京太郎「夢の欠片」 (1000)

○京太郎が登場する短編SSがメイン

○更新不定期

○ハギヨシ主役のSSがあるかもしれない

以上が注意事項となります


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1382787965






「―――須賀君。貴方は、ここへ来た事を後悔しているかしら?」




京太郎「いきなり何を言い出すんです、部長?」

久「いいから答えて」

京太郎「答えてと言われましても…質問の意図がよく分かりませんし」

久「…怖いのよ」

京太郎「怖い?」



久「ひょっとしたら、私は貴方に憎まれているんじゃないかって」



京太郎「…何を言い出すかと思えば、そんな事ですか」

久「貴方にとってはそんな事かもしれないけど、私にとってはそうではないの」

久「私は咲の…ひいては貴方のお陰良い夢見させて貰ったんだから」

京太郎「そう言われれば、そうかもしれませんね」

久「そうかもしれない、じゃなくて…実際そうなのよ」

京太郎「…正直、実感がわかないです」

久「それならそれでいいわ。だからね、私の質問に答えてよ?」

京太郎「何故?」

久「私が安心したいから…それじゃダメかしら?」

京太郎「…すみません、部長」

久「え?」

京太郎「俺は麻雀部に入った事、後悔してません。ですから、部長の望みにはお答え出来ません」

久「…嘘でしょ?」

京太郎「残念ながら、嘘でもなんでもないんですよ」

久「…嘘だって言いなさいよ!」

京太郎「言えません」



久「…んでよ」

京太郎「…部長?」

久「何でよ…何で…後悔してるって言ってくれないのよ……」



京太郎「俺がインハイ後に受けた中傷も、咲があんな風に麻雀を打ったのも、貴女のせいじゃありません」

久「嘘よ…そんな筈はないわ。あの子に『勝つ麻雀』を打たせたのは、私なんだから」

京太郎「…アイツが嫌いだった麻雀を打たせたのは、俺です」

久「それでも、それでも私は…」

京太郎「そうやって、一人で何でも抱え込もうとしないで下さい!」

久「…須賀、君」

京太郎「何も知らない俺は『プラマイゼロ』の理由を、ただくだらねーと断じた」

京太郎「数合わせの為、嫌いだった麻雀を打たせたりしたのは俺なのに」

久「けどそれは…単に麻雀を打ちたかっただけで」

京太郎「だとしても、俺の考え無しな行為がアイツをあんな風にしたのは事実です」

久「…頑固ね」

京太郎「お互い様ですよ、そんなの」



久「…お願いがあるんだけど、いいかしら?」

京太郎「何なりと」

久「私、もう一度あの6人で集まって…『楽しい麻雀』を打ちたいの」

京太郎「俺もですよ、部長」

久「決して、楽な道のりじゃないわよ?」

京太郎「分かってます」

久「それでも、私に付き合ってくれるの?」

京太郎「勿論です」





久「…麻雀が、楽しいから?」

京太郎「はい!」



”もう一度、あの場所で麻雀を” 完

短いですが、今日はここまでです
では

投下します
前回の話と、繋がりがありそうでなかったり


『少女が生まれた日』



「…咲!どうして、どうしてお前はっ!」

そう言って姉は私の前を去った。

私には、あの人が何故怒っていたのか理解出来なかったし、そうしたいとも思わなかった。

私は彼女の言いつけを守ろうとした。

森林限界を超えた高い山の上…そこに咲く花のように、強くあろうと。

褒めてくれると思っていた。

もう一度、私を受け容れてくれると信じていた。

父と母が別れる少し前…強くあれと、そう私に望んだあの時のように…愛して欲しかった。

けど叶わなかった。

―――私は麻雀が強い。

自惚れでも何でもなく、それは覇者として受け止めるべき事実だ。

けれど私は、強くなる為に沢山の人を傷つけてしまった。

個人戦で私と打った人の多くは、未だ一人として牌に触れる事も出来ないそうだ。

麻雀を、怖がるようになってしまったのだ。

楽しんでいた…そして愛していたであろう麻雀を、私は彼女達から奪ってしまったのだ。

当然、そんな事は望んでいなかったし…今でもそれは変わらない。

けれど私が本気になって打つ度、また誰かが牌を置く事になるのだ。

『グランドマスター』小鍛治健夜。

かつて比類なき強さで世界を席巻し、多くの雀士を屠ったあの人のように。

そう言えば…小鍛治プロの試合を見た時、彼女は一度だって笑っていなかった。

悲しそうに…苦しそうに麻雀を打っていた。

…私も、そんな風に麻雀を打つようになるんだろうか。






「何しけた顔してんだよ、咲」





咲「…京ちゃん」

京太郎「やっと見つけたと思ったら…お前、またくだらねー事考えてたろ」

咲「そっ、そんな事ないよっ!」

京太郎「嘘付け。だったら何でお前は、そんな悲しそうな顔してんだよ」

咲「…貴方には関係ないよ」

京太郎「関係ないとか言うなよ…俺は、お前と同じ麻雀部の」

咲「いい加減黙ってよ!」

京太郎「っ!」

咲「私はもう…麻雀なんて打ちたくない。打ちたくなんかないんだからっ!」

京太郎「咲…お前…」

咲「私が本気で打ったら、また誰かが麻雀を打たなくなるの!」

咲「あんなに楽しいものを…私が奪い去ってしまうの!失わせてしまうの!」

咲「私は…私はそんなのイヤ…それなら、麻雀なんて打ちたくない」

咲「打ちたくなんて……ないんだから……」

京太郎「…なあ咲、いい加減意地張るのは止めてくれよ」

咲「私、意地なんて張って…」

京太郎「それなら…どうしてお前は、今もそうやって泣いてばかりいるんだ?」

咲「…分かんないよ。分かんないよ、そんなの」

京太郎「そんな訳ないだろ。お前はただ、認めようとしないだけだ」

咲「嫌…言わないでよ…聞きたくない!」

京太郎「お前は今でも麻雀を打ちたいって…楽しみたいって思ってるんだろ!」

咲「やめてよ…やめてったら、ねえ」

京太郎「答えてくれよ、咲」

咲「…ひどい、ひどいよ京ちゃん」

京太郎「……」

咲「こんなのって…あんまりだよ…でも……」

京太郎「でも…なんだよ?」



咲「私…打ちたい…麻雀、打ちたいよ…京ちゃん……」



京太郎「…やっとだ」

咲「えっ?」

京太郎「やっとホントの事を言ってくれたよな、咲」

咲「やっとだなんて…インハイから、そんなに時間たってたかな?」

京太郎「お前…今日が何の日か忘れてないか?」

咲「何の日って…まさか」

京太郎「今日って、お前の誕生日じゃないか」

咲「…覚えててくれたんだ」

京太郎「当たり前だろ?俺達、それなりに付き合いが長い方なんだから」

咲「…そうだったね」

京太郎「俺には、お前んちの事情とか…そういうややこしいのは分からねえ」

京太郎「けど…仲間をそんな風にしちまって、何にもせずにいる程俺はヘタレじゃねえ」

咲「…いつかの幽霊騒ぎには、あんなにうろたえていたのに」

京太郎「そこで茶化すなよ」

咲「でもありがと。京ちゃんが勇気を出してくれたからこそ、私も勇気を振り絞れんたんだから」

京太郎「…いいってことよ。それじゃあ早速、部室へ行って皆と麻雀しようか」

咲「え、それは……」

京太郎「大丈夫。みんなだって、お前の事を待ってるんだからさ」

咲「…うん!」

咲「…一つ、聞いてもいいかな?」

京太郎「何だ?」

咲「ひょっとして和ちゃんも、私のところに来ようとしてた?」

京太郎「ああ」

咲「どうして、来なかったの?」

京太郎「…俺がアイツにそう頼んだんだ」

咲「え…なんで?」

京太郎「意地があったんだよ…正直、麻雀の弱い俺じゃ説得力が無いとも言われた」

京太郎「俺もその通りだと思った。けど…どうしても納得する訳にはいかなかったんだ」

京太郎「…意地があんだよ、男には。だからどうしても、俺の手でケジメをつけたかった」

咲「意地ってそんな…和ちゃんの言う通り、説得力なんて無い筈なのに」

京太郎「けど、お前は俺に答えてくれたろ?」

咲「それは…そうなんだけどさ」

京太郎「俺さ、お前を麻雀部に連れて行った日『麻雀っておもれーよな』って言ったの覚えてるか?」

咲「…うん、覚えてる」

京太郎「なんてーかさ、お前には嘘を吐きたくなかったんだよ。吐かせたくもなかったんだ」

咲「…それには何か理由があったの?」

京太郎「知らねえ」

咲「知らねえって…答えになってないよ」

京太郎「…ひょっとしたら、認めたくないのかもしれないな」

咲「何を?」

京太郎「悪いけど、それは教えられないな。特にお前には」

咲「えー?私だってホントの気持ちを伝えたのに」

京太郎「はっはっは。悔しかったら、もっと女を磨くんだなー」

咲「な、なにおう」





…俺は咲の言うヘタレだからか、この気持ちをアイツに伝える事が出来ない。

はっきりさせられもしない。けど、今はそれで良い。

いつか…いや、いずれそれを伝える日は来るだろう。

俺がアイツの隣に並び立てる程強くなれたら、きっと。

―――強くなろう。

アイツの総てを受け容れられる程に、強く。

今回はここまでです
では

投下します


「貴女が好きです」

彼女に…ただそれだけを言えぬまま、俺は3年の春を迎えた。

俺の名は須賀京太郎。

『高校生一の雑用』とかいう二つ名を持つ、清澄高校麻雀部の男子部員だ。

その異名が示すように…麻雀では未だ大した成績を残せていない。

何とも不甲斐無い話だ。

けれど、それが自分の身の程なのだろうと思う。

…次元の違う世界を、俺は間近で見続けてきた。

今や男子と女子とでは、凡そ打ち手としての力量に差が有りすぎる。

そのせいか、最近じゃ男子の競技人口は減少傾向にあるらしい。

仕方ない。

あれ程までに打ちのめされては、仕方ない。

諦めるしかないんだ。

圧倒的な力量差を見せ付けられたあの日、俺達は…夢を奪われたのだから。


男は女に勝てない。

少なくとも俺達の世代では、決して覆らない事実である。

男子のインハイチャンプ達は…女子のインハイチャンプに為す術も無く蹂躙された。

俺の想い人、原村和。

彼女もまた、蹂躙する側の一人だった。

『…男子麻雀には失望しました』

どうでもよさげにそう吐き捨てた和の姿を、俺は今でも忘れられない。

和と俺じゃ所詮、住む世界が違うのだろう。

そう悟った頃には…麻雀への情熱など失せてしまっていた。

6人でいたあの頃に戻れたら。

そう過去に思いを馳せ、無為な時間を過ごす日が増えた。

惰性と未練。それだけで麻雀を打ちながら。

どうせ今年の春で終わりだ。

今更頑張った所で、強くもなれないし楽しめもしないだろう。

だから麻雀、止めちまおうか。そう考える俺に、

「貴方は…本当にそれでいいんですか?」

「…和」

彼女から、そのザマを咎められた時は驚いたものだ。


「雀士としての矜持があるのなら、私の問いに答えて下さい」

矜持なんて、ある訳ないのに。

悪態をついて…とっととこの話は終わらせよう。そう決めた俺に、

「そのまま燻り続けるのなら、退部してもらえませんか?」

彼女は容赦の無い言葉を突きつけた。

実にもっともな言い分だ。やる気の無い3年なんて、存在自体が邪魔なだけだ。

それなりに雑用が出来るだけで、置いとく理由はないだろう。

…やるだけの事はやった。

清澄高校麻雀部は、今や押しも押されぬ全国区の強豪だ。

裏方に過ぎなくとも、俺はその栄光を築き上げた役者の一人なのだ。

それで十分じゃないか。

もう、楽になってもいいじゃないか。

影で色々揶揄され続けた日々も、これでようやく終わる…だから、

「ああ、そうするよ」

俺は和の望む答えを出した。なのに、

「…ふざけないでください!」

彼女は怒号と共に、平手打ちを俺の顔へぶちかました。


…俺には訳が分からなかった。

いきなりの暴力に、憤る気さえ起こらない。

和が暴力に訴える真似をしたのが、信じられなかったから。

その事実に呆然としていた俺に、

「…須賀君の馬鹿っ!」

彼女はそう言い残し、走り去っていった。目に涙を浮かべながら。

その時俺はようやく気が付いたのだ。

麻雀は勿論、和の事も…和への想いも…全て忘れてしまっていた自分に。


原村和…彼女は厳しい人間だ。

麻雀が係わると、その傾向はいっそう強くなる。

入部当時から類まれなる実力を持った咲にさえ、真摯でなければ容赦なく退部を勧めたそうだ。

それを咲から聞いた時には驚いたものだ。しかし、当然と言えば当然の事。

和は麻雀が好きなのだ。大好きなのだ。少なくとも、あの6人の誰より。

友達と麻雀の為に、親父さんへ逆らったりもしたそうだ。

そういや彼女は、優希や阿知賀の友達とも…よく麻雀を打っていたんだっけか。

麻雀への入れ込みようは、それこそ必然なんだろう。

…それなのに俺ときたら、なんて真似をしたんだろう。



和が去った後、俺はずっと彼女の事を思い返していた。

麻雀部に入った時の事。

和を好きになった時の事。

和や皆が打つ度に、心を躍らせた時の事。

その度に、胸が軋むような感覚を覚えた。自分への不甲斐なさ故だろうか。

とにかく…このままは嫌だと、そう思った。

なら、行くしかないじゃないか。

和の所へ。


「…今更、私に何か用ですか?」

「んな事言うなよ…原村部長」

和が俺を見る目は冷ややかだった。

会いたくなかった、そんな気持ちがひしひしと伝わってくる。

それでも、どうしても伝えなきゃいけない事が俺にはある。

「俺、やっぱり麻雀がしたいんだ!」

「はぁ?」

瞬殺だった。

決して強いとは言えない俺のメンタルを、彼女は情けもにべもなく打ち砕く。

末原プロでなくてもメゲるわ。

…それでも俺は、立ち上がらなくちゃならないんだ。


「今更貴方が頑張ったって、何が出来るというのです!」

「そんなの、やってみなくちゃわからねえ!」

「須賀君は馬鹿ですかっ!」

「ああ馬鹿だ!」

「部員の9割9分が、貴方の退部に賭けてるんですよ!」

「…マジで?」

おいおい…そりゃあんまりだよ、原村部長。

そりゃまあ俺って、大体の奴にはただの小間使いだと思われてるからなー。

…9割9分?



「あの…残りの1分ってのは?」

「そんなの、咲と優希の2人に決まってます」

なんだ…俺にはまだ味方がいるじゃないか。

まだやれる。


「でももう、その2人も貴方の事を諦めたんじゃないですか?」

「いや、まだだ…俺はまだ」

「諦めてって言ってるのが分からないんですか!」

気のせいか、さっきから和の態度に余裕が無いように思える。

「…だったら何で、俺の話なんて聞く必要は無いだろ?最悪、部室への出入り禁止にすれば済む話だ」

「それは、貴方の立場を最大限尊重した上で…」

やはり和は迷っている。俺を辞めさせる事に戸惑いがある…ならば、

「違う!お前は俺に諦めて欲しくないから、こんなまどろっこしい真似をしている!」

「どうして…どうしてそう言い切れるんです」

「俺が和の仲間だからだ!俺とお前は、みんなで一緒に麻雀を楽しんで来た…そうだろ?」

後はもう、勢いで押し切っていくだけだ!

「そんなのは…とうの昔に終わった話で…今の貴方は」

「終わったかどうかは、闘ってから決めりゃいい!」

「闘う?まさか、貴方と私が?」

「そうだ!俺はインハイ個人戦で優勝して、必ずお前に挑んでみせる!」

我ながら、ちゃんちゃらおかしな話だ。

「何を言い出すかと思えば…心底馬鹿馬鹿しい話です」

そう言われるのも無理は無い。

「…ですが」

だが、

「もし貴方がそこへ来るような事があれば、私は喜び勇んで貴方と打たせていただきましょう」

彼女もまた、俺の事を諦めていなかったらしい。

…正直、本当にそうだとは思ってなかったのは今でも内緒だ。









須賀京太郎。

彼に対しては、後ろめたい気持ちで一杯だった。

存分に麻雀を打ちたい。麻雀だけを考えていたい。

彼は、そんな私達の我儘に付き合わされた人だったのだ。

彼に非があるとすれば、それはきっと…咲を連れてきてしまった事。

彼女の存在に、部長…竹井先輩は魅入られてしまった。

けれどあの人を責めはしない。出来もしない。

あの打ち筋を目の当たりにして、夢を見れない訳がない。

それでも…須賀君に対する後ろめたさを拭い去れはしなかった。

彼から、麻雀を楽しむ事を奪い去っているのではないか。

そういう気持ちが…日増しに強くなっていった。

だからといって、今更歩みを止めるなんて事も出来ない。

それでは彼が浮かばれない。

私達に出来る事は、ただひたすらに麻雀を打ち…勝利する。

そして…先輩2人と優希、そして咲と一緒に麻雀を楽しむ事。

それ以外に、無かった。

…結果として、私達はインハイ覇者という立場に収まった。

あの時の私達は、えも言われぬ思いで満たされていたと思う。心地良くてたまらなかった。


なのにその思いは、エキシビジョンなどという余興で損なわれてしまった。

何もかも上手くいっていたというのに、水を差された。

だから吐き捨ててやった。

お前達はつまらないと、天を仰いで唾したのだ。

私達の栄光を…失意で塗りつぶした弱者の存在が、どうしても許せなかったから。

…その鬱憤晴らしが、須賀君から麻雀への情熱を奪った。

いよいよもって後ろめたい。けれどもう、あがなうには遅すぎたのだ。

彼は雑用という立場に甘んじ、それを私達の誰一人として責められなかった。

当時、謂れの無い中傷を受け始めた事がその後押しになっていたから。

そして、その全てを彼自身が否定しきれないと認めたから。

…それからどうする事も出来ず、そのまま私は高校最後の春を迎えた。


いい加減、須賀君と麻雀部の関係を清算させてしまいたかった。

たとえ手遅れであったとしても、最後の最後まで引きずるよりは幾分マシかもしれないと。

ただ…その考えには、何ら根拠らしき根拠なんて無かったのだけど。

かつての仲間として…麻雀部の部長として、そうするべきだと思った

きっと私はあの時、自分の手で彼に引導を渡したかったんだろう。

なのに彼の言葉に憤って…その上、暴力まで奮って……。

みっともない話だ。



…しばらくして、須賀君はまた私の前に現れた。

もう一度、麻雀がしたいと言い出して。

彼は何度言っても聞いてくれなくて。

そのうち、私の方が彼のペースに乗せられて。

最後には、インハイで勝って私と戦うなんて言い出して。

でも私には、彼の言葉をどうしても否定出来なかった。

私の事をただ真っ直ぐに見つめる瞳。

それから垣間見える熱意は、まだ彼が麻雀部に入部した当時の…いや、それ以上のものだった。



結局私は、彼の事を…仲間の事を諦められなかった。

そして…

「約束通り挑みに来たぜ、和」

信じられない事に、彼はインハイチャンプとして…今私の目の前にいる。
「約束通り挑みに来たぜ、和」

信じられない事に、彼はインハイチャンプとして…今私の目の前にいる。

「本当にここまで来たんですね、須賀君。咲を倒して、チャンピオンになった甲斐がありました」

「…いい加減、名前で呼んでくれたっていいじゃねえか?」

「お互いよそよそしくしてたのに、いきなりそれは難しいですよ」

「じゃあさ、俺が勝ったら名前で呼んでくれよ…そのくらいなら構わないよな?」

それを聞いて私は、少し彼をからかってみたくなった。

「あら、そんな事で良いんですか?」

「え…」

「どうせ私が勝つんですから、もう少し無茶を言ってもいいんですよ?」

単なる挑発ではない。私が勝つというのは必然であり、断固とした決意である。

「…後悔するなよ?」

「そっちこそ」

「俺が勝って無茶をお願いしても、拒むなよ?」

「勝てるものなら」

やはり違う。

一昨年と去年、私の前に現れた男子のチャンプ達とは…何かが違う。

…楽しい麻雀を打てそう!

「あ、あのー…」

「京ちゃん、和…私達もいるって事、忘れないで欲しいなー…聞いてないだろうけど」





―――まもなく、試合開始です!


                                              了


>>31 訂正



「約束通り挑みに来たぜ、和」

信じられない事に、彼はインハイチャンプとして…今私の目の前にいる。

「本当にここまで来たんですね、須賀君。咲を倒して、チャンピオンになった甲斐がありました」

「…いい加減、名前で呼んでくれたっていいじゃねえか?」

「お互いよそよそしくしてたのに、いきなりそれは難しいですよ」

「じゃあさ、俺が勝ったら名前で呼んでくれよ…そのくらいなら構わないよな?」

それを聞いて私は、少し彼をからかってみたくなった。

「あら、そんな事で良いんですか?」

「え…」

「どうせ私が勝つんですから、もう少し無茶を言ってもいいんですよ?」

単なる挑発ではない。私が勝つというのは必然であり、断固とした決意である。

「…後悔するなよ?」

「そっちこそ」

「俺が勝って無茶をお願いしても、拒むなよ?」

「勝てるものなら」

やはり違う。

一昨年と去年、私の前に現れた男子のチャンプ達とは…何かが違う。

…楽しい麻雀を打てそう!

「あ、あのー…」

「京ちゃん、和…私達もいるって事、忘れないで欲しいなー…聞いてないだろうけど」





―――まもなく、試合開始です!


                                              了

えーと…今回はここまでです
では


ただ、より仲良くなったからなんだろうけど、咲と和のお互い呼び捨ては物凄い気になる

>>32 訂正
×:「…いい加減、名前で呼んでくれたっていいじゃねえか?」
○:「…いい加減、名前で呼んでくれたっていいじゃねえか」

>>40
どうしようかと悩みましたが、3年になって未だにさんづけというのもよそよそしいので呼び捨てにしました
ただ、ご指摘の通り違和感は否めないですね…この辺は自分の力量不足です

投下します


京太郎「ちくしょー…まーた負けちまったか」

咲「ゴメンね京ちゃん。ついムキになっちゃって」

京太郎「おいおい…それは流石に失礼すぎやしないか?」

咲「だって京ちゃん、麻雀弱いんだもん」

京太郎「それを言っちゃいますかー」

和「…咲さんって、須賀君には容赦が無いですね」

優希「全くだじぇ。正直、私でもドン引きする時あるんですけど」

咲「そうかな?」

京太郎「いつも通りじゃね?」

和「(…ゆ、優希)」

優希「(分かってるじょ。お互い遠慮が無さ過ぎるから、見ているこっちが怖くなるじぇ)」

和「(正直、あんな風に接されたら心が折れそうになります)」

優希「(幾ら付き合い長いからって…お互いケンカにならないのが不思議だなー)」


咲「ねえ…二人とも」

和「な、なんですか?」

咲「さっきからこそこそ話してるけどさ、私達…2人を待ってるんだけどな」

和「すっ、すみません!」

優希「…ごめん」

京太郎「おいおい咲…じれてるのは分かるけどさ」


京太郎「あー終わった終わった。おつかれさん」

咲「おつかれさまー」

和「お…おつかれさまです」

優希「…おつかれさま、だじょ」

京太郎「何だよ、2人とも元気ねーな」

和「気のせいじゃないですか?」

優希「タコス力が切れただけだ、心配するな」

京太郎「そっか…じゃあ行こっか咲」

咲「うん!」



和「何で今日に限って、部長達は休みなんでしょうね…」

優希「ホントだじょ…ほぼ毎回手牌が5向聴の局とか、つまらないにも程があるじぇ」

和「…白糸台の大星選手と打つと、手牌がそういう風になるらしいですね」

優希「え…のどちゃん。趣旨換えしてオカルト派に転向するのか?」

和「そんなの…絶対ありえません!何ら根拠の無いものなんて、私は認めません!」


京太郎「そういや咲、今日は俺かお前ばかり和了っていたな」

咲「そうだね…どうしてだろ?」

京太郎「俺に聞かれてもなー。ただ、2向聴以下になった事は一度も無かったよ」

咲「私も。とにかく手が早く進むから、打ってて気持ち良かった」

京太郎「ただ、最後まで咲には勝てないままだったな」

咲「ふっふっふ…それはね、京ちゃんが私に弄ばれる定めだからだよ」

京太郎「お前に弄ばれる…かあ。どうせなら、もっと胸の大きい女の人に」

咲「セクハラだよ、それ」

京太郎「いいじゃんいいじゃん。お前なら…多少の事は許してくれるだろ?」

咲「幾ら私相手でも、限度があるんだからね!」

京太郎「分かってるって」

咲「全く…京ちゃんってば、私がいないとホントにダメなんだから」


なんやかんやあって、この2人は卒業後もよくつるんでいた。

やがて咲は勿論一流雀士に、それと京太郎もそれなりの雀士になれたそうだ。

2人の会話は周りを良くヒヤヒヤさせたが、ケンカをした事は一度だって無かったらしい。

それと、2人が同卓になると…多くの者が3位以上にはなれなかった。

まるで2人だけで勝負をしていた…ひょっとしたら、イチャイチャしていたのかもしれない。

そんな風に語るものもいた。

…単に恋仲とは言えず、けれど友達とも言えず…何とも形容しがたい2人の仲。

その関係は、末永く続いたという。



カン!

間に合わなかった…それと、投下遅れてすみません
では

投下します


「やっぱりおもちは大きい方がいいよね!」

「まったくもって!」

そんな風にやり取り出来る人に、ようやく私は出会えた。

その人の名は須賀京太郎。

彼を知ったのは、あの決勝戦の後で清澄の人達と会う事になった時だ。

対戦直後の事だったから、最初はぎこちない感じではあったけれど。

しばらくして会話が弾みだした頃、先鋒の片岡さんが聞きなれない人の名前を口にした。

それこそが京太郎君だった。買い出しに行ったきり、戻って来ないらしい。

私はどうも気になって、彼がどんな人か尋ねてみた。

驚いた事に、彼はマネージャーではなく部員。

ただし、部内じゃ雑用として半ば定着しかかってるそうで。

和ちゃんは、彼のそんな立場に気まずさを感じているそうだ。

でも、片岡さんに京太郎君が犬扱いされているのは止められてないみたい。

…ちょっと可哀想な人なのかな。

その場にいない彼に、私はそんな感想を抱いていた。

今思えば、とっても失礼な事を考えていたのだなあと我ながら思う。

結局、その場に彼は現れなかった。


それから3日後、私は初めて彼に出会った。

その時彼は、個人戦を真剣な面持ちで観戦していた。

大画面のスクリーンを眺める彼の姿は、結構様になっていたと思う。

ただ…私の目は誤魔化せなかった。

おもちの大きい選手を目にした時、彼が一瞬ほころんだのを。

その顔はとても無邪気だった。

彼の考えは邪なもののはずだが、どこか清々しささえ感じさせた。

…一目惚れ、だったのかもしれない。

ただ…それ以上に、彼を見ていると私は安心感を得られた。

お姉ちゃんの件から、男の人に苦手意識を持っていたこの私が。



まあ…何にせよ、その日は同志と出会えた素晴しい日となった。

個人戦観戦の為、滞在費を出してくれた後援会のみなさんには頭が上がらない。


「神代さんのおもちっていいですよね…」

「いい…」

「和のおもちは?」

「天の恵み、なのです!」

それから数日、会っては2人きりでそんなしょうもない事ばかり話していた。

楽しかった。

日頃抑えられていた自らの業が、解き放たれていく。

気持ちいい。

ありのままに、ありたいままに振舞えるのがこんなに素晴しいことだなんて。

…勿論、私達以外誰もいない所でだけど。

生憎露悪主義者じゃないのだ。


それでも、楽しい日々はいつか終わるのだ。

辛かったけど、楽しくもあったインハイのように。

出会いがあれば、別れもある。

一旦お別れする時、それと…一生お別れする時。

相手が生きていても、生きていなくても…二度と会えないかもしれない。

だから私は、別れが嫌い。

大っ嫌い。

どうして、そのままではいられないのか。いさせてくれないのか。

そんな風に思っちゃうから。

「また、どこかで会えるかな?」

「会えますよ…きっと」

それでもまた出会える事を信じて、私達は再会の約束をした。


「京太郎…お前、どうして松実さんと仲良くなれたんだじょ?」

2人の関係を訝しく思った優希は、京太郎にそう尋ねた。

「多分、引かれ合ったんだよ。あの人と俺は、同じ志を持つ者だからな」

優希の問いに、京太郎はしたり顔でそう答える。

「同じ志って…なんだそれは?」

「悪いが内緒だ」

結局優希は、何も訊き出す事が出来なかった。



「…優希、ちょっとこちらへ」

「何だーのどちゃん?」

「多分ですけど、須賀君の言う志とは……きな……の事ではないでしょうか」

「…ああ、そういう事か。どうやら奴には、飼い主である私が躾をしなきゃいけないようだな」

「あの…優希、ほどほどにしてあげて下さいね?」

「分かってるじぇ!」

それからというもの、京太郎が優希にこき使われる頻度は増えたらしい。

その分、麻雀もみっちり指導はしたそうだが。


夏に別れてからも、京太郎君とはよく連絡は取り合っていた。

ICTが発展した現代では容易に出来る事だ。

ネットを使えば文字でも声でもやり取り出来るし、姿だって見れる。

テレビ電話などと違い、ローコストで。

ただ…どんなに言葉を重ねても、物足りなさは無くならない。

モニタで相手が見えたって、そんな気持ちが増すばかりなんだ。

…だから思わず言ってしまった。

「会いに来て」

そんな我侭を、伝えてしまった。けれど、

「いいっすよ」

彼は事も無げにそう答えた。答えてくれた。

…それから少しして、彼はウチの旅館にやって来るようになった。

紅葉も終わり、冬を迎え始める頃に。

ただ、月に1度だけ。彼は長野に住んでいるから、それは仕方の無い事だけど。

でも、私にはそれで十分だった。

それから1月程立って…クリスマスイブを迎えた私は、

「…取りあえず、俺と付き合ってみませんか?」

何とも冴えない告白だった。

けれど私はその時、顔が真っ赤になる位に喜んでいたと思う。


あれから9ヶ月が過ぎた。

最後に京太郎君と会ったのは夏の終わり。それを境に、彼はここへは来なくなった。

何度も連絡しようとしたけど、彼は何にも応えてくれなかった。

…やがて秋が終わり、冬を迎えた。

それでもやはり彼は来ない。

お姉ちゃんじゃないけど、私はその時凄く寒がりだった。

心も身体も凍えていく。

つらかった。

こんな思いをするのなら、来て欲しいなどと言わなきゃ良かったと、そう思った。


「玄ちゃん」

「んん?」

「須賀君には、会いに行かないの?」

「え…」

「玄ちゃんは待ってばかりいるけど…それで良いの?」

「…良くない、けど」

「なら…会いに行こう、長野に!」

「へっ?」



それからは、あっという間だった。

話を聞いた部活のみんなが、とんとん拍子に話を進めて。

しまいには、去年から縁のあった龍門渕高校に協力までお願いして。

そして私は、なされるがままに長野へ行ったのだ。


「この龍門渕透華…惚れた腫れたの話には目がないんですの」

「は…はあ…」

3年になり、個人戦で猛威を振るった龍門渕さん。

よくもまあ、こんな話に乗ったものだと思う。

お嬢様の考える事は、よく分からない。

「そういえば…貴女は須賀京太郎がどうなっているか聞き及んでおりますの?」

「いえ…全く」

「先程、宮永咲からようやく話を聞けたのですが…家族のカピバラが亡くなったそうです」

「!?」


カピが死んだ。

俺が吉野に行ってすぐに…あっという間だったらしい。

出かける前は、あんなにも元気にしていたのに。

いつも通り吉野に出かけて。

いつも通り玄さんと、楽しい時間を過ごして。

そしていつも通り帰って、カピが俺を出迎えてくれる。

そのはずだった。

それが当たり前だったから、これからもそうだと思っていた。

少し考えてみれば、決してそんな事はないというのに。

それからずっと塞ぎこんでもいられないから、当然学校には行った。

部室にも行ったし、麻雀だって懸命に打った。

けれど、玄さんに会いに行こうとは少しも思えなかった。

カピとの日々を、忘れたくないからだろうか。

玄さんの所へ行くのが、後ろめたくなったからなのか。

まあ…両方か。

どうやら俺はヘタレで、失う恐怖に負けたらしい。

カピを喪ってから…いや、カピのせいにして。

…つらいなあ。










「…久し振りだね、京太郎君」

え?

「全然会いに来てくれなくて、寂しかったよ」

これは夢か?幻聴が聞こえるんだけど。

「ふふ…これは夢じゃないよ。ほら」

う…うおおっ!当たってる!何か柔らかいのが当たってるぞ!

「私、寂しかったんだから」

「ええと、その…」

「知ってるよ。カピちゃんとお別れしたんだよね?」

玄さんに、知られてしまった。

知られたくなんてなかったのに…なんでだよ。

「聞いちゃったんですか……咲……」

「宮永さんを責めないであげて。彼女、最後まで話すのを渋ってたそうだから」

そっか…ごめんな咲。こんなヘタレの為に頑張ってくれて。

「…あいつからは直接聞いてない、と。なら、心当たりは一つだけですね」

「察しの通り、龍門渕さんに聞いたんだよ」

「ああ、やっぱり」

ただ…ハギヨシさん。主人の面倒、ちゃんと見て下さいよ。


「カピちゃんと別れて、辛かったでしょう?」

「ええ…ホント可愛らしい奴でしたから。それに、大事な家族ですから」

彼はすごく悲しそうだ。本当に、あの子の事を大事にしていたんだね。

…私も一度、会ってみたかったなあ。

「別れるのって辛いよね。私も経験あるから、よく分かるよ」

「何時だったか話してましたね…お母さんの事」

「お母さんは美人な女将と評判だったんだ。その姿、見せてあげたかったよ」

「もし会えたら…俺達の仲、からかわれてたかもしれませんね」

「ふふ、そうかもね」

それは決して叶わない。

私達はもう、お母さんにもカピちゃんにも会えはしない。

少なくとも…生きているうちは。生と死は、決して交わらないの。

だから、

「ねえ、京太郎君」

「何ですか?」

「カピちゃんと…ちゃんとお別れ、しよう?」

見送る側の生者は…死に逝く者を見送らなければならないの。

死に別れた者達より、生ける者達に目を向けなければいけないの。

過去に囚われる事は、過去を思い返す事と同じじゃないから。

少なくとも、私はそう思う。


それから2人でカピちゃんのお墓に立ち寄った。

やっぱりというか、京太郎君も来たのは始めてだった。

それからしばらく彼は俯いていて。

泣きそうになるのを堪えて、じっとその場に立ち続けていた。

やがて顔を上げた彼は、さっきのような暗い表情はしていない。

よく私に見せてくれた、屈託のない笑顔に戻っていた。


「…ありがとうございました」

「お礼なんて良いよ。私はただ押しかけただけなんだから」

「それでも…俺が助けられた事に変わりはありません」

京太郎君って、案外重い考えするんだね。

私も人の事は言えないけど。

「…なら、そういう事にしておいてあげる」

「ええ、そうしてくれると助かります。ところで…」

「何?」

「今日って…確かクリスマスイブでしたよね。すっかり忘れてましたよ」

「忘れないでよ。告白したのはそっちなのに」

「はは、すみません。お詫びといってはなんですが、これからデートをしませんか?」

さっきはあんな風だったのに、案外切り替えが早いなあ。

でも私は、そうしていてくれるのが良い。貴方には、どうか笑っていてもらいたい。

貴方が嬉しいと、私も嬉しいの。










「聞きましたか、ハギヨシ?」

「ええ、透華お嬢様」

「早速準備を致しますわよ!どうせなら、2人がすこぶる目立つように!」

「畏まりました」



…どうやら、私達の前途は多難であるらしい。

                                        了

今回はここまでです
では

投下します


私は、須賀京太郎が好きだ。愛していると言ってもいい。

けれど、彼と私は決して愛し合えない。

何故なら2人の間には、越えがたい壁があるから。

それに…私はもう長くない。

どんなに頑張っても、せいぜい数年の命だ。

…どうして私はそんな風に生まれたんだろう?

愛する者と結ばれない身で、生きるというのはあまりに辛い。

だが、それを彼に伝える事は出来ないのだ。

なんてもどかしいんだ。

…一応今は、互いに触れ合う事は出来るし、一緒に暮らしてもいる。

だが、それは京太郎からすればほんの一時期。

いずれは私の事も忘れるに違いない。

自惚れでもなんでもなく、彼は私の事を大切に思っている。

だから私が死んだらきっと、大いに悲しむ事だろう。

しかしそれ故に彼は私を忘れる。

忘れずとも、遠い記憶の彼方へ追いやっていく。

そして私は彼の過去となる。

現在(いま)でもなく、そして未来でもない。なれはしない。


何故なの?

どうして死ななければならないの?

もっと彼と一緒に居たいよ。

離れたくなんてないよ。

ずっと一緒でなくちゃやだよ。

触れ合えなくなるなんて、辛いよ。

…結局の所、私は死にたくない。

このまま死を待つなんて、とても出来ないんだ。

決めた…私足掻くよ。

死ななくて済むように、一生懸命頑張るよ。

この世は不思議で溢れている。

京太郎の友達だって、人の領域を超えてるし。

だから私もそうなるの。

力を手にして、ずっと一緒に居られる身体になるの。



―――だから…一旦お別れ。






相棒が…カピが居なくなった。

お袋からそう聞いて、俺はすぐさま家を出た。

学校なんてどうでも良かった。

あいつの方が大事だった。

…家族だから。

俺がちんまい頃から一緒だった、かけがえのない家族だから。

でも結局、あいつは見つからなかった。

いくら探し回っても、手がかり一つ得られなかった。

夜中に帰ってすぐ、親父達に叱られた。

遅くまで何所に行っていたのかと。

お前まで居なくなったら、ますます寂しくなるじゃないかと。

翌日学校に行けば、まず担任に叱られた。次に嫁田から叱られた。

そして、部活に行ったら5人全員に叱られた。

俺を叱ってきた全員が、目には涙を浮かべていた。

…そして俺は、カピの事を諦めた。


それから、半年が過ぎた。

カピを忘れた事は片時もない。

ただ…カピバラは、日本の自然では到底生きられないのだ。

日本には四季があり…冬はカピの身体を冷やす。

きっともう、カピはもう生きていない。

だからこそ、カピの分まで一生懸命生きよう。

精一杯頑張って、あいつにガッカリされない男になろう。

そんな決意を胸に、俺は牌に青春を捧げる日々を送っていた。

…恋に縁が無かったから。

けれどその日々は、ある転校生と出会った事で終わりを迎える。


彼女は和にそっくりな見た目で…後、春先なのにマフラーをつけていた。

冷え性なんだろうか?

そういえば、阿知賀の松実宥さんもマフラーつけてたっけ…あっためてあげたい。

そんな事を考えながら彼女を遠めに眺めていると、

「…京太郎?」

まさか彼女が、俺の名前を呼んだのか?

変だな…お互い顔さえ知らないはずなのに。

それに…名前を呼ばれた時、懐かしさを感じたのは何故だろう。

…不思議な事もあるものだ。

まあ何にせよ、向こうを無視するなんて出来ないが。


…やっと会えた、私の愛しい人に。

家を出て家族と別れてから、色んな事があった。

やがて…私は翼を手に入れ、こことは違う世界を知った。

全てのきっかけはタコス。

そして片岡優希。

彼女と私は友であり恩人であり、もしかしたら宿敵でもある。

尤も彼女にとっては、私との旅は夢の中の物語だろう。

しかし現に、私は人としてのカタチを得ている。

短き命を理由に、彼と分かたれる事は無くなった。

だからといって、この先彼と道が交わるとは限らない。

全てはこれからだ。

これからの日々は、決して昔を取り戻す為のものではない。

新たな未来を手に入れる為の戦いなのだ。

                                      了

今回はここまでです
では

投下します


照「菫」ボリボリ

菫「菓子ならないぞ」

照「私、まだ何も言ってない」パクパク

菫「今日はハロウィンだからな…お前が何を言うかなんて想像がつく」

照「…お菓子くれないの?」ゴクン

菫「過食はお前に肥満と嘔吐をもたらすだけだぞ」

照「問題ない。我が胃袋はピンクの悪魔に匹敵する」

菫「まあ、お前は何でも食べるからな」

照「無論、私はお菓子に対して一切の区別しない。皆平等に食して差し上げる…」

菫「そうか…なら奴らを止めてきてくれ」

ヤッパリキノコデショ! イイエ、タケノコガセイギヨ!

照「…なにあれ」

菫「見ての通りだ。誰かにあげればそれで済む話だというのに」

照「よく見たら…淡や尭深、それに誠子…おまけに他のチームまで…」

菫「きっと皆、譲れないものがあるのさ」


バリッ! グチャッ! ドゥルルルッ! ギュルギュルギュルッ!

照「ああ、きのこが…たけのこが…お菓子達が、お菓子達が潰されていく…」

菫「戦いは、いつも醜いものだな」

照「…そうだね」

菫「気を落とすな。ほら、マロンケーキだ」

照「ありがと」ハムハム

菫「サプライズ用だったんだがな…どうだ、味の方は?」

照「おいしい」パアアッ

菫「そうか、それはよかった」

照「…だからこそ菫、ここから出て行こう」ピッピッピッ

菫「えらく唐突だな」

照「だってここじゃ、美味しくお菓子を食べられないし…」トゥルルルルル...

菫「確かにその通りだ。だが…当てはあるのか?」

照「…それなら今見つかった」

菫「何処だ?」

照「長野。咲からメールが来たんだけど、どうやら龍門渕で楽しくやっているらしい」


京太郎「…で、何でお二人がここに?」

照「お菓子を貰いに」

菫「その付き添いだ」

京太郎「東京からここまでどうやって?」

透華「それならハギヨシが一刻でやってくれました」

ハギヨシ「させていただきました」

京太郎「執事ってすごい」

菫「…世の中には、不思議な事が沢山あるものだな」

和「一刻…30分で長野~東京を往復だなんて、そんなオカルト有り得ません!」

優希「のどちゃん…あんまり考えすぎるとハゲちゃうじょ?」

純「いやーヨッシーはなー…人の尺度で考えちゃだめだよ、うん」パリパリ

一「あれをマジック扱いされちゃ、マジシャンみんなが困っちゃうよ…」パクッ


まこ「それにしても、よく出来た衣装じゃのう」

透華「ふふ、当然ですわ。この龍門渕家の財力をもってすれば…」

智紀「全部萩原さんがやったけどね…」ハグハグ

透華「ぐっ!」

歩「私や一さんも手伝おうとはしたんですが、もう終わってましたし」シャリシャリ

透華「ぐ…ぐぐぐっ!」

衣「ハギヨシはすごいんだぞ!飾り付けも菓子作りも、大体一人片付けたんだ!」

久「…それなら須賀君を手伝わせに行かせなくてもよかったわね」

衣「下準備は、そちらの小間使いがやってくれたと聞いたぞ!」ゴクゴク、プハー!

久「ふむ…訓練の成果かしら」ガリガリ

優希「ですね!」

まこ(あんたら…こき使っとるだけじゃろうが)パリッ

京太郎(ですよねー)

まこ(こやつ、直接脳内に…!)


咲「お姉ちゃん…お菓子って美味しいよね!」パクパク

照「うん!」モグモグ

咲「もっと一緒に食べようよ!」ゴッ

照「望むところ!」ゴッ

和(止めたいけど…私も自分を止められない!)ハムッ

菫(だって…だって私ら女子だから!)シャクシャク



京太郎「…みんな良い食べっぷりですねー」

ハギヨシ「そうですねえ」

京太郎「止めなくて良いんですか?」

ハギヨシ「過食対策は万全です」

京太郎「流石は師匠」

ハギヨシ「ところで須賀君、いっぱい食べる女子は好きですか?」

京太郎「はい!大好きです!」

ハギヨシ「良い返事ですね。その調子で、誰かの胃袋を掴める様になって下さいね」

京太郎「もちろんです!」



須賀京太郎…主夫道の極みは未だ見えず。

カン!

執事って凄い、改めてそう思った

乙です
男が胃袋をつかんで行くスタイル

>>97>>98 早いよっ!

ヤマもオチも意味もない…まさしく801回でした
では

>>92 訂正

×:菫「まあ、お前は何でも食べるからな」→○:菫「まあ、お前は菓子なら何でも食べるからな」

×:照「無論、私はお菓子に対して一切区別をしない。皆平等に食して差し上げる…」
○:照「無論、私はお菓子に対して一切の区別をしない。皆平等に食して差し上げる…」

>>92 再訂正

×:照「無論、私はお菓子に対して一切の区別しない。皆平等に食して差し上げる…」
○:照「無論、私はお菓子に対して一切区別しない。皆平等に食して差し上げる…」

何の為の書き溜めなのか…とりあえず、投下開始します







京太郎「…俺が犬扱いされてる事をどう思ってるかって?」

和「はい。わたし、気になります」

京太郎「そういや和も好奇心は旺盛だったな…何で気になるんだ?」

和「気まずいんです」

京太郎「和が気にする事じゃないと思うけど」

和「友達が失礼を働いてるのが、どうも気になって気になって…」

京太郎「言いたい事は分かるけど、そう気に病む事でもないと思うぜ」

和「人を犬扱いって聞こえの良いものじゃありませんよ」

京太郎「まあ確かにな。俺も最初はムカッときたぜ」

和「私も何度か諫めたんですけど、結局言い方が変わったくらいですし…最初?」

京太郎「ん?どしたよ和?」

和「最初はムカッときたって…今はどう思ってるんですか?」






京太郎「あー…その、なんだ、犬扱いもそう悪いもんじゃないなって」

和「」


京太郎「犬って言っても様々だけどさ、忠犬扱いされるのはまあ…悪くないかなって」

和「ダメですよそれはっ!」

京太郎「の、和?」

和「人は人なんですから、当然人を至上に考えるのが一般的です。ですから犬扱いに慣れちゃいけません!」

京太郎「そういうもんかな?」

和「そういうものです!人が人以外に例えられるのは、良くない意味合いが少なくありませんから」

京太郎「考えすぎだよそれは…どうせ優希はそこまで考えてないって」

和「問題はそこなんです。優希自身の考えは別にして、周りがそれを聞いてどう思うでしょうか?」

京太郎「…知ってる奴なら兎も角、知らない奴からすれば聞こえは悪いな」

和「そうです。そして須賀君は勿論、優希もまた傷付く事になるんですよ?」

京太郎「それは確かにそうかも。あ、それなら部長の俺に対する扱いも…」

和「無駄でしょう。あの人の振る舞いは周知されてますから」

京太郎「ですよねー」

和「もうみんな諦めてますよ。暖簾に腕押し、糠に釘です」

京太郎「容赦ねえ!」


京太郎「まあ…周りの事はさておいて、俺自身は受け取り方次第だと思うよ」

和「そうでしょうか?」

京太郎「犬は別に奴隷みたいに言いなりだから、人の命に従う訳じゃない」

京太郎「餌の為とも生活の為とも、あるいは他の理由だってあるかもしれないぜ?」

和「えーと…例えば、飼い主の事が好きだから?」

京太郎「そういう奴もいるだろうな。人だって犬だって、相手次第で態度は変えるだろ」

和「ええ」

京太郎「…俺も優希相手じゃなきゃ、どう思うか分からねーかもな」

和「え、それってどういう…」

京太郎「悪いが内緒だ」

和「そんな!そこまで言ったなら、教えてくれたって良いじゃないですか!」

京太郎「身持ちが硬いんだよ、俺は!」



須賀京太郎の本心やいかに……。



カン!

今回はここまでです
京太郎は犬のように見返り(エサ)あるのかと一瞬考えましたが、優希も部長も麻雀の解説をしてあげてるんですよね

では

唐突ですがお題募集→>>111>>113
ご期待に沿えるかどうかは分かりませんが、精一杯頑張らせていただきます

成香ちゃんと京太郎で

アラチャーで

ぎゃーすみませんー

安価下

舞姫で!

>>111
承りました
成香ちゃん、後輩オーラが物凄いですが2年生なんですよねー

>>112
まさかの事態にうろたえざるを得ない…お気になさらずとはいえませんが、また機会があればアラチャー書きます
いつも楽しく読ませていただいてます

>>114
一応確認しますが、舞姫は哩姫の方でしょうか?それだと京太郎有りですか、それとも無しですか?
…ひょっとして、森鴎外の方ですか?



お題消化には時間がかかるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします

>>116
やらかした・・・
哩姫の方で京太郎ありの方でオナシャス

森鴎外の方も気になるけど当初の欲望に忠実に行かせていただく
空気読まずにすまんな!

>>121
承りました
ひょっとしたら、舞姫の方も書くかもです

>>111を投下します


京太郎(……)

------------------------------------------------------------------------------------------

久『須賀君』

京太郎『また買い出しですか、部長』

久『ええ』

京太郎『即答ですか。で、何がいいですか?』

久『えーっとね…A31のアイスクリーム!』

京太郎『シングルとダブル、どちらにします?』

久『そうねえ…今回はトリプルでいくわ』

京太郎『なら、器はワッフルコーンで良いですよね?』

久『もち!』

京太郎『フレーバーは?』

久『ホッピングシャワー・チョップドチョコレート・ラブポーションアラサーワンで』

京太郎『分かりました。では、行って参ります』

久『気をつけてねー』

------------------------------------------------------------------------------------------

京太郎(……)

京太郎(…アホだろ俺)

京太郎(あそこで買い出しだなんて言わなきゃ、こうならずに済んだかもしれないのに!)

京太郎(…はあ)ションボリ

京太郎(俺、何やってんだろ。これじゃあまるでパシリじゃん)

京太郎(てかもろパシリだし!いやまあそれが俺の役割だけど!なんだけども!)

京太郎(…俺はなんでこんな所にいるんだろう?)

京太郎(ずっと皆を応援していたいって、それくらい言ったって良かったんじゃないだろうか?)

京太郎(そうすりゃ、俺が部長の言いなりになって雑用してるって事にゃならんかったろうに)

京太郎(…ダメだなあ…俺)トサッ

「きゃっ!」


京太郎「わ、アイスが…おっ、とっ、と…ふぅ。すみません、余所見しちゃってて」ペコリ

「い、いえ…私の方こそ下を向いていましたし」ペッコリン

京太郎「兎に角そちらが転んでなくて良かったです…えと、貴女は確か有珠山の……」

「本内成香です。未熟者故、先程は満足に打てませんでしたが」

京太郎「俺からすればそんな風には…申し遅れました。俺、清澄の須賀京太郎って言います」

京太郎(あれ…なんだろ…この人見てると、何だか守ってあげたくなる気持ちが……)

成香「須賀京太郎さん…ああ、確か清澄には有能なマネージャーがいるという噂がありましたね」ニコッ

京太郎「いっ、いやーそれ程でも」デレデレ

京太郎(やばっ…超嬉しい!可愛すぎるし、あざとさを感じさせない!)

