勇者「一対一(タイマン)で決着(ケリ)つけようや」魔王「あ!?」 (126)

< 王国 >

ビュオオォォォォォ……!

勇者「シャバに出てくるのも、二週間ぶりか」ザッ…

勇者「シャバの空気はやっぱりいいもんだ……」

ザッザッザッ……



市民A「あ、あれは勇者さんじゃねえか!?」

市民B「本当だ!」

市民B「勇者に任命されて早々、ケンカで流刑地(テイガク)喰らった勇者さんだ!」

市民A「しかし、勇者さんがいない間に──」

市民A「戦士さんが町(チーム)の支配者(アタマ)になると宣言した」

市民B「こりゃあ……嵐が来るぜ!」ゴクッ…

< 酒場 >

勇者「よう」

僧侶「勇者! 久しぶりじゃないか!」

僧侶「アタシたち、ずっと待ってたんだからね!」

勇者「悪いな。ところで魔法使いの奴は?」

僧侶「あっちにいるよ。アイツ、アンタがいなくなってからというもの……」

僧侶「昼間から、自分で自分に魔法キメてやがるのさ」

魔法使い「あ~~~~~……」ビクン

魔法使い「オイラ、幸せ~~~~……えへ、えへへ……」ビクビクッ

勇者「おい! ラリってんじゃねーよ!」ドカッ

魔法使い「いでっ! なにしやが──ってアニキ!?」

勇者「ったく、俺がいねーからって、ますます混乱魔法(コンラン)キメやがって……」

勇者「このジャンキーが!」

魔法使い「だって、アニキがいないとやることないんすもん……」

魔法使い「でもアニキが帰ってきたからには、また最凶チーム復活っすね!」

勇者「──といいたいところだが……」

勇者「町を歩いてたら、妙なウワサを聞いた」

勇者「俺がちょっと留守してる間に、戦士のヤツが下剋上かましたってウワサをな」

勇者「こりゃいったいどういうこった?」

魔法使い「じ、実は──」

魔法使い「アニキが流刑喰らった直後、戦士さんがアタマになるっていいだして……」

僧侶「困ったもんだよ、ホント……」シュボッ

僧侶「ついこないだまで舎弟だったってのに、アイツもなに考えてんだか……」フゥ…

勇者「ふん……こりゃあ仕置きが必要かもしれねえな……」

ザッ……

戦士「仕置きだぁ!? 相変わらず、上から目線だなテメェは!」

勇者「ウワサをすれば、か……」ジロッ

勇者「戦士よぉ……ちっと見ねえ間にずいぶんいいメンチ切るようになったじゃねえか」

勇者「だが、俺がいねえ間にアタマ気取るってのは、ちとやりすぎたな?」

戦士「いない間じゃねえ……たまたまだよ」

戦士「オレが下剋上かまそうしたら、テメェが流刑喰らっただけのハナシだ」

勇者「俺に勝てるつもりか?」

戦士「ったりめえだろうが! テメェ如き、即全殺しだ!」チャキッ

勇者「おもしれえ……来いや」チャキッ

シュバァッ! ガキンッ! ギンッ! キンッ! ギィンッ!

ガキィンッ!

勇者「ぐぅぅ……」グググ…

戦士「ぬぅぅ……」グググ…

ギンッ!!!

戦士「うおりゃあっ!」ブンッ

勇者「あめぇっ!」シュッ

キンッ……!

クルクルクル…… グサッ!

戦士「ぐっ……!」

僧侶「戦士の剣を弾き飛ばした!」

魔法使い「やったぁ! やっぱアニキの方が上っす!」

戦士「まだだ……! オレにゃ、まだ短刀(ドス)がある……!」チャッ

勇者「おもしれえ……」ニヤッ



「コラァァァッ! なにをやっておるかァッ!!!」

勇者&戦士「!!!」ビクッ

国王「ケンカばかりしおって、このバカモンどもがァ!」

勇者「ちっ、王公(オウコー)かよ……いいところだったってのに」スッ…

戦士「ふん、ジャマが入ったな……」スタスタ…

勇者「あっ、待ちやがれ!」

国王「お前が待て、勇者!」

国王「お前ならば若者たちをまとめられると、“勇者”に任命してやったというのに」

国王「やることといえば、ケンカばかりではないか!」

国王「まったく……今度問題を起こしたら、流刑地どころか」

国王「国外追放じゃぞ!?」

勇者「ふん、流刑地(テーガク)や国外追放(タイガク)が怖くて」

勇者「勇者がやってられっかよ!」

国王「なんというヤツじゃ……」フゥ…

姫「勇者君!」タッタッタ…

勇者「え、あ……姫も来てたのか!?」ドキン…

姫「勇者君……お願い、ケンカはやめて」

姫「私、ケンカをしてる勇者君、見たくないから……」ギュ…

勇者「わ、分かってんよ、姫……」オロオロ…

勇者「俺だって、ケンカしたくてやってるわけじゃ……」

勇者「ただ、口でいっても分かんねえバカが多すぎるからよ……えぇと……」

勇者「分かった! 俺もう、ケンカしないから……約束する!」

姫「ホント……?」

勇者「ホントだよ! だから泣くなって……」

姫「うん……」グスッ…



魔法使い「相変わらず、アニキは姫さんだけには弱いっすねえ~」ニタニタ…

僧侶「ふん、面白くないね」

国王(やれやれ……娘もとんだハネッ返りに惚れてしまったもんじゃわい)

その頃──

< 魔王城 >

魔王「魔界をシメてから、数百年……」

魔王「酒に女にドラッグ……散々やり尽くして、飽きちまった」

魔王「側近、なにか新しい刺激はねーかァ?」

側近「なら……久々に縄張り(シマ)ァ広げるってのはどうでやしょ?」

魔王「広げるったって、俺らもう魔界制覇しちまったぞ?」

側近「まだ人間界が残ってやすよ……」

側近「今までシカトしてましたが、ここいらで傘下に収めちまうってのは?」

魔王「なるほどな……悪くねえ。あんなシャバイ奴ら、俺らの敵じゃねえ」

魔王「よぉーし、人間界にカチコミかけっぞ!」

魔王「ドラゴンを用意しろや!」

側近「へいっ!」

< 王国 >

ドルルルルル……! ブォンブォン……!

