綾乃「2人のプロローグ」(176)



当SSは結綾成分が強めになっております。

また綾乃の京子に対する愛情も原作より若干薄いですので、御了承ください。


~朝~

~2年教室~

綾乃「おはよう」ガラッ

綾乃「……流石に、こんなに早いと誰も居ないか…」

綾乃「……」

綾乃「……座ろっ」

綾乃「……」ペタン

綾乃「……んー」ノビー

綾乃(…こうやって、歳納京子の椅子に座って歳納京子の机に突っ伏してると…)

綾乃(何かドキドキしてくるわ…)

綾乃(だって、歳納京子って、良くこうやって机に突っ伏して寝てるし…)

綾乃(つ、つまり…私って、今、歳納京子の顔に密着してるのと同じなんじゃ…?)

綾乃「……」

綾乃(…歳納京子ぉ…)スリスリ

結衣「おはよう」ガラッ

綾乃「……!」ガバッ

綾乃「あ、あら船見さん、お、おはよう///」

結衣「あれ、綾乃、早いね」

綾乃「ふ、船見さんこそ、早いじゃない///」

結衣「うん、教科書を学校に忘れてたから、昨日宿題出来なくてね」

結衣「今日は早めに出て来て宿題やろうかなって」

結衣「……あれ」

綾乃「な、なにかしら」

結衣「綾乃、それ京子の席だよ?」

綾乃「え、あ、ほ、本当だわ、私ったら、間違えちゃったみたい///」スクッ

綾乃「こ、こっちが私の席よね!あ、あははは!」ペタン

結衣「……」クスッ

綾乃「な、なに?船見さん///」

結衣「いや、綾乃でもそういうミスするんだなって」クスクス

綾乃(う、うう…恥ずかしい///)

綾乃(というか、船見さん、もしかして、さっき私が歳納京子の席に頬ずりしてたの見てたんじゃ…?)

綾乃(今は何も見てないように装ってるけど、後になって…こんな感じで…)


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結衣「京子、聞いてよ、さっき綾乃がさあ、京子の席に頬ずりしてたんだよ?」

京子「え?綾乃が?何でそんな事を…」

結衣「私の想像では、あれは京子の席を使って自慰してたんじゃないかなって」

京子「じ、じい!?じいや!?」

結衣「京子、おちついて…大丈夫、私が京子を守ってあげるから」

結衣「綾乃を絶対に京子には近づけさせはしないから…」

京子「ゆ、ゆい///」

結衣「京子…」


ブッチュー


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綾乃「ふがーーーー!」シュポー

結衣「あ、綾乃?どうしたの?」

綾乃「あ、な、なんでもないのよ」

綾乃(くっ、これはしばらく船見さんの動向を観察しておく必要があるわね…!)

結衣「綾乃、何か目が恐いよ…」

綾乃「ご、ごめんなさい…」

京子「おっはよー!」

綾乃「あ、と、歳納京子、おはよう///」

京子「結衣結衣~!宿題出来た!?」

結衣「いや、今来たばかりだから出来てるわけないから」

京子「えー、先に家を出たのに何やってるの」

京子「早く済まして写させて~」

結衣「いや、お前は自分でやれよ」

京子「うそ!?昨日の夜に写させてくれるって約束したじゃん!」

結衣「してねー」

綾乃(何時も思うけど、2人とも、仲いいわよね…)ジー

綾乃(歳納京子も、頻繁に船見さんの家に泊まってるみたいだし…)

綾乃(やっぱり、2人は…好きあってるのかな…)

綾乃「……」ズキッ

綾乃(歳納京子…船見さんの何処がいいんだろ…)

綾乃(そうだ、どうせ船見さんを見張るなら…そういう所も観察してみよう…)

~授業中~

綾乃(船見さん、真面目にノート取ってる…)ジー

綾乃(そして歳納京子は居眠りしてる…)

綾乃(わ、私が突っ伏してた所に顔をこすり付けて///)

綾乃(歳納京子の頬が私の顔に密着してるのも同じよね///)

綾乃(……あ、船見さんが歳納京子を起しちゃった)

綾乃(もう、余計なことを…)

綾乃(けど、これが船見さんの良いところなのかしら…)

綾乃(船見さんが歳納京子にノート見せてあげてる光景はよく目にするし…)

綾乃(歳納京子の行動を半ば受け入れながら、残り半分でそのフォローをする…)

綾乃(そういうさりげない優しさが、船見さんの良いところなのかも…)

綾乃(私も、真似出来たらいいんだけど…)

~体育~

結衣「京子行くよ~」

京子「ばっちこーい!」

結衣「それっ!」カーン

京子「おりゃあ!」スカッ

結衣「もう、さっきから全然打ち返せてないじゃん、京子」

結衣「これじゃあバトミントンにならないよ」

京子「むー!じゃあ私から打つから結衣打ち返してみろー!」

綾乃(ふふ、歳納京子、相変わらず元気で可愛いわ…)

綾乃(船見さんも、ちょっとは加減して打ってあげればいいのに…)ジー

綾乃(歳納京子、悔しがってるじゃない)

綾乃(うーん…けど、相手に遠慮しない関係を保つ…というのも大切なのかしら)

綾乃(……そうよね、相手のことを気遣うのも大切だけど)

綾乃(ずっとそれでは、対等な関係は築けないし…)

綾乃(私がテストで手を抜かないのと、同じ感じなのかしら…)

綾乃(けど、船見さんの場合は、何となく優しさを感じられるのよね…)