京太郎(これで胸があればなー…って、それは流石に失礼だな)

成香「で、実際貴方は何をやっていらっしゃるのですか?」

京太郎「あ、ただのパシリです」シレッ

成香「えっ」

京太郎「マネージャーなんて大層なもんじゃないんすよ…予選で敗退したからこうしてるってだけで」

成香「そ、そうなんですか?」

京太郎「丁度今も、部長の竹井に頼まれてアイスを買いに行ってた途中なんです」

京太郎「何で俺、こんなことしてるのかなーって考えながら」

成香「…奇遇ですね。私も似たような事を考えてました」

京太郎「えっと…それは先鋒戦が理由ですか?」

成香「ですね。相当な点数を持っていかれちゃいましたから、ちょっとメゲちゃってました」

京太郎「あ、それ分かります。俺も部内じゃよく焼き鳥にされますから……」

成香「…流石にそれはないですね」

京太郎「まあそうでしょうけど」



それから2人はなんやかんやと話を続けた…


成香「お互い、苦労してますね」

京太郎「まったくもって」

成香「私、きっと今頃あちこちで笑われてるだろうなって思います」

京太郎「…残念ですけど、そういう事もあるでしょうね」

成香「でも私、やっぱり麻雀が好きです。あんな目にあったのに、少しも嫌になりません」

京太郎「何でですか?」

成香「どんなに理詰めをしても、何が起こるか分からないからですよ」

成香「涙目にされても…冷や汗をかかされても…跳満を潰されても…嫌いにはなれません」

成香「辻垣内さんも上重さんも…そちらの片岡さんも、皆さん素晴らしい雀士でした」

成香「あの人達と打てた事を、私は誇りに思います」

京太郎「…そうですか。片岡には俺の方から伝えておきます、きっと喜んでくれますよ」

成香「いえ、それはどうでしょうか…あら?」

京太郎「どうかしました?」

成香「その、持ってるアイスが融けかかって……」

京太郎「げっ!」

成香「それ…どうしましょうか?」

京太郎「丁度あっちに椅子とテーブルありますし、そこで食べていきましょう」

成香「よろしいのですか?」

京太郎「大丈夫ですよ。次峰戦もまだ始まったばかりですし」


京太郎「では、食べる前にこれを」ストッ

成香「これは…スタンドじゃないですか」

京太郎「それに載せた方が食べやすいですし。あ、これスプーンです」

成香「ありがとうございます。しかし、何故こんなに用意がいいんですか?」

京太郎「萩原さんって執事に教えを受けてまして…今日もついさっきまで、指導を受けていたんですよ」

成香「は、はあ…では改めて」パクッ

成香(お知り合いに執事だなんて…相当育ちのいい人なんですね)

京太郎「ですがまだまだです。すぐ戻れるからと考え、入れ物を持たず行きましたから」

京太郎「もしあの人にバレたら怒られちゃうでしょうね…俺、耐えられるかな?」

成香(なるほど…強豪ともなれば、雑用の質もより高くしていくべきなのですね!)

京太郎「お味の方はどうですか?」

成香「ええ、美味しいです」ニカッ

京太郎(やっぱ可愛い!部長じゃ絶対こんな風には笑ってくれない!)

京太郎(『ありがとねー』で済ませちゃうし…やりがいないよもう……)

成香「成り行きとは言えこんなにしていただいて…私には、勿体無いです」

京太郎(この謙虚さ、部長にも分けてあげたいよ…部長…部長?)

成香「あの、須賀さん…大丈夫ですか?」

京太郎「すっかり忘れてたっ!」バンッ

成香「ひっ!」ビクッ

京太郎「あ、驚かせちゃってすみません」

京太郎(でもかわいい…なんか癖になりそう)


久「…で、何で遅くなったの?」

京太郎「黙秘します」

久「いや…私は責めてる訳じゃないのよ?」

京太郎「…ホントですか?」

久「ホントよ!須賀君、貴方は私をどう思ってるのよ!?」

京太郎「一度だって怒られちゃいませんが、めっちゃ怖い人だって思ってます」

久「…どうして?」

京太郎「だって…人を使うのがごく普通だって思ってますし。正直、暴君みたいな人だなって」キッパリ



久「」アゼン



京太郎「部長?部長?」ユッサユッサ

久「う…うーん」

まこ「よっぽどショックだったんじゃな…暴君みたいに思われてたのが」

咲「京ちゃん…ついに反逆するんだね」

和「…優希?」

優希「分かってる。ああはなりたくないじょ」


成香「…つまり、清澄の躍進には有能なバックアップの存在があった訳です」

爽「ふーん…で、誰がウチでそれをやるの?」

成香「えっと…それは…」

揺杏「それなら、さっき伸された成香がやればいいんじゃないかなぁ~?」

爽「あ、いいねそれ!」

成香「わ、私がですか!?」

由暉子「あ、あの…それなら1年の私が」

爽「いやいや。由暉子は打倒はやりんの旗頭なんだから、雑用なんてしなくていいよ」

揺杏「そうそう。先輩の言う通りにしてればいいんだよ~」

由暉子「…本内先輩」

成香「まあ…やれるだけやってみます」

成香(風越女子の福路選手は、部員の為に自ら進んで雑用を引き受けたといいます)

成香(彼女や須賀さんのような人を目指すのも、アリなのかもしれません)



カン!

今回はここまでです
if展開でイチャイチャさせた方が良かったかもしれない

では

>>126 訂正

×:成香「は、はあ…では改めて」パクッ
○:成香「そうなんですか…じゃあ、いただきます」パクッ

おまけを投下します


俺の名前は須賀京太郎。

有珠山高校1年の男子部員…兼マネージャーだ。

そして、2年の本内先輩…成香さんとステディな仲だ。

成香さんは、奇抜なものが苦手な人だ。

というか、怖がっていると言っても良い。

「荒川軍団」

その名を聞けば震え上がるほど。

「NAGANO STYLE」

それを見るなり気絶するほど。

とどのつまり、彼女は至極真っ当なのだ。

悲しいほどに真っ当なのだ。

原村和、国広一、薄墨初美、そして高鴨穏乃。

成香さんにとって…この4人は、不倶戴天の敵である。

そんな彼女の苦手意識を克服すべく、俺は今回…ある目論見をする。


成香「あの…京太郎さん。これって……」

京太郎「ええ、由暉子ちゃんと同じ改造制服です」

成香「ど、どうして私の分があるんですか!」

京太郎「岩館先輩がね、折角なら5人ではやりんに対抗しようって言ってたんで」

成香「そんなの…私聞いてませんよ!」

京太郎「だってまだ、俺しか聞いてませんし」

成香「嫌ですよ私は…スリット付きのスカートなんて、着たくありません!」

京太郎「…俺の前でもダメなんですか?」

成香「え……」

京太郎「俺になら…どんなに怖くたって恥ずかしくたって、全部見せるってのは嘘ですか?」

成香「そ、それは嘘じゃありませんからっ!」

京太郎「なら…成香さんの恥ずかしい所、俺に全部見せて下さい。全部、目を逸らさず見ていますから」

成香「…やです」

京太郎「ん?」

成香「成香って呼んでくれなきゃ…嫌です」

京太郎「…分かったよ、成香」


成香「…口だけは一人前で、いざとなったらうろたえるんですから」

京太郎「…すみません」

成香「私と貴方は…初めてなんかじゃないというのに」

京太郎「えと…あんな風に振舞われるの、初めてだったから」

成香「怖がらせた罰ですよ」

京太郎「…ですね」

成香「ああいう服を着てみるのも、悪くはないかもしれませんね…ところで」

京太郎「はい?」

成香「あの改造制服、揺杏さんが拵えたんですよね?」

京太郎「そうですけど」

成香「私、彼女に採寸採ってもらってませんよ?」

京太郎「あっ」

成香「全く、人が寝ている間に…京太郎さん、貴方ってオオカミさんなんですね」



カン!

今回はここまでです
では

>>127 訂正

×:まこ「よっぽどショックだったんじゃな…暴君みたいに思われてたのが」
○:まこ「よっぽどショックだったんじゃな…暴君みたいに思われとったんが」

投下開始します


九州最強、そう謳われた我ら新道寺。

しかし勝利は手に出来なかった。

部長といられるのは、これが最後だったのに。

…もう少し。

もう少しだけ、私が強ければ。

あの人の隣に並び立てれば、結果は変わっていただろうか。

二人で頂を目指せていただろうか。あるいは、至っていただろうか。

――それはない。

終わった後のもしもを考える事に、意味は無い。

それに…この仮定自体が既に、私の弱さを物語っている。

二人での積み重ね。

それに依存しきっていたから、山の向こうへ行けなかった。

部長のいる所へ…辿りつけなかった。

それを見かねてあの人は、私を迎えにきてくれて。

私はただ、縋る事しか出来なくて。

それが、あの数え役満だった。

私達の限界…いや、私の限界だったんだ。

その先の道のりを、阻まれてしまったのだから。

だが、嘆いていても仕方ない。

もうじき部長とは、一緒にいられなくなる。

部長との繋がりなしに、私はエースであらねばならない。

あの積み重ねを、終わらせない為にも。

二人で追った夢を、今度こそ叶える為にも。


そんな風に意気込んでいると、煌が話を持ちかけてきた。

「後輩から、頼まれ事をされてるの」

「なんそい?」

「例の男子部員を一週間、面倒見て欲しいって」

彼女の言う後輩とは例の1年…原村と片岡の事だ。

清澄高校…突如表舞台に表れ、目まぐるしい成績を修めた化け物達。

少なくとも、チームの総合力はあの龍門渕を上回る。

そんな化け物たちを育てたのが、部長の竹井と男子マネの須賀。

確かめてみようと思った。

清澄にあって、私達になかったものを。


須賀京太郎。

結論から言うと、彼は私の望む答えを持っていなかった。

雑用は人並み以上にこなすし、覚えも悪くない。

麻雀は初心者だったが、それもすぐに克服出来た。

だが、それだけだ。

須賀の奴には、特別秀でたものがない。

打ち手としてはあまりに平凡。

清澄にいる者として見なくても、全く見るべきものがないのだ。

だからというか、須賀には失望させられたのだ。私が勝手に期待しておいて、だが。

あえて気になる点を挙げるとすれば…それはコイツが、心底楽しそうに麻雀を打っている所だろうか。

楽しそう、か。

ああも暢気に麻雀を打てるのは、ある種の才能かもしれない。

あんな風に打てたら。

ただひたすらに楽しんで打てたら、どんなに幸せだったろうかと考える私に、

「えっと、鶴田さんも一緒に打ちましょうよ!」

そう須賀は声を掛けた。何の屈託も無い、満面の笑みで。

恐らくは、やっとまともな勝負が出来るようになったからかもしれないが。


コイツの顔を見て、私は何だか懐かしくなった。

きっと思い出したのだ。かつて、部長が私にそうしてくれた事を。

だが、須賀はあの人じゃない。

あの人のように、決して強くはない。

けれど…私よりずっと麻雀を楽しんでるように思える。

ラスを引いても…焼き鳥でも…俯いちゃいない。

どうしてなのかと尋ねれば、

「こういうのには慣れてますから」

そうあっさり答えた。

考えてみれば当たり前だ。清澄はここ数ヶ月で成長したそうだが、それ以前でも弱くはなかったはずだ。

ならば、最近まで初心者だった須賀じゃそうそう勝てなかったはず。

その上インハイ前は雑用ばかりで。

何故、あの麻雀部にい続けようと思えるのか?

そう訊こうとして、しかし野暮だと悟った。

あの顔が、何よりの証じゃないか。

麻雀が好きなんだって、物語っているじゃないか。

…そんな須賀に、私は興味が湧いた。

そして強くしてやりたいと思った。コイツの事を。



最後のインハイが、終わった。

もう、姫子達とは一緒にいられない。

それは凄く寂しい事だが、二人の絆は終わらない。

私と彼女の積み重ねは、必ず新道寺の糧となる。

きっと姫子達が、私の願いを継いでくれる。

私はそう確信していた。

二人の繋がりは…未だ断ち切られはしないのだと、そう信じていた。

だが、可愛い後輩が心配なのもまた事実。

未練がましくはあるが、私は皆の様子を見に行った。


「もう…そがん事言いよったっちゃ、なんもならんたい」

「だって鶴田さん…あの時この牌切らなきゃ、今頃倍満和了ってトップだったんすよ?」

「しゃあしい事言わんで、またがんばりーよ…な?」

「は、はい!」


どういう事だ…これは。

姫子の隣に、知らない男が立っている。

そう言えば、花田の奴が清澄のマネージャーを寄越させたとか何とか。

あの男がそうなのだろう。

見た所、麻雀についてはまだ初心者を卒業したばかりのようだ。

やはり指導を務めたのは、部長の竹井という事か。

…それにしても、近い。近すぎる。

確かにウチは女子校だし、物珍しいというのは分かる。

だから周りも、ただ遠巻きに二人を見つめているのだから。

かといって、ああも密着する必要はないだろうに。

好意故か?

いや、確か彼が来たのはほんの3日前だと聞いている。

絶対ありえないとは言わないまでも、ありえるとは言い難い。

見てくれはまあ、悪くないかもしれないが。


須賀京太郎は、犬みたいな奴だった。

それもハチ公…忠犬のような男だった。

頼めば何でも聞く訳じゃないが、大体の事はやってくれる。

女だと、もろもろの理由で力仕事を避けがちになる事もあるが、アイツにはそれがない。

男だからかどうかはともかく、そういう面でも助けられた。

須賀から聞いた話じゃ、竹井の奴は雀卓やデスクトップPCまで運ばせてたそうだ。

奴隷気質なのかもしれない。

私が言えた義理じゃないが、何だか心配になった。

竹井はもう引退だろうが、他の面子がコイツをどう扱うだろうか。

そう考えると、何だか放っておけない男だ。

姫子の事にしてもそうだが…どうも私は、誰かを導く事が好きらしい。

…出来る限り、面倒を見てあげなくては。


どういう訳か、俺は女子校へ行く事になった。

それも新道寺女子。

和達と花田煌さんがあーだこーだして、部長と学校がそれを承認したのである。

まるで意味が分からない。

ただまあ、俺が未だに初心者なのも問題といえば問題な訳で。

今回の事は多分、それを見かねての措置なのだろう。

世間じゃ俺は、清澄躍進に貢献した名マネージャーという事になっている。

個人戦での事は、半ばなかった事にされているらしい。

…何でこうなったんだっけ?

いやまあ、俺が咲を部活に連れてきたからだけど。





当然といえば当然だが、新道寺はウチより遥かに環境が良かった。

悲しいかな、部員の数が違うのだ。

雑用ばかりにならない仕組みも整ってるし、指導要領もある。

麻雀を打ちたければ…強くなりたければ、ここは理想の環境だろう。

けど、俺には正直勿体無い。

麻雀は好きだけど、部長達のような目的意識が希薄なのだ。

それもそのはず、俺は初心者だから。

初心者である事は…俺自身への言い訳であり、後ろめたさだった。

個人戦。

団体戦の後で無様を晒した事を、俺は忘れていない。

許されるはずもない。

…あの時俺は初めて、麻雀なんて楽しくないって思っちまったから。

そうならないよう、精一杯頑張ろう。

少しでも上手くなって、皆とまともに勝負が出来るように。







須賀が長野に帰る時が、日に日に近づいていく。

どうしてだろう…私がそれがもどかしい。

コイツは単なるスケベな奴だ。

誰が言ったか、部長から人妻の雰囲気を感じるという言葉に、

「人妻、かあ…後は胸があれば完璧だな」

とか細い声で呟いていた。とてもやらしい顔をして。

私が隣に居たというのに…清澄は、とんだ助平犬を飼っているんだな。

なまじ身の程は弁えているから、余計にタチが悪いのだ。

須賀を嫌らしく思えないのは、どうしてだろうか。

まず、コイツは分かりやすい奴なのだ。

言動は兎も角、感情が表に出やすくあまり隠し事は出来ない。

おまけにヘタレだからか、妙な真似はしていない。

やらしい顔をしているだけで、まあ無害なのだ。

中にはそんな須賀の事を「むぞらしか」などと言う変わり者もいる。

だからああして、女ばかりの所にいられるのだろうか?

分からない。

どうしてこんなに気にかけるのか、分からない。


「…う、ここは?」

「鶴田さん…疲れて寝ちゃってたんですよ。皆はもう帰りましたよ」

「なしてアンタだけここに?」

「そんなの…俺が送っていくからに決まってますよ、お姫様?」

「な、なんばいいよんアンタはっ!?」

こいつはちょっとキザったらしいだけで、

「鶴田さんのお陰で俺、強くなれました!」

そんな事を公衆の門前でのたまえる奴で、

「いつか、貴女の所へ近づけるように頑張ります!」

言う事が一々大袈裟で…けどその眼差しに嘘は無くて、

「だから…きっとまた来ます。今度は挑戦者として、ここに来ます」

「俺は貴女に憧れていて…そして勝ちたいって思ってますから」

その熱意はどこから来るのか。

仲間達から置いてきぼりを食らって、どうしてそう思えるのか。

何の隔たりもないというのか。

宮永咲を間近にしていて、何故その恐ろしさに怯えないのか。

あのプラマイゼロを、間近で見ていた者だろうに…どうして。

コイツ…須賀京太郎は分からない事だらけだけど、

「そげん言われて私、うれしかよ」

それよりもまず、そんな風に言ってもらえた事が嬉しかった。

…ただ、私は『アレ』ほどに焦がれてはもらえなかったが。


「…白水さん、俺って何で勝てないんでしょう?」

「弱かけん。そげな事をぬかさずまずは練習しんしゃい」

「は、はい!」

須賀は他校の生徒だし、贔屓は出来ない。

他の部員の手前もあるから。

なのに姫子ときたら、いつの間にか須賀の世話ばかりしている。

おまけに周りはそれを止めようとしない。

友清や煌に理由を聞いたが、

「あげな風に誰かの世話をなす姫子、初めて見たんやけん」

「姫子は部長に付きっ切りでしたからね。尤も、対象が変わっただけかもしれませんが」

という事らしい。

まあ姫子には、次期部長として指導をするのに慣れてもらった方が良い。

だから、初心者の面倒を見てやる事は悪くなかったのだが…どうも気がかりだった。

ひょっとしたら、嫉妬だったのかもしれない。


須賀が帰る前日、雀卓の前で佇むアイツを見かけた。

朝練前の事だ。

どうやら牌の手入れをしていたらしく、それを終えた後のようだった。


「…白水さん。おはようございます」

「こげな朝からなんばしよっと?」

「もうすぐコイツらともお別れなんで、手入れをしていたんです」

「なして?」

「コイツらがいなきゃ、俺はきっと…ここには来れなかったですから」


麻雀牌。

私達とて、決して粗末に扱っている訳ではない。

けれど…須賀ほどに思い入れをもって扱う事も、時間もない。

それよりもまず、強い雀士になろうとするものだ。

だがコイツは違う。

雑用故に麻雀から遠ざかっていたせいなのか。

或いは他に理由があるのか。

何れにせよ…私よりも須賀の方が麻雀を愛しているのかもしれないと、そう思った。







「うわー…また負けちまったかー」

いけずな牌は、コイツの愛に応えない。

「げっ!また同じ捨牌が……」

牌はよく、須賀にばかり意地悪をする。

「白水さん…それ、ロンです!」

時々和了るコイツの顔は、とっても嬉しそうで、

「ふふん…ツモ、満貫です!」

たとえラス確定だとしても、自慢げに振舞っている。

その目はいつも輝いている。

牌の事を見つめている。

「やっぱり白水さんって強いですよね」

時たま須賀は、憧れの眼差しを私や姫子達に向けるけれど、

「けど、まだ諦めませんよ。俺も牌に愛されたいんですから!」

コイツが今焦がれているのは、麻雀…そして牌なのだ。

私でも、姫子でもないんだ。


「ぶちょー…」

「なんそい?」

「結局アイツは、牌にぞっこんでしたね」

やはり姫子も気付いていた。

「そうやろな」

なら、思いは一つ。

「須賀の奴に、こちらを振り向かせてやりましょう!」

「ああ!」

牌よりも…私達に焦がれさせてやろう。

あの熱い眼差しを、こちらに向けさせてやろう。

必ず。

そう、必ずだ。

                                 了

うーむ…今回はここまでです
では

投下します
今回はハギヨシさんメインで、超短いです


智美「ワハハ…タイヤがパンクしてしまったぞ」ショボン

「お困りのようですね」

智美「え?」

ハギヨシ「私、龍門渕で執事をしております萩原と申します」

ハギヨシ「見た所、車のタイヤがパンクしておられるようで…予備のタイヤは?」

智美「それが…今は持ち合わせてなくて」

ハギヨシ「さようでございますか。では、私が買いに行って来ます」

智美「買いにって…ここからカー用品店までは片道10キロあるんですよ?」

ハギヨシ「ご心配なく。私、執事ですから」

シュタッ!

智美(ワハハ。トリック無しに目の前で消える人とか、初めて見たぞ)

シュタッ!

ハギヨシ「ただいま戻りました」

智美「!?」ギョッ

ハギヨシ「よろしければ、タイヤの交換もいたしますよ?」

智美「え、えっと…よろしくお願いします」

シュバババッ

ハギヨシ「終わりました」

智美「」

ハギヨシ「タイヤの状態がかなり悪くなっておりましたね…どうかお気をつけ下さい」

ハギヨシ「乱暴な運転は、貴女や周りの方をも犠牲にしてしまうのですから」

智美「は、はい!」

ハギヨシ「それでは、失礼いたします」

シュタッ!

智美「……」

智美(まるで嵐のように去っていったぞ)

智美(それにすっごくカッコよかったし。うう…また会ってみたいぞ)


佳織「智美ちゃん」

智美「んーどしたよ佳織」

佳織「運転、凄く丁寧になったよね。以前の荒っぽさが嘘みたいだよ」

智美「そうかなー…そうかもなー」

佳織「一体、何があったの?」

智美「この前タイヤがパンクしちゃってさ…幸い、事故にはならなかったけど」

佳織「そうなんだ…でもまあ、これなら皆を乗せても大丈夫だよね」

智美「だなー」

佳織「あ…でも智美ちゃんって、タイヤの交換できたっけ?」

智美「今はまだ無理だな」

佳織「なのにどうやってタイヤを交換出来たの?」

智美「龍門渕の執事さんに、助けてもらったんだー」

佳織「執事さんって…合宿の時に、龍門渕さんがそんな事を話してたかも」

智美「かもなー。あそこには来てなかったみたいだけど」

佳織「で、どんな人だったの?」

智美「すっごくカッコよかったぞー。機会があれば、もう一度会ってみたいな」

佳織「…ねえ智美ちゃん。自分が今、どんな顔してるか分かる?」

智美「んーどうかな。多分だけど、今佳織が考えている通りだと思うぞ」

佳織「…うん。今の智美ちゃんって、恋する乙女の顔してる」

智美「…ワハハ」



カン!

今回はここまでです
では

投下します
くたびれたので1レスです…明日から頑張る

京ちゃんは、私に対して遠慮しない。

だから、私も彼に遠慮しない。

京ちゃんにはよく小馬鹿にされる。

それで私が怒る。

レディースランチの為だけに、手間を掛けさせられる。

私はしぶしぶ頼みに応じる。

優希ちゃんの発言を元に、和ちゃんでよからぬ妄想をする。

ぶすっとしちゃう。

何にも知らずに、私に麻雀を打たせる。

正直…かなり面倒だったかな。



…恋だか何だか分からないけど、私はヤキモキさせられている。

でも、貴方は気付いてくれない。

ずっと、側にいたいのに。

一緒でなきゃ、嫌なのに。

貴方はいつも、誰かを見てるの。

私の事は、見てくれないの。

けれど貴方は、私の事を見つけてくれる。

いつだって、どこに居たって、何度でも。

自分がどこに居て、どこに居るべきか、行くべきか。

私には、それが何にも分からない。

だから、私は貴方に手を引いてもらうの。

私の未来は、貴方が選ぶ。

それでいい。

ううん…そうじゃなきゃ、ダメ。

私が何かを受け入れるのは、きっと貴方の為だから。

麻雀も。

家族の事も。

そして、和ちゃん達の事も。

みんなみんな…私一人じゃ拒んでた。

好きとか嫌いとか、決してそんなのじゃない。

私はホント弱いから…何にも出来ないダメな子だから。

「…咲にも取り得があったんだな」

貴方からそう言われたのが、この上もなく嬉しかった。

他の誰かに褒められるより、ずっとずっと嬉しかった。

だから…私頑張る。

貴方が選んでくれた未来、きっと良くしてみせるから。

その為なら、何だって出来る。

何だって。

そう…全ては京ちゃん、貴方の為に。

今回はここまでです
数日ほど、ヤンデレ話が続くと思います

では

投下開始します
途中からは書き溜めじゃなくなります


なぜ、伝わらないのか。

どうして、伝わらないのか。

どうしたら、伝わるのか。

どうしても、伝わらないのか。

どうしていいのか、分からない。

私は京太郎が好きだ。

だが、向こうはそうだろうか。

こちらの我儘に応えてくれる辺り、きっと嫌ってはいないだろうけど。

…そう思いたい。


私…片岡優希は、見かけ通り幼いとよく言われる。

悲しいが事実だ。

背は低い。

胸もない。

騒がしい。

色気より食い気だから、お洒落よりもタコスを優先する。

だからまあ、女らしくないとはよく言われたものだ。

癪だった。

しかし、自分のなりでそんな事を気にしても仕方が無い。

そういう意識が確かにあった。

私のそばには、いつものどちゃんがいたから。

のどちゃんは誰からも好かれていたし、当然私も好きだった。

ただ、側にいて辛くもあった。

のどちゃんの容姿と性格、それに…女らしさ。

全て私に無いもので、私が欲しいと思うもの。

近くて…けれど遠い夢。

恋して貰う乙女という、憧れ。


…あの子に近い私が、ラブレターを渡すように頼まれる事は少なくなかった。

男の子からも…時々女の子からも。

もどかしかった。

どうして私に渡すのか。

そうする理由はあったのか。

私に対するあてつけなのか。

私に…のどちゃんを見習えと、そう言いたいのか。

そう思うとムカついた。

手紙なんて、破り捨ててやりたいとさえ思った。

けど出来なかった。

思う所はあるけど、当事者でもない私が恋を終わらせる事はしたくなかったから。

当て馬のように扱われても、それだけは。

決して、のどちゃんを傷付けようとしたからではない。

奴らの煩わしさと浅はかさで、苦しめば良いだなんて思っていない。

ウザかったんだ。

こんな思いをさせられて、兎に角ウザかったんだ。

「優希…ごめんね」

あいつらも、友達の謝罪も、そして私自身の醜さも…全部全部、ウザかった。


高校に入ってからは、そういう奴らも少なくなった。

でものどちゃんは、相変わらず好かれっぱなし。

ただ、羨ましいとは思えなくなった。

あの子は内向的だ。

それは彼女が根暗とかじゃなく、失う事が怖いから。

何度か転校しているとは聞いた。

そして、父親に逆らって今ここに居るとも聞いた。

「誰と親しくなっても、離れ離れにされちゃったんです」

寂しそうにそう言う彼女を、奴らは知らない。

知ってるはずなんかない。

そんな事も知らずに…好き勝手にのどちゃんを語る。

「頑なな彼女のハートを、俺が攻略してやるぜ!」

反吐が出る。

せめて言葉を交わしてから言え、そんな事は。

「ならせめて、多少は話せる仲にならなきゃな」

「そっ、そんなの恐れ多いし……」

おお。男子のバカグループにも、少しはマシな奴がいるらしいな。

「初対面の人間に告られても、向こうが困るだけだろ」

「ぐっ…そういうお前はどうなんだよ」

「聞いて驚くなよ。昔それで失敗したんだよ、俺が」

訂正。やっぱりアイツもダメだった。

「お前さあー…それでよくも偉そうに」

「だよな…でも、お前にゃそうなって欲しくないから」

「須賀…お前、イイ奴だな!」

「いやいや…俺もお前のライバルなんだぜ、うん」

まあ、アイツはアイツなりに考えているみたいだな。

…須賀って言うのか。

ひょっとしたら、長い付き合いになるかもしれない。

そんな気がした。


そしてその予感は当たった。

私とのどちゃんは麻雀部に入って…それを追うように、アイツもまた入ってきたのだ。

その人気故、彼女に近づく事をしり込みした奴は少なくない。

抜け駆けだの何だの、あらぬ疑いを掛けられる。

そういう奴もいたらしい。

それを知ってか知らずか、アイツは…京太郎はやって来た。

和の為に。

その時ちょっとだけ、のどちゃんが羨ましくなった。



京太郎は…のどちゃんばかり見てる。

おっぱいも見てる。

かと思えば、牌も見ている。

それはもうまじまじと。

ひょっとしたら、のどちゃんを見るよりも。

だらしない顔もするけれど、ああ言う顔も出来るのか。

…少し、カッコいいかも。

そう思った私は、存外面食いなのかもしれない。


ある日、私は京太郎に尋ねた。

「なあなあ犬」

「おれは犬って名前じゃねえぞ、優希…京太郎と呼びなさい、京太郎と」

「じゃあ京太郎、のどちゃんの事…聞いてみたいか?」

折角だし助け舟を出してやろうと、そう思って。

けど、

「い・ら・ねー」

私のお節介は、そんな風に一蹴されてしまったのだ。

少しムッとさせられた。

「京太郎…お前、のどちゃんの事が好きじゃないのか!」

私は思わず声を荒げた。

「ちげーよ。そうじゃないんだ…そうじゃ」

そういうコイツの顔は少し悲しそうで、

「あー…いや、私は別に凹ますつもりじゃないんだじょ?」

だから励まそうとした。でも、

「まあ、凹まされても…仕方がないのかもしれないけどな、俺は」

意味深に京太郎はそう呟いた。

そしてお互い、その先の事は話そうとしなかった。


京太郎は、結構遠慮せずにものを言ってきた。

ちんちくりんとも。

ガキっぽいとも。

ムカッとした。

でも、私を私として見てくれる。

のどちゃんのオプションとして、私を見ない。

ただ一人の人間として、見てくれるんだ。

「原村和の~」

そんな風には決して言わない。

それがどんなにありがたかったか。

それがどんなに待ち焦がれたものだったか。

別に知られなくてもいい。

ただ、それをアイツが与えてくれた事実があればいい。


京太郎は人当たりが良くて、案外優しい。

「京太郎!タコスを買ってこい!」

いきなりの無茶振りに、声を荒げない程度には。

「遅くなってすまん」

元は私が悪いのに、そんな風に言ってくれる。

でも私は素直じゃないから…ありがとうって言えなくて、

「お前は使える犬だ!偉いぞ京太郎!!」

なんて言ってしまって。でも、

「タコスぢから、充電完了だじぇ!」

「うむっ」

コイツとなら、こんな風に振舞っても大丈夫なのだ。

何の気兼ねも無く、ありのままでいられる。

無論、誰かの前でもそう振舞ってはいたんだ。

けど…ここまでしっくりこなかった。

だから心地良かった。


何時から好きになったかは知らない。

だけどアピールはしてた。

結果的に押し倒されて、

「い……今はダメっ」

なんてらしくない事も言ったし、

「パンチラ!ほれ!」

とか言って、メイドスカートをたくし上げたりもした。

結果はあのザマだったけど。

それと、アイツに弱々しいとこ見せたくないから、

「ただいま戻りました」

部長に寄りかかってたのを、急にやめたりなんかもしてた。

向こうにとっては、何でもない事かもしれない。

それでも気にした。

気にせずには居られなかった。


なかなかどうして、上手くいかない。

勝てない。

私は凄いんだぞって、アイツに言ってやりたいのに。

…私を躓かせた、南浦さん。

部長。

咲ちゃん。

そしてのどちゃん。

後、あのおねーさん。

東場だけなら。

東場だけなら、私が一位だったのに。

…褒められたって、嬉しくない。

振り向いて貰えなきゃ、意味が無いんだ。

のどちゃんより上にならないと。

もう、麻雀でなきゃ…この想いに望みは無いから。


チャンピオンに、勝てた!

あの宮永照に勝てたぞ!

勝ったんだ!

私は、ヒトを超えた者になれたじょ!

楽しかったじぇ!

上手くいかない事ばかりで、もどかしいばかりだったのに!

決して、彼女のように常勝なんかじゃなかったのに!

どうしてだ?

何だか、大切な事を忘れちゃった気がするじょ?

えーとえーっと…対局中に音が聞こえてきたような……。

ギギギーって。

あれ、何だったのかな?

…私は、何を見られたの?

―――そして、何を奪われた?


そう言えば、何で麻雀打ってたんだっけ?

分からないじょ。

何だか知らないけど、すっごくムカつく。

ムシャクシャする。

対局中も、終始そんな感じだった。

もしかして、ずっとこのまま?

ヤダよ。

こんなに胸が苦しくなるの、私ヤダよ。

ねえ、京太郎。

「ゆ、優希……?」

お前なら分かるよね?

分かってなきゃ…ダメだよね?

「お前…一体どうしちまったんだ?」

だってお前のせいだもん。

私が、こんなに苦しいのは京太郎のせい。

みんなみんな、京太郎のせいなの。

それだけは、覚えてる。

他には何も無い。

どうしてお前に執着するかも、どんな風に触れ合ってたか。

今となっては…もう、何も分からなくて。

                                       了

…やっぱりヤンデレって適正がいりますよね。

今回はここまでです。
では。

お題募集→>>195->>197
内容は別にヤンデレでなくても問題ありません

妹の彼氏をつまみ食いしたくなる照

京太郎とハギヨシと透華で

あたごけ!

京太郎にかおりんのラッキーが感染

投下開始します


私は孤独だった。

社交的でなかったから。

私は孤独だった。

誰とも分かり合おうとしなかったから。

私は孤独だった。

麻雀が、強かったから。

私は孤独だった。

一度だって、麻雀で負けた事なんかなかったから。

虚しかった。

麻雀が好きだったからこそ、尚更。

当然、強い人とも沢山打った。

嫌になるくらい…うんざりするくらい。

いつか誰かが、私を負かしてくれる。

そう信じて。

それだけを信じて、何度も何度も麻雀を打ってきた。


―――けれど、誰も私には勝てなかった。

日本だろうとどこだろうと、結果は変わらず。

…世界って、こんなに狭かったんだ。

そんな風に思っちゃったら、勝つ気力がなくなっちゃった。

だから負けた。負けてやった。

それに気付いた世界1位の顔といったらなかった。

「何のつもりだ」

「お前は本当に、麻雀が好きなのか」

「どうしてこんな所まで来て、麻雀を打っているんだ」

うるさい。

アンタに何が分かるの。

全力で…真剣に打って、誰が私に勝てたというのだ。

誰も勝てなかったじゃない。

勝ってくれなかったじゃない。

アンタだってそうだった。

私が振り込んでやらなきゃ、金メダルなんか獲れなかったのに。


リオデジャネイロから帰った私は、第一線から退いた。

何も言わずに。

だから周りが好き勝手に騒いだ。

「無敗伝説の終わり」だの「世界1位から逃げ出した」だのと。

ホントくだらない。

世界1位も、お前達も。

私はこんなにも、麻雀が好きなのに。

牌だって、私の事を愛してくれているのに。

麻雀を楽しむ事だけは、どうしたって出来ないの。

それでも。

それでも、麻雀を止めるなんて真似は出来なかった。

私の取り得なんて、それ位しかなかったから。

けど…地元のクラブチームはあんまり強くないから、私一人が頑張ったって中々勝てない。

飽きる程出ていたタイトル戦も、今は彼方。

相変わらず麻雀は楽しくなかったが、以前よりはマシだった。

無駄にトロフィーが増えるだけの、あの日々よりは。


燻るだけの毎日が続く。

けど、こーこちゃんと出会えたし…楽しかったあの頃も思い出せた。

インターハイ。

多分…あの頃が一番勝ちにくかった気がする。

あの頃が、一番ムキになって麻雀を打ってた気がする。

跳直させてきた人…赤土さんを打ちのめしちゃうまでは。

ああそっか。

私あの時、初めて負けたくないって思ったんだ。

負ける気なんかなかったけれど、勝ちが当然だったから。

その当然が揺らいだ時、きっと私は怖がってた。

恐怖は苛立ちになって…それを全部、あの人にぶつけちゃって。

そして私は強くなった。

誰も敵わないくらいに、強くなってしまった。

…もう一つ、思い出した。

勝ち負け以前に、まず麻雀を楽しんでいた自分の事を。

勝ってばかりでうんざりなのは事実だった。

でも…楽しかったから、皆と一緒に楽しめたから、私はそれで良かった。

それだけで、良かったのに。

どうして、私はこうなっちゃったんだろう。


赤土さんと再会して。

あの準決勝の4人で、もう一度卓を囲って。

それでも私は前を向けない。

ためらいがある。

赤土さんは乗り越えた。

教え子達と共に、あの準決勝を乗り越えた。

でも私には出来ない。

あのリオデジャネイロを、忘れる事は出来ない。

世界1位。

あの裸の王様は、今もなお頂に居る。

相変わらずだ。

私に勝たせて貰った時と、何にも変わらない。

きっとアイツも過去に囚われてるんだろう。

そう考えると、何だか悪い事をしちゃったかなって思う。


ある日私は週に2度、麻雀教室を開く事になった。

チームの不振、それによるイメージ低下を払拭する為らしい。

それで私に白羽の矢が立ったのだ。

…迷惑だなあ。

まあ、何もせずに実家でだらけているよりはマシだ。

それに、あの赤土さんも同じ事をしていたと聞く。

やれるだけやってみるか。

何もしない後悔より、何かをしての後悔だ。







そして私は彼に、須賀京太郎に出会った。






…弱かった。

あの清澄に居るのが信じられないほど、彼は弱かった。

あの5人は、彼に一体何を教えていたのだろう。

そう思って聞いてみると、

「咲が来てからは、ろくすっぽ打ててません」

…は?

いやまあ確かに、あの5人が揃ったのは5月の事だ。

県大会を目指すなら、彼に構っていられない。

むしろ遅過ぎる。

部長の竹井さんの心境は窺い知れないが、宮永さんが来てから変わりはしたのだろう。

ひょっとしたら…公式戦に出る事さえ、考えてなかったかもしれない。

…それから何があったか知らないけど、彼がここに来る必要は本来無かった。

わざわざ長野から、ここまで来なくてよかっただろうに。

不憫な子だ。

私が言うのも何だが、つい同情したくなった。


京太郎君は、ホント甲斐甲斐しい子だった。

教室はいつも週末に開いていたが、開始は朝9時。

それでも彼は、誰よりも早くここに来た。

誰よりも一生懸命、麻雀を打っていた。

だから当然巧くはなれた。

けど勝てなかった。

どういう訳か、誰よりも多く負けていた。

悔しがってた。

なのに次の対局になると、必ず笑顔になるのだ。

楽しそうだった。

そんな彼に釣られて周りも笑った。私も笑った。

麻雀教室は、常に笑顔で溢れていた。


教室を始めて半年が過ぎた。

この頃になると、京太郎君もそこそこ勝てるようになってきた。

ただ、ワースト率は相変わらず1位だったが。

…そんな彼がある日、私の元を訪ねてきた。

「どうしても…勝ちたいんです」

いつもからは想像も付かない、沈痛な面持ちで。



「どうしたの?」

小さな子をあやすように、私は尋ねる。

「俺…弱っちいですから、新入部員の皆からコテンパンにされちゃって」

「新入部員の子達って、そんなに強いの?」

「前部長や学校の方が張り切っちゃって…強豪ばかりを」

まあ、有り得ない話ではない。けど、

「貴方はまだ経験が足りてないから、仕方ないと思うよ」

私にしては甘い言い方だが、こう言わざるを得なかった。

「…嫌だ」

「え?」

「もう、雑用ばっかりなんて…嫌だ!」

まさかとは思っていた。

けど、インハイ後も雑用ばかりをしていただなんて。

――私は何も知らない。

知らないが、このままにしておく訳にもいかなかった。


男子インハイ個人戦。

その頂に彼は居た。

笑顔で…しかし目は虚ろで…そして、嬉しくなさそうだった。

こんな…こんなはずじゃなかったのに。

私は彼の笑顔が好きだったのに。

もっともっと、麻雀を楽しんでもらいたかった。

それだけなのに。

どうして。

どうしてなの。

私、頑張ったんだよ?

京太郎君が、あんな悲しい顔してるの…見たくなかったんだよ?

だから私、頑張ったんだよ?

一生懸命、頑張ったんだよ?

貴方の為に、頑張ったんだよ?


『須賀選手、今のお気持ちは?』

『…どうでもいい』

やめて。

『は?』

『跳直するのがやっととか、男子はやっぱりレベルが低いんですね』

そんな事、言わないで。

『ええと…須賀選手それは』

『ですから今度は女子とも打ってみたいですね…男を潰すの、もう飽きたんですよ』

…見えちゃう。

私の中のどす黒いもの、見えちゃうよ。

こんなの、やだよ。

あんな京太郎君、見たくないよ。

あんなのじゃない。

あんなの、もう彼じゃない…ただの化け物。


だから、壊そう。

私が、壊そう。

私が彼を、ああしてしまったんだから。

彼を壊したら、私も壊れよう。

麻雀に、お別れしよう。

そして終わりにしようよ。

ぜんぶ。

そう、ぜんぶ。

                                    了

今回はここまでです
では

>>195->>197
承りました。
今度は前より時間がかかりそうですが、どうかご容赦下さい。

投下開始します


好きだって言ってくれた。

彼は、私の事を好きだって言ってくれた。

彼女から…咲さんから貰えなかった言葉。

それを彼が、与えてくれた。

須賀京太郎が与えてくれた。

決して悪い人じゃない。

ただ、ほんのちょっといやらしい男の人。

…彼で良い。

私の心を満たすのは、彼で良い。

そう思ったから、私は彼の愛に応えた。

そのつもりだった。


「お前と打ってると、ホント楽しいよ!」

どんなに負けようが、いつも楽しそうに麻雀を打つ彼。

「これ…俺の手作りだけど、良かったら」

エトペンが一人じゃ寂しいからと、その相手を作ってくれた彼。

「俺、その姿の和も可愛いなって思うぜ」

マイノリティな私の私服をあっさり受け入れ、その仕立てまでしてくれる彼。

「和って、案外エッチなんだな…最後まで激しかったよ」

自分を棚に上げてまで、意地悪ばかり言ってくる彼。

「お前が彼女で、本当に良かったよ」

何の躊躇いも無く、あっさりそう言ってのける彼。

好きだった。

――いつ頃からか、私は彼が好きだった。

どうしようもなく好きだった。

私はもう、彼で良いとは思ってなかった。


高校最後の春…私は阿知賀に赴いていた。

穏乃達と会う為に。

須賀君には、この事を話していない。

勘繰られたくはなかったから。

嘘を吐いて、咲さんの所に行ったと思われたくはなかったから。

…彼女は既に過去の人だ。

私にとっても、彼にとっても。

それでも、忘れる事など出来はしなかったのだけど。

『「過去」というものは、人間の真の平和をがんじがらめにする』

そう言ったのは誰だったか。


私はまだ、失っていないのだろうか。

愛を。

須賀君へのものではなく…咲さんへの、愛を。

――ダメだ。

そんなのダメだ。

今更戻れはしないし、戻りたくもない。

私は彼を愛していたい。

須賀君の事を、愛していたいの。

行き先が阿知賀でなければ、二人で一緒に行きたかった。

そう思う程度には。

…そう思う程度には、愛している。

愛しているはず。

愛さなければ。

愛されなければ。

彼が私を愛してくれなきゃ、私は誰を愛せば良いの?



「玄さん、俺」

「良いんだよ京太郎君。私なら、貴方を愛してあげられるから」

「俺…頑張りましたよね?アイツと…和と愛し合いたくて、頑張りましたよね?」

「うん…君は頑張ったよ。きっとあの子は、君を見ていなかっただろうけど」

「やっぱりそうですよね。なら…今から貴女とするのは、仕方ないですよね?」

「いいよ。私が全部受け止めてあげる…京太郎君、貴方の全てを」

「…はい」


あれ?

私、一体何を見てるの?

どうして彼がここにいるの?

何故玄さんと面識があるの?

私、知らない。

何にも知らない。

ありえません。

こんなの、ありえません。

好きって言ったじゃないですか。

あれは嘘ですか?

嘘なんですか?

…そもそも、誰が嘘を?

彼が?

それとも私が?

この愛は全て嘘だった?

全てが紛い物だった?

分からない。

もう私には、何一つ分からない。

どうして。

どうしてこうなってしまったのか。

                                       了

>>190 訂正

×:どうしてお前に執着するかも、どんな風に触れ合ってたか。
○:どうしてお前に執着してたか、どんな風に触れ合ってたかも。

今回はここまでです
では

最初は妥協だとわかってたけど
いつかは本当に自分のこと好きになってくれるように頑張った
でも結局自分は咲を忘れるための代替え品でしかなく
彼女に芽生えたのは愛情まがいの咲を忘れようとする強迫観念でしかなった
それに気付いたからこそ玄に縋った…的な感じか?

>「どんな時でも、いつも楽しそうに麻雀を」みたいな文
ないない、ノーウェイノーウェイ
よくよく考えてみりゃ、阿知ポの時点でそりゃないよ…ボキャ貧かな?
頭が痛い

>>229
大体そんな感じです
昨日中に投下する為、色々はしょっちゃってますが

投下開始します
あ、ヤンデレ(?)書くのは前の分で一旦止めにします


京太郎「どうしたら、俺は愛して貰えるんでしょうか?」

ハギヨシ「どうしても、貴方は愛して貰えないでしょう」

京太郎「どうして、俺は愛して貰えないんですか?」

ハギヨシ「貴方の愛に、行き場がないからです」

京太郎「俺はアイツを愛しちゃいけないんですか?」

ハギヨシ「愛してはならないのではなく、愛せないのです」

京太郎「どうして?俺はこんなにアイツの事を想っているのに」

ハギヨシ「彼女が既に、誰かの愛で満たされているからです」

京太郎「なら、俺の愛は」

ハギヨシ「必要ないのですよ。貴方の愛も、貴方自身も」

京太郎「…俺はアイツに必要として貰えないんですか?」

ハギヨシ「ええ。貴方は不要な存在なのです」

京太郎「俺は居ても居なくても良いと?」

ハギヨシ「そうですね」

京太郎「…俺ってもう、どうでもいい存在なんですね」


ハギヨシ「そうですね…ですが一つ、誤りがあります」

京太郎「何でしょう?」

ハギヨシ「『もう』ではなく『始めから』そうだったのですよ」

京太郎「そうなんですか」

ハギヨシ「そうなのですよ」

京太郎「…俺はどこへ行けばいいんでしょう?」

ハギヨシ「どこへでも」

京太郎「このやるせなさを、誰にぶつければ良いんでしょう?」

ハギヨシ「誰にでも」

京太郎「俺は何をすればいいんでしょう?」

ハギヨシ「望みのままに」

京太郎「俺の望みって、何でしょう?」

ハギヨシ「それは…貴方が一番理解しておられるはず」

京太郎「本当に、良いんでしょうか?」

ハギヨシ「恐れてはいけません。恐れれば、結局何も成し遂げられない」


京太郎「…俺は誰かを愛そうとして良いんでしょうか?」

ハギヨシ「そうなさりたければ、そのように」

京太郎「俺は、誰かを愛せるんでしょうか?」

ハギヨシ「それは分かりかねます」

京太郎「ハギヨシさんにも、分からないんですか?」

ハギヨシ「ええ、分かりません」

京太郎「何故?」

ハギヨシ「愛する事を、忘れてしまったからですよ」

京太郎「やっぱりハギヨシさんにも、好きな人っていたんですか?」

ハギヨシ「…さあ?」

京太郎「もう、とぼけないでくださいよ」

ハギヨシ「とぼけてなんかいませんよ。私にも、恋焦がれた人はおりました」

ハギヨシ「ですが、恥ずかしい事に何も覚えていないのですよ」

京太郎「覚えていない?」

ハギヨシ「結論から申しますと、私の想いもまた行き場を失ってしまったんです」

京太郎「失恋したって事ですか?」

ハギヨシ「まあ、そういう事になります。あの人はもう、どこにもいませんから」

京太郎「どこにもいないって…どういう事なんですか」

ハギヨシ「いずれ分かりますよ。貴方と私が、同じ宿命の持ち主ならば」

京太郎「同じ…宿命?」

ハギヨシ「…願わくば、そうでない事を祈っています」


「あら…久しぶりじゃない、須賀君」

竹井久。俺は今もなお、部長と呼んでいる。

「この寒い中、立ち止まってばかりじゃ身体に悪いわよ?」

この人に出会えたから、俺は麻雀を始めた。

「折角会ったんだし、うちに来てあったまっていかない?」

この人のせいで、部活じゃ散々こき使われた。

「…懐かしいわね。あのインハイからもう一年だなんて、未だに信じられないもの」

けど、この人のお陰で麻雀の面白さを知った。

「また、あんな風に麻雀を打てると良いな」

麻雀部にいなければ、きっとインハイなんて単なる他人事だったろう。

「まこ、優希、和、咲…もちろん、貴方も一緒にね」

インハイという夢を、目の当たりにする事など決してなかった。


再会したその日を境に、俺は時々部長の元を訪ねた。

「相変わらず、麻雀弱いのね」

躊躇いも無くそう告げて、

「何か飲み物買ってきてくれない?」

昔のように俺をこき使おうとして、

「ごめんなさいね…相変わらず料理は下手なのよ」

インスタント食品に依存しまくりで、

「うーん…あ、須賀君おはよ」

家の中とは言え。シャツ一枚でだらしなくしてて、

「そう言えば私、鍵かけてなかったわね」

兎に角色んな意味で、こちらを心配にさせてしまう彼女。

そうして一緒の時間を過ごすうちに、俺は部長を…一人の女性として好きになっていた。

そして1年ほど経った頃、俺は彼女に告白した。


「本当に、私なんかが良いの?京太郎君」

そう言う部長は、いつもと違って小さく見えた。

「正直、恨まれても仕方が無いって思ってた」

今更になって…今だからこそか弱音を吐いて、

「…自分で言うのもなんだけど、私って面倒な女なのよ」

俯きながら自虐までして、

「今じゃ家族と縁を切ってて…天涯孤独の身なんだから」

あげく、どうしようもなく重い話を突きつけた。

その苦悩は、俺の立場じゃ推し量る事が出来なかったけど、

「だとしても、俺は貴方と一緒になりたい!」

それでも俺は部長と…久さんと一緒になりたくて、

「俺、何にも知らない馬鹿だけど…麻雀だって強くないけど」

ずっと彼女と愛し合っていたいから、

「部長が…久さんがよければ、これからもずっと一緒にいたい!」

そう言って俺は、久さんの事を抱きしめた。



「…ありがとう。私、とっても嬉しい」



そう言い終えた瞬間、部長は光となって消え去った。


ハギヨシ「お久しぶりですね、」

京太郎「どういう、事なんですか」

ハギヨシ「…竹井さんですか?」

京太郎「何だって言うんですか!どうして、どうして久さんが消えてなくなったんですか!」

京太郎「彼女の住んでたアパートは空き家になってて、誰も彼女を覚えてなくて」

京太郎「そして俺も、彼女の事を忘れつつあって…どうしてなんですか!?」

ハギヨシ「それは須賀君。貴方と彼女が、両思いになってしまったからですよ」

京太郎「…は?」

ハギヨシ「どういう訳かはさておいて…この世界において我々二人は、誰かと愛し合ってはならないようです」

ハギヨシ「きっとそれがこの世界における、我々のルールなのでしょう」

京太郎「何だよ、それ」

ハギヨシ「……」

京太郎「何なんだよ…何だってんだよ畜生!俺は誰かを愛しちゃいけないってのかよ!」

京太郎「俺の愛はどこにも行き場が無いって…そういうことなのかよ!」

ハギヨシ「…その通りです」

京太郎「何で、何で言ってくれなかったんですか!」

ハギヨシ「言えば貴方は、諦めてくれましたか?」

京太郎「…それは」

ハギヨシ「あまりにも荒唐無稽な話です。あの時貴方に話しても、信じられはしなかったでしょう」

ハギヨシ「どうしようも、なかったのですよ」

京太郎「…してやる」

ハギヨシ「須賀君?」

京太郎「壊してやる、壊してやるぞ!俺から愛を奪って言った世界を!全部、全部だ!」ゴッ

ハギヨシ(…フフ、ついに目覚めましたか。魔王の力に)

京太郎「があああああああああああああああっ!」

ハギヨシ(これでようやく復讐できますね…私から彼女を奪った、この世界に)

ハギヨシ(…健夜)



―――愛を失った二人の男。

世界への復讐劇は、ここに始まりの刻(とき)を迎えた―――――。














京太郎「咲から借りた本に、こんなものが挟まってたんですが」

ハギヨシ「…今すぐ返してきなさい」



カン!

