咲「大好きだよ、舞」(101)
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「はぁ……ひかりーたこ焼きちょうだーい」
ジャージ姿で椅子に座り大きなスポーツバッグをどさりと足元に置くと、
日向咲はそう声をかけた。
「どうしたの?なにか悩んでる?」
エプロンを身につけた長い髪の女性が、
とりあえずというようにジュースをいれて咲に近づいた。
「なんかさ……つまらないなぁって。
はぁ、絶不調なりぃ……」
大学を出てもうすぐ社会人二年目になろうとしている咲は、最近沈みがちだ。
口癖は出会った頃の中学生時と変わらずいるが、中身はだいぶ変わった。
「……舞とはまだ連絡とってないの?」
その原因の一端には、間違いなくその人物がいると、
店主である九条ひかりは確信している。
「……舞なんて、もう知らない」
「……なぎささんやほのかさんでも呼ぶ?」
二人の間に何があったのかは知らない。
友人として何かしてやりたいが何ができるのかもわからない。
だから、ひかりはこんな時なんとかしてくれそうな人たちを呼んだほうがいいのかもしれないと思った。
「いや、いい。ひかりがいたらそれでいいや」
ジュースを一口飲むと、咲はぼんやりとそういった。
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「あら、じゃあ私はお邪魔かしら?」
何時の間にか二人の背後に立っていたのか、赤い髪の鋭い感じの女性がそこには立っていた。
「あんた、いつ帰って来たの?」
「今よ、今。
空港から直行でここ寄ったのよ。どうせ咲がひかりに迷惑かけてると思ったからね」
「満、久しぶり。ヨーロッパ、どうだった?」
「赤髪の変な奴がいたわ。
それよりも、まだ舞と喧嘩してるの?もう何年よ」
満と呼ばれたその人はひかりよりも咲に遠慮がない。
「……舞が悪いんだもん」
「だもんじゃないわ。あなたはあなたがまったく悪くないって胸を張って言えるの?
言えるなら、それでもいいけれど。どうせいえっこないでしょう」
「と、とりあえず!咲はたこ焼きね!満はどうする?」
なにやらこじれそうな雰囲気を察したひかりは、話題をずらそうと注文をとった。
「私もたこ焼きがいいわ。あとあかねさんはいる?」
「ううん、今日は別行動。鎌倉まで足伸ばして見るって言ってた。何か用事?」
「んー、いや……店長が二号店を出そうかって話しててさ。その店長に私を選んでくれたのよ。その相談しようかと思ってね」
「えっ!満、パンパカパンやめちゃうの?」
パンパカパンというのは、咲の実家のパン屋さんだ。
満は高校を出ると大学には進学せずに、フランスへ修行に行った。
そして、同級生が大学を卒業するのと同時に日本へ帰国し、パンカパンへ就職したのだ。
「咲って本当にバカね。話聞いていた?
あなたのお父さんが二号店をだすって言ったのよ?
そこはパンパカパン二号店に決まってるじゃない」
「なーんだ、ならいいな。
まぁ、ひかりもタコカフェ二号店の店長さんだもんね……というか、たこ焼き屋って意外と儲かるんだねぇ」
ひかりは中学を卒業した時点で、すでに働き始めていた。
先ほど話題に上がった保護者であるあかねさんは高校行かせるくらいの蓄えはある、と言っていたが働く道を選んだ。
自分で働き、お金がたまったら、自分で大学に行くつもりらしい。
「それは……ほら、美人店長がいますから……なんて……」
「照れるなら言わなきゃいいのに。
それにしても、ひかりもやっと私たちに敬語使わなくなったわよね。
十年かかるとは思ってなかったわ」
初めて会った時は、同級生だというのに敬語を使われていた。
そのことを思い出したのか、満はクスクス笑った。
「でも未だになぎささんやほのかさんには敬語だよ?
普通先輩だからと言っても十年も付き合いあったらもっと砕けない?」
「ふたりは特別なの!あのふたりが、私を人間にしてくれた、私を成長させてくれた。
親友であり、同時に憧れの人でもあり、また恩人でもあるんだもん。
大好きだけど、咲達に接するようには出来ないよ」
「それでいいんじゃない?咲が馴れ馴れしすぎるのよ」
「えぇー?そぉかなぁ……?」
話をしていると、その二人の片割れが偶然にも現れた。
「あれ?咲と満じゃん!」
「おぉ、噂をしたらちょうどなぎささん!」
「私の噂してたの?なになに?どんな噂?」
二人の片割れこと、美墨なぎさは昔から変わらないサバサバとした無邪気さで自分の噂を聞き出そうとする。
「なぎささんはいつになったら藤村くんと結婚するんでしょうねって話。
というかあんた達手は繋いだの?キスはした?」
「なっ、バ……咲!」
「なぎささんこういうところはいつまでたっても子供だよね。
普段はかっこ良くて美しくて男前なのに、藤村くんとの進展聞くと一気に乙女になるよね。
そういうところが可愛くて好きなんだけどさ」
からかうように笑う咲と、赤くなりうつむいてしまったなぎさ。
そんな二人を見てため息をつくと、
「……付き合ってらんないわ。
咲、店長に私が帰ったこと伝えてといてくれる?