ドラゴンA「ドルルルルル……!」バッサバッサ…

ドラゴンB「ブォンブォンブォンブォン!」バッサバッサ…

ドラゴンC「ブォォォォォォォンッ!」バッサバッサ…



市民A「な、なんだぁ!? この爆音はァ!?」

市民B「ドラゴンに乗って、よそもんがカチコミかけてきやがったァ!」

市民C「大変なことになりやがった!」



魔王「野郎ども、暴れてやれぇっ!!!」

< 城下町 >

側近「魔王軍参上! 喧嘩上等! 魔族万歳! 夜露死苦!」プシュウウウ…

市民A「ああっ! 魔法で壁に落書きを!」



火の四天王「煙草(モク)で根性焼きだァ~! 火加減はどうだァ~!?」ジュゥゥ…

市民B「あちぃよ~!」



風の四天王「ヒャッホーッ! 俺のレッドドラゴンは魔界最速だぜ!」ブオオオオン…

市民C「町中を200km/h以上でブッ飛ばしてやがる……!」



水の四天王「ペッ、ペッ、ペッ!」ビチャッ

市民D「ひどい! ツバで町の景観が台無しに!」



土の四天王「ガハハ、石でガラスを割りまくったるッ!」ガシャーン

市民E「先日張り替えたばかりなのに、やめてくれぇ~っ!」

魔王「よぉし、今日はこれぐらいにしておけ!」

魔王「一度にブッ壊したら、後の楽しみがなくなっちまうからな!」

魔王「撤収するぞ!」

側近「へいっ! 野郎ども、撤収だ!」

火の四天王「ギャハハハ、次は煙草(モク)じゃ済まさねえからなァ~!」

風の四天王「ヒャッホーッ!」

水の四天王「ペッ!」ビチャッ

土の四天王「次はもっと大きな石をぶつけてやるからな!」

ドルルルルルル……! ブォンブォンブォン! ブォォォォォ……!



市民A「ちくしょう……なんなんだアイツらは!」

市民B「町がメチャメチャだ……!」

< 酒場 >

バタンッ!

魔法使い「大変っすよ、アニキ!」

僧侶「勇者、大変だよ!」

勇者「どうしたんだよ、二人して……」グビッ…

魔法使い「城下町がよそのチームに荒らされて……メチャクチャになってるっす!」

勇者「ンだとォ……!?」ピクッ

勇者「いったいどこのチームだ!?」

僧侶「ありゃあ……魔王軍だね。間違いないよ!」

僧侶「魔王をアタマに、魔界でパー券や恐喝(フライパン)、ドラッグで荒稼ぎしてる」

僧侶「凶悪なチーマー連中なんだけど──」

僧侶「ついに人間界にも、手を伸ばしてきたってとこだろうね」

勇者「ふざけやがって……他人の縄張り(シマ)荒らした礼はたっぷりと──」

勇者「!」ハッ

姫『私、ケンカをしてる勇者君、見たくないから……』

勇者『分かった! 俺もう、ケンカしないから……約束する!』



勇者「…………」

僧侶「お礼参りだよ! 倍返しだ!」

魔法使い「そうっす! 招集(ショーシュー)かけて、カチコミかけるっす!」

魔法使い「アニキが本気出しゃあ、魔王軍なんて──」

勇者「いや……やめとくわ」

魔法使い&僧侶「!?」

魔法使い「どうしてっすか!?」

魔法使い「縄張り(シマ)を荒らされて、市民(ダチ)をやられたんすよ!?」

勇者「分かってんよ……だけど……」

勇者「俺は約束、しちまったからな……姫と……もうケンカしねえって……」

勇者「俺は“約束”は破れねえ……!」

魔法使い「あんなもん、単なる口約束じゃないっすか!」

僧侶「やめな、アンタ!」ガシッ

魔法使い「僧侶の姐さんまで!? なんで止めるんすか!」

僧侶「アンタは知らないだろうけど……」

僧侶「勇者の親父さんは、有名なドラゴンの走り屋でね……」

僧侶「ある日、まだ小さな子供だった勇者は──」

僧侶「ドラゴンに乗るのは13歳になってからって親父さんとの“約束”を破って」

僧侶「勝手にドラゴンにまたがった……」

僧侶「もちろん、子供がドラゴンを操れるわけない。暴走しちまった」

僧侶「そんで、親父さんは勇者を助けるため、体を張ってドラゴンを止めて──」

魔法使い「そんな……単なる事故死じゃなかったんすか」

勇者「ったく、おしゃべりなんだよ、お前は」

僧侶「すまねえ……。だけどアタシとしても、アンタを誤解されたくねえしさ」

魔法使い(知らなかったっす……アニキにそんな過去があっただなんて……)