>>240 訂正

×:そう言い終えた瞬間、部長は光となって消え去った。
○:そう言い終えた瞬間、久さんは…光となって消え去った。

ホントはね、部長との爛れた関係書くつもりだったんだよ…ホントだよ!
それでは、また。

>>241 訂正

×:京太郎「壊してやる、壊してやるぞ!俺から愛を奪って言った世界を!全部、全部だ!」ゴッ
○:京太郎「壊してやる、壊してやるぞ!俺から愛を奪った世界を!全部、全部だ!」ゴッ

>>241 訂正(2)

×:ハギヨシ「お久しぶりですね、」
○:ハギヨシ「お久しぶりですね」

投下開始します


京太郎「…暇ですね」

ハギヨシ「まったくもって」

京太郎「何でこんなに暇なんでしょう?」

ハギヨシ「お世話をさせていただく相手が、どこにもいないからですね」

京太郎「ああ、そっかぁ」

ハギヨシ「透華お嬢様、それに衣様は大丈夫でしょうか……」

京太郎「やっぱり心配ですか?」

ハギヨシ「当然です」

京太郎「まあ、俺もなんですけどね。咲と優希、ちゃんと買い物出来てるかなー」

ハギヨシ「また迷子にならなければいいのですが」


京太郎「…どうしてこんな事になったんでしたっけ?」

ハギヨシ「4人のポンコツ具合を治す為だとか、そんな感じでございましたね」

京太郎「天江さんは兎も角、龍門渕さんはポンコツなんでしょうか?」

ハギヨシ「間違いなくポンコツです」

京太郎「即答ですか。主人に対して容赦ないですね」

ハギヨシ「お嬢様は目立ちたいからという理由で、使いもしない高価なものを買うのですよ」

ハギヨシ「そしてそれを処分するのは全て私です。旦那様に叱られるのも私です…はぁ」

京太郎「た、大変なんですね」

ハギヨシ「それより須賀君。ついこの間、宮永さんが一家全員行方不明になったそうじゃないですか」

京太郎「ああ、そんな事もありましたね」

ハギヨシ「ひょっとして、一家全員ポンコツなのでしょうか?」

京太郎「ええ。何所に出しても恥ずかしいポンコツです」


ハギヨシ「…まさかとは思いますが、ポンコツぶりは乗算されるのですか?」

京太郎「そうらしいですね。両親もそう言ってましたし、間違いありません」

ハギヨシ「なんという…よく今まで新聞沙汰になりませんでしたね」

京太郎「4人が別れて暮らす前は、親父かお袋がその生活を管理していたんですよ」

ハギヨシ「親でもないのに?」

京太郎「はい」

ハギヨシ「…須賀君」

京太郎「何でしょう?」

ハギヨシ「貴方の家も、変といえば変ですよね」

京太郎「否定はしません」

ハギヨシ「ぶっちゃけた話、放っておいても良いと思うんですよ」

京太郎「…それはお互い様では?」

ハギヨシ「そうですね…そうでした」


京太郎「俺ばっかり話すのもなんですから、ハギヨシさんも何か話して下さいよ」

ハギヨシ「分かりました。それでは、つい先日清澄へ行った時の事でも」

京太郎「へ?ハギヨシさん達、うちの学校に来てましたっけ?」

ハギヨシ「…不法侵入です」ボソッ

京太郎「マジすか」

ハギヨシ「ええ、マジです」

京太郎「どうしてまたそんな真似を……」

ハギヨシ「透華お嬢様が、貴方の想い人に執心しているからですよ」

京太郎「…マジすか」

ハギヨシ「マジですよ」

京太郎「決勝戦の龍門渕さん、ただならぬ目つきで和の事を見てましたけど…まさかねぇ」

ハギヨシ「国広さんと杉乃さんが歯軋りしてましたけど、大丈夫なんですかね」

京太郎「…何もないと良いですね!」


ハギヨシ「まあ…私は執事でございますから、主人が何をしようと口を挟みはしませんが」

京太郎「ホントにそれで良いんですか?」

ハギヨシ「…旦那様と奥様に泣きつかれたんですよ。『どんなことがあっても、あの子を守ってくれ』と」

京太郎「あー…それは仕方ないかも」

ハギヨシ「そこまで言われて応えないのは、執事の沽券にかかわりますから」

京太郎「ですよね。なんか羨ましいかも」

ハギヨシ「ならば須賀君、貴方も執事になれば良いじゃないですか」

京太郎「…お断りします」

ハギヨシ「一応、理由を聞いてもいいですか?」

京太郎「人の面倒見るのは、今いる分で沢山だから」

ハギヨシ「…心中お察しします」

京太郎「俺、正直後悔してます。咲に麻雀打たせなければ…あの家族がバラバラのままならって…そう思っちゃうんですよ」

ハギヨシ「え、えーと…流石に誰かの不幸を願うのは、私感心出来ないかなーって」

京太郎「ワニやピラニアに食われかけたりとかしてもですか?」

ハギヨシ「……」ポカン

京太郎「そこで黙らないで下さいよっ!」


ハギヨシ「とりあえず、話題変えましょうか」

京太郎「ですね。それじゃあ、優希の話でもしましょう」

ハギヨシ「確か、須賀君と私が出会ったのは彼女がきっかけでしたね」

京太郎「朝っぱらからタコス屋探してたら…あの時はホント助かりました」

ハギヨシ「いえいえ。私の方こそ、自らの業を伝える事の出来る相手が見つかって、大いに助かったのですから」

京太郎「恐縮です」

ハギヨシ「…ただ、新たな懸念材料も生まれましたが」

京太郎「懸念材料?」

ハギヨシ「私達の関係を…その…所謂恋仲として扱う人がおりまして」

京太郎「えっと…BLってやつですか。咲から聞いた事があります」

ハギヨシ「私の嗜好は兎も角、BLと言うものを決して悪だとは思いません。ですが……」

京太郎「実在の人物をモデルにするのは、確かに問題ありますよね」

ハギヨシ「その通りです。かの三嶋行雄も、それが原因でトラブルを起こしたそうですね」

京太郎「…あの人って、結局どっちだったんでしょう?」

ハギヨシ「どちらかもしれませんし、どちらでもないかもしれません…いずれにしろ、真相は永遠に闇の中です」


京太郎「話を戻しますけど、優希って本気か冗談か分からない行動をとるんですよ」

ハギヨシ「ほう」

京太郎「やたらセックスアピールしてきますし…かと思えば、俺の事を犬扱いしてこき使いますしね」

ハギヨシ「…衣様と同じですね。流石に、こちらをこき使ったりなどはしませんが」

京太郎「羨ましい」

ハギヨシ「そうでもありませんよ。寝起きは弱いですし、突然どこかに行ってしまいますし」

京太郎「咲と優希を足して割った感じですか」

ハギヨシ「そこに幼さと、中二病なるものを足せば丁度いい塩梅です」

京太郎「…天江さん、何であんな風になったんですか?」

ハギヨシ「亡くなった…という事になっているご両親のせいですね」

京太郎「え…あの事故って随分なものでしたよね?メディアでも結構話題になってましたし」

ハギヨシ「旦那様と奥様が言うには、あまりにも危ないから引き離したらしいですね」

京太郎「仮に生きていたとして、なんでまた?」

ハギヨシ「『娘をズーパーアーリア人にするんだ!』って言ってたんですよ、あの人達」

京太郎「」

ハギヨシ「モノホンのキ○ガイで天才でしたから、下手をすれば衣様がどうなってたか分かりませんね」


京太郎「あー…そういや優希の奴も『私自身がタコスになる!』って言ってましたね」

京太郎「後、『タコ』と名の付くものなら何でも自分の力にするとか何とか」

ハギヨシ「まあ実際、ハノーヴァーの研究所でもそれが確かだという結果は出ましたけれども」

京太郎「学校の七不思議なんて調べてたらアイツ、イ『タコ』になって幽霊騒ぎを起こしましたよ。あ、これ動画です」

ハギヨシ「これは…真偽の程はともかく、完全に正気を失ってますね」

京太郎「優希の奴、その内ホントに人間じゃなくなりそうなんですが」

ハギヨシ「案外何とかなるんじゃないでしょうか。鹿児島の永水女子は、その手の問題に明るいと聞きますし」

京太郎「…宮永家のポンコツぶりも治せますかね?」

ハギヨシ「須賀君、時には諦めも肝心です」


京太郎「…あれから随分話しましたね」

ハギヨシ「そうですね」

京太郎「もう5時間は経ってますけど、未だに帰ってこないんですが」

ハギヨシ「もう、どうだっていいような気がします」ピキピキ

京太郎「ハ、ハギヨシさん……」

ハギヨシ「冗談ですよ、冗談」ニコッ

京太郎(殺気だけで、心臓止まりそうになったんだが)

 フレズニハイラレナインダ、ユリノセカイニ!

京太郎「あ、着信だ…えっ!?」

ハギヨシ「どうしました?」

京太郎「えっと…あの、そのですね…テレビ電話の映像に4人と、小泉元総理と…ちょび髭のおっさんが」

ハギヨシ「須賀君…このちょび髭って教科書で見たことありませんか?」

京太郎「アドルフ・ヒトラー、ですよね」

ハギヨシ「…なんでこんな事になってんでしょう?」

京太郎「さあ?」

ハギヨシ「それに…テレビやパソコンが、今見ているのと同じ映像をひとりでに映し出したんですけど」

京太郎「…さあ?」

ハギヨシ「で、透華お嬢…バカがヒトラーに宣戦布告をかましやがったんですが」

京太郎「ホントバカじゃねえの?」



カン!

おやすみなのです。


       /  / ::/ :::::::::::::::::::://:´ ̄::ヽ:::/ /::/   |:l |:::::::::::::::::|::::::.     i
.      /  / : ::::| :::::::::::::::/ /:::::::::> ´ /,: ′  |:l |:::::::::::::::::|::::::::.    l
     /  /...::::::::|::i:::::::::::/ァ===ミ、 ヽ /イ      .:j_|:::::::::::::::::|::::::::::.   │
.     ′.:: :::::::::::リ、:::::::;《 ん干ハ\        〃 j\:::::イ::/::::::::::::.   /|
.   / .::: ::::::::/  ∨ |  {:ト::::::ノ:'         ,ノ  /::::::ヾ }/}::::\ __/ .′
   ′::::  ::::::::{    ヽ{  ゝ:こソ        =ァ=/:::/  ソ/::::::/::\   /
  / :::::! :::::::::∧     。              ん干ハ㍉  /::::::/::::::  ヽ.′
 ′:::::::|...:::::::::::::∧__   :.:':.':.:           {:ト::::::ノ:′|} /:::/:::::::   //
/ . ::::::::i|..::::::::::::::::::::|::{              、     ゝ:こソ //彡::::::::  //
.....::::::::::i|.:::::::::::::::::::::|∧                     ヘ:/::::::  / ノ
...::::::::::::i|::::::::::::::::::::::l::::∧     「   、    :.:':.':.° ′ノ┬=ァ ´
:::::::::::::::i|::::::::::::::::::::::|:::::/ :.     ` -- ′       ,: イ: / /
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-=ニニニム::::::::::::::::::::{ニ\        /:::/::::i|:::::::::::::::::::. ,′/

だいぶ前から竜華メインで何か書いてみたいと思ってるんですけど、キャラソンとSSのイメージが拭えなくて困る
この子に限った話じゃないですけど

投下開始します


どもども、須賀京太郎です。

この度大学生になりまして、長野を巣立った今は関西に住んでます。

なんだかんだで出会いに恵まれ、三人の女性と懇意になりました。

みんなレベルが高いです。

何でお近づきになれたかは、未だ分からずじまいのまま。

自分には…勿体無いです。

ホントに勿体無いんです。

けど俺、その内の二人からは逃げ出しちゃいました。

…どうしてかって?

思いが重い、としか言いようがありません。


 ◆ケース1 阿知賀編


玄「貴方が和ちゃんの話していた雑用さんだね!」

京太郎「雑用さんって…和がそう言ってたんですか?」

玄「うん!」

京太郎(すっげーメゲるわ。麻雀だって頑張ったのに)

京太郎「雑用なら任せて下さい。俺、龍門渕のハギヨシさんから薫陶を受けてるんです」

玄「それは頼もしいね…私、期待してるよ!」

京太郎「そちらのご期待に沿えるよう、精一杯頑張ります。どうぞよろしくお願いします」

玄「こちらこそ!」



玄「京太郎君が来てから、仕事が早く終わって助かるよ!」

京太郎「恐縮です」

 玄さんは、俺の事を良く褒めてくれた。

玄「私とお姉ちゃんでよければ、麻雀教えてあげるよ?」

京太郎「いいんですか?」

玄「いいのいいの。貴方にはいつも助けられてるんだから」

 一生懸命、俺に麻雀を教えてくれた。

玄「京太郎君も好きなんだねえ…おっきなおもちが」

京太郎「ロマンですから!」

 一緒に夢を追い求めてくれた。

玄「私、貴方といると楽しいな」

京太郎「…嬉しいです」

 ようやく俺にも彼女が出来る…そう思った。

 けど。


京太郎「すみません。今日はそちらに帰れそうにありません」

玄「そうなんだ」

 そんな素振りは見せちゃいなかった。

京太郎「そういう訳ですから、お夕飯は結構です」

玄「うん、分かった」

 彼女はいつだって、明るい人だと思ってた。

京太郎「何かお土産でもいかがですか?」

玄「いらない。それよりも、どうか無事に帰ってきてね」

京太郎「ええ、勿論です」

玄「…私、待ってるからね」

 だから、あんな事になるとは想像してなかった。



京太郎「ただいま帰りました…っ!?」

玄「ああ、お帰り京太郎君」

 彼女はずっと待っていた。

京太郎「俺、帰るの明日になるって伝えましたよね?」

玄「うん。だからずっと待ってたの」

京太郎「待ってたって…玄さん、いつ寝たんですか」

玄「寝てないよ。だって、京太郎君をずっと待ってたから」

 俺が帰ってくるまで、寝ないでずっと待っていた。

玄「あ…今朝食作るから」

京太郎「それよりもまずは寝て下さい!今日は非番だからって、無茶しすぎですよ!」

玄「無茶じゃないよ」

京太郎「何で!?」

玄「だって貴方の為だから…たとえ帰ってこなくても、私は待ってる」

 重過ぎた。

 それなりの期間懇意にはしていたが、これほどまでとは思わなかった。

 これで男女の仲にでもなれば、一体どうなってしまうのか。

 …想像するのもおぞましい。

 翌日、俺は吉野を後にした。


 ◆ケース2 千里山編


京太郎「本日より、こちらでバイトをさせて頂く須賀京太郎です!」

竜華「ふーん…君が清澄の雑用をやっとった男の子か」

京太郎「…俺ってそんなに有名なんですか?」

竜華「雀士としては三流かそれ以下やけど、雑用は超一流やって噂になっとるよ」

京太郎(そっかー…それで採用されちゃったのかー)

京太郎「そうなんですか…それじゃあ次は、雀士としても超一流に……」

竜華「無理やと思うよ」

京太郎「即否定!?」

竜華「けどまあ…折角この千里山女子に来たんやから、少しは面倒見たるよ?」

京太郎「い、いいんですか?」

竜華「もちろんや。仮にも私はここの部長をやっとったんやからな!」

京太郎「……」ウルッ

竜華「え、何で涙ぐんどるん?」

京太郎「だって…だって…部長からそんな風に言われるの、初めてでしたから」ブワッ

竜華「いや、元部長やし…マジ泣きされても困るんよ?」

竜華(…ホンマ不憫な子やなあ。しゃーない、私が何とかしたるわ!)



竜華「へえ、自動卓の修理まで出来るんか」

京太郎「それが自慢っちゃ自慢ですね」

竜華「ええやんええやん。業者呼ばずに済むんはホンマありがたいで」

京太郎「そう言ってくださると、俺も嬉しいです」

 ああ。部長達がこんな風に言ってくれれば、

竜華「はいこれ、ご褒美のラムネやでー」

京太郎「ありがとうございます!」

 こんな風に…時々でもいいから労ってくれたら、

竜華「京太郎も、随分と上手くなったもんやな」

京太郎「いえいえ…まだレート1900台ですよ」

竜華「ここに来た頃はギリギリ1500台やったし…せやけど今やったら、誰ともまともに打てるやろ?」

京太郎「ええ、まあ……」

 高校時代に、もっと麻雀楽しめたんだろうなあ。

竜華「なんやかんやでメゲずにいたんは偉いと思うでー…ようやったやん」ダキッ

京太郎「あ、あの…竜華さん、胸が…胸が……」ムニュムニュ

竜華「んー?」ギュッ

京太郎「」

 この頃はまだ、そんな風に考えていられたのだ。


京太郎「俺も合宿に参加するんですか?」

竜華「せやせや。皆もついて来て欲しい言うとったで」

京太郎「でも、俺がついていっても大丈夫なんでしょうか?」

竜華「心配せんでええよ。私達はアンタをハブったりせんからな」

京太郎「…どうぞよろしくお願いします!」

竜華「こちらこそよろしゅうなー」

 ハブられない…その一言でどんなに救われたか。

竜華「安らげる場所があるって、ええもんやろ?」

京太郎「…そうですね」

竜華「せやんな…なら、私が京太郎にとってのそれになったるわ」

 あのステータスでそう口にする竜華さんはヤバかった…けど。

竜華「京太郎…アンタは空に憧れた小さな羽。せやから私は飛べるように祈るんや」

竜華「そして私が、アンタの全てを抱きしめたる…私に出来る事を探して、出来る限り応えたる」

竜華「もう、誰にも傷つけさせたりせんからな。絶対私が守ったるからな」

 確かに俺は、昔不憫な目にあったけど…いくらなんでも過保護過ぎる。

 園城寺プロが千里山に来ないのも、ひょっとしたらひょっとするかも。

 …この人といたら、きっと共依存でダメになる。

 そう確信した俺は、翌日吹田を後にした。


そして現在、俺は兵庫に住んでます。

森垣友香。

帰国子女の彼女と出会い、楽しい日々を送ってます。



友香「いっし!私の勝ちだね、京太郎君!」

 明るい子です。

友香「負けたからって、そんなに拗ねないでよー」ダキッ

 スキンシップも激しいです。

友香「リーチでー」

 訛りのせいか、語尾を伸ばしがちになってます。

 けど重くないです。

 ただし、おもちは重いですけど。

 そんな彼女に、つい先日告白しちゃいました。

京太郎「俺が勝ったら、君は俺がもらう!」

友香「い、いいよー」///

 念願叶って、俺と彼女は結ばれました。

 嬉しかったです。

 関西に来て一年半…色々ありましたが、今後も幸せに生きていたい。







―――とうとう見つけたよ、京太郎君?

―――――今度は逃がさへんから、覚悟しいや?



カン?

>>234
嘘だろうと間違いだろうと、またまたやらかしてしまいました…すみません

今回はここまでです
では

投下開始します


 ◆須賀京太郎のポッキーゲーム 宮永照との場合


照「…京ちゃん、今日って何の日か知ってる?」カリカリ

京太郎「ポッキーの日ですよね」

照「だからね…ポッキーゲーム、しよう?」

京太郎「嫌です」

照「えっ」

京太郎「虫歯のある人とキスだなんて、俺は嫌です」

照「そ、そんなっ」

京太郎「キスして欲しいのなら、早く治療に行ってください」

照「…ドリル怖い」

京太郎「照さんだって、似たような事はしてるでしょ?」

照「それでも怖いものは怖い…歯医者なんか行きたくない」

京太郎「そうですか。照さんとポッキーゲーム、やりたかったのになー」

照「京ちゃんの、意地悪」

京太郎「だってしょうがないでしょ?俺たちのキスは、いつだって深いんですから」


 ◆須賀京太郎のポッキーゲーム 片岡優希との場合


ポキッ

優希「あっ……」

京太郎「おい優希、お前ホントにやる気があるのか?」

優希「あ、当たり前だじょ!」

京太郎「そう言われてもさー…もう20本はポッキー折ってるしな」

優希「ううっ」

京太郎「普段俺をからかうくせにさ、いざとなったら怖気づくのはどうかと思うぜ?」

優希「…犬の分際で、私を馬鹿にするな!」

京太郎「馬鹿にされなくなけりゃ…今度こそ成功させてくださいよ、ご主人様」

優希「言われずとも!」ハムッ

京太郎「それじゃあ、一気にやらせてもらうぞ」パクッ! カリカリカリカリッ!

優希「!?」

チュッ

京太郎「ふう、ようやく終わりか」

優希「あ、あ、あああっ」カアアッ

京太郎「…一人前のレディになりたきゃ、もっと余裕を持って振舞ってくれよな」


 ◆須賀京太郎のポッキーゲーム 大星淡との場合


淡「ねえねえキョータロー」

京太郎「ん?」

淡「ポッキーゲーム、しよっ?」

京太郎「ん」

ポリポリポリポリ...チュッ

淡「…これで何回目だっけ?」

京太郎「丁度100回目だな」

淡「へえ、もうそんなにやってたんだ」

京太郎「そろそろ飽きてきたか?」

淡「ぜーんぜん」

京太郎「じゃあ、飽きるまで続けようか」

淡「うん!」

ポリポリポリポリ...

菫「…なあ」

京淡「?」

菫「その…今はまだ部活動中だから、もう少し時間と場所を弁えちゃくれないか?」



カン!

とりあえずはここまでです
では

投下開始します


「ねえ、そこの貴方?」

彼女個人に、これといった理由は無かった。

「えっと…俺に何か用ですか?竹井会長」

彼でなくても良かったのだ。

「いきなりだけど…麻雀部、入ってみない?」

とりあえず、麻雀部の正当性を確立する事だけが、彼女の…竹井久の目的だった。

「何で…俺なんです?」

その問いに答えは無い。だが、

「貴方ってほら、人当たりが良いって評判だしね。須賀京太郎君」

理由付けなら出来たのだ。

「そうなんですか?まあ、そう言われて悪い気はしませんけど…あれ?」

それは嘘ではなく、確かな事実である。

「どうしたの?」

そう、彼女は知っていた。

「どうして、俺の名前を知ってるんです?」

宮永咲と、その幼なじみを知っていた。

「会長たるもの、生徒の顔と名前くらいは知っておかないとね」

二人が、清澄高校の生徒として入学する前から。


「…貴方に妹がいるですって?」

それは久が中学の頃。

「そう。ある日を境に、離れ離れになってしまったけど」

彼女は会っていた。

「宮永さん。何故そんな事を、不戦敗なんてした私なんかに話すの?」

宮永照という魔物に…ヒトをやめた者に会っていた。

「ある人から、そうするように言われたから」

久の問いに、照は不明瞭な答え方をする。

「ある人って…ひょっとして靖子の事?」

それを聞いて、久は知り合いのお節介かと思ったが、

「…違う」

どうやら想像の埒外だったらしい。そして照は、

「私の聞いた話が本当なら、貴女はいずれ妹と出会う事になる」

予言のようなものを久に告げた。


久「それが本当だとして、私は何をすれば良いの?」

照「…京ちゃ…須賀京太郎という男の子を麻雀部に入れて欲しい」

久「須賀、京太郎?」

照「妹は麻雀を嫌っている…だが、彼が自発的に働きかければ何とかなるはず」

久「自発的って…私の方から誘っちゃいけないの?」

照「竹井さん…貴女から接触すれば、妹はきっと麻雀部には来ない。それまでは待つしかない」

久「待つのには慣れてるけど、そもそも私にメリットはあるの?」

照「妹が…咲が強いかどうか分からないから?」

久「…妹さんの名前、咲っていうんだ。素敵な名前なのね」

照「その名に恥じないだけの力は持っていると、私が保証する」

久「そんなに凄いの?」

照「今は衰えてるだろうけど…かつて私は、咲に手も足も出なかった」


久「それ程の子なら、白糸台にスカウトしたほうが良いんじゃない?」

照「そうしたいが、出来ない」

久「どうして?」

照「今の私に、妹はいない事になっているから」

久「それにも何か理由はあるの?」

照「私には、答えられない」

久「…そう」

照「ただ、守らなければならない事がある。まず…咲と京太郎君は、離れ離れにしなくてはならない」

照「―――そして、初心者である京太郎君には積極的に麻雀を教えてはならない」

久「名前を出すくらいだから、妹さんとその子は仲が良いんでしょ?」

照「そう。だからこそ、二人は分かたれなくてはならない」

久「それと…須賀君へ麻雀を積極的に教えないというのは何故?」

照「…いずれ分かる。そう、いずれ」


それからしばらくして、久が照から告げられた予言は現実のものとなった。

そして久は、あの手この手で宮永咲を麻雀に引き込もうとする。

原村和を使って、久は咲と京太郎を引き離し、

藤田靖子を使って、咲に麻雀への積極性を植えつけ、

そして自身は、咲に麻雀で勝つ事を思い出させた。

止めようなどとは思えなかった。

それ程に、宮永咲は魅力的な雀士だったから。

全てが必要な過程だった。

宮永咲をもう一度魔物に戻す為。

或いは、魔物以上のナニかにする為。

――――それと。

それと、須賀京太郎を○○にする為の。



やがて…インハイという夢が終わった頃、久の元に再び宮永照が現れた。


照「…貴女はよくやってくれた」

久「…何がよ」

照「何故、怒っている?」

久「当たり前じゃない!妹さんがああなるって、あなたは知ってたんじゃないの!?」

照「…否定はしない」

久「私が言えた義理じゃないけど、宮永さん…貴女って、本当に最低の屑だわっ!」

照「どう言われようと構わない。私は…麻雀が楽しめれば、それで良い」

久「あれが…あんなものが楽しいだなんて、ふざけないでよ」

照「ふざけてなどいない。私は、嘗ての小鍛治健夜をもしのぐ咲の力を目覚めさせたかった」

久「それは貴女の…いいえ、貴女達の手に負えるの?」

照「…それこそどうでもいい」

久「っ!?」

照「私は…私と同志達は、私より強い敵と闘う事を望んでいる。ただ、それだけの事」

久「その為に、誰かが麻雀を楽しめなくなっても?」

照「弱者は淘汰されるもの…闘争を続ける以上、その原始的な理には逆らえない」

照「生きとし生けるものの、逃れられぬ業(カルマ)」


久「…もういいわ。さっさと行ってちょうだい」

照「では、そうさせてもらう。ただ…最後に一言だけ」

久「何?」

照「京太郎君…京ちゃんは、もうすぐ一度『壊れる』」

久「『壊れる』?」

照「『元に戻る』と言った方が良いかもしれない。彼の心は、じきに堪えられなくなる」

久「確かに、インハイ後から彼への風当たりはいっそう強くなってるけど…彼はそんなに弱い子じゃないわ」

照「そう、京ちゃんは弱くない…だからこそ、一度『壊れる』の」

久「…そしたらどうなるの?」

照「女も男も…魔物もそうでない者も皆等しく、麻雀を楽しめる世界が誕生する」

久「私はそうは思わない」

照「…そう」

久「けど、私が引き金を引く者だったのなら…何を言っても仕方ないのよね」

照「後悔、してるの?」

久「当たり前じゃない。もう、手遅れかもしれないけど」


「京ちゃん京ちゃん」

「何だ?」

「麻雀って、楽しいよね!」

「…ああ!」

「だから、もっと楽しめるように弱い人は無くさないとね」

「だな。昔の俺みたいに弱いままなんじゃ、生きてたって仕方ないしな」



嘗て各国の政府は、秘密裏に遺伝子調整の研究を進めていた。

生まれながらにして、国家首脳レベルの高い雀力を持たせる為の。

宮永咲達は、その成功例とも言うべき存在だった。

ただし期待値、もしくはそれ以上の雀力を顕在化出来たのはほぼ女性のみ。

研究は凍結される事となった。

しかし、一部の研究者達はその後も引き続き研究を続けていた。

小鍛治健夜に崩されたバランスを、是正する為に。

その中心であったのが、宮永夫妻と須賀夫妻。

彼らは、性別だの何だので夢を諦めなければならない世界を肯定出来なかった。

多くの犠牲を払って続行された彼らの目的。

…差別の無い闘争の世界。

それが今、果たされようとしていた。



「――こんなの、私は望んじゃいないから」



全ての引き金を引いてしまった少女、竹井久。

彼女の孤独な戦いは、ここに始まりを告げた。

                                  了

部長の誕生日を記念してスレ立て…しません
続きなんてありません

今回はここまでです
では

訳分からん書き方するのと、あえて分かり辛くするのはやっぱり違うな…改善しないとorz
それでは、投下開始します


宮永照には悪癖がある。

 「ねえ、さき」

 「なあに?」

 「そのおかし、わたしにくれないかな?」

 「…やだ!」

 「そう、ならばちからづくでうばいとる」

誰かのものを羨んで、奪い取ろうとする癖がある。

彼女達の両親は、そんな娘の悪癖に大層困っていた。

いくら月日が過ぎようと、照がそれを改める事は決してなかったから。

 「なあ…照。お願いだから、咲のものを取ろうとするのはやめてくれ」

 「どうして?」

 「お前が何でもかんでも奪ってしまったら、咲には何も残らないじゃないか」

 「…それっておかしくないかな?」

 「何だと?」

 「だってお父さん、咲がおじいちゃんから貰ったお年玉を奪おうとするじゃない」

 「う…それはだな」

 「お母さんもそれを止めようとはしないし…私はただ、お父さんを見習っただけにすぎない」

父親は、それ以上何も言えなかった。

娘の言った事が、動かしがたい事実だったから。

そして…父親が娘に与えた悪癖もまた、彼自身が親から与えられたものだったのだ。



――宮永家は代々、麻雀の強い者を多く輩出してきた。

その家訓は『欲しいものは、奪い取ってでも手にすべし』というもの。

呪いのようなそれを、宮永家は代々守り続けてきた。

…守り続けてきてしまった。

ケダモノの如き在り方を、止めようなどとはしなかった。

結果、宮永家は大事なものを失う事になってしまって。

その原因を作った一族に…夫に失望した妻は、娘達を連れ家を去る事にした。


母親が、娘達に告げる。

 「私はしばらく東京へ行く事にしたわ」

 「…そう」

 「どうしてなの、お母さん?」

 「このままだと私…お父さんも貴女達も愛せなくなるかもしれないし」

それが彼女の結論だった。

家族麻雀で、ただ奪い合う事に慣れてしまった自分に、彼女は気付いてしまった。

奪い、奪われ…果たしてそれが、全うな家族のあり方と言えるのか。

しまいには照のように、相手の持つもの全てを奪おうとしかねないのではないか。

母親には、そういう懸念があったのだ。

…昔の彼女は、夫のそんな在り方に惹かれるものを感じていた。

しかし母となった今では、そういう訳にもいかなくなった。

夫の…宮永家の在り方では、結局誰も幸せにはなれない。

そう思うようになったのだ。

そしてそれは、恐らく正しい。だが、

 「ゴメンねお母さん。私、お父さんと長野に残るよ」

 「――どうしてかしら?」

 「お母さんの言ってる事は正しいと思うよ。けど、それはきっとお父さんを傷付けちゃう」

 「…咲」

 「だからね…もう少しだけ皆で話し合っても良いと思うの」

咲は、彼女の申し出を受け容れなかった。

一族によって傷付いた者の一人であるはずなのに、決して怨嗟を口にしない。

その姿は本当に健気だった。


だがここで、意外な事が起こった。

 「…私は、お母さんについていくよ」

 「お姉ちゃん!?」

 「咲。私は、お父さんも今の貴女も許せない。だから、一緒にはいられない」

 「…そんな」

 「全てに決着がつくまでは、もう貴女を妹とは思わない」

宮永家の宿業に染まったはずの照が、母親についていくと言い出したのだ。

その上、父親と妹に対して決別の意まで示した。

母には娘の真意が分からない。

けれど、長野を出ようとする意志は確かに芽生えた。

 「…それじゃあね、二人とも」

 「……」

そして二人は長野を、宮永家を去った。

照に至っては、別れの言葉も口にしないまま。









…宮永照には悪癖がある。

 (どうしよう、道に迷ってしまった)

 「…あの」

 「?」

 「宮永照さん、ですよね?」

 「そういう貴方は?」

 「あ…すみません。俺は須賀京太郎といいます」

 (…ああ、この人がそうなんだ。あの子の…咲の彼氏さんなんだ)

誰かのものを奪い、自分の物にしたくなる癖がある。

だが咲は、京太郎の事など照には教えていない。

なのに彼を知っているのは、照が魔性の力を持つから。

――照魔鏡。

その力で、全てを垣間見てしまうから。


 「須賀京太郎君って言うんだー…良い名前だね」

 「ありがとうございます。何だか照れちゃいますね」

 「照だけに?」

 「いえ、流石に初対面の人の名前でボケる度胸はないですよ」

 「…そう」

 「えーっとその、なんて呼ばせてもらえばいいでしょうか?」

 「照で良い」

 「ええっと…じゃあ照さん、俺の事はなんて呼びます?」

この時、照は気付いていた。

京太郎は、気付いてなかった。

 「…京ちゃん」

 「えっ?」

 「京ちゃんって、呼ばせて?」



 「―――お姉ちゃん?」

 「久し振りだね、咲」

咲が、すぐ傍まで近づいている事に。


 「何、してるの?」

久し振りの姉妹の会話が、どうしてこうなってしまうのか。

 「何って、奪いに来たんだよ…彼の事を」

お互い、相手をとても大事に思っているのに。

 「私から…京ちゃんを奪わないで!」

争う事無く関わりあえはしないのだろうか。

 「照魔鏡で彼を見たけど…大切にしているのなら、もう少し気にかけた方が良いよ?」

 「…余計なお世話!」

 「いくら親しい仲だからって、忘れたりしても大丈夫な筈はない」

 「え……」

 「原村さんに言われるまで、彼へのお土産の事を忘れたりするだなんて」

こんな形でしか、言葉を交わし合えないのだろうか。

 「お姉ちゃんには奪わせない…京ちゃんは、奪わせない!」

 「なら、私の願いを叶えて」

 「…願い?」

 「嶺上開花…お前の持つ名と力に違わぬ強さを、私に見せてくれ」

奪い合う事…それが分かり合う事ならば、

 「もし叶えられないなら、彼は私のものにする」

 「…絶対やだ!」

この姉妹のすれ違いにも、やがて終わりは来るのだろうか?



「…俺、別に誰のものでもないんだけどなー」

                                               了

一応、>>195のお題で書きました

今回はここまでです
では

ポッキーゲームは機会があればまた書いてみたいですね
修羅場は…以前総合に書いた玄京宥のリメイクとか出来たらいいな

投下開始します


数絵(お爺様…一体どこに行ったのかしら?)

数絵(お爺様がいなくなったら、私…独りぼっちじゃないですか)

数絵(…お爺様……)シュン



「あのう、ちょっといいですか?」

数絵「…何でしょう」

「ひょっとして、人を探しているんじゃないかと思って」

数絵「仮にそうだとして、貴方に関係あるのですか?」

「手伝わせてください」

数絵「え?」

「俺、人探しは得意なんです…だから」

数絵「…必要ありません」

「いえいえ、一人より二人の方が効率は…」

数絵「必要ない、と申し上げました」

「そう頑なにならなくても」

数絵「私は一人で十分です。人の助けなど借りなくても、どうにかしてみせます」

「…本当にそうでしょうか」

数絵「は?」

「一人でどうにか出来るなら、そんな余裕の無い顔は出来ませんよ」

数絵「…余計なお世話です」ギリッ

「それは分かってます。けど…つまらない意地を張って上手くいかないなんて、馬鹿らしいとは思いませんか?」

数絵「私は、意地など張ってません!」

「なら、そんな寂しそうな顔しないで下さい…ほっとけないじゃないですか」

数絵「…どうしてですか」

「?」

数絵「どうして、放っておいてくれないのですか」ウルッ

「そんなの決まってます。泣いてる女の子を、見捨てられない性分なんですよ」ニカッ

数絵「…面倒臭い人ですね」

「はは、幼なじみからもよく言われます」

数絵「ホントですよ…もう」

数絵(でも…そんな貴方の性分を、私はとても好ましく思います)


南浦プロ「おお…数絵、こんな所にいたのか」

数絵「それはこちらの台詞です!どうして待ち合わせ場所に居なかったんですか!」

南浦プロ「いやその…アレだ、瑞原プロに挨拶をしに行っててな」

数絵「…どうせまた、鼻の下を伸ばしてたんでしょう」

南浦プロ「!?」

数絵「うろたえぶりをみるに、どうやら事実のようですね」

南浦プロ「ち、違うんだ数絵。俺はただ、前途ある彼女の事が気がかりでだな」オロオロ

数絵「それならまず、これから始まるインハイの参加者達に関心を向けるべきでは?」

南浦プロ「…ああ、お前の言う通りだ」

数絵「はあ…もう良いです。ある人に助けて頂いたお陰で、こうして無事会えたのですから」

南浦プロ「うむ。だが数絵よ、お前が誰かに助けを求めるとは意外だな」

数絵「た、助けなど求めてはいません…彼の方から、勝手にやってきたんですからっ」

南浦プロ「まあそう照れるな…誰かに助けを求める事も、生きる為には必要なんだからな」

数絵「え、ええ。今回の件で、その事が良く分かりました」

南浦プロ「ところで…その彼は今どこに?」

数絵「…あ、あれ?さっきまでは、すぐ傍に彼がいたはずなのに」

南浦プロ「逃げられたみたいだな。どうやら彼も、お前と同じ照れ屋さんらしい」

数絵「そんな…まだお礼も言ってないのに」ショボン

南浦プロ「なあ、数絵」

数絵「何ですか?」

南浦プロ「顔、赤くなってるぞ」

数絵「…からかわないでくださいっ!」

バチン!

数絵「まったく、もう!」

スタスタスタスタ...

南浦プロ「い、いてて…数絵の奴、何もぶたなくたっていいだろうに」

南浦プロ(しかし…俺以外の誰かに数絵が助けを求めるとは、珍しい事もあるものだ)

南浦プロ(…これは面白い事になりそうだ)



「おっそーい!買い出しに時間かけすぎでしょ!」

「す、すみません部長。ちょっとばかし人助けをしてきたもので…」

「言い訳無用!罰として、次の買い出しは貴方の自腹だからね!」

「そ、そんなぁ……」



カン!

とりま今回はここまでです
では

投下開始します


幼い頃から私と彼は、ずっと一緒に生きてきた。



若年にして、エグゼクティブバトラーとなった少年。

それが彼だった。

彼が私の命を聞かなかった事は、ただの一度もない。

違えた事も。

そして、期待に応えなかった事も。

そう、彼は何でも出来る。

他の誰かに出来無い事でも、彼なら出来てしまう。

そんな彼を従えられるのが、私のちょっとした自慢である。

問題があるとすれば、彼が執事である事だ。

彼は私に良く尽くしてくれる…その働きぶりに、不満などあろうはずはない。

だが私は、それで満足出来なくなった。

いや、出来なくなってしまったというのが正しいか。

飽きたのではない。

彼の奉仕に不足を感じた訳でもない。

ただ…私が彼を愛するようになってしまっただけ。

従者である彼に、立場を弁えない関係を求めるようになっただけだ。


いつからだろう。

いつだっていい。

私が彼に思慕の念を抱くようになった、その事実だけがあればいい。

この想いが失せなければ、それでいい。

…けれど、本当にそれでいいのだろうか?

ずっと今のままで居られたら、それでもいいのだろうけど…そんな事はありえない。

移りゆかぬものなど、どこにも在りはしないのだから。

――私はそれが怖い。

想いが失せてしまうのが、怖い。

しかし私は、未だに想いを告げられないまま生きている。

それに私は気が多い。

好敵手と定めたIM王者にも、手品が得意なメイドにも執心しているのだ。

その性分が時々恨めしくなる。

一途に彼を想えない自分が、どうにも嫌になってしまう。

そして…何も教えてくれない彼にも、逆恨みめいた感情を抱いてしまう。

…いつまで。

いつまで、こうしていればいいのか。


彼女に仕えている事を、私は心底誇りに思う。



聡明な方だった。

幼くして世界各国の大学論文を読みあさり、あまつさえ論破までしてみせた程だ。

それでいて傲慢でもなかった。

向上心の高い彼女は、蔑む事などせずにひたすら自身を高めていった。

その様は、心技体共に非の打ち所が見当たらない。

もし何かあるとすれば、それは彼女が類まれなる目立ちたがりであった事か。

しかしそれこそ、彼女を彼女たらしめる根幹。

誰に恥じる事の無いその生き様は、その性質(たち)故に成り立つものだ。

私はそんな彼女に心酔するようになり…やがて、良からぬ感情を持つようになってしまった。

在ってはならない事だというのに。

しかし私は、あの方への想いを棄てられないまま今もお傍に仕えている。


いつまでこうしていられるのか。

そんな不安を、ずっと胸に抱きながら。

女々しい事だと分かってはいる。

けれど、今のままで在って欲しいという気持ちは無くならない。

執事である自分への固持か。

それとも、今を失う事への恐怖か。

一歩踏み出す勇気があれば。

この気持ちに答えを出せれば、私の望む未来は得られるのだろうか?

分からない。

彼女はおろか、自らの気持ちさえも。


透華「あの、京太郎」

京太郎「何か御用でしょうか、透華お嬢様」

透華「貴方がここに来てしばらく経ちましたが、私とハギヨシの事をどう思ってらっしゃるの?」

京太郎「…質問の意図が分からないんですけど」

透華「ですから…私とハギヨシの関係を、貴方はどんな風に思ってらっしゃいますの?」

京太郎「お似合いだと思います」

透華「お、お似合いとはどういう……」

京太郎「言葉通りの意味です。お二人は互いにふさわしい存在だという事です」

透華「え…ええっ!?」///

京太郎「どうかなされましたか?」

透華「いえ、何でも…何でもございませんわ」

京太郎「まーとりあえずですね、もう少し分かり合ってもいいと思いますよ?」

京太郎「…でないと俺が困りますから」

透華「あら、どうして貴方が私達の事で困ってしまわれるのですか?」

京太郎「さあ、どうしてでしょうね」ハァ...


京太郎「…はあ」

ハギヨシ「どうかなさいましたか?」

京太郎「いやその、じれったい思いをさせられてるのにイライラしてて」

ハギヨシ「じれったい、とは?」

京太郎「透華さんからさっき相談受けたんですけど、正直…意味無いんですよね」

ハギヨシ「…どうして私ではなく、貴方になのでしょう?」

京太郎「そんなの向こうに聞いてくださいよ」

ハギヨシ「それが出来ないから聞いているのですよ!」ギロッ

京太郎「ああ、もう!」ムカッ

ハギヨシ「もうとは何ですか!もうとは!」





京太郎「ハギヨシさんも透華さんも、いつまで俺に相談持ちかけるんですか!?」



カン!

>>196のお題で書きました
某社にあったバトラーの能力基準を見て、おっかなびっくりしたのはいい思い出です

今回はここまでです
では

時間かかると思いますけど、>>195>>196の続きだかおまけだか投下します


…なんでこうなった。

俺と咲って、彼氏彼女だったっけ?

んなこたあない。

俺は和とか福路さんみたいな人と付き合いたいんだ…ポンコツが彼女とかゴメンだよ。

けど、どういう訳か彼女作りが上手くいかないんだよなあ。

身だしなみとかにも気は使ってるし、勉強とかもそれなりにはやってる。

人付き合いだって大事にはしているのに…一体何がダメなんだ?

どうしてフラれちまうんだろう…俺は。

…思い出した。

俺ってフラれる時はいつも、決まって同じ事を言われたんだっけ。

何だったかな?

ああ、そうだ。相手の子はみんな、こう言っていたんだ。

「貴方には、もっと相応しい相手がいると思うよ」

「貴方がホントに好きなのは…きっと私じゃないから」

あれはどういう事だったんだろ?

俺の好きな人って…少なくとも、告白した当時はその相手だったはずなんだけど。

どうもその辺はっきりしないな。

仕方ねえから、もう少し昔の事を思い出してみるか……。


俺と咲は、確か幼稚園の頃から一緒だった。

咲の奴はよく泣いた。

そんなアイツをあやすのは、どういう訳かいつも俺の役目だった。

俺自身、どうも咲の事は放っておけなかったんだが。

そのせいか、周りに冷やかされるようになって…俺はアイツの世話を焼くのを止めてしまった。

めんどくさくなっちまったし。

それから少しして、咲の奴は泣かなくなった。

俺はそれで面倒が無くなると思ってた。

…そんな事はなかったけど。

咲の奴は俺から離れようとしないし、周りは倦怠期だのなんだのと囃し立てるばかりだ。

ある日俺は、とうとうそれに耐えかねて、

 「うざいっての!」

 「痛っ!」

アイツの顔を思いっきりぶん殴っちまったんだ。


 「あー京太郎くんが、咲ちゃんをなぐったよー」

 「いーけないんだーいけないんだー」

 「せーんせいにいったーろー」

連中がそれを見て、俺を言葉で責めたてる。

ムカついた。

咲一人を殴ったくらいじゃ、収まりがつかなかった。

 「うっせぇ!」

 「が…っ」

 「京太郎くん、なにしてるのよ!?」

 「お前らみんななんなんだよ…俺がいったい、なにしたってんだよ!」

 「おい、やめろって!」

 「だまってろ!お前らだって、ひやかすのをやめてくれなかったじゃないか!」

それからはもう、取っ組み合いがずっと続いた。

そりゃもう結構な騒ぎになった。

俺は周りからボコボコにされて、それでもなお喧嘩を止めなかったし。


ひとまず全部片付きはしたが、親父やお袋には相当叱られた。

逆に先生達は謝りっぱなしで、喧嘩のあった後はそれなりに気遣われたけど。

俺のせいとは思ってなかった。

全部周りのせいで、咲のせいだって思ってた。

俺がそれを二人に伝えると、

 「馬鹿野郎!」

 「アンタが全部悪いだなんて言わないけど、その言い草はみっともないよ!」

そう言って俺の事を殴ろうとしてきた。

 「ひっ!」

俺はとっさに身構えたけど、親父もお袋も俺を殴りはしなかった。

ただ、俺の両手を強く握ってこう言ったのだ。

 「…人を殴って、痛くは無かったか?」

 「殴って殴られて…それで気分は良くなったの?」

俺は首を横に振った。

気分なんて良くならなかったし、第一思い出すのも辛い。

何より、咲の事を殴った事実が俺はとても嫌だった。

 「だろうな。傷つけあうって、そういう事なんだよ」

 「それにアンタは、自分が守ろうとしたものまで傷つけちゃったのよ」

そうなのだ。

理由はどうあれ、俺は咲の面倒を見ていた。

誰に強制された訳でもない…俺自身が、望んでそうしたんだ。

なのに俺は…そう思うと、涙が溢れてくる。

 「とりあえず、咲ちゃんちへ謝りに行こうか?」

 「…うん」

とにかく謝らなきゃ。

あの時の俺は、ただその一心だった。


咲の家の前には、咲と親父さんだけが立っていた。

後の二人は、こちらの顔も見たくないからと会うのを断っている。

…怖かった。

親父さんは怒ってた。何も言わずに、ずっと俺を睨んでいた。

咲の奴も、ただこちらを見ているだけで何も言わない。

いっその事、二人に何か言われた方が気が楽になれただろう。

けれどあちらは決して口を開かなかった。

そのまま沈黙が暫く続いて…それに耐えかねる形で、俺は口を開いた。

 「…ごめんなさい」

深く頭を下げて、吐き出すようにそう言った。

…少しして、咲がこちらに近づいてきた。

多分殴りに来たんだろう…そう思い、俺は目を瞑りながら身構える。



「いいよ。私は大丈夫だから」

俺を抱きしめながら、咲はそう口にする。

…とても暖かかった。

それに…俺より小さいはずの咲だが、何故かその時日は大きく感じた。

ずっとこうしていられたら。

――そんな風に思った時、突然俺は脳天に一撃をかまされた。

咲の親父さんからだった。


 「ってー!」

 「何カップルみたいに抱き合ってんだクソガキ…人の娘を傷物にしておいて」

そういう親父さんの目には、何故だか火が点いてるように見えた。

何とも異様な雰囲気だった。

どう言えば良いのか…まるで、人であって人でないような…そんな感じ。

痛みに蹲りながら、目の前の脅威に怯える何とも忙しい状況の中、

 「きずもの、ってなんすか?」

聞いた事の無い言葉の意味を、俺は尋ねたのだ。

 「…まあ、その歳でこんな言葉知りはしねえわな」

 「俺のせいで、咲がそうなっちまったのはわかります。いったいどういうことなんですか?」

 「とりあえずだ…娘を傷つけたお前さんにゃ、責任を取ってもらわなきゃならねえって事だよ」

 「せき、にん?」

またも聞きなれない言葉に、俺は困惑してしまう。

けど、知ろうと知るまいと自分がしなきゃならない事は何でもしよう。

そんな気でいた。

 「つまりな、お前はもう二度と咲を傷つけちゃならねえって事だな」

 「は、はい!もうそんなことは、二度としませんから!」

 「当然だ…もし次やったらどうなっても知らねえからな。それと…」

 「ま、まだなにか?」

 「咲の傍に居る限り、お前が咲を守ってやれ」

 「…え?」

 「咲が言ってたんだよ。お前さんのお陰で、いつも楽しくしてられるってな」

 「咲が…そんなことを……」

 「だからさ、そんなアイツの思いに応えてくれなきゃ困るんだよ」

いつの間にか、親父さんから異様なものは感じなくなってた。

目の前に居るのは、どこにでもいそうなただのおっさん。

そのおっさんの姿からは、さっき咲に感じたのと同じものを感じた。











…忘れていた。

ずっとずっと忘れていた。

どうして俺が、咲の傍に居続けたのか。

約束したんだ。

もう二度と傷つけないって、傷つけさせもしないって。

誓ったんだ。

咲が傍に居る限り、俺がアイツを守るって。

それを破らなければ、咲はずっと俺のもので…そして、俺はずっと咲のもの。

変わらない。

変えさせない。

そう、俺は思い出したんだ。

ずっと前から抱いていた、この思いを―――。



                                                 了

すみません、今回は修羅場に出来ませんでした…思いついたらまた書いてみたい
眠いんで>>196の続きはまた次回

それでは

うーん…なんか色々ダメダメだなあ
何がダメかって言われたら沢山あるでしょうけど、とりあえずはこれを直すべきというのが思いつかない
地の文にしろ台本書きにしろ、上手く書けていないのは確かですが

そんな訳で忌憚のないご意見を下さい
残念じゃない菫さんとか…キツくないはやりんとか、彼是書いてみたいですから

製作者スレとかのが良いかと
元スレではやはりSSが主体なので忌憚なく言いにくいのと
そういうのをある程度詳細に文字にすると確実に長くなるので

素人目からすると読みにくいわけでもないし、話の骨子や落とし所もしっかりしてて
充分うまく書けてるようには見えるから、あとは作者さんが自分で納得できるかどうかって点だけじゃないかなー
将来的に生業にするとかなら別だけど、趣味のSSなんだし、少しくらい納得いかなくても
書きたいときに書きたいものを書き散らす感じの気軽さでいいと思うの

>>363
それも考えたんですけど、あそこじゃ読んで評価してもらおうとするのが難しいので
あとあのスレには良い印象がないんです
>>364
お褒めいただきありがとうございます
気軽な気持ちじゃなくなってるのはありますね…仕事でもないのに、肩肘張りすぎてました

忌憚なき意見をと書きましたが勿論任意ですし、詳細でなくても構いません
「もっと竜華を病ませても良かったんじゃね?」とか「淡は敬語を使わせても可愛いよ」みたいな感じで

あー穏乃をなでなでしたい

とりあえず投下開始っす
>>350に書いた>>196のおまけは一旦後回しでー…>>197、まだ消化出来てねぇ


京太郎「頭撫でたい」

久「…は?」

京太郎「俺…誰かの頭撫でたいんです、部長!」

久「いきなり何を言い出すのよ」

京太郎「いやまあなんていうか…庇護欲をこじらせた結果?」

久「須賀君って、なんだかんだで咲か優希の面倒見ているものねぇ」

京太郎「しかしですね部長。ぶっちゃけ俺、二人に飽きちゃいました」

久「酷っ!」

京太郎「二人を妹のように可愛がるのも乙なものですが、たまには他の子も可愛がりたい」

久「…何だか誤解を招きかねない物言いね」

京太郎「そんな訳で、この前知り合った蒲原さん…それに天江さんと旅に出てきます」

久「え?」

京太郎「公欠届はもう出してますんで…それじゃ」

カチャッ、パタン

久「…」

久「…突っ込むヒマさえ、与えてくれなかったわね」


京太郎「お待たせしました」

智美「おう、待ってたぞー」

衣「うむ!」

京太郎「それじゃあ、行きましょうか」

智美「そだなー」

衣「ふふふ…今宵の旅路で私のお姉さんっぷりを存分に発揮してやるぞ!」

京太郎「…お姉さん?」

智美「ワハハ、衣より私の方がお姉さんだけどなー」

衣「う、うるさいっ!」



>>374 行き先を選択してください

ksk

北海道


京太郎「蒲原さん、最初はどこに行くんですか?」

智美「ああ、北海道にするつもりだぞー」

京太郎「随分遠いですねー…車旅なのに」

衣「まあ、なんとかなるだろう。ところで智美、どうして北海道なのだ?」

智美「ワハハ、北海道には有珠山高校があったろー?」

京太郎「…ああ!」

衣「きょーたろー、何か分かったのか?」

京太郎「あそこには2年の本内選手、1年の真屋選手という逸材がいるんですよ」

衣「ああ、あの二人か!」

智美「あの二人は見ていて庇護欲を掻き立てられるからなー」

京太郎「そうと決まれば、早速飛ばしていきますか!」

衣「おうともさ!」

智美「ワハハ、任せておけー」


ギュルギュルギュルギュル...