~給食~

結衣「京子、早く食べなよ?」

京子「うう、大根の煮物苦手なんだよ…」

結衣「食べないと大きくなれないぞ?」

京子「結衣、子供に言い聞かせるみたいに言わないでよぉ」

結衣「子供じゃないなら、ちゃんと食べれるだろ?」

京子「うー…」

結衣「ほら、じゃあ、半分は私が食べてあげるから」

結衣「残り半分はちゃんと食べなよ?」

京子「ほんと!?ありがと!結衣!」

綾乃(歳納京子を諌めながらも、半分は食べてあげる…か)ジー

綾乃(うーん、その発想はなかったわね…)

綾乃(私がやるとしたら…歳納京子に全部食べてもらうよう応援するか…)

綾乃(または私が全部食べてあげるかのニ択…)

綾乃(むむむ…私の発想がいけないのかしら…歳納京子のことを考えるなら)

綾乃(船見さんみたいにもっと柔軟に…)

~放課後~

綾乃「歳納京子!」ドーン

京子「あれ、綾乃、どうしたの?」

結衣「いらっしゃい、綾乃」

綾乃「さ、茶道部の部室が荒らされてないか確認しに来ただけよ!」

京子「えー、私達が自分の部室を荒らすわけないじゃん」

綾乃「あなた達の部室じゃないでしょ!?茶道部の部室だから!」

京子「綾乃はお堅いなあ」プニプニ

綾乃「ほ、頬突かないで///」

綾乃「と、とにかく!今日は最後まで監視を続けさせてもらうわよ!」

綾乃「……」

京子「……」ペラッ

結衣「……」ペラツ

綾乃「きょ、今日は赤座さんと吉川さんはどうしたのかしら」

結衣「ああ、2人とも用事で今日はこれないって」

綾乃「そ、そう…」

綾乃(2人は漫画読んでるし、何か私だけ暇だな…)

京子「綾乃も漫画読む?」

綾乃「え、私別に漫画なんて///」

京子「まあまあ、この漫画、おススメだよ?」

結衣「あ…」

綾乃「そ、そう?そこまで言うなら…」チラッ

綾乃「って、えっちな漫画じゃないのよ///」

京子「一応、全年齢版です!」

綾乃「こ、こ、こ、こんな///」プシュー

結衣「はあ…京子、それは一般人には敷居高すぎるって」ハァ

結衣「はい、綾乃、こっちのならソフトな感じだから大丈夫だよ?」スッ

綾乃「あ、ありがとう、船見さん…」

綾乃(あ、こっちのなら読めそう…)

綾乃「……」ペラッ

綾乃(……こういう気遣いが出来るところも、船見さんのいいところよね)

綾乃「……」チラッ

結衣「……」ペラッ

綾乃(船見さん、やっぱり見てないのかな、私が朝やってたこと)

綾乃(もし見てたとしても、船見さんなら黙っててくれるか…)

綾乃(見張るとか考えて、申し訳なかったな…)

結衣「そういえば、綾乃」

綾乃「……え、あ、な、なに!?」ビクッ

結衣「そんなにビックリしなくても…」

結衣「千歳はどうしたのかなって」

綾乃「千歳は、会長の引継ぎ業務を行ってるわ」

京子「え、千歳が会長になるの?」

綾乃「ええ、他の役員は選挙で決めるけど、会長職は前会長が指名する形式だから」

結衣「意外だなあ、てっきり綾乃が会長になるのかと…」

綾乃「私は…駄目よ、客観性に欠けるもの、副会長をやるのだけで精一杯だから」

京子「そっか…まあ、けど副会長ってだけでも凄いと思うよ~?」

結衣「うん、綾乃は何時も頑張ってるよね」

綾乃「///」

綾乃(もう、2人がかりで褒められると恥ずかしい///)

京子「さて、漫画も読み終わったし、そろそろ帰りますか!」

結衣「うん、そうだね、そろそろ下校時刻だし」

綾乃「え、本当に漫画読むだけで終わっちゃったけど…」

結衣「娯楽部は何時もこんな感じだよ、綾乃」

綾乃「そ、そうなの…」

~帰路~

京子「あ!」

綾乃「どうしたの?歳納京子」

京子「ごめん、部室に漫画忘れた!取りに戻るね!」

結衣「明日でいいだろ、そんなの」

京子「だめだめ!同人誌描く資料に使うんだから!」

京子「2人は先に帰ってて~!」ピューッ

綾乃「と、歳納京子!」

結衣「あー…行っちゃった」

結衣「じゃ、綾乃、一緒に帰ろうか」

綾乃「え、ええ…」

結衣「……」スタスタ

綾乃「……」スタスタ

綾乃(疑ってたから、何か気まずいな…)

結衣「綾乃」

綾乃「ひゃい!?」

結衣「もう、変な声上げないでよ、綾乃」

綾乃「ご、ごめんなさい…」

綾乃(ううう、恥ずかしい///)

結衣「綾乃、今日はずっと私を見てたけど…どうしたのかなーって」

綾乃(気付かれてた!?)