勇者「わりいな……魔法使い」

勇者「俺にケンカはできねえ……もうあんな後悔はしたくねえんだ……」

魔法使い「アニキ……」

僧侶「アンタが謝ることじゃねえさ」

僧侶「あんだけ派手に暴れられたら、王公(オウコー)だって動くだろうしさ」

僧侶「魔王軍のアホどもも、あれだけ暴れりゃもう来ねえかもしれねえしな」

魔法使い「……そうっすね!」

僧侶「最悪、魔王軍のゲスどもなんざ、アタシらだけでもなんとかなるさ!」



酒場の外──

戦士「…………」スッ…

< 兵士詰所 >

戦士「テメェら、魔王城にカチコミだ!」

戦士「魔界の腐れチーマーども、一人残らずブチのめすぞ!」

「そうだ!」 「ナメられっぱなしでいられるか!」 「ブッ殺せ!」

ワアァァァァァ……! ウオォォォォォ……!

戦士「…………」

兵士「だがよ戦士さん、勇者さんとかには声かけなくていいのか?」

兵士「アンタが頼めば、力になってくれると思うが……」

戦士「……いらねえよ! あんな野郎は!」

戦士「魔界のクソどもなんざ、オレたちだけで十分だ!」

< 酒場 >

バタンッ!

魔法使い「大変っす、大変っすよ!」

魔法使い「戦士さんが、町の若いの連れて、魔王城にカチコミを!」

魔法使い「戦士さんもケンカは強いっすが、魔王軍は数がダンチっすし……」

魔法使い「いくらなんでもムチャっすよ!」

僧侶「勇者……」チラッ

勇者「…………」

勇者「知るか!」

勇者「アイツは舎弟だったくせに、俺を差し置いてアタマになろうとしやがった!」

勇者「あんな野郎が、どうなろうが知ったことか! 勝手にくたばりゃいいんだ!」

勇者「…………」グビッ

魔法使い「アニキ……」

< 魔王城 >

側近「魔王さん!」ザッ

側近「人間どもが、魔界に攻め込んできやがりました!」

魔王「なんだと?」

魔王「人間(パンピー)どもにも、少しは恥を知ってる奴がいたってことか」

魔王「ナマイキな……」ビキッ…

魔王「よぉ~し、派手に返り討ちにして“見せしめ”にすんぞ!?」

魔王「逆にこの戦争で、俺たちが人間どもをシメあげてやる!」

側近「へいっ!」

< 魔王城周辺 >

ワアァァァァァ……!

キンッ! ガキンッ! ザシュッ! キンッ! ドゴォッ!

「うぎゃあっ!」 「ぐわっ……!」 「ぐはっ!」

戦士(くそっ……!)

戦士(魔族とやるのは初めてだが、こんなにタッパもガタイもありやがるのか!)

戦士(しかも、全員がケンカ慣れしてやがる!)

戦士(それに俺じゃ、イマイチ兵隊どもの士気が盛り上がらねえ……!)

戦士「だがよ……負けられっかよォ!」ブオンッ

ザシュッ!

魔族A「ぐぎゃっ……!」ドサッ



魔王「大半がザコだが、めんどそうなのが一匹だけいやがるな、どうしたもんか」

側近「こういう時のための四天王ですぜ。奴らをかましゃあ、イッパツでさあ」ニヤッ

戦士「ハァ……ハァ……」

兵士「大丈夫ですか、戦士さん!? すんません、俺らがだらしねえばかりに──」

戦士「テメェら……逃げろ! オレが時間を稼ぐ!」

兵士「でも戦士さんを置いてなんて──」

戦士「!」



ザザザザッ……

火の四天王「ほォ~? 人間どもにも少しはイキがいいのがいたんだなァ~」スパー…

風の四天王「ヒャッホーッ! ついてきてくれよな、俺のスピードによ」ドルルル…

水の四天王「ペッ!」ビチャッ

土の四天王「トルネード投法、味わわせてやるよ」ニヤッ

戦士(コイツら……今までの連中とは格がちがう!)

戦士(魔王軍の“幹部”か……!)

戦士「やってやるよ……! まとめてかかってきやがれ!」ギリッ

< 酒場 >

市民A「──大変だ! とんでもないことになりやがった!」

魔法使い「なんすか!?」

市民A「魔王城にカチコミかけた戦士さんたちが、魔王軍にボロ負けして──」

市民A「戦士さんが町(チーム)のみんなを逃がすために、一人だけ捕まって……」

市民A「見せしめに、四天王による戦士さんの公開処刑が始まったらしい!」

勇者「!」

勇者(戦士……これは俺のせいだ!)

勇者(俺がアイツを止めるなり、助太刀するなりすれば、こんなことには……!)

魔法使い「アニキ!」

僧侶「勇者……!」

勇者「だが……俺は……」ギリッ…

バタンッ!

