サシャ「…ん? そうでしたっけ?」

ユミル「そうさ、一番になりたいと思うようになっただけ、進歩したってコトだよ」



――― 部屋


マルコ「…いよいよ明日からか」

ジャン「こんなに何の対策も練れねぇ試験ってのは初めてだな」

マルコ「道を間違えたりせず、正確にポイントを廻るコト…」

マルコ「馬を酷使し過ぎないコト… 餌や水やり、マッサージ代わりのブラッシングも欠かせないよ」

ジャン「後は最終日の日没までに帰る、か…」

マルコ「深い森の中を通る時には、熊なんかも現れるかもしれないね」

ジャン「だが立体機動装置は持ってけねぇが、小銃は携帯可能だろ?」

マルコ「使わずに済めばいいんだけど…」

ジャン「サシャは、今度も弓を持って行くって言ってたなぁ」

マルコ「ハハ、勇ましいじゃないか」

マルコ「いちいち店に寄らないでも、食糧を現地調達できるかもしれないよ?」

ジャン「…さすがにそれはねぇだろ」



――― 総合馬術試験1日目・朝


エレン「何だ? このでっかい名札……」

コニー「ダセェ…」

ジャン「こんなの着けてたら、すれ違った人間に名前も所属もバレちまうじゃねぇか」

ベルトルト「チェックポイントで、いちいち名前と所属… そういうのを言ったり書いたりしなくて済むようにじゃない?」

ライナー「なるほど、時間の短縮もあるのか」

マルコ「ポイントで待機する人達にとっても、その方が楽なのかもしれないね」

クリスタ「あ… 教官が出てきた」

ユミル「いよいよ出発か?」



キース「…支給品、及び金は全てに行き渡ったな!」



キース「先日説明した通りだが…」

キース「…この5日間、決して兵士として恥ずべき行いはするな!!」

キース「では… 出発!!」


  …パカラッ パカラッ!


ジャン「…お前ら! ヘマすんじゃねぇぞ!!」

ライナー「ジャンこそ訓練というコトを忘れるなよ!!」

ジャン「行くぞサシャ!」

サシャ「ハイ! …クリスタ、ユミル! 気を付けて!!」

ユミル「ああ、また5日後にな!」

クリスタ「…サシャ! 途中で変なモノ食べちゃダメだよ!!」パッカパッカ

ジャン「マルコ、またな!」

コニー「オレ達より自分の心配しやがれ!!」



  パッカラ パッカラ…


サシャ「…皆、各々のポイント… グループで決めたコースを目指して、分かれてしまいましたねぇ…」

ジャン「お前はアイツらのコトが好きなんだな… 出掛けに皆、声掛けてやってたじゃねぇか」

サシャ「それは3年も一緒に過ごしてきましたし…」

サシャ「色んな個性があるけども、皆大好きですよ? …ジャンは違うんですか?」

ジャン「俺!? …イヤ俺も、誰もキライじゃねぇよ」

ジャン「そりゃ目指す物が違うヤツもいるが… これまでツライ訓練乗り越えてやってきたんだからよ」

ジャン「でも、やっぱエレンはムカつくがな」

サシャ「…フフッ」パカパカ

ジャン「何だよ、何で笑うんだ?」

サシャ「イエ… もしジャンかエレンの性別が違ったら、大層仲の良いカップルになったのではないかと思って…」

ジャン「ハアァ!? ンなワケねぇだろ!!」

ジャン「つーか、そんなの想像もできねぇよ!」



ジャン(障害の試験では、コニーに負けたと嘆いていたサシャだが…)

ジャン(…やはりこうして見ると、まるで手足のように馬を扱う)

ジャン(ユミルはサシャの馬を落ち着きがない、と評していたが…)

ジャン(…きっと、それは褒め言葉だ)

ジャン(今こうして見れば、サシャもその馬も呆れるほど自由に見える)

ジャン(一心同体となって、春の風を全身に感じているように見える)


サシャ「……色々見て回れるんですね」

ジャン「?」

サシャ「訓練… 試験ではあるけれど、色んな所を見るコトができるんですね!」ニコニコ

ジャン「そう、だな……」



ジャン(何でだろう… お前のそういう飾らない笑顔を見ると、変に邪推しちまってる俺が汚いモノだって感じてしまうんだ…)

今夜か明日から再開する



   …パッカラ パッカラ


ジャン「…サシャ、もうすぐ昼だがどうする?」

サシャ「ここら辺のポイントでチェックしている人達もチラホラ見えますが…」

サシャ「私達は当初の予定通り、もう少し先まで行きましょう」

ジャン「…腹大丈夫か? 今回は頑張って早く帰っても、何の加点にもならないんだぞ?」

サシャ「だからこそですよ!」

サシャ「期間内に帰りさえすれば良いというのなら、最初に頑張れば後で遊ぶこともできるじゃないですか!」

サシャ「そりゃあ所持金は限られてますけど……」

サシャ「でも私は飢えるコトには慣れていますからね! できるだけ今日チェックするポイントの近くへ行きましょう」

ジャン「…そっか。 俺は全然構わねぇけどよ」



ジャン「……俺、何グループかの地図見せてもらったけどさ」

ジャン「まぁ俺達ントコもいくつかあるけど… チェックポイントって、兵団の支部だけじゃないのな」

サシャ「地図上に×印だけが書かれた、ただの宿屋やら… 倉庫みたいな所もあるみたいですからねぇ…」

サシャ「でも、予定通りに回れれば、あの新年に行った… 湖畔の観光地も通れそうですよね!」

ジャン「…お、やっぱ気付いてたか! 多少回り道しても、あそこには寄りたいよな!」

サシャ「いやぁ… あそこは何せゴハンが美味しかったですし… それに予算が許さなくても、挨拶くらいはできるでしょうから」



ジャン「…ン、ここもチェックポイントなのか?」パカッ…

ジャン「知らない顔だな…」

サシャ「東地区の訓練兵じゃないですか?」

ジャン「だろうな… そんじゃココ過ぎた所でメシにするか。 …とりあえず目立った店もねぇし、携帯食糧でいいか?」

サシャ「うわぁーい! ゴハンー!!」

ジャン「何だ、お前やっぱりメシ楽しみにしてたんじゃねぇか」フフッ

サシャ「たとえ味気なくても、空腹の私にとってはご馳走ですよ!!」



サシャ「ゴハン、ゴハン…」ウキウキ

サシャ「さっき通った道で何か買っても良かったんですけど…… オヤ?」

ジャン「どした? ……あ」

サシャ「積荷… 崩しちゃったオジサンがいますねぇ…」

ジャン「……どうする?」

サシャ「それは見過ごすワケにもいかないでしょう。 …3人でやれば、きっとすぐ片付きますよ」

サシャ「ジャン、いいですか?」

ジャン「もちろん」


ジャン(崩れた積荷は3人で片付けてみれば、ものの数分とかからなかった)

ジャン(オッサンはニコニコと嬉しそうに、お礼と言ってパンとチーズの欠片をくれた)

ジャン(こりゃオッサンの昼メシじゃねぇのかと遠慮した俺達だったが…)

ジャン(こちらに押し付けるように手渡してきたので、有難く頂戴することにした)



サシャ「携帯食糧は取っておいて損はありませんから…」

サシャ「パン… チーズも美味しいですねぇ」ホクホク

サシャ「お昼、得しちゃいました」

ジャン「…そうだな」モクモク

サシャ「……どうかしました?」

ジャン「ン? イヤ… このパン結構ウマイなぁと…」

サシャ「パンでしたら、あの真っ白の蒸かしパン! 今度こそ作り方をしっかり教わりますから…」

サシャ「…ですから、なんとしてもアソコに寄りたいものです」

ジャン「うまくいきゃ、4日目の午前中くらいには着けるか?」

サシャ「予定通りなら帰りはアソコのちょっと手前に最後のポイントがあるだけですし、それから先は訓練所に戻るだけですもんね」



-------------


ジャン「……ようやく最初のチェックポイントに着いた」

サシャ「一応名乗りましたけど… やっぱりこの名札を見て書類に記入してましたね」

ジャン「ここに寄るのは俺達だけじゃねぇからな」

ジャン「…さて、今日はここらで宿探して、明日は一番遠いポイントか」

サシャ「まぁ、そこさえ行ってしまえば、後は大回りですが帰ってくるだけですから」

サシャ「今名乗ってた人達も、これから宿探しでしょうか」


ジャン「ン…? サシャ、アレ……」

サシャ「おやまぁ… 馬車の車輪が溝に引っ掛かって、抜け出せなくなってますね」

ジャン「ジイサン1人で大変そうだ… あ、あの訓練兵、横を通ったってのに見て見ぬフリだぞ」

サシャ「気の毒に…… 行ってあげましょう」



    …ガタッ! ガタゴト

老人「…イヤありがとう。助かったよ」

サシャ「おや、このお馬さん… よく見たら、随分とお年寄りです。 …年をとっても働き者なんですねぇ」ナデナデ

老人「ワシと一緒さ。 …しかし今日は遠くの市まで行ったから、さすがにヘバってしまったかな」

サシャ「うぅむ… このお年でこれだけの荷物を引かせるのは、何だか気の毒です」

ジャン「ジイサン、家までは遠いのか?」

老人「すぐ近くとは言えないが、夕方前には着く距離さ」

ジャン「そんならジイサンの馬外して、俺の馬に引いてもらおう。 …サシャ、金具外してくれるか?」

サシャ「ハイ!」

老人「でもそれじゃ悪いから…」

サシャ「私達はもう今夜の宿を探すだけですから。 …オジイサンもお馬さんも、少し休んだ方がいいですよ」

サシャ「ジイサン、後ろ乗んな。 道案内だけ頼むぜ」

サシャ「こちらのお馬さんは、私が連れて横を歩きますから」



老人「……本当にすまなかった。 荷下ろしまで手伝ってもらって」

ジャン「いいよそんなの。 そんじゃ俺達行くから…」

老人「待ちなさい。 …君らはさっき、今夜の宿を探していると言ってたろう?」

老人「…せめてものお礼だ。 夕食をご馳走させてくれ」

老人「それと、あちらの離れ… 小屋みたいなものだが、あそこでよければ泊まっていくといい」

サシャ「エ… でも大したコトをしたワケでもないのに…」

老人「だが、今から先ほどの所へ戻って宿を探すのも大変だろう? あんな小屋で申し訳ないけども…」


ジャン(……サシャと少し話した結果、確かに今から戻っても安い宿を探せるか分からないということもあり、ジイサンの厚意に甘えさせてもらうことになった)


サシャ「私、夕食のお手伝いをしてきます」

ジャン「そんじゃ俺、馬の面倒見てるから、メシになったら呼んでくれ」

サシャ「ハイ!」



-------------------


ジャン(良い事すると、良い事が返ってくるモンだな……)ゴシゴシ

ジャン(馬に餌と水をやり、ブラッシングしながら俺はそんなことを考えていたが……)

ジャン(アレ…? ジイサンの馬… 確かに年は取っているが、こりゃ相当イイ馬だぞ?)