私もう帰って寝るわ、薫が待ってるし」
満は席を立った。
「明日休みなの?」
「えぇ、店長が疲れて帰ってくるだろうからって休みをくれたわ」
「ほーい、てか私ももう実家出てるんだけど……」
「最近まったく連絡してないらしいじゃない。
店にも私しかいない時間狙ってくるし。
たまには親に声くらい聞かせてやりなさいよ。
あ、ひかり私の分のたこ焼きはなぎさにあげて」
満は財布からたこ焼きの代金をとり出すとひかりに渡した。
「えっ、いいよ。自分で払う。
というか、満も食べて行こうよ」
「ううん、私がいない間咲が迷惑かけたと思うし、それにお土産買う暇なかったから」
それだけいうと、満はさっさと行ってしまった。
「……満って、咲の保護者かなんかなの?」
よくわからない理由に、なぎさは困ったように咲へと尋ねたが、
「さぁ?」
満の本意を正しく理解している咲は、そうやってごまかすことしか出来なかった。
~~~
一人の黒髪の女性がもくもくとキャンバスに向かっている。
キャンバスに描いているのは大木だ。
しかし、中央あたりになにも描かれていない空白の部分がある。
大木はもはや完成形と言ってもいいほど立派な出来栄えにもかかわらず、細かいところを何度も何度も書き直している。
空白の部分を埋めようという気は無いようだ。
「舞、あなたまたその絵を描いてるの?
そんな完成しない絵を描くくらいならあっちを仕上げてよ」
あっち、と指差したほうには、海や空といった自然をモチーフにした絵画が何点か並んでいる。
「舞」
絵を描き始めると、特にこの絵を描き始めるとこの女性は周りが見えなくなるということを思い出し、強めに再び声をかける。
「えっ?あ、薫さん……ごめん、なに?」
「その絵より、あっちの絵。
納品日一週間後よ?わかっているの?」
薫、と呼ばれた女性はスケジュール帳を見ながらそういった。
「そうね、そうするわ。
それよりも、薫さん」
舞と呼ばれた女性は筆をおくと薫のほうへと向き直った。
「あなたの作品も何点か出してみない?」
「私は趣味で描いてるだけだからいいのよ。
仕事にするならこういう風に絵をみたり売ったりするほうが向いてるの」
それよりも、と薫は軽く舞を睨みつける。
「舞は仕事で描いているんだから、趣味のほうの絵は仕事が終わってからにしなさい。
あと、今日満が帰ってくるのよ、良かったら家に来ない?ご飯食べましょうよ」
放っておくと何時間でも完成しない絵を描き続けると思った薫は、舞を夕飯へ誘った。
「一緒に作りましょう」
断ったら許さない、というように薫は舞の手を引いた。
「えっと……仕事が……」
「私がみてないといつまでも大空の樹を描き続けるでしょ。
今日は家でご飯食べて泊まって明日私の監視のもと仕事片付けてもらうわよ。
ほら、いくわよ」
絵描き道具を取り上げ、それらを手早く洗うと仕事用の服のままの舞を部屋から引き摺り出した。
「わ、ちょっと……着替えだけさせてよ」
「そんなのいらないわよ。家に舞の服も下着も数着あるし、別に歩き回るわけじゃなくて下降りて車乗るだけだもの」
はやくしないと満が帰ってきてしまう、と薫は無理矢理舞を引っ張って行った。
~~~
「あ、ねぇねぇほのか。咲と舞ってなんで喧嘩してるの?」
タコカフェで散々咲にいじられた事を親友のほのかへと話したあと、なぎさはそういえば、というように聞いた。
「さぁ、私は二人とは最近会ってないし。
それより、なぎさってばいつまでたってもここに住んでるけど藤村くん怒ったりしないわけ?」
話をごまかそうとしているのはわかりやすすぎるくらいわかった。
ほのかは頭がよく、察しがいいにもかかわらずこういうのは下手くそだ。
「別に怒らないよ。なんで省吾さんが怒るの?」
「だって、同室が私だよ?」
「だから、なんでそれで怒るのさ」
「いや、だって……私たち付き合ってたんだよ?