綾乃「……べ、別に見てないわよ?」

結衣「……そっか、じゃあ私の気のせいだね」

結衣「変な事言ってごめん」ニコ

綾乃「……」

結衣「綾乃?」

綾乃(ここで、嘘をつくのは、何か違う…)

綾乃(船見さんは、多分、恋敵なんだろうけど…)

綾乃(だからこそ、正直になりたいな…)

綾乃「……ごめんなさい」ペコッ

結衣「ん?」

綾乃「船見さんの事、ずっと見てたのは、本当なの」

結衣「……そっか」

綾乃「…朝、私が歳納京子の席に座ってたでしょ?」

結衣「……うん」

綾乃「あれは間違えたんじゃなくて…その、知ってて座ったの」

結衣「……」

綾乃「それで、その事を船見さんから歳納京子に伝えられると困るから…」

綾乃「だから、今日はずっと船見さんの事を見てたの…」

綾乃「ごめんなさい…」

綾乃「ふ、船見さんももう、気付いてるかもしれないけど…」

綾乃「私…歳納京子のことが、好きなの」

綾乃「だから…だから、つい、出来心で、歳納京子の席に…」

結衣「……うん」

綾乃「……」

綾乃「……船見さんも、歳納京子のことが、好きなんでしょ?」

結衣「うん、好きだよ」

綾乃「そ、そうよね…ずっと一緒だもんね」

結衣「うん、私と京子はずっと一緒にいた…所謂、姉妹みたいなもんなんだ」

結衣「だから、京子のことは好き」

結衣「手のかかる妹みたいで」

結衣「優しい姉みたいで」

結衣「……この関係を、一言で表すことは出来ないけど…とにかく」

結衣「京子が居ない生活は、ちょっと考えられない」

綾乃「……そう」

綾乃「じゃあ、私達、あの、恋敵…よね?」

結衣「……」

綾乃「けど、私、船見さんと、その」

綾乃「…ギスギスした関係には、なりたくないかなって…」

綾乃「あ、あははは、こんなの、ちょっと都合がよすぎるわよね///」

結衣「違うよ、綾乃」

綾乃「……?」

結衣「私達は、恋敵じゃない」

綾乃「え……そ、それって…」

綾乃(……そっか、じゃあ、やっぱり…)

綾乃(やっぱり、2人はもう既に…恋人の関係なんだ)

綾乃(私の入る隙間なんても、もう、ないんだ…)ウルッ

結衣「あ、綾乃?どうしたの泣いたりして」ワタワタ

綾乃「え、あ、その、…ごめんなさい」ゴシゴシ

綾乃「私、先に帰るわね…」

結衣「綾乃?」

綾乃「船見さん、歳納京子を…幸せにしてあげてね…」

結衣「綾乃、ちょっと待ってって」グッ

綾乃「離して…船見さん」

結衣「何か勘違いしてない?」

綾乃「勘違いなんてしてないわよ…その、船見さんと歳納京子の邪魔をするつもりはないから…」

綾乃「私、2人の仲を、応援するわね…」

結衣「綾乃、いいから聞いて」

結衣「私は、京子を恋愛対象には見てないの」

綾乃「……え?」

綾乃「え、けど、さっき歳納京子の事を好きって…」

結衣「うん、姉妹として好きだよ」

結衣「けど、それは恋愛感情とは違うから」

綾乃「え、え、何時も歳納京子は船見さんの所に泊まりに来てるんでしょ?」

結衣「うん、まあ、姉妹みたいな関係だしね、そりゃ泊まりにも来るよ」

綾乃「それに、それに、船見さんはずっと歳納京子のことを気遣ってたし」

綾乃「私、知ってるのよ?今日、ずっと船見さんを見てたから…」

結衣「それも、姉妹として気遣ってただけかな…」

結衣「だからね、私は綾乃の恋敵じゃないよ」

結衣「安心して?私は、綾乃の味方だから」

綾乃「………」

結衣「綾乃?」

綾乃「よ、よかったぁ…」ハフー

綾乃「私、あの、てっきりもう船見さんとは仲良くなれないのかなって思ってたの」

綾乃「今日、ずっと見てて気付いたけど、私、船見さんの事、尊敬してるし」

綾乃「だから、そうならなくって、本当に良かった…」フー

結衣「……そっか、ありがと、綾乃」ニコ

綾乃「こ、こちらこそ、ありがとう、味方だって言ってくれて」

綾乃「百万の味方を得た気分よ!」

結衣「ふふふ、綾乃は大げさだなあ…」

結衣「綾乃はさ、可愛いから、ちゃんと告白すれば京子は靡いちゃうと思うよ?」

綾乃「そ、そんな///」

綾乃「こ、恐くて出来るわけ無いわよ…」

結衣「大丈夫だって、私には『歳納京子が好き』って言えたんだから」

結衣「京子にだって言えるよ」

綾乃「船見さん…」

結衣「もし、勇気が出ないなら、私が京子のいろいろな事を教えてあげる」

結衣「京子の事を、もっと良く知れば、多分、恐さも薄れると思うよ」

綾乃「そんな事までさせちゃって、いいのかしら…」

結衣「うん、私に出来ることは何でもしてあげたいから」

綾乃「ありがとう、船見さん…」



……

………

結衣「じゃ、明日の放課後、生徒会室で京子の話してあげるね?」

綾乃「ええ、判ったわ、さよなら、船見さん」

結衣「ばいばい、綾乃」

結衣「……」

結衣「綾乃」

綾乃「ん?」

結衣「私に、京子への想いを打ち明けてくれて、ありがとうね」

結衣「綾乃のことを一杯知れて、私、嬉しかった」

綾乃「私のほうこそ…船見さんが味方になってくれて凄く嬉しかったから」

綾乃「感謝してもしたりないわ…」

結衣「……ふふふ、どういたしまして」クスッ

綾乃(何だろう、船見さんの笑顔、今日見た中で一番、悲しそう…)