ジャン(もしかしてこれは、ひょっとしてひょっとすると……)



サシャ「ジャーン! ゴハンできましたよー!!」

ジャン「…ああ、今行く」



ジャン(……イヤ、気のせいだろう)

ジャン(ダメだなどうも… 俺は考え過ぎちまって……)



老人「……泊まっておいき、とは言ったが… 実はお客用の毛布などないんだが…」

サシャ「そんなの! 雨風をしのげる所で眠れるだけ有難いですよ! ねぇ、ジャン」

ジャン「そうだなぁ… なんせ今は訓練中だし、贅沢言ったらバチ当たるだろ」

サシャ「寝袋は持参してますしね!」

老人「ほう、訓練中だったのかい」

サシャ「エエ! 総合馬術といって、5日間の野外訓練なんです」

老人「ほぅほぅ」ニコニコ


ジャン(……サシャも手伝ったという夕食は、質素だが温かかくて)

ジャン(暖炉の火も優しく暖かく… ジイサンは俺達の会話をずっとニコニコしながら聞いていて、その時間はとても楽しく過ぎた)



ジャン(…夕食後、礼を言い俺は先に小屋へ2人の荷物を運び待っていたのだが…)

ジャン(片付けも手伝い、後からやって来たサシャは、バケツ一杯の水も持ってきた)



ジャン「…それ、何すんだ?」

サシャ「さすがにこの訓練中、お風呂までは期待できないですからね。 せめて顔と体だけでも拭いておこうかと…」

ジャン「そっか……」ジィッ

サシャ「あの… う、後ろを向いていてもらえないですか?」

ジャン「何で?」

サシャ「それはだって… 恥ずかしいじゃないですか//」

ジャン「俺は気にしねぇよ?」

サシャ「私は気にするんですよ。 …ホラ、ジャンの分のタオルもありますから」グイグイ

ジャン「分かった分かった」


    ゴシゴシ フキフキ…


ジャン(……見ないでくれとは言われたけれど、少しだけ振り返って見てみれば、上半身裸のサシャが後ろ向きで腕を拭いていた)

ジャン(細い腕に肩甲骨、背骨… 腰までのライン… それは白く綺麗で見事に均整が取れている)


ジャン(ヤバイ俺… 今夜、大丈夫かな……)フキフキ



サシャ「さぁ、明日も1日頑張らないといけませんからね。 …もう寝ましょう」

ジャン「雪山ン時みたいに、交代で眠る必要がなくて良かったな」

サシャ「野宿だったら、さすがに一緒は無理でしょうが… あの、ジャン」

ジャン「どした?」

サシャ「……もう少し寄っても?」

ジャン「いいぜ、来いよ」

サシャ「エヘ…//」モゾモゾ

ジャン「サシャ、みの虫みてぇだ」ハハ

サシャ「フフ… お休みなさい、また明日……」


ジャン(…サシャが寄り添い、少し出した手で俺の寝袋をつまんで目を閉じる)

ジャン(今日は結局、金も携帯食糧も減らすことがなく済んだ)


ジャン(訓練はあと4日… 天気に恵まれますように……)



――― 総合馬術試験2日目


サシャ「……ン、むむ…」

ジャン「お、目ェ覚めたか」

サシャ「…エ!? もしかして私、寝坊しちゃいました?」ガバッ!

ジャン「イヤ、俺が早く起きちまっただけ。 外に水汲んであるから顔洗ってこい」


---------------


サシャ「…それじゃアリガトウございました!」

老人「ハイ、これ朝飯に持ってきな」スッ

サシャ「そんな! 悪いですよ!」

老人「ハハ、結局水汲みまでさせてしまって…」

老人「大した物じゃないし、昨日少々買い過ぎてしまったからな。 …いいから持って行きなさい」



   パッカラパッカラ…


ジャン「なんだかんだで、色々世話になっちまったなぁ…」

サシャ「世の中イイ人ばかりです」

ジャン「どうもそれだけじゃねぇような気もすんだが…… そうだサシャ、この先の道どうする?」

サシャ「平地の大回りか、山の近道かですか… どちらでも構わないと思いますが…」

サシャ「帰りが平地の大回りコースですから、山を行ってもいいかもしれませんね」

サシャ「平地より迷いやすいというだけで、決して馬で走っても難しい道ではなさそうですし……」

ジャン「迷いやすいってのが問題なんだよな… サシャ、任せていいか?」

サシャ「ドンと来いですよ」

ジャン「そんじゃ山だ。 …右入るぞ!」パカッ



------------


ジャン「ウーン… こりゃ山だな」パカパカ

サシャ「山ですねぇ…… 飛ばし過ぎると枝にぶつかったりしますから、気を付けてください」

ジャン「…見たコトもねぇ花が咲いてる」

サシャ「私は食べられる物以外は、あまり詳しくないですが…」

ジャン「その辺はサシャらしいと思うぞ?」

サシャ「…あれ? ジャン、ちょっと待ってください!」パカラッ

ジャン「どした、迷ったか?」ブルルッ

サシャ「そうではなく、あそこ見てください」

ジャン「何だ… 煙?」

サシャ「火事とかではないみたいですが…」

ジャン「ちょっと近くに行ってみるか」

サシャ「エエ!!」



ジャン「……何だこりゃ。 湯か?」

サシャ「湯気… だったみたいですねぇ」

ジャン「こんなの見たコトねぇな。 …サシャは?」

サシャ「見たコトはありませんが、聞いたコトなら… 多分」

サシャ「壁内にはいくつか、地中から温水が湧出している所があると」

サシャ「温水の成分によっては、冷えや関節痛… 様々な病気に効果があるそうですが……」

ジャン「そんじゃこれは、そのひとつってコトなのか?」

サシャ「さぁ… でも、こんな所に……」

ジャン「触ってみていいかな…」チャプ

サシャ「……どうです?」


ジャン「…超あったかい。 なんつーか、凄ェイイ湯加減」



ジャン「……入っちゃダメかな、コレ」

サシャ「熱くも冷たくもないのなら、ダメというコトもないでしょうが…… でも外ですよ?」

サシャ「熊なんかが現れたら大変じゃないですか?」

ジャン「大丈夫だろ? チョットくらいならさ。 今日は例のチェックポイント行って、後は宿探すだけだし…」

サシャ「ふむ… それなら、ジャンはどうぞ入ってください。 私は周りを見てますから」

ジャン「サシャは?」

サシャ「私はいいですよぅ」

ジャン「……そんならいい。 やめる」

サシャ「エ、せっかくですから入ればいいじゃないですか」

ジャン「サシャが入んないなら俺もいい。 …行こ」

サシャ「で、でも……」オロオロ

ジャン「一緒に入る?」

サシャ「あうぅ……」



   …チャプン


サシャ「…オヤ、これはなんと言いますか、とても……」

ジャン「イイ湯だろ?」

サシャ「ハイ、すごく」

   ピー チチチ…

ジャン「のどかだなぁ… とてもじゃないが試験中とは思えねぇ…」パシャパシャ

サシャ「ふぅむ… 温まります。 昨日お風呂に入れなかったから、特に気持ち良く感じますよ」

ジャン「サーシャー」ズイッ

サシャ「ふわっ!? 何です?」

ジャン「もっとこっち来いよ」

サシャ「イエイエ、その… 一応訓練中ですし」アセアセ



サシャ「ホラ… ベルトルトにも、羽目を外すなと言われたじゃないですか」

ジャン「いいよそんなの別に。 …な?」ギュム

サシャ「ひゃあぁ//」

ジャン「んー、背中スベスベー」スリスリ

サシャ「ダ、ダメですからね?」

ジャン「チョットだけチョットだけ…」カプッ

サシャ「ンンッ… か、噛まないでぇ…//」

サシャ「だ… 誰か… 私達みたいに近道しようとした人が通ったりしたら… あっ」

ジャン「そりゃイカン! サシャ、温まったか?」ザバッ

サシャ「おかげさまで……」

ジャン「よし、出るぞ!!」



サシャ「…体がポカポカします」

サシャ「心なしか、肌もスベスベになったような…」

ジャン「お前の肌は、いつだってスベスベだ」パカパカ

ジャン「……しかし俺の方は、なんだか生殺しにされた気分なんだが」

ジャン「でも、もし誰かにサシャを見られたら、そいつ記憶なくすまでブン殴んなきゃいけねぇしな」

サシャ「物騒なコトを…」

ジャン「それに確かにケジメは大事だ、ウン」

ジャン「俺はいつだって、その辺はキッチリしてるつもりなんだけど… どうもサシャが絡むとタガが外れちまって……」

サシャ「でも獣や… めったに来ないでしょうが、人が通るコトを考えなければ、スゴク良いお風呂ですよね」

ジャン「風呂、か… 風呂もいいよな」


ジャン(…2人で入れる風呂の付いた宿ってのも、探せばどっかにありそうだ)


