オオカミ「あれが噂の赤ずきんちゃんか……グフフフフ……」 (74)

森の中

クマ「なぁ、知ってるかぁ? 森の外れに住んでいる赤ずきんちゃんって人間の女の子」

オオカミ「知らないな」

クマ「すげー萌えるらしいぜ?」

オオカミ「おっと。オレは隣の森に住むウルフちゃん一筋だから。ウルフちゃんはオレの嫁だ」

クマ「あの子、まだ生後10ヶ月だろ。ロリコンかよ」

オオカミ「丁度油がのってんだよ、ハゲ」

クマ「ハゲじゃねーよ。むしろ毛むくじゃらだっつーの」

オオカミ「胸のところ月の形にハゲてんじゃねーかよ」

クマ「これは模様だっつーの。オシャレだろバカ」

オオカミ「バカってなんだ、この野郎。あぁ? その月マークを満月に変えてやろうかぁ?」

クマ「やるか? お? オレ、マジつえーけど、いいのか?」

オオカミ「いってー……。奥歯何本がイッたな……。本気で殴るなよなぁ……」

「お母さん、行って来ます」

オオカミ「……ん?」

母「道草しないでいくのよー」

赤ずきん「はーい」

オオカミ(赤いずきん……。あれがクマやろうが言ってた赤ずきんちゃんか……なるほど……)

赤ずきん「らんららーん」

オオカミ「……」

赤ずきん「あ、小鳥さん。こんにちはー」

小鳥「おう! 今日もかわいいね!!」

赤ずきん「ありがとうございます」

小鳥「で、今日のパンツは何色だい?」

赤ずきん「しましまですっ」

オオカミ(確かに可愛いな……。ちょっとつけて見るか……)

赤ずきん「あ、綺麗な花……」

ゴンッ

赤ずきん「いたっ!? ごめんなさい!!」

赤ずきん「あ。木だった」

オオカミ(あんなのもう居ないと思ってたけど、居るところにはいるんだなぁ)

赤ずきん「いたい……」

赤ずきん「いたいのいたいのとんでけー」

赤ずきん「よしっ。もう大丈夫っ」

オオカミ(誰もみてねえのに一人でやってるよ……おいおい……)

