妹「お兄ちゃんに彼女……」(384)

妹友「そう。いつかその時が必ずくるはずよ。遅いか早いかなんてわからないけどね」

妹「そうだよね……考えたことなかった……お兄ちゃんに彼女か……」

妹友「だからね。いつまでもお兄ちゃんお兄ちゃんって甘えてられないでしょ?」

妹「うん……本当、そだよね……」

妹友「仲良しなのは良いことだけどね。それにしても妹はどうなの? 彼氏とか作らないの?」

妹「わたしはいらない……」

妹友「どうして?」

妹「……どうしても……」

妹友「そっか」

妹「うん……(だってお兄ちゃんのことが好きだから……なんて言えないよ……)」

昼休み

幼なじみ「ね、ねぇお昼……、どうするの?」

兄「うーんそだな。屋上行って食べるようかね。一緒に食べる?」

幼なじみ「え? 良いの……?」

兄「何言ってんだよ当たり前だろ。じゃあいくか」

幼なじみ「う、うん!」

屋上

幼なじみ「なんだか、こうやって二人で食べるの久しぶりだね。小学生の頃を思い出すな……」

兄「小学生の頃? 俺はあんまり覚えてないなぁ」

幼なじみ「そうなんだ……」

昼休み

妹「はぁ……(お兄ちゃんに彼女か……いやだな。こんな気持ち……)」

妹友「ため息なんてついてどうしたのー? もしかして、お兄さんのこと……?」

妹「ううん。違う。違うよ。お兄ちゃんは関係ない……うん……」

妹友「そっか……。そうだ。たまには屋上でお昼食べない? 良い天気だしさ。ね?」

妹「うんいいよ」

妹友「じゃあいこっか」

屋上

幼なじみ「……よく探検だって言ってピクニックしたのにな……」ボソッ

兄「探検……ああ探検か!思い出した思い出した!俺とおまえと二人でよく行ってたよな。秘密基地探すんだーって」

幼なじみ「そうだよ。結局秘密基地は見つからず止めちゃったけどね……」

兄「懐かしいなー。そういえば思い出したけど確か妹も行きたい行きたいって言うから一緒に行った事あったよな?」

幼なじみ「ないよ」

兄「え?本当か?」

幼なじみ「うん本当。そんなことないよ一度も。私の方が覚えてるんだし」

兄「そっかぁ。そだっけかぁ。そんな気がしたんだけどなぁ。」

幼なじみ「気のせいだよ。うん……」

俺「そっか」

幼なじみ「……」

兄「良い天気だなぁ」

幼なじみ「……」

兄「なぁ、幼なじみ。聞いても、良いか?」

幼なじみ「なあに……?」

兄「あのさおまえ……」

ガチャ

妹友「はぁあ~とうちゃーく! やっぱり良いわね屋上! 階段疲れたけど空が青くて良い感じだわ!」

妹「はぁはぁはぁ……妹友ちゃん急ぎすぎだよ……あれ……? お兄、ちゃん……?」

妹友「あらお兄さん」

兄「ん? 二人とも何しにきたんだ?お昼?」

妹「あっわたしは……」

妹友「はい!お昼を食べにきました!……あっそうだ!ご一緒してもよろしいですか?」

兄「構わないけど。別に良いよな。幼なじみ?」

幼なじみ「……」

兄「幼なじみ?」

幼なじみ「あっいけないっ! 私委員会活動があるから行かないとダメなんだった! もう行くわね! それじゃっ」タッタッタッタ

兄「……なら、いっか。どうぞ。ホレ妹もおいで」

妹友「今のはお兄さんの彼女さんですか?」

兄「ああ違う違う。ただの幼なじみ」

妹「……」

妹友「でも二人きりでお昼だなんて怪しいですね!」

兄「たまたまたまたま。こうやってたまに男友達から離れて食べるんだよ」

妹友「へぇそうなんですか。変わってますね相変わらず」

兄「相変わらずって……二人は相変わらずいつも一緒みたいだな」

妹友「ええ親友ですから!」

妹「……」

兄「……妹?」

妹友「妹ちゃん今日は元気ないんです……。お兄さん励ましてあげてくださりませんか?」ボソッ

兄「……妹。ほら。あーん」

妹「……ん」ぱくり

妹「美味しい……」

兄「ほいもっとあーん」

妹「うん……」

妹友「やれやれ……(でも、何があったのかしら……まさかね……)」

キーンコーンカーンコーン

兄「予鈴だ。行かないとな」

妹「もっとお兄ちゃんと一緒にいたかったな……」

兄「何言ってんだ。家じゃあずっと一緒だろ? 兄妹、なんだからさ」

妹「あ……うん……そうだよね。お兄ちゃん……」

妹友「妹、いこっか?さて行きましょう」

兄「おう。二人とも行くぞ。授業始まっちまう」

妹「うん……」

妹友「……」

放課後

妹友「(ちょっと前から違和感があった。あの兄妹は仲が良すぎる。でも、二人と過ごす内にそれは当たり前のことで問題なんてないんだってわかった。
いいえ、わかったつもりでいた。だってただの兄と妹なのよ? 普通なら。でもそうじゃないはず。妹ちゃんはきっと……)」

妹「珍しいね。妹友ちゃんと寄り道して帰れるなんて……久しぶりだね……」

妹友「そうね。でもたまには言いじゃない。今日はバイトもお休みだしね。はめを外さず遊ぼうかなってね」

妹「うん。なんだかワクワクするよ……うん……」

妹友「……本当?」

妹「え……? 本当だよ……? うん……」

妹友「……はぁ……。ごめんなさい妹……私嘘つきだわごめんなさい……」

妹友「今日は遊ぶ事が目的じゃないの……」

妹「……」

妹友「本当はね。妹に話があったのよ」

妹「やっぱり……わたしとお兄ちゃんの事だよね……?」

妹友「気付いてたの!?」

妹「何となくだけど……長い付き合いだもん。朝の話だってそうだよね……」

妹友「ごめんなさい……私試すようなことして……。でも放っておけなかったの。あなたの気持ちが痛いぐらい伝わってくるから……」

妹「ううんいいよ……ありがとう妹友。私、嬉しいよ……安心した……。
だって、その……嫌われると思ったから……」

妹友「え……?」

妹「私のこの気持ち……やっぱり普通じゃないから……兄と妹だもん……おかしいって思うはず……」

妹友「……」

妹「でも妹友はこうやって、そんなに心配そうな顔をしてくれた……。
うん……妹友ならなんでも話せる……嫌わないでくれるって、わかってくれるって伝わってくるから……」