サシャ「…そろそろ山道を抜けますよ!」



  …ケーーーーン


サシャ「ハッ! キジ!?」キョロキョロ キリキリ…

サシャ「……いました!!」ヒュンッ! バサバサッ

ジャン「おぉ… 相変わらず見事だな」


サシャ「ワァイ! キジ捕まえましたよー!」ヒャッホゥ

ジャン「けど、どうすんだ? ソレ……」

サシャ「思わず本能で射てしまったんですが… でも持っていれば、食べ物なんかと交換できるかもしれません」

ジャン「そっか、そうだな。 そんじゃ俺達も山抜けたら昼にしようぜ」

サシャ「オジイサンに朝食にと頂いた食糧、まだ余ってますもんね」

ジャン「やっぱ山回ると大分近道だったんだな。 この分なら余裕持ってポイントに着けそうだ」



--------------


サシャ「ふあぁ… 訓練所から随分遠くまで来ましたね」パカパカ

ジャン「後は戻るだけだがな。 …お、アレがチェックポイントか?」

サシャ「他の訓練兵もいますねぇ」

ジャン「さて、さっさと済ませちまおうぜ」



サシャ「………」キョロキョロ

ジャン「どした?」

サシャ「イエ、訓練兵に全く知った顔がいないというのが何だか不思議で…」

ジャン「ハハ、向こうもきっとそう思ってるさ」



サシャ「あの、そういえばココ…」

サシャ「このチェックポイントは昨日の倉庫みたいな所と違って、どこかの兵団の施設ですし、ここに泊めてもらうコトはできないんでしょうか?」

ジャン「そりゃそうだな。 必ずしも外で探さなきゃいけないってワケでもねぇだろうし… 聞くだけ聞いてみるか」

サシャ「それじゃ私、聞いてきます!」タタッ


--------------


サシャ「大丈夫だそうです」グッ

ジャン「そりゃ良かった。 だがさすがにメシは出ねぇからな… 少し外歩こう」

テクテクトコトコ…

サシャ「宿屋さん… ゴハン屋さんもいくつかありますね。 では交渉してみますか」

ジャン「交渉? キジで?」

サシャ「その通りです。 …ちなみに私の勘では、あそこが良いような気がします」スンスン



サシャ「たのもー」カラカラ

ジャン「ここにも訓練兵が… もうメシ食ってんのか。 ……ン?」



訓練兵「…そりゃ贅沢はできねぇけど、訓練所にいるよりよっぽど自由でいい」

訓練兵「好きにメシも食えるし、卒業試験サマサマだ」

客「何だアンタ達… 訓練兵か。 こんな所で何をしてるんだ?」

訓練兵「オレ達は今、卒業の… 総合馬術の試験中なんだよ」

訓練兵「こんな楽な試験、他の科目にはないぜ」

客「そうかそうか! …じゃあ卒業したらどこかの兵団に入るんだな」

客「…これは私からの奢りだ。 一杯やりなさい」

訓練兵「酒か! そんじゃ貰おうかな」

訓練兵「卒業の前祝いだな。 乾杯!!」グビグビ

客「………」ニコニコ



ジャン「サシャ…… サシャ、出るぞ」グイッ

サシャ「ヘ? でもまだ何も…」

ジャン「いいから。 …理由は外で話す」ガララッ



サシャ「……一体どうしたんです?」

ジャン「あの客… ありゃ罠だ」

ジャン「目付きが一般人じゃねぇ… 酒飲むトコじっくり見てやがった」

ジャン「…ついでに寝る時以外、脱いじゃいけねぇこの訓練着の名札もな。 出掛けの教官の言葉、覚えてるか?」

サシャ「エート… この5日間、兵士として恥ずかしいマネはするなと…… あ」

ジャン「そう考えると、昨日のことも納得いく」

ジャン「あの積荷… それから馬車のジイサン」

ジャン「あのジイサンの馬… 世話した時に気付いたんだが、多分調査兵団の馬だ」

サシャ「確かに年は取っているけれど、とても良い馬だと… よく訓練された馬だとは思いました」



ジャン「多分この試験は、ほとんど金を使わないで済むようになってんだ」

ジャン「仕掛けてる全員が兵士… または元兵士かは分からないが」

サシャ「だからコレ… すれ違う通行人でも一目で分かるような名札を?」


「……あれー? 気付いた人いたんだー」

ジャン「誰だ!?」

「何よ、そんな怖い顔で睨まないで」

ジャン「訓練兵か…」

「そ、あたしヒッチ。 アンタはえぇと… ジャン、ジャン・キルシュタインね」

ジャン「気付いた、と言ってたが…?」

ヒッチ「だからぁ… この試験は、いかに所持金を減らさないかってコトが重要なワケ」

ヒッチ「ま、アンタ達は自力で気が付いたから教えてあげるけどさ」

ヒッチ「…で、所持金を減らさないためにどうするかって、各ポイント付近とか、街道のコースなんかでのお題をクリアすればいいの」

サシャ「困った人を助けたりですか?」



ヒッチ「そういうコト。 ねぇアンタ達、宿は?」

サシャ「一応兵舎に泊めてもらう予定ですが…」

ヒッチ「ふぅん、やっぱりね。 …それじゃまた後で会いましょ」スタスタ


ジャン「…道端の困った人を助けてメシなり宿なりを確保… これは加点にも繋がるのかな」

サシャ「それでさっきのお客さんは、減点要員だったと…」

ジャン「なるほど… 『総合』馬術とはよく言ったモンだ」

ジャン「チェックポイントの人間どころか、通行人まで審査員だと疑って掛かんなきゃいけねぇのか」

サシャ「そうだ、夕食…」

ジャン「…もうそこらにゃ困ってそうなヤツはいねぇな」

サシャ「それじゃ改めて何軒か様子を見て、その上で交渉といきましょうか」



――― 兵舎


ヒッチ「…アラ、遅かったじゃない」

ジャン「今日兵舎に泊まる人間はこれだけか? 意外と少ないんだな」キョロキョロ

ヒッチ「きっと例の仕掛けに気付かない、馬鹿ばっかりなんでしょ」

ジャン「何だかお前… ヒッチの話を聞いてると、最初から知ってたみたいに感じるが…」

ヒッチ「そうよ、最初から知ってた。 …上にちょっとばかしコネがあるモンでね」

ジャン「フーン、そういうのもアリなのかねぇ… サシャ、風呂借りようぜ。 上がったら食堂で待ってる」

サシャ「ハイ!」

ヒッチ「あ、お風呂ならアタシも入ろーっと」

サシャ「じゃあ一緒に行きましょうか」



――― 風呂


ヒッチ「さっき名札見なかったけど、アンタ名前は?」

サシャ「私ですか。 サシャ・ブラウスです」

ヒッチ「ねぇ、何で同じ訓練兵同士なのに敬語なワケ? さっきの男にもそうだったじゃん」

サシャ「これはクセといいますか… もう直らないみたいなんで…」ヘヘ

サシャ「…ヒッチは何人で回ってるんですか?」

ヒッチ「3人で、後2人は男。 …チョットなぁに? その胸」

ヒッチ「超デッカイんですけど… それによく見たら、すんごいスタイル良いじゃない」

サシャ「あ… あんまり見ないでくださいよ//」

ヒッチ「サシャは、あのジャンって男と2人で回ってンの?」

サシャ「そう、ですが…」

ヒッチ「へー、じゃ付き合ってるってコトね」

サシャ「///」



――― 食堂


ジャン「…よし、メシにするか」

サシャ「わぁい! ゴハン~」

ジャン「結構イイ物に取り替えてくれたよな」

サシャ「交渉上手と言ってください」エッヘン

ジャン「エライエライ… んで、今夜は兵舎のドコで寝ればいいんだ?」

サシャ「部屋の用意はないので、談話室みたいな所で皆でザコ寝だそうです」ハグハグ

ジャン「他の奴らもいるのか……」

サシャ「仕方ないですよ」

ジャン「パッと見たところ… 女子はお前とあのヒッチだけみたいだな」

サシャ「そうですね。 彼女の連れは男子2名だということでしたし…」


ヒッチ「…あ! 何でそんなイイ物食べてんのよ!?」



ヒッチ「アンタ達、何やったの?」

ジャン「なんもやってねぇ。 道中でサシャがキジ捕まえたから交換してもらった」

ヒッチ「ハァ? キジ!? …そっか、そういうのもOKなんだ」

ヒッチ「でもウチは、そういうコトできそうなヤツいないからなー」ブツブツ



サシャ「彼女… 私達の訓練所にはいないタイプです」

ジャン「そうだな… ドコの訓練所にも、個性があんのかね」

サシャ「うちの上位陣は、特に個性的な人が多いような気がします」

ジャン「ハハ、そうかもな」

ジャン「…さ、メシ食ったら談話室とやらに移動しようぜ」

サシャ「ハイ!」



ワイワイ…


ジャン「……これで全員か。 3~4組ってトコだな」

サシャ「今日はそのようですね」

ジャン「もう訓練着脱いじまったから名前は分からねぇが… ま、今夜だけだし気にするこたねぇだろ」

訓練兵「…よぅ、最後のお2人さん」

ジャン「別に最後じゃねぇよ。 外歩ってたから、戻ってくるのが遅れただけだ」

訓練兵「どっちでもいいよ。 お、可愛いコだなぁ…」

ジャン「」ムッ

「よせ、お前ら! 絡むんじゃない! …悪かった。 俺達の訓練所は特に女子の数が少なくてな」

「俺はマルロ。 君達はどこから来たんだ?」

ジャン「俺達は南の訓練所から… ジャン・キルシュタインだ」

マルロ「1晩限りだがよろしく、ジャン」…スッ

ジャン「お、おぅ……」握手



マルロ「そちらの彼女は?」

サシャ「あ… サシャ・ブラウスです」ニコ

マルロ「よろしく」スッ

ジャン「………」…ニギニギニギ

マルロ「エ? お、俺は彼女に挨拶をと……」

ジャン「俺が代わりだ」

ヒッチ「アハハハハ! アンタって見かけによらず嫉妬深いのね、ジャン」

ヒッチ「まぁ、気持ちは分かるけどさー。 この体だもんね」ムニュ

サシャ「ひゃあぁ!? む、胸を触らないでくださいィィ!!」

ヒッチ「あー、気持ちいい」ムニムニムニムニムニムニ

サシャ「や、ヤメ…… やンッ」

ジャン「ちょッ… お前コラ!! 女だからって気安くサシャの体に触んじゃねえ!!!」

ジャン「サシャも女相手に可愛い声出すな!!!」

マルロ他一同「……//」ドキドキ

悪い、一昨日からワケの分からん腹痛が…
今日はこれしか書けなかった。 …クソ、何なんだこれ
色々流行ってっから皆も気をつけてくれ



ヒッチ「おー、コワ」

ジャン「全くもう… それに何勘違いしてんだか知らねぇが、間違ってもサシャは顔や身体だけの女なんかじゃねぇぞ」

ジャン「そりゃもう逞しいわ、野生的だわ、よく食うわ…」

マルロ「…それは褒めているのか?」

ジャン「ン? 勿論そうに決まってんだろ。 それにな… 明るいし優しいし大らかで健康的だし、料理は店開けんじゃねぇかってくらい上手だし、狩りも上手いし弓ィ引いてる時なんか、キリッとしてマジで格好良いしよ。 …あと知ってんだろ? 今固定砲改良してンの。 あれ、サシャが考えたんだぜ。頭も柔らかければ、体も柔らかくってよ。 格闘も足技なんか凄ェし、爪先蹴りで相手の三半規管狙った時なんk