赤ずきん「……はぁ、おでこ痛いなぁ」

オオカミ(よし。決めた。ちょっとテストしてやるか……)テテテッ

赤ずきん「……あら?」

オオカミ「うぅぅー……だれかぁー……たすけてくれぇー……はらがへって、うごけねえぇ……」

赤ずきん「たいへんっ!! 大丈夫ですか!?」

オオカミ「おぉ……君は……」

赤ずきん「初めまして!」

オオカミ「どうも。それよりも……なにか……なにか食い物をぉ……」

赤ずきん「食べ物ですか? えーと……一応パンが……」

オオカミ「それをオレに恵んでくれぇ……」

赤ずきん「でも、あの、これは病気のお祖母さんにあげる分で……だから……」

オオカミ「あ、そうなの? じゃあ、いいや」

赤ずきん「ええ!? でも、お腹すいてるんですよね!?」

オオカミ「いや、次の人に恵んでもらうから、早くばあちゃんのところにいけ」

赤ずきん「あぁ……だけど……」

オオカミ「んだよ。もういいって。わかったから」

赤ずきん「あの!! 家がすぐそこなんでちょっと待っていてください!!!」

オオカミ「あ、おい!!」

赤ずきん「五分で戻ってきますから!!」

オオカミ「……」

赤ずきん「はぁ……はぁ……!!」

小鳥「お!? 赤ずきんちゃん!! さっきもこことおってなかったっけ?」

赤ずきん「はい! ちょっと家に戻ってました!!」

小鳥「あ、そうなの。で、ブラジャーはしてんの?」

赤ずきん「まだです! それでは!!」

小鳥「はぁー。将来が不安だぜぇー」

赤ずきん「オオカミさーん!! お待たせしましたぁー!!」

オオカミ「よぉ」

赤ずきん「これ、家に残っていたケーキです!! 食べてください!!」

オオカミ「……いいのか?」

赤ずきん「はい。今はそれだけで我慢できますか?」

オオカミ「ああ。十分だ。生き返った気分だぜ」

赤ずきん「よかったぁ。できれば今日中に食べてくださいね。昨日つくったものなので」

オオカミ「おう」

赤ずきん「それではっ」

森の中

オオカミ「……」

クマ「おーい。ウルフちゃんが遊びにきてるぞー」

オオカミ「あぁ?」

ウルフ「おにいちゃん、わたしとあそうぼうにゃんっ」

クマ「うはははー!! もえー!!」

オオカミ「……」

クマ「おいどうした? 何か元気ないな。お前の大好きなウルフちゃんがきてるっていうのに」

オオカミ「赤ずきんちゃんのことを考えていたんだよ」

クマ「赤ずきんちゃん? あの子にあったのか?」

オオカミ「おう。かわいいねぇ。たまんねえ」

クマ「はっはっはっは。だろう? 萌えるだろ?」

オオカミ「あんなにいい子だったとはなぁ……。ファンになりそうだ……」

ウルフ「おにいちゃん、あーそーぼー」

オオカミ「……そうだな。ウルフちゃん、あそぶかぁー!!! でひゃひゃひゃひゃ!!!」

翌日

母「庭の草むしりをおねがいねー」

赤ずきん「はぁーい」

赤ずきん「よいしょっ……よいしょ……」

オオカミ「――グッモーニンッ。マドモアゼル」

赤ずきん「あ、貴方は……」

オオカミ「何をしているのかな? ああ、いや、当ててみせよう……。草むしりだ」

赤ずきん「すごーい、正解です」

オオカミ「ふっ」

赤ずきん「よいしょ……よいしょ……」

オオカミ「……」

赤ずきん「あの、何か?」

オオカミ「君の考えていることを当ててみせよう。このオオカミさん、かっこいいなぁ。だ」

赤ずきん「……せ、正解です」

オオカミ「ふっ。どうだ? すごいだろ? というわけで、オレを少しお喋りしないか? 昨日の礼もしないしな」

赤ずきん「ごめんなさい。今はお母さんに草むしりを頼まれているので……」

オオカミ「おー、そうか。なら、オレも手伝おう」

赤ずきん「どうしてですか?」

オオカミ「昨日の礼がしたいんだよ」

赤ずきん「……」

オオカミ「決して下心はない」

赤ずきん「わかりました。お願いします」

オオカミ「おやすいごようだぁー。でひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

赤ずきん「オオカミさんはそっちをお願いします」

オオカミ「おう」

赤ずきん「よいしょ……よいしょ……」

オオカミ「赤ずきんちゃんって呼んでもいいか?」

赤ずきん「はいっ。みんなそう呼びますから」

オオカミ「そうか。赤ずきんちゃん、今、好きな人とかいるの?」

赤ずきん「えーと……。お母さんとお祖母さんが好きです。それがなにか?」

オオカミ「ヒュー」

赤ずきん「え? な、なんでしょうか?」

オオカミ「つまり、好きな異性やオスはいないってことか」

赤ずきん「は、はい」

オオカミ「なるほど……グフフフフ……」

赤ずきん「あ、そうだ。ケーキはどうでしたか?」

オオカミ「ああ。上手かったぜ。とくに苺がな」

赤ずきん「ケーキの部分は……?」

オオカミ「生クリームも美味かったぁ」

赤ずきん「……」

オオカミ「さ、草むしり終わらせようぜ!! このあとはオレとランデブーだろ?」

赤ずきん「らんでぶー?」

オオカミ「遊びにいこうってことだよ。いい樹液が出るとことかオレ、知ってるし」

赤ずきん「ごめんなさい。このあとはお母さんのお手伝いをしないといけないから」

オオカミ「な……。そうか。それは仕方ないな」

赤ずきん「今日はありがとうございました」

オオカミ「なぁに。借りを返しただけだ。気にすんな」

赤ずきん「そうだ。ちょっと待っててください」

オオカミ「え? ああ、おい。礼をしに来たのに、礼なんていらねえぞ」

オオカミ「いっちまった……」

オオカミ(何くれんだろうな。私をプレゼントはまだ早いし……)

赤ずきん「――お待たせしました。はい、どうぞ」

オオカミ「お? クッキーか?」

赤ずきん「はい」

オオカミ「どれどれ……」ボリボリ

赤ずきん「どうですか?」

オオカミ「んん!! 塩味のクッキーか!! こりゃあ新感覚だぜぇ!!! でひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