妹友「嫌うわけないよ……親友だもの……。
妹……聞かせて? あなたの気持ち……全てを」

妹「わたしは……お兄ちゃんが好き。大好き。それは、兄や妹だからじゃない……。
わたしが女だから……お兄ちゃんが男だから、好きなの……」

妹友「そっか……。ふぅ……良い顔してるわよ妹。すごくかわいい顔してる。恋してるのねお兄さんに」

妹「うん……物心ついた時からずっと好きだった……。
自分の気持ちに戸惑うことはあったけど……想いはずっと変わらない。お兄ちゃんが好き……」

妹友「その気持ちをお兄さんに伝えられたら良いんだけどね……なかなか難しいわね……」

妹「うん……兄妹だもん……」

妹友「血は繋がってる?」

妹「ばっちし繋がってる……」

妹友「だよねー……うーん、お兄さんは妹のことどう思ってるのかしら?」

妹「かわいい妹……?」

妹友「自分で言うのはどうなのよ……」

妹友「でも肝心なのはそこよね。少なくとも私が見る限りは、普通ではないと思う。あなたのお兄さんも」

妹「やっぱり変態……?」

妹友「いやいやそういうことじゃないわよ」

妹「もちろん私は変態だよ……?」

妹友「変態じゃないわよ! 正常! ……いや正常でもないけど、とにかくそういうことじゃなくて、脈ありかもって言ってるの!」

妹「脈なしだとお兄ちゃん死んでるよね……」

妹友「ああもう! うるさい! とにかく私は全力で協力するからね!」

妹「ありがとう妹友……」

幼なじみ「……今の話……」

幼なじみ「へぇえ……やっぱり……今でもなんだ……。
あの子、妹のくせに気持ち悪い……また……邪魔するんだ……だったら、私……」

幼なじみ「しょうがないよね? しょうがないよね? ねぇ兄……?
だって私達婚約してるんだから……ね」



妹「お兄ちゃん……。お兄ちゃん……。起きて……。
朝だよー……もぅ……」

兄「うーん……」

妹「かわいい妹が起こしてあげてるのに……こうなったら……ん///」

兄「ひゃあ!」ガバッ

妹「おはようお兄ちゃん。早くしないと遅刻だよ……」にこり

兄「今、何かしたか……?」

妹「ん? 何のこと……?」

兄「いや、何もないなら良いんだ。ちょっと驚いただけだから……」

妹「ふふふ……」

通学路

兄「ふぁ~あ。眠た……」

妹「夜更かし……?」

兄「ああまあな。ふぁ~あ」

妹「欠伸ばっかり……。そうだ。目を醒まさせてあげる……」

兄「……?」

妹「えいっ……」だきっ

兄「ちょっ! やめろよ!」じたばた

妹「お兄ちゃんかわいい……ふふふ」もふもふ

兄「本当やめろって! 恥ずかしいだろ!」じたばた

妹「もぅ……目は醒めた……?」

兄「醒めたけど……おまえどうしたんだよ? 今日はいつにもまして元気だな」

妹「お兄ちゃんと一緒に登校できるのが嬉しくて……」

兄「いつも一緒に登校してるだろ……」

妹「えへへ……」

休み時間

ガラガラガラ

妹「お兄ちゃん……」

兄「妹? どうしたんだ?」

妹「淋しくて愛にきました……」
兄「嘘つけ。なんか忘れ物でもしたのか?」

妹「お兄ちゃんのキスを……」

兄「キスなんてしてないし、したことないだろ……」

妹「うん、本当は抱擁を……」

兄「さっきので十分じゃないのか……」

妹「足りない……お兄ちゃんもふもふが足りない……」

兄「はぁ……じゃあ撫で撫でな。おいで」

妹「ん……」

兄「ん」なでなで

妹「ふにゃ……」

兄「で、本当の用件は何?」

妹「は、はい、お弁当……」

兄「あ……」

妹「そう、忘れたのはお兄ちゃん……」

兄「悪い。ありがとな」

妹「ん……どういたしまして……」

お昼

ガラガラガラ

妹「お兄ちゃん……」

兄「今度はどうした? 妹友ちゃんも一緒みたいだけど」

妹友「むうぅ……ばれちまっちゃあしょうがない。ではなくてですね! お昼ご一緒してもよろしいですか?」

兄「ああ良いよ。良いけどでもなんでわざわざここに?」

妹友「お兄さんに会いたかったからですよ」

兄「えっ? あ、あのそれはどういう意味で……まさか///」

妹友「ち、違います! 私じゃないですからね! もぅ……///
妹ちゃんがですよ」

妹「お兄ちゃんに会いたかったの……」

兄「ああ……なるほど納得。でもちょっと……いや言わないでおこう……」ボソッ

妹友「?」

妹友「はむはむ。ごくん。ねぇお兄さん。聞きたいことがあるのですが良いですか?」

兄「いきなりだな。何でもウェルカムだ」

妹友「ではずばり、好きなタイプは?」

兄「それは女性のってことか?」

妹友「男性が良いんですか? まさかっ」

妹「いいえむしろ……」

兄「妹は黙ってなさい。好きな女性のタイプはそうだな……」ちらり

妹友「なっなんですか?///」

兄「いや違うな。ありっちゃありだが違う。悪くはない。いやむしろ良い。だが……」ちらり

妹友「へ……?///」まなーん

妹「ん……?」たゆーん

妹「なあにお兄ちゃん……?」たゆんたゆん

妹「そんなに見なくても家に帰ったらわたしいいよ……?」たゆんたゆん