~数日後~

~生徒会室~

結衣「ふー、仕事も片付いたね」

綾乃「ごめんなさい、船見さん…生徒会の仕事まで手伝ってもらって…」

結衣「気にしないでよ、綾乃、ついでだからさ」

綾乃「うん…じゃ、プリンでも食べながら作戦会議しましょ?船見さんの分も買ってあるから」

結衣「何時もありがと、綾乃」ニコリ

結衣「綾乃の買ってくるプリン、何時も美味しいから、癖になっちゃうよね」

綾乃「そうやって煽てても何もでないわよ、船見さん」

結衣「そんな事ないよ、こう言っておけば、明日もちゃんとプリン用意してもらえるでしょ」クスッ

綾乃「もう、ちゃっかりしてるわね」クスクス

結衣「じゃ、昨日の続きから…京子が小さい頃の話だったよね」

綾乃「ええ、歳納京子が実は泣き虫だった…って言うのは、色々と驚きよね」

結衣「京子はさ、本当に努力したんだ」

結衣「涙を拭いて、自分で立ち上がって、色々なことに手を伸ばして」

結衣「もう、昔の弱い京子は殆ど残ってないと思う」

結衣「……時々、甘えん坊な所が顔を出すけどね」

綾乃「甘えん坊…」

結衣「綾乃が甘やかしてあげれば、京子は凄く懐くと思うよ」

綾乃「も、もう、船見さんったら///」

結衣「……」

綾乃「船見さん?」

結衣「あ、ごめん、ちょっとボーっとしてたよ」

綾乃「今日の仕事は大変だったしね…もう帰る?」

結衣「……もう少し、話していかない?まだ京子の話、残ってるし」

綾乃「けど…」

結衣「お願い、綾乃…」

綾乃「船見さん…?」

綾乃(どうしたんだろ、船見さん)

綾乃(何時も楽しそうに笑ってくれるけど…時々、泣きそうな顔になる…)

綾乃(こんな顔、前に観察したときは絶対に出さなかったのに…)

綾乃(歳納京子と一緒にいたときは、絶対に出さなかったのに…)

綾乃(……判らない、判らないわ、船見さんが…)

綾乃(私は歳納京子のことだけじゃなくて、船見さんの事も理解したいのに…)

結衣「ごめんね、困らせちゃったよね」

綾乃「え、いや、そんな事は…」

結衣「……今日はもう、帰ろうか」

綾乃「船見さん」

結衣「ん?」

綾乃「あの…何か、悩んでたりする?」

結衣「いや、別に何も悩んでないよ」

綾乃「そ、そう?ならいいんだけど…」

綾乃(駄目だ、私…また、恐くて踏み入れない)

綾乃(船見さんのお陰で歳納京子の心に踏み込む事への恐さは薄れたけど…)

綾乃(船見さんの心に踏み入るのは、まだ恐い…)

綾乃(私って、本当に駄目だ…)

50
結衣「じゃ、戸締りもすんだし、帰ろうか」

綾乃「あ、私、ちょっと先生に用事があるから…船見さん、今日は先に帰ってて?」

結衣「……ん、判った」

結衣「じゃあ、また明日ね、綾乃」

綾乃「ええ、また明日、さようなら、船見さん」

~娯楽部~

綾乃(嘘ついてごめんね、船見さん)

綾乃(けど、船見さんの事を知るには、やっぱり彼女から聞くのが一番だから…)

綾乃「歳納京子?居る?」ガラッ

京子「ふごー…」zzz

綾乃「……寝てる」

綾乃(暢気なものね、私達の苦労も知らないで…)

綾乃(歳納京子、待ってなさい、もうすぐ、貴女に、告白してあげるんだから)ツンツン

京子「むにゃむにゃ、やめてよ結衣…」zzz

綾乃「……歳納京子」

綾乃(寝てる顔、本当に可愛いな…)

綾乃(このまま、ずっと眺めていたい…)


『……もう少し、話していかない?』

『お願い、綾乃…』


綾乃「……」ズキッ

綾乃(どうして、だろう…船見さんの、あの悲しそうな顔が、思い浮かんじゃう…)

綾乃(……船見さんにとって歳納京子は姉妹と同じ…)

綾乃(けど、歳納京子にとって、船見さんは何なのかしら…)

綾乃「歳納京子、起きて」ユサユサ

京子「むあ…んー…なにい…」モゾモゾ

京子「あれ、綾乃…」

綾乃「おはよう、歳納京子」

京子「ん、おはよー、綾乃」ファー

綾乃「ふふ、畳の上に寝てたから、頬に跡がついてるわよ?」

京子「え、まじ!?」ゴシゴシ

綾乃「取れないわよ、そんなに擦っても」クスクス

京子「ううう///」

綾乃(こんなに自然に、歳納京子と喋れるだなんて)

綾乃(それもこれも、船見さんのお陰ね)

綾乃(だからこそ、私も船見さんの力になってあげたい…)