キスもしたし、それ以上のこともした。
同性だからって前の恋人と一緒に住んでるのは流石に嫌がるんじゃない?」
「あぁ、それなら大丈夫。
省吾さんとは別に付き合ってるわけじゃないし。
というか、私たちっていつ別れたの?」
何故かニコニコと笑いながら、なぎさはそう言った。
「……じゃあ、キスしても、いい?」
「キス?」
なんだそんなこと、というふうになぎさはほのかの唇に自身のそれを重ねた。
「ほのかの唇は……相変わらず甘くて熱いね」
「……なぎさのばか」
落ち着いたような笑顔で笑うなぎさに対してほのかは悲しそうな目をしながら頬をすこし赤らめた。
「ちなみに、ほのかには言っとくけど省吾さんには『全部の中で一番になれないのはわかってる。
だから男の中で一番俺のことを好きなら付き合ってくれ』って言われた。
でも、そんなの悪いじゃん?
だから、いつかほのかよりも省吾さんを好きになった時、返事をしますって答えといた」
「……告白されたと最高の笑顔で言ってたから……私捨てられたのかと思ってた」
「私がほのかを捨てるわけないじゃん。
なんてったって、私たちふたりはプリキュア、ブラックとホワイト、永遠のパートナー、相棒。
なにより、私はほのかよりも好きな人がいない」
もう一度、唇を重ねる。
「省吾さんのこともそりゃ確かに好きだけど、どっちか一つと言われたらほのかに決まってるじゃん」
「……じゃあ、もう藤村くんにドキドキしたりときめいたりしないでね?」
クスリと笑いながら、ほのかはなぎさの髪を撫でた。
「それは……無理!
でも、ほのかが一番好き!
ほら、チョコレートを美味しそうと思うのと、ステーキを美味しそうと思うのは違うじゃない?」
これ以上なにも言われないように、ぎゅーっと抱きしめた。
「ほのかの前だと、省吾さん関係の話されても平常心でいられるのになぁ」
ぼそりとつぶやいたなぎさに、普通逆だろ、とほのかは言いたくなった。
~~~
「ただいま……あれ?舞じゃない、どうしたの?」
タコカフェから帰宅した満は、予期せぬ客人に素直に驚いた。
「久しぶり、満さん。
薫さんに是非にと誘われたの」
「満、おかえり。荷物、持つわ」
薫は満の鞄やらコートやらを奪うように取ると、部屋の奥へと行ってしまった。
「その格好、薫が無理矢理連れて来たのね」
「まぁ、私が悪いんだけどね」
呆れたようにつぶやくと舞は薫をかばうように小さく笑った。
「……今咲に会って来たわ。退屈そうにしてた」
「そ、そう……」
舞は満と薫のこういうところが好きだった。
咲と関係がこじれているのを二人は知っている。
その上で、舞に咲の事を、咲に舞の事を、あったことならなんでも話す二人が好きだった。
「ねぇ、いい加減仲直りしたら?
私たちもう二十四よ?
大学でてもう二年経つのよ、最後に咲と会ったの、大学生の時でしょ?
二年もなにを喧嘩しているのよ」
「……正直、私にもわからないの」
こうストレートに来られてしまうと、舞も素直に口を割らざるを得ない。
「わからないの?あなたたちって、二人ともバカなんじゃない?
バカなのは咲だけだと思ってたわ。
というか、満も咲とあったなら連れて来たら良かったのに」
コートをクローゼットに掛け、鞄を部屋において来た薫は携帯電話を満に手渡しながら言った。
「そんなの、舞がくるなんて知らなかったもの。
咲と薫と私だけだったら、私が料理する羽目になるじゃない。
疲れて帰って来てるのに、そんな嫌よ」
「そう、それもそうね。
で、どこで咲と会ったの?」
満のいうことに一理ありと判断した薫はテンポ良く話を進める。
「タコカフェよあかねさんに話があって行ったの。
でも、無駄足だったわ。あかねさん、今日は鎌倉のほうへ行ったのよ」
鎌倉、と舞は聞き慣れた地名をつぶやいた。
「鎌倉か。中学生の頃によくいったわよね。
私たちの住んでた町から近かったから」
舞はそうね、と気のない返事をする。
――あの頃は良かった。あの頃は毎日が楽しくて、毎日咲が隣にいて……。
――一体どうして私たちは変わってしまったんだろう。
ふと、窓の外をみても、海も大空の樹も見えなかった。
「随分、遠くまで来てしまったわね……」
「……遠く?何を言っているのよ、全然遠くないわ。すぐそこよ」
舞の呟きに、薫が反応した。
それは、舞の心を正しく理解した上での反応だったとすぐにわかった。
だが、舞はそれに素直に頷くことが出来なかった。
ここまで
今日見つけた
SSのSSはただでさえ少ないから俺歓喜!
つづき期待して待ってるよ
もちろん、みのりちゃん(18)の出番もあるんだよな!
>>26
ありがとう!
みのりちゃんも出番もちろんあるよ!