ギュルルルルルルッ!

ブゥルルルゥン!

ギギギーッ! シュゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!


「なんだあのカウンタック!」

「時速300近くは出てるような気がするんですが、それは…」

カウンタックって三人乗り出来るの?


>>377 何にも考えてなかった…改造してるか京太郎に抱っこされてると思いねぇ



それから数時間後…



揺杏「ふっふ~新しい改造制服が完成したぞ」

由暉子「ああ、もう出来たんですか」

成香「揺杏さん、また派手なものを作って…」

揺杏「まあそうカタい事言うなよ成香~成香の分も作ってあげるからさ!」

成香「こ、怖いから要りませんっ!」

由暉子「成香先輩、怖いのは最初だけですから」

成香「いっ、嫌ぁ!」


「「「ちょっと待ったー!」」」


成香「え、えっ!?」

由暉子「…一体何事ですか?」

揺杏「ああ、あの人達は私が呼んだんだよ~」



京太郎「我ら!」

智美「ナデナデし隊!」

衣「ただいま推参!なのだ!」


成香「なっ、何ですか彼方達は!」

京太郎「須賀京太郎っす」

智美「蒲原智美だー」

衣「そして、私が天江衣だ!」

成香「彼方達は一体、何が目的でここまで来たんです?」

智美「それは勿論」

京太郎「貴女をナデナデしたいから!」

衣「なのだぞっ!」

成香「な、ナデナデって何ですか!ナデナデって!」

京太郎「頭を撫でるんです」

成香「へ?」

京太郎「ですから、可愛らしい貴女の頭を撫でるんですよ」


成香「な…何で私なんですか」

智美「君、準決勝の後から自分がどんな評判かは知っているかー?」

成香「し、知りませんよそんな事!」

衣「『涙目な成香ちゃん可愛い!』」

成香「ふぇっ!?」

衣「『めげずに頑張る成香ちゃん可愛い!』『ナデナデしたい!』『嫁にしたい!』『娘にしたい!』」

成香「ふっ、ふええ…何なんですかそれは……」

衣「強者達を前にして打ち震えながら、それでもなおいじらしく振舞うお前の姿に皆が感銘を受けたのだ」

成香「どう考えても、そんな風には解釈出来ませんよっ!」

衣「まあ、良いではないか。恐れられるより愛された方が、気持ちが良いぞ?」

成香「そ、それは…」

ポンッ

成香「ひゃあっ!」

京太郎「あーやっぱりだ。本内さんの頭、最高の撫で心地ですよ」

成香「や、止めてくださいよ!」

京太郎「ほ~れほれ、もっとナデナデしちゃうぞ~!」

成香「だから止めてって言ってるじゃ…ないです、か……あっ」

京太郎「どうです?そろそろ気持ちよくなってきたんじゃないですか?」

成香「そ…そんな事はありません」///

京太郎「そうなんですか…じゃあ、気持ちよくなるまでナデナデしましょうねー」

成香「や、やめてったら…やめてっ、やめ…や、ああっ…なに…これ……」

京太郎「あ、顔が綻んできましたね。よおし俺、もっと頑張っちゃいますよー!」

成香「ひゃんっ!」



衣(ふっ、まだまだだな京太郎。それでは師であるハギヨシに遠く及ばんぞ)


由暉子「す…すごい」

揺杏「あ~成香の奴、すっごく気持ち良さそうにしてる。ありゃもう完全に牝の顔だよ」

由暉子「あの人達と先輩って、一体どういう」

揺杏「同志だよ。成香や由暉子みたいな可愛がりのある人を愛でていたい、ね」

由暉子「そ、それってどういう…」

「ワハハ、それはこういう事だぞー」

ポフッ

由暉子「ふぁ!?」

智美「君みたいな子を気持ちよくするのが、私達にとって何よりの娯楽なんだぞー?」

由暉子「そ、そんな…あっ」///

揺杏「ふむふむ…流石ですな蒲原同志。見事なワザマエ」

智美「それ程でもないかなー」

揺杏「それじゃあ私も混ぜてもらいましょうか。成香の方は、須賀同志と天江同志がお世話してくれますし~」

由暉子「ゆ、揺杏先輩っ!?」

揺杏「さっき由暉子も言ってたじゃないか…怖いのは最初だけだってね~」

由暉子「あ、うう…」



それから京太郎達は、二人をいっぱいいーっぱい気持ち良くしちゃったぞ!

今回はチュートリアルだから、これ以上の描写はないのだ!二人分書いてもグダるだけだしな!



それでは、また見て成香!


             /        /           \
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           /            ′|  l\     \   ,
.          /              i 八  | ̄\      ',  ′
        /             |   _\{   ',
.        ′        |  | ´ __ァ≠ミ _∧      | |
        |           |  |  ´7 ___)心 Υ',     | |
        |           ト、 {   {// 刈 }     | |
       |            l \    乂__ンっ  |    | |
.         |.         |   \   ,,,⌒´ |       |
          ,   |       | ′  \     し |   /   八
         ′        |              /,  /
                     从⊂ニ=ニ⊃     / // /
          \ \                イ// 厶イ
.              \ \     、__      |'  /
                 \{\     \l_  / ̄\ ̄ ̄\
                   ̄ ̄7Χ_/     \   /
                       /// \     /\/

とりあえずですね、ナデナデし隊は不定期連載していこうと思います
ナデナデするキャラは行き先指定後、こちらで適当に見繕うつもりです
今回は前もって次回安価をとっときます→>>388

今回はここまでですー
それでは

すばらっ!
次回安価って行き先か? なら阿知賀

すみません…次回安価は仰る通り行き先の事ですね
大阪の場合なんかは学校名指定の方が良いです

ちなみに、荒川軍団やプロ組でも大丈夫ですよー

プロ組でも大丈夫となると、なんぽっぽプロとか大沼プロが安価で取られたら…

>>365から色々考えましたが…アレですね、独りよがりになるのはともかく度が過ぎちゃいけませんね
その結果が前作と前々作ですし

まーウダウダ考えずに今日もSS投下します


京太郎「おーっすじっちゃん。今日も麻雀教えてもらいに来たぜ」

秋一郎「…またお前か」

京太郎「そう邪険にしないでくれよ。俺、もっと麻雀楽しみたいんだからさ」

秋一郎「楽しみたいだけなら、わざわざ俺の所に来なくたっていいだろう」

京太郎「ところがそうはいかないんだよ」

秋一郎「何故だ?」

京太郎「だって俺、麻雀部の皆に勝ちたいんだからさ!」

秋一郎「うむ、それは無理だな」

京太郎「即答!?」

秋一郎「わざわざドンキホーテになる事もあるまい。勝ち目のない戦いなど、しなくていいのだ」

京太郎「…どうしてそんな事言うんだよ」

秋一郎「無謀な真似をした結果、牌を握れなくなった雀士は数多い」

京太郎「俺もそうなるって言いたいのか?」

秋一郎「ただがむしゃらに突き進んでいけば、いずれはそうなる可能性がある…そういう事だ」

京太郎「……」

秋一郎「まあアレだ、お前ももう少し利口になれ」

京太郎「…じゃなくていい」

秋一郎「あ?」

京太郎「諦める位なら、俺は利口じゃなくていい!」


秋一郎「京太郎お前、本気で言っているのか?」

京太郎「そんなの当たり前だろ!」

秋一郎「確か入部の切欠は、原村和に近づけるとそそのかされたからだと聞いたが」

京太郎「ああそうさ。今でも諦めちゃいないから、そこは否定しねえ」

秋一郎「…あのインハイを見て、どうしてそんな風に思える?」

京太郎「どういう事だよ?」

秋一郎「昔は兎も角、ここ最近は男子より女子の方が雀士のレベルは高いんだ」

秋一郎「かく言う俺も例外ではなくてな…瑞原プロや戒能プロなどには散々打ち負かされたものだ」

秋一郎「だから今じゃシニアリーグに篭りきりだ。みっともない話だがな」

京太郎「ああ、ホントみっともねえよ」

秋一郎「言ってくれるな。俺と一緒に卓を囲んで、一度も和了れぬヒヨッコ風情が」

京太郎「それでも、今のじっちゃんよりはマシだよ」

秋一郎「…だろうな」

京太郎「どう足掻いたって衰えは避けられないけど…それは誰だってそうだろ?」

秋一郎「そうかもしれんがな、京太郎よ…若いお前がジジイの俺にそれを言うのは酷だぞ」

京太郎「この前咲に『京ちゃんは見込みが無い』って言われたよ」

秋一郎「!」


京太郎「じっちゃんは昔も今も相当活躍してるからいいけどさ、そうなれない人だって沢山いるんだぜ?」

京太郎「ましてや俺なんか、未だスタートラインにも立てないでいるんだ…馬鹿な話だよな」

京太郎「でもさ…そんな風に言われても、やっぱり俺は麻雀を諦められねえよ。どうしようもなく好きだからさ」

秋一郎「……」

京太郎「じっちゃんも色々あったからこそ、そんな風に言ってんだと思う」

京太郎「だからこそ、俺は勿体無いって感じる。だってじっちゃんは麻雀がすげー強いんだからさ」

秋一郎「…昔俺と、麻雀打っていたのも忘れてたくせにな」

京太郎「あ…そ、そんな事もあったなー…はは」

秋一郎「おまけに『麻雀なんかキライだ!』ってのたまったんだぞ、昔のお前は」

京太郎「仕方なかったんだよ…負けたらつまらないって思うのが子供心ってもんだろ…な?」

秋一郎「ふう…まあいい。お前の気持ちに免じて、俺も本腰を据えるとしよう」

京太郎「え?今までって手を抜いてたの?」

秋一郎「当たり前だ。お前がどこまで本気でやってるのか、分からなかったからな」

京太郎「…お手柔らかにお願いします」



『大沼さん…貴方は私の憧れだったのに』

『死臭がヒドい!!ゾンビかっての…知らんけど』

『おじいちゃん、すっごくよわーい☆』

『ノーウェイノーウェイ。ロートルじゃ私には勝てませんよ』

『お爺ちゃん、邪魔!』



――見てろよ小娘共。

俺はまだ、諦めねえんだからな。



カン!

>>396
安価で指定できるのは行き先だけですので、人物指定は無理ですね
例)プロ組→咏ちゃんとか理沙ちゃんとかから俺が適当に見繕う

今回はここまでです
それでは

このスレでは何度か男女による麻雀の強さをネタにしてますが、あの設定はアリじゃないかなーっと思ってます
賛否両論は勿論あるでしょうが、貶したり優劣をつけたりする以前に互いが切磋琢磨していた方が面白いって考えてます
…部長とかには結構憎まれ役やらせちゃってるし、いい加減フォローしないとなー

大沼プロの声優は誰になるのかな?

咲世界の女と男は、君と響きあうRPGにある2つの世界のような関係なんじゃないですかね…知らんけど

今日は1レスか2レスになりそうですが、投下開始します


久「ねーねー須賀君。買い出し行きましょうよ、買い出し」

京太郎「またですか」

久「いいでしょ別に。この生徒議会長と一緒になれる機会なんて、そうあるものじゃないわよ?」

京太郎「でしょうねー」

久「…何?不満なの?」

京太郎「滅相もございませんよ部長。この京太郎、主人への不満など持てるはずはありませんので」

久「…龍門渕で雑用スキルを強化しすぎたかしら」

京太郎「誰が行かせたんですか!誰が!」

久「そう言ってる割には、執事の萩原さんと結構仲良くしてたようじゃない…もう」

京太郎「えーとえーと…ひょっとして、嫉妬しちゃったりしてます?」ニタァ

久「そっ、そんな訳ないでしょ!」///

京太郎「おやぁ…顔が赤くなってますよ部長?」グフフ

久「…意地悪」

京太郎「意地悪?俺が?」

久「そうよ、嫉妬してるわよ!ワンちゃんみたいに貴方を懐かせてる萩原さんに、どうしようもなく嫉妬してる!」

京太郎「……」ポカン

久「…な、何よ。ボーっとしちゃって」



京太郎「…部長って、意外と可愛いとこあるんですね」


久「…へ、へええっ!?」

京太郎「そんなに驚くような事を言いましたか、俺?」

久「だ、だって私…須賀君の事いつもこき使ってばっかりで」

京太郎「ああ、こき使ってる自覚はあったんすね」

久「だからその…言う事聞いてはくれてるけど、私なんかキライだろうって思ってた」

京太郎「まー合同合宿の時はそうだったかもしれませんね」

久「で…でも結局須賀君は麻雀部に残ってくれたし、私の我儘にも付き合ってくれるし…だから…だから……」

京太郎「…だから何なんです?」

久「だからその…貴方と過ごしていると、心が満たされるって言うか…ポカポカするって言うか……」

京太郎「心が満たされるってのは、サディズム的な意味でですか?」

久「違うってば!そんな訳ないじゃない…かな?」

京太郎「あー…そこはキチンと否定して欲しかったなー」

久「でも…でもね須賀君、私はその…これからも貴方と一緒の時間を過ごせたら良いなって…そう、思うの」

京太郎「…うーん」

久「やっぱり、私なんかじゃダメかしら?」


京太郎「…その『私なんか』っての、何とかなりませんか?」

久「えっ…」

京太郎「部長って、ホント上からモノを言うのが好きじゃないですか…優希が自信を無くして弱音を吐いた時とか」

久「…悲しいけど性分なのよね、それ」

京太郎「テンション上げ過ぎて、県予選決勝からは毎度毎度マナー無視な打ち方をしてましたよね」

久「まこや和、それに美穂子にも散々叱られたのにね…どうしても止められなかったのよ」

京太郎「…でも俺、そんな貴方が好きです」

久「!?」

京太郎「それは俺だけじゃない。俺達麻雀部の部員、練習を手伝ってくれた他校の人達、そしてビデオレターを送ってくれた人達も」

京太郎「みんなみんな、貴女が麻雀部を守ってきたから集まってくれたんです。貴女の思いに応えて、集まったんですよ」

久「……」

京太郎「俺だって、麻雀部があったから今もこうして楽しく過ごせているし、それは他のみんなだってそうです」

京太郎「不満がなかった訳じゃないですけど、部長を恨んだり嫌ったりなんてしませんよ」

京太郎「だって俺…麻雀部のお陰で幸せですから」


久「…須賀君」ウルッ

京太郎「じゃあ俺、買い出し行って来ますから」

久「ふぇっ?」

京太郎「やっぱり買い出しって一人じゃないと落ちつかないっす。そ、それじゃっ」///

久「い、一緒に行ってくれるんじゃないの?」

京太郎「好きとは言いましたけど、それがLoveだとは言ってない!」

 ガチャッ、バタッ!

 ダカダカダカダカダカダカ....

久「…」

久「……」

久「なんなのよ!あのヘタレはっ!」



カン!

の、能力なしルールなら泉はもっと上にいけるはずだと信じてます

今回はここまでです
それでは

データ流出問題で一時はどうなる事かと思いましたが、キャスト発表企画が続行されるようで何より
…裏や政界の人達は戦闘力≒雀力なんですが、それは大丈夫なんですかね?

大沼プロ役に推したいキャストは何人かいますが…あえて自分はバイプレイヤーの松本忍さんを特に推したいですねー

>>197のお題を投下開始します
短めなので、後日追加で書く可能性があるかもです


洋榎「あー何でか知らんけどラーメン食べたいわー」

ペターン

絹恵「ほんまやねー」

タプーン

京太郎「…」

京太郎(どういう事なんだろうな、あれ…)



雅枝「…京太郎はさっきから何をしとるんや」

愛宕父「多分、貧富の差について考えとるんちゃうかな?」

雅枝「そない高尚なもんやろか?」

愛宕父「俺やお前も、同じ事考えた時期があったやろ?」

雅枝「せやったかな?」

愛宕父「昔、洋榎が他の女との子やって言うてきたんは何所の誰やねん」

雅枝「…かんにんな」

愛宕父「まあ…お前があないなったんも無理はないんやけどな」

雅枝「法医学での検査でようやく親子鑑定出来たんはええんやけど、私やアンタのどちらにも似てへんかったし」

愛宕父「互いの両親とも似とらへんかったしなー…隔世遺伝って奴やろか?」

雅枝「あれは劣性遺伝子っちゅんがなあ…本来の意味は兎も角、語感が悪すぎるんや」

愛宕父「せやな…実際洋榎は胸の辺りが」

雅枝「アンタ。それ洋榎が聞いとったらシバかれるで」


洋榎「ホンマ、京太郎はよう出来た弟やで」

絹恵「せやなー」

京太郎「俺、いつの間に弟扱いされてたんですかね」

洋榎「んーついさっき」

京太郎「思いつきかい!」

絹恵「ええやんええやん。私らみたいな美人が姉やなんて、贅沢な話やないか」

京太郎「いやいや。事実がどうであれ、自分達の事を美人って言うのはどうかと思いますよ」

洋榎「何や京太郎、うち等に不足があるんゆーんか?」

京太郎「そうではないんですけど…その、洋榎さんは美人というより愛嬌とかひょうきんって言った方が」

絹恵「あーわかるわかる。第一お姉ちゃんって落ち着きあらへんしなー」

京太郎「それに美人と言ったら、絹恵さんみたいに落ち着いた感じの人に当てはまるんじゃないでしょうか」

絹恵「も、もう…京太郎ったら、そない言うても何も出えへんからな」

洋榎「…なんやなんや!私は美人やないん言うんか!」

京太郎「美人でないとは言ってませんが…それよりまず、可愛らしいって印象があるんですよ」

絹恵「私もそない思うわー…いじけちゃうお姉ちゃん、メッチャかわええし」

洋榎「か、かわええって…うちが?」

京太郎「他に誰がいるって言うんですか?」

絹恵「ホンマやで。そんな素直やないお姉ちゃんには、お仕置きしたらんといかんな……」

洋榎「…お仕置きって?」

京太郎「そりゃもう」

絹恵「あんな事やこんな事に決まっとるやん」

洋榎「な…なんやその手つきは…やめえや、こっち来んといてや…ああっ!」

京太郎「あー可愛い。ホント可愛い」

絹恵「こりゃもっと愛でたらなんとな…ふふ」










愛宕父「…姉弟かあ」

雅枝「あの子がおったら、髪の色からしてちょうどええわな」

愛宕父「そうやろな…ところで」

雅枝「何や?」

愛宕父「さっき須賀君、絹恵の事美人さんやって言うたよな」

雅枝「うん」

愛宕父「それやったら雅枝、お前の事も美人やって言うんやろうか?」

雅枝「可能性としてはありそうやね」

愛宕父「…俺、何か怖いわ」

雅枝「寝取られとかしょーもない事考えんのやめとき。AVとかの見すぎや」

愛宕父「なら…今からやるか?」

雅枝「娘達に中てられて、私らまで盛る事はないやろ」

愛宕父「…やな」

雅枝「…まあ、いざとなったら野外ででもやったらええやろ」



カン!

何でやろな…何も思い浮かばへんねん

今回はここまでです
それでは

>>432
…そこは愛宕父が雅枝さんに「他の男との子だ」って言うんじゃないのか
iPSで捻じ曲げればいいんだろうけど何か訳わかんなくなってきた

>>432 訂正

×:愛宕父「昔、洋榎が他の女との子やって言うてきたんは何所の誰やねん」
○:愛宕父「昔、洋榎が他の女との間に出来た子やないんかって言うてきたんは何所の誰やねん」

>>440の方が指摘してくれなかったら気付かないままだった…ありがとです
…愛宕家の遺伝はホンマよーわからん

>>434 訂正

×:雅枝「…まあ、いざとなったら野外ででもやったらええやろ」
○:雅枝「…まあ、いざとなったら野外ででもやったらええねん」

投下開始します


「うちが愛宕洋榎や。よろしゅう」

部長の伝で彼女と出会った。

「自分…どうしようもなく麻雀弱いんやな」

兎に角キツい人だった。

「見込みなさそうやし、もう打つんやめえや」

何度心を折られそうになった事か。

「…まあ、根性だけは認めたる」

それでも、諦められはしなかった。

「ふーん。ようやっとマシな打ち方出来るようになったやん」

俺は、麻雀を諦められなかった。

「ちょっとだけ褒めたるわ…ホンマにちょっとだけやけどな」

彼女の事を、諦められなかった。

「流石はうちが見込んだ男や!」

時には辟易したけれど、

「京太郎。ようやったな」

彼女の眩しいまでの笑顔を見たら、そんなものは吹き飛んじまった。

「うち、アンタが教え子で良かったわ。アンタ程強い奴はまあ…そないおらんやろ」

俺もそう思いますよ…『絹恵さんのお姉さん』。


「…須賀京太郎っちゅーたな」

彼女は端から、俺の目当てを察していた。

「アンタの目…どす黒く濁っとんねん。せやからそうマジマジ見るんはやめてくれへん?」

俺が自分の身体目当てであるという事を。

「まあ、何をしようと勝手やけど…好きにはさせへんからな」

だから俺は釘を打たれた。

「妙な事しおったら、私がアンタを潰す」

彼女の射殺すような目つきが、俺に全身を貫かれるかのような錯覚を与える。

「…ええな」

とてもじゃないが、彼女に手を出す勇気は湧かなかった。

「えらくまあ殊勝な態度で練習しとるやないか。感心感心」

だから俺は、必死で無害を装ったのだ。

「最近お姉ちゃんが言うとるで、アンタがメゲずに麻雀取り組んどるって」

邪な感情など断じて持ち合わせちゃいない好青年…そんな自分を作った。

「お姉ちゃん…アンタに夢中みたいやね」

――将を射んと欲すれば、先ず馬を射よ。

「…アンタまさか、お姉ちゃんを私に対する人質にする為に」

その言葉に倣って俺は、絹恵さんのお姉さんを虜にしたのだ。

…麻雀が好きだから。

そして、彼女が好きだから。


「お姉さんに何かされたくなければ、俺の言う事聞いて下さいよ」

一度でも見直した私がバカやった。

「俺の想い…受け止めて欲しいんです。絹恵さん」

虫唾が走る。

「…貴女じゃないとダメなんだ」

私は、アンタなんかに求められとうないんや。

「どうか貴女も、お姉さんのように俺を見ていてくれませんか?」

お前の事など見たくも無い。

「俺は貴女が好きです、絹恵さん」

私はアンタが大嫌いや、京太郎。

「サッカーやりましょうよ。サッカー」

アンタの頭で出来たらええな。京太郎。

蹴飛ばして、蹴飛ばして、それからぐっちゃぐちゃに踏み潰してやりたい。

私は…そう思える程アンタが憎いんや。

なのに。


「絹恵さん。ちょっと聞いて下さいよ…お姉さんが」

京太郎。アンタは…お姉ちゃんが好きで、

「なあなあ絹。京太郎の奴がとうとう…」

お姉ちゃんもアンタの事が好きで、

「やだなあ絹恵さん。俺が一番好きなのは、勿論貴女に決まってますよ」

なのにアンタは自分の破綻に気付いてへん。

「お姉さんの事なんか、何とも思っちゃいませんよ」

お姉ちゃんとの話を楽しそうにする自分に、気付いてへん。

「俺の愛は貴女だけのもの」

ホンマ、ありえへん。

「だから何所にも行かない。他の誰のものにもならない」

そんな暗示を掛けたって、どうにかなったりせえへんのに。

「信じて…どうか信じてください、絹恵さん」

そない辛そうな顔で嘘ついたって、もうどないもならへんよ。

――なあ、京太郎。

アンタはホンマに、酷い男や。

                                  了

前回との関連性はありません
前回が円満(?)な三角関係だったので、なるたけそれとは対照的なものにしました

それでは、また

何とかして芸風を増やしたい
そんな訳で恒例のリクエスト募集→>>451>>453

愛宕姉妹で無理心中とかどうすか

>>451>>453
承りました
一応断っておきますが、俺はビデオレターや入水とかの件は一切知りません…好き嫌いやその他云々が理由ではないです

うちのスレってコメントの付き方が両極端だなー(小並感)

…ホントだ
何にも考えない無教養だからこんな事になっちゃう

気を取り直して投下っす


「貴方はあの子を甘やかし過ぎてますわ。ですからもう少し厳しく接してくださいまし」

「恐れながら、それは貴女様も同じではないかと」

「なんですって!」

「…正直な話、我々がこのような話をするのは不毛であるように思われます」

「不毛だなどと…貴方とわたくし、どちらがあの子を愛しているかの確認ですわ!」

「…やれやれ」



一「…」

京太郎「一さん、どうかしましたか?」

一「…」クイクイッ

京太郎「ああ。またやってるんですか、あの二人」

一「これで何度目になるんだろうね」

京太郎「百回から先は覚えていません」

一「ボク、もううんざりだよ」

京太郎「俺もです」


透華「だいたいハギヨシ、貴方はいつもいつも衣には…」

ハギヨシ「透華お嬢様こそ、衣様を甘やかしておられるでしょうに」

透華「そうでしたでしょうか?」

ハギヨシ「毎晩衣様に絵本をお読みになっているのは、貴女様ではございませんか」

透華「それは…あの子が寝不足になってはいけないから」

ハギヨシ「あの方を独り立ちさせたいのであれば、幼子のような扱いはお止めになった方が」

透華「この前、わたくしに内緒であの子にキャンディーを買ってあげた貴方がそれを言いますか」

ハギヨシ「…はて、わたくしには何の事だかさっぱり」

透華「お陰で衣は虫歯になってしまったではありませんか。ハギヨシ、貴方のせいです」

ハギヨシ「お嬢様…ご自分が虫歯予防の指導をすると仰ったではありませんか」

透華「衣が私の目を盗んで夜食を摂っているだなんて、看過出来ませんわよ!」

ハギヨシ「何の為に貴女様が衣様を寝かしつけているんです!」

透華「ならばハギヨシ、貴方がわたくしの代わりにあの子を寝かしつければよいではありませんか!」

ハギヨシ「それを嫌がられたのも貴女様です!」

透華「…むむむ」

ハギヨシ「何がむむむでございますか」


透華「…そもそもハギヨシ、貴方は誰に言われて衣の世話をしているのです」

ハギヨシ「それは勿論、透華お嬢様からの命によるものです」

透華「そうですわよね。なのに貴方と来たら、衣の教育について何かと物言いが多くて…」

ハギヨシ「…それも貴女様がわたくしに命じられた事です」

透華「もう!ああ言えばこう言う!」

ハギヨシ「わたくしはただ、ありのままを申し上げたまで」

透華「なあにがありのままを申し上げたまで、ですか。影でこそこそ衣の成長日記を書いているような男が」

ハギヨシ「な…どこでそれを」

透華「まさかとは思いましたが、本当にそのようなものを書いていたのですわね」

ハギヨシ「ぐっ、誘導でございますか」

透華「まったく…手のかかる執事ですこと。貴方のような執事、わたくし以外では御せませんわね」

ハギヨシ「…何が手のかかる執事ですか。貴女様の方こそ、手のかかるご令嬢であられるというのに」

透華「何を馬鹿な事を…」


ハギヨシ「時にお嬢様。麻雀研究にはお幾ら程注ぎ込みましたでしょうか?」

透華「…な、何の事かしら」

ハギヨシ「お館様に内緒で使い込んだ経費、お忘れになられたとは言わせませんよ」

透華「う…」

ハギヨシ「おまけに衣様の闘牌相手を見つける為に、随分な額をばら撒いたそうですね」

透華「そ…それは全て衣の為。そう、衣の為ですわ!」

ハギヨシ「人鬼などに衣様が毟り取られて、記憶を失う程の目に遭ったのがですか?」

透華「」

ハギヨシ「わたくしが何も知らないとお思いでいらっしゃった…浅はかですね」

透華「えーとその…男の雀士に、あんな化物がいるなどとは思ってなかったのです」

ハギヨシ「…やはりお嬢様に衣様は任せられません」

透華「冗談じゃありませんわ。訳の分からないモノを書いて悦に入る男に、大事な娘をどうこうされる訳にはまいりません」

ハギヨシ「――勝手な事を!」

透華「それは此方の台詞ですわよ!」


ザッケンナ! チョーシコイテンジャネーゾオラー!

ゴミクズガ-! コノオロカモノメ!

バーカアーホ、ヒンニュウ!

ホモネタヨウインカフゼイガナニヲヌカスカ!



一「…いつも通りだねー」

京太郎「そうっすねー」

一「二人ともバカだよねー」

京太郎「まったくもってーそのとーりですねー」

一「ああ、また部屋が散らかっちゃう」

京太郎「何故だか物損がないだけまだマシです」

一「その辺は気を使ってるのかな?」

京太郎「ひょっとしたら」

一「ならその気遣い、ボク達にもして欲しいもんだね」


透華「…」ボロボロ

ハギヨシ「…」ボロッ

透華「…ハギヨシ」

ハギヨシ「わたくしが悪うございました。お嬢様、本当に申し訳…」

透華「いえ、此方こそ貴方の事を責めてばかりで…」

ハギヨシ「透華様…」

透華「ハギヨシ…」

ダキッ

ハギヨシ「絶対に、衣様を幸せにしましょうね」

透華「勿論ですわ…貴方様」



一「…けっ」

京太郎「いい気なもんだぜ、バカップルってのはよ…ちくしょう俺も彼女欲しい」



カン!

今回はここまでです
では

一応、安価じゃなくても雑談とかからネタ拾う事はあります

追伸
誤解とかされても仕様がないですけど、俺…総合スレで『希望ある?』みたいな事書いてた人じゃないです
…ホントどうしたら良いんだ

いやあの…SSの出来でコメント数に差が出るのは当然なんですが、ここの所その増減があまりに極端だったもので
SSの出来以前に何か落ち度があったのかなと不安になってしまいました…何も無いとは言えませんけど

あー良かった…疑問が解けてスッキリしました
手のかかる奴で申し訳ありません…それと、お気遣いありがとうございます

推理モノは、一色京太郎シリーズのパロディで何か書いてみたいと思っていたり
ただ、原作が本ではないから色々難しいんですよね…元検事の板前・原村京太郎って悪く無いと思うんですが

赤坂京太郎ゆーのもええんちゃうかなー
なー

投下します


須賀京太郎にとって、あの日の麻雀部は遠い遠い昔の話。

決して戻らぬ思い出の日々。

それが彼に残された唯一の安息であった。

悪意があったからではない。

不仲であった訳でもない。

けれど須賀の仲間達は、彼一人を残して旅立ってしまった。

「楽しい麻雀」

ただそれだけを残して。


須賀は、過去に思いを馳せる。

仲間達がいたあの日の事を。

一緒に麻雀を楽しんでいた、心地良い時間を。

ずっと続くと思っていた。

彼も、そして仲間達も同じ気持ちだったろう。

しかしこの世は諸行無常。

万物は常に流転する。

移り変わりの早さが違えど、その理は絶対だ。

抗う事は出来ない。

逃れる事も出来ない。

そして、受け容れないままい続ける事も出来はしない。

「生きている限り」は。


ただ思い出に浸っているのが、生きてる事だと言えるのだろうか。

立ち止まる事。

立ち竦む事。

そのまま停滞し続ける事。

そんなもの、生きているとは言わない。

生きながらにして死んでいる。

須賀の在処は過去にあるから。

彼は、いつまでそうしているのか。

その答えは誰も知らない。

今までも…そして、これからも。

終わりはない。

彼がそれを望む限り、ずっと。


「咲…麻雀って楽しいな」

『何言ってるの京ちゃん。そんなの当たり前じゃない』

「なんだよ咲…俺が誘った時は、麻雀なんか嫌いだって言ってたのに」

『あの当時はいい思い出がなかったんだから、仕方ないじゃない』

「それもそうだな」

『もう…一人でごちてないで早く打とうよ」

「ああ、すまんすまん」

『京ちゃんは麻雀弱いんだから、ボーっとしないで頑張ってよね』

「わかってるって」



「ねえ…あれって」

「色々あって、あんな風になっちゃったんだよ。あの雑用」

「あの人なんかと咲様達が、仲間だなんて笑っちゃうわ」

「今となっては、ただの気狂いだけどね…ぷぷっ」

「ちょっ、笑っちゃマズいよ…くくっ」

「何よ、アンタだって笑ってるじゃない」

「仕方ないでしょ。あの道化を見て笑わない人がどこにいるのよ?」



                                      了

赤坂京太郎はまだ知らないですね

今回はここまでです
では

投下開始



丘の上で、一組の男女が佇んでいる。

寒さで肩を震わせている女を、男がそっと抱き寄せる。

ただそれだけで、女の震えは治まった。

そして、幸せそうな笑顔で女は男を見つめている。

それに応えるかのように、男もまた笑みを浮かべていた。


女の方は、名を宮永咲といった。

清楚という言葉の似合う、可憐な少女である。

およそ勝ち負けの世界が似合わない彼女こそ、魔王と称される麻雀打ちであった。

気弱であった咲が、何故そのような仰々しい二つ名を冠したのか。

…彼女は強かったのだ。

言葉では、到底言い表しようもない程に。

その強さを周りは持て囃したけれど、それは彼女を幸せにしなかった。

咲は麻雀が好きだ。

しかし…常日頃から麻雀の事だけ考え、生きていたい訳ではない。

本を読みたくなる時もあれば、おしゃれをしたい時だってあった。

けれどそんな時間はなかった。

彼女に勝ちたくて挑む者達は、幾らだっていたからだ。

そして、咲はそれを拒めなかった。



来る日も来る日も咲は麻雀を打ち、その都度勝ってきた。

勝つ事は勿論嬉しい。

だが、それによって彼女が充塞する事はなかった。

打ったのではなく打たされたから。

咲の様はグラディエーター…すなわち剣奴のようなもの。

ならば彼女は牌の奴隷…牌奴と呼ばれるべきであろうか。

高校からの3年間、咲はずっとそんな生き方を強いられ続け…疲れきっていた。

もう麻雀は打ちたくない。

その望みに応えたのは、咲の傍らにいる男…須賀京太郎ただ一人だった。


「京ちゃん、ここはいい所だね」

「そうだな」

「このままずっと、二人きりで居れたらいいのに」

「まったくだ」

そう話す二人の顔はとても穏やかで、同時に儚げでもあった。

先の見えない逃避行。

それに対する希望と絶望が、二人をそのようにさせていた。

「今からでも、引き返す事は出来るよ?」

「だろうな」

「…それと私、京ちゃんのせいだなんて思ってないから」

「かもしれない」

「優希ちゃんを振りきってまで、ここに来なくてもいかったんだよ?」

「…んな事言うなよ」

「どうして?」

「俺はただ、お前と一緒に居たくてここに来たんだから」


その言葉に、咲は頬を赤らめる。

「…いいの?私みたいなダメ女にそんな事言って」

「いいんだ。俺はな咲、お前がいいんだ」

彼女は声を震わせながら、

「もう…取り消せないよ?」

「そんなものはいらねえよ。お前がなんと言おうが、ずっと傍にいるから」

嬉し涙を流しながら、

「…馬鹿」

「ああ、俺は馬鹿野郎だ。お前の事、放ったらかしにしてたんだからな」

「……今更……今さら何よ…京ちゃんの…京ちゃんの馬鹿……私、寂しかった…ずっとずーっと、寂しかったよ」

「悪い、随分待たせちまって」

彼と言葉を交わしていく。




「……迎えに来てくれて、ありがとう」







誰も二人を祝福しない。

誰も二人を幸せにしない。

誰も二人を愛さない。

それでも…二人が分かたれなければ、きっとそれでもいいのだろう。

彼女は彼を愛し、彼は彼女を愛する。

それだけのこと。

ただ、それだけのこと。

投下終了


1/2

優希「京太郎。今日は『THANKS PETS DAY』だじぇ!」

京太郎「何だそりゃ?」

優希「ある会社が制定した記念日の事だじょ。ペット達に感謝する日があってもいいんじゃないかって」

京太郎「…それと俺に何の関係があんだよ」

優希「知れたことよ!お前は私の犬なんだから、私にはお前に感謝する義務があるのだ!」

優希「日頃の献身ぶりを称えて、主人である私が褒美を授けてやろう!」

京太郎「へーへー。そりゃありがたいこって」

優希「…ほ、褒美はいらないのか?」

京太郎「さて、どうだろうな。どうか受け取って下さいとでも言えば受け取らんでも……」

優希「こっ、この…バカ犬っ!」

ペシッ

京太郎「あぶっ」

優希「わ…私は寛大だから、生意気を言う貴様のような駄犬にもちゃんと褒美をくれてやる!」

優希「…それじゃ!」

タッタッタッタッ...

京太郎「優希の奴、一体何を投げつけやがったんだ…あ、タコスか」

京太郎「しかもこれ、以前食わせてもらったアイツの自作じゃねえか…うん、やっぱりうまい」

京太郎「…お互い素直じゃねえなあ」




京太郎「そういや俺にも、感謝するべき相手がいたんじゃねえか」


2/2

京太郎「…ただいま、カピ」

カピ「キュ~♪」

京太郎「突然だが、今日はお前へプレゼントを持って来たんだ」

カピ「キュ?」

京太郎「以前お前がテレビを見て物欲しそうにしていた、高級バナナだよ」サッ

カピ「キュッ!?」

京太郎「はは、驚いたか。財布をはたいた甲斐があったぜ」

カピ「キュ…キュ~?」

京太郎「遠慮しなくていいんだよ。たんとお食べ」

カピ「…キュキュ~♪」

パクパクモグモグ...

京太郎「いつもありがとな、カピ。これからもよろしく頼むぜ」

京太郎(…いつまでこうしていられるか分からないけど、俺はお前と過ごせて嬉しいよ)

この話を書いている時にふと、ヨッシーアイランドの「このバカイヌといわないで」を思い出しました
憤 怒 不 可 避

寝るまで投下


淡「ねーねーキョータロー」

京太郎「何だよ」

淡「私ね、ぐるぐる模様のアメちゃんが欲しいんだけど…いいかな?」

京太郎「それなら昨日も買ってやったろう。今日は別のを…」

淡「やだ!私あれがいいもん!」

京太郎「…しょうがねえなあ。今日だけだかんな」

淡「やたっ!」

京太郎「なあ淡…いい加減我侭言うのはやめてくれよ。まがいなりにも、お前は高校生なんだからさ」

淡「えー」

京太郎「えーじゃなくて」

淡「でもさ…キョータローってそんなの言う割には、一度も私の我侭を聞かなかった事ないよね」

京太郎「だってお前がうるさくするじゃん」


淡「それでも突っぱねようと思えば出来るよね。どうして?」

京太郎「俺が泣かせたみたいな感じに見られて、周りからボロクソ言われた事を忘れたか」

淡「…ああ、そんな事もあったねー」

京太郎「やっぱ忘れてたのかよお前…」

淡「だってどうでもいい事だし」

京太郎「俺にとっちゃ死活問題なんだよ!少しはこっちの都合も考えろ!」

淡「うー…めんどいからやだ」

京太郎「クソったれめ」

淡「花も恥じらう乙女をクソ呼ばわりとは、キョータローも随分偉くなったもんだね」

京太郎「…お前の自己評価の高さに、俺は閉口させられそうだよ」



>>487 訂正
×:彼女が充塞→○:彼女が充足

>>502 訂正
×:京太郎「だってお前がうるさくするじゃん」→○:京太郎「だってお前がうるさくするからじゃん」


淡「はむはむ…やっぱりこのアメちゃんはおいしい」

京太郎「満足したか?」

淡「うん!キョータロー、いつもありがと」

京太郎「どういたしまして。俺としては、我侭の数を減らしてくれた方が助かるがね」

淡「うん、それ無理」

京太郎「少しは悩めよ!」

淡「我侭言わなくなっちゃったら、キョータローってばどっか行っちゃいそうだし」

京太郎「そのせいでいなくなるとは考えないのか?」

淡「それはない。キョータローじゃ、そんなの出来っこないんだから」

京太郎「やっぱお前、俺を馬鹿にしてるだろ?」

淡「いーや全然」

京太郎「少しは誤魔化そうとしろよ」

淡「必要ない。だって嘘じゃないんだもん」

京太郎「ホントか?」

淡「ホントだってば!」


京太郎「淡。お前さあ、俺の事は結局どう思ってるんだ?」

淡「んーとね…わかんない!」

京太郎「聞いた俺が馬鹿だったよ」

淡「…馬鹿じゃないけど、考え無しではあるかな」

京太郎「だとしても、淡にゃ言われたかねーよ」

淡「ふふ、そーかもね」

京太郎「やけに素直だな…俺に内緒で変なモンでも食ったのか?」

淡「食べてない食べてない!」

京太郎「そっか…ならいいんだけど。お前に何かあったら、菫さんから何をされるか分かったもんじゃないからな」

淡「この前私をケーキバイキングに連れてった時は、お仕置きでウィリアム・テルごっこをやらされたんだっけ」

京太郎「ごっこってレベルじゃねーぞアレは…下手すりゃ大怪我してたかもしれん」

淡「その心配はしなくてよくない?菫の腕なら、絶対的を外したりはしないって」

京太郎「そうかなあ…」

淡「そうだよ!


京太郎「ああ…無事で済むなら、帰ってすぐ尭深さんの淹れたお茶を飲みたいもんだ」

淡「飲めばいいじゃん!」

京太郎「お前が部活サボるの手伝った俺が、ノコノコ出向いたら何されるか分かるだろ」

淡「危険を乗り越えた先で得られるものは、キョータローに確かな充足感を与えてくれるよ?」

京太郎「んなもんいらねー」

淡「このヘタレ」

京太郎「ヘタレってのはおかしいだろ。こうしてお前の為にリスクをしょってるんだから」

淡「そう言うのなら、もう少しは踏み込まないと」

京太郎「俺に死ねと?」

淡「まあ菫だし、謝ればそれで何とかなるでしょ」

京太郎「もし何ともならなかったら?」

淡「…骨は拾ってあげるよ」



>>504 訂正
×:淡「そうだよ!→○:淡「そうだよ!」
   」


京太郎「いっその事、照さんを味方につけるか。そしたらきっと」

淡「やめてっ!」

京太郎「…淡?」

淡「お願い…今は私だけを見て」

京太郎「おいおいどうしたよ。お前だって、あの人の事は大好きだって…」

淡「そうだけど…そうじゃないの!今はっ!」

京太郎「お、おう」

淡「兎に角今は、テルーの名前を口にしないでよね。絶対だよ?」

京太郎「何でか分かんねえけど、分かったよ」



淡(…テルーがいると、キョータローは向こうにばっかり構っちゃう)

淡(何でかはっきりしないけど…それで私は辛くなるんだ)


京太郎「…もう夜か。今日は星も月もよく見えるな」

淡「わーい♪」

京太郎「淡は本当に星が好きなんだな」

淡「うん!麻雀とおんなじくらい好きだよっ!空に煌く星も、地上で輝く星も」

京太郎「地上で輝く星、か」

淡「何か変かな?」

京太郎「いんや。けど、淡がそんな比喩を用いるとは思わなかったな」

淡「あー私の事、バカにしてるでしょ?」

京太郎「高校100年生だなんて言う奴がさ、バカじゃなくて何なんだよ……」

淡「単なる事実だから仕方ないでしょ!実際私はそれくらい麻雀が強いんだから!」

京太郎「ほーん」

淡「むぐぐ…今に見てろよ」


京太郎「まあ…今はお気が済むまでつき合わせて頂きますよ、お姫様」

 ホント、ものっそいキザったらしい。

 自分は手の掛かる女の世話が出来て偉い、とでも思っているのだろうか。

 だとすれば、実におめでたくて哀れな奴だな。

 そして、そんなアホと一緒に過ごして楽しいと思える自分もだが。

 お姫様。

 そう言われて悪い気はしないのだ。むしろ、もっと言って欲しいくらいだ。

 私がお姫様で、キョータローが王子様。

 そういう陳腐な妄想に浸るようになったのは、はたしていつの事だったか。






京太郎「…星が綺麗だな」

 夜空を眺めて彼は言う。

京太郎「この星のように手の届かないものこそ、見ごたえがあるってもんだな」

 キョータローの言う星とは、ホントに夜空の事なんだろうか。

 それともテルーの事なんだろうか。

 それが分からないからこそ、私は今日も彼女に怯える。

 どうしてだろう…あんなに一緒だったのに。彼女は、私の太陽だったのに。 

 いつの間にか私は、その太陽から遠ざかるようになっていた。

 その答えが分かっても…きっと私とテルーはもう、あの頃のように触れ合えないだろう。

おやすみなのです
今回のは、>>451のお題じゃありません


                       ´              \__

                         /                    マ三三三三三三ニ=-
                  /     /           \     ∨ /⌒> 三三三ニ=-
                         ,′          ヽ           \三三三ニ=-
                   /     _/ │  ∧          .     | ニ二  -=ニ\三三三ニ=-
.                /    / /│ '|  |\  :.       :. i   |\        ̄`丶三三三
           __/      / /  │/│  |   :. |\       :.   |             \三三
         _/´/ /    /| \| | |  |  |│ ::.     |   八   ー―‐=ニマ三\  マ三
       厂| |∨//    人 レl   | ト-|  |  |│ ::.     │ \ \       `マ三)  }三
__,,...  -┤│レ/゙∨   /\l |_|斤テ外八 ^ト--|/--│              ー=ニ二 `マ  /_三
       ││|{ {.  /  ∧ンリ 乂ツ   \|斗テ外、.|       卜、        丶、______ く_三三
       | ∨\八  {  /  Y::/::/  ,    乂)ツ 》│    | /\       \≫==≪\ マニ三
__,,,... -‐ヘ_ \,,>\∨廴_,人          ::/::/ / リ│  │  >ー──=ミ〃    `ヽ∨ニ三
          ̄    \__,))       ヽ      ∠/_7  イ /⌒)丿    \_ノ{ -‐~‐- }ノ三三
                      ≧=‐   -=≦ / ∧|/ / ,.二二二二∨|\___/| ̄ -=

                                 / /  厂∨ / -――=マ 〉|      |
                               ((⌒´     ∨ 〈       ∨/l.     │
                                           `ーヘ      ∨|     │
                                         `、      ヽ、____丿
                                               \     \

こんな風にしているあわあわの事を指でツンツンしたい
投下開始します


咲「あ、京ちゃん。はいこれ」

京太郎「はいこれ、って…何この袋?」

咲「とにかく開けてみてよ」

京太郎「わかったわかった。えーっと中身は…手編みの手袋?」

咲「うん。京ちゃんへのプレゼント」

京太郎「これから冷え込むし、こういうのをくれるのはありがたいんだが…何故に手袋?」

咲「今日は手袋の日なんだって、お父さんから聞いたんだ」

京太郎「へえ。そうなのか」

咲「ちなみに、キャッチフレーズは『愛を贈ろう』なんだって」

京太郎「ふーん。で、俺への愛は親愛なのか恋愛なのかどっちなんだ?」

咲「ふふ、それは内緒かな」


京太郎「ところでさ咲。これからゲーセンにでも行かないか?」

咲「いいね。今日は部活も休みだし」

京太郎「そっか。嫁田の奴と行く約束してたんだけど、断られちまってな」

咲「意外だね。お互い、約束をふいにはしない方なのに」

京太郎「聞いた話じゃ、最近彼女が出来たらしくてさ」

咲「そうなんだ。京ちゃん、先越されちゃったね」

京太郎「ほっとけ!」

咲「そう言えば、何で休みの日にゲーセンなの?」

京太郎「今日がゲームの日だって聞いたからだよ」

咲「ゲームの日?」

京太郎「何でも、『仕事や勉強の尊さをはっきり自覚しながら、ゆとりある遊びとしてのゲームを楽しみ、ゲームと生活の調和が感じられる日』だかららしい」

咲「またえらく長いフレーズだね」

京太郎「確かにな。でも俺、結構いい言葉だと思うぜ」

咲「うん。私達がやってる競技麻雀にだって、通じるものがあるしね」






京太郎「…ふう。結構遊んだな」

咲「私、もうクタクタだよ」

京太郎「慣れない事をするからだよ。お前がダンスゲームで転びそうになった時は、流石に肝が冷えたぞ」

咲「えへへ…ごめんごめん」

京太郎「まあ、お前に何事もなくてよかったよ」

咲「うん。ありがと」

京太郎「それじゃあそろそろ出ると…」

咲「あ、ちょっと待って」

京太郎「どうした?」

咲「折角二人で来たんだし、プリクラでも撮っていこうよ」

京太郎「…まあ、折角だしな」


京太郎「さて、これからどこに行こうか?」

咲「さっき道すがら海鮮料理の店を見つけたから、そこにしようよ」

京太郎「海鮮料理か…いいな。ここは山ばっかだけどさ」

咲「今日はカキ料理を推してるみたいだったね…ああ、牡蠣の日だからか」

京太郎「牡蠣の日?」

咲「勤労感謝の日に、栄養豊富なカキで勤労の疲れを癒してもらおうって事らしいよ」

京太郎「なるほどなー」

咲「それに、今日は外食の日でもあるんだよ。家事で忙しい母親の労を労おうって」

京太郎「…そういや咲のお袋さん、それにお姉さんってもうすぐ戻ってくるんだっけか」

咲「うん!」

京太郎「そっか。じゃあ楽しみにして待ってないとな」



京太郎「だって今日は『い(1)い(1)ファ(2)ミ(3)リー』の日だもんな」


京太郎「…ん?」

咲「どしたの京ちゃん?」

京太郎「いやなに『お赤飯で海鮮お湯漬け』ってのがあってさ」

咲「ああ、お赤飯の日だからだね。今日は新嘗祭って珍味を供える祭りがあるから」

京太郎「あ。そういや親父が言ってたな…今日は祭りがあるのと、『い(1)い(1)つ(2)まみ(3)』で珍味の日だって」

咲「元々今日は、その新嘗祭の日だから祝日だったみたいだよ」

京太郎「ほほう。それじゃあ神事を増やせば、祝日はもっと増えるのかな?」

咲「流石にそれはないよ京ちゃん…」

京太郎「食事に来てまで本を読む咲に言われたかないぜ」

咲「きょ、今日は一葉忌だからいいんだよっ」

京太郎「一葉って…ああ、お前の読んでるソレは五千円札の人が書いたものか」

咲「食事の前でなんだけど…今日は一葉さんの命日だから、本好きな私としては偲んでおかなきゃいけないの」

京太郎「その人…終生金に困っていたのに、お札に描かれるって皮肉なもんだな」

咲「千円札の英世さんだってそうだよ…一応はね」






京太郎「ふー食った食った。美味かったなー」

咲「また随分食べたね」

京太郎「ゲーセンに注ぎ込む金を減らせたからなあ…あ、ここは俺の奢りで」

咲「いいの?私、まだ彼女じゃないよ?」

京太郎「いいよいいよ。今日は色々付き合ったんだからさ」

咲「…それじゃ、ゴチになります」

京太郎「おう!」


オカイケイ、ゴセンエンニナリマース


京太郎「oh...」

咲「一葉さんにさよならだね、京ちゃん」


京太郎「とほほ…これで俺は素寒貧だ」

咲「なら、奢るだなんて言わなきゃいいのに」

京太郎「まあな…けど俺男だし、意地を張りたくなっちゃうのよ」

咲「私の前でも?」

京太郎「ああ」

咲「馬鹿だなあ京ちゃんは。私はどんな貴方でも受け入れるのに」

京太郎「…だからだよ」

咲「何か言った?」

京太郎「いいや、何でもねえよ」






嫁田「…それでお前、今日もキスしなかったのか」

京太郎「あ、あいつとはそんなんじゃねーし!」

嫁田「アホだなお前は。好きって言えばそれで終わりじゃんよ」

京太郎「俺、まだ咲への気持ちがわかんねーからな」

嫁田「三尋木プロみてーな事言うなよ。しかも、すっとぼけてる所まで一緒だし」

京太郎「…すっとぼけたりはしてねーから」

嫁田「まあアレだ、俺達二人じゃお前らの仲にゃ敵わねえよ。少なくとも今はな」

京太郎「そんなもんかね」

嫁田「そんなモンだよ、お前ら二人の有様って…いい夫妻の日に相応しいよ」

今回はここまでです
なんでも昨日は、長野県りんごの日だったそうですね…どうせならそれをネタにするべきだった

それでは

>>476>>482
…てっきり推理モノの人物やと思っとったら、代行やん…>>440といいアホすぎやで俺…

>>509 訂正
この星のように手の届かないものこそ→あの星のように手の届かないものこそ



ドラマCDで嫁田君も喋るんですけど、CVが誰かわっかんねー

あ、違和感の正体はそれですか
すぐに気付かなかった時点でダメダメですけどねー

おつー

>>520
>咲「いいの?私、まだ彼女じゃないよ?」
>咲「いいの?私、[まだ]彼女じゃないよ?」
>咲「いいの?私、[[まだ]]彼女じゃないよ?」
京太郎のヘタレ!