姫「勇者君!」

勇者「姫!?」

姫「あなたを苦しませてしまって……ごめんなさい」

姫「どうか自分の心に従って……。戦士君を助けてあげて!」

勇者「…………」

勇者「……ありがとよ、姫! 悪いが、約束を破らせてもらうぜ!」

勇者「行くぞ、魔法使い、僧侶!」ダダダッ

魔法使い「はいっす!」ダダダッ

僧侶(あの姫……魔王軍のことを知って、勇者が苦しんでることを察して……)

僧侶(ふん……悔しいがイイ女じゃないか!)ダダダッ



酒場の外──

国王「…………」

国王(フッ……ケンカを見逃すのは、これが最初で最後じゃぞ)

< 勇者の家 >

勇者「みんな、乗ってくれ!」

勇者「俺の愛竜、ブルードラゴンだ! 3ケツしてもスピードは落ちねえ!」

勇者「久々に頼むぜぇ!」グイッ

青ドラゴン「ドッドッドッドッドッ……!」バサッ…

青ドラゴン「ブォンブォンブォンブォンブォン……!」バッサバッサ…

青ドラゴン「ドルルルルルルルル……!」バッサバッサ…

青ドラゴン「ブオオオオオオオオオオオオンッ!!!」バッサバッサ…

バッサバッサ……! ビュアアアアアア……!

魔法使い「は、速いっす! 速すぎるっす!」

僧侶「す、すごい……! さすがのアタシもたまげたよ……!」

勇者「魔王城まで、全開(フルスロットル)でぶっこむぜえ!」

< 魔王城周辺 >

火の四天王「ギャハハハッ! さすがの戦士も、縛られちゃどうしようもねえなァ~!」

火の四天王「どうよ!? 傷口に火ィついたタバコ押しつけられるのはよォ~!」ジュウウ…

火の四天王「とっとと泣き入れちまえよォ~!?」ジュウウ…

火の四天王「泣いて謝れば、マッパで半殺しくらいで許してやんぞォ~?」

戦士「だ、だれがテメェらなんぞに……!」

水の四天王「ペッ、ペッ、ペッ、ペッ、ペッ!」

戦士「…………!」ビチョ…

土の四天王「そぉら、フォークボールだ!」ビュッ

ガツッ!

戦士「ぐっ……!」ドロ…

火の四天王「フォークとかいって、全然落ちてねーじゃねーかァ~!」

ギャハハハハハ……! ワハハハハハ……!

火の四天王「しぶてぇなァ……だったらトドメだァ~! 風の四天王!」

風の四天王「ヒャッホーッ! 任せときな!」

風の四天王「俺の7.5トン(ナナハン)ドラゴンでハネ飛ばしてやるよ!」グイッ

赤ドラゴン「ドルルルルルルル……!」バッサバッサ…

赤ドラゴン「ブォンブォンブォンブォンブォン……!」バッサバッサ…

火の四天王「やれ、やれェ~!」

水の四天王「ペッ!」ビチャッ

土の四天王「死んじまったら、俺が土に埋めてやるよ!」

風の四天王「フルスロットルでいくぜぇ……ヒャッホォォォォォ!!!」グンッ

ギュオオオォォォォォ……!

戦士(アニキ……これもアンタに勝とうとした報い、か)

戦士(あばよ……)

戦士(せめてバカなヤツもいたもんだって、笑ってやってくれよ……!)

不運(ハードラック)と踊(ダンス)っちまったんだよ……

“不運(ハードラック)”と“踊(ダンス)”っちまったんだよ……

ギュワァァァッ!

風の四天王「!?」キキィッ

風の四天王「あっぶねえ! ぶつかるとこだった! ──だ、だれだ!?」

勇者「俺は……勇者だ!」ザンッ

戦士「!」

魔法使い「オイラは弟分の魔法使いっす!」ザッ

僧侶「アタシはレディースやってる僧侶ってもんさ」ザッ

勇者「お前ら……魔界のチーマーなんだってな?」

勇者「大人しく魔界にいりゃ、俺を敵に回さずに済んだってのによ……」

勇者「俺の縄張り(シマ)を荒らした上、市民(ダチ)まで傷つけて……」

勇者「しかも、仲間(ツレ)である戦士までやってくれてよぉ……」

勇者「お前ら──」

勇者「俺の剣の“サビ”になる覚悟、できてんだろうなァ!!?」

戦士「バカヤロウ……! なんで来てやがんだ……!」

戦士「姫との“約束”はどうしたんだ、テメェ!」

勇者「お前に俺と姫の約束をどうこういわれる筋合いはねえな」

勇者「こういう時、親父なら約束破っちまえっていうと思ったからよ」

勇者「それに……」

勇者「出来のわりぃ弟分の尻をぬぐってこそ、勇者ってもんだろうが?」

戦士「ぐっ……バカヤロウ!」



魔法使い「ホントは姫にオッケーもらったから来たくせに」プッ…

僧侶「せっかくかっこつけてんだから、ヤボいうもんじゃないよ」プッ…

僧侶「支援大魔法・絶対領域!」

魔法使い「攻撃大魔法・天地崩落!」

勇者「喰らえ!最終秘術奥義・神之制裁!」

勇者「僧侶……戦士を回復してやってくれ」

僧侶「あいよ、任せときな!」タタタッ

勇者「魔法使い……俺をサポートしろ」チャキッ

魔法使い「了解っす!」



火の四天王「あァ~!? 俺たちをまとめて相手しようってかァ~?」

風の四天王「ナメやがって……」イラッ

土の四天王「オイ、いつもの“アレ”やってやれよ」

水の四天王「…………」ツカツカ

勇者「?」

水の四天王「ペッ!!!」

勇者「!」ビチャッ

勇者「…………」ドロ…

火の四天王「派手に登場しといて、ツバもよけられねえのかよ! ギャハハハハッ!」

勇者「俺にツバ吐きかける奴なんか……何年ぶりかな……フフッ」フキフキ…

水の四天王「!」

勇者「そんなに口からなにか吐き出したいんならよぉ……」

勇者「血ヘド吐かせてやんぜェ!!!」ブンッ

ドボォッ!!!