妹「えっち……////」たゆんたゆん

兄「何を言ってるんだ妹……俺のタイプはずばり雰囲気が和む人かな。こうたゆーんって感じにさ」

妹友「たゆーん……雰囲気ですかそうですか……どこ見てたかしゃくですがわかりましたわ。では次!」

兄「他にもあるのかよ……」

妹友「はいもちろん。何でもウェルカムですよね?」

兄「ああ……こいや!」

兄「はぁはぁもういいか……?」

妹友「ええ。ありがとうございました。でもまさか知れば知る程こうも幻滅するとは思いませんでした……」

兄「それ本人の前で言う……?うう疲れた……」

妹友「人のいないところで言う陰口はいけないことだと思っているのでごめんなさい」

兄「殊勝なことだ……。でも丸裸にされるってこんな気分なんだろうな……」

妹「ううん違うよ……何故ならお兄ちゃんは興奮していないから……」

兄「……妹。そりゃ酷いぜ……そんな変態じゃないぞ。お兄ちゃんは。多分。いやおそらくきっと……」

妹友「否定してくださいよ……正直ものなんだからっ」ボソッ

兄「それにしても何のためにこんな情報を集めたんだ? 俺のファンですかーそうですかー」

妹「そうです会員No.1妹です……」

妹友「えっとですね。あれですよ。えっと……会員No.2妹友です」

兄「まじかよ……」

妹友「嘘です。本当は情報の授業の一環ですよ。はいおしまい。チャイムがなりそうだからおいとましますねさようなら」まなーん

妹「またくるねお兄ちゃん……」たゆーん


兄「おう」

兄「…………」ちらり

兄「……結局昼休みにも幼なじみは来なかったな。来るってメールで言ってたのに。
それにしても珍しい。幼なじみが休むなんて。どうしたんだあいつ……?」



兄「う、うーん……」

幼なじみ「起きてー朝だよー。もぅ……こうなったら……えへへ///」す

兄「!」

幼なじみ「起きた? おはよう兄」

兄「……え? 幼なじみ……? なんで俺の部屋に……?」

幼なじみ「おはよう兄」

兄「おはようって……まだ真っ暗じゃないか……何のようだ?」

幼なじみ「おはよう兄……用がないと来ちゃいけないの?」

兄「いや、そうじゃないが。時間が時間だろ。まだ……2時か。いくらなんでも遅すぎだ……」

幼なじみ「……私ね。兄にね。会いたかったんだ。凄く会いたかったの……」

幼なじみ「会いたくて会いたくてしかたがなかったの……知ってた?」

兄「いや……」

幼なじみ「寂しかった。私このまま寂しさで死んじゃうんじゃないかってぐらいに。ううん違う。死んじゃおうかなって思ったの」

兄「何言ってるんだよ馬鹿。おまえが、幼なじみが死ぬなんて悲しいだろ。学校来ないから心配だったんだ。
何か、あったのか……?」

幼なじみ「やっぱり兄はわかるんだね……嬉しい……でもね。兄のせいでもあるんだよ」

兄「え……?」

幼なじみ「兄が忘れてるから」

兄「何を……?」

幼なじみ「私との約束を……」

兄「約、束……」

幼なじみ「私はね。ずっと覚えてるよ。二人で秘密基地探しに探検に行ったこと。その全て」

兄「……ごめん。本当に覚えてないんだ……いや思い出せないんだ。まるでもやがかかったように頭が重たくて動けなくて。眠たくて。眠たいんだ。」

幼なじみ「おやすみ……」


兄「おやすみ」

カチャ

パタン

幼なじみ「おやすみ兄……」

妹「……」

幼なじみ「……なんだ、起きてたんだ? 盗み聞きなんて良い趣味とは言えないよね……?」

妹「お兄ちゃんが起きたらわかるから……不法侵入する人に言われたくない……。
何が目的……?」

幼なじみ「別に。話聴いてたならわかるでしょ。兄に愛に来ただけよ」

妹「……約束って……?」

幼なじみ「っ……! あなたには……! 妹には、関係ない……。幼なじみの私と兄の話だから」

妹「……」

幼なじみ「……」

妹「なら早く出てってよ……」

幼なじみ「言われなくても出ていくから。……でもその前に言っておくね。
わたし、来月のお祭りの日に兄に告白する」

妹「え……?」

幼なじみ「わたしは子供の頃からずっと兄が好きなの。あなた以上にね。こんな……いつまでも幼なじみの関係じゃいやだから決めたの」

妹「……」

幼なじみ「子供の時と違って幼なじみと兄妹じゃ全く違う。妹のあなたには絶対無理だもの。
もう邪魔はさせないから。おやすみなさい」

妹「……」

幼なじみ「(そう、もう邪魔はさせない。だから、お願い兄。思いだして約束を……)」


幼なじみ「そうじゃないと私……もう……どうにかなっちゃうから……」

兄の部屋

妹「(わたしは妹だから無理なのかな……。お兄ちゃんを好きだと気付いた時からずっと考える。どうして兄妹は駄目なのだろう……?
わたしはこんなにお兄ちゃんが好きなのに……)」

兄「Zzz~……」

妹「お兄ちゃん……好き……でも……わたしには告白なんてできないよ……。
(幼なじみなら失敗しても、元通りとはいかないだろうけど、どうとでもなる……でもわたしは妹だから……毎日会うから……)
失敗したら、もうわたし達駄目になっちゃうから……お兄ちゃん……」