ヒッチ「分かった! 分かったって!!」

ジャン「まだ途中なんだが…」

ヒッチ「でも… 今にも泣きそうだよ?」

サシャ「ジャ… ジャン…// エウゥ」ウルウル

ヒッチ「あーあー、耳まで真っ赤になっちゃって…」ナデナデ

ジャン「おぉ? あぁ、悪かった悪かった。 ちょっと夢中になっちまって」ナデナデ

マルロ「か、彼女の良さはよく分かった…」



ヒッチ「サシャにベタ惚れなのもよく分かったけど… なんだかなー、さっき外で見た時は、もう少し頭良さそうだと思ったんだけど」

サシャ「ジャンは頭良いですよ! だって憲兵団に入るんですもん」

マルロ「お、ジャンも憲兵狙いか」

ヒッチ「マルロって言ったっけ? 『も』ってコトは、アンタも?」

マルロ「ヒッチだったな、そうだ俺は憲兵になる。 そのためにこれまで努力してきた」

ヒッチ「へー、じゃこの最終試験の結果次第では、次に憲兵団で顔合わせるコトになんのね」

マルロ「ヒッチは上位なのか?」

ヒッチ「ヤダちょっと… 馬鹿にしないでほしいんですけど。 こう見えても、アタシだって頑張ってんだからね」

マルロ「そうか、それはすまなかった」

ヒッチ「でもさー、上位って男子ばっかで、その中に混じって訓練していくのは色々大変なワケよ」

マルロ「俺の訓練所はそもそも女子の数が少ないし、10位までは全て男子が占めてるな」

ヒッチ「ねぇ、サシャはどうなの?」



ジャン「コイツも上位だぞ」

ヒッチ「ホント!? やったー! せっかく憲兵団に入っても、周り男ばっかじゃ楽しくないと思ってたんだよね。 とにかく男臭そうだしさ」

サシャ「ウチはでも… 何せ入団当初から首位を独占しているのが女子でしたし、男女比とかあまり考えたコトはありませんでしたが…」

ジャン「ウーン、ミカサは別格だからなぁ… ま、とにかく前回の試験では10人中4人が女子だったぜ」

マルロ「ほう、そりゃ凄い」

ジャン「だがこの首位は… 酔狂なことに、調査兵団に行くんだそうだ。 前回5位の男子と一緒にな」

ヒッチ「ハァ? 調査兵団!? 何考えてンの?」

サシャ「上位であるコトは、選択肢がひとつ増えるだけに過ぎませんよ」

サシャ「彼女達は、調査兵団でしかできない事をやりたいんでしょう」

マルロ「そこでしかできない事、か…」

ヒッチ「なぁに? マルロも何か憲兵になってやりたいコトあるワケ?」

マルロ「まぁな… だが、まだ話すべきではないだろう。 無事、憲兵団に入団できたらいずれ話す時も来るだろうが…」



ヒッチ「勿体ぶっちゃって… あ! もうこんな時間じゃない!」

ジャン「そうだな… 明日も早いし、今夜はもう休むか」

ヒッチ「アタシ、サシャの隣で寝たい」

サシャ「いいですよー」ニコニコ

ジャン「ならヒッチは壁際行け。 そんで隣がサシャで、俺がその横で寝る」


マルロ「……では明かりを消すぞ」



ジャン(他の訓練所のヤツらと話したのは初めてだな…)

ジャン(話してみれば結構真面目だし、そう悪い奴らでもねぇ)

ジャン(俺の人見知りもなぁ… 直していかねぇと、この先困りそうだ…)

ジャン(明日は何箇所かのポイントを回るのか… 周囲にも気を配って馬走らせねぇと)


ジャン(お休み、サシャ……)



――― 総合馬術試験3日目


サシャ「ヒッチ… ヒッチ、朝ですよ」

ヒッチ「……エェー、もう? あと少しだけ…」モゾ

サシャ「お寝坊サンでは、憲兵団に入れませんよ」

ヒッチ「そうだった!」ガバッ

ヒッチ「ゴメンねー、起こし方が優しいからついさぁ… ウチの男どもなんか、アタシを蹴って起こすからね」

サシャ「女の子になんてコトを! 後で言っておきます!!」

ヒッチ「いいよいいよ、慣れてっから」アハハ

ジャン「サシャ、先に食堂行ってるな」

サシャ「ハーイ! …さ、寝袋たたんどいてあげますから、先に顔を洗ってきてはどうですか?」

ヒッチ「…ウ、ウン」テクテク



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ジャン「…ヨシ、そんじゃ出発するか」

サシャ「今日は何箇所も回りますもんね。 頑張りましょう!」

ヒッチ「あの… あの、チョット…」

サシャ「どうしました?」

ヒッチ「アンタ達、さ… 絶対、最終試験10位以内に入んなよ? …そんで、一緒に憲兵団行こ」

ヒッチ「アタシ、待ってるから! …それじゃ!!」タタッ

マルロ「何だ、俺には言ってくれないのか」

マルロ「…昨夜は楽しかった。 次は憲兵で会おうな、2人とも」

ジャン「お、おぅ。 道中気を付けろよ」

マルロ「ハハ、お互いにな!!」



   パッカラ パッカラ…


サシャ「昨日の残りだけでは、どうもお腹が満たされません…」

ジャン「携帯食糧食ったら? あれはなくなっても大丈夫だろ、多分」

サシャ「ふむぅ… 困っている人はいませんかねぇ…」キョロキョロ

ジャン「まだいねぇだろ。 …つーか、今日はあんまり時間かかる作業じゃないといいな」

ジャン「とりあえず、早めに1コ目に行くとしよう」パカラッ

ジャン「休憩ナシで大丈夫か?」

サシャ「もちろん! 馬で走っている間は、なんとなく空腹をごまかせますから…」

ジャン「そんじゃ最後まで一気に行っちまうか?」

サシャ「エ!? そ、それはさすがに……」

ジャン「冗談だって」ハハ



ジャン「さて… これが今日最初のポイントか。 時間的には、予定より若干早いくらいだな」

サシャ「これは兵舎でも倉庫でもなく、ただの小屋ですねぇ」

ジャン「この広いローゼ内に、沢山ポイント作んなきゃなんねぇんだ。 これもしょうがないんだろ?」

サシャ「イエ、中の係の人が大変そうだなぁと思って」

ジャン「そりゃそうだ、5日もだからな。 そんじゃとっとと済ませちまおうぜ」


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ジャン「…随分若い兵士だったな。 下っ端だからこんなトコに寄こされたのか?」

ジャン「したら、俺達も来年は覚悟しとかねぇとな」

サシャ「フフ、そうですね。 …ではお困りの方を探しつつ、先に進みましょうか」



ジャン(―― それは2つ目のチェックポイント手前での出来事だった)

ヒヒイィィーーーン
   キャアァァァアァーーッ!!!

ジャン「な、何だ何だ!?」パカラッ

サシャ「ジャン! あそこ、女の子が! 行きましょう!!」ドドッ

ジャン「馬が暴れ出したのか!? 手綱も持たず、首にしがみついてるが…」ドドド

「…だ、誰か馬を! 孫を助けてぇ!!!」

サシャ「今にも振り落とされそうです! …ジャン、私が行きますから横に!!」

ジャン(俺とサシャとで、暴れ馬の左右に回り込み…)

ジャン(サシャは軽々と自分の馬から飛び移る)

サシャ「大丈夫! 大丈夫ですから落ち着いて!!」

ジャン(女の子と馬を落ち着かせようと、サシャは声を掛け…)

ジャン(俺は宙ぶらりんになっていた手綱を取り、サシャに手渡す)



サシャ「…どうどう」


馬「」ヒヒーーン ブルルルッ!


ジャン(馬が静まったのは、少ししてからだった)

サシャ「もう大丈夫ですよ」

少女「ウ… ウェェェーーン!!!」

ジャン(…よほど怖かったのだろう。 少女は緊張が一気に解けたのか、号泣し始めた)

サシャ「さっき誰かが叫んでいたような…?」キョロキョロ

ジャン「向こうだ。 サシャの馬は俺が連れてくから、このまま走るぞ」



ジャン(倒けつ転びつ… 懸命に少女を追っていたのは、少女の祖母という人だった)



祖母「有難うございます! 有難うございます! 本当に何とお礼を言っていいか……」ボロボロ


ジャン(…話を聞いてみれば、少女が馬に乗るのは別に今回が初めてではなく)

ジャン(家の前の広場を普通に歩かせていたらしいのだが…)

ジャン(蜂? …何やら虫が馬の耳元でうるさそうにしていたので、払ってやろうと手を伸ばし…)

ジャン(誤って馬の耳をはたいてしまったのだそうだ)


祖母「本当にこの子に何かあったらと思うと……」

少女「ゴメンナサイ、あばあちゃんゴメンナサイ」エグエグ

祖母「この子は息子夫婦のたった一人の忘れ形見で……」


ジャン(少女の両親は駐屯兵団に所属していた)

ジャン(そして5年前のあの日… ウォール・マリアにいた2人は、市民を安全に避難させようと奮闘)

ジャン(知り合いの手にまだ小さな子供を預け、勇敢に戦って死んでいったのだという)



ジャン(聞けば祖母の方も、とうの昔にご主人を亡くし… 身内といえばこの孫娘だけなのだそうだ)

ジャン(孫の命の恩人だから何でもさせて欲しい、と申し出る老婦人だったが……)

ジャン(俺達はそれを丁寧に辞退… 2つ目のポイントへ馬を走らせる)



サシャ「………」グスグス

ジャン「…どうした?」

サシャ「私… 情けなくて…」

サシャ「どこかに困った人がいないかなんて、浅ましいコトを……」

ジャン「……それは俺も一緒だ」

ジャン「だが周りに注意を払っていたからこそ、あの子助けられたのかも知れねぇだろ」

サシャ「………」



ジャン(……2つ目のチェックポイントを出てすぐには小規模な市場があり、果物屋のそばで猫が2匹、じゃれ合っていのが見えた)

ジャン(が… すぐにじゃれ合いの域を越え、辺りの箱を手当たり次第ひっくり返し、どこかへ行ってしまった)

ジャン(あちこちに散らばった果物を拾い集めた俺達に、店主はリンゴとオレンジを2つずつくれた)

ジャン(少し遅めの昼食はリンゴとオレンジ、それからサシャは携帯食糧を半分かじっていた)

ジャン(これは偶然なのか、仕掛けなのか… とも思ったが)

ジャン(もういい、考えるのはやめよう。 …誰だって、目の前に困った人がいれば助けるのが当たり前なのだから)