水の四天王「うっ、うげぇぇっ……!」ビチャビチャ…

水の四天王「う、うげっ! ……げぇっ!」ピクピク…



火の四天王(なんだとォ~!?)

風の四天王(水の四天王が──)

土の四天王(パンチ一発で!?)

火の四天王「じょ……上等じゃねえかァ~!」

火の四天王「だったらァ、こっちも本気(マジ)でやってやんよォ~!?」

火の四天王「この煙草(モク)で──」サッ

バシャッ!

火の四天王「あっ、火が消えやがったァ!」ジュワッ…

魔法使い「へへっ、オイラを忘れてもらっちゃ困るっすねえ」ニッ

火の四天王「水魔法……なめたマネを!」ギリッ…

土の四天王「なら、俺のトルネード投法で──」

勇者「石より硬い、俺の拳を喰らいやがれェッ!」シュッ

バキィッ!

土の四天王「ぐおおっ……!」ヨロッ

< 魔王城 >

魔族B「魔王さん、大変です!」ザッ

魔王「どうした? まさかあの戦士、殺っちまったか?」

魔王「ったく、あとが面倒だから半殺しにしとけっていったのによ……」チッ

魔王「まぁ、死体は山に埋めるなり、コンクリで固めて海に沈めるなり……」

魔族B「いえ、ちがいます!」

魔族B「新手の勇者ってのが現れて……四天王が苦戦してます!」

魔王「ンだとォ!?」ガタッ

側近「勇者……流刑喰らってたはずですが、戻ってやがったとは……」

魔王「いったいどんな野郎だ?」

側近「俺らが公開処刑してた、戦士の兄貴分にあたるはずですぜ」

魔王「ってこたァ、王国のアタマか。四天王じゃ、やられちまうかもしれねえな」

側近「ですが、安心してくだせえ。あっしに奴を封じるいい考えがありやすから」

< 魔王城周辺 >

勇者「こんなタマじゃ、ストライクは取れねーなァ!」ブオンッ

カキィンッ!

土の四天王(俺の投石を剣で打ち返し──!)

ガゴンッ!

土の四天王「ごはァ!」ドサッ

魔法使い「すげえっす、これで二人目! さっすがアニキ!」

僧侶「仲間(ツレ)をやられた時のアイツは無敵さ!」

戦士(やはり強え……! 俺とはレベルがちがう!)

勇者「どうしたどうした!? 四天王ってのは、こんなもんかよ!?」クイクイッ

火の四天王「クソがァ~……!」ビキビキ…

風の四天王「次は俺がやってやる! ドラゴンに乗ってチキンレースで勝負だ!」

勇者「受けてやるよ!」

ブォンブォンブォン……!

僧侶(チキンレース……究極の度胸試し!)

僧侶(二人の男が向き合ってドラゴンにまたがり、フルスロットルで突っ走る!)

僧侶(ビビって先にブレーキをかけたり、方向を変えた奴が負けだ!)

風の四天王「ヒャッホーッ! 行くぜ、レッドドラゴン!」

勇者「ブルードラゴン、突っ走るぞ!」

赤ドラゴン「ブオオオオオオオオッ!!!」

青ドラゴン「ボボボボボボ、ブォォォォォンッ!!!」

風の四天王(ビビれ~、ビビりやがれ! 俺はチキンレースは負けたことがねえ!)

勇者「…………」

風の四天王(コイツ……なんでビビんねえ!?)

魔法使い「ああっ、フルスピードで衝突するっす!」

勇者「…………」ギュオォォォ…

風の四天王(ひぃぃぃぃっ!)ギュオォォォ…

風の四天王「うわぁぁぁっ! 止まれぇぇっ!」キキィッ…

勇者「お前の負けだ……チキン野郎ッ!」

ドゴォンッ!!!

風の四天王「ぐぎゃあっ!」ドザッ

赤ドラゴン「ギャース!」ドサァッ

勇者「もっとも……ハナから“青”に“赤”が勝てるわきゃねーがな」

勇者「俺たちに“赤信号(止まれ)”はねーんだからよ!」ニヤッ

魔法使い「やったっす!」

火の四天王(なにやってやがんだァ~! だらしねェ!)

火の四天王(だったらァ!)ガシッ

魔法使い「うわっ!?」

火の四天王「聞け! 俺の本当の武器は火炎瓶だァ~!」チャポン…

火の四天王「このガキ火ダルマにされたくなきゃ、大人しくしろやァ~!?」

勇者「ヤロウ……!」

魔法使い「えへ……えへへ……」ビクビクッ…

火の四天王「え?」

魔法使い「火炎瓶って……よく燃えそうっすねぇ~……」ボッ…

火の四天王(なにいってんだ、コイツ!?)

僧侶(あのバカ……戦闘中だってのに魔法キメてやがったのか! ラリってやがる!)

魔法使い「ファイヤーッ!!!」ボワッ

火の四天王「ちょっ、バカ、やめろ──」

ボワァァァァァッ!!!

火の四天王「うぎゃああああああっ!!!」

魔法使い「熱い? ねえ熱い? なら、もっともっと燃やしましょ~!」ボワァァァ

ボワァッ! ボワァッ! ボワァッ! ボワァッ! ボワァッ!

「うわっ!」 「こっちにも攻撃してきやがった!」 「ひぃぃぃっ!」

魔法使い「魔王軍の皆さま、オイラのファイヤーショーをご堪能下さい!」ボボボボボッ

火の四天王「あが、が……」プスプス…

ボワァァァァァ……! ボワァァァァァ……!