では、はじめます
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「ねぇ、咲ってば少しおかしくなかった?」
お酒も程よく回り、四人が四人とも饒舌になって来た頃、せつなが呟いた。
「そ、そぉかなぁ……?」
黙って聞こえなかったふりでもしておけば良いものの、ラブはついつい答えてしまう。
「ラブってば嘘が下手ね。ちなみに少し前からモロバレよ」
綺麗な色のアルコールが入ったグラスを美希はカランと揺らしながら軽く笑う。
「うん、ラブちゃんは隠し事とか出来ない子だよね。
この二年数回しか会ってない私にも、何かあったんだなぁってすぐわかったもん」
ラブはキョロキョロと目を泳がせる。
「無理に聞こうとは思わないわよ。
私たちだってもう大人なんだし、こっちから強引に踏み込むのは十代の特権だしね。
でも、さ……心配にはなるわ。
あの咲と舞が長い間喧嘩してるなんてね」
せつなの言葉に、美希と祈里は同時に頷いた。
三人ともなんとなく感じとっていたのだろう。
今の咲には何かが足りないということに。
「……ごめんね。でもやっぱり私からはやっぱり言えないかな」
何かを隠しているという罪悪感からか、ラブは小さくなる。
その様子をみて、美希とせつなは笑いだした。
「バカね、いいのよ別に。
いくら私たちが友達だからと言って秘密を持ったらいけないなんてことないんだから」
「そうよ、ラブ。
私だってラブにもせつなにもブッキーにも言えないことはあるし。
むしろ、大人になったな、と褒めてやりたいくらいよ」
「うう……ありがとう。
でも、潰れそうになったらいつでも頼ってね。
美希たんのためなら仕事サボるし、せつなのためならラビリンスでもどこでもいく。
ブッキーのためなら実験台になってあげるから」
「ラブちゃん、少し飲み過ぎだよ」
テーブルに顔を伏せ、涙声になったラブの頭を祈里は軽く撫でた。
「ラブは本当にお酒弱いわよね。
初めて飲んだ時とか面白かったわ」
珍しくせつながケラケラと笑った。
「せつなは強すぎなのよ。
私も弱い方ではないけど、いくらのんでも顔色ひとつ変えないあんたは異常よ」
「でもさ、正直お酒って美味しくなくない?」
泣いているのか眠っているのかよくわからないラブをよそに、三人の会話は進む。
「私は最近やっとわかってきたわ。最初の頃は付き合いや酔う為だけに我慢して飲んでたけどさ」
「そう?その割に美希はいつも美味しい美味しい言ってなかった?」
「若気の至りってやつよ……今も若いけどね」
飲める二人は大学生の頃からよく飲んでいた。
酒の味などわからぬ時だが、店の雰囲気とある種の大人の証を楽しんでいたようだ。
しばらく「お酒」というワードから湧き出る思い出話に花を咲かせ、それが一段落すると、そういえば、とせつなが切り出した。
「ブッキーって家を継ぐんじゃないの?」
空になったグラスの氷をカラカラ言わせながら祈里の方へ視線を向ける。
「うん、そのつもりだよ?」
「え?でもこっちで就職でいいのかな?まぁ、病院決めたんでしょ?」
驚いたように、美希が聞き返す。
「うん、まだお父さん元気だし、私がいなくても病院回るだろうしね。
それに、少しは外で経験積まないとだしね」
そんな話をしていると、ラブがむくりと起きた。
「……そういえば、お母さんがたまには帰って来いって言うんだよ」
会話の流れなどお構いなしに、勝手に話し出す。
「あんた頻繁に帰ってるじゃない」
だが、三人もそれをいつもの事だと気にしない。
「違う、私にじゃなくてせつなに。
私が帰ると、せっちゃんは?ってまず聞くんだよ。
だからさ、せつな今日あっち帰らないなら実家帰ろ」
せつなは一時期桃園家に世話になっていた。
こちらの世界から、元のラビリンスへ帰った今でもラブは桃園家の一員にせつなを数えている。
ラブだけではなく、圭太郎とあゆみも十年たった今でも当たり前のようにそう思っている。
「……そうね、そうしようかしら。
私も久しぶりにお母さんとお父さんにも会いたいし」
せつなはその事を心の底から感謝していた。
ラビリンスという国は全てが総統メビウスに支配された管理国家であった。
それゆえに本当の親が誰なのかを知っている人間はいない。
いや、実感が湧かない人間が多い、と言った方が正確だろう。
全ては国のデータファイルの中にあったが、親です。子どもです。と言われても本人達に実感はないのだ。
プリキュアによってメビウスが倒された後に産まれた子ども達だけが、本当の親を実感として持っている。
だからこそ、桃園家のこの態度は震えるほどに嬉しかった。
「ラブが復活したなら咲の話に戻そっか。
それで、私たちは何もしなくていいのね?