赤ずきん「……あ、ごめんなさい」

オオカミ「それじゃあな!!」

赤ずきん「あ、ありがとうございました!!」

森の中

オオカミ「……決めたぜ」

クマ「何をだ?」

オオカミ「オレ、赤ずきんちゃんをモノにする」

クマ「なんだと? お前、幼狼だけじゃなく、ついには人間の幼女にまで……!!」

オオカミ「ありゃあ、最高にいい子だ。あんな子は獣界には存在してねえわ」

クマ「見境なしだな、このロリコン」

オオカミ「はっ。お前には良さがわからんだけだろ」

クマ「なにをぉ!!」

オオカミ「じっくりと時間をかけて落としてやるぜ……くくく……」

クマ「好きにしろ。猟師かなにかに撃たれちまえばいいだよ」

オオカミ「でひゃひゃひゃひゃ!! 森のクマさんよぉ。この前も森で出会った可愛い女の子にすぐ逃げられたんだってなぁ!!」

クマ「黙れこらぁ!!」

オオカミ「その見てくれじゃあ、女も寄り付かないわな」

クマ「くぅぅ……まぁ!!」

翌日

赤ずきん「いってきまーす」

母「きをつけるのよー」

赤ずきん「はーい」

赤ずきん(えーと……砂糖と……葡萄と……)

オオカミ「YO!」

赤ずきん「あ、オオカミさん。こんにちは」

オオカミ「どこにくんだYO」

赤ずきん「町までお買い物です」

オオカミ「奇遇だな。オレも丁度、赤ずきんちゃんと町まで買い物に行こうと思ってたんだ」

赤ずきん「そうなんですか?」

オオカミ「一緒に行くか」

赤ずきん「はい。よろこんで」

オオカミ「グフフフ……」

赤ずきん「ふんふふーん」

赤ずきん「今日はいい天気ですね」

オオカミ「オレもそう思ってた」

赤ずきん「そうですか。ふふ、なんだが気が合いますね」

オオカミ「そうだな。そうだな」

オオカミ(おーし。ポイントアップだ。シャァー)

赤ずきん「オオカミさんはいつもなにしてるんですか?」

オオカミ「ん? そうだなぁー。まぁ、大体は木の陰からバードウォッチかな」

赤ずきん「それって鳥を観察するやつですよね。すごいですぅ」

オオカミ「でひゃっひゃっひゃ。まぁ、オレってほら、森のインテリアって呼ばれるし」

赤ずきん「インテリア?」

オオカミ「頭がいいってことだよぉ」

赤ずきん「ああ、なるほどっ」

オオカミ(またまたポイントアップだぁ。こりゃラクショーだな。赤ずきんがいい子すぎて)

赤ずきん「あ。あのお店です。行きましょう」

オオカミ「オッケー」

お店

赤ずきん「えーと……お砂糖と……小麦粉と……葡萄をくーださい」

オオカミ「グフフフ。くーださい」

店員「は、はい。少々お待ちください」

赤ずきん「はいっ」

オオカミ「荷物はオレがもってあげるよぉ」

赤ずきん「え? そんな悪いですし」

オオカミ「遠慮するな。オレと君の仲だろ?」

赤ずきん「それじゃあ、お願いできますか?」

オオカミ「んー。いい匂い。勿論だ」

赤ずきん「ありがとうございます」


店員「店長。あれです」

店長「うーん」

店員「確実に親子じゃないですし、オオカミの目つきがどうにもいやらしくて……」

店長「猟師組合に通報するか」

店員「すいません。少し時間がかかりますので、もう少し待っていただけますか?」

赤ずきん「はい」

オオカミ「はやくしろよ!! 赤ずきんちゃんの棒が足になったらどうすんだはぁん!?」

店員「でしたら、そちらの椅子に座っていただいても」

赤ずきん「座りましょうか?」

オオカミ「まて。オレの嗅覚を舐めるなよ」

赤ずきん「え?」

オオカミ「くせえ……。おらぁ、てめえ」

店員「な、なんですか?」

オオカミ「赤ずきんちゃんを椅子に座らせて、あとでその椅子を舐めまわす気だろぉ!?」

店員「な、何をいっているんだ!! あんた!!」

オオカミ「オレにはわかるんだよ。赤ずきんちゃん、その椅子に座るのは危険だ。オレに座るが良い!!!」

赤ずきん「で、でも……オオカミさんに座るなんて……」

オオカミ「跨ってもいいぞぉ!! でひゃっひゃっひゃっひゃ!!!」

赤ずきん「あ、えっと、立ってますね。私なら大丈夫ですから」

オオカミ「そうかい? 赤ずきんちゃんの優しさは海のごとくだな。深海魚にゃあ眩しすぎるぜ。なんてな」

赤ずきん「は、はぁ?」

オオカミ(オレの捨て身の優しさと、カッコいいセリフで言葉を失ってやがる……。くくく。これはもうお持ち帰りできるな)