ジャン(先ほどから落ち込み気味のサシャだったが… 昼を食ったら元気になったようだ)


サシャ「さぁさぁ、ドンドン行きましょう!!」パカパカ

ジャン(…サシャはやっぱりこうでないとな)フフ



サシャ「ワァイ! 3つ目クリアですよー!」

サシャ「…ささ、今日最後の所に向かいましょう!」

ジャン「そしたら明日は1箇所だけ行って、その後… 昼過ぎには例のトコか」

ジャン「だが金も使えねぇのになぁ……」

サシャ「そこは私達の若さと労働力を売りにしようじゃないですか! 無理なら挨拶だけでもいいですし…」

ジャン「…ホントにサシャは逞しいっつーか、生活力あるよな」

サシャ「ホラ! 急がないと日が暮れてしまいます!」

ジャン「ハイハイ」


-------------


サシャ「ジャン……」パカラッ

ジャン「ン? ……あっ」



サシャ「ご夫婦のようですが… 奥さんの具合が悪いんでしょうか?」

ジャン「声掛けてみるか?」

ジャン(…何も答えず、サシャはただにっこりと笑った)

ジャン(それは、今日最後のチェックポイントを諦めるということだった)


ジャン(尋ねてみれば夫婦は帰宅途中で、やはり奥さんが急に体調を崩し途方に暮れていたのだそうだ)


ジャン「…ご主人、馬には?」

夫「イ、イヤ… 私はあまり…」

ジャン「そんじゃサシャ、奥さんを…」

サシャ「女の私が病人を乗せてでは、危なっかしいですよ。 括り付けるのも気の毒ですし… ジャンの馬に乗せてあげてください」

ジャン「で、でも… 俺の馬も結構気が荒くて…」

サシャ「フフ… ジャンが乗り手なら、いつだってイイコじゃないですか」

夫「私の事はお気になさらず… どうかそちらに乗せてやっては貰えないでしょうか?」

ジャン「ハ、ハイ……」



ジャン(……結果、俺は横座りの奥さんを前に乗せ、それを抱えるように馬を進めた)

ジャン(旦那の方は男である俺が、自分の妻を乗せるのを遠慮しているのだと思ったようだが…)

ジャン(……違う、そうじゃない)

ジャン(俺は、サシャが男をその後ろに乗せるのがイヤだっただけだ)

ジャン(その腰に掴まらせたりするのがイヤだったんだ)

ジャン(俺…… 心狭ェなぁ…)ハァ


ジャン(3箇所目と4箇所目の中間地点の街道を左に曲がって2kmほど行くと、夫婦の自宅があった)


夫「もう日も暮れてしまった事ですし… あばら家ですが、2階の部屋がひとつ空いております。 どうぞ泊まっていって下さい」

ジャン(サシャがどうしようか、という目でこちらを見るが、日が暮れてしまったからには仕方ない)

ジャン(俺達は、またも厚意に甘えるコトにした)

ジャン(これが偶然か必然かなんて、些細なコトでしかないからだ)



夫「しかし生憎ですが女房がこの状態ですので、食事の支度などができるかどうか…」

サシャ「何をどれくらい作るのか言っていただければ、私が作りますよ」

夫「え! ですがそこまで甘える訳には……」

サシャ「なんの! 病人なら、なおのこと栄養を取らないと。 それに私達はともかく、旦那さんもゴハン抜きじゃ元気出ませんよ?」



サシャ「……それじゃ、ちょっと台所お借りしますね」

ジャン「サシャ、何か手伝うか?」

サシャ「こちらは大丈夫、ジャンは休んでいてください」


ジャン(…と言われて休むワケにもいかず、俺はやはり馬の世話と水汲みなどをしていた)



サシャ「ジャン、支度できましたよ」

ジャン「…ン、今行く」



サシャ「スイマセン、材料勝手に使ってしまって… 奥さん、食事は食べられそうですか?」

夫「まだ部屋におりますが、さっきよりは大分楽になったようです」

サシャ「じゃあこれ、奥さんに持って行ってもらえますか?」

夫「これは真っ白な… パン?」

サシャ「体が弱っているのに、あまり固いパンではお腹が受け付けてくれないかと思って蒸かしました」

サシャ「あとスープも具材を少々小さ目にして、よく煮込みました。 食べられるといいんですけど…」

夫「何から何まで申し訳ありません」ペコペコ



ジャン「このパン作ったんだ?」

サシャ「相変わらずあそこの宿と同じというワケにはいきませんでしたが… 前回よりはマシみたいです」

サシャ「でも人様のおうちに上り込んで、自分達の分まで食事を作るというのは何だが図々しい気がしますねぇ」フフ



ジャン(そして俺達は戻ってきた旦那と食事を共にした)

ジャン(…旦那は無口だったが、蒸かしたパンの出来には大層驚いていた)

ジャン(確かに前回よりさらに旨くなってる…)

ジャン(俺は自分では太らない体質だと思っているが……)

ジャン(こんなにメシが旨いと、この先どうなるか…)

ジャン(……兵舎のメシ食ってる間はいい)

ジャン(もし一緒に暮らしたら…)

ジャン(つーか、一緒に暮らす? それって結……)モワモワ



サシャ『…ジャンお帰りなさい、ゴハンできてますよ。 それとも先にお風呂にしますか?』

ジャン『まずはお帰りのキスだな』

サシャ『お帰りなさーい』チュム

ジャン『ただいま。 あー早く顔見たかった』スリスリ



サシャ『…それでゴハンとお風呂どちらに?』

ジャン『風呂。 サシャも入ろ』

サシャ『私はもう済ませて…』

ジャン『いいからいいから』グイグイ


サシャ『……わ、私はもう体も洗って… あっ、そん、なトコ… はあぁン//』



ジャン「………」

サシャ「…どう、しました? 宙を見つめて……」

ジャン「エッ!? あ… イヤ、相変わらず旨いなぁと」

サシャ「そうですか、良かった」



ジャン(……飯時に何を妄想してんだ俺は//!!)

熱下がったよ!


ジャン(…食事が済むと、サシャと俺とで後片付けをした)

ジャン(恐縮がる旦那だったが、一晩の宿まで借りるのだから こんな時はせめて奥さんを見てあげてくださいとサシャが言うと、笑顔になり妻の部屋へ入っていった)

サシャ「……片付けも済みましたし、私達も2階へ上がらせてもらいましょうか」

トントントン… ギィ-

ジャン「…2階の部屋ってここでいいんだよな?」

サシャ「確かここだけでしたよね」

ジャン「ベッドがあるな。 布団も… 1組だが」

サシャ「お客サン用の部屋なんでしょうか?」

ジャン「さぁ… でも、今日は寝袋使わないでいいってことなのか?」

サシャ「いやぁ… それはさすがに…」

ジャン「だよなぁ……」


ジャン(…結局、床で寝ることにした)



サシャ「2階だからでしょうか。 何だか暖かいですね」

ジャン「そういや今日は昼間も暖かかったな」

サシャ「腕… 出しちゃいましょうかねぇ」モゾモゾ

ジャン「俺も出そ。 …なんか包まってたら、逆に寝苦しくなりそうだ」モゾモゾ

ジャン「サシャ、もうちょっとこっち来いよ」

サシャ「はぁい」ズリズリ


ジャン(…俺の左手を両手で握りながら、サシャが目を閉じる)

ジャン(俺の右手はサシャの腰を抱く)

ジャン(本当は、足も絡ませたいトコなんだが……)

ジャン(……試験3日目の夜が終わる)

ジャン(明日の夜を過ぎれば、次はもう訓練所だ)



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サシャ『……これが壁外で獲れた新種の獣の肉』ジュルリ

エルヴィン『壁外では割とあちこちで見かけるんだが… 食用に向いているかは分からなくてね』

サシャ『それで私を呼んでくださったんですね! 光栄です!!』

サシャ『まず… この部分からいってみましょう』

エルヴィン『毒があるかもしれんし、いきなりかぶり付いてはいけないよ』

サシャ『では舐めるところから始めてみます』ペロ…

サシャ『…んむ?』ペロペロ

エルヴィン『どうだね?』

サシャ『なんでしょう… これまで食べたことのない味ですね。 …次はこの細いところを』チュパ

サシャ『クセがないのに何とも滋味深い味わいといいますか…』アムアムチュパチュパ

エルヴィン『ほぅ… それは興味深い』



--------------


ジャン『……何だ? こんなトコに呼び出して』

サシャ『ジャン… 私もう我慢できないんです』モジモジ

サシャ『少しだけでいいので、食べさせてください』カチャカチャ

ジャン『チョ!? ベ、ベルトを外すな!!』

サシャ『少しだけ少しだけ…』ハムッ

ジャン『…ンンッ//!』

サシャ『おい…ひいれふぅ…』ペロペロチュパチュパ

ジャン『サ、シャ… ダメだ…って。 誰、か来たら… んっ』

サシャ『』アムアムチュパチュパ

ジャン『た… 溜まってっからヤバ、イって! もう… もう出ちゃうからぁ!!』ブルッ


ジャン(……コレ、例のヤツじゃねぇ??)



ジャン「!!」ガバッ!!

サシャ「」…スヤスヤチュパチュパ

ジャン(お… 俺の指、食ってやがる… だからあんな夢を?)