あの二人で解決できる事なのね?」
しんみりとした空気を入れ替えようと、美希はわざとらしく真面目な声をだした。
「……うん、正直私も詳しくは話してもらえてないんだ。
だから、何もしない。
誰かが……涙を流しているのをみて何か言葉をかけてやるのは無責任なんじゃないかって、最近思うようになったんだ。
私は咲の涙の理由を知らない……何も言えないよ……」
「そう、ね……。
正直心配だったのよね。
あの二人は絆が強すぎると中学生の頃から思ってた。
何か簡単な事でお互い傷つけあって、壊れてしまうんじゃないかって……」
美希は不安そうにうつむく。
「そうね、わかる気がするわ……」
「うん、咲ちゃんも舞ちゃんも……真っ正面から「大好き!」って感じだもんね」
なんとなく二人が付き合っているというのは高校生くらいの頃からみんな知っていた。
そして、それがすんなり受け入れられるほどに、咲の隣には舞が、舞の隣には咲がいたのだ。
「無責任かもしれないけどさ……本当に壊れてしまいそうになったら……」
「大丈夫だよ」
祈里がラブの言葉を遮り、言った。
「大丈夫って、わたし信じてる」
口癖は変わらないね、と四人は笑いあった。
~~~
「舞さん?」
薫の監視のもと、展覧会に出す絵を描き始めてから数日たっていた。
あとは仕上げと手直しだけとなり、舞は薫の監視を外された。
そして、なんとなく外をふらふらと散歩していると、突然声をかけられた。
「……え、と……どちら様ですか?」
振り返ってみたが、知らない顔である。
舞は困惑しながらその女性に尋ねた。
「ひっどいなぁ……私だよ私!」
呆れるように笑いながら、
「舞お姉ちゃん!っていったら分かる?」
そう言った。
「みのりちゃん!」
『舞お姉ちゃん』という響きに、一気に記憶が繋がった。
「そうでーす!みのりです!
すっごい久しぶりじゃないですか?」
「気づかなくてごめんなさい。
そうね、最後に会ったのって……六年前?
私が大学に入ってから会ってないわよね?」
チクリと舞の心に痛みが走る。
「そうだねー。
そういえばさ、舞お姉ちゃん……」
痛みがより鮮明になった。
「ご、ごめん!みのりちゃん!
私急がなくちゃいけないから……!
じゃあまた!次あった時は何かご馳走するからその時ゆっくり話しましょう!」
みのりの言葉にかぶせるように逃げるようにそういうと、舞は走り出した。
「ま、舞お姉ちゃん!」
「さん」と「お姉ちゃん」が混ざり混ざりになるみのりを可愛いと思うのと同じくらいに、舞はみのりに対して後ろめたさを感じていた。
大学を出てから咲が実家に全く帰っていない事は、ひかりや満からそれとなく聞いていた。
その理由は間違いなく自分である。
大学に在学中も、二人とも家にはそれほど頻繁に帰っていなかった。
お互いに、世界の中にお互いしかいなかったからである。
それ程までに深く深く想いあっていた。
周りが見えなくなるほどに愛し合っていた。
中学生から高校生という多感な時期にみのりから姉という一番身近な存在を奪ってしまったということも、罪悪感としてのしかかってくる。
その重さを肩に感じながら舞は走った。
「……ごめんなさい、みのりちゃん」
気がつくと涙がこぼれていた。
自分に泣く資格などありはしないのに、とさらに自分を追い詰めながら走る。
~~~
鍵をあけ中に入ると、部屋の電気をつけてカバンを放り出す。
BGM代りにテレビをつけると、服を脱ぎ捨てベッドへ倒れこんだ。
「舞……」
一人で冷たいベッドに横たわっていると無意識に少し前まで確かにあったぬくもりを探してしまう。
我に返りそれに気づくと、拳を握り思い切りベッドをたたいた。
「もう、嫌だよ……一人は……嫌だ」
失ってしまった温かさを、思い出すように身体を丸める。
そして、思い出に浸ろうと、静かに夢の世界へと微睡んでいった。
~~~
「おーい、朝だよー!」
中学、そして高校時代とは、明らかに変わった関係に二人はなっていた。
「あと……五分だけ……」
「ダメダメ、そう言って何回学校サボったのさ!