>>536
同感ではあるが、>>521の京太郎の気持ちも判るんだよなー


>咲「馬鹿だなあ京ちゃんは。私はどんな貴方でも受け入れるのに」

>京太郎「…だからだよ」


どんな自分でも受け入れてくれるのが判っているならなおさら最高の自分で告白したいじゃん
自分にも相手にも妥協しないさせないって

読み違えてたらすみません

勿論自分なりの解釈はありますが、読み違えとかはあんまり考慮してません
月並みな言い方ですが、読む人の数だけ解釈は増えますし、そこにあえて作者が正解を出す必要は無いと思います
…前作で前々作の解説をしていますけれど、その辺はまあ…若さゆえの過ちという事でお願いします

眠くなるまで投下


純「ヨッシーって、ホントにいい男だよな」

ハギヨシ「そうでしょうか?」

純「何でも出来る、愚痴は零さない、顔も身体もいいときている」

ハギヨシ「お褒めに預かり光栄です」

純「いやいや。ヨッシーの功績を考えれば、これくらいは当然だって」

ハギヨシ「と、申されますと?」

純「アンタのお陰で、オレたち六人は一緒に居られるからな」

ハギヨシ「はて、何の事でしょう?」

純「ヨッシーが透華の親父さんをどうにかしてなきゃ、今のままでは居られないって事さ」

ハギヨシ「…ご存知だったのですね」

純「当たり前じゃん。オレを誰だと思ってるのさ」

ハギヨシ「誰に知られずとも良いと考えておりましたが…お心遣いに感謝致します」

純「いいってことよ」

 知っているのは、オレだけじゃないんだからな。


一「あ、ハギヨシさん」

歩「おはようございます、ハギヨシさん」

ハギヨシ「お二方ともおはようございます。透華お嬢様はどちらへ行かれましたか?」

一「お嬢様なら、今は屋敷を出て散歩に…」

ハギヨシ「いつも通りでいいのですよ?」

一「えっ…」

ハギヨシ「貴女はお嬢様のご友人。ですから躊躇う事はないのです」

一「で、でも…」

ハギヨシ「ここは、旦那様や奥様の前ではないのですから」

一「…透華って呼んでもいいんですか?メイドをしている時の私が?」

ハギヨシ「『いつも通り』と言った筈です。私に遠慮なさらず、どうか」

一「はっ、はい!次からは是非ともそうしますので!」

ハギヨシ「元気があって大変よろしい」


歩「あ…あのう…」

ハギヨシ「どうされました?」

歩「わ、私もお嬢様を一さんのように呼んでいいのでしょうか?」

ハギヨシ「…それは私が決める事ではありません」

歩「ええと、そのように仰られましても」

ハギヨシ「歩さんは、一体何を恐れているのですか?」

歩「恐れている?私が?」

ハギヨシ「そうです。貴女がお嬢様を大切に想っているのは、私も知っています」

歩「わ、私なんかがそんな…」

ハギヨシ「歩さんは決して要領がいいとは言えませんが、お嬢様の為に一生懸命励んでましたよね?」

ハギヨシ「メイド業務の講習会などにも、足繁く通ってらっしゃったようですし」

歩「ど、どこでそれを!?」

ハギヨシ「私はお嬢様より使用人の全権を預かっております。ですからこの位は当然ですよ」


一「歩…もういいんじゃない?」

歩「一さん…」

一「キミもボクも、透華の事がとっても大事なのは一緒さ」

一「キミがボクらの事を羨んでいる事も…自分の立場をもどかしく思っている事も、多少は想像がつく」

歩「そんな事を貴女に言われたって、私は…」

一「だからさ、もっとみんなで仲良くしようよ」

歩「!」

一「ボク達は、透華のお陰でこうして一緒に過ごせている。かけがえのない日々を送れている」

一「それなのに、ただ見てるだけなんてのは勿体無いじゃないか」

歩「けどお嬢様の心にはもう、私なんかが入り込む余地なんて…」

ハギヨシ「…あの方を、見くびらないで頂きたい」

歩「は、ハギヨシさん…」

一「…」

ハギヨシ「透華お嬢様は、そのような度量の小さな人間ではありません。歩さん、それは貴女もご存知のはず」

歩「も、勿論です!」

ハギヨシ「でしたらお嬢様に伝えてあげてください。貴女の、もっと親しくなりたいという願いをあの方に」

歩「…私、諦めなくてもいいんですか?」

ハギヨシ「ええ、勿論ですとも」

歩「…はい!私、頑張っちゃいますから!」

 ――ハギヨシさん。貴方が上司で本当によかった。


一「流石ですね、ハギヨシさん」

ハギヨシ「流石だなんて。私などでは、お嬢様と親しく出来ませんので」

一「…どうだか」

ハギヨシ「あの方の『冷たい部分』を、私は変えられない」

一「変えようとしない、の間違いじゃないんですか?」

ハギヨシ「さて、どうでしょうか」

一「――尤もそれは、透華の方も同じなのかもしれないですけど」

ハギヨシ「…どういう事でしょうか?」

一「そんなの、ご自分でお考えになって下さいよ」

 この人はいつもそうだ。

 執事だからって、透華の傍には決して近づこうとはしないで。

 それでいて、離れたくないって言うんだからおかしなもんだよ。

 いずれ離れ離れになるか、それともより近しくなるか。

 そのどちらかを選ぶ事しか出来はしないというのに。


智紀「…」

ハギヨシ「沢村さん。今日もネットゲームですか?」

智紀「…うん」

ハギヨシ「たまには外に出て、散歩でもなされてみるのがいいと思いますよ?」

智紀「それならもうやってる。昨日も衣と一緒にあちこち行ったし…」

ハギヨシ「さようでございましたか。そうとは知らず、大変失礼致しました」

智紀「…ハギヨシさんの前じゃいつもこうだし、私は別に構わない」

ハギヨシ「ご容赦頂き感謝致します。では、私はこれで」

智紀「今度は今とは違う姿を見せられるように…頑張る」

 私が、RTSで手も足も出ない相手。

 そんな人が日本に居るとは思ってなかった。だから、彼への関心はとても強かった。

 なのに彼は突然姿を消してしまって…代わりにヘボいのがやってきて。

 暫くして、透華がウチに乗り込んできて…ヘボいのが透華で、私を負かしたのがハギヨシさん。

 ハギヨシさんの事は、後で透華から聞いてから知ったのだけど。

 …いつかまた、あの人と戦えたら。

 そう思いながら私は時たま、RTSをプレイするのだ。


衣「おお!ハギヨシ!」

ハギヨシ「衣様。一体何をしておいでで?」

衣「穏乃と会った時に、山や木への登り方を教わってな…その実践だ」

ハギヨシ「恐れながら、貴女様のお力では難しいかと」

衣「な、なんだとっ」

ハギヨシ「高鴨さんには、類まれなる身体能力と経験がありました。ですが、衣様にはそれが無い」

衣「で…でも穏乃だって、衣とあまり体格が違わないぞ?」

ハギヨシ「鍛え方に差があるのですよ。あの方の真似をすれば、身体が無事では済みません」

衣「…具体的にはどのように?」

ハギヨシ「全身筋肉痛になって、身動きが取れなくなってしまう恐れも」

衣「そっ、それは嫌だぞ…しかしハギヨシ、やはり衣は登ってみたいぞ」

ハギヨシ「左様でございますか。ならば、私が貴女様の手足となりましょう…どうぞ私にお乗り下さい」

衣「うむ。よろしく頼むぞ」



ハギヨシ「…それではっ!」


衣「……」

ハギヨシ「衣様、お加減の方は?」

衣「…衣が悪かった。もう当分は、山や木に登りたいと思わない」

ハギヨシ「…左様でございますか。それでは、私はこれで…」

衣「ま、待ってくれ!」

ハギヨシ「まだ何か?」

衣「ま、まだ身体の震えが治まらんのだ…だからもう少し負ぶさっていてもいいか?」

ハギヨシ「承りました、衣様」

衣「…ああ、ハギヨシはまこと心優しき男だな」

ハギヨシ「私には、勿体無きお言葉です」

衣「そう謙遜するな。お前や透華は、いつだって私を守ってくれていたんだから」

 衣を救ったのは咲だ。

 しかし、衣を独りにしなかったのは相違なく透華達だ。

 家族となってくれたのも、ともに過ごしてくれたのも、そして守ってくれたのも。

 …ハギヨシは、一番長く衣の傍に居てくれた。

 これからも傍に居てくれたら…そのように考えるのは、聊か贅沢過ぎるだろうか。






ハギヨシ「―――ようやく見つけましたよ、透華お嬢様」

透華「…」

ハギヨシ「さあ、私と一緒に屋敷に…」

透華「嫌ですわよ」

ハギヨシ「む…」

透華「私、今は帰りたくない気分ですの」

ハギヨシ「では…どうすればお帰りになっていただけますか?」

透華「…辞めてくださいまし」

ハギヨシ「何を?」

透華「今だけでいいから…執事を辞めて欲しいという事です」



ハギヨシ「…恐れながら、その命には従えません」

透華「ハギヨシ!」

ハギヨシ「あくまで、執事ですから」


透華「…いくじなし」

ハギヨシ「どう仰っても構いませんが、それは譲れないものなのです」

透華「仕事とわたくし、どちらが大事ですの?」

ハギヨシ「仕事です」

透華「――何故なのですか!」

ハギヨシ「仕事が無ければ、貴女様と一緒に居られなくなるからです」

透華「そんなの、どうでもいいではありませんか!一緒に居たいのなら、ただそう望めばいいではないですか!」

ハギヨシ「ですから私は、執事であろうとするのです。執事に固執するのです」

透華「どうしても…駄目なのですか」

ハギヨシ「私と貴女は主従の関係になってしまった。この想いと我が職務は、決して交わらない」

透華「…頑冥な人」

ハギヨシ「…申し訳ございません」

透華「ですがそれはわたくしも同じ。そんな貴方に、私は焦がれているのだから」

ハギヨシ「透華お嬢様、何を―――!」

 彼の言葉は阻まれた。彼女の、情熱的な口付けによって。

 止めようと思えば止められたはずだ。少なくとも、ハギヨシにはそれが出来た。

 だが出来なかった。

 その理由を知る間もなく、彼は彼女と口内で舌を絡ませる。

 深く、さらに深く。

 どちらからではなく、どちらも互いを求めていたかのように。

 …最早言葉は不要だった。

 ハギヨシが、透華を押し倒す。二人を止める事など、誰に出来るというのか。

 そして―――。

今ならエロいの書けそうな気がしたけど、そんな事は無かった
意気地なしと言われても構わない…酒が切れた俺にはこれが限界だったのです

それでは、また

>>544 訂正

×:私が、RTSで手も足も出ない相手。
○:私がゲームで手も足も出ない相手。

×:ハギヨシさんの事は、後で透華から聞いてから知ったのだけど。
○:ハギヨシさんがあの相手だって知ったのは、それから随分後の事だ。

乙です、別にしっとりした描写だけでここの透華とハギヨシには必要ない気もする


1/7


清澄高校麻雀部は、晴れてインターハイの王者となった。

結果として宮永咲は家庭の問題を解決し、

原村和は清澄高校への残留を許され、

片岡優希は感激のあまりタコスを食べまくり、

染谷まこは実家の雀荘に多くの客が押し寄せた事でその対応に追われ、

竹井久はそのたらしぶりで浮き名をを流され、

そして須賀京太郎は…相変わらず雑用ばかり。

まあ…何はともあれ、麻雀部全員が幸せを甘受していたのだ。



…ずっとそのままであればどんなによかったろうか。


2/7


話は変わるが、宮永咲は須賀京太郎に片思いをしていた。

「嫁さん違います!」発言などで誤魔化していたが、彼女は彼が大好きだった。

少なくとも、彼なしに生きていけない程度には。

宮永咲は方向音痴故、よく道に迷う。

それを見つけるのは決まって京太郎であった。

それがたとえ新宿駅や梅田地下街、空中監獄であろうと。

須賀京太郎は、特別いい男ではないかもしれない。

けれど、迷子の咲を救ったのはいつだって京太郎だ。

そんな彼に彼女が惚れない道理は無かった。


3/7


…インハイを制覇したら、咲は京太郎に告白するつもりでいた。

京太郎が麻雀部を退部するのを引き止めた上で。

「今の所は何も無いですけど、この先俺の存在は部にとって邪魔者になるでしょう」

彼がそう久に話している所を、咲は図らずも立ち聞きしてしまったのだ。

「…そんなのですれ違うのは、やだよ」

彼女は一度、家族との離別を経験している。

その彼女が近しいものと疎遠になる事など、看過出来るはずもなく。

…告白という結論に至ったのは、彼を麻雀部に繋ぎ止める為だ。

咲は京太郎を呼び出し、待ち合わせ場所に向かう。

しかし彼女がそこで見たものは、

「…んっ、んんっ……」

「…っ!」

原村和と須賀京太郎がフレンチ・キスを交わす場面であった。


4/7


和「…あら、咲さん」

京太郎「さ、咲!どうしてここに!?」

咲「…二人とも、一体部室で何してたのかな?」

和「何って…キスに決まってるじゃないですか」

京太郎「お、おい!」

咲「それをわざわざ部室でする意味って、一体何なの?」

和「見せ付ける為ですよ。そう、咲さん貴女にです」

咲「あ”?」

京太郎「…咲も和も、もうその位にしとけって……」

咲「京ちゃんは黙ってて!」

京太郎「ひっ!」

和「あらあら…須賀君ったらこんなに怯えてしまって」

咲「ねえ、和ちゃん…どうして私の京ちゃんとキスしてるのかな?」

和「…貴女のモノだって、いつ何所で誰が決めたんですかね?」

咲「――ふざけないでよ!」

和「ふざけているのは貴女ですよ、咲さん」


5/7


咲「そもそも、和ちゃんって京ちゃんの事が好きだったの?」

和「どちらかと言えば嫌いでしたよ。出会った頃は」

咲「なら、どうして…」

和「彼の私を見る目はとっても厭らしかったですし、麻雀だって弱かった」

和「なのに自惚れだけは強くて…低脳と呼ぶに相応しい男だと思ってましたよ」

咲「…随分な言い草だね」

和「けれど部活で一緒に過ごしているうちに、彼への見方は変わっていきました」

和「人の嫌がりそうな頼みも案外素直に聞きますからね…優希が言うように、よく出来た犬です」

咲「ねえ和ちゃん。あんまりふざけた事言ってると、潰すよ?」ゴッ

和「出来るものなら、ね。それに私だって、彼の事は相当に想っているんですよ」

咲「嘘だッ!!!」

和「嘘を吐くなら、そもそもこんな迂闊はしませんよ」

咲「だとしても和ちゃん、私は貴女を……!」


6/7


和「…最初は嫉妬してました。咲さんと須賀君の関係に」

咲「えっ?」

和「私の方が貴女を想っていたというのに、貴女に近しいのは彼だった」

和「私には言えないような事でも、彼になら言えた…それも、普段はとても気弱で大人しい貴女がです」

和「だから尚の事彼が憎かった…どうにかして追い出してやれないかとさえ考えましたよ」

咲「……」

和「なのにどうしてでしょうね…私、須賀君を好きになっちゃいました」

和「彼が私の事を想っていると知ったからなのか、健気に雑務をこなす姿に心打たれたからなのか」

和「或いは、思いの外彼が麻雀に真剣であったからなのか…今となっては何も分かりません」

咲「…和、ちゃん」

和「けれど、この胸に抱いた想いは…須賀君ともっと一緒にいたいという願いは、本物だって思います」

和「だから咲さん…貴女に彼は渡しません!」

咲「絶対に許さないよ、それだけは!」



………

……


7/7
















咲「え、えーと」

和「ぶっ、文化祭の出し物はこの演劇にしようと思うんですけど」

京太郎「…どうすか?」

久「うーん…個人的には続きに興味があるのだけれど」

優希「私が蚊帳の外だし」

まこ「第一、そげなもんを出し物にしちゃいかんじゃろう。演技でディープキスとかはのう」

咲「そんなー」

和「私達、一生懸命頑張ったんですよ!?」

京太郎「それはひとえに、新入部員獲得の為!」



まこ「…アホかアンタら」

もう少し書ければ良かったのになあ…いつかリベンジしたい

それでは、また


京太郎や久の誘いで、再び麻雀をする事になった咲。

しかし彼女は類まれなる方向音痴だった。

流石に常日頃から迷子にはなってはいないが、これは大きな懸念材料だった。

修学旅行は大阪・奈良・京都なのに、辿り着いたは北九州。

そのような事が何度かあったからだ。

大体の場合京太郎に見つけられたが、この先彼女の症状が悪化しないとも限らない。

犬と呼ばれた京太郎も、高校入学時には限界を感じ始めていた。

だが、天は彼と咲を見放してはいなかった。

事実彼らは、原村和という天使に出会えたのだ。

「おっきなおっぱい」

「iPS」

「咲さんかわいい」

これら三種の神器を持った彼女が、新たなる咲サーチャーとなった事により懸念は失せた。

それからすったもんだあって、清澄高校麻雀部は無事インハイに出場出来た。

――だが、問題は未だ解決していなかった。

咲の方向音痴それ自体は沈静化しておらず…むしろ悪化の一途を辿っていた。

…それに、方向音痴は一人じゃない。


京太郎「すまん。俺が目を離した隙に」

和「須賀君のせいじゃないですよ。私も、まさかあの一瞬で姿を消すとは思いませんでしたから」

京太郎「ありがとな。そう言ってくれると助かるぜ」

和「兎に角、決勝までに咲さんを捜さなければ…生憎私も副将戦が近いんですけど」

二人にこれといったフラグは、勿論無かった。

だが、二人で苦難に立ち向かったのもまた事実。

そんな彼らの間のには、確かな信頼関係が築かれていたのだ。

京太郎「まあ、何だかんだ言っても和と一緒に過ごせるのは嬉しいよ」

和「…きゅ、急に何を言い出すんですか貴方はっ!?」

数多の試練を乗り越えた末、何だかんだでいい感じになってた二人。

しかし…









「あれ…和?」

「こんな所で男の人と二人きり…和ちゃんも存外大胆なのです!」

和「…憧、それに玄さん。また会いましたね」

京太郎(…空気読めよ!)

なかなかどうして、この世はとかくままならない。


憧「まさか、決勝前にまた会えるとは思ってなかったわね」

玄「うんうん」

和「二人共…どうしてここに来たんですか?」

あ、ある意味助かったんですけどね。

憧「えっとさ…和達、シズを見なかった?」

和「いえ、私達は見かけてませんが」

憧「そっかー…そっちにも来てないんだ」

和「…まさか穏乃も迷子になったんですか?」

玄「そうなんだよー。ちょっとその辺走ってくるって出て行ったきり戻って来なくて」

和「相変わらずなんですね……」

京太郎(…むう。やはり松実玄さんのおっぱいはいいものだな!)

和「…何をジロジロ見てるんですかっ!」

京太郎「ぶべらっ!」


私の前で、玄さんの胸をまじまじと…許せませんよこれは。

…やだ、私ったら何を考えて……。

憧「どしたの和~?対局中みたいに頬を赤らめちゃって」

和「…いえ、何でもありませんよ。ええ」

憧「ふーん…ま、せいぜい頑張ってよ」

和「なっ…何を頑張れって言うんですか!?」

憧「…さあ?」

玄「和ちゃんなら、もう分かってるんじゃないかな~♪」

和「…ううっ」

決勝前に、精神攻撃なんて汚いですよう……。


京太郎「あの、ちょっといいですか?」

憧「…ななな、何でしょう!?」

きゅ、急に話しかけてこないでよ!

京太郎「和の奴をからかうのは、その辺にして貰っていいっすか?」

憧「えー…あーうん。ですよね」

…シズを捜してここまで来たの、忘れてた。

玄「思わぬ事態に喜んじゃって、つい…」

それにしても、私の方が胸を見られるとは考えてなかったよ。

和「須賀君…」

京太郎「気にすんな。それにこちらも向こうも、まずは迷子を捜さなくちゃならないし」

和「…そう言えばそうでした」

京太郎「おいおい!」


憧「えっ、そちらも迷子捜しなんですか?」

京太郎「そうなんすよ。咲の奴、トイレに行ったきり戻ってこなくて」

憧「…大変なんですね」

あ…この人って、

京太郎「ええ…お互いに」

多分この人も、

憧「…折角ですし、一緒に迷子を捜しません?」

京太郎「あ、いいですね」

俺(私)と同じ、迷子に困った苦労人だ!





―――この時はまだ、誰もがいつも通りに迷子を見つけてお終いだろうと考えていた。

続きは次回
何話で終わらせるはまだ考えてませんが…まあ、何とかなるでしょう

それでは

阿賀野と矢矧が竜華と数絵ちゃんに見える…これは恋なのか変なのか

投下開始します


京太郎「…まさか、自分が合宿に参加出来るとは思ってませんでしたよ」

ハギヨシ「同じく」

俺こと須賀京太郎は今、自分がハブられていない事実に感動していた。

感激し過ぎて、現実味を感じられない程だ。

京太郎「インハイ前の合宿なんて、教えてすら貰えなかったですからね」

ハギヨシ「…私もです」

男であるが故の悲しみだった。

理由などどうでもいい。ただ、自分が蚊帳の外にされてしまった事が悲しかった。

だが、その苦い思い出にもようやく折り合いがつけられるというものだ。

京太郎「今度こそは、皆と一緒にこのバカンスを楽しみたいですね」

ハギヨシ「京太郎君…名目上は合宿ですのでお忘れなく」

京太郎「はは、分かってますよ。ハギヨシさん」

期限は3日。

ならば悔いが残らぬように、至福の時間を精一杯堪能したい。


京太郎「…ハギヨシさん、これは」

ハギヨシ「誠に恐縮ですが、お嬢様からの指示ですので」

…なんて事だ。

穏乃「大星さーん、こっちこっち~♪」

俺は、夢見る事すら許されないのか?

淡「あはは…待ってよシズ~♪」

こんなはずじゃなかったのに。

衣「咲、砂で不朽の城を造るぞ!」

求めていたのはこれじゃない。

咲「衣ちゃん…流石にそれは無理なんじゃないかな?」

衣「何を言うか。たとえそうでも意気込んでくのは大事だぞ?」

俺は夢を見たかったんだ。

和『京太郎さん♪』

美穂子『若っ♪』

玄『京太郎君♪』

宥『…きょ、京君』

男の夢が詰まったまあるいものに。

なのに、なのにどうして……。


春菜「あれ、お兄さん元気ないねー?」

桜子「だいじょーぶー?」

凛「折角海に来たのに、そんな調子でいちゃ勿体無いよ!」

よし子「そうだよねー。もっと元気を出さなくちゃ」

ああ…確かこの子達って、阿知賀女子の関係者だっけ。

今はその優しさが辛い。

自分がいかに穢れているかを思い知ってしまうから。

…出来れば優しくしないでくれ。

心にぽっかり開いた穴が、ますます大きくなってしまう。

未来「俯くよりも、笑ってた方が幸せですよ?」

綾「ひょっとして…ここへは来たくなかったんですかー?」

ひな「…私達とじゃ、一緒に楽しめないんですか?」

ああ、やめろ。やめてくれ。

そんな目で俺を見ないで。憐れむ様に俺を見ないで。


…京太郎君は苦悩しているようですね。かつての私を思い出します。

さぞや辛い思いをしているでしょう。なにせ私もそうでしたから。

彼と私は同じ性の持ち主です。

それは初めてお会いした時すぐ分かりました。

歳不相応な子供の世話をしている人間特有の、悲しみに満ちた瞳。

見間違えるはずはありません。

悲しいですが、世に平等はないんです。

富める者はより富めるし、貧する者はより貧する。

そういう風になっている。事実、衣様は出会った頃と何も変わらない。

ご自分をお姉さんと自負しているのがまた泣ける。


咲「もう、衣ちゃんったらはしゃぎすぎだよ。お城が少し崩れちゃったよ」

衣「す、すまない…今度は絶対、衣お姉さんのいい所を見せちゃうからな」

お姉さん。

ベッドで絵本を読んでもらう、お姉さん…難解な本も好んで読まれますけれども。

衣「…よし!これならどうだ?」

咲「衣ちゃん…何で屋根にエビフライなの?」

衣「えーとえーと…美味しいから!」

色気より食い気。

これをお姉さんと言うには無理があり過ぎる。

あの方にとって、ハンバーグエビフライが特別なものと知っていても。

咲「それにしても、形は本物みたいな出来栄えだね」

衣「そうだろうそうだろう!」

確かに宮永さんの仰る通りです。衣様には、芸術の才能がおありのようで。

…しかし、年上らしさは感じられませんね。


京太郎「は、ハギヨシさん」

ハギヨシ「言いたい事は分かります。貴方の望みはここに無い」

京太郎「…何で胸が無いんですか!?」

ハギヨシ「お一人だけ、そうではない人がおりますでしょう?」

京太郎「俺は部長に言われたんです!『いい胸…いや、いい夢が見れる』って!」

ハギヨシ「騙して悪いが…という事でしょう」

京太郎「PADじゃないだけましですって!?ふざけないで下さいよ!」

ハギヨシ「仕方がないのですよ。インハイに盗撮犯が現れた…そんな事件があったのですから」

京太郎「な、なんすかそれ…俺は知りませんよ?」

ハギヨシ「貴方にだけは言えなかったのですよ…この写真を見て下さい」

京太郎「えっとこれは…っ!?」

ハギヨシ「何が見えますか?」

京太郎「こ…これって俺の写真じゃないですか!」

ハギヨシ「その通りでございます」

京太郎「ございますじゃなくて…その、どうして俺が盗撮なんか」


ハギヨシ「そのですね、インハイでは以前から盗撮が横行していました」

京太郎「…へ?」

ハギヨシ「撮影対象や購買者は男女問わず。それはそれは写真が良く売れたそうです」

ハギヨシ「そして…売れ筋の一つだったのが貴方の写真」

京太郎「お、俺が!?」

ハギヨシ「貴方が汗水流して働く姿が、かの佐○男子を想起させると評判でしたようで」

ハギヨシ「そして需要が増えた結果、犯人はより過激な写真を求めるようになったのです…これを」

京太郎「俺の、裸…こ、こんな際どい場面のものまで…どうしてこんな…」

ハギヨシ「さて…私の口からは何とも」

京太郎「兎に角これが原因で、不参加者が多くなったんですね」

ハギヨシ「そうですね…一応はそういう事になります」

京太郎「…一応?」

ハギヨシ「知らない方が貴方の為でしょう」


京太郎「まあ、ハギヨシさんがそう言うのなら」

ハギヨシ「恐縮です。それと…一つお伝えしたい事が」

京太郎「何でしょう?」

ハギヨシ「持たざる者も存外悪くはありませんよ。小さき事もまた良き事です」

京太郎「阿知賀の子達を見ながら言わないで下さい。ハギヨシさん、危ない人みたいです」

ハギヨシ「…危うさが目に見えるとは限りませんよ」

京太郎「ど、どういう事です?」

ハギヨシ「おっぱいには夢など詰まってはいません…ただ、煩悩があるだけです」

ハギヨシ「それならば、たとえもどかしくとも小さいままで良いのではないでしょうか?」

京太郎「……」

その時の京太郎には、ハギヨシの言わんとする事が少しも分からなかった。

盗撮事件についても、結局はぐらかされたままで。

けれど…後になって全容を知ると、やはりハギヨシの言う通りだったのだと京太郎は悟った。

…おっぱいには、数多の煩悩が詰まっている。

グラマーばかりが人生じゃない…ロリ体形でもいいじゃないか。

そう思いながら、須賀京太郎はまた一つ大人になった。



カン!

ま、まあ…ロリというのも悪くないかもって話ですよ

それでは、また

申し訳程度の地の文ではあるけど視点変わりすぎ

○撮影対象や購買者は男女問わず
○売れ筋の「一つ」だったのが京太郎の写真

○購買層が巨乳だけとは限らない

>>586
仰る通りですね
ざっと見返しただけでも視点が変わる話が半数以上ありますし、内容以前の点で読みづらくしているのは否定出来ません

ホント何やってんだろ…

今回の話の意味がよく分からん

ロリ(貧乳)勢しかいない→他は合宿自体に不参加?それとも別の場所にいるだけ?
盗撮が横行してるせいで不参加多数→盗撮はインハイ中だし合宿には関係なくね?身内の犯行で他の人が犯人捜ししてるってこと?
その中には京太郎の写真もあって人気だった→ロリ勢と一緒に隔離してる理由にはならない、ってか盗撮事件との繋がりがわからない

>>592
俺も書いててよく分かってないです…眠い時に書くのはやっぱダメですね

まーあの場にいない面子は全員盗撮に一枚かんでるのは確かです
こども応援団のみんなはその代わりに招待されたってことで
途中からオチが頭から行方不明になりましたし、即興はなるべく止した方がいいですね

投下開始します


咲「お姉ちゃん…私」

照「いいんだよ咲。やっぱりお菓子は分け合って食べるべきだったんだよ」

京太郎(イイハナシカナー?)

和(多分…いい話でしょう)

まーこんな感じで姉妹が和解し、宮永家のゴタゴタは幾分か解消されました。

そんでもって。

照「あ、ふと思いついたんだけど」

咲「何?」

照「京太郎君、少しの間預からせてもらっていいかな?」

咲「うん、いいよ」

京太郎(あれ、俺の意思は?)

和(もし須賀君が断ったら、事態がまた拗れちゃいますよ?)

京太郎(…あの笑顔が曇っちゃう?)

和(イエス)


照「京太郎君もそれでいいかな?」

京太郎「は、はい!」

京太郎(くっ、あからさまな営業スマイルなのに可愛いって思っちゃう…悔しい!)

照「それじゃあ少しの間だけど、白糸台の『マネージャー』として頑張ってね!」

京太郎「えっ…あ、はい」

こうして須賀京太郎は、少しの間白糸台の「マネージャー」になる事が決まりました。

やっぱり他校からは部員として認識されてないようでした。

京太郎「の、和…俺って」

和「大丈夫ですよ。私達5人はみんな分かってますから」

京太郎「ううっ、和の優しさが胸にしみるぜ……」

まあ…そんな訳で京太郎は、照たちのいる白糸台にお邪魔する事になったのです。


菫「須賀君も大変だな。突然こんな事になってしまって」

京太郎「まあ、仕事ですから」

菫「…本当は君だって部員だろうに」

京太郎「…誰からそれを?」

菫「原村さんからだ」

京太郎「…のどかぁ……」

菫「君にとっては気の毒な話だろうな…雑用だのマネージャーだのと思われるのは」

菫「だが心配しなくてもいい。幸いここでは指導要領もしっかりしている…」

「タロー!」

京太郎「あ、淡!?」

淡「あのねあのね、私チョコタコが食べたいんだけど…いいかな?」

京太郎「…ああ、勿論だとも」

淡「やたっ!楽しみにして待ってるね!」

京太郎「うむ。今日も腕によりをかけて作るからな」

淡「それじゃ、また後でねー」

京太郎「おう」


菫「…ウチのが手間かけさせてすまない」

京太郎「大丈夫です。優希の世話で慣れてますから」

頼まれ事は、必ず引き受ける。

いつの間にか京太郎にはそんな性が身についてました。

京太郎「それじゃあ俺、家庭科室に行ってきますね」

菫「あ、ああ」

菫(家庭科室にこもる麻雀部員か…もはや料理部員じゃないか)

案の定京太郎は、料理の修行でここに来たと勘違いされる事が多かったようです。

時には料理部員に指導を受けてた事もあったそうな。

ちなみに彼の手際はかなり良かったらしいです。

恐らくは、とある執事から多少の指導を受けたからでしょうか。


尭深「…精が出るね京太郎君」

京太郎「あ、尭深さん」

尭深「今日も淡ちゃんのお菓子作り?」

京太郎「そうなんですよ…どうにも断れなくって」

尭深「…折角だし、私も手伝ってあげるよ」

京太郎「いいんですか?」

尭深「丁度私も和菓子を作り終えた頃なの。大丈夫、二人で作った方がきっと楽しいよ」

京太郎「た、尭深さん…」

尭深も週に一度は家庭科室に来ているらしく、菓子を作っては部員に振舞っているようです。

お菓子を食べてみんなでほのぼの。

虎姫たちをはじめ、白糸台の麻雀部は案外のんびりしてます。


京太郎「ふー出来た出来た。尭深さん、それに料理部の皆さんありがとうございます」

尭深「ふふ、どういたしまして」

料理部部長「いいってことですよ。こちらも二人からはいい刺激を受けてますからね」

京太郎「刺激?」

料理部員A「そりゃまあこ…じゃなくて料理作りへのモチベが高まってるんですよ」

料理部員B「二人とも、美味しそうなものばかり作ってますからね」

京太郎「あ…ありがとうごさいます」

尭深「こちらこそ、毎度毎度間借りさせてもらって助かります」

料理部員C「まあウチも、常にみんなで料理を作ってる訳じゃありませんからねー」

料理部員D「よろしければ、今度は試食をさせてもらいたいです」

京太郎「はは、その時はお手柔らかに」

尭深「…料理対決というのもいいかも知れませんね」

料理部部長「あ、それいいですね!」

…ホントにこの二人は麻雀部員なんでしょうか?

まあ、麻雀プロの中にもアイドルや傭兵がいるんですから大丈夫なのかもしれません。


京太郎「…いけね。すっかり忘れてた」

尭深「どうしたの?」

京太郎「俺、誠子さんと約束してたんです…そういう訳で失礼しますね」

尭深「京太郎君、タコスはどうする?よければ私が淡ちゃんとこに持っていくけど」

京太郎「恐縮ですがよろしくお願いします。それでは!」

尭深「…消えちゃった」

料理部部長「まるで忍者みたいですね。あれも執事さんから手ほどきされたんでしょうか?」

尭深「さあ……?」

料理部員A「ところで渋谷さん。最近はよくこちらに来てますよね?」

尭深「ええ…そうですけど」

料理部員B「ひょっとして、誰かを探しに来ちゃったりなんかしてます?」

尭深「!」

料理部員C「おやおや~?」

料理部員D「これはひょっとするとひょっとしますよ~」

尭深「す、須賀君とはそんなんじゃありませんからっ!」

料理部部長「…誰も須賀君とは言ってませんよ?」

尭深「…きゅう」

恋は盲目。

自分の胸を真剣な面持ちで見る京太郎を、尭深はカッコいいとか思っちゃったみたいです。


誠子「…随分遅かったじゃないか」

京太郎「すみません。つい料理に熱が入っちゃって」

誠子「私は君が鯉の飼育に興味があるからと聞いてここに来たのに…ひどいなー」

京太郎「亦野さんの分も作ってきましたから、これでどうか」

誠子「うむ、よろしい」

なんだかんだ言って、結局彼女もタコスが欲しかっただけのようで。

そりゃもう美味しそうに食べてます。


京太郎「…それにしても、この時期の鯉はよく餌食べますねえ」

誠子「水温が下がりがちになってるし、冬に備えないといけないからね」

誠子「なにより、今は鯉が一番成長する時なんだ」

京太郎「なるほど」

誠子「だから鯉や池の様子はよく見ておかなきゃね。ちなみに10月になると、飼育がもっと難しくなるよ」

京太郎「大変ですね。俺もカピバラ飼ってますから、他人事には聞こえませんし」

誠子「だろうね。けど、手間がかかるからこそやりがいがあるって思える。須賀君もそのクチだろ?」

京太郎「勿論ですよ!」

白糸台のフィッシャーはブリーダーでもあったのです。

ですからブリーダー同士、色々共感できるものがあるんでしょう。


照「…京太郎君。ここで過ごすのは楽しい?」

京太郎「ええ…とっても」

照「お菓子作りも上手くなった?」

京太郎「はい!」

照「主夫力上がった?」

京太郎「…はい!」

照「それはよかった。君にはもっと、咲の世話をしてもらわなくちゃいけないからね」

京太郎「…どういう事です?」

照「照魔鏡で君を見て確信した。君なら咲と添い遂げられるかもって」

京太郎「…へ?」

照「だからまあなんていうか…君が咲に相応しいかどうか、花嫁修業がてら試してみようかなって」

京太郎「は、はあ…って、俺の方が嫁ですか!?」

照「うん。だって咲もそう言ってたし」

京太郎「『嫁さん違います』ってそういう事なのかよ…あ、ちなみに麻雀は?」

照「あれ…君ってマネージャーじゃないの?」

京太郎「…俺も麻雀部員なんですけど」

照「あ…ああ、そうなんだ」

京太郎(よくよく振り返ってみると…俺って殆ど麻雀打ってなくね?)

頼りがいがあると言うのも考え物です。

頼み事を断らない京太郎にも非はありますが…彼はこの先どうなってしまうんでしょうか。

…案外、このままでも彼は幸せかもしれないですけど。



カンッ

この後、京太郎を巡って清澄と白糸台が奪い合いをしたとかしなかったとか
どっちにしても、この京太郎じゃ麻雀は打てなさそうですが

それでは、また

皆様方、いつも閲覧やコメントありがとうございます。

今回投下しました分が>>451のお題です。書き忘れてました。
色々懲りない奴ではありますが、今後ともよろしくお願いします。

投下開始します


執事、ハギヨシ。

龍門渕透華に仕える、神出鬼没な万能さんである。

普段は主人の透華と衣の世話係をしており、使用人の監督なども務めている。

ぶっちゃけエライ。

少なくとも、使用人の中で彼に物言い出来る人はいない。

それがたとえ、透華の友達である一であってもだ。

そんな彼ですが、非番の時には何をしてるか誰も知らない。

透華か衣に呼ばれぬ限り、姿を現さないのだ。

いつもどっから現れるのか。

エトペンの傷を治したり、外に厨房を用意しちゃったりする謎の手腕。

そして…未だに明かされない彼の名前。



これは、謎しかない男の核心に迫る物語である。


ハギヨシ「ふむ、今日も長野は平和ですね…相変わらず自然が美しい」

ハギヨシ「こののどかな環境があってこそ、私はいつも健やかでいられる」

ハギヨシ「…さて、今日も日課の仏像彫刻を……」


 「うっ、うわああああっ!」

 「智美ちゃん!ストップ、スト――ップ!」

 「加治木先輩…私達、死んじゃうんすか?」

 「あ、諦めるんじゃないモモ!おい蒲原、お前ホントに運転上手くなったのか!?」

 「ワハハ、それなら心配ないぞ。秋名スピードスターズってチームの人達から指導を受けたからな」

 「…お前それ、名の知れた走り屋チームじゃないか!」

 「ふふ…先輩、やっぱりダメなんじゃないですかー!やだー!」


ハギヨシ「…どうやら今日も休めないみたいですね。とうっ!」

シュバッ!


睦月「はは、前から対向車が来ないのが救いだね」

佳織「言ってる場合じゃないよ睦月ちゃん!このままじゃみんな死んじゃうんだよ!」

桃子「…三度目の正直って思ってたんすけどね」

智美「心配しなくてもいいぞー。走り屋としてそれなりに経験は積んだからな」

ゆみ「それはレースと同じで、対向車などを考慮しない運転だろうが!」

ブロロロロロロ...

ゆみ「…ん?」

桃子「せ、先輩!前から対向車がっ!」

睦月「もうだめだぁ…おしまいだぁ……」

佳織「私、生まれ変わったら『せのぶら』ってタイトルの番組出たいな」

智美「佳織。それは長野じゃ放送してないぞー?」

ゆみ「言ってる場合か!それより前見ろ前!」

智美「前って…あ」

ゆみ「どうにかしてかわせよ!走り屋なんだろ!」

智美「生憎、障害物のかわし方なんて習ってないしなー」

ゆみ「畜生、お前を信じた私達が馬鹿だった!」

…その場にいた誰もが、自らの死を覚悟した。



「素敵滅法!」


睦月「やだやだ…私、まだ死にたくないよぉ…え?」

佳織「私もだよ睦月ちゃん…あれ?」

桃子「先輩方…どうやら私達、助かったみたいっすよ」

不思議な事に、対向車との衝突は避けられていた。

車は何事もなかったかのように走っている。それも普通に。

桃子「それにしても、一体何があったんでしょうか?」

ゆみ「さあな。どこからか男の声がしたのは確かだが…ん?」

桃子「どうしたんすか…ふぇっ?」

ゆみ「あ、貴方はどうして運転席に…えーっと確か」

ハギヨシ「龍門渕の萩原です。ハギヨシと呼ばれる事が多いですが」

桃子「か、かおりん先輩はどこにやったんすか?」

ハギヨシ「木に吊るしてます」

桃子「へっ?」

ハギヨシ「あまりにおいたが過ぎてらっしゃったので、その罰として」

ゆみ「…まあ、仕方ありませんね。我々も向こうも、奴のせいで死に掛けましたから」

ハギヨシ「よろしければ、今度私が指導させていただきましょうか?」

ゆみ「是非!」

桃子「このままほっといたら、間違いなく誰かが死にます!」

佳織「彼女とは幼馴染ではありますが、容赦してとは言いません。むしろ容赦しないで下さい!」

睦月「…あの人に、私達が受けた恐怖を味わわせて欲しいです」

ハギヨシ「ウィ、メドモワゼル」




…こうして、鶴賀学園麻雀部は全滅せずに済んだのだ。

智美「うう…もう荒っぽい運転はしないぞ…」

ゆみ「当たり前だ!」


ハギヨシ「…この前は、折角の休みが台無しになってしまいました」

ハギヨシ「対向車の方々へ謝罪に行ったり、蒲原さんの運転指導をしたり…色々ありました」

ハギヨシ「折角岩手に来たのです。今度は何のトラブルにも出くわしたくはないですが」

「うわあああぁあぁぁあん!やめて!やめてよぉ!」

ハギヨシ「!?」


 「黙ってろガキが!お前を外に出しちゃ俺らが迷惑するんだ!」

 「やだやだ!私戻りたくない!もう村には戻りたくないんだよー!」

 「…うるせえ!」

  バキッ

 「きゃあっ!」

  トスッ

 「テメーは俺らのオモチャなんだよ。身の程弁えろってんだ」

 「心配すんな。大人しくすりゃ気持ちよくしてやるからよ……」

 「ひっ!」

 「いいねいいねェ、さいっこォだねェエ!!」


ハギヨシ「……」

シュタッ!


「ぎひひ…いたぶってやるぜ」

「…失せろ」

 グシャッ

「が…えぇっ」

 ドサッ

「な、何だ!?」

ハギヨシ「貴方がたのような下種には、死すら生ぬるい!」

「おいおい…誰だよテメーは」

「いきなり現れて、好き勝手言ってんじゃねーぞ」

ハギヨシ「…好き勝手なのはお前たちの方だ、外道が――――!!」



打ちのめす。

「たわば!!」

ただ、打ちのめす。

「ひでぶ!!」

彼は外道に容赦しない。

「はは…はばは、ばわ!!」

殺しはせず、けれど生かしもしないのだ。

「や…やめろ!やめてくれ!」

ハギヨシ「貴方は何度、誰かにそれを言わせてきたのですか?」

「く、くそう…死ねぇ~!」

ハギヨシ「あたぁ!」

「べ、べべべべべべ…う わ ら ば」

外道共には生き地獄を。それは、殺されるよりもはるかに苦しい仕打ちだった。

奴らはもはや、五体満足ではいられない。



豊音「あ、あのー」

ハギヨシ「私ごときに礼など不要です。貴女が乱暴されるのを、私は見ているだけだった」

豊音「で…でも、こうして助けに来てくれたじゃないですかー」

ハギヨシ「只の自己満足ですよ。事実私は、そちらの事情に係わる意思を持たなかった」

豊音「それでも…私が救われたのは確かです。あ、ありがとうございましたっ!」

ハギヨシ「…どうか息災でいて下さい」

そう言葉を残すと、ハギヨシは音もなく消え去ってしまった。


豊音「…あの人の名前、訊けなかったなー」

「トヨネッ!」

豊音「あ、みんな!」

塞「大丈夫?ケガとかしてない?」

豊音「一度殴られちゃったけど、平気だよー」

トシ「すまなかったね豊音…村の奴らがあそこまで強行的だとは」

豊音「熊倉先生、どうか気にしないで下さい。私は大丈夫ですから」

胡桃「大丈夫じゃないよっ!トヨネ、殴られちゃったんでしょ!?」

豊音「な、殴られたのはお腹だから…」

エイスリン「…トヨネ、カオアオイ!」

白望「腹部の殴打は、内臓が破裂する可能性があるから確かめないと」

塞「私、すぐに救急車を呼ぶね!」

豊音「べ…別にいいよー」

トシ「いい訳がないよ。いいかい豊音、あんたの事はみんなが心配してたんだよ?」

胡桃「そうだよ!トヨネの身体はトヨネだけのものじゃないんだから!」

エイスリン「イノチ、ダイジニ!!」

白望「…一緒に戦おうよトヨネ。私達は、これからもずっと仲間なんだから」

豊音「…うん…うんっ、ありがとう…みんな、ありがとう……」ポロポロ...




ハギヨシ「…旦那様、申し訳ありません。やはり私には、彼女達を放っておく事など出来ない」

ハギヨシ「――いざっ!」

その夜、日本から一つの村が消滅した。

村にはびこる外道共は、一人残らず制裁されてしまったらしい…一応死んではいないようだが。

豊音ら数人の若者は、村の呪縛から開放されたのだ。

だが…その顛末に一人の男が係わっていた事は、豊音の他に誰も知らない。




―――そして今日も、執事はどこかで誰かを救う。

続きはあるかもしれませんし、ないかもしれません…そのように書きました
ナデナデも迷子も終わってませんし

それでは、また

ワハハと見せかけてかおりんが木に吊るされている件について

>>617 訂正

×:桃子「か、かおりん先輩はどこにやったんすか?」
○:桃子「か、蒲原前部長はどこにやったんすか?」

「か」しか合ってないじゃん…
>>626の方、ありがとうございました

蒲原前部長→蒲原元部長


久「…ね、ねえ須賀君」

京太郎「何でしょう?」

久「ほら…インターハイも終わったんだし、もう雑用はしなくていいのよ?」

京太郎「何でですか?」

久「貴方も麻雀部員なのよ。来年に向けて麻雀を上達させなきゃ…」

京太郎「……」

久「…須賀君?」

京太郎「部長…俺なんかの心配はしなくていいです」

久「え?」

京太郎「分かっています。俺に与えられた役割は、麻雀部のバックアップなんですよね」

久「えっと…一体何を言っているの?」

京太郎「俺には麻雀の才能はありません…咲や和を見てはっきり分かりました」

久「あ、あのね須賀君。そういう雲の上の存在と未だ初心者である自分を比較するのは早計では…」

京太郎「だからこそですよ。それに俺は、もう麻雀部の名に泥は塗りたくないんです」

久「ちょっとちょっと。そこまで大袈裟に考えることないわよ!」

久「大体、咲が来るまではウチって某軽音部並にゆる~くやってたでしょ!?」

京太郎「…もう、戻れないんですよ。あの頃には」

久「!」

京太郎「俺は咲をここに連れて来てしまった…そして、部長にインターハイという夢を見せちまった」

京太郎「そして夢は現実となり、我らが麻雀部は学校中の憧れです…簡単に負けちゃダメなんですよ」

久「…それは…そうかもしれないけど…でも!」

京太郎「もう雑用しかないんです!雑用をやってないと、気持ちが落ち着かないんですよ!!」

京太郎「雑用しない俺なんかゴミだ!クズだ!ここにいる価値はない!」

京太郎「働いて、働いて、そしてみんなの勝利にほんの少しでも貢献する…それだけが俺の望み!」クワッ

久「」ガクブル

京太郎「さあ部長…俺に指示を。そして…俺がここにいる事を許して下さい!なんでもしますから!」

京太郎「うっ!? 雑用してないせいか手が震えてきやがった……」カタカタ...

久「」ポカーン








久(アカン)

小ネタ「ワーカーホリック」でした。何事もやりすぎは良くないですよね。
実際京太郎は、咲日和の第1回で指示される前に身体が動く程度にはワーカーホリックですし。
他に候補がいるとすれば、キャプテンかハギヨシさんでしょうね…特に前者は。

それでは、また。


1/5

或る町外れの事である。

実りの秋が終わり、落葉の冬を迎えた頃。

夜空の下、或る二人組が連れ立って歩いていた。

空気が澄み、夜空が殊更よく見える。

それはそれはたいそう綺麗な眺めだった。

二人が空をじっと眺める。

何も語らず、一歩も動かず、互いに身を寄せ合いもしない。

ただ、眩いまでの星空をまじまじと見つめていた。

満面の笑みで。

およそ冬には似つかわしくない、温かみのある笑顔であった。


2/5

「ね、ここに来てよかったでしょ?」

「どうだろうねぃ。ここってすっげー冷えるし」

「ホッカイロとかホットコーヒーありますけど」

「…いや、今はいらねー」

「いいんですか?」

「冬の寒さが身にしみてこそ、この夜空を楽しめるって思うからねぃ」

「なんだ…やっぱり来てよかったんじゃないですか」

「うるせー」

二人は一旦見上げるのをやめ、向かいあって言葉を交わす。

一人は大柄な男で、金髪に学生服という風体だった。

学生服の上には、レザーフライトジャケットを羽織っている。

もう一人は小柄な女で、セミロングの茶髪に暖色の和服姿。

右手に扇子を携えており、それを口元近くに翳している。

二人の背丈は、まさに大人と子供ほどの差があった。

カップルと言うよりは、凸凹コンビと言った方が適切だろうか。


3/5

「それにしても、今日は一段とよく冷えるねぃ」

「確かに。まだ真冬なんですけどね」

「時々、和服を止めて洋服を着てみたくなるんだよね~和服は寒いし」

「え、マジすか。でもそれはそれで見てみたい気も…」

「冗談だよ。私はコレがいいんだから」

「ちぇー」

「…まあ、君が着て欲しいって言ったら考えるかもね。知らんけど」

「…考えときます」

先程はああ述べたが、この二人は正真正銘のカップルである。

故あって二人は出会い、紆余曲折の末にこうしている。

けれど男はしがない学生で、女は名うての麻雀プロである。

差し障りのある関係だった。

二人の事が明るみになれば、スキャンダルは避けられないだろう。

それでも二人は共にいる。

限られた時間の中…精一杯、互いを想い合っている。


4/5

「ねえ。今日って何の日か、知ってるかい?」

「…いきなりどうしたんですか?」

「いいから答えて」

「ええと…いい服の日、ですよね」

「その通り。『いい服』とは何か、『いい服』を作るのに何が必要か考える日さ」

「…どうして突然そんな話を?」

「私が服に拘ってるのは知ってるだろ?折角だし、今日は君にとっての『いい服』ってのを聞いてみたくて」

「『いい服』ですか…そうですね、素材がいいとか…作り手の腕がいいとか」

「…随分ありきたりだねぃ」

「ありきたりで悪かったですねっ!いきなりこんな話をされても、俺には何にも思い浮かばないですよ!?」

「そう難しい事じゃないさ…答えはほら、君の目の前にあるだろう?」

「目の前って…貴女しか見えませんけど…あ」

「気付いた?」

「貴女が着ている服って、半年くらい前に俺がプレゼントした一重のやつじゃないですか!」

「…ようやく気付いたか」

「大丈夫なんですか?綿入りじゃないその服じゃ、ここは厳しかったでしょうに」

女の顔色は悪くなかったが、にわかに身体を震わせていた。

男には、女が何故冬向きではない和服を着ていたのか分からなかった。


5/5

…少しして、女の方から口を開いた。

「この服、君がバイトで稼いで買ってくれたんだよねぃ」

「ええ。一生懸命働いて、一生懸命貴女に似合うものを探していた」

「…私はそれが嬉しかったんだよ。だからこの日に着て来たんだ」

「……」

「この服って暖色だろ?正直、こういう所に着て来るのは合わないかもなーとも思った」

「けどね…私はこれを着たかったんだ。私に似合うからってくれた、この服を」

「――さん」

「ねえ―――…私、君に出会えてよかったよ」



その後、二人はどうなってしまったのか。

別れたのかもしれないし…或いは、末永く共に過ごしたのかもしれない。

ただ、いずれの場合にしても確かな事が一つある。

それは、この二人が深く愛し合っていたという事だ。

                                      了

今日はいい服の日だって誰かが言うからね、和服でお馴染みなあの人がメインの話を書いたよ!
あの人がスランプになって、その後偶然出会った京太郎に和服の薀蓄語ってたSSが今でも大好きだ!
○○ちゃんかわいい!