翌日

学校

妹友「おはよう妹!」

妹「あ……おはよう妹友ちゃん……はぁ……」

妹友「はぁもう。朝っぱらから大きなため息止めてよね!」

妹「わたしため息ついてた……? ごめん……気をつけます……」

妹友「べつに良いわよ。そんなことよりお兄さんと何かあったの? いえあったのね。そんな顔してる」

妹「お兄ちゃんとはべつに……」

妹友「でも関係あるんでしょ? なあに? 妹がわたしに隠し事なんて不可能なんだから」

妹「うう……言わなきゃ駄目かな……?」

妹友「べつに強制はしないわよ。でも……あんたがそんな顔してたらいい気分じゃないからね」むす

妹「ごめんなさい……」

妹友「謝らないでよ。本当、もう……。心配なのよ……。妹って放っておいたらどこか行っちゃいそうなんだもん……」

妹「その台詞……」

妹友「へ? どうしたの?」

妹「懐かしい……小さい頃にお兄ちゃんにも同じようなこと言われたから……」

妹友「そうなんだ……やっぱりお兄さんなのよね……」

妹「うん……あの……妹友ちゃんありがとう心配してくれて……。
でも、今はまだ自分で考えてみる……もし……どうしようもなくなったら頼ってもいい……?」

妹友「ええもちろんよ。私はいつでも妹の味方だからね!」

妹「ありがとう……(でも……きっともうお兄ちゃんのことで頼ることはない……だってわたしは妹だから……)」

妹友「…………」

休む時間

妹「はぁ……」

妹友「……」

妹「空が綺麗だよね……」

妹友「え? ええそうねきれい……」

ドンヨリドンヨリ

妹「はぁ……」

妹友「今日はお兄さんのところに行かないの?」

妹「お兄ちゃんちゃんとお弁当持っていったから……」

妹友「用がなくても行けば良いじゃない?」

妹「迷惑だから……」

妹友「へ……?」

昼休み

妹友「さて! じゃあお兄さんのところに行きましょう!」

妹「いってらっしゃい……」

妹友「あんたが行きたいんでしょ!」

妹「わたし今日はそんなこと言ってない……」

妹友「なっ! そうね! 確かに今日は言ってないわ。でも!」

妹「もう行かないから……」

妹友「え……? もうってそれはどういう……」

妹「そのままの意味……」

妹友「え? え……? 妹? 一体どういう意味よ!」

妹「トイレ……」

妹友「ちょっと待ちなさいよ! ねぇ!」

妹「うるさい……もう行きたくないの……!」

妹友「妹……?」

妹「ごめんなさい……トイレ行ってくるから……」

妹友「(どういうこと? お兄さんは、何か知らないの? こんなの悲しいわよ……)」

兄教室


「おーい兄ー。彼女が来てるぞー」

幼なじみ「(え……!)」がたっ

兄「あれ? 妹友ちゃんじゃないか。おまえら彼女じゃないからな! どうしたんだ一人で?」

幼なじみ「(ほ……)」

妹友「あの……その……」ちらり

兄「あー……屋上にでもいこうか?」

妹友「はい……」

幼なじみ「……」

屋上

妹友「あの……教室では気遣かっていただきありがとうございました」

兄「いや、ただ事じゃない何かがあったんだなって。表情が物語ってたから。何があった?
君が一人で来るってことは妹のことだろ?」

妹友「はい……お見通しなんですね……」

兄「そんな浮かない顔してたら誰だってわかるさ……」

妹「……私は妹のお兄さんに聞きたいことがあって来ました。ですがその前に、驚くかも知れませんがお兄さんには大切なことを言わなくてはなりません」

兄「大切なこと?」

妹「はい……実は妹ちゃんは……」

屋上

妹友「あの……教室では気遣かっていただきありがとうございました」

兄「いや、ただ事じゃない何かがあったんだなって。表情が物語ってたから。何があった?
君が一人で来るってことは妹のことだろ?」

妹友「はい……お見通しなんですね……」

兄「そんな浮かない顔してたら誰だってわかるさ……」

妹友「……私は妹ちゃんのお兄さんに聞きたいことがあって来ました。ですがその前に、驚くかも知れませんがお兄さんには大切なことを言わなくてはなりません」

兄「大切なこと?」

妹友「はい……実は妹ちゃんは……」

兄「恋してるううう!? だ、誰に?」

妹友「それは口が裂けても言えません……でも事実です」

兄「まさか……そんな……妹が恋? あの妹が? かわいい妹が?
妹はお兄ちゃん子で可愛くて、俺がしっかり捕まえてやらないとどこが飛んでいっちゃうような子なんだぜ?
まだ幼くて。いや外見は部分的には大人びてきてるけどそれでも身体は一部分大人、心は子供。その名は妹。お兄ちゃん大好き15歳なはず。
俺はずっと、妹が生まれた時から見てるんだ。その妹がまさか……まさか……恋なんて……赤の他人に恋なんてするはずがない……」

妹友「ちなみに、妹ちゃんが恋してるのは、お兄さんと同学年です」

兄「馬鹿な……!」

兄「馬鹿なっ……!」

妹友「そしてここからが本題なのですが……大丈夫ですか……?」

兄「殺す……! 誰だ? 殺してやる……!」

妹友「あ、あの、お兄さん落ち着いてください!」

兄「こここれが落ち着いていられるかっ! つまり相談内容は恋話なんだろ!?
妹の親友の君が浮かない顔! つまり妹は落ち込んでるが君では解決できない!
つまりその誰か知らない糞野郎に君では解決できない程の何かされた可能性が高いってことだろ!
恋なんてくそくらいだ!」

妹友「落ち着いてください……!(でもお兄さんは知らないみたいね……)」

兄「くそ……妹……どんな奴に恋なんて……」

妹友「……(何か心当たりがあれば良かったけど、まさかこんなにお兄さんが取り乱すことになるなんて……もう落ち着いたみたいだけど。
それにしてもお兄さんのこの反応。これはやっぱり……)」

兄「相手は誰か……。どうしても口を割らないと……?」

妹友「ごめんなさい。お兄さん。その……彼は悪い人じゃないんです。
妹ちゃんにいつも優しくて、でも妹ちゃん意外にも優しくて。変な人だけどちょっと素敵で……(私何言ってるんだろ……)」