僧侶「あのバカ! これじゃ乱闘(ゴチャマン)になっちまう!」

勇者「まあいいじゃねえか」

勇者「ラリってる時のアイツは、危険極まりねえが、頼りにはなる」

勇者「戦士! 僧侶! 俺は城でふんぞり返ってる魔王をシバいてくる!」

勇者「周囲の兵隊(ヘータイ)はお前らに任せる!」

僧侶「あいよ!」

戦士「…………」

僧侶「戦士! いつまで意地はってんだい! アンタも回復しただろうが!」

戦士「わァーったよ! 魔王(アタマ)はテメェに任せた……!」

勇者「よし」ニヤッ

僧侶「さあ、棺桶にブチこまれたい奴だけかかってきなァ!」ジャラッ…

僧侶「アタシのモーニングスターで“星”にしてやっからよ!」ブンブン

戦士「かかされた恥は、百倍にして返してやらァ!」チャキッ

< 魔王城城門 >

勇者「魔王ォォォ! 出てこいやァァァ!」

魔王「でけえ声出すんじゃねえよ……聞こえてるっつうの」ザッ

勇者「一対一(タイマン)で決着(ケリ)つけようや」

魔王「あ!?」

魔王「タイマンだと……なに寝ぼけてやがる」

魔王「四天王はやられちまったが、こっちのがまだまだ兵隊は多い」

魔王「なんでお前如きとタイマン張らなきゃなんねーんだよ」

勇者「逃げんのか?」

魔王「挑発にゃ乗らねえよ。それにこっちにゃ、コイツがいる!」

側近「こっち来いやァ!」グイッ

姫「勇者君……!」

勇者「な……!」

魔王「側近に命じて拉致らせてもらったぜ」

魔王「この姫、お前のスケなんだってな? 激マブじゃねえかぁ~!」

勇者「お前ら、姫になにかしやがったのか!?」

魔王「安心しろ、まだ手ェ出しちゃいねえよ」

魔王「もっとも、お前の出方次第じゃ──」

魔王「マワして、売り飛ばして、魔界ソープで人魚姫コースになるがなぁ?」キヒヒッ

魔王「俺の洗脳魔法をたらふく浴びせたら、いい肉便器になるだろうよ!」

勇者「クソヤロウが……!」ギリッ…

姫「勇者君、私のことは気にしないで! この人たちをやっつけて!」

側近「黙れや!」バシッ

姫「あうっ……!」

勇者「や、やめろ! 姫に手を出すんじゃねえ! ブッ殺すぞ!」

魔王「だから、お前の出方次第っつったろ。側近、あの勇者をボコにしてやれや!」

側近「へいっ!」

側近「オリハルコン製のメリケンサックだ。チョー高えんだぜ、これ!」

側近「オラァッ!」シュッ

ドゴォッ!

勇者「ぐふっ……!」

バキィッ! ドゴォッ! ベキィッ!

側近「魔王さん! こりゃあ、いいストレス解消になりやすぜ!」シュッ



僧侶「ったく、数が多すぎるね! いくら倒してもキリがないよ!」ブンブンッ

ドゴォッ!

魔族C「うげぇっ!」ドザッ

魔法使い「あひゃ~、うひょ~、えひゅ~!」ボボボッ…

ボワァァァッ! ボワァァァッ! ボワァァァッ!

魔族D「ぎゃあああああっ!」メラメラ…

魔法使い「──ん?」ハッ

魔法使い「──はて? オイラはいったい、なにをやってたんすかね?」

僧侶(しまった! こんな時に、混乱が解けちまったよ! まずいね、こりゃ……)

魔法使い「な、なんすか!? 大勢の魔族に囲まれてるっす!」キョロキョロ

魔族E「あのイカレ魔法使いが大人しくなった! チャンスだ!」

すると──

ドドドドド……!

兵士「うおおおおっ! 僧侶さんたち、俺たちも混ぜて下せえ!」

「さっきはよくもやってくれたな!」 「今度は勝つ!」 「オラオラァッ!」

魔法使い「町(チーム)のみんなっす! 戻ってきてくれたんすね!」

僧侶「しかし、いったい誰が呼んできたんだ?」

青ドラゴン「…………」ニヤッ

僧侶「アンタだったのかい! 竜のくせに気がきくじゃないか!」

僧侶「あれ? ──そういや、さっきから戦士がいない!? アイツどこいった!?」

ドゴォッ! バキィッ! ボゴォッ!

勇者「げ、げほっ……!」ピクピク…

姫「勇者君っ!」

側近「魔王さん、トドメはどうしやす?」

魔王「よぉし、俺がトドメ刺してやる!」

魔王「あっちにも人間(パンピー)どもの助太刀が来たみてえだが」

魔王「ボロクズみてえになったコイツを見せしめにすりゃ、震えあがるだろうぜ!」

魔王「そうなりゃもう、こっちのもんだ!」ニタァ…

側近「頼んます!」

魔王「ほれ、このアマ預かれ」スッ

側近「へいっ!」スッ…

バババッ!

魔王&側近「!?」

姫「戦士君……!?」

戦士「勇者! 姫は助けたぜ!」

勇者「戦士……!」

戦士「ほらよっ、とっておきの傷薬(ヤク)だ!」シュッ

勇者「サ、サンキュー……!」ゴクゴク… シャキーン!

