ラフィエル「シングルのお布団に二人は狭かったので」 (13)


ラフィエル「これからは私がサターニャ様のお布団になりますね」

サターニャ「いや、いきなり人んち来て何言ってんの?」

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ラフィエル「…………」ニコッ

サターニャ「帰りなさいよ」

ラフィエル「天よりも高く、魔界よりも深い器の大悪魔様が、弟子を寝巻き一つで放り出すなんてことはあり得ませんよね?」

サターニャ「なんでもう着替えてるのよ! ていうか勝手に上がり込んでるし!」

ラフィエル「ごめんなさいサターニャ様……」

サターニャ「え」

ラフィエル「私失礼な言動をしてしまったとあれからずっと後悔してたんです……」ウルウル

ラフィエル「後になってからサターニャ様の素晴らしい部分が次々とわかってきて、なんて生意気なクチを聞いてしまったんだろうと反省を……」

サターニャ「あっ、あははっ……やっぱりぃ?」デヘー

ラファエル「もう一度……もう一度だけ偉大なるサターニャ様の下で学ばせてください……!」

サターニャ「なるほど…………許すわ!」

ラフィエル「ありがとうございます」


サターニャ「……で、どこよ」ソワソワ

ラフィエル「え?」

サターニャ「私の素晴らしさ、気づいたんでしょ? どこか言ってみなさい。許すわ」フフン

ラフィエル「あー……えっと……」

ラフィエル「あ、大きい! サターニャ様はガヴちゃんやヴィーネさんよりも大きいです!」

サターニャ「そ、そう? やっぱりそういうオーラわかっちゃう? 私ただの悪魔じゃなくて大っきい偉大な大悪魔様だから!」

ラフィエル「そう意外とあるんですよね……意外と」ポヨポヨ

サターニャ「意外とってなによ!? 胸さわんな!」

サターニャ「大体そういうことならアンタの方があるじゃないの! このっ!」バイン

ラフィエル「あ、ぁんっ……!」ビクッ

サターニャ「…………」

ラフィエル「…………」チラ

サターニャ「ち、ちがう! そんなつもりじゃなかったの! ねえホント! ホントだから信じて! ごめん、いやごめんなさい!」アタフタ

ラフィエル「汚されちゃいました……もうお嫁にいけないです……」ヨヨヨ

サターニャ(そ、そう……なの? お嫁にいけない……私そんな悪いことしちゃったの!? 大悪により強制退去まである!?)