まぁ、そっちの学部は出席とかよりも技能が重視だから良いのかもしれないけどさ……」
咲と舞は大学生になっていた。
同じ大学に進学し、当たり前のように二人一緒に住んでいる。
「私、今日学校サボる……。
課題仕上げなきゃだし」
ウトウトとしたまま、だからもう少し寝かせてくれ、と舞は言う。
「だーめっ!朝ごはん作っちゃったし、一緒に食べよ」
「……もう、咲はうるさいわね」
「そんな私と一緒に住む事を決めたのは舞でしょ。
ほら、起きた起きた」
「……わかったわ……はい、起きた」
ゆっくりと身体を起こすと、舞はそのまま傍に立つ咲の腹部に抱きつく。
「きっと、咲が悪い。
咲の抱き心地が良すぎるから眠り癖がついたんだ」
「なにをわけのわからん事を……。
手、一回離して」
言われたとおり舞が手を離すと、咲は舞を抱きかかえた。
「ほら、お姫様抱っこ!なぎささんみたいに王子様ってガラじゃないかもしれないけど……。
私と舞なら、やっぱり私が王子様だよね!」
舞はお姫様、と言いながらそのまま舞をリビングへと運んで行く。
「それにしても舞は軽いね」
ニコニコと幸せそうに、咲は笑った。
「咲が力持ちなだけよ」
まだ覚醒しきらない頭で答えると、咲は相変わらずの笑顔を浮かべる。
「ふふふ、エースで四番ですからね!」
「そうだった……咲ってば、運動選手なんだからこんな事したらダメよ!
ごめんなさい、私ったら……」
エースで四番、というのを聞くと舞は一気に目が覚めた。
「ほら、おろして!変な力の入れ方とか使い方して腕とか肩とか痛めたら大変よ!」
「きゅ、急に目覚めたね……。
別に舞くらいなら平気だけど……まぁいいか」
舞の気迫に少々たじろぎながらも椅子に座らせる。
「もう、咲はスポーツ特待生から外れたら卒業できないんだから身体大切にしなさい!」
「はい……すみません。悔しいけど返す言葉もございません」
「それに、私はソフトボールをやってる時の咲が一番好き。
だから……私のせいで怪我なんかして欲しくないし……」
元を正せば起きなかった自分が悪いのでは、と思い舞の声から威勢が失せて行く。
「うん、私も絵を描いてる時の舞が一番好きだな。
ごめんね、でも嬉しいよ。だって、それほど舞が私の事を大切に思ってくれてるって事だもんね!」
「ううん、私こそごめんなさい。明日からはちゃんと起きるわ」
目が覚めた状態では舞はパリッとしている。
寝起きの子供のような舞を知っているのは咲だけだ。
咲はそれがたまらなく嬉しかった。
「ううん、私舞を起こすのもすごく好きだからさ。今のままでいいよ!」
大学四年間の間、この穏やかな関係は続いていた。
ここまで
ではまたよろしく!
~~~
「なんか、私たちと似てますね」
ほのかさんはにっこり笑ったあと、
「あなたたちが、私に似てるんじゃない?」
そういった。
そうだ。
確かに、その通りだ。
「二人は、その……」
「いつ一線を超えたか、って話?」
私が言い難そうにしていると、ほのかさんはオブラートに包んだ表現でそう言った。
「えぇ、まぁ……」
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいんじゃない?
女同士だし、そういう話にもなるでしょ」
大人だな、と思った。
そして、私は子供だな、と実感した。
「そうねぇ……高校二年生の……冬休みだったかな?」
「怖くは……ありませんでしたか?」
「怖かったわよ。だって、そりゃあね……痛いって聞いてたし」
「そうじゃなくって……」
そういうことか、とすぐに察する。
きっと、舞さんの聞きたいのは、そういう身体的な痛みのことではないのだろう。
「あぁ、女の子同士でするのがってこと?
それは、全然よ。
ただ、少しだけ寂しくはあったかな。
私が男だったり、なぎさが男だったら本当にひとつになれるのに、とは思ったわ」
それは、私が抱いている感情と同じだった。
私は、不安要素を見つけるのがどうやらうまいらしく、咲と両想いになれた次にはその事が私の心を締め付けた。
どうやっても、私達はひとつになる事が出来ない。
私も咲も女の子なのだ。
二人の距離が限りなくゼロに近づく事はあっても、ゼロには決してならない。
「まぁ、でも……もしもなぎさが男の子だったら、私は多分なぎさを好きにならなかった。
女の子が好きとかそういう事じゃないけれど、私はなぎさが好きなのよ。
それは舞さんも同じでしょ?
なぎさがなぎさであるから私はなぎさの事をこんなにも……愛してるのよ」
ほのかさんの言いたいことはなんとなくわかった。
男だとか女だとか関係なく、私は咲が好きだった。
それは、そう思えるのは、咲が咲だからだ。
~~~
「ほのか……かわいい」
高校二年生の冬、私はなぎさと一線を超えた。
その時の、なぎさのこの言葉と表情はきっと一生忘れないだろう。
越えようと思って超えたのではない。
ただ、あの時越える時が来た。そんな風に私は思ってる。
いつも通りデートをして、私の家になぎさが寄ると、おばあちゃまが言ったのだ。
「なぎささん、急で悪いのだけれど今日は泊まっていってくれませんか?