赤ずきん(言ってることが難しくてよくわかんないや)

「失礼する」

店長「どうぞ、こちらです」

赤ずきん「あら?」

オオカミ「あぁん?」

猟師「お前か。女の子をいやらしい目で見ているというオオカミは」

オオカミ「だれだてめぇ?」

猟師「……手を上げろ。下衆め」チャカ

オオカミ「Oh」

赤ずきん「あ、あの……え……?」オロオロ

オオカミ「ヘイヘイ。こんなハトも笑顔で飛び回る昼下がりにショットガンはねえだろ。話せばわかる。オレたちはほら、宇宙船地球号の乗組員だろ?」

猟師「一緒にこい」

赤ずきん「あの、どういうことですか?」

猟師「このオオカミは君を食おうとしている」

赤ずきん「えぇ……!?」

オオカミ「それは心外だなぜ、とっつぁん。天使に手を出すほどオレは落ちぶれてねえかんよ」

猟師「……」

オオカミ「段階を経てからだ。無理やりなんてナンセンスだろ?」

猟師「いいから来い」

赤ずきん「あの!! オオカミさんは何もしてませんよ!? ただ荷物を持ってくれるって……!!」

オオカミ「ほら、赤ずきんちゃんもこういってる。もういいじゃねえか、アニキ。スマイル、スマイル」

猟師「……」チャカ

オオカミ「……赤ずきんちゃん?」

赤ずきん「は、はい」

オオカミ「シーユーアゲイン!!」ダダダッ

赤ずきん「あ!! オオカミさーん!!」

猟師「まて!!!」

森の中

少女「きゃぁぁぁぁ!!!! クマぁぁぁぁぁ!!!!!」

クマ「まって!!! まってよぉ!!! いっしょに蜂蜜なめよー!!!!」

少女「いやぁぁぁぁ!!!!!」ダダダダッ

クマ「……」

オオカミ「あー。ひでぇ目にあったぜ。あのクソ猟師。今度あったらスネに齧りついて泣かせてやる」

クマ「よぉ。今日は夜まで帰ってこないんじゃなかったのか?」

オオカミ「てめえも絹を裂くような悲鳴が聞こえたけど、ありゃなんの祭りだ?」

クマ「最近の女の子はクマってだけで逃げ出しやがる。もう人間はやめだ。これからシャケにする」

オオカミ「おお、妊婦狙いか。マニアックだなぁ、相変わらずよ」

クマ「お前はどうしたんだ? 赤ずきんちゃんとデートするって意気込んでたのに」

オオカミ「ジャマが入ったんだよ。ま、次はオレのフットワークを活かして背後に回りこんでやるから大丈夫だけどな」

クマ「ふぅん」

オオカミ「信じてねえな?」

クマ「お前はいつも口だけだからな」

翌日

赤ずきん「いってきまーす」

母「気をつけるのよ」

赤ずきん「はぁーい」

オオカミ「おぉ。偶然だね。こんなところで会うなんて。やっぱりオレたちは運命の赤い糸で……」

赤ずきん「……」

オオカミ「もしもし?」

赤ずきん「……」

オオカミ「無視しないでよぉ」

赤ずきん「……ごめんなさい。もうオオカミさんとは喋っちゃだめだって」

オオカミ「な、なにぃ?!」

赤ずきん「ごめんなさい!!」テテテッ

オオカミ「くそ……!!」

オオカミ「これだから人間は汚いんだよぉ……!! 純粋な女の子を上から押さえつけような真似しやがってぇぇ!!!」

森の中

クマ「そりゃ、ダメだな。もう諦めろ」

オオカミ「遠くから見てるだけなんてオレはごめんだぜ」

クマ「しかし、周囲の大人からの言いつけは絶対に守るだろ。赤ずきんちゃんはいい子だからな」

オオカミ「……」

クマ「ウルフちゃんでいいじゃんか」

オオカミ「うっせえ。いまはいいけど、狼のメスなんて劣化がはええんだよ。あんなの3歳ぐらいでババアだろ!!」

クマ「お前……」

オオカミ「それに比べ人間はいいぜぇ。12年は可愛い」

クマ「……もう知らん。勝手にしろ。どう足掻いても赤ずきんちゃんはもうお前とデートしたりはしねえよ」