…それでは、また


1/

女と男が、吉野山を登っていた。

女の足は軽やかだった。

まるで平地を進むかのように歩を進めている。

それが当然であるかのように。

…女の名は高鴨穏乃。

幼い頃から、ひたすら山を登ってきた少女である。

彼女は決して恵まれた体格の持ち主ではない。

けれど、常人とは比較にならない強靭さを有する者である。

穏乃は深山路を2年半、ただひとりで駆け回っていたという。

まるで庭のように。

幽邃の地で、彼女は一体何を感じ取ったのか。

彼女の他に知るものはいない。

知り得ない。

彼女は深い山の主であり、そして登山者でもある。

これまでも、今この時も、これからも。


2/

そんな彼女が、随行者である男に告げる。

「もう、早くしないと置いてくよ!」

なんとも無茶な話である。

二人は阿知賀から吉野山のふもとまで歩き、そのまま金峯山寺まで歩いてきたのだから。

随分な距離である。

山に慣れない者が登れば、間違いなく満身創痍になっているだろう。

吉野山は標高だけなら1000mにも満たない。

だが…修験道に使われていただけあって、険しさは中々のものなのだ。

穏乃のように登れる者などそうは居ない。

彼女と長年の付き合いがある新子憧でさえ、徒歩で一緒に登るのは躊躇った。

「…そうあわてなくても、俺はもう居なくなったりしねーよ」

しかし男はここにいる。

須賀京太郎は、彼女から付かず離れずのペースで歩いている。

「阿知賀に居るはずのない」この少年は。


3/

「前科者のくせしてよく言うよ」

「はは、だよなー」

前科者。

穏乃は彼をそう呼んだ。

事実彼は、彼女達の前から姿を消した事があったのだ。

共に過ごした学院から。

吉野から。

この世界から。

挙げ句、皆の記憶からも彼は消えた。消え失せた。

須賀京太郎はそういう存在だった。

誰のせいでもなく、いつの間にかそのようになってしまったのだ。




西行庵前の休憩所で、二人が隣り合っている。

朝焼けの見える頃。

二人の他に、周りには誰も居なかった。

「俺達、いつまでこうしていられるんだろうな」

「…ずっとだよ」

「どうだか」

「大丈夫だって。私達も、ここにある自然も京太郎を拒んでないんだから」

「…お前が言うのなら、本当にそうなのかもな」

「なんで信じきってくんないかなー」

「なんでって、怖いからに決まってんだろ…ほら」

京太郎が右手を翳す。その手はひどく霞んでいた。

少しして霞みは消えたが、それで彼の不安まで消えた訳ではない。

死の恐怖を拭い去れはしないのだ。


4/












「やっぱり、消えるのって怖い?」

「そりゃあな。実際一度は消え失せたんだし、気にしちまうさ」

「…死ぬのは誰だって怖いし、誰もがいつそうなるか分からないよ」

「当たり前だって言いたいのか?」

「うん。私もひとりで山を巡ったけど、死にそうな目には何度か逢ったしね」

「まあ…頭じゃ分かってるんだけど、どうにも頭にチラついちまうんだよ」

「なら、気にし過ぎなくなるように私が手伝ってあげるよ」

穏乃はそう言うと、京太郎の右手を両手で握り締める。

「おいおい、そんなに強く握ったら痛いだろ」

「こうでもしないと、京太郎は不安を忘れられないでしょ?」

「……」

「お願いだよ京太郎…もう、どこにも居なくならないでよ」

京太郎は言葉を返せなかった。

真っ直ぐ自分を見据える目の前の彼女が、涙ぐんでいるのに気が付いたから。


5/

それから少し時間が経った。

京太郎が、穏乃の手をやんわりと振りほどく。

「あっ…」

刹那、穏乃が切なそうな表情をしたかと思うと、

「こうして手を離さないと、お前を抱き寄せられないだろ?」

そう口にして、京太郎は穏乃の事を抱き締める。

「…うん」

それに応えるように、穏乃もまた京太郎を抱き締め返した。

決して強すぎず、弱すぎず、互いを包み込むように。

そして、色んな事を思い返した。

出逢った頃の事。

麻雀部に入部した頃の事。

夜空を見に山へ登った時の事。

テーマパークに皆で遊びに行った時の事。

男子部員が5人になって、部内がより賑やかになった時の事。



…そして、京太郎が泣きながら会場を走り去った時の事。


6/

「…本当なら、俺はどうしていたんだろうな」

「本当って今じゃん」

「色々見てきちまったからな…俺は、導から外れてここに居るんだし」

「そんなの関係ないよ。今ここで君と居るのが、私にとっての本当だから」

「…そっか」

「いつまでこうしていられるか分からないけど、こうして一緒に居れて嬉しいよ」

「――俺もだよ、穏乃」



その日の朝日は一段と輝いていた。

全ての闇を祓わんとばかり、輝いていた。

雲一つない蒼天の中で。

燦々と。

太陽の光が、吉野の辺り一面に降り注ぐ。


7/











「…それにしても、吉野って忙しない所だな」

「どうして?」

「冬なのに桜は咲くし、けどちゃんと紅葉だってあるし」

「まあ、吉野はそういう所だからね」

「だからまあ、枯れ葉や枯れ草を見るとなんだか物悲しくなっちまうんだよな…」

「大体、桜の咲いてる所にああいうのがあるのは不自然に思えるし」

「そうでもないよ」

「なんでさ?」

「宥さんから聞いたんだけどさ、枯れ葉や枯れ草にも花言葉があるみたいでさ」

「へえ、そうなのか。で、それが俺の言った事と関係あるのか?」

「『新春を待つ』だってさ」

「…なるほど。確かにそれなら不自然じゃないな」

「お正月…つまりお年玉を待つって事にもなるだろうけどねー」

「まーなー。それまで生きていられるかも分からねーが」

「いいんだよそれで。あるかどうか分からなくたって、私達はただこれからを生きてくんだから」

「…だな」



導を無くした世界の中で。

今日も二人は、一緒の時間を過ごしていく。

枯れ葉や枯れ草が昨日の誕生花だったので、最後に無理やりねじ込みました

このお話は、前々作と前作のifみたいなものです
久しぶりに読み返していてなんとも言えない気持ちになったので、それを形にしてみちゃったりなんかして…
「霞」って言葉をもう少し上手く使いたかったんですが、無理でした
色々意味の多い言葉で、調べてて面白いなと思ったので活かしてみたかったのに…



それでは、また


優希「冬なのに、どうも喉が渇くじょ」ダラーン

咲「ホントだね。夏みたいに汗をかくわけでもないのに」グテーン

久「…冬に喉が渇くのは、まず大気の乾燥に原因があると言われているわ」

優希(あ、しまった)

咲(部長がまた薀蓄を語りだしちゃったよ!)

久「それと、人体は寒くなると体温を逃がさない為身体全体が緊張して収縮するの」

久「毛穴や筋肉、それに血管もね。血管が収縮すれば、血液量や血中水分量も不足してしまう」

久「そうなれば、身体全体を潤す水分量が不足するから冬でも案外喉は渇きやすいのよ」

優希「な、なるほど…」

咲「でもそれなら、水分補給をちゃんとすれば大丈夫ですよね?」

久「そうなんだけど、補給にもコツがあってね…和、説明お願い」

和「はい。水分補給は『こまめに少しずつ』というのがミソなんです。喉が渇くと、ついがぶ飲みしたくなりがちですけど」

和「先程部長は寒さで身体全体が緊張すると仰ってましたが、それはすなわち脳も緊張している事を意味します」

和「当然脳は平時より弱っていますので、そんな時に水分を多く摂っても身体が受け付けられないんです」

久「その通り。優等生だけあって、こういう事はお手の物ね」

優希「すごいじぇのどちゃん!」

咲「部長のもだけど、原村さんの説明ってすごく分かりやすかったよ!」

和「そ、それほどでも…そんなに褒められたら照れちゃいますよ」///

久「うむ。これで後継者の心配はないわね」

和「…後継者?」

久「そうよ。私はもう引退だから、麻雀部の次期薀蓄担当を捜していたのよ」

咲「ああ、そういう事ですか」

優希「確かに、のどちゃんなら上手くやってくれそうだじょ!」

和「嫌ですそんなの。私、部長みたいに話の長い人にはなりたくありません」

和「あまりに度が過ぎて、話の長いおばさん扱いされたら嫌ですし…」

久「…随分言ってくれるじゃない」

咲(わー!わー!)

優希(のどちゃん、いくらなんでもはっきり言いすぎだじょ!)


久「…」ギロッ

和「…」ジトッ

咲(あわわ…なんでこんな事になっちゃったのかな?かな?)

優希(そう言えばのどちゃん、随分前に『部長の長話はうんざり』って言ってたなー)

和「…」ゴッ

久「…!」フラッ

咲(ああ…それだけは否定のしようがないね)

優希(いい話もしてるんだけど、時々お節介なおばさんみたいに思えてくるのは否定できないじぇ)

久「…まあいいわ。少しショックではあるけど」ショボン

和(あ、落ち込ませちゃいました。ちょっとからかってみたかっただけなんですけど)

咲(やっぱりおばさん扱いが堪えたんだ)

優希(そりゃそうだじょ)

久「わ、私は寛大だから…そんな風にされても平気なんだからね!優しくしてあげるんだからね!」ウルッ

和(あれ…なんか可愛いです。思わず抱き締めたくなっちゃうくらいに)

咲(可愛い)

優希(部長可愛い)


久「と、言う訳で飲み物奢るわ。何でも言ってね」

和「じゃあホットレモネードで」

咲「私はココア」

優希「コーンポタージュがいいじょ!」

久「ふむふむ…それじゃあ須賀君にお願いしようかしら」

和「えっ」

咲「えっ」

優希「部長、京太郎なら今タコスを作ってくれて…」

久「…」パチン

シュタッ

京太郎「お呼びですか、部長」

和「」

咲「」

優希「…えっ」


久「悪いけど、このメモにあるやつ全部買ってきてくれる?」

京太郎「了解っす」

和(…優しいって言葉はどこ行ったんですか)

咲(突っ込んだら負けだよ和ちゃん!きっとそういうものなんだよ!)

優希(信じて龍門渕に送り出した京太郎が、まるで万能執事みたいなスペックで帰ってくるなんて…)

久「それと戻って来たら、ベッドのシーツを替えておいて頂戴ね」

京太郎「ウィ、マドモワゼル」

和(あちらの方々は、須賀君を立派な雀士にしてみせるって言ってましたね)

咲(これじゃあ雀士じゃなくて執事だよ!バトラーだよ!)

優希(ふむ…犬のように扱われる執事、か。なんか興奮してきたかもしれないじょ)

和(やめるのです!)

咲(京ちゃんにナニさせる気なの!?)


京太郎「あ、そうだ優希」

優希「じょ?」

京太郎「頼まれてたタコス、腕によりをかけて作ってきたぜ」スッ

キラキラ...

優希「こ、これは…」

和「タコスが光り輝いてます…それも、優希が作ったもの以上に」ダラリ

咲「お、おいしそう…」ジュル

久「パーフェクトね、須賀君…勿論私の分も作ってくれてるわよね?」

京太郎「部長、こちらをどうぞ」サッ

久「よろしい」

和「…須賀君、私の分はありませんか?」

咲「京ちゃん…私もタコスが食べたくなっちゃったかな」

京太郎「あ、すまん。今日のタコス、二人分しか作ってないんだ」

和「そんなっ」

咲「あんなの見せられて、私達…お腹減っちゃったよお」


京太郎「…部長」

久「仕方ないわね。買い出しの後でなら、作ってきてもいいわよ」

京太郎「はっ、ありがとうございます…では」

シュタッ

和咲((…わぁい!))パアアッ

優希(はむはむ…おいしすぎるじょ!私も今度龍門渕にお邪魔しようかな?)

シュタッ

京太郎「ただいま戻りました」

和「!?」

咲「え、もう?」

優希「で、でもちゃんと荷物は持ってきてるじぇ」

久「…随分凄くなったじゃない」

京太郎「ハギヨシさんから薫陶を受けた結果です。それじゃあ俺、調理実習室に行って来ますね」

シュタッ

和「…彼は一体、どこへ行こうというのでしょう?」

咲「…さあ?」

優希「きっと、私に相応しい男になるべく頑張ってくれたんだじぇ」

和「それはないです」

咲「それはないね」

優希「そんなー」











まこ「…アンタら、一体何をやっとるんじゃ」

和咲「「ふぇ?」」

優希「何って…ティータイムですよティータイム」

まこ「私用で遅れといてなんじゃが、少しは練習しようとしんしゃい」

久「まーまー。そう言わずにコレを食べてよ」スッ

キラキラ...

まこ「このタコスは…優希が作ったんか?」

優希「いんや、違うじょ」

まこ「なぬっ!?」

和「…それを作ったのって実は須賀君なんです」

咲「優希ちゃんじゃないですけど、私達もタコス中毒になっちゃいそう」

久「どう?食べてみる?」

まこ「まったく…いつからここはタコス部になったんじゃ」ダラリ

久「まこ、涎たれてるわよ」

まこ「う…これは、その…」

久「さあどうする?須賀君のタコス、食べてみる?」

まこ「…まあ、一口だけなら」

パクリ

まこ「こ、これは…なんという美味しさじゃ!」

まこ「ほんのりとした香ばしさのトルティーヤに、ミツワソースがいいアクセントをかけておる」

まこ「それにこの肉…豚肉じゃなくて牛肉じゃな?それも、信州プレミアムの柔らかいやつ」

京太郎「よくお分かりで」

まこ「ミツワソースの絡みと牛肉の甘みが上手く絡み合っておる…それにレタスのお陰でしつこさも感じない」

京太郎「それも長野産なんですよ。ミツワソース以外は全て、長野産のものを選んで作っておりますので」

まこ「それじゃあ、トルティーヤに使っているのは…」

京太郎「はい、あんみつ姫を使わせていただきました。甘太郎とどちらにするか迷ったんですけど」

まこ「うう、京太郎よ。アンタは長野県民の鏡や…」

和(…なんでしょうかこの違和感は)

咲(染谷先輩、いつも広島弁で喋ってるし)

優希(長野にも駒ヶ根ソースがあるけど、あれは専らカツ丼用に作られたしなぁ…)


そんなこんなでタコs…麻雀部の活動が終わって、

まこ「ふ~今日はよく食ったのう」

優希「こんな風に毎日、タコスを食べるだけの部活動だったら…」ウットリ

和「いやいや、それはないですよ優希…気持ちは分かりますけど」

咲「こんなの知ったら、もう優希ちゃんのタコスじゃ満足出来ないよ…」

優希「わ、私のじゃダメなのかっ!?」

和(優希はああ言ってますが、ごく偶に気まぐれで振舞う程度でしたよね)

久(そうね…正直甲乙は付けがたいけど)

和(そうなんですよねぇ)

まこ(新しいものの方が、どうしても印象は強くなってしまうからのう)



京太郎「…優希」

優希「言うな京太郎。私は犬に慰められるほど、落ちぶれちゃいないんだからなっ!」

京太郎「そうじゃねえよ。折角俺もお前とタメ張れる位になったんだし、今度は一緒に作ってみたいなって」

優希「ふえっ!?」

京太郎「一緒に上手いタコス作ってさ、みんなで美味しく食べてさ…それって凄く素敵な事だと思わねえか?」キラッ

優希「う、うん。そうだなっ!」///

和(やだ…かっこいい…)ポッ

まこ(お、咲から鞍替えか?)ニヤリ

和(そ、そんなんじゃありませんよ。咲さんにも優希にもなんだか悪いですし…いや、寝取りとか共有というのも…)

咲(きょ、京ちゃんとはそんなんじゃないんだからねっ!ま…まあこの先どうなるかは分からないけど)デレッ

まこ(…青春じゃのう。まあ気持ちは分からんでもないが)




久(…須賀君は、ホント素敵な男になった)

久(龍門渕さんに預けて、本当に良かったなって思う)

久(心残りにしたくはなかった)

久(私は彼に、麻雀部へ来た事を後悔させたくなかったの)

久(――この一ヶ月、本当に寂しかった)

久(麻雀部に…貴女に誇れる男になる、そう言って彼は向こうに行ってしまったから)



久(いつ頃からか、彼は私を慕っていた)

久(和を慕っていたはずの彼は、私の方に目を向けていた)

久(けれど…和を見てない訳でない。彼の眼は、相変わらずあの豊満な胸に釘付けだ)

久(そんな彼が、ふいに私の方を見てくる)

久(これ見よがしに)

久(正直イラっときたし、仕返しに雑用の数を増やしたりもした)

久(辞めてしまうならそれでもいい)

久(私は、自分をイライラさせる須賀君の事を遠ざけたかったんだ)

久(…なのにどうしてか、彼はずっと雑用を引き受け続けた。時には文句を口にしてたけど、決してノーとは言わなかった)

久(しばらくして、イライラが消えてなくなった。でもその理由は分からなかった)

久(その時私が分かっていたのは…私の方もまた、須賀君を目で追うようになっていた事)

久(そうして目と目が合うのが増えて、彼への意識は一際強くなっていたように思う)

久(あの眼差しに、私は惹かれるようになってしまっていたのだ)


 そしてあの日、私は彼に問いただした。

 心の底から湧いてくる、この気持ちの正体を確かめたかった。

 確かめなければ、インハイどころじゃないと思った。

久『…どうして私を見つめるの?』

京太郎『はい?』

久『答えてよ。どうして私を見つめているの?』

京太郎『…見ていたかった』

久『は?』

…は?

京太郎『ただ、部長の事を見ていたかったんすよ。俺』

久『…なんだか気持ち悪いわね』

そう言わずにはおれようか。

京太郎『お互い様でしょ。貴女も俺を見つめ返してた』

久『……』

ぐうの音も出ない。

事実、私も彼に見とれるようになっていたと言えるのだから。


京太郎『…カッコいいなって思ったんすよ。部長の事』

久『へ?どうして?』

 カッコいい?私が?

 まこが来るまで、実質ぼっちだったのに?

 貴方が咲を連れて来なきゃ、私は夢さえ見れなかったのに?

京太郎『俺達が来るまで、ずっとここを守ってきたんですよね?』

久『え、ええ…まあ』

 そんなに聞こえのいいもんじゃない。

 生徒議会長の権力を濫用して、無理やり部活のままにしただけだ。

京太郎『そんな事をしようとするくらい、出来てしまうくらいに麻雀が好きだったんですよね?』

久『…そう、ね』

 家の都合で風越女子に行けなくて…それでも諦めきれなくて。

 一緒に麻雀を打ってくれる仲間を必死で捜して、けれど皆居なくなって。

 …辛かった。

 それでも私は、みっともなく足掻いてみせたのだ。

 だからまこが来てくれて、和が、優希が、須賀君が、そして咲が来てくれた。

 そして私は、インハイという夢を見れる。

 須賀君…貴方を犠牲にして、私は麻雀だけを見ている。

 なのにその目に悪意はない。

 私がそれが怖くて…そしてどこかで心地よさを感じている。

 ――どうして?


京太郎『…ここに来たのは和目当てでした』

 知っている。

 事実私は、彼女をダシにして部員を募集しようとした。

 でも、結果は芳しくなかった。

 男子も女子も、彼女に関しては協定のようなものを設けていたから。

 そして、それを無視してやって来たのが貴方。

 団体戦の面子になれない。

 それでも、麻雀部が部活としての体裁を確かにするには必要だった。

 …咲の事は、単なる棚ぼたに過ぎない。

京太郎『けど俺、たとえ和が居なくたってここに来れて良かったって思うんです』

久『どうして?』

京太郎『麻雀が面白いって知る事が出来ましたし、何より部長に出会えた』

京太郎『麻雀を打ってる時の貴女はとてもカッコよくて…可愛くて…とにかく素敵でした』

久『…ほ、褒めたって何も出ないわよ?』

 何なんだコイツは。

 いきなり何を言い出すんだ。

 所詮貴方は、単なる打算で置いてあげてる。ただそれだけ。

 それだけ、なのに。

 …どうしてだろう、それだけじゃないだろうって思う自分に気付いた。


京太郎『だからまあ…なんて言うか、その…』

 言わないで。

 もしそれが私の思った通りの事なら、言わないで。

 ありえない。

 ありえないのに、どうして私はそれを望んでいるのか。

京太郎『きっと俺、部長の事が好きになっちまったんですよ』

 …どうして。

 どうしてこんなに、胸が満たされちゃうんだろう。

 どうしようもなく嬉しくなっちゃうんだろう。

 分からない。

 分からないけど、私も彼が好きだった。

 大言壮語ばかり吐いて、麻雀でいつも負けてばかりの彼が。

 単なる無茶振りなのに、意地を通して重い荷物を一生懸命運ぶ姿が。

 女社会にあって、こちらを不安にさせる事を口にしないその優しさが。

 …ええい、理由なんてどうでもいい!

 好きなんだから、それでいい!好きなものは好きだからしょうがない!!


 だから私も、言うしかないんだ。

久『…私もよ』

 貴方の事が好きなんだって。

京太郎『…マジすか?』

久『マジよマジ。腑に落ちなくても、そういう事にしときなさい』

京太郎『ホントに俺でいいんですか?』 

久『いいって言ってるじゃない!女の方にそんなの言わせないでよ…馬鹿』

京太郎『…部長』

久『名前で呼んで。二人きりになった時でいいから…お願い』

京太郎『じゃあ…久さん。これからよろしくお願いします』

久『…こちらこそ』

 私達の関係は、こうして始まったのだ。

 いつもは私がご主人様。

 けれど二人きりの時は、彼が私のご主人様。











京太郎「…寂しかったか?」

久「当たり前じゃない。こんなに待たせるなんて、聞いてないわよ」

京太郎「…口答えが過ぎるな」

グイッ!

久「ひゃっ!」

京太郎「今は俺の方がご主人様だ。なのにアンタは、それを一月で忘れちまったのか?」

久「だ、だってぇ…貴方が私を寂しくさせちゃうからぁ……」

京太郎「…」

 京太郎が、そっと久を抱き寄せる。

久「…京太郎?」

京太郎「悪かったな…寂しくさせちまって。この部室で、このベッドでこうしていられる時なんて、そんなに残ってないのに」

久「ホントよもう。その上貴方、とっても素敵になっちゃって…皆の貴方を見る目、前とは随分変わっちゃったわ」

京太郎「…かもな」

久「京太郎…私が居なくなったら、きっと貴方はあの子達の誰かと」

京太郎「やめてくれっ!」

久「!?」

京太郎「お願いだ…そんな風に言わないでくれ。たとえこの先どうなろうと、今だけは久を想わせて欲しい…感じさせて欲しい」

久「…京太郎」

 二人の身体が重なる。

 やがて二人は一つになり、互いをひたすら貪りあう。

 二人きりの部室。二人だけの世界で。

 いずれ来る別れの時まで、今日も二人は互いを求め合っている。

オチは決まってたのに、そのオチを書くのが何でか知らんけどすんげー辛かった
前半と後半で色々変わりすぎだけど、今回の話はこれが規定路線なんすよ
…こんなに長くなるはずじゃなかった

それでは、また

この部長の言われようよ…どうせ責めるなら>>1を責めてください、>>1を。

このまま無軌道に短編ばっかり書いてるのもいいんですが、次回作の構想でも練ってみたいという気もあります。
まだ決めてはいませんが…過去作のリメイクかもしれないですし、カプ固定のスレかもしれません。
…安価は難しそうですけど。



とりあえずは、エタらないように意識して今後もやっていきますのでよろしくです。

乙ー
カプ固定連作だと誰になりそう?

>>677
仮に阿知賀勢でやるとして、クロチャーかあらたそですかね
他に可能性があるとすれば竜華や数絵ちゃんでしょうか

個別スレを立てるとしたら、は大学でのお話になる可能性が高いですね
このスレでもインハイとかで出会わせたりしてますが、なるべくなら原作の流れは踏襲したいんですよ
キャラ崩壊とか意味不な話とか書いてきたりして何を今更って話ですけど、都落ちを2年生スタートにしたのもその為ですしね

ただ…短編にするつもりなら中長編の連作スレを立てればそれで済むんですよね

>>682 訂正
個別スレを立てるとしたら、大学でのお話になる可能性が高いですね
このスレでもインハイとかで無理矢理出会わせたりしてますが、なるべくなら原作の流れは踏襲したいんですよ
キャラ崩壊とか意味不な話とか書いてきたりして何を今更って話ですけど…都落ちを2年生スタートにしたのもその為ですしね

ただ…100レスほどで収まってしまう話なら、中編用にスレを立ててしまえばそれで済む話でもあったり
なるべくそういう風にはしない前提でいきますが


京太郎「…冗談、ですよね?」

絹恵「冗談なんかやあらへんよ」

洋榎「京太郎…お前は死ぬんやで」

京太郎「――何で俺が死ななきゃならないんですか!?」

絹恵「…」

洋榎「…」

京太郎「黙ってないで何とか言ってくださいよ、二人とも!」

絹恵「…せやな。アンタにゃ何も分からへんやろうからな」

洋榎「ニブチンの相手をするんも大変やで」

京太郎「…」



洋榎「はっきり言うといたるわ。うちら姉妹はな、二人してアンタに惚れてもうたんや」

京太郎「!?」


絹恵「正直、アンタの何に惚れたんかは今でも分からん」

洋榎「せやけどアンタのおらん日々とか、うちらにゃ考えられへんねん」

京太郎「懇意にはさせてもらいましたけど、まさかそんな…」

絹恵「少なくとも、私らはアンタの事をある程度気に掛けとるよ」

洋榎「せやせや。何とも思うとらへん奴に、必死こいて麻雀の指導するかいな」

京太郎「…」

絹恵「…またダンマリかい」

洋榎「まあええわ。デクのおたんちんでいてくれたら、こっちも楽やからな」

京太郎「…何で」

洋榎「あん?」

京太郎「何で死ぬ必要があるんですか。俺を殺したとして、それから二人はどうするんですか?」

洋榎「…なんやそんな事か」

京太郎「そんな事って…このままじゃ、俺は二人に殺されるんでしょ!?」

絹恵「安心しい。私もお姉ちゃんも、京太郎…アンタと一緒に死んだるわ」


京太郎「…む、無理心中」

絹恵「その通り」

洋榎「うちら皆で幸せになるには、この方法しかあらへんのや」

京太郎「死んだら幸せもへったくれもありませんよ!」

絹恵「今が幸せなんやから、それでええんよ」

洋榎「その今が損なわれよったら、うちらはもう一緒にはいられへん」

絹恵「せやからここでピリオド打たなあかんねん…幸せなまま、終わりにせなあかんねん」

洋榎「この世は諸行無常…人の心もまた移ろいゆくものや」

絹恵「このままやったら、いつかアンタへの想いも消える…私らそんなん嫌なんや」

京太郎「だからって…」

洋榎「口答えせんとき。痛い目に遭いたくはないやろ」

絹恵「大丈夫…すぐ楽になれるよって」


京太郎「…だ、第一一人を二人が好きになるってのに問題が」

絹恵「それなら心配あらへん」

洋榎「うち等は関西一の…日本一の…世界一の…いやいや宇宙一の仲良し姉妹や」

京太郎「表現がくどい!」

洋榎「ええやないか。ようするに、それだけ互いを受け容れとるっちゅーこっちゃ」

絹恵「まあ、欲しいもんは二人で分け合えって事やな!」

京太郎「共産主義かっ!」

洋榎「なんやなんや、人をアカ扱いしよってからに」

絹恵「京太郎…そんなに早く血が見たいんか?」

京太郎「自分の血も誰かの血も、なるべくなら見たくないですよ!」

絹恵「…そうはいかんざき!」

洋榎「京太郎…うちはアンタの血で化粧がしたい!」

京太郎「今時の女子高生が知ってるようなネタじゃないでしょ、それ!」


洋榎「…これじゃあ埒があかんな」

絹恵「お姉ちゃん。名残惜しいけどもう…」

洋榎「いよいよか…今日でうちらの人生もおさらばや」

絹恵「…短い人生やったなあ」

洋榎「悪い夢…いや、いい夢やった!」

京太郎「悪い夢見てるのこっちですよ!いい加減、馬鹿な真似はやめて下さい!」

京太郎「…俺、もっと二人と一緒に麻雀打ちたいんです!」

絹恵「…ホンマか?」

京太郎「ええ…これからもずっと、死ぬまで三麻を打ちましょうよ!」

洋榎「…その言葉に、嘘はあらへんな?」

京太郎「…はい!」

絹恵「じゃあ早速で悪いんやけど、血判を押してもらおか…チクっとするけどかんにんな」

京太郎「っ!」

絹恵「んじゃ、この書類に押してな」

ピタッ

京太郎「…てて、切れた部分がじんじんする」

絹恵「――お姉ちゃん」

洋榎「ああ、これでうちらの心中は終わりや」





京太郎「…え?」


絹恵「ああ…心中ってのはな、単に誰かへ義理立てするっちゅー意味もあるんよ」

洋榎「それと、相愛の者達がその真実を相手に示すって事や。今京太郎がやった切指もそうや」

京太郎「そ、それが一体どうしたって…あっ!」

絹恵「…気が動転してて気付いとらんかったやろ?」

京太郎「せ、誓約書…俺と二人の関係についての」

洋榎「婚姻関係については触れとらんから、まあ大丈夫や」

絹恵「原村さんにも見てもろうたからな…少なくとも、書式については問題あらへん」

京太郎「…はは、ば…バカけてる」

洋榎「…バカけてるぅ?そんな事あらへんわ!」

絹恵「アンタにゃこれから私らの人生、しっかりしょいこんでもらうで!」

洋榎「それがうちらの心中や!」





京太郎「…なんでや!こんなんおかしいやろ!」

>>453のお題でした
実際問題どうなるかなんて考えるだけ無駄や…なにせ俺が書いとるからな
…どうか笑って流してください
どうでもいい事ですが…福山潤さんって、何気に大阪府高槻市の育ちなんで関西弁は出来るみたいですね



それでは、また

なお、切指と言うのは指きりげんまんの事でもあり、遊女が小指を切って男に渡す風習の事でもあります。
血判状どころじゃありません。ケジメ案件、エンコ詰めの由来です。

自分の一部を切って渡すなんて愛が深いな。
今だったら何が良いのか。

>>689 訂正
んじゃ、この書類に押してな→それじゃ、この書類に血判押してな

>>690 訂正
それと、相愛の者達がその真実を相手に示すって事や→それと、相愛の者達がその真実を相手に示す証拠の事でもあんねん

>>694
断髪か入れ墨かのいずれかになるでしょうね。

広辞苑には例示されてませんでしたが、今回の話のようなものでも心中立(愛情を守り通す事)になるそうです。
誓詞、または起請文がこれにあたります。
爪を抜いたり(放爪)刀で肉を貫いたり(貫肉)というのもあったそうです。後者は男同士に多かったとか。

>>572の続きを投下しますー


 ――迷っていた。

「うう…ココどこ……?」

 宮永咲は迷っていた。

「折角トイレに行けたのに、戻り方が分からないよ…」

 だから漏らす心配はない。

 何があろうと、この咲はおもらしなんてしない。

 乙女の尊厳は守られるのだ。

 守られるんですってば。

「時間はまだ充分あるけど、とにかく急がないと」

 咲が走る。

 おっちょこちょいな少女が走る。

 そしたら一体どうなるか、

「あ、あわわわっ!」

 当然、足が滑る。

 先程までその廊下はワックスがけをしていたようで、尚更よく滑った。

 よほど勢いがあったせいなのか、まるでスケートリンクでも滑るように。

「…やだ、このままじゃ……」

 目に映ったのは廊下の壁。

 このままでは、間違いなく全身を打ち付けてしまうだろう。

 恐怖に耐えかね目を瞑る。

 しかしそれで、咲への危険が去るなんて事は勿論無い。

 そして…


「…おっと危ない」

「ひゃっ」

「こんな所を走ってちゃ危ないですよ…って、私が言う事じゃないか」

「貴女は…阿知賀女子の高鴨さん?」

「はじめまして…じゃないんですけどね。改めまして、私…高鴨穏乃です!よろしくお願いします!」

「よ、よろしく」

 すんでのところで、咲は危機から救われた。

 高鴨穏乃。

 今日行われる決勝戦で、雌雄を決する相手にだ。

「…今日何事も無ければ、私と貴女は間違いなく卓を囲む事になるでしょう」

「…はい」

「私達…絶対勝ちますから」

「こ、こっちだって負けませんよ!」

(な、なんでだ? 初めて会った時に感じた威圧感がまるでないんだけど)

 予期せぬ邂逅に二人が戸惑う。

 そして忘れる。

 自分達が今、絶賛迷子中であるという事を。


 …その頃迷子捜索隊は。

「咲ー!どこだー!」

「シズー!走るのやめて出ておいてー!」

「これだけ捜しても見つかりません…一体どうして」

「二人におもちがあれば、何とかなるかもしれないんだけど…」

「何言ってんですか」

 必死の捜索も空しく、未だ何の成果も挙げてはいなかった。

 辺りに二人の大きな声が響き渡る。

 けれど、それに返事が来る事はなかった。

 大会運営にも伝えた。

 聞き込みだってしてみた。

 返事はいつも『いや、見てないです』の一点張りだったが。


 やがて…くたびれた4人が、空いてるベンチに座り込む。

 倒れこむような勢いで、どさりと。

 満身創痍の4人の内心は、ネガティブな考えでいっぱいになっていた。

 何かの事件に巻き込まれたのか。

 それとも事故に遭ったのか。

 或いは、危ない人に誘拐されてしまったのか…懸念がどんどん湧いてくる。

京太郎「…どうしよう」

憧「どうしようもへったくれもないわよ!あれから随分捜したのに…一体アイツは何やってんのよ……」

和「憧…咲さんも穏乃も、一体どうしてしまったんでしょう?」

玄「案外、二人で迷子になってるのかもしれないね」

和「ま、迷子が加算…いや乗算?」

憧「言われてみれば確かにそうかも。方向音痴が二人になると、一体どうなるのかしら」

京太郎「やだなーそれ…2人だったら喜びも2倍だって言葉があったけど」



「あの…もし?」



京太郎「はい…って、貴女達は白糸台の」

菫「弘世菫だ。そしてこちらが」

淡「大星淡、高校100年生です!」

少し中断します

再会…再開します。
俺が言えた義理じゃないけど、みんなして女の子達を泣かせすぎじゃね?知らんけど。






穏乃「それにしても、この会場って広いですよねー」

咲「そうですよねー」

穏乃「こんなに造りが複雑なら、当然迷う人は出てきますよね」

咲「うんうん」

穏乃「なら、私達が今こうしているのも仕方ない事ですよね?」

咲「はいっ!」

穏乃「随分元気ですねぇ宮永さん。さっきまでは泣きそうだったのに」

咲「高鴨さんがいてくれるからですよ」

穏乃「えへへ、嬉しい事言ってくれるじゃないですか」

咲「うふふ」

穏乃「あはは」

 …2人は随分楽しそうにしている。

 だが迷子だ。

 キャッキャウフフをしている場合じゃない。


 妙に和やかなムードの中、それは突然現れた。

穏乃「!?」

咲「な、何ッ!?」

 屋内の、それも窓のない空間。

 なのに2人は風に吹かれる。

 その源が、ゆっくりと近づいていく。おどろおどろしく。

 ひどく強烈な威圧感。

 穏乃も咲も、そのせいで一歩も動けずにいた。


照「……」


 ――宮永照。

 圧倒的強者が、二人の前にそびえ立っていたのだから。


穏乃(あ、あれが宮永照…玄さんを打ちのめした、本物の宮永照だっ!)

咲(…そんな)

照「……」

 照は尚も歩を進める。

 一歩一歩ゆっくりと、しかし確かな足取りで。

 その度に、2人は身を竦ませる。

 蛇に睨まれた蛙のように…恐怖でその身を支配されてしまっている。

 絶対的な、死。

 そのイメージを宮永照は纏っていた。

 だが…

穏乃(…ヤバイ、ぞくぞくする!)

咲(…でも、やっと会えた。ずっとずっと会いたかった、お姉ちゃんに!)

 それを跳ね除けるだけの力を両人ともに有していた。

 怯えたままではいられない。

 だから宣戦布告の一つでもしてやろうと、2人が口を開こうとした瞬間、

 ツルッ

照「きゃっ!」

 ドシャッ!

 突如王者は前のめりに、顔から地面に突っ込んだ。

咲「お、お姉ちゃん!?」

穏乃「うわ…今のはまずいですよ」


 うずくまる王者。

 それに近づく咲と穏乃。

 2人が照の身体を起こすと、彼女は頭から血を流していた。

 幸いな事に傷は浅く、骨折などもしていない。

 ほっとして、妹が姉に声を掛ける。

咲「お姉ちゃん、大丈夫?」

照「……」

穏乃「…宮永、じゃなくて照さん。どうか返事して下さい!」

 相変わらずの無表情…その上無言。

 ひょっとして、気を失ってるんだろうかと2人が心配していると、

照「…痛かった」

咲「うん、アレは痛いよね」

穏乃「とにかく無事で何よりですよ」

照「…い”た”か”っ”た”よ”お”!」

咲「」

穏乃「」

照「うわああぁあぁああぁん!さきぃ!さきぃ~!」

 なんだこれ。

 …なんだこれ。

 不意に豹変した照に、2人はひどく狼狽させられていた。 






咲「もう、泣き止んだ?」

照「…うん」

穏乃(あれれ?咲さんの方が妹だよね?)

 色々あった。

 何で家族がすれ違ったのかとか、妹は居ない発言とは何だったのか…とにかく色々。

 全部終わっちゃいました。

穏乃(つうか私、部外者なのにかなり込み入った話を聞いちゃったな…)

 穏乃も巻き添え食らってました。

 取っ組み合いとかそんなんも、小さな身体で一生懸命抑えてました。

 マジ天使。

咲「お姉ちゃん…このインハイが終わったら」

照「ああ、また家族皆で一緒に暮らせるように頑張ろう」

穏乃(でもまあ、2人が幸せそうならそれでいいよね!うん!)

 こうして宮永姉妹はめでたく仲直りしたのでした。

 めでたしめでたし…





 そんな事はなく、物語はまだ続くのだ。


咲「よくよく考えてみたら…私、ここに来る一番の理由叶っちゃった」

穏乃「へ?」

咲「だからもう…棄権でもいいんじゃないかなって」

照「咲がそれでいいのなら、私も…」

穏乃「いやいやいや…いやいやいやいやいや!」





果たしてこの先どうなってしまうのか…続きは次回。

つー訳で今回はここまでっす
こっから怒涛の超展開があったりなかったり…あ、肉弾戦はないんで

それでは、また

>>711 訂正

×:突如王者は前のめりに、顔から地面に突っ込んだ。
○:突如王者は前のめりになり、顔から地面に突っ込んだ。

今年中にはこのスレ埋まっちゃいそうですねー

恒例のリクエスト募集→>>723

かおりんといちゃいちゃ

>>723
了解です
30分後くらいに投下開始します

投下開始しまっせー
いちゃいちゃとか…どうなっても知らんぞ


佳織「…旅番組?」

マネージャー「うん。佳織ちゃんって人気あるしね」

佳織「そ、そうなんですか…いまいち実感湧かないですけど」

マネージャー「君はもう少し自分の事をよく知っておくべきだと思うよ、うん」

佳織「そう言われましても…私って運だけが取り得の麻雀プロですよ?」

マネージャー「何を言うかっ!」クワッ

佳織「ひうっ」ビクン

マネージャー「普通のプロならマネージャーなんか必要ないんだ。君がそうでないのは、アイドル性があるからだ」

佳織「あ…アイドル?牌のおねえさんみたいなものですか?」

マネージャー「間違ってはいないが、佳織ちゃんはどちらかと言うと教えられる側だからね」

佳織「で、ですよね」

マネージャー「だからこそ、君の闘牌に惹かれる者は数多くいるんだよ。ジャイアントキリングの体現者ってね」

佳織「そ、それほどでも…」

マネージャー「後はそうだな、見ていて初々しい所があったり…胸が大きかったり」

佳織「マネージャー、それってセクハラですよ!」

マネージャー「すまんすまん。しかしだな、君を見て放っておける人はそう多くないぞ」

佳織「そうでしょうか?私にはよく分かりません」

マネージャー「はっはっは。俺は君なら恋人くらい居てもおかしくないって思ってるんだがな?」

佳織「…もしそうなら、マネージャーはどうします?」

マネージャー「どうもしないさ。立場上は止めなきゃならんがねー」


佳織「…ところで、その旅番組ってどんな名前なんですか?」

マネージャー「うむ。『せのぶらっ!』だ!」

佳織「えっと…どうしてそんな名前に」

マネージャー「香織ちゃんが全国をぶらぶらして回る。だから『せのぶらっ!』って名前なんだ」

佳織「なるほど」

マネージャー「個人的には、香織ちゃんのブラジャーって略でもあると…」

佳織「…あんまりしつこいと、事務所にクビにしてもらうよう頼みますよ?」

マネージャー「それは覚悟の上だ!セクハラは俺の生きがいだからなっ!」

佳織「は、はあ…」

マネージャー「あ、言い忘れてた。この番組って2人進行なんだよ」

佳織「え…ゲストの方が来るんですか?」

マネージャー「いや、君と同じ麻雀プロがレギュラーになるんだ。アシスタントという形でね」

佳織「そうなんですか。で、誰がそれを勤めるんですか?」





マネージャー「…須賀京太郎君だよ」ニタリ

佳織「…えっ?」


 須賀京太郎。

 佳織と同じく麻雀プロにして、双璧を為す者である。

 佳織が「麻雀界のラッキーガール」なら、彼は「麻雀界のラッキーボーイ」。

 しかし表向きには、何ら接点のない者同士だった。

 当然、一度も卓を囲んだ事はない…寧ろ無関心を決め込んでいた。

 例えばこのように。

「須賀京太郎…誰ですかそれ?」

「ほら、貴女と同じで豪運と名高い麻雀プロですよ」

「…知りませんし、興味ありません」

「え?」

「恐縮ですけど、こちらも予定がありますので…それでは」

「あっ…」

 まるで関心がないように話していたのだ。

 京太郎の側もそれは同じだった。

 しかし…

『ど、どうしよう京太郎君!?』

『落ち着いてください佳織さん。俺も今知らされたばかりで、かなり戸惑ってますけど…』

 この2人、フツーに付き合ってました。

>>731 訂正
まるで関心がないように話していたのだ。→そっけない感じで軽く流していた。


佳織『私、事務所には貴女と付き合ってる事黙ってるんだよね…』

京太郎『マジすか。俺の方はとっくに話してるんですけど…』

佳織『…大丈夫なのそれって』

京太郎『もしバレたら、そっちの事務所と話をつけてペアでの活動にしようって言ってました』

佳織『そっちはそれでいいかもしれないけどさ…こっちがどうするかは分からないよ?』

京太郎『まー何とかなるでしょ。大丈夫、大丈夫です!』

佳織『…ホントに?』

京太郎『ホントホント。第一佳織さんって、ネットじゃ一切活動してないでしょ?』

佳織『まあね。揉め事になったらやだし…』

京太郎『キャラを演じてる訳でもなし、いざとなったら正直に言えばいいんですよ』

佳織『そうかなあ…私、なんだか怖いよ』

京太郎『…ぶっちゃけ俺も怖いですけど、2人一緒ならきっと怖くないです』

佳織『京太郎君…うん、私も頑張るよ!』


京太郎『それじゃあ佳織さん、また明日』

佳織『ええ、また明日』

ピッ

マネージャー「…佳織ちゃん?」

佳織「きゃっ!」

マネージャー「どうしたんだいこんな所で。誰かと電話してたようだけど」

佳織「えっと…そう、お母さんにです。レギュラー番組貰えたから、その報告を」

マネージャー「そっかそっか。お母さんは喜んでらっしゃったか?」

佳織「はい!」

マネージャー「それはよかった。それじゃ、明日も頑張ってくれよ」

佳織「任せてください!私、頑張っちゃいますから!」


 そして迎えた撮影当日。

佳織「…はじめまして」

京太郎「…こちらこそ。今日からよろしくお願いしますね」



マネージャー「なんだかぎこちないな、あの2人」

マネージャー2「ええ…」

マネージャー2(おいおい…ホントに付き合ってんのかよ、あの2人は!)

マネージャー「でもまだ初回ですし、これからゆっくり交流を深めていけばいいですよね」

マネージャー2「そうですね。上手くいってくれればいいんですけど」

マネージャー2(京太郎…頼むからしくじらないでくれよ)



京太郎(佳織さん。「いつも通り」でいいですからね)ヒソヒソ

佳織(わかったよ京太郎君。「いつも通り」でいいんだよね)ヒソヒソ



「それじゃあ、撮影開始します。3、2、1…はいっ!」


佳織「えっと…麻雀プロの妹尾佳織です!」

京太郎「同じく須賀京太郎です」

佳織「この番組は、わたくし妹尾佳織と京太郎『君』が一緒に全国巡りをするというものです」

京太郎「記念すべき第1回は、俺達2人の地元である長野で行う事になりました!」

佳織「初めての事で多少不安はありますが、精一杯頑張らせていただきます」

京太郎「俺も『佳織さん』のアシスタントとして、一緒に番組を盛り上げていく所存ですので」


「「どうぞよろしくお願いします!」」


マネージャー(やっぱりな)

マネージャー2(表向きは面識無しの人間が、こんな綺麗にハモれるもんなんですかね…)


 とりあえず、そんな感じで撮影は始まったのだが…

佳織「あ、京太郎君見て見て!」

京太郎「四葉のクローバーですか。こんな道端にも生えてるもんなんですね」

佳織「どうする?採っちゃう?」

京太郎「そのままにしときましょう。2人でこれを見れたって事が、既に幸運なんですから」

佳織「…そうだよね。採っちゃったら可哀想だしね」

佳織「それに…このクローバーも、もっと多くの人に見つけてもらった方がきっと幸せだよ」

京太郎「ですね。俺もそう思います」

佳織「…」

京太郎「…」

佳織「…ねえ、京太郎君」

京太郎「分かりますよ佳織さん。折角ですし、もう少しじっくりと見ていたいですよね」

 こんな感じで時間を潰していた。

 まあ、この手の番組にはよくある事なのだが。

マネージャー(近い、近すぎるよお2人さん)

マネージャー2(…カメラマンがアングルに困ってるじゃないか)


 その後も2人はあちこち歩いて、

「お2人って、並んでみると兄弟みたいですよね」

佳織「よく言われます」

「…よく?」

佳織「ああいえ、何でもありませんよ。何でも」

 危うく通行人に関係をバラしそうになったり、

「2人のうち、どっちがラッキーだって思います?」

佳織「京太郎君」

京太郎「佳織さん」

「即答っすか」

 …なんかもうお察しな事になっていた。


 そんでもって、たどり着いたはとあるタコス屋。

京太郎「ここのタコスが美味しいって評判なんすよ」

佳織「そうなんだ。どれがオススメなのかな?」

京太郎「それはもちろん『金色に輝くタコス』で…」

「あ、京太郎じゃないか!」

京太郎「この声は…優希か?」

優希「そうだじょ!今日は私が店番だからな!」

 片岡優希。

 タコス屋オーナーにして、麻雀プロでもある才女。

 同じ部活の京太郎とは、かなり気心の知れた仲であった。

優希「まさかここに来るとは思ってなかったじょ」

京太郎「知ってたのか?」

優希「まあ、そちらのスタッフと縁があったからな!」

 嘘は言っていない。

 だが番組を知ったのは、優希がそれをスタッフから無理やり聞きだしたからだ。

 彼女なりに、京太郎の事を意識した結果と言えよう。

佳織(…まさかこの人)

優希(京太郎…必ず振り向かせてみせるじょ!)

 胃袋掴んでなんとやら。

 片岡優希は、タコス力(ぢから)で京太郎を射止めようとしていたのだ。


京太郎「まだ開店前みたいだけど、注文いいか?」

優希「勿論だじぇ!何が食べたいんだ?」

京太郎「当然『金色(こんじき)に輝くタコス』を2人前だ!」

優希「よしきた!」

 注文を受け、優希が素早く調理を始める。

 辺りに食欲をそそる匂いが立ち込めてきた。

 その光景は、見る者全てを圧倒させる。

 道行く人もスタッフも、京太郎も、そして佳織も。

優希「…よし、出来たじぇ!」

 眩しい。

 彼女のタコスは、黄金(こがね)の様に輝いていた。

 これが彼女のタコス力。

 そして生き様。

 料理であれば、優希は佳織に何があっても負けはしない。

京太郎「むぐむぐ…いつ食っても上手いなこれは」

佳織「…」

優希(ふふふ…これで京太郎は私のものだじょ!)

佳織「…京太郎君、私も一口貰っていいかな?」

京太郎「え?佳織さんの分もちゃんと…」

佳織「いいからっ!」

京太郎「は、はい」

優希(何をするつもりだ…まさか、この女っ!?)

佳織「それじゃ、いっただきま~す」パクッ

優希「!?!?!?!?」

佳織「えへへ…私、もうこれでお腹いっぱいになったかな」



マネージャー2(や、やったっ!)

マネージャー(わざわざ店主に見せ付けるように間接キスとは…佳織、恐ろしい子!)


京太郎「…やっちゃいましたね」

佳織「うん、やっちゃったね」

京太郎「どうします?そっちのタコスも食べましょうか?」

佳織「勢いでああ言ったけど、流石にあれじゃあお腹一杯にはなれないよね」

京太郎「ならどうします?」

佳織「…食べさせ合いをしながら、というのはどうかな?」

京太郎「いいですね。じゃあ早速そうしましょうか」

 1人が食べ、もう1人が食べさせる。

 そんな事が暫く続いて。

 食べ終わった頃には、優希がうなだれながらタコスを焼いていた。

京太郎「…こうするつもりなら、1人前でよかったかもしれませんね」

佳織「じゃあさ、次からはそうしようよ。今度は2人きりの時間でね」

京太郎「なら帰ったら早速、腕によりをかけてタコスを作らないといけませんね」





マネージャー2(な、なんてことを…)

マネージャー(いっそ幸せなキスでもして、終わりでいいんじゃない?)


そう、料理でならば優希は勝っていただろう。

だが…恋愛における機先は既に制されていたのだった。



「せのぶらっ!」はそれなりの高視聴率だったという。

大したトラブルも起こらず、2人はその後も幸せに過ごしていた。

しかし忘れてはならない。

この成功は、或る乙女の犠牲あればこそ成り立ったものなのだから……。



カン!

○元ネタは旅番組じゃありません
>>198とかも混ぜてみたら、結構長くなっちゃいました
○遠回りになっちゃったのが主な反省点



それでは、また

かおりんすばら乙!