綾乃「歳納京子、ちょっと、聞きたいことがあるの」

京子「ん?なに?改まって」

綾乃「船見さんの事なんだけど…」

京子「おう、綾乃、とうとう結衣に告白でもしたの?」

綾乃「な///」

綾乃「何言ってるのよ歳納京子!私が船見さんに告白するはずないでしょ!?」

京子「えー、だって、最近、2人はずっと一緒に居るじゃん」

京子「てっきり、何か特別な仲になったのかなーって」

綾乃「私と船見さんは、友達よ…」

綾乃「特別な仲になんて、なってないわ…」

京子「ほんと?友達って言っても実はキスの練習とかする仲なんじゃないの?」

綾乃「キスの練習なんて…しないわよ、そういうのは、本当に好きな人とじゃないと…」

京子「そっか…ごめんね、無粋なこと、言っちゃったかな」

綾乃「……」

京子「綾乃…?怒った?」

綾乃「歳納京子…もし」

綾乃「仮に私と船見さんがそういう仲になったとしたら…」

綾乃「貴女は、それをどう思う?」

京子「……」

京子「うーん、もしそうなったら…綾乃に嫉妬するかも」

綾乃「……!」

京子「結衣はさ、私のお姉さん…いや、妹かな?まあ、とにかく、姉妹みたいな相手だから」

京子「だから、離れて行っちゃうのは、やっぱり寂しいよ」

綾乃「歳納京子…」

京子「ま、けど最終的には納得するしかないんだろうけどね、結衣の幸せが、大切だし」

綾乃「……ごめんなさい、変な質問、しちゃったわね…」

京子「私もさっき、変なこと言っちゃったから、おあいこだよ」ニコ

綾乃「……そうね」クスッ

京子「で、聞きたいことって言うのは、それなのかな?」

綾乃「違うの、歳納京子…実は」



京子「結衣が何か悩んでる?」

綾乃「ええ、さっき、生徒会の手伝いしてもらってる時に、ちょっと感じて…」

京子「そっか、綾乃も気付いたか…」

綾乃「歳納京子も、気付いてたのね」

京子「うん…」

京子「私はてっきり、結衣は悩み事を相談する為に綾乃と会ってるんだと思ってたんだよね」

京子「私では、関係が近すぎて逆に相談できないのかもって」

綾乃「歳納京子…」

京子「綾乃、結衣はさ、強そうに見えるでしょ」

綾乃「え、ええ、船見さんは、強い子だと思うわ、頼りになるし」

京子「けど、本当の結衣はね」

京子「寂しがり屋で、脆いの…」

京子「でも、誰かを守る為には、そういう弱い部分を隠して頑張っちゃう子なの」

綾乃「船見さんが、脆い…」

京子「だから、もし綾乃が結衣の悩みに接することが出来た時は…」

京子「守ってあげて欲しいんだ、結衣の心を」

綾乃「歳納京子…」

京子「えへへ、結衣には内緒だよ?私がこんな事言ったなんて」

綾乃「ええ、判った…ありがとう、歳納京子、教えてくれて」

綾乃(何時も笑って歳納京子を守ってあげていた船見さん)

綾乃(私の悩みを受け止めてくれて、助けてくれた船見さん)

綾乃(けど、そんなのは船見さんの一面でしかなかった…)

綾乃(もし、船見さんが隠してる弱い面に悩みの原因があるのなら…)

綾乃(今度は私が船見さんを助けてあげたい…)

綾乃(そうしないと、気になって何時までも歳納京子への告白へ、進めそうにないな…)

~翌日の放課後~

~生徒会室~

綾乃「……」ポー

結衣「綾乃?どうしたのさ、ボーっとして」

綾乃「あ、ごめんなさい、ちょっと考え事を…」

結衣「また京子の事かな?」

綾乃「……違うわ、貴女の事よ」

結衣「え///」

綾乃(そう、怖がってても仕方ない)

綾乃(昨日、歳納京子から聞いた事で、踏み込む勇気は得られた)

綾乃(だから…ちゃんと聞こう)

綾乃(船見さんの悩みを)

綾乃「船見さん」

結衣「は、はい」

綾乃「何か、悩んでるわよね」

結衣「……またその話?」

結衣「何も悩んでないよ、綾乃」

綾乃「嘘よ」

結衣「嘘じゃないって」

綾乃「……あのね、船見さん」

綾乃「幾ら隠そうとしても、判るの」

結衣「……」

綾乃「歳納京子を見てたのと、同じくらい船見さんの事を見てたから、判るの」

綾乃「だから、お願い、私を頼って?」

綾乃「私が船見さんを頼るのと、同じくらい頼ってくれないと、私、寂しいわよ…」

結衣「綾乃……」

結衣「駄目だよ、言ったら、綾乃に迷惑が…」

綾乃「迷惑だなんて、思わない」

綾乃「だって、船見さんは私にとって、大切な人だもの」

綾乃「だから、お願い、私を信じて…」

綾乃「それとも、私の勘違いだったのかな…」

綾乃「船見さんの事、大切に思ってたの、私だけなのかな…」ウルッ

結衣「綾乃…」

結衣「その大切な人って言うのは、友達として…って事だよね」

綾乃「船見さん…?」ゴシゴシ

結衣「私の悩みは、それ、なんだ…」

結衣「私は、私はね、綾乃」

結衣「綾乃の事が、好きなの」

結衣「多分、綾乃が私の事を大切に思ってくれている以上に、綾乃の事が好きなの」

結衣「京子の横で、私はずっと綾乃のことを見てた」

結衣「何時もがむしゃらで、それでいて、素直になれなくて」

結衣「倒れても倒れても負けずに立ち上がって、前に進もうとする、その心が」

結衣「私は好きになったの…」

結衣「……私は、綾乃を愛してるの…」

綾乃「ふ、船見さん…?」

結衣「綾乃、ごめん、言うつもりなかったんだ…」

結衣「綾乃はやっぱり京子と結ばれた方が幸せだと思うし…」

結衣「だから、綾乃を手伝うだけで満足しようと思ってた…」

結衣「けど、綾乃、綾乃、泣いちゃうから…」

結衣「綾乃の涙を前にして、嘘なんて、つけないよ…」

結衣「ごめん…綾乃、こんな事、告白しちゃって、ごめん…」

綾乃(どうしよう…何も考えられない)

綾乃(船見さんが、私のことを、好き?)