ジャン「……オイ」ペシ

サシャ「だ… 団長… もう少しだけ味見を……」チュクチュク

ジャン「コラ… おかしな夢、見てんじゃねぇ」ビシ

サシャ「ハッ!?」パチクリ

サシャ「…し、新種の獣は!?」

ジャン「そりゃ夢だ… お前が食ってたのは俺の指だぞ。 あーあ、ヨダレだらけ」

サシャ「ス、スミマセン…//」

ジャン「いいけどよ。 昨日は旦那に遠慮してあんまり食ってねぇもんな。 きっと腹減ってたんだろ」

ジャン「そんじゃ手と顔洗って、出る準備するか」



ジャン(具合が良くなったのか、出掛けには奥さんも顔を出し…)

ジャン(深々を頭を下げ… 昨日送ってくれたコトと、夕食の礼を言ってくれた)

ジャン(サシャが遠慮がちにしか食べられなかった例のパンも、残りを全て包みチーズを添えて持たせてくれた)



サシャ「今日は頑張らないと!」パカパカ

ジャン「そうだな」

ジャン(俺達は結構な速度で馬を走らせ… 昨日最後に回る予定だったチェックポイントに着いたのは、午前中のまだ相当早い時間だった)



サシャ「このパンは冷えるとイマイチですねぇ…」ハグハグ

ジャン「ここじゃ無理だが、できるんなら蒸かし直しゃいいんじゃねぇの?」

サシャ「そうですね。 残った時にはそれがいいでしょう」



ジャン(そして俺達はまた馬を走らせる)

ジャン(この4日間、天気には恵まれた。 きっと日頃の行いが良いのだろう)


サシャ「今朝の夢なんですが… エルヴィン団長が壁外で獲った、新種の獣を私に食べさせてくれるという、素敵なシチュエーションだったんです」

ジャン「あぁ… だから団長がどうのとブツブツ言ってたんだな」パッカパッカ

サシャ「いやぁ… クセはないけど、とても味わい深くてですねぇ…」

ジャン「まぁ俺の手だからな。 齧るならともかく、舐めてるだけならクセはねぇだろうよ」

サシャ「とても美味しかったですよ? 今度またお腹が空いたらしゃぶらせてください」

ジャン「しゃぶらせろってお前…」

ジャン(なんてやらしいコトを…)

サシャ「…ジャンも何か夢を見たんですか?」

ジャン「俺!? お… 俺は見てねぇ。 変な夢なんか、断じて見てねぇ!」

そらもうジャンの脳内ときたら快適さ


ジャン「ところで昼メシはどうしたモンかなぁ…」

サシャ「今日は急いでますからねぇ… 何もないようなら携帯食糧で済ませた方がいいんでしょうか」

ジャン「お前がそれでいいなら構わねぇよ。 その方が楽だし、俺 全然腹減ってねぇし」

サシャ「朝食がいつもより遅かったですから」

サシャ「行ける所まで… できる限り馬を走らせましょう。 …苦労をかけますね、お馬さん」ナデナデ


ジャン(道中は順調で『何事』もなく… この試験最後のチェックポイントへと向かう)

ジャン(たった4日だけど… 色々あったような気がする)

ジャン(山ン中で湯に浸かったり、他の訓練所のヤツらと一緒に寝泊りしたり…)

ジャン(子供助けて感謝されたり、予定通り進めなかったり…)

ジャン(だけど、俺の隣を行くサシャはいつだって生き生きしていて)

ジャン(そりゃ落ち込んだりもしたけど… でもずっと嬉しそうで)

ジャン(この試験… お前と組めて本当に良かったと、俺は思うんだ)



ジャン「着いたか…」パカラッ

サシャ「最終ポイントですね」

ジャン「先にチェックを済まそう」スタスタ


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ジャン「…何だ? 係に何を聞いてたんだ、サシャ」

サシャ「あ、イエ… 確認なんですけど」

サシャ「この訓練着… 寝る時まで着替えてはいけないのかと」

ジャン「確かに移動時には絶対に脱ぐなと言われたが…」

サシャ「ですので、宿に入ってもう外出しないのであれば、着替えてもいいというコトでした」

ジャン「…って言われてもなぁ。そもそも寝巻き以外の私服なんて持って来てねぇし」

サシャ「私もそうなんですが……」



ジャン「だが、これで試験は終わったようなモンだ」

ジャン「行くか、湖に!」

サシャ「ハイ!!」


ジャン(輝くような笑顔でサシャが返事をする)

ジャン(後は明日、訓練所に戻るだけ… その意識からか、何だか足取りが軽い)

ジャン(街道から細い道に入り… 小道を突っ切って、森に入る手前で少し休憩することにした)

ジャン(携帯食糧とチーズの残りを齧る)

サシャ「本当は手土産でも持っていければいいんですが…」

サシャ「ここら辺には、お土産にできそうな物があまり…」

ジャン「その時間もねぇからなぁ」

サシャ「そうなんですよねぇ…」フゥ



ジャン(時刻は昼と日没の間頃だろうか…)


サシャ「…ジャン、見えましたよ! 湖です!!」

ジャン「ホントだ。 湖面が光って見える」

サシャ「少し遅れましたけど… やっとここまで来れましたね!」

ジャン「ああ… そうだな」

ジャン(キラキラと輝く湖と、サシャの笑顔… どちらも俺にはとても眩しくて、つい目を細めてしまう)

ジャン「……もう少し行ったら、馬を下りて歩こう」



サシャ「…どの辺でしたっけ? 反対側から来たのでよく分かりませんが……」

ジャン「んー、確かもうちょっと先… だったような?」



男「オーイ、そこのアンタ達! …ひょっとして今日の宿を探してんのかい?」

ジャン「……ン?」クルッ



男「…オヤ? どっかで見たような…」

ジャン「何だよアンタ! また客引きかよ!?」

男「あ! 思い出したぞ、その小生意気な態度! …年越しン時に来た2人だな!」

サシャ「アハハ… その節はどうも…」

男「おぉ! 嬢ちゃんも元気そうだな。 またここに泊まってくのか?」

サシャ「そうしたいのは山々なんですが……」

ジャン「俺達、今最後の試験中でさ。 金使えないんだよ」

男「ハハァ… だから訓練着なのか」

サシャ「どこか一晩、雨風のしのげる所をご存じないですか? 私達でよければ、キッチリ働かせてもらいますから…」

男「…嬢ちゃんに頼まれちゃあ断れねえよ、ついて来な!」

ジャン「オ、オイ… 大丈夫か? 変なトコじゃねぇだろうな?」

男「あぁ? 変なトコのワケねえだろ! 前の宿だよ!」



男「あそこもよ… 過ごしやすい季節になってから、また客足が増えてよ」

男「夫婦2人でピーピー言ってたんだ。 多分1日だけでも喜ぶんじゃねえか?」

男「ま、もし大丈夫だとしても、蟻みてえに働かされるかもしれねえがな! ハハハ!!」スタスタ



男「親父サン! オーイ、親父さーーん!!」ドンドンドン

主人「うるせえ! そんなにドンドン叩かんでも分かるって言ってんだろ!!」バタン

主人「……んん? お! 前に来てくれた若夫婦じゃねえか!」

男「親父サン、よく覚えてんなぁ…」

主人「こちとら客商売やってんだ! 大事なお客覚えてンのは当たり前だろうが」

男「それがな、今回はお客じゃないんだ。 一晩の寝床の代わりに、働き口を探してんだってよ」

男「どうだい? 1日雇ってみたら」

主人「働き口、ねぇ……」ジィーー

サシャ「あの… 私達、頑張りますからその……」



ジャン「……オネガイシマス」

男「…まさかダメかい? あんなに人が欲しいって言ってたじゃねえか」

主人「ダメなんて言ってねえだろ。 名札見てただけだよ」

主人「よくウチを思い出してくれたな! …さ、入った入った!!」ニコニコ

主人「ただし今日はキッチリ働いてもらうからな!」

男「何だよ! 連れてきたの俺なのに…」

サシャ「あ、でもそうだ私達!」

主人「どうしたね?」

サシャ「服が… 私服を持ってなくて… さすがに訓練着で働くワケにはいかないと思うんですが、どうしたら…」オロオロ

男「それくらいどうってこたねえだろ。 兄ちゃんは親父サンの服で合うだろうし…」

男「嬢ちゃんはそうだな… おカミさんの服じゃ小さ過ぎるか」

男「そんじゃ後で、俺の女房の若い頃の服でも持って来てやるよ」



ジャン(…以前ここへ来た時と同じように、トントン拍子に話が進む)

ジャン(親父サンは、自分の服の上下と前掛けを俺に出してくれ…)

ジャン(それに着替えた俺はテーブルの番号と、メニューを聞きながらメモしていく)

ジャン(サシャは服が届くまでジャケットを脱ぎ、袖をまくり上げ厨房で奥さんの手伝いをする)

ジャン(……サシャが最初に厨房に入った時には、サシャの嬉しそうな声と、奥さんの甲高い声が聞こえてきた)

ジャン(やっぱりここに来て良かった…)


ジャン(…少しすると、最初の客が入ってきた)

ジャン(初めてのことで、やや緊張しながら注文を聞き、それを親父サンに流す)

ジャン(……次にやって来たのは、先ほどの男だ)

男「お、前掛け似合うじゃねえか。 ホラ、これ嬢ちゃんの服」

ジャン「アリガトウゴザイマス」

男「ハハ、礼が言えるのはいいが、もうちっと笑顔になんねえとな!」

ジャン「…気を付けマス」



ジャン(俺は男のオーダーを流し、サシャの服を手渡した)

主人「ジャン、これ3番さん」ドン

ジャン「ハイ!」

ジャン(…次々と客がやって来る)

ザワザワ…

客「オーイ、注文いいか?」

ジャン「ハイ! ただ今!!」タタッ

ジャン(これは中々に忙しい……)

ジャン(人気のある店だっていうのは分かってたけど…)

ジャン(これを夫婦2人でやってんのか… 凄ェな)



サシャ「……ジャーン! 今行きますからねー!」

ジャン(お、着替え終わったのか。 中はもういいのかな)



ジャン(…正直、今手伝ってくれるのはとても助かる)

サシャ「ワアァイ! 2人でお運びさんですよー!」タカタカ

サシャ「おぉジャン、前掛けお似合いじゃないですか!」

ジャン「サシャ… サ…」

サシャ「??」

ジャン(真っ白な、フリルのエプロン…)

ジャン(服は平凡だが… ドコの妖精だよ。 可愛過ぎンだろ!)