サターニャ「うぅ、あの、許して……おねがい……お嫁にいけないなら、そのぶん私が責任――」

ラフィエル「まぁ冗談はこのくらいにしましょう」ケロッ

サターニャ「冗談っ!? じょっ、冗談で私の一世一代、不本意な決断と覚悟を空費させたワケ!?」

ラフィエル「あら? 今の言葉、本気と受け取っても……」

サターニャ「っ、冗談よ! 冗談に決まってるでしょ!」

ラフィエル「ですよねぇ」クスクス

サターニャ「あーもう、アンタと話してると百倍疲れるわ! もー寝る!」

ラフィエル「お休みですか? ならば私を布団にしてお使いください」

サターニャ「そーいえばそんなこと言ってたわね……」

ラフィエル「弟子は弟子らしく奉仕の精神を持つのが大事だと思いまして」

サターニャ「だいぶ遅まきだけどそこに気づいただけヨシとするわ」

ラフィエル「じゃあ……ご褒美に寝る前のマッサージでもお願いします」

サターニャ「奉仕っ! せいしんっ! どこっ!」バンバン

――

ラフィエル「では失礼して……まず私が仰向けに寝ますね」ゴロン

ラフィエル「サターニャ様、どうぞ~」

サターニャ「う、上に寝っ転がっていいのよね?」

ラフィエル「んーと、いえ、できればうつ伏せで……」

サターニャ「うつ……ぶせ……?」

ラフィエル「……ええと、お腹を、下に向けて」

サターニャ「あぁ、こうね?」ユカドン

ラフィエル「そうですそうです~。そのまま! そのまま布団めに覆いかぶさってください~」

サターニャ「こう~?」ズイッ

サターニャ「……って! これじゃ押し倒してるみたいになってるじゃない!」カァ

ラフィエル「あ、キスは初めてなので優しく……」モジ

サターニャ「しないわよっ!」シャー

ラフィエル「え、しないんですか? こんなに目の前なのに? 私はてっきり――」

サターニャ「~~~っ!」バッ

ラフィエル「そんな飛びのいて逃げなくても」

サターニャ「み、身の危険を感じたのよ……」

ラフィエル「うふふ」

サターニャ「…………」ジトー


ラフィエル「では、サターニャ様の好きなようにお使いください~」

サターニャ「言われなくてもそうするわよ」ヨイショ

ラフィエル「なるほど仰向け……サターニャ様の好きな体位はそちらでしたか」

サターニャ「たいい?」

ラフィエル「いえなんでもないです……寝心地はいかがですか? サターニャ様」

サターニャ「……悪くないわね、ふわふわしてて……」

サターニャ「特にこの胸枕はなかなかイカしてるわ!」ボヨンボヨン

ラフィエル「……っ!!?」ゴンッ

サターニャ「ギャッ!? あ、頭が、割れっ……!」

ラフィエル「ごめんなさい、顎が滑っちゃいました」

サターニャ「ど、どーいう身体してんのよ! もーっ!」

ラフィエル「胸を叩かれると痛くて顎が滑っちゃう体質なんです」

ラフィエル「気をつけてくださいね?」ゴゴゴ

サターニャ「はっ、はい」

ラフィエル「じゃあ寝ましょうか」

サターニャ「はぃ……」

ラフィエル「しっかり掛け布団をかけてと」バサッ

サターニャ「も……もがっ!?」

ラフィエル「おやすみなさーい」

サターニャ「ちょっ……どけて……」

サターニャ「どりゃあっ!」バサッ

ラフィエル「ちょっと? 寒いんですけれど!」

サターニャ「いや、頭まで布団がかかって……」

ラフィエル「私肩まで布団かけないと寝れないんです」

サターニャ「私が寝苦しいの! 布団ならご主人様に合わせなさいよ!」

ラフィエル「でも、私も布団である前に一人の天使ですから基本的な権利というものが保障されるべきで――」

サターニャ「…………」

サターニャ「まぁ、寝心地の良さに免じて我慢してあげるわ……」

ラフィエル「光栄です~」

サターニャ「はぁ、もう、ねむい……」

ラフィエル「…………」

サターニャ「…………」ウトウト

ラフィエル(首がゆらゆらしてるの赤ちゃんみたいでかわいいです)

サターニャ「んー……」ズルッ

ラフィエル「あ」

サターニャ「ふぎゃっ!」ゴテン

サターニャ「な、なに!? 天地がひっくり返ったぁ!?」

ラフィエル「」ブフッ

サターニャ「……あ」カァ

ラフィエル「だいじょぶですよ~? ひっくり返ったのはサターニャ様ですよ~?」ナデナデ

サターニャ「わ、笑うなっ! バカにするなあっ!」

ラフィエル「笑ってませんよ~」クスクス

サターニャ「うぅぅ……こんなのちょっと寝返りしたら落ちちゃうじゃない……」グス

サターニャ「そーよ! 私悪くない! 落っこちないようにしっかり支えとくべきなのよ!」

ラフィエル「わかりました~」ガシッ

サターニャ「いたいいたいいたい! アイアンクロー入ってる!」パシパシ

サターニャ「そうじゃなくて! なんだろ、もっとやさーしく、体全体を包み込む? ような……」

ラフィエル「こんな感じですか?」ギュ

サターニャ「……これだと、抱きしめられてるみたいね」

ラフィエル「みたいじゃなくて、しっかり抱きしめちゃってますよ~」ニヤニヤ

サターニャ「ふわぁ……まあいっか」

ラフィエル「え」

サターニャ「離しちゃ、だめよ……?」

ラフィエル「はっ、はい」ドキッ

サターニャ「………すぅ」

ラフィエル「…………」

ラフィエル(あ……これすごい……髪からいい匂いが……)クンカクンカ

ラフィエル(それにこれが……サターニャさんの体温)ギュー

サターニャ「…………」ピク

ラフィエル(……いけない! 意識したらなんだか妙な気分に……)ドキドキ

ラフィエル(……あんな言い方、するから)

ラフィエル(あああ有耶無耶にしないと! でもこの抱きしめてる体勢でちょっかい出すって言ったら……言ったら……)

ラフィエル(余計ドキドキしちゃうじゃないですかー!)

ラフィエル(……はっ! そもそもこの体勢だと私の心臓の鼓動がさっきからサターニャさんにも筒抜け……?)

ラフィエル(気づ……かれて、る? いやサターニャさんは色々抜けてますし……でも逆に五感は動物並みだったりして――)モンモン

サターニャ「むー……」

ラフィエル「!!」ビクッ

サターニャ「んー……どこー……わたしのひゃくえんだまー……」ムニャ

ラフィエル「…………」

サターニャ「おかね……たりないぃ……」

ラフィエル(サターニャさんは、やっぱりサターニャさんですよね……)ハァ

サターニャ「もどして……きますぅ……」ムニャ

ラフィエル「……おやすみなさい、サターニャさん」

――

翌朝

ラフィエル「ふわぁ……なんか、身体がずっしり……」

サターニャ「やっと起きたわね」

ラフィエル「あらおはようございますサターニャさん……様」

サターニャ「…………」

ラフィエル「やだ……寝ている私の上に乗って、一体なにをなさって……?」

サターニャ「起きたらがっちりホールドされてて抜けられないのよ! 早く離せ暑苦しい!」

ラフィエル「私もサターニャ様がすっっごい重くて昨晩は寝苦しかったです」

サターニャ「失礼ね! その割にはぐっすり寝てたじゃない!」

ラフィエル「やっぱり人を布団にして寝るなんて無理もいいとこだと思うんですけど」ハァ

サターニャ「いや、言い出したのアンタでしょ」

ラフィエル「じゃあこんなのはどうでしょう」

サターニャ「ん? まだなんかあるの?」

ラフィエル「私たちが広々寝られるダブルベッドを買うんです。もちろん全額偉大なるサターニャ様持ちでっ」

サターニャ「……うん、やっぱクビ」

おわり

尊かった

乙乙

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