綾乃(私も、船見さんの事は、好きだけど…けど、私は歳納京子の事が…)

綾乃(歳納京子の事が好きなのに…愛してるのに…)

綾乃(けど、私の中で、船見さんの存在が、何時の間にかこんなに大きく…)

綾乃(どうしよう、判らないよ、私、どうしたら…)

結衣「……」

綾乃「……」

結衣「ごめん、私、もう帰るね」

綾乃「……え」

結衣「綾乃、貴女は、もう十分強くなったよ」

結衣「もう、私がいなくても、京子に告白できると思う」

綾乃「ちょっと、待って、…待って船見さん」

結衣「私の言ったことなんて忘れて、自信を持って」

綾乃「船見さん…!」

結衣「ばいばい、綾乃」タッ

綾乃「ふ、船見さん!」

綾乃「……」

綾乃「私、どうしたら…」

綾乃(船見さんを追うことも出来なかった…)

綾乃(こんな気持ちでは歳納京子に告白することなんて、出来ない…)

綾乃(私は本当は誰が一番好きなの…)

綾乃(歳納京子が一番好きとか言ってたくせに…今では断言することが出来ない…)

綾乃(私、最低だわ…)

綾乃(……それなら…もう…もう…)

~翌日~

京子「おはよ!綾乃!」

結衣「おはよう、綾乃」

綾乃「……おはよう」

京子「綾乃、昨日、結衣と何かあった?」ボソボソ

綾乃「……別に」

京子「本当に…?結衣、今朝からめちゃくちゃ様子が変なんだけど」ボソボソ

綾乃「知らないわ」

京子「そ、そっか…」

京子「綾乃~、結衣と三人で一緒に給食食べない?」

綾乃「……ごめんなさい、私、生徒会室に用事があるから」スッ

京子「んー、残念だなあ…」

京子「ねえ?結衣」

結衣「……うん、そだね」

京子「もー、結衣、元気なさすぎだよ?」

結衣「え?そんな事ないけど…」

~放課後~

~娯楽部~

京子「あれ、結衣、今日は生徒会の手伝いに行かないの?」

結衣「うん、最近、娯楽部に来れてなかったからね」

結衣「これからは、こっちを優先しようかなって」

京子「…そっか」

ちなつ「結衣先輩と部活するの久しぶりです♪」

あかり「うん、勢ぞろいだねぇ」

結衣(綾乃、今日は京子に告白しないのかな…)

結衣(私は大丈夫だから、勇気を出して、綾乃…)

~数日後~

~生徒会室~

結衣「綾乃、居る?」ガラッ

綾乃「……いるわ」カキカキ

結衣「忙しい、かな?」

綾乃「そうね」カキカキ

結衣「……」

結衣「……綾乃、あの、京子に告白しないの?」

綾乃「……」カキカキ

結衣「最近、ずっと娯楽部に顔出さないよね」

結衣「クラスでも殆ど喋らないし…」

綾乃「……」カキカキ

結衣「あの、私が言ったこと、やっぱり気にしてる?」

結衣「私に気兼ねとか、要らないから」

結衣「というか、寧ろ、早く京子に告白してくれないと辛いって言うか…」

綾乃「……」カキカキ

結衣「綾乃?」

綾乃「船見さん、私ね」

結衣「う、うん」

綾乃「歳納京子を好きで居続けることを、止めたの」

結衣「……え?」

綾乃「私、自分で分からなくなったの」

綾乃「船見さんに告白されて、船見さんへの想いが歳納京子への想いと、拮抗しちゃって」

綾乃「私の想いって、そんなに簡単に揺らいじゃうものなんだって、思った」

綾乃「私が恋だと思ってる気持ち、全部偽物なんじゃないかって思った」

綾乃「だからね、全部、全部捨てちゃおうと思うの」

綾乃「だってそうでしょ、偽物の恋を相手に伝えたりしたら…」

綾乃「例え恋人になったとしても、いつか絶対、相手を傷つける」

綾乃「けど、想いを捨ててしまえば…そうすれば、きっと誰も不幸にならないわ」

結衣「何言ってるの、綾乃…」

綾乃「いいから、これが私の結論なの」

綾乃「ごめんなさい、だから、私は貴女の気持ちにも…」

結衣「綾乃!」

綾乃「……!」ビクッ

結衣「…綾乃の恋は、本物だよ」

結衣「私はずっと見てた、だから、判る」

結衣「綾乃が京子に抱いてたのは、凄く純粋で綺麗で儚い、本物の恋なの」

結衣「綾乃は優しいから、私に気を使ってるだけ…」

結衣「私は大丈夫だから」

結衣「だから、綾乃、お願い、素直になって…」

結衣「全部捨てるなんて、悲しい事といわないで…」

結衣「それに、それに、誰も不幸にならないなんて、嘘だよ」

結衣「綾乃が」

結衣「綾乃が、不幸になるじゃない…」

綾乃「……けど、けど、私、もう…判らないのよ」ウルッ

綾乃「間違った選択で、二人のどちらかを傷つけるくらいなら」グスン

綾乃「私が、私だけが傷つけばいいから…」ゴシゴシ

結衣「綾乃が不幸になると…」

結衣「綾乃が傷つくと!」

結衣「私が…私が悲しいんだよ!」

綾乃「船見さん…涙が…」

結衣「あ、ご、ごめん、ちょっと感極まっちゃって…」ゴシゴシ

結衣「……ほら、今なら京子、部室にいるから、ね?」

結衣「勇気を出して…」

綾乃(……私、船見さんを泣かせちゃった…)

綾乃(何、やってるんだろ)

綾乃(私の想いは、もう私1人のものじゃないのに)

綾乃(勝手に捨てて、それで終わらせられるようなものじゃないのに…)

綾乃(結論出すのが恐くて、結局、船見さんを傷つけた…)

綾乃(そう、私は勇気を出さないといけない…)