兄「君には幻滅した。そいつが妹を困らせてるんだろ? 何故そいつを庇う?」

妹友「それは……その、確かに彼が関係あるのは確かなんです。でも直接は彼じゃないらしくて……だから……ごめんなさい……」

兄「はぁ……もういい。イマイチ要領が掴めない話だな。とりあえず俺は妹と話してみるよ……」

妹友「すみません。妹ちゃんのことよろしくお願いします……」

兄「……でも君も、妹を心配してくれてるんだもんな……俺の方こそごめん。そして教えてくれてありがとな妹友ちゃん」

妹友「はいお兄さん……」

妹教室


兄「妹は~……?」キョロキョロ

妹「……」

兄「机に突っ伏して昼寝か?」


妹「え……? お兄ちゃん……! ど、どうしてここに……?」

兄「妹に話しがあってきた」

妹「……なんで……どうして……」

兄「ん?」

妹「わたしにはお兄ちゃんに話しなんてない……」

兄「え? い、妹? なんでそんな……アハハお兄ちゃんがわざわざ教室にきたんだぞ? 大好きなお兄ちゃんが? な?」

妹「お兄ちゃんなんて好きじゃない……!!」

兄「! いもう、と……?」

妹「お願い今すぐ出てって……」

兄「あの……俺は、な……ただ」

妹「出てって……!!」

兄「ごめん……出ていく……またあとで、な……?」

妹「…………」

兄「…………」

妹「う、うう……」

キーンコーンカーンコーン

放課後


妹「妹友ちゃん……ちょっと……」

妹友「妹……? あのねわたし……」

妹「いいから……きて……」

妹友「…………」


屋上


妹友「妹、わたし……」

妹「どうしてお兄ちゃんが教室にきたの……?」

妹友「それは……」

妹「どうしてお兄ちゃんが教室にきたのっ……! どうしてなの……!」

妹友「あのね。私、妹が心配だから、だから」

妹「わたしそんなことしてなんて、頼んでないよ……!!」

妹友「う……」

妹「どうしてそんな勝手なことしたの……!?
わたし……! わたしお兄ちゃんに会いたくなかった……!! 会ったら駄目だったのに……なのに……!」

妹友「ご、ごめん……なさい……わたし間違えて……その……ううぅ」

妹「どうして泣くの……泣かないで……。泣きたいのはわたしの方なのに……うぅう……」

妹友「ごめん……! ごめんなさいわたぢ……ごめんなさい……うぅう、うわああああん!」

妹「そんなに泣かれたら……これ以上責められない、よ……うぅ……うえええええええん……お兄ちゃあああああん……!!」

妹友「うわああああん……!」

妹「うええええええん……!」

夕暮れの屋上


妹友「わたし……勝手で……お節介で……ごめんなさい。お兄さんに話したのも悪いのも全部わたし……。
本当ごめんなさい……わたし何もわかってなかった……妹の気持ちを省みずに勝手に考えて勝手にわかった気になって……。
心配だなんて言葉使ってたけど……心配している自分に酔ってただけなんだわ……。
家が貧しくてバイトばっかりしてる自分が嫌で……でも妹はそんな私を頼ってくれる。頼られるから舞い上がって酔って自分勝手に考えて……。
本当にごめんなさい。私、妹の親友だなんて言ってたけどそんな資格ないわよね……ごめんね妹……」

妹「…………」

妹「はぁあ……ふぅ……妹友ちゃん……。わたし……お兄ちゃんを諦めたの……」

妹友「え……? ど、どうして? あんなに好きだって言ってたのに……!」

妹「お兄ちゃんは大好き……愛してると言っても過言ではないくらい……本当、好き……。
でもねわかったんだ。ある人に言われて気付いたの……。もうわたしもお兄ちゃんも大きくなった……子供じゃない。
だから……幼い時のように好きだなんて気持ちを直接表現するなんてできっこないってことを。だって兄妹だから……子供じゃないから……」

妹友「子供じゃない……?」

妹「わたし、小学生の頃にお兄ちゃんに告白したことがあるの……」

妹友「え……?」

妹「ちょうど来月にお祭りがあるよね……? わたしが告白したのはその当時のお祭りの日だった……。
幼いながら恥ずかしくて恥ずかしくてしかたなかったけど言わないと後悔するからしたの……。
ある人にお兄ちゃんを取られたくなかったから……。一緒にお祭りに行きたかったから……」

妹友「どう、なったの……?」

妹「何言ったか覚えてないんだけど成功したはず……だってお兄ちゃんとお祭りを周ったことを覚えているから……」

妹友「そうなんだ。でも……そのある人はフラれちゃったのね……」

妹「そう……でも……それは子供の頃の話……」

妹「昨日その人に言われたんだ……。来月のお祭りの日にお兄ちゃんに告白するって……。
子供だから……今みたいにしがらみがないから……小さいわたしは何も考えずに……ううん……。
素直に好きだって言うことが出来た……。
でも大きくなった私にはできない……。
子供心に婚約したって大人になれば忘れる約束のようなもの。そんなのならいくらでもできる……。
でも大人になってするプロポーズはいくらでもできないよ……。
何より私はお兄ちゃんの妹だから……。
告白して関係が壊れるより……告白しないで今まで通りの兄と妹でいたいから……」

妹友「……それで……良いの?」

妹友「話を聞いてやっとわかった……。お節介な私だけど、でもお節介な私だから言わせて貰うわね。
諦めたのにどうしてあんなに悩んでたの……?
兄と妹でいたいならどうしてお兄さんに会いたくなかったの……?
そしてどうしてそんな悲しい笑顔をするのよ……!」

妹「え……?」

妹友「私も馬鹿だけどあなたは大馬鹿よっ!
お兄さんが好きだから悩んでたんでしょ! お兄さんと一緒にいたら好きな気持ちが抑えられないから会いたくなかったんでしょ!
諦めたなんて嘘よ! 諦められないからそんな悲しい笑顔をしてるんでしょうが……!!」

妹「わ、わたし……わたし……」ガクッ

妹「でも……でも……だったらどうすれば良いの……!? 私がお兄ちゃんが大好きで諦められないほど大好きでも……。
諦めないと辛いよ……。お兄ちゃんの家族じゃ、なくなるかも知れないんだからっ……」

妹友「……ごめん。私には、失敗のリスクも諦める怖さも、わからないから……。
無責任なことしか言えなくてごめんね……」

妹「うぅ……」

妹友「……妹。私は親友にはなれないかもしれないけど、友達だからね。例え妹に嫌われても私は友達だと思ってる。
いつでも、話ぐらい聞くから。自分の気持ちに気付かせてあげるぐらいしかできないみたいだけど……。それでもお節介でも私はいるから……」

妹「…………」

妹友「居たらだめかな……」

妹「ううん……ありがとう……」



兄「…………」

兄「俺、最低だ……盗み聞きなんてするつもりはなかった……」

兄「妹…………」

祭の日。


兄「…………」

兄「ふぅーよっし……」

兄「…………」

兄「大丈夫だ。大丈夫……」

兄「…………」

兄「もう覚悟は出来てる……うん」

「はぁはぁはぁ……あの……ごめんなさい遅れて……」

兄「いいけど。大丈夫か?」

「うん……大丈、夫。えへへ……いこっか!」

兄「ああ」


幼なじみ「ねっ!」

幼なじみ「でも良かった……」

兄「ん? 何がだ?」

幼なじみ「正直、わたしここにくるのが怖かったの。兄がきてもいないんじゃないかって思って……。
小学生のあの日みたいに約束を忘れちゃうんじゃないかって……」

兄「もう忘れたりしないよ」


幼なじみ「だよね。今日はちゃんと居てくれたもの……。本当に嬉しいわ! えへへ! 今日は離さないからね!
ずっと手を繋いでいましょ! あの頃みたいにねっ!」

兄「おう」


手をしっかりと握りあい歩いていく。俺はあの日。妹の話のおかげで全てを思いだした。
幼なじみとの約束も。淡い初恋の思い出も。全て……。

当たり前のように隣り合う我が家と幼なじみの家に偶然同い年の子供が生まれた。その偶然は自然と俺と幼なじみを引き合わせた。そして必然的に惹かれあう運命にあったのかもしれない。