近頃日課の京淡いきまー
---



淡「きょーたろー、何作ってるの?」ギュー

京太郎「ちょっと待ってな……よし、できた」

京太郎「ほら、離れてこっち来い」

淡「?」トテトテ

京太郎「ほれ」

淡「あーっ! マフラーだー!」キラキラ

京太郎「髪上げて」

淡「うんっ」

 フワッ シュル…

淡「うへへ、ちょっとくすぐったい」ニマニマ

淡「……あれ? でもすごく長いよ?」

京太郎「おう。これはな……」シュル…

京太郎「こうして俺も巻けばちょうどだろ?」

淡「! 二人用だ!」

京太郎「気に入ったか?」

淡「にへへ~、きょーたろーありがと~♪」ギューッ

京太郎「今度はこれ着けてデート行くか」

淡「うんっ!」



続かん
長いマフラー二人で使うのっていいよね

>>743で旅番組じゃないって書きましたけど、分類上はあれも旅番組だそうです…一応CSでも見れるとかなんとか
…流石にCS使ってまで見るほど大層なもんじゃない(断言)

>>746
ウチは大手じゃないんで大丈夫っすよー
かといって、気にしないでとも言えませんけど

せのぶらは面白い

>>750
それを再現出来れば良かったんですけどねー…結局通販パートも書けませんでしたし。

リクエストを書くのが1週間後や10日後だったりしましたが、今後は今回のような形で応えさせていただく所存です。
なので前みたいな複数募集は一旦やめます。その代わり、無茶振りだろうと足掻けるだけ足掻きます。
…いつかの食人先生みたいに。

そんな訳で、今回は2日連続でリクエスト募集→>>753
3日連続は無いっす。

迷探偵京太郎  ~阿知賀女子殺人事件~

>>753
遅くなりましたが了解っすー
早ければ今から30分後くらいに投下開始します

寝落ち覚悟で投下開始
まともなミステリじゃなくても(゚ε゚)キニシナイ!!


 学生探偵・須賀京太郎は松実館の婿入り候補である!

 なんやかんやで松実宥と懇意にしており、自身の卒業後に結婚する事を約束していた!

 しかし…

玄「…京太郎君。お姉ちゃんが…お姉ちゃんが……」

京太郎「……」

 婚約者である松実宥は、山中にて死体で発見された。

 死因は低体温症による凍死。

 自室から遺書が発見され、外傷も見受けられなかった為に捜査は自殺の線で進められている。

京太郎「……」

 京太郎は、何も言わず黙り続けた。

 愛する人の亡骸を、沈痛な面持ちで見続けていた。

 顔とか、おっぱいとか…おっぱいとかおっぱいとかおっぱいとか。

 射抜くような目つきでただ一点を見つめていた。

 アホだった。

 こんな時でさえ、彼はまず女性の胸…おもちを気にしてしまうのだ。

 それが理由で、何度か犯人に殺されそうになった事もある。犯人を犯人でないと思い込んだ事すらある。

 ―――おもち狂いの迷探偵。世間は彼をそう評していた……。


京太郎「………」

京太郎「……」

京太郎「…」

京太郎「…宥さん」

 返事はない。

 当然だ、そこにあるのは彼の愛する人ではないのだ。

 それでも彼は宥の名を呼ばずにいられなかった。

 …これが最後の別れなのだから。

京太郎「ん?」

 違和感を覚えた京太郎は、じっと宥の身体を見る。

京太郎(ひょっとしたらこの人って…俺の予想、外れてりゃいいんだけどな)

京太郎「すみません刑事さん」

「はい?」

京太郎「今すぐ関係者全員を集めて下さい。謎は全て解けました!」 


松実父「…で、どういうだい京太郎君?」

玄「悲しい事だけど、今回の件は自殺として処理されちゃうんでしょ?」

「それなのに何故謎が解けただなんて…まさか、これが自殺ではないとでも?」

京太郎「ええ。これは自殺なんかじゃなくて、殺人なんですから」

松実父「殺人!?」

玄「それじゃあどうして、お姉ちゃんが殺されなきゃいけなかったの?」

「須賀君…何か根拠はあるんですか?」

京太郎「その前にまず、お話しておかなければならない事があります」

松実父「…言ってみたまえ」

京太郎「――俺と宥さんの間に、子供が出来ているという事を」

松実父「!?」

「!?」

玄「嘘でしょそんなの!京太郎君、私と君の間には子供なんか出来てないじゃない!」





京太郎「…まさかとは思っていましたが、やはりそうでしたか」

玄「あっ…」


松実父「こ、これはどういうことだね!」

「まるで意味が分からんぞ!」

京太郎「二人がそう仰られるのも無理もありません。俺自身、今の今まで知らなかった事ですから」

京太郎「ですよね玄さん…いや、宥さん」

宥「…もっと早く気付いて欲しかったよ、京太郎君」

松実父「ほ、本当に宥なのか!?」

「それじゃあここにある仏さんは…」

京太郎「そう、玄さんです…彼女は宥さんに成りすまして、俺と肉体関係を持っていたんです」

宥「うん…この子が貴方を奪わなければ、こんな事にはならなかったの」

「なっ!?」

松実父「ゆ、宥…お前」

宥「…玄ちゃんが悪いんだよ。私に化けて、京太郎君と愛し合っていたからいけないの」


京太郎「……」

宥「玄ちゃんはね…は炬燵で寝ていた私を鎖に繋いで、部屋から出れなくしてたの」

宥「そして、何食わぬ顔で玄関口に貴方を迎えにいって、そのまま身体を重ねた」

京太郎「…いつからそうなったんですか?」

宥「半年ほど前かな。あの頃から京太郎君、受験やらなんやらで忙しくなったでしょ?」

宥「あの子はそこに付け入ったの。貴方が、入れ替わりを確認し辛い状況だと分かっていたから」

宥「変装がばれないように色んな工夫を拵えて…結果京太郎君は、見事に騙されちゃったよね」

京太郎「……」

宥「でもね京太郎君。私、貴方の事は恨んでないよ?」

京太郎「…どうして?」

宥「玄ちゃんが私に化けたのは、そのままじゃ私のように京太郎君から愛して貰えないって分かっていたからなの」

宥「事実貴方は、あの子からのアプローチを悉く断ってたよね?」

京太郎「……」

宥「仕方がなかったの。そう、仕方がなかったの。私も貴方も悪くなんかない、あの子が悪いの」


 京太郎は、やはり黙して語らない。

京太郎「……」

 ――やめるのです、ボクたち!

宥「…あ」

 ふと、ある日の事が宥の脳裏をよぎった。

 玄が宥を、心無い少年達の悪意から守った日だ。

 あの日からずっと、妹は姉を護る騎士だった。

 玄がインハイの洗礼を受けるまで…いや、受けてからは互いに護りあうようになった。

 …いつからそれが崩れたのか。

宥「…私、私…殺しちゃった…玄ちゃんの事を殺しちゃった…大事な、大事な家族なのに……」

 泣き崩れる宥。

 その場にいた誰もがただただ口をつぐんでばかりだった。

 決して戻らぬ平和な日常。

 それを想って宥は泣く。

 …京太郎には、ただ黙って彼女に寄り添う事しか出来なかった。






「…もう、行くのかい?」

京太郎「ええ。俺にはもう、ここへ来る資格がありませんから」

「松実さんには会わないのか?」

京太郎「『お互い、忘れあった方がいい』って言われました」

「…そうか。ところで1つ訊いてもいいかな?」

京太郎「何でしょうか?」

「何故、あの仏さんが宥さんでないと思った?」

京太郎「…服がキツキツでした」

「服がキツいのが、事件と何か関係あるのか?」

京太郎「宥さんは慢性的な低体温症でした。その彼女が、身体を締め付ける服を着るはずはないんです」

京太郎「それで血行を悪くしてしまえば、あの人が大嫌いな寒さを感じてしまいますしね」

「なるほど…だがそれだけでは理由が弱くはないかな?」

京太郎「服がわずかに濡れていました。恐らくですが、玄さんは睡眠薬か何かで意識を失った後に服ごと身体を濡らされたんです」

京太郎「服が濡れたままなら、季節に関係なく低体温症になりやすい…まして山ではね」

「つまり、どういう事なんだ?」

京太郎「低体温症が、誰にでも起こりうる症状だという事です。たとえ宥さんのような体質でなかったとしても」

京太郎「…ひょっとしたらという気持ちが湧いた時、死んだのは宥さんじゃないかもしれないと考えました」

京太郎「しかし俺はいつから2人が入れ替わっていたかも分かりませんし、自殺と断定されれば不自然な点は黙殺されたでしょう」

京太郎「ですからアレは賭けでした。妊娠の話を軽く流されたら、俺には手の打ちようがなかった」

「…君はどうして欲しかったんだ?」

京太郎「え?」

「彼女が犯行を黙秘するか、正直に白状するか…どちらを望んでいたんだ?」

京太郎「…わかりませんよ、もう」

「……」

京太郎「あんな言葉で彼女を試した俺に、人を愛する資格はない…ですから決めました」

「…何を?」





京太郎「――俺、もう二度と笑いません。幸せになんかなりません。そして…おもちなんてもういりません」


 こうして迷探偵は名探偵へと移り変わり、ただ謎を究明するだけの怪物と化したのだった。

 元に戻る事はない。

 謎よりおもちを愛し、判断に迷いながら事件を解き明かしてきた少年は…もうどこにもいないのだから。










憧「…3人とも何作ってんの?」

京太郎「ミステリー」

玄「略奪愛」

宥「悲恋」

穏乃「低体温症を学ぶ為の学生映画が、どうしてこんな風になっちゃってるんですかねー?」

灼「映画研究部もなんかノリノリだったらしいし…」

晴絵「…一番おかしいのは、どう考えても松実姉妹の親父さんだな」



カン!

>>764 訂正

×:謎よりおもちを愛し、判断に迷いながら事件を解き明かしてきた少年は…もうどこにもいないのだから。
○:謎よりおもちを愛し、判断に迷いながらも事件を解き明かしてきた少年は…もうどこにもいないのだから。

×:京太郎「ミステリー」→○:京太郎「ミステリーとサスペンス」



ほんとどうすりゃよかったんですかこれ!楽しかったけど!
それでは、また

>>762 訂正

×:宥「…私、私…殺しちゃった…玄ちゃんの事を殺しちゃった…大事な、大事な家族なのに……」
○:宥「…私、私…殺しちゃった…玄ちゃんも…その赤ちゃんも…大事な、大事な家族なのに……」

…誤爆してないだけまだマシだと思いました(前科3犯)

>>761 訂正

×:宥「玄ちゃんはね…は炬燵で寝ていた私を鎖に繋いで、部屋から出れなくしてたの」
○:宥「玄ちゃんはね…炬燵で寝ていた私を鎖に繋いで、部屋から出れなくしてたの」

今回のは書いてる自分も思うところがありましたけども、にべもなく命が奪われるのは胸糞悪くなるものですし……。
だからこそのオチですが。
とは言えこんなもんを書いたままで言い訳じゃないんで、次回にいちゃいちゃとかほのぼのを書いて浄化します。

>>771 訂正

とは言えこんなもんを書いたままで言い訳じゃないんで→とは言えこんなもんを書いたままで良い訳じゃないんで

過去作と比較して、内容を褒めてもらったり、時には謗られたりする(>>299>>597とかに対して)ようになったのでとても感慨深いです。
それでは、投下を開始します。


 ―――京太郎の家には、色んな女の子達が遊びにやってきます。

 はじめは霞さんがやってきました。

霞「ねえねえ須賀君」

京太郎「なんでしょうか、霞さん」

霞「私が牌を動かそうとすると…」

 ムニュッ

霞「いつも胸がこうなって」

 ポニョン

霞「こうなって」

 ブルンブルン

霞「こんな風になってしまうの」

京太郎「……」ボタボタ...

 京太郎は「霞さんだから出来るんですねー…すばらしい!」と言いました。

 
 今度は憩さんがやってきました。

憩「須賀君、いつものやつをやらせてもらってええかなー?」

京太郎「いいっすよ」

憩「じゃあお言葉に甘えて…口を大きく開けて下さーい」

京太郎「あー」ベロッ

憩「じゃあ次は…須賀君、服を脱いでください」

京太郎「へーい」ヌギヌギ...


 ...ピタッ


憩「んー…心音は今日も正常みたいですねーぇ」

京太郎(どうも慣れないなあ、これ)

 憩さんは、お医者さんごっこが大好きなのです。


 じぇー、じぇー、優希ちゃんがやってきました。

京太郎「どしたよ優希?」

優希「じぇー、じぇー、京太郎実はね……」

 ヒョコッ

優希「朝起きたら、タコスに手足が生えてたじょ」

 シュタッ

優希「それにセアミィも動くように……」

京太郎「ほー、おかしな事もあるもんだなー」



「クルルルルル!」

優希「…え?」

エトペン「…クルルッ」

京太郎「実は和のエトペンもなんだ」

 ヒョッコリ

和「…そうなんです」

 「こんな日は、きっといい事があるさ」と、京太郎は言いました。


 哩さんと姫子さんです。

 二人は、恋をしてしまったそうです。

哩「姫子…」///

姫子「ぶちょー…」///

 ...チュッ

京太郎「…一つ聞いてもいいですか?」

哩「なんそい?」

京太郎「どっちが先に、相手を好きになったんですか?」

哩姫「姫子!(ぶちょー!)」ビシィ!





 それから、哩さんと姫子さんは喧嘩しながら帰っていきました。

 京太郎は、少し心配です。


 白望さんです。

白望「……」ヌボーン

京太郎「……」

白望「……」クルッ

京太郎「……」

白望「……」グッタリ

京太郎「……」





. ..zzz

京太郎「…寝ちまったよこの人」

 京太郎も、白望さんだけは訳が分かりません。


 久しぶりに、煌さんがやってきました。

煌「京太郎君、私のこの結った髪を切って下さい!」

 煌さんは、クワガタ呼ばわりされるのがイヤになってきたのです。

 京太郎はハサミでチョキ、チョキ、

 チョキ

 チョキ

 チョッキン

 チョッキンキン





京太郎「…煌さん、終わりましたよ」

煌「……」ジミィ...

煌(あれ?これが私……?)

 煌さんは、自分があの髪型になっていた訳がなんとなく分かりました。


 豊音さんと胡桃さんです。

豊音「胡桃がくっついて離れてくれないんだよー」

 と、豊音さん。

京太郎「胡桃さん。どうして豊音さんから離れないんですか?」

 京太郎が訊きました。

胡桃「だって豊音の背中って、とっても気持ちがいいんだもの」

京太郎「そうなんですか?」

胡桃「百聞は一見にしかず…一度試してみなよー」

京太郎「…豊音さん」

豊音「えっと…うん、いいよー」

京太郎「それじゃあ失礼して…」

 ギュッ

京太郎「ほんとだ。気持ちいい―――」

 ………

 ……

 …





 zzz...zzz...

 いつの間にか、みんなで寝てしまいました。




 ―――おやすみなさい。

元ネタは「ただのおじさん(作・絵:ふくだ すぐる氏)」です。
ちなみに配役ですが、

京太郎→おじさん 霞さん→タコさん 憩ちゃん→ゾウさん 優希→ねずみさん
哩姫→タヌキさんとウサギさん シロ→ネコさん 煌ちゃん→ライオンさん 豊音と胡桃ちゃん→ヤギさんとおサルさん

となっております。
煌ちゃんの話だけ、前置きに「久しぶり」とありますが…元ネタ準拠です。理由も特に書いてませんでした。



それでは、また。

あ、忘れてました。のどっちだけは配役無しなんです。
ぶっちゃけエトペンが出てきた理由付けで出しただけでして、特に意味はありません。

>>785 訂正

ちなみに配役ですが→一応配役がありまして

どうやら昨日の元ネタには続編があったようですので、機会があればまた書いてみたいですね。
後、最初と最後の文にダッシュを使ったのはやっぱり拙かったなと思いました。あの作品に怖い話は一切ないですし。



…ルル山絡みの声優ネタ増えすぎやろ!

一応配役がありまして→一応配役はこのように


1/2

咲「京ちゃん…やっぱい外は寒いね」

京太郎「夜だし尚更だな。仕方ねえ、俺のコートを貸してやるよ」

和「…須賀君は大丈夫なんですか?」

京太郎「皆はスカート履いてるけど、俺はそうじゃないからまだ何とでもなるしさ」

和「履けるものがスカートだけですからね…スパッツとかでマシにはなりますけど」

久「見てくれが寒そうなのには変わりないけどね。実際寒いし」

京太郎「んな事言っても融通利かせてくれない辺り、ウチの学校も酷いですよね…」

まこ「長野の冬は厳しいから、冬用制服にズボンを採用して欲しいもんじゃのう」

優希「内陸県の中でも、長野はかなり冷え込む方らしいじぇ」

久「軽井沢や上高地とかは、通年でも北海道なみの気候なのよね」

咲「よくそんな事を知ってますよね部長…それに優希ちゃんも」

優希「修練を積ませてもらったからな…部長の扱きは大変だったじょ」

久「だってそれは、優希が夏みたいに追試を受けたくないって言ったからでしょ?」

まこ「…かなり酷いとは聞いておったが、それほどのモンなんか?」

京太郎「らしいっちゃらしいですけど…ホントに馬鹿なら、麻雀なんか出来ねえよな?」

和「…なんというかその…勉強が出来ないというよりは、飽きっぽいんですよ」

咲「苦手だから勉強が出来ないという訳ではないのは確かです。はい」

和「…もう限界だってセリフを何度も聞いた時は、私もイライラしたものですが」

咲「辛抱強さがなかったからね…あの頃の優希ちゃんは」

優希「んー…私が悪いんだけども、もう少しこう…手心を加えて欲しいというか」

和「パッと浮かんできたのがそれでしたから、仕方ありませんね」

咲「イライラしたからね、実際」



優希「な、何もそこまで言わなくても……」

京太郎「色々思う所があったんだろ。仕方ねえ、俺の胸でよければ貸してやるよ」


2/2

まこ「…寒さが人の心まで冷やしてしまうんじゃろうか?」

久「今日でこんなになるなら、明日はもっと大変な事になるかもしれないわね」

和「あ、明日はきっと大丈夫ですよ…多分」

まこ「違ってたらどうするんじゃ?」

和「学校の屋上で、恥ずかしい言葉をいっぱい叫んじゃいます」

久「…へぇ」ニッコリ

京太郎「んなアホな…おい和、部長がマジになる前に取り消しとけって!」

優希「もっと罰ゲームを恥ずかしくした方が面白くなるじょ!」

まこ「酔っとるんかのアンタら…もっとやりんしゃい!」





京太郎「…ろくでもねえ」

咲「しょうがないよ京ちゃん。部長が甘酒を皆に振舞ったんだから」

京太郎「口にしてない和もあの通りだけどなー」

内容がない?そんな日があってもいいでしょ!

それでは、また

スカート下のジャージというのも乙なもんですね…中学時代はそれが分からなかった
ただそれが見苦しいという意見も多くありまして、ズボン着用がOKになったケースもあるそうですね

今回の話、三点リーダーは使うんじゃなかったな…

>>774 訂正
>>299>>597とかに対して)→(>>299>>576とかに対して)

>>789 訂正
一応配役はこのように→一応配役が決まってまして、それは以下のように

>>790 分かりにくすぎた昨日のネタばらし

きょうちゃん…やっぱいそとはさむいね

よるだしなおさらだな。しかたねえ、おれのコートをかしてやるよ

すがくんはだいじょうぶなんですか?

みんなはスカートはいてるけど、おれはそうじゃないからまだなんとでもなるしさ

はけるものがスカートだけですからね…スパッツとかでマシにはなりますけど

みてくれがさむそうなのにはかわりないけどね。じっさいさむいし

んなこといってもゆうずうきかせてくれないあたり、ウチのがっこうもひどいですよね…

ながののふゆはきびしいから、ふゆようせいふくにズボンをさいようしてほしいもんじゃのう

ないりくけんのなかでも、ながのはかなりひえこむかたらしいじぇ

かるいざわやかみこうちとかは、つうねんでもほっかいどうなみのきこうなのよね

よくそんなことをしってますよねぶちょう…それにゆうきちゃんも

しゅうれんをつませてもらったからな…ぶちょうのしごきはたいへんだったじょ

だってそれは、ゆうきがなつみたいについしをうけたくないっていったからでしょ?

かなりひどいとはきいておったが、それほどのモンなんか?

らしいっちゃらしいですけど…ホントにばかなら、まーじゃんなんかできねえよな?

なんというかその…べんきょうができないというよりは、あきっぽいんですよ

にがてだからべんきょうができないというわけではないのはたしかです。はい

もうげんかいだってセリフをなんどもきいたときは、わたしもイライラしたものですが

しんぼうづよさがなかったからね…あのころのゆうきちゃんは

んー…わたしがわるいんだけども、もうすこしこう…てごころをくわえてほしいというか

パッとうかんできたのがそれでしたから、しかたありませんね

イライラしたからね、じっさい



な、なにもそこまでいわなくても……

いろいろおもうところがあったんだろ。しかたねえ、おれのむねでよければかしてやるよ


>>791 ネタばらし続き

さむさがひとのこころまでひやしてしまうんじゃろうか?

きょうでこんなになるなら、あしたはもっとたいへんなことになるかもしれないわね

あ、あしたはきっとだいじょうぶですよ…たぶん

ちがってたらどうするんじゃ?

がっこうのおくじょうで、はずかしいことばをいっぱいさけんじゃいます

へぇ

んなアホな…おいのどか、ぶちょうがマジになるまえにとりけしとけって!

もっとばつゲームをはずかしくしたかたがおもしろくなるじょ!

よっとるんかのアンタら…もっとやりんしゃい!





ろくでもねえ

しょうがないよきょうちゃん。ぶちょうがあまざけをみなにふるまったんだから

くちにしてないのどかもあのとおりだけどなー


こういうのは上手く使えなきゃ何の意味もないよねーとしみじみ思いました
ちくせう

…ネタを仕込むならある程度分かりやすくしなきゃいけないですね
ひらがな化したら一部の読みが音読みから訓読みになってんじゃん…めんどいからもう訂正しない

小ネタの投下前に次回分のリクエストを→>>803

ハギヨシ、鹿児島へ

>>803、了解っす

ハギーを鹿児島に…これは>>614の続きを書けという事か……


京太郎「今日は金星がよく見えるなー」

淡「なんてったって最大光度だからね!」

京太郎「…最大光度?」

淡「惑星が最も明るく見える等級の事だよ。等級は、目で見た明るさとかで決められるの」

淡「明るく見えるものほど等級の値は小さくなるんだって。値は…確か-4.7だってさ」

京太郎「それってどれくらい凄いんだ?」

淡「主だった天体の中ではかなり明るい方だよ。太陽や月には敵わないけどね」

淡「それでも、大質量の恒星が爆発する時に起こす超新星とはそんなに変わらないかな。あれが-6.0くらいだし」

京太郎「星の爆発で生じる明るさとそんなに変わらないのか。なんつうか意外だな」

淡「あとね、一等星と金星なら160倍も明るさが違うの!」

京太郎「160倍!?」

淡「晴れていれば青空の中でも目視出来るかもしれないレベルだから、相当なもんだよ」


京太郎「ふむふむ。金星って名がつくだけはあるよな」

淡「明星って呼び方もされるよ。明けの明星、宵の明星ってね…後ルシファーとも」

京太郎「ルシファーって、ゲームだか神話で見聞きするアレか?」

淡「うん。サタンとして悪魔扱いされる前は天使だったし、案外イメージにそぐってるよね」

京太郎「…何でそんなのが悪魔になっちまったのかね」

淡「神様を太陽や月とするなら、サタンはそれに次ぐ金星だったからじゃない?」

淡「天を登って全能の神になろうと思うくらいには、世界で彼に並び立つ者はいなかったそうだし」

淡「でも結局は敵わなくて、地獄の深い穴に落とされちゃった…そんな説もあるんだって」

京太郎「なんか悲しいな、それって」

淡「一番になりたくてなれないって話は、そう珍しいものでもないからね」

京太郎「まあ、一番を目指せないよりはマシだろうさ」

淡「そうかな?私は手の届かない望みを諦めきれない方が、よっぽど辛いと思うな」

淡「…私だって、照のいる所にはまだまだ遠いしね」

一時中断


私用が済んだので再開



京太郎「淡…お前やっぱり、照さんの事が気になるのか?」

淡「そりゃそうだよ。私が金星なら、照は太陽だからね」

京太郎「お前だって麻雀は十分強いし、そう気にするものでも…」

淡「そんな訳ないじゃん!」

京太郎「…淡」

淡「みんなみんな照の事ばっかり見てて、私の方は見ちゃくれない!」

淡「せいぜいが『宮永照の後継者』止まりなんだよ?分かる?…私はそれじゃ足りないんだよ!」

京太郎「どうしてそこまで…」

淡「……」

淡(驚きだよ。今更私にそんな事を訊くなんて)

淡(キョータローがテルーの事しか見てないから、何とかして振り向かせようとしてるのに)

淡(――私は誰よりも、貴方に振り向いてもらいたいのに)

淡(…こんなのってないよ、あんまりだよ……)


京太郎「…もう、いいんじゃないか?」

淡「え?」

京太郎「照さんの後を追うのはもう止めにしようぜ?追ったってしょうがないじゃないか」



淡「…なんでよ」

京太郎「……」

淡「何でそんな事言うのよっ!少し前までは、口を開けば照の事ばかり話していたのに!」

淡「『プロへ行っても相変わらず強いな』とか『やっぱり照さんは凄いや!』とか言っちゃってさ!」

淡「そう言ってる時のキョータロー、目が凄くキラキラしてたんだよ!?」

淡「…そんな風に私を見てくれた事、一度だってないのに!」

京太郎「……」

淡「何とか言ってよ!言っちゃってよ!どうせなら、私なんかじゃ照みたいにはなれないって…ッ!?」

京太郎「……」

淡「ちょ、ちょっと!何で急に抱きしめてくるのっ!? ねえってば!?」


京太郎「淡…俺が悪かった」

淡「…いきなり何よ」

京太郎「俺もお前も照さんに憧れていただろうからさ、その気持ちを共有出来るって思ってたんだ」

京太郎「けどそうじゃなかった。俺はただ楽しめればいいからさ、照さんのように強くなりたいお前とは違っていたんだ」

京太郎「なのに俺…お前の不安を強くしただけみたいで……」

淡「…なーんだ」

京太郎「へ?」

淡「私って、とんだ勘違いをしちゃってたみたい。こっちこそゴメンね?」

京太郎「勘違いって何だよ、勘違いって…勝手に一人でごちらないでくれよ」

淡「悪いけどそれは内緒」

京太郎「何で?」

淡「今それを言ったら、きっと私…恥ずかしすぎて死んじゃいそうになると思うから」

 ああ、なんだ。

 私はてっきり、キョータローがテルーに気があるとばかり思ってたのに。

 …向こうを見てばかりなのは変わらないだろうけど。

 テルーは彼の憧れで、私の憧れでもある。

 でも…だからと言って、テルーに私のモノを盗られるのは嫌なんだ。


京太郎「…よく分かんねえけど、兎に角お前の不安はなくなったんだな?」

淡「多少はね」

京太郎「照さんの事を気にするなとは言えない。でも、お前にはお前らしく麻雀を打って欲しい」

淡「私らしい…打ち方?」

京太郎「俺には明示出来ないけどな!」

淡「まあ…キョータローだしその辺は期待してないよ?」

京太郎「そう言われるとなんかムカつくなー」

淡「はっはっは」

京太郎「…俺はそっちに行けそうにないからさ、悪いな」

淡「いいよ別に。照のいる場所は見えてるから」

京太郎「大きく見えはするけど、きっと遠いぞ?」

淡「アポロ計画に参加した人達だって、それを承知で月に行こうとしたんだよ?」

淡「目指せるのなら目指したい…私はそう思うな」

京太郎「淡…そう思うお前を、俺はすげーなって思うよ」

淡「何言ってるの?京太郎も付いて来るんだよ?」

京太郎「え?」

淡「天に憧れた者同士、一緒に頑張ろうね!打倒宮永照、ってね!」

京太郎「…しょうがねえなあ。帰ったら、早速麻雀の練習するか」

淡「…うん!」

昨日中に終わらなかった…無念。
金星とかアポロ計画のくだりは昨日に由来してます。前者は最大光度云々、後者は昨日がアポロ計画の凍結日だったので。
>>502の続きみたいになってます。淡と京太郎は親類同士だから、一緒に暮らしてるって事にしてください。

それでは、また。

りつべ公式やべぇ…いろいろやべぇ…まさか宮永父らの身長や本名まで明かされるとは……。
なお、一部キャラはまだ情報が伏せられてますのであしからず。
京太郎やハギヨシの身長にも驚きましたが、それ以上に文堂・菫さん・純くん・ダヴァンに驚かされました。
良子ちゃん(晩成)や美子ちゃんとかも結構背が高かったですねー。
後、スケブの竜華が可愛かったです。

りつべ個人として、同人誌とかは全然OKって明言されてました。スクエニ的にはどうなのか分からないともありましたが。
こんなの書いてる身としては、それが一番ありがたかったです。

射水総合の遊月ちゃんと阿知賀こどもクラブの春菜ちゃん
…キャップ被ってると背が高くなったりするんですかね

>>819
阿知賀こどもクラブ→阿知賀こども麻雀クラブもしくは阿知賀こども応援団

今日の投下は夕方以降になりそうです。
次にあわあわメインの話を書く事があったら、今度こそはアホ可愛くしたいですねー。ウチじゃ優希も大概ですが。


 あっ、あの2人ってカッコよくない?

 金髪の子もいいけど、銀髪の人の方が背も高いしイケメンだよねー


京太郎「…くそう」←182cm

純「悔しいのはオレもだよ。お前と並んででも男扱いされるとか」←183cm

京太郎「純さんの場合、ズボンが似合ってるから尚更かと…スカート履いてみます?」

純「ヒラヒラすんのは好きじゃねえんだけどなー」

京太郎「でもそれじゃあ、いつまで経っても男扱いのままですよ?」

純「…そうなんだよなー」




 …わお♪

 金髪学生に黒髪執事か…これは絵になるね。

 金髪君の方が背がちっちゃいのがまたいい。執事さんに憧れて背伸びするとか、あると思います!

 あ、いいねそれ!


京太郎「…ハギヨシさん」←182cm

ハギヨシ「どうか堪えてください須賀君。男には、忍耐も必要なのです」←187cm

京太郎「それでも俺…ハギヨシさんくらいの背丈が欲しい!」

ハギヨシ「そっち!?」

京太郎「だってその方がカッコいいですし。強そうですし」

ハギヨシ「…須賀君ってアホなんですね」

京太郎「失礼な!」



間に合わないので小ネタを投下
すんません、昨日のお題は日を跨いでから(深夜帯)になりそうっす

ちょっくら投下します


 父君と母君が現世から去って幾許か。


 衣は何も変わらない。


 置いていかれたあの時から、衣の時は止まったまま。


 動きはしない。


 幾ら渇望してみた所で、衣はずっと子供のままだ。


 ずっと。


 そう、ずっと。


 お姉さんになりたかった。


 衣は、大人と云うモノに憧れていた。


 四年前のあの日だってそうだった。


 中学生になっても、成長期を迎える気配が少しも無くて、それをもどかしく思っていた。


 苛立ちが募り、母君に呪詛の言葉を囁きもした。


 父君がそれを諌めるも、衣はそれを聞き入れなかった。


 ――もしあの時、私が大人になれていれば…二人は死なずに済んだだろうか。


 父君は言った。


 「お前が大人になりたいのなら、きっと私が何とかしてやる」


 母君が言った。


 「ゴメンね衣。お母さんがダメだから、衣にこんな思いをさせちゃって」


 …言ったのではない、言わせたのだ。


 衣が子供だから、我儘だから、無知蒙昧な愚者であるからそうさせたのだ。


 なのに衣は、それを何とも思いはしなくて。


 二人が全て悪いのだと、呪おうとせずにはいれなくて。


 其のせいかどうかは知る由もない。


 だが身罷ったのだ。


 衣を愛してくれた二人は、もう現世の何処にも在りはしない。


 それからトーカが来てくれて。


 純と一、それに智紀。五人合わせて友達…家族になった。


 咲と打つまで、それを自覚しないでいたけれど。


 衣は自分を「特別」だって思ってたから。


 勝手に自分を孤独と定義し、悲劇の中に浸っていたから。


 もう、壁はない―――。


 そう確信し、天に地に希望が溢れているように思えるようになったのに。


 …いや、だからこそなのか。


 小さいままの自分が、こんなに嫌だと思ってしまうのは。


 ………

 ……

 …



透華「ハギヨシ…衣を連れて何処へ行こうと言うのですか?」

ハギヨシ「鹿児島です」

透華「誰の許可を得てそんな真似を…私、聞いておりませんわよ!」

ハギヨシ「ご心配なく。旦那様には許可を頂いてますので」

衣「そうだぞトーカ!入り婿の事は気にするな!」

透華「…お父様などどうでもよろしいっ!」

衣「!?」

ハギヨシ「透華お嬢様…どうか見逃してはいただけませんか」

透華「出来ませんわ。私は、衣の家族なんですから」

衣「と、トーカ……」

ハギヨシ「では、致し方ありませんね」

透華「な、何を…あっ」


 躊躇いもなく、ハギヨシは透華を昏倒させてしまった。

 その柔肌や体内に、少しの傷もつける事なく。

 秘孔、と云うものがある。

 あらゆる武術を極めた彼に、それを使いこなす事など造作もない。

 先の件で、岩手に巣くう外道共に制裁を加えた業もその為だ。


衣「…は、ハギヨシ」

ハギヨシ「少し眠っていただきました。聞き分けてくださりませんでしたから、仕方ありません」

衣「そ…そうだなっ!トーカが聞き分けてくれなかったから、仕方ないな!」






透華父「どどどどうでもいい…どうでもいいって……」

 ―――透華父は全てを見ていた。




衣「…ハギヨシよ」

ハギヨシ「何でございましょう」

衣「本当に良かったのか…その、トーカに逆らったりなんかして」

ハギヨシ「私は、衣様にお仕えする執事ですから」

衣「だとしても…お前の主人はトーカなのだぞ?」

ハギヨシ「だとしても、です」

衣「何故だ?」

ハギヨシ「私もまた、貴女様の家族だからです」

衣「!」

ハギヨシ「衣様は、いつも誰かを見上げていて…其の度お辛い思いをしていたのは存じております」

ハギヨシ「出来る事ならそれを和らげさせて頂きたい。ただ、それだけの事です」

衣「…ハギヨシの身長を、私が分け与えてもらう事は出来ないのか?」

ハギヨシ「流石にそこまでは。それに出来たとしても、背が縮むのは私も嫌ですから」



衣「…そりゃあ、そうだよね!」

すんません、続きは次回投下になります
序盤の京和とか京玄とかみたく頑張りたいんです…ああいう風に出来るかどうかは置いといて







衣「そもそも、どうして鹿児島に行かなければならないのだ」

ハギヨシ「…貴女に憑く者を祓う必要があるからです」

衣「衣の持つ力とも何かしら因果があるかも知れないのだな」

ハギヨシ「旦那様からもお許しを頂きましたし、恐らくは」

衣「ふむ…もう一つ訪ねてもいいか」

ハギヨシ「何なりと」

衣「衣は、今までのように麻雀を打つことが出来るのだろうか?」

ハギヨシ「それは分かりかねます。ただ、このままずっと衣様が今のようにいられるとは思えません」

ハギヨシ「ですから貴女は私を頼った…そう解釈しておりますが」

衣「…概ねその通りだ。しかし衣は、今のままでいるのも吝かではないと感じるようになった」

衣「この小さき身体のままでも生きていけると…だが、それではいつか弊害が起きてしまう」

ハギヨシ「不老、ですか」

衣「そうだ。ある日を境に衣はほんの僅かも背が伸びなくなったし、声変わりもしていない」

衣「その事実が、衣に自身を特別視させる一つの要因になったのは確かだ。不老のヒトは他にもいたのだがな」

ハギヨシ「不老のヒト…ですか。あまりいい話は聞きませんね」

衣「肉体機能の不全により、まともな生活を送る事さえ叶わなかった者もいるそうだからな」

ハギヨシ「…ご自分にも、その可能性があるかもしれないと」






衣「…死にたくないのだ」




ハギヨシ「……」

衣「考えてみれば、衣は自身の力がどうして宿ったのかも知らなかった」

衣「それを知りえていたかもしれない父君や母君からは、もう何も訊けない」

衣「二人の研究結果を調べてみた事もあったが、一部資料は事故の折に焼失して…」

ハギヨシ「衣様、それは違います」

衣「…どういう事だ」

ハギヨシ「資料は焼失したのではありません。この私が、お二方から託されたのです」

ハギヨシ「内容は俄かに信じ難いものでありましたが、旦那様が貴女を危険視するには十分でした」

ハギヨシ「私が貴女の側にいるのも、表向きはお嬢様からの命によるものですが…旦那様がそう仕向けたのですよ」

衣「入り婿め…奴は何故そんな真似を」

ハギヨシ「恐縮ですが、今は話せません」

衣「この私にさえ、話せぬような事なのか?」

ハギヨシ「はい」

衣「…そうか。衣には何も話してはくれないのか」

ハギヨシ「…はい」


 それからしばらく、執事は少女を背負ってひたすら走り続けた。

 疾風の如く。

 目で見る事はかなわず、勿論追いすがる事もかなわず。

 そんな中、少女は至極平然としていた。

 ゆりかごに収められた赤子のように、いつの間にか安眠していた。

 穏やかな寝顔をしていた。

 それはそれは無邪気で、安らぎに満ちた様であった。

 …その安らぎはどこから来るのか。

 安心か、憧憬か、それとも黄泉路の誘いか。



 やがて二人は、巫女の待つ場に辿り着いた。

 神代小蒔、狩宿巴、滝見春、薄墨初美、石戸明星、十曽湧、そして石戸霞。

 おどろおどろしい光景だった。

 彼女達は口を真一文字に結んだまま、じっとその場に留まっている。

 …敵を前にして身構えるかのように。


霞「…いつかはこうなるだろうと思っていました」

衣「……」

春「天江衣ちゃん…貴女は黄泉に魅入られている……」

巴「そう、取り返しが利かない所までね」

初美「…祓った所で手遅れなのかもしれないですよー?」

明星「この地に留まり祓い続けていれば若しかしたら、という程度ではありますが」

湧「無責任ではありますが、こちらからも確かな事は申せません」

小蒔「確かなのは、そのままでいれば天江さんの命が危ないという事です」





衣「…ハギヨシ」

ハギヨシ「決めるのは衣様、貴女です。私にはどうする事も出来ない」

衣「ひどいぞハギヨシ。私はこんなに心細いのに」

ハギヨシ「申し訳ございません。ですが衣様、貴女ならきっと乗り越えられるはずです」

衣「何故そう言える?」

ハギヨシ「貴女はあの時…県大会準決勝で初めて己と向き合った。そう、貴女はお強くなられた」

ハギヨシ「勝利に縋り付くのを止め、誰かと共に歩む生きる道を選んだ」

ハギヨシ「…私は、貴女ならきっと乗り越えられると信じております」

衣「……」

ハギヨシ「…衣様?」

衣「そうか…衣は強いか」

ハギヨシ「御意にごさいます、衣様」



衣「…そうか…そうか…衣は、強くなれたのか……」











ハギヨシ「…御用でしょうか?」

霞「萩原さんは、本当にそのままで宜しいのですか?そんなモノを宿していては、貴方の体が…」

ハギヨシ「構いません。それで誰かを護れるのなら」

霞「貴方の話は聞き及んでいます。最近では、宮守の六曜…姉帯さんを助けたとか」

ハギヨシ「よくご存知で」

霞「ですがお忘れなく。貴方がソレを宿す限り、貴方の命は削れゆくばかり…死しては何も護れませんよ?」

ハギヨシ「…構いません」

霞「……」

ハギヨシ「私はただ喪ってばかりだった。なまじ力をつけても、結局何も護れはしなかった」

ハギヨシ「家族も友も…愛する人も、誰も…誰一人として……」

ハギヨシ「御免蒙りたいのですよ、そんな事は」

霞「…貴方がそう仰るのなら、私はもう止めません」

ハギヨシ「…宜しいのですか?」

霞「聞き分けのない子供に、何を言っても無駄ですので」

ハギヨシ「ふふ…私が子供ですか」

霞「ええ、子供です。貴方を案じる人の事など、気にも留めない子供です」

ハギヨシ「―――そうですね」


 少女を蝕むモノは、未だその身に宿されたままだ。

 しかし彼女は、それに向き合う事を…自らの業に抗う事を決意した。



 …青年は、どうなのだろう?

 誰かを護りたいが為、戦い続ける男は。

 いつ死ぬとも知れない中で、終わりの時まで望みに殉じるのか。

 彼を想う乙女の愛に、気付きもしないで。気付こうともしないで。

 ――ハギヨシ、彼もまた祓われるべき者であった。

 過去に縋り、今を…未来を捨てて生きようとするその妄執を。

昨日の続きはこれで終わりです。
なんかもう煮詰まってしまってて、いい考えがまるで浮かびません…でも頑張ります。



それでは、また


京太郎「怜のおっちゃん、ちっす」

怜「ちっすとちゃうわ。うら若き乙女におっちゃんとかやめーや」

京太郎「いやいやー、同性だからって竜華さんにセクハラかますおっちゃんが悪いんすよ」

怜「せやかてそれは合意の上で…」

京太郎「例えそうでも周りは心配してるんですよ。あの人がアンタの毒牙にかかっとるからって」

怜「人聞きの悪い話やで」

京太郎「事実でしょ。竜華さん、おっちゃんの事なら何でも言う事聞くでしょ?」

怜「そらそうよ…あっ」

京太郎「ほーらやっぱりゲスだった!ゲスだったわこの人!」

怜「ま、まだ手は出しとらへんから…」

京太郎「…まだって事は、いずれはやろうとしてた訳でしょ?」

怜「…せやな」


京太郎「おっちゃーん。竜華さんとは仲直り出来たかー?」

怜「それどころとちゃうわ!京太郎、アンタがあの会話を録音したんは知っとるんやで!」

京太郎「…ほーん」

怜「こ、コイツ…自分が何したんか分かっとるんか?」

京太郎「さあ?俺は部員みんなにあの会話の録音データを流したりしてませんしねー」

怜「…大方フナQにでもくれたったんやろ」

京太郎「正解!」

怜「ぐぬぬ…どこまでも人を虚仮にしくさってぇ」

京太郎「虚仮になんかしてませんって。俺はただ、竜華さんを守っただけなんですから」

京太郎「たとえ俺が動かずとも、あの人のファンクラブ会員とかが動いたと思いますよ?だって竜華さん、男女問わず人気がありますしね」

怜「ぐぬぬ…このどクサレが……」


竜華「どうや怜?久し振りの膝枕は気持ちええやろ?」

怜「ホンマやわぁ…こりゃもう極楽やで」


京太郎「…お楽しみ中すみませんね」


怜「わっ!」

竜華「な、なんやねん須賀君」

京太郎「ファンクラブのみんながこっちに来るんで、早いとこ立ち去った方がいいですよ?」

竜華「またかいな…ホンマしつこいやっちゃで」

怜「なあ京太郎。アンタは向こうの味方とちゃうんか?アンタが奴らに居場所を教えとるんとちゃうんか?」

京太郎「…さあ」

怜「すっとぼけよって…何にしても、この借りはいずれ返させてもらおやないか」

京太郎「まあ、お好きにどうぞ」


怜「……」

京太郎「……」

怜「黙っとらんで、なんか言うたらどないや?」

京太郎「俺から言う事なんて、何にもありゃしませんよ」

怜「京太郎…アンタってばウチと竜華の邪魔をするかと思いきや、逆に協力する事かてあるやん」

怜「ウチが竜華を独占しとるから、アンタも嫉妬しとると思うとったが…違うんか?」

京太郎「違いますよ。俺は確かに、竜華さんを独占していたおっちゃんに嫉妬してましたよ」

京太郎「あの綺麗な太股も…おっぱいも…全てがセクハラ親父な女に独占されてるって思ったら」

怜「…本人おるのに、随分と言いたい放題やないか」

京太郎「そりゃまあ恋敵ですから」

怜「恋敵かぁ…正直アンタじゃ相手にならへんと思うけども」

京太郎「ですよね。実際俺なんかじゃ、二人の間には割って入れなかった」


怜「それにしたってようやったと思うで。アンタはお邪魔虫の中でも特に根性あったさかいな」

京太郎「そりゃどうも」

怜「せやけどそのアンタでも、ウチと竜華の邪魔は出来んかった訳やな」

京太郎「まあ、そういう事になりますね」

怜「…アンタがその気やったら、もっと上手い事やれたと思うんやけどな」

京太郎「そりゃ買いかぶりすぎですよ。けど…」

怜「けど…なんや?」





京太郎「俺がおっちゃんの事を好きにならなきゃ、話は違っていたかもしれませんね」

怜「…へ?」

京太郎「ですから俺、怜のおっちゃんの事を好きになっちまったんすよ」

怜「…ど、どないしたんや自分」

京太郎「どうもしませんよ。これが俺の偽りない本音ですから」


怜「話がさっぱりでどないもならんでホンマ…」

京太郎「俺にだって分かりませんよ」

怜「自分自身でも分からん事を、他の誰かに振るんはどうかと思うんやけど」

京太郎「ですよね」

怜「ウチとアンタは恋敵なんやで京太郎…なのにその恋敵に惚れてまうとは」

京太郎「だからこそ、なんじゃないですかね?」

怜「は?」

京太郎「自分の想い人がどんな相手を想っているのか…そう考えてみた結果と思えば、存外不思議でもないって思うんすよ」

京太郎「あの人が素敵だと感じた相手を、自分もまた素敵だと思ってしまった…それじゃ理由になりませんかね?」

怜「…京太郎、アンタってヤツは」

京太郎「と言う訳で、今日から俺の恋敵は竜華さんです。まさかおっちゃん相手に惚れるなんて思ってませんでしたけど」





怜「…ウチに惚れるんなら、せめておっちゃん呼ばわりは訂正して欲しいもんやな」

京太郎「そっすか。じゃあ今日からは『愛しの怜ちゃん』って呼んだ方がいいですかね?」

怜「は、恥ずかしいからやめーや」///

最初は竜華をネタにした下ネタ談議を書こうとした筈なんだが、どうしてこうなった…

少ししたら続きを投下していきます

再開します
続きと言ってもおっちゃんの話はさっきの分で終わりなんで…すんません


>インハイ迷子三人組の続きです



照「……」

咲「……」

穏乃「……」

照「咲、これからどうする?」

咲「どうするって…私達みんな迷子なんだよ?」

穏乃「…山なら迷わないんですけどね」

照「なら、会場を山に見立ててみればいいんじゃない?」

穏乃「それも試してみたんですけど…やっぱり登れないのじゃ無理でした」

咲「穏乃ちゃん…そこは野生に帰って何とかしないと」

照「そうだよ高鴨さん。貴女は山伏のように生きてきたのだから、天狗みたいに空が飛べたっていいはずだ」

穏乃「そんな…無茶言わないで下さいよ!」


>>856 野生に帰って→野生に還って



照「なんだ…蔵王の化身でも空は飛べないのか」

穏乃「そんなの当たり前でしょ!?」

照「いやいや~、不可能を可能にするのがオカルト持ちの麻雀打ちでしょ」

咲「だよねだよね~」

穏乃「そんな…臨海の雀明華さんじゃないんですから」

照「…君なら出来るよ(笑)」

咲「ほら、しっかり(笑)」

穏乃「そのネタって、一体何人の人が分かるんですか!?」

照「…バーリヤー♪ヘイキダモーン♪」

咲「ウェヒヒヒヒッ♪」

穏乃「だからそれ、分かる人にしかわかりませんってば!君なら~の下りなんて、中の人ネタですらないしっ!」


京太郎「…あのポンコツ共、見つかりませんね」

菫「…ああ」

憧「し、穏乃はポンコツなんかじゃ…いや、山登り以外じゃやっぱりポンコツだわ」

京太郎「山で迷わないだけまだマシなんじゃないですかね?」

菫「そうだそうだ!」

憧「あの…ひょっとしなくても、そちらの二人は山で迷ったの?」

京太郎「当たり前だろ!」

菫「いい加減にしろ!」

憧「す、すみませんっ!ナマ言っちゃいましたっ!」

京太郎「スキーに行ったら雪山で遭難だなんて、二度とゴメンだよ」

菫「危うく二次災害になりかけたあの事件は、今でも忘れる事が出来ない」

憧「に、二次災害!?」

京太郎「救助者が遭難するとか前代未聞だろ?しかし宮永一族なら、その程度の事造作もない!」

菫「なにせポンコツ一家だからな!」

憧「…どんだけヒドいのよ」

ちゅーだん!

…昨日は飲んでてテンションおかしくなってました

STGはド素人なんで、勿論アキ&アッカなんか実機で見たことないです
陰蜂?残機が100あったって無理でしょあんなの

そんじゃま、投下していきますよー

>>858
し、穏乃はポンコツなんかじゃ…→し、シズはポンコツなんかじゃ…



玄「…あの、弘世さん」

菫「何かな?」

玄「白糸台は部員数も相当ですし、迷子なんてすぐ捜し出せるのでは…」

菫「そう思うだろ?私もかつてはそう思っていた」

玄「かつてって…今は違うんですか?」

菫「…淡、説明頼む」

淡「任されましたっ!…えっとねーテルを誰かが捜しに行くと、捜した人も迷子になっちゃうの!」

玄「ふぇ?」

憧「ミイラ取りがミイラに!?」

菫「二次災害とはそういう事だ。あの迷子は、ウイルスのように伝染する性質を持つ」

菫「須賀君…確か君の所もそうだったな?」

京太郎「はい」


菫「伝染するとは言ったが絶対ではない。感染しない者もいるからだ」

京太郎「つまり俺達のことですね」

菫「それが喜ばしいかどうかはさておき、昨年私は須賀君と共にポンコツ二人を救助した実績がある」

菫「よもやこんな形で再会するとは思ってもみなかったがな…あの時は本当に助かったよ」

京太郎「そ、それほどでも…」

チラッ

京太郎(菫さん…ああ、いいおっぱいだぁ……)

ムギュッ!

京太郎「いってぇ!」

和「須賀君…あまり不埒な真似をしたら承知しませんよ?」

京太郎「あ、ああ…すまん」

和「まったくもう…そ、そんなに見たいなら私の胸を」

京太郎「…ん?」

和「いっ、いえ!何でもないです!ないですってば!」

京太郎(難聴か…どうして俺にそんなものが)

和(私ってば、一体何を口走ろうとしたんでしょうか)


菫「…何をやってるんだ君達は」

和「すみません…」

京太郎「昂ぶる気持ちを抑え切れなかったんです。ええ、和は悪くない」

菫「なんだかよく分からんが、まあいい。話の続きといこうか」

菫「さっきポンコツ一家と言ったが、両親は別にポンコツでもなんでもない…あの二人だけだ」

菫「あの時は直接邂逅させなかったが、もしそうしていれば今のように見つけられずにいただろう」

菫「二人が揃ってしまった事で、その迷子ぶりが増幅しているようだからな」

和「やはり乗算されているのですか」

憧「二人だけではなく、シズも合わせて三人が揃っている可能性もあるわね」

京太郎「…最悪の状況だな」

玄「これだけ捜して見つからないとか、会場内にいるのかどうかも分からないよー」


菫「それなら心配ない。奴の靴につけた発信機は、確かに会場内を指し示している」

淡「文明の機器ってやつだね!」

和「龍門渕メイドの特注レーダー…それに咲さんかわいいを持つ私に、死角などありえません」

京太郎「それより実績ですよ、実績。それ以上の裏打ちなんてある訳がない」

玄「なんだかよく分からないけど、凄い自信だよ……」

憧「…ミイラ取りがミイラになってなきゃいいけどね」

京太郎「それはない!」

菫「我々は…絶対ポンコツになんか負けたりしない!」










 その頃の清澄。

久「和と須賀君はどこー?」

まこ「携帯にも繋がらんし、どうなっとるんじゃ」

優希「のどちゃんまだー?タコスまだー?」

 その頃の白糸台。

誠子「部長は?」

「まだ見つかってません!」

尭深「…うん、今日もお茶がおいしい」

誠子「言うとる場合かっ!」

 その頃の阿知賀。

晴絵「…冗談だろ?」

灼「冗談じゃない。GPSの探知でも見つかってないし」

宥「三人とも、一体どこへ行ったのかしら…」

 そして、その頃の迷子たち。

照「…山だね」

咲「うん、山だね」

穏乃「うぅーん…この山からは、どことなく不自然というか作為的なものを感じますよ」

照「そうだね。ここの風からは、自然からなる命の息吹が感じられない」

咲「…人工的なものって事?」

照「分からない…分からないけど、今は前に進むしかない」

穏乃「そうですよ咲さん。ここまで来たら、とことん行ってやりましょう!」

咲「い、いいのかなあ?」


 迷子が増え、物語は更に加速する。

 その果てにこそ未来があるのか、それとも――――









 「…ようやく辿り着けたなじいさん」

 「お前だってジジイだろうに。まあ、ようやくかってのには同意だが」

 「違いねえ」

 「…孫の事はいいのか?」

 「心配すんな。アレをどうこうした程度で弱くなるほど、やわな女には育ててないさ」

 「子煩悩ならぬ孫煩悩か…うらやましいこって」

 「アンタにだって子供や孫がいただろ?だったらそいつらに麻雀を…」

 「止めたよ」

 「あ?」

 「魔物がいるからつまらないって、止めちまったよ」

 「…そっか。じゃあ尚更終わらせねえとな」

 「おう。あのクソみたいなもんを、ここらでぶっ潰してやろうじゃないか」

ここまでです
この先何があっても「麻雀だから」と思えばきっと受け入れられます…麻雀漫画って、ジャンパイアみたいなのもありますしね

それでは、また


1/4

秋が過ぎ、大嫌いな冬を迎えた今日この頃。

こたつの上にはアイスがあった。およそ冬にそぐわない光景だ。

こんなものを持ってきたのは京太郎君だ。

屋内はどこも暑すぎて、暑がりな自分は耐えられないと彼は言った。

だからと言ってこれはない。

冷たいのは嫌いだって、しつこくなるほど言ったのに。

…いじわる。


2/4

「宥さんも一口いかがですか?」

「いらない」

「そう言わずに…雪見大福、美味しいですよ?」

「いらないったらいらないの」

 しつこい子。

 私ってば、どうしてこの子と仲良くしてるんだろう?