綾乃(勇気を出して、一歩踏み出さなくてはいけない…)

綾乃(ここで結論を出さないと、後悔するから…)

綾乃(たとえ、誰かを傷つけることになったとしても…)

綾乃(私は…私は…)

『本当の結衣はね』

『寂しがり屋で、脆いの…』

『でも、誰かを守る為には、そういう弱い部分を隠して頑張っちゃう子なの』

『だから、もし綾乃が結衣の悩みに接することが出来た時は…』

『守ってあげて欲しいんだ、結衣の心を』

『京子はさ、本当に努力したんだ』

『涙を拭いて、自分で立ち上がって、色々なことに手を伸ばして』

『綾乃の恋は、本物だよ』

『私はずっと見てた、だから、判る』

『綾乃が京子に抱いてたのは、凄く純粋で綺麗で儚い、本物の恋なの』

綾乃「決めたわ」

結衣「え?」

結衣「……綾乃、カッターナイフなんて出して、どうするの?」

綾乃「……こうするの」



ザクッ


結衣「あ、綾乃!?何やってるの!自分の髪を…!?」

綾乃「……後ろ髪、引かれたくないから」

結衣「え…?」

綾乃(さようなら、私の初恋)

綾乃(ごめんね、相手に伝えることさえ出来ずに終わってしまって…)

綾乃(変わりに、後ろ髪はここに置いていってあげるから)

綾乃(だから、許して…)

綾乃「船見結衣!」

結衣「え、は、はい!」

綾乃「私も、貴女の事が好き」

結衣「……え」

綾乃「歳納京子より、好きになっちゃったの」

結衣「……綾乃、だから、私に気を使わなくても…」


チュッ

結衣「綾乃///」

綾乃「気を使ってる訳じゃないわ」

綾乃「例え尻軽と言われても構わない」

綾乃「世界の全てが敵に回ったとしても、私はもう決めたの」

綾乃「船見結衣を、愛するって」

結衣「あ、あやの…」

結衣「綾乃、本当に、本当に私でいいの?」

綾乃「うん、私は、船見結衣のことが好き、大好き」

綾乃「ずっと私のことを想って努力してくれてた船見結衣が好き」

綾乃「苦しくてもそれを表に出さない船見結衣が好き」

綾乃「これからも、一緒に助け合って、生きて行きたいと思えるの…」

結衣「……」

綾乃「船見結衣?」

結衣「う、ひっく、よか、た、うれしい、よ、あやの」グスン

結衣「わたし、ずっとこわかった、あやのに嫌われたらどうしようって」ヒック

結衣「よかった、よかったよぉぉ…」ポロポロ

綾乃「ゆ、結衣、ごめん、泣かないで…」ギュッ

結衣「う、うう、ごめん、恥ずかしい…今、泣き止むから…」ゴシゴシ

綾乃(歳納京子が言ってたとおりね…)

綾乃(強そうに見えて、結衣は脆い所がある…)

綾乃(ちゃんと、守ってあげないとね…)ギュッ

綾乃「結衣、もう平気?」

結衣「ん、ごめんね、綾乃、迷惑かけちゃった」

綾乃「いいのよ、これらは、私が結衣を守ってあげるわ…」

結衣「///」

綾乃「……歳納京子にも、伝えないとね…」

結衣「うん…」

結衣「もしかしたら、京子、泣くかも…」

綾乃「泣くかしら」

綾乃「けど、例え誰かを傷つける事になるとしても、私はもう決めてしまったから」

綾乃「結衣と一緒に進むって」

結衣「綾乃…ありがとう…」

ここまでが2人のプロローグ

きっと、ここから先の物語は辛くて苦しいものになるのだろう

けど、2人で進むなら

きっと耐えられると思うから

だから、これから宜しくね

私の愛しい人



~ブロローグ~

~翌日の朝~


綾乃「流石にちょっと、緊張してきたわね…」

結衣「大丈夫、私も一緒だから…」

綾乃「って、一緒にガチガチになってどうするの」

結衣「だ、だって仕方ないだろ」

綾乃「もう、仕方ないわね…」


チュッ


結衣「あう///」

綾乃「これで、ちょっとは緊張解けた?」

結衣「う、うん///」

結衣「あ、京子来た…あかりも一緒だ」

綾乃「……じゃあ、行きましょう」



京子「あれ、2人ともどうしたの?」

結衣「おはよ、京子、あかり」

綾乃「おはよう」

京子「ん、おはよ」

あかり「結衣ちゃん、杉浦先輩、お、おはようございます」

京子「結衣~、先に行くならそう言ってよ、ちょっと家の前で待っちゃったよ」

結衣「ご、ごめん」

結衣「あの、京子、実はちょっと話しがあるんだけど…」

京子「ん?どしたの、真剣な顔して」

綾乃「えっと、あの、歳納京子…」

あかり「……あかり、ちょっとジュース買って来るね!」タッ

結衣(ありがと、あかり…)

京子「……そっか、2人、付き合い始めたんだ」

結衣「うん…」

綾乃「……」

京子「うん、おめでとう、2人とも」

京子「けど、あんまり見せ付けんなよ!」グリグリ

結衣「ふごふご」

綾乃「と、歳納京子、やめてあげてっ」

京子「ふふふ、じゃあ、邪魔者は退散するとするね」

京子「2人っきりの登校を楽しんで!」タッ

結衣「京子…」

綾乃「歳納京子…」

京子「結衣、朝から綾乃にえろいことするなよ~!」

結衣「なっ///」

京子「綾乃~、結衣ってムッツリだから気をつけて!」

綾乃「なっ///」

綾乃「行っちゃった…」

結衣「……気を使わせちゃったみたいだね」

綾乃「うん…歳納京子、泣いてなかったけど…」

綾乃「一瞬、辛そうな顔してた…」

結衣「うん、隠れて、泣くのかも…」

結衣「けど、私達にそれを慰める権利はないよ…」

綾乃「……うん」

結衣(あかり、ごめんね、嫌な役目、押し付けて)