旧い友人が入院したと、今連絡が来たんですよ」
心配そうなそれでもいつも通りの朗らかな笑顔でおばあちゃまはそう言った。
「……はい、全然、喜んで泊まりますよ」
なぎさは、一瞬おばあちゃまを心配するような顔つきになったが、すぐに明るく笑った。
「では、よろしくお願いしますね。
明日のお昼には帰ってきますよ」
「あ、おばあちゃん、傘持って行ったほうがいいですよ。
夜から明日の午前中にかけて雨降るって天気予報でしたし」
「そうですか……ありがとうございます」
なぎさが傘を手渡すと、おばあちゃまは嬉しそうに笑った。
「……二人切りね」
おばあちゃまを見送ったあと、なんとなく私は呟いた。
「そ、そう……だね」
二人きりになることなんて珍しくもないのに、何故だか私達はぎこちなく笑う事しか出来なかった。
「と、とりあえず……ご飯作ろっか!」
なぎさはわざとらしく笑いながら、台所へ向かっていく。
「ご飯作ろう、というよりも……作って、でしょ?」
「……えへ?」
なぎさは未だに料理が出来ない。
「もーう、中学生の時にも言ったでしょ?
自分のご飯くらい、自分で用意できるようにならないと困るわよって」
「え?困らないよ、私にはずっとほのかがいるもん。
まぁ、でもほのかばかりにやらせるのも悪いから……教えてよ!」
当たり前のようにそういうなぎさに、私は頬が熱くなるのを感じた。
なぎさから視線を外すと、わざとらしくため息をつき、
「なぎさったらぁ……調子いいんだから」
そう言うことしか出来なくなる。
狙って言っているのならば、なぎさにも照れが出るから私は逆に冷静になれる。
だけど、なぎさは素でそういう殺し文句を言ってくる。
「まぁ、いいか。
さて、作りましょ!」
それは、自然と口に出る、それほどまでに、私と人生を共に歩むことを当たり前だと思ってくれる証拠だ。
高校生が人生を語るなど、今思えば気恥ずかしいが、その時は精一杯、そして全力でその時を生きている。
全力で人生を考えられる出会いをしたことを私は誇りに思った。
~~~
「……なぎささんって」
舞さんが言い難そうに、呟いた。
「うん、未だにまともなモノ作れないわよ」
結局、大学に入ってからは同棲していたし、
なぎさが今日のように遠征などで家を空けることはあっても私が家を空けることはほぼない。
つまり、料理を覚えなくとも、生きてこれたのだ。
「なんというか、ほのかさんの絶大な愛を感じます」
愛、などとなんとなく恥ずかしい単語をさらっと言うあたり、舞さんも酔っているのだろう。
さりげなく、舞さんの前に出ていたお酒を自分の方に持ってくる。
私は、まだ余裕だ。
酔ってはいるが、酔っている自覚もある。
「まぁ、でもかわいいのよ。
たまに私が実験とかで夜中に帰るじゃない?
そうすると、料理らしきものをなぎさは作っててくれるの」
「らしき?」
「えぇ、カレーらしきものとか、肉じゃがらしきものとか……。
これが、見た目は悪いけど、食べられない味じゃないのよ。
で、得意気な顔でそれを出してくるなぎさがかわいいの」
見た目はアレだけど、味は割と普通だから!
なぎさはそういいながら疲れて帰宅した私を癒してくれる。
なぎさも、練習で疲れているだろうに、出来ないなりにこうして頑張ってくれるのが、私は嬉しかった。
「なんか、なぎささんってかっこいいくせにかわいいからずるいですよね。
咲も同じタイプだけど……」
「あぁ、わかるわ。
あの二人は……ずるいわよね」
なぎさも咲さんも、この関係の終わりを不安に思うことがない。
いつだって不安になっているのは、私と舞さんの方だけのような気がしてならないのだ。
舞さんはきっとそういうところを含めてずるいといったのだとなんとなく思った。
私が、実際はそんなこと無いと気づけたのは最近なので、舞さんももう少しで気づけるだろう。
だから、あえて教えてやらない。
そういうことを悩んだり、ジタバタするのも恋愛の醍醐味だ。
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結局ほぼ私が一人で晩御飯の支度を済ませると、なぎさは美味しい美味しい言いながらパクパクとお皿を空にして行った。
料理中は、いきなり後ろからふわりと抱きついてきたりと料理の勉強と称しながら、ベタベタしてきた。
悪い気はしないが……いや、むしろ嬉しいのだが、なんというか……という感じである。
「さーて、洗い物は私に任せて!