勇者「──って、お前、こんなもん持っててなんで今まで使わなかったんだよ!?」

戦士「オレはよ、そういうのを最後まで使わずとっておくタイプなんだよ!」

勇者「ふん……強がりやがって」

勇者「よっしゃ! 俺は魔王とケリつける!」

勇者「俺をボコってくれたクソ野郎は、お前がブッ殺せ!」チャキッ

戦士「おうよ!」チャキッ

魔王「クソが……!」

側近「ちいっ……!」

姫(す、すごい……! この二人が並ぶと、よりいっそう強くたくましく感じるわ!)

側近「さっきまで死にかけてたゴミクズが、粋がってんじゃねえや!」ダダダッ

戦士「るっせえ!」ダダダッ

ガキィンッ!



勇者「さて……もう一度いわせてもらうぜ?」

勇者「一対一(タイマン)で決着(ケリ)つけようや」

魔王「上等(ジョートー)だよ……」

魔王「こんだけナメられて、俺はもうプッツンきてんだ」

魔王「人間(パンピー)の中で祭り上げられてるだけのクソガキに」

魔王「マジモンの“王(キング)”のジツリキ、見せてやんよ!?」ビキ…

勇者「ほざくんじゃねえ」

勇者「散々ナメられてコケにされて、頭ブチキレちまってんのは──」ビキメキ…

勇者「俺の方なんだよォォォォォ!!!」

勇者「オラオラァッ!」シュババッ

ザシュッ! ズバァッ!

魔王「ぐえぇっ!」

魔王(ちぃっ……なんて斬撃だ! コイツ口だけじゃねえ!)

魔王「なめんなァァァ!」ブゥゥゥン…

ドッグワァァァンッ!!!

勇者「がはっ……!」

勇者「さすが魔王ってだけあって、魔法(マホー)使えんのか」

勇者(今の一撃、ラリってる時の魔法使いより上だ!)

勇者(汚ねえだけのクズ野郎かと思ったが、こりゃ骨のあるタイマンになりそうだ!)

勇者「ブッた斬ってやるァァァ!」ダッ

魔王「消し飛ばしてやるァァァ!」バッ

ズドォンッ!!!

勇者「オッラァッ!」シュバッ

ズバァッ!

魔王「ぐぬぅ!」

魔王「なにしやがんだコラァッ!」ブゥゥゥン…

ドゴォォォンッ!

勇者「ぐわっ……!」



ズシャアッ!

側近「がふっ……!」ガクッ…

側近「“魔界の特攻核弾頭”といわれたこのあっしがァ……!」ドザァッ

戦士「ハァ、ハァ、ハァ……(手強いヤロウだった……)」ヨタヨタ…

戦士(勇者は──)チラッ

戦士「!」

勇者「俺の……勝ちだな」ハァハァ…

勇者「魔力(マリキ)はたしかにパネェが、根性が足りねーよ、お前はよ」

勇者「城でふんぞり返って、顎で手下こき使ってたツケが回ったな?」

魔王「くっ……!」

魔王「ククククク……!」

勇者「!?」

魔王「俺は“王(キング)”だぜ? こんなもんで終わるわきゃねーだろォ!」

魔王「見せてやんよ……俺の“最終形態(とっておき)”をよ……?」グググ…

メキメキメキ……

勇者「な……!?」

勇者(人型から、竜と悪魔をゴチャ混ぜにして、バカでかくしたみてえに……!)

最終魔王「ギャハハハハハッ! こうなったらもう俺は止められねーぞォ!?」

最終魔王「口から内臓(ハラワタ)吐くくれえボコにしてやんよォォォ!」

勇士 「私の … … 勝利だ」ハハ …

勇士 「魔力(マリキ)は確かにパネが, 根性が十分で-, お前は」

勇士 「時路で威張りながら座って, あごで部下酷使していた帳付けが回ったな?」

魔王 「句 … … !」

魔王 「ククククク … … !」

勇士 「!? 」

魔王 「私は“王(キング)”だ? こんなことで終わりますキャですね-載せるの!」

魔王 「見えて野党 … … 私の“最終形態(酔っておいて)”を … … ?」 グググ …

メキメキメキ ……

勇士 「 … … !? 」

勇士(イン兄さんから, 竜と悪魔を固体混合海路して, 途方もなく大きくした見てに … … ! )

最終魔王 「ゲハハハハハック! このようになれば今(もう) 生える製紙あって-組!? 」

最終魔王 「口から内臓(ハラワタ) 吐くドングイネボコにしてやあ!」

ズガァンッ!!!

勇者「ぐはぁっ!」

ドゴォンッ!!!

勇者「がはぁっ!」

ズドォンッ!!!

勇者「ぐはぁ……!」ドサッ

最終魔王「こんなもんかよ!? 勇者のジツリキってのはよォォォ!? あァん!?」



戦士(つええ……バケモンだ! ただ手を振るだけで、爆発が起こってやがる!)

姫「戦士君!」

戦士「!」

姫「お願い……勇者君を助けてあげて……」グスッ

戦士「…………」

戦士「ダメだ、姫。コイツはタイマンだ、手は出せねぇ……!」

姫「でも……このままじゃ、勇者君が殺されちゃうわ!」

戦士「いや……」

戦士「アイツ、いや勇者は……アニキは必ず勝つ!」

姫「!」



勇者「オラオラァッ!!!」ザシュッ

最終魔王「剣なんざ通用しねえよォォォ!」ブンッ

バキィッ!