~公園~

あかり「京子ちゃん」

京子「あ、あかり、良くここが分かったね…」

あかり「だって、京子ちゃん、子供の頃から辛いことがあると、良くここに来てたから」

京子「もう、あかりには適わないな…」

あかり「京子ちゃん、泣いてたの…?」

京子「泣くはずないじゃん、理由もないし」

あかり「そっか…そうだよね」

あかり「はい、これ、京子ちゃんの分」

京子「ありがと、あかり…って、これブラックコーヒーじゃん」

あかり「えへへ、間違えて買っちゃった」

京子「もう、あかりはドジだなぁ」

あかり「うん、ドジだから、あかりの分もブラックコーヒーなんだぁ」

あかり「一緒に飲もう?」

京子「……うん」

京子「……」ゴクゴク

あかり「……」コクコク

あかり「……苦いね、京子ちゃん」

京子「うん、苦い」

京子「あんまり苦くて、涙が出ちゃう…」

あかり「……」

~放課後~

~娯楽部~

京子「おはよう、みんな」

あかり「京子ちゃん、こんにちわぁ」

ちなつ「京子先輩!あの、結衣先輩が杉浦先輩の恋人になったって本当ですか!?」

京子「あ、うん…もう知ってたんだ、ちなつちゃん、耳が早いね…」

京子「何か、2人で意気投合しちゃったらしくてさ」

京子「私も、今朝聞いたんだけど…付き合い始めることにしたって」

ちなつ「そ、そんな…」ガクッ

あかり「そ、それで京子ちゃん、結衣ちゃんは?」

京子「あー…うん、生徒会の手伝いをするから、しばらく娯楽部には来ないって…」

あかり「そ、そうなんだ…」

ちなつ「……そんな、突然…酷いですよ…」

ちなつ「だって、そんな気配、全然なかったじゃないですか!」

京子「…ちなつちゃん、落ち着いて…」

ちなつ「きょ、京子先輩はどうしてそんなに落ち着いてるんですか!」

京子「確かに私も驚いたけど…友達なんだから、祝福してあげるのが当然だよ…」

ちなつ「……!」

ちなつ「京子先輩…大人ですね…凄いです…」

ちなつ「私には、到底真似できそうにありません…」スタッ

京子「ちなつちゃん?」

ちなつ「……わたし、もう帰ります…」

ちなつ「と、というか…結衣先輩が来ないなら、もう、娯楽部にいても…」

ちなつ「辛いだけですよ、色々な思い出が、逆に痛すぎるから…」

京子「ちなつちゃん…」

ちなつ「ごめんなさい、京子先輩、あかりちゃん…」タッ

京子「……」

あかり「京子ちゃん…」

京子「はは、2人っきりになっちゃったね、あかり」

あかり「……うん」

京子「あかりもさ、つまんないなら、もう娯楽部来なくてもいいよ…」

あかり「……あかりは、京子ちゃんと一緒に、娯楽部にいるよ」

あかり「だって、京子ちゃんと一緒にいると、楽しいから」ニコ

京子「あかり…ありがとうね…」

あかり「さ、気分変えて何時ものように何かして遊ぼうよ!」

京子「お、おう!そうだな!遊ぼう!」

あかり「とは言っても、2人でできる室内遊びとかあんまないよねえ…」

京子「じゃ、外に出る?天気もいいしさ」

あかり「……そうだね、お外に出よう!」

京子「あかりと2人で外で遊ぶの、久しぶりだよね」

あかり「子供のとき以来かなぁ」

あかり「あ、そうだ、京子ちゃん覚えてる?子供の時作った秘密基地!」

京子「あー…懐かしいね、橋の下に作ってたよね」

あかり「あれ、見に行ってみない?折角だし」

京子「ナイスアイデア!よーし!我らが秘密基地の状況確認に、レッツGO!」

あかり「おー!」

あかり(懐かしいな、こうして2人でいると、昔の事を思い出しちゃう)

あかり(昔は良かったな、京子ちゃんと結衣ちゃんとあかりの三人で)

あかり(暗くなるまで遊んで…)

京子「おーい!あかりー!早く早くー!」

あかり「待ってよぉ、京子ちゃーん!」

あかり(京子ちゃん、大丈夫、あかりだけは、何時までも京子ちゃんの側に居るから…)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

京子「うえーん、いたいよお、いたいよぉ」メソメソ

あかり「葉っぱ仮面!惨状!」

あかり「ほら、痛いの痛いの飛んでけ~♪」

京子「ヒック…ふふふ、あかりちゃん、変なの」クスクス

あかり「京子ちゃん、痛いの、どっか行ってくれた?」

京子「うん、いつもありがとう、あかりちゃん」

あかり「いや、あかりは葉っぱ仮面だよ~」

あかり「あかりは、結衣ちゃんみたいに京子ちゃんを守ることは出来ないけど」

あかり「京子ちゃんの痛みをどっかにやってあげる事はできるから…」

あかり「だから、何時でも頼ってね」

京子「うん、ありがとう、葉っぱ仮面」ニコリ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



赤座あかりは

仮面を被り

歳納京子の痛みを取り除いた

ここまでが2人のプロローグ


2人の未来に

幸があらん事を





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京子「結衣と綾乃があっちっち」

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