俺の初恋の相手はもちろん幼なじみだった。

小学生の頃。俺は妹に告白されるより少し前に幼なじみに告白されていた。元々一緒に過ごす内に惹かれていたせいか。幼いながらその告白は嬉しかったらしい。

『大きくなったら結婚しましょう。』
『それまでは結婚を前提にお付き合いしましょう。』

とまで、二人は誓いあった。
それが俺達をピクニックに駆り立てた。二人で住む家を探しましょう。秘密基地探しの始まりだった。

兄「でも秘密基地は見つからなかったんだよな」

幼なじみ「そうだったね。でも楽しかったなぁあの頃は……。
お弁当や水筒やビニールシートを入れた小さなリュックを背負って、いろんな所を探検した」

兄「秘密基地を見つけるのが目標だったけど探検しながら一緒にいるだけで楽しかったからな……」

幼なじみ「本当、楽しかったよ……」

兄「…………」

幼なじみ「兄……今日という日の約束。ちゃんと思いだしたんだよね……?」

兄「ああ、大丈夫。ずっと待たせちまったんだよな。俺は幼なじみを……」

幼なじみ「うん。ずっと……待ってたから……ずっと……」

兄「でも……教えてくれればよかったのに。どうして何年も黙ってたんだ?」

幼なじみ「だって……自分から思い出してくれないと。私が一方的に要求しているみたいだもん……」

兄「アハハそうか。確かにな。……待たせてごめんな幼なじみ」

幼なじみ「はい……」

『ねぇ兄。お父さんが言ってたの! プロポーズは男がするもんなんだって!』

『じゃあ僕するよ! 幼なじみのこと大好きだから! でもプロポーズってどんなことを言えば良いんだろう?』

『パパがね。好きな人に思っていることをそのまま言えば良いんだって言ってたわ! そんなことより大事なのは場所とタイミングなんだって!』

『場所とタイミングかーうーん……』

『私、お祭りが好きなの! だからお祭りの日が良いなぁ!』

『でもお祭りは一年に一回しかないんだよ? 失敗したら大変だよ?』

『なんだ~兄自信ないの?』

『違うよ! ただやったことないからチャンスは多い方が良いと思って……』

『そうねぇ……』

『男なら一回でビシッと決めるべきよ! って思ったけど。それならチャンスは10回! ぐらいで良いんじゃないの?』

『10回かー……でもそれぐらいなら何とかなるかも!』

『10回目がね。ちょうど大人になれる歳なんだ。本当は一回が良いんだけど悪くないでしょ?』

『へええ。それじゃあ場所はどこが良い?』

『ここが良い!』

『わかった! 明日からここでプロポーズをするから楽しみに待っててね! 初めてだから緊張するけど頑張るよ!』

『約束よ!』

『うん約束!』

妹友「ごめん……。今更こんなこと聞くの間違ってるだろうけど本当に良いのね? 後悔しないのね?」

妹「うん……大丈夫……もう決めたから……。後悔しないなんてことはないだろうけど、私にはこれが一番だから……」

妹友「そっか。 そうだよね……」

妹「前に、お兄ちゃんに彼女が出来たらどうするのってわたしに聞いたよね……?
あの時は戸惑うしかなかったけど、今ならはっきりと答えられるよ……」

妹友「なんて答えるの?」

妹「どうもしない……。それでもお兄ちゃんを好きで居続けるから。
彼女さんが出来ても……お兄ちゃんを好きな気持ちに変わりはないから……」

妹友「本当……あんたはどこまで健気で良い妹なのよ……」

妹「妹だからしかたない……」

兄「幼なじみ……忘れていた俺を許してくれるか?」

幼なじみ「許すよ……」

兄「これからは子供の時のように俺達仲良くやっていけるよな?」

幼なじみ「うん……」

兄「本当……待たせてごめんな」

幼なじみ「いいよ……」

兄「そっか……じゃあ最後に一つ確認」

幼なじみ「なあに?」

兄「どうして嘘をつくんだ……?」

幼なじみ「え? な、何の事?」

兄「記憶が全て戻ったんだ。もちろんどうして記憶をなくしたのかも思い出した……。
おまえ……あの時、俺に……俺を殺そうとしたよな……?」

幼なじみ「……そっか。思い出したんだ。余計なことまで思い出したんだ……最悪……」

幼なじみ「だから今日は楽しそうじゃなかったんだね……せっかくのお祭りが暗いわけか……」

兄「教えてくれ。おまえはどうして嘘をついたんだ?
記憶に関わる話を俺に教えなかった理由を、おまえは一方的に要求しているみたいだから教えなかったと言ったが、俺の記憶が戻らないように注意しただけだろ。
それに屋上でご飯を一緒に食べた時もそうだ。探検には妹は一度も来てないと言ったが、妹に確認したら何回か一緒に行っている。

俺は、こんなに時が経つ前に正直に話して欲しかった……」

幼なじみ「正直に話したら許してくれた? 私にプロポーズしてくれた? してないでしょっ……!!」

俺「したさ……俺はおまえの事が好きだった。嘘も偽りもない。初恋だったから。おまえだってそうだから俺を待ってたんだろっ!」

幼なじみ「そうよ……初恋だったの……ずっと今でもあなたのことが好き……大好きだから……! 嫌われたくなかったもの……だから嘘をつくしかなかった……」

兄「…………」

幼なじみ「でも……あなたは! 私じゃなく妹を選んだじゃない! あの日! 祭の日! どうして約束を破ったの……!」

兄「……あの日。俺は妹に告白された。いや祝福されたってのが正しいんだが……。
妹は俺とおまえの仲を幼いながら感じとってか、俺をあの手この手でいかせまいとしていた。
でも俺が行きたいそぶりを見せている内に、妹は諦めてこう言ったんだ。
『私は妹だからしかたないよね。今日ぐらいお姉ちゃんにお兄ちゃんを貸してあげる。祭なんて一人で行っても楽しくないから良い。待ってる』って」

兄「俺。その言葉を聞いた時。なんて自分は馬鹿何だって思ったんだ。
妹に妹だからしかたないなんて言葉を言わせる兄って何なんだろうって。一年に一度の祭なんだ。行かせてあげたいと強く思った。
だから妹を連れて、祭に行った。おまえを探したけど、遅くなったからもういなくなってて……。
本当は三人で一緒に周りたかったんだ……」

幼なじみ「私……その時にまだいたよ……二人を陰からみてたの……。
許せなかった。
そんなこと知らなかったから……私を棄てて違う女の子を選んだんだって。そう考えた。
そしたらいてもたってもいられなくなって。もう何もかもがおしまいだって思った。
だからあなた殺そうとしたの……」