オオカミ「大人はきたねえなぁ」

クマ「お前もな」

オオカミ「……待てよ。大人の言うことなら聞くんだよなぁ?」

クマ「だろうな」

オオカミ「グフフフ……オレってやっぱり、天才だな……」

民家

オオカミ「確か、ここだな」

オオカミ「ごめんくださーい」

「はーい。どちらさま?」

オオカミ「赤ずきんのボーイフレンドのオオカミですぅ。ちょっとした国税調査できましたぁ」

「あらあら。今、あけますね」ガチャ

オオカミ「グフフフ。どうも、奥さん」

おばあさん「ゴホっ……ゴホッ……。どうも、中へどうぞ」

オオカミ「失礼しますね。いやぁ、最近はこうして連絡無しで訪問するのが主流なんですよ」

おばあさん「そうですかそうですか。それは大変ですねぇ」

オオカミ「いやー。それにしてもいいお家だぁ。気品に満ちている」

おばあさん「そんなことありませんよ」

オオカミ「いやいや。まぁ、貴方ほどではありませんがね」

おばあさん「やだわ。年寄りをからかわないでください」

オオカミ「でひゃっひゃっひゃ!! 年寄りって、まだ40代ぐらいでしょう? 奥さん?」

おばあさん「今、お茶でもいれますね」

オオカミ「おかまいなくぅ」

おばあさん「ゴホっ……ゴホッ……」

オオカミ「奥さん。赤ずきんちゃんはよくここにくるんですかい?」

おばあさん「ええ。週に3回は来てくれますよ。あの子は本当にいい子なんで」

オオカミ「良く知ってます」

おばあさん「あの子のお知り合いですか?」

オオカミ「ボーイフレンドだっていったじゃないですか、奥さん」

おばあさん「ああ、ああ。そうでしたね。もう最近はすぐに忘れてしまって」

オオカミ「そりゃあ、大変だ。はっはっは」

おばあさん「うふふ」

オオカミ「で、奥さん。今日、ここに来たのはですね。その赤ずきんちゃんのことなんですよ」

おばあさん「あの子が何か?」

オオカミ「実は……。ああ、その前に肩でも揉んであげましょう」

おばあさん「そんなこと結構ですよ」

オオカミ「いやー。実は私、肩もみ三級の腕前なんですよ」モミモミ

おばあさん「それはすごいんですか?」

オオカミ「10級から始まって3級ですからね。すごいわけですよ」

おばあさん「それはすごいわねぇ……あぁ、きもちいい……ゴホッ……」

オオカミ「奥ちゃん。本題なんですがね」

おばあさん「はい、なんでしょう?」

オオカミ「最近、オレのことを無視するんですよ」

おばあさん「えぇ? そんなことは……」

オオカミ「挨拶しても一瞥すらしない。このオレにですよ? おかしくないですかねぇ? もうちょっと教育はきちんとしたほうがいいと思いますよ?」

おばあさん「それは申し訳ありません」

オオカミ「こんなにいいオオカミに対しての態度じゃないでしょう? 常識的に考えて」

おばあさん「そうですねぇ。今度、あの子がきたときに言っておきます」

オオカミ「おねがいしますよぉ。奥さん」

おばあさん「でも赤ずきんがねぇ……」

オオカミ(グフフフ……これでよし……。赤ずきんちゃんもおばあさんの言うことなら普通に信じるだろ。グフフフ!!!)

おばあさん「ゴホッ……今日はなんのお持て成しもできないで、申し訳ありませんでしたね」

オオカミ「いやいや。そんなことありませんよ。奥さんの麗しい肩を揉ませていただきましたからね」

おばあさん「うふふ。また、お上手なんですから」

オオカミ「でひゃっひゃっひゃっひゃ!!! では、これで失礼します!!」

おばあさん「はい。ご苦労様でした」

オオカミ「長生きしろよ」

おばあさん「はい……。ゴホッ……ゴホッ……」

オオカミ「……」

オオカミ(そういえば、病気がどうのこうのって言ってた気がするなぁ……)

