モバP「ダンスのレッスンか」 (12)


ここは練習場

渋谷凛がクルクルと回るように、ダンスを踊っていた。

「お、なんだ。凛、ダンスの練習をしていたのか?」

渋谷凛はふと、踊るのを止めて、俺を見る。

「うん。そうだけど」

なんだ、凛以外には他に誰もいないのか?

「こんなところに、どうしたの。プロデューサー」

「あ、いや。たまにはアイドル達のレッスン状況でもみようと思ってな。

今日はここでダンスの練習をすると聞いたから、見に来たんだ」

「そうだったんだ。でも、レッスンならもう終わったよ」

「そうなのか?」

なんだ、凛。居残り練習か?


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「つい1時間前くらいに皆帰ったから、私しかいない」

「そうか。悪いな。邪魔になったか」

「いや、べつに、邪魔にはなってないよ」

渋谷凛はまた、鏡を見ながらクルクルとダンスを踊り始める。

「それ、今度のライブのダンスだな」

「そうだよ」

渋谷凛は回りながら応える。

そうか、

せっかく来たんだからな

俺はポンも、手を叩いた

「よし、なら俺がダンスを見るよ」

「えっ?」


「プロデューサー。仕事の方は大丈夫なの?」

「せっかく来たんだ!

アイドルが頑張って練習してるのに、指導しないわけにはいかないだろう」

「そう。なら、よろしく」

「よしきた!」

渋谷凛はクルクルとダンスを踊って、言う

「この回るところが難しいんだけど」

「そうだな、確かに難しいポイントではある。

よし、ならそこを見るから練習しよう!」

俺は何度も何度も、そのダンスを見て、

渋谷凛も、できたり、できなかったり、何度も踊り続けた。

「ちょっと、疲れた」

渋谷凛は、少し息を荒くして、ポンッと座った

「そうだな。練習後だし、結構踊ったからな。休もう」

「喉乾いたな」

渋谷凛は水筒を手に持って、ごくっと飲んだ。

「……」

渋谷凛は、その後もじっと黙ったまま、少し悩んだような顔をする。

「どうしたんだ?」

渋谷凛は言った。

「今日はわざわざダンスに付き合わせちゃって、ごめんなさい」

ん、どうしたんだ、凛。

「わたし、あまりダンス上手じゃないから、こうして練習していないと、ダメだから」

凛の水筒を持つ手が震える

「…なんかあったのか?」

「私は、これと言った特技もないし。ダンスだって、あまり上手に踊れない。

だから、たまに、私、アイドルとしてどうすればいいのか、分からなくなることがある」

「はっ…」

俺は拳を握った。

「大丈夫だ凛!

凛はすごい武器を持ってる。

まだ未熟なところもあるかもしれないけど、気にするな。

このダンスも、今練習して少しずつ良くなってる。

次のライブに向けて、がんばるんだ!」

「プロデューサー…」

凛の、水筒を持つ手がピタリと止まり、凛は俺を見た。

「うん、がんばる!

ありがとう、プロデューサー。

なんか、元気出た!」

凛は少し笑顔の混じった表情で、頷く。

「今日はもう遅いから帰ろうか。

明日も練習あるんだろ。今日はしっかり休むんだぞ」

「そうだね…たしかに、長居し過ぎちゃったかも」

じゃ、私帰るね。

と、鞄を持つ凛に、俺は、そうだ、と手を叩く

「どうしたの?」

「凛、せっかく、今日は頑張ったんだ」

何か飲みもの買ってやる」

すぐ近くのスーパーで、俺はあるジュースを手に取る。

「凛、野菜ジュースは好きか?」

「え、まあ好きだけど」

「じゃあアップルジュースと、野菜ジュースを買ってやる。

帰ってからでも飲むか」

「うん」

凛は頷いた。

「ありがとう。プロデューサー」

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