幼なじみ「翌日、あなたが私に謝りにきたところをこっそり背後に回り込んで、近くにあった手頃な石で後頭部を殴打したの。
あの時の私はただただあなたが許せなかったから……。でも、頭から血を流して倒れ込んだあなたを見て私は我に帰った。
好きな人に向かって何をしたのかとね。
そしたら搬送されたあなたは記憶に異常をきたしていた。後は偶然にも滑りやすい場所だったから事故をも装い、そして今の今まで嘘をついてきたの。話した通り。私はあなたが好きだから……」

兄「…………」

私は17ですが、お兄ゃちんが大好きです。男性として、私はお兄ちゃんと結婚したいです。
お兄ちゃんは航行3年で、学年でも他校の人からも人気があり、顔が広いです。
お兄ちゃんにキスされたりパグされたり頭を撫でられることが私は好きで、お兄ちゃんに
彼女が出来てからもずっと「キスして。頑張ったご褒美ちょーだい♪」
お兄ちゃんはいつも「しかたないなぁ」と言い、ヤってくれます。
でも最近はしてくれなくなり、彼女とばかり遊んでいます。
私もお兄ちゃんと遊びたいと言っても、「ごめん、今日はかに女とデートの約束なんだ。
また今度」と言って遊んでくれません。私は彼女がムカつきます。
なんでお兄ちゃんなの?お兄ちゃんには私っていう彼女がいるのに、なんとしてでも
お兄ちゃんと彼女を引き離したい彼女の人うざい、ムカつく、ブサイクのくせにと
毎日思うようになりました。
そう思ってから、彼女の前でわざとキスしたり、ラブ握りして歩いたり、パグしたり
してます。
お兄ちゃんは私の彼氏、私だけがひと理事めできるのと思って過ごしています。
でも、お兄ちゃんや彼女のことを思うと複雑な気分になります。
このままいやがらせを続けて私はそれでいいのかなって思うことが毎日です。
お兄ちゃんのためには身を引いた方がいいでしょうか

幼なじみ「私達……どうしてこんなことになったのかな……。
あなたが来てくれていれば、わたしが勘違いしていなければ、今でも仲良しだったのかな……?
嘘なんてつかなくても、わたしはあなたの隣にいられたのかな……?
幼なじみとしてじゃなく、あなたの愛する彼女として……」

兄「…………」

幼なじみ「わたし、何があっても、何がなんでもあなたを手に入れたい。あなたが好きなの……。
お願い兄……私のことが好きだと言って。小さい頃から夢見てたの……私にプロポーズをして……お願い……。
私は許すから。あなたが来なかったことも何もかもを……。これからだって、何があっても許すから……。
あなたを愛し続けるから。あなたもわたしを許して……」

兄「…………」

兄「許すよ……」

幼なじみ「ほ、本当に……?」

兄「ああ許す。そのために今日は幼なじみの所に来たんだから。俺が許さないとおまえは危なっかしくて見てられないしな」

幼なじみ「兄……」

兄「幼なじみ。約束してくれないか?」

幼なじみ「約束……?」

兄「今後、誰かを殺そうとするようなこと。誰かを傷つけるようなことをしないって」

幼なじみ「わかった……」

兄「それと……妹とも仲良くするって」

幼なじみ「それは……」

兄「お願いだ。俺は三人仲良くやって行きたいんだ幼なじみ」

幼なじみ「……わかった。約束する。わたしもう怖いことはしない。妹ちゃんとも仲良くする。
嫌われてると思うけど……兄が言うなら仲良くなるよ必ず」

兄「ありがとう幼なじみ……」

幼なじみ「うん……」

兄「そしてプロポーズのことなんだが……」

幼なじみ「わかってる。ううんわかってた……。
わたし兄が好きだから。だからこそあなたの妹と仲良くなれなかったから……。
さっきの言葉ね。あれはせめてもの私からのプロポーズだったんだ……。
でも兄は、わたしにはできないんだよね……? プロポーズ……」

兄「約束させたのに。俺の方は昔の約束を守ることができないなんて。ごめんな幼なじみ……。
いろいろ考えて迷ってさ。まだ迷ってるけどでもわかったんだ……。プロポーズ。今はできないんだってことが」

幼なじみ「 今はってどういうこと……?」

兄「これだけは言っておく。俺、おまえのことは好きだよ……」

兄「好きだから、だからこそ。中途半端じゃ駄目だって思うんだ。
今日おまえと会ってやっとわかりあえた。許すことができた。
やっとなんだ。やっと始まるんだ。今が……今がきっと、子供の頃におまえに告白された日のようなものなんだと思う。
だから俺は、これからもっとお互いを知って確信した時に。おまえにプロポーズするよ。
もう一度約束してくれないか? 場所もタイミングもわからない。でもいつかするその日を待っていてほしいんだ」

幼なじみ「うん……わかった。私ずっと待ってるから……!」

『約束!』


俺はこうして、幼なじみと約束を交わした。幼なじみはずっと待ちつづけるだろう。いつかわからない俺のプロポーズと約束を信じて。
俺は嘘つきだ。

でもこうでもしなければ、俺は幼なじみを子供の頃のように暴走させてしまうかもしれない。

そのためにはこうするしかなかった。

俺の選択は間違いだろうか。

幼なじみはもう何もしないと信じて、本当の気持ちを言えば良かっただろうか。
それとも警察に助けてもらえばよかっただろうか。

幼なじみには酷い嘘をついていると思う。幼なじみだからわかってしまう。
本当にずっと待っていてくれるってことを。

でも、それでも俺は三人仲良くしたいんだ。

例え偽りの関係でも。

言い訳かもしれない。

でも幼なじみも、好きだから。幼なじみとして大切だから。こうするしかなかったんだ。

俺はもう後戻りできない。いやしない。後悔なんてない。

子供の頃。幼なじみを結果的に裏切り、妹を連れて祭に行ったことも。
今日、幼なじみに気持ちを伝えないで偽りの約束したことも。

妹と兄妹でも家族でもなくなるかもしれないことも……。


兄「妹に愛にいこう」

夕暮れの屋上


妹友「休みの日だから勝手に入っちゃ駄目なんだけど、それでも来てよかったわね! 夕暮れ凄く綺麗だわ!」

妹「うん……」

妹友「人もいないし静かだし最高よね!」

妹「うん……」

妹友「あ! こっからも祭が見えるわよ! うわー人がいっぱい!
でもあんなに多いなら行かなくても良かったわよね!」

妹「そうだね……」

妹友「…………」

妹「…………」

妹友「わ、わたし喉渇いたから !だから飲み物買ってくるわね! 妹のも何か買ってくるから!」

妹「ありがとう……」

妹友「……はぁ」

学校


妹友「(妹が決めた事だからもう何も言わないけど、こんなにも悲しいのね、失恋って……。
私知らなかった。恋なんて今までしたことがないしどんな気持ちなのかわからないけど。
でも妹を見てたら悲しくなっちゃうんだから……)」