オオカミ「ま、オレは赤ずきんちゃんとチュッチュッできればそれで……」

オオカミ「待てよ」

オオカミ「でっひゃっひゃっひゃっひゃ!!! そうだ!!! 明日もばあさんのとこに行くか」

オオカミ「できるだけ優しくすりゃあ、結婚までいけんだろ!!」

オオカミ「よぉーし!! やるぞー!!!」

森の中

クマ「ペロリ……うまい」

オオカミ「よぉ、クソノワグマ。今日もロンリーハニーペロペロかよ」

クマ「……何か用か?」

オオカミ「その蜂蜜、ちょっとくれよ」

クマ「なんだ、付き合ってくれるのか? ジョッキでいいか?」ドロッ

オオカミ「誰がてめーの傷心を慰めるかよ。赤ずきんちゃんのばあさんへの手土産にするんだよ」

クマ「はぁ? お前、なに考えてやがる?」

オオカミ「外堀から攻めていく作戦にしたんだよ。オレは天才だからなぁ」

クマ「そうか……」

オオカミ「ほら、いいから、この樽にいれろ。ハゲノワグマ」

クマ「……かせ」

オオカミ「まぁ、オレと赤ずきんちゃんの結婚式にはよんでやっからよ」

クマ「赤ずきんちゃんが13歳になったらどうするんだ?」

オオカミ「はぁ? 赤ずきんちゃんは永遠にあのままだよ」

翌日 おばあさんの家

オオカミ「どうも奥さん。オオカミですよぉ? これ蜂蜜です。どうぞ」

おばあさん「あら、貰ってもよろしいの?」

オオカミ「ええ。奥さんのためにハチの猛攻を掻い潜り、集めてきました」

おばあさん「まぁまぁ。そんな大変な目にあってまで……。ありがとうございます」

オオカミ「蜂蜜は栄養もありますからね。奥さんにはぴったりかと思いまして」

おばあさん「それはどうも。ありがたく頂戴しますね。さぁ、中へどうぞ」

オオカミ「お? いいんですかい? それではお言葉に甘えて」

おばあさん「今、お茶をいれますね」

オオカミ「おかまいなくぅ」

おばあさん「ゴホッ……。何か食べ物も……」

オオカミ「ああ。大丈夫っすよ。ここに来る途中で食ってきましたから。2匹ほど」

おばあさん「そうですか。では、お茶だけ」

オオカミ「奥さん。今日、赤ずきんちゃんは来ないんですか?」

おばあさん「さぁ……。今日はこないかもしれないですねぇ」

オオカミ「ちっ。まぁ、いいや。その蜂蜜はオオカミさんからもらったってきちんと伝えてくださいね」

おばあさん「それは勿論ですよ。はい、どうぞ」

オオカミ「いただきます」ズズッ

オオカミ「あっちぃ!!」

おばあさん「あらあら。大丈夫?」

オオカミ「オレ、猫舌なんだよなぁ。オオカミだけど」

おばあさん「……」

オオカミ「でっひゃっひゃっひゃっひゃ!! ほら、ここ笑うとこだぜ? グランマ?」

おばあさん「ああ、ごめんなさい。うふふふ」

オオカミ「でっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!」

おばあさん「ゴホッ……ゴホッ……」

オオカミ「おお。大丈夫かい? 辛いならベッドで寝とけよ」

おばあさん「でも、お客様の前で寝るなんて……」

オオカミ「なぁーにいっちょまえに乙女になってんだよぉ。50年はやいつーの」

おばあさん「そうね。うふふ……。では、失礼します」

オオカミ「――で、そのときオレの黄金の右ストレートがクマの腹に命中!! 奴は昼に食べたものを全部吐き出して、オレに頭をたれて謝罪したわけだ」

オオカミ「もうこんなことはしない。だから、貴方の舎弟してください。ってなぁ。まぁ、そこからオレは森のリーダー的存在なわけよ。わかるか?」

おばあさん「すごいですねぇ」

オオカミ「でっっひゃっひゃっひゃっひゃ!!! だろぉ!? まぁ、嘘なんだけどよ」

おばあさん「あらあら、まんまと騙されましたわ。ゴホッ……」

オオカミ「そろそろお暇するか。赤ずきんちゃんがこねーなら意味ねーし」

おばあさん「ありがとうございます」

オオカミ「あぁ?」

おばあさん「楽しかったわ」

オオカミ「そうかい? オレは正直、ババアのツラなんてみたくねえけど」

おばあさん「孫がよく来てくれるだけ、もうこの家には誰も来ないの」

オオカミ「ふぅーん」

おばあさん「だから、こうして誰かとお喋りできて、楽しかった。ありがとうございます」

オオカミ「おう。じゃあな、ばあさん。歯みがいて寝ろよ」

おばあさん「ええ。またきてください」

街道

オオカミ「トゥルル~お~れは~いっぴきおおかみ~なぜならどくしんだ~から~♪」

赤ずきん「……」テテテッ

オオカミ「おぉ! 赤ずきんちゃん!!」

赤ずきん「あ……。どうも」

オオカミ「どこにいくんだい?」

赤ずきん「失礼します」

オオカミ「ああ!! 当ててやろう!! ばあさんのところだ!!」

赤ずきん「違います!」テテテッ

オオカミ「な……。ちきしょう……。追いかけたいところだが、また猟師のとっつぁんがでてきても面白くねえしなぁ」

オオカミ「もう少し待つか……」

少女「きゃぁぁぁぁ!!!!」

オオカミ「どうしたんだ!? マイスイートハニー!!!」

少女「く、くまがおってくるんです!!!」

クマ「うぉぉぉぉ!!!! 蜂蜜いっしょになめよぉぉぉぉ!!!!!」ドドドドドッ!!!!