客「オーイ、注文頼むわー!!」

サシャ「あ、お客さんが…」

ジャン「いい! 俺行くから!!」タタッ

ジャン(服を持って来てくれた男のテーブルの横を通る時、俺は男に向かって力強く頷いてみせた)

ジャン(……イイ仕事しやがるじゃねぇか)

ジャン(俺も今度エプロン買ってやろ…)



ジャン「酒や飲み物は俺が持ってくから、サシャは料理を頼む」

サシャ「それじゃ注文はそれぞれ近くにいる方が、それと空いた食器も目に付いたら片付けていきましょう」

客「お嬢さん! 注文いいか?」

サシャ「ハーイ! 今、伺いまーす」タカタカ

ザワザワザワ…

主人「これ7番と11番さん!」ドンドンッ

ジャン「…お待たせしました」

ジャン(…アレ? サシャが話しかけられてる。 困った客なのか? …イヤ、どうも違うみたいだが)

ジャン「どうしたサシャ? 何か話しかけられてけど…」

サシャ「あぁ、オススメを教えてくれと言われました」

サシャ「例のパンと、あとさっき仕込みした中で、丸鶏の香草焼きがもうすぐ出来そうだったので、それをオススメしておきました」

サシャ「説明していたら、ついヨダレがですねぇ… でも注文貰えました」ズビッ

ジャン「ハハ、サシャは旨そうに話すからな。 そりゃ聞いてる方も堪らなくなるだろう」



男「…兄ちゃん、兄ちゃんよ」

ジャン「ご注文ですか?」

男「そうじゃねえんだが… あの嬢ちゃん、こういう仕事初めてなのか?」

ジャン「多分… 自分の聞いた限りでは」

男「ハァー、そうなのか。 なんかこう… 生き生きしてるっていうか、とても初めてにゃ見えねえ」

男「きっと向いてるんだろうなぁ…」


ジャン(確かに… この店内を走っているワケでもないのに、サシャはひどく足取りが軽やかで)

ジャン(クルクルとよく動き、そして常にニコニコと笑っている)

ジャン(しかもあのエプロンを着けてだ)

ジャン(…客に絡まれたらどうしよう。 勿論俺が出て行くつもりだが、この店に迷惑はかけらんねぇからな)


男「あのエプロン、新婚の時に俺が買ってやったんだが… アイツ、着けやしなくってよ」

男「嬢ちゃんに使って貰えて良かったよ」



男「仕事上がったら、一緒に飲もうぜ」

ジャン「嬉しいけど、今回は試験中だから… それに明日、早くに出ないといけねぇし…」

男「そうか、残念だな」


ジャン(……そしてまた俺達は忙しく働く)

ジャン(どれくらい経ったろう… 料理の注文はあらかた出揃いポツポツとしか頼まれなくなって、酒の注文が多くなってきた)

ジャン(酒ではなく、飯だけが目当てだった客は徐々に引けていく)


サシャ「……ジャン、ジャン」ヒソ

ジャン「何だ、どした?」

サシャ「こんなコトを言うのはアレなんですけど……」

サシャ「…変なお客さんがいるんです」

ジャン「絡まれたのか?」

サシャ「イエ、そうではなく… ただ、とてもおかしいんです」



サシャ「お客さんのコトをこんな風に言うのはどうかと思ったんですが…」

ジャン「……どの客だ?」

サシャ「あの窓際の角… 4番です」

ジャン「あそこか。 酒頼んでねぇから俺はほとんど行ってねぇが…」

サシャ「初老の男性2人… お酒は頼まないし、料理もホンのちょっぴり頼んだきりで…」

サシャ「…それはいいんですけど、せっかく頼んだ料理もほとんど手を付けなくて」

サシャ「最初は試験の仕掛けの人かと… でも …時々聞こえてくる会話の内容がおかしいんです」

ジャン(サシャは真剣な… だがとても不安そうな顔で話す)

サシャ「会話といってもボソボソ話しているので、聞こえてくるのは単語ばかりなんですが」

サシャ「調査兵団、とかエルヴィンが… とか」

ジャン「……兵団の関係者なんじゃないのか?」



サシャ「そうは見えません… もっと何というか陰鬱なモノを感じます。 …あの村みたいに」

ジャン「あの村…… 狂信者の村か」

サシャ「…それに、前回は若過ぎた… 今度こそ殺

主人「2人とも!!」

サシャ「」ビクッ!

主人「今日は2人のおかげで一番混む時間を楽に乗り越えられたよ。 もう上がっていいから賄い… メシ、好きな席で食っていいぞ」

ジャン「あ、ありがとうございます」


ジャン「サシャ… とりあえずエプロン外して、あそこの隣… 今さっき客の帰った3番の席に行こう」

サシャ「………」コクリ

ジャン(俺とサシャは前掛けを外し、賄いの食事を持ってさりげなく3番の席に着いた)

ジャン(俺からは奥に座る男の顔だけが見える。 …残念ながら周りの声が大きく、俺の場所では声までは聞こえてこない)

ジャン(注文を取る時に使っていた紙とペンとサシャに手渡す)



ジャン(俺は疲れた様子を装い、パンを片手に少し視線を外して奥の男を観察する)

ジャン(確かに… サシャの言う通り、この2人は尋常でない)

ジャン(うまく言い表せないが、その目には暗い情熱… 執念にも似た光が見える)

ジャン(サシャはなるべく音を立てないように食事をし、背中越しの男達の会話を聞き取ろうとしていた)

ジャン(……ツイ、とサシャがメモを一枚こちらに渡してくる)

ジャン(やはりそれは会話でなく単語で… 『リヴァイ』、『分隊長の一人』、『4人』、『エルヴィン』と書かれていた)

ジャン(しばらくしてもう一枚のメモを渡してきた時のサシャの顔は、真剣そのものだった)

ジャン(紙には『例の場所』、『集めてある』、『これから』、『失敗は許されない』とあり、俺とサシャは小さく頷き合って食い終えた食器を手に、席を離れた)


ジャン「……どうする、サシャ」

サシャ「今にも出て行きそうな雰囲気です。 …さっき違うお客さんが帰った時、外は雨が降り出していましたし」

ジャン「…追うか。 しかし着替えている暇はなさそうだ。 雨具だけ持って来るからサシャは様子見ててくれ」



ジャン(……俺は急いで雨具を持って下りてきたが、2人の男はちょうど出て行ってしまったようだった)

サシャ「まだ出たばかりです。 方角は確認してます」

ジャン「…裏口から行こう」

……パタン
   サアアァァーーーー

ジャン「……あれか」ヒソ

サシャ「まだ近所の宿の明かりがありますから普通に見えますね。 …こちらの足音は幸い雨で聞こえないでしょう」

ジャン「途中で馬にでも乗られたら厄介だな」

サシャ「それは多分大丈夫だと思います。 …勘ですが」

サシャ「それより今夜は月が出ていません。 彼らがちゃんと明かりをつけて歩いてくれたらいいんですが……」


ジャン(観光地の外れ… 今日俺達がやってきた方向だが、そこまで行くとヤツらは持っていたランタンを灯した)

ジャン(ボンヤリとではあるが、これで見失うことはない)



ジャン(俺達は道の脇… 木々のそばを一定の距離を保って歩く)

ジャン(…誰かが追っているなどとは考えもしないのか、2人は一度もこちらを振り向かない)

ジャン(ふと、奴らが右の木々の中… 森に入った)

ジャン(もちろん俺達も追うが… サシャが自分が前を行くからと、手で俺を抑え前に出る)

ジャン(…頭を低くし、ひっそりと後をつける)


ジャン(森の中の小道… 人ひとりが通れるほどの小道をしばらく歩いたろうか。 何かが見えてきた)

ジャン(……小屋? にしては大きい… 屋根も高いし)

ジャン(雨が強くなっていく…)

ジャン(…その小屋、というより一軒の家に2人が入っていくのが見えた)


ジャン「……窓がねぇな」

サシャ「あそこに隠れましょう」


ジャン(それはドアから程近く、草が高く生い茂った場所だった)



ジャン(…中がどうなっているのか分からない以上、侵入は出来ない)

ジャン(俺達は草陰に潜んで様子を伺う)


   バタン…


サシャ「2人出てきましたが、アレは……?」

ジャン「…面? なんて奇怪な…」

ジャン(頭から足元まで引き摺りそうに長いマント… フードの中には見たこともない奇妙な面)

ジャン(鳥のような… ひどく突き出た長い嘴)

サシャ「……気持ち悪い」

ジャン(サシャがそう言うのも無理はない)

ジャン(それは何か病的な… 健康な精神と相反するものを感じさせる)




イメージ
http://i.imgur.com/NVsV6Bl.jpg



ジャン(……2人は扉の前に立つ)

サシャ「あの見張りをなんとかして… マントとお面を拝借できないものですかね。 ……凄くイヤですけど」

ジャン「…叫ばれたり暴れられたりしたら面倒だな。 やるなら一撃でなんとかしねぇと……」

サシャ「このまま… 隠れながら扉の左右に分かれましょう」

サシャ「タイミングは合わせますから」

ジャン「一撃で… いけるかサシャ?」

サシャ「お任せあれ」



ジャン(……俺達は隠れながら二手に分かれる)

ジャン(今か… どうする今行っちまうか?)


   …ヒヒイィィーーーーン


ジャン(遠くで馬のいななきが聞こえた。 ……行くしかない!)…タッ

ジャン(反対側からサシャも出てくる)



ジャン「…ッ!!」ドスッ!  サシャ「…フッ!」シュッ!

ジャン(俺は面と首との境を蹴りで… サシャはおそらく顎辺りへ強烈な掌底を食らわせ、見張りは音もなく崩れる)

ジャン「建物の裏… 森の奥の方へ運ぶぞ」

サシャ「エエ… 急ぎましょう」ズルズル



ジャン(マントと面を剥ぎ取ってみれば、それはやはり先程の男達だった)

サシャ「とりあえずマントの裾を破いて、猿ぐつわと目隠しを……」ビリビリ

ジャン「…この木に括り付けておくか。 一晩くらい雨に打たれたって、死にゃしねぇだろ」グルグル

サシャ「早く着て扉に戻らないと。 …うぅ、イヤだ」


ジャン(大急ぎで面をつけ、マントを羽織り扉へと駆け戻る)


   …バシャバシャバシャ


ジャン(その直後、人がやって来た… 本当にギリギリだった)



ジャン(結構な人数だな。 15… 20人はいないか)

ジャン(ランタンをかざし先頭を歩く2~3人の他は、皆一様に黒っぽいマントを着けており、俺達の間を抜け順に建物の中に入って行く)

ジャン(扉を閉めてしまえば、中の音など全く聞こえない)

ジャン(しかしこの面… 嘴に何か入ってるんだろうか。 変わった香りがする)


…バタン


「……準備が出来た。 中に入れ」

ジャン(あちらから招き入れてくれるとは、願ってもない)

ジャン(俺とサシャは無言のまま建物に入る…)


ジャン(…建物の内部は外側から見るよりも、大きく感じた)

ジャン(扉付近の道具箱の他には、一切の家具を置いていないからかもしれない)



ジャン(黒いマントの男達の他は、全てこの面を被っている)


「―― ようやくこの日が来た!」

「前回の失敗から4年… あれはほんのお遊びに過ぎなかったが、今回は違う」

「人を選び… 準備を重ね、憎しみを植え込んだ」

「あの用心深い男を殺るのは、今夜しかない!」

ジャン(誰のことだ? やはりエル…)

「エルヴィン・スミス」

「常に影のように付き従う、人類最強と呼ばれる男も今夜はいない」

「…今夜、エルヴィンは分隊長の1人と従卒2名だけを引き連れ、トロスト区からエルミハ区へと続く街道の途中に宿を取っている」

「明け方前にここを襲撃し、必ず… 確実にエルヴィンを殺せ!!」

「分隊長は女だ… 取るに足らぬ。 その従卒もだ」

「エルヴィンさえいなくなれば、調査兵団は瓦解したも同然……」

「あれの他に兵をまとめ切れるものなどおらん」



「そして調査兵団などという存在を、神は決してお許しにはならんのだ!!」


ジャン(神… また神か…?)