ほのかはのんびりテレビでも見てなよ!」
サクサクと食器を台所へと運ぶと、鼻歌交じりにそれらを洗っていく。
まるで子供だ。
そんななぎさに微笑みをこぼしながら、ふと視線を外に向けると、雨が振り出していた。
雨の時は思い出す。
初めてなぎさと口づけを交わした時のことを……。
雨音に耳を傾けていると、思ったよりも時間が経っていたらしい。
なぎさは洗い物を終えたのか、台所から消えていた。
「あれ?……なぎさー?」
どこへ消えたのかと声をかけてみると、
「なにー?今お風呂掃除してるからあとでいいー?」
そんな返事が返ってきた。
「意外と、働き者よね」
洗い物を終え、なぎさと一息ついたらやろうとおもっていたが、ありがたいことだ。
もしかしたら、料理が出来ないのを割と気にしているのかと思ったが、あとで聞くとそんなことは無いらしい。
なぎさ曰く「お風呂掃除ってなんとなく好きなのよ。お水でジャーって湯船流すのとかなんか好きなのよ」ということらしい。
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お風呂がたまるのを待つ間、テレビをBGMにゆったりと二人で過ごした。
「……そろそろかな?見てくるね」
数十分経った頃、なぎさはそういうと風呂場へ向かった。
我が家のお風呂は全自動ではないので、放っておくと湯が溢れる。
「ちょうどいい感じだったよー!ほのか先に入りなよ」
片腕の袖をまくったなぎさが笑顔でそう言った。
「ううん、一応お客さんだしなぎさが先はいって」
「えー?そっちこそ、家主なんだから先に入りなよ!」
二人とも考えているのは同じことだったのだろう。
普段ならば、すぐにどちらが先にはいるかなど決まるのに、中々決まらなかった。
お互いに、待っていたのだ。
「じゃ、じゃあさ……」
そして、ついになぎさが顔を赤らめながら、その“お互いに待っていた言葉”を口に出した。
「い、一緒に……はいる?」
今までもお風呂に一緒にはいることはあった。
しかし、関係が変わってからはこれが初だ。
「……う、うん……」
きっと、控えめに頷いた私の顔も真っ赤だったろう。
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「なんか、意外です。
私達、お風呂は結構一緒にはいることありますよ」
「んー、多分私もなぎさもわかってたんじゃないかな?
お風呂で、お互い裸で……その時にキスをしたら……止まらなくなるって」
直になぎさの体温を自分の全身で感じたら、止まることなど不可能だと、それはきっと本能的な理解に近かった。
服越しならば理性がしっかりと仕事をするが、その数センチの布切れが無くなったら、理性も消える。
そのことがお互いわかっていたのだろう。
「やっぱり、なぎささんとほのかさんって……いや、ほのかさんはそのままですが」
舞さんは私が自分の側に寄せた酒の代わりに置いた水を一口飲んだ。
「なぎささんも大人ですよね」
そして、ふてくされたようにそう続けると、机に額をつける。
「大人、なのかな?」
むしろ、非常に動物的な気もする。
「そうですよ。
私達なんて……未だにキス止りですし」
これには素直に驚いた。
「えぇ?ああ……なんというか……清いのね?」
「なんですか、それ。
なんどかそういう雰囲気にはなりましたよ?
でも、なんか……ね?」
舞さんはため息をつくと、テーブルから額を離し、ごろりと仰向きに寝転がった。
~~~
汗を流す。
勝った後のシャワーは爽快感が増すはずなのに、私の心はそれとは逆の感情に支配されている。
――やっぱり、ダメだ。どんなにいいピッチングをしても、それを舞が見てくれていないなんて……ダメだ。
胸の前で、ぎゅっと手を握る。
――私の一番のファンは、舞だ。
それは、自信を持って言える。舞の絵の一番のファンも私だ。
だからこそ、とぬるめの水滴を顔面に浴びながら思う。
――私だけがさせることの出来る笑顔。
舞の絵を見たときや、舞がキャンバスに向かう姿を見た時に自然とこぼれる笑顔。
自分のその顔は見る事が出来ないが、自分が最高のピッチングをした時の舞の笑顔と同じような顔だろうと私は思った。
その笑顔は、他の誰でもなく、お互いにしか引き出せないものだとなんとなくわかった。
だが、今更どうしたらいいのだろうか。
「わっかんないや……どうしよう、舞……」
つぶやくと、能天気な声が私の名前を呼んだ。
「おーい!さーきちゃーん?」
「……のぞみぃ?」
「あ、いたいた!ひっさしぶりだね!」
顔だけを出すと、そこには満面の笑みののぞみと、困惑顔のうららが立っていた。
「咲さん、すみません!のぞみさんったら聞かなくて……」
どうして二人がここにいるのか、そんな当たり前の疑問すら思い浮かばず、頭に浮かぶのは、ただただはてなマークだけだった。
ここまで
次もまたよろしく!
死と関係なくても「必[ピーーー]」とかでもフィルターかかるでしょ?
ただの保険だよ、そこ突っ込まれるとは思わなかったよwwww
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