妹友「ああもう。でも私が悲しんでたら駄目よね……何もできない自分が歯がゆいけど……」

妹友「すぅ……はぁ……」


妹友「よっし! 元気元気! 私はいつでも妹を支えられるように元気でいなくちゃだよね! うん!」

妹友「さて! さっさとうじうじしてる妹のところに言ってあげなきゃだわ!」

兄「はぁはぁ……やっぱりここか」

妹友「え……? お兄さん?」

兄「妹友ちゃん。君がいるなら妹もここにいるよな? 屋上か。よし」

妹友「……待ってください!」

兄「?」

妹友「お兄さんは何しにここに来たのですか! 何しに妹ちゃんに会いにいくのですか!」

兄「言わないと駄目か?」

妹友「はい……!」

兄「例え兄妹の問題でも?」

妹友「教えてくださらなければ私、お兄さんを通すわけには行きません……!
妹ちゃんは苦しんでる……。そしてあなたが行けばさらに苦しむかもしれないから!」

兄「そうか……妹友は相変わらず妹を心配してくれてるんだな……。でも……何を話すかなんて言えない」

妹友「ならここは絶対に通しません! 私もう嫌なんです……あんなに悲しい笑顔をした妹ちゃんを見たくないんです!」

兄「妹友ちゃん。君は妹と本当仲良くしてくれてるし、妹を想ってくれてる。
俺は妹が生まれた時から見てきた兄だけど、君はきっと、俺が知らない妹をたくさん見て知っているんだと思う。
だからこうやって立ちはだかることも理解できる。
でも俺は兄だ。兄だから妹を悲しませるようなことはしたくないしするつもりはない。
俺を信じてはくれないか……?」

妹友「信じても、間違ってしまったらどうするんですか……。私、前にお兄さんに妹ちゃんをお願いしました。
妹ちゃん、ずっと落ち込んでいたから。でもあれは間違いでしたよね……。
相談を持ち掛けて頼んだ私がお兄さんを責めるつもりはありません。でも、妹ちゃんは私のせいでショックを受けてそれ以来ずっと……」

兄「わかってる。俺もあの時に何も考えずに行動したことを後悔してるから……。
君も知っての通りあれ以来俺と妹の関係はぎくしゃくしたままだ。こんなに歳の近い兄妹なのに、あの時まで一度も喧嘩なんてしたことがなかったから。
正直どう対応すれば良いのかわからなかったんだ。でも、このままじゃいけないだろ?
君もわかっているはずだ!」

妹友「わかってますよ……! でも……私には何もできないから……妹ちゃんを見守るぐらいしかできないから……。
そこまで言うなら、お兄さんにはどうすれば良いかわかってるんですか……?」

兄「ああ、わかってるからここにきたんだ。あの時は考えなしで駄目な俺だったが、今は違う。
頼む。もう一度、俺にチャンスをくれないか? 妹を任せてくれないか? このとおりだ……!」

妹友「……! な、なんでそこまでするんですか……! 私がいても強引に行けば良いだけじゃないですか……それなのにどうして……」

兄「君が妹の親友だからだよ」

妹友「わ、私は親友なんてものじゃ……ないですよ……」

兄「いや、親友だよ。妹ってさ。見たまんまの通りふわふわしてるだろ?
どっちかって言うと話すことが苦手なくせに、行動力はあるから、いつのまにか勝手にどっかに行ってしまう。
妹をあまり知らない人から見たらとっつきづらいことこの上ないと思うんだ。
何考えてるかわからないのに落ち着いてもいないんだし。その上俺にべったりだからな。普通ならいちいち手をつけない。
でも妹友はそんな妹を捕まえてくれた。妹を選んでくれた」

兄「妹にもな。友達は少ないながらもそれなりにはいたんだ。でもみんな君とは違う。
実は君と妹が出会ってから、妹が俺の所に来る数が減ったんだよな。兄として少し寂しかったけど、俺は嬉しかったよ。
やっと俺以外にも妹を捕まえてくれる人が現れたんだって。
……だから妹友。親友の君に頼むよ。親友の君の気持ちを蔑ろにしてまで俺は妹に会うことなんてできないんだ。
お願いだ……俺を認めて通してくれ……!」

妹友「…………」

兄「通って良いのか……?」

妹友「はい……でも……泣かせたら許しませんからね!」

兄「ああ!泣かせないと約束するよ!」タッタッタッタッタ

妹友「妹をよろしくお願いします……」

夕暮れの屋上


兄「良い景色だな」

妹「お兄、ちゃん……?」

兄「アハハそんなに驚いたか?」

妹「なんでここに来たの……?」

兄「来ちゃ駄目だったか?」

妹「違う……祭はどうしたの……?」

兄「……行ってきたよ」

妹「…………」

兄「人がたくさんいたよ。こんな田舎町にもあんなに人がいるなんて驚いた」

妹「おさ……は……?」

兄「ん?」

妹「幼なじみ……さんは……?」

兄「幼なじみとは途中で別れたよ」

妹「……どうして……?」

兄「……それより妹。お兄ちゃんな。大事な話があるから聞いてくれないか?」

妹「大事な話……?」

妹「(お兄ちゃんの大事な話……今日幼なじみはお兄ちゃんに告白した。だからきっと……。

兄「実はお兄ちゃんな。幼なじみと付き合うことになったんだ。
おまえは幼なじみのことが好きじゃないみたいだが、俺は幼なじみのことが大好きなんだ。
おまえなんかよりもずっとずっと幼なじみのことを愛してる。いつか結婚しようとまで考えている。子供はたくさん欲しいな。
きょうだいがたくさんいる方が温かい家庭を作れるだろうしな。おまえもきょうだいは好きだろう?
だからな妹。俺と幼なじみを祝福してくれるよな?」

そんなの……そんなの……」

兄「妹、実はな……」

妹「嫌……! 嫌だ嫌だ嫌だ……聞きたくない聞きたくない……!」

兄「お、おい妹っ! なっ……!」

わおちょっと休憩

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