森の中

オオカミ「シャケにするんじゃなかったのかよ、ええ? ダンナ?」

クマ「魚類はやっぱりダメだ。どうしてもエサにしか見えん」

オオカミ「そうか。そりゃ残念だな。てめえの特殊性癖でもエサにまで萌えられないか」

クマ「そっちはどうなんだ?」

オオカミ「順調に決まってるだろ?」

クマ「そりゃあ、良かったなぁ」

オオカミ「なんだよ。嫉妬かぁ?」

クマ「そういうわけじゃない」

オオカミ「ふっ。まぁ、見てろよ。絶対に赤ずきんちゃんはオレが食うからよ。別の意味で」

クマ「ロリコンもここまでいくと清清しいな」

オオカミ「てめえだって女の子をおいかけてたじゃねえかよ」

クマ「オレは違う!! 下は6歳、上は50歳までいけるだけだ!!!」

オオカミ「すげぇぜ」

クマ「だろ?」

翌日 森の中

オオカミ「さぁてと、今日もばあさんのところに行くかぁ」

ウルフ「おにいちゃんっ。きちゃったにゃ」

オオカミ「おぉ? ウルフちゃんかぁ。今日もあざといな」

ウルフ「一緒にあそぼっ」

オオカミ「あーでもなぁ……」

ウルフ「にゃぁ? ダメにゃぁ?」

オオカミ「オレはもう、そういうあざとさからは卒業したんだ」

ウルフ「うにゃぁ。ウルちゃん、さびしいにゃぁ」

オオカミ「……」

ウルフ「にゃんっ」

オオカミ「うーん……なにしてあそぶぅー!?」

ウルフ「にゃー! おにいちゃん、だーいすきっ!!」

オオカミ「でひゃっひゃっひゃっひゃ!!!!」



ウルフ「今日は楽しかったにゃー。バイにゃー」

オオカミ「またねー。でひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ」

クマ「あぁー。今日も収穫なしか……」

オオカミ「おぉ。どうしたんだ、ブスノワグマさん」

クマ「うるさい。今日は久々に同族を狙ったんだが……。あのやろう、経済力はないとか抜かしやがって……」

オオカミ「はっはっはっは。その通りじゃねえかよ」

クマ「蜂蜜の貯蔵ならこの森で一番なんだぞ!!」

オオカミ「あぁ、そうかい」

クマ「くそぉ……くそぉ……くまぁ……!! って、お前、今日は赤ずきんちゃんのところには行かなかったのか?」

オオカミ「ああ。ウルフちゃんが来ちゃったからな。その相手をしてた」

クマ「的を絞れよ」

オオカミ「バカヤロウ。オスってのはメスを何匹抱えられるかで価値が決まるんだよ。知らないのか、ゲリノワグマ」

クマ「そうか。苦しんで死ね」

オオカミ「てめえも剥製になって死ね」

翌日 おばあさんの家

オオカミ「ふぅー。1日ぶりだぜぇ」

オオカミ「どうも、奥さん。オオカミですよぉ?」

オオカミ「……あれ? いねえのか? いや、病気なんだし、いるよな」

オオカミ「おーい。おくさーん。オオカミが24時間と3時間ぶりにきましたよぉ。あけてくーださい」

オオカミ「……」

オオカミ「おらぁ!! ババア!! あけろぉい!!」

オオカミ「……」ガチャ

オオカミ「なんだ、あいてるじゃん。おじゃましまーす」

おばあさん「あ……あぁ……。ごめんなさい……いま、おきようと……ゴホッ……ゴホッ……!」

オオカミ「お、おう。どうしたんだよ。今日は随分と老いぼれになってんな」

おばあさん「ちょっと風邪を……ゴホッ……」

オオカミ「寝とけよ。ほらほら」

おばあさん「ごめんなさいね。お持て成しはできそうもないわ……」

オオカミ「ああ、いいから。すぐに帰るし。これ、土産の果物だから。食えよ」

おばあさん「あ……そうだ……。言っておきましたよ。赤ずきんに」

オオカミ「え? なにを?」

おばあさん「蜂蜜を……もらったって……」

オオカミ「なんか言ってたか?」

おばあさん「よかったねって……」

オオカミ「それだけか。まだまだ時間がかかりそうだな」