「勿体無いなあ。冬場だから安く買えるしお得なのに」

「この寒い中、冷たいものを食べる人の気が知れないよ」

「…寒いからだと思いますよ?」

「…訳が分からないんだけど」

「理由は人それぞれでしょうけど、あったかいものばかりでもいられないって事っすよ」

「そうかな…私はどうも腑に落ちないよ」

 猫舌だったり知覚過敏だったり、或いは私と逆だったり…そういう人もいるだろう。

 だからと言って、冷たいものが嫌いな事に変わりはない。

 なのに彼は私の前で、美味しそうにアイスをほおばっている。

 本当にいじわるな子だ。

 そんな風にしてるのを見てたら、なんだか食べたくなってしまうじゃない。


3/4

「お味の方はどうですか?」

「う、うん。これって冷たいけど、噛み応えがあってとても美味しいよ」

「でしょ?これって溶けたりしないから、アイスの割に食べやすいんです。大きさも手頃だし」

 そう言う彼の顔はとても嬉しそうだ。

 誰かに共感されるというのはいいものだ。私は特別寒がりだから、尚更そう思う。

「……」

 こうして一緒にものを食べるのはとっても楽しい。とっても幸せ。

 それでも寒いのだ。暖かいものばかりを求める私の身体は、冷たいものを受け付けない。

 寒さなのか…それとも怖さなのか。いずれにしても、私の身体は震えてしまう。


4/4

「…大丈夫ですか?」

 身体の震えは抑えたはずだが、彼はそれに気付いてしまった。

「だ、大丈夫だよ」

「大丈夫そうに見えませんよ。身体、まだ震えてるじゃないですか」

「慣れない事してこうなっただけだよ。私、ぜんぜん寒くないよ」

 そう、寒くない。

 こうして一緒に幸せな時を過ごしているから、心の中があったかくなるの。

 けれど身体は震えたままだ。ならば、私をそうした彼に責任をとってもらおう。

「そんなに私が心配なら…京太郎君、私の事をあっためて?」

「え…宥さん、いきなり何をっ!?」

 もっともっとあったかくなりたくて、京太郎君を抱きしめる。

 寒いのは嫌い。冷たいのも嫌い。きっとそれは、この先もずっと変わらない。

 それでも彼と一緒なら、たとえどんなに寒くたって大丈夫だって思えるの。

 二人でなら、絶対にあったかくなれるって。

「…宥さん」

「なあに?」

「今ってあったかいですか?」

「うん、あったかい。暑くなりそうなくらいあったかいよ」



そして私は、私達は…今日も二人で寄り添い合って、一緒にあったかくなる。

何、雪見大福だと長く口に入れてりゃあったかくなるだろうって?
小せえことは気にするな!

完走まであと少しだし、頑張るよー

今しがた雪見だいふくを買ってきて食ったんですけど、10回噛めるか噛めないかでした
最後に食ったのが大分前で、いつもカチンコチンに凍ったものを食べていたせいか勘違いしてました…
下調べを怠った結果がこれだよ!つうか俺がアホなだけなんですけど!

>>871にある実績云々というセリフを証明してしまった訳ですねー…寝落ちしてなきゃ、1時間後くらいに投下します


1/6

日が昇り始め、それでもまだ薄暗い中。

俺は早めに家を出る。

部活に備えて、牌の掃除をしに行くのが日課だから。

けして強制されたのではない。自分で勝手にやってる事だ。

特別打てる訳ではないが、俺は麻雀を打つのが楽しくて仕方なかった。

仲間達のように、自分も牌に愛されたい。そう思うのは間違いだろうか?

牌に応えてもらいたいから牌を愛する。そう、俺は見返りを求めてるんだ。

けれど未だに見返りはない。

それを悔しく思う事もある。牌に、部活仲間に憎らしさを感じる事もある。

それでも俺は、愛さずにはいられないのだ。惚れた俺の負けなのだ。

―――似ている。

俺と牌の関係は、俺とアイツの関係にとても似ている。


2/6

原村和。

インターミドル王者にして、多くから羨望を集めているアイドルのような存在だ。

そんなアイツに俺は恋してる。振り向いてもらえなくたって、傍に居たいと望み続ける。

そして…愛して欲しいと願い続ける。

だが叶わない。

アイツが気に掛けてるのは俺ではなく咲で、阿知賀女子の友達で、そして麻雀だ。

相手をしてくれないという訳じゃない。現に俺はインハイの後、和から麻雀の指導を受けている。

…羨ましいと周りは言うが、とんでもない!

麻雀の事になると、アイツは全く容赦しないのだ。何度ボロクソに言われたかは、最早数えてすらいない。

「―――須賀君は本当に弱いですね」

そんな事を躊躇いもなく、平坦な口調で口にするのだ。

もしファン達がそれを見れば、百年の恋も醒めてしまうというものだ。


3/6

しかし俺は、未だに和を想ってる。

俺はまだ、恋から醒めてはいないのだ。儚いと知ってなお夢を見る。

どう足掻いたって、俺はアイツと並び立てないと悟っている。

そのはずなのに。

「須賀君…辛いなら、麻雀部なんて辞めてしまってもいいんですよ?」

そんな風に言われちまっても、

「私達に追いつこうとしてしなくたっていい。貴方はまだ初心者ですし、それは無理というものです」

フォローにならないフォローを受けても、俺の想いは変わらない。

突っ走るって決めたんだ。

たとえどうなったって、俺は自分に嘘をつかない。

麻雀を打つのが好きな俺からも、和の事を好きな俺からも目を逸らさない。

だから俺は―――――


4/6

…どういう事だ。これはどういう事なんだ。

「……」

和がベッドに横たわってる。

無防備な様で気持ちよさげに、エトペンを抱いて眠っている。

正直…エトペンが羨ましい。

願わくば俺も、あのたわわな果実に顔をうずめていたいものだ。

顔が緩んでいくのが分かる。

きっと今の俺は、みっともないくらいふやけてるだろう。

――劣情を、抑えられない。

俺は少しずつ和に近づき…その身体に手を伸ばそうとしていた。


5/6

「…っ!」

でも俺はそれを…滾る想いを押し止めた。

嫌だったのか怖かったのか…それとも、裏切りたくなかったのか。

麻雀部は女社会で、男は一人。

ありえない話ではないが、正直歪だ。勘繰られたっておかしくない。

それが外部の人間でも…或いは内部の人間でもだ。

現に俺が入部した当初、和は俺の事をかなり警戒していた。

和目当てでもあるのを否定は出来なかったし、苦労したものだ。

それでも受け容れてくれた。

部員のみんなも…勿論和も、俺が居る事を良しとしてくれた。

なのに俺はそれを壊そうとした。そう思うと、途端に怒りがこみ上げてきた。

「…ちくしょう」

小さく、けれど確かにそう呟いて、俺は逃げるように部室を去ってしまった。


6/6








「…行ってしまいましたか」

そう、和は起きていた。狸寝入りをしていたのだ。

京太郎を試す為…ではなく、彼女は彼を強く意識しだしていた。

思いの外一所懸命に練習をこなし、麻雀を打つ京太郎。

そんな彼の姿は、いつぞや起きた幽霊騒ぎの様ではなかった。

弱音を吐きつつ、しかし諦めもせず、彼はひたすら自分と打った。

…これはそんな京太郎への褒美だったのだろうか。

若しくは彼の想いに気付いて、自分もそれに向き合いたいと思ったのか。

その答えは、やはり和にしか分からない。



「―――この気持ちに、答えが出る日は来るのでしょうか?」

何だかんだで京太郎と和で話を書いてる事が多いっすねー
並べたらきっと絵になるのは確かですしおすし

それでは、また

のどっちは大体バイセクシャルとして書いてます
「好きになるのに性別は関係ない!」ってな感じにした方が色々楽なので

寝落ちしてなければ、1~2時間後に(ry
次スレが遠いぜ…


1/9

 宮永照。

 彼女は彼の太陽だった。

 麻雀から、仲間から逃げて行き着いた先に彼は…須賀京太郎は照と出会った。

 決して交わるはずのない二人の道は、この時確かに重なった。

「俺は、麻雀なんかキライだ」

「…そんなことない。麻雀って楽しいんだよ?だから一緒に楽しもうよ!」

 人に世話を焼かれてばかりの彼女は、どうしてそう口にしたのか。

 同輩…弘世菫への憧れなのかもしれないし、意趣返しかもしれない。

 彼女は知らなかった。

 彼は咲と知己だったことも、彼が麻雀を好きだったことも。

 ひょっとしたら、彼女の力はそれを垣間見てたかもしれないけれど。

 彼はひねくれていて、彼女は真っ直ぐだった。

 だからこの交わりは一瞬かもしれないし、ずっとかもしれない。



 …そして、それでも二人は一緒になった。


2/9

京太郎「……」

照「おはよう須賀君。今日もちゃんと来てくれたんだね」

京太郎「…脅したくせに」

照「脅してなんかないよ?念を入れてお願いしただけじゃない」

京太郎「痴漢冤罪をでっち上げて、ですか?」

照「聞き分けないのが悪い」

京太郎「それで周りから睨まれる様になって、こっちは迷惑してるんです!」

照「…そうなの?」

京太郎「そうです!」

照「ならなんで君は私と係わるの?だって迷惑なんでしょ?」

京太郎「それは貴女に脅されてるからで…」

照「私のことをよく知る人なら、この脅しはでっち上げなんだってすぐに分かるよ」

京太郎「弘世元部長…それに、虎姫のみなさんですか?」

照「うん。それに私、人を陥れるのは趣味じゃない」


3/9

京太郎「…こっちとしてはどうも納得いかないですね」

照「構わない。私に非があるのは確かだから」

京太郎「じゃあ俺、ここから居なくなってもいいんですね?」

照「…須賀君がそうしたいなら」

京太郎「いやにあっさりしてますね」

照「お節介ではあったけど、貴方が望んでなければ私はああしなかった」

京太郎「俺が望んだ?何を?」

照「麻雀」

京太郎「そんなはずない。俺は麻雀なんかキライで」

照「それならどうして覗いてたの?」

京太郎「…!」

照「私、知ってるよ。貴方が麻雀好きだってこと」

京太郎「嘘だっ!」

照「嘘じゃない。須賀君、貴方は麻雀がしたくてここに来てるの」

京太郎「やめろ!やめてくれ!今は何も言わないでくれ!」

照「太陽に手が届かなくて、貴方は」

京太郎「だから…だからやめろって言ってるだろ!」

バシッ!

照「あっ…!」

京太郎「…あ、ああ…あああああああっ!」

タッタッタッ...

照「……」

ガチャッ

菫「叫び声が聞こえたのだが、何かあったか?」

照「…何でもない」

菫「何もなかったとは言えないだろう。照…お前、痛みで胸を押さえているじゃないか」

照「どうしてそう言えるの?」

菫「そんなに苦しそうな表情をしているんだ。実際、胸が痛いんだろ?」


4/9

照「…確かに痛いよ」

菫「そうか。なら今すぐ保健室に」

照「違う、そうじゃない。私は確かに胸を小突かれたけど、それは別に痛くも何ともなかった」

照「だけど彼が泣きそうになってるのを見て、胸がぎゅっと締め付けられたの」

菫「なるほどな。ところで照、痛いのは嫌か?」

照「そうだね…もう痛いのは嫌だよ」

菫「…なら、アイツにかかわるのはもうやめてしまえ」

照「…どうして?」

菫「言うまでもないだろ照。お前は部員みんなの憧れ…そう、太陽のような存在なんだ」

菫「正直な話、須賀の奴は日陰者だ。そんなのがお前の関心を独占していて、苛立たないはずがない」

菫「この際だからはっきり言おう。須賀京太郎は、麻雀部の邪魔なんだよ」

照「……」

菫「お前や私が白糸台に居られるのもあと僅かだ。だからこそ私達は、より真剣に麻雀部のことを考え…」

照「…ねえ?」

菫「何だ」

照「須賀君は…彼はホントに邪魔な人なの?」


5/9

菫「そんなの邪魔に決まってるさ…須賀は弱いし、誰の練習相手になれない」

照「でもあの子、この頃一度も飛ばされてないよ?」

菫「単なるまぐれだ。たかが焼き鳥にならなくなったくらいで…」

照「そう、彼はもう焼き鳥にならなくなった」

菫「……」

照「そう言えば話してなかった。須賀君はね、必ず一度不要牌を引くの」

菫「!?」

照「牌譜でも照魔鏡でも確認したから間違いない。要するに、彼は牌に愛されてないの」

菫「…嘘だろ。もしそうなら須賀は、たとえ危険牌でも場合によっては切らなきゃならないだろうに」

照「まあ、そうなるね」

菫「和了りたくても和了れなくて、その上勝利に手が届かなくて…なのにアイツはどうして麻雀を打とうとするんだ?」



照「…そんなの決まってる」

菫「何?」

照「須賀君が…麻雀を愛してるからに決まってるじゃない」


6/9

 見破られていた。

 少年が、誰かと自分に嘘をついていたのは知られていたのだ。

 少年は深く傷付いた。

 後悔の念に苛まれ、声を押し殺しながら泣いていた。

 つらかったろう。

 押し隠していたもの…闇を照らし出されるのはつらかったろう。

 名は体を表すと言うが、まさにその通り。

 京太郎には照が眩し過ぎたのだ。近づけば、心を砕かれてしまう程に。

 鳥に空に…太陽に憧れ、イカロスの翼を広げ彼は羽ばたいた。

 太陽…即ち麻雀と照は、彼の翼と身を焦がす光の源泉。

 こうなることは分かっていた。

 それでも諦め切れなかった。憧れることをやめられはしなかった。

 全てを諦観し、老け込んだ心で生きようとはしなかったのだ。

 …だからと言って、辛いものはやはり辛い。

 今更素直になってしまえば、彼はきっと逃げ出した過去を後悔するだろう。

 逃げ出してしまった意味を失くしてしまう。

 それはつまり、自己の正当性を失うことにもなりうるのだから。


7/9

照「…こんな所に居たんだ」

京太郎「……」

照「部室に戻ろう。戻ればまた打てるから」

京太郎「…ってくれよ」

照「?」

京太郎「ほっといてくれよ!俺みたいなの、部活に居たってしょうがないだろ!」

京太郎「なんなんだ…アンタは一体何なんだ!?」

照「…お姉さんだよ」

京太郎「じゃあお姉さん。俺はね、ただ憧れていればよかったんだ…見ているだけでよかったんだ」

京太郎「手を伸ばしたって届かないって知ってたから。どんなに望んでも、自分には手の届かないものだって」

京太郎「もう諦めたんですよ俺は。夢はどうしたって夢でしかなくて、ただ見るだけのものだと」

照「――須賀君はそれでいいの?」

京太郎「だからそれでいいって…」

照「手、震えてるよ?」

京太郎「っ!」

照「目を見れば分かる。須賀君貴方は、麻雀を諦めるつもりなんかない」

照「ただ、人より上手く打ちにくいから拗ねてるだけ。駄々をこねてる子供なの」

京太郎「…それが何だと言うんですか?」

照「ないものはない。それはどうしようもないことなんだよ?」

照「貴方が小突いた私の胸は、菫や尭深と違って大きくもないし柔らかくもない」

京太郎「――そ、そそそそんなことは」

照「辛かったよ。みんなに鉄板呼ばわりされて、私辛かった…けどそれでも生きていくしかなかった」

照「嘆かないでとは言わないし、言えない。強くなりたくてもなれなかった人を蹴落として、私は王者になったんだから」

照「足りないからこそ求め…生きようとする。それが生き物の性で、受け容れるべき理なの」

京太郎「……」

照「足りないものは奪って補うことも出来るけど、分け与えて貰うことだって、分け合うことだって出来る」

照「みんなで寄り添って生きるって、つまりはそういうことでしょ?」

京太郎「けど俺には、誰かに何かを与えるだなんて…」

照「出来るよ須賀君なら。あれだけ真摯に麻雀を打てる貴方が、何も持ってないなんて有り得ないよ」

京太郎「本当にそうでしょうか?」

照「少なくとも、貴方だけでは決められない」


8/9

京太郎「…俺も太陽のように光り輝けるのかな、照さんのように」

照「私はそう思うけど…須賀君はそうじゃないみたいだね」

京太郎「照らされる側の存在だと思ってますから」

照「そう…なら照らしてあげるよ、貴方のことを。貴方の未来を」

京太郎「いいんですか?」

照「私、お姉さんだからね」

京太郎「俺も誰かを照らせる存在になれたら、どんなによかったでしょうか」

照「…月だって、地上を照らしているんだよ?」

京太郎「でも太陽ほどじゃない。だから闇がより深くなる」



照「ならば、太陽のようになればいい」

京太郎「――月が太陽のように?」

照「月が太陽のようになる…そんな風に考える人が居てもいいと、私は思うな」


9/9

 陽だまりの下で、少年少女は夢を語らう。

 その表情はとても明るい。

 日の光は新たな光を生み出し、その光がまた何かを照らす。

 それはとても素敵なこと。楽しいこと。

 彼を覆う闇は晴れ、その眼前に景色が広がる。

 その前に道は無い。

 その後にこそ道は出来る。

 いつかそれを辿って、誰かが彼の後を追うかもしれない。

 彼が別れた仲間達に…そして彼女に憧れたように、彼に憧れるものも現れるかもしれない。

 未来はきっと、そうして出来ていくのだろう。





 ―――願わくば、二人の未来に幸おおからんことを。

ストブラの改変画像に滾った結果、こんなもんが出来上がりました

それでは、また

周りが凄すぎて禿げそうになる…あると思います

お題募集→914

いきなりぽんこつじゃなくなったテルー

>>914のお題です




照「ねえ、京ちゃんおんぶして」

京太郎「またですか。俺、雑用でへとへとなんですけど」

照「おんぶして」

京太郎「嫌です」

照「…おんぶしてよぉ」

京太郎「だから嫌ですってば」

照「ああ、私ってばこのままのたれ死ぬんだ…」

京太郎「そっすか。じゃあそのまま寝ててください」

照「ひ、ひどい!」

京太郎「ひどいのは照さんでしょ…淡と一緒に菫さんを困らせてばかりで」

照「部長だからね、部員の世話をするのは仕方ない」

京太郎「…菫さんのPAD疑惑を広めたのってアンタでしょ」

照「な、なんのことだかさっぱり…」

京太郎「淡の奴が白状しました」

ドサッ

淡「私は悪くない!テルーがお菓子くれなきゃイタズラするぞって」

誠子「ハロウィンかっ!」

菫「照…残念だよ。まさかお前が私を貶めようとしただなんて」


照「…菫がいなければ私は鉄板扱いされなかった。だからこれは正当な復讐」

京太郎「何言ってんすか。さあ、今からはお仕置きの時間ですよ」

照「あ、雀明華が空を飛んでる!」

京太郎「マジでっ!?」

シュタッ

京太郎「あ」

照「巨乳の名に反応するとは悲しい性だね…それじゃ!」

タッタッタッタッ...

京太郎「…すんません」

菫「アホかおのれは。お前までポンコツになったら、私と誠子の負担が増えるだろうが」

淡「やーい、キョータローのアホー」

菫「お前が言うな」

バシッ

淡「い、いったーい!」

京太郎「あれ、そう言えば尭深さんは?」

誠子「あの子はハトに餌をあげるように、ポンコツ達にも茶菓子をあげちゃうから…」

京太郎「なるほど」


照「くそう…私は王様なんだぞ、偉いんだぞ」

照「誰も私に麻雀で勝てないんだ。絶対的勝者である私の命に、誰も逆らっちゃいけないのに…」

照「それにしてもここってどこなんだろ…都内なのに、やけに川の水が綺麗だし」

ツルッ

照「きゃっ!」

ポチャッ

照(な、なんで身動きが…それに息も)

ブクブクブク...

......

...
















照「…う」

京太郎「…照さん!うう…すみません、俺がずっと寝てろとか言ったばっかりに」

照「え?」

京太郎「わがままならなんでも聞きます。ですからもう、居なくなったりしないでください…」

照「…あの」

京太郎「なんでしょう…あれ、照さん声が変わって」

照「私、わがままなんて言いませんよ?だって私、誰かの役に立つのが好きですから」

京太郎「!?!?!?!?」

照「事情は分かりかねますが、どうやら以前の私はそちらにご迷惑をお掛けしたようですね」

照「…お詫びになるかどうか分かりませんが、私にも貴方のお手伝いをさせてください」

京太郎(おいおい、胸はないのにどうしてこうも母性が溢れてくるんだ)

照「とりあえずはお菓子作りからはじめましょうか。私、それが一番得意なんです!」

京太郎(あ、お菓子好きなのは変わらないのか)


京太郎「……」

菫「……」アゼン

誠子「……」ポカーン

尭深「…はあ、お茶が美味しい」

淡「わお!照の作ったお菓子ってば、すっごく美味しそう♪」

照「ふふ、それほどでも」



菫「…あれは誰だ?」

京太郎「照さんです」

菫「嘘をつくな。声も中身も変わってるぞ」

京太郎「それならそれでいいじゃないすか…ねぇ?」

誠子「今の宮永先輩がいいってみんな言ってます。弘世先輩だって、胃薬飲まなくなったじゃないですか」

菫「……」

京太郎「麻雀の強さだって変わってないんですし…菫さん、それでも元に戻しますか?」

菫「わ、私は…」


『菫、お菓子ちょーだい』

『本読んでるから、後輩の指導は菫と他のチームでやって?』

『…あんな営業スマイルで人気になれるんだね。男も女もみんなチョロいよ』


菫「…やめとこう」


「う…ここは?」

「か、華菜ちゃん!?」

「ああ、キャプテンがやっと起きたし!みはるん、今すぐみんなをここに呼んで…」

「うるさい」

「ニャ!?」

「ふぇ?」

「騒ぐ暇があったらお菓子を持って来てよ。私、お腹空いてるの」

「……」

「……」

「?」

「「きゃ、キャプテンが畜生に!?」」

ネタ元は多分、金の斧とドラマCD(中の人ネタ)っす
あの声の照が「私に妹は居ない」って言うのが想像できない

それでは、また

いや、俺がダメなだけです

ホームズは詳しくありませんが、そんな展開があるんですね…

金の斧…つまりはドラえもんに出てきたきこりの泉(きれいなジャイアン)でして、入れ替わりの発想はそこから来てます
(元のジャイアンが、女神に引きずり込まれたことから)
ドラマCDですが、第0局~合宿まではボイスドラマ化されてまして、そこでは照の声がほっしゃんだったんですよ
胸までは入れ替わりませんでしたが

京太郎と松実姉妹が絡んで修羅場は何故なのか
誠に遺憾である

寝落ちしてなきゃ数時間後に投下します


「所詮あの子は可愛さだけだ」

そんな風に言われたのはいつだろうか。

アイドルのようにもてはやされたが、そうなろうとは望んでなかった。

けれど周りに流されそうした。

みんなに求められる在り方で生きようとしてた。

自分の容姿を特別良いと思っていた訳ではなかった。

けれど周りは良いと思った。

男の子には好かれ、女の子には嫌われ…結果友達と呼べる人とは出会えなかった。

寂しかった。

その寂しさを紛らわせるため、私はアイドルのように振舞った。

幸か不幸か、今じゃ私はちょっとした有名人だ。

…でも嬉しくはない。


「ちゃちゃのん」になんかなりたくなかった。

普通の女の子として、学生生活を謳歌したかった。

なのに許されなかった。

少しばかり容姿をよく思われたくらいで、私の在り方を決める世界なんか大嫌いだ。

友達が欲しかった。

学生らしく、自由気ままでいたかった。

そこで目をつけたのが麻雀だった。

麻雀を打つ人達には、宮永照のような人気者が沢山いた。

それに私は親類縁者が麻雀好きで、麻雀とはかなり慣れ親しんでいた。

自分に対する注目は薄れ、自分は身近な競技を楽しんでいける。

そう思って私は安心していた。


しかし私は注目を浴びた。

何故かは知らない。知りたくもない。

そっとして欲しかったのに。アイドルとして愛されるなんて、嫌なのに。

私はありのままに振舞っただけ。

それを持て囃すのは大袈裟すぎるし迷惑だ。

支離滅裂な話だと我ながら思う。

結局自分はアイドルのように振舞ってしまったし、周りもそう望んでいる。

私に憧れる女の子もそれなりにいたようで、体のいい客寄せパンダとして私は麻雀部にいた。

アイドルのような在り方を辞めてしまえば、切り捨てられてしまうかもしれない。

…そんな事で、麻雀から離されるのはゴメンだった。



飽きられるまで待てばいいと思う私。

飽きられて、どうとも思われなくなるのが怖い私。

矛盾している。

相反する二つの思いが、私を蝕む。


牌だけは何も言わない。

人のように、鬱陶しい雑音など発しはしない。

打牌音は聞いてて心地よかった。

麻雀を打ってる時だけ、私はアイドルとしての自分を忘れる事が出来た。

自分は牌を見てればそれで良くて。

麻雀は…人の事などまともに見なくても、牌さえ見てれば勝てる競技で。

要するに、都合が良かったのだ。

煩わしい現実から逃れるのに、麻雀は間違いなく最適な手段だった。





…愛宕洋榎と打つまでは。


5万点のビハインド。

趨勢は既に決まったも同然だった。

全国でも指折りの強豪を早々に下したとなれば、自分達は間違いなく注目される。

面倒な事になるかもしれない。

それでも勝つ。

勝たなきゃならない。

この楽しい時間を、少しでも長引かせていたいから。


「――ロン」


姫松の役は全帯か対々。

親を安く流せたのだから、それでいい。

そんな風に私は思った。いや、望んでいたと言った方が正しいのか。

だが……


「32000―――思うてたより痛いんとちゃうか?」


結果から言えば、この時全てが終わったのだ。

私のせいで、鹿老渡高校は敗退した―――。


ああ、そうだ…可愛さだけだと揶揄されたのはその時からだ。

一生懸命頑張って全国へ行って…それでも、私達の間に信頼関係など無かった。

こんなものだ。

独りぼっちのアイドルなんて、こんなもの。

まともに相手を見ようとしないで…その結果があの清老頭だ。

いや、私は牌も見てなかった。

私自身もまた、牌を自分の望んだままに見ようとしていた。

周りが私にそうしたように。

それがとても悲しくて、悲しくて…でももう時は巻き戻らない。

…何だったのかな?

私は結局何の為に麻雀を打ってきたのかな?





「そんなん考慮しとらんよ…」

今回はここまで

総合に誤爆とか、本当にどうしようもない…申し訳ありません

えーと…昨日付けで前科4犯になってしまいました。ホントどうしたらいいんでしょう。
まあメゲた所で反省にはならないので、毎日投下を目標にこれからもがんばって生きます。


                    ____

                  ´       `丶
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             i/   / |  |  |\    |  | |
            /   L_|  |八イ⌒\ !  |  | |
            |     | 八  |  \___, |¦ |  | |
          ___彡'| i | 狄う心、| 〃てj仆|¦ |  |ノ\____ __
      '´     | i | 小.Vリ \ Vツ リ ,   ノ        `ヽ
    〃  /   ノ | i八 込""` 、 , ""//         丶  \
    {   '         \V≧ァ─zァ彡   /    \   \
      {/  / / __,ノ  <⌒∨ ___彡く__)     ヽ    〉j/
      /  /   i/    _,,厶-‐|/━━┛\__ i    i  ∨
     ;            〃    ヽ /    j⌒ヾ    ||
     i   {  / {  // {{___ __      __}}   ノ ¦|
         \{ 乂__, {  ,___彡┗;廴_/\_,广ア¨’ /   ノ
      \       ∨ 〈/ ̄/:::::/  ̄ ̄   ̄ ̄
                      ¨¨¨
…あ、あわあわイェイ~

あ、前科というのは誤爆の話です
読者としての誤爆を含めれば、もうちょっとあるかもしれない


淡「キョータロー!私、今日で16歳になったよ!」

京太郎「そーなのかー」

淡「…無頓着な反応やめてよ。普通に凹んじゃうんだけど」

京太郎「すまんな」

淡「ひょっとして、プレゼントとか用意してない?」

京太郎「…すまんな」

淡「いやいやいやいや。いくらなんでもそりゃあんまりだよ」

京太郎「長野のサマープリンセスで作ったいちごパフェでよければ」スッ

淡「冬なのに夏なのかー。でもピカピカ光ってていいよねこのいちご」パアッ

京太郎「そりゃまあいちごは春が収穫期だし」

淡「そうなの?」

京太郎「洋菓子店やガ○トとかじゃ冬にいちごのデザート作ってるけど、ホントは春が旬だし」

淡「夏でも冬でもないって…」

京太郎「大体はハウス栽培の技術向上と、クリスマスケーキのせいだな」

淡「『せい』っていうよりは『おかげ』っていうべきな気もするけどね」


淡「…ところで、冬と春のいちごならどっちがおいしいの?」

京太郎「冬の方が甘味が強く、春の方がやや酸味が強いという話もあるらしい」

京太郎「だが結局は各々の味覚によるからなぁ…好み次第じゃね?」

淡「それってなんか、テルがよくやってるお菓子の戦争みたいになりそうだね」

京太郎「下手すりゃそうなるかもな。ちなみに『菓子戦争』って名前の戦争は実際ある」

淡「マジで?どっちのお菓子が美味しいとかで戦争あったの!?」

京太郎「ややこしいけどそうじゃない。メキシコで起きた市街戦で、多くの市民が財産を破壊されてしまった」

京太郎「市民は財産を失っても、抵当も何も持ってなかったそうだ…そして、あるフランスの菓子職人がメキシコ軍の非を主張した」

京太郎「それが切欠になって、フランス政府が動いた結果勃発したってさ」

淡「…キョータローって見た目の割に勉強できるんだね」

京太郎「俺自身はそうでもないけど、ウチの元部長が薀蓄好きでなー」

京太郎「麻雀も勉強も教えてもらってたんだが、その時に雑学も学んだんだよ…今のは世界史だけど」

淡「…おばさんの相手は大変だねー」

京太郎「まったくだ」


京太郎「歴史と言えば、今日は榎本武揚が五稜郭を本営とした日だな」

淡「ごりょーかく!?」

京太郎「なんだよいきなり。びっくりしたじゃねーか」

淡「星型の城郭がキュートで可愛いから、これはすんなり覚えられたの!」

京太郎「確かに可愛いかもな。予算不足だったり型遅れだったりで見掛けだけになっちまったそうだが」

淡「フランスの真似事だからね…仕方ないね」ムシャムシャ

京太郎「だよな」

淡「でもフランスって世界史じゃいいイメージがないよ。何で常任理事国やってられるんだろ」

京太郎「…勝ち馬に乗ったからじゃね?」

淡「ああ、アメリカやイギリスのおヒキに…イギリスもおヒキと言えばおヒキだけど」モグモグ

京太郎「あそこはチャーチルのおっちゃんがいたからなー」

淡「なるほど納得。ム○○モにあった“舌の数”や“敵の敵”のくだりは名言だね」

京太郎「あと葉巻カッコいい」

淡「だよねだよねー!」


京太郎「で、パフェの味はどうだ?」

淡「うん、おいしー!」ペカー!

京太郎「そっかそっかー。作った甲斐があったぜ」

淡「でもさキョータロー、こんなのどうして出来るの?」

京太郎「ハギヨシさんって執事の人が、色々教えてくれるから」

淡「ひょっとして、あの燕尾服を着た男の人?」

京太郎「そーそー」

淡「…たかみってば、二人を見て何か書いてたけど」パクパク

京太郎「悪寒を感じた理由はそれか」

淡「ねえキョータロー?」シャリシャリ

京太郎「なんそい」

淡「キョータローはその…男の人を好きになったりしないよね?」ハナジダラー

京太郎「何考えてんだお前」

淡「な、なんでもないよ?たかみの書いたハギ京本なんか知らないよ!?」

京太郎「知ってんじゃねーか!しかも俺が受けかよ!」


淡「そう言えばさーなんでいちごパフェがプレゼントなの?」

京太郎「毎月15日はお菓子の日だし、いちごの日でもあるし、今もいちごが旬といえば旬だし」

淡「ケーキじゃダメだった?」カリカリ

京太郎「どうせクリスマスに作るだろうし、ぶっちゃけめんどかった」

淡「えーひっどーい!でもこのパフェ、かない大きいしどうでもいいっちゃいいけど」パリパリ

京太郎「安めのケーキよりもかなり量があるからな。手間も材料費も掛かったし」

淡「そうなんだ。ありがとーキョータロー」ゴッ

京太郎(それにしてもよー食べる。咲のお姉さんともタメ張ってたくらいだしな)

淡「あーおいし♪」シュバババッ

京太郎(いちごって『幸福な家庭』って花言葉があるんだが…淡と家族になりたいってのは、流石に遠まわしすぎか)

京太郎(ああ、コイツがホントの妹なら良かったのになー)





淡「完っ、食っ!ごちそうさまでしたっ!」

京太郎(…まあ、ホントの妹かどうかなんてどうでもいいや)ホッコリ

オチ?話の軸?いつも通り行方不明だよ?
あわあわかわいいでいいじゃん(いいじゃん)

それでは、また

アレクサンドラ・ドルヒシャウエン…なんやそれ

臨海女子の監督名がついに判明した模様

京太郎「俺自身はそうでもないけど、ウチの元部長が薀蓄好きでなー」

京太郎「麻雀も勉強も教えてもらってたんだが、その時に雑学も学んだんだよ…今のは世界史だけど」

淡「…おばさんの相手は大変だねー」

京太郎「まったくだ」

すがきょうたろう と おおほしあわい ですね おぼえました

ネタが出ないならとりあえず~の日を調べてみる。あると思います。
エスペラント語のありがとうってセクハラに利用されそう。後キャップは落ち着いてください。
完璧キャラが変態にされるのは、最早伝統か…瀟洒なメイドさんとか。

ちなみに8日の時点では、シャウエッセ…ドルヒー監督の情報は明らかになってませんでした。

キャラ一覧表に南浦プロとアリー監督のデータが追加されましたし、今後の更新にも注目していきたいですね

少ししたら投下始めます…多分


久「……」

京太郎「部長、ベッドで寝てても寒さは逃げませんよ?」

久「そんなの分かってるわよ。けど…」

京太郎「動きたくないんですね、わかります。この時期のベッドには魔力がありますしねー」

久「そーそー、コタツと同じでね」バサッ

京太郎「…ウチの部室にはコタツがないからって、部長が独占するのはどうかと思うんですよ」ゴソゴソ

久「仕方ないでしょ。寒いんだし」

京太郎「OGとして指導に来たって話はなんだったんですか」ガサガサ

久「…ぶっちゃけうちに帰りたくないだけ」

京太郎「あー…確か福路さんが来た時にも家が嫌とか言ってましたね。お金がなかったとかって話は、合宿の時にも聞いてましたが」モゾモゾ

久「…私と美穂子の出会いを語る上で、触れずにはいられない出来事だったのよ」ブルッ

京太郎「咲や和の家庭もごたついてますし…そう考えると、俺って恵まれてるんだなって思います」モミモミ

久「夏の終わりまでずっと雑用だったのに?」ビクッ

京太郎「ええ。つっても雑用は嫌でしたし、麻雀で負け続けるのも麻雀自体も嫌になる時ありました」

京太郎「それでもここにいるのはきっと…部長がいたからじゃないですかね」クリクリ

久「嬉しいことを言ってくれるじゃない…けど何も出ないわよ?」ビクビクッ

京太郎「いいっすよ別に。麻雀おもれーって知れただけで十分過ぎます」

久「それならよかった。私のせいで麻雀嫌いになられちゃたまらないもの」

京太郎「まさか!」

久「個人戦で負けた後の様子を見た時『もう麻雀やめる!』って言い出さないか気が気でなかったわよ」

久「風越女子の池田さんに負かされた人も、そんな感じのことを言ってたそうだしね」

京太郎「…みんなと一緒でなきゃ、俺もあの時そうなってたかもしれません」ビリビリ

久「そうならなかったのは、どうして?」クチュッ

京太郎「また合宿の話になりますけど…部長が昔話をしてくれたお陰ですよ」

久「あら、貴方もまこも『またか』って顔をしてなかった?」

京太郎「それって部長が語りだした時の事だと思うんですけど、何で知ってんですか?」

久「鎌をかけただけかもしれないし、ホントに見えていたかもしれないわね」クパァ

京太郎「…部長なら、どっちもありえそうですねー」ズリュッ


久「ふふっ…で、私の昔話がなんですって?」ビチャッ

京太郎「『もしあの時私がめげていたら今この時はなかった』とか何とか」

久「ああ、そんな事もあったか」

京太郎「あの頃は雑用ばかりしてたから、状況が悪いとか才能がないとか思ってました」

京太郎「でも立ち止まらず一歩一歩進んでいけば、何か必ず違う景色が見えてくるだろうとも思ってました」ズボッズボッ

久「…あの時の話、よく覚えてたわね」ビビクン

京太郎「普通にいい話でしたしね。それにあれって経験に裏打ちされてましたし」

久「『みんな』の中に、貴方が入れなくてもそう思うの?」グチュグチュ

京太郎「男ですしね。チームで麻雀打てないのは仕方ないっす…けどやれることは全部やりました」

京太郎「咲が来るまでのゆるい部活も、それからの厳しい部活も俺は好きです。だって麻雀楽しいですもん」

久「勝てなくても?」

京太郎「それこそ俺だけじゃないでしょう。特に優希はいいとこなしが多くて大変だったはずだ」

久「確かにそうね。さっきの話も、優希がめげたからこそ始めたものだし」

京太郎「アイツにしろ他校の人にしろ、誰かが涙ぐんでる所は沢山見てきました」

京太郎「中には染谷先輩のように昔から打ってたのも居たでしょう…それでも上手くいかないのが麻雀です」

京太郎「まして、俺のような初心者なら尚更…周りが凄いからって変な勘違いしちゃ火傷しちゃいますよ」ギシギシ

久「私が言うのもなんだけど、あれだけ扱き使われてそう言えるのって凄いと思うわ…っ」グチュッグチュッ

京太郎「俺なんかにそう言わせるみんなと麻雀が凄いんですよ。ただのド素人に、ここまで色々考えさせてくれるし」ニュプッ

久「…でも、男子と女子じゃ不平等よ?それでも麻雀って楽しい?」ハテッ...

京太郎「――信じてるんです」

久「何を?」

京太郎「部長はめげずに部活を護って、その結果全国に行けた」

京太郎「優希、染谷先輩、和、そして咲も…色んな壁にぶつかって、それでも乗り越えてきた」

京太郎「それは五人に力があったからでもあるけど、それだけじゃきっと勝てなかった」

京太郎「部長が立ち止まらずに進むことを訴えて、それにみんなが応えたから今の麻雀部がある」

京太郎「…俺はそう思います」

久「…私が居なくなったら、須賀君を取巻く環境は必ず変わるわ。厳しい方に」

久「麻雀は…確かに人気のある競技よ。けど、やめてしまう人だって多いのよ?」

久「運の要素が強いから、上手くなっても勝てるとは限らないし…実際それで私は逃げられちゃったしね」

久「それに男子は人口多いし大変よ?なのにレベルは下がってきてるし、新規も減りつつあるわ」

京太郎「……」





久「どう?それでも麻雀を続けたい?」

京太郎「分かりません!」

久「…そこで勢いよく『はい!』って返事しないから、貴方はダメなのよ」

メロブの特典が安牌過ぎる件について…咲日和だけは分かりませんが

それでは、また

>>530からしばらくして、うん…やっぱり嫁田(仮)ってcv白石だなと思いながらドラマCD聴いてました。聴いてましたよ。
そういやジャケット見てなかったなと思い、今しがた見てみたんですが

男子生徒:寺島拓篤

男 子 生 徒 : 寺 島 拓 篤

男 子 生 徒 : 寺 島 拓 篤





まーたやらかしてしまったのか…


嫁田(仮)『おー京太郎、朝から目をつけてたレディースランチにありつけたかー』

京太郎『うん!コイツが代わりに注文してくれたお陰でな!』

梅原(仮)『イイ嫁さんだなー咲ちゃんはー』

京太郎『うん!』

咲『中学で同じクラスだっただけだよ!』

京太郎『思いっきり否定せんでも』

梅原(仮)『ま、仲良くな』

咲『んもう…』



―――以上、「DRAMA CD 咲-Saki- トラック2『出会い』」より


咲「で…それと今の状況がどう関係するの?」

京太郎「ど、どうって言われても…」テレッ

優希「私と京太郎がこういう関係になっても、咲ちゃんにどうこう言う筋合いはないってことだじょ!」ダキッ

咲「私に見せ付ける意味って、どこにあるの?」

京太郎「…さあ?」

優希「ぶっちゃけノリだじぇ!」

咲「ノリでこんな風にされちゃ、私としてはたまったもんじゃないんだけど」

京太郎「だってさー咲がいけずだから」

優希「そうだそうだ!」

咲「いけずって…私は、京ちゃんならきっと私を選んでくれるって信じてたから……」

京太郎「つってもさー咲。お前って結構内気じゃん」

咲「うん…まあ、そうなるね」

京太郎「だったら俺の方からアプローチをかけたって、拒絶してる可能性は高いんじゃないのか?」

京太郎「嫁田(仮)が茶化したって少しもブレやしないしさ…俺の方はまんざらでもない態度とってたのに」

咲「そ、それは…」

優希「まーなんにしても京太郎は私のものだからな!たかが数年同級生やってただけの子が差し挟む余地はないじぇ!」

京太郎「そーいう事だ。そんじゃな、咲」

咲「え…麻雀部はどうするの?」

京太郎「男子部員が増えないままじゃ、初心者の2年生とか益々居辛くなるだろーしな」

優希「のどちゃんは咲ちゃんにべったりだし、京太郎ともこうなったから私も居辛くなったじょ」

京太郎「けどまあ麻雀は好きっちゃ好きだし、その気になったら平滝の南浦さんみたいにすりゃいいさ」

優希「…それじゃーね」

京太郎「ま、縁があったらまた会おうぜ」

咲「ま、待ってよ京ちゃん!置いてかないで、置いてかないでよっ!ねえったら…ずっと側にいてよ、京ちゃん!京ちゃ―――ん!」



















嫁田(仮)「…みたいなことが今後あったらどうするよ?」

咲「ど、どうもしませんっ!」

案外相手を求めていたのは、咲ちゃんじゃなくて京太郎という可能性があるかもしれんしないかもしれん…
アマガミの梅原が居たんだから、いつぞやのギャルゲーネタは結構いけるんじゃないかと思いました

だからどうしたと言われりゃ勿論どうもしないんですけど
それでは、また


咲「…」

和「…」

優希「…」

まこ「…部長、これはなんじゃ?」

久「なにってコタツよコタツ。あんまり寒いから、さっき経費で買ってきちゃった!」

まこ「け、経費て」

和「職権濫用も、ここまで来ると清々しいですね」

咲「そうだね…ところで部長、このコタツは誰が持ってきたんですか?」

久「勿論須賀君よ」

咲「勿論、ですか」

和「なんで断らないんでしょうか…」

優希「流石の私もドン引きなんですけど」

まこ「給料出るわけでもないしのう…アイツもようやるわ」

ガチャッ

京太郎「須賀京太郎、ただいま戻りました」

久「おーご苦労」

和「一体どこに行ってたんですか?」

京太郎「生徒会室」

咲「どうして生徒会室なの?」

京太郎「経費を落としてもらえるよう、副会長に頼んできたんだ」

和「…部長?」

久「寒いのにあちこち行くのは億劫でねー」

まこ(副会長…ワシが言うのもなんじゃが不憫な男よ)


和「それにしても…見るからにあったかそうなおこたですね」

優希「木も布団も高級感たっぷりだじぇ」

咲「部長、これって一体いくらなんですか?」

久「そうねえ…5万円以上かしら」

まこ「…自動卓への経費だって馬鹿にならんのによーやるわ」

久「ふふ、褒めなくてもいいのよ?」

まこ「褒めとらんわ」

久「…てへっ☆」

まこ「言うとる場合か。こがなもん、冬場が過ぎたらどうするつもりなんじゃ?」

久「その時が来たら考える!」

和「場当たり的ですね」

咲「うん」

優希「根拠もなく悪待ちをする部長らしいじぇ」


京太郎「まーまー。それ以上話してても仕方ないだろ」

和「須賀君はそれでいいんですか」

京太郎「あったまりたいのは俺も同じだしな。ほら、ミカンだって買ってきてんだぜ」

和「これは…信州うえだのミカン!」

咲「ミカンといえば徳島や和歌山とかだけど…これって美味しいの?」

優希「…うむ!これは美味いじぇ!」

和「優希!?」

咲「いつの間に食べてたんだ…」

京太郎「夜間から早朝までの冷え込みが、いい味の秘訣らしいな」

まこ「…よう知っとるのうそがあなこと」

京太郎「折角なんで、ミカンにも拘りたかったんですよねー」

まこ「その気持ちは分からなくもないが…その、なんつうか……」

和「それだけの情熱、もう少し麻雀に生かしてもいいと思うんですけど」

まこ「それじゃ!」

咲(京ちゃんってば、自分が麻雀部員なのを忘れてるんじゃ…)


―――数十分後。



咲「…」

和「…」

久「…」

まこ「…」

優希「…」

京太郎「あの…暗くなったしそろそろ帰らないと」

咲「じゃあ京ちゃんだけ帰ればいいよ」

和「そうですよ」

優希「アダムとイブじゃるまいし、楽園から出て行こうなんて考えられんじょ」

久「優希、その二人は出て行ったんじゃなくて出て行かされたのよ」

優希「…そう言えばそうでした!」

まこ「すまんの京太郎。ワシらはこの魔力にとりつかれてしもうたんじゃ」

和「もう…一歩だって動きたくありません」

咲「悲しいけど、これって必然なんだよ」

京太郎「染谷先輩や和まで…ええい、こうなったらコタツを剥ぎ取ってでも」

優希「…触るな!」

京太郎「わっ!?」

優希「今の貴様がコタツに触ることは…すなわち死を意味する!」


京太郎「おいおい優希…前みたいに幽霊にでも憑かれたか?」

優希「そうじゃないけど、それくらいみんな必死なんだじょ!」

京太郎「気持ちは分からんでもないがなー」

優希「なら、どうか私達をこのまま放っておいてはくれまいか?」

京太郎「…ああ、いいぜ」

優希「そっか…じゃあな、京太郎」

咲「京ちゃん…」

和「彼はここから旅立つことを選んだんです。私達には、どうすることも出来ません…」

まこ「アンタが居なくなってしまうと、ここもさみしくなってしまうのう」

久「須賀君…貴方もかつての部員達みたいに居なくなってしまうのね」

京太郎「セリフが重いですよ部長…それじゃあ俺、お暇させてもらいます」

優希「…元気でな」

京太郎「ああそれと…守衛さんにはよろしく伝えときます」


「「「「「え?」」」」」


京太郎「『え?』じゃないです。当たり前でしょそんなことは」


久「そんなっ!私達からコタツという希望を奪うだなんて!」

和「この人でなし!」

咲「酷いよ京ちゃん!凍える中で花は生きられないんだよ!?」

京太郎「んなこと言われても…」

まこ「ワシはそがあな風にアンタを育てた覚えはない!」

京太郎「育てられた覚えもないです」

優希「折角みんなで麻雀の指導をしたのに…京太郎、お前はその恩を仇で返すのか?」

京太郎「確かにその通りだが、インハイ終わるまでは俺も色々手伝ったしおあいこだろう」

「「「「「むむむ」」」」」

京太郎「むむむじゃない。とっとと帰らないとみんな叱られちゃいますよ」

久「…こうなったら仕方ないわね。須賀君、コタツごと私達を運んでいきなさい!」

和「ええ、それしかありません!」

咲「お願い京ちゃん、どうか私達を助けて!」

京太郎「リヤカーに5人も入れるわけないだろ!いい加減にしろ!」

まこ「京太郎、アンタは頼りになる男じゃ…アンタならきっとやってくれる!」

優希「頼むじぇ京太郎!」

京太郎「…ダメだこりゃ。暑さで頭がヒットしてる」

カンッ!

一応次スレです

京太郎「夢の此方」
京太郎「夢の此方」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1387290463/)









―――少年は夢を見る








それはまるで現実のようで、幻想のようで、杳として知れない

夢に出るのは、彼の知らない人ばかり

あるいは、彼の知る人ばかり

愛を語らう時もあれば、他愛のない話をしている時もある

理路整然なもの、支離滅裂なもの、そもそも人知の及ばぬもの

内容は様々だ


それはとても心地よくて

とても不快で

とてももどかしくて

とても醜く

そして、とても美しい

それがどこから発露するのか

どうして発露するのか

彼は知らない

知りえない

夢の欠片が、少年をどこに誘うのか


此方より彼方まで、彼は歩む

終わりの見えない旅路を

どこまでも、どこまでも

終わりの時まで

その終わりは命の終わりか、世界の終わりか

それさえ彼には分からなくて

けれど少年は、ただまどろんでいるしかないのだ


夢であろうと、現であろうとこの世は全て諸行無常

まどろむことは必然で自然

それに違いがあるとすれば、現は為すがまま…夢は為されるがまま

意識か無意識のいずれかが主軸かというだけだ

どちらに重きを置くべきかに、意味などない

当ても無く彷徨うことに変わりはないのだ

そして、それにもきっと意味はない


結局はただ、飼い放ち在るだけのこと

意味だのなんだのは、結局の所副産物だ

人の賢しさが生み出したモノ

それだけだ

それだけのことを、それ以上のものにする

人というものは、特にそうしたがる

何かを得る為か

何かを変える為か

何かを創る為か

何かを壊す為か

存在の数だけ、きっと数多の答えがあって

そしてその混沌こそ、森羅万象の在るべき姿なのだ


いずれすべての事象が、ある一点に収束されるとしても

無かったことにされるとしても

そもそも、それらすべてに意味はなくとも

すべてはただ、そこにある

物語において、最早何の意味もなさない

そんな風に定義されたモノだとしても

少年の存在には、きっと何かがあるかもしれない

ないかもしれない

不確実で、不完全で、不透明な存在たち

それ故に、全知全能などはありえない

それ故に、存在する理由がある

すべてには始まりがあって、そしてそれは…終わりをもって意味を為す


始まりの為の終わり

終わりの為の始まり

どちらが欠けても、物語は成り立たない

だからいずれ、終わりは来るだろう

この、どうしようもなくとりとめのない物語にも

必ず終わりはやって来る

たとえ、それがいつになるか分からなくとも

終わりの時まで、いつ終わってもいいように

あるいは…終わらせない為に足掻きながら

それでも、いつかは来る終わりの為に

事は為る

事は為される


夢の此方

夢の彼方

夢の終わり

夢の欠片を拾い集め、少年はまた夢を見る

終わりの時まで

いつまでも

いつまでも

終わりの時まで


夢の欠片・了

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