ジャン(こいつらは、神の名の下に平然と人殺しを……)

ジャン(…前回って何だよ。 まさか前にも団長を狙ったのか?)


ジャン(今までの話は前置きだったのだろう。 前に貼り付けた大きな地図を指し、具体的な話を進めていく)

ジャン(…マントの男達は聞いているのかいないのか、濁った目でボンヤリと前方を見つめる)


ジャン(今夜エルヴィン団長が宿を取っているのは、この湖畔の観光地前の道を真っ直ぐ行って…)

ジャン(トロスト区からエルミハ区への街道を、少し北に上った所)

ジャン(…今何時だ? まもなく深夜にもなるだろうか)


ジャン(中央のトリ頭は最後にいくつか指示を出し、『明朝を楽しみにしている』と言った)



ジャン(そしてゾロゾロと… 面を被った者達は、扉の手前… 大きな木箱に面とマントを脱いで入れ、建物から出て行く)

ジャン(何人かの顔を確認した)

ジャン(俺とサシャはもう一度地図を見る振りをして、部屋の中央へと進む)

ジャン(面を外した1人がチラッとこちらを見たが、それ以上気にする素振りもなく外へと消えて行った)


ジャン「もう… 脱いでいいかな…」ヒソ

サシャ「……まだいけません」

サシャ「脱ぐなら出る時に扉付近で」

ジャン「??」

サシャ「」スタスタ キィ…

サシャ「…皆いなくなりました。 私達も行きましょう」モゾモゾ

ジャン「来た道戻ったら、ヤツらと出くわすんじゃないか?」

サシャ「仕方ありません。 …ここの明かりを拝借して、森の中を突っ切りましょう」



ジャン「あぁ… 急いで団長に知らせに行かねぇと…」


ジャン(…サシャは頷き、明かりを手に森を進む。 幸い、雨はもう止んでいた)


ジャン「なぁ… 何であの面、外しちゃいけなかったんだ?」ガサガサ

サシャ「…おそらくあの建物の中は、特殊な香が焚かれていたんです」

サシャ「あのお面… 変な匂いがしたでしょう?」

サシャ「多分、建物内で焚かれている香を中和する物だったんじゃないかと思うんです」

ジャン「だからあの黒マント達はあんなに虚ろな感じだったのか?」

サシャ「お香だけの効果… というワケでもなさそうでしたけどね」ガサガサ


ジャン(中央で作られているという、人を洗脳させる薬物……)


サシャ「早く… 急がなければ」



ジャン「森の… 出口だ」

サシャ「宿… 近所も全て明かりが消えています」

ジャン「…何も言わねぇで出てきちまったから、不審に思ってンだろうな」

サシャ「事情を詳しく説明するコトもできませんが…」


…キイィ パタム


主人「……ドコほっつき歩いてたんだ!!」

ジャン(裏口の扉を開けた途端、怒号が飛んできた)

サシャ「スミマセン、何も言わずに出て行って…」

主人「そんな不良だとは思わなかったぞ!」

ジャン「違うんだって!」

奥さん「客もアタシらもどれだけ心配したか…」

サシャ「オバサン、オバサンごめんなさい!」



奥さん「あれまぁ、こんなに濡れて… 今タオル持ってきてやるから」

ジャン「いいんです! 俺達… 訳あって、もうここを出ないと」

主人「何を言ってるんだ! こんな夜中に…」

サシャ「イイエ、人の命が掛かってるんです!」

主人「人の命……? 一体……」

ジャン(始めは怒っていた主人だが、俺達のただならぬ様子を感じ取ったらしい)

ジャン「今は詳しくは話せません。 でも、今行かなければ間に合わない」

サシャ「……オバサン、私一緒に仕込みができて楽しかったです」

ジャン「…服、ありがとうございました。 濡らしてしまってすみません」

サシャ「あの男の人にも、どうかお礼を言っておいてください」

ジャン「サシャ、着替えてすぐ出るぞ!」



ジャン(俺達は2階の部屋で濡れた服を脱いで掛け、大急ぎで訓練着に着替える)

ジャン(…下に下りて行くともう、夫婦の姿はなかった)

サシャ「最後に… また来たいと伝えたかったんですが…」

ジャン「…そうだな」バタン



ジャン(……夫婦は馬小屋にいた。 松明を2本持って)

主人「これ持ってきな」

サシャ「あ… ありがとうございますぅ!」ブワッ

奥さん「次に来る時は、ゆっくりしておいきね」

サシャ「ハイ! ハイ、必ず……」グス

主人「俺達にゃ何が起こってるのか、さっぱり分からんが…」

主人「……だが、お前サン達ならやり遂げられるだろうよ」



ジャン(……『頑張ってな』、と最後に声を掛けられた)


ジャン(松明の火は心強いが、周囲は真っ暗… とてもじゃないが昼と同じスピードは出せない)

ジャン(それでも今なら、明け方前に襲撃すると言っていた奴らより、確実に先に着ける)


サシャ「ジャン… ジャン、彼らは何でやって来るつもりなんでしょう?」

ジャン「そりゃ徒歩ってコトはねぇだろうから、馬じゃねぇのか? やっぱり」

サシャ「あの黒マント達が襲ってくるとして、彼ら1人1人が馬に乗れるんでしょうか」

ジャン「そいつぁどうだろうな、あの状態じゃ。 ……とすると馬車か」

サシャ「多分… 荷馬車を何台かに分けて」

ジャン「御者は面を被ってた奴の誰かだろうな」

サシャ「宿泊所の大分手前で、馬車から彼らだけを向かわせるんだと思います」

サシャ「なんとかして捕らえたいですね……」

鳥の仮面…欲しい

そんな>>783にはこのマスクをあげるから、参加するといいよ
http://i.imgur.com/AQqzfln.jp



ジャン(……何故、奴らはそれほどまでに調査兵団を憎むんだ?)

ジャン(『壁外の巨人領域に挑むのは、神聖な壁を疑っていることになる…』)

ジャン(これは以前、アルミンがあの村の村長と会話した時の内容だ)

ジャン(…だが、本当にそれだけなのか?)

ジャン(本当は『外』に… 何か調べられて困るようなことがあるんじゃないだろうか?)

ジャン(イヤ、分かんねぇぞ、狂信者ってのは少々頭がイカレてるからな…)

ジャン(それとも狂信者共を先導して、利用している奴らがいるとか…?)


ジャン(……考えれば考えるほど、分からなくなってくる)


ジャン(サシャは時々、筋道をスッ飛ばしていきなり結論を出したりするが…)

ジャン(…今、何を思いながら馬を走らせているんだろう)


サシャ「………」



サシャ「あれが… 街道でしょうか? 暗くてよく見えませんが」

ジャン「おそらくな。 …道幅が広くなってる」

サシャ「宿舎までの距離は正確には分かりませんが… 馬車で来るとしたら、ここら辺までですかね」

ジャン「あまり近くまで来たら騒々しいからな」

ジャン「…今、何時だろう」

サシャ「夜明けまで後、3時間足らずといったところでしょうか」

ジャン「…さっき雨に濡れちまったが、寒くねぇか?」

サシャ「私は平気ですよ。 ジャンは大丈夫ですか?」

ジャン「俺はこれくらい、なんてこたねぇさ」



ジャン「……アレか? あの2階建ての建物…」

サシャ「さすがに明かりは消えてますね」

間違えた。 http://i.imgur.com/AQqzfln.jpgだったよ783


ジャン「…隣の小屋に、馬が繋げてある」

サシャ「誰か起きてくれるといいんですが……」

   …ドンドンドン!!

ジャン「…夜分スミマセン! あの、どなたか… どなたかいらっしゃいませんか!!」ドンドン

サシャ「お願いです! …開けてください!!」ドンドン!

  バタンッ! …スチャッ

サシャ「ひぃ!?」

ジャン「け、剣を… 剣を収めて下さい、エルヴィン団長!!」

エルヴィン「―― 君達は」

ハンジ「何事だいエルヴィン!?」ダダッ

ハンジ「おや? 訓練兵の…」

ペトラ「団長ご無事ですか!! …… え、サシャちゃん?」

サシャ「ペトラさん!!」ホッ



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エルヴィン「……成る程な。 それで君達はこの暗闇の中、急を知らせに来てくれたという訳か」

ハンジ「人数はどれくらいと言ったっけ?」

ジャン「…俺達が見た黒マントの男達が襲撃に当たるのだとしたら、15、6人だと思います」

ハンジ「フム… どうするね、エルヴィン?」

ペトラ「すぐにここを出ましょう、エルヴィン団長!!」

エルヴィン「出る? 何故だ。 …せっかくあちらから出向いてくれるというのに」

従卒「ですが!」

エルヴィン「知らせに来てくれたついでと言ってはなんだが… 少々協力をお願いできるかね?」

サシャ「もちろんです!」

ジャン「俺達にできることなら何でも」

エルヴィン「……それは心強い」



ジャン(この宿舎… 寝室は2階にある)

ジャン(…全員、建物からは出て外で待つ)

ジャン(相手が銃器を持っているかもしれない以上、それは当然のことだ)

ジャン(建物内には油を撒いておく。 …油はここに元々置いてあったそうだ)

ジャン(奴らが内部に侵入してきたら、おそらく2階へ行くだろう)

ジャン(頃合を見計らって、建物には火をつけるが…)

ジャン(もし外に残っている者がいれば、物音を立てないよう剣で対応し、火が回った後に出て来た者達には、銃も使うということになった)

ジャン(…ごく単純な作戦だが、素人には丁度良い)

サシャ「燃やしちゃうんですね…」

エルヴィン「…残念だがね。 この際仕方がない」

サシャ「ジャン、私の銃を…」

ジャン「お前はやっぱり弓なのか?」

サシャ「えぇ、音の出ない飛び道具は便利ですよ」



エルヴィン「できれば全員生かして捕らえたいところだが…」

エルヴィン「辺りはこの暗闇だ。 …もし間違いがあっても、さしたる問題はなかろう」

ジャン「………」

ジャン(……その時のエルヴィン団長は、おそらく微笑っていたように思う)

ハンジ「夜明けまで