おばあさん「ゴホッ……ゴホッ……!!!」

オオカミ「大丈夫かよ」

おばあさん「はぁ……はぁ……もう歳だから……ただの風邪でもつらくて……ゴホッ……!!」

オオカミ「大変だな、年寄りも」

おばあさん「全くだわ……」

オオカミ「んじゃ。オレは帰るな」

おばあさん「もう……ですか……?」

オオカミ「こっちも暇じゃねえんだよ」

おばあさん「そうですか……。果物、ありがとうございます。また、ゴホッ……きてくださいね」

街道

オオカミ「あー。何しようかなぁ。ばあさんに聞かせるはずだった嘘武勇伝はどこで発表してやろうか」

赤ずきん「……」タタタッ

オオカミ「ひゅー、彼女。お茶しない?」

赤ずきん「しません!!」タタタタッ

オオカミ「……」

オオカミ「なんだよぉ……。どんどん態度がわるくなってねぇか?」

小鳥「なんだ、オオカミちゃんしらねえのか?」

オオカミ「あぁ? 食っちまうぞ」

小鳥「赤ずきんちゃんのおばあさんがそろそろ、なんだってよ」

オオカミ「そろそろ?」

小鳥「もう老い先短いってことだよ」

オオカミ「ふぅん。どうでもいいや。ババアのことなんて」

小鳥「赤ずきんちゃん、心配してああして夕食前に様子を見に行ってんだよ。健気だねえ」

オオカミ「……」

おばあさんの家

オオカミ「シーッ……シーッ……。羽が歯の間に挟まってやがる……」

赤ずきん「それじゃあ、お祖母さん!! また来るから!!」

オオカミ「よっ」

赤ずきん「……な、なんですか?」

オオカミ「ばあさんは元気か?」

赤ずきん「……蜂蜜と果物持ってきてくれたんですよね?」

オオカミ「おう。まぁ、盗品だから礼はいらんぜ」

赤ずきん「よかったら、一緒に帰りませんか?」

オオカミ「いいよぉ!! でっひゃっひゃっひゃっひゃ!! オレが夜の森をエスコートしちゃうよぉ」

赤ずきん「ありがとうございます」

オオカミ「……あー。ばあさん、そんなにヤバいのか?」

赤ずきん「……」

オオカミ「蜂蜜なめてりゃ、どうにかなるだろ。心配はいらないって」

赤ずきん「……そうだと、いいんですけど」

街道

赤ずきん「私、ずっとお祖母さんによくしてもらっていて、大好きなんです」

赤ずきん「お祖母さんの作ってくれるスープも大好きだし、このずきんだってお祖母さんが作ってくれて……」

オオカミ「ああ。だから、すごく似合ってるんだな」

赤ずきん「……このままお祖母さんがいなくなったら……わたし……わたし……」

オオカミ「赤ずきんちゃん」

赤ずきん「ごめんなさい……。ここまでで、いいですから」

オオカミ「家の前まで送るよ? 君とは一時でも長くいたいし」

赤ずきん「でも、お母さんに怒られるんで」

オオカミ「あぁ、また大人の事情かよ。いいかい、お嬢さん。愛に障害はつきものだ。だからこそ、反発する勇気も持たなきゃな」

赤ずきん「……おやすみなさい。オオカミさん」

オオカミ「あぁ!! おい!!」

オオカミ「はぁ……うまくいかねえもんだなぁ」

クマ「お前も進展はないみたいだな」

オオカミ「クマノスケか。いや、好感度はばっちりあがってるはずなんだよ。好感度はな」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年01月29日 (水) 18:04:09   ID: HGTBHpgD

2 :  SS好きの774さん   2014年09月16日 (火) 01:47:35   ID: YKIEnUu4

続き気になる

3 :  SS好きの774さん   2015年11月03日 (火) 23:33:51   ID: nphzItn1

続きがあぁぁぁぁぁぁぁ
気になるうぅぅぅぅぅう

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