城ヶ崎美嘉「last resort」 (33)







『衝撃!ギャルはやっぱりギャルだった!?担当プロデューサーと熱愛!!』
『妹・城ヶ崎莉嘉は記者にあわや殴り掛かる一面も』
『本人は音沙汰なし 芸能界引退か?』




—バサッ


ソファーに向かって今日発刊の週刊誌を投げつける

どの紙面もこの話題で持ちきりだ



くそったれ
これまでいい顔してたくせに急に手のひら反しやがって

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1363793285






—プルルル



ちひろ「はいこちらシンデレラプロダクションです」

ちひろ「はい…城ヶ崎美嘉の件ですか…」

ちひろ「こちらとしても何分…いえ!決してそういった訳では…」





ちひろさんがひっきりなしにかかってくる電話の対応に追われている

社長も同じように電話の先の見えない相手に向かってひたすらに頭を下げている







俺はというと…ただただその光景を眺めているだけだった


いや、正しくは「見ていることしかさせて貰えなかった」





悪いのは俺だけなのに


美嘉は何一つ悪いことはしちゃいないのに



今すぐ電話をぶん取ってそう叫んでやりたかったのに


それが許される事は無かった









20XX/ 〇/× 15:02
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To美嘉
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Sub無題
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今日の17:30に
いつも通り





     -----END-----
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—ふぅ…やっちまった





文面だけ見ればいつもと変わらないただのメールだが、この状況では自殺行為もいい所だ


自分でもとんでもない馬鹿げたことをしていると思ったけれど—美嘉にはちゃんとこの口で伝えないといけない

それだけは、俺がしなくちゃいけない






美嘉「えへへ★先に来ちゃった」




足をブラブラと揺らし美嘉は笑いながらそこに座っていた




美嘉の実家にほど近いこの公園まで車で送り、そこから一緒に帰るのが二人の約束だ




変装もしないでこんな所にいるなんて、見つかったら…と言いかけたけれど

これまで待っていたのに何もなかったということは

そういうことなんだろうな、と悟った





全く、うちのプロダクションの人間は本当に抜け目がない









—…その様子じゃ随分待ってたんじゃないか?



美嘉「そんなことないよー★」

美嘉「約束するといつもプロデューサーはアタシより早いしさ!」

美嘉「そういえば、アタシの方が早かったのって初めてじゃない?やった!」



美嘉はいつもにも増してよく喋り、よく笑う
無理してるのがバレバレだぞ?







美嘉「そう言えば今日莉嘉ったらねー」


俺が喋ろうとすると、何度も美嘉はそれを遮って話し出す

分かっているさ。俺だってお前とこうしてたいさ

けどな











—美嘉。もう、お前とは…逢えない






美嘉「…………」

美嘉「…そっか」





えへへ、と美嘉はいつものように微笑むけれど

仕草はぎこちなくて、口元とは対照的に目元は悲しさでいっぱいだった







美嘉「…歩こっか!」




よしっ、と一言

座っていたベンチから勢いよく立ち上がる




美嘉「いつも通り帰りはしっかり送って貰わないとね★」




顔をこちら側から背け、ぐいぐいと俺の手を引っ張って歩き出す

公園に屯う恋人たちを避けて




日は静かに傾き、二人の影は茜色に染まった公園から去ってゆく










〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


—アイドルと恋愛するのはご法度だ。分かるだろ?美嘉



美嘉「分かってるよ!!そんなの…分かってるよ…」



—それに、俺は…



美嘉「アタシの一方的な気持ちで、一生片思いでもいいからっ…!それでいいからっ…!!」

美嘉「お願いだよぉっ…好きなんだよぉっ…」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜












俺の袖を必死で掴み、メイクが落ちるのも厭わないで泣き腫らしていた

あの顔をまだ覚えている


そうして美嘉と「プロデューサー」じゃない俺との日々は始まった








一緒に遊園地へ行ったり、

イギリスに行った時には二人の都合を合わせてロンドンの街へ出たりした

休日にはドライブに行ったり、服をみたりして過ごした




二人でいる時間は心地よく、気を許すとその魅力に引き込まれそうになった








美嘉の気持ちを受け取って自分も好きになってやれればとどれだけ思った事か



けれど—

こんな関係になっておいてこんなことを言うのも俺のエゴなんだろうが—


彼女の夢をここで消し去ることはしたくなかった






結局—

自分の事を思ってくれる彼女の優しさに付け込んで俺は甘えていただけだったのだ

美嘉が傷付く結果になるのは分かっていただろうに






「オンリーワンよりナンバーワンになりたい!」






…俺は、やっぱりこれ以上傍にいてはいけないんだ


そう思うと、握っていた手がするりと美嘉の手から離れていった











美嘉「……………」



美嘉「アタシもさ、最初からいつかこうなっちゃうんだろうなーって解ってたから」


美嘉「プロデューサーは全然気にすること無いよ★」



俯いた美嘉の口からはそんな言葉が零れた






美嘉「実際ラッキーだったよ!好きになった人と一緒にいられたってだけで幸せ者だよねアタシ★」





顔を上げた美嘉は俺の前に回り込み顔を覗き込む



こんな時まではしゃいでみせるのは

やはり俺の事を気遣ってのことだろう









美嘉「ね。最後でいいからさ、ギュって、してくれないかな?」




そっと、美嘉の細い体を抱く




美嘉「ねぇ…」

美嘉「『プロデューサー』でも…いられなくなっちゃうんだよね?」







—…ああ



美嘉「そっか…」



そう言うと美嘉はぐっと俺の胸に顔を押し付ける

肩は震え、シャツの下には湿った感覚が伝わってくる

…もう、戻れないんだな。俺たち











美嘉「もう、分かれ道かぁ」


二人で一緒に帰るのはいつもこの分かれ道の手前までだ



—…ゴメン、な。美嘉。全部俺のせいだ



気のきいた言葉の一つでも出ればいいものを、終わりの一言はこんなにも最低なものだった







美嘉「ううん。自分だけが悪いなんて言わないで。そんなこと、ないよ」








美嘉「じゃあ…さようなら」










美嘉「  さん……大好きだよっ…!」





そう言うと

美嘉はこちらを振り返らず走って行った







今なら—呼び止めれば戻って来てくれるだろう

まだ—間に合う気はする






けれど、彼女の未来をこれ以上俺なんかが奪ってはいけない








奪ってしまった分を全て返すことは出来ないだろうけれど



何をしてでも—お前だけは幸せにしてみせる

例えこの身がどうなったとしても








—俺も、お前の事を愛してるよ。美嘉




遠ざかる一人になった影に向かって
そう、呟いた





Fin

おわり?



http://www.youtube.com/watch?v=P2RsPvwrybA


>>26
一応終わりのつもり
短くて済まんな
どうも地の文は慣れん

http://i.imgur.com/07lw6z3.jpg
http://i.imgur.com/sSXM1bt.jpg
城ヶ崎美嘉(17)

http://i.imgur.com/myaH2fo.jpg
http://i.imgur.com/ss8Z9Ek.jpg
城ヶ崎莉嘉(12)


まぁ慣れも何もこれSS処女作なんだがな
処女ヶ崎にバージンあげたかったのだ

タイトルはT.M.Revolutionの名曲lastresortから


お姉ちゃんは綺麗な恋愛しそうだから
曲聴いてて思いつきで書いちまった


>>29
画像さんくす


ごめんねお姉ちゃぁぁぁぁぁぁぁん
今度こそ君だけは、幸せにしてみせるよ

美嘉ちゃんと西川兄貴の魅力が伝われば

こんな時間でも見てくれた人さんくす

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