勇者「がはぁっ!」ドザァッ

最終魔王「粘りやがんな……ここまでしぶてえのは魔界にもいなかったぜ」

最終魔王「だがよ、ここまでだ!」

最終魔王「俺にタテついちまったこと、血ヘド吐きながら後悔しろやァァァ!!!」

魔法使い「アニキ! 立って下さいっす!」

勇者(魔法使い……! さっきまでラリってたのに……)

僧侶「そうさ! 城下町(チーム)の意地、見せてやんな!」

勇者(僧侶……! そうだな、俺たちにゃチームの意地がある!)

戦士「……アニキ! 勝ってくれ!」

勇者(戦士……! まさか再びお前にアニキって呼ばれるなんてな……!)

??「立つのじゃ! 立って、勝利するのじゃ!」

勇者(誰だ!? 一瞬、ビクッとなっちまった……)

「勇者さぁーん!」 「勝ってくれぇぇ!」 「負けるなぁぁ!」

ワアァァァァァ……! ウオォォォォォ……!

最終魔王「な、なんだこりゃあ……!?」

姫「勇者君!」

勇者(姫……好きな女の前で情けねえところは見せられねえ!)グググッ…

勇者「うおおおおおおおおおおっ!!!」ガバァッ

最終魔王「なんでだ……! なんで立ち上がれる……!?」

最終魔王「なんでボロクズみたいなお前を見て、なんで奴らは応援できる!?」

勇者「決まってんだろ……」

勇者「俺はお前みてえに、強さや悪さや金で手下をかき集めてるわけじゃねえ……」

勇者「俺はダチに勇気をくれてやる! 俺もダチから勇気をもらう!」

勇者「そうやって、俺は町(チーム)をまとめ上げてきた!」

勇者「だからこそ、“勇者”だ!!!」

最終魔王「!!!」



魔法使い「アニキ、かっこよすぎるっす!」ジ~ン…

僧侶「ま、誰かさんに下剋上されたりしたけどねえ……」ニヤ…

戦士「うるせえ!」

姫(勇者君……ステキ)ポッ…

最終魔王「ざ……ざけんなァ! くたばりやがれェェェ!」

勇者「くたばんのは、お前だよォォォ!」



ズバシュッ……!



最終魔王「ぐ、は……っ! ぢ、ぐじょ、う……この、おれが……!」



ドザァッ……!



勇者「リベンジならいつでも受けてやんぜ……」ザッ

姫「勇者君っ!」タタタッ ギュッ…

勇者「ひ、姫……」

魔法使い「ヒューヒュー!」

僧侶「フフッ……見せつけてくれちゃってさ……」

戦士「やっぱり……最強はアンタだったな」

すると──

ウゥ~……! ウゥ~……!

神「魔王軍め、ようやくシッポを見せたな!」

神「窃盗、恐喝、傷害、薬物売買、婦女暴行……奴らの罪はあまりに多く、重すぎる!」

天使「全員動くな!」ザザザッ

戦士「ゲ、天界(ポリ)だ!」

魔法使い「こんな乱闘やったのがバレたら、みんなパクられちまうっす!」

神「魔王、年貢の納め時が来たようだな! 逮捕する!」ガチャッ…

魔王「ちっ……!」

神「今、魔王とケンカをしていたのは、君かね?」

勇者「……ああ」

姫「でも、勇者君はみんなを助けるために──」

神「天の神殿まで来てもらおう。どんな事情があるにせよ、乱闘は見過ごせない」

勇者「ああ、分かっ──」

国王「お待ち下され」ザッ…

神「!」

国王「魔王たちは勝手に暴れておっただけです」

国王「勇者たちは一切手を出しておりませぬ」

神「…………」

国王「…………」

神「あなたがそうおっしゃるのなら、そうなのでしょう」フッ…

神「天使たち、魔王軍だけしょっぴけ! 人間たちには手を出すな!」

天使「はっ! ──オラッ、大人しくしろ!」グイッ

「いてて!」 「はなせよぉ、クソポリ公!」 「ちくしょう!」

僧侶「どうやらアタシらは助かったね……パクられたら面倒なことになってたよ」

勇者「ったく、王公(オウコー)の奴、余計なことしやがって……」

魔法使い「さすがっす! さすがアニキっす!」

勇者「さすがじゃねえよ、魔法使い。当然のことをしたまでだ」ニッ

僧侶「やったじゃんか。久々にかっこよかったよ」

勇者「お前こそ、モーニングスターが赤く染まってるぜ」

戦士「アンタの……勝ちだ。またアンタとつるませてくれ……」スッ…

勇者「おう。こっちこそよろしくな、相棒!」ガシッ



そして──

姫「勇者君……」

勇者「姫……」



魔法使い「おっ、二人きりでなに話すつもり──」

僧侶「バカだね、アンタは! 魔法のキメすぎで、空気も読めないのかい!」グイッ

姫「助けてくれて……ありがとう。あと……かっこよかったよ……」

勇者「ま、助けたのは戦士の奴だけどな……」ポリポリ…

勇者「無事でなによりだったよ、姫」

姫「うん……あと、変な“約束”して、勇者君を困らせてごめんなさい」

姫「だからもう──」

勇者「これからはもう、“なるべく”喧嘩はしないって“約束”するよ」

勇者「それぐらいなら、俺でも守れそうだからな……ハハ」ポリポリ…

姫「うん! ありがとう、勇者君……!」



魔法使い「なんすか、チューもなしっすか!」

僧侶「奥手だからねえ、勇者は……」

戦士「ふん……むずかゆくて見てられねえや」クルッ





                                 ─